(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】相互貫入流動床中で繊維状材料に含浸させる方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C08J5/04 CER
C08J5/04 CEZ
(21)【出願番号】P 2021528924
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 FR2019052799
(87)【国際公開番号】W WO2020109709
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-24
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オックステッテル, ジル
(72)【発明者】
【氏名】バボー, アルテュール ピエール
(72)【発明者】
【氏名】サリニエ, アクセル
(72)【発明者】
【氏名】サヴァール, ティボー
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-039560(JP,A)
【文献】特開平09-057862(JP,A)
【文献】特開平07-040341(JP,A)
【文献】国際公開第2018/115736(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
C08J 5/04- 5/10;5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維からなる繊維状材料及び少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスを含む予備含浸繊維状材料を製造する方法であって、
前記予備含浸繊維状材料が複数の平行な一方向性リボン又はシートとして作製されること、及び、前記方法が、N本の平行ストランド(20)の形態の前記繊維状材料の、槽(10)中での、粉体形態の前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスによる
、均一な予備含浸工程であって、前記予備含浸工程が前記槽(10)中で乾式で行われる、工程を含むことを特徴とし、
前記N本の平行ストランド(20)は、ストランドの移動方向に平行なN
i本のストランドからなるX個の組に分けられ、ここで、ΣN
i=NかつX≦Nであり、Xは2から200までの範囲であり、
槽中のY個の始動部品(30)からなるX個の系列によって、平行ストランドの各組は別々に進み、ストランドの各組は、同じ数Yの始動部品(30)上を進み、ここで、Y≧3であり、各系列の前記Y個の始動部品(30)の少なくとも1つは少なくとも部分的に前記粉体に浸漬されており、
少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスは、
- 脂肪族、脂環式又は半芳香族ポリアミド(PA)(ポリフタルアミド(PPA)とも呼ばれる)のファミリーからのポリマー及びコポリマー、
- ポリウレ
ア、
-
アクリル類のファミリーからのポリマー及びコポリマー
、
- ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)のようなポリアリールエーテルケトン(PAEK)ファミリー若しくはポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)のようなポリ(アリールエーテルケトンケトン)(PAEKK)又はその誘導体からのポリマー及びコポリマー、
- 芳香族ポリエーテルイミド(PEI)、
- ポリアリールスルフィド
、
- ポリオレフィン
、
- ポリ乳酸(PLA)、
- ポリビニルアルコール(PVA)、
- フッ素化ポリマー
、
並びにそれらの混合物
から作られ、
前記平行ストランドは、前記槽中で、前記少なくとも部分的に浸漬されている始動部品において、少なくとも各ストランドの幅に等しい間隔を空けて少なくとも互いに分離され、
槽における各系列の前記Y個の始動部品(30)は、ストランドの移動方向に、少なくとも各ストランドの太さより大きい距離だけずらされ、
前記繊維状材料中の、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスの量は、前記N本のストランドの粉体中での滞留時間を制御することによって制御され、
粉体中での滞留時間は、前記ストランドの各々で同じであり、
前記N本のストランドは、任意選択で、粉体の外で合流する、方法。
【請求項2】
前記槽が流動床(11)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流動床中の各系列の各始動部品Y
mが、槽の底部から同じ高さに位置することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
流動床中の各系列のY個の始動部品が、それぞれ互いに等距離であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記Y個の始動部品が、凸状、凹状又は円筒状の形状
の圧縮ローラであることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
X個の各組の各ストランドは、前記流動床に貫入し、少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている各系列の前記Y個の始動部品の少なくとも1つの上を進み、ストランドと前記始動部品Y
mの垂線との間に形成される角度α
2は、0°から89°ま
での範囲であることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも部分的に前記粉体中に浸漬されている各系列の前記Y個の始動部品の前記少なくとも1つの上を進んだ後、X個の各組の各ストランドは、ストランドと前記始動部品Y
mの垂線との間に形成される0°から89°ま
での範囲の角度α’
2で前記流動床から浮上することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
粉体中での滞留時間が、0.01秒から10秒ま
での範囲であることを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記予備含浸工程は、前記流動床を含む槽に進入してから槽から出るまでの間、N
i本の各平行ストランドを拡張させて行われることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
N
i本の各平行ストランドの前記拡張は、少なくとも1つの始動部品Y
m(30)
で行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各系列の始動部品Yは同一であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
各系列でm=3であり、各系列の第1の始動部品Y
1(31)は、槽(10)に進入した後の前記流動床の上方に位置し、各系列の最後の始動部品Y
3(33)は、槽(10)から出る前の前記流動床の上方に位置し、前記少なくとも部分的に浸漬されている部品(32)は、第1の始動部品Y
1(31)と前記各系列の最後の始動部品Y
3(33)の間に位置することを特徴とする、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記部品(32)は、前記流動床(11)中に完全に浸漬されていることを特徴とする、請求項2から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記予備含浸繊維状材料中の繊維のレベルは、45から65体積
%であることを特徴とする、請求項2から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
単一の熱可塑性ポリマーマトリックスが使用され、熱可塑性ポリマー粉体が流動化可能であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
予備含浸後に、熱可塑性マトリックスを加熱して、前記熱可塑性ポリマーを溶融させるか又は溶融状態に維持させる工程を少なくとも1つ更に含むことを特徴とし、
少なくとも1つの加熱工程は、少なくとも1つの熱伝導性又は非熱伝導性の始動部品(E)、及び加熱カレンダを除く少なくとも1つの加熱システムによって行われ、
1本の前記ストランド又は複数本のストランドが前記少なくとも1つの始動部品(E)の表面の一部又は表面全体と接触し、加熱システムにおける前記少なくとも1つの始動部品(E)の表面の上を部分的に又は全面的に進む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記含浸繊維状材料の前記ストランド又は前記平行ストランドを成形する工程であって、少なくとも1つの加熱カレンダを用い、単一の一方向性リボン、又は複数の平行な一方向性リボン若しくはシートの形態にカレンダ加工することによる工程を追加で含み、後者の場合、前記加熱カレンダは、前記リボンの数、並びに閉ループ制御システムによって調節される前記カレンダのローラ間の圧力及び/又は間隔に応じ、複数のカレンダ加工
溝を含むことを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
カレンダ加工工程は、繊維ストランドの通過方向に対して並列及び/又は直列に備えられた複数の加熱カレンダを用いて行われることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記加熱カレンダは、一体型の誘導又はマイクロ波加熱システ
ムを含み、前記熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマー混合物中の炭素充填材の存在と組み合わされることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記加熱カレンダは、各カレンダの前及び/又は後に位置する相補的な急速加熱装
置と組み合わされることを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記含浸工程は、含浸の後の単一の前記ストランド又は複数の前記平行ストランドを粉体によって被覆する工程で補われ、前記被覆する工程は
、カレンダ加工工程の前に、流動床中の粉体形態の前記ポリマーと同一であっても又は異なってもよ
い熱可塑性ポリマーによって行わ
れることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記熱可塑性ポリマーが、炭素系充填
剤を更に含むことを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記熱可塑性ポリマーが、添加剤として、液晶ポリマー若しくは環化ポリ(ブチレンテレフタレート)又はこれらを含有するブレンドを更に含むことを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK
);ポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK
);芳香族ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリールスルホ
ン;ポリアリールスルフィ
ド;ポリアミド(PA
);PEBA、ポリアクリレー
ト;ポリオレフィ
ン;並びにそれらの混合
物から選択されることを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、ガラス転移温度がTg≧80℃であるポリマー、又は融点がTm≧150℃である半結晶性ポリマーであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記繊維状材料が、炭素、ガラス、炭化ケイ素、玄武岩及びシリカ繊維、天然繊
維、リグニン、竹、サイザル、絹、又はセルロー
スを含むことを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーを予備含浸させた繊維状材料を製造する方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、予備含浸繊維状材料を製造する方法であって、3次元複合部品の製造に直接使用可能な、寸法が較正された予備含浸繊維状材料のリボンを得ることを目的とする、特に相互貫入流動床における、予備含浸繊維状材料を調製するための、粉体形態での含浸工程を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
粉体の流動床の機能原理は、当業者に周知の多くの問題をもたらす。実際に、流動化粉体床に導入されるあらゆる要素は、流動化ガスの流れを妨げ、従って粉体の流れを妨げることが、当業者に周知である。特に、「貫通」要素(すなわち、部分的に流動化粉体に浸漬され、部分的にこの粉体流動床の外側にある要素)の導入は、この「貫通」要素の近傍では流動化ガスの流路に対する遮蔽物として実質的に機能することが当業者に知られている。その結果、この流動化ガスの望ましくない流路により、この気体の流れの妨害に近い領域において局所的に粉体の濃度を一定に維持することができない。この妨害は、1本の繊維ストランドについて、または一定の距離をもって離間する数本の繊維ストランドについては管理および制御が可能であるが、互いに結合する繊維ストランドのシートについては容易に安定して制御されない。従って、流動化床の手前または流動化床の位置で繊維ストランドを集合させる場合、ストランドのシートによって担持される粉体は一般的に不均一となり、シート中央に位置する繊維ストランド上で粉体含有量は概して低くなる。
【0004】
国際出願WO2018/115736は、一連の始動部品を用い、わずかな間隔であってもストランド間の間隔を保持するよう注意して、同一の流動床中で数本の平行なストランドに含浸させる方法を開示している。
【0005】
しかし、この方法の欠点の一つは、特にラインの生産性を向上させるために平行なストランドを増やすことが望まれる場合、含浸ラインの総幅にある。この最大幅は、流動槽中の各繊維ストランドの幅だけでなく、その近傍の繊維に近すぎる繊維の流動化を妨害することを避けるために必要なストランド間の間隔にも起因する。最も問題がある場合、このストランド間の間隔のために、含浸ラインの幅が2倍となる可能性がある。
【0006】
特開平7-40341は、粉末形態の塩化ビニルを繊維ガラス繊維状材料に含浸させる方法であって、当該繊維状材料が2個の組に分けられ、各組が別々に2個の始動部品上を流れ、当該2個の組が第3の始動部品上で合流する、方法を開示している。しかし、始動部品の構成上、2個のストランドの組の槽内での滞留時間は同じでなく、そのため、同じように含浸させることができない。
【0007】
これらの含浸繊維ストランドのテープまたはシートの製造は、材料の最高の性能、特に機械的性能を得るため、最終材料中で繊維の一方向性を維持することを必要とし、従って、特に乾燥粉体を含浸させる工程中またはその後に、強化繊維のずれを避ける必要がある。しかし、粉末の流動化を過度に妨害しないよう、この乾燥粉体を含浸させる工程中に必要とされたストランド間の間隔は、含浸された異なる繊維ストランドが接触してシートを形成するまで近接させることが必要となる。流動床を使用する場合、この近接は、粉体を含浸させる工程中に、この工程の直後に、もしくは流動床を含有する槽の出口で、または粉体を融解し、かつ溶融樹脂を繊維に含浸させる工程の後にも行われる。多くの場合、互いに近づくよう繊維ストランドを強制的に移動させるために繊維ストランドの移動軸を偏向させることが必要となり、槽内のストランド間の間隔が顕著であるほどその傾向は強い。そうすることにより、繊維は、含浸プロセスにおける繊維の移動軸に従うそれらの初期配向に対応する、0度以外の特定の角度に配向される。繊維ストランドシートの(水平)平面内での、および/または(垂直)平面からの繊維のずれは、この誘導された角度から生じうる。このずれは、熱可塑性樹脂の冷却中に固定され、その後修正することができない。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明は、背景技術の欠点の少なくとも1つに取り組むことを目的とする。
【0009】
本発明の課題は、特に、粉体に含浸される全ストランドの幅に近い幅の装置を保ちつつ、個々に平行に含浸され、かつ同量の乾燥粉体を含む多数のストランドを製造するための革新的な方法を提案することである。好ましくは、この含浸は、均一である。すなわち、各ストランドの幅全体にわたって粉体が均等に分散する。好ましくは、集合は、含浸工程の後に行われる。より好ましくは、1本または複数のストランドからリボンを並行して製造する場合でも、またはストランドのシートを製造する場合でも、粉体を平行なストランドに含浸させるための装置により、粉体によって含浸されるストランドの対称軸の平行性を維持することが可能となる。さらに最適化された方法において、これらの繊維ストランドは、粉体形態の熱可塑性ポリマーを含む槽であって、その寸法が最小限であるにもかかわらずストランドの均一な含浸が可能であり、特に、任意の繊維ストランドがその最も近傍の繊維ストランドを妨害しない槽、特に流動床中で、含浸プロセスを用いて含浸される。よりいっそう最適化された方法において、強化繊維は、空隙率が低い水準に制御された熱可塑性ポリマーによってコアまで含浸される。この繊維ストランドのコアへの含浸は、粉体融解段階の後に行われるが、事前に粉体をストランドに均一に含浸させることを必要とする。
【0010】
この目的で、本発明の主題は、平行な強化繊維のストランドを予備含浸する工程を含む、予備含浸繊維状材料を製造する方法であり、上記ストランドは、リボンまたは最終的なシートを構成する繊維ストランドの2個以上の組に分けられ、ストランドの各組は、別々に進み、粉体形態の熱可塑性ポリマーを含む槽中、特に流動床中の、始動部品の2つ以上の系列からなるシステム上で相互貫入される。
【0011】
従って、本発明は、連続繊維からなる繊維状材料および少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスを含む予備含浸繊維状材料を製造する方法であって、上記予備含浸繊維状材料が複数の平行な一方向性リボンまたはシートとして作製されること、および当該方法が、N本の平行ストランド(20)の形態の上記繊維状材料の、少なくとも1つの槽(10)中での、粉体形態の上記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスによる、特に均一な、予備含浸工程であって、上記予備含浸工程が上記少なくとも1つの槽(10)中で乾式で行われる、工程を含むことを特徴とする、方法に関し、
【0012】
上記N本の平行ストランド(20)は、ストランドの移動方向に平行なNi本のストランドからなるX個の組に分けられ、ここで、ΣNi=NかつX≦Nであり、
少なくとも1つの槽中のY個の始動部品(30)からなるX個の系列によって、平行ストランドの各組は別々に進み、ストランドの各組は、同じ数のY個の始動部品(30)上を進み、ここで、Y≧3であり、各系列の上記Y個の始動部品(30)の少なくとも1つは少なくとも部分的に上記粉体に浸漬されており、
【0013】
上記平行ストランドは、上記少なくとも1つの槽中で、少なくとも上記少なくとも部分的に浸漬されている始動部品において、少なくとも各ストランドの幅に等しい間隔を空けて互いに分離され、
【0014】
上記少なくとも1つの槽における各系列の上記Y個の始動部品(30)は、ストランドの移動方向に、少なくとも各ストランドの太さより大きい距離だけずらされ、
【0015】
上記繊維状材料中の、上記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスの量は、上記N本のストランドの粉体中での滞留時間を制御することによって制御され、
【0016】
粉体中での滞留時間は、上記ストランドの各々で同じであり、
【0017】
上記N本のストランドは、任意選択で、粉体の外で合流する。
【0018】
有利には、熱可塑性ポリマー粉体の粒子の体積平均径D50は、30から300μmであり、特に50から200μmであり、より特定的には70から200μmである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】流動床を含む槽中での予備含浸工程の非限定的な例を開示する図であり、ここでN本の平行ストランド(20)は、それぞれ3個の始動部品(m=3:(31)、(32)、および(33))から構成される始動部品Y
m(30)の2個の系列上を別々に平行に進む平行ストランドのX=2個の組(21)および(22)に分離され、始動部品(32)は、床中に完全に浸漬されている。
【
図2】
図1に開示した例の上面図および側面図である。
【
図3】
図2の側面図であり、始動部品とストランドの組がなす角度が示されている。
【
図4】空気流量に基づく流動化を示す図である。流動床に適用される流空気量は、最小流動化流量(Umf)と最小気泡化流量(Umf)の間である必要がある。
【
図5】3つの伝導性および非伝導性ローラを有する本発明にかかる加熱システムの略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「槽幅」または「ライン幅」という表現で使用される「幅」という用語は、水平面で、かつプロセスにおいてストランドが移動する方向に対し横切る方向で測定された、問題となる構成要素(ここで、一番目の場合は槽、二番目の場合はライン)の寸法を示す。
【0021】
「平行ストランド」という表現は、ストランドの対称軸が互いに平行であることを意味する。
【0022】
「粉体中での滞留時間」という表現は、上記少なくとも1つの槽(10)中でストランドが上記粉体と接触している時間を意味する。
【0023】
「乾式で」という表現は、上記少なくとも1つの槽中で、上記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーマトリックスが粉体の形態であり、従って、上記熱可塑性粉体中に必然的に存在する湿潤性含有物を除き、懸濁液または分散体または乳濁液の状態となる水または溶媒がないことを意味する。
【0024】
空気または中性ガスのみが上記少なくとも1つの槽中に存在しうる。
【0025】
「均一」という用語は、ストランドの幅全体にわたって含浸が一様であること意味する。
【0026】
本明細書において、「繊維状材料」は、強化繊維の集合体を意味する。成形される前は、ストランドの形態をとる。成形された後は、1本もしくは複数のストランドから構成されるストリップ(もしくはテープ)、または多くのストランド、すなわち9本を超えるストランドを集合させることによって得られたリボンもしくはシートの形態である。
【0027】
一実施形態において、本発明にかかる方法は、意図的な帯電を伴うあらゆる静電気学的方法を除外する。
【0028】
幾つかの槽によって予備含浸工程を行う場合、2つの構成が可能である:
【0029】
槽はストランドの長手方向配列で位置するか、または槽は重ね合わされる。
【0030】
一実施形態において、少なくとも1つの槽(10)は、少なくとも1つの流動床(11)に対応する。
【0031】
有利な実施形態において、予備含浸工程は、単一の槽(10)を用いて行われる。
【0032】
有利な実施形態において、予備含浸工程は、流動床(11)を含む単一の槽(10)を用いて行われる。
【0033】
別の実施形態において、予備含浸工程は、槽中で、スプレーガンで噴霧することによって行われる。
【0034】
従って、発明者らは、予期せぬことに、滞留時間を制御しつつ、幾つかの個別化された平行ストランドの組へストランドを分け、個別化された平行ストランドの各組が始動部品の系列のシステムの上を進み、始動部品の系列の数がストランドの組数に対応し、単一の組が始動部品の単一の系列の上を進み、異なる組が互いに相互貫入することで、均一な予備含浸が可能になり、かつ粉体を融解させた後の第2の工程において、含浸粉体を含む槽の幅を増大させる必要なく、各ストランド中で空隙率が低水準に制御された、コアまで含浸されたストランドを得ることが可能となることを見出した。
【0035】
すなわち、発明者らは、任意の組に属する各繊維ストランド間に十分な間隔を設けながら、幾つかの平行ストランドの組へストランドを分け、異なる組が互いに相互貫入することで、粉体の流動化を妨害しないようにすることが可能になり、従って、粉体中の各ストランドの滞留時間を制御しながら各ストランドがその最も近傍のストランドの影響を受けないことを確実にすることが可能になり、従って、粉体の含有量をストランド間で一定にすることが可能になることを見出した。
【0036】
このシステムを使用することで、特に:
【0037】
その最も近傍のストランドの影響を受けることなく、これらのストランドの流動化を妨害しないよう、任意の組に属する各繊維ストランド間に十分な間隔を設けること、
【0038】
流動化槽の大きさ、特に幅が、大きくなり過ぎないこと、従って、含浸ラインの幅全体を最適化すること、
【0039】
流動化槽全体を通して流動化をより良好に調節し(槽のあらゆる点で流れの局所的均一性をより良好にし)、各ストランドに対して一定で均一な水準の含浸を得、従って、一様に含浸されたシートを得ることを可能にすること
が可能となる。
【0040】
これらのシステムは、有利なことに、繊維ストランドをそれらの移動軸からずらすことを必要とせずに、槽中の始動部品との最終接触点の後に、繊維ストランドが互いに接することなく相互貫入した、互いに近接する繊維ストランドのリボンまたはシートを得ることを可能にすることもできる。
【0041】
ポリマーマトリックス
熱可塑性物質または熱可塑性ポリマーは、半結晶性または非晶質であってよい、常温で概して固体である材料であって、非晶質である場合、温度が上昇する間に、特にそのガラス転移温度(Tg)を通過した後に軟化し、より高い温度で流動するか、または半結晶性である場合、そのいわゆる融点(Tm)の通過時に急激な転移を示し、かつ温度が(半結晶に関しては)その結晶化温度を下回る、(非晶質に関しては)そのガラス転移温度を下回ると、再び固体になる、材料を意味する。
【0042】
TgおよびTmは、それぞれ基準11357-2:2013および11357-3:2013に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0043】
繊維状材料のための含浸マトリックスを構成するポリマーに関し、ポリマーは、熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー混合物であることが有利である。このポリマーまたは熱可塑性ポリマー混合物は、槽、特に流動床といった装置中で使用できるよう、ミルで粉体形態にする。
【0044】
槽形態、特に流動床中の装置は、開放されていても、または閉鎖されていてもよい。
【0045】
任意選択で、熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーブレンドは、炭素系充填剤、特にカーボンブラックまたは炭素系ナノフィラー、好ましくはカーボンナノフィラーから選択される、特にグラフェンおよび/もしくはカーボンナノチューブおよび/もしくはカーボンナノフィブリルまたはそれらのブレンドから選択される炭素系充填剤をさらに含む。これらの充填剤は、電気および熱の伝導を可能にし、従って、加熱された際にポリマーマトリックスの潤滑性を向上させることができる。
【0046】
任意選択で、上記熱可塑性ポリマーは、少なくとも1つの添加剤、特に、触媒、抗酸化剤、熱安定剤、UV安定剤、光安定剤、潤滑剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、核形成剤、鎖延長剤、および染料から選択される添加剤、またはそれらの混合物を含む。
【0047】
別の変形例によると、熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー混合物は、CYCLICS CORPORATIONから販売されるCBT100樹脂といった、液晶ポリマーもしくは環化ポリブチレンテレフタレートまたはこれらを含有する混合物をさらに含みうる。これらの化合物は、繊維のコアへより良好に浸透するために、特に溶融状態のポリマーマトリックスを液体化することを可能にする。含浸マトリックスの提供に使用されるポリマーの性質または熱可塑性ポリマー混合物の性質、特にその融点に応じて、これらの化合物のいずれかが選択される。
【0048】
繊維状材料の含浸マトリックスの組成に加えられる熱可塑性ポリマーは、
【0049】
- 脂肪族、脂環式または半芳香族ポリアミド(PA)(ポリフタルアミド(PPA)とも呼ばれる)のファミリーからのポリマーおよびコポリマー、
【0050】
- ポリウレア、特に芳香族ポリウレア、
【0051】
- ポリアクリレートといったアクリル類のファミリーからのポリマーおよびコポリマー、より具体的にはポリメチルメタクリレート(PMMA)またはその誘導体、
【0052】
- ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)のようなポリアリールエーテルケトン(PAEK)ファミリーもしくはポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)のようなポリ(アリールエーテルケトンケトン)(PAEKK)またはその誘導体からのポリマーおよびコポリマー、
【0053】
- 芳香族ポリエーテルイミド(PEI)、
【0054】
- ポリアリールスルフィド、特にポリフェニルスルフィド(PPS)、
【0055】
- ポリアリールスルフィド、特にポリフェニレンスルホン(PPSU)、
【0056】
- ポリオレフィン、特にポリプロピレン(PP)、
【0057】
- ポリ乳酸(PLA)、
【0058】
- ポリビニルアルコール(PVA)、
【0059】
フッ素化ポリマー、特に、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、
【0060】
ならびにそれらの混合物から選択されうる。
【0061】
有利には、上記熱可塑性ポリマーが混合物である場合、ドライブレンドもしくはコンパウンドによって予め得られた粉体形態で槽に添加されるか、またはドライブレンド形態で槽中に直接添加される。
【0062】
有利には、熱可塑性ポリマーは、ドライブレンドによって予め得られた粉体形態で添加されるか、またはドライブレンド形態で槽中に直接添加され、混合物はPEKKおよびPEIの混合物である。
【0063】
有利には、上記ポリマーが2つのポリマーP1およびP2の混合物である場合、ポリマーP1とP2の重量比は、1:99%から99:1%である。
【0064】
有利には、PEKK/PEI混合物は、90:10から60:40重量%であり、特に90:10~70:30重量%である。
【0065】
熱可塑性ポリマーは、繊維状材料に含浸する最終的な非反応性ポリマーに、あるいは反応性プレポリマーであって、同様に繊維状材料に含浸するが、当該プレポリマーが有する鎖末端に応じ、含浸後にそれ自身もしくは別のプレポリマーとまたは鎖延長剤と、特に加熱カレンダにおける加熱中に反応しうる、反応性プレポリマーに対応しうる。
【0066】
第1の可能性において、上記プレポリマーは、同一の鎖上に(すなわち、同一のプレポリマー上に)、それぞれ縮合によって相互に共反応する官能基である、2つの末端官能基X’およびY’を有する、少なくとも1つの担体反応性プレポリマー(ポリアミド)を含んでよく、または当該少なくとも1つの担体反応性プレポリマー(ポリアミド)で構成されてよく、より具体的にはX’およびY’は、それぞれアミンおよびカルボキシまたはカルボキシおよびアミンである。第2の可能性によると、上記プレポリマーは、それぞれが2つの同一な末端官能基X’またはY’(同じプレポリマーで同一であり、2つのプレポリマー間で異なる)を有する、互いに反応する少なくとも2つのポリアミドプレポリマーを含んでよく、または当該少なくとも2つのポリアミドプレポリマーで構成されてよく、プレポリマーの上記官能基X’は、他のプレポリマーの上記官能基Y’のみと、特に縮合によって反応可能であり、より具体的にはX’およびY’は、それぞれアミンおよびカルボキシまたはカルボキシおよびアミンである。
【0067】
第3の可能性によると、上記プレポリマーは、-NH2、-CO2H、および-OHから、好ましくはNH2および-CO2Hから選択される、n個の末端反応性官能基Xを有し、nは1から3、好ましくは1から2、より好ましくは1または2、とりわけ2である、上記熱可塑性ポリアミドポリマーのプレポリマーを少なくとも1つ、ならびにY-A’-Y鎖延長剤であって、A’が上記プレポリマーa1)の少なくとも1つのX官能基と重合付加によって反応する2つの同一なY末端反応性官能基を有する非重合性構造の炭化水素ビラジカルであり、好ましくは分子質量が500未満、より好ましくは400未満である、Y-A’-Y鎖延長剤を少なくとも1つ含んでよく、または当該少なくとも1つの熱可塑性ポリアミドポリマーのプレポリマーおよび少なくとも1つのY-A’-Y鎖延長剤で構成されてよい。
【0068】
上記の最終的な熱可塑性マトリックスのポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは、10000から40000までの範囲内、好ましくは12000から30000までの範囲内である。これらのMn値は、ISO基準307:2007に準拠して、ただし溶媒を変更(20℃の温度で、硫酸の代わりにm-クレゾールを使用)してm-クレゾール中で決定したときの0.8以上の固有粘度に対応する。
【0069】
上記で示した2つの選択肢にかかる上記反応性プレポリマーは、500から10000まで、好ましくは1000から6000まで、特に2500から6000までの範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0070】
Mnは、特に、溶液中での電位差滴定によって決定される末端官能基の比および上記プレポリマーの官能性から計算することによって決定される。質量Mnは、立体排除クロマトグラフィーまたはNMRによっても決定されうる。
【0071】
ポリアミドの定義に使用される命名法は、ISO基準1874-1:2011「プラスチック-ポリアミド(PA)成形用および押出用材料-第1部:名称」、特に3頁(表1および表2)に記載されており、当業者に周知である。
【0072】
ポリアミドは、ホモポリアミドもしくはコポリアミドまたはそれらの混合物でありうる。
【0073】
有利には、マトリックスを構成するポリマーは、ポリアミド(PA)、特に脂肪族ポリアミド、特にPA11およびPA12、環状脂肪族ポリアミド、ならびに任意選択で尿素基によって変性された半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)から選択されるポリアミド(PA)、ならびにそのコポリマー、ポリメチルメタクリレート(PPMA)およびそのコポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)、ならびにポリ(フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリ(フェニレンスルホン)(PPSU)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF)のようなフッ素化ポリマーから選択される。
【0074】
フッ素化ポリマーに関し、ビニリデンフルオリド(式CH2=CF2を有するVDF)の単独重合体、または重量で少なくとも50質量%のVDFおよびVDFと共重合可能な他の単量体を少なくとも1つ含むVDFのコポリマーを使用することが可能である。特に構造部品が熱的および化学的ストレスに曝される場合に、構造部品に良好な機械的強度をもたらすため、VDFの量は、80質量%を超える、より良好には90質量%すら超える必要がある。共単量体は、例えばビニルフルオリドなどのフッ素化単量体である必要がある。
【0075】
高温に耐える必要がある構造部品に関し、フッ化ポリマーに加え、本発明によると、ポリ(エーテルケトン)PEK、ポリ(エーテルエーテルケトン)PEEK、ポリ(エーテルケトンケトン)PEKK、ポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)PEKEKKといったPAEK(ポリアリールエーテルケトン)またはガラス転移温度(Tg)が高いPAが有利に使用される。
【0076】
有利には、上記熱可塑性ポリマーは、ガラス転移温度がTg≧80℃であるポリマー、または融点がTm≧150℃である半結晶性ポリマーである。
【0077】
有利には、上記熱可塑性ポリマーは、
【0078】
- ポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド66(PA-66)、ポリアミド46(PA-46)、ポリアミド610(PA-610)、ポリアミド612(PA-612)、ポリアミド1010(PA-1010)、ポリアミド1012(PA-1012)、またはそれらの混合物もしくはそれらのコポリアミドから選択される脂肪族ポリアミド、
【0079】
任意選択的に尿素単位で変性される半芳香族ポリアミド、特に、EP1505099に記載されるような式X/YArの半芳香族ポリアミド、特に、式A/XTの半芳香族ポリアミド、ここで、Aは、アミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位、および式(Caジアミン).(Cb二塩基酸)に対応する単位から選択され、aはジアミンの炭素原子数を表し、bは二塩基酸の炭素原子数を表し、aおよびbはそれぞれ4から36の間、有利には9から18の間であり、(Caジアミン)単位は、直鎖または分岐状脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択され、(Cb二塩基酸)単位は、直鎖または分岐状脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸および芳香族二塩基酸から選択され、
【0080】
X.Tは、Cxジアミンとテレフタル酸の重縮合から得られる単位を示し、xは、Cxジアミンの炭素原子数を表し、xは、6から36まで、有利には9から18までの範囲であり、特に、X.Tは、Aが上記で定義されたとおりである、式A/6T、A/9T、A/10T、またはA/11Tのポリアミド、特に、ポリアミドPA6/6T、PA66/6T、PA6I/6T、PA MPMDT/6T、PA MXDT/6T、PA PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/10T、PA11/MPMDT/10T、およびPA11/MXDT/10T、ならびにブロックコポリマー、特にポリアミド/ポリエーテル(PEBA)である。
【0081】
Tは、テレフタル酸に対応し、MXDは、m-キシレンジアミンに対応し、MPMDは、メチルペンタメチレンジアミンに対応し、BACは、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに対応する。
【0082】
繊維状材料:
上記繊維状材料を構成する繊維は、特に、鉱物、有機または植物繊維である。鉱物繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維または炭化ケイ素繊維が挙げられる。有機繊維として、例えば、半芳香性ポリアミド繊維、アラミド繊維またはポリオレフィン繊維といった、熱可塑性または熱硬化性ポリマー系繊維が挙げられる。好ましくは、これらは、非晶質熱可塑性ポリマー系であり、かつマトリックスが非晶質である場合、含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマーもしくはポリマー混合物のガラス転移温度Tgより高いTgを有し、またはマトリックスが半結晶性である場合、含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマーもしくはポリマー混合物のTmより高いTgを有する。有利には、これらは、半結晶熱可塑性ポリマー系であり、かつマトリックスが非晶質である場合、含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマーもしくはポリマー混合物のTgより高い融点Tmを有し、またはマトリックスが半結晶性である場合、含浸マトリックスを構成する熱可塑性ポリマーもしくはポリマー混合物のTmより高い融点Tmを有する。従って、最終複合体の熱可塑性マトリックスによる含浸中に繊維状材料を構成する有機繊維が溶融するリスクがない。植物繊維として、天然亜麻、麻、リグニン、竹、絹、特にクモの糸、サイザル、および他のセルロース繊維、特にビスコースが挙げられる。熱可塑性ポリマーマトリックスの付着および含浸を容易にするため、これらの植物繊維は、そのままで、処理して、または被覆層で被覆して、使用されうる。
【0083】
繊維状材料は、布、繊維の編物または織物であってもよい。
【0084】
それは、支持糸を伴った繊維に対応するものであってもよい。
【0085】
これらの繊維成分は、単独で、または混合物として使用されうる。従って、熱可塑性ポリマーに含浸させて予備含浸繊維状材料を形成するため、有機繊維は、鉱物繊維と混合されうる。
【0086】
有機繊維ストランドは、幾つかの重さを取りうる。有機繊維ストランドは、さらに幾つかの形状を有しうる。繊維は、短繊維形態または連続繊維形態で提供され、短繊維形態は、次いで、ストリップ、層またはピースの形態で提供されるフェルトまたは不織布を構成し、連続繊維形態は、2次元織物、編物、または一方向性(UD:unidirectional)繊維もしくは不織繊維のストランドとして提供される。繊維状材料の繊維成分は、異なる形状を有するこれらの強化繊維の混合物の形態をさらにとりうる。好ましくは、繊維は連続する。
【0087】
好ましくは、繊維状材料は、連続炭素、ガラスもしくは炭化ケイ素繊維またはそれらの混合物、特に炭素繊維から構成される。繊維状材料は、1本のストランドまたは数本のストランドの形態で使用される。
【0088】
ポリマーまたは熱可塑性含浸ポリマー混合物は、「即時使用可能」とも呼ばれる予備含浸材料中で、繊維の周りに一様かつ均一に分散する。この種の材料において、熱可塑性含浸ポリマーは、最少の空隙率を得る、すなわち繊維間の空間を最小とするため、繊維中に可能な限り均一に分散する必要がある。実際に、この種の材料中に空隙が存在すると、例えば、機械的引張応力が加えられる間、応力集中点として作用し、その後、予備含浸繊維状材料の破断開始点を形成し、機械的損傷をもたらす。従って、ポリマーまたはポリマー混合物の均一な分散は、機械的強度、およびこれらの予備含浸繊維状材料から形成される複合材料の均一性を向上させる。
【0089】
従って、いわゆる「即時使用可能な」予備含浸材料の場合、上記含浸繊維状材料中の繊維含有量は、45から65体積%、好ましくは50から60体積%、特に54から60体積%である。
【0090】
含浸度は、画像分析によって(特に、顕微鏡またはカメラもしくはデジタルカメラを使用して)リボンの断面から、ポリマーが含浸したリボンの表面積を、製品(含浸表面積と空隙の表面積の和)の総表面積で割ることによって、測定することができる。良好な品質の画像を得るため、横断方向に切断されたリボンを標準的な研磨樹脂で被覆し、少なくとも6倍の倍率の顕微鏡下で試料の観察が可能となる標準的なプロトコールで研磨することが好ましい。
【0091】
有利には、上記予備含浸繊維状材料の空隙率は、0%から30%の間、特に1%から10%、特に1%から5%である。
【0092】
空隙率は、閉鎖空隙率に相当し、電子顕微鏡法によって、または本発明の実施例のセクションに記載するように、上記予備含浸繊維状材料の理論的密度と実験的密度の間の相対的偏差として決定されうる。
【0093】
含浸工程:
上記少なくとも1つの槽中での予備含浸工程において、特に、上記N本の平行ストランド(20)は、ストランドの移動方向に平行なNi本のストランドからなるX個の組に分けられ、ΣNi=NかつX≦Nであり、平行ストランドの各組は、上記少なくとも1つの槽中のY個の始動部品(30)からなるX個の系列によって別々に進み、Y≧3である。
【0094】
槽の数が予備含浸されるストランドの数に依存することは、明白である。
【0095】
複数の槽は、上記ストランドの移動方向、従って長さ方向に配置されうる。複数の槽は、槽を重ね合わせることによって、従って高さ方向にも配置されうる。
【0096】
存在する槽の数および複数の槽の配置にかかわらず、各ストランドの粉体中での滞留時間は同一である。
【0097】
幾つかの槽が存在する場合、各槽は、上記槽中にY個の始動部品(30)からなるX個の系列の同じシステムを有し、Y≧3である。
【0098】
従って、上記N本の平行ストランド(20)は、最少でX=2組に分けられまたは分離され、始動部品の各系列が最少で3個の始動部品からなる、始動部品の最少でX=2個の系列上を進む。
【0099】
有利には、始動部品の数は、3から20個まで、より好ましくは3から10個まで、さらに好ましくは3から6個までの範囲である。
【0100】
有利には、始動部品の数は、3から((31)、(32)、から(33))の範囲である。
【0101】
従って、槽中の系列ごとにY個の始動部品があり、Yは、3から20までの範囲である。
【0102】
有利には、Xは、2から200まで、好ましくは2から50まで、より好ましくは2から10まで、より好ましくは2から5までの範囲であり、より好ましくは2に等しい。
【0103】
従って、槽または複数の槽中、始動部品の系列がX個存在し、Xは、有利には2から200まで、好ましくは2から50まで、より好ましくは2から10まで、より好ましくは2から5までの範囲であり、より好ましくは2に等しい。
【0104】
有利には、始動部品の数は、3から20個まで、より好ましくは3から10個まで、さらに好ましくは3から6個までの範囲であり、Xは、2から200まで、好ましくは2から50まで、より好ましくは2から10まで、より好ましくは2から5までの範囲であり、より好ましくは2に等しい。
【0105】
有利には、始動部品の数は、3から6個までの範囲であり、Xは、2から10まで、より好ましくは2から5までの範囲であり、より好ましくは2に等しい。
【0106】
有利には、始動部品の数は、3から6個までの範囲であり、Xは、2から5までの範囲であり、より好ましくは2に等しい。
【0107】
有利には、1つの槽のみが存在する。
【0108】
有利には、槽は、流動床を含む。
【0109】
有利には、流動床中の各系列の各始動部品Ymは、槽の底部を基準として同じ高さに置かれる。
【0110】
有利には、流動床中の各系列のY個の始動部品は、それぞれ互いに等距離にある。
【0111】
有利には、上記Y個の始動部品は、凸状、凹状または円筒状の形状の、特に円筒状の形状の圧縮ロールである。
【0112】
そのため、上記ストランド(20)は、X個の組に分けられまたは分離される。従って、槽は、始動部品の系列をX個含み、ストランドの各組は、始動部品の系列Xnの上を通過する。
【0113】
各組Xの上記ストランド(20)は、流動床に貫入し、少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている各系列のY個の始動部品の少なくとも1つの上を進み、ストランドと上記始動部品Ymの垂線との間に形成される角度α2は、0°から89°まで、好ましくは5°から85°まで、好ましくは5°から45°まで、好ましくは5°から30°までの範囲である。
【0114】
上記始動部品は、粉体がストランドとその上をストランドが進む始動部品との間に貫入するよう、少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている。有利には、各系列の上記始動部品は、完全に浸漬されている。
【0115】
有利には、ストランドと少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている上記始動部品Ymの垂線との間に形成されるストランドの各組の角度α2は、同一である。
【0116】
少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている、各系列の上記Y個の始動部品の少なくとも1つの上を通過した後、各ストランド(20)は、ストランドと上記始動部品Ymの垂線との間に形成される0°から89°まで、好ましくは5°から85°まで、好ましくは5°から45°まで、好ましくは5°から30°までの範囲の角度β2で上記流動床から出る。
【0117】
有利には、ストランドと、少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている上記始動部品Ymの垂線との間に形成されるストランドの各組の角度β2は、同一である。
【0118】
有利には、ストランドと、少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている上記始動部品Ymの垂線との間に形成されるストランドの各組の角度α2は、同一であり、ストランドと、少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている始動部品Ymの垂線との間に形成されるストランドの各組の角度β2は、同一である。
【0119】
有利には、α2=β2である。
【0120】
一実施形態において、粉体中での滞留時間は、0.01秒から10秒まで、好ましくは0.1秒から5秒まで、特に0.1秒から3秒までの範囲である。
【0121】
粉体中の繊維状材料の滞留時間は、繊維状材料の含浸、特に均一な含浸に必須な因子の1つである。
【0122】
0.1秒を下回ると、含浸は不良となる。
【0123】
10秒を超えると、繊維状材料に含浸するポリマーマトリックスレベルが高くなり過ぎ、予備含浸繊維状材料の機械的特性が不十分となる。
【0124】
一実施形態において、上記予備含浸工程は、上記流動床を含む槽に進入してから槽から出るまでの間、Ni本の各平行ストランドを拡張させて行われる。
【0125】
拡張させる場合、ストランドの対称軸が互いに平行に維持されることは明白である。
【0126】
「流動床の入口」という表現は、流動床を含む槽の縁の垂直接線に対応する。
【0127】
「流動床の出口」という表現は、流動床を含む槽の他方の縁の垂直接線に対応する。
【0128】
拡張とは、上記ストランドを構成する各フィラメントを、それに最も近い空間においてそれを囲む他のフィラメントから可能な限り単離させことである。これは、ストランドの横方向の拡張に対応する。
【0129】
すなわち、ストランドの横方向の間隔または幅は、流動床を含む槽へ侵入してから流動床を含む槽から出るまでの間増大し、従って均一な含浸が可能となる。
【0130】
有利には、上記流動床の入口と出口の間での上記ストランドまたは複数のストランドの拡張比率は、1%から400%まで、好ましくは30%から400%まで、好ましくは30%から150%まで、好ましくは50%から150%までの範囲である。
【0131】
拡張は、使用される繊維状材料に依存する。例えば、炭素繊維製の材料の拡張は、亜麻繊維よりもはるかに大きい。
【0132】
拡張は、ストランド中の繊維またはフィラメントの数、それらの平均径、およびサイジングに起因するそれらの凝集にも依存する。
【0133】
有利には、Ni本の各平行ストランドの上記拡張は、少なくとも1つの始動部品Ym(30)の位置で、特に、少なくとも部分的に上記粉体中に浸漬されている各系列の上記少なくとも1つの上記始動部品Ymの位置で、少なくとも行われる。
【0134】
有利には、上記拡張は、円筒状形状の圧縮ローラを用いて得られる。
【0135】
有利には、各系列の上記始動部品Ymは、同一である。
【0136】
幾つかの始動部品は、少なくとも部分的に浸漬されている少なくとも1つの始動部品の前に流動床の外の槽の中に存在してよい。
【0137】
同様に、幾つかの始動部品は、上記少なくとも部分的に浸漬されている少なくとも1つの始動部品の後に流動床の外の槽の中に存在してよい。
【0138】
一実施形態において、各系列の始動部品の数mは3であり、各系列の第1の始動部品Y1(31)は、槽(10)に進入した後の記流動床の上方に位置し、各系列の最後の始動部品Y3(33)は、槽(10)から出る前の上記流動床の上方に位置し、上記少なくとも部分的に浸漬されている部品(32)は、第1の始動部品Y1(31)と上記各系列の最後の始動部品Y3(33)の間に位置する。
【0139】
ストランドの各組は、槽へ進入した直後に第1の始動部品Y1上を進み、その後、角度α1を形成して粉体に向かって降下する。
【0140】
第1の始動部品Y1がそれぞれ槽入口の縁に対応していたとしても本発明の範囲を逸脱しない。
【0141】
有利には、第1の始動部品Y1は、槽の入口縁から分離している。
【0142】
槽に進入する直前の上記ストランドは、互いにまたは縁間で分離されうるが、後者の場合、ストランドは、次いで槽の入口に置かれる第1の始動部品Y1の幅にわたって、かつ続く各始動部品にわたって、各ストランドの拡張が最大となる際にストランドが互いに触れないような距離だけ分離される。
【0143】
有利には、同じ系列の2本のストランドを分離する距離は、拡張ストランドの幅の少なくとも半分、特に拡張ストランドの幅に等しい。
【0144】
一実施形態において、ストランドと上記始動部品Y1の垂線との間に形成される角度α1は、0°から89°まで、好ましくは5°から85°まで、好ましくは5°から45°まで、好ましくは5°から30°までの範囲である。
【0145】
各系列について第1の始動部品Y1が存在し、各組についてストランドと上記始動部品Y1の垂線との間に形成される角度α1は、0°から89°まで、好ましくは5°から85°まで、好ましくは5°から45°まで、好ましくは5°から30°までの範囲である。
【0146】
有利には、全ての始動部品Y1は、槽の底部を基準として同じ高さに位置し、少なくともストランドの太さ、特に5mmから100mm、特に10mmから50mmだけ互いにずらされる。
【0147】
有利には、全ての始動部品Y1は、互いに等距離である。
【0148】
有利には、ストランドと各系列または各組の上記始動部品Y1の垂線との間に形成される角度α1は、同一である。
【0149】
各組の上記ストランド(20)は、その後、槽に含まれる粉体、特に流動床に、各系列Xnの第2の始動部品Y2まで貫入する。
【0150】
各系列の上記第2の始動部品Y2は、粉体がストランドとその上をストランドが進む始動部品の間に貫入できるよう、粉体中に、特に流動床中に少なくとも部分的に浸漬されている。
【0151】
有利には、各系列の上記始動部品は、完全に浸漬されている。
【0152】
そのため、各系列について第2の始動部品Y2が存在し、各組について、上記ストランドは、ストランドと上記の始動部品Y2の垂線との間に形成される、0°から89°まで、好ましくは5°から85°まで、好ましくは5°から45°まで、好ましくは5°から30°までの範囲の角度α2で貫入する。
【0153】
上記始動部品は、粉体がストランドとその上をストランドがその上を進む始動部品の間に貫入できるよう、粉体中に少なくとも部分的に浸漬されている。有利には、上記各系列の始動部品は、完全に浸漬されている。
【0154】
有利には、全ての始動部品Y2は、槽の底部を基準として同じ高さに位置し、少なくともストランドの太さ、特に5mmから100mm、特に10mmから50mmだけ互いにずらされる。
【0155】
有利には、全ての始動部品Y2は、互いに等距離である。
【0156】
有利には、ストランドと粉体中に少なくとも部分的に浸漬されている上記始動部品Y2の垂線との間に形成されるストランドの各組の角度α2は、同一である。
【0157】
有利には、第1の始動部品Y1と第2の始動部品Y2の高さの差は、10mmから600mmまで、より好ましくは50から300mmまでの範囲である。
【0158】
少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている、各系列の上記少なくとも1つの上記始動部品Y2上を通過した後、各ストランド(20)は、ストランドと上記始動部品Y2の垂線との間に形成される0°から89°まで、好ましくは5°から85°まで、好ましくは5°から45°まで、好ましくは5°から30°までの範囲の角度β2で上記流動床から出る。
【0159】
有利には、ストランドと少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている上記始動部品Y2の垂線との間に形成されるストランドの各組の角度β2は、同一である。
【0160】
有利には、ストランドと少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている上記始動部品Y2の垂線との間に形成されるストランドの各組の角度α2は、同一であり、ストランドと少なくとも部分的に粉体中に浸漬されている上記始動部品Y2の垂線との間に形成されるストランドの各組の角度β2は、同一である。
【0161】
有利には、α2=β2である。
【0162】
上記第2の始動部品におけるストランドは、互いに相互貫入する。
【0163】
「相互貫入」という用語は、ストランドが互いに接触せずに互いの間を通過することを意味する。
【0164】
第2の始動部品を通過した後、各組の上記ストランド(20)は、槽に含まれる粉体、特に流動床を離れ、
【0165】
槽からの出口へ上昇し、各系列Xnの第3の始動部品Y3に至る。
【0166】
そのため、各系列について第3の始動部品Y3が存在し、各組について、ストランドと上記始動部品Y3の垂線との間に形成される角度α3は、0°から89°まで、好ましくは5°から85°まで、好ましくは5°から45°まで、好ましくは5°から30°までの範囲である。
【0167】
有利には、全ての始動部品Y3は、槽の底部を基準として同じ高さに位置し、少なくともストランドの太さ、特に5mmから100mm、特に10mmから50mmだけ互いにずらされる。
【0168】
有利には、始動部品Y3は、互いに等距離である。
【0169】
有利には、ストランドと各系列または各組の上記始動部品Y3の垂線との間に形成される角度α3は、同一である。
【0170】
有利には、第2の始動部品Y2と第3の始動部品Y3の高さの差は、10mmから600mmまで、より好ましくは50から300mmまでの範囲である。
【0171】
有利には、第1の始動部品Y1と第2の始動部品Y2の高さの差は、10mmから600mmまで、より好ましくは50から300mmまでの範囲であり、第2の始動部品Y2と第3の始動部品Y3の高さの差は、10mmから600mmまで、より好ましくは50から300mmまでの範囲である。
【0172】
第3の始動部品Y3がそれぞれ槽出口の縁に対応していたとしても本発明の範囲を逸脱しない。
【0173】
有利には、第3の始動部品Y1は、槽の入口縁から分離している。
【0174】
一実施形態において、全ての始動部品Y1は、槽の底部を基準として同じ高さに位置し、全ての始動部品Y2は、槽の底部を基準として同じ高さに位置し、全ての始動部品Y3は、槽の底部を基準として同じ高さに位置し、各始動部品Y1、Y2およびY3は、それぞれ少なくともストランドの太さ、特に5mmから100mm、特に10mmから50mmだけ互いにずらされる。
【0175】
有利には、全ての始動部品Y1、Y2、およびY3は、互いに等距離である。
【0176】
有利には、ストランドと各系列または各組の上記始動部品Y1、Y2およびY3の垂線との間に形成されるストランドの各組の角度α1、α2、β2およびα3は、同一である。
【0177】
ストランドの各組は、別々に進み、各ストランドは、互いに相互貫入する。ストランドは、1本ずつ分離されうるが、例えば2本ずつなど、全ての解法が可能であることは明白である。
【0178】
有利には、ストランドは、1本ずつ分離される。
【0179】
N本の平行ストランドの起点におけるパリティの有無やパリティに基づき、各系列Xn上、従って各ローラY1すなわち(31)、同様にY2すなわち(32)、またはY3(33)上で、ストランドの数Niが同一でない場合があることも明白である。
【0180】
例えば、5組に分けられるN=50本のストランド、従って5個のストランドの系列である場合、1組当たり、従って1系列当たりNi=10本のストランドが存在しうるが、Ni=12本のストランドの4組、およびNi=2本のストランドの1組の構成を構想することも可能である。
【0181】
同様に、5組に分けられるN=51本のストランドである場合、4組について1組当たりNi=10本のストランドが存在してよく、その結果、5組目は、Ni=11本のストランドを含む。
【0182】
有利には、各ストランドは、Ni-1からNi+1本のストランドを含み、ここでNiは、N/Xの整数部分である。
【0183】
従って、各ストランドの粉体中での滞留時間が同一である限り、任意の構成でありうる。
【0184】
しかし、どのような構成であっても、ΣNi=NおよびX≦Nである。
【0185】
一実施形態によると、本発明は、単一の熱可塑性ポリマーマトリックスが使用され、熱可塑性ポリマー粉体が流動化可能であることを特徴とする、上記で定義された方法に関する。
【0186】
「流動化可能」という用語は、流動床に適用される空気流量が、
図4に示される最小流動化流量(Umf)と最小気泡化流量(Umf)の間であることを意味する。
【0187】
最小流動化流量を下回ると、流動化は起きず、ポリマー粉体粒子は床に降下し、もはや懸濁状態でなくなり、本発明にかかる方法は動作できない。
【0188】
最小気泡化流量を上回ると、粉体粒子は、飛散し、流動床の一定な組成をもはや一定に保つことができなくなる。
【0189】
有利には、粒子の体積直径D90は、50から500μm、有利には120から300μmである。
【0190】
有利には、粒子の体積直径D10は、5から200μm、有利には35から100μmである。
【0191】
有利には、粉体粒子の体積直径の比D90/D10は、1.5から50、有利には2から10である。
【0192】
有利には、熱可塑性ポリマー粉体の粒子の平均体積直径D50は、30から300μm、特に50から200μm、より特定的には70から200μmである。
【0193】
粒子の体積直径(D10、D50、およびD90)は、ISO基準9276:2014に準拠して定義される。
【0194】
「D50」は、体積平均直径、すなわち調べられる粒子群を正確に半分に分割する粒子径の値に相当する。
【0195】
「D90」は、体積粒子径分布累積曲線の90%における値に相当する。
【0196】
「D10」は、粒子の体積の10%の大きさに相当する。
【0197】
本発明にかかる方法の別の実施形態によると、流動床を含む槽の前にクリールが存在し、流動床を含む槽の入口でストランドの張力を制御する。
【0198】
加熱工程
別の実施形態において、本発明は、予備含浸後に、熱可塑性マトリックスを加熱して、上記熱可塑性ポリマーを溶融させるかまたは溶融状態に維持させる工程を少なくとも1つさらに含むことを特徴とする、上記で定義された方法に関し、
【0199】
少なくとも1つの加熱工程は、少なくとも1つの熱伝導性または非熱伝導性の始動部品(E)、および加熱カレンダを除く少なくとも1つの加熱システムによって行われ、
【0200】
1本の上記ストランドまたは複数本のストランドは、上記少なくとも1つの始動部品(E)の表面の一部または表面全体と接触し、加熱システムにおける上記少なくとも1つの始動部品(E)の表面の上を部分的にまたは全面的に進む。
【0201】
第1の加熱工程は予備含浸工程の直後に連続することができる。あるいは、予備含浸工程と加熱工程の間に他の工程を行うことができる。
【0202】
それにもかかわらず、少なくとも1つの始動部品(E)を備える加熱システムにより実施される第1の工程は加熱カレンダに相当せず、リボンの平滑化および成形に必要なカレンダ加工工程の前に常に行われる。
【0203】
有利には、上記第1の加熱工程は予備含浸工程の直後に続く。「直後に連続する」という表現は、予備含浸工程と上記加熱工程との間に介在する工程がないことを意味する。
【0204】
有利には、単一の加熱工程が予備含浸工程の直後に続いて行われる。
【0205】
有利には、始動部品が熱伝導性である場合、上記少なくとも1つの加熱システムは、赤外線ランプ、UVランプ、および対流加熱から選択される。
【0206】
繊維状材料は、支持体および加熱システムと接触し、支持体は伝導性を有し、従って加熱システムも伝導により機能する。
【0207】
有利には、上記少なくとも1つの加熱システムは赤外線ランプから選択される。
【0208】
有利には、始動部品が非熱伝導性である場合、上記少なくとも1つの加熱システムは、マイクロ波加熱、レーザ加熱、および高周波(HF)加熱から選択される。
【0209】
非加熱および非熱伝導性の支持部品(E)は、マイクロ波、レーザ、またはHF加熱システムの波長を吸収しない。
【0210】
有利には、上記少なくとも1つの加熱システムは、マイクロ波加熱から選択される。
【0211】
有利には、上記少なくとも1つの始動部品(E)は、凸状、凹状または円筒状の形状の圧縮ローラR’iである。
【0212】
始動部品(E)に対応する圧縮ローラ、および予備含浸工程に使用される圧縮ローラは、材料もしくは形状およびその特性(形状に応じ、直径、長さ、幅、高さなど)に関し、同一であっても、または異なってもよいことに留意すべきである。
【0213】
凸状形状は拡張に望ましく、一方で凹状形状は拡張に不都合であるが、それにもかかわらず凹状形状も存在する。
【0214】
少なくとも1つの支持部品(E)は、凹凸が交互に繰り返される形状も有しうる。この場合、凸状圧縮ローラをストランドが通過することで上記ストランドが拡張し、次いで凹状圧縮ローラをストランドが通過することでストランドが引き戻されるなど、必要に応じ、含浸、特にコアへの含浸の均一性を向上させることが可能となる。
【0215】
「圧縮ローラ」という表現は、通過するストランドが上記圧縮ローラの表面上を部分的または全面的に進み、上記ストランドの拡張をもたらすことを意味する。
【0216】
ローラは、固定されない(回転する)か、または固定されうる。
【0217】
ローラは、平滑であるか、筋を有するか、または溝を有しうる。
【0218】
有利には、ローラは円筒状であり、筋を有する。ローラが筋を有する場合、2本の筋が、上記ローラの中心から始まる互いに対向する方向に存在しうる。従って、ローラの外側方向への、または上記ローラの外側から始まる互いに対向する方向へのストランドの分離が可能になり、従ってローラの中心方向にストランドを戻すことが可能になる。
【0219】
ストランドの第1の拡張は、予備含浸工程中に、上記ストランドが部分的または完全に上記始動部品を移動することにより、上記始動部品において起こり、第2の拡張は、加熱工程中に、上記ストランドが部分的または完全に上記始動部品(E)を移動することにより、始動部品(E)に対応する上記圧縮ローラにおいて起こる。この第2の拡張に先行し、ストランドが加熱システムを通過する間、上記始動部品(E)を部分的または完全に通過する前に、上記ストランド上のポリマーの溶融に起因するストランドの引き戻しが起こる。
【0220】
この第2の拡張は、加熱システムによる上記ポリマーマトリックスの溶融およびストランドの引き戻しと組み合わされ、予備含浸を均一化し、その結果含浸を終了または完了させることが可能となり、その結果、均一でなかった場合、繊維の体積割合を高くする、具体的には、ストリップまたはリボンの体積の少なくとも70%で一定、特にストリップまたはリボンの体積の少なくとも80%で一定、特にストリップまたはリボンの体積の少なくとも90%で一定、より特定的にはストリップまたはリボンの体積の少なくとも95%で一定となるような、均一な含浸が可能となり、かつ空隙率を低下させることが可能になる。
【0221】
拡張は、使用される繊維性材料に依存する。例えば、炭素繊維製の材料の拡張は、亜麻繊維製の材料の拡張よりはるかに大きい。
【0222】
拡張は、ストランド中の繊維の数、それらの平均径、およびサイジングに起因するそれらの凝集にも依存する。
【0223】
上記少なくとも1つの圧縮ローラ(始動部品(E))の直径は、3mmから100mmまで、好ましくは3mmから20mmまで、特に5mmから10mmまでの範囲ある。
【0224】
3mm未満では、圧縮ローラに起因する繊維の変形が過大となる。
【0225】
有利には、圧縮ローラは円筒状であり、かつリブを有さず、具体的には金属である。
【0226】
有利には、上記少なくとも1つの始動部品(E)は、少なくとも1つの円筒状圧縮ローラから構成される。
【0227】
有利には、上記少なくとも1つの始動部品(E)は、1から15個の円筒状圧縮ローラ(R’1からR’15)、好ましくは3から15個の圧縮ローラ(R’3からR’15)、特に6から10個の圧縮ローラ(R’6からR’10)から構成される。
【0228】
存在する支持部品(E)の数にかかわらず、全ての支持部品(E)は加熱システムの環境中に位置するかまたは含まれ、すなわち、加熱システムの外側にないことは明らかである。
【0229】
第1の変形例によると、上記少なくとも1つの支持部品(E)は、特に円筒状の単一の圧縮ローラから構成される。
【0230】
有利には、上記ストランドは、第1の圧縮ローラR’1および当該圧縮ローラR’1に対する水平接線と0.1から89°、特に5から75°、特に10から45°の角度λ’1を形成し、上記ストランドは、上記圧縮ローラR’1と接触して拡張する。
【0231】
ストランドが上記圧縮ローラR’1に対する上記水平接線と89°を超え360°(360°を法とする余剰系)までの角度を形成するものであれば、本発明の範囲外とならない。
【0232】
ストランドが上記圧縮ローラR’1に対する上記水平接線と少なくとも360°の角度を形成する場合、ストランドが当該ローラを少なくとも1回完全に回転させたことを意味する。
【0233】
第2の変形例によると、上記少なくとも1つの支持部品(E)は、特に円筒状の2つの圧縮ローラから構成される。
【0234】
有利には、上記ストランドは、第1の圧縮ローラR’1および当該圧縮ローラR’1に対する水平接線と0から180°、特に5から75°、特に10から45°の角度λ’1を形成し、上記ストランドは、上記圧縮ローラR’1と接触して拡張する。
【0235】
ストランドが上記圧縮ローラR’1に対する上記水平接線と180°を超え360°(360°を法とする余剰系)までの角度を形成するものであれば、本発明の範囲外とならない。
【0236】
ストランドが上記圧縮ローラR’1に対する上記水平接線と少なくとも360°の角度を形成する場合、ストランドが当該ローラを少なくとも1回完全に回転させたことを意味する。
【0237】
有利には、第2の圧縮ローラR’2は、上記第1の圧縮ローラR’1の後に存在し、上記ストランドは、上記第2の圧縮ローラR’2および当該圧縮ローラR’2に対する水平接線と0から180°、特に5から75°、特に10から45°の角度λ’2を形成し、上記ストランドは、上記第2の圧縮ローラと接触して拡張する。
【0238】
ストランドが上記圧縮ローラR’2に対する上記水平接線と180°を超え360°(360°を法とする余剰系)までの角度を形成するものであれば、本発明の範囲外とならない。
【0239】
ストランドが上記圧縮ローラR’2に対する上記水平接線と少なくとも360°の角度を形成する場合、ストランドが当該ローラを少なくとも1回完全に回転させたことを意味する。
【0240】
ストランドは、ローラR’1の下方、次いでローラR’2の上方を進む。ストランドがローラR’1の上方、次いでローラR’2の下方を移動することも本発明の実施形態であることは明らかである。
【0241】
ローラR’2は、ローラR’1の上方に位置することができ、当該ローラR’1は、ローラR’2に先行する。
【0242】
ローラR’2がローラR’1の下方に位置することができることは同様に明らかである。
【0243】
ローラR’1とローラR’2の間の高さの差は0以上である。
【0244】
有利には、ローラR’1とローラR’2の間の高さの差は、1から20cmまで、好ましくは2から15cmまで、特に3から10cmまでの範囲である。
【0245】
有利には、2つのローラは同じ高さであり、同じ直径を有しており、そのため高さの差はゼロである。
【0246】
2つのローラ間の距離は、1から20cmまで、好ましくは2から15cmまで、特に3から10cmまでの範囲である。
【0247】
第3の変形例によると、上記少なくとも1つの始動部品(E)は、特に円筒状形状の3つの圧縮ローラから構成される。
【0248】
有利には、上記ストランドは、第1の圧縮ローラR’1および当該圧縮ローラR’1に対する水平接線と0.1から89°、特に5から75°、特に10から45°の角度λ’1を形成し、上記ストランドは、上記圧縮ローラR’1と接触して拡張する。
【0249】
ストランドが上記圧縮ローラR’1に対する上記水平接線と89°を超え360°(360°を法とする余剰系)までの角度を形成するものであれば、本発明の範囲外とならない。
【0250】
ストランドが上記圧縮ローラR’1に対する上記水平接線と少なくとも360°の角度を形成する場合、ストランドが当該ローラを少なくとも1回完全に回転させたことを意味する。
【0251】
有利には、第2の圧縮ローラは、上記第1のローラの後に存在し、上記ストランドは、第2の圧縮ローラR’2および当該圧縮ローラR’2に対する水平接線と0から180°、特に5から75°、特に10から45°の角度λ’2を形成し、上記ストランドは、上記第2の圧縮ローラと接触して拡張する。
【0252】
ストランドが上記圧縮ローラR’2に対する上記水平接線と180°を超え360°(360°を法とする余剰系)までの角度を形成するものであれば、本発明の範囲外とならない。
【0253】
ストランドが上記圧縮ローラR’2に対する上記水平接線と少なくとも360°の角度を形成する場合、ストランドが当該ローラを少なくとも1回完全に回転させたことを意味する。
【0254】
有利には、第3の圧縮ローラR’3は、上記第2の圧縮ローラR’2の後に存在し、上記ストランドは、上記第3の圧縮ローラR’3および上記圧縮ローラR’3に対する上記水平接線と0から180°、特に5から75°、特に10から45°の角度λ’3を形成し、上記ストランドは、に対する上記水平圧縮ローラR’3と接触して拡張する。
【0255】
ストランドが上記圧縮ローラR’3に対する上記水平接線と180°を超え360°(360°を法とする余剰系)までの角度を形成するものであれば、本発明の範囲外とならない。
【0256】
ストランドが上記圧縮ローラR’3に対する上記水平接線と少なくとも360°の角度を形成する場合、ストランドが当該ローラを少なくとも1回完全に回転させたことを意味する。
【0257】
ストランドは、ローラR’1の下方、次いでローラR’2の上方、次にローラR’3の下方へ移動する。
【0258】
ストランドがローラR’1の上方、次いでローラR’2の下方、次にローラR’3の上方を移動することも本発明の実施形態であることは明らかである。
【0259】
3つのローラは同じ高さでありうるが、有利にはローラR’2はローラR’1の上方に位置し、ローラR’3はローラR’2の下方に位置し、上記ローラR’1は上記ローラR’2に先行し、次いでR’3に先行する。
【0260】
3つのローラ間であらゆる相対的な幾何学的配置が可能である。
【0261】
最も低いローラと最も高いローラの間の高さの差は0以上である。
【0262】
有利には、3つの各ローラ間の高さの差は、1から20cmまで、好ましくは2から15cmまで、特に3から10cmまでの範囲である。
【0263】
3つの各ローラ間の距離は、1から20cm、好ましくは2から15cm、特に3から10cmである。
【0264】
有利には、ローラR’1はローラR’3に先行し、同じ高さにあり、ローラR’2はローラR’1とローラR’3の間に位置し、他の2つのローラの上方に位置する。
【0265】
図1は、3つの圧縮ローラを有する例示的な加熱システムを示す。
【0266】
加熱システムの入口と第1のローラR’1の間の長さlは、使用されるポリマーおよびストリップの移動速度に応じて可変である。
【0267】
従って、lは、第1のローラ入口において少なくとも部分的に、特に完全に、ポリマーが溶融するのに十分な長さを表す。
【0268】
一実施形態において、4(4)から15(15)個のローラが存在しうる。
【0269】
一般的に、上記ストランドとローラR’4-iによって形成される角度λ’4-i(iは、4から15である)は、0から180°、特に5から75°、特に10から45°である。
【0270】
一般的に、各ローラR’i間、および最も低いローラと最も高いローラの間の高さの差は、0以上である。
【0271】
有利には、各ローラR’i間の高さの差は、1から20cmまで、好ましくは2から15cmまで、特に3から10cmまでの範囲である。
【0272】
一般的に、各ローラR’i間の距離は、1から20cm、好ましくは2から15cm、特に3から10cmである。
【0273】
有利には、加熱工程における、第1の圧縮ローラR’1の入口と最後の圧縮ローラR’iの出口の間での拡張比率は、約0から300%、特に0から50%である。
【0274】
有利には、加熱工程における、第1の圧縮ローラR’1の入口と最後の圧縮ローラR’iの出口の間での拡張比率は、約1から50%である。
【0275】
有利には、上記熱可塑性ポリマーは、非反応性熱可塑性ポリマーである。従って、加熱システムは、前述の予備含浸の後に上記熱可塑性ポリマーを融解させる。
【0276】
有利には、上記熱可塑性ポリマーは、プレポリマーが有する鎖末端によって、自身ともしくは別のプレポリマーとまたは鎖延長剤とも反応可能な反応性プレポリマーであり、当該反応性ポリマーは、任意選択で加熱工程中に重合する。
【0277】
温度および/またはストランドの通過速度に応じ、加熱システムは、上記プレポリマーを自身ともしくは鎖延長剤と重合させずに、または上記プレポリマー同士を重合させずに、前述の予備含浸の後に上記熱可塑性プレポリマーを融解させる。
【0278】
有利には、上記含浸繊維状材料の空隙率の程度は、0%から30%まで、特に1%から10%まで、特に1%から5%までの範囲である。
【0279】
以下のカレンダ加工工程の後に第2の加熱工程が行われうる。
【0280】
この第2の加熱工程は、第1の加熱工程後に残りうる、特に均一性における、あらゆる欠陥の修正を可能とする。
【0281】
第2の加熱工程は、第1の工程と同じシステムで行われる。
【0282】
有利には、この第2の工程の加熱システムは、2つのローラから構成される。
【0283】
任意選択で、上記予備含浸および含浸工程は、一定の温度に調節されたノズル中で成形する工程によって完了し、上記成形工程は、上記カレンダ加工工程の前に行われる。任意選択で、このノズルはクロスヘッドダイ押出ノズルであり、粉体による含浸後の上記単一のストランドまたは上記複数の平行ストランドを被覆することを可能にし、当該被覆工程は上記カレンダ加工工程の前に行われ、溶融熱可塑性ポリマーは、上記予備含浸ポリマーと同一であってもまたは異なってもよく、当該溶融ポリマーは、好ましくは上記予備含浸ポリマーと同じ種類のものである。
【0284】
その目的で、特許EP0406067にも記載されている被覆クロスヘッドダイヘッドを含みうる加熱システムの出口に被覆装置が接続される。被覆ポリマーは、槽内のポリマー粉体と同一であってもまたは異なってもよい。好ましくは、同じ種類のものである。そのような被覆は、ポリマーの最終的な体積割合を所望の範囲内するために繊維の含浸工程を完了させ、かつ特に品質の良い「即時使用可能な」繊維状材料を得るために、複合部品の製造においてテープの溶接にとって有害となる、含浸ストランドの表面上に存在する繊維の濃度が局所的に高くなり過ぎることを防ぐことを可能にするだけでなく、得られる複合材料の性能を改良することも可能になる。
【0285】
成形工程
任意選択で、上記含浸繊維状材料のストランドまたは上記平行ストランドを成形する工程が行われる。
【0286】
WO2015/121583に記載されるカレンダ加工システムを使用することができる。
【0287】
有利には、成形工程は、少なくとも1つの加熱カレンダを用い、単一の一方向性リボンもしくはシート、または複数の平行な一方向性リボンもしくはシートの形態にカレンダ加工することによって行われ、後者の場合、上記加熱カレンダは、上記リボンの数、ならびに閉ループ制御システムによって調節される上記カレンダのローラ間の圧力および/または間隔に応じ、複数のカレンダ加工溝、好ましくは最多で200のカレンダ加工溝を含む。
【0288】
この工程は常に、加熱工程が1つのみの場合は加熱工程の後に、または2つの加熱工程が共存する場合は第1の加熱工程と第2の加熱工程の間に行われる。
【0289】
有利には、カレンダ加工工程は繊維ストランドの通過方向に対して並列および/または直列に備えられる複数の加熱カレンダを用いて行われる。
【0290】
有利には、上記加熱カレンダは、一体型の誘導またはマイクロ波加熱システム、好ましくはマイクロ波加熱システムを含み、上記熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー混合物中の炭素充填材の存在と組み合わされる。
【0291】
別の実施形態によると、加熱システムとカレンダの間にベルトプレスが存在する。
【0292】
さらに別の実施形態によると、加熱システムとカレンダの間に加熱ノズルが存在する。
【0293】
別の実施形態によると、加熱システムとカレンダの間にベルトプレスが存在し、ベルトプレスとカレンダの間に加熱ノズルが存在する。
【0294】
有利には、少なくとも1つの加熱カレンダを用い、単一の一方向性リボンもしくはシートまたは複数の平行な一方向性リボンもしくはシートの形態にカレンダ加工することにより上記含浸繊維状材料の平行ストランドを成形する工程であり、後者の場合、上記加熱カレンダは、リボンの数、ならびに閉ループ制御システムによって調節される上記カレンダのローラ間の圧力および/または間隔に応じ、複数のカレンダ加工溝、好ましくは最多で300のカレンダ加工溝を含む。
【0295】
有利には、カレンダ工程は繊維ストランドの通過方向に対して並列および/または直列に備えられる複数の加熱カレンダを用いて行われる。
【0296】
有利には、上記加熱カレンダは、一体型の誘導またはマイクロ波加熱システム、好ましくはマイクロ波加熱システムを含み、上記熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性ポリマー混合物中の炭素系充填材の存在と組み合わされる。
【0297】
一実施形態において、上記加熱カレンダは、当該(各)カレンダの前および/または後に位置する相補的な急速加熱装置、特に上記ポリマー中もしくは上記ポリマー混合物中の炭素系充填剤の存在と組み合わされたマイクロ波もしくは誘導加熱装置、または赤外線IRもしくはレーザ加熱装置、または火炎もしくは高温ガスといった別の熱源と直接接触させることによって加熱する装置と組み合わされる。
【0298】
別の実施形態において、上記含浸工程は、含浸の後の上記単一のストランドまたは上記複数の平行ストランドを粉体によって被覆する工程で補われ、当該被覆工程は、上記カレンダ加工工程の前に、流動床中の粉体形態の上記ポリマーと同一であってもまたは異なってもよい溶融熱可塑性ポリマーによって行われ、当該溶融ポリマーは、好ましくは流動床中の粉体形態の上記ポリマーと同じ性質であり、好ましくは、当該被覆は、上記単一のストランドまたは上記複数の平行ストランドに対するクロスヘッドダイ押出によって達成される。
【0299】
別の態様において、本発明は、上記で定義された方法を用いて得られることを特徴とする、含浸繊維状材料の一方向性リボンまたは一方向性シート、特にスプールに巻かれたリボンまたはシートに関する。
【0300】
有利には、リボンまたはシートは、3次元部品の製造におけるロボットによる堆積に適する幅(l)および厚さ(ep)を有し、好ましくは少なくとも5mmの幅(l)を有し、幅(l)は、600mmまでの範囲であってよく、好ましくは50から600mmまで、よりいっそう好ましくは50から300mmまでの範囲でありうる。
【0301】
ロボットによる堆積は、スリットを入れるか、またはスリットを入れずに行われる。
【0302】
有利には、リボンまたはシートの熱可塑性ポリマーは、特にPA6、PA11、PA12、PA66、PA46、PA610、PA612、PA1010、PA1012、PA11/1010、もしくはPA12/1010といった脂肪族ポリアミド、またはPA MXD6およびPA MXD10といった半芳香族ポリアミドから選択されるか、あるいはPA6/6T、PA66/6T、PA6I/6T、PA MPMDT/6T、PA MXDT/6T、PA PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/10T、PA11/MPMDT/10TおよびPA11/MXDT/10T、PVDF、PEEK、PEKKおよびPEIまたはそれらの混合物から選択される。
【0303】
別の態様によると、本発明は、リボンまたはシートをロボットによって自動的に堆積させることによる3次元複合部品の製造に適する較正されたリボンまたはシートを製造するための、上記で定義された方法の使用に関する。
【0304】
別の態様によると、本発明は、3次元複合部品の製造における、上記で定義された予備含浸繊維状材料のリボンまたはシートの使用に関する。
【0305】
有利には、上記複合部品の上記製造は、輸送、特に自動車、油およびガス、特に海洋ガス貯蔵、民間または軍用の航空、船舶、鉄道;再生可能エネルギー、特に風力エネルギー、潮力エネルギー、エネルギー貯蔵装置、ソーラーパネル;熱保護パネル;スポーツおよび娯楽、保健医療、セキュリティ、ならびに電子工学の分野に関する。
【0306】
さらに別の態様によると、本発明は、上記で定義された予備含浸繊維状材料の一方向性リボンまたはシートを少なくとも1つ使用することによって生じることを特徴とする3次元複合部材に関する。
【実施例】
【0307】
比較例
含浸
含浸は、直径7μmの東レ株式会社の炭素繊維(FC)12K T700 31Eストランドについて、WO2018/115736に開示されるように行われ、D50=117μm(D10=59μmおよびD90=204μm)を有するBACT/10T粉体(重量で0.7/1)によって0.8g/mで繊維を滴定した。
【0308】
加熱工程
図5に開示される加熱システムであるが、それぞれ同じ高さの直径15mmの9個の円筒状固定ローラR’
1~R’
9を有する加熱システムが使用される。
【0309】
ストランドの前進速度は、10m/分である。
【0310】
使用される赤外線は、25kWの出力を有し、赤外線とローラの軸の間の高さは15cmである。
【0311】
角度α’1~α’9は、同一であり、25°である。
【0312】
高さhは、0に等しい。
【0313】
長さは1,000mmである。
【0314】
9個のローラは、それぞれ43mm離れる。
【0315】
加熱工程の後に、それぞれ1kWのIRを装備した直列に備えられた2つのカレンダを使用するカレンダ加工。
【0316】
実施例1
含浸:一般操作手順
図1および
図2の実施例を参照して本発明をさらに説明する。ここでは、流動床を含む単一の槽を使用し、N本のストランドがX=2組に分けられるが、存在する組の数Xにかかわらず、この実施例が同様に有効であることは明白である。同様に、1系列当たり3個の始動部品Y
m(30)が存在するが、存在する始動部品の数Y
m(30)にかかわらず、この実施例が同様に有効であることは明白である。
【0317】
従って、本発明は、槽入口に存在するストランドの集団Nを、Nが偶数である場合はN/2本のストランドの、またはNが奇数である場合、例えばそれぞれ(N+1)/2本(第1の組)と(N-1)/2本(第2の組)のストランドの2つの組(第1(21)および第2(22)の組)(
図2)に分ける(または分離する)ことにある。槽入口におけるストランドの集団Nの上面図において、ストランドは、第1の組(21)、次いで第2の組(22)に交互に属する。
【0318】
第1の組(21)の繊維ストランドは、emb1(31)で示される第1の始動要素を出た後、この始動部品の垂線と角度α1を形成し、流動床中の粉体の方向に投入される。
【0319】
第2の組の繊維ストランドは、emb’1で示される第1の始動部品を出た後、この始動部品の垂線と角度α’1を形成し、流動床中の粉体の方向に投入される。始動部品emb1およびemb’1は、少なくともストランドの太さと等しく、特に5mmから100mm、特に10mmから50mmである、Demb1-emb’1の距離だけ離れる。
【0320】
第1の組(21)の繊維ストランドは、次いで、emb2で示される、少なくとも部分的に(
図1および
図2では完全に)流動床に第2の始動部品と接触するまで、粉体の流動床に投入される。接触点における、各繊維ストランドと始動要素の垂線との間に形成される角度をα
2で示す。
【0321】
同様にして、繊維の第2の組(22)のストランドは、次いで、emb’2で示される、少なくとも部分的に(
図1および
図2では完全に)流動床に浸漬されている第2の始動部品と接触するまで粉体の流動床に投入される。接触点における、各繊維ストランドと始動部品の垂線との間に形成される角度をα’
2で示す。
【0322】
移動時間、繊維ストランドの張力、および摩擦の点で同一の経路を維持するため、始動部品emb2およびemb’2は、Demb1-emb’1の距離と等しいDemb2-emb’2の距離だけ離れ、同じ性質(材料、表面、仕上げなど)を有する。
【0323】
繊維の第1の組(21)の繊維ストランドは、各繊維ストランドと始動部品に対する垂線との間に形成されるβ2で示される角度で始動部品emb2から浮上し、次いで粉体を含浸させたストランドは、粉体の流動床から浮上し、emb3で示される最後の始動部品に接触する。接触点における、各繊維ストランドと始動要素に対する垂線との間に形成される角度をα3で示す。
【0324】
同様にして、繊維の第2の組(22)の繊維ストランドは、各繊維ストランドと始動部品に対する垂線との間に形成されるβ’2で示される角度で始動部品emb’2から浮上し、次いで粉体を含浸させたストランドは、粉体の流動床を離れ、emb’3で示される最後の始動部品に接触する。接触点における、各繊維ストランドと始動要素に対する垂線との間に形成される角度をα’3で示す。
【0325】
移動時間、繊維ストランドの張力、および摩擦の点で同一の経路を維持するため、始動部品emb3およびemb’3は、Demb2-emb’2の距離と等しく、従ってDemb1-emb’1の距離と等しいDemb3-emb’3の距離だけ離れ、同じ性質(材料、表面、仕上げなど)を有する。
【0326】
リボンまたはシートが構成される前に、特に寸法(幅、厚さ)および含浸ポリマーの割合、ならびに空隙率の程度に関し、互いに同等な繊維ストランドを得るため、幾つかのパラメータを制御する必要がある。その一部を以下に概説する。
【0327】
入口および出口の始動ローラにおける繊維の入口および出口角度は、繊維ストランドに生じる張力、および繊維ストランドが担持する粉体の量に明確な影響を与える。従って、システムは、これらの点で対称である必要がある。
【0328】
ここに示されるシステムにおいて、2つの始動システムemb’1およびemb2’を同等の方法で浸漬することにより、強化繊維ストランドの2つの組に関してこの滞留時間は保たれる。これらの2つの始動システムは、2つのシステム上の繊維ストランドとの、同一の接触表面をさらに有する。
【0329】
実施例1に従って行われる、ストリップ1、3および5を製造する3本のストランドの第1の組を用いる含浸、ならびにストリップ2および4を製造する2本のストランドの第2の組を用いる含浸は(17°の同一の角度α
1およびα’
1、17°の同一の角度α
3およびα’
3、次いで比較例と同様の加熱工程)、比較例に従って行われる含浸と同一の樹脂含有量で、均一性および空隙率に関し、同等の結果を与える。以下の表Iは、得られた結果を概説する。
表I