(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】切削エッジのトレーサビリティを上げるための切削ツール、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20241205BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20241205BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20241205BHJP
B23C 5/20 20060101ALI20241205BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B23B27/00 Z
B23B27/16 Z
B23Q17/00 F
B23C5/20
B23C9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021563233
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020061622
(87)【国際公開番号】W WO2020221693
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591106875
【氏名又は名称】セコ ツールズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボーダン, ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】グラブニングスブローテン, ヤン
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-011004(JP,A)
【文献】特開2012-020359(JP,A)
【文献】特開平01-246042(JP,A)
【文献】登録実用新案第3004884(JP,U)
【文献】特表2002-533224(JP,A)
【文献】特開2004-351555(JP,A)
【文献】特開2020-069569(JP,A)
【文献】特開2020-044643(JP,A)
【文献】国際公開第2019/094997(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00、14、16
B23C 5/20
B23Q 11/00、17/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ツール(20)
の第1の切削エッジ(21)のトレーサビリティを上げるためのシステム(100)であって、
マシン可読コードを読み出すためのリーダデバイス(10a、10b、10c)と、
前記リーダデバイス(10a、10b、10c)に接続されるよう構成されている電子デバイス(1a、1b、1c)と、
を含み、
前記電子デバイス(1a、1b、1c)は、少なくとも1つの処理回路(102a、102b、102c)を有し、
少なくとも1つの処理回路(102a、102b、102c)は、前記システム(100)に、
前記リーダデバイス(10a、10b、10c)により、前記切削ツール(20)上の、マシン可読コードであ
る第1の識別マーカ(41)を検出させ、
前記リーダデバイス(10a、10b、10c)により、前
記第1の識別マーカ(41)を読み出させ、
前
記第1の識別マーカ(41)をデコードさせ、前
記第1の識別マーカ(41)の前記マシン可読コードに含まれる、固有のアイデンティティであ
る第1の切削エッジ情報データ(1ceID)を判定させ、
前記リーダデバイス(10a、10b、10c)により、前記切削ツール(20)上の、マシン可読コードである第2の識別マーカ(42)を検出させ、
前記リーダデバイス(10a、10b、10c)により、前記第2の識別マーカ(42)を読み出させ、
前記第2の識別マーカ(41)をデコードさせ、前記第2の識別マーカ(42)の前記マシン可読コードに含まれる、固有のアイデンティティである第2の切削エッジ情報データ(2ceID)を判定させ、
第1の切削ツール識別データ(1ctID)を、前記第1の切削エッジ情報データ(1ceID)と前記第2の切削エッジ情報データ(2ceID)とに基づいて生成させ、
前記第1の切削ツール識別データ(1ctID)と前
記第1の切削エッジ情報データ(1ceID)との少なくともいずれかをメモリ(103a、103b、103c)に保存させるよう構成されている、
システム(100)。
【請求項2】
第1の切削エッジ(21)を含む切削ツール(20)をさらに含み、
前記切削ツール(20)は、切削ツールホルダ(19)において載置されるよう構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
切削ツール(20)
の第1の切削エッジ(21)のトレーサビリティを上げるための方法であって、
リーダデバイス(10a、10b、10c)により、前記切削ツール(20)上の、マシン可読コードであ
る第1の識別マーカ(41)を検出すること(S1a)と、
前記リーダデバイス(10a、10b、10c)により、前記切削ツール(20)上の、マシン可読コードである第2の識別マーカ(42)を検出すること(S1b)と、
前記リーダデバイス(10a、10b、10c)により、前
記第1の識別マーカ(41)を読み出すこと(S2a)と、
前記リーダデバイス(10a、10b、10c)により、前記第2の識別マーカ(42)を読み出すこと(S2b)と、
前
記第1の識別マーカ(41)をデコードし、前
記第1の識別マーカ(41)の前記マシン可読コードに含まれる、固有のアイデンティティであ
る第1の切削エッジ情報データ(1ceID)を判定すること(S3a)と、
前記第2の識別マーカ(41)をデコードし、前記第2の識別マーカ(42)の前記マシン可読コードに含まれる、固有のアイデンティティである第2の切削エッジ情報データ(2ceID)を判定すること(S3b)と、
第1の切削ツール識別データ(1ctID)を、前記第1の切削エッジ情報データ(1ceID)と前記第2の切削エッジ情報データ(2ceID)とに基づいて生成すること(S4b)と、
前記第1の切削ツール識別データ(1ctID)と前
記第1の切削エッジ情報データ(1ceID)との少なくともいずれかをメモリ(103a、103b、103c)に保存すること(S7)と、
を含む方法。
【請求項4】
前
記第1の切削ツール識別データ(1ctID)と前
記第1の切削エッジ情報データ(1ceID)との少なくともいずれかに関連付けられ
る第1のオペレーションデータ(1OD)の入力を受信すること(S5)と、
前
記第1の切削ツール識別データ(1ctID)と前
記第1の切削エッジ情報データ(1ceID)との少なくとも1つに関連付けられている前
記第1のオペレーションデータ(1OD)を前記メモリ(103a、103b、103c)に保存すること(S8)と、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前
記第1の切削エッジ情報データ(1ceID)と前
記第1のオペレーションデータ(1OD)との少なくとも1つに関連付けられている前
記第1の切削ツール識別データ(1ctID)を含
む第1の関連データ(1AD)を生成すること(S6)と、
前
記第1の関連データ(1AD)を前記メモリ(103a、103b、103c)に保存すること(S9)と、
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ユーザインタフェース(400a、400b、400c)を介して、前記第1の切削ツール識別データ(1ctID)と、前記第1の切削エッジ情報データ(1ceID)と、前
記第1のオペレーションデータ(1OD)と、の少なくともいずれかを表示すること(S14)をさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの処理回路(102a、102b、102c)を有する電子デバイス(1a、1b、1c)により行われる、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
プログラム命令を含むコンピュータプログラムを有する非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品(500)であって、前記コンピュータプログラムは、処理回路(102a、102b、102c)にロード可能であり、前記コンピュータプログラムが前記処理回路(102a、102b、102c)により実行されると、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法を実行するよう構成されている、コンピュータプログラム製品(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切り屑を除去しながらの加工の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
切削ツールは、一片の材料から切り屑を除去するために使用される1つ又はそれ以上の切削エッジを含み得る。典型的には、切削ツールは、切削ツールホルダに挿入され、マシンが、例えば、その一片の材料を処理するために、切削ツールホルダを切削ツールと共に回転させる。その一片の材料は、切削ツールの切削エッジがその一片の材料と接すると処理される。切削ツールは、切削ツールにより処理されているその一片の材料から切り屑を除去するために使用される1つ又はそれ以上の切削エッジを含み得る。切削エッジは、その一片の材料から切り屑を除去する際に摩耗する。切削ツールの1つの切削エッジ又は複数の切削エッジがある程度摩耗すると、その切削ツールは、交換しなければならない場合がある、又は、特定のタイプの処理には使用できなくなる。切削ツールの使用によって、例えば、処理されている一片の材料によって、及び、その一片の材料がどのように処理されるかによって、切削ツールの切削エッジは、特定の様式にて摩耗する。今日、多くのエンドカスタマは、特定の切削ツールがどのように使用されるかを管理しない。さらに、切削ツール及び切削エッジの製造業者はまた、例えば、切削ツールの特定の切削エッジの特定の摩耗を引き起こした特定の使用について知ることはない。切削ツールの製造業者はまた、切削ツールの特定の切削エッジがいつ作られたか、及び、例えば、切削エッジが作られた状況がどんなものであったか、使用された具体的な材料は何か、などを知ることは難しい。
【発明の概要】
【0003】
今日、ツールを管理するために、各ツール上に識別マーキングを持つ切削ツールがある。切削ツールはしたがって識別できる。しかし、切削ツール上の切削エッジのトレーサビリティを容易に上げる方法に対する要望がある。異なる切削エッジは異なって摩耗し得、特定の切削エッジが、特定の切削ツール上において機能不全となる場合がある。切削ツールの識別のみで、具体的な切削エッジについては何もわからないままでは、特定の切削エッジのトレーサビリティが援助されない。例えば、切削エッジの製造プロセスを改善するために、あらゆる切削エッジのトレーサビリティ、並びに、特定の切削エッジを持つ切削ツールのトレーサビリティを上げる要望がある。また、オペレーショナルデータなどのデータの、具体的な切削エッジへの関連付けに対する要望がある。切削エッジの製造業者と、切削エッジのエンドカスタマと、の双方は、各切削エッジに関連付けられている製造の詳細とオペレーションの詳細とを理解することからの恩恵を、切削ツールの各切削エッジの寿命にわたって受ける。これらの詳細は、例えば、製造業者が、切削エッジの製造を改善することを援助し得る。また、これらの詳細は、切削エッジを持つ切削ツールのエンドカスタマが、例えば、切削ツールを管理し、特定のオペレーションデータを、特定の切削エッジを持つ特定の切削ツールに関連付けることを援助し得る。
【0004】
本開示の目的は、従来技術における、上記に特定する欠点と、不都合な点と、の1つ又はそれ以上を、単一で、又は、いずれかの組み合わせにて和らげ、軽減し、又は、無くすことを探し求める切削ツールと、システムと、方法と、コンピュータプログラム製品と、を提供することである。
【0005】
本開示は、少なくとも第1の切削エッジと、第1の切削エッジに配置された少なくとも第1の識別マーカと、を含み、少なくとも第1の識別マーカは、第1の切削エッジ情報データに関連付けられているマシン可読コードであり、第1の切削エッジ情報データは、固有のアイデンティティである、切削ツールを提案する。これは、少なくとも第1の切削エッジを、第1の切削エッジ情報データを使用して特定できることを意味する。
【0006】
1つの態様によると、切削ツールは、第2の切削エッジと、第2の切削エッジに配置された第2の識別マーカと、をさらに含み、第2の識別マーカは、第2の切削エッジ情報データに関連付けられているマシン可読コードである。これは、第1の切削エッジを、第1の切削エッジ情報データを使用して特定でき、第2の切削エッジを、第2の切削エッジ情報データを使用して特定できることを意味する。
【0007】
1つの態様によると、第1の識別マーカは、第1の識別マーカから第2の切削エッジまでの距離より短い、第1の切削エッジまでの距離にて、切削ツール上に配置されており、第2の識別マーカは、第2の識別マーカから第1の切削エッジまでの距離より短い、第2の切削エッジまでの距離にて、切削ツール上に配置されている。識別マーカのこの配置の1つの利点は、したがって、オペレータ又はマシンが、特定の識別マーカに関連付けられているのはどの切削エッジかを判定できることである。
【0008】
1つの態様によると、少なくとも第1の識別マーカは、二次元コード、三次元コード、画像、クイックレスポンス(QR:Quick Response)コード、大容量色付き二次元コード(HCCTDC:High Capacity Colored Two Dimensional Code)、ヨーロッパ商品識別(EAN:European Article Number)コード、DataMatrixコード、又はMaxiCodeの少なくともいずれか、又は、これらの少なくともいずれかの組み合わせである。これは、少なくとも第1の識別マーカが、マシンにより、切削ツール上において視覚的に可読であり、例えば、切削ツールを扱うオペレータにより視覚的に検出可能でもあることを意味する。
【0009】
本開示は、切削ツールの少なくとも第1の切削エッジのトレーサビリティを上げるためのシステムをさらに提案する。このシステムは、マシン可読コードを読み出すためのリーダデバイスと、リーダデバイスに接続されるよう構成されている電子デバイスと、を含む。電子デバイスは、少なくとも1つの処理回路を有する。少なくとも1つの処理回路は、システムに、リーダデバイスにより、切削ツール上の、マシン可読コードである少なくとも第1の識別マーカを検出させ、リーダデバイスにより、少なくとも第1の識別マーカを読み出させ、少なくとも第1の識別マーカをデコードさせ、少なくとも第1の識別マーカのマシン可読コードに含まれる、固有のアイデンティティである少なくとも第1の切削エッジ情報データを判定させるよう構成されている。処理回路は、続いて、システムに、第1の切削ツール識別データを、少なくとも第1の切削エッジ情報データに少なくとも基づいて生成させ、少なくとも第1の切削ツール識別データと少なくとも第1の切削エッジ情報データとの少なくともいずれかをメモリに保存させるようさらに構成されている。このシステムの1つの利点は、生成される第1の切削ツール識別データが、少なくとも第1の切削エッジ情報データに基づいていることである。これは、生成される第1の切削ツール識別データと少なくとも第1の切削エッジ情報データとの間に関連性があることを意味する。
【0010】
1つの態様によると、処理回路は、システムに、リーダデバイスにより、切削ツール上の、マシン可読コードである第2の識別マーカを検出させ、リーダデバイスにより、第1の識別マーカと第2の識別マーカとを読み出させ、第2の識別マーカをデコードさせ、第2の識別マーカのマシン可読コードに含まれる第2の切削エッジ情報データを判定させるようさらに構成されている。処理回路は、続いて、システムに、第1の切削ツール識別データを、第1の切削エッジ情報データと第2の切削エッジ情報データとに基づいて生成させるようさらに構成されている。このシステムの1つの利点は、したがって、生成される第1の切削ツール識別データが、少なくとも第1の切削エッジ情報データと第2の切削エッジ情報データとに基づいていることである。これは、生成される第1の切削ツール識別データと、少なくとも第1の切削エッジ情報データと第2の切削エッジ情報データと、の間に関連性があることを意味する。
【0011】
1つの態様によると、このシステムは、少なくとも第1の切削エッジを含む切削ツールをさらに含み、切削ツールは、切削ツールホルダにおいて載置されるよう構成されている。これは、一片の材料の処理のために、切削ツールを、マシンの切削ツールホルダに載置できることを意味する。1つの態様によると、切削ツールは、ツールホルダをさらに含む。
【0012】
本開示は、切削ツールの少なくとも第1の切削エッジのトレーサビリティを上げるための方法をさらに提案する。この方法は、リーダデバイスにより、切削ツール上の、マシン可読コードである少なくとも第1の識別マーカを検出することと、リーダデバイスにより、少なくとも第1の識別マーカを読み出すことと、読み出した少なくとも第1の識別マーカをデコードし、少なくとも第1の識別マーカのマシン可読コードに含まれる、固有のアイデンティティである少なくとも第1の切削エッジ情報データを判定することと、を含む。この方法は、続いて、第1の切削ツール識別データを、少なくとも第1の切削エッジ情報データに少なくとも基づいて生成することと、少なくとも第1の切削ツール識別データと少なくとも第1の切削エッジ情報データとの少なくともいずれかをメモリに保存することと、をさらに含む。この方法の1つの利点は、生成される第1の切削ツール識別データが、少なくとも第1の切削エッジ情報データに基づいていることである。これは、生成される第1の切削ツール識別データと少なくとも第1の切削エッジ情報データとの間に関連性があることを意味する。
【0013】
1つの態様によると、この方法は、リーダデバイスにより、切削ツール上の、マシン可読コードである第2の識別マーカを検出することと、続いて、リーダデバイスにより、第2の識別マーカを読み出すことと、続いて、第2の識別マーカをデコードし、第2の識別マーカのマシン可読コードに含まれる第2の切削エッジ情報データを判定することと、をさらに含む。この方法は、続いて、第1の切削ツール識別データを、第1の切削エッジ情報データと第2の切削エッジ情報データとに基づいて生成することをさらに含む。
【0014】
1つの態様によると、この方法は、少なくとも第1の切削ツール識別データと少なくとも第1の切削エッジ情報データとの少なくともいずれかに関連付けられる少なくとも第1のオペレーションデータの入力を受信することと、少なくとも第1の切削ツール識別データと少なくとも第1の切削エッジ情報データとの少なくとも1つに関連付けられている少なくとも第1のオペレーションデータをメモリに保存することと、をさらに含む。これは、第1のオペレーションデータを保存でき、これを、少なくとも第1の切削ツール識別データと少なくとも第1の切削エッジ情報データとの少なくとも1つに関連付けることができ、第1のオペレーションデータが、後の時点にて、少なくとも第1の切削ツール識別データと少なくとも第1の切削エッジ情報データとの少なくとも1つの知識を用いて検索回収できるようになることを意味する。
【0015】
1つの態様によると、この方法は、少なくとも第1の切削エッジ情報データと少なくとも第1のオペレーションデータとの少なくとも1つに関連付けられている少なくとも第1の切削ツール識別データを含む少なくとも第1の関連データを生成することと、少なくとも第1の関連データをメモリに保存することと、をさらに含む。これは、少なくとも第1の関連データを、少なくとも第1の切削エッジ情報データと少なくとも第1のオペレーションデータとのいずれかの知識を用いて、少なくとも第1の切削ツール識別データを識別するために使用できること、又は、少なくとも第1の関連データを、少なくとも第1の切削ツール識別データの知識を用いて、第1の切削エッジ情報データと少なくとも第1のオペレーションデータとの少なくともいずれかを識別するために使用できることを意味する。
【0016】
1つの態様によると、この方法は、リーダデバイスにより、切削ツール上の少なくとも第1の識別マーカを検出することと、続いて、リーダデバイスにより、少なくとも第1の識別マーカを読み出すことと、少なくとも第1の識別マーカをデコードし、少なくとも第1の識別マーカのマシン可読コードに含まれる第1の切削エッジ情報データを判定することと、をさらに含む。この方法は、続いて、メモリから、第1の切削エッジ情報データに関連付けられている第1の切削ツール識別データと、第1の切削エッジ情報データに関連付けられている少なくとも第1のオペレーションデータと、の少なくともいずれかを検索回収することをさらに含む。換言すると、少なくとも第1の識別マーカをリーダデバイスを用いて読み出すことにより、少なくとも第1の切削ツール識別データと少なくとも第1のオペレーションデータとのいずれかについての情報を、メモリから検索回収できる。
【0017】
1つの態様によると、この方法は、ユーザインタフェースを介して、第1の切削ツール識別データと、第1の切削エッジ情報データと、少なくとも第1のオペレーションデータと、の少なくともいずれかを表示することをさらに含む。これは、オペレータが、検索回収した情報を、ユーザインタフェースを介して見ることができることを意味する。
【0018】
1つの態様によると、この方法は、少なくとも1つの処理回路を有する電子デバイスにて行われる。
【0019】
本開示は、プログラム命令を含むコンピュータプログラムを有する非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品をさらに提案する。コンピュータプログラムは、処理回路にロード可能であり、そのコンピュータプログラムが処理回路によって実行されると、本方法と、本方法のいずれかの態様と、を実行するよう構成されている。
【0020】
上述することは、添付の図面に示すような、例示的実施形態のより具体的な以下の説明から明らかとなるであろう。添付の図面では、同様の参照記号は、異なる図を通して同じ部分を示す。図面は必ずしも原寸通りではなく、これらの例示的実施形態を示すことにおいて強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a-1d】
図1aから
図1dは、本開示のいくつかの態様に係る異なる切削ツールを示す。
【
図2a-2c】
図2aから
図2cは、本開示のいくつかの態様に係る異なるシステムを示す。
【
図3】
図3は、本開示のいくつかの態様に係る方法ステップのフローチャートを示す。
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの態様に係るコンピュータプログラム製品を示す。
【
図5】
図5は、本開示のいくつかの態様に係る、切削エッジ情報データとオペレーションデータとに関連付けられている切削ツール識別データ例を示す。
【
図6】
図6は、本開示のいくつかの態様に係る、それぞれが固有の切削エッジ情報データを持つ切削ツール例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の態様を、添付の図面を参照してより詳細に以下に説明する。以下に開示するこれらの方法とデバイスとは、しかし、多くの異なる形態にて実現でき、下記の態様に限定されるものと理解すべきではない。図中の類似の参照番号は、これらの図面を通して、同様の要素を示す。
【0023】
ここに使用する用語は、本開示の特定の態様を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図していない。ここで使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、そのコンテキストがさもなければ明確に示さない限りは、複数形を同様に含むことが意図されている。
【0024】
いくつかの実装では、及び、本開示のいくつかの態様によると、ブロックに記す機能又はステップは、動作図に記す順序以外に生じ得る。例えば、連続して示す2つのブロックは実際に、実質的に同時に実行され得るか、又は、関連する機能/行為によっては、これらのブロックが時に反対の順序にて実行されて得る。
【0025】
図面及び明細書では、本開示の例示的態様を開示する。しかし、これらの態様には、本開示の原理から実質的に離れることなく、多くの変形及び変更を行うことができる。したがって、本開示は、制限的なものではなく、実例となるものとみなされるべきであり、上述する特定の態様に限定されない。結果として、具体的な用語を採用しているものの、これらは、包括的かつ説明的な意味のみにおいて使用され、限定することを目的としていない。
【0026】
「含む(comprising)」という語句は、一覧するそれら以外の他の要素又はステップの存在を必ずしも除外せず、ある要素の前に置かれる「a」又は「an」という語句は、複数のそのような要素の存在を除外しないことに留意すべきである。いずれの参照記号も、特許請求の範囲を限定せず、例示的実施形態は、ハードウェア及びソフトウェアの双方を少なくとも部分的に用いて実装されてよく、各種の「手段(means)」、「ユニット(unit)」、又は「デバイス(device)」が、ハードウェアと同じアイテムにより表されてよいことにさらに留意すべきである。
【0027】
例えば、切削エッジの製造プロセスを改善するために、あらゆる切削エッジのトレーサビリティ、並びに、特定の切削エッジを持つ切削ツールのトレーサビリティを上げる要望がある。また、オペレーショナルデータなどのデータの、具体的な切削エッジへの関連付けに対する要望がある。切削ツールの製造業者と、切削ツールのエンドカスタマと、の双方は、各切削エッジに関連付けられている製造の詳細とオペレーションの詳細とを理解することからの恩恵を、切削エッジの寿命にわたって受ける。これらの詳細は、例えば、製造業者が、切削エッジの製造を改善することを援助し得る。また、これらの詳細は、切削エッジを持つ切削ツールのエンドカスタマが、例えば、切削ツールを管理し、特定のオペレーションデータを、特定の切削エッジを持つ特定の切削ツールに関連付けることを援助し得る。
【0028】
本開示の目的は、従来技術における、上記に特定する欠点と、不都合な点と、の1つ又はそれ以上を、単一で、又は、いずれかの組み合わせにて和らげ、軽減し、又は、無くすことを探し求める切削ツールと、システムと、方法と、コンピュータプログラム製品と、を提供することである。
【0029】
本開示は、少なくとも第1の切削エッジ21と、第1の切削エッジ21に配置された少なくとも第1の識別マーカ41と、を含む切削ツール20を提案する。
図1aから
図1dは、本開示のいくつかの態様に係る異なる切削ツールを示す。異なる種類の切削ツールがある。切削ツールの例として、切削インサート、ミリングカッター、ソリッドエンドミル、旋削ツール、削孔ツール、ボーリングヘッド、リーミングツール、スレッド旋削ツール、スレッドミリングツール、及びスレッドタッピングツールなどが挙げられる。
【0030】
少なくとも第1の識別マーカ41は、第1の切削エッジ情報データ1ceIDに関連付けられているマシン可読コードである。これは、少なくとも第1の切削エッジ21を、第1の切削エッジ情報データ1ceIDを使用して特定できることを意味する。1つの態様によると、切削エッジ情報データは、固有のアイデンティティである。1つの態様によると、切削エッジ情報データは、数字、及び/又は、図と文字との組み合わせである。1つの態様によると、切削エッジ情報データは、シリアルナンバーである。切削ツール20が製品寿命においてどのポイントにあるかによって、切削エッジ情報データは、以下にさらに詳述する、さらなる情報を含んでよい。
【0031】
図1dに示す切削ツール20は、第1の切削エッジ21と、第1の切削エッジ21に配置された第1の識別マーカ41と、を含む。1つの態様によると、切削ツール20は、
図1aから
図1cに示すような複数の切削エッジを含む。
【0032】
1つの態様によると、切削ツール20は、第2の切削エッジ22と、第2の切削エッジ22に配置された第2の識別マーカ42と、をさらに含み、第2の識別マーカ42は、第2の切削エッジ情報データ2ceIDに関連付けられているマシン可読コードである。これは、第1の切削エッジ21を、第1の切削エッジ情報データ1ceIDを使用して特定でき、第2の切削エッジ22を、第2の切削エッジ情報データ2ceIDを使用して特定できることを意味する。換言すると、異なる切削エッジは異なる識別マーカを有し、各切削エッジを、個別の切削エッジ情報データに関連付けることができる。
【0033】
1つの態様によると、第1の識別マーカ41は、第1の識別マーカ41から第2の切削エッジ22までの距離より短い、第1の切削エッジ21までの距離にて、切削ツール20上に配置されており、第2の識別マーカ42は、第2の識別マーカ42から第1の切削エッジ21までの距離より短い、第2の切削エッジ22までの距離にて、切削ツール20上に配置されている。これを、
図1aから
図1cに示す。識別マーカのこの配置の1つの利点は、オペレータ又はマシンが、特定の識別マーカに関連付けられているのはどの切削エッジかを判定できることである。オペレータは、特定の識別マーカが、特定の切削エッジに関連付けられていることを、切削ツールを目視することによって容易に判定できる。例えば、カメラセンサと画像処理とを利用するマシンもまた、特定の識別マーカが、特定の切削エッジに関連付けられていることを、例えば、切削エッジまでの距離を判定する物体認識を使用して判定できる。
【0034】
1つの態様によると、少なくとも第1の識別マーカ41は、二次元コード、三次元コード、画像、クイックレスポンス(QR:Quick Response)コード、大容量色付き二次元コード(HCCTDC:High Capacity Colored Two Dimensional Code)、ヨーロッパ商品識別(EAN:European Article Number)コード、DataMatrixコード、又はMaxiCodeの少なくともいずれか、又は、これらの少なくともいずれかの組み合わせである。これは、少なくとも第1の識別マーカ41が、マシンにより、切削ツール20上において視覚的に可読であり、例えば、切削ツールを扱うオペレータにより視覚的に検出可能でもあることを意味する。
【0035】
1つの態様によると、少なくとも第1の識別マーカ41は、業界標準マシン可読コードである。1つの態様によると、少なくとも第1の識別マーカ41は、企業内部のマシン可読コードである。1つの態様によると、少なくとも第1の識別マーカ41は、オープンソースマシン可読コードである。
【0036】
1つの態様によると、少なくとも第1の識別マーカ41は、異なる色を使用して適用される。1つの態様によると、少なくとも第1の識別マーカ41は、切削ツールにて、切削エッジの近くにエッチングされる、又は、切削エッジの表面にエッチングされる。
【0037】
1つの態様によると、マシン可読コードと切削エッジ情報データとの間の関連は、具体的な識別マーカに対する既知のアルゴリズムにより画定される。1つの態様によると、切削エッジ情報データは、識別マーカの外観を判定する、具体的な識別マーカのための既知のアルゴリズムを使用してコード化される。
【0038】
本開示は、切削ツール20の少なくとも第1の切削エッジ21のトレーサビリティを上げるためのシステム100をさらに提案する。
図2aから
図2cは、本開示のいくつかの態様に係る異なるシステムを示す。
【0039】
システム100は、マシン可読コードを読み出すためのリーダデバイス10a、10b、10cを含む。1つの態様によると、リーダデバイス10a、10b、10cは、カメラベースのリーダ、ビデオカメラリーダ、フォトダイオード付きペン型リーダ、レーザスキャナ、電荷結合素子(charge-coupled device又はCCD)リーダ、又は携帯電話のカメラのいずれかである。リーダデバイス10a、10b、10cは、電子デバイス1a、1b、1cに統合されたコンポーネント、又は、スタンドアローンコンポーネントであってよい。システムは、リーダデバイス10a、10b、10cに接続されるよう構成されている電子デバイス1a、1b、1cをさらに含む。1つの態様によると、電子デバイス1a、1b、1cは、通信ネットワーク50に接続されるよう構成されている。
図2aは、スマートフォン、タブレット、セルラーフォン、フィーチャーフォン、又はいずれかの携帯電子デバイスの形態である電子デバイス1aを示す。
図2aに示す1つの例では、リーダデバイス10aは、スマートフォン1aのカメラである。
【0040】
電子デバイスはまた、インストールされている電子デバイス1b、例えば、
図2bに示すような、マシンの一部であってよい。
図2bに示す1つの例では、リーダデバイス10bは、電子デバイス1bに接続されており、マシンの一部としてインストールされているスタンドアローンリーダデバイスである。1つの態様によると、電子デバイスは、通信ネットワーク50を介してリーダデバイス10cに接続されたリモートサーバ1cである。
【0041】
1つの態様によると、電子デバイス1a、1b、1cは、メモリ103a、103b、103cをさらに含む。1つの態様によると、1つの電子デバイス1a、1b、1cは、通信ネットワーク50を介して別の電子デバイス1a、1b、1cに接続されるよう構成されている。1つの例では、通信ネットワーク50は、
図2aから
図2cに示すように、無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network又はWLAN)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Ultra-Wideband、近距離無線通信(Near Field Communication又はNFC)、無線自動識別(Radio Frequency Identification又はRFID)、又は同様のネットワークなどの、標準化された無線ローカルエリアネットワークである。1つの例では、通信ネットワーク50は、グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーションズ(Global System for Mobile Communications又はGSM)、拡張GSM(Extended GSM)、汎用パケット無線サービス(General Packet Radio Service又はGPRS)、GSM進化型高速データレート(Enhanced Data Rates for GSM Evolution又はEDGE)、広帯域符号分割多重アクセス(Wideband Code Division Multiple Access又はWCDMA)、ロングタームエボリューション(Long Term Evolution又はLTE)、狭帯域インターネットオブシングス(Narrowband-IoT)、5G、ワールドワイドインターオペラビリティフォーマイクロウェーブアクセス(Worldwide Interoperability for Microwave Access又はWiMAX)、ウルトラモバイルブロードバンド(Ultra Mobile Broadband又はUMB)、又は同様のネットワークなどの、標準化された無線ワイドエリアネットワークである。通信ネットワーク50はまた、ローカルエリアネットワークとワイドエリアネットワークとの双方の組み合わせとすることもできる。通信ネットワーク50はまた、有線ネットワークとすることもできる。1つの態様によると、通信ネットワーク50は、共通のインターネットプロトコル(Internet Protocol又はIP)により画定される。1つの態様によると、電子デバイス1a、1b、1cは、別の電子デバイス1a、1b、1cにおけるメモリ103a、103b、103cに、通信ネットワーク50を介して接続されるよう構成されている。
【0042】
電子デバイス1a、1b、1cは、少なくとも1つの処理回路102a、102b、102cを有する。少なくとも1つの処理回路102a、102b、102cは、システム100に、リーダデバイス10a、10b、10cにより、切削ツール20上の少なくとも第1の識別マーカ41を検出させるよう構成されている。少なくとも第1の識別マーカ41は、マシン可読コードである。処理回路102a、102b、102cは、続いて、システム100に、リーダデバイス10a、10b、10cにより、少なくとも第1の識別マーカ41を読み出させ、少なくとも第1の識別マーカ41をデコードさせ、少なくとも第1の識別マーカ41のマシン可読コードに含まれる少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDを判定させるようさらに構成されている。
【0043】
処理回路102a、102b、102cは、続いて、システム100に、第1の切削ツール識別データ1ctIDを、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDに少なくとも基づいて生成させ、少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの少なくともいずれかをメモリ103a、103b、103cに保存させるようさらに構成されている。このシステムの1つの利点は、生成される第1の切削ツール識別データ1ctIDが、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDに基づいていることである。これは、生成される第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの間に関連性があることを意味する。1つの態様によると、第1の切削ツール識別データ1ctIDは、第1の切削エッジ情報データ1ceIDに含まれる固有のアイデンティティに基づいている。1つの例では、第1の切削エッジ情報データ1ceIDは、シリアルナンバー、例えば、ABCD12345である。第1の切削ツール識別データ1ctIDは、このシリアルナンバーに基づいて、例えば、「2019/04/15 15:36 ABCD12345」のように、第1の切削ツール識別データ1ctIDが生成された際の実際の時間である2019/04/15 15:36を加えることによって生成される。
【0044】
別の例では、第1の切削エッジ情報データ1ceIDは、シリアルナンバー、例えば、ABCD12345である。第1の切削ツール識別データ1ctIDは、このシリアルナンバーに基づいて、例えば、「12009800 ABCD12345」のように、第1の切削ツール識別データ1ctIDが生成された際のカスタマオーダーナンバーである12009800を加えることによって生成される。換言すると、第1の切削ツール識別データ1ctIDが生成された際の瞬間から、切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの間の関連性がある。
【0045】
1つの態様によると、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDは、固有のアイデンティティと製造情報データとを含む。1つの例では、切削ツールの製造業者は、切削エッジ情報データを、固有のアイデンティティ、例えば、シリアルナンバーに基づいて生成し、これに、製造日時、材料データ、及びオーブンデータなどの製造データを加える。
【0046】
1つの態様によると、処理回路102a、102b、102cは、システム100に、リーダデバイス10a、10b、10cにより、切削ツール20上の第2の識別マーカ42を検出させるようさらに構成されている。第2の識別マーカ42は、マシン可読コードである。処理回路102a、102b、102cは、続いて、システム100に、リーダデバイス10a、10b、10cにより、第2の識別マーカ42を読み出させ、第2の識別マーカ42をデコードさせ、第2の識別マーカ42のマシン可読コードに含まれる第2の切削エッジ情報データ2ceIDを判定させるようさらに構成されている。処理回路102a、102b、102cは、続いて、システム100に、第1の切削ツール識別データ1ctIDを、第1の切削エッジ情報データ1ceIDと第2の切削エッジ情報データ2ceIDとに基づいて生成させるようさらに構成されている。このシステムの1つの利点は、したがって、生成される第1の切削ツール識別データ1ctIDが、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDと第2の切削エッジ情報データ2ceIDとに基づいていることである。これは、生成される第1の切削ツール識別データ1ctIDと、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDと第2の切削エッジ情報データ2ceIDと、の間に関連性があることを意味する。
【0047】
1つの態様によると、第1の切削ツール識別データ1ctIDは、第1の切削エッジ情報データ1ceIDに含まれる固有のアイデンティティと、第2の切削エッジ情報データ2ceIDに含まれる固有のアイデンティティと、に基づいている。1つの例では、第1の切削エッジ情報データ1ceIDは、シリアルナンバー、例えば、ABCD12345である。第2の切削エッジ情報データ2ceIDは、シリアルナンバー、例えば、EFGH67890である。第1の切削ツール識別データ1ctIDは、これらシリアルナンバーの双方に基づいて、例えば、「2019/04/15 15:36 ABCD12345 EFGH67890」のように、第1の切削ツール識別データ1ctIDが生成された際の実際の時間である2019/04/15 15:36を加えることによって生成される。
【0048】
別の例では、第1の切削エッジ情報データ1ceIDは、シリアルナンバー、例えば、ABCD12345である。第2の切削エッジ情報データ2ceIDは、シリアルナンバー、例えば、EFGH67890である。第1の切削ツール識別データ1ctIDは、これらシリアルナンバーの双方に基づいて、「12009800 ABCD12345 EFGH67890」のように、第1の切削ツール識別データ1ctIDが生成された際のカスタマオーダーナンバーである12009800を加えることによって生成される。換言すると、第1の切削ツール識別データ1ctIDが生成された際の瞬間から、切削ツール識別データ1ctIDと、第1の切削エッジ情報データ1ceIDと第2の切削エッジ情報データ2ceIDと、の間の関連性がある。
【0049】
1つの態様によると、切削ツール20を製造する際に、製造業者は、切削ツール20上に存在する各切削エッジ情報データに基づいている第1の切削ツール識別データ1ctIDを生成するために、切削ツール20上に載置されている、各切削エッジ上に存在するすべての識別マーカを使用する。換言すると、第1の切削ツール識別データ1ctIDを生成する際に、切削ツール20上に存在する各切削エッジの各切削エッジ情報データとの関連性がある。これは、切削ツール20の寿命の間に、後の時点にて特定の切削エッジをトレースできるようにするために、望ましい場合がある。
【0050】
1つの態様によると、システム100は、少なくとも第1の切削エッジ21を含む切削ツール20をさらに含む。切削ツール20は、切削ツールホルダ19において載置されるよう構成されている。これは、一片の材料の処理のために、切削ツールを、マシンの切削ツールホルダ19に載置できることを意味する。1つの態様によると、切削ツール20は、ツールホルダ19をさらに含む。
【0051】
本開示は、切削ツール20の少なくとも第1の切削エッジ21のトレーサビリティを上げるための方法をさらに提案する。1つの態様によると、ここに説明するシステム100は、以下に説明する方法のいずれか又はそれ以上の態様を実行するよう構成されている。方法のステップを
図3に示す。
【0052】
この方法は、リーダデバイス10a、10b、10cにより、切削ツール20上の少なくとも第1の識別マーカ41を検出することS1を含む。少なくとも第1の識別マーカ41は、マシン可読コードである。この方法は、リーダデバイス10a、10b、10cにより、少なくとも第1の識別マーカ41を読み出すことS2aと、少なくとも第1の識別マーカ41をデコードし、少なくとも第1の識別マーカ41のマシン可読コードに含まれる少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDを判定することS3aと、をさらに含む。この方法は、続いて、第1の切削ツール識別データ1ctIDを、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDに少なくとも基づいて生成することS4aと、少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの少なくともいずれかをメモリ103a、103b、103cに保存することS7と、をさらに含む。この方法の1つの利点は、生成される第1の切削ツール識別データ1ctIDが、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDに基づいていることである。これは、生成される第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの間に関連性があることを意味する。
【0053】
1つの態様によると、この方法は、リーダデバイス10a、10b、10cにより、切削ツール20上の、マシン可読コードである第2の識別マーカ42を検出することS1bと、続いて、リーダデバイス10a、10b、10cにより、第2の識別マーカ42を読み出すことS2bと、続いて、第2の識別マーカ41をデコードし、第2の識別マーカ42のマシン可読コードに含まれる第2の切削エッジ情報データ2ceIDを判定することS3bと、をさらに含む。この方法は、続いて、第1の切削ツール識別データ1ctIDを、第1の切削エッジ情報データ1ceIDと第2の切削エッジ情報データ2ceIDとに基づいて生成することS4bをさらに含む。この方法のこの態様の1つの利点は、生成される第1の切削ツール識別データ1ctIDが、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDと第2の切削エッジ情報データ2ceIDとに基づいていることである。これは、生成される第1の切削ツール識別データ1ctIDと、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDと第2の切削エッジ情報データ2ceIDと、の間に関連性があることを意味する。
【0054】
1つの態様によると、この方法は、少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの少なくともいずれかに関連付けられる少なくとも第1のオペレーションデータ1ODの入力を受信することS5と、少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの少なくとも1つに関連付けられている少なくとも第1のオペレーションデータ1ODをメモリ103a、103b、103cに保存することS8と、をさらに含む。これは、第1のオペレーションデータ1ODを保存でき、これを、少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの少なくとも1つに関連付けることができ、第1のオペレーションデータ1ODが、後の時点にて、少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDとの少なくとも1つの知識を用いて検索回収できるようになることを意味する。
【0055】
1つの態様によると、少なくとも第1のオペレーションデータ1ODの入力は、オペレータによる、電子デバイス1a、1b、1cのユーザインタフェース400a、400b、400cを介しての入力である。1つの態様によると、少なくとも第1のオペレーションデータ1ODの入力は、電子デバイス1a、1b、1cに接続されたマシンからの入力である。
【0056】
1つの態様によると、少なくとも第1のオペレーションデータ1ODは、「オペレーションデータの準備」である。1つの例では、オペレーションデータの準備は、バッチナンバーデータ、製造日時データ、材料組成データ、オーブン識別データ、製造プラントデータ、材料調達データ、連絡先情報データ、部品識別データ、オーダー識別データなどの製造データに関する。
【0057】
1つの態様によると、少なくとも第1のオペレーションデータ1ODは、「アフターオペレーションデータ」である。1つの例では、アフターオペレーションデータは、マシン識別データ、使用日時データ、材料ハンドリングデータ、ランタイムデータ、温度データ、毎分あたりの回転数データ、材料識別データ、オペレータ識別データ、マシン識別データ、カスタマ識別データ、フリーテキストデータなどの、カスタマによる使用に関する。
【0058】
図5は、第1の切削ツール識別データ1ctIDから判定できる関連例を示す。
図5の例では、第1の切削ツール識別データ1ctIDは、5つの異なる切削エッジ情報、すなわち、1ceID=AB01、2ceID=AB02、3ceID=AB03、4ceID=AB04、及び5ceID=AB05に基づいて生成される。
図5の例では、第1の切削ツール識別データ1ctIDは、第1のオペレーションデータ1OD=RT10hと、第2のオペレーションデータ2OD=RT35hと、にさらに関連付けられている。
【0059】
1つの態様によると、この方法は、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDと少なくとも第1のオペレーションデータ1ODとの少なくとも1つに関連付けられている少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDを含む少なくとも第1の関連データ1ADを生成することS6と、少なくとも第1の関連データ1ADをメモリ103a、103b、103cに保存することS9と、をさらに含む。これは、少なくとも第1の関連データ1ADを、少なくとも第1の切削エッジ情報データ1ceIDと少なくとも第1のオペレーションデータ1ODとのいずれかの知識を用いて、少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDを識別するために使用できること、又は、少なくとも第1の関連データ1ADを、少なくとも第1の切削ツール識別データ1ctIDの知識を用いて、第1の切削エッジ情報データ1ceIDと少なくとも第1のオペレーションデータ1ODとの少なくともいずれかを識別するために使用できることを意味する。
図5を、第1の関連データ1ADを示すために再度使用する。
図5の例では、第1の関連データ1ADは、複数の切削ツール識別データ、すなわち、1ctID、2ctID、3ctID、4ctID、及び5ctIDと、第1の切削ツール識別データ1ctIDと、第1のオペレーションデータ1OD=RT10hと、第2のオペレーションデータ2OD=RT35hと、の間に可能なすべての関連を含む。
【0060】
1つの態様によると、この方法は、リーダデバイス10a、10b、10cにより、切削ツール20上の少なくとも第1の識別マーカ41を検出することS10と、続いて、リーダデバイス10a、10b、10cにより、少なくとも第1の識別マーカ41を読み出すことS11と、少なくとも第1の識別マーカ41をデコードし、少なくとも第1の識別マーカ41のマシン可読コードに含まれる第1の切削エッジ情報データ1ceIDを判定することS12と、をさらに含む。この方法は、続いて、メモリ103a、103b、103cから、第1の切削エッジ情報データ1ceIDに関連付けられている第1の切削ツール識別データ1ctIDと、第1の切削エッジ情報データ1ceIDに関連付けられている少なくとも第1のオペレーションデータ1ODと、の少なくともいずれかを検索回収することS13をさらに含む。換言すると、少なくとも第1の識別マーカ41をリーダデバイス10a、10b、10cを用いて読み出すことにより、第1の切削ツール識別データ1ctIDと少なくとも第1のオペレーションデータ1ODとのいずれかについての情報を、メモリ103a、103b、103cから検索回収できる。1つの例を、
図5を参照して示す。この例では、リーダデバイス10a、10b、10cは、第2の識別マーカ42を読み出し、第2の識別マーカ42のマシン可読コードに含まれる第2の切削エッジ情報データ2ceIDを判定する。
図5の例では、第2の切削エッジ情報データ2ceID=AB02である。ここで、「AB02」は、第1の切削ツール識別データ1ctIDに関連付けられているため、読み出した識別マーカ、この場合は、第2の識別マーカ42が、第1の切削ツール識別データ1ctIDを持つ切削ツール20に属することを判定できる。第1の切削ツール識別データ1ctIDは、4つの他の切削エッジ情報データにさらに関連付けられているため、切削ツール20が、切削エッジ識別データ1ceID、3ceID、4ceID、及び5ceIDに関連付けられている4つの切削エッジをさらに含むことを判定できる。
図5の例では、切削ツール20がまた、第1のオペレーションデータと第2のオペレーションデータとに関連付けられていることをさらに判定できる。
【0061】
換言すると、1つの使用事例では、オペレータは、リーダデバイス10a、10b、10cを使用し、いずれかの識別マーカを読み出し、切削ツール識別データとオペレーションデータと、などの関連付けられた情報を判定してよい。1つの例では、24の異なる切削エッジを持つ切削ツールの1つの切削エッジにある1つの識別マーカを読み出すことにより、切削ツール上の他の23の切削エッジのそれぞれについての情報を、例えば、そのような切削ツールに関連付けられているオペレーションデータ、又は、あらゆる切削エッジに関連付けられているオペレーションデータと共に検索回収できる。
【0062】
特に、これは、切削ツールの製造業者が、切削ツール識別データを、具体的な切削ツールのあらゆる切削エッジのあらゆる切削エッジ情報データに基づいて生成する際に可能である。
【0063】
1つの態様によると、この方法は、ユーザインタフェース400a、400b、400cを介して、第1の切削ツール識別データ1ctIDと、第1の切削エッジ情報データ1ceIDと、少なくとも第1のオペレーションデータ1ODと、の少なくともいずれかを表示することS14をさらに含む。これは、オペレータが、検索回収した情報を、ユーザインタフェース400a、400b、400cを介して見ることができることを意味する。
【0064】
特に、これは、切削ツールの切削エッジのトレーサビリティに有益である。1つの例では、切削ツールは、一片の材料を期待したように処理しておらず、機能していない。オペレータは、リーダデバイスを使用して、特定の切削エッジについての情報を検索回収してよい。材料組成データを含む、オペレーションデータの準備などのオペレーショナルデータは、ランタイムデータを含むアフターオペレーションデータなどのオペレーションデータと共に、オペレータに、又は、例えば、切削ツールの製造業者に、この切削ツール上のこの切削エッジがなぜ、期待したように機能しなかったかについての、特定の理解を与えてよい。切削エッジを製造する際の材料組成が、切削エッジがさらされた合計ランタイムに対して意図したものでは無かったことがわかる場合がある。製造業者はこの場合、例えば、特定の加工に対して、他の切削エッジを持つ別の切削ツールを推奨するだけでなく、特定のランタイムにさらされた際の特定の材料組成の切削エッジに何が起こるかをも学び得る。
【0065】
図6は、本開示のいくつかの態様に係る、それぞれが固有の切削エッジ情報データを持つ切削ツール例を示す。1つの態様によると、切削ツールを製造する際に、切削ツール識別データはまだ生成されていないが、各切削ツールには、切削エッジ情報データに関連付けられているマシン可読コードである識別マーカが提供されている。これは、各切削エッジを、切削エッジ情報データを使用して識別できることを意味する。1つの態様によると、切削エッジ情報データは、固有のアイデンティティである。
図6に示す例では、1000の切削ツールのバッチが製造される。第1の切削ツール、これを、Aと示す、には、固有の、この例では#AA0001と#AA0002との、切削エッジ情報データにそれぞれ関連付けられている2つの識別マーカが提供されている。第2の切削ツール、これを、Bと示す、には、固有の、この例では#AA0003と#AA0004との、切削エッジ情報データにそれぞれ関連付けられている2つの識別マーカが提供されている。バッチの最後の切削ツール、これを、Cと示す、にはまた、固有の、この例では#AA1999と#AA2000との、切削エッジ情報データにそれぞれ関連付けられている2つの識別マーカが提供されている。
【0066】
1つの態様によると、この方法は、少なくとも1つの処理回路102a、102b、102cを有する電子デバイス1a、1b、1cにて行われる。
【0067】
本開示は、
図4に示すような、プログラム命令を含むコンピュータプログラムを有する非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品500をさらに提案する。コンピュータプログラムは、処理回路102a、102b、102cにロード可能であり、そのコンピュータプログラムが処理回路102a、102b、102cにより実行されると、本方法と、本方法のいずれかの態様と、を実行するよう構成されている。
【0068】
1つの態様によると、システム100は、ここに説明する方法の態様のいずれか又はそれ以上を実行するよう構成されている。本開示の1つの態様によると、この方法は、システム100においてダウンロードされて実行されるソフトウェアプログラムにおける命令により実行される。
【0069】
図面及び明細書では、例示的実施形態を開示する。しかし、これらの実施形態には、多くの変形及び変更を行うことができる。結果として、具体的な用語を採用しているものの、これらは、包括的かつ説明的な意味において使用され、以下の特許請求の範囲により画定される実施形態の範囲を限定することを目的としていない。