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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20241205BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20241205BHJP
   F25D 29/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F25D23/00 301A
F25D11/00 101B
F25D29/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021087288
(22)【出願日】2021-05-25
(65)【公開番号】P2022180682
(43)【公開日】2022-12-07
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西原 淳夫
(72)【発明者】
【氏名】河井 良二
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148379(JP,A)
【文献】特開2014-134348(JP,A)
【文献】特開2015-017732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00 ~ 16/00
F25D 23/00
F25D 27/00 ~ 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納物を収納する収納室と、前記収納室に冷気を導入する冷気導入口と、前記冷気導入口を開閉するためのダンパーと、前記収納室に設けられるとともに前記収納室の内部の空気の圧力を測定する圧力センサと、前記収納室に定量の空気を送り込むための空気注入装置と、を備える冷蔵庫において、
前記ダンパーを閉じて前記空気注入装置で定量の空気を前記収納室に送り込んだときの前記圧力センサの測定データを使って前記収納室の容積占有率を推定する容積占有率推定機能を備え
前記ダンパーは、前記冷気導入口に向かってピストンのようにはまり込む構造を有することによって前記収納室の中に定量の空気を押し込む機能を有し、該ダンパーが前記空気注入装置を兼ねることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記容積占有率推定機能は、当該冷蔵庫の制御装置に備えられることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記圧力センサの前記測定データを外部に送信するための通信装置と、
前記通信装置から受信した前記測定データを使って前記容積占有率を推定する機能を有する外部機器と、を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項に記載の冷蔵庫において、
前記圧力センサとして、前記ダンパーを駆動するモータの駆動電流を測定するセンサを備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-134348号公報(特許文献1)の冷蔵庫が知られている。特許文献1の請求項6には、下記冷蔵庫が記載されている。
「断熱的に区画された複数の貯蔵室を有する筐体と、
複数の前記貯蔵室の開口部をそれぞれ開閉する複数の扉と、
空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段と、
前記冷却手段により生成された冷却空気をそれぞれの前記貯蔵室へと供給するための冷却風路と、
前記冷却風路内の前記冷却空気を前記貯蔵室へと搬送する空気搬送手段と、
前記冷却風路内に設けられ、前記貯蔵室のそれぞれへの前記冷却空気の供給量を調節する風量調節手段と、
複数の前記貯蔵室のうちの少なくとも1つの前記貯蔵室の内部の空気圧と、前記筐体の外部の空気圧との差である差圧を検知する差圧検知手段と、
前記差圧検知手段により検知された差圧に基づいて、前記貯蔵室の内部に収納された収納物の容積占有率を検知する容積占有率検知手段と、を備えた冷蔵庫。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-134348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の容積占有率検知手段では、圧力場が風路抵抗に基づいて定まる。風路抵抗は収納物の配置の影響を受け易く、検出される容積占有率も収納物の配置の影響を受け易くなる。
【0005】
本発明の目的は、収納物の配置の影響を受け難く正確な容積占有率の検出が可能な冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の冷蔵庫は、
収納物を収納する収納室と、前記収納室に冷気を導入する冷気導入口と、前記冷気導入口を開閉するためのダンパーと、前記収納室に設けられるとともに前記収納室の内部の空気の圧力を測定する圧力センサと、前記収納室に定量の空気を送り込むための空気注入装置と、を備える冷蔵庫において、
前記ダンパーを閉じて前記空気注入装置で定量の空気を前記収納室に送り込んだときの前記圧力センサの測定データを使って前記収納室の容積占有率を推定する容積占有率推定機能を備え
前記ダンパーは、前記冷気導入口に向かってピストンのようにはまり込む構造を有することによって前記収納室の中に定量の空気を押し込む機能を有し、該ダンパーが前記空気注入装置を兼ねる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって冷蔵庫内に定量の空気を送り込むことができ、その際の圧力上昇によって庫内の容積占有率を確実に推定することができる。
【0008】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係る冷蔵庫の断面図である。
図2】冷凍室12に空気を注入した際の室内の圧力の変化を示す図である。
図3】冷凍室12に空気を注入した際に室内に発生する圧力のピーク値(ピーク圧力)と容積占有率の関係を示す図である。
図4】本発明の実施例2に係る冷蔵庫の断面図である。
図5】本発明の実施例3に係る冷蔵庫の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施例を説明する。
【0011】
[実施例1]
図1は本発明の実施例1に係る冷蔵庫1の断面図である。
ここでは冷蔵室11、冷凍室12及び野菜室13を備えた冷蔵庫について説明する。冷蔵室11、冷凍室12及び野菜室13の数及び配置は図1に示した構成に限定される訳ではなく、その他の構成であってもよい。また本実施例の冷蔵庫は、図示した冷蔵室11、冷凍室12及び野菜室13の全てを備えるものに限定される訳ではなく、いずれか1つ又は2つの室がない構成であってもよい。冷蔵室11、冷凍室12及び野菜室13のそれぞれを区別する必要のない場合は、収容室と呼んで説明する場合もある。
【0012】
冷蔵庫1は圧縮機21を用いた冷凍サイクルで発生させた冷熱によって熱交換器22において冷気を発生させ、その冷気をファン23で送風路24を通して冷蔵室11、冷凍室12及び野菜室13の各室に送り込むことによって庫内を冷却している。冷蔵室11、冷凍室12及び野菜室13の各室には、送風路24から冷気を導入する冷気導入口25と、冷気導入口25を開閉するためのダンパー26と、が設けられる。制御装置29はダンパー26の開閉を制御して、冷蔵室11、冷凍室12及び野菜室13の内部の温度を調節する。ダンパー26にはこのダンパー26を駆動するモータが内蔵されている。
【0013】
以下、図1と共に図2及び図3を参照して、容積占有率を検出するための構造と方法を説明する。ここでは冷凍室12についてのみ説明するが、他の冷蔵室11あるいは野菜室13の容積占有率も同様の構造と方法を用いて検出することができる。図1では、冷蔵室11及び野菜室13の容積占有率を検出するための構造は、図示を省略している。
【0014】
冷凍室12の内部の容積占有率を検出するため、ダンパー26を閉じた状態で、空気注入装置30を使って、冷凍室12に空気を注入する。その際に冷凍室12内部の空気の圧力を圧力センサ31で検出することによって、冷凍室12内における収容物による容積占有率を推定することができる。容積占有率は冷凍室(収納室)12の収納空間内で収納物によって占有されている容積(体積)の割合、すなわち収納空間の容積に対する収納物によって占有されている容積の割合である。
【0015】
図2は、冷凍室12に空気を注入した際の室内の圧力の変化を示す図である。図3は、冷凍室12に空気を注入した際に室内に発生する圧力のピーク値(ピーク圧力)と容積占有率の関係を示す図である。図2では、時刻(横軸)に対する圧力(縦軸)の変化を示している。図3では、容積占有率(横軸)に対するピーク圧力(縦軸)の変化を示している。
【0016】
冷凍室12に空気を注入することによって冷凍室12内部の空気圧力は図2に示すように上昇する。この場合、冷凍室12に注入する空気量は一定量に設定される。このために、例えば空気の注入時間を一定時間(所定時間)に設定してもよい。このときのピーク圧力P1は容積占有率によって図3のように変化する。制御装置29はこの変化を参照テーブルとして備える。
【0017】
冷凍室12内の容積占有率が高い場合、すなわち空き体積が小さい場合には、定量の空気を冷凍室12に注入した際の圧力上昇が大きく、逆に冷凍室12内の容積占有率が低い場合には、定量の空気を冷凍室12に注入した際の圧力上昇が小さい。
【0018】
空気注入装置30は、例えば図1に描いたようなシリンダー30Cとピストン30Pから成るものであって、一定量の空気を冷凍室12内部に押し込むことができる、あるいは冷凍室12内部に押し込む空気の量を制御することができるものである。
【0019】
圧力センサ31の測定データを基に冷凍室12の容積占有率を推定する機能は、冷蔵庫1の制御装置29にそのアルゴリズムを搭載することができる。すなわち制御装置29は上述した図3の特性(参照テーブル)を備え、図3の参照テーブルを参照して容積占有率を推定する。
【0020】
すなわち本実施例の冷蔵庫1では、容積占有率推定機能は、冷蔵庫1の制御装置29に備えられる。
【0021】
あるいは、冷蔵庫が外部への通信手段を備えている場合には、外部の計算機に容積占有率の推定アルゴリズムを搭載してもよい。その場合には、圧力センサ31の測定データは通信手段を通じて外部の機器(例えば計算機)に送信され、外部の計算機が容積占有率を推定する。本実施例の構成を採ることによって、冷凍室12の内部の容積占有率を確実に検出することができる。
【0022】
すなわち本実施例の冷蔵庫1は、圧力センサ31の測定データを外部に送信するための通信装置35と、通信装置35から受信した測定データを使って容積占有率を推定する機能を有する外部機器40と、を備えるようにしてもよい。
【0023】
上述した様に本実施例の冷蔵庫1は、収納物を収納する収納室11,12,13と、収納室11,12,13に設けられるとともに収納室11,12,13の内部の空気の圧力を測定する圧力センサ31と、収納室11,12,13に定量の空気を送り込むための空気注入装置30と、を備える冷蔵庫1において、空気注入装置30で定量の空気を収納室11,12,13に送り込んだときの圧力センサ31の測定データを使って収納室11,12,13の容積占有率を推定する容積占有率推定機能を備える。
【0024】
本実施例では、容積占有率を求めることができれば、収納室の収納空間内で収納物によって占有されている容積、収納室の収納空間内で収納物によって占有されていない空き容積、及び収納空間の容積に対する空き容積の割合を求めることもできる。従って、本明細書において容積占有率を求めることは、収納室の収納空間内で収納物によって占有されている容積、収納室の収納空間内で収納物によって占有されていない空き容積、及び収納空間の容積に対する空き容積の割合、の中から、少なくともいずれか1つを求めることと同意である。
【0025】
[実施例2]
図4は本発明の実施例2を示す冷蔵庫の断面図である。
実施例2では空気注入装置30の代わりに、ダンパー27を用いて冷凍室12に空気を注入する。
【0026】
ダンパー27は冷気導入口25に向かってピストンのようにはまり込む構造となっている。このピストン状のダンパー27を用いることによって、冷凍庫12を密閉した後に更に一定量の空気を冷凍室12内部に押し込む。ダンパー27にはこのダンパー27を駆動するモータが内蔵されている。
【0027】
すなわち本実施例の冷蔵庫1は、収納室11,12,13に冷気を導入する冷気導入口25と、冷気導入口25を開閉するためのダンパー27と、を備え、ダンパー27は収納室11,12,13の中に定量の空気を押し込む機能を有し、ダンパー27が空気注入装置30を兼ねる。
【0028】
本実施例では、ダンパー27が空気注入装置の機能を兼ねることができ、部品点数及び配置スペースを削減することができる。実施例2の構成を採ることによって、特別な空気注入装置を設けることなく冷凍室12の内部の容積占有率を確実に検出することができる。
【0029】
[実施例3]
図5は本発明の実施例3を示す冷蔵庫の断面図である。
実施例3では圧力センサ31の代わりにダンパー27を押し込む際の抵抗を測ることによって庫内の圧力を検出する。ダンパー27の抵抗は、ダンパー27を駆動するモータのトルク、すなわち駆動電流を測定することで得られる。
【0030】
すなわち本実施例の冷蔵庫1は、圧力センサとして、圧力センサ31に代えて、ダンパー17を駆動するモータの駆動電流を測定するセンサ37を備える。
【0031】
実施例3の構成を採ることによって、圧力センサ31を設けることなく冷凍室12の内部の容積占有率を確実に検出することができる。
【0032】
本発明に係る上述した実施例によれば、冷蔵庫の室内(庫内)に空気を押し込み、その際に押し込まれる空気量を推定または制御する手段と、室内の圧力を検知する手段と、を備えることによって、空気の圧縮性を利用して容積占有率を推定することができる。これによって、収納物の配置の影響を受け難くなり正確な容積占有率の検出が可能になる。
【0033】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…冷蔵庫、11…冷蔵室、12…冷凍室、13…野菜室、21…圧縮機、22…熱交換器、23…ファン、24…送風路、25…冷気導入口、26…ダンパー、27…ダンパー、29…制御装置、30…空気注入装置、31…圧力センサ、35…通信装置、37…駆動電流センサ、40…外部機器。
図1
図2
図3
図4
図5