(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ウイルスベクターの自動産生方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20241205BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20241205BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N7/01
C12M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2021535876
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 US2019067354
(87)【国際公開番号】W WO2020132177
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-06
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512190365
【氏名又は名称】ロンザ ウォーカーズヴィル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】シン, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グ, ビンナン
(72)【発明者】
【氏名】グエンザー, ケイトリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】セス, アナンディタ
【審査官】坂井田 京
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0327722(US,A1)
【文献】脇谷滋之 他,Synthesiology,Vol.6, No.4,p.198-208
【文献】Lonza,News Release ,2018年10月29日,[令和6年6月14日検索],インターネット <URL:https://www.lonza.com/news/2018-10-29-19-30>
【文献】TORDO, Julie et al.,Brain,2018年07月,Vol. 141, No. 7,pp. 2014-2031,DOI: 10.1093/brain/awy126
【文献】ZHOU, Heshon and BEAUDET, Arthur L.,Virology,2000年09月30日,Vol. 275, Issue 2,pp. 348-357,DOI: 10.1006/viro.2000.0515
【文献】MACHITANI, Mitsuhiro et al.,Journal of Controlled Release,2011年09月25日,Vol. 154, Issue 3,pp. 285-289,DOI: 10.1016/j.jconrel.2011.06.020
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法であって、
(a)人工哺乳類AAVウイルス産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することであって、前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、そのゲノムに組み込まれた、
i.第1の抑制解除プロモータの制御下のE2AおよびE4Orf6遺伝子を含むアデノウイルスヘルパー遺伝子、
ii.第2の抑制解除プロモータの制御下のRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子、
iii.第3の抑制解除プロモータの制御下のウイルス関連非コードRNA、ならびに
iv.前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素、を含む、ことと、
(b)対象遺伝子をコードするベクターで前記哺乳類AAVウイルス産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、
(c)前記抑制要素の結合パートナーで前記哺乳類AAVウイルス産生細胞を処理することと、
(d)前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、
(e)前記形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、前記形質導入ウイルス産生細胞内で前記AAVウイルスベクターを産生することと、
(f)前記ウイルスベクターを単離することと、を含み、
(a)~(f)が、閉鎖型自動化プロセスで行われ、並びに、
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクションまたは、膜破壊を含む、方法。
【請求項2】
前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、哺乳類細胞培養物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、ヒト細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抑制解除プロモータの各々が、機能的プロモータおよび2つのテトラサイクリンオペレータ配列(TetO
2)を含み、前記抑制要素が、テトラサイクリン抑制タンパク質である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
産生されたAAVウイルスベクターの量が、少なくとも10
10個のウイルスベクターである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法であって、
(a)人工哺乳類AAVウイルス産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することであって、前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、そのゲノムに組み込まれた、
i.第1の抑制解除プロモータの制御下のE2AおよびE4Orf6遺伝子を含むアデノウイルスヘルパー遺伝子、
ii.第2の抑制解除プロモータの制御下のRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子、
iii.第3の抑制解除プロモータの制御下のウイルス関連非コードRNA、ならびに
iv.前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素、を含む、ことと、
(b)対象遺伝子をコードするベクターで前記哺乳類AAVウイルス産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、
(c)前記抑制要素の結合パートナーで前記哺乳類AAVウイルス産生細胞を処理することと、
(d)前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、
(e)前記形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、前記形質導入ウイルス産生細胞内で前記AAVウイルスベクターを産生することと、
(f)前記ウイルスベクターを単離することと、を含み、
(a)~(f)が、閉鎖型自動化プロセスで行われ、並びに、
前記閉鎖型自動化プロセスがさらに、
温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、
温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調節することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法であって、
(a)TetRおよび/またはTetR-KRABをコードする1つ以上の核酸を安定的に発現する哺乳類細胞を、
i.第1の抑制解除プロモータの制御下でE2A遺伝子、E4Orf6遺伝子、およびウイルス関連非コードRNAを含むアデノウイルスヘルパー遺伝子をコードする第1の核酸、
ii.第2の抑制解除プロモータの制御下でRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子をコードする第2の核酸、および
iii
.第3の抑制解除プロモータの制御下で対象遺伝子をコードする第3の核酸によって形質導入することと、
(b)前記哺乳類細胞を前記TetRの結合パートナーで処理することと、
(c)前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、
(d)前記形質導入細胞を増殖させ、前記形質導入細胞内で前記AAVウイルスベクターを産生することと、
(e)前記ウイルスベクターを単離することと、を含み、
(a)~(e)が、閉鎖型自動化プロセスで行われ、並びに、
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクションまたは、膜破壊を含む、方法。
【請求項12】
前記哺乳類細胞が、哺乳類細胞培養物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理することが、ドキシサイクリンで処理することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
産生されたAAVウイルスベクターの量が、少なくとも10
10個のウイルスベクターである、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記閉鎖型自動化プロセスがさらに、
温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、
温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調節することと、を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記形質導入することが、ウイルス感染を含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、完全密閉式細胞工学システム内で人工ウイルスベクター産生細胞株を利用したウイルスベクターの自動産生方法を提供する。産生され得る例示的なウイルスベクターには、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターが含まれる。
【背景技術】
【0002】
ウイルスベクターは、基礎研究ツール、および遺伝子治療に使用するための両方として非常に重要である。例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、その安全性プロファイルおよび長期発現能力から、ヒトの遺伝子療法のための優れたウイルスベクターである。同様に、レンチウイルスベクターは、遺伝子および細胞療法の分野で最も一般的に使用される送達方法の1つである。しかしながら、ウイルスベクターを産生する従来の手段は、大部分が高価で、時間がかかり、かつ煩雑なものである。さらに、架橋プラットフォーム(AAVなど)または複数回の一過性トランスフェクション(レンチウイルスなど)に依存する方法では、ベクターの収率が低すぎるか、または必要なプラスミドDNAの量が多すぎ、大部分の治療用途に対応することができない可能性がある。加えて、小規模なウイルスベクター産生では、大きなバッチプロセスは必要とされないか、または望ましくない場合がある。
【0003】
ウイルスベクターの産生の自動化の利点として、自動化の使用に関連付けられる労働時間の節約、ならびに製品の一貫性の改善、ルームの類別の減少、クリーンルームの設置面積の減少、複雑なトレーニングの減少、および規模の拡大ならびに物流追跡の改善が挙げられる。さらに、ソフトウェアを使用し、自動生成された電子バッチレコードを使用して、全ての処理装置、試薬、オペレータ識別、プロセス内センサデータなどの履歴を提供することにより、文書プロセスを合理化することができる。
【0004】
自動化された自己完結システムは、人工哺乳類細胞がウイルスベクターを最適に産生するものであり、遺伝子治療の分野に革命をもたらすものである。大規模または小規模の大量産生のためのウイルス産生の制御を可能にする技術であって、再現可能で安定した結果をもたらすと同時に、汚染を制限し、コストを低減する、技術が急務となっている。
【0005】
[発明の概要]
一部の実施形態では、本明細書において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法が提供され、当該方法は、人工哺乳類AAVウイルス産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することであって、人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、そのゲノムに組み込まれた、第1の抑制解除プロモータの制御下のE2AおよびE4Orf6遺伝子を含むアデノウイルスヘルパー遺伝子、第2の抑制解除プロモータの制御下のRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子、第3の抑制解除プロモータの制御下のウイルス関連非コードRNA、ならびに第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素を含む、導入することと、対象遺伝子をコードするベクターで哺乳類AAVウイルス産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、抑制要素の結合パートナーで哺乳類AAVウイルス産生細胞を治療することと、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、形質導入ウイルス産生細胞内でAAVウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、上記ステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0006】
また本明細書において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法が提供され、当該方法は、TetRおよび/またはTetR-KRABをコードする1つ以上の核酸を安定的に発現する哺乳類細胞を、第1の抑制解除プロモータの制御下でE2A遺伝子、E4Orf遺伝子、ならびにウイルス関連非コードRNAを含むアデノウイルスヘルパー遺伝子をコードする第1の核酸、第2の抑制解除プロモータの制御下でRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子をコードする第2の核酸、および任意選択で、第3の抑制解除プロモータの制御下で対象遺伝子をコードする第3の核酸によって形質導入することと、哺乳類細胞をTetRの結合パートナーで治療することと、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内でAAVウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、上記ステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0007】
さらなる実施形態では、本明細書において、レンチウイルスベクターの自動産生方法が提供され、当該方法は、人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することであって、人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、そのゲノムに組み込まれた、第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子、第2のプロモータの制御下のレンチウイルスエンベロープ遺伝子、ならびにともに第3のプロモータの制御下のレンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子およびレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子を含み、核酸配列が、トランスポゾン特異的逆方向末端反復(ITR)の組換えから生じる配列によって5’末端および3’末端の両方に隣接されている、導入することと、対象遺伝子をコードするベクターで哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、第1、第2、および第3のプロモータを活性化することと、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、形質導入ウイルス産生細胞内でレンチウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、(a)~(e)は、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0008】
さらなる実施形態では、レンチウイルスベクターの自動産生方法が提供され、当該方法は、完全密閉式細胞工学システムに哺乳類細胞を導入することと、哺乳類細胞を、第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子ならびに第2のプロモータの制御下のエンベロープ糖タンパク質遺伝子をコードする第1の核酸、第3のプロモータの制御下の対象遺伝子をコードする第2の核酸、および第4のプロモータの制御下のレンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子ならびにレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子の両方をコードする第3の核酸によって形質導入することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内でレンチウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、上記ステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書の実施形態に記載される、ウイルスベクターの産生に有用な閉鎖型自動化システムを示す。
【
図2】本明細書の実施形態に記載される、ウイルスベクターの産生に有用な例示的な閉鎖型自動化システムを含むラボ空間を示す。
【
図3】本明細書の実施形態に記載される、閉鎖型自動化システムで行われ得るウイルスベクター産生プロセスのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特許請求の範囲および/または本明細書における用語「含む(comprising)」と併用される場合、単語「a」または「an」の使用は、「1つ(one)」を意味し得るが、「1つ以上(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」、および「1つまたは2つ以上(one or more than one)」の意味とも一致する。
【0011】
本出願を通して、用語「約」は、値が、値を決定するために採用される方法/デバイスの固有の誤差変動を含むことを示すために使用される。典型的には、この用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%未満の変動を含むことを意味する。
【0012】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すことが明示的に示されない限り、または代替物が互いに排他的である限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替案および「および/または」のみを指す定義をサポートしている。
【0013】
本明細書および特許請求の範囲(複数可)で使用される場合、単語「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの「含む」の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの「有する」の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの「含む」の任意の形態)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの「含有する」の任意の形態)は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、列挙されない要素または方法ステップを除外しない。本明細書で論じられる任意の実施形態が、本発明の任意の方法、システム、宿主細胞、発現ベクター、および/または組成物に関して実装され得ることが企図される。さらに、本発明の組成物、システム、細胞、および/または核酸を使用して、本明細書に記載される方法のいずれかを実現することができる。
【0014】
実施形態では、ウイルスベクターの自動産生方法が本明細書に提供される。本明細書に記載の自動化された方法は、完全密閉式細胞工学システムで好適に行われる。
【0015】
本明細書に記載されるように、「完全密閉式細胞工学システム」は、複数のチャンバを好適に含む閉鎖型システムを指し、本明細書に記載される様々な方法のステップの各々は、細胞工学システムの複数のチャンバのうちの同じまたは異なるチャンバで行われる。好適には、様々な細胞、ベクター、および細胞培養培地の各々は、方法を開始する前に、複数のチャンバのうちの異なるチャンバに含まれている。細胞工学システムは、細胞を成長させるための温度(例えば、約37℃)で維持される1つ以上のチャンバを好適に含み、複数のチャンバの少なくとも1つは、冷蔵温度(例えば、約4~8℃)で維持される。「完全密閉式」とは、複数のチャンバが相互接続されていることを好適に指しており、これには、完全密閉式システムの清浄性および好適な無菌性を維持するために、様々なチューブまたは他の流体接続経路および接続を介することが含まれる。
【0016】
本明細書に記載されるように、実施形態では、提供される方法は、単一のターンキープラットフォームで複数の単位動作を統合するCOCOONプラットフォーム(Octane Biotech社(オンタリオ州キングストン))を利用する。効率的かつ効果的な自動化翻訳を提供するために、記載される方法は、複数の単位動作を組み合わせるアプリケーション固有/スポンサー固有の使い捨てカセットの概念を利用しており、これらは全て、ウイルスベクター産物の中核的要件に焦点を当てている。例示的な完全密閉式細胞工学システムは、米国特許出願第2019/0169572号に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の方法において有用な例示的な完全密閉式細胞工学が、
図1に示されている。
図2は、本明細書の実施形態に記載される、高スループット配置におけるウイルスベクターの産生に有用な例示的な閉鎖型自動化システムを含むラボ空間を示している。実施形態では、閉鎖型自動化システムの各々が、別個の独自のウイルスベクターを産生することができる。
【0017】
実施形態では、本明細書に記載の方法は、完全密閉式細胞工学システムのカセットで行われ、当該システムには、細胞培養培地の貯蔵のための低温チャンバと、ウイルスベクターの産生に関与するプロセスを行うための高温チャンバであって、高温チャンバが、熱バリアによって低温チャンバから分離され、高温チャンバが、細胞培養チャンバを含む、高温チャンバと、細胞培養チャンバに接続された1つ以上の流体経路であって、流体経路が、細胞培養チャンバ内の細胞を乱すことなく、細胞培養チャンバへの再循環、老廃物の除去、および均質なガス交換ならびに栄養素の分配を提供する、1つ以上の流体経路と、が含まれ得る。
【0018】
図3は、本明細書の実施形態に記載される、閉鎖型自動化システムで行われ得るウイルスベクター産生プロセスのフロー図を示しており、閉鎖型自動化システムのカートリッジ内で行われ得る様々なステップを示している。
【0019】
実施形態では、自動産生方法は、人工ウイルス産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することを好適に含む。
【0020】
本明細書で言及されるように、本方法で利用される「人工ウイルス産生細胞」は、ウイルスベクターの産生を可能にするヘルパー遺伝子または発現システムをコードする1つ以上の核酸分子を好適に含む細胞である。
【0021】
本明細書で言及されるように、単語「導入する」は、人工ウイルス産生細胞を複数のチャンバのうちの1つに添加することを意味し得るか、または方法を開始する前に、カセット内に人工ウイルス産生細胞が存在することを示し得る。
【0022】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、人工ウイルス産生細胞の供給、洗浄、および監視のうちの1つ以上のラウンドを複数回行うするように構成される。これらの様々な行動は、任意の順序で行われ得、単独で行われ得るか、または別の行動と組み合わせて行われ得る。実施形態では、細胞の濃縮には、遠心分離、沈殿後の上清除去、または濾過が含まれる。好適には、最適化プロセスは、自己調整プロセスにおいて好適に遠心分離または濾過のパラメータを調整することをさらに含む。
【0023】
本明細書に記載の方法は、好適には、人工ウイルス産生細胞を、対象遺伝子をコードするベクターで形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することをさらに含む。
【0024】
本明細書で言及されるように、「形質導入」または「形質導入する」とは、ベクターを含む外因性核酸分子を細胞に導入することを意味する。「形質導入」細胞は、細胞内に外因性核酸分子を含んでおり、細胞中の表現型変化を誘導する。形質導入核酸分子は、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれていてもよく、かつ/もしくは細胞によって一時的に、または染色体外で長期間維持されてもよい。外因性核酸分子または断片を発現する宿主細胞または生物は、「組換え」、「形質導入」、「トランスフェクション」、または「トランスジェニック」生物として参照される。いくつかの形質導入およびトランスフェクション技術が当該技術分野において一般的に既知である。例えば、Graham et al.,Virology,52:456(1973)、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York(1989)、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986)、およびChu et al.,Gene13:197(1981)を参照されたい。形質導入には、リポソーム系、脂質系、またはポリマー系などのトランスフェクション系を使用することが含まれ得、遺伝子ガン、エレクトロポレーションなどの機械的トランスフェクションを使用することも含まれ得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ベクター」または「発現ベクター」は、プラスミド、ファージ、ウイルス、またはコスミドなどのレプリコンであり、本明細書に記載の核酸分子が結合されて、細胞中で結合された核酸分子の複製および/または発現をもたらし得る。「ベクター」は、エピソーム(例えば、プラスミド)および非エピソームベクターを含む。用語「ベクター」は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで核酸分子を細胞に導入するためのウイルス手段および非ウイルス手段の両方を含む。ベクターという用語には、合成ベクターが含まれてもよい。ベクターは、トランスフェクション、形質導入、細胞融合、およびリポフェクションを含むがこれらに限定されない、周知の方法によって、所望の宿主細胞に導入され得る。ベクターは、プロモータを含む様々な調節要素を含むことができる。
【0026】
本明細書に記載の方法によって産生される「ウイルスベクター」は、好適には、治療目的または工業目的でインビトロ、インビボ、またはエクスビボで核酸分子を細胞に導入するために使用され得る産物ウイルスを指す。本明細書に記載される様々な方法によって産生されるウイルスベクターは、採取または単離され、最終的な所望の適用まで貯蔵され得る。
【0027】
「遺伝子」は、ポリペプチドをコードし、cDNAおよびゲノムDNA核酸分子を含むヌクレオチドのアセンブリを指す。「遺伝子」はまた、コード配列の前(5’非コード配列)および後(3’非コード配列)の調節配列として機能し得る核酸断片を指す。一部の実施形態では、遺伝子は、複数のコピーと統合される。一部の実施形態では、遺伝子は、所定のコピー数で統合される。
【0028】
本明細書で言及される場合、用語「対象遺伝子」または「GOI」は、異種遺伝子を説明するために使用される。本明細書で言及される場合、コード配列または対照配列などの核酸配列に関連する用語「異種遺伝子」または「HG」は、通常は一緒に結合されないか、かつ/または通常は特定の細胞と関連付けられない核酸配列、例えば遺伝子を示している。一部の実施形態では、異種遺伝子は、コード配列自体が天然に見出されない構築物(例えば、天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。対立遺伝子変異または自然に発生する突然変異事象は、本明細書で使用される場合、異種DNAを生じさせない。
【0029】
好適には、対象遺伝子は、治療対象遺伝子である。本明細書で使用される場合、「治療対象遺伝子」は、任意の機能的に関連するヌクレオチド配列を指す。したがって、本開示の治療対象遺伝子には、標的細胞ゲノムから欠陥もしくは欠損しているタンパク質をコードするか、または所望の生体効果もしくは治療効果(例えば、抗ウイルス機能)を有する非天然タンパク質をコードする任意の所望の遺伝子、またはアンチセンスもしくはリボザイム機能を有する分子に対応し得る配列が含まれ得る。好適な治療対象遺伝子の代表的(非限定的)な例としては、AIDS、癌、神経疾患、心血管疾患、高コレステロール血症、様々な貧血、サラセミア、ならびに血友病を含む様々な血液疾患、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、肺気腫などのような遺伝的欠陥などの疾患を含む、炎症性疾患、自己免疫、慢性および感染性疾患の治療に使用されるものが挙げられる。癌およびウイルス疾患のアンチセンス療法に有用な複数のアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、mRNAの翻訳開始部位(AUGコドン)の周りの配列に相補的な短いオリゴヌクレオチド)が当該技術分野において記載されており、好適な治療対象遺伝子の例でもある。
【0030】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法、ひいては治療対象遺伝子は、超稀少疾患への適用のためのウイルスベクターの産生に有用である。かかる疾患は、(1人もしくは数人の患者、または数十人の患者、または数百人の患者が治療を必要とする場合のように)大量のウイルスベクターを必要としない場合があるが、無菌性、再現性、およびプロセス制御は、かかる用途において極めて重要である。閉鎖型自動化システムを利用する本明細書に記載の方法により、所望レベルの産生の制御が可能となる。
【0031】
実施形態では、本方法は、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、形質導入ウイルス産生細胞内でウイルスベクターを産生することをさらに含む。本明細書に記載されるように、形質導入ウイルス産生細胞を増殖する方法は、好適には、供給、洗浄、および監視のうちの少なくとも1つ以上を含む。形質導入ウイルス産生細胞の「増殖」とは、細胞が所定の所望の培養サイズに達するまで成長することを可能にする様々な方法を指す。所定の培養サイズにより、好適または所望の数のウイルスベクターの産生を可能にする十分な数の細胞が含まれてもよい。一部の実施形態では、ウイルス産生細胞の数は、約105個の細胞、約106個の細胞、約107個の細胞、約108個の細胞、約109個の細胞、または約1010個の細胞である。
【0032】
本明細書に記載の産生方法は、形質導入ウイルス産生細胞で産生されるウイルスベクターを単離することをさらに好適に含む。ウイルスベクターを単離または別様に採取する方法は、形質導入および増殖されたウイルス産生細胞を収集することを含み、細胞膜を溶解または別様に破壊すること、ならびにウイルスベクターを収集することを含み得る。
【0033】
また、ウイルスベクターの単離には、ウイルス産生細胞を遠心分離もしくは濾過すること、細胞を洗浄すること、または単離されたウイルスベクターを濾過することなどの追加のステップが含まれ得る。単離は、濾過、遠心分離、ゲル精製技術、勾配分離技術などに依存し得る様々な分離技術を好適に含む。ウイルスベクターは、洗浄によって、またはベクターを表面(例えば、レトロネクチンまたはフィブロネクチンでコーティングされた表面)に結合させ、次いで細胞を異なるチャンバに移すことによって除去することができる。
【0034】
本明細書に記載されるように、自動産生方法の要素は、閉鎖型自動化プロセスで好適に行われる。用語「閉鎖型」プロセスは、好適には、(所望されない限り)外部環境との相互作用を可能としない、カートリッジまたは他の含有システムを使用することを指し、好適には、滅菌プロセスである。「自動化」プロセス、またはプロセスの「自動化」は、外部制御による細胞工学システムの1つ以上のプロセスの制御を指しており、これには、定義された、または事前に設定された状況または所望の特性に基づいてパラメータを監視および変更するためのマイクロプロセッサが含まれる。
【0035】
実施形態では、閉鎖型自動化プロセスは、自己調整プロセスである。すなわち、閉鎖型自動化プロセスは、外部(ヒト)ユーザからの入力を必要とせず、様々なコンピュータプログラムおよび条件を介して、自動化プロセスを最適化するために細胞培養物または他の特性に対する必要な修正を決定し得るプロセスである。実施形態では、閉鎖型自動化プロセスは、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することを含む。本明細書に記載されるように、完全密閉式細胞工学システムにおけるこれらの様々なセンサの使用は、システム内の様々な時間および場所で行われ協調しながら協働して、最適化を実現している。例えば、閉鎖型自動化プロセスは、この監視に基づいて、ウイルス産生細胞培養物の温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を調節(例えば、上昇または低下)することができる。
【0036】
自動化プロセスはまた、例えば、総細胞数、細胞の供給源、細胞の密度、細胞の年齢などを含む、出発細胞集団の固有の特徴に基づくことができる。これらの出発細胞集団特性は、自動化された方法を開始する前にコンピュータ制御システムに入力することができ、その上でシステムは、方法最適化するために、例えば、ラクトース、酸素および二酸化炭素濃度、流量、インキュベーション時間、pHなどの様々な初期修正を行う。代替的に、細胞プロセスの監視により、出発集団からの細胞培養シーケンスの進行の自動特徴付けが可能となり最適化された最終細胞培養特性の条件をケースバイケースで調整することができる。
【0037】
さらなる実施形態では、細胞工学システムは、様々な方法プロセス中に、栄養素、老廃物、放出サイトカイン、および/または溶解ガスを再循環させる。この再循環は、所望のウイルスベクターの産生を補助するのに役立つ。ウイルスベクターの産生を最適化するための他のメカニズムとして、細胞に提供される培地の流量を修正および制御することが挙げられる。細胞が成長し始めるにつれて、提供される培地の循環速度が増加し、ガス交換が改善され、その時点での細胞の状態および要件に応じて酸素および二酸化炭素が細胞培養物に出入りできるようになる。
【0038】
実施形態では、自動化された方法において利用される人工ウイルス産生細胞は、哺乳類細胞である。本明細書で使用される場合、用語「哺乳類細胞」は、任意の哺乳類のメンバー由来の細胞、例えば、ヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞、サル細胞、ハムスター細胞などを含む。一部の実施形態では、細胞は、マウス細胞、ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHOK1細胞、CHO-DXB11細胞、CHO-DG44細胞、全ての変異体を含むCHOK1SV細胞(例えば、POTELLIGENT(登録商標)、ロンザ社、英国スラウ)、全ての変異体を含むCHOK1SV GS-KO(グルタミン合成酵素ノックアウト)細胞(例えば、XCEED(商標)ロンザ社、英国スラウ)である。例示的なヒト細胞としては、HEK293、HEK293T、HeLa細胞、またはHT1080細胞などのヒト胚性腎臓(HEK)細胞が挙げられる。
【0039】
哺乳類細胞には、哺乳類細胞培養物が含まれ、哺乳類細胞培養物は、接着培養物または懸濁培養物のいずれかであり得る。接着培養物は、基板表面、例えば、プラスチック表面、プレート、皿、または他の好適な細胞培養成長プラットフォーム上で成長する細胞であって、接着依存性であり得る細胞を指す。懸濁培養物は、例えば、ガスおよび栄養素交換のための大きな表面積を可能にする培養フラスコまたは大きな懸濁槽中で維持され得る細胞を指す。懸濁細胞培養物は、多くの場合、攪拌機構または撹拌機構を利用して、適切な混合をもたらす。細胞を懸濁液中に維持するための培地および条件は、当該技術分野において一般的に既知である。例示的な懸濁細胞培養物には、ヒトHEK293クローン細胞が含まれる。
【0040】
実施形態では、本明細書で提供するウイルスベクターの産生方法により、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが産生される。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター」は、パルボウイルス科およびデペンドパルボウイルス属の一本鎖DNAを含有する小さなサイズの複製欠損性非エンベロープウイルスを指す。これまでに10種類以上のアデノ関連ウイルス血清型が特定されており、血清型AAV2が最もよく特徴付けられている。AAV血清型の他の非限定的な例は、ANC80、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、およびAAV11である。これらの血清型に加えて、AAV偽型が開発されている。AAV偽型は、第1の血清型のカプシドおよび第2の血清型のゲノムを含有する(例えば、偽型AAV2/5は、血清型AAV2のゲノムおよびAAV5のカプシドを有するAAVに対応する)。
【0042】
本明細書で言及される場合、用語「アデノウイルス」は、アデノウイルス科の二本鎖DNAを含有するイコサヘドラルヌクレオカプシドを有する非エンベロープウイルスを指す。50種類超のアデノウイルスサブタイプがヒトから単離され、多くの追加のサブタイプが他の哺乳類および鳥から単離されている。例えば、Ishibashi et al.,「Adenoviruses of animals」In The Adenoviruses,Ginsberg,ed.,Plenum Press,New York,N.Y.,pp.497-562(1984)、Strauss,「Adenovirus infections in humans」In The Adenoviruses,Ginsberg,ed.,Plenum Press,New York,N.Y.,pp.451-596(1984)を参照されたい。これらのサブタイプは、アデノウイルス科に属し、アデノウイルス科は、現在、マスタデノウイルスおよびアビアデノウイルスの2つの属に分けられる。全てのアデノウイルスは、形態学的および構造的に類似している。しかしながら、ヒトにおいて、アデノウイルスは、異なる免疫学的特性を示すため、血清型に分類される。アデノウイルスの2つのヒト血清型、すなわち、AV2およびAV5が集中的に研究されおり、アデノウイルスに関する一般的な情報の大部分が提供されている。
【0043】
実施形態では、本明細書で提供するウイルスベクターの産生方法により、レンチウイルスベクターが産生される。
【0044】
本明細書で言及される場合、用語「レンチウイルスベクター」は、レトロウイルス科に属する2つの一本鎖RNA分子を含有する小さな球形を有するエンベロープウイルスを指す。レンチウイルスは、gag、pol、およびenv遺伝子を含有し、2つの調節遺伝子、すなわちtatおよびrevを有することによって、他のレトロウイルスファミリーメンバーとさらに区別される。レンチウイルスベクターは、培養細胞および動物組織における対象遺伝子の発現を誘導するための分子生物学における有用なツールとして、当該技術分野において広く知られている。
【0045】
実施形態では、本明細書で提供するウイルスベクターの産生方法により、レトロウイルスベクターが産生される。
【0046】
本明細書で言及される場合、「レトロウイルス」という用語は、2つの一本鎖RNA分子を含有する小さな球形を有するエンベロープウイルスであるレトロウイルス科の1つ以上のメンバーを指す。レトロウイルスは、それらのRNA分子をDNAに変換し、次いで、感染細胞の宿主ゲノムに組み込まれる。レトロウイルスベースのベクターは、癌治療のための遺伝子療法の分野で周知であり、免疫細胞は、癌細胞を標的化して破壊するように再プログラムされる。
【0047】
実施形態では、本明細書で提供するウイルスベクターの産生方法により、バキュロウイルスベクターが産生される。
【0048】
本明細書で言及される場合、用語「バキュロウイルス」は、環状dsDNAを含有する棒状ウイルスであり、バキュロウイルス科の1つ以上のメンバーを指す。これは、主に昆虫幼虫内に感染し、複製することが知られている。バキュロウイルス発現ベクターシステムは、十分に確立されており、真核細胞におけるタンパク質の産生に非常に有用である(Summers et al.,2006)。
【0049】
追加の実施形態では、本方法は、ウイルス産生細胞として、昆虫細胞を好適に利用する。本明細書で言及される場合、「昆虫細胞」は、好適には、タンパク質および/またはバキュロウイルスベクター産生の発現および製造に使用される鱗翅目のメンバーなどの昆虫に由来する細胞を指すが、これらに限定されない。
【0050】
実施形態では、本方法は、Sf9細胞を好適に利用する。本明細書で言及される場合、「Sf9細胞」は、タンパク質および/またはバキュロウイルスベクター産生の発現および製造に一般的に使用される蠕虫であるスポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)の蛹卵巣組織に由来する昆虫細胞株である。
【0051】
実施形態では、本明細書に記載の方法によって産生されるウイルスベクターの量は、少なくとも約1010個のウイルスベクターである。例えば、本明細書に記載の方法によって産生されるウイルスベクターの量は、少なくとも約1010個のウイルスベクター、または少なくとも約1011個のウイルスベクター、または少なくとも約1012個のウイルスベクター、または少なくとも約1013個のウイルスベクター、または少なくとも約1014個のウイルスベクター、または約1010~1014個のウイルスベクター、または約1010~1013個のウイルスベクター、または約1010~1012個のウイルスベクター、または約1010個、約1011個、約1012個、または約1013個のウイルスベクターである。
【0052】
実施形態では、本明細書に記載の方法は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの産生のためのものである。かかるプロセスは、好適には、人工哺乳類AAVウイルス産生物を完全密閉式細胞工学システムに導入することを含む。AAVウイルス産生細胞は、そのゲノムに組み込まれた、第1の抑制解除プロモータの制御下でE2AおよびE4Orf6遺伝子を含むアデノウイルスヘルパー遺伝子を好適に含む。
【0053】
AAVウイルスベクターを産生する方法で好適に利用される例示的な人工哺乳類AAVウイルス産生細胞は、2018年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/783,589号、2019年6月25日に出願された同第62/866,092号、および2019年12月18日に出願された米国非仮特許出願第16/719,251号に詳細に記載されており、これらの各々の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0054】
本明細書に記載されるように、本方法で利用される哺乳類AAVウイルス産生細胞は、ウイルスヘルパー遺伝子をコードする核酸分子を好適に含む。ウイルスヘルパー遺伝子としては、様々なアデノウイルス遺伝子、ヘルペスウイルス遺伝子、およびボカウイルス遺伝子が挙げられる(例えば、Guido et al.,「Human bocavirus:Current knowledge and future challenges」,World J.Gastroenterol.22:8684-8697を参照されたく、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。例示的な実施形態では、ウイルスヘルパー遺伝子は、アデノウイルスヘルパー遺伝子である。本明細書で言及される場合、用語「アデノウイルスヘルパー遺伝子」または「AVヘルパー遺伝子」は、アデノ随伴ウイルス複製およびパッケージングに寄与する1つ以上のアデノウイルスサブタイプまたは血清型に由来する1つ以上の核酸配列からなる遺伝子を指す。一部の実施形態では、アデノウイルスヘルパー遺伝子は、E1A、E1B、E2A、E4(E4Orf6を含む)、VA、もしくはそれらの組み合わせ、または他のアデノウイルスヘルパー遺伝子である。例示的な実施形態では、アデノウイルスヘルパー遺伝子は、E2AおよびE4Orf6遺伝子の両方を含む。好適には、内部リボソーム進入部位(IRES)要素は、E2AとE4Orf6遺伝子との間に含まれる。IRES要素は、単一発現カセット内のE2A遺伝子の後にE4Orf6遺伝子の翻訳を開始し、構築物に安定性を提供する。
【0055】
好適には、AAVウイルスベクターを産生するための様々な遺伝子の転写を制御するために使用されるプロモータは、抑制解除プロモータである。本明細書で使用される場合、「抑制解除プロモータ」は、機能的プロモータ、および機能的プロモータの抑制を引き起こすために抑制要素に結合し得る追加の要素または配列を含む構造を指す。「抑制」は、プロモータによる下流コードまたは非コード遺伝子配列の転写の開始の減少または阻害を指す。
【0056】
さらなる実施形態では、AAVウイルスベクターの自動産生方法は、第2の抑制解除プロモータの制御下でRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子を含有する人工哺乳類ウイルス産生細胞を含む。
【0057】
本明細書で言及される場合、用語「Rep」遺伝子は、ウイルスゲノムを複製するために一括的に必要とされるウイルスの複製タンパク質、またはヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)rep遺伝子などのその機能的相同体をコードするAAVゲノムの当該分野で認識されている領域を指す。ここで、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)rep遺伝子は、AAV-2DNA複製を媒介することも知られている。したがって、repコード領域は、AAV Rep78およびRep68(「長い形態のRep」)、ならびにRep52およびRep40(「短い形態のRep」)、またはそれらの機能的相同体をコードする遺伝子を含むことができる。Repコード領域は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で記載されるAAV血清型などの任意のウイルス血清型に由来し得る。領域は、野生型遺伝子の全てを含む必要はないが、好適な標的細胞で発現された場合に十分な組み込み機能を提供するrep遺伝子が存在する限り、(例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって)改変することができる。例えば、Muzyczka,N.,Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97-129(1992)、およびKotin,R.M.,Human Gene Therapy 5:793-801(1994)を参照されたい。
【0058】
本明細書で言及される場合、用語「Cap」遺伝子は、ウイルスのカプシドタンパク質をコードするAAVゲノムの当該分野で認識されている領域を指す。これらのカプシドタンパク質の例示的(非限定的)な例は、AAVカプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3である。本開示で使用されるCap遺伝子は、任意のAAV血清型またはAAV血清型の組み合わせに由来し得る。
【0059】
さらなる実施形態では、AAVウイルス産生細胞は、第3の抑制解除プロモータの制御下でウイルス関連非コードRNAを含有し得る。
【0060】
さらなる実施形態では、本方法は、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素を含有するAAVウイルス産生細胞を利用する。
【0061】
本明細書で言及される場合、「抑制要素」は、プロモータの活性を減少させるかまたは阻害するように、プロモータ(またはプロモータ付近)に結合し得るタンパク質またはポリペプチドを指す。抑制要素は、抑制要素が配座変化を受けるように、抑制要素の基質または結合パートナーと相互作用し得る。抑制要素のこの配座変化は、プロモータを減少または阻害する抑制要素の能力を奪い、プロモータの「抑制解除」をもたらし、それによってプロモータが転写の開始を進めることが可能となる。「機能的プロモータ」は、抑制要素の作用がない場合、転写を開始し得るプロモータを指す。本発明の実施において使用することができる様々な機能的プロモータは当該技術分野において既知であり、例えば、PCMV、PH1、P19、P5、P40、ならびにアデノウイルスヘルパー遺伝子のプロモータ(例えば、E1A、E1B、E2A、E4Orf6、およびVA)が挙げられる。
【0062】
実施形態では、本方法は、好適には、対象遺伝子をコードするベクターを用いて哺乳類AAVウイルス産生細胞を形質導入し、形質導入ウイルス産生細胞を産生することを含む。
【0063】
実施形態では、本方法は、抑制要素の結合パートナーで哺乳類AAVウイルス産生細胞を治療することをさらに含む。
【0064】
抑制解除プロモータとして使用され得る例示的な抑制要素およびそれらの対応する結合パートナーは、当該技術分野において既知であり、クメート遺伝子切り替えシステム(CuOオペレータ、CymR抑制要素および同時結合パートナー)(例えば、Mullick et al.,「The cumate gene-switch:a system for regulated expression in mammalian cells」BMC Biotechnology 6:43(1-18)(2006)を参照されたく、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、その開示には、本明細書に記載される抑制解除プロモータシステムの開示が含まれる)、および本明細書に記載されるTetO/TetRシステム(例えば、Yao et al.,「Tetracycline Repressor,tetR,rather than the tetR-Mammalian Cell Transcription Factor Fusion Derivatives, Regulates Inducible Gene Expression in Mammalian Cells」Human Gene Therapy 9:1939-1950(1998)を参照されたく、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)等のシステムが含まれる。
【0065】
さらなる実施形態では、本方法は、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することを含む。
【0066】
さらなる実施形態では、本方法は、好適には、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、AAVウイルスベクターを産生し、その後、ウイルスベクターを単離することを含む。
【0067】
実施形態では、本方法のステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0068】
さらなる実施形態では、本明細書において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法が提供され、当該方法は、TetRおよび/またはTetR-KRABをコードする1つ以上の核酸を安定的に発現する哺乳類細胞を、第1の抑制解除プロモータの制御下でE2A遺伝子、E4Orf遺伝子、ならびにウイルス関連非コードRNAを含むアデノウイルスヘルパー遺伝子をコードする第1の核酸、第2の抑制解除プロモータの制御下でRepならびにCap遺伝子を含むAAV遺伝子をコードする第2の核酸、および任意選択で、第3の抑制解除プロモータの制御下で対象遺伝子をコードする第3の核酸によって形質導入することと、哺乳類細胞をTetRの結合パートナーで治療することと、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内でAAVウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、上記ステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0069】
実施形態では、産生方法において利用される人工哺乳類AAVウイルス産生細胞を含む細胞は、一部の実施形態では、哺乳類細胞培養物であり、好適には懸濁培養物である。例示的な哺乳類細胞としては、CHO細胞またはHEK細胞を含むヒト細胞が挙げられる。
【0070】
さらなる実施形態では、AAVウイルスベクターの自動産生方法は、機能的プロモータおよび2つのテトラサイクリンオペレータ配列(TetO2)を含む抑制解除プロモータを好適に利用する。かかる実施形態では、抑制要素は、テトラサイクリン抑制タンパク質である。
【0071】
例示的な実施形態では、本明細書に記載されるように、抑制解除プロモータは、機能的プロモータおよび2つのテトラサイクリンオペレータ配列(TetO2)を含む。2つのテトラサイクリン抑制タンパク質(TetR(TetO2配列の抑制要素))をTetO2配列に結合させると、これらのプロモータからの転写がほとんど行われないか、または全く行われない。TetR(好適にはドキシサイクリン(Dox))の結合パートナーの結合時に、TetRタンパク質は、配座、TetO2配列からの放出を変化させ、機能的プロモータは、自然と同じように、それらの通常の転写プロセスを開始する。したがって、実施形態では、自動産生方法は、好適には、抑制解除プロモータを活性化するドキシサイクリンで細胞を治療することをさらに含み、ウイルスベクターの産生を可能にする。
【0072】
実施形態では、AAVウイルスベクターの自動産生方法は、対象遺伝子が治療対象遺伝子であることを含む。
【0073】
実施形態では、AAVウイルスベクターの自動産生方法は、少なくとも約1010個のウイルスベクターを産生する。例えば、本明細書に記載の方法によって産生されるAAVウイルスベクターの量は、少なくとも約1010個のAAVウイルスベクター、または少なくとも約1011個のAAVウイルスベクター、または少なくとも約1012個のAAVウイルスベクター、または少なくとも約1013個のAAVウイルスベクター、または少なくとも約1014個のAAVウイルスベクター、または約1010~1014個のAAVウイルスベクター、または約1010~1013個のAAVウイルスベクター、または約1010~1012個のAAVウイルスベクター、または約1010個、約1011個、約1012個、または約1013個のAAVウイルスベクターである。
【0074】
追加の例示的な実施形態では、人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することを含む、レンチウイルスベクターの自動産生方法が開示される。レンチウイルスベクター産生細胞の産生方法は、2019年8月23日に出願された米国仮特許出願第62/890,904号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルスベクター産生細胞」は、そのゲノムに組み込まれ、レンチウイルスベクターを産生するために必要な要素を含有する細胞を指す。
【0076】
実施形態では、本方法は、第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子、第2のプロモータの制御下のレンチウイルスエンベロープ遺伝子(エンベロープ糖タンパク質遺伝子)、および第3のプロモータの制御下の、レンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子ならびにレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子をそのゲノムに組み込んで含むレンチウイルスベクター産生細胞を利用する。好適な実施形態では、核酸配列は、トランスポゾン特異的逆方向末端反復(ITR)の組換えから生じる配列によって5’末端および3’末端の両方に隣接される。
【0077】
本明細書に開示されるように、ビリオンタンパク質(REV)の発現のレンチウイルス調節因子は、後期遺伝子発現を促進するRNA結合タンパク質である。核から細胞質へのウイルス構造タンパク質をコードする、非スプライシングまたは単一スプライシングmRNA輸送にも重要である。
【0078】
エンベロープ糖タンパク質遺伝子は、好適には、水疱口炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)遺伝子であり、レンチウイルスベクターの表面上で発現および提示され、標的細胞へのレンチウイルスベクターの形質導入を媒介する。
【0079】
GAGは、非スプライシングmRNAから翻訳されたポリタンパク質をコードし、その後、ウイルスプロテアーゼ(PR)によってマトリックスタンパク質、カプシド、およびヌクレオカプシドタンパク質に切断される。レンチウイルスポリメラーゼ(POL)は、GAG mRNA翻訳中のリボソームフレームシフトの結果としてGAG-POLポリタンパク質として発現され、酵素タンパク質の逆転写酵素、プロテアーゼ、およびインテグラーゼをコードする。これら3つのタンパク質は、ビリオン内のウイルスゲノムに関連付けられている。好適には、GAG遺伝子はHIV GAG遺伝子であり、POL遺伝子はHIV POL遺伝子である。
【0080】
好適な実施形態では、発現カセットは、5’末端および3’末端の両方でトランスポゾン特異的逆位末端反復(ITR)に隣接している。
【0081】
レンチウイルスベクター産生細胞で使用するための例示的なプロモータは、当該技術分野において既知であり、抑制解除プロモータを含んでいる。好適には、発現カセットは、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素をさらにコードする。実施形態では、抑制解除プロモータは、機能的プロモータおよびテトラサイクリンオペレータ配列(TetO)を含み、抑制要素は、本明細書に記載されるように、テトラサイクリン抑制タンパク質である。
【0082】
さらなる実施形態では、レンチウイルスベクターを産生する方法は、対象遺伝子をコードするベクターで哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞を形質導入することを含む。実施形態では、対象遺伝子は、治療対象遺伝子である。
【0083】
さらなる実施形態では、本方法は、レンチウイルスベクター産生細胞内の第1、第2、および第3のプロモータの活性化および形質導入ウイルス産生細胞の増殖を含む。
【0084】
さらなる実施形態では、本方法は、産生されたレンチウイルスベクターを好適に単離することを含む。単離産生されたウイルスベクターの方法が本明細書に記載されている。
【0085】
例示的な実施形態では、本方法は、閉鎖型自動プロセスで行われる。
【0086】
さらなる実施形態では、レンチウイルスベクターの自動産生方法が提供され、当該方法は、完全密閉式細胞工学システムに哺乳類細胞を導入することと、哺乳類細胞を、第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子ならびに第2のプロモータの制御下のエンベロープ糖タンパク質遺伝子をコードする第1の核酸、第3のプロモータの制御下の対象遺伝子をコードする第2の核酸、および第4のプロモータの制御下のレンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子ならびにレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子の両方をコードする第3の核酸によって形質導入することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内でレンチウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、(a)~(d)は、閉鎖型自動化プロセスで行われる。レンチウイルスベクターの一過性産生のための方法は、2019年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/949,848号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0087】
本明細書に記載されるように、自動化された方法は、好適には、哺乳類細胞を利用するものであり、哺乳類細胞は、哺乳類細胞培養物であり、実施形態では、懸濁培養物である。例示的な細胞には、HEK293またはHEK293T細胞などのヒト細胞が含まれる。
【0088】
さらなる実施形態では、本方法は、テトラサイクリン抑制タンパク質をコードする配列に続く、クルッペル会合ボックス(KRAB)配列を含む核酸を利用する。
【0089】
本明細書に記載されるように、好適には、KRAB配列(約75アミノ酸)は、ヒト亜鉛フィンガータンパク質10由来の転写抑制ドメインであり、抑制要素の調節、好適にはTetR抑制要素の調節を増加させる。KRABドメインは、DNA結合ドメインによってテンプレートDNAに繋がれると、転写抑制要素として機能する。
【0090】
さらなる実施形態では、本明細書で提供する方法は、レピドプテラントランスポゾン(PIGGYBAC(登録商標))ITRであるトランスポゾン特異的ITRをさらに含む。
【0091】
転移要素(トランスポゾン)は、細胞のゲノムの周りを移動することができ、トランスジェニック生物を産生するための遺伝子を挿入するのに有用である。レピドプテラントランスポゾンPIGGYBAC(登録商標)は多種多様な種のゲノム内で移動することができ、遺伝子形質導入ベクターに有用である。トランスポゾン構造は、両端に内部反復(IR)、スペーサ、および末端反復(TR)、ならびにトランスポザーゼをコードする単一のオープンリーディングフレームからなる複雑な反復構成を含む。
【0092】
本明細書に記載されるプラスミドおよび発現カセットに使用され得る例示的なレピドプテラントランスポゾン(PIGGYBAC(登録商標))ITRには、米国特許第7,105,343号に開示されるものが含まれ、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0093】
実施形態では、レンチウイルスウイルスベクターの自動産生方法は、少なくとも約1010個のウイルスベクターを産生する。例えば、本明細書に記載の方法によって産生されるレンチウイルスベクターの量は、少なくとも約1010個のレンチウイルスベクター、または少なくとも約1011個のレンチウイルスベクター、または少なくとも約1012個のレンチウイルスベクター、または少なくとも約1013個のレンチウイルスベクター、または少なくとも約1014個のレンチウイルスベクター、または約1010~1014個のレンチウイルスベクター、または約1010~1013個のレンチウイルスベクター、または約1010~1012個のレンチウイルスベクター、または約1010個、約1011個、約1012個、または約1013個のレンチウイルスベクターである。
【0094】
実施形態では、本方法のステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われ、好適には、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調整することと、を含む。
【0095】
本明細書では、本明細書に記載の様々な方法に従って産生されるAAVまたはレンチウイルスベクターを用いて、哺乳類対象、好適にはヒト対象を治療する方法も提供される。好適には、本方法は、治療対象遺伝子を含む、対象遺伝子を有するヒト対象を治療するために使用される。ヒト対象への投与は、例えば、吸入、注射、または静脈内投与、ならびに当該技術分野で既知の他の投与方法を含むことができる。
【0096】
追加の例示的な実施形態
実施形態1は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法であって、当該方法は、人工哺乳類AAVウイルス産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することであって、人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、そのゲノムに組み込まれた、第1の抑制解除プロモータの制御下のE2AおよびE4Orf6遺伝子を含むアデノウイルスヘルパー遺伝子、第2の抑制解除プロモータの制御下のRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子、第3の抑制解除プロモータの制御下のウイルス関連非コードRNA、ならびに第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素を含む、導入することと、対象遺伝子をコードするベクターで哺乳類AAVウイルス産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、抑制要素の結合パートナーで哺乳類AAVウイルス産生細胞を治療することと、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、形質導入ウイルス産生細胞内でAAVウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離すること、を含み、上記ステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0097】
実施形態2は、人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、哺乳類細胞培養物である、実施形態1に記載の方法を含む。
【0098】
実施形態3は、哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、実施形態2に記載の方法を含む。
【0099】
実施形態4は、人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、実施形態1~3のいずれかに記載の方法を含む。
【0100】
実施形態5は、人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、ヒト細胞である、実施形態1~3のいずれかに記載の方法を含む。
【0101】
実施形態6は、ヒト細胞が、ヒト胚性腎(HEK)細胞である、実施形態5に記載の方法を含む。
【0102】
実施形態7は、抑制解除プロモータの各々が、機能的プロモータおよび2つのテトラサイクリンオペレータ配列(TetO2)を含み、抑制要素が、テトラサイクリン抑制タンパク質である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法を含む。
【0103】
実施形態8は、治療することが、ドキシサイクリンで治療することを含む、実施形態7に記載の方法を含む。
【0104】
実施形態9は、対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、実施形態1~8のいずれかに記載の方法を含む。
【0105】
実施形態10は、産生されるAAVウイルスベクターの量が、少なくとも約1010個のウイルスベクターである、実施形態1~9のいずれかに記載の方法を含む。
【0106】
実施形態11は、閉鎖型自動化プロセスが、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調整することと、を含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法を含む。
【0107】
実施形態12は、形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、実施形態1~11のいずれかに記載の方法を含む。
【0108】
実施形態13は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法であって、当該方法は、TetRおよび/またはTetR-KRABをコードする1つ以上の核酸を安定的に発現する哺乳類細胞を、第1の抑制解除プロモータの制御下でE2A遺伝子、E4Orf遺伝子、ならびにウイルス関連非コードRNAを含むアデノウイルスヘルパー遺伝子をコードする第1の核酸、第2の抑制解除プロモータの制御下でRepならびにCap遺伝子を含むAAV遺伝子をコードする第2の核酸、および任意選択で、第3の抑制解除プロモータの制御下で対象遺伝子をコードする第3の核酸によって形質導入することと、哺乳類細胞をTetRの結合パートナーで治療することと、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内でAAVウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、上記ステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0109】
実施形態14は、哺乳類細胞が、哺乳類細胞培養物である、実施形態13に記載の方法を含む。
【0110】
実施形態15は、哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、実施形態14に記載の方法を含む。
【0111】
実施形態16は、哺乳類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、実施形態12~15のいずれかに記載の方法を含む。
【0112】
実施形態17は、哺乳類細胞が、ヒト細胞である、実施形態12~15のいずれかに記載の方法を含む。
【0113】
実施形態18は、ヒト細胞が、ヒト胚性腎(HEK)細胞である、実施形態17に記載の方法を含む。
【0114】
実施形態19は、治療することが、ドキシサイクリンで治療することを含む、実施形態12~18のいずれかに記載の方法を含む。
【0115】
実施形態20は、対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、実施形態12~19のいずれかに記載の方法を含む。
【0116】
実施形態21は、産生されるAAVウイルスベクターの量が、少なくとも約1010個のウイルスベクターである、実施形態12~20のいずれかに記載の方法を含む。
【0117】
実施形態22は、閉鎖型自動化プロセスが、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調整することと、を含む、実施形態12~21のいずれかに記載の方法を含む。
【0118】
実施形態23は、形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、実施形態12~22のいずれかに記載の方法を含む。
【0119】
実施形態24は、レンチウイルスベクターの自動産生方法であって、当該方法は、人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することであって、人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、そのゲノムに組み込まれた、第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子、第2のプロモータの制御下のレンチウイルスエンベロープ遺伝子、ならびにともに第3のプロモータの制御下のレンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子およびレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子を含み、核酸配列が、トランスポゾン特異的逆方向末端反復(ITR)の組換えから生じる配列によって5’末端および3’末端の両方に隣接されている、導入することと、対象遺伝子をコードするベクターで哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、第1、第2、および第3のプロモータを活性化することと、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、形質導入ウイルス産生細胞内でレンチウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、上記ステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0120】
実施形態25は、人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、哺乳類細胞培養物である、実施形態24に記載の方法を含む。
【0121】
実施形態26は、哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、実施形態25に記載の方法を含む。
【0122】
実施形態27は、人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、ヒト細胞である、実施形態24~26のいずれかに記載の方法を含む。
【0123】
実施形態28は、ヒト細胞が、ヒト胚性腎(HEK)細胞である、実施形態27に記載の方法を含む。
【0124】
実施形態29は、前記GAG遺伝子が、HIV GAG遺伝子であり、前記POL遺伝子が、HIV POL遺伝子である、実施形態24~28のいずれかに記載の方法を含む。
【0125】
実施形態30は、レンチウイルスエンベロープ遺伝子が、水疱口炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)遺伝子である、実施形態24~29のいずれかに記載の方法を含む。
【0126】
実施形態31は、第1のプロモータ、第2のプロモータ、および第3のプロモータが、抑制解除プロモータである、実施形態24~30のいずれかに記載の方法を含む。
【0127】
実施形態32は、人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素をそのゲノムに組み込むことをさらに含む、実施形態31に記載の方法を含む。
【0128】
実施形態33は、抑制解除プロモータの各々が、機能的プロモータおよびテトラサイクリンオペレータ配列(TetO)を含み、抑制要素が、テトラサイクリン抑制タンパク質である、実施形態32に記載の方法を含む。
【0129】
実施形態34は、テトラサイクリン抑制タンパク質をコードする配列に続く、クルッペル会合ボックス配列をさらに含む、実施形態33に記載の方法を含む。
【0130】
実施形態35は、トランスポゾン特異的ITRが、レピドプテラントランスポゾン(PIGGYBAC(登録商標)) ITRである、実施形態24~34のいずれかに記載の方法を含む。
【0131】
実施形態36は、対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、実施形態24~35のいずれかに記載の方法を含む。
【0132】
実施形態37は、産生されるレンチウイルスベクターの量が、少なくとも約1010個のウイルスベクターである、実施形態24~36のいずれかに記載の方法を含む。
【0133】
実施形態38は、閉鎖型自動化プロセスが、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調整することと、を含む、実施形態24~37のいずれかに記載の方法を含む。
【0134】
実施形態39は、形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、実施形態24~38のいずれかに記載の方法を含む。
【0135】
実施形態40は、レンチウイルスベクターの自動産生方法であって、当該方法は、完全密閉式細胞工学システムに哺乳類細胞を導入することと、哺乳類細胞を、第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子ならびに第2のプロモータの制御下のエンベロープ糖タンパク質遺伝子をコードする第1の核酸、第3のプロモータの制御下の対象遺伝子をコードする第2の核酸、および第4のプロモータの制御下のレンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子ならびにレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子の両方をコードする第3の核酸によって形質導入することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内でレンチウイルスベクターを産生することと、ウイルスベクターを単離することと、を含み、上記ステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0136】
実施形態41は、哺乳類細胞が、哺乳類細胞培養物である、実施形態40に記載の方法を含む。
【0137】
実施形態42は、哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、実施形態41に記載の方法を含む。
【0138】
実施形態43は、哺乳類細胞が、ヒト細胞である、実施形態40~42のいずれかに記載の方法を含む。
【0139】
実施形態44は、ヒト細胞が、ヒト胚性腎(HEK)細胞である、実施形態43に記載の方法を含む。
【0140】
実施形態45は、GAG遺伝子が、HIV GAG遺伝子であり、POL遺伝子が、HIV POL遺伝子である、実施形態40~44のいずれかに記載の方法を含む。
【0141】
実施形態46は、エンベロープ糖タンパク質遺伝子が、水疱口炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)遺伝子であり、VSV-G遺伝子及びREV遺伝子が、コドン最適化される、実施形態40~46のいずれかに記載の方法を含む。
【0142】
実施形態47は、対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、実施形態40~46のいずれかに記載の方法を含む。
【0143】
実施形態48は、産生されるレンチウイルスベクターの量が、少なくとも約1010個のウイルスベクターである、実施形態40~47のいずれかに記載の方法を含む。
【0144】
実施形態49は、閉鎖型自動化プロセスが、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調整することと、を含む、実施形態40~48のいずれかに記載の方法を含む。
【0145】
実施形態50は、形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、実施形態40~49のいずれかに記載の方法を含む。
【0146】
実施形態51は、実施形態1~23のいずれかに記載の方法によって産生されるAAVウイルスベクターである。
【0147】
実施形態52は、実施形態14~50のいずれかに記載の方法によって産生されるレンチウイルスベクターである。
【0148】
実施形態53は、実施形態51に記載のAAVベクターを哺乳類対象に投与することを含む、AAVベクターによる治療方法である。
【0149】
実施形態54は、投与することが、吸入、注射、または静脈内投与を含む、実施形態53に記載の方法を含む。
【0150】
実施形態55は、哺乳類対象に請求項52に記載のレンチウイルスベクターを投与することを含む、レンチウイルスベクターによる治療方法である。
【0151】
実施形態56は、投与することが、吸入、注射、または静脈内投与を含む、実施形態55に記載の方法を含む。
【0152】
ある特定の実施形態が本明細書に例示され、記載されてきたが、特許請求の範囲は、記載され、示された部分の特定の形態または構成に限定されないことを理解されたい。本明細書では、例示的な実施形態が開示されており、特定の用語が採用されるが、それらは、限定の目的ではなく、一般的かつ説明的な意味でのみ使用されている。上記の教示に照らして、実施形態の修正例および変形例が可能である。したがって、実施形態が、具体的に記載された方法以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【0153】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、以下の態様であってもよい。
項目1
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法であって、
(a)人工哺乳類AAVウイルス産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することであって、前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、そのゲノムに組み込まれた、
i.第1の抑制解除プロモータの制御下のE2AおよびE4Orf6遺伝子を含むアデノウイルスヘルパー遺伝子、
ii.第2の抑制解除プロモータの制御下のRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子、
iii.第3の抑制解除プロモータの制御下のウイルス関連非コードRNA、ならびに
iv.前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素、を含む、導入することと、
(b)対象遺伝子をコードするベクターで前記哺乳類AAVウイルス産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、
(c)前記抑制要素の結合パートナーで前記哺乳類AAVウイルス産生細胞を治療することと、
(d)前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、
(e)前記形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、前記形質導入ウイルス産生細胞内で前記AAVウイルスベクターを産生することと、
(f)前記ウイルスベクターを単離することと、を含み、
(a)~(f)が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法。
項目2
前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、哺乳類細胞培養物である、項目1に記載の方法。
項目3
前記哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、項目2に記載の方法。
項目4
前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
項目5
前記人工哺乳類AAVウイルス産生細胞が、ヒト細胞である、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
項目6
前記ヒト細胞が、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である、項目5に記載の方法。
項目7
前記抑制解除プロモータの各々が、機能的プロモータおよび2つのテトラサイクリンオペレータ配列(TetO
2
)を含み、前記抑制要素が、テトラサイクリン抑制タンパク質である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
項目8
前記治療することが、ドキシサイクリンで治療することを含む、項目7に記載の方法。
項目9
前記対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
項目10
産生されたAAVウイルスベクターの量が、少なくとも約10
10
個のウイルスベクターである、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
項目11
前記閉鎖型自動化プロセスが、
(a)温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、
(b)温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調節することと、を含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
項目12
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
項目13
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの自動産生方法であって、
(a)TetRおよび/またはTetR-KRABをコードする1つ以上の核酸を安定的に発現する哺乳類細胞を、
i.第1の抑制解除プロモータの制御下でE2A遺伝子、E4Orf遺伝子、およびウイルス関連非コードRNAを含むアデノウイルスヘルパー遺伝子をコードする第1の核酸、
ii.第2の抑制解除プロモータの制御下でRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子をコードする第2の核酸、および
iii.任意選択で、第3の抑制解除プロモータの制御下で対象遺伝子をコードする第3の核酸によって形質導入することと、
(b)前記哺乳類細胞を前記TetRの結合パートナーで治療することと、
(c)前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータを活性化することと、
(d)前記形質導入細胞を増殖させ、前記形質導入細胞内で前記AAVウイルスベクターを産生することと、
(e)前記ウイルスベクターを単離することと、を含み、
(a)~(e)が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法。
項目14
前記哺乳類細胞が、哺乳類細胞培養物である、項目13に記載の方法。
項目15
前記哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、項目14に記載の方法。
項目16
前記哺乳類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、項目12~15のいずれか一項に記載の方法。
項目17
前記哺乳類細胞が、ヒト細胞である、項目12~15のいずれか一項に記載の方法。
項目18
前記ヒト細胞が、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である、項目17に記載の方法。
項目19
前記治療することが、ドキシサイクリンで治療することを含む、項目12~18のいずれか一項に記載の方法。
項目20
前記対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、項目12~19のいずれか一項に記載の方法。
項目21
産生されたAAVウイルスベクターの量が、少なくとも約10
10
個のウイルスベクターである、項目12~20のいずれか一項に記載の方法。
項目22
前記閉鎖型自動化プロセスが、
(a)温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、
(b)温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調節することと、を含む、項目12~21のいずれか一項に記載の方法。
項目23
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、項目12~22のいずれか一項に記載の方法。
項目24
レンチウイルスベクターの自動産生方法であって、
(a)人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することであって、前記人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、そのゲノムに組み込まれた、
i.第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子、
ii.第2のプロモータの制御下のレンチウイルスエンベロープ遺伝子、ならびに
iii.ともに第3のプロモータの制御下のレンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子およびレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子、を含み、
核酸配列が、トランスポゾン特異的逆方向末端反復(ITR)の組換えから生じる配列によって5’末端および3’末端の両方に隣接されている、導入することと、
(b)対象遺伝子をコードするベクターで前記哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、
(c)前記第1、第2、および第3のプロモータを活性化することと、
(d)前記形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、前記形質導入ウイルス産生細胞内で前記レンチウイルスベクターを産生することと、
(e)前記ウイルスベクターを単離することと、を含み、
(a)~(e)が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法。
項目25
前記人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、哺乳類細胞培養物である、項目24に記載の方法。
項目26
前記哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、項目25に記載の方法。
項目27
前記人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、ヒト細胞である、項目24~26のいずれか一項に記載の方法。
項目28
前記ヒト細胞が、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である、項目27に記載の方法。
項目29
前記GAG遺伝子が、HIV GAG遺伝子であり、前記POL遺伝子が、HIV POL遺伝子である、項目24~28のいずれか一項に記載の方法。
項目30
前記レンチウイルスエンベロープ遺伝子が、水疱口炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)遺伝子である、項目24~29のいずれか一項に記載の方法。
項目31
前記第1のプロモータ、第2のプロモータ、および第3のプロモータが、抑制解除プロモータである、項目24~30のいずれか一項に記載の方法。
項目32
前記人工哺乳類レンチウイルスベクター産生細胞が、前記第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素をそのゲノムに組み込むことをさらに含む、項目31に記載の方法。
項目33
前記抑制解除プロモータの各々が、機能的プロモータおよびテトラサイクリンオペレータ配列(TetO)を含み、前記抑制要素が、テトラサイクリン抑制タンパク質である、項目32に記載の方法。
項目34
前記テトラサイクリン抑制タンパク質をコードする配列に続く、クルッペル会合ボックス配列をさらに含む、項目33に記載の方法。
項目35
前記トランスポゾン特異的ITRが、レピドプテラントランスポゾン(PIGGYBAC (登録商標)) ITRである、項目24~34のいずれか一項に記載の方法。
項目36
前記対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、項目24~35のいずれか一項に記載の方法。
項目37
産生されたレンチウイルスベクターの量が、少なくとも約10
10
個のウイルスベクターである、項目24~36のいずれか一項に記載の方法。
項目38
前記閉鎖型自動化プロセスが、
(a)温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、
(b)温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調節することと、を含む、項目24~37のいずれか一項に記載の方法。
項目39
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、項目24~38のいずれか一項に記載の方法。
項目40
レンチウイルスベクターの自動産生方法であって、
(a)完全密閉式細胞工学システムに哺乳類細胞を導入することと、
(b)哺乳類細胞を、
i.第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子ならびに第2のプロモータの制御下のエンベロープ糖タンパク質遺伝子をコードする第1の核酸、
ii.第3のプロモータの制御下の対象遺伝子をコードする第2の核酸、および
iii.第4のプロモータの制御下のレンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子ならびにレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子の両方をコードする第3の核酸によって形質導入することと、
(c)前記形質導入細胞を増殖させ、前記形質導入細胞内で前記レンチウイルスベクターを産生することと、
(d)前記ウイルスベクターを単離することと、を含み、
(a)~(d)が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法。
項目41
前記哺乳類細胞が、哺乳類細胞培養物である、項目40に記載の方法。
項目42
前記哺乳類細胞培養物が、懸濁培養物である、項目41に記載の方法。
項目43
前記哺乳類細胞が、ヒト細胞である、項目40~42のいずれか一項に記載の方法。
項目44
前記ヒト細胞が、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である、項目43に記載の方法。
項目45
前記GAG遺伝子が、HIV GAG遺伝子であり、前記POL遺伝子が、HIV POL遺伝子である、項目40~44のいずれか一項に記載の方法。
項目46
前記エンベロープ糖タンパク質遺伝子が、水疱口炎ウイルス糖タンパク質(VSV-G)遺伝子であり、前記VSV-G遺伝子および前記REV遺伝子が、コドン最適化される、項目40~46のいずれか一項に記載の方法。
項目47
前記対象遺伝子が、治療対象遺伝子である、項目40~46のいずれか一項に記載の方法。
項目48
産生されたレンチウイルスベクターの量が、少なくとも約10
10
個のウイルスベクターである、項目40~47のいずれか一項に記載の方法。
項目49
前記閉鎖型自動化プロセスが、
(a)温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、
(b)温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調節することと、を含む、項目40~48のいずれか一項に記載の方法。
項目50
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、項目40~49のいずれか一項に記載の方法。
項目51
項目1~23のいずれか一項に記載の方法によって産生されるAAVウイルスベクター。
項目52
項目14~50のいずれか一項に記載の方法によって産生されるレンチウイルスベクター。
項目53
AAVベクターによる治療方法であって、
a.哺乳類対象に項目51に記載のAAVベクターを投与することを含む、方法。
項目54
前記投与することが、吸入、注射、または静脈内投与を含む、項目53に記載の方法。
項目55
レンチウイルスベクターによる治療方法であって、
a.哺乳類対象に項目52に記載のレンチウイルスベクターを投与することを含む、方法。
項目56
前記投与することが、吸入、注射、または静脈内投与を含む、項目55に記載の方法。