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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/38 20060101AFI20241205BHJP
   H01H 37/76 20060101ALI20241205BHJP
   H01H 85/11 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01H85/38
H01H37/76 F
H01H85/11
【請求項の数】 51
(21)【出願番号】P 2021133455
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2022040016
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2024-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2020143435
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-211928(JP,A)
【文献】特開2009-032489(JP,A)
【文献】特開2012-138286(JP,A)
【文献】特開2014-049272(JP,A)
【文献】国際公開第2020/204154(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に通電するヒューズエレメントと、
絶縁材料からなり、前記第1方向に延在する板状部と、前記板状部上に、前記第1方向に交差する第2方向に立設された遮蔽部と、前記遮蔽部を貫通する遮蔽部貫通孔とを有するスライダーと、
絶縁材料からなり、前記ヒューズエレメントの一部と前記スライダーとが収納される収容部を内部に有するケースと、が備えられ、
前記収容部は、前記遮蔽部が収容され、前記第2方向に移動可能な遮蔽部収容空間と、前記板状部が収容され、前記第2方向に移動可能な板状部移動空間とを有し、
前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記遮蔽部貫通孔に前記ヒューズエレメントが挿入された状態で前記スライダーと前記ヒューズエレメントとが前記ケースに収容されている、保護素子。
【請求項2】
前記ヒューズエレメントは、第1端部と第2端部と前記第1端部と前記第2端部との間に設けられた遮断部とを有し、
前記第1端部から前記第2端部に向かう前記第1方向に通電され、
前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記ヒューズエレメントの前記遮断部が前記スライダーの前記遮蔽部貫通孔内に配置されている、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記スライダーは、前記ヒューズエレメントの溶断に伴い発生する放電による上昇圧力を受けて前記収容部内を移動し、前記ヒューズエレメントの溶断面同士を遮断する、請求項1又は2のいずれかに記載の保護素子。
【請求項4】
前記ヒューズエレメントを加熱する発熱体を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項5】
前記発熱体は抵抗体であり、前記発熱体の両端に電気的に接続された給電線を備え、前記発熱体は前記ヒューズエレメントと電気的に独立し、前記給電線が前記ケースに設けた給電線孔を介して外部に引き出されている、請求項4に記載の保護素子。
【請求項6】
前記ケースは、前記板状部移動空間と前記ケースの外部とを繋ぐ外部リーク孔を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項7】
前記ケースは、複数のケース部材が接着剤により接着され一体化されたものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項8】
前記複数のケース部材の対向する少なくとも一方の接合面には、接着エリアと接着剤侵入阻止溝とを有し、
前記接着剤侵入阻止溝は、前記接着エリアと前記収容部との間に設置され、前記接着剤の前記収容部空間への侵入を防止する、請求項7に記載の保護素子。
【請求項9】
前記スライダーは、複数のスライダー部材が一体化されたものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項10】
前記ケース及び前記スライダーの少なくとも一方の材料は、耐トラッキング指標CTIが500V以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項11】
前記ケース及び前記スライダーの少なくとも一方の材料は、ナイロン系樹脂、ポリフタルアミド系樹脂、及び、テフロン(登録商標)系樹脂からなる群から選択された樹脂材料のいずれかである、請求項1~10のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項12】
前記ヒューズエレメントが、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項13】
前記低融点金属は、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、
前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる、請求項12に記載の保護素子。
【請求項14】
前記ヒューズエレメントは、前記第1方向の熱膨張及び熱収縮ストレスを緩和する屈曲部を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項15】
前記ヒューズエレメントの前記第1端部に第1の端子が接続され、前記第2端部に第2の端子が接続され、前記第1の端子及び前記第2の端子は前記ケースに固定されている、請求項2に記載の保護素子。
【請求項16】
第1方向に通電するヒューズエレメントと、
絶縁材料からなり、前記第1方向に延在する板状部と、前記板状部の前記第1方向における第1縁部と該第1縁部の反対側の縁部である第2縁部との間の位置から、前記第1方向に交差する第2方向に立設された遮蔽部と、前記遮蔽部を貫通する遮蔽部貫通孔とを有するスライダーと、
絶縁材料からなり、前記ヒューズエレメントの一部と前記スライダーとが収納される収容部を内部に有するケースと、が備えられ、
前記収容部は、前記ヒューズエレメントを収容するヒューズエレメント収容空間と、前記遮蔽部が収容され、前記第2方向に移動可能な遮蔽部収容空間と、前記板状部が収容され、前記第2方向に移動可能な板状部移動空間とを有し、
前記ヒューズエレメント収容空間と前記遮蔽部収容空間は交差し、前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記遮蔽部貫通孔に前記ヒューズエレメントが挿入された状態で前記スライダーと前記ヒューズエレメントとが前記ケースに収容されている、保護素子。
【請求項17】
前記ヒューズエレメントは、第1端部と第2端部と前記第1端部と前記第2端部との間に設けられた遮断部とを有し、
前記第1端部から前記第2端部に向かう前記第1方向に通電され、
前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記ヒューズエレメントの前記遮断部が前記スライダーの前記遮蔽部貫通孔内に配置されている、請求項16に記載の保護素子。
【請求項18】
前記遮断部の前記第1方向と直交する面の断面積が、前記遮断部以外の領域の前記第1方向と直交する面の断面積よりも狭い、請求項17に記載の保護素子。
【請求項19】
前記スライダーは、前記ヒューズエレメントの溶断に伴い発生する放電による上昇圧力を受けて前記収容部内を移動し、前記遮蔽部が前記ヒューズエレメント収容空間を遮蔽する、請求項16~18のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項20】
前記ケースは、前記ヒューズエレメント収容空間と前記板状部移動空間とを繋ぐ内部リーク孔を有する、請求項16~19のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項21】
前記ヒューズエレメントの溶断時に発生する放電による前記ヒューズエレメント収容空間内の上昇圧力が、前記内部リーク孔を介して前記スライダーをスライドさせ、前記遮蔽部が前記ヒューズエレメント収容空間と前記遮蔽部収容空間の交差部を遮蔽する、請求項20に記載の保護素子。
【請求項22】
前記ケースは、前記板状部移動空間と前記ケースの外部を繋ぐ外部リーク孔を有する、請求項16~21のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項23】
前記ヒューズエレメントを加熱する発熱体を備える、請求項16~22のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項24】
前記発熱体は、前記ヒューズエレメント収容空間の前記遮蔽部収容空間を挟んだ2ヶ所に配置され、2つの前記発熱体が並列に発熱体用ヒューズエレメントにて接続され、前記発熱体の両端に電気的に接続された給電線を備え、前記発熱体は前記ヒューズエレメントと電気的に独立し、前記給電線が前記ケースに設けた給電線孔を介して外部に引き出されている、請求項23に記載の保護素子。
【請求項25】
前記ヒューズエレメント収容空間の前記第2方向の高さが、前記ヒューズエレメントの前記第2方向の厚みの5倍以下である、請求項16~24のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項26】
前記ヒューズエレメント上に該ヒューズエレメントを加熱する前記発熱体を備え、
前記ヒューズエレメント収容空間の前記第2方向の高さが、前記ヒューズエレメントの前記第2方向の厚みと前記発熱体の前記第2方向の厚みとの合計の5倍以下である、請求項23又は24に記載の保護素子。
【請求項27】
前記遮蔽部と前記遮蔽部収容空間の内壁とが前記ヒューズエレメントの前記第1方向に0.03~0.2mmとの間隔で近接しており、前記板状部の側面と前記板状部移動空間の前記板状部の側面と対向する面とが前記第1方向に0.03~0.2mmとの間隔で近接している、請求項16~26のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項28】
前記板状部移動空間の一部に前記板状部の側面と接触して、前記スライダーのリバウンドを抑制する固定部を有する、請求項16~27のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項29】
前記ケースは、複数のケース部材が一体化されたものである、請求項16~28のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項30】
前記複数の前記ケース部材は、前記第1方向と前記第2方向と交差する第3方向でボスと固定穴の嵌合及び接着剤にて接合され、一体化されている、請求項29に記載の保護素子。
【請求項31】
前記スライダーは、複数のスライダー部材が一体化されたものである、請求項16~30のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項32】
前記複数の前記スライダー部材は、前記第1方向と前記第2方向と交差する前記第3方向で接合され、一体化されている、請求項30に記載の保護素子。
【請求項33】
前記複数の前記スライダー部材の前記遮蔽部の接合面は、前記第1方向の隙間を遮る凸部を有するか、又は、前記第1方向の隙間を遮る傾斜面を有する、請求項31又は32のいずれかに記載の保護素子。
【請求項34】
前記ヒューズエレメント収容空間の壁面に、前記第1方向と交差する方向に延びる壁面防着溝が複数本並行に配置されている、請求項16~32のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項35】
第1端部と第2端部との間に遮断部を有し、前記第1端部から前記第2端部に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメントと、
絶縁材料からなる板状部と、前記板状部の第1縁部に立設された絶縁材料からなる遮蔽部と、前記遮蔽部を貫通する遮蔽部貫通孔とを有するスライダーと、
絶縁材料からなり、前記ヒューズエレメントと前記スライダーとが収納される収容部が内部に設けられ、前記収容部内の第1壁面に開口する第1挿入孔を有するケースと、が備えられ、
前記収容部内は前記板状部によって、第1空間と第2空間とに区分けされ、
前記遮蔽部が前記第1壁面に沿って配置され、前記遮蔽部貫通孔内に前記遮断部が配置され、前記第1挿入孔内に前記第1端部が収容され、
前記遮断部の溶断時に発生するアーク放電による前記第1空間内の圧力上昇によって、前記収容部内における前記第1空間の割合が大きくなるように前記スライダーが移動して、前記第1挿入孔の開口が前記遮蔽部によって塞がれる、保護素子。
【請求項36】
前記第1空間側の前記板状部上に前記ヒューズエレメントが載置されている、請求項35に記載の保護素子。
【請求項37】
前記遮断部の前記第1方向と直交する方向の断面積が、前記遮断部以外の領域の前記第1方向と直交する面の断面積よりも狭い、請求項35又は36のいずれかに記載の保護素子。
【請求項38】
前記ケースは、複数の部材が一体化されたものである、請求項35~37のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項39】
前記第1壁面と前記第1方向に対向配置された第2壁面に開口する第2挿入孔を有し、
前記第2挿入孔内に前記第2端部が収容されている、請求項35~38のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項40】
前記遮断部を溶断する発熱体が備えられている、請求項35~39のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項41】
前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記第1空間の体積が前記第2空間の体積よりも小さい、請求項35~40のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項42】
前記第1空間内の前記ヒューズエレメントと対向配置される第3壁面に開口する凹部を有し、
前記凹部内に前記遮蔽部が収容されている、請求項35~41のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項43】
前記第1端部に第1端子が電気的に接続され、前記第2端部に第2端子が電気的に接続されている、請求項35~42のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項44】
前記板状部の前記遮蔽部と反対側の面に凸部が設けられ、
前記第2空間内の前記スライダーと対向配置される第4壁面に開口する第4挿入孔を有し、
前記収容部内における前記第1空間の割合が大きくなるように前記スライダーが移動することにより、前記第4挿入孔内に前記凸部が収容される、請求項35~43のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項45】
前記第2空間内の前記スライダーと対向配置される前記第4壁面に開口し、前記ケースを貫通するリーク孔が設けられている、請求項44に記載の保護素子。
【請求項46】
前記収容部内における前記第1空間の割合が大きくなるように前記スライダーが移動することにより、前記リーク孔が前記スライダーによって塞がれる、請求項45に記載の保護素子。
【請求項47】
前記第3壁面に、前記第1方向と交差する方向に延びる壁面防着溝が複数本並行に配置されている、請求項42に記載の保護素子。
【請求項48】
前記第1空間側の前記板状部上に、前記第1方向と交差する方向に延びるスライダー防着溝が複数本並行に配置されている、請求項35~47のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項49】
前記ヒューズエレメントが、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなる、請求項35~48のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項50】
前記低融点金属は、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、
前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる、請求項49に記載の保護素子。
【請求項51】
前記ケースは、第1ケースと、前記第1ケースと対向配置された第2ケースとが接着されることにより形成された前記収容部を有し、
前記第1ケースの前記第2ケースと接する第1接合面の一部に、前記第2ケースと接着される第1接着部位が備えられ、
前記第2ケースの前記第1ケースと接する第2接合面の一部に、前記第1ケースと接着される第2接着部位が備えられ、
前記第1接合面の前記収容部と前記第1接着部位との間と、前記第2接合面の前記収容部と前記第2接着部位との間のうちの一方または両方に、接着剤侵入阻止溝が設けられている、請求項35~50のいずれか一項に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントがある。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、例えば、リチウムイオン二次電池を使用した電池パックに用いられている。
近年、リチウムイオン二次電池は、モバイル機器だけでなく、電気自動車、蓄電池など幅広い分野で使用されている。そのため、リチウムイオン二次電池の大容量化が進められている。それに伴って、大容量のリチウムイオン電池を有し、高電圧かつ大電流の電流経路を有する電池パックに設置される保護素子が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヒューズに大きな過電流が流れて可溶体が金属蒸気化し、アーク放電が発生した際の大きい空間の圧力上昇を利用して大きい空間から小さい空間へ向かう方向に遮断部材を移動させ、前記遮断部材によって連結孔を塞ぐヒューズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-032489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたヒューズは、架橋された可溶体(ヒューズエレメント)の両端部に遮断部材が配置する構成である。特許文献1に開示されているような線状の均一な可溶体においては、可溶体の溶断時に溶断される溶断部はその中心部である。そのため、アーク放電に伴う可溶体の金属蒸気化による内圧上昇で遮断部材が連結孔を塞ぐには遮断部材が物理的に可溶体を切断する必要がある。このため、特許文献1に開示されたヒューズでは、可溶体の断面積を大きくすることができず、定格電流を大きくすることが困難であるという課題があった。
【0006】
高電圧用の保護素子において、ヒューズエレメントが溶断されると、アーク放電が生じ得る。アーク放電が発生すると、ヒューズエレメントが広範囲にわたって溶融し、蒸気化した金属が飛散する場合がある。この場合、飛散した金属によって新たな通電経路が形成されたり、飛散した金属が端子などの周囲の電子部品に付着したりするおそれがある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)する保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
【0008】
本発明の第1態様に係る保護素子は、第1方向に通電するヒューズエレメントと、絶縁材料からなり、前記第1方向に延在する板状部と、前記板状部上に、前記第1方向に交差する第2方向に立設された遮蔽部と、前記遮蔽部を貫通する遮蔽部貫通孔とを有するスライダーと、絶縁材料からなり、前記ヒューズエレメントの一部と前記スライダーとが収納される収容部を内部に有するケースと、が備えられ、前記収容部は、前記遮蔽部が収容され、前記第2方向に移動可能な遮蔽部収容空間と、前記板状部が収容され、前記第2方向に移動可能な板状部移動空間とを有し、前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記遮蔽部貫通孔に前記ヒューズエレメントが挿入された状態で前記スライダーと前記ヒューズエレメントとが前記ケースに収容されている。
【0009】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントが、第1端部と第2端部と前記第1端部と前記第2端部との間に設けられた遮断部とを有し、前記第1端部から前記第2端部に向かう前記第1方向に通電され、前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記ヒューズエレメントの前記遮断部が前記スライダーの前記遮蔽部貫通孔内に配置されていてもよい。
【0010】
上記態様に係る保護素子は、前記スライダーが、前記ヒューズエレメントの溶断に伴い発生する放電による上昇圧力を受けて前記収容部内を移動し、前記遮蔽部が前記ヒューズエレメントの溶断面同士を遮断するものでもよい。
【0011】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントを加熱する発熱体を備えてもよい。
【0012】
上記態様に係る保護素子は、前記発熱体は抵抗体であり、前記発熱体の両端に電気的に接続された給電線を備え、発熱体は前記ヒューズエレメントと電気的に独立し、前記給電線が前記ケースに設けた給電線孔を介して外部に引き出されていてもよい。
【0013】
上記態様に係る保護素子は、前記ケースが、前記板状部移動空間と前記ケースの外部とを繋ぐ外部リーク孔を有してもよい。
【0014】
上記態様に係る保護素子は、前記ケースが、複数のケース部材が一体化されたものであってもよい。
【0015】
上記態様に係る保護素子は、前記複数のケース部材の対向する少なくとも一方の接合面には、接着エリアと接着剤侵入阻止溝とを有し、前記接着剤侵入阻止溝は、前記接着エリアと前記収容部との間に設置され、前記接着剤の前記収容部空間への侵入を防止するものでもよい。
【0016】
上記態様に係る保護素子は、前記スライダーが、複数のスライダー部材が一体化されたものであってもよい。
【0017】
上記態様に係る保護素子は、前記ケース及び前記スライダーの少なくとも一方の材料は、耐トラッキング指標CTIが500V以上であってもよい。
【0018】
上記態様に係る保護素子は、前記ケース及び前記スライダーの少なくとも一方の材料は、ナイロン系樹脂、ポリフタルアミド系樹脂、及び、テフロン(登録商標)系樹脂からなる群から選択された樹脂材料のいずれかであってもよい。
【0019】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントが、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなってもよい。
【0020】
上記態様に係る保護素子は、前記低融点金属が、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなってもよい。
【0021】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントが、前記第1方向の熱膨張及び熱収縮ストレスを緩和する屈曲部を有してもよい。
【0022】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントの前記第1端部に第1の端子が接続され、前記第2端部に第2の端子が接続され、前記第1の端子及び前記第2の端子は前記ケースに固定されていてもよい。
【0023】
本発明の第2態様に係る保護素子は、第1方向に通電するヒューズエレメントと、絶縁材料からなり、前記第1方向に延在する板状部と、前記板状部の前記第1方向において第1縁部と該第1縁部の反対側の縁部である第2縁部との間の位置から、前記第1方向に交差する第2方向に立設された遮蔽部と、前記遮蔽部を貫通する遮蔽部貫通孔とを有するスライダーと、絶縁材料からなり、前記ヒューズエレメントの一部と前記スライダーとが収納される収容部を内部に有するケースと、が備えられ、前記収容部は、前記ヒューズエレメントを収容するヒューズエレメント収容空間と、前記遮蔽部が収容され、前記第2方向に移動可能な遮蔽部収容空間と、前記板状部が収容され、前記第2方向に移動可能な板状部移動空間とを有し、前記ヒューズエレメント収容空間と前記遮蔽部収容空間は交差し、前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記遮蔽部貫通孔に前記ヒューズエレメントが挿入された状態で前記スライダーと前記ヒューズエレメントとが前記ケースに収容されている。
【0024】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントが、第1端部と第2端部と前記第1端部と前記第2端部との間に設けられた遮断部とを有し、前記第1端部から前記第2端部に向かう前記第1方向に通電され、前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記ヒューズエレメントの前記遮断部が前記スライダーの前記遮蔽部貫通孔内に配置されていてもよい。
【0025】
上記態様に係る保護素子は、前記遮断部の前記第1方向と直交する面の断面積が、前記遮断部以外の領域の前記第1方向と直交する面の断面積よりも狭くてもよい。
【0026】
上記態様に係る保護素子は、前記スライダーが、前記ヒューズエレメントの溶断に伴い発生する放電による上昇圧力を受けて前記収容部内を移動し、前記遮蔽部が前記ヒューズエレメント収容空間を遮蔽するものでよい。
【0027】
上記態様に係る保護素子は、前記ケースが、前記ヒューズエレメント収容空間と前記板状部移動空間とを繋ぐ内部リーク孔を有してもよい。
【0028】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントの溶断時に発生する放電による前記ヒューズエレメント収容空間内の上昇圧力が、前記内部リーク孔を介して前記スライダーをスライドさせ、前記遮蔽部が前記ヒューズエレメント収容空間と前記遮蔽部収容空間の交差部を遮蔽するものでよい。
【0029】
上記態様に係る保護素子は、前記ケースが、前記板状部移動空間と前記ケースの外部を繋ぐ外部リーク孔を有してもよい。
【0030】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントを加熱する発熱体を備えてもよい。
【0031】
上記態様に係る保護素子は、前記発熱体が、前記ヒューズエレメント収容空間の前記遮蔽部収容空間を挟んだ2ヶ所に配置され、2つの前記発熱体が並列に発熱体用ヒューズエレメントにて接続され、前記発熱体の両端に電気的に接続された給電線を備え、発熱体は前記ヒューズエレメントと電気的に独立し、前記給電線が前記ケースに設けた給電線孔を介して外部に引き出されていてもよい。
【0032】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメント収容空間の前記第2方向の高さが、前記ヒューズエレメントの前記第2方向の厚みの5倍以下であってもよい。
【0033】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメント上に該ヒューズエレメントを加熱する前記発熱体を備え、前記ヒューズエレメント収容空間の前記第2方向の高さが、前記ヒューズエレメントの前記第2方向の厚みと前記発熱体の前記第2方向の厚みとの合計の5倍以下であってもよい。
【0034】
上記態様に係る保護素子は、前記遮蔽部と前記遮蔽部収容空間の内壁とが前記ヒューズエレメントの前記第1方向に0.03~0.2mmとの間隔で近接しており、前記板状部の側面と前記板状部移動空間の前記板状部の側面と対向する面とが前記第1方向に0.03~0.2mmとの間隔で近接していてもよい。
【0035】
上記態様に係る保護素子は、前記板状部移動空間の一部に前記板状部の側面と接触して、前記スライダーのリバウンドを抑制する固定部を有してもよい。
【0036】
上記態様に係る保護素子は、前記ケースが、複数のケース部材が一体化されたものであってもよい。
【0037】
上記態様に係る保護素子は、前記複数のケース部材が、前記第1方向と前記第2方向と交差する第3方向でボスと固定穴の嵌合及び接着剤にて接合され、一体化されていてもよい。
【0038】
上記態様に係る保護素子は、前記スライダーが、複数のスライダー部材が一体化されたものであってもよい。
【0039】
上記態様に係る保護素子は、前記複数の前記スライダー部材が、前記第1方向と前記第2方向と交差する前記第3方向で接合され、一体化されていてもよい。
【0040】
上記態様に係る保護素子は、前記複数の前記スライダー部材の前記遮蔽部の接合面が、前記第1方向の隙間を遮る凸部を有するか、又は、前記第1方向の隙間を遮る傾斜面を有してもよい。
【0041】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメント収容空間の壁面に、前記第1方向と交差する方向に延びる壁面防着溝が複数本並行に配置されていてもよい。
【0042】
本発明の第3態様に係る保護素子は、第1端部と第2端部との間に遮断部を有し、前記第1端部から前記第2端部に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメントと、絶縁材料からなる板状部と、前記板状部の第1縁部に立設された絶縁材料からなる遮蔽部と、前記遮蔽部を貫通する遮蔽部貫通孔とを有するスライダーと、絶縁材料からなり、前記ヒューズエレメントの一部と前記スライダーとが収納される収容部が内部に設けられ、前記収容部内の第1壁面に開口する第1挿入孔を有するケースと、が備えられ、前記収容部内は前記板状部によって、第1空間と第2空間とに区分けされ、前記遮蔽部が前記第1壁面に沿って配置され、前記遮蔽部貫通孔内に前記遮断部が配置され、前記第1挿入孔内に前記第1端部が収容され、前記遮断部の溶断時に発生するアーク放電による前記第1空間内の圧力上昇によって、前記収容部内における前記第1空間の割合が大きくなるように前記スライダーが移動して、前記第1挿入孔の開口が前記遮蔽部によって塞がれる。
【0043】
上記態様に係る保護素子は、前記第1空間側の前記板状部上に前記ヒューズエレメントが載置されていてもよい。
【0044】
上記態様に係る保護素子は、前記遮断部の前記第1方向と直交する方向の断面積が、前記遮断部以外の領域の前記第1方向と直交する面の断面積よりも狭くてもよい。
【0045】
上記態様に係る保護素子は、前記ケースは、複数の部材が一体化されたものであってもよい。
【0046】
上記態様に係る保護素子は、前記第1壁面と前記第1方向に対向配置された第2壁面に開口する第2挿入孔を有し、前記第2挿入孔内に前記第2端部が収容されていてもよい。
【0047】
上記態様に係る保護素子は、前記遮断部を溶断する発熱体が備えられていてもよい。
【0048】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントの溶断前は、前記第1空間の体積が前記第2空間の体積よりも小さくてもよい。
【0049】
上記態様に係る保護素子は、前記第1空間内の前記ヒューズエレメントと対向配置される第3壁面に開口する凹部を有し、前記凹部内に前記遮蔽部が収容されていてもよい。
【0050】
上記態様に係る保護素子は、前記第1端部に第1端子が電気的に接続され、前記第2端部に第2端子が電気的に接続されていてもよい。
【0051】
上記態様に係る保護素子は、前記板状部の前記遮蔽部と反対側の面に凸部が設けられ、前記第2空間内の前記スライダーと対向配置される第4壁面に開口する第4挿入孔を有し、前記収容部内における前記第1空間の割合が大きくなるように前記スライダーが移動することにより、前記第4挿入孔内に前記凸部が収容されていてもよい。
【0052】
上記態様に係る保護素子は、前記第2空間内の前記スライダーと対向配置される前記第4壁面に開口し、前記ケースを貫通するリーク孔が設けられていてもよい。
【0053】
上記態様に係る保護素子は、前記収容部内における前記第1空間の割合が大きくなるように前記スライダーが移動することにより、前記リーク孔が前記スライダーによって塞がれてもよい。
【0054】
上記態様に係る保護素子は、前記第3壁面に、前記第1方向と交差する方向に延びる壁面防着溝が複数本並行に配置されていてもよい。
【0055】
上記態様に係る保護素子は、前記第1空間側の前記板状部上に、前記第1方向と交差する方向に延びるスライダー防着溝が複数本並行に配置されていてもよい。
【0056】
上記態様に係る保護素子は、前記ヒューズエレメントが、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなってもよい。
【0057】
上記態様に係る保護素子は、前記低融点金属は、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなってもよい。
【0058】
上記態様に係る保護素子は、前記ケースは、第1ケースと、前記第1ケースと対向配置された第2ケースとが接着されることにより形成された前記収容部を有し、前記第1ケースの前記第2ケースと接する第1接合面の一部に、前記第2ケースと接着される第1接着部位が備えられ、前記第2ケースの前記第1ケースと接する第2接合面の一部に、前記第1ケースと接着される第2接着部位が備えられ、前記第1接合面の前記収容部と前記第1接着部位との間と、前記第2接合面の前記収容部と前記第2接着部位との間のうちの一方または両方に、接着剤侵入阻止溝が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)する保護素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】第1実施形態に係る保護素子1000の全体構造を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る保護素子1000を図1に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
図3】第1実施形態の保護素子1000の一部を説明するための拡大図であり、(a)はヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示した斜視図であり、(b)はヒューズエレメントを示す平面図である。
図4】第1実施形態の保護素子1000の一部を説明するための拡大図であり、(a)はスライダーと、ヒューズエレメントと、第1端子の一部と、第2端子の一部とを示す断面図であり、(b)は(a)の斜視図である。
図5】スライダーの他の構成の例を示す断面図であり、(a)は遮蔽部が板状部の一方の端に寄った位置に配置する構成の例であり、(b)は遮蔽部が板状部の一方の端とその反対側の端との中間位置に対していずれか一方の端に寄った位置に配置する構成の例である。
図6】ヒューズエレメントがスライダーの板状部に支持される構成の場合であり、(a)はスライダーと、ヒューズエレメントと、第1端子の一部と、第2端子の一部とを示す断面図であり、(b)は(a)の斜視図である。
図7】第2実施形態に係る保護素子2000の全体構造を示した分解斜視図であり、第2ケースはその内部が見える状態にして示す透視分解斜視図である。
図8】第2実施形態に係る保護素子2000の第2ケースを外した状態で示す側面図である。
図9】第2実施形態に係る保護素子2000の第1ケースの斜視図である。
図10】第2実施形態に係る保護素子2000の一部を説明するための拡大図であり、(a)はヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示した斜視図であり、(b)はヒューズエレメントを示す平面図である。
図11】他のヒューズエレメントの例を示す斜視図である。
図12】第2実施形態の保護素子2000が備えるスライダーの構造を説明するための図面であり、(a)は、ヒューズエレメントが挿入された状態のスライダーを示す斜視図であり、(b)は、スライダーを示す斜視図であり、第2スライダー部材は第1スライダー部材の隠れた構造を明示するために透明に描いた斜視図である。
図13】第2実施形態の保護素子2000の動作を説明するための図であり、(a)は、遮断部の溶断面同士の間にスパークが発生した状態を模式的に示す断面図であり、(b)は、アーク放電が発生してヒューズエレメント収容空間内の圧力上昇によって、スライダーが下方に移動した状態を示す断面図である。
図14】第3実施形態に係る保護素子3000の全体構造を示した分解斜視図であり、第2ケースはその内部が見える状態にして示す透視分解斜視図である。
図15】第3実施形態に係る保護素子3000が備える発熱体の配置構成の一例を示すものであり、(a)は2つの発熱体と、各発熱体への給電線と、ヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示した斜視図であり、(b)はヒューズエレメントを示す斜視図であり、(c)は2つの発熱体、各発熱体への給電線、及び、ヒューズエレメントのZ方向から見た位置関係を示すために、ヒューズエレメント側から見た平面図である。
図16】第3実施形態に係る保護素子3000が備える発熱体の構造の一例を示すものであり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
図17】第4実施形態に係る保護素子100の全体構造を示した斜視図である。
図18】第4実施形態に係る保護素子100の分解斜視図である。
図19】第4実施形態に係る保護素子100を図17に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
図20】第4実施形態の保護素子100の一部を説明するための拡大図であり、(a)はヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示した斜視図であり、(b)はヒューズエレメントを示した平面図である。
図21】第4実施形態の保護素子100に備えられたスライダーの構造を説明するための図面であり、(a)は第1空間側から見た平面図であり、(b)~(e)は斜視図である。
図22】第4実施形態の保護素子100に備えられた第2ケースの構造を説明するための図面であり、(a)は第1空間側から見た平面図であり、(b)および(c)は斜視図である。
図23】第4実施形態の保護素子100に備えられた第1ケースの構造を説明するための図面であり、(a)は第2空間側から見た平面図であり、(b)および(c)は斜視図である。
図24】(a)および(b)は、第4実施形態の保護素子100の製造方法を説明するための工程図である。
図25】第4実施形態の保護素子100の動作を説明するための図であり、図17に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
図26】第4実施形態の保護素子100の動作を説明するための図であり、図17に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
図27】第4実施形態の保護素子100の動作を説明するための図であり、図17に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
図28】第5実施形態の保護素子200を説明するための断面図であり、第4実施形態に係る保護素子100を図17に示すA-A´線に沿って切断した位置に対応する断面図である。
図29】第5実施形態の保護素子200の一部を説明するための拡大図であり、(a)はスライダーを示した平面図であり、(b)は第1ケースを示した平面図であり、図(c)はスライダー防着溝を示した斜視図である。
図30】第6実施形態の保護素子300を説明するための断面図であり、第4実施形態に係る保護素子100を図17に示すA-A´線に沿って切断した位置に対応する断面図である。
図31】第7実施形態の保護素子400を説明するための断面図であり、第4実施形態に係る保護素子100を図17に示すA-A´線に沿って切断した位置に対応する断面図である。
図32】第7実施形態の保護素子400の有するスライダーと発熱部材とを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0062】
[第1実施形態]
(保護素子)
図1は、第1実施形態に係る保護素子1000の全体構造を示した斜視図である。図2は、第1実施形態に係る保護素子1000を図1に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
以下、図面において、Xで示す方向はヒューズエレメントの通電方向(第1方向)である。Yで示す方向はX方向(第1方向)と直交する方向であり、Zで示す方向は、X方向およびY方向に直交する方向である。
【0063】
本実施形態の保護素子1000は、図1及び図2に示すように、X方向(第1方向)に通電するヒューズエレメント102と、絶縁材料からなり、X方向に延在する板状部130と、板状部130上に、X方向に直交するZ方向(第2方向)に立設された遮蔽部131と、遮蔽部131をX方向に貫通する遮蔽部貫通孔132とを有するスライダー103と、絶縁材料からなり、ヒューズエレメント102の一部とスライダー103とが収容される収容部160を内部に有するケース106と、が備えられ、収容部160は、遮蔽部131が収容され、Z方向に移動可能な遮蔽部収容空間160aと、板状部130が収容され、Z方向に移動可能な板状部移動空間160bとを有し、ヒューズエレメント102の溶断前は、遮蔽部貫通孔132にヒューズエレメント102が挿入された状態でスライダー103とヒューズエレメント102とがケース106に収容されている。
【0064】
(ヒューズエレメント)
図3は、第1実施形態の保護素子1000の一部を説明するための拡大図であり、図3(a)はヒューズエレメントと、第1端子61と、第2端子62とを示した斜視図であり、図3(b)はヒューズエレメントを示した平面図である。図3(a)および図3(b)に示すように、ヒューズエレメント102は、第1端部121と、第2端部122と、第1端部121と第2端部122との間に設けられた遮断部123とを有している。ヒューズエレメント102は、第1端部121から第2端部122に向かう方向であるX方向(第1方向)に通電される。
【0065】
図2図3(a)に示すように、第1端部121は、第1端子61と電気的に接続されている。第2端部122は、第2端子62と電気的に接続されている。第1端子61は、外部端子孔61aを備えている。また、第2端子62は、外部端子孔62aを備えている。外部端子孔61a、外部端子孔62aのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。また、外部端子孔61a、外部端子孔62aは、負荷回路の内部の通電経路に接続されても良い。図3(a)に示すように、ヒューズエレメント102と接続される側の端部に、ヒューズエレメント102に向かって両側に拡幅された鍔部(図3(a)において符号61c、62cで示す。)を有していてもよく、特に限定されない。第1端子61及び第2端子62の詳細は後述する。
【0066】
ヒューズエレメント102と遮蔽部貫通孔132との配置関係としては、図2に示す保護素子1000のように、ヒューズエレメント102を構成する第1端部121、第2端部122及び遮断部123のうち、遮断部123がスライダー103の遮蔽部131が有する遮蔽部貫通孔132内に配置された構成であることが好ましい。
この構成の場合、特許文献1に開示されたヒューズ(保護素子)と異なり、ヒューズエレメント102は過電流が流れた時に遮断部123がヒートスポットとなって、遮断部123が優先的に昇温して軟化され、確実に溶断される。そのため、ヒューズエレメント102の溶断時にアーク放電に伴う放出ガスによる圧力上昇によりスライダーが移動する際に、ヒューズエレメント102は既に溶断されているため、スライダー103がヒューズエレメント102を物理的に切断する必要がなく、迅速な移動が可能である。遮断された遮断部123の遮断面同士がスライダー103の遮蔽部131によって遮蔽されて絶縁され、ヒューズエレメント102を介した通電経路が、物理的に確実に遮断される。これによって、アーク放電が迅速に消滅(消弧)する。
【0067】
ヒューズエレメント102の厚みは、図2および図3に示すように、均一であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。厚みが部分的に異なっているヒューズエレメントとしては、例えば、遮断部123から第1端部121および第2端部122に向かって徐々に厚みが厚くなっているものや第1端部121および第2端部122に金属板を積層しているものなどが挙げられる。このようなヒューズエレメント102は、過電流が流れた時に遮断部123がヒートスポットとなって、遮断部123が優先的に昇温して、より確実に溶断される。
【0068】
図3(b)に示すように、ヒューズエレメント102の遮断部123、第1端部121および第2端部122は、平面視略長方形の形状を有している。図4(b)に示すように、第1端部121におけるY方向の幅121Dと、第2端部122におけるY方向の幅122Dとは、略同じとされている。遮断部123におけるY方向の幅123Dは、第1端部121におけるY方向の幅121Dおよび第2端部122におけるY方向の幅122Dよりも細くなっている。このことにより、遮断部123の幅123Dは、遮断部123以外の幅よりも狭くなっている。すなわち、遮断部123のY方向の断面積が、遮断部123以外の領域の断面積よりも狭くなっている。
【0069】
図2および図3(a)に示すように、ヒューズエレメント102の第1端部121は、第1端子61と平面視で重ねて配置され、第2端部122は、第2端子62と平面視で重ねて配置されている。
【0070】
図3(b)に示すように、遮断部123と第1端部121との間には、平面視略台形の第1連結部125が配置されている。平面視略台形の第1連結部125における平行な辺の長い方が、第1端部121と結合されている。また、遮断部123と第2端部122との間には、平面視略台形の第2連結部126が配置されている。平面視略台形の第2連結部126における平行な辺の長い方が、第2端部122と結合されている。第1連結部125と第2連結部126とは、遮断部123に対して対称となっている。このことにより、ヒューズエレメント102におけるY方向の幅は、遮断部123から第1端部121および第2端部122に向かって徐々に広くなっている。その結果、ヒューズエレメント102に過電流が流れた時に、遮断部123がヒートスポットとなって、遮断部123が優先的に昇温され、容易に溶断される。
【0071】
図3(b)に示すように、ヒューズエレメント102の遮断部123は、第1端部121および第2端部122よりもY方向の幅(図3(b)において符号123Dで示す)が狭い。それによって、遮断部123は、遮断部123と第1端部121との間の領域、および遮断部123と第2端部122との間の領域よりも溶断されやすくなっている。
本実施形態では、ヒューズエレメント102として、図3(b)に示すように、遮断部123が第1端部121および第2端部122よりもY方向の幅が狭いものを例に挙げて説明したが、ヒューズエレメントは、遮断部のY方向の幅が第1端部および第2端部よりも狭いものに限定されない。
【0072】
図3(b)に示すように、ヒューズエレメント102全体の平面形状は、略矩形であり、一般的なヒューズエレメントと比較して、Y方向の幅が相対的に広く、X方向の長さが相対的に短い。本実施形態の保護素子1000では、遮断されたヒューズエレメント102の遮断面同士が、スライダー103の遮蔽部131によって絶縁される。その結果、ヒューズエレメント102の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。このため、アーク放電を抑制するために、ヒューズエレメント102におけるY方向の幅を狭くする必要がなく、ヒューズエレメント102におけるY方向の幅を広く、X方向の長さを短くできる。このようなヒューズエレメント102を有する保護素子1000は、保護素子1000の設置される電流経路における抵抗値上昇を抑制できるため、大電流の電流経路にも好ましく設置できる。
【0073】
図3に示すヒューズエレメント102は一例であって他の構成のものを用いることができる。例えば、ヒューズエレメント102に代えて、図10に示すヒューズエレメント202や図11に示すヒューズエレメント202Aを用いてもよい。
【0074】
ヒューズエレメント102の材料としては、後述するヒューズエレメント2と同様のものを用いることができる。
【0075】
(スライダー)
図4は、第1実施形態の保護素子1000に備えられたスライダー103の構造を説明するための図面であり、図4(a)は、図1に示すA-A´線に沿って切断した断面図であり、図4(b)は、斜視図である。
スライダー103は、図4に示すように、X方向に沿う断面形状が略逆T型形状を有する。
スライダー103は、図4に示すように、X方向に延在する板状部130と、板状部130上に、Z方向に立設された遮蔽部131とを備えている。遮蔽部131には、遮蔽部131をX方向に貫通する遮蔽部貫通孔132が形成されている。遮蔽部貫通孔132には、ヒューズエレメント102が配置されており、保護素子1000ではヒューズエレメント102の遮断部123が遮蔽部貫通孔132内に配置されている。
【0076】
図4(a)において矢印で示すように、ヒューズエレメント102の溶断時に、スライダー103を構成する板状部130がアーク放電に伴う放出ガスによる圧力を受けると、スライダー103はZ方向に移動する。板状部130は圧力を受けてスライダー103の移動作用をもたらすという意味で、受圧部とも言える部位である。
【0077】
スライダー103は、遮蔽部131がX方向において板状部130の中央部に配置する構成である。すなわち、遮蔽部131が、X方向において板状部130の一方の端である第1縁部130aとその反対側の端である第2縁部130bとの中間位置に配置する構成である。図5(a)に示すように、スライダー103は、遮蔽部131が板状部130の一方の端に寄った位置に配置する構成としたり、図5(b)に示すように、遮蔽部131が板状部130の一方の端である第1縁部130aとその反対側の端である第2縁部130bとの中間位置に対して、いずれか一方の端側に寄った構成としてもよい。また、遮蔽部131を板状部130の両方の端(第1縁部130aと第2縁部130b)に設ける構成としてもよい。
【0078】
保護素子1000においては、遮蔽部貫通孔132は遮蔽部131の下端131bから上端131a側に離れた位置に配置している。そのため、ヒューズエレメント102は板状部130の上面130sに支持されていない。
これに対して、図6に示すスライダー103Aのように、遮蔽部貫通孔132Aが、遮蔽部131Aの下端に配置され、ヒューズエレメント102が板状部130Aの上面130Asに支持される構成としてもよい。
【0079】
遮蔽部貫通孔132の幅(Y方向の長さ)は、ヒューズエレメント102のY方向の最大長さ(図3(b)においては符号121D、122Dで示す長さ)よりも0.5~2mm長い寸法であることが好ましく、0.5~1mm長い寸法であることがより好ましい。遮蔽部貫通孔132の幅が、ヒューズエレメント102のY方向の最大長さよりも0.5mm以上長いと、保護素子1000を組み立てる際に、ヒューズエレメント102を遮蔽部貫通孔132に容易に貫通させることができ、生産性が良好となる。遮蔽部貫通孔132の幅が、ヒューズエレメント102のY方向の最大長さよりも2mm長い寸法以下であると、保護素子1000の小型化に支障を来すことがなく、好ましい。
【0080】
遮蔽部貫通孔132の下面から上面までの高さ(Z方向の長さ)は、ヒューズエレメント102の最大厚みよりも0.03~0.2mm長い寸法であることが好ましく、0.05~0.1mm長い寸法であることがより好ましい。遮蔽部貫通孔132の高さがヒューズエレメント102の最大厚みより0.03mm以上長い寸法であると、保護素子1000を組み立てる際に、ヒューズエレメント102を遮蔽部貫通孔132に容易に貫通させることができ、生産性が良好となる。
【0081】
スライダー103は、複数のスライダー部材が一体化されてなる構成としてもよい。例えば、2つのスライダー部材を接合して一体化されたものであってもよい。また、別体の板状部と遮蔽部とを接合して一体化されたものであってもよい。
【0082】
板状部130及び遮蔽部131のZ方向の厚みは、第4実施形態の板状部30、遮蔽部31と同様のものとすることができる。
【0083】
スライダー103の材料としては、後述するスライダー3の材料と同様のものを用いることができる。
スライダー103の材料としては、耐トラッキング指標CTIが500V以上であるものを用いることが好ましい。
スライダー103の材料としては、ナイロン系樹脂、ポリフタルアミド(PPA)系樹脂、及び、テフロン(登録商標)系樹脂からなる群から選択された樹脂材料のいずれかを用いることが好ましい。
【0084】
(ケース)
ケース106は、図1及び図2に示すように、略直方体であり、第1ケース106aと、第1ケース106aと対向配置された第2ケース106bの2つの部材が一体化されたものである。ケース106は、ヒューズエレメント及びスライダーを第1ケース106a及び第2ケース106bによって上下から挟み込む構成であるが、この構成に限定されない他。例えば、後述する第2実施形態のように左右から挟み込む構成であってもよい。
【0085】
本実施形態の保護素子1000におけるケース106は、図2に示すように、遮蔽部131が収容され、Z方向に移動可能な遮蔽部収容空間160aと、スライダー103が収容され、Z方向に移動可能な板状部移動空間160bと、を内部の収容部160に有する。
遮蔽部収容空間160a及び板状部移動空間160bは、第1ケース106aと第2ケース106bとが接着されることにより形成されていてもよい。
【0086】
遮蔽部収容空間160aの平面形状(Z方向から平面視した形状)は、スライダー103の遮蔽部131の平面形状に対応する形状とされている。具体的には、図2に示すように、遮蔽部収容空間160aは、スライダー103の遮蔽部131が遮蔽部収容空間160aの内壁面に近接もしくは接触しつつ遮蔽部収容空間160a内に嵌る形状であることが好ましい。遮蔽部収容空間160aのX方向内壁面間距離と、スライダー103の遮蔽部131のX方向厚みとの差は、例えば、0.03~0.2mmとすることができ、0.05~0.1mmとすることが好ましい。
【0087】
遮蔽部収容空間160aのX方向内壁面間距離と、スライダー103の遮蔽部131のX方向厚みとの差が0.03mm以上であると、遮蔽部収容空間160a内のスライダー103の遮蔽部131の移動がスムーズとなり、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。これは、上記差が0.03mm以上であると、遮蔽部収容空間160a内にスライダー103の遮蔽部131が引掛りにくいためである。したがって、上記離間距離が0.03mm以上であると、スライダー103が移動する前に、スライダー103から遮蔽部131が分離されたり、遮蔽部収容空間160aが破壊されたりすることがない。
【0088】
また、上記離間距離が0.2mm以下であると、遮蔽部収容空間160aが、ヒューズエレメント102の溶断時に所定の位置にスライダー103を移動させるガイドとして機能する。したがって、ヒューズエレメント102の溶断時に移動するスライダー103の位置ずれが防止され、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。
【0089】
板状部移動空間160bの平面形状(Z方向から平面視した形状)は、スライダー103の板状部130の形状に対応する形状とされている。具体的には、板状部移動空間160bの平面形状は、スライダー103の板状部130が、板状部移動空間160bの内壁面に近接もしくは接触しつつ板状部移動空間160b内に嵌る形状となっている。
【0090】
板状部移動空間160bのX方向及びY方向の内壁面間隔と、スライダー103の板状部130のX方向及びY方向の長さとの各々の方向の差は、例えば、0.03~0.2mmとすることができ、0.05~0.1mmとすることが好ましい。板状部移動空間160bのX方向及びY方向の内壁面間隔と、スライダー103の板状部130のX方向及びY方向の長さとの各々の方向の差が0.03~0.2mmであると、ヒューズエレメント102の遮断部123の溶断時に発生するアーク放電による収容部160内の板状部130の遮蔽部131側の空間の圧力上昇によって、スライダー103がスムーズに移動し、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。
【0091】
ケース106は、板状部移動空間160bとケース106の外部とを繋ぐ外部リーク孔を有してもよい(図8の外部リーク孔271、図22のリーク孔67a、67b参照)。
【0092】
第1ケース106a及び第2ケース106bの対向する一方の接合面に、接着エリアと接着剤侵入阻止溝(図8の接着剤侵入阻止溝267、図18図22の接着剤侵入阻止溝67c、67d参照)とを有し、接着剤侵入阻止溝は接着エリアと収容部との間に設けられ、接着剤の収容部への侵入を防止する。
【0093】
ケース106の材料としては、後述するケース6の材料と同様のものを用いることができる。
ケース106の材料としては、耐トラッキング指標CTIが500V以上であるものを用いることが好ましい。
ケース106の材料としては、ナイロン系樹脂、ポリフタルアミド(PPA)系樹脂、及び、テフロン(登録商標)系樹脂からなる群から選択された樹脂材料のいずれかを用いることが好ましい。
【0094】
(発熱体)
第1実施形態に係る保護素子1000は、ヒューズエレメントを加熱する発熱体を備えてもよい。
第1実施形態に係る保護素子1000は、発熱体に電気的に接続された給電線を備え、給電線がケースに設けた給電線孔を介して外部に引き出されたものとしてもよい。
発熱体は給電線を介して通電されることにより発熱する導電性材料からなる抵抗体であることが好ましい。発熱体の材料としては、例えば、ニクロム、W、Mo、Ruなどの金属を含む材料が挙げられる。
【0095】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る保護素子2000の全体構造を示した分解斜視図である。第2ケース206bはその内部が見える状態にして示す透視斜視図である。図8は、第2実施形態に係る保護素子2000の第2ケース206bを外した状態で示す側面図である。図9は、第1ケース206aの斜視図である。
【0096】
本実施形態の保護素子2000は、図7図9に示すように、X方向(第1方向)に通電するヒューズエレメント202と、絶縁材料からなり、X方向に延在する板状部230と、板状部230の、第1縁部230aと該第1縁部230aの反対側の縁部である第2縁部230bとの間から、X方向に直交するZ方向(第2方向)に立設された遮蔽部231と、遮蔽部231を貫通する遮蔽部貫通孔232とを有するスライダー203と、絶縁材料からなり、ヒューズエレメント202の一部とスライダー203とが収納される収容部260を内部に有するケース206と、が備えられ、収容部260は、ヒューズエレメント202を収容するヒューズエレメント収容空間261と、遮蔽部231が収容され、Z方向に移動可能な遮蔽部収容空間260aと、板状部230が収容され、Z方向に移動可能な板状部移動空間260bとを有し、ヒューズエレメント収容空間261と遮蔽部収容空間260aは交差し、ヒューズエレメント202の溶断前は、遮蔽部貫通孔232にヒューズエレメント202が挿入された状態でスライダー203とヒューズエレメント202とがケース206に収容されている。
【0097】
(ヒューズエレメント)
図10は、第2実施形態の保護素子2000の一部を説明するための拡大図であり、図10(a)はヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示す斜視図であり、図10(b)はヒューズエレメントを示す平面図である。図10(a)および図10(b)に示すように、ヒューズエレメント202は、第1端部221と、第2端部222と、第1端部221と第2端部222との間に設けられた遮断部223とを有している。ヒューズエレメント202は、第1端部221から第2端部222に向かう方向であるX方向(第1方向)に通電される。
【0098】
図10(a)に示すように、第1端部221は、第1端子61と電気的に接続されている。第2端部222は、第2端子62と電気的に接続されている。第1端子61は、外部端子孔61aを備えている。また、第2端子62は、外部端子孔62aを備えている。外部端子孔61a、外部端子孔62aのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。また、外部端子孔61a、外部端子孔62aは、負荷回路の内部の通電経路に接続されても良い。図10(a)に示すように、ヒューズエレメント2と接続される側の端部に、ヒューズエレメント202に向かって両側に拡幅された鍔部(図10(a)において符号61c、62cで示す。)を有していてもよく、特に限定されない。第1端子61及び第2端子62の詳細は後述する。
【0099】
ヒューズエレメント202と遮蔽部貫通孔232との配置関係としては、図8及び図9に示す保護素子2000のように、ヒューズエレメント202を構成する第1端部221、第2端部222及び遮断部223のうち、遮断部223がスライダー203の遮蔽部231が有する遮蔽部貫通孔232内に配置された構成であることが好ましい。
この構成の場合、特許文献1に開示されたヒューズと異なり、ヒューズエレメント202は過電流が流れた時に遮断部223がヒートスポットとなって、遮断部223が優先的に昇温して、確実に溶断される。そのため、ヒューズエレメント202の溶断時にアーク放電に伴う放出ガスによる圧力上昇によりスライダーが移動する際に、ヒューズエレメント202は既に溶断されているため、スライダー203がヒューズエレメント202を物理的に切断する必要がなく、迅速な移動が可能である。遮断された遮断部223の溶断面同士がスライダー203の遮蔽部231によって絶縁され、ヒューズエレメント202を介した通電経路が、物理的に確実に遮断される。よって、アーク放電が迅速に消滅(消弧)する。
【0100】
ヒューズエレメント202の厚みは、図8及び図10に示すように、均一であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。厚みが部分的に異なっているヒューズエレメントとしては、例えば、遮断部223から第1端部221および第2端部222に向かって徐々に厚みが厚くなっているものや第1端部221および第2端部222に金属板を積層しているものなどが挙げられる。このようなヒューズエレメント202は、過電流が流れた時に遮断部223がヒートスポットとなって、遮断部223が優先的に昇温して、より確実に溶断される。
【0101】
図10(b)に示すように、ヒューズエレメント202の遮断部223、第1端部221および第2端部222は、平面視略長方形の形状を有している。図10(b)に示すように、第1端部221におけるY方向の幅221Dと、第2端部222におけるY方向の幅222Dとは、略同じとされている。遮断部223におけるY方向の幅223Dは、第1端部221におけるY方向の幅221Dおよび第2端部222におけるY方向の幅222Dよりも細くなっている。このことにより、遮断部223の幅223Dは、遮断部223以外の幅よりも狭くなっている。すなわち、遮断部223のY方向の断面積が、遮断部223以外の領域の断面積よりも狭くなっている。
【0102】
図7図8および図10(a)に示すように、ヒューズエレメント202の第1端部221は、第1端子61と平面視で重ねて配置され、第2端部222は、第2端子62と平面視で重ねて配置されている。
【0103】
図10(b)に示すように、ヒューズエレメント202の遮断部223は、第1端部221および第2端部222よりもY方向の幅(図10(b)において符号223Dで示す)が狭い。それによって、遮断部223は、遮断部223と第1端部221との間の領域、および遮断部223と第2端部222との間の領域よりも溶断されやすくなっている。
本実施形態では、ヒューズエレメント202として、図10(b)に示すように、遮断部223が第1端部221および第2端部222よりもY方向の幅が狭いものを例に挙げて説明したが、ヒューズエレメントは、遮断部のY方向の幅が第1端部および第2端部よりも狭いものに限定されない。本実施形態において、ヒューズエレメント202に代えて、図3で示したヒューズエレメント102を用いてもよい。
【0104】
図10(b)に示すように、ヒューズエレメント202全体の平面形状は、略矩形であり、一般的なヒューズエレメントと比較して、Y方向の幅が相対的に広く、X方向の長さが相対的に短い。本実施形態の保護素子2000では、溶断されたヒューズエレメント202の溶断面同士が、スライダー203の遮蔽部231によって絶縁される。その結果、ヒューズエレメント202の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。このため、アーク放電を抑制するために、ヒューズエレメント202におけるY方向の幅を狭くする必要がなく、ヒューズエレメント202におけるY方向の幅を広く、X方向の長さを短くできる。このようなヒューズエレメント202を有する保護素子2000は、保護素子2000の設置される電流経路における抵抗値上昇を抑制できるため、大電流の電流経路にも好ましく設置できる。
【0105】
また、図10(b)に示したヒューズエレメント202に代えて、例えば、Y方向の断面積が均一な線状または帯状のヒューズエレメントを設けることも可能である。
【0106】
図11に他のヒューズエレメントの例を示す。
図11に示すヒューズエレメント202Aは、遮断部223を挟む両側に、X方向の熱膨張及び熱収縮ストレスを緩和する屈曲部202Aa、202Abをそれぞれ備える。
【0107】
ヒューズエレメント202の材料として、上述のヒューズエレメント102と同様のものを用いることができる。
【0108】
(スライダー)
図12は、第2実施形態の保護素子2000に備えられたスライダー203の構造を説明するための図面であり、図12(a)は、ヒューズエレメント202が挿入された状態のスライダー203を示す斜視図であり、図12(b)は、スライダー203を示す斜視図であり、スライダー203を構成する第1スライダー部材203Aと第2スライダー部材203Bのうち、第2スライダー部材203Bは第1スライダー部材203Aの隠れた構造を明示するために透明に描いた斜視図である。
スライダー203は、図12に示すように、X方向に沿う断面形状が略逆T型形状を有する。
スライダー203は、図12に示すように、X方向(第1方向)に延在する板状部230と、板状部230の、第1縁部230aと該第1縁部230aの反対側の縁部である第2縁部230bとの間から、X方向(第1方向)に直交するZ方向(第2方向)に立設された遮蔽部231とを備えている。遮蔽部231には、遮蔽部231を貫通する遮蔽部貫通孔232が形成されている。遮蔽部貫通孔232には、ヒューズエレメント202が配置されており、保護素子2000ではヒューズエレメント202の遮断部223が遮蔽部貫通孔232内に配置されている。
【0109】
ヒューズエレメント202の溶断時に、スライダー203を構成する板状部230がアーク放電に伴う放出ガスによる圧力を受けると、スライダー203はZ方向に移動する。
【0110】
保護素子2000においては、遮蔽部231は、X方向において板状部230の中央部に配置する構成である。すなわち、X方向において板状部230の一方の端である第1縁部230aとその反対側の端である第2縁部230bとの中間位置に配置する構成である。板状部230の一方の端に寄った位置に配置する構成としたり、板状部230の一方の端である第1縁部230aとその反対側の端である第2縁部230bとの中間位置に対して、いずれか一方の端側に寄った構成とすることもできる。
【0111】
保護素子2000においては、遮蔽部貫通孔232は遮蔽部231の下端231bから上端231a側に離れた位置に配置している。そのため、ヒューズエレメント202は、板状部230の上面230sに支持されていないが、ヒューズエレメント収容空間261に収容され、支持されている。
【0112】
図12に示すスライダー203は、第1スライダー部材203Aと第2スライダー部材203Bとが一体化されてなる構成である。一体化する前に遮蔽部貫通孔232にヒューズエレメント202をセッティングする手順にすれば、遮蔽部貫通孔232の幅(Y方向の長さ)は、ヒューズエレメント202のY方向の最大長さ221D、222D(図10(b)参照)よりも短くてもよいが、ヒューズエレメント202の遮断部223の幅223Dよりは長い寸法であることを要する。例えば、遮蔽部貫通孔232の幅は、遮断部223の幅223Dよりも0.5~2mm長い寸法であることが好ましく、0.5~1mm長い寸法であることがより好ましい。
第1スライダー部材203Aと第2スライダー部材203Bとを一体化した後に遮蔽部貫通孔232にヒューズエレメント202をセッティングする手順の場合は、遮蔽部貫通孔232の幅は、ヒューズエレメント202のY方向の最大長さ221D、222Dよりも0.5~2mm長い寸法であることが好ましく、0.5~1mm長い寸法であることがより好ましい。遮蔽部貫通孔232の幅が、ヒューズエレメント202のY方向の最大長さよりも0.5mm以上長いと、保護素子2000を組み立てる際に、ヒューズエレメント202を遮蔽部貫通孔232に容易に貫通させることができ、生産性が良好となる。遮蔽部貫通孔232の幅が、ヒューズエレメント202のY方向の最大長さよりも2mm長い寸法以下であると、保護素子2000の小型化に支障を来すことがなく、好ましい。
【0113】
遮蔽部貫通孔232の下面から上面までの高さ(Z方向の長さ)は、ヒューズエレメント202の最大厚みよりも0.03~0.2mm長い寸法であることが好ましく、0.05~0.1mm長い寸法であることがより好ましい。遮蔽部貫通孔232の高さがヒューズエレメント202の最大厚みより0.03mm以上長い寸法であると、保護素子2000を組み立てる際に、ヒューズエレメント202を遮蔽部貫通孔232に容易に貫通させることができ、生産性が良好となる。
【0114】
スライダー203は、第1スライダー部材203Aと第2スライダー部材203Bとが一体化されてなる構成である。第1スライダー部材203Aは第1遮蔽部231Aと第1板状部230Aとからなる。また、第2スライダー部材203Bは第2遮蔽部231Bと第2板状部230Bとからなる。
第1スライダー部材203Aにおいては、第2スライダー部材203Bと一体化するために、第1板状部230Aが第2板状部230Bと合わさる面に、ボス230Aaと、第2板状部230Bのボスが嵌る嵌合穴230Abとを有する。第2スライダー部材203Bにおいても同様に、第1スライダー部材203Aと一体化するために、第2板状部230Bが第1板状部230Aと合わさる面に、ボスと、第1板状部230Aのボスが嵌る嵌合穴とを有する。
また、第1スライダー部材203Aにおいては、第2スライダー部材203Bと一体化するために、第1遮蔽部231Aは、第2遮蔽部231Bと合わさる面にY方向に切り欠かれてなる接合面231Aaを有する。第2スライダー部材203Bにおいても同様に、第1スライダー部材203Aと一体化するために、第2遮蔽部231Bは、第1遮蔽部231Aと合わさる面にY方向に切り欠かれてなる接合面を有する。
第1スライダー部材203A及び第2スライダー部材203Bが互いのボスと互いの嵌合穴とが嵌合され、かつ、第1スライダー部材203A及び第2スライダー部材203Bが互いの接合面同士が嵌合されることによって、第1スライダー部材203Aと第2スライダー部材203Bとは一体化され、スライダー203が組み立てられる。
ヒューズエレメント202の、遮蔽部貫通孔232への挿入は、スライダー203が組み立てられる前にセッティングする。遮蔽部貫通孔232の穴サイズによって、スライダー203が組み立てられた後に、ヒューズエレメント202を遮蔽部貫通孔232へ挿入することができる。第1スライダー部材203A及び第2スライダー部材203Bが互いの接合面同士が接着剤によって接合されてもよい。
【0115】
板状部230及び遮蔽部231のZ方向の厚みは、第4実施形態の板状部30、遮蔽部31と同様のものとすることができる。
【0116】
スライダー203の材料としては、スライダー103と同様なものを用いることができる。
【0117】
(ケース)
ケース206は、図7図9に示すように、略直方体であり、第1ケース206aと、第2ケース206aと対向配置された第2ケース206bの2つの部材が一体化されたものである。ケース206は、ヒューズエレメント及びスライダーを第1ケース206a及び第2ケース206bによって左右から挟み込む構成であるが、この構成に限定されない。例えば、前述した第1実施形態のように上下から挟み込む構成であってもよい。
【0118】
本実施形態の保護素子2000におけるケース206は、図9に示すように、ヒューズエレメント202とスライダー203とが収容される収容部260を内部に有する。収容部260は、ヒューズエレメント202を収容するヒューズエレメント収容空間261と、遮蔽部231が収容され、Z方向に移動可能な遮蔽部収容空間260aと、板状部230が収容され、Z方向に移動可能な板状部移動空間260bと、板状部230を収容する板状部収容空間260cとを有する。板状部収容空間260cはヒューズエレメント202の溶断前に板状部230が収容される空間であり、スライダー移動空間260bはヒューズエレメント202の溶断時に板状部230が移動する空間である。
収容部260は、第1ケース206aと第2ケース206bとが対向配置して一体化されることによって形成される。
【0119】
遮蔽部収容空間260aの平面形状(Z方向から平面視した形状)は、スライダー203の遮蔽部231の平面形状に対応する形状とされている。具体的には、図7及び図8に示すように、遮蔽部収容空間260aは、スライダー203の遮蔽部231が遮蔽部収容空間260aの内壁面に近接もしくは接触しつつ遮蔽部収容空間260a内に嵌る形状であることが好ましい。遮蔽部収容空間260aのX方向内壁面間距離と、スライダー203の遮蔽部231のX方向厚みとの差は、例えば、0.03~0.2mmとすることができ、0.05~0.1mmとすることが好ましい。
【0120】
遮蔽部収容空間260aのX方向内壁面間距離と、スライダー203の遮蔽部231のX方向厚みとの差が0.03mm以上であると、遮蔽部収容空間260a内のスライダー203の遮蔽部231の移動がスムーズとなり、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。これは、上記差が0.03mm以上であると、遮蔽部収容空間260a内にスライダー203の遮蔽部231が引掛りにくいためである。したがって、上記離間距離が0.03mm以上であると、スライダー203が移動する前に、スライダー203から遮蔽部231が分離されたり、遮蔽部収容空間260aが破壊されたりすることがない。
【0121】
また、上記離間距離が0.2mm以下であると、遮蔽部収容空間260aが、ヒューズエレメント202の溶断時に所定の位置にスライダー203を移動させるガイドとして機能する。したがって、ヒューズエレメント202の溶断時に移動するスライダー203の位置ずれが防止され、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。
【0122】
板状部移動空間260bの平面形状(Z方向から平面視した形状)は、スライダー203の板状部230の形状に対応する形状とされている。具体的には、板状部移動空間260bの平面形状は、スライダー203の板状部230が、板状部移動空間260bの内壁面に近接もしくは接触しつつ板状部移動空間260b内に嵌る形状となっている。
【0123】
板状部移動空間260bのX方向及びY方向の内壁面間隔と、スライダー203の板状部230のX方向及びY方向の長さとの各々の方向の差は、例えば、0.03~0.2mmとすることができ、0.05~0.1mmとすることが好ましい。板状部移動空間260bのX方向及びY方向の内壁面間隔と、スライダー203の板状部230のX方向及びY方向の長さとの各々の方向の差が0.03~0.2mmであると、ヒューズエレメント202の遮断部223の溶断時に発生するアーク放電による収容部260内の板状部230の遮蔽部231側の空間の圧力上昇によって、スライダー203がスムーズに移動し、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。
【0124】
第1ケース206aの第2ケース206bとの対向面における4つの角部のうち、2つの角部にはそれぞれ略円柱状の接合凸部269aba、接合凸部269abbが設けられ、また、他の2つの角部にはそれぞれ接合穴269aaa、接合穴269aabが設けられている。また、同様に、第2ケース206bの第1ケース206aとの対向面における4つの角部のうち、2つの角部にはそれぞれ略円柱状の接合凸部269bba、接合凸部269bbbが設けられ、また、他の2つの角部にはそれぞれ接合穴269baa、接合穴269babが設けられている。
図示する保護素子2000では、接合凸部269abaと接合穴269baa、接合凸部269abbと接合穴269bab、接合凸部269bbaと接合穴269aaa、及び、接合凸部269bbbと接合穴269aabとがそれぞれ嵌合され、第1ケース206aと第2ケース206bとが所定の位置に精度よく固定される。
【0125】
図示する保護素子2000では、接合凸部269aba、接合凸部269abb、接合凸部269bba、接合凸部269bbbとして略円筒状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、接合凸部の形状は、略円筒状に限定されるものではない。例えば、長円形状、楕円形状、多角形状の断面形状を有するものであってもよい。
また、図示する保護素子2000では、接合穴269aaa、接合穴269aab、接合穴269baa、接合穴269babとして略円柱状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、接合穴の形状は、略円柱状に限定されるものではない。接合凸部の形状に応じて例えば、長円形状、楕円形状、多角形状の断面形状を有するものであってもよい。
【0126】
また、図示する保護素子2000では、第1ケース206a及び第2ケース206bがそれぞれ、接合凸部及び接合穴を備える構成であるが、一方のケースが接合凸部のみを備え、他方のケースが接合穴のみを備える構成でもよい。
【0127】
また、図示する保護素子2000では、第1ケース206a及び第2ケース206bのそれぞれのケースが、2つの接合凸部と2つの接合穴を備える構成であるが、それらの数は、2つづつに限定されるものではなく、それぞれが1つ、又は、3つ以上であってもよく、第1ケース206a及び第2ケース206bの平面形状などに応じて適宜決定できる。
また、接合凸部及び接合穴の大きさは、特に限定されるものではなく、第1ケース206a及び第2ケース206bの厚み、平面形状などに応じて適宜決定できる。
【0128】
図示する保護素子2000では、第1ケース206aの第2ケース206bと接する接合面206aAには、収容部260を囲むように、接着剤侵入阻止溝267が設けられている。
第1ケース206a及び第2ケース206bの対向する少なくとも一方の面には、接着エリアと接着剤侵入阻止溝を有し、接着剤侵入阻止溝は、接着エリアと収容部260との間に設置され、接着剤の収容部260への侵入を抑制する。
【0129】
ヒューズエレメント収容空間261のX方向の両端にそれぞれ繋がる第1挿入孔264と第2挿入孔265とが設けられている。第1挿入孔264及び第2挿入孔265は第1ケース206aと第2ケース206bとが対向配置して一体化されることによって形成される。
第1挿入孔264内には第1端子61が収容されている。また、第2挿入孔265内には第2端子62が収容されている。
【0130】
ケース206は、ヒューズエレメント収容空間261と板状部収容空間260cとを繋ぐ内部リーク孔268a、268bを有する。
ヒューズエレメントの溶断時に発生する放電によるヒューズエレメント収容空間261内の上昇圧力が、内部リーク孔268a、268bを介してスライダー203をスライドさせる。
内部リーク孔268a、268bは、略円筒状の形状を有している。本実施形態では、内部リーク孔268a、268bとして、略円筒状の形状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、内部リーク孔268a、268bの形状は、略円筒状に限定されるものではなく、例えば、長円形状、楕円形状、多角形状などの断面形状を有する筒状のものであってもよい。
【0131】
また、本実施形態では、内部リーク孔が2つ設けられている場合を例に挙げて説明したが、内部リーク孔の数は特に限定されるものではなく、1つ、又は、3つ以上であってもよい。ただし、内部リーク孔を複数備える構成では、ヒューズエレメント収容空間261内の上昇圧力がスライダー203に対してその移動方向(Z方向)に対して均等にかかるように配置することが好ましい。スライダー203に対してその移動方向に対して均等に圧力がかかる、複数の内部リーク孔の配置構成はケース内部の構造に依存するが、例えば、複数の内部リーク孔を等間隔で配置したり、Z方向に対して回転対称位置に配置するなどして実現できる。
【0132】
ケース206は、スライダー移動空間260bとケース206の外部を繋ぐ外部リーク孔271を、第1ケース206aのY方向に直交する壁面281に有する。
外部リーク孔271は、略円筒状の形状を有している。本実施形態では、外部リーク孔271として、略円筒状の形状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、外部リーク孔271の形状は、略円筒状に限定されるものではなく、例えば、長円形状、楕円形状、多角形状などの断面形状を有する筒状のものであってもよい。
【0133】
また、本実施形態では、外部リーク孔271が1つ設けられている場合を例に挙げて説明したが、外部リーク孔の数は特に限定されるものではなく、2つ以上であってもよい。
【0134】
外部リーク孔271は、スライダー203が下方に移動すると、板状部230の側面によって塞がれるので、スライダー203が移動しきる前に塞がれることがないようにスライダー移動空間260bの底面282寄りに設けられていることが好ましい。外部リーク孔271は、スライダー移動空間260bの底面282に設けられてもよい。
【0135】
ケース206の材料としては、ケース106と同様なものを用いることができる。
【0136】
(保護素子の製造方法)
次に、本実施形態の保護素子2000の製造方法について、例を挙げて説明する。
本実施形態の保護素子2000を製造するには、図10に示したヒューズエレメント202と、第1端子61および第2端子62を用意する。そして、図10に示すように、ヒューズエレメント202の第1端部221上に第1端子61をハンダ付けすることにより接続する。また、第2端部222上に第2端子62をハンダ付けすることにより接続する。本実施形態においてハンダ付けに使用されるハンダ材料としては、公知のものを用いることができ、抵抗率と融点の観点からSnを主成分とするものを用いることが好ましい。
ヒューズエレメント202の第1端部221、第2端部222と、第1端子61、第2端子62とは、溶接による接合によって接続されていてもよいし、リベット接合、ネジ接合などの機械的接合によって接続されていてもよく、公知の接合方法を用いることができる。
【0137】
次に、図12に示したスライダー203を用意する。そして、スライダー203の遮蔽部貫通孔232にヒューズエレメント202の遮断部223を配置させて状態で、第1スライダー部材203A及び第2スライダー部材203Bを接合する。
【0138】
次に、図7に示す第1ケース206a及び第2ケース206bを用意する。そして、図12(a)にその一部を示すように、ヒューズエレメント202と、第1端子61および第2端子62と、スライダー203とが一体化された部材を準備する。次いで、その一体化された部材を第1ケース206a内に設置する。第2ケース206b内に、ヒューズエレメント202と、第1端子61および第2端子62と、スライダー203とが一体化された部材を設置してもよい。
【0139】
その後、接合凸部269abaと接合穴269baa、接合凸部269abbと接合穴269bab、接合凸部269bbaと接合穴269aaa、及び、接合凸部269bbbと接合穴269aabとを嵌合させて、第1ケース206aと第2ケース206bとを接合する。
第1ケース206aと第2ケース206bとの接合には、必要に応じて接着剤を用いることができる。接着剤としては、例えば、熱硬化性樹脂を含む接着剤を用いることができる。
【0140】
第1ケース206aと第2ケース206bとを接合する際には、第1ケース206aに設けられた接着剤侵入阻止溝267と、第2ケース206bに設けられた接着剤侵入阻止溝(不図示)を対向配置し、それぞれ平面視で重なるように配置して接合する。このことにより、ケース206の内部に、ヒューズエレメント収容空間261、遮蔽部収容空間260a、板状部移動空間260b、板状部収容空間260c、内部リーク孔268a、268b等が形成される。
これによって、ヒューズエレメント202に接続された第1端子61および第2端子62の一部が、ケース206の外部に露出された状態となる。
以上の工程により、本実施形態の保護素子2000が得られる。
【0141】
(保護素子の動作)
次に、本実施形態の保護素子2000のヒューズエレメント202に、定格電流を越えた電流が流れた場合における保護素子2000の動作について、図面を用いて説明する。
図13は、本実施形態の保護素子2000の動作を説明するための図であり、(a)は遮断部223の溶断面同士の間にスパークが発生した状態を模式的に示す断面図であり、(b)はアーク放電が発生してヒューズエレメント収容空間261内の圧力上昇によって、スライダー203が下方に移動した状態を示す断面図である。
【0142】
本実施形態の保護素子2000のヒューズエレメント202に定格電流を越えた電流が流れると、ヒューズエレメント202は、過電流による発熱によって昇温する。そして、スライダー203の遮蔽部貫通孔232内に配置されたヒューズエレメント202の遮断部223が、昇温により軟化して、溶断される。このとき、図13(a)に示すように、遮断部223の溶断面同士の間にスパーク(符号SP)が発生し、アーク放電が発生する。アーク放電が発生すると、ヒューズエレメント収容空間261内の圧力が上昇する。
【0143】
ヒューズエレメント収容空間261内の圧力上昇によって、内部リーク孔268a、268bを介して、スライダー203の上面を押圧する圧力がかかり、スライダー203は下方に移動する(図13(b)参照)。すなわち、板状部収容空間260cに収容されていたスライダー203の板状部230はスライダー移動空間260bに移動し、また、遮蔽部収容空間260aに収容されていた遮蔽部231はその一部が板状部収容空間260cに移動する。その結果、図13(b)に示すように、ヒューズエレメント収容空間261と遮蔽部収容空間260aとが交差していた交差部270(図9の点線丸)が遮蔽部231によって塞がれる(図13(b)において、遮蔽部231のうち、交差部270を塞いでいる部位(点線丸のあたり)を符号231Aで示した。)。このことにより、溶断された遮断部223の溶断面同士が、スライダー203の遮蔽部231によって絶縁され、ヒューズエレメント202を介した通電経路が、物理的に確実に遮断される。よって、アーク放電が迅速に消滅(消弧)する。
【0144】
また、図8及び図9に示すように、スライダー移動空間260bの一部に、板状部230の側面(第1縁部230a、第2縁部230b)と接触しスライダー203のリバウンドを抑制する固定部280a、280bを有することが好ましい。固定部280a、280bを備えることによって、移動したスライダー203が元の位置に戻るリバウンドが生じにくく、アーク放電がより確実に消滅する。
【0145】
図8及び図9に示す固定部280a、280bは、内壁面に対して垂直な方向に盛り上がった構造であるが、接触してスライダー203のリバウンドを抑制することができる構造であれば、この構造に制限されない。また、図8及び図9に示す固定部280a、280bは、各壁面に1つ備える構成であるが、各壁面に2つ以上備える構成であってもよい。
【0146】
本実施形態では、ヒューズエレメント収容空間261内の圧力上昇によってスライダー203が移動を開始しても、外部リーク孔271を介して、スライダー移動空間260b内の気体がスライダー移動空間260bの外に排出されるため、スライダー移動空間260bの圧力上昇が抑制される。したがって、スライダー移動空間260b内の圧力上昇によって、スライダー203の移動が妨げられることがなく、スライダー203が迅速に移動する。その結果、本実施形態の保護素子2000では、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。また、スライダー移動空間260b内の圧力上昇によって、スライダー移動空間260bが破壊されることを防止できるため、安全性に優れる。
外部リーク孔271は、ヒューズエレメント収容空間261内の圧力上昇によってスライダー203が下方に移動すると、板状部230の側面によって塞がれる。
【0147】
本実施形態の保護素子2000では、ヒューズエレメント202を収容するヒューズエレメント収容空間261を備えているため、ヒューズエレメント収容空間261を備えない構造に比べて、ヒューズエレメント202の遮断部223の溶断時に発生するアーク放電によるヒューズエレメント収容空間261内の圧力変化が急峻となりやすい。また、その圧力上昇は狭い内部リーク孔268a、268bを介して直ちにスライダー203の板状部230に作用する。その結果、ヒューズエレメント収容空間261内の圧力上昇によるスライダー203の移動が素早いものとなり、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。
【0148】
本実施形態の保護素子2000では、ヒューズエレメント202の遮断部223の溶断時に発生するアーク放電によって、ケース206のヒューズエレメント収容空間261内の圧力が上昇すると、その圧力上昇が内部リーク孔268a、268bを介して直ちにスライダー203の板状部230に作用してスライダー203が移動する。スライダー203の移動により、ヒューズエレメント収容空間261と遮蔽部収容空間260aとが交差していた交差部270が遮蔽部231によって塞がれる。この結果、溶断された遮断部223の溶断面同士が、スライダー203の遮蔽部231によって遮蔽され、絶縁される。その結果、ヒューズエレメント202の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。よって、本実施形態の保護素子2000は、例えば、高電圧かつ大電流の電流経路にも好ましく設置できる。
【0149】
[第3実施形態]
図14は、第3実施形態の保護素子3000の全体構造を示した分解斜視図である。図14図7と斜視の角度が異なる。第2ケース206bはその内部が見える状態にして示す透視斜視図である。図15は、第3実施形態に係る保護素子3000が備える発熱体の配置構成の一例を示すものであり、(a)は2つの発熱体と、各発熱体への給電線と、ヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示した斜視図であり、(b)はヒューズエレメントを示す斜視図であり、(c)は2つの発熱体、各発熱体への給電線、及び、ヒューズエレメントのZ方向から見た位置関係を示すために、ヒューズエレメント側から見た平面図である。図16は、第3実施形態に係る保護素子3000が備える発熱体の構造の一例を示すものであり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
第3実施形態の保護素子3000は図14に示すように、遮断部223を溶断する発熱体290a、290bと、発熱体290a、290bに電流を供給する給電線291a、291bと、発熱体用ヒューズエレメント202AA-2、202AA-3とを備える以外は、第2実施形態の保護素子2000と同様の構成を備えるものである。
発熱体290a、290bは図16に示すように、抵抗層290-1を有し、さらに、ヒューズエレメント側の表面に電極層290-2を有する。発熱体290a、290bは、さらに、抵抗層290-1が形成された絶縁基板290-3と、抵抗層290-1を覆う絶縁層290-4と、絶縁基板290-3の両端に形成された発熱体電極290-5a、290-5bとを備える。抵抗層290-1は、通電すると発熱する導電性を有する材料、例えばニクロム、W、Mo、Ru等、又は、これらを含む材料からなる。これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板290-3上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成する。絶縁基板290-3は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する基板である。絶縁層290-4は、抵抗層290-1の保護及び絶縁を図ると共に、抵抗層290-1が発熱した熱を効率よく、ヒューズエレメントに伝えるために設けられる。
ヒューズエレメント202AAは図15(b)に示すように、第1部分202AA-1、第2部分(発熱体用ヒューズエレメント)202AA-2、及び、第3部分(発熱体用ヒューズエレメント)202AA-3からなる。
【0150】
第3実施形態の保護素子3000では、図14に示すように、発熱体290a、290bが、ヒューズエレメント収容空間261内に遮断部223に接して配置されている。発熱体290a、290bは、並列に発熱体用ヒューズエレメント202AA-2、202AA-3を介して接続され、給電線291aは発熱体290aの一方の端子と接続され、給電線291bは発熱体290bの他方の端子と接続される。つまり、「給電線291a~発熱体290a~発熱体用ヒューズエレメント202AA-2~給電線291b」の第1の経路と「給電線291b~発熱体290b~発熱体用ヒューズエレメント202AA-3~給電線291a」の第2の経路が並列で接続される。
発熱体290a、290bは、ヒューズエレメント202AAの遮断部223を加熱して溶断させ、発熱体用ヒューズエレメント202AA-2、202AA-3を加熱して軟化させる機能を有する。発熱体290a、290bは、保護素子3000の通電経路となる外部回路に異常が発生して通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電されて発熱する。また、ヒューズエレメント202AAが遮断されると、スライダー203がアーク放電による圧力で移動し、発熱体用ヒューズエレメント202AA-2、202AA-3を遮断(切断)することで発熱体290a、290bへの給電が遮断され、発熱体290a、290bの発熱が停止する。発熱体290a、290bとしては図16に示したものに限らず、公知のものを用いることができる。給電線291bは、第2ケース206bに形成された貫通穴292bを介して、ヒューズエレメント収容空間261から外部へと延在している。同様に、給電線291aは、第1ケース206aに形成された貫通穴(不図示)を介して、ヒューズエレメント収容空間261から外部へと延在している。
【0151】
第3実施形態の保護素子3000においても、第2実施形態の保護素子2000と同様に、ヒューズエレメント202の遮断部223の溶断時に発生するアーク放電によって、ヒューズエレメント収容空間261内の圧力が上昇すると、その圧力上昇が内部リーク孔268a、268bを介して直ちにスライダー203の板状部230に作用してスライダー203が移動する。スライダー203の移動により、ヒューズエレメント収容空間261と遮蔽部収容空間260aとが交差していた交差部270が遮蔽部231によって塞がれる。この結果、溶断された遮断部223の溶断面同士が、スライダー203の遮蔽部231によって絶縁される。その結果、ヒューズエレメント202の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。したがって、本実施形態の保護素子3000においても、第2実施形態の保護素子2000と同様に、ヒューズエレメント202の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。
【0152】
また、図14に示す第3実施形態に係る保護素子3000においては、遮断部223を溶断する発熱体290a、290bが、ヒューズエレメント収容空間261内において、遮断部223に接して配置されている。したがって、保護素子3000の通電経路となる外部回路に異常が発生して通電経路を遮断する必要が生じた場合、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電されて発熱体290a、290bが発熱し、効率よく遮断部223が加熱される。また、ヒューズエレメント202が溶断されると、スライダー203が移動し、発熱体用ヒューズエレメント202AA-2、202AA-3を切断することで、発熱体290a、290bへの給電が遮断され、発熱体290a、290bの発熱が停止する。よって、本実施形態の保護素子3000は、優れた安全性を有する。
【0153】
[第4実施形態]
図17図19は、第4実施形態に係る保護素子を示した模式図である。以下の説明で用いる図面において、Xで示す方向はヒューズエレメントの通電方向(第1方向)である。Yで示す方向はX方向(第1方向)と直交する方向であり、Zで示す方向は、X方向およびY方向に直交する方向である。
【0154】
図17は、第4実施形態に係る保護素子100の全体構造を示した斜視図である。図18は、第4実施形態に係る保護素子100の分解斜視図である。図19は、第4実施形態に係る保護素子100を図17に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
本実施形態の保護素子100は、図17図19に示すように、ヒューズエレメント2と、スライダー3と、ヒューズエレメント2とスライダー3とが収納される収容部60が内部に設けられたケース6とを備えている。
【0155】
(ヒューズエレメント)
図20は、第4実施形態の保護素子100の一部を説明するための拡大図であり、図20(a)はヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示した斜視図であり、図20(b)はヒューズエレメントを示した平面図である。図20(a)および図20(b)に示すように、ヒューズエレメント2は、第1端部21と、第2端部22と、第1端部21と第2端部22との間に設けられた遮断部23とを有している。ヒューズエレメント2は、第1端部21から第2端部22に向かう方向であるX方向(第1方向)に通電される。
図18図19図20(a)に示すように、第1端部21は、第1端子61と電気的に接続されている。第2端部22は、第2端子62と電気的に接続されている。
【0156】
第1端子61と第2端子62とは、図17図19図20(a)に示すように、略同形であってもよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。第1端子61および第2端子62の厚みは、特に限定されるものではないが、目安を言えば、0.3~1.0mmとすることができる。第1端子61と第2端子62の厚みは、図20(a)に示すように、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図17図19図20(a)に示すように、第1端子61は、外部端子孔61aを備えている。また、第2端子62は、外部端子孔62aを備えている。外部端子孔61a、外部端子孔62aのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。外部端子孔61aおよび外部端子孔62aは、図17図19図20(a)に示すように、平面視略円形の貫通孔とすることができる。
【0157】
第1端子61および第2端子62としては、例えば、銅、黄銅、ニッケルなどからなるものを用いることができる。第1端子61および第2端子62の材料として、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。第1端子61と第2端子62とは、同じ材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。
【0158】
第1端子61および第2端子62の形状は、図示しない電源側の端子あるいは負荷側の端子に係合可能な形状であればよく、例えば、一部に開放部分を有するつめ形状であってもよいし、図20(a)に示すように、ヒューズエレメント2と接続される側の端部に、ヒューズエレメント2に向かって両側に拡幅された鍔部(図20(a)において符号61c、62cで示す。)を有していてもよく、特に限定されない。第1端子61および第2端子62が鍔部61c、62cを有する場合、ケース6から第1端子61および第2端子62が抜けにくく、信頼性および耐久性の良好な保護素子100となる。
【0159】
ヒューズエレメント2の厚みは、図19および図20(a)に示すように、均一であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。厚みが部分的に異なっているヒューズエレメントとしては、例えば、遮断部23から第1端部21および第2端部22に向かって徐々に厚みが厚くなっているものや第1端部21および第2端部22に金属板を積層しているものなどが挙げられる。このようなヒューズエレメント2は、過電流が流れた時に遮断部23がヒートスポットとなって、遮断部23が優先的に昇温して、より確実に溶断される。
【0160】
図20(b)に示すように、ヒューズエレメント2の遮断部23、第1端部21および第2端部22は、平面視略長方形の形状を有している。図20(b)に示すように、第1端部21におけるY方向の幅21Dと、第2端部22におけるY方向の幅22Dとは、略同じとされている。遮断部23におけるY方向の幅23Dは、第1端部21におけるY方向の幅21Dおよび第2端部22におけるY方向の幅22Dよりも細くなっている。このことにより、遮断部23の幅23Dは、遮断部23以外の幅よりも狭くなっている。すなわち、遮断部23のY方向の断面積が、遮断部23以外の領域の断面積よりも狭くなっている。
【0161】
図19および図20(a)に示すように、ヒューズエレメント2の第1端部21は、第1端子61と平面視で重ねて配置され、第2端部22は、第2端子62と平面視で重ねて配置されている。図20(b)に示す第1端部21におけるX方向の長さL21は、図20(a)に示すように、第1端子61と平面視で重なる領域に対応する寸法とされている。また、図20(b)に示す第2端部22におけるX方向の長さL22は、図20(a)に示すように、第2端子62と平面視で重なる領域から遮断部23側に延在している。したがって、第2端部22におけるX方向L22の長さは、第1端部21におけるX方向の長さL21よりも長くなっている。
【0162】
図20(b)に示すように、遮断部23と第1端部21との間には、平面視略台形の第1連結部25が配置されている。平面視略台形の第1連結部25における平行な辺の長い方が、第1端部21と結合されている。また、遮断部23と第2端部22との間には、平面視略台形の第2連結部26が配置されている。平面視略台形の第2連結部26における平行な辺の長い方が、第2端部22と結合されている。第1連結部25と第2連結部26とは、遮断部23に対して対称となっている。このことにより、ヒューズエレメント2におけるY方向の幅は、遮断部23から第1端部21および第2端部22に向かって徐々に広くなっている。その結果、ヒューズエレメント2に過電流が流れた時に、遮断部23がヒートスポットとなって、遮断部23が優先的に昇温して、容易に溶断される。
【0163】
図20(b)に示すように、ヒューズエレメント2の遮断部23は、第1端部21および第2端部22よりもY方向の幅(図20(b)において符号23Dで示す)が狭い。それによって、遮断部23は、遮断部23と第1端部21との間の領域、および遮断部23と第2端部22との間の領域よりも溶断されやすくなっている。
本実施形態では、ヒューズエレメント2として、図20(b)に示すように、遮断部23が第1端部21および第2端部22よりもY方向の幅が狭いものを例に挙げて説明したが、ヒューズエレメントは、遮断部のY方向の幅が第1端部および第2端部よりも狭いものに限定されない。
【0164】
図20(b)に示すように、ヒューズエレメント2全体の平面形状は、略矩形であり、一般的なヒューズエレメントと比較して、Y方向の幅が相対的に広く、X方向の長さが相対的に短い。本実施形態の保護素子100では、溶断されたヒューズエレメント2の溶断面同士が、後述するスライダー3の遮蔽部31によって絶縁される。その結果、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。このため、アーク放電を抑制するために、ヒューズエレメント2におけるY方向の幅を狭くする必要がなく、ヒューズエレメント2におけるY方向の幅を広く、X方向の長さを短くできる。このようなヒューズエレメント2を有する保護素子100は、保護素子100の設置される電流経路における抵抗値上昇を抑制できるため、大電流の電流経路にも好ましく設置できる。
【0165】
また、図20(b)に示すヒューズエレメント2に代えて、例えば、Y方向の断面積が均一な線状または帯状のヒューズエレメントを設けることも可能である。この場合、ヒューズエレメント2の溶断部がヒューズエレメントのX方向中心部付近となる。このため、遮蔽部貫通孔内のヒューズエレメントが溶融し、スライダーによって遮蔽されるまでの時間が、図20(b)に示すヒューズエレメント2が備えられている場合と比較して、延びる傾向となる。
ヒューズエレメント2において、第1端部21及び第2端部22の一方又は両方に、X方向の熱膨張及び熱収縮ストレスを緩和する屈曲部を備えてもよい(図11参照)。
【0166】
ヒューズエレメント2の材料としては、合金を含む金属材料など、公知のヒューズエレメントに用いられる材料を用いることができる。具体的には、ヒューズエレメント2の材料として、Pb85%/Sn、Sn/Ag3%/Cu0.5%などの合金を例示できる。
ヒューズエレメント2は、通常作動中の通電によっては実質的に変形しない。ヒューズエレメント2は、ヒューズエレメント2を構成する材料の軟化温度以上の温度で遮断される。軟化温度以上の温度であるから、「軟化温度」で遮断されてもよい。
本明細書において「軟化温度」とは、固相と液相とが混在あるいは共存する温度、あるいは温度範囲を意味する。軟化温度は、ヒューズエレメント2が外力により変形するくらい柔らかくなる温度あるいは温度帯(温度範囲)である。
【0167】
例えば、ヒューズエレメント2が2成分系合金からなる場合、固相線(溶融を始める温度)と液相線(完全に溶融する温度)との間の温度範囲では、固相と液相が混じり合った、いわばシャーベット状の状態となっている。この固相と液相が混在あるいは共存する温度範囲は、ヒューズエレメント2が外力により変形するくらい柔らかくなる温度範囲である。この温度範囲が「軟化温度」である。
【0168】
ヒューズエレメント2が3成分系合金あるいは多成分系合金からなる場合、上記固相線および液相線を固相面および液相面と読み替えて、同様に固相と液相が混在あるいは共存する温度範囲が「軟化温度」である。
ヒューズエレメント2が合金からなる場合、固相線と液相線との間に温度差があるので、「軟化温度」は温度範囲を有する。
ヒューズエレメント2が単一金属からなる場合、固相線/液相線は存在せず、1点の融点/凝固点が存在する。ヒューズエレメント2が単一金属からなる場合、融点または凝固点において、固相と液相の混在あるいは共存する状態になるので、融点または凝固点が本明細書における「軟化温度」である。
【0169】
固相線と液相線の測定は、温度上昇過程において相状態変化に伴う潜熱による不連続点(時間変化におけるプラトーな温度)として行うことができる。固相と液相が混在あるいは共存する温度あるいは温度範囲を有する合金材料および単一金属共に、本実施形態のヒューズエレメント2の材料として用いることができる。
【0170】
ヒューズエレメント2は、図20(b)に示すように、1個の部材(パーツ)からなるものであってもよいし、材料の異なる複数個の部材(パーツ)からなるものであってもよい。
ヒューズエレメント2が材料の異なる複数個の部材で形成されている場合、各部材の形状は、ヒューズエレメント2の用途、材料などに応じて決定でき、特に限定されない。
【0171】
材料の異なる複数個の部材で形成されているヒューズエレメント2としては、例えば、軟化温度の異なる材料からなる複数個の部材で形成されている場合が挙げられる。ヒューズエレメント2が、軟化温度の異なる材料からなる複数個の部材で形成されている場合、軟化温度の低い材料から順に固相と液相の混在状態となり、軟化温度の最も低い材料の軟化温度以上で遮断される。
【0172】
材料の異なる複数個の部材で形成されているヒューズエレメント2としては、種々の構造をとることができる。
例えば、ヒューズエレメント2は、内層と、これを挟む外層とが厚み方向に積層された3層構造の積層体であって、内層と外層とが軟化温度の異なる材料からなるものであってもよい。このようなヒューズエレメント2では、積層体の内層と外層のうち、軟化温度の低い材料の層において固相と液相の混在状態が先に始まり、軟化温度の高い材料の層が軟化温度に達する前に遮断され得る。
【0173】
ヒューズエレメント2は、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなるものであることが好ましい。このようなヒューズエレメント2は、積層体が、高融点金属からなる外層を含むため、剛性が確保されたものとなる。
【0174】
ヒューズエレメント2の材料として使用される低融点金属としては、SnもしくはSnを主成分とする金属を用いることが好ましい。Snの融点は232℃であるため、Snを主成分とする金属は低融点である。例えば、Sn/Ag3%/Cu0.5%合金の固相線は217℃である。
【0175】
ヒューズエレメント2の材料として使用される高融点金属としては、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属を用いることが好ましい。例えば、Agの融点は962℃であるが、Agを主成分とする金属からなる高融点金属の層は、低融点金属からなる層(Snを主成分とする金属)の溶融に伴い低融点金属に溶解し300~400℃の温度で溶断する。もちろん、400℃以上の温度でも溶断する。
【0176】
ヒューズエレメント2は、公知の方法により製造できる。
例えば、ヒューズエレメント2が、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなるものである場合、以下に示す方法により製造できる。まず、低融点金属からなる金属箔を用意する。次に、金属箔の表面全面に、めっき法を用いて高融点金属層を形成し、積層板とする。その後、積層板を切断して所定の形状とする。以上の工程により、3層構造の積層体からなるヒューズエレメント2が得られる。
【0177】
(スライダー)
図21は、第4実施形態の保護素子100に備えられたスライダーの構造を説明するための図面であり、図21(a)は第1空間側から見た平面図であり、図21(b)~図21(e)は斜視図である。
スライダー3は、図19に示すように、X方向に沿う断面形状が略L字型形状を有する。
図21(a)~図21(e)に示すように、スライダー3は、絶縁材料からなる板状部30と、板状部30の第1縁部30aに立設された絶縁材料からなる遮蔽部31と、遮蔽部31を貫通する遮蔽部貫通孔32と、板状部30の遮蔽部31側の面(以下、「第1面30c」ともいう。)と反対側の面(以下、「第2面30d」ともいう。)に設けられた凸部33とを有する。
【0178】
図18および図19に示すように、板状部30の第1面30c上には、ヒューズエレメント2が遮蔽部貫通孔32を貫通して配置されている。図21(a)に示すように、板状部30は平面視略矩形である。図18および図19に示すように、板状部30のX方向の長さは、ヒューズエレメント2の第2連結部26(図20(b)参照)のX方向の長さと第2端部22におけるX方向の長さL22との合計長さよりも短い。したがって、図18に示すように、板状部30の第1面30c上には、ヒューズエレメント2の第2連結部26と第2端部22の遮断部23側の部分とが配置されている。また、図18に示すように、板状部30のY方向の幅は、ヒューズエレメント2の第2端部22におけるY方向の幅22D(図20(b)参照)よりも広い。
【0179】
板状部30のZ方向の厚みは、0.5~3mmであることが好ましく、1~2mmであることがより好ましい。板状部30の厚みが0.5mm以上であると、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電によるケース6内の圧力上昇に対して、十分な強度を有するものとなり好ましい。板状部30の厚みが3mm以下であると、保護素子100の小型化に支障を来すことがなく、好ましい。
【0180】
図21(a)~図21(e)に示すように、遮蔽部31は、板状部30の第1縁部30aに立設されている。遮蔽部31は、第1縁部30a側から見て略矩形である。図21(a)~図21(e)に示すように、遮蔽部31のY方向の幅は、板状部30のY方向の幅と同じである。
【0181】
遮蔽部貫通孔32の上面から遮蔽部31の上面までの距離(Z方向の長さ)は、図19に示すように、遮蔽部31の第2面30dと後述するケース6内の第4壁面6fとの間の距離以上とされていることが好ましく、遮蔽部31の第2面30dと第4壁面6fとの間の距離よりも1mm以上長いことがより好ましい。遮蔽部貫通孔32の上面からの遮蔽部31の上面までの距離が、遮蔽部31の第2面30dと第4壁面6fとの間の距離以上であると、ヒューズエレメント2の溶断時にスライダー3が移動することにより、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容された、後述する第1挿入孔64の開口64dを、遮蔽部31によって確実に塞ぐことができる。
【0182】
遮蔽部31の厚みは、0.5~2mmであることが好ましく、1~1.5mmであることがより好ましい。遮蔽部31の厚みが0.5mm以上であると、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電によるケース6内の圧力上昇に対して十分な強度を有するものとなり、好ましい。遮蔽部31の厚みが2mm以下であると、ヒューズエレメント2のX方向の長さが長くなることを抑制でき、ヒューズエレメント2を低抵抗化できるため、好ましい。
【0183】
遮蔽部貫通孔32は、図21(a)~図21(d)に示すように、遮蔽部31を貫通して設けられた断面視略長円形の筒状形状を有する貫通孔である。遮蔽部貫通孔32が、断面視略長円形であると、機械加工により遮蔽部貫通孔32を容易に形成でき、好ましい。遮蔽部貫通孔32を金型成型にて形成する場合、遮蔽部貫通孔32の断面形状は、略長円形であってもよいし、矩形であっても良い。図21(c)に示すように、遮蔽部貫通孔32の下面(板状部30側の内壁)は、板状部30の第1面30cから連続する面上に形成されている。
遮蔽部貫通孔32の幅(Y方向の長さ)は、ヒューズエレメント2のY方向の最大長さ(図20(b)においては符号21D、22Dで示す長さ)よりも1~2mm長い寸法であることが好ましく、0.5~1mm長い寸法であることがより好ましい。遮蔽部貫通孔32の幅が、ヒューズエレメント2のY方向の最大長さよりも1mm以上長いと、保護素子100を組み立てる際に、ヒューズエレメント2を遮蔽部貫通孔32に容易に貫通させることができ、生産性が良好となる。遮蔽部貫通孔32の幅が、ヒューズエレメント2のY方向の最大長さよりも2mm長い寸法以下であると、保護素子100の小型化に支障を来すことがなく、好ましい。
【0184】
遮蔽部貫通孔32の下面から上面までの高さ(Z方向の長さ)は、ヒューズエレメント2の最大厚みよりも0.03~0.2mm長い寸法であることが好ましく、0.05~0.1mm長い寸法であることがより好ましい。遮蔽部貫通孔32の高さがヒューズエレメント2の最大厚みより0.03mm以上長い寸法であると、保護素子100を組み立てる際に、ヒューズエレメント2を遮蔽部貫通孔32に容易に貫通させることができ、生産性が良好となる。遮蔽部貫通孔32の高さが、ヒューズエレメント2の最大厚みより0.2mm長い寸法以下であると、スライダー3の移動距離が僅かであっても、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容された第1挿入孔64の開口64dが、遮蔽部31によって塞がれる。したがって、ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電が、より迅速に消滅(消弧)される。
【0185】
凸部33は、ヒューズエレメント2の溶断時に、所定の位置にスライダー3を移動させるガイドとして機能する。凸部33を有することにより、ヒューズエレメント2の溶断時に、スライダー3が所定の位置に移動しやすくなる。その結果、スライダー3が移動することにより、第1挿入孔64の開口64dがより確実に遮蔽部31によって塞がれる。
凸部33は、図19図21(d)、図21(e)に示すように、板状部30の第2面30dのX方向およびY方向の略中心位置に設けられている。本実施形態では、凸部33が第2面30dのX方向およびY方向の略中心位置に配置されているので、ヒューズエレメント2の溶断時に移動するスライダー3の位置ずれがより効果的に防止される。
【0186】
凸部33は、図19図21(d)、図21(e)に示すように、第2面30dからZ方向に延びる略円柱状の形状を有している。図21(d)、図21(e)に示すように、凸部33の先端33aは、先端に向かって徐々に直径が縮径された略円錐型の形状とされている。このため、ヒューズエレメント2の溶断時にスライダー3が移動することにより、ケース6の後述する第4壁面6fに開口する第4挿入孔66内に凸部33が埋め込まれやすい。したがって、スライダー3の位置ずれがより一層生じにくく、好ましい。
【0187】
凸部33の長さは、凸部33と対向するケース6の厚み寸法以下であることが好ましい。この場合、ヒューズエレメント2の溶断時にスライダー3が移動することによって、凸部33が、第2ケース6bの後述する第4壁面6fに開口する第4挿入孔66からはみ出すことがなく、第4挿入孔66内に凸部33が埋め込まれる。したがって、溶断時に移動した板状部30の第2面30dが第4壁面6fに押し付けられた状態となって、第2面30dと第4壁面6fとが隙間なく密着されやすく、スライダー3が第4壁面6f上に固定されやすい。よって、移動したスライダー3が元の位置に戻るリバウンドが生じにくく、アーク放電がより確実に消滅される。
また、凸部33を有しているため、ヒューズエレメント2の溶断に伴って所定の位置にスライダー3が移動したか否かを、第4挿入孔66内に凸部33が埋め込まれているか否かによって、第2ケース6bの外から判断できる。
【0188】
本実施形態では、凸部33として、略円柱状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、凸部の形状は、略円柱状に限定されるものではなく、例えば、長円形状、楕円形状、多角形状などの断面形状を有する柱状のものであってもよい。
また、本実施形態では、凸部33が1つのみ設けられている場合を例に挙げて説明したが、凸部の数は特に限定されるものではなく、2つ以上であってもよい。
また、本実施形態では、凸部33が第2面30dのX方向およびY方向の略中心位置に配置されている場合を例に挙げて説明したが、第2面上における凸部の位置は特に限定されない。
【0189】
スライダー3は、絶縁材料からなるものである。絶縁材料としては、セラミックス材料、ガラス転移温度の高い樹脂材料などを用いることができる。
樹脂材料のガラス転移温度(Tg)とは、軟質のゴム状態から硬質のガラス状態になる温度をいう。樹脂をガラス転移温度以上に加熱すると、分子が運動しやすくなり、軟質のゴム状態になる。一方、樹脂が冷えていくと、分子の運動が制限されて、硬質のガラス状態になる。
【0190】
セラミックス材料としては、アルミナ、ムライト、ジルコニアなどを例示でき、アルミナなどの熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。スライダー3がセラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱でき、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
【0191】
ガラス転移温度の高い樹脂材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などのエンジニアリングプラスチック、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などを例示できる。樹脂材料は、一般にセラミックス材料よりも熱伝導率は低いが、低コストである。
【0192】
樹脂材料の中でも、ナイロン系樹脂は、耐トラッキング性(トラッキング(炭化導電路)破壊に対する耐性)が高く、好ましい。ナイロン系樹脂の中でも、特に、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9Tを用いることが好ましい。耐トラッキング性は、IEC60112に基づく試験により求めることができる。ナイロン系樹脂としては、耐トラッキング性が、250V以上であるものを用いることが好ましく、500V以上のものを用いることがより好ましい。
【0193】
スライダー3は、例えば、セラミックス材料などの樹脂以外の材料で作製し、一部をナイロン系樹脂で被覆してもよい。
スライダー3は、公知の方法により製造できる。
【0194】
(ケース)
ケース6は、図17図19に示すように、略直方体であり、第1ケース6aと、第1ケース6aと対向配置された第2ケース6bの2つの部材が一体化されたものである。
図22は、第4実施形態の保護素子100に備えられた第2ケースの構造を説明するための図面であり、図22(a)は第1空間側から見た平面図であり、図22(b)および図22(c)は斜視図である。
図23は、第4実施形態の保護素子100に備えられた第1ケースの構造を説明するための図面であり、図23(a)は第2空間側から見た平面図であり、図23(b)および図23(c)は斜視図である。
【0195】
本実施形態の保護素子100におけるケース6は、図19に示すように、ヒューズエレメント2とスライダー3とを収容する略直方体の収容部60が、内部に設けられたものである。収容部60は、第1ケース6aと第2ケース6bとが接着されることにより形成されていてもよい。
図19に示すように、収容部60内は、スライダー3の板状部30によって、略直方体の第1空間60aと、略直方体の第2空間60bとに区分けされている。第1空間60a側のスライダー3の板状部30上には、図18および図19に示すように、ヒューズエレメント2が載置されている。本実施形態では、図19に示すように、第1空間60aの体積が、第2空間60bの体積よりも小さくなっている。第2空間60bは、スライダー3の板状部30がスライド移動する空間であるから、第1実施形態の板状部移動空間160b、及び、第2実施形態の板状部移動空間260bに相当する。
【0196】
収容部60内には、図19に示すように、スライダー3の遮蔽部31と対向配置された第1壁面6cと、第1壁面6cとX方向に対向配置された第2壁面6dと、第1空間60a内のヒューズエレメント2と対向配置される第3壁面6eと、第2空間60b内のスライダー3と対向配置される第4壁面6fとが備えられている。
【0197】
収容部60内には、図19に示すように、第1壁面6cに開口する第1挿入孔64が設けられているとともに、第2壁面6dに開口する第2挿入孔65が設けられている。第1挿入孔64および第2挿入孔65は、第2ケース6bと第1ケース6aとを対向配置して接合することによって形成されている。
図19に示すように、第1挿入孔64内には、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容されている。また、第2挿入孔65内には、ヒューズエレメント2の第2端部22が収容されている。
【0198】
第2ケース6bは、略直方体であり、図19図22(a)および図22(b)に示すように、第2空間60bを形成する第2凹部68bを有している。第2凹部68bは、図22(a)に示すように、平面視矩形であり、一方の長辺が第1壁面6cであり、他方の長辺が第2壁面6dであり、底面が第4壁面6fである。
第2凹部68bの深さは、図19に示すように、スライダー3の板状部30の厚みと凸部33の長さとの合計寸法以上とされている。
【0199】
図22(a)に示す第2凹部68bの平面形状は、図21(a)スライダー3の板状部30の形状に対応する形状とされている。具体的には、図19に示すように、第2凹部68bの平面形状は、スライダー3の板状部30が、第2凹部68bの内壁面に接触しつつ第2凹部68b内に嵌る形状となっている。
【0200】
第2凹部68bの内壁面と、スライダー3の板状部30との離間距離は、例えば、0.03~0.2mmとすることができ、0.05~0.1mmとすることが好ましい。第2凹部68bの内壁面と、スライダー3の板状部30との離間距離が0.03~0.2mmであると、ヒューズエレメント2の遮断部23の溶断時に発生するアーク放電による第1空間60a内の圧力上昇によって、スライダー3がスムーズに移動し、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。これは、上記離間距離が上記範囲内であると、第1空間60a内の気体が第2空間60bに排出されて第1空間60a内の圧力上昇速度が遅くなったり、スライダー3が移動する前に第1空間60a内の圧力上昇によって収容部60が破壊されたりしにくいためである。
【0201】
第2凹部68bの底面(第4壁面6f)には、図22(a)および図22(c)に示すように、第2ケース6bを貫通し、第4壁面6fに開口する第4挿入孔66と、2つのリーク孔67a、67bとが設けられている。
図19に示すように、第4挿入孔66は、スライダー3の凸部33と対向する位置に設けられている。第4挿入孔66は、図22(a)に示すように、第4壁面6fのX方向およびY方向の略中心位置に配置されている。第4挿入孔66の形状は、略円筒状であり、スライダー3の凸部33の形状に対応する形状とされている。
【0202】
図19および図22(a)に示すように、第4挿入孔66の内径は、開口部66aに向かって徐々に大きくなっている。このため、ヒューズエレメント2の溶断時にスライダー3が移動することにより、第4挿入孔66内にスライダー3の凸部33が埋め込まれやすく、好ましい。
第4挿入孔66の最小内径は、スライダー3の凸部33を収容可能な寸法とされている。第4挿入孔66の最小内径と、凸部33の外径との差は、例えば、0mm超~0.1mm以下とすることができ、0mm超~0.05mm以下とすることが好ましい。
【0203】
リーク孔67a、67bは、第4挿入孔66を挟むように、第4挿入孔66を中心としてY方向両側に等間隔で離間して並べられている。このため、第2空間60b内の気体が、リーク孔67a、67bを介して、収容部60の外に均等かつ速やかに排出されやすく、好ましい。
リーク孔67a、67bは、略円筒状の形状を有している。本実施形態では、リーク孔67a、67bとして、略円筒状の形状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、リーク孔67a、67bの形状は、略円筒状に限定されるものではなく、例えば、長円形状、楕円形状、多角形状などの断面形状を有する筒状のものであってもよい。
【0204】
また、本実施形態では、リーク孔67a、67bが2つ設けられている場合を例に挙げて説明したが、リーク孔の数は特に限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
また、本実施形態では、リーク孔67a、67bが、第4挿入孔66を挟むように、第4挿入孔66を中心としてY方向両側に等間隔で離間して並べられている場合を例に挙げて説明したが、リーク孔は第2ケース6bを貫通して第4壁面6fに開口していればよく、リーク孔の位置は特に限定されない。
【0205】
第2ケース6bの第1ケース6aと接する第2接合面には、収容部60を囲む環状の接着剤侵入阻止溝67dが設けられていることが好ましい。接着剤侵入阻止溝67dの平面視でY方向外側は、第1ケース6aと接着される第2接着部位とされている。第2接着部位は、第2ケース6bの第2接合面の縁部に沿って設けられている。
本実施形態では、図22(a)および図22(b)に示すように、第2ケース6bに設けられた第2凹部68bの外周を囲むように、帯状に接着剤侵入阻止溝67dが配置されている。接着剤侵入阻止溝67dは、平面視で第2凹部68bと所定の間隔で離間して配置されている。接着剤侵入阻止溝67dは、略一定の幅および深さで形成されている。接着剤侵入阻止溝67dの幅は、接着剤が収容部60に侵入不可能となる幅であればよく、特に限定されない。また、接着剤侵入阻止溝67dの深さは、第1ケース6aと第2ケース6bとの接合に使用した余分な接着剤を収容できればよく、特に限定されない。
また、接着剤侵入阻止溝67dの平面形状は、環状に限定されるものではない。接着剤侵入阻止溝67dは、例えば、第2接合面の収容部60と第2接着部位との間から第2ケース6bの外面まで延在して設けられていても良い。
【0206】
接着剤侵入阻止溝67dと第2凹部68bとの間には、2つの第2当接面68cと、2つの第2当接面68c間を繋ぐ帯状の2つの挿入孔形成面64c、65cとが設けられている。
2つの第2当接面68cは、平面視略コ字状であり、図22(a)および図22(b)に示すように、平面視でY方向に対向配置されている。2つの第2当接面68cは、後述する第1ケース6aの第1当接面68aと接して配置される。このことにより、2つの第2当接面68cは、収容部60を区画する。
【0207】
2つの挿入孔形成面64c、65cは、平面視でX方向に対向配置されている。挿入孔形成面64cは、後述する第1ケース6aの第1凸部68dと対向配置されることにより、第1壁面6cに開口する第1挿入孔64の開口64dを形成する。挿入孔形成面65cは、後述する第1ケース6aの第1凸部68dと対向配置されることにより、第2壁面6dに開口する第2挿入孔65の開口を形成する。
【0208】
2つの挿入孔形成面64c、65cのY方向の長さは、ヒューズエレメント2のY方向の長さよりも長くなっており(図2参照)、挿入孔形成面64c、65c上に接してヒューズエレメント2が配置されるようになっている。
図22(b)に示すように、挿入孔形成面64c、65cは、第2当接面68cよりもZ方向において第4壁面6fに近い位置に設けられている。このことにより、挿入孔形成面64c、65cと第2当接面68cとの境界部分には、それぞれ第1挿入孔64および第2挿入孔65の高さ寸法に対応する段差が形成されている。
【0209】
図22(a)および図22(b)に示すように、挿入孔形成面64cの接着剤侵入阻止溝67dを挟んでX方向外側には、凹部64aが設けられ、その外側には端子載置面64bが設けられている。また、挿入孔形成面65cの接着剤侵入阻止溝67dを挟んでX方向外側には、凹部65aが設けられ、その外側には端子載置面65bが設けられている。
【0210】
凹部64aの平面形状は、ヒューズエレメント2の第1端部21と第1端子61との接合部の形状に対応する形状とされている。凹部65aの平面形状は、ヒューズエレメント2の第2端部22と第2端子62との接合部の形状に対応する形状とされている。
図22(b)に示すように、凹部64a、65aの表面は、Z方向において挿入孔形成面64c、65cと同一平面とされている。図19に示すように、凹部64aの表面は、後述する第1ケース6aの第2凸部68eと対向配置されることにより、第1壁面6cに開口する第1挿入孔64の一部を形成する。凹部65aの表面は、後述する第1ケース6aの第2凸部68eと対向配置されることにより、第2壁面6dに開口する第2挿入孔65の一部を形成する。
【0211】
図22(b)に示すように、端子載置面64b、65bは、凹部64a、65aの表面よりもZ方向において第4壁面6fから遠い位置に設けられている。このことにより、端子載置面64b、65bと凹部64a、65aとの境界部分には、それぞれ第1挿入孔64および第2挿入孔65の高さ寸法に対応する段差が形成されている。また、端子載置面64b、65bは、第1端子61および第2端子62の厚みに対応する寸法分、第2当接面68cよりもZ方向において第4壁面6fに近い位置に設けられている。
【0212】
図19に示すように、挿入孔形成面64c、65cには、ヒューズエレメント2が配置される。凹部64aの表面上には、ヒューズエレメント2の第1端部21と第1端子61との接合部が配置される。凹部65aの表面上には、ヒューズエレメント2の第2端部22と第2端子62との接合部が配置される。
また、端子載置面64b上には、第1端子61が配置される。端子載置面65b上には、第2端子62が配置される。
【0213】
第2ケース6bの第1ケース6aとの対向面における4つの角部には、それぞれ略円筒状の接合穴69aが設けられている。
【0214】
第1ケース6aは、略直方体であり、図19図23(a)および図23(c)に示すように、第2ケース6bの第2当接面68cが当接されることにより、2つの第2当接面68cと第1ケース6aの2つの第1凸部68dと第1当接面68aと板状部30とに囲まれた平面視矩形の第1空間60aを形成する。第1空間60aの平面形状は、第2空間60bの平面形状と同じである。
【0215】
第1ケース6aにおける2つの第1凸部68dは、それぞれ平面視で挿入孔形成面64c、65cと同形であり、挿入孔形成面64c、65cと平面視で重なり合っている。
図23(a)に示すように、2つの第1凸部68dの対向する面は、それぞれ第1壁面6cおよび第2壁面6dとされている。第1凸部68dの高さ寸法は、第1空間60aの体積が第2空間60bの体積よりも小さくなる寸法とされている。
【0216】
第1ケース6aにおいて、第1当接面68aは第3壁面6eを形成する。第3壁面6e(第1当接面68a)には、図19図23(a)および図23(c)に示すように、第3壁面6eに開口する凹部63が設けられている。図19に示すように、凹部63内には、スライダー3の遮蔽部31が収容される。凹部63は、スライダー3の遮蔽部31が収容され、遮蔽部がZ方向にスライド移動可能な空間であるから、第1実施形態の遮蔽部収容空間160a、及び、第2実施形態の遮蔽部収容空間260aに相当する。
凹部63は、図23(a)および図23(c)に示すように、第1凸部68dの内側の面(第1壁面6c)に沿って平面視でY方向に帯状に設けられている。凹部63の内面は、第1凸部68dの内側の面から連続して設けられている。
【0217】
凹部63の平面形状は、スライダー3の遮蔽部31の平面形状に対応する形状とされている。具体的には、図19に示すように、凹部63は、スライダー3の遮蔽部31が凹部63の内壁面に近接もしくは接触しつつ凹部63内に嵌る形状であることが好ましい。凹部63のX方向内壁面間距離と、スライダー3の遮蔽部31のX方向厚みとの差は、例えば、0.03~0.2mmとすることができ、0.05~0.1mmとすることが好ましい。
【0218】
凹部63のX方向内壁面間距離と、スライダー3の遮蔽部31のX方向厚みとの差が0.03mm以上であると、第1空間60a内の圧力上昇によるスライダー3の移動がスムーズとなり、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。これは、上記差が0.03mm以上であると、凹部63内にスライダー3の遮蔽部31が引掛りにくいためである。したがって、上記離間距離が0.03mm以上であると、スライダー3が移動する前に第1空間60a内の圧力が上昇して、スライダー3から遮蔽部31が分離されたり、収容部60が破壊されたりすることがない。
【0219】
また、上記離間距離が0.2mm以下であると、凹部63が、ヒューズエレメント2の溶断時に所定の位置にスライダー3を移動させるガイドとして機能する。したがって、ヒューズエレメント2の溶断時に移動するスライダー3の位置ずれが防止され、第1挿入孔64の開口64dが遮蔽部31によってより確実に塞がれ、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。
【0220】
凹部63の深さ(Z方向の長さ)寸法は、図19に示すように、スライダー3の遮蔽部31を収容可能な長さとされている。凹部63の底面は、遮蔽部31の上面と接していてもよいし、離間していてもよい。
図23(a)および図23(c)に示すように、凹部63のY方向両端部のY方向中心側には、それぞれ空間63aが設けられている。空間63aは、平面視略半月形の形状を有し、凹部63の内壁面に沿って、凹部63の開口部から底面までZ方向に連続して設けられている。空間63aの平面積は、例えば0.5~4mmとすることができ、0.7~2mmであることが好ましい。
【0221】
空間63aは、ヒューズエレメント2の遮断部23の溶断時に発生するアーク放電による第1空間60a内の圧力上昇時に、第1空間60a内の気体を凹部63内に供給する。
空間63aを介して凹部63に気体が供給されると、スライダー3がスムーズに移動する。これにより、第1挿入孔64の開口64dが遮蔽部31によって素早く塞がれ、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。また、空間63aは、凹部63内に遮蔽部31を収容する際に、凹部63内の気体を凹部63の外に排出する。このことにより、空間63aは、凹部63内に遮蔽部31を収容する作業を容易にし、保護素子100の生産性を向上させる。
【0222】
本実施形態では、空間63aが、凹部63のY方向両端部にそれぞれ設けられているため、空間63aを介した凹部63内への気体の供給むら、および凹部63内から凹部63の外への気体の排出むらが生じにくい。このため、空間63aを有することによる効果が、より顕著に得られる。
本実施形態では、空間63aを2つ有する場合を例に挙げて説明したが、空間の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよく、特に限定されない。
また、空間は、凹部63の内壁面に沿って形成されていればよく、空間の平面形状は、特に限定されない。
【0223】
第1ケース6aの第2ケース6bと接する第1接合面には、収容部60を囲む環状の接着剤侵入阻止溝67cが設けられていることが好ましい。接着剤侵入阻止溝67cの平面視でY方向外側は、第2ケース6bと接着される第1接着部位とされている。第1接着部位は、第1ケース6aの第1接合面のY方向縁部に沿って設けられている。
本実施形態では、第1ケース6aにおける、第2ケース6bに設けられた接着剤侵入阻止溝67dと対向配置される位置に、帯状に接着剤侵入阻止溝67cが設けられている。
接着剤侵入阻止溝67cは、第2ケース6bに設けられた接着剤侵入阻止溝67dと平面視同形であり、略一定の深さで形成されている。接着剤侵入阻止溝67dの深さは、第2ケース6bに設けられた接着剤侵入阻止溝67cと同じであってもよいし、図19に示すように、異なっていてもよい。
【0224】
第1ケース6aおよび第2ケース6bに設けられた接着剤侵入阻止溝67c、67dは、第1ケース6aと第2ケース6bとを接着剤を用いて接合した場合に、余分な接着剤がヒューズエレメント2に付着したり、収容部60内に侵入したりすることを防止する。接着剤侵入阻止溝67c、67dが設けられていることで、ヒューズエレメント2に接着剤が付着して、ヒューズエレメント2の導電性を低下させることを防止できる。また、接着剤侵入阻止溝67c、67dが設けられていることにより、収容部60内に侵入した接着剤がスライダー3の移動に支障を来すことを防止できる。
接着剤侵入阻止溝67c、67dは、第1ケース6aと第2ケース6bとを接着剤を用いて接合する場合には、設けられていることが好ましいが、設けられていなくてもよい。
また、接着剤侵入阻止溝67c、67dのうち、どちらか一方のみ設けられていてもよい。
【0225】
図23(a)および図23(c)に示すように、第1凸部68dの接着剤侵入阻止溝67dを挟んでX方向外側には、それぞれ第2凸部68eが設けられている。第2凸部68eの表面は、Z方向において第1凸部68dと同一平面とされている。また、第2凸部68eのY方向の長さは、第1凸部68dと同じとなっている。
【0226】
第1ケース6aの第2ケース6bとの対向面における4つの角部には、それぞれ略円柱状の接合凸部69bが設けられている。各接合凸部69bは、それぞれ第2ケース6bに設けられている接合穴69aに嵌合する。本実施形態では、接合凸部69bおよび接合穴69aが、4つの角部にそれぞれ設けられているため、第1ケース6aと第2ケース6bとが所定の位置に精度よく固定される。
【0227】
本実施形態では、接合穴69aとして略円筒状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、接合穴の形状は、略円筒状に限定されるものではない。また、本実施形態では、接合凸部69bとして略円柱状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、接合凸部の形状は、略円柱状に限定されるものではない。接合穴69aおよび接合凸部69bは、例えば、長円形状、楕円形状、多角形状の断面形状を有するものであってもよい。
【0228】
また、接合穴69aおよび接合凸部69bの数は、4つに限定されるものではなく、1つ~3つであってもよいし、5つ以上であってもよく、第1ケース6aおよび第2ケース6bの平面形状などに応じて適宜決定できる。
また、接合穴69aおよび接合凸部69bの大きさは、特に限定されるものではなく、第1ケース6aおよび第2ケース6bの厚み、平面形状などに応じて適宜決定できる。
【0229】
第1ケース6aおよび第2ケース6bは、絶縁材料からなる。第1ケース6aおよび第2ケース6bの材料としては、スライダー3と同様のものを用いることができる。第1ケース6aおよび第2ケース6bの材料と、スライダー3との材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1ケース6aと第2ケース6bの材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1ケース6aおよび第2ケース6bがセラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱できる。したがって、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
第1ケース6aおよび第2ケース6bの材料として、ガラス転移温度の高い樹脂材料を用いる場合、耐トラッキング性が高いため、ナイロン系樹脂を用いることが好ましい。ナイロン系樹脂の中でも、特に、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9Tを用いることが好ましい。
第1ケース6aおよび第2ケース6bは、公知の方法により製造できる。
【0230】
(保護素子の製造方法)
次に、本実施形態の保護素子100の製造方法について、例を挙げて説明する。
図24(a)および図24(b)は、第4実施形態の保護素子100の製造方法を説明するための工程図である。
本実施形態の保護素子100を製造するには、図20(b)に示すヒューズエレメント2と、図21(a)~図21(e)に示すスライダー3を用意する。そして、スライダー3の遮蔽部貫通孔32にヒューズエレメント2を貫通させて、図24(a)に示すように、スライダー3の板状部30上にヒューズエレメント2を載置し、スライダー3の遮蔽部貫通孔32内にヒューズエレメント2の遮断部23を配置する。
【0231】
次に、第1端子61および第2端子62を用意する。そして、図20(a)に示すように、ヒューズエレメント2の第1端部21上に第1端子61をハンダ付けすることにより接続する。また、第2端部22上に第2端子62をハンダ付けすることにより接続する。本実施形態においてハンダ付けに使用されるハンダ材料としては、公知のものを用いることができ、抵抗率と融点の観点からSnを主成分とするものを用いることが好ましい。
ヒューズエレメント2の第1端部21、第2端部22と、第1端子61、第2端子62とは、溶接による接合によって接続されていてもよいし、リベット接合、ネジ接合などの機械的接合によって接続されていてもよく、公知の接合方法を用いることができる。
【0232】
次に、図23(a)~図23(c)に示す第1ケース6aと、図22(a)~図22(c)に示す第2ケース6bとを用意する。そして、図24(b)に示すように、第2ケース6b上に、ヒューズエレメント2と、第1端子61および第2端子62と、スライダー3とが一体化された部材を設置する。上記部材は、図20に示すように、スライダー3の凸部33を第4壁面6f側に向けて、第2ケース6bの第2凹部68b内に設けられた第4挿入孔66と、凸部33とが平面視で重なるように配置するとともに、スライダー3の遮蔽部31を第2ケース6bの第1壁面6cに沿って配置する。このことにより、スライダー3は、第4壁面6fと離間した状態で、第2凹部68b上に、ヒューズエレメント2の遮断部23によって支持された状態となる。
【0233】
その後、第2ケース6bに設けられた接合穴69aと、第1ケース6aに設けられた接合凸部69bとを嵌合させて、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する(図2参照)。
第1ケース6aと第2ケース6bとの接合には、必要に応じて接着剤を用いることができる。接着剤としては、例えば、熱硬化性樹脂を含む接着剤を用いることができる。
【0234】
第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する際には、凹部63内に遮蔽部31を収容し、第2ケース6bに設けられた接着剤侵入阻止溝67cと、第1ケース6aに設けられた接着剤侵入阻止溝67dを対向配置し、第2ケース6bに設けられた2つの挿入孔形成面64c、65cと、第1ケース6aの2つの第1凸部68dとが、それぞれ平面視で重なるように配置して接合する(図2参照)。このことにより、ケース6内に、スライダー3の板状部30によって区分けされた第1空間60aと第2空間60bとからなる収容部60が形成される。
【0235】
また、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合する際には、対向配置された2つの挿入孔形成面64c、65cと第1凸部68dとの間に、ヒューズエレメント2をそれぞれ設置する。したがって、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合することにより、収容部60内の第1壁面6cに開口する第1挿入孔64に、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容され、第2壁面6dに開口する第2挿入孔65に、ヒューズエレメント2の第2端部22が収容され(図19参照)、ヒューズエレメント2に接続された第1端子61および第2端子62の一部が、ケース6の外部に露出された状態となる(図17参照)。
以上の工程により、本実施形態の保護素子100が得られる。
【0236】
(保護素子の動作)
次に、本実施形態の保護素子100のヒューズエレメント2に、定格電流を越えた電流が流れた場合における保護素子100の動作について、図面を用いて説明する。
図25図27は、第4実施形態の保護素子100の動作を説明するための図であり、図17に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
【0237】
本実施形態の保護素子100のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れると、ヒューズエレメント2は、過電流による発熱によって昇温する。そして、スライダー3の遮蔽部貫通孔32内に配置されたヒューズエレメント2の遮断部23が、昇温により軟化して、溶断される。このとき、図25に示すように、遮断部23の溶断面同士の間にスパークが発生し、図26に示すように、アーク放電が発生する。アーク放電が発生すると、第1空間60a内の圧力が上昇する。
【0238】
本実施形態の保護素子100では、第1空間60a内の圧力上昇によって、収容部60内における第1空間60aの割合が大きくなるように、スライダー3が移動(図26では、下方に移動)する。その結果、図26に示すように、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容された第1挿入孔64の開口64dが、スライダー3の遮蔽部31によって塞がれる。このことにより、溶断された遮断部23の溶断面同士が、図27に示すように、スライダー3の遮蔽部31によって絶縁され、ヒューズエレメント2を介した通電経路が、物理的に確実に遮断される。よって、アーク放電が迅速に消滅(消弧)する。
【0239】
また、第1空間60a内の圧力上昇によるスライダー3の移動によって、図27に示すように、スライダー3の凸部33が第4挿入孔66内に収容される。このため、移動中のスライダー3の位置ずれが防止され、所定の位置にスライダー3が移動し、スライダー3が第4壁面6f上に固定される。したがって、移動したスライダー3が元の位置に戻るリバウンドが生じにくく、アーク放電がより確実に消滅される。また、スライダー3の凸部33が第4挿入孔66内に収容されることにより、所定の位置にスライダー3が移動したことを、ケース6の外から確認できる。
【0240】
本実施形態では、第1空間60a内の圧力上昇によって、収容部60内における第1空間60aの割合が大きくなるようにスライダー3が移動しても、第2空間60b内の圧力上昇が抑制される。これは、第4挿入孔66およびリーク孔67a、67b(図22(a)および図22(c)参照)を介して、第2空間60b内の気体が収容部60の外に排出されるためである。したがって、第2空間60b内の圧力上昇によって、スライダー3の移動が妨げられることがなく、スライダー3が迅速に移動する。その結果、本実施形態の保護素子100では、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。また、第2空間60b内の圧力上昇によって、収容部60が破壊されることを防止できるため、安全性に優れる。
リーク孔67a、67bは、第1空間60a内の圧力上昇によって、スライダー3の第2面30dが第4壁面6fに押し付けられることにより塞がれる。
【0241】
本実施形態の保護素子100では、図19に示すように、第1空間60aの体積が、第2空間60bの体積よりも小さい。このため、第1空間60aの体積が、第2空間60bの体積よりも大きい場合と比較して、ヒューズエレメント2の遮断部23の溶断時に発生するアーク放電による第1空間60a内の圧力変化が急峻となりやすい。その結果、第1空間60a内の圧力上昇によるスライダー3の移動が素早いものとなり、アーク放電がより迅速かつ確実に消滅される。
【0242】
本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2の遮断部23の溶断時に発生するアーク放電によって、ケース6の収容部60内における第1空間60a内の圧力が上昇すると、第1空間60aの割合が大きくなるようにスライダー3が移動する。このことにより、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容された第1挿入孔64の開口64dが、スライダー3の遮蔽部31によって塞がれる。したがって、本実施形態の保護素子100では、溶断されたヒューズエレメント2の溶断面同士が、スライダー3の遮蔽部31によって絶縁される。その結果、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。よって、本実施形態の保護素子100は、例えば、高電圧かつ大電流の電流経路にも好ましく設置できる。
【0243】
[第5実施形態]
図28は、第5実施形態の保護素子200を説明するための断面図であり、第4実施形態に係る保護素子100を図17に示すA-A´線に沿って切断した位置に対応する断面図である。図29は、第5実施形態の保護素子200の一部を説明するための拡大図であり、図29(a)はスライダーを示した平面図であり、図29(b)は第1ケースを示した平面図であり、図29(c)はスライダー防着溝を示した斜視図である。
【0244】
第5実施形態に係る保護素子200において、上述した第4実施形態に係る保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
第5実施形態に係る保護素子200が、第4実施形態に係る保護素子100と異なるところは、第1空間60a側の板状部30上と、第1空間60a内のヒューズエレメント2と対向配置される第3壁面6eとに、それぞれ溝が配置されていることのみである。
【0245】
図28および図29(a)に示すように、第1空間60a側の板状部30上の全面には、X方向(第1方向)と交差する方向(Y方向)に延びるスライダー防着溝43が複数本並行に配置されている。図29(a)に示す複数本のスライダー防着溝43は、断面視矩形であって全て同形であり、所定のピッチで等間隔に並べられている。
本実施形態では、スライダー防着溝43として、X方向と交差する方向に延びる溝が配置されている場合を例に挙げて説明したが、スライダー防着溝の延在方向は、特に限定されるものではなく、X方向に延在していてもよい。
【0246】
図29(c)に示すように、スライダー防着溝43の幅43aは、例えば、100μm~200μmとすることができる。また、隣接するスライダー防着溝43間の間隔43b(ピッチ)は、例えば、100μm~200μmとすることができる。スライダー防着溝43の深さ43cは、例えば、100μm~200μmとすることができる。
スライダー防着溝43の幅43a、隣接するスライダー防着溝43間の間隔43b、深さ43cが、上記範囲内であると、ヒューズエレメント2の溶断時に第1空間60a内で飛散したヒューズエレメント2の溶融物が、新たな通電経路を形成することを防止する効果が顕著になる。しかも、スライダー防着溝43の幅43a、隣接するスライダー防着溝43間の間隔43b、深さ43cが、上記範囲内であると、スライダー防着溝43を有することが保護素子200の生産性および小型化に支障を来したり、板状部30の強度に支障を来したりすることがない。
【0247】
スライダー防着溝43の本数は、板状部30の面積、スライダー防着溝43の幅43a、隣接するスライダー防着溝43間の間隔43bに応じて、適宜決定でき、特に限定されない。
スライダー防着溝43は、公知の方法により形成できる。
【0248】
図28および図29(b)に示すように、第1空間60a内のヒューズエレメント2と対向配置される第3壁面6eの全面に、X方向(第1方向)と交差する方向に延びる壁面防着溝46が複数本並行に配置されている。図29(b)に示す複数本の壁面防着溝46は、断面視矩形であって全て同形であり、所定のピッチで等間隔に並べられている。
図28に示す本実施形態の保護素子200では、壁面防着溝46の形状は、図29(c)に示すスライダー防着溝43の形状と同じとされている。
【0249】
本実施形態では、壁面防着溝46の形状として、スライダー防着溝43と同じ形状である場合を例に挙げて説明したが、壁面防着溝46の形状は、スライダー防着溝43と異なっていてもよい。
また、壁面防着溝46として、X方向と交差する方向に延びる溝が配置されている場合を例に挙げて説明したが、壁面防着溝の延在方向は、特に限定されるものではなく、X方向に延在していてもよい。壁面防着溝46の延在方向は、図28に示す本実施形態の保護素子200のように、スライダー防着溝43と同じであってもよいし、スライダー防着溝43と異なっていてもよい。
壁面防着溝46の幅、隣接する壁面防着溝46間の間隔、深さはそれぞれ、上述したスライダー防着溝43の幅43a、隣接するスライダー防着溝43間の間隔43b、深さ43cと同様の寸法範囲とすることができる。
壁面防着溝46は、公知の方法により形成できる。
【0250】
本実施形態の保護素子200では、壁面防着溝46とスライダー防着溝43の両方を有する場合を例に挙げて説明したが、壁面防着溝46とスライダー防着溝43のうち、いずれか一方のみ設けられていてもよい。
【0251】
本実施形態の保護素子200においても、第4実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2の遮断部23の溶断時に発生するアーク放電によって、ケース6の収容部60内における第1空間60a内の圧力が上昇すると、第1空間60aの割合が大きくなるようにスライダー3が移動する。このことにより、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容された第1挿入孔64の開口64dが、スライダー3の遮蔽部31によって塞がれる。したがって、本実施形態の保護素子200においても、第4実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。
【0252】
さらに、図28に示す本実施形態の保護素子200においては、第3壁面6eに壁面防着溝46が設けられ、板状部30上にスライダー防着溝43が設けられている。壁面防着溝46およびスライダー防着溝43は、ヒューズエレメント2の溶断時に第1空間60a内で飛散したヒューズエレメント2の溶融物が、通電経路を形成することを防止する。このため、本実施形態の保護素子200では、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、より確実かつ迅速に消滅(消弧)される。
【0253】
[第6実施形態]
図30は、第6実施形態の保護素子300を説明するための断面図である。
第6実施形態に係る保護素子300において、上述した第4実施形態に係る保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
第6実施形態に係る保護素子300が、第4実施形態に係る保護素子100と異なるところは、第3壁面6eに開口する凹部63がなく、第1空間60c内の高さ(Z方向の長さ)寸法が略均一とされていることのみである。
【0254】
図30に示すように、本実施形態の保護素子300における第1空間60cは、第4実施形態に係る保護素子100と同様に、第2空間60bと同じ平面形状を有する。
一方、保護素子300における第1空間60cの高さ(Z方向の長さ)寸法は、第4実施形態に係る保護素子100とは異なり、略均一であって、スライダー3の板状部30における第1面30cの上面から遮蔽部31の上面までの距離(Z方向の長さ)よりも長いものとなっている。
【0255】
第6実施形態の保護素子300は、第1ケース6aの第2ケース6bと対向配置される側の面に、公知の方法を用いて、第1空間60cの形状に対応する凹部を形成すること以外は、上述した第4実施形態に係る保護素子100と同じ方法により製造できる。
【0256】
本実施形態の保護素子300においても、第4実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2の遮断部23の溶断時に発生するアーク放電によって、ケース6の収容部60内における第1空間60c内の圧力が上昇すると、第1空間60cの割合が大きくなるようにスライダー3が移動する。このことにより、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容された第1挿入孔64の開口64dが、スライダー3の遮蔽部31によって塞がれる。したがって、本実施形態の保護素子300においても、第4実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。
【0257】
また、図30に示す第6実施形態に係る保護素子300においては、第1空間60c内の第3壁面6eに開口する凹部63がなく、第1空間60c内の高さ(Z方向の長さ)寸法が略均一とされている。このため、第1ケース6aの第2ケース6bと対向配置される側の面に、第3壁面6eに開口する凹部63を形成する必要はないし、組み立て時に凹部63内に遮蔽部31を収容する必要もない。また、本実施形態の保護素子300における第1空間60cは、単純で形成しやすい形状である。したがって、本実施形態の保護素子300は、第1空間60cとなる凹部を有する第1ケース6aを容易に効率よく製造できるし、組み立ても容易であり、生産性に優れる。
【0258】
[第7実施形態]
図31は、第7実施形態の保護素子400を説明するための断面図であり、第4実施形態に係る保護素子100を図17に示すA-A´線に沿って切断した位置に対応する断面図である。図32は、第7実施形態の保護素子400の有するスライダーと発熱部材(発熱体)とを示した斜視図である。
第7実施形態に係る保護素子400が、第4実施形態に係る保護素子100と異なるところは、遮断部23を溶断する発熱部材51が備えられていることのみである。
【0259】
第7実施形態の保護素子400では、図31に示すように、発熱部材51が、ヒューズエレメント2の第2空間60b側に、遮断部23に接して配置されている。発熱部材51は、ヒューズエレメント2の遮断部23を加熱して軟化させる機能を有する。発熱部材51は、保護素子400の通電経路となる外部回路に異常が発生して通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電されて発熱する。また、ヒューズエレメント2が溶断されると、発熱部材51への給電が遮断され、発熱部材51の発熱が停止する。発熱部材51としては、公知のものを用いることができる。
【0260】
第7実施形態の保護素子400では、図31および図32に示すように、スライダー3の板状部30上には、発熱部材51が収容される発熱部材用凹部52が設けられている。
発熱部材用凹部52は、図32に示すように、板状部30の第1縁部30aに沿う遮蔽部貫通孔32との対向面に設けられている。
発熱部材51は、略直方体形状を有するものであり、発熱部材51のX方向(第1方向)およびY方向の幅は、ヒューズエレメント2の遮断部23を効率よく加熱できるように、遮断部23のX方向およびY方向の幅に応じて適宜決定される。また、発熱部材用凹部52のX方向およびY方向の幅は、発熱部材51のX方向およびY方向の幅に応じて決定される。
【0261】
第7実施形態の保護素子400において、発熱部材用凹部52の深さ(Z方向の長さ)は、発熱部材用凹部52内に発熱部材51を設置した状態での、スライダー3の板状部30上と発熱部材51上とが同一平面となる深さとされている。
第7実施形態の保護素子400は、発熱部材用凹部52内に公知の方法により発熱部材51を設置してから、スライダー3の遮蔽部貫通孔32にヒューズエレメント2を貫通させること以外は、上述した第4実施形態に係る保護素子100と同じ方法により製造できる。
【0262】
本実施形態の保護素子400においても、第4実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2の遮断部23の溶断時に発生するアーク放電によって、ケース6の収容部60内における第1空間60a内の圧力が上昇すると、第1空間60aの割合が大きくなるようにスライダー3が移動する。このことにより、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容された第1挿入孔64の開口64dが、スライダー3の遮蔽部31によって塞がれる。したがって、本実施形態の保護素子400においても、第4実施形態の保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。
【0263】
また、図31に示す第7実施形態に係る保護素子400においては、遮断部23を溶断する発熱部材51が、ヒューズエレメント2の第2空間60b側に、遮断部23に接して配置されている。したがって、保護素子400の通電経路となる外部回路に異常が発生して通電経路を遮断する必要が生じた場合、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電されて発熱部材51が発熱し、効率よく遮断部23が加熱される。また、ヒューズエレメント2が溶断されると、発熱部材51への給電が遮断され、発熱部材51の発熱が停止する。よって、本実施形態の保護素子400は、優れた安全性を有する。
【0264】
[他の例]
本発明の保護素子は、上述した第1実施形態~第7実施形態の保護素子に限定されるものではない。
例えば、上述した第4実施形態~第7実施形態では、スライダー3の板状部30における遮蔽部31と反対側の面に凸部33が設けられ、第2空間60b内のスライダー3と対向配置される第4壁面6fに開口する第4挿入孔66を有する場合を例に挙げて説明したが、スライダー3の凸部33および第4壁面6fに開口する第4挿入孔66は、必要に応じて設けられるものであり、設けられていなくてもよい。
【0265】
また、上述した第4実施形態~第7実施形態では、第4壁面6fに開口し、ケース6を貫通するリーク孔67a、67bが設けられている場合を例に挙げて説明したが、リーク孔67a、67bは、必要に応じて設けられるものであり、設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0266】
2 ヒューズエレメント
3 スライダー
6 ケース
6a 第1ケース
6b 第2ケース
6c 第1壁面
6d 第2壁面
6e 第3壁面
6f 第4壁面
21 第1端部
22 第2端部
23 遮断部
25 第1連結部
26 第2連結部
30 板状部
30a 第1縁部
30c 第1面
30d 第2面
31 遮蔽部
32 遮蔽部貫通孔
33 凸部
43 スライダー防着溝
46 壁面防着溝
51 発熱部材
52 発熱部材用凹部
60 収容部
60a、60c 第1空間
60b 第2空間
61 第1端子
61a、62a 外部端子孔
61c、62c 鍔部
62 第2端子
63 凹部
63a 空間
64 第1挿入孔
64a、65a 凹部
64b、65b 端子載置面
64c、65c 挿入孔形成面
65 第2挿入孔
64d 開口
66 第4挿入孔
66a 開口部
67a、67b リーク孔
67c、67d 接着剤侵入阻止溝
68a 第1当接面
68b 第2凹部
68c 第2当接面
68d 第1凸部
68e 第2凸部
69a 接合穴
69b 接合凸部
100、200、300、400 保護素子
102、202、202A、202AA ヒューズエレメント
202AA-2 202AA-3 発熱体用ヒューズエレメント
103、203 スライダー
106、206 ケース
106a、206a 第1ケース
106b、206b 第2ケース
123、223 遮断部
130、230 板状部
131、231 遮蔽部
132、232 遮蔽部貫通孔
160、260 収容部
160a、260a 遮蔽部収容空間
160b、260b 板状部移動空間
260c 板状部収容空間
261 ヒューズエレメント収容空間
268a、268b 内部リーク孔
271 外部リーク孔
290a、290b 発熱体
1000、2000、3000 保護素子
図1
図2
図3
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