(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20241205BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20241205BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20241205BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C02F1/461 A
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C25B1/26 A
C25B15/08 302
(21)【出願番号】P 2021210031
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一桐 正志
(72)【発明者】
【氏名】千葉 博資
(72)【発明者】
【氏名】陳 致堯
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/027477(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027473(WO,A1)
【文献】特開2009-226326(JP,A)
【文献】特開2010-188307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C02F 1/66- 1/68
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液の原料薬液を電気分解して電解生成物の塩素ガスを発生させ、塩素ガスを給水中に混気し、電解水を生成する装置上部に配置する電解槽と、
装置下部に接続する給水源から電解槽に給水する流路の途中に電解水トラップを有する給水系と、
装置下部に配置する電解液移送機器を有し、電解液タンクの電解液を電解槽へ供給する電解液供給系とを備え、
電解槽は、混気部において電解槽の開口部から電解生成物である塩素ガスを給水系の管路を流れる給水中に混気し、電解水を生成し、
電解水トラップは、
給水系が電解槽の混気部に接続する流入口より高位置を流れる高位流路を有し、電解槽から給水系への電解水の逆流を抑制することを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
電解水トラップは、電解槽より低位の給水源から電解槽への流入口より高位置を流れる第1の高位流路と、この高位流路に続く電解槽より低位の低位流路を構成するU字状管路とを有し、U字状管路を通して電解槽の流入口に接続することを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
電解液供給系は、電解液移送機器から電解槽へ至る流路の途中に電解生成物トラップを有し、
電解生成物トラップは、横軸廻り、または縦軸廻りに旋回する旋廻流路を有し、電解槽から電解液供給系への電解生成物の逆流を抑制することを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
電解液供給系は、コネクタを介して電解液タンクを電解液移送機器に接続することを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
給水系は、管路の接続にクイックファスナーおよび連結継手を用いることを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
装置構造材を透明性樹脂で形成することにより、または装置構造材に肉抜き加工を施すことで装置構造材が視認性を有することを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌、消臭、除塵、ガス除去の機能を備える空気清浄装置等に使用する電解水生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気清浄装置に使用する電解水生成装置は、電解槽で原料薬液を電気分解して塩素ガスを発生させ、塩素ガスを給水系から供給する給水中に混気し、微酸性電解水を生成している。
【0003】
また、特許文献1に記載する電解水製造装置は、電解槽と、電解槽に原料水を供給する原料ポンプと、原料ポンプの吐出口と電解槽の流入口とを接続する原料水配管と、原料水配管において吐出口と流入口との間に形成される電解液移流抑止部とを備えており、原料ポンプを電解槽より上方に配することで、電解液移流抑止部を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の空気清浄装置に使用する電解水生成装置では、給水系が電解槽より低い位置から給水しており、電解槽より高い位置からの供給が困難であった。このため、電解水生成装置の停止中に、電解槽付近の流路に滞留する電解水が給水系に逆流して拡散し、給水系の水路を構成する電磁弁、減圧弁、逆止弁、流量計などの水路部品を破損させ、故障や漏水を引き起こす場合がある。
【0006】
また、電解槽に電解液を移送する電解液供給系が電解槽より低い位置から電解液を、チューブを流路として供給しており、装置の構造上、電解槽より高い位置からの供給が困難であった。このため、電解水生成装置の停止中に、電解槽内の電解生成物がチューブを通して逆流し、電解液供給系を構成する移送機器にまで拡散して沈降し、その強酸化力により移送機器の部品を破損させ、漏水や腐食を引き起こす場合がある。
【0007】
また、電解液供給系は、流路をなす電解液吸引チューブと電解液タンクとの接続において気密性を確保するために、電解液吸引チューブの吸引具に配置したOリングをバネの力で電解液タンクの開口に押し付けている。しかし、Oリングやバネの弾力性が経年劣化し、気密性が損なわれて電解液の吸込みに不具合が生じ、電解槽への電解液供給が滞ることで電解不良を引き起こす場合がある。
【0008】
また、一体化した部品が多く、各部品間をネジ接続している。このため、故障時に部品を交換する際に、ネジ接続の接合離脱を行う必要があり、作業性が悪かった。さらに、一体化した部品は部分的な交換ができないので、一部の破損であっても一体化した部品の全体を交換する必要があり、コスト高となり、環境への負荷も大きかった。
【0009】
また、装置構造材であるブラケット(筐体)等が金属平板からなることで、装置内に収めた部品の視認性が低く、構造的に部品にアクセスし難いので、メンテナンスや部品交換時の作業性が悪かった。
【0010】
特許文献1の構成では、原料水配管において吐出口と流入口との間に形成される電解液移流抑止部は、U字状の流路を繋げているので、原料ポンプと電解槽とを一直線に配置することができず、流路が長くなる。このため、原料ポンプの駆動開始から電解槽に電解液が到達するまでに時間を要し、制御の応答性が悪く、エラー発生の原因となっている。
【0011】
本発明は上記した課題を解決するものであり、漏水や腐食などのトラブルを未然に防止し、メンテナンスや部品交換時の作業性の向上によって、メンテナスコスト削減や作業時間の短縮を実現できる電解水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の電解水生成装置は、電解液の原料薬液を電気分解して電解生成物の塩素ガスを発生させ、塩素ガスを給水中に混気し、電解水を生成する装置上部に配置する電解槽と、装置下部に接続する給水源から電解槽に給水する流路の途中に電解水トラップを有する給水系と、装置下部に配置する電解液移送機器を有し、電解液タンクの電解液を電解槽へ供給する電解液供給系とを備え、電解槽は、混気部において電解槽の開口部から電解生成物である塩素ガスを給水系の管路を流れる給水中に混気し、電解水を生成し、電解水トラップは、給水系が電解槽の混気部に接続する流入口より高位置を流れる高位流路を有し、電解槽から給水系への電解水の逆流を抑制することを特徴とする。
【0013】
本発明の電解水生成装置において、電解水トラップは、電解槽より低位の給水源から電解槽への流入口より高位置を流れる第1の高位流路と、この高位流路に続く電解槽より低位の低位流路を構成するU字状管路とを有し、U字状管路を通して電解槽の流入口に接続することを特徴とする。
【0014】
本発明の電解水生成装置において、電解液供給系は、電解液移送機器から電解槽へ至る流路の途中に電解生成物トラップを有し、電解生成物トラップは、横軸廻り、または縦軸廻りに旋回する旋廻流路を有し、電解槽から電解液供給系への電解生成物の逆流を抑制することを特徴とする。
【0015】
本発明の電解水生成装置において、電解液供給系は、コネクタを介して電解液タンクを電解液移送機器に接続することを特徴とする。
【0016】
本発明の電解水生成装置において、給水系は、管路の接続にクイックファスナーおよび連結継手を用いることを特徴とする。
【0017】
本発明の電解水生成装置において、装置構造材を透明性樹脂で形成することにより、または装置構造材に肉抜き加工を施すことで装置構造材が視認性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、給水系途中に電解水トラップを有し、電解液供給系の電解液移送機器から電解槽へ至る流路の途中に電解生成物トラップを有することで、装置の下部において給水系を給水源に接続し、装置の下部に電解液移送機器を配置する場合にあっても、装置の運転停止時に電解水や電解生成物の逆流が生じない構造を実現することができ、漏水や腐食などのトラブルを未然に防止できる。また、コネクタやクイックファスナーの採用によってメンテナンスや部品交換時の作業性が向上し、メンテナスコスト削減や作業時間の短縮を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電解水生成装置を示すブロック図
【
図2】同実施の形態に係る電解水生成装置の要部を示す模式図
【
図3】同実施の形態に係る電解水生成装置を示す斜視図
【
図4】同実施の形態に係る電解水生成装置を示す正面図
【
図5】同実施の形態に係る電解水生成装置を示す側面図
【
図6】同実施の形態に係る電解水生成装置を示す背面図
【
図7】同実施の形態に係る電解水生成装置の電解液タンクとの接続を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る電解水生成装置を図面に基づいて説明する。
図1から
図7に示すように、電解水生成装置1は、主要構成部として電解槽2と給水系3と電解液供給系4と制御部5を備えている。
【0021】
本実施の形態において一例として示す電解槽2は、
図2に示すように、槽内に電極21を有し、電解液である原料薬液の塩酸を電気分解して塩素ガスGを発生させ、混気部22において電解槽2の開口部23から塩素ガスGを給水系3の管路を流れる給水中に混気し、微酸性電解水を得る。ここでの微酸性電解水は、主な有効成分が次亜塩素酸(HCLO)で、pH5.0-6.5、有効塩素濃度10-80mg/kgの水溶液である。
【0022】
給水系3は、電解槽2に給水する流路の途中に、装置の下部に接続する上流の給水源71の側から下流の電解槽2に向けて順次に減圧弁31と電磁弁32と流量計33と逆止弁34と電解水トラップ35を有している。
【0023】
電解水トラップ35は、
図3から
図5に示すように、低位の給水源71から電解槽2の混気部22への流入口より高位置を流れる高位流路351を有し、この高位流路351に続く電解槽2より低位の低位流路を構成するU字状管路352を有し、U字状管路352を通して電解槽の流入口に接続し、電解槽2から給水系3に電解水が逆流すること抑制する。
【0024】
また、給水系3および電解水トラップ35は、管路の接続にクイックファスナー36および連結継手37を用いている。
【0025】
電解液供給系4は、装置の下部に電解液タンク6を配置し、電解液タンク6に貯留する電解液である原料薬液の塩酸を電解槽2へ供給するものである。そして、電解液タンク6から電解槽2へ至る流路の途中に上流から下流に順次にチューブポンプ等からなる電解液移送機器41、電解生成物トラップ42を有し、電解液移送機器41を装置下部に配置している。
【0026】
電解生成物トラップ42は、電解槽2から電解液供給系4への電解生成物の逆流を抑制するものであり、横軸廻り、または縦軸廻りに旋回する旋廻流路をなし、ここでは、横軸廻りに旋回する1回転チューブからなる。電解生成物トラップ42は縦軸廻りに旋回するコイルチューブでも構成することができる。
【0027】
図7に示すように、電解液供給系4は、電解液移送機器41の吸引口に接続した電解液吸引チューブ43がコネクタ44、ここではルアーフィッティングを介して電解液タンク6に接続している。
【0028】
また、電解水生成装置1の装置構造材をなすブラケット11は、肉抜き加工を施して複数個所が広く開口12している。また電解液タンク6を配置するタンク配置部13は透明性樹脂で形成している。
【0029】
上記の構成において、電解水生成装置1は、制御部5により電解液移送機器41のチューブポンプを制御し、チューブポンプの駆動により電解液タンク6に貯留する電解液の塩酸を、電解液供給系4を通して電解槽2に供給する。さらに制御部5は、給水系3の電磁弁32を制御し、給水源71からの水を、給水系3を通して電解槽2に給水するとともに、その流量を制御し、電解槽2で生成する微酸性電解水の濃度を制御する。
【0030】
電解槽2は、電解液である原料薬液の塩酸を電気分解して塩素ガスGを発生させ、混気部22において電解槽2の開口部23から電解生成物である塩素ガスGを給水系3の管路を流れる給水中に混気し、微酸性電解水を生成する。生成した微酸性電解水は、電解水吐出路72を通して系外へ供給する。
【0031】
本実施の形態に係る電解水生成装置1によれば、給水系3の途中に電解水トラップ35を有し、電解液供給系4の電解液移送機器41から電解槽2へ至る流路の途中に電解生成物トラップ42を有することで、装置の下部において給水系3を給水源71に接続し、装置の下部に電解液移送機器41および電解液タンク6を配置する場合にあっても、電解水や電解生成物の逆流が生じない構造を実現することができ、漏水や腐食などのトラブルを未然に防止できる。
【0032】
すなわち、電解水トラップ35を設けることで、装置の運転停止中に電解槽2より下流の電解水吐出路72に滞留する電解水が、電解槽2の近傍の給水系3に逆流して拡散することを阻止し、給水系3の水路部品である逆止弁34、流量計33、電磁弁32、減圧弁31の損傷を防止するので、故障や漏水を未然に防ぐことができる。
【0033】
また、高位流路351に続く電解槽2より低位の低位流路を構成するU字状管路352を有し、U字状管路352を通して電解槽の流入口に接続することで、電解槽2で発生する電解生成物の塩素ガスGが電解槽2の近傍の給水系3に拡散することを阻止でき、給水系3の水路部品である逆止弁34、流量計33、電磁弁32、減圧弁31の損傷を防止するので、故障や漏水を未然に防ぐことができる。
【0034】
また、電解生成物トラップ42を設けることで、装置の運転停止中に電解槽2の電解生成物が装置の下部に配置した電解液移送機器41のチューブポンプに拡散・沈降することを抑制し、電解液移送機器41の部品の損傷を防止するので、漏水や腐食を未然に防ぐことができる。
【0035】
また、クイックファスナー36および連結継手37の採用によって、管路の付け外しに工具が不要となり、ワンタッチで行えるので、部品交換時の作業性が改善でき、メンテナンスコスト削減や作業時間の短縮を実現できる。また、接続部が管軸心周りに自由に回転させることができるので、管路の配置において取り回しの自由度が増す。
【0036】
また、ルアーフィッティング等のコネクタ44の採用によって、電解液吸引チューブ43と電解液タンク6との接続部において、経年劣化による気密性の低下が生じ難く、電解槽2への電解液供給不足による電解不良を抑制できる。
【0037】
また、電解水生成装置1の装置構造材をなすブラケット11は、肉抜き加工を施して複数個所が広く開口12し、電解液タンク6を配置するタンク配置部13が透明性樹脂からなることで、装置内に収めた部品の視認性が向上し、構造的に部品にアクセスし易くなり、メンテナンスや部品交換時の作業性を改善できる。
【符号の説明】
【0038】
1 電解水生成装置
2 電解槽
3 給水系
4 電解液供給系
5 制御部
6 電解液タンク
11 ブラケット
12 開口
13 タンク配置部
21 電極
22 混気部
23 開口部
31 減圧弁
32 電磁弁
33 流量計
34 逆止弁
35 電解水トラップ
36 クイックファスナー
37 連結継手
41 電解液移送機器
42 電解生成物トラップ
43 電解液吸引チューブ
44 コネクタ
71 給水源
72 電解水吐出路
351 高位流路
352 U字状管路
G 塩素ガス