(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)誘導性腸炎症の治療のためのmiR-27a-5pマイクロRNAの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/713 20060101AFI20241205BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241205BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241205BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241205BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241205BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20241205BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20241205BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20241205BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241205BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20241205BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241205BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20241205BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20241205BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20241205BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20241205BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20241205BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241205BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20241205BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20241205BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20241205BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241205BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K31/713 ZNA
A61K48/00
A61P1/00
A61P31/04
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K9/127
A61K9/51
A61K9/107
A61K9/10
A61K47/54
A61K47/56
A61K47/60
A61K47/61
A61K47/59
C12N15/113 Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/869 Z
(21)【出願番号】P 2021525250
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2019080748
(87)【国際公開番号】W WO2020094865
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-05
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520018392
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ-サクレー
(73)【特許権者】
【識別番号】504006434
【氏名又は名称】アシスタンス パブリック-ホピトー デ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カンサウ, イマッド
(72)【発明者】
【氏名】コベイシー, フセイン
(72)【発明者】
【氏名】ララゼ, セシル
(72)【発明者】
【氏名】マルヴォー, ジャン‐クリストフ
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第11293064(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロストリジウム・ディフィシル感染症に罹患している対象の腸病変の予防又は低減における使用のための医薬組成物であって、
二本鎖RNAであるmiR-27a-5pミミックを含み、
前記miR-27a-5pミミックが、配列番号1と
80%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列からなる二本鎖RNAであ
り、
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1のヌクレオチド配列における標的mRNAに結合する部分であるシード配列における少なくとも5つの連続したヌクレオチドを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記miR-27a-5pミミックが、配列番号1
と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列からなる二本鎖RNAである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記miR-27a-5pミミックが、配列番号2及び3のヌクレオチド配列からなる二本鎖RNAである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
クロストリジウム・ディフィシル感染症に罹患している対象の腸病変の予防又は低減における使用のための医薬組成物であって、
二本鎖RNAであるmiR-27a-5pミミックを含み、
前記miR-27a-5pミミックが、配列番号1と90%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列及びその相補配列からなる二本鎖RNAである、医薬組成物。
【請求項5】
クロストリジウム・ディフィシル感染症に罹患している対象の腸病変の予防又は低減における使用のための医薬組成物であって、
二本鎖RNAであるmiR-27a-5pミミックを含み、
前記miR-27a-5pミミックが、配列番号2及び3のヌクレオチド配列からなる二本鎖RNAである、医薬組成物。
【請求項6】
医薬的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記miR-27a-5pミミックが、その安定性及び/又はトランスフェクションを促進するベクター、マトリックス又は粒子に会合しているか又は含まれる、請求項1~
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ベクターが、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、及びワクシニアウイルスからなる群から選択される、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記粒子が、リポソーム(DOPC)、脂質ナノ粒子、ナノセル、シリカナノ粒子、及びエクソソームからなる群から選択される、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記マトリックスが、中性脂質エマルジョン(NLE)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)からなる群から選択される、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記miR-27a-5pミミックが、脂質、コレステロール、PEG、シクロデキストリン、キトサン、ポリ(アミドアミン)又はポリ(プロピレンイミン)のデンドリマー、及びN-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNAc)からなる群から選択される化学分子にコンジュゲートされている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記対象に静脈内投与されることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明者らは、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)によってされる炎症反応を強力に調節することができるmiRNAを同定した。したがって、本発明者らは、感染した患者の腸に対するこの感染の悪影響を予防又は低減するために、このmiRNAを医薬組成物に組み込むことを提案する。このマイクロRNAはmiR-27a-5pである。有利なことに、このmiRNAは、マトリックスに会合させるか、粒子に組み込むか、又はベクターによって運ぶことができる。治療目的で感染した対象にこのmiRNAを投与することができる。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウム・ディフィシルは、先進工業国における抗生物質投与後の感染症の原因となる主要な腸内病原菌である[1、2]。抗生物質への曝露、入院、及び高齢は、C.ディフィシル感染症(CDI)に関連する主な危険因子である[1]。CDIは、軽度の下痢から生命を脅かす重度の偽膜性腸炎までの範囲にわたり得る。
【0003】
近年のCDIの発生率と重症度の上昇は、流行性クローン、特にリボタイプ027株の出現と一致している。この上昇は、ケア費用の上昇を伴っている[3、4]。推定によると、米国のCDIに関連する治療費は年間30億ドルであり、カナダでも同様の予測がある[5~8]。米国では、医療システムに対するCDIの年間経済的負担は、急性期医療施設の超過費用で年間48億ドル近くに上ると推定されている[3]。これらの費用のほとんどは、CDIの主要エピソードに起因しており、1症例あたり12,607ドルの費用である[9]。ヨーロッパでは、欧州疾病予防管理センター(ECDC)により推定されたDCIの管理コストは、年間44億ドル近くである[10]。12年間で、CDIの超過費用は国によって27~93%増加した可能性がある[11;39]。フランスでは、超過費用の推定は、CDIの1症例あたり1,666ユーロから5,867ユーロまで変動する可能性がある[12]。
【0004】
これらの高い費用は、主に患者の隔離及び長期間の入院の必要性に関連している。しかしながら、再発の費用、CDI誘発有害事象(合併症)の費用、介護施設での介護費用、社会的費用がまだ定義されていないため、CDIの総負担は大幅に過小評価されがちである。このことは、コミュニティ(院外)CDIの場合にもあてはまる。
【0005】
C.ディフィシルA及びBの細胞溶解性毒素(それぞれTcdA及びTcdBとして知られる)は、CDIに関連する病理に直接寄与する[13、14]が、他の要因が、細菌の定着及び病原性に役割を果たす。これらの要因の中で、細菌に運動性と走化性を与える鞭毛[15]は、自然免疫応答の細胞受容体Toll様受容体5(TLR5)[16]との相互作用を介した、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)及びNF-κBシグナル伝達経路の活性化によって、腸の炎症反応に役割を果たすと考えられている。この炎症誘発性反応では、NF-κB経路が優位な経路であるように思われる。さらに、インビボでのCDIのマウスモデルにおいて、毒素はC.ディフィシル鞭毛と協力して作用して炎症反応を誘発するが、これは、腸の炎症反応における毒素及び鞭毛の相乗的役割を示唆している[17]。腸の炎症の重症度は、CDIの臨床初見の重症度と相関している。
【0006】
自然免疫応答の細胞受容体シグナル伝達経路であるToll様受容体(TLR)の制御のさまざまなメカニズムが説明されている。これらのメカニズムの中で、mRNAに対する特異的作用による遺伝子の転写後制御に関与する21~24ヌクレオチドの非コードRNA配列であるマイクロRNA(miRNA)[18]は、TLR依存性経路を調節することにより自然応答の免疫調節因子としての役割を果たす。TLRの活性化によって発現が誘導されるmiRNAは、シグナル伝達カスケードのエフェクターを阻害することにより炎症反応を調節する。それらは、エフェクター標的、炎症経路の転写因子、及びTLR自体の発現に作用する[19、20]。
【0007】
現在まで、TLRシグナル伝達経路、例えばNF-KB経路を調節するmiRNAを使用して、クロストリジウム・ディフィシル誘発性の腸の炎症反応を効果的に低減することが可能であることが実証又は示唆されたことはない。
【0008】
しかしながら、miRNAは、正常組織に悪影響を及ぼさないことで知られる分子である。それらは今、特にがんの治療に効果的な次世代の薬物候補と考えられている([40])。
【0009】
このことに関して、クロストリジウム・ディフィシル誘発性炎症反応を、例えばこの感染中に過剰活性化されたNF-κB経路を十分に阻害することにより、強力に調節できるmiRNAを同定することは非常に有利であろう。そのようなmiRNAを医薬組成物に組み込むことにより、感染した患者の腸におけるこの細菌の有害な影響を予防又は低減することができる薬物を得ることが可能となるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この推論に基づいて、本発明者らは、Caco-2ヒト腸管上皮細胞モデル及びCDIのマウスモデルにおいて、インビトロ及びインビボで、TLR5-NF-κBシグナル伝達経路に潜在的に関与するmiRNAのパネルの発現を研究した。
【0011】
文献で「miR-27a-5p」として知られているmiRNAは、C.ディフィシル鞭毛によって刺激されるか、又は全菌体で感染されたCaco-2細胞内で、時間経過とともに顕著に過剰発現するようであった(
図1)。これらの結果は、このmiRNAがC.ディフィシル鞭毛誘導反応において役割を果たすことを示している。さらに、C.ディフィシル又は非鞭毛変異体に感染した従来の微生物叢マウス又はTLR5 KOマウス(tlr5
-/-)の盲腸におけるmiR-27a-5pのインビボ発現の分析により、本miRNAは野生型感染マウスの盲腸でも過剰発現した一方で、非鞭毛変異体感染マウスの盲腸又は野生株に感染したtlr5
-/-KOマウスの盲腸では、本miRNAの発現の変化が観察されなかったことが、明らかになった(
図4)。最後に、本miRNAのミミック(「miR-27a-5p-ミミック」)をCDIのマウスモデルに静脈内投与し、組織損傷及び重度の臨床症状の原因となる宿主応答を研究した。この実験の結果は、miR-27a-5pミミックが、このマウスモデルの感染中に細菌によって引き起こされる臨床的及び病理学的症状を顕著に軽減することを示す(
図5及び6)。この結果は、本miR-27a-5pの、CDI中の炎症反応の調節における、重要な役割の証左を提供する。
【0012】
より正確には、以下に示す結果全体は、C.ディフィシル鞭毛が、miR-27a-5pの過剰発現を誘導し、炎症反応の程度を低下させ、その結果、C.ディフィシルの腸管感染中に観察される臨床症状を軽減することを示している。
【0013】
この研究は、C.ディフィシル毒素及び鞭毛によって誘導される炎症反応を低減し、この炎症によって引き起こされる粘膜損傷の予防(又は低減)における、miR-27a-5pの主要な役割を強調している。したがって、本miRNAは、CDIの臨床所見及び予後に影響を与える。
【0014】
この細菌を用いて感染の重度の悪影響を軽減するために、本発明者らは、本miRNAを治療用組成物の有効成分として使用することを提案する。
【0015】
第1の態様では、本発明は、クロストリジウム・ディフィシル感染症に罹患している対象の腸病変の予防又は低減における使用のための、miR-27a-5pミミックを含む医薬組成物に関する。
【0016】
本出願の文脈において、「miRNA」という用語は、マイクロRNAを示すために使用される。これらは、20~25ヌクレオチドを有する短い非コードRNAであり、標的mRNAに結合し、その翻訳を阻害する。これらのmiRNAは、二本鎖型(前駆体又は二重鎖)又は一本鎖型(成熟型、すぐに標的mRNAに結合できるもの)であってもよい。
【0017】
「miR-27a-5p」として知られるmiRNAは、マウス及びヒトにおいて、同じ配列番号1(AGGGCUUAGCUGCUUGUGAGCA)を有する二本鎖RNAである。それは2001年に同定され([41])、大動脈細胞のNF-κB経路([42])及びがん([43])に関与している。また、僧帽弁間質細胞においても同定されている([46])。
【0018】
これらの異なる研究に関与する細胞メカニズムは、本発明者らによって観察された結果とは全く無関係である:2つの論文[42]及び[46]においては、TLRは関与していない。論文[46]では、NF-κb経路は活性化されておらず、関与しているのはJNK及びWnt/B-カテニン経路である。
【0019】
さらに、同じmiRNAが、所与の条件下及び所与の細胞型において所与の役割を有し、並びに別の細胞型において全く反対の役割を有する可能性があることは当該技術分野において周知である。例えば、miR-27a自体は乳がんにおいて発癌性の役割を有し、前立腺がんでは腫瘍抑制因子の役割を有する場合がある([47];[48])。本発明者とは対照的に、いくつかのチームは、miR-27aが活性化マクロファージにおいてIL-10媒介性炎症反応を増加させることさえ示唆している([49])。miR-146aは、考慮される細胞によっては反対の効果を有することも知られている(LPS活性化単球上清によって刺激された内皮細胞における炎症誘発性効果[50]又はLPS刺激血管内皮細胞における抗炎症効果[51])。
【0020】
本明細書で使用される場合、「miR-27a-5pミミック」は、miR-27a-5pのものと同一又は類似の配列を有し、同じ遺伝子標的を調節することが可能である任意の合成二本鎖RNA分子を意味する。好ましくは、この合成分子は、RNase及びRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)タンパク質に対する安定性を増加するために化学修飾を受けているという点で、天然のmiRNAと異なる。
【0021】
前記化学修飾は、例えば、構造のさまざまな場所での、メチル化、ホスホロチオエート基の付加(リン酸基の非結合性酸素の硫黄原子による置換)、メチル基の付加(例えば、2’-O-メチル又は2’-O-メトキシエチル)である([44])。
【0022】
本明細書で使用される場合、「類似配列」は、既知の天然miR-27a-5p配列(例えば、配列番号1)と、70%以上、好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上のパーセント同一性を有する核酸配列を意味する。2つの核酸配列間の「パーセント同一性」は、ベストアラインメント(最適なアラインメント)の後に得られた、比較する2つの配列間の同一ヌクレオチドのパーセンテージを意味すると理解され、このパーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間の差異はそれらの全長に渡ってランダムに分布する。
【0023】
このパーセント同一性は、当業者によく知られている任意の配列分析方法によって計算することができる。パーセント同一性は、全体として比較される配列のグローバルアラインメントの後に決定することができる。マニュアル決定に加えて、Needleman及びWunsch(1970)のアルゴリズムを使用して決定することもできる。ヌクレオチド配列については、Needleソフトウェアなどの当業者に周知の任意のソフトウェアを使用して配列比較を行うことができる。使用されるパラメーターは以下のようであってもよい:「Gap Open」10.0に等しい、「Gap Extend」0.5に等しい、及びEDNAFULLマトリックス(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)。このパーセンテージは、比較する配列のローカルアラインメント後に決定することもできる。マニュアルに加えて、Smith及びWaterman(1981)のアルゴリズムを使用してこのパーセンテージを決定できる。好ましくは、本発明の文脈で定義されるパーセント同一性は、それらの全長に渡って比較される配列のグローバルアラインメントの手段によって決定される。
【0024】
好ましくは、「miR-27a-5pミミック」は、miR-27a-5pの少なくとも5つ又は6つの連続したヌクレオチド[標的mRNAに結合する部分]を含む合成二本鎖RNA分子である。その場合、そのオリゴヌクレオチド配列の残りは、好ましくは、少なくとも70%のmiRNAの他の部分とのパーセント同一性を有する。
【0025】
さらにより好ましくは、前記「miR-27a-5pミミック」は、配列番号2(5’-AGGGCUUAGCUGCUUGUGACCCCC-3’)の配列を有し、及び配列番号3(5’-GGGGGUCACAAGCAGCUAAGCCCU-3’)(又はその補体)のコンパニオン配列を有する二本鎖RNAであり、番号M-00303-0200 CONmiR(登録商標)ミミックインビボの元でRIBOXXから販売されている。
【0026】
本発明の医薬組成物において、miRNAミミックはネイキッドであり得る。miRNAミミックはまた、その安定性及びトランスフェクタビリティ(標的細胞への侵入)を促進するために、正に帯電した化学分子若しくはナノ粒子(すなわち、直径1μm未満の粒子)と複合体を形成するか、又はカプセル、リポソームなどの保護材料で包むこともできる。
【0027】
これらの分子は同じ構造を有するため、siRNAの輸送及び標的化を促進することが知られている任意の安定化手段を使用して、本発明のミミックの送達を容易にすることができる。そのような手段は、例えば、[40]及び[45]に記載されているものである。
【0028】
好ましい実施形態では、したがって、前記miR-27a-5pミミックは、その安定性及びトランスフェクタビリティを促進するベクター、マトリックス、又は粒子に会合している(又は含まれる)。
【0029】
ベクターによって運ばれる場合、前記ベクターは、好ましくは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクシニアウイルスなどから選択される組換えウイルスである。
【0030】
有利には、前記組換えウイルスは欠陥ウイルス、例えば欠陥AAVである。
【0031】
「欠陥ウイルス」という用語は、標的細胞内で複製することが不能なウイルスを指す。典型的には、欠陥ウイルスのゲノムは、感染した細胞における前記ウイルスの複製に必要な、少なくとも1つの配列を欠いている。これらの領域は、除去するか、機能しないようにさせるか、又は他の配列によって、特に目的のペプチドをコードする核酸によって置換することができる。それにもかかわらず、好ましくは、欠陥ウイルスは、ウイルス粒子のカプセル化に必要なそのゲノムの配列を依然として保持している。
【0032】
すでにsiRNAを運搬するために使用されていることから、このベクターはバクテリオファージであってもよい。MS2、Phi29などのバクテリオファージを本発明で使用することができる。
【0033】
前記miR-27a-5pミミックが粒子に会合している場合、後者はsiRNA輸送のためにすでに提案されているものであってもよい。それらは、例えば、リポソーム(DOPC)、脂質ナノ粒子、ナノセル(EnGeneIC EDVタイプ)、シリカナノ粒子、エクソソームなどである可能性がある。
【0034】
より正確には、これらの粒子は、ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子であってもよく、好ましくはキトサンでコーティングされている。本発明のmiRNAミミックは、siRNAについて以前に実証されたように[38]、イオン対形成によってその中に容易に吸着され得る。
【0035】
前記miR-27a-5pミミックがマトリックスに埋め込まれている場合、前記マトリックスは、中性脂質エマルジョン(NLE)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)などであり得る。
【0036】
より正確には、前記miR-27a-5pミミックは、炎症反応を引き起こすことなく、任意の種類の核酸をインビボで異なる器官に効率的に輸送することがよく知られている「インビボjetPEI(登録商標)」などのカチオン性ポリマーと複合体を形成することができる。
【0037】
例えば、脂質、コレステロール、PEG、シクロデキストリン、キトサン、デンドリマー(ポリ(アミドアミン)又はポリ(プロピレンイミン)の)、N-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNAc)など)から選択される、目的のタンパク質又は化学分子と結合した本発明のミミックを投与することも可能である。
【0038】
本発明はまた、クロストリジウム・ディフィシル感染症に罹患している対象を治療するための方法に関する。これらの方法は、クロストリジウム・ディフィシルに感染した患者に本発明の医薬組成物を投与するステップを含む。
【0039】
最後に、本発明は、クロストリジウム・ディフィシルに感染した患者を治療するための薬物を製造するための、上記で定義された本発明のミミックの使用に関する。
【0040】
CDIの診断は、古典的に、i)下痢、便中に粘液及び血液が存在する大腸炎、若しくは巨大結腸症、偽膜性大腸炎、腸穿孔などの合併症の発症の臨床像の疑い、又はii)便中の毒素又は細菌自体の検出(微生物培養、PCR、GDH検査)によって行われる。
【0041】
細胞毒性試験は遊離毒素の存在を検出するために使用され、毒素産生培養は細菌の存在を明らかにする。症状(下痢)の場合にこの感染を迅速に検出するために、現在、標準化された方法(酵素結合免疫吸着アッセイ、PCR、等温増幅)が利用可能になった。
【0042】
特定の実施形態では、本発明の治療から利益を得る対象は、中等度から重度の形態のCDIのうちの1つを有する対象である。例えば、これらは、脱水症を伴う重大で持続的な下痢(3日以上)、赤痢様形態(腹痛及び便中の血液及び粘液の存在を伴う)、結腸拡張(巨大結腸症)及び偽膜性大腸炎(しばしば内視鏡検査で検出される)を伴う形態を有する対象である。また、重度の形態でCDIがしばしば現れる併存疾患(心臓病、糖尿病、肝消化器病変、外科的病変など)の患者にも発生することがある。
【0043】
これらの対象は、動物(家畜であってもなくとも、例えば猫、犬、馬)又は人間である可能性がある。好ましくは、これらの対象は乳児ではない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「治療」は、治癒的(細菌誘導性腸病変の発症を少なくとも緩和又は停止することを目的とする)又は予防的(そのような病変の発症リスクを低減すること)のいずれかを意味する。
【0045】
本発明で使用される医薬組成物は、有効成分として、上記の核酸(任意選択で、粒子、ベクター、脂質などによって会合又は保護されている)を含む。本発明で使用される医薬組成物はまた、好ましくは、医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0046】
本明細書において、「医薬的に許容される賦形剤」は、医薬組成物に含まれるが、2次反応を起こさず、例えば、活性化合物(複数可)の投与を容易にするか、体内でのその寿命及び/又はその有効性を増加させるか、溶けて溶解度を増加させるか、又はその保存性を改善する化合物(又は化合物の組み合わせ)を意味すると理解される。これらの医薬的に許容される賦形剤は周知であり、選択された活性化合物(複数可)の性質及び投与様式に応じて当業者によって適合されるであろう。
【0047】
好ましくは、本発明のミミックは、全身的に、特に静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内若しくは皮下、又は経口投与される。より好ましくは、本発明のミミックは経時的に分散して、数回投与される。
【0048】
本発明のミミックの最適な投与様式、投薬量及び剤形は、患者の年齢又は体重、患者の全身状態の重症度、治療の耐性及び観察された副作用など、患者に適合させた治療を確立する際に一般的に考慮される基準に従って決定することができる。
【0049】
活性成分は、任意選択で1つ又は複数の添加剤担体を含むマイクロカプセルとして製剤化することもできる。これらのマイクロカプセルの調製のために、活性成分は、一般に、適切な希釈剤、適切な安定剤、活性成分の持続的な放出を促進する作用剤、又は任意の他の種類の添加剤と組み合わせて、適切なポリマー(例えば、水溶性樹脂又は水不溶性樹脂)でその後コーティングされる中心コアを形成する。当業者に既知の技術が、この目的のために使用される。次に、得られたマイクロカプセルは、任意選択で適切な剤形単位で製剤化される。
【0050】
本発明のミミックはまた、リポソーム中に製剤化することができる。リポソームは、水性媒体中に分散し、同心円状の多層二重層ベシクルを自発的に形成するリン脂質から形成される。これらのベシクルは、通常、直径25nm~4pmであり、超音波処理されて、コアに水溶液を含む直径200~500Åのより小さな単層ベシクルを形成する。リポソームは、特定の細胞標的又は組織標的への薬物送達に特に有利である。この目的のために、脂質は、標的ペプチド(例えば、ホルモン)又は抗体などの標的分子に化学的に結合することができる。
【0051】
投与量は、考慮されるベクター/複合体、投与様式、感染の段階、並びに患者の年齢及び状態に依存して、当然異なる。一部の著者は、10mg/kgのmiRNAの静脈内投与を使用している。より少ない用量を使用することもできる(例えば、1日あたり3~5mg/kg)。
【0052】
本発明のミミックがカチオン性ポリマー又は別の担体に会合している場合、反復注射で、単回投与又は複数回投与で、より高い用量(25mg/kg)を使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、フラジェリンFliC又はC.ディフィシルとインキュベートしたCaco-2細胞によるmiR-27a-5p発現のキネティクスを示す図である。(A)FliCと12時間インキュベートしたCaco-2細胞によるmiR-27a-5p発現のキネティクス。(B)細胞をFliCとインキュベートするか、野生株R20291(WT)又はその非鞭毛変異体(FliC-)に1時間感染させた。miR-27a-5pの発現は、表1のオリゴヌクレオチドを用いたqRT-PCRにより測定した。各ポイントのバーは、少なくとも3回の独立した実験の平均の標準偏差に対応する。
【
図2】
図2は、フラジェリンFliC又はC.ディフィシル株R20291とインキュベートしたCaco-2細胞におけるNF-kB及びMAPKの特定の化学的阻害剤によるmiR-27a-5p過剰発現の阻害を示す図である。NF-κB及びMAPK経路は、細胞刺激又は感染の1時間前に、細胞単層へ、20μM BMS 345541(IKKα阻害剤)、20μM U0126(MEK1/2阻害剤)、20μM PD98059(MEK1阻害剤)、20μM SP600125(JNK阻害剤)、又は3μM SB203580(p38阻害剤)を用いて阻害された。miR-27a-5pの発現は、1時間、細胞をFliC(A)とインキュベートした後、又は野生株R20291(WT)(B)に感染させた後に分析した。miRNAの発現は、表1のオリゴヌクレオチドを使用したqRT-PCRにより測定した。各ポイントのバーは、少なくとも3回の独立した実験の平均の標準偏差に対応する。
【
図3-1】
図3は、フラジェリンとインキュベートしたCaco-2細胞におけるNF-κB経路に対するmiR-27a-5pの阻害効果を示す図である。Caco-2細胞は、それぞれのmiR-27aミミック、miR-27a阻害剤、及びそれぞれのオリゴヌクレオチドミミック及び阻害剤対照でトランスフェクトされた。miR-27a-5pの発現は、オリゴヌクレオチド5’-AGGGCTTAGCTGCTTGTGAG-3’(配列番号4)を用いたqRT-PCRによって測定された。(A)。エフェクターIκB-α分解シグナル伝達NF-κB経路の活性化をウエスタンブロットにより測定した(B)。
【
図3-2】(C)炎症誘発性サイトカインTNFα及びIL-8 mRNA(オリゴヌクレオチド表2)の発現、並びに(D)ELISAによる細胞培養上清中のIL-8産生もまた測定した。各ポイントのバーは、少なくとも3回の独立した実験の平均±標準偏差である(*p<0.01)。
【
図4】
図4は、C.ディフィシル感染マウスの盲腸におけるmiR-27a-5p発現を示す図である。(A)野生株R20291(WT)又は同質遺伝子の非鞭毛変異体(FliC-)に感染した従来型微生物叢を有するマウスの盲腸でqPCRによって測定されたmir-27a-5p発現。3番目のグループは、WT株で感染させたtlr5
-/-KOマウスにおけるmir-27a-5p発現に対応する。横バーはグループごとの平均である。(B)R20291 WT株で感染させた通常飼育マウスの盲腸におけるmir-27a-5p発現とKC mRNA発現(ヒトIL-8等価物、オリゴヌクレオチド表2)との相関。
【
図5】
図5は、CDIのマウスモデルにおけるmiR-27a-5pミミック治療のプロトコルを示す図である。従来型微生物叢を有する4~5週齢の雌C57BL/6マウスのグループは、D0感染の前に、D-6からD-3まで、飲料水に加えた抗生物質カクテルで前処置する(0.4mg/mLカナマイシン、0.035mg/mLゲンタマイシン、850U/mLコリスチン、0.215mg/mLメトロニダゾール及び0.045mg/mLバンコマイシン)。D-1で、0.2mLのクリンダマイシン溶液(1.25mg/mL)を腹腔内(IP)注射する。D0で、野生株の胞子10
5を含む0.5mLの懸濁液(対照マウスの場合は0.5mLの滅菌水)をマウスに強制経口投与することにより感染させる。その後、治療グループのマウスは、感染時、感染後8時間、及び24時間に、miR-27a-5pミミック/インビボ-jetPEI(登録商標)懸濁液を50μg(すなわち、25mg/kg)、3回静脈内投与される(150μLを眼窩後方に注射)。動物の臨床状態を観察し、D2で盲腸分析のためにマウスを屠殺した。
【
図6-1】
図6は、C.ディフィシルに感染したマウスの盲腸の炎症を示す図である。従来型微生物叢(n=9~10)を有するC57BL/6マウスのグループを感染させ、miR-27aミミックで治療したか又は治療しなかった。盲腸は感染後のD2で収集された。(A、B)対照マウス(非感染及びmiR-27aミミックで治療)
【
図6-2】(C、D)野生型R20291 WTで感染させたマウス
【
図6-3】(E、F)同じ株で感染させ、miR-27aミミックで治療したマウスの代表的な盲腸全体及び組織学的切片。
【
図6-4】(G)各グループの個々のマウスについての組織学的炎症スコア(表3)。水平線は、各グループの平均スコアを表す(対照グループのスコア0は示さず)。赤い丸は、CDIの症状を示した3匹の動物を示す。(H)IκB-α及びアクチンに対する抗体を用いて明らかにされた盲腸溶解物から実行されたウエスタンブロット。写真は、1つの実験からの代表的なブロットを表す。Fusionソフトウェアを使用してバンド密度を測定し、IκB-α/アクチン比を計算した。陰性対照については、比率を1に正規化し、他のサンプルの比率は陰性対照に繰り越された。各点のバーは、動物の各グループの平均±標準偏差である。*p<0.05。
【実施例】
【0054】
材料及び方法
I.細菌株
動物モデルの感染には、C.ディフィシルの2つの株が使用された:野生株R20291(NAP1/027)及びフラジェリンfliC遺伝子が不活性化されたその同質遺伝子変異体(ΔFliC)である。この変異株は、挿入遺伝子不活性化からなるClosTronテクノロジー(N.Minton、ノッティンガム大学)を使用して構築された[22]。両方の株は、栄養型又は胞子型として、-80℃で凍結保存される。
【0055】
II.アフィニティークロマトグラフィーによる組換えC.ディフィシルFliCタンパク質の精製
C.ディフィシル株R20291(NAP1/027)のフラジェリンFliCは、以前に実験室で構築されたN末端ヒスチジンテイル(FliC-His)を持つFliCタンパク質をコードするプラスミドpET28を保有する大腸菌BL21株で生産された。
【0056】
50μg/mLカナマイシン(プラスミドの維持が可能)を含むLB(Luria Bertani)培地中での大腸菌BL21 pET28の前培養を、2Lの同じ培地で1:100に希釈し、その後、37℃で3時間インキュベートする。次に、FliC-His合成の誘導は、1mMイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を添加することによって行われる。37℃で3時間インキュベートした後、培養物を4000rpmで4℃、15分間遠心分離する。次に、ペレットを、25mM Tris HCl pH8、300mM NaCl、1mg/mLリゾチーム(Sigma)及び500μLのプロテアーゼ阻害剤P-8465(Sigma)を含む50mLの溶解緩衝液に取り込む。溶解は4℃で1時間振とうしながら行った。次に、-80℃で3回の凍結融解サイクルと、それに続く45秒の5回の超音波処理サイクルを行って、細菌を溶解する。次に、4℃、10000gで40分間、懸濁液を遠心分離する。50mM NaH2PO4、8M尿素及び300mM NaClを含む10mLの平衡化緩衝液中に、ペレットを取り込む。10000gで40分間、懸濁液を遠心分離し、上清を回収して0.45μmフィルターでろ過し、あらかじめ2容量の超純水(ミリポア(Millipore)(登録商標))と3容量の平衡化緩衝液で洗浄した、2mLのCo++二価陽イオンをロードした樹脂(Talon(登録商標)、Clontech)と4℃で1時間接触させる。次に、混合物をカラムにデポジットさせ、平衡化緩衝液で樹脂を3回洗浄し、その後、FliC-Hisタンパク質を45mM NaH2PO4、8M尿素、270mM NaCl及び150mMイミダゾールを含む3mLの溶出緩衝液で溶出する。次に、Slide-A-Lyser(登録商標)透析カセット(Thermo Scientific)を使用して、溶出液を4℃でPBSに対して透析し、分子量10000Da未満の分子を透析させる。
【0057】
透析後、12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、続いて0.25%クーマシーブルー染色を行って、サンプルの純度を確認した。ゲル上に標準範囲のウシ血清アルブミン(BSA)画分V(Euromedex(登録商標))もデポジットさせ、バンドの密度を測定することにより、ImageJソフトウェアを用いて検量線を設定する。最後に、FliC-Hisの濃度は、10μLの溶出液をデポジットさせた後、組換えタンパク質に対応するバンドの密度を測定することによって決定され、検量線の式を使用して計算する。
【0058】
III.細胞培養
Caco-2(結腸腺癌)細胞株を使用した。これは、インビトロで腸管上皮をモデル化するために、最も広く使用されている細胞モデルの1つである。Caco-2細胞は、TLR5を含むいくつかのTLRを発現するヒト腸管上皮細胞である。この株は、15%の脱補体ウシ胎児血清(FCS)及び1%の非必須アミノ酸(Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM(登録商標)、Gibco)で培養される。
【0059】
細胞株は、10%DMSO(凍結防止剤)を補充したFCS中、-120℃の液体窒素凍結アンプルに保存される。解凍後、25及び75cm2フラスコで培養を行い、細胞がコンフルエントになったときに2回の継代培養を行う。Malassez cellを使用して細胞をカウントし、その後、新しいディッシュに分配する。培養細胞は、10%CO2を含み、水蒸気で飽和した雰囲気下、37℃のインキュベーター内で維持される。培地は、解凍後48時間、その後、毎日交換する。マイコプラズマ汚染の検査は、細胞単層をCarnoyの固定液で固定し、その後、1:2000に希釈したHoechst試薬(Sigma)で染色することによって行われる。次に、細胞単層を蛍光顕微鏡で観察する。
【0060】
IV.細胞感染及び治療
Caco-2細胞を、C.ディフィシルR20291から精製された組換えFliC-Hisタンパク質又はC.ディフィシル株と接触させる。24ウェルプレートにウェルあたり5×105の細胞を播種し、その後、細胞をコンフルエンス後最大3日間、増殖させてから分極化に達せられる。細胞は、PBSで洗浄し、15%の代わりに1%FCSを補充した0.5mLのDMEM培地を添加することにより、FliCとの接触前又はさまざまなC.ディフィシル株での感染前、4時間枯渇させて、シグナル伝達経路の活性化を回避させる。次に、細胞単層を10ng/mLの濃度のFliC-Hisタンパク質に1、2、4、6、8、12、及び24時間のインキュベーション時間、接触させた。FliC-Hisに接触していないCaco-2細胞は、各研究時間の陰性対照である。インキュベーションキネティクスの最後に、各ウェルの培地を吸引し、細胞をRNA抽出のために直接溶解させる。各実験は、少なくとも3回独立して実行される。
【0061】
細胞をC.ディフィシルに感染させるために、野生型R20291又はC.ディフィシルの非鞭毛変異株を、37℃の嫌気性チャンバー内の液体BHI培地で事前に増殖させる。細菌懸濁液を5000rpmで4分間遠心分離し、その後、10mLのPBSで洗浄する。5000rpmで4分間さらに遠心分離した後、ペレットを500μLのPBS中に取り込み、2×109バクテリア/mLのバクテリア懸濁液を生成する。250μLの細菌懸濁液を細胞と、すなわち、50細菌/細胞の感染多重度(MOI)で接触させる。
【0062】
示される場合、NF-κB及びMAPK経路は、細胞単層に20μM BMS 345541(IKKα阻害剤)(Sigma)、20μM U0126(MEK1/2阻害剤)、20μM PD98059(MEK1阻害剤)、20μM SP600125(JNK阻害剤)、又は3μM SB203580(p38阻害剤)(Cell Signaling、Ozyme)を添加することにより、細胞刺激又は感染の1時間前に化学的に阻害された。
【0063】
V.Caco-2細胞におけるmiR-27a-5pの過剰発現及び阻害
miR-27a-5pは、25nMのSyn-hsa-miR-27a-5pミミックを使用して培養Caco-2細胞で過剰発現したが、阻害は250nMのAnti-hsa-miR-27a-5pで達成された(両方ともQiagenから購入した)。トランスフェクションの前に、Caco-2細胞を24ウェルプレートに6×104細胞/ウェルで播種し、製造業者の取扱説明書に従ってHiPerfectトランスフェクション試薬(Qiagen)でトランスフェクトした。細胞を通常の増殖条件下でトランスフェクション複合体とともにインキュベートし、トランスフェクションの48時間後に採集した。miScript阻害剤陰性対照及びmiScript陰性対照(Qiagen)を、それぞれ陰性及び陽性対照として使用した。トランスフェクション効率をモニターするために、AllStars Hs細胞死対照siRNA(Qiagen)を全てのトランスフェクションで並行して細胞にトランスフェクションすることにより組み込み、少なくとも75%のトランスフェクション効率を達成した。必要に応じて、細胞を精製フラジェリンFliCで1時間刺激した。miR-27a-5pのレベル並びにインターロイキン8(IL-8)及びTNFα遺伝子の発現は、定量的RT-PCR(qRT-PCR)で分析し、IκBタンパク質のレベルは、ウエスタンブロットで評価し、細胞上清中のIL-8のレベルは、ELISAでアッセイした。
【0064】
VI.動物モデル
従来型微生物叢を持つC57BL/6マウスを、C.ディフィシル感染症(CDI)の動物モデルとして使用した。4~5週齢の雌マウス(Charles River Laboratories)を、滅菌アイソレーターで飼育し、照射された餌とオートクレーブ処理された水を給餌する。動物が到着したら、糞便を回収して、C.ディフィシルによる腸管定着がないことを確認する。
【0065】
この感染モデルにおいては、飲料水に加えた抗生物質カクテルで、マウスを4日間(D0感染前のD-6からD-3まで)前処置した。このカクテルは、0.4mg/mLカナマイシン、0.035mg/mLゲンタマイシン、850U/mLコリスチン、0.215mg/mLメトロニダゾール及び0.045mg/mLバンコマイシンで構成されている。その後、治療を2日間中止した。感染の1日前(D-1)に、1.25mg/mLのクリンダマイシン溶液0.2mLを腹腔内(IP)注射した。D0(感染)で、野生株又はΔFliC株の胞子105個を含む懸濁液0.5mLを、マウスに強制経口投与し、一方で、対照マウスの強制経口投与は0.5mLの滅菌水で行われた。
【0066】
マウスの治療に使用されるmiR-27a-5pミミック溶液は、miR-27a-5pミミック(Riboxx(登録商標)(ドイツ)により合成)をインビボトランスフェクション試薬であるインビボjetPEI(登録商標)(Polyplus-トランスフェクション(登録商標)、フランス)と混合することにより調製された。凍結乾燥したmiR-27a-5pミミックを滅菌ミリポア水に再懸濁した後、50μgのmiR-27a-5pミミックを滅菌グルコース溶液(最終グルコース濃度5%)で希釈した;6μLのインビボjetPEI試薬も滅菌グルコース溶液(最終グルコース濃度5%)で希釈し、その後、これら2つの溶液を容量対容量で混合した(miR-27a-5pミミックの最終濃度、0.33μg/μL)。次に、感染及び治療グループに属するマウスを、感染時、感染後8時間及び24時間に、miR-27a-5pミミック/インビボjetPEI(登録商標)懸濁液を50μgの3回静脈内投与(すなわち、25mg/kg)で治療した(150μLを眼窩後方に注射)。
【0067】
感染後、マウスを2日間、観察下に置き、CDI、下痢、毛の逆立ち、活動低下の臨床症状を記録した。潜在的な感染関連体重変化を観察するために、マウスの体重も毎日測定した。
【0068】
感染後のD2で、マウスを屠殺し、各マウスの盲腸を採集し、縦方向に切断して、細菌の計数に十分な量の盲腸内容物を回収した。次に、盲腸をPBSで洗浄し、RNAlater溶液(Qiagen)に浸してRNAを安定化し、組織学的研究用、別の全RNAの即時抽出用、最後のタンパク質抽出用(イムノブロット用)の3つの部分に切り分けた。
【0069】
VII.細菌の計数
採取した盲腸内容物を10mg/mLのPBS(ストック溶液)に懸濁した。栄養形態の計数のために、PBS中での1:10希釈範囲を実行した:100(1mg/mL)、10-1(0.1mg/mL)、10-2(0.01mg/mL)及び10-3(0.001mg/mL)。したがって、100μLの各希釈液を、3%の脱線維化ウマ血液及び0.4%のオキソイドサプリメント(125mgのD-サイクロセリン及び4mgのセフォキシチン)を補充した脳心臓インフュージョン(BHI)寒天培地に接種した。胞子の計数のために、盲腸内容物を、ストック溶液を1容量の無水エタノールと10分間インキュベートして栄養形態を殺すことによるアルコールショックに供した。得られた懸濁液を5000rpmで10分間遠心分離し、ペレットを1容量のPBSに取り込んだ。次に、1:10の希釈範囲を実行した:100(1mg/mL)及び10-1(0.1mg/mL)。ストック溶液と各希釈液を、C.ディフィシル胞子の発芽と計数のために、0.1%タウロコール酸(Sigma)を補充した同じ培地に接種した。培地を嫌気性制御雰囲気チャンバー(5%H2、5%CO2、90%N2の雰囲気)中で、37℃で48時間培養した。
【0070】
VIII.RNA抽出
miRNeasy mini(登録商標)キット(Qiagen)は、200ヌクレオチド未満のサイズのRNA分子を抽出することができない大部分の市販キットとは異なり、Caco-2株の細胞培養及びマウス盲腸組織からのmiRNAを含む全RNAの抽出及び精製が可能であった。このキットを使用すると、フェノール/グアニジン混合物の使用に基づいてサンプルを溶解し、その後、シリカメンブレンカラムのおかげで全RNAを精製できる。
【0071】
Caco-2細胞からのRNA抽出においては、培地をウェルから吸引し、700μLのQIAzolを添加した。溶解剤であるQIAzolは、細胞溶解、RNaseの阻害、及び有機抽出による溶解物からのDNA及び細胞タンパク質の大部分の除去を可能にする、フェノール及びグアニジンチオシアン酸塩の単相溶液である。スクレーパーを用いて細胞単層をこすり取り、マイクロピペットを用いて溶解物を上下に数回ポンピングすることにより、溶解を継続する。溶解物の粘度を下げるために、その後、細胞を注射器と針で10回上下にポンピングすることによって均質化した。
【0072】
屠殺したマウスから回収した盲腸は、QIAzolを添加した後、Lysing Matrix D(登録商標)チューブ(MP Biomedicals)で自動的にサンプルを均質化するために、FastPrep(登録商標)を使用して溶解した。サンプルは、Lysing Matrix D(登録商標)ビーズを速度6で40秒間、同時に多方向に衝突させることにより、機械的に粉砕される。
【0073】
その後、溶解物を室温で5分間インキュベートして、核タンパク質複合体の解離を可能にした。次に、140μLのクロロホルムをチューブに加え、15秒間激しく振とうし、室温で3分間インキュベートした後、4℃で12000g、15分間遠心分離し、3つの相を形成させた:RNAを含む透明な水相(350μLの容量)、DNAを含む白い中間相、及びタンパク質を含む赤い有機相。その後、水相を回収チューブに移し、そこに525μLの無水エタノール(1.5容量)を加えて、RNAがカラムに結合するための適切な条件を確保した。このようにして得られた混合物を、回収チューブとつながったシリカ膜カラムに移した。カラムを室温で8000g以上、15秒間、遠心分離し、上澄みを除去した。次に、700μLのRWT(登録商標)緩衝液を同じカラムに加え、8000g超で15秒間、遠心分離することにより洗浄し、上清を除去した。次に、500μLのRPE(登録商標)緩衝液を用いて、8000g超で15秒間遠心分離することにより、さらに2回の洗浄を行った。RPE(登録商標)緩衝液で2回洗浄した後、8000g超で2分間、遠心分離を行い、確実にRNA溶出中にエタノールが存在しないようにした。40μLのRNaseフリー水をカラムに加えた後、8000g超で1分間、遠心分離することにより、RNA溶出を行った。
【0074】
最後に、抽出された全RNAは、Nanodrop(登録商標)分光光度計(ND-2000)を使用して、2μLのサンプルをデポジットすることにより定量化した。この分析により、260及び280nmでの吸光度比(A260/A280)及び260及び230nmでの吸光度比(A260/A230)の計算も可能となり、各サンプルに存在する核酸の純度が評価できる。抽出された全RNAの純度は、Agilent(登録商標)バイオアナライザーによる分析と、RNA Integrity Number(RIN)値の測定によっても評価された。
【0075】
IX.リアルタイムPCRによるmiRNA発現の分析
IX.1.相補的DNA(cDNA)の合成
成熟miRNAは天然には約22ヌクレオチドで構成されており、mRNAとは異なり、ポリアデニル化されていない。このため、cDNA合成は、RT性能及び成熟miRNAのcDNAへの選択的変換を可能にする「miScript HiSpec」緩衝液を評価するため、逆転写酵素及びポリ(A)-ポリメラーゼを含むmiScript RT II(登録商標)キット(Qiagen)、核酸ミックス(dNTP、rATP、オリゴdTプライマー及び内部対照のための合成RNAを含む)を使用して行われた。したがって、ポリアデニル化及び逆転写は同じチューブ内で並行して行われた。成熟miRNAは、ポリ(A)-ポリメラーゼによってポリアデニル化され、オリゴdTプライマーを使用してcDNAに逆転写される。これらのプライマーは、3’縮重アンカー及びその5’末端にユニバーサルタグ配列を有し、qPCRの間に成熟miRNAの増幅を可能にする。ポリアデニル化とユニバーサルタグの添加を組み合わせることにより、ゲノムDNAが検出されないことを確実にする。
【0076】
4μLのHiSpec 5X miScript緩衝液、2μLの10X miScript核酸ミックス、及び2μLの「miScript逆転写酵素」ミックスからなる混合物を、2μgの全RNAに加え、cDNA合成を最終容量20μLで行った。37℃で1時間、反応を行い、95℃で5分間インキュベートすることにより、酵素を失活させた。サンプルを1:10に希釈し、PCR増幅前に-20℃で保存した。
【0077】
IX.2.定量PCR(qPCR)
使用したプライマーを表1に示す。CFX96サーモサイクラー(Bio-Rad)上で、miScript SYBR(登録商標)Green PCRキット(Qiagen(登録商標))を用いて、PCRを行った。キットには、リバースプライマー(ユニバーサルプライマー)並びにintercalant(SYBR Green)及びHotStarTaq DNAポリメラーゼ酵素を含むマスターミックスが含まれる。PCRは、1μLの希釈cDNAテンプレート溶液、PCR試薬(マスターミックス及びユニバーサルプライマー)からなる9μLの混合物、及び0.5μMの最終濃度の標的miRNAに対応する各cDNAの特異的プライマーを含む最終容量10μLで行った。サーマルプログラムには、調査した全ての標的について、最初の15分間の95℃でのHotStarTaq DNAポリメラーゼ酵素活性化ステップと、それに続く15秒間の、94℃での変性、30秒間、55℃でのハイブリダイゼーション、30秒間、70℃での伸長を含む40サイクルが含まれていた。増幅の後、融解ステップが続き、この融解ステップは、1分間、95℃での変性、2分間、65℃での鎖の再会合、その後、毎秒0.5℃の速度で95℃に加熱することによりゆっくりと融解することからなり、各アンプリコンの融解温度(Tm)の決定を可能とした。
【0078】
PCRの結果は、蛍光が蛍光光度計の検出しきい値を超えるために必要な増幅サイクル数に対応するサイクルしきい値(Ct)値で表される。得られた結果は、相対的発現として表した。
【0079】
【0080】
サイトカイン遺伝子発現分析のためのqRT-PCRは、次の表2にリストされているオリゴヌクレオチドを使用して同じ条件下で行った。
【0081】
【0082】
X.イムノブロットによるNF-κBシグナル伝達経路の活性化の分析
X.1.タンパク質抽出
盲腸組織片(約70g)を、セラミックビーズを含むLysing Matrix(登録商標)チューブ(MP Biomedicals)内の600μLの溶解緩衝液(62mM Tris pH6.8、10%グリセロール、1.5%SDS、0.25%ブロモフェノールブルー)中に置いた。FastPrep-24(登録商標)装置(MP Biomedicals)を用いて機械的ホモジェナイズ下で組織を粉砕した。その後、サンプルは分析前に-20℃で保存された。
【0083】
X.2.タンパク質のポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
サンプルを変性させた後(水浴中、100℃で10分間)、変性条件下の12%ポリアクリルアミドゲルでタンパク質を分離した(SDS-PAGE)。ウェルあたり8μLのサンプルをデポジットした;5μLの分子量マーカー(PageRuler(登録商標)Plus前染色タンパク質ラダー、ThermoScientific)も各ゲルにデポジットした。泳動緩衝液(25mM Tris、0.1%SDS、192mMグリシン)中、定電圧(200V)で60分間、泳動を行った。
【0084】
X.3.転写及びイムノブロット
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレンをメタノールで再生した後、タンパク質を350mAで1時間、一定アンペア数で転写緩衝液(20mM Tris、150mMグリシン)中で転写した。次に、IκB-αタンパク質による免疫染色を行い、続いて化学発光検出した。転写後、0.1% Tween20と5%ミルクを補充したTBS(0.5M Tris、1.5M NaCl)の混合物中で、メンブレンを1時間飽和させた。メンブレンを、IκB-αタンパク質(抗IkB-α、ウサギAb)又はアクチン(マウスAb)(Cell Signaling(登録商標))に対する1次特異抗体(Ab)とともに、4℃で一晩インキュベートした。これらの抗体は、0.1% Tween20及び5%BSAを補充したTBSで1:2000に希釈した。次に、メンブレンを0.1% Tween20を補充したTBSで、10分間3回洗浄した。次に、2次ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗体(IgG抗ウサギHRP結合抗体、Cell Signaling(登録商標))又はマウスAb(IgG抗マウスHRP結合抗体、Cell Signaling(登録商標))とともに、振とうしながら室温で1時間インキュベートした。メンブレンを10分間3回洗浄した後、Immobilon TM Western化学発光HRP基質(登録商標)試薬とともに、1~5分間インキュベートした。メンブレンを染色し、アクチンでの正規化とともに、Fusion(登録商標)機器(Viber Lourma)を用いて画像を分析した。Fusionソフトウェアを使用してバンド密度を測定し、IκB-α/アクチン比を計算した。陰性対照の場合、比率は1に正規化され、他のサンプルの比率は各実験の陰性対照に繰り越された。
【0085】
XI.組織学的分析
盲腸組織片をホルマリン溶液中に24時間保存した後、70%エタノールに移した。組織切片作製並びにヘマトキシリン及びエオシン染色は、Paris Saclay Institute of Therapeutic Innovation IPSIT(PHIC- 32 rue des carnets、Clamart 92140、フランス)のクラマールマウス組織免疫病理学プラットフォームで行われた。
【0086】
スライド標本の顕微鏡分析は、NDP View(登録商標)ソフトウェア(Hamamatsu)を使用して行われた。炎症度のスコアは、粘膜下浮腫、炎症性浸潤、上皮病変、及び粘液細胞(杯細胞)の喪失に基づいて設立された。表3。
【0087】
【0088】
XII.ELISAによるサイトカインアッセイ
Caco-2細胞培養上清中の炎症誘発性サイトカインIL-8のレベルは、ヒトIL-8 ELISAキット(4Abio、China)を製造業者の取扱説明書に従って使用したELISAによって評価された。検出限界は4pg/mLであった。
【0089】
XIII.統計的検定
調査した変数の平均±標準偏差は、3回の反復試行から得られた;結果の統計分析は、マン-ホイットニー検定によって行った。p<0.01又はp<0.05の値を統計的に有意であると考えた。
【0090】
結果:
I. C.ディフィシル及びそのフラジェリンFliCによって誘発される炎症反応の制御に関与する可能性のあるmiRNAのインシリコ検索
最近の研究結果は、C.ディフィシル及びそのフラジェリンFliCが腸管上皮細胞及びマウス盲腸(CDIのマウスモデル)で炎症誘発性反応を誘導すること、及びNF-κBシグナル伝達経路が優位な経路であることを示している[16、17]。miRNAはmRNAに作用することによりシグナル伝達経路を制御できるため、これらの分子の役割は、CDIの間のフラジェリンFliCとその特定の受容体TLR5(先天性応答受容体)との相互作用によって誘導される炎症誘発性NF-κBシグナル伝達経路の調節において研究されている。
【0091】
インシリコ検索は、miRGator、TargetScan、及びmiRWalkデータベースで使用されるmiRNAの3つの異なる標的予測アルゴリズムを使用して、行われた。これらのオンラインアルゴリズムは、目的のmRNA配列の3’UTR領域と、各ライブラリーに特異的なデータベースに存在するmiRNAのシード配列との間の類似性の検索に基づいている。細菌鞭毛による刺激後のmiRNAとTLR5シグナル伝達の異なるエフェクターとの関連を示す科学論文も考慮された。
【0092】
これらのインシリコ検索及び文献から選択された基準に基づいて、113のmiRNAが選択された。これらのmiRNAの中で、20個ほどのmiRNA(表1)を試験して、C.ディフィシルフラジェリンFliCと接触したCaco-2細胞、より特には、接触の最初の数時間における発現キネティクスを評価した。試験したこれら全てのmiRNAの中で、miRNA「miR-27a-5p」は、特にインキュベーションの最初の数時間に、有意な過剰発現を示した(
図1A)。その過剰発現は、細胞が2時間のインキュベーションでC.ディフィシル株R20291に感染したときに確認されたが、細胞が非鞭毛変異体に感染したときには、過剰発現は観察されなかった(
図1B)。
【0093】
II.miR-27a-5pは、C.ディフィシル及びそのフラジェリンFliCによって誘導されるNF-κB炎症誘発性シグナル伝達経路において、役割を果たす。
NF-κB及びMAPK(ERK1/2、p28、及びJNK)シグナル伝達経路阻害が同定されたmiRNAの発現に及ぼす影響を分析するために、これらの経路を、FliC又は細菌による細胞の刺激の1時間前に、IKKα(NF-κB経路)、MAPK ERK1/2、p38、及びJNKの特異的阻害剤によって化学的に阻害した。細胞をFliC又はR20291株と2時間インキュベートした後、miRNA-27a-5pの発現が消失した(
図2A及びB)。IKKα阻害剤(BMS 345541)を使用すると、miR-27a-5p発現のはるかに強力な(約40倍)阻害が達成され、このmiRNAが、C.ディフィシル及びそのフラジェリンによって誘導される炎症誘発性NF-κBシグナル伝達経路の制御に役割を果たすことが示される(
図2A及びB)。
【0094】
III.miR-27a-5pミミックは、C.ディフィシル及びそのフラジェリンFliCによってインビトロで誘導される炎症誘発性NF-κBシグナル伝達経路を阻害する。
以前の結果は、NF-κBの活性化を介してC.ディフィシル及びそのフラジェリンFliCによってその発現が誘導されるmiR-27a-5p(配列番号1=AGGGCUUAGCUGCUUGUGAGCA)が、このNF-κB経路の制御に役割を果たすことを実証している。miR-27a-5pの役割は、それがNF-κB経路の活性化剤(炎症誘発性)であるか阻害剤(抗炎症性)であるかを明らかにするために特徴付けられた。この目的のために、異なる分子が使用された:このmR-27a-5pの活性を模倣する分子(オリゴヌクレオチド)(「mR-27aミミック」)又はその活性に拮抗する化学分子(「miR-27a-阻害剤」=抗-hsa-miR-27a-5p)。
【0095】
Caco-2細胞にこれらの2つの分子、並びに対照オリゴヌクレオチド及び阻害剤をトランスフェクトした後、miR-27a-5pの発現を細胞溶解後に測定した。
図3Aに示されるように、miR-27a-5p阻害剤は、FliC刺激細胞におけるこのmiRNAの発現を顕著に減少させたが、miR-27aミミックは高発現された。これらの2つの分子で細胞をトランスフェクトする効果は、NF-κB経路の活性化をシグナル伝達するエフェクターIκB-αの分解、炎症誘発性サイトカインTNFα及びIL-8のmRNAの発現、並びに細胞培養上清中のIL-8の産生に関して測定された。
【0096】
抗miR-27a-5p(miR-27a阻害剤)は、IκB-αの強い分解、TNFα及びIL-8サイトカインmRNAの発現の増加、並びに培養上清中のIL-8合成の増加を誘導するが(
図3B、C及びD)、これは、miR-27a-5pがNF-κB経路において阻害的役割を果たし、したがって、FliC-TLR5相互作用によって誘導されるシグナル伝達カスケードにおいて抗炎症的役割を果たしていることを示唆している。
【0097】
これらの観察結果と全く一致して、細胞をmiR-27aミミックでトランスフェクションすると、IκB-α分解の欠如、したがってNF-κB活性化、サイトカインTNFα及びIL-8のmRNA発現の強い阻害、並びに細胞上清におけるIL-8合成の欠如に特徴付けられる抗炎症細胞応答を誘導した(
図3B、C及びD)。これらの観察結果全体は、miR-27a-5pが、フラジェリン-TLR5相互作用によってNF-κB炎症誘発性経路が活性化された後に、この経路の阻害的役割を果たすことを示している。このmiRNAは、TLR5-NF-κBシグナル伝達カスケードのフィードバックループに関与していると考えられる。
【0098】
IV.MiR-27a-5pは、C.ディフィシルに感染したマウスの盲腸において、インビボで高度に過剰発現する。
C.ディフィシル及びその鞭毛によって誘導される炎症の制御におけるmiR-27a-5pの潜在的な役割に関するインビトロで行われた観察を確認するために、CDIのマウスモデルにおける感染の間におけるこのmiR-27a-5pの発現を腸(盲腸)で分析した。
【0099】
従来型微生物叢を有する4~5週齢の雌C57BL/6マウスの2つのグループ(各グループでn=10)及びC57BL/6 tlr5
-/-KOマウスの1つのグループ(TLR5を発現しない、n=10)が形成された。腸内毒素症を生じさせる感染前の6日間の動物の抗生物質治療後(材料及び方法を参照)、従来型微生物叢マウスの1つのグループを野生型C.ディフィシルR20291(WT)で胃内強制経口投与により感染させ、他を鞭毛の欠損した同質遺伝子変異体(FliC-)で感染させた。tlr5
-/-KOマウスの1つのグループもまた、WT株で感染させた。感染していないマウスのグループは、各グループの相対発現比を確立するための対照として役立った。動物の盲腸におけるmiR-27a-5p発現の分析により、非鞭毛変異体(FliC-)で感染させたマウス及びWT株で感染させたtlr5
-/-KOマウスで観察された発現と比較して、WT株で感染させた従来型微生物叢C57BL/6マウスの盲腸において、このmiRNAがより高く発現することが示された(
図4A)。これらの結果は、TLR5との相互作用を介してC.ディフィシル鞭毛が、マウス盲腸におけるmiR-27-a-5pの発現の増加に役割を果たしていることを示しているが、これは、インビボで、以前に報告された鞭毛-TLR5相互作用[17]の結果としてのNF-κB活性化が、miR-27a-5p発現と相関していることを示唆している。
【0100】
さらに、ヒトIL-8と同等のマウスKCサイトカイン遺伝子mRNA発現の分析により、
図4Bに示すように、miR-27a-5pの発現増加との完全な相関関係が明らかになる。
【0101】
V. miR-27a-5pミミックは、CDIのマウスモデルにおいてインビボでの炎症の重症度を軽減する。
Caco-2細胞においてmiR-27a-5pによって誘導される抗炎症効果を考慮して、このmiRNAのオリゴヌクレオチドミミック(miR-27a-5pミミック)のインビボ効果を分析した。このオリゴヌクレオチドは、CDIのマウスモデルに静脈内(IV)投与された(
図5)。従来型微生物叢を有する4~5週齢の雌C57BL/6マウスの3つのグループ(各グループについてn=9~10)を試験した。腸内毒素症誘導性抗生物質治療後、感染していない動物の1つのグループを、感染時、感染後8時間、及び24時間に、50μg(すなわち、25mg/kg)の3回投与で、miR-27a-5pミミック/インビボjetPEI(登録商標)懸濁液を用いて静脈内治療した(150μLを眼窩後方に注射)。動物の第2グループは、野生株R20291で感染させたが、miRミミックで治療せず、及び、第3グループもまたこのC.ディフィシル株で感染させたが、第1グループと同様にmiR-27a-5pミミック/インビボjetPEI(登録商標)懸濁液で治療した。
【0102】
感染後、このCDIモデルで期待されるように、感染させ、及びmiR-27aミミックで治療しないマウスは、CDIの臨床的兆候を示した:下痢、毛の逆立ち、感染後のD1及びD2での活動性低下(表4)。miR27-aミミックで治療された感染グループの10匹の動物のうち3匹だけが下痢を発症したが、これは感染後D2であった。感染後のD2で、盲腸内容物の細菌数(コロニー形成単位-CFU/g)によって定量化された、感染動物の腸内定着率は、これら2つのグループ間の臨床症状の違いがマウスの低腸定着の結果である可能性を除いて、感染マウスのグループ(未治療のWT及びWT+miR-27aミミック)間で全く同等であることに留意されたい。
【0103】
【表4】
感染後のD2で、野生型感染及び未治療の動物の盲腸の病理学的分析により、
図6A及び
図6Cに示されるように、非感染マウス(陰性対照)の正常な盲腸と比較して、出血領域及び粘膜盲腸内容物を伴う炎症性充血の外観が示された。盲腸の炎症性の外観は、感染したマウスのmiR-27aミミック治療グループにおいて、大幅に減弱した(
図6E)。盲腸切片の組織学的研究に関しては、期待したように、炎症性浸潤、上皮侵食、杯細胞の消失を伴う顕著な粘膜浮腫が、野生型感染及びmiR-27aミミック未治療マウスの盲腸に見られ、非感染マウスのスコア0と比較して、6~9の範囲の炎症スコアを有する(表3)(
図6G)。対照的に、miR-27-aミミックで治療された感染動物のグループでは、10匹中6匹のマウスが、炎症の証拠がほとんど又は全く無い盲腸を有しており、粘液を含まない正常な盲腸内容物であった(
図6E)。これらの動物の炎症の組織学的スコアは6未満であり、主に細胞浸潤及び軽度から中等度の浮腫を示した(
図6F及びG)。感染後D2で下痢を示したこの「感染及びミミック治療」グループの3匹のマウス(表4)は、感染及び未治療マウスに匹敵する高い炎症スコアを示し(
図6G)、この感染モデルマウスにおけるmiR-27a-5pの有効率は70%をもたらした。
【0104】
感染後D2の盲腸組織におけるNF-κB経路活性化の分析により、感染及び未治療マウスの盲腸では、非感染マウスと比べて、IκB-αの強い分解が明らかになったが、これは、臨床症状に関して、このCDIモデルにおける通常の観察結果と一致している[17]。対照的に、miR-27aミミックで治療した感染マウスの盲腸ではIκB-αの活性化は検出されなかったが(
図6H)、これは、このマウスモデルでは、細菌の感染に関連する臨床症状及び腸管の炎症現象が減少されるという以前の観察結果を補強するものである。
【0105】
[結論]
結論として、本研究は、C・ディフィシルの毒素及び鞭毛によって誘導される炎症反応を低減し、したがってこの炎症によって引き起こされる粘膜損傷を予防又は低減する、miRNA、miR-27a-5pの主要な役割を強調している。このmiRNAは、C.ディフィシルの腸管感染中に鞭毛-TLR5相互作用によって活性化されるNF-κBシグナル伝達経路を阻害することにより、CDIの臨床症状と予後に影響を与える。
【0106】
C.ディフィシル誘導性の炎症誘発性TLR5-NF-κBシグナル伝達経路を標的とする特定のmiR-27a-5pミミックのインビボ効果が、CDIのマウスモデルにおいて実証された。この分子は、C.ディフィシルに感染したマウスの腸炎症反応を低減することにより、これらのマウスの有害反応を減少させることができる。これらの結果は、このmiRNAを治療用組成物の有効成分として使用することにより、この細菌の感染の重度の悪影響を軽減することが可能であることを実証する。
さらなる実施形態は以下のとおりである。
[実施形態1]
クロストリジウム・ディフィシル感染症に罹患している対象の腸病変の予防又は低減における使用のための医薬組成物であって、二本鎖RNAであるmiR-27a-5pミミックを含む、医薬組成物。
[実施形態2]
前記miR-27a-5pミミックが、配列番号1に70%を超えて類似するヌクレオチド配列を有する、実施形態1に記載の医薬組成物。
[実施形態3]
前記miR-27a-5pミミックが、配列番号1のヌクレオチド配列を有する、実施形態1に記載の医薬組成物。
[実施形態4]
医薬的に許容される賦形剤をさらに含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[実施形態5]
前記miR-27a-5pミミックが、その安定性及び/又はトランスフェクションを促進するベクター、マトリックス又は粒子に会合しているか又は含まれる、実施形態1~4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[実施形態6]
前記ベクターが、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、及びワクシニアウイルスからなる群から選択される、実施形態5に記載の医薬組成物。
[実施形態7]
前記粒子が、リポソーム(DOPC)、脂質ナノ粒子、ナノセル、シリカナノ粒子、及びエクソソームからなる群から選択される、実施形態5に記載の医薬組成物。
[実施形態8]
前記マトリックスが、中性脂質エマルジョン(NLE)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)からなる群から選択される、実施形態5に記載の医薬組成物。
[実施形態9]
前記miR-27a-5pミミックが、脂質、コレステロール、PEG、シクロデキストリン、キトサン、ポリ(アミドアミン)又はポリ(プロピレンイミン)のデンドリマー、及びN-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNAc)からなる群から選択される化学分子にコンジュゲートされている、実施形態1~4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[実施形態10]
前記対象に静脈内投与されることを特徴とする、実施形態1~9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0107】
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【配列表】