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特許7598819医療用デバイス保持具、および、カテーテル
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  • 特許-医療用デバイス保持具、および、カテーテル 図1
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  • 特許-医療用デバイス保持具、および、カテーテル 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】医療用デバイス保持具、および、カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A61M25/09 540
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021075772
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169986
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城戸 悠介
(72)【発明者】
【氏名】西岸 誠
(72)【発明者】
【氏名】中澤 智
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-507089(JP,A)
【文献】特開2006-75524(JP,A)
【文献】特表平1-502881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイス保持具であって、
第1のルーメンを有するとともに、前記第1のルーメンに挿入される長尺状の医療用デバイスを保持可能な筒状の保持部材であって、前記保持部材の軸周りに螺旋状の第1のねじ部が形成された保持部材と、
前記保持部材の同軸上に配置されるとともに、前記第1のルーメンに連通し、かつ、前記医療用デバイスが挿入される第2のルーメンを有する筒状の支持部材であって、前記支持部材の軸周りに螺旋状に形成され、かつ、前記第1のねじ部と螺合する第2のねじ部が形成された支持部材と、
を備え、
前記支持部材に対して前記保持部材を第1の方向に回転することによって前記保持部材が前記支持部材に対して前進し、前記支持部材に対して前記保持部材を前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転することによって前記保持部材が前記支持部材に対して後退するよう構成されており、
前記保持部材は、
前記医療用デバイスの外周面に接触する弾性部材と、
前記弾性部材のうち、前記第1のルーメンの軸方向の一方の面に接触するベース部材と、
前記弾性部材のうち、前記第1のルーメンの軸方向の他方の面に接触するロック部材であって、前記ベース部材と前記ロック部材とに挟まれて弾性変形した前記弾性部材が前記医療用デバイスの外周面を押圧する状態で、前記ベース部材と連結する連結部を有するロック部材と、を有している、医療用デバイス保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用デバイス保持具であって、
前記支持部材は、前記第1のルーメンに連通し、かつ、前記保持部材の少なくとも一部を収容可能な収容孔を有し、前記支持部材のうち、前記収容孔を構成する内周面に前記第2のねじ部が形成されており、
前記保持部材の前記少なくとも一部の外周面に前記第1のねじ部が形成されている、
医療用デバイス保持具。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用デバイス保持具であって、
前記支持部材の先端側に前記第2のルーメンが形成されており、前記支持部材の基端側に前記収容孔が形成されており、
前記保持部材の前記少なくとも一部は、前記保持部材の先端部を含み、前記保持部材における前記第1のねじ部よりも基端側に把持部が設けられている、
医療用デバイス保持具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の医療用デバイス保持具であって、
前記保持部材と支持部材との少なくとも一方には、前記保持部材が前記支持部材に対して相対的に前進する方向への回転数を所定回数に制限するストッパー部が設けられている、
医療用デバイス保持具。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の医療用デバイス保持具であって、
前記支持部材における前記第2のルーメンの軸方向の長さは、前記保持部材における前記第1のルーメンの軸方向の長さよりも短い、
医療用デバイス保持具。
【請求項6】
中空状のシャフトと、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の医療用デバイス保持具であって、前記シャフトの基端部が前記支持部材に取り付けられる医療用デバイス保持具と、
を備える、カテーテル。
【請求項7】
中空状のシャフトと、医療用デバイス保持具と、を備えるカテーテルであって、
前記医療用デバイス保持具は、
第1のルーメンを有するとともに、前記第1のルーメンに挿入される長尺状の医療用デバイスを保持可能な筒状の保持部材であって、前記保持部材の軸周りに螺旋状の第1のねじ部が形成された保持部材と、
前記保持部材の同軸上に配置されるとともに、前記第1のルーメンに連通し、かつ、前記医療用デバイスが挿入される第2のルーメンを有する筒状の支持部材であって、前記支持部材の軸周りに螺旋状に形成され、かつ、前記第1のねじ部と螺合する第2のねじ部が形成された支持部材と、を備え、
前記支持部材に対して前記保持部材を第1の方向に回転することによって前記保持部材が前記支持部材に対して前進し、前記支持部材に対して前記保持部材を前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転することによって前記保持部材が前記支持部材に対して後退するよう構成されており、
前記シャフトは、
前記シャフトの基端側に設けられたコネクタであって、前記支持部材の先端部が着脱可能に装着され、かつ、前記第2のルーメンに連通する中空部と、外部から前記中空部に貫通する送水口とが形成されているコネクタを有している、
カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、長尺状の医療用デバイスを保持する医療用デバイス保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部、閉塞部や異常血管等(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、長尺状の医療用デバイスを用いた方法が広く行われている(下記特許文献1参照)。この種の医療用デバイスとしては、例えば、慢性完全閉塞(Chronic Total Occlusion、略して「CTO」)と呼ばれる病変部のように比較的硬い病変部を穿通することを目的としたガイドワイヤが挙げられる。従来より、このような医療用デバイスを保持する医療用デバイス保持具が知られている。この医療用デバイス保持具は、単一の筒状体を有しており、医療用デバイスが筒状体のルーメンに挿入されるとともに保持される構成になっている。医師等の手技者は、筒形状を把持して医療用デバイスの操作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-173465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば病変部が硬くて貫通が困難な場合、手技者は、医療用デバイスを回転させながら先端側に押し込む操作を要することがある。しかし、従来の従来の医療用デバイス保持具では、ルーメンに挿入された医療用デバイスが単一の筒状体に一体的に保持される構成である。このため、医療用デバイス保持具を用いて医療用デバイスの回転と先端側への前進とを同時に行うことが難しく、医療用デバイスを用いた治療を円滑に行うことができなかった。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される医療用デバイス保持具は、医療用デバイス保持具であって、第1のルーメンを有するとともに、前記第1のルーメンに挿入される長尺状の医療用デバイスを保持可能な筒状の保持部材であって、前記保持部材の軸周りに螺旋状の第1のねじ部が形成された保持部材と、前記保持部材の同軸上に配置されるとともに、前記第1のルーメンに連通し、かつ、前記医療用デバイスが挿入される第2のルーメンを有する筒状の支持部材であって、前記支持部材の軸周りに螺旋状に形成され、かつ、前記第1のねじ部と螺合する第2のねじ部が形成された支持部材と、を備え、前記支持部材に対して前記保持部材を第1の方向に回転することによって前記保持部材が前記支持部材に対して前進し、前記支持部材に対して前記保持部材を前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転することによって前記保持部材が前記支持部材に対して後退するよう構成されている。本医療用デバイス保持具では、長尺状の医療用デバイスを保持する保持部材を、支持部材に対して相対的に回転させると、保持部材が支持部材に対して軸方向に移動する。すなわち、本医療用デバイス保持具によれば、保持部材を把持して回転操作を行うことにより、医療用デバイスの回転と先端側への前進とを同時に行うことができる。
【0008】
(2)上記医療用デバイス保持具において、前記支持部材は、前記第1のルーメンに連通し、かつ、前記保持部材の少なくとも一部を収容可能な収容孔を有し、前記支持部材のうち、前記収容孔を構成する内周面に前記第2のねじ部が形成されており、前記保持部材の前記少なくとも一部の外周面に前記第1のねじ部が形成されている構成としてもよい。仮に、保持部材に形成された収容孔に支持部材の一部が挿入されつつ螺合される構成では、保持部材のうち、医療用デバイスを保持する部分と、支持部材と螺合する部分との径の差が相対的に大きい。このため、例えば、医療用デバイスを保持する部分から支持部材と螺合する部分へのトルク伝達性が低下し、その結果、医療用デバイスの操作性が低下するおそれがある。これに対して、本医療用デバイス保持具では、保持部材のうち、医療用デバイスを保持する部分と、支持部材と螺合する部分との径の差が相対的に小さい。このため、医療用デバイスを保持する部分から支持部材と螺合する部分へのトルク伝達性の低下を抑制することができる。
【0009】
(3)上記医療用デバイス保持具において、前記支持部材の先端側に前記第2のルーメンが形成されており、前記支持部材の基端側に前記収容孔が形成されており、前記保持部材の前記少なくとも一部は、前記保持部材の先端部を含み、前記保持部材における前記第1のねじ部よりも基端側に把持部が設けられている構成としてもよい。本医療用デバイス保持具によれば、保持部材を把持するための把持部が、支持部材の基端側に位置するため、手技者は保持部材を容易に把持して円滑に回転操作を行うことができる。
【0010】
(4)上記医療用デバイス保持具において、前記保持部材と支持部材との少なくとも一方には、前記保持部材が前記支持部材に対して相対的に前進する方向への回転数を所定回数に制限するストッパー部が設けられている構成としてもよい。本医療用デバイス保持具によれば、保持部材への過度な回転操作によって医療用デバイスが破損することを抑制することができる。
【0011】
(5)上記医療用デバイス保持具において、前記支持部材における前記第2のルーメンの軸方向の長さは、前記保持部材における前記第1のルーメンの軸方向の長さよりも短い構成としてもよい。本医療用デバイス保持具によれば、支持部材における第2のルーメンの軸方向の長さが、保持部材における第1のルーメンの軸方向の長さ以上である構成に比べて、医療用デバイスと支持部材の内壁面との間の接触抵抗を低減できるため、医療用デバイスの回転と先端側への前進とを円滑に行うことができる。
【0012】
(6)本明細書に開示されるカテーテルは、中空状のシャフトと、上記医療用デバイス保持具であって、前記シャフトの基端部が前記支持部材に取り付けられる医療用デバイス保持具と、を備える。本カテーテルによれば、シャフトに挿通して使用される医療用デバイスの回転と先端側への前進とを同時に行うことができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、医療用デバイス保持具、その医療用デバイス保持具を備えるカテーテル、それらの使用方法や製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態におけるカテーテル1の構成を概略的に示す説明図
図2】カテーテル保持具100の構成を概略的に示す説明図
図3】第2実施形態におけるカテーテル保持具100aの構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施形態:
A-1.カテーテル1の構成:
図1は、本実施形態におけるカテーテル1の構成を概略的に示す説明図である。図1には、カテーテル1の縦断面構成が示されている。ここで、本明細書において、所定部材の縦断面とは、所定部材の軸方向(図1ではカテーテル1の長手方向(Z軸方向))に平行な断面(図1のYZ断面)をいう。図1では、カテーテル1の一部分の図示が省略されている。また、図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。本明細書では、カテーテル1およびその各構成部材について、先端側の端部を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端部を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。なお、図1では、カテーテル1が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、カテーテル1は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。
【0016】
本実施形態のカテーテル1は、貫通用カテーテル70をガイドするガイディングカテーテル80と、貫通用カテーテル70を保持するカテーテル保持具100と、を備えている。
【0017】
貫通用カテーテル70は、例えば慢性完全閉塞(Chronic Total Occlusion、略して「CTO」)と呼ばれる病変部のように比較的硬い病変部を穿通することを主な目的として血管等に挿入される、可撓性を有する長尺状の医療用デバイスである。貫通用カテーテル70は、例えば、金属製のシャフト72と、そのシャフト72の先端に設けられた先細りのテーパ形状の先端チップ74と、を有している。貫通用カテーテル70の全長は、例えば1500mm以上であり、2000mm以下である。貫通用カテーテル70は、特許請求の範囲における医療用デバイスの一例であり、カテーテル保持具100は、特許請求の範囲における医療用デバイス保持具の一例である。
【0018】
(ガイディングカテーテル80):
ガイディングカテーテル80は、シース82と、コネクタ90と、を備えている。シース82は、可撓性を有する長尺の管状部材であり、より具体的には、例えば樹脂や金属により形成された可撓性のチューブである。シース82の空間84内に貫通用カテーテル70が挿入される。ガイディングカテーテル80は、特許請求の範囲におけるシャフトの一例である。
【0019】
コネクタ90は、シース82の基端に接続された略円筒状の部材である。コネクタ90の中空部92は、シース82の空間84と連通するとともに、コネクタ90の基端面に開口するように形成されている。中空部92には、カテーテル保持具100の後述する支持部材10のデバイス挿入部20が着脱可能に装着される。なお、コネクタ90には、図示しない注射器等を取り付けてシース82の空間84内に薬液等を送液できるように構成された送水口94が形成されている。
【0020】
(カテーテル保持具100):
図2は、カテーテル保持具100の構成を概略的に示す説明図である。図2には、カテーテル保持具100の縦断面構成(YZ断面)が示されている。図2に示すように、カテーテル保持具100は、支持部材10と、保持部材50と、を備えている。
【0021】
図2に示すように、保持部材50は、ベース部材52と、ロック部材60と、弾性部材62と、を有している。ベース部材52は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の中空体である。なお、本明細書において「筒状(円筒状)」とは、完全な筒形状(円筒形状)に限らず、全体として略筒状(略円筒形状、例えば、若干、円錐形状や、一部に凹凸がある形状など)であってもよい。ベース部材52の内部には、ベース部材52の先端から基端まで延びる第1のルーメン54(貫通孔)が形成されている。第1のルーメン54には、例えば、上記貫通用カテーテル70が挿入される。
【0022】
保持部材50のベース部材52のうち、先端を含む外周面には、雄ねじ部53が形成されている。雄ねじ部53は、カテーテル保持具100(支持部材10)の軸Oを中心とする周方向に螺旋状に形成されたねじ山である。雄ねじ部53は、特許請求の範囲における第1のねじ部の一例である。
【0023】
保持部材50のベース部材52の基端部には、ベース部材52の先端側よりも外径が大きい径大部58が設けられている。カテーテル保持具100の軸Oに沿った方向(以下「軸O方向」ということがある)から見て、径大部58の形状は、環状である。径大部58の外周面には、ロック用ねじ部59が形成されている。ロック用ねじ部59は、軸Oを中心とする周方向に螺旋状に形成された雄ねじまたは雌ねじである。径大部58の内径は、ベース部材52の第1のルーメン54の径よりも大きい。すなわち、雄ねじ部53よりも基端側には、ロック部材60における後述の押圧部64が挿入されるロック挿入孔51が開口形成されている。ロック挿入孔51は、ベース部材52に形成された第1のルーメン54よりも径が大きく、かつ、第1のルーメン54に同軸上で連通している。
【0024】
保持部材50のベース部材52の外周面には、雄ねじ部53よりも基端側にストッパー部56が設けられている。具体的には、ストッパー部56は、ベース部材52の外周面から保持部材50の径方向外側に突出するように形成された部分である。本実施形態では、ストッパー部56の軸O方向から見た形状は、円環状である。また、ストッパー部56は、軸O方向において、雄ねじ部53と径大部58との間に配置されている。雄ねじ部53は、ベース部材52の先端からストッパー部56まで連続的に形成されている。また、ストッパー部56と径大部58とは、軸O方向において互いに離間した位置に配置されている。これにより、保持部材50の特定部分が硬くなり、全体における強度のばらつきが生じることを抑制することができる。なお、ベース部材52は、例えば、樹脂(エラストマー、フッ素系樹脂、スーパーエンプラ―(高分子材料)など)により形成されているが、樹脂以外の材料(例えば金属)により形成されていてもよい。
【0025】
弾性部材62は、弾性材料等により形成された円環状の部材である。非弾性状体において、弾性部材62の内径は、ベース部材52の第1のルーメン54の径と略同一であり、弾性部材62の外径は、第1のルーメン54の径よりも大きく、ベース部材52の径大部58の内径以下である。弾性部材62は、ベース部材52におけるロック挿入孔51と第1のルーメン54との間の段差面に接触するように配置されている。
【0026】
ロック部材60は、押圧部64と、把持部66と、連結部68と、を有している。押圧部64は、ベース部材52のロック挿入孔51に挿入可能な円環状部分である。
【0027】
把持部66は、押圧部64の外周を囲むように配置された円環状部分である。把持部66の内径は、ベース部材52の径大部58の外径より大きい。把持部66の内周面には、径大部58に形成されたロック用ねじ部59に螺合可能なロック用ねじ部69が形成されている。ロック用ねじ部69は、軸Oを中心とする周方向に螺旋状に形成された雄ねじまたは雌ねじである。連結部68は、押圧部64の基端と把持部66の基端とをつなぐ部分である。
【0028】
例えば、貫通用カテーテル70を、ベース部材52の第1のルーメン54と、弾性部材62の内周側と、ロック部材60の内周側とに挿入して、ベース部材52のロック挿入孔51内に弾性部材62を配置し、ベース部材52のロック用ねじ部59に、ロック部材60のロック用ねじ部69を螺合させる。これにより、ロック部材60の押圧部64が軸O方向に沿って保持部材50の先端に向かって移動し、ロック挿入口51に配置された弾性部材62がベース部材52とロック部材60の押圧部64とに挟まれて弾性変形して弾性部材62の内周面が貫通用カテーテル70の外周面に押圧されることにより、貫通用カテーテル70がベース部材52に対して保持される。なお、ロック部材60は、例えば、樹脂(エラストマー、フッ素系樹脂、スーパーエンプラ―(高分子材料)など)により形成されているが、樹脂以外の材料(例えば金属)により形成されていてもよい。
【0029】
ベース部材52にロック部材60が装着された状態で、把持部66は、保持部材50よりも基端側に設けられ、手技者により把持される。なお、把持部66の外径は、支持部材10の最大外径よりも大きい。このため、把持部66の外径が支持部材10の外径以下である構成に比べて、保持部材50に対する手技者の回転操作の微調整が容易になる。
【0030】
支持部材10は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の中空体である。支持部材10は、保持部材50の同軸上に配置される。支持部材10は、デバイス挿入部20と、収容部30と、を有している。
【0031】
デバイス挿入部20は、支持部材10の先端を含む部分であり、デバイス挿入部20の内部には、デバイス挿入部20の先端から基端まで延びる第2のルーメン22(貫通孔)が形成されている。第2のルーメン22には、例えば、上記貫通用カテーテル70が挿入される。デバイス挿入部20の先端側の外周面は、軸O方向の全長にわたって略同一の円筒状である。デバイス挿入部20の基端側の外周面は、デバイス挿入部20の基端に向かうにつれて径が連続的に大きくなっている逆テーパ形状である。図1に示すように、支持部材10(デバイス挿入部20)の先端部がコネクタ90の中空部92内に圧入されることにより、シース82を、コネクタ90を介して支持部材10の先端部に連結させることができる。
【0032】
収容部30は、外径および内径が全長にわたって略同一である円筒状である。収容部30の内部には、ベース部材52の先端側を収容可能な収容孔32が形成されている。収容孔32は、軸O方向に伸びる円柱状の空間である。収容孔32は、第2のルーメン22の同軸上に位置しており、収容孔32の径は、第2のルーメン22の径よりも大きい。また、支持部材10における第2のルーメン22の軸方向の長さは、保持部材50における第1のルーメン54の軸方向の長さよりも短い。
【0033】
支持部材10の収容部30の内周面には、雌ねじ部33が形成されている。雌ねじ部33は、軸Oを中心とする周方向に螺旋状に形成されたねじ溝である。雌ねじ部33は、収容孔32の全長にわたって形成されている。なお、収容部30における雌ねじ部33(収容孔32)の軸O方向の長さは、ベース部材52における雄ねじ部53の軸O方向の長さよりも長い。雌ねじ部33は、特許請求の範囲における第2のねじ部の一例である。なお、支持部材10は、例えば、樹脂(エラストマー、フッ素系樹脂、スーパーエンプラ―(高分子材料)など)により形成されているが、樹脂以外の材料(例えば金属)により形成されていてもよい。
【0034】
A-2.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のカテーテル保持具100は、貫通用カテーテル70が挿入されるとともに、挿入された貫通用カテーテル70を保持する保持部材50と、ガイディングカテーテル80に装着される支持部材10と、を備えている。保持部材50の先端側(雄ねじ部53)が支持部材10の基端に形成された収容孔32に挿入されつつ、収容孔32を構成する内周壁に形成された雌ねじ部33に螺合される。これにより、支持部材10に対して保持部材50を回転させると、保持部材50が支持部材10に対して軸O方向の前後方向に移動する。すなわち、カテーテル保持具100によれば、保持部材50を把持して回転操作を行うことにより、貫通用カテーテル70の回転と先端側への前進とを同時に行うことができ、その結果、貫通用カテーテル70を用いた手技を効率よく行うことができる。なお、軸O周りの一方の方向(図1の方向M)は、特許請求の範囲における第1の方向の一例であり、軸O周りの他方の方向(図1の方向Mとは反対の方向)は、特許請求の範囲における第2の方向の一例である。
【0035】
具体的には、例えば図1に示す構成に対して、仮に、カテーテル保持具100における支持部材10と保持部材50とが相対回転および相対移動が不能に一体化され、かつ、カテーテル保持具100とガイディングカテーテル80とが連結されない構成では、貫通用カテーテル70を用いた手技を効率よく行うことが難しい。すなわち、このような構成では、手技者は、貫通用カテーテル70を保持したカテーテル把持具100とガイディングカテーテル80とを個別に把持した状態で、カテーテル保持具100を回転させつつ前進させるという高度な技術が必要になる。また、このような構成では、手技者は、貫通用カテーテル70を意図した量だけ前進させることが難しい。
【0036】
これに対して、図1に示すように、本実施形態のカテーテル1では、ガイディングカテーテル80は、コネクタ90を介してカテーテル保持具100の支持部材10に連結される。このため、支持部材10を把持すれば、支持部材10と一体的に変位するガイディングカテーテル80の位置や姿勢を操作することができる。また、貫通用カテーテル70は、カテーテル保持具100の保持部材50に保持される。このため、保持部材50を把持して操作すれば、貫通用カテーテル70の位置や姿勢を操作することができる。例えば、保持部材50を回転操作すると、貫通用カテーテル70が保持部材50と一体的に回転する。そして、支持部材10と保持部材50とが螺合されており、支持部材10に対して保持部材50を回転させると、保持部材50が支持部材10に対して軸O方向の前後方向に移動する。このため、手技者は、貫通用カテーテル70やガイディングカテーテル80の把持を要することなく、支持部材10を構成する支持部材10と保持部材50とだけを把持し、支持部材10に対して保持部材50を回転させることにより、容易に、貫通用カテーテル70の回転と先端側への前進とを同時に行うことができる。しかも、貫通用カテーテル70は、支持部材10に対する保持部材50の回転量に比例した距離だけ前進するから、手技者は、貫通用カテーテル70を意図した量だけ前進させることを容易に行うことができる。
【0037】
本実施形態のカテーテル1では、例えば、図1において、保持部材50と支持部材10との挿入及び被挿入の関係が逆の構成、即ち、保持部材50に形成された収容孔に支持部材10の一部が挿入されつつ螺合される構成に比べて、保持部材50の内周面と貫通用カテーテル70との間にスペースが生じることが抑制されるため、貫通用カテーテル70を前進方向に回転させているときに貫通用カテーテル70がぐらつくことが抑制される。この結果、本実施形態のカテーテル1によれば、貫通用カテーテル70を、より精度よく操作することができる。
【0038】
本実施形態では、ベース部材52にロック部材60が装着された状態で、把持部66は、保持部材50の基端側に設けられ、手技者により把持される。これにより、手技者は保持部材50を容易に把持して円滑に回転操作を行うことができる。
【0039】
本実施形態では、保持部材50のベース部材52の外周面には、雄ねじ部53よりも基端側にストッパー部56が設けられている。このため、貫通用カテーテル70を保持した保持部材50の支持部材10対する相対回転が所定回数に制限される。この結果、保持部材50への過度な回転操作によって貫通用カテーテル70が破損することを抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、支持部材10における第2のルーメン22の軸方向の長さは、保持部材50における第1のルーメン54の軸方向の長さよりも短い。これにより、支持部材10における第2のルーメン22の軸方向の長さが、保持部材50における第1のルーメン54の軸方向の長さ以上である構成に比べて、貫通用カテーテル70と支持部材10の内壁面との間の接触抵抗を低減できるため、貫通用カテーテル70の回転と先端側への前進とを円滑に行うことができる。
【0041】
B.第2実施形態:
図3は、第2実施形態におけるカテーテル保持具100aの構成を概略的に示す説明図である。図3には、カテーテル保持具100aの縦断面構成が示されている。以下では、第2実施形態のカテーテル保持具100aの構成の内、上述した第1実施形態のカテーテル保持具100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0042】
図3に示すように、カテーテル保持具100aは、支持部材10aと、保持部材50aと、を備えている。
【0043】
保持部材50aは、ベース部材52aと、コネクタ90aと、を有している。ベース部材52aは、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の中空体である。ベース部材52aの内部には、ベース部材52aの先端から基端まで延びる収容孔54aが形成されている。ベース部材52aのうち、収容孔54aを構成する内周面に雄ねじ部53aが形成されている。雄ねじ部53aは、特許請求の範囲における第1のねじ部の一例である。
【0044】
コネクタ90aは、ベース部材52aの基端に接合された略円筒状の部材である。コネクタ90aの中空部92aは、ベース部材52aの収容孔54aと連通している。中空部92aに貫通用カテーテル70を圧入することにより、貫通用カテーテル70はコネクタ90aに保持される。なお、コネクタ90aには、送水口94aが形成されている。中空部92aは、特許請求の範囲における第1のルーメンの一例である。
【0045】
支持部材10aは、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の中空体である。支持部材10aは、保持部材50aの同軸上に配置される。支持部材10aの内部には、支持部材10aの先端から基端まで延びる第2のルーメン22a(貫通孔)が形成されている。第2のルーメン22aには、例えば、貫通用カテーテル70が挿入される。支持部材10aの基端側は、保持部材50aの収容孔54a内に収容可能である。支持部材10aの基端側の外周面には、雌ねじ部33aが形成されている。また、支持部材10aの先端側には、ストッパー部24aが設けられている。なお、支持部材10aには、図示しない中空状のシャフト(ガイディングカテーテルなど)の基端部が接続される構成でもよい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のカテーテル保持具100aは、貫通用カテーテル70が挿入されるとともに保持する保持部材50aと、支持部材10aと、を備えている。支持部材10aの基端側(雌ねじ部33a)が保持部材50の先端に形成された収容孔54aに挿入されつつ、収容孔54aを構成する内周壁に形成された雄ねじ部53aに螺合される。これにより、保持部材50aを把持して回転操作を行うことにより、貫通用カテーテル70の回転と先端側への前進とを同時に行うことができる。
【0047】
本実施形態では、支持部材10aの外周面には、雌ねじ部33aよりも先端側にストッパー部24aが設けられている。すなわち、保持部材50aが支持部材10aに対して相対的に前進する方向への回転数が所定回数に制限される。これにより、保持部材50aへの過度な回転操作によって貫通用カテーテル70が破損することを抑制することができる。
【0048】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0049】
上記実施形態におけるカテーテル1およびカテーテル保持具100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0050】
上記第1実施形態において、保持部材50のベース部材52の外周面に雌ねじ部が形成され、支持部材10の内周面に雄ねじ部が形成された構成でもよい。上記第2実施形態において、保持部材50aの内周面に雌ねじ部が形成され、支持部材10aの外周面に雄ねじ部が形成された構成でもよい。
【0051】
上記第1実施形態では、保持部材50に貫通用カテーテル70を保持させる構成として、ロック部材60および弾性部材62を利用する構成であったが、これに限らず、例えば保持部材50の第1のルーメン54に貫通用カテーテル70を圧入することにより保持させる構成でもよい。
【0052】
上記第1実施形態において、支持部材10の形状は、例えば、全長にわたって外径が略同一の形状でもよいし、全体的に先細りの円錐状でもよい。
【0053】
上記第1実施形態において、ガイディングカテーテル80およびコネクタ90を備えない構成でもよい。上記第1実施形態において、ベース部材52にロック部材60が装着された状態で、把持部66が保持部材50の中央部や先端側に設けられた構成でもよい。上記第1実施形態において、保持部材50がストッパー部56を備えない構成でもよい。支持部材10にストッパー部が設けられた構成でもよい。例えば、図1の構成において、ストッパー部56を備えず、ベース部材52の先端が支持部材10における収容孔32を構成する先端壁に接触する構成でもよい。上記第2実施形態において、支持部材10aがストッパー部24aを備えない構成でもよい。
【0054】
上記第1実施形態において、支持部材10における第2のルーメン22の軸方向の長さが、保持部材50における第1のルーメン54の軸方向の長さと同じでもよいし、保持部材50における第1のルーメン54の軸方向の長さよりも長くてもよい。
【0055】
上記実施形態では、医療用デバイスとして、貫通用カテーテル70を例示したが、これに限らず、例えばガイドワイヤなどでもよい。また、上記実施形態では、シャフトとして、ガイディングカテーテル80を例示したが、これに限らず、例えばガイディング機能を有しない他の用途のカテーテルなどでもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:カテーテル 10,10a:支持部材 20:デバイス挿入部 22,22a:第2のルーメン 24a,56:ストッパー部 30:収容部 32,54a:収容孔 33,33a:雌ねじ部 50,50a:保持部材 51:ロック挿入孔 52,52a:ベース部材 53,53a:雄ねじ部 54:第1のルーメン 58:径大部 59,69:ロック用ねじ部 60:ロック部材 62:弾性部材 64:押圧部 66:把持部 68:連結部 70:貫通用カテーテル 72:シャフト 74:先端チップ 80:ガイディングカテーテル 82:シース 84:空間 90,90a:コネクタ 92,92a:中空部 94,94a:送水口 100,100a:カテーテル保持具
図1
図2
図3