IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蓄電装置 図1
  • 特許-蓄電装置 図2
  • 特許-蓄電装置 図3
  • 特許-蓄電装置 図4
  • 特許-蓄電装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/534 20210101AFI20241205BHJP
   H01G 11/72 20130101ALI20241205BHJP
   H01G 11/76 20130101ALI20241205BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241205BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/583 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M50/534
H01G11/72
H01G11/76
H01M10/0585
H01M50/54
H01M50/55 101
H01M50/583
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021561292
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042221
(87)【国際公開番号】W WO2021106594
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019216054
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】溝延 行洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健介
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-014221(JP,A)
【文献】特開2017-045657(JP,A)
【文献】特開2015-056257(JP,A)
【文献】特開2019-009015(JP,A)
【文献】特開2018-085215(JP,A)
【文献】特開2019-114569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/531 - 541
H01G 11/72
H01G 11/76
H01M 10/0585
H01M 50/55
H01M 50/583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極がセパレータを介して交互に積層されてなる電極体と、
前記電極体が収容される有底筒状の外装缶と、
正極端子及び負極端子が取り付けられ、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口板と、
前記封口板と前記電極体との間において、前記封口板の内面において前記正極端子又は前記負極端子に近接配置される機能部品と、
を備え、
前記正極は、前記正極端子と電気的に接続される正極タブを含み、
前記負極は、前記負極端子と電気的に接続される負極タブを含み、
前記電極体は、前記正極タブが複数積層されてなる正極タブ群と、前記負極タブが複数積層されてなる負極タブ群とを有し、当該各タブ群は前記封口板と前記電極体の間に配され、前記電極体と前記封口板を接続するバネとして機能し、
前記正極タブ群及び前記負極タブ群のうち、前記機能部品に近接する一方のタブ群のバネ定数が、他方のタブ群のバネ定数より大きい、蓄電装置。
【請求項2】
正極と負極がセパレータを介して交互に積層されてなる電極体と、
前記電極体が収容される有底筒状の外装缶と、
正極端子及び負極端子が取り付けられ、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口板と、
前記封口板の内面において前記正極端子又は前記負極端子に近接配置される機能部品と、
を備え、
前記正極は、前記正極端子と電気的に接続される正極タブを含み、
前記負極は、前記負極端子と電気的に接続される負極タブを含み、
前記電極体は、前記正極タブが複数積層されてなる正極タブ群と、前記負極タブが複数積層されてなる負極タブ群とを有し、当該各タブ群は前記電極体と前記封口板を接続するバネとして機能し、
前記正極タブ群及び前記負極タブ群のうち、前記機能部品に近接する一方のタブ群のバネ定数が、他方のタブ群のバネ定数より大きく、
前記他方のタブ群のバネ定数kに対する前記一方のタブ群のバネ定数Kの比(K/k)が、2.5≦K/k≦7.5の関係を満たす、蓄電装置。
【請求項3】
正極と負極がセパレータを介して交互に積層されてなる電極体と、
前記電極体が収容される有底筒状の外装缶と、
正極端子及び負極端子が取り付けられ、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口板と、
前記封口板の内面において前記正極端子に近接配置される機能部品と、
を備え、
前記正極は、前記正極端子と電気的に接続される正極タブを含み、
前記負極は、前記負極端子と電気的に接続される負極タブを含み、
前記電極体は、前記正極タブが複数積層されてなる正極タブ群と、前記負極タブが複数積層されてなる負極タブ群とを有し、当該各タブ群は前記電極体と前記封口板を接続するバネとして機能し、
前記機能部品に近接する前記正極タブ群のバネ定数が、前記負極タブ群のバネ定数より大きい、蓄電装置。
【請求項4】
前記電極体は、第1及び第2の電極群に分割されて積層配置され、
前記第1及び前記第2の電極群の各々は、前記正極タブ群及び前記負極タブ群を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関し、より詳しくは、封口板の正極端子又は負極端子に近接配置される機能部品を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極体が収容される有底筒状の外装缶と、正極端子及び負極端子が取り付けられ、外装缶の開口部を塞ぐ封口板とを備えた蓄電装置が広く知られている。例えば、特許文献1には、正極端子を含む正極集電板と、負極端子を含む負極集電板と、正極のタブを集約した正極タブ群と、負極のタブを集約した負極タブ群とを備え、正極集電板の上面に正極タブ群が、負極集電板の上面に負極タブ群がそれぞれ溶接された蓄電装置が開示されている。特許文献1の蓄電装置では、タブ群を構成するタブの長さを積層位置に応じて変化させることで、集電部における電気抵抗のバラツキの抑制を図っている。また、特許文献1の蓄電装置では、各集電板と各端子が過電流保護回路を介して接続されている。
【0003】
特許文献2には、正極タブ群と負極タブ群をそれぞれ有する2つの電極群からなる電極体を備えた蓄電装置が開示されている。特許文献2には、タブ群を電極群の積層方向中央に向けて寄せ集めた状態で集電板に溶接することにより、タブに作用する負荷を軽減できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-225736号公報
【文献】特開2018-200841号公報
【発明の概要】
【0005】
リチウムイオン電池等の蓄電装置には、一般的に、異常発生時に電流経路を切断するための電流遮断機構等を備えた機能部品が装置内部に設けられる。かかる機能部品に対して、例えば、蓄電装置の製造時に振動、衝撃等の負荷がかかると、機能部品の性能が低下することが想定される。一方、機能部品に負荷がかからないように製造条件を厳しく規制すれば、生産性の低下を招くことになる。
【0006】
本開示に係る蓄電装置は、正極と負極がセパレータを介して交互に積層されてなる電極体と、前記電極体が収容される有底筒状の外装缶と、正極端子及び負極端子が取り付けられ、前記外装缶の開口部を塞ぐ封口板と、前記封口板の内面において前記正極端子又は前記負極端子に近接配置される機能部品とを備え、前記正極は、前記正極端子と電気的に接続される正極タブを含み、前記負極は、前記負極端子と電気的に接続される負極タブを含み、前記電極体は、前記正極タブが複数積層されてなる正極タブ群と、前記負極タブが複数積層されてなる負極タブ群とを有し、当該各タブ群は前記電極体と前記封口板を接続するバネとして機能し、前記正極タブ群及び前記負極タブ群のうち、前記機能部品に近接する一方のタブ群のバネ定数が、他方のタブ群のバネ定数より大きいことを特徴とする。
【0007】
本開示に係る蓄電装置によれば、良好な生産性を確保しつつ、装置内部に設けられる電流遮断機構等を備えた機能部品に対して大きな負荷がかかることを抑制できる。したがって、例えば蓄電装置の製造時に、機能部品に対して振動や衝撃が作用し難くなり、振動や衝撃による機能部品の性能低下、損傷等が防止される。また、蓄電装置の組み立て工程等において特別な製造条件を追加しなくても、機能部品を振動や衝撃から十分に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の一例である蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態の一例である電極体及び封口板の斜視図である。
図3図3は、実施形態の一例である電極体の分解斜視図である。
図4図4は、実施形態の一例である電極体の断面図である。
図5図5は、実施形態の他の一例である電極体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下で例示する複数の実施形態及び変形例を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。また、本明細書において、「数値A~数値B」との記載は特に断らない限り、「数値A以上数値B以下」を意味する。
【0010】
図1は実施形態の一例である二次電池10の外観を示す斜視図、図2は二次電池10を構成する電極体11及び封口板15の斜視図(外装缶14を取り除いた状態を示す図)である。図1に例示する二次電池10は、外装体として、外装缶14と封口板15を含む角形容器を備えるが、外装体はこれに限定されない。なお、本開示に係る蓄電装置は、二次電池10に限定されず、例えば一次電池、又はキャパシタであってもよい。
【0011】
図1及び図2に例示するように、二次電池10は、電極体11と、電解質と、電極体11及び電解質が収容される有底筒状の外装缶14と、正極端子12及び負極端子13が取り付けられ、外装缶14の開口部を塞ぐ封口板15とを備える。電極体11は、正極20と負極30がセパレータ40を介して交互に積層された構造を有する(詳しくは後述の図3参照)。外装缶14は軸方向一端が開口した扁平な略直方体形状の金属製角形容器であり、二次電池10はいわゆる角形電池である。外装缶14及び封口板15は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属材料で構成される。
【0012】
以下では、説明の便宜上、外装缶14の高さ方向を二次電池10の「上下方向」とし、封口板15側を「上」、外装缶14の底部側を「下」とする。また、封口板15の長手方向に沿う方向を二次電池10の「横方向」とする。
【0013】
電解質は、水系電解質であってもよいが、好ましくは非水電解質である。非水電解質は、固体電解質であってもよいが、本実施形態では非水電解液を用いるものとする。非水電解液は、例えば、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。
【0014】
封口板15には、上記の通り、正極端子12及び負極端子13が取り付けられている。封口板15は、細長い矩形形状を有し、長手方向一端側に正極端子12が、封口板15の長手方向他端側に負極端子13がそれぞれ配置されている。正極端子12及び負極端子13は、他の二次電池10や負荷に対して電気的に接続される外部接続端子であり、絶縁部材を介して封口板15に取り付けられる。
【0015】
詳しくは後述するが、正極20は正極端子12と電気的に接続される正極タブ23を含み、負極30は負極端子13と電気的に接続される負極タブ33を含む。正極端子12は正極集電板25を介して、複数の正極タブ23が積層されてなる正極タブ群24と電気的に接続され、負極端子13は負極集電板35を介して、複数の負極タブ33が積層されてなる負極タブ群34と電気的に接続される。
【0016】
封口板15には、機能部品として、電池の異常発生時に電流経路を切断するための電流遮断装置18が設けられている。機能部品は、例えば、二次電池10の安全装置又は制御装置として機能する部品である。機能部品は、封口板15の内面において正極端子12又は負極端子13に近接配置される。本実施形態では、電流遮断装置18が正極端子12に付随し、正極端子12の内側に配置されている。
【0017】
電流遮断装置18は、二次電池10に異常が発生して外装缶14の内圧が所定の圧力を超えて上昇した場合に電流経路を遮断する圧力感知式の安全装置である。電流遮断装置18は、例えば、正極端子12と正極集電板25の間に配置され、通常使用時において正極端子12及び正極集電板25と電気的に接続されている。電流遮断装置18の構造は特に限定されないが、一例としては、内圧上昇時に正極集電板25から離れる方向に反転して正極集電板25との電気的接続を切断し、正極端子12と正極集電板25の電流経路を遮断する反転板を含む装置が挙げられる。
【0018】
また、封口板15には、非水電解液を注入するための注液部16、及び電池の異常発生時に開弁してガスを排出するためのガス排出弁17が設けられる。ガス排出弁17は封口板15の長手方向中央部に、注液部16は正極端子12とガス排出弁17の間にそれぞれ配置されている。
【0019】
図2に例示するように、電極体11は、第1の電極群11Aと第2の電極群11Bに分割されている。電極群11A,11Bは、例えば、互いに同じ積層構造、寸法を有し、電極体11の厚み方向に積層配置される。各電極群の上端部には、複数の正極タブ23からなる正極タブ群24、及び複数の負極タブ33からなる負極タブ群34が形成され、封口板15の各集電板にそれぞれ接続されている。電極群11A,11Bの外周面はセパレータ40で覆われ、また電極群11A,11Bで独立した電池反応が起こるように構成されている。
【0020】
図3は、電極体11の分解斜視図である。図3に例示するように、電極体11は、複数の正極20と、複数の負極30とを含む。電極体11を構成する電極群11A,11Bには、例えば、負極30が正極20よりも1枚多く含まれ、電極群11A,11Bの厚み方向両側に負極30が配置される。図3では、正極20と負極30の間に1枚ずつ配置される複数のセパレータ40を図示しているが、電極群11A,11Bに含まれるセパレータ40はそれぞれ1枚ずつであってもよい。この場合、長尺状のセパレータ40がつづら折りされて正極20と負極30の間に配置される。
【0021】
電極体11は、複数の正極20と複数の負極30がセパレータ40を介して1枚ずつ交互に積層されてなる積層型の電極体である。正極20は上方に突出した正極タブ23を含み、負極30は上方に突出した負極タブ33を含む。言い換えると、正極20及び負極30は、各タブが同じ方向を向くように積層配置される。また、正極タブ23が電極体11の横方向一端側に、負極タブ33が電極体11の横方向他端側にそれぞれ位置すると共に、複数の正極タブ23が電極体11の厚み方向に並び、複数の負極タブ33が電極体11の厚み方向に並ぶように積層配置される。
【0022】
正極20は、正極芯体21と、正極芯体21の表面に設けられた正極合材層とを有する。正極芯体21には、アルミニウム、アルミニウム合金など正極20の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質、導電材、及び結着材を含み、正極芯体21の両面に設けられることが好ましい。正極20は、例えば正極芯体21上に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合材層を正極芯体21の両面に形成することにより作製できる。
【0023】
正極20は、正極芯体21の表面のうち正極タブ23を除く部分(以下、「基部」とする)の全域に正極合材層が形成された構造を有する。正極芯体21の厚みは、例えば5μm~20μmであり、好ましくは8μm~15μmである。正極芯体21の基部は正面視四角形状を有し、当該四角形の一辺から正極タブ23が突出している。一般的には、1枚の金属箔を加工して基部と正極タブ23が一体成形された正極芯体21が得られる。
【0024】
正極活物質には、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。リチウム遷移金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。中でも、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有することが好ましい。好適な複合酸化物の一例としては、Ni、Co、Mnを含有するリチウム遷移金属複合酸化物、Ni、Co、Alを含有するリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
【0025】
正極合材層に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合材層に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0026】
負極30は、負極芯体31と、負極芯体31の表面に設けられた負極合材層とを有する。負極芯体31には、銅などの負極30の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質及び結着材を含み、負極芯体の両面に設けられることが好ましい。負極30は、例えば負極芯体31の表面に負極活物質、及び結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層を負極芯体31の両面に形成することにより作製できる。
【0027】
負極30は、負極芯体31の表面のうち負極タブ33を除く部分である基部の全域に負極合材層が形成された構造を有する。負極芯体31の厚みは、例えば3μm~15μmであり、好ましくは5μm~10μmである。正極20の場合と同様に、負極芯体31の基部は正面視四角形状を有し、当該四角形の一辺から負極タブ33が突出している。一般的には、1枚の金属箔を加工して基部と負極タブ33が一体成形された負極芯体31が得られる。
【0028】
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素系活物質が用いられる。好適な炭素系活物質は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛(MAG)、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛などの黒鉛である。また、負極活物質には、Si及びSi含有化合物の少なくとも一方で構成されるSi系活物質が用いられてもよく、炭素系活物質とSi系活物質が併用されてもよい。
【0029】
負極合材層に含まれる結着材には、正極20の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることもできるが、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いることが好ましい。また、負極合材層は、さらに、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)などを含むことが好ましい。中でも、SBRと、CMC又はその塩、PAA又はその塩を併用することが好適である。
【0030】
図4は、図2中のAA線断面を模式的に示す図である。以下、図2及び図4を参照しながら、電極体11の正極タブ群24及び負極タブ群34の構成について詳説する。
【0031】
図2及び図4に例示するように、電極体11は、正極タブ23が複数積層されてなる正極タブ群24と、負極タブ33が複数積層されてなる負極タブ群34とを有する。正極タブ群24は、複数の正極タブ23を電極の積層方向に重ね合わせて、電極群11A,11B毎に1つずつ形成されている。同様に、負極タブ群34は、複数の負極タブ33を電極の積層方向に重ね合わせて、電極群11A,11B毎に1つずつ形成されている。
【0032】
正極タブ群24は、封口板15の内面(下面)に取り付けられた正極集電板25に溶接等により接合される。正極集電板25は、上記のように、電流遮断装置18を介して正極端子12と電気的に接続される板状の導電部材である。封口板15と正極集電板25の間には絶縁部材26が介在し、両部材の接触が防止されている。同様に、負極タブ群34は、絶縁部材を介して封口板15の内面に取り付けられた負極集電板35に溶接等により接合される。
【0033】
正極タブ群24及び負極タブ群34は、電極体11と封口板15を接続するバネとして機能する。正極タブ群24及び負極タブ群34は、上下方向に伸縮するように構成され、例えば、封口板15が上から押圧されて封口板15と電極体11(タブ群以外の部分)の間隔が縮まった場合に、封口板15を上方に押し返す。即ち、正極タブ群24及び負極タブ群34が弾性変形することで、電極体11と封口板15の間隔が維持される。
【0034】
正極タブ群24及び負極タブ群34は、電極体11と各端子をつなぐ導電経路として、また上記バネとして機能する限り、その形状は特に限定されない。図2及び図4に示す例では、電極群11Aの複数の正極タブ23及び複数の負極タブ33が、二次電池10の外側から内側に向かって湾曲した状態でそれぞれ積層され、断面視略U字状の正極タブ群24及び負極タブ群34が形成されている。同様に、電極群11Bにも、断面視略U字状のタブ群が形成されている。なお、各タブ群は、二次電池10の内側から外側に向かって湾曲したU字形状を有していてもよい。そして、図4のように2つの積層された電極群のタブ群は、一方の電極群のタブ群の断面形状に対して他方の電極群のタブ群の断面形状が電極群の境界線で略対称となるように配置されてもよい。
【0035】
正極タブ群24は、正極集電板25の封口板15側に向いた上面に溶接されてもよいが、好ましくは正極集電板25の下面に溶接される。正極タブ群24を正極集電板25の下面に溶接した場合、バネの機能がより発現され易くなる。本実施形態では、正極タブ群24及び負極タブ群34のいずれも、集電板の下面に溶接されているが、例えば、正極タブ群24が正極集電板25の下面に溶接され、負極タブ群34が負極集電板35の上面に溶接されてもよい。
【0036】
二次電池10では、正極タブ群24及び負極タブ群34のうち、機能部品に近接する一方のタブ群のバネ定数が、他方のタブ群のバネ定数より大きくなっている。本実施形態では、機能部品として、正極端子12に付随する電流遮断装置18が設けられており、電流遮断装置18に近接配置される正極タブ群24のバネ定数Ktが、電流遮断装置18から離れた負極タブ群34のバネ定数Kbより大きくなっている。つまり、正極タブ群24は、負極タブ群34に比べて剛性が高く伸縮し難い。
【0037】
正極タブ群24及び負極タブ群34のバネ定数をKt>Kbとすることで、例えば、二次電池10の製造時に封口板15を上から押すような力が作用したとき、又は電極体11を下から持ち上げるような力が作用したときに、正極タブ群24よりも負極タブ群34が変形し易くなる。つまり、負極タブ群34が優先的に変形してその力を吸収し、電極体11と封口板15の間隔は正極端子12側で小さくなり難い。このため、電極体11と電流遮断装置18の接触が防止され、電流遮断装置18に大きな負荷がかかることを抑制できる。
【0038】
正極タブ群24及び負極タブ群34の各バネ定数は、各タブ群に荷重を付与し、当該荷重とタブ群の変形量から算出される。具体的な算出法は、下記の通りである。
(1)長手方向中央で封口板15を切断し、封口板15を正極端子12側と負極端子13側に分離する。
(2)分離した封口板15の正極タブ群24の直上、及び負極タブ群34の直上から、オートグラフで荷重を付与する。
(3)付与した荷重と、荷重付与時の各タブ群の変形量(縮み量)から、バネ定数Kt,Kbを算出する。
【0039】
負極タブ群34のバネ定数Kbに対する正極タブ群24のバネ定数Ktの比(Kt/Kb)は、2.5≦Kt/Kb≦7.5の関係を満たすことが好ましい。Kt/Kbを2.5以上に設定することで、例えば、二次電池10の製造工程で封口板15に溶接された電極体11を外装缶14に挿入する際、電流遮断装置18の電極体11への接触を抑制することが容易になる。一方、Kt/Kbが7.5以下であれば、正極タブ群24の剛性を極端に高くするような構造を採用する必要がなく、或いは負極タブ群34の剛性を極端に低くするような構造を採用する必要がない。ゆえに、電流遮断装置18の損傷を効率良く抑制できる。
【0040】
正極タブ群24のバネ定数Ktは、例えば2.5~10N/mmであり、好ましくは3~8N/mm、より好ましくは4~6N/mmである。他方、負極タブ群34のバネ定数Kbは、例えば0.5~2.5N/mmであり、好ましくは0.6~2N/mm、より好ましくは0.7~1.5N/mmである。バネ定数Kt,Kbの好適な組み合わせの一例は、Ktが4~6N/mm、Kbが0.7~1.5N/mmであり、Kt/Kbが3~5である。
【0041】
正極タブ群24及び負極タブ群34のバネ定数Kt,Kbは、正極タブ23及び負極タブ33の構成材料、厚み、幅、タブ群を構成するタブの積層数等によって変更できる。一般的に、各タブの構成材料、厚みは電池性能の観点から制限されるため、各タブの幅を調整して、バネ定数Kt,Kbを上記範囲に制御することが好ましい。正極タブ23の幅を大きくし、負極タブ33の幅を小さくすることで、Kt/Kbを高くすることができる。或いは、負極タブ群34を構成する複数の負極タブ33を2つの群に分け、一方の群の長さを短くして他方の群の中間部に溶接する、即ち他方の群の負極タブ33のみを負極集電板35に溶接して、負極タブ群34のバネ定数Kbを小さくしてもよい。
【0042】
図5は、電極体11の変形例を示す図である。図5に例示するように、正極タブ群24を複数回折り返した形状として、バネ定数Ktを変化させることもできる。正極タブ群24は、例えば、複数(図5に示す例では2つ)の折り返し部が形成されるように、つづら折りされている。正極タブ群24のみ、負極タブ群34のみ、又は両方のタブ群に、当該つづら折り形状を適用してもよい。例えば、正極タブ群24に当該つづら折り形状を適用し、負極タブ群34に図4に例示するU字形状を適用してもよい。また、図4で示したような複数の電極群が積層される場合でも、それぞれの電極群のタブ群に図5のようなつづら折り形状を適用してもよい。このとき上述のように、一方の電極群のタブ群の断面形状に対して他方の電極群のタブ群の断面形状が電極群の境界線で略対称となるように配置されてもよい。このように、各タブ群の形状を工夫することで、バネ定数Kt,Kbを変更することもできる。
【0043】
図5に示す例では、電極体11が複数の電極群に分割されておらず1つの電極群で構成されている。一方、複数の正極タブ23は、電極体11の厚み方向中央で2つのグループに分割され、2つの正極タブ群24を形成してもよい。各タブ群の数は互いに異なっていてもよく、例えば、正極タブ群24が1つで負極タブ群34が複数、又は負極タブ群34が1つで正極タブ群24が複数であってもよい。
【0044】
上述のように、正極タブ群24及び負極タブ群34のバネ定数Kt,KbがKt>Kb、好ましくは、2.5≦Kt/Kb≦7.5の関係を満たす二次電池10によれば、良好な生産性を確保しつつ、電流遮断装置18に対して大きな負荷がかかることを抑制できる。例えば、二次電池10の製造工程において封口板15に溶接された電極体11を外装缶14に挿入する際に電極体11や封口板15に振動や衝撃が加わったとしても、負極タブ群34が優先的に変形して負荷を吸収する。このため、電流遮断装置18が電極体11に接触することを抑制できる。二次電池10によれば、組み立て工程等において特別な製造条件を追加しなくても、電流遮断装置18を振動や衝撃から十分に保護できる。
【0045】
上記実施形態は、本開示の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記実施形態では、機能部品として電流遮断装置18を例示したが、機能部品は、過電流から電池を保護するための電流ヒューズや保護回路基板、或いは電池の過熱を抑制するための薬剤を収納する容器(タンク、カプセル)等であってもよい。
【0046】
また、機能部品は負極端子13に近接配置されてもよく、上述の正極端子12近接に機能部品が配置される構成と同様の効果が得られる。この場合、負極タブ群のバネ定数Kbを、正極タブ群のバネ定数Ktよりも大きくする必要がある。このとき、正極タブ群24のバネ定数Ktに対する負極タブ群34のバネ定数Kbの比(Kb/Kt)は、2.5≦Kb/Kt≦7.5の関係を満たすことが好ましい。正極タブ群24のバネ定数Ktは、例えば0.5~2.5N/mmであり、好ましくは0.6~2N/mm、より好ましくは0.7~1.5N/mmである。他方、負極タブ群34のバネ定数Kbは、例えば2.5~10N/mmであり、好ましくは3~8N/mm、より好ましくは4~6N/mmである。バネ定数Kt,Kbの好適な組み合わせの一例は、Ktが0.7~1.5N/mmで、Kbが4~6N/mmであり、Kb/Ktが3~5である。
【0047】
つまり、機能部品に近接する一方のタブ群のバネ係数をKとし、他方のタブ群のバネ係数をkとするとき、K>kとすることで上述の効果が得られる。このとき、他方のタブ群のバネ定数kに対する一方のタブ群のバネ定数Kの比(K/k)は、2.5≦K/k≦7.5とすることが好ましく、3≦K/k≦5とすることがより好ましい。
【符号の説明】
【0048】
10 二次電池
11 電極体
11A 第1の電極群
11B 第2の電極群
12 正極端子
13 負極端子
14 外装缶
15 封口板
16 注液部
17 ガス排出弁
18 電流遮断装置
20 正極
21 正極芯体
22 正極合材層
23 正極タブ
24 正極タブ群
25 正極集電板
26 絶縁部材
30 負極
31 負極芯体
32 負極合材層
33 負極タブ
34 負極タブ群
35 負極集電板
40 セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5