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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/463 20210101AFI20241205BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241205BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20241205BHJP
【FI】
H01M50/463 B
H01M50/449
H01M10/0585
H01M10/052
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021567287
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046640
(87)【国際公開番号】W WO2021131878
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019236698
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 渥史
(72)【発明者】
【氏名】渡部 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄
(72)【発明者】
【氏名】戸出 晋吾
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026943(JP,A)
【文献】特開2016-197505(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110556495(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極芯体、及びその正極芯体上に配置された正極活物質を有する複数の正極と、
負極芯体、及びその負極芯体上に配置された負極活物質を有する複数の負極と、
1以上のセパレータと、
前記セパレータにおける少なくとも厚さ方向の一方側面に面積密度が略一定になるように塗布された接着剤と、を備え、
前記正極と前記負極が、前記セパレータを介して交互に積層される積層部を含み、
前記接着剤において接着している部分の面積が、前記積層部における積層方向の外側の方が前記積層方向の内側よりも大きく、
前記接着剤は、複数のドット状部分で構成され、
前記セパレータに塗布されている前記ドット状部分の個数密度が、略一定である、二次電池。
【請求項2】
縦軸を、接着剤において接着している接着部分の面積とする一方、横軸を、層数として、前記横軸において、隣り合う層数の間を同一の間隔で離間して形成した二次元座標に、接着剤において接着している接着部分の面積と、層数とをプロットした場合において、プロットした複数の点を滑らかにつないだスプライン曲線が、前記積層部を、積層数が少ない第1領域と、積層数が大きい第2領域と、積層数が第1領域と第2領域の間にある第3領域とに3等分した場合における前記第3領域に前記接着部分の面積が最も小さい極小値を有する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記スプライン曲線の第4領域における最大の変化率が、前記第4領域よりも前記積層数の内側領域に位置する第5領域の最小の変化率の1/3よりも小さくなるという条件を満たす前記第4領域及び前記第5領域が存在する、請求項に記載の二次電池。
【請求項4】
前記積層部における前記セパレータの積層数が奇数の場合、一番外側の2つの前記セパレータの厚さの夫々が、前記積層部において積層数が真ん中の前記セパレータの厚さの90%以上の厚さを有し、
前記積層部における前記セパレータの積層数が偶数の場合、一番外側の2つの前記セパレータの厚さの夫々が、前記積層部において積層数が真ん中の2つの前記セパレータのうちで厚さが大きい方の前記セパレータの当該厚さの90%以上の厚さを有する、請求項1からのいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項5】
前記積層部のセパレータ厚みと、前記積層部以外のセパレータ厚みの差から求められるセパレータの厚さ方向のつぶれ量が、前記積層部以外のセパレータ厚みと比較して5%以下である、請求項1からのいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項6】
前記セパレータが、少なくとも厚さ方向の一方側に耐熱層を有し、
前記一方側面が、前記耐熱層で構成される、請求項1からのいずれか1つに記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池はさまざまな場面において需要が高まっている。中でも非水電解質を使用したリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度が得られることから注目されている。その形態の1つとして特許文献1のような二次電池がある。この形態の二次電池には、正極板と負極板とをセパレータを介して複数層積層した偏平形状電極体を外装体に挿入する。正極板は正極合材層が正極芯体の両面に設けられており、負極板は負極合材層が負極芯体の両面に設けられている。正極活物質および負極活物質はそれぞれリチウムイオンの挿入・脱離が可能な構造をしている。セパレータは多孔性物質であり、リチウムイオンを透過させることができる一方、正極板と負極板の電気的接触による短絡を防止している。
【0003】
正極板および負極板はそれぞれ集電板と電気的に接続され、外装体に挿入される。外装体は電解液を注入後に封止される。この二次電池は、セパレータの収縮による正負極間の直接接触が発生しないよう、セパレータの表面に接着層を設け、熱圧着を行うことにより正極板/セパレータ間および負極板/セパレータ間を接着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-26943号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の二次電池では、接着剤の塗布量と面積が異なるセパレータを使用して、接着層の溶融ムラを防止し、イオン透過性差を低減させているが、接着剤の塗布量と面積が異なる複数のセパレータが必要であるため、生産性を高くしにくい。
【0006】
更には、特に、車載向け二次電池においては高い耐久性が求められるため、電解質の保持量を電極体の積層方向の位置によらずに均一できると好ましい。
【0007】
上記課題を解決するため、本開示に係る二次電池は、正極芯体、及びその正極芯体上に配置された正極活物質を有する正極と、負極芯体、及びその負極芯体上に配置された負極活物質を有する負極と、1以上のセパレータと、セパレータにおける少なくとも厚さ方向の一方側面に面積密度が略一定になるように塗布された接着剤と、を備え、正極と負極が、セパレータを介して交互に積層される積層部を含み、接着剤において接着している部分の面積が、積層部における積層方向の外側の方が積層方向の内側よりも大きい。
【0008】
なお、「接着剤において接着している部分の面積が、積層部における積層方向の外側の方が積層方向の内側よりも大きい」という要件は、二次電池が積層型の電極体を有する場合、積層部において最も外側に位置する2つのセパレータの夫々に塗布された接着剤において接着している部分の面積が、積層部において中央に位置する1又は2のセパレータ(積層数が奇数のときは、1つのセパレータ、積層数が偶数のときには、2つのセパレータ)に塗布された接着剤において接着している部分の面積よりも大きければ充足するものとする。
【0009】
また、「接着剤において接着している部分の面積が、積層部における積層方向の外側の方が積層方向の内側よりも大きい」という要件は、二次電池が巻回型の電極体を有する場合、セパレータにおいて最外周に位置する部分に塗布された接着剤において接着している部分の面積が、セパレータにおいて最内周に位置する部分に塗布された接着剤において接着している部分の面積よりも大きければ充足するものとする。
【0010】
また、二次電池が、積層型の電極体を有する場合、積層部は、積層方向から見たとき、正極、負極、セパレータが全て重なっている領域としてもよい。又は、積層部は、電極体や電極群でもよい。また、二次電池が、巻回型の電極体を有する場合でも、電極体が偏平型である場合、電極体を偏平にプレスするプレス板と平行な方向の局所領域については、正極、負極、及びセパレータが、セパレータが正極と負極の間に配置された状態で積層された構造となる。したがって、二次電池が、巻回型の電極体を有する場合、そのような周方向の局所領域を積層部とすることができ、その場合においては、最内周側に位置するセパレータと最外周側に位置するセパレータを確定できる。
【0011】
本開示によれば、積層方向の位置によらずに電解質の保持量を均一にし易くて劣化しにくく、量産性にも優れる二次電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る角形二次電池の斜視図である。
図2図2は、上記角形二次電池を構成する電極体及び封口板の斜視図である。
図3図3は、上記角形二次電池の電極体の分解斜視図である。
図4図4は、図2のA-A線断面を模式的に示す図である。
図5A図5Aは、第1の電極群の積層方向の外側の一部を高さ方向に略直交する平面で切断したときの拡大模式断面図である。
図5B図5Bは、第1の電極群の一部において正極を剥がした状態を示す図である。
図6A図6Aは、第1の電極群の積層方向の内側の一部を高さ方向に略直交する平面で切断したときの拡大模式断面図である。
図6B図6Bは、第1の電極群の一部において正極を剥がした状態を示す図である。
図7A図7Aは、1実施例の二次電池で、剥がした正極に転写した接着部分を示す模式平面図であり、積層方向の外側の正極に転写した接着部分を示す模式平面図である。
図7B図7Bは、1実施例の二次電池で、剥がした正極に転写した接着部分を示す模式平面図であり、積層方向の内側の正極に転写した接着部分を示す模式平面図である。
図8図8は、積層群中の層数と、正極の一方側面積に対する転写面積の割合との関係を示すグラフであり、接着剤転写面積比を示すグラフである。
図9図9は、図8の全ての測定点を通過するスプライン曲線を示すグラフである。
図10図10は、層数と、セパレータの厚さとの関係を示すグラフであり、点が、熱板によるプレス前のセパレータの厚さを表し、実線が、熱板によるプレス後のセパレータの厚さを表すグラフである。
図11図11は、他の実施形態の巻回型の角形二次電池の平面図である。
図12図12は、巻回型の角形二次電池の正面図である。
図13図13(a)は、図1のA-A線部分断面図であり、図13(b)は、図13(a)のB-B線部分断面図であり、図13(c)は、図13(a)のC-C線断面図である。
図14A図14Aは、巻回型の角形二次電池が含む正極の平面図である。
図14B図14Bは、巻回型の角形二次電池が含む負極の平面図である。
図15図15は、巻回型の角形二次電池が含む偏平状の巻回電極体の巻回終了端側を展開した斜視図である。
図16A図16はA、積層型の電極体と、巻回型の電極体と対応関係を説明する模式図である。
図16B図16Bは、積層型の電極体と、巻回型の電極体と対応関係を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本明細書で、「数値A~数値B」との記載は、「数値A以上数値B以下」を意味する。また、以下の説明では、外装缶14、140の高さ方向を二次電池10、110の「上下方向」とし、封口板15側、123側を「上」、外装缶14、140の底部側を「下」とする。また、封口板15、123の長手方向に沿う方向を二次電池10、110の「横方向」とする。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態に係る角形二次電池10の斜視図であり、図2は角形二次電池10を構成する電極体11及び封口板15の斜視図(外装缶14を取り除いた状態を示す図)である。図1及び図2に示すように、角形二次電池(以下、単に二次電池という)10は、外装体として、外装缶14と封口板15を含む角形容器を備えるが、外装体はこれに限定されない。
【0015】
図1及び図2に示すように、二次電池10は、電極体11と、電解質と、電極体11及び電解質が収容される有底筒状の外装缶14と、正極端子12及び負極端子13が取り付けられ、外装缶14の開口部を塞ぐ封口板15とを備える。後で、図3を用いて詳述するが、電極体11は、正極20と負極30がセパレータ40を介して交互に積層された構造を有する。外装缶14は高さ方向一端が開口した扁平な略直方体形状の金属製角形容器である。外装缶14及び封口板15は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属材料で構成される。
【0016】
電解質は、水系電解質であってもよいが、好ましくは非水電解質で、本実施形態では非水電解液を用いる。非水電解液は、例えば、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。
【0017】
封口板15には、上記の通り、正極端子12及び負極端子13が取り付けられている。封口板15は、細長い矩形形状を有し、長手方向一端側に正極端子12が、封口板15の長手方向他端側に負極端子13がそれぞれ配置されている。正極端子12及び負極端子13は、他の二次電池10や負荷に対して電気的に接続される外部接続端子であり、絶縁部材を介して封口板15に取り付けられる。
【0018】
後で詳述するが、正極20は正極端子12と電気的に接続される正極タブ23を含み、負極30は負極端子13と電気的に接続される負極タブ33を含む。正極端子12は正極集電板25を介して、複数の正極タブ23が積層されてなる正極タブ群24と電気的に接続され、負極端子13は負極集電板35を介して、複数の負極タブ33が積層されてなる負極タブ群34と電気的に接続される。
【0019】
封口板15には、機能部品として、電池の異常発生時に電流経路を切断するための電流遮断装置18が設けられている。機能部品は、例えば、二次電池10の安全装置又は制御装置として機能する部品である。機能部品は、封口板15の内面において正極端子12又は負極端子13に近接配置される。本実施形態では、電流遮断装置18が正極端子12に付随し、正極端子12の内側に配置されている。
【0020】
電流遮断装置18は、二次電池10に異常が発生して外装缶14の内圧が所定の圧力を超えて上昇した場合に電流経路を遮断する圧力感知式の安全装置である。電流遮断装置18は、例えば、正極端子12と正極集電板25の間に配置され、通常使用時において正極端子12及び正極集電板25と電気的に接続されている。電流遮断装置18の構造は特に限定されないが、一例としては、内圧上昇時に正極集電板25から離れる方向に反転して正極集電板25との電気的接続を切断し、正極端子12と正極集電板25の電流経路を遮断する反転板を含む装置が挙げられる。
【0021】
また、封口板15には、非水電解液を注入するための注液部16、及び電池の異常発生時に開弁してガスを排出するためのガス排出弁17が設けられる。ガス排出弁17は封口板15の長手方向中央部に、注液部16は正極端子12とガス排出弁17の間にそれぞれ配置されている。
【0022】
図2に例示するように、電極体11は、第1の電極群11Aと第2の電極群11Bに分割されている。電極群11A,11Bは、例えば、互いに同じ積層構造、寸法を有し、電極体11の厚み方向に積層配置される。各電極群の上端部には、複数の正極タブ23からなる正極タブ群24、及び複数の負極タブ33からなる負極タブ群34が形成され、封口板15の各集電板にそれぞれ接続されている。電極群11A,11Bの外周面はセパレータ40で覆われ、また電極群11A,11Bで独立した電池反応が起こるように構成されている。
【0023】
図3は、電極体11の分解斜視図である。図3に例示するように、電極体11は、複数の正極20と、複数の負極30とを含む。電極体11を構成する電極群11A,11Bには、例えば、負極30が正極20よりも1枚多く含まれ、電極群11A,11Bの厚み方向両側に負極30が配置される。図3では、正極20と負極30の間に1枚ずつ配置される複数のセパレータ40を図示しているが、電極群11A,11Bに含まれるセパレータ40はそれぞれ1枚ずつであってもよい。この場合、長尺状のセパレータ40が九十九折りされて正極20と負極30の間に配置される。後で詳細に説明するが、本実施形態では、電極群11A,11Bの夫々は、接着剤を含み、熱プレス工程を用いて作製される。より詳しくは、電極群11A,11Bの夫々は、複数の正極20と複数の負極30がセパレータ40を介して1枚ずつ交互に積層してなる積層体を、一対の熱板を用いて積層方向にプレスすることで、積層体に熱と圧力を付与し、接着剤の少なくとも一部が接着力を発現する状態にすることで作製される。
【0024】
電極体11は、そのように作製された電極群11A及び電極群11Bを備え、複数の正極20と複数の負極30がセパレータ40を介して1枚ずつ交互に積層されてなる積層型の電極体である。正極20は上方に突出した正極タブ23を含み、負極30は上方に突出した負極タブ33を含む。言い換えると、正極20及び負極30は、各タブが同じ方向を向くように積層配置される。また、正極タブ23が電極体11の横方向一端側に、負極タブ33が電極体11の横方向他端側にそれぞれ位置すると共に、複数の正極タブ23が電極体11の厚み方向に並び、複数の負極タブ33が電極体11の厚み方向に並ぶように積層配置される。
【0025】
正極20は、正極芯体と、正極芯体の表面に設けられた正極合材層とを有する。正極芯体には、アルミニウム、アルミニウム合金など正極20の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質、導電材、及び結着材を含み、正極芯体の両面に設けられることが好ましい。正極20は、例えば正極芯体上に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合材層を正極芯体の両面に形成することにより作製できる。
【0026】
正極20は、正極芯体の表面のうち正極タブ23を除く部分(以下、「基部」とする)の全域に正極合材で構成される正極合材層が配置された構造を有する。正極芯体の厚みは、例えば5μm~20μmであり、好ましくは8μm~15μmである。正極芯体の基部は正面視四角形状を有し、当該四角形の一辺から正極タブ23が突出している。一般的には、1枚の金属箔を加工して基部と正極タブ23が一体成形された正極芯体が得られる。
【0027】
正極活物質には、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。リチウム遷移金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。中でも、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有することが好ましい。好適な複合酸化物の一例としては、Ni、Co、Mnを含有するリチウム遷移金属複合酸化物、Ni、Co、Alを含有するリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
【0028】
正極合材層に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合材層に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0029】
負極30は、負極芯体と、負極芯体の表面に設けられて、負極合材で構成される負極合材層とを有する。負極芯体には、銅などの負極30の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質及び結着材を含み、負極芯体の両面に設けられることが好ましい。負極30は、例えば負極芯体の表面に負極活物質、及び結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層を負極芯体の両面に形成することにより作製できる。
【0030】
負極30は、負極芯体の表面のうち負極タブ33を除く部分である基部の全域に負極合材層が形成された構造を有する。負極芯体の厚みは、例えば3μm~15μmであり、好ましくは5μm~10μmである。正極20の場合と同様に、負極芯体の基部は正面視四角形状を有し、当該四角形の一辺から負極タブ33が突出している。一般的には、1枚の金属箔を加工して基部と負極タブ33が一体成形された負極芯体が得られる。
【0031】
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素系活物質が用いられる。好適な炭素系活物質は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛(MAG)、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛などの黒鉛である。また、負極活物質には、Si及びSi含有化合物の少なくとも一方で構成されるSi系活物質が用いられてもよく、炭素系活物質とSi系活物質が併用されてもよい。
【0032】
負極合材層に含まれる結着材には、正極20の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることもできるが、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いることが好ましい。また、負極合材層は、さらに、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)などを含むことが好ましい。中でも、SBRと、CMC又はその塩、PAA又はその塩を併用することが好適である。
【0033】
図4は、図2のA-A線断面を模式的に示す図である。以下、図2及び図4を参照しながら、電極体11の正極タブ群24及び負極タブ群34の構成について詳説する。図2及び図4に示すように、電極体11は、正極タブ23が複数積層されてなる正極タブ群24と、負極タブ33が複数積層されてなる負極タブ群34とを有する。正極タブ群24は、複数の正極タブ23を電極の積層方向に重ね合わせて、電極群11A,11B毎に1つずつ形成されている。同様に、負極タブ群34は、複数の負極タブ33を電極の積層方向に重ね合わせて、電極群11A,11B毎に1つずつ形成されている。
【0034】
正極タブ群24は、封口板15の内面(下面)に取り付けられた正極集電板25に溶接等により接合される。正極集電板25は、上記のように、電流遮断装置18を介して正極端子12と電気的に接続される板状の導電部材である。封口板15と正極集電板25の間には絶縁部材26が介在し、両部材の接触が防止されている。同様に、負極タブ群34は、絶縁部材を介して封口板15の内面に取り付けられた負極集電板35に溶接等により接合される。
【0035】
正極タブ群24及び負極タブ群34は、電極体11と各端子をつなぐ導電経路として機能する限り、その形状は特に限定されない。図2及び図4に示す例では、電極群11Aの複数の正極タブ23及び複数の負極タブ33が、二次電池10の外側から内側に向かって湾曲した状態でそれぞれ積層され、断面視略U字状の正極タブ群24及び負極タブ群34が形成されている。同様に、電極群11Bにも、断面視略U字状のタブ群が形成されている。なお、各タブ群は、二次電池10の内側から外側に向かって湾曲したU字形状を有していてもよい。そして、図4のように2つの積層された電極群のタブ群は、一方の電極群のタブ群の断面形状に対して他方の電極群のタブ群の断面形状が電極群の境界線で略対称となるように配置されてもよい。
【0036】
正極タブ群24は、正極集電板25の封口板15側に向いた上面に溶接されてもよいが、好ましくは正極集電板25の下面に溶接される。本実施形態では、正極タブ群24及び負極タブ群34のいずれも、集電板の下面に溶接されているが、例えば、正極タブ群24が正極集電板25の下面に溶接され、負極タブ群34が負極集電板35の上面に溶接されてもよい。また、本実施形態では、電極体11が、分割された第1の電極群11A及び第2の電極群11Bを含む場合について説明したが、電極体は、分割されていない1つの電極群を有してもよい。
【0037】
例えば、封口板15を、外装缶14の開口部に嵌合し、電極体11が取り付けられた封口板15と外装缶14との嵌合部をレーザ溶接する。その後、外装缶14内に注液部16を用いて非水電解液を注液し、その後、注液部16をブラインドリベットで封止することで二次電池10が形成される。
【0038】
次に、第1の電極群11Aの構造及びセパレータ40について更に詳細に説明する。なお、第2の電極群11Bは、第1の電極群11Aの構造と同一の構造を有するため、その構造の説明は、省略する。図5Aは、第1の電極群11A(以下、単に、電極群11Aという)の積層方向の外側の一部を高さ方向に略直交する平面で切断したときの拡大模式断面図であり、セパレータ40の一部と、正極20の一部と、以下で説明する接着剤50において接着している接着部分50aを含む拡大模式断面図である。
【0039】
図5Aに示すように、セパレータ40は、基材40aと、基材40aの厚さ方向の一方に設けられた耐熱層40bを有する。基材40aは、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートで構成される。セパレータ40は、例えばポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、及びアラミドから選択される少なくとも1種を主成分とする多孔質基材で構成されてもよく、ポリオレフィンが好ましく、特にポリエチレン、及びポリプロピレンで構成されると好ましい。耐熱層40bは、正極20と負極30とが短絡して熱が生じた際にセパレータ40を保護する目的等のために設けられる。耐熱層40bは、アルミニウム酸化物等の無機物粒子等を含み、例えば、セラミック耐熱層等で構成される。
【0040】
電極群11Aは、接着剤50を更に備える。詳しくは、蒸着等の既存の方法で基材40aの厚さ方向の一方側面の全面に耐熱層40bを設けた後、耐熱層40bが設けられたセパレータ40の一方側面の全域及び耐熱層40bが設けられていないパレータ40の他方側面の全域に、面積密度が略一定になるように複数のドット状の接着剤(ドット状の部分)を印刷等により配置する。ここで、複数のドット状の接着剤において、各ドット状の接着剤の量は、略同一である。また、ドット状の接着剤の個数密度は、セパレータ40の一方側面の全域及び他方側面の全域の全てで略一定である。なお、接着剤50の塗工形態は、ドット状に塗る形態でなく、セパレータの全面に塗る形態でもよい。すなわち、接着剤は、セパレータの一方側面の全面及び他方側面の全面の少なくとも一方に面積密度が略一定になるように配置され、セパレータの少なくとも一方側面上に接着層が設けられる構成でもよい。接着剤50としては、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン-酢酸ビニル樹脂系接着剤、又はエポキシ樹脂系接着剤を用いることができる。
【0041】
本実施例では、接着剤が配置されたセパレータ40の一方側面が正極20に対向するように、正極20と負極30をセパレータ40を介して交互に積層して積層体を形成した後、積層方向の一方側と他方側に配置した熱板で、積層体に積層方向の両側から圧力及び熱を付与することで、接着剤の一部を溶融させる。このようにして、セパレータ40と正極20を接着剤で接着すると共に、セパレータ40と負極30を接着剤で接着することで、セパレータ40が正極20及び負極30に対して位置ずれして、発電性能が低下することを防止している。
【0042】
熱板の温度としては、用いた接着剤が溶融する温度以上であれば如何なる温度を使用してもよい。また、2つの熱板から積層体に印加する圧力としては、従来用いられている圧力よりも低い圧力を用いるのが好ましい。詳しくは、本開示の二次電池10では、積層体に付与する温度及び圧力の組として、少なくとも積層体において積層方向の中央部に位置するセパレータ(又はセパレータ部分(九十九折のセパレータの場合))に塗布された接着剤の一部が溶融せず接着面積が大きくならない温度及び圧力の組を意図的に用いる。
【0043】
図6Aは、そのような温度及び圧力の組を用いて積層体のプレスを行った場合における電極群11Aの積層方向の内側の一部を高さ方向に略直交する平面で切断したときの拡大模式断面図であり、セパレータ40の一部と、正極20の一部と、接着剤50において接着している接着部分50bを含む拡大模式断面図である。なお、図5A図6A、以下で説明する図5B、及び以下で説明する図6Bでは、分かり易いように、接着剤50において接着に寄与していない部分の図示を省略している。
【0044】
図5A及び図6Aに示すように、そのような温度及び圧力の組を用いて積層体のプレスを行った結果、本開示の二次電池10の場合では、積層方向の内側のセパレータ(又は積層方向の内側のセパレータ部分)において接着剤50のうちで接着に寄与している接着部分50bの体積(面積)が、積層方向の外側のセパレータ(又は積層方向の外側のセパレータ部分)において接着剤50のうちで接着に寄与している接着部分50aの体積(面積)よりも小さくなる。
【0045】
従来、セパレータに塗布した接着剤の一部を溶融しない物理条件にすると、せっかく塗布した接着剤の一部が効力を発現せず、材料費の増大につながるため、そのような物理条件でプレス工程を行うことはなかった。しかし、本願発明者は、従来、回避された構成を意図的に採用すれば、材料費の増大という問題を遥かに凌駕する顕著な作用効果を獲得できることを見出した。以下に、二次電池がそのような状態になっていることを確認できる方法、及びその顕著な作用効果について二次電池の1実施例として非水電解質二次電池を用いて説明する。
【0046】
[二次電池の1実施例]
本発明者は、1実施例二次電池を作製した。1実施例の二次電池では、次のように、正極、負極、及びセパレータを作製し、非水電解質の調製を行った。また、作製した正極、負極、及びセパレータを用いて次のように電極体を作製し、電池の組立を行った。
【0047】
<正極の作製>
厚さ13μmのアルミニウム箔の両面に、正極合材層を形成した。正極合材層の厚みは、圧縮処理後、片面で62μmとした。正極板の短手方向の長さは、76.5mmとした。正極芯体が露出した集電タブ部の幅(短手方向の長さ)は19.6mmとした。正極板の長手方向の長さは138.9mmとした。正極合材層は、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物と、導電材としてのアセチレンブラックと、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、質量比97:2:1の割合で含むようにした。
【0048】
<負極の作製>
厚さ8μmの銅箔の両面に、負極合材層を形成した。負極合材層の厚みは、圧縮処理後、片面で76μmとした。また、負極板の短手方向の長さは、78.2mmとした。負極芯体が露出した集電タブ部の幅(短手方向の長さ)は18.2mmとした。また、負極板の長手方向の長さは142.8mmとした。また、負極合材層は、負極活物質としての黒鉛と、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比で98:1:1で含むようにした。
【0049】
<セパレータ>
セパレータはポリエチレン単層基材の片面にセラミック耐熱層をコートし、その両面にアクリル系樹脂から成る接着層をドット上に塗布したものを使用した。セパレータの基材層厚みは12μm、耐熱層厚みは4μmとし、幅は80.7mmとした。ここで、一個のドット状の接着剤の量は、略同一になるようにした。全てのドット状の接着剤が略同一になるようにした。また、ドット状の接着剤の個数密度は、セパレータの一方側面及び他方側面の全域で略一定になるようにした。
【0050】
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比(25℃、1気圧)で30:30:40となるように混合した混合溶媒を作製した。この混合溶媒にLiPFを1.15mol/Lとなるように添加して非水電解液とした。
【0051】
<電極体の作製>
正極板の積層数が35層、負極板の積層数が36層となるようにした。正極および負極の集電タブ部がそれぞれ互いに重ならないように、1枚のセパレータを九十九折りにして互いに絶縁させて正極および負極を積層して積層体を作製した。その後、積層体の積層方向の両側から100℃に設定された熱板を用いて積層体に2MPaの圧力を付与して一方の電極群を作製した。また、同一の方法で他方の電極群も作製した。
【0052】
<電池の組立>
複数枚積層された正極芯体露出部は、正極集電体を介して正極端子に電気的に接続した。また、複数枚積層された負極芯体露出部は、負極集電体を介して負極端子に電気的に接続した。正極端子と負極端子は、それぞれ絶縁部材を介して封口体に固定した。封口体は所定の圧力が加わったときに開放されるガス排出弁が設けられている。正極集電体と正極端子及び封口体は、それぞれアルミニウム又はアルミニウム合金製のものを用いた。負極集電体及び負極端子は、それぞれ銅又は銅合金製のものを用いた。電極体は、2つの電極群を重ねた状態で封口体に接合した後、樹脂材料で形成した絶縁シートが周囲に介在している状態で一面が開放された外装缶に挿入した。外装缶は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金製のものを用いた。封口体を、外装缶の開口部に嵌合し、封口体と外装缶との嵌合部をレーザ溶接した。封口体は、アルミニウム又はアルミニウム合金製のものを用いた。外装缶内には電解液注液口から上記非水電解液を注液し、その後、電解液注液口をブラインドリベットにより封止することで、外形寸法が幅148mm×高さ91mm×厚み26.5mmの角形非水電解質二次電池を作製した。
【0053】
<試験内容>
上記1実施例の二次電池に用いられる電極群に関し、次の試験を行った。詳しくは、熱板を用いたプレス工程を行った後のセパレータから各正極を引き剥がし、積層方向に対する接着剤転写率を測定した。セパレータの耐熱層と基材との接着力は、5~7N/m程度の比較的弱い力である。したがって、正極をセパレータから引き剥がしたとき、接着剤において接着している接着部分は、正極及び耐熱層から剥がれず、耐熱層が基材から剥がれる。すなわち、図5B及び図6Bに示す電極群において、セパレータ40から正極20を引き剥がすと、図5B及び図6Bに示すように、接着部分50a,50bが、正極20及び耐熱層40bから剥がれず、耐熱層40bにおいて接着部分50a,50bに接着している部分がセパレータ40から切り離されて、接着部分50a,50bと共にセパレータ40から分離する。
【0054】
すなわち、接着剤50の接着部分50a,50bが正極に転写する。よって、引き剥がした正極20に転写している接着部分50a,50bの面積を測定することで、各正極20における接着部分50a,50bの面積を特定できる。このことを、図7A図7Bを用いて説明する。図7A図7Bは、1実施例の二次電池で、剥がした正極20に転写した接着部分を示す模式平面図であり、図7Aは、積層方向の外側の正極20に転写した接着部分を示す模式平面図であり、図7Bは、積層方向の内側の正極20に転写した接着部分を示す模式平面図である。本開示の二次電池の電極群では、熱板を用いたプレス工程で、プレスする圧力を小さくしているため、積層方向の内側の接着剤が溶融しにくくなり、接着材において接着力を発現しない非接着部分の割合が大きくなる。すなわち、図7A,図7Bに示すように、積層方向の内側と外側で正極20に転写する接着部分50a,50bの面積が変動する。このことから、引き剥がした正極20に転写している接着部分の面積を測るだけで、本開示の二次電池が作製されているか否かを判定できる。
【0055】
<試験結果>
図8図10は、試験結果を示すグラフである。詳しくは、図8は、積層群中の層数(積層方向の一方側から何番目の正極であるかを表す番号)と、正極の一方側面積に対する転写面積の割合との関係を示すグラフであり、接着剤転写面積比を示すグラフである。また、図9は、図8の全ての測定点を通過するスプライン曲線を示すグラフである。ここで、スプライン曲線とは、有限個の点列が与えられたとき、それらを通る滑らかな曲線であり、CAD等の形状設計において広く使われている曲線である。また、スプライン曲線を表す関数は、スプライン関数と呼ばれている。なお、以下では、スプライン曲線を用いて本開示の技術の技術的範囲を規定する場合があるが、その規定は、その規定を満足するスプライン曲線が少なくとも1つ存在すれば充足されるものとする。すなわち、スプライン曲線を規定するスプライン関数には、基本スプライン(B-スプライン)、カーディナルスプライン(C-スプライン)、自然スプライン(N-スプライン)などの複数の種類がある。そのような背景において、本明細書では、以下に説明するスプライン曲線に関する規定を充足しているか否かの判定に関し、そのスプライン曲線に関する規定を充足していると共に一端から他端まで微分可能で滑らかなスプライン曲線が少なくとも1つでも存在すれば、その規定が充足されているものとする。ここで、一端及び他端で微分可能か否かの判定に関し、それらの端の夫々において、右微分及び左微分のうちの一方が可能であれば、微分可能であるものとする。また、図10は、層数(積層方向の一方側から何番目の極板間に存在する部分であるかを表す番号)と、セパレータの厚さとの関係を示すグラフであり、点は、熱板によるプレス前のセパレータの厚さを表し、実線は、熱板によるプレス後のセパレータの厚さを表す。
【0056】
なお、図8図10は、一試験例の結果であるが、これと類似の結果を、獲得できる電極群は、容易に作製できる。詳しくは、そのような電極群は、熱板でプレスを行う際、積層体において積層方向の中央部に位置するセパレータ(又はセパレータ部分(九十九折のセパレータの場合))に塗布された接着剤の一部が溶融せず接着面積が大きくならない温度及び圧力を付与すれば容易に作製でき、熱板でプレスを行う際に付与する温度及び圧力の無数の組みで容易に作製できる。更に述べると、そのような電極群は、用いる接着剤が溶融する下限の周辺温度でプレスを行うことで容易に作製でき、また、全ての接着剤を溶融させる際に付与する圧力の9割以下の圧力でプレス工程を行うことにより容易に作製できる。
【0057】
1実施例では、図8に示すように、積層部において最も外側に位置する2つのセパレータの夫々に塗布された接着剤において接着している部分の面積が、積層部において中央に位置するセパレータに塗布された接着剤において接着している部分の面積よりも大きくなっている。
【0058】
また、図9に示すように、スプライン曲線が、電極群を、積層数が少ない(積層始めに近い部分)第1領域A1と、積層数が大きい(積層終わりに近い部分)第2領域A2と、積層数が第1領域A1と第2領域A2の間にある第3領域A3とに3等分した場合における第3領域A3に、接着部分の面積が最も小さい極小値を有する箇所Pを有する。
【0059】
また、図9に示すように、スプライン曲線の第4領域A4における最大の変化率が、第4領域A4よりも積層数の内側領域に位置する第5領域A5の最小の変化率の1/3よりも小さくなるという条件を満たす、第4領域A4及び第5領域A5が存在している。
【0060】
また、1実施例では、図10に示すように、一番外側の2つのセパレータの厚さの夫々が、積層群において積層数が真ん中のセパレータの厚さの80%以上の厚さを有している。またプレス工程前のセパレータの厚さと比較してプレス工程後のセパレータの厚さ方向のつぶれ量の最大が、1.0μm程度(プレス工程後の厚さ方向のつぶれ量はプレス工程前のセパレータ厚さと比較して7%以下)となっている。なお、発明者らが行った他の試験例では、一番外側の2つのセパレータの厚さの夫々を、積層群において積層数が真ん中のセパレータの厚さの90%以上にすることができた。更には、プレス工程後のセパレータの厚さ方向のつぶれ量の最大を、プレス工程前のセパレータ厚さと比較して5%以下にすることもできた。なお、セパレータのつぶれ量は、積層部のセパレータがプレス工程で圧力を受ける前のセパレータ厚みと、圧力を受けた後のセパレータの厚みの差からから求めることができる。具体的には、プレス工程前後のそれぞれの電極群からセパレータを取り出し、セパレータの厚みの差から求めることができる。また、プレス工程後の積層群であっても、積層部以外のセパレータの厚みをプレス工程前の厚みとみなし、積層部のセパレータ厚みとの差からもセパレータのつぶれ量を求めることができる。
【0061】
<好ましい構成と、各構成から導出される作用効果>
以上、本開示によれば、接着剤の塗布量と面積が異なるセパレータを使用する特許文献1の二次電池と異なり、セパレータにおける厚さ方向の一方側面に面積密度が略一定になるように接着剤を塗布しているので、複数の種類のセパレータでなくて、1種類のセパレータのみを用いて二次電池を作製でき、二次電池を量産することができる。
【0062】
また、積層部の一例である電極群11A,11Bを作製する際の熱プレス工程で、従来、材料費の増大につながるとして回避されてきた条件、すなわち、積層方向内側のセパレータ(又はセパレータ部分(九十九折のセパレータの場合))に塗布された接着剤の一部が溶融せず接着面積が大きくならない温度及び圧力の条件を意図的に用いているので、電解質(例えば、電解液)が浸透しにくい積層方向内側領域の電極間の隙間を、積層方向外側よりも広げることができて、電極群11A,11Bの積層方向内側の電解質浸透性を向上させることができ、電解質の保持量を積層方向の存在位置によれず均一な値に近づけることができる。したがって、二次電池の発電性能を高くできるだけでなく、積層方向の存在位置で反応速度差が生じることも抑制でき、その結果、二次電池の耐久性を向上できる。
【0063】
更には、そのような、積層方向内側のセパレータに塗布された接着剤の一部が溶融せず接着面積が大きくならない温度及び圧力の条件を用いて二次電池を作製すると、結果として、従来、熱プレス構成で、潰れ易かった外側のセパレータの潰れ(厚さ方向の潰れ)の度合を抑制することができる。よって、積層方向の外側のセパレータと内側のセパレータの厚み差も抑制できて、外側のセパレータの潰れに起因する透気度上昇も抑制でき、この点からも、積層方向の存在位置で反応速度差を抑制できる。よって、この点からも、二次電池の耐久性を向上できる。
【0064】
また、接着剤50は、複数のドット状部分で構成されてもよい。また、セパレータ40に塗布されているドット状部分の個数密度が、略一定でもよい。
【0065】
本構成によれば、接着剤50をセパレータ40に面積密度が略一定になるように容易に配置することができる。
【0066】
また、縦軸を、接着剤50において接着している接着部分の面積とする一方、横軸を、層数として、横軸において、隣り合う層数の間を同一の間隔で離間して形成した二次元座標に、接着剤において接着している接着部分の面積と、層数とをプロットした場合において、プロットした複数の点を滑らかにつないだスプライン曲線が、電極群(積層部)を、積層数が少ない(積層始めに近い部分)第1領域A1と、積層数が大きい(積層終わりに近い部分)第2領域A2と、積層数が第1領域A1と第2領域A2の間にある第3領域A3とに3等分した場合における第3領域A3に接着部分の面積が最も小さい極小値を有してもよい。
【0067】
本構成によれば、内側領域における広範囲の領域の隙間を大きくでき、電解質の保持量を積層方向の存在位置によらずより均一な値に近づけることができる。
【0068】
また、スプライン曲線の第4領域A4における最大の変化率が、第4領域A4よりも積層数の内側領域に位置する第5領域A5の最小の変化率の1/3よりも小さくなるという条件を満たす第4領域A4及び第5領域A5が存在するようにしてもよい。
【0069】
電解質の電解質浸透性は、積層方向の内側領域では、内側に行くにしたがって急激に悪化する傾向がある。
【0070】
本構成によれば、積層方向の内側領域で、積層方向の内側領域に行くにしたがって電極間隙間を急激に大きくすることができる。よって、内側に行くにしたがって急激に悪化する電解質浸透性を相殺するような電極間隙間を形成できるので、電解質の保持量を積層方向の存在位置によらず、精度高く均一な値に近づけることができる。
【0071】
また、積層部(例えば、電極群や電極体で構成できる)におけるセパレータの積層数が奇数の場合、一番外側の2つのセパレータ(セパレータ部分)の厚さの夫々が、積層部において積層数が真ん中のセパレータ(セパレータ部分)の厚さの90%以上の厚さを有し、積層部におけるセパレータの積層数が偶数の場合、一番外側の2つのセパレータ(セパレータ部分)の厚さの夫々が、積層部において積層数が真ん中の2つのセパレータ(セパレータ部分)のうちで厚さが大きい方のセパレータ(セパレータ部分)の当該厚さの90%以上の厚さを有するようにしてもよい。
【0072】
本構成によれば、積層方向の外側のセパレータと内側のセパレータの厚み差が小さいので、外側のセパレータの潰れに起因する透気度上昇を抑制でき、二次電池の耐久性を向上できる。
【0073】
また、積層部のセパレータ厚みと積層部以外のセパレータ厚みの差から求められるセパレータの厚さ方向のつぶれ量が、積層部以外のセパレータ厚みと比較して5%以下でもよい。
【0074】
本構成においても、積層方向の外側のセパレータと内側のセパレータの厚み差が小さいので、外側のセパレータの潰れに起因する透気度上昇を抑制でき、二次電池の耐久性を向上できる。
【0075】
また、セパレータ40が、少なくとも厚さ方向の一方側に耐熱層40bを有し、セパレータ40の一方側面が、耐熱層40bで構成されてもよい。
【0076】
本構成によれば、上述の方法で、セパレータ40に転写している接着部分の面積を容易に測定できる。なお、電極体や電極群に含まれる耐熱層がないセパレータにおける接着剤の接着面積を特定する際には、耐熱層を追加した点のみが異なり、同じ温度、同じ圧力でプレス工程を行った電極体や電極群を作製する。そして、その作製した電極体や電極群において本明細書で説明した手法を用いて接着面積を特定する。
【0077】
なお、上記電極群11A,11Bでは、セパレータ40の一方側面のみに耐熱層40bを設けたが、セパレータの一方側面に加えて他方側面にも耐熱層を設けてもよい。又は、セパレータは、耐熱層を有さなくてもよい。
【0078】
また、上記電極群11A,11Bでは、セパレータ40の一方側面と他方側面の両面に接着剤を塗布したが、セパレータの一方側面のみに接着剤を塗布してもよい。
【0079】
また、セパレータ40の一方側面に接着剤からなる複数のドット状領域を設けるようにしたが、セパレータの少なくとも一方側面の全面に面積密度が略一定になるように接着剤を塗布してもよい。
【0080】
また、上述のスプライン曲線が、上述の第3領域に接着部分の面積が最も小さい極小値を有さなくてもよい。又は、上述のスプライン曲線が、積層方向を5等分した場合における真ん中の中央領域に、接着部分の面積が最も小さい極小値を有する箇所を有してもよい。また、上述の第4領域における最大の変化率が、第4領域よりも積層数の内側領域に位置する第5領域の最小の変化率の1/3よりも小さくなるような第領域及び第領域が存在しなくてもよい。
【0081】
また、積層方向の外側のセパレータの厚さが、積層方向の中央のセパレータの厚さの90%未満でもよく、積層部のセパレータ厚みと積層部以外のセパレータ厚みの差から求められるセパレータの厚さ方向のつぶれ量が、積層部以外のセパレータ厚みと比較して5%以下であってもよい。
【0082】
以上、二次電池が、積層型の電極体を備える場合について説明した。次に、二次電池が、巻回型の電極体を備える場合について説明する。図11は、巻回型の角形二次電池110の平面図であり、図12は、角形二次電池110の正面図である。また、図13(a)は、図11のA-A線部分断面図であり、図13(b)は、図13(a)のB-B線部分断面図であり、図13(c)は、図13(a)のC-C線断面図である。また、図14Aは、角形二次電池110が含む正極の平面図であり、図14Bは、角形二次電池110が含む負極の平面図である。また、図15は、角形二次電池110が含む偏平状の巻回電極体の巻回終了端側を展開した斜視図である。なお、巻回型の角形二次電池110の各部材の材料としては、上述の積層型の角形二次電池10の対応部材の材料と同一の材料を用いることができる。よって、以下の説明では、各部材の材料に関し、簡単に述べるか又は説明を省略する。
【0083】
図11図13、及び図15に示すように、角形二次電池110は、外装缶(角形外装缶)125(図11図13参照)と、封口板123(図11図13(a),図13(c)参照)と、偏平状の巻回電極体114(図13図15参照)とを備える。外装缶125は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、高さ方向一方側に開口部を有する。図12に示すように、外装缶125は、底部140、一対の第1側面141、及び一対の第2側面142を有し、第2側面142は、第1側面141よりも大きくなっている。図13(a)に示すように、封口板123は外装缶125の開口部に嵌合される。封口板123と外装缶125との嵌合部を接合することで、角形の電池ケース145が構成される。なお、巻回型の角形二次電池における各部材の材料としては、積層型の角形二次電池における対応部材の材料と同一の材料を採用することができる。よって、以下の巻回型の角形二次電池の説明では、各部材の材料に関し、簡単に述べるか又は説明を省略する。
【0084】
図15に示すように、巻回電極体114は、正極111と負極112とがセパレータ113を介して互いに絶縁された状態で巻回された構造を有する。巻回電極体114の最外面側はセパレータ113で被覆され、負極112は正極111よりも外周側に配置される。図14Aに示すように、正極111は、厚さが10~20μm程度のアルミニウム又はアルミニウム合金箔からなる帯状の正極芯体115の両面に正極合材スラリーを塗布し、乾燥及び圧延した後、所定寸法に帯状に切断する。正極合材スラリーは、正極活物質、導電剤、及び結着剤等を含む。このとき、幅方向の一方側の端部に、長手方向に沿って両面に正極合材層111aが形成されていない正極芯体露出部115aが形成されるようにする。この正極芯体露出部115aの少なくとも一方側の表面には、例えば正極合材層111aに隣接するように、正極芯体露出部115aの長さ方向に沿って正極保護層111bが形成されることが好ましい。正極保護層111bには、絶縁性無機粒子と結着剤とが含まれる。この正極保護層111bは、正極合材層111aよりも導電性が低い。正極保護層111bを設けることにより、異物等により負極合材層112aと正極芯体115との短絡を防止できる。また、正極保護層111bに導電性無機粒子を含有させることができる。なお、正極保護層111bは、設けられなくてもよい。
【0085】
一方、図14Bに示すように、負極112は、厚さが5~15μm程度の銅又は銅合金箔からなる帯状の負極芯体116の両面に負極合材スラリーを塗布し、乾燥及び圧延した後、所定寸法に帯状に切断する。負極合材スラリーは、負極活物質、及び結着剤等を含む。このとき、長手方向に沿って両面に負極合材層112aが形成されていない負極芯体露出部116aが形成されるようにする。なお、正極芯体露出部115aないし負極芯体露出部116aは、それぞれ正極111ないし負極112の幅方向の両側の端部に沿って形成してもよい。
【0086】
図15に示すように、正極芯体露出部115aと負極合材層112aが重ならないように、また、負極芯体露出部116aと正極合材層111aが重ならないように、正極111及び負極112を巻回電極体114の幅方向(正極111及び負極112の幅方向)にずらして配置される。そして、正極111及び負極112を、少なくとも厚さ方向の一方側面に面積密度が略一定となっている接着剤が塗布されているセパレータ113を挟んで互いに絶縁した状態で巻回して巻回体を形成する。そして、形成した巻回体を、一対の熱板で挟み込んで、内周側の接着剤の一部が溶融しなくて接着面積が大きくならない温度及び圧力条件でプレスして、偏平状に成形することで、偏平状の巻回電極体114が作製される。巻回電極体114は、巻回軸が延びる方向(帯状の正極111、帯状の負極112、及び帯状のセパレータ113を矩形状に展開したときの幅方向に一致)の一方側端部に複数枚積層された正極芯体露出部115aを備え、他方側端部に複数枚積層された負極芯体露出部116aを備える。セパレータ113としては、好ましくは、ポリオレフィン製の多孔性シートを使用できる。セパレータ113の幅は、正極合材層111a及び正極保護層111bを被覆できると共に負極合材層112aの幅よりも大きいことが好ましい。
【0087】
後で詳述するが、複数枚積層された正極芯体露出部115aは、正極集電体117(図13(a)参照)を介して正極端子118に電気的に接続され、複数枚積層された負極芯体露出部116aは、負極集電体119(図13(a)参照)を介して負極端子120に電気的に接続される。また、詳述しないが、図13(a)に示すように、正極集電体117と正極端子118との間には、電池ケース145の内部のガス圧が所定値以上となった時に作動する電流遮断機構127が設けられることが好ましい。
【0088】
図11図12及び図13(a)に示すように、正極端子118及び負極端子120の夫々は、絶縁部材121、122を介して封口板123に固定される。封口板123は、電池ケース145内のガス圧が電流遮断機構127の作動圧よりも高くなったときに開放されるガス排出弁128を有する。正極集電体117、正極端子118及び封口板123は、それぞれアルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、負極集電体119及び負極端子120は、それぞれ銅又は銅合金で形成される。図13(c)に示すように、偏平状の巻回電極体114は、封口板123側を除く周囲に絶縁性の絶縁シート(樹脂シート)124を介在させた状態で一面が開放された外装缶125内に挿入される。
【0089】
図13(b)及び図13(c)に示すように、正極111側では、巻回されて積層された複数枚の正極芯体露出部115aは、厚み方向の中央部に収束されてさらに2分割され、正極芯体露出部115aが収束され、その間に正極用中間部材130が配置される。正極用中間部材130は樹脂材料からなり、正極用中間部材130には、導電性の正極用導電部材129が、1以上、例えば2個保持される。正極用導電部材129は、例えば円柱状のものが用いられ、積層された正極芯体露出部115aと対向する両端部にプロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0090】
負極112側でも、巻回されて積層された複数枚の負極芯体露出部116aは、厚み方向の中央側に収束されてさらに2分割され、負極芯体露出部116aが収束され、その間に負極用中間部材132が配置される。負極用中間部材132は、樹脂材料からなり、負極用中間部材132には、負極用導電部材131が、1以上、例えば2個保持される。負極用導電部材131は、例えば円柱状のものが用いられ、積層された負極芯体露出部116aと対向する両端部に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0091】
正極用導電部材129と、その延在方向の両側に配置されている収束された正極芯体露出部115aは、接合され、収束された正極芯体露出部115aと、その電池ケース145の奥行方向外側に配置された正極集電体117も、接合されて電気的に接続される。また、同様に、負極用導電部材131と、その両側に配置されて収束されている負極芯体露出部116aは、接合され、収束された負極芯体露出部116aと、その電池ケース145の奥行方向外側に配置された負極集電体119も、接合されて電気的に接続される。正極集電体117の正極芯体露出部115a側とは反対側の端部は、正極端子118に電気的に接続され、負極集電体119の負極芯体露出部116a側とは反対側の端部は、負極端子120に電気的に接続される。その結果、正極芯体露出部115aが正極端子118に電気的に接続され、負極芯体露出部116aが負極端子120に電気的に接続される。
【0092】
巻回電極体114、正極及び負極用中間部材130,132、及び正極及び負極用導電部材129,131は接合され、一体構造を構成する。正極用導電部材129は、正極芯体115と同じ材料であるアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが好ましく、負極用導電部材131は、負極芯体116と同じ材料である銅又は銅合金製のものが好ましい。正極用導電部材129及び負極用導電部材131の形状は、同じであっても異なっていてもよい。
【0093】
正極芯体露出部115aと正極集電体117の接続、及び負極芯体露出部116aと負極集電体119の接続は抵抗溶接、レーザ溶接又は超音波溶接等を用いてもよい。また、正極用中間部材130及び負極用中間部材132を用いなくてもよい。
【0094】
図11に示すように、封口板123には電解液注液孔126が設けられる。正極集電体117、負極集電体119、及び封口板123等が取り付けられた巻回電極体114を、外装缶125内に配置する。このとき、巻回電極体114を箱状ないし袋状に成形した絶縁シート124内に配置した状態で、巻回電極体114を外装缶125内に挿入することが好ましい。その後、封口板123と外装缶125との嵌合部をレーザ溶接し、その後、電解液注液孔126から非水電解液を注液する。その後、電解液注液孔126を密封することで角形二次電池110を作製する。電解液注液孔126の密封は、例えばブラインドリベットや溶接等で実行される。
【0095】
なお、巻回電極体114が、その巻回軸が外装缶125の底部140と平行となる向きに配置される場合について説明したが、巻回電極体が、その巻回軸が外装缶125の底部140と垂直となる向きに配置される構成でもよい。
【0096】
以上、巻回型の角形二次電池110の一例について例示したが、上述の巻回型の角形二次電池110に限らず如何なる巻回型の角形二次電池においても、電解質(電解液)が中央の空洞側に浸透しにくいという課題がある。
【0097】
すなわち、図16A図16Bに対比して示しているように、積層型の電極体における積層方向(熱板でのプレス方向と一致)Aと、巻回型の電極体における熱板でのプレス方向Bは、互いに対応する。そして、巻回型の電極体においても、空洞側(内周側)のセパレータにおける接着剤の接着部分の面積を、外周側のセパレータにおける接着剤の接着部分の面積よりも小さくすると、積層型の電極群で説明した上述の顕著な作用効果を獲得できる。
【0098】
ここで、そのような巻回型の電極体は、積層型の電極群で詳細に説明したように、セパレータの厚さ方向の一方側面及び他方側面の少なくとも一方に、面密度が均一になるように接着剤を塗布し(例えば、上述のように、接着剤で構成された複数の同一のドット領域を印刷によりセパレータに面密度が均一になるように塗布する)、内周側の接着剤の一部が溶融しなくて、接着効果を発現しない、温度・圧力条件で、熱板によるプレス工程を行うことで容易に作製することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 二次電池
11 電極体
11A,11B 電極群
20,111 正極
21,115 正極芯体
30,112 負極
31,116 負極芯体
40,113 セパレータ
40a 基材
40b 耐熱層
50 接着剤
50a,50b 接着剤において接着している接着部分
110 角形二次電池
111a 正極合材層
112a 負極合材層
114 巻回電極体
A1 第1領域
A2 第2領域
A3 第3領域
A4 第4領域
A5 第5領域
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B