(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】多結晶シリコンを生成する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/035 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C01B33/035
(21)【出願番号】P 2021573424
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065165
(87)【国際公開番号】W WO2020249188
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンツァイス,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フィラー,ピオトル
(72)【発明者】
【氏名】シュレック,トーマス
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】塩谷 領大
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-128492(JP,A)
【文献】特開2011-84419(JP,A)
【文献】特開平7-301569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素に加えてシラン及び/又は少なくとも1つのハロシランを含む反応ガスを、気相堆積反応器の反応空間内に導入することを含む、多結晶シリコンを生成する方法であって、ここで、前記反応空間は、堆積によって上にシリコンが溶着して多結晶シリコン棒を形成する、少なくとも1つの加熱されたフィラメント棒を含み、ここで、堆積の間に、シリコン棒の形態を決定するために、
● 測定領域A
maxを含む、前記棒の表面の少なくとも1つのサーモグラフィック画像が作成され、
● 画像処理により、前記測定領域A
maxの第1部分領域及び第2部分領域への区分が行われ、ここで、第1部分領域A
tは、局所的平均温度値と比べて比較的高い温度T
tに対応し、かつ第2部分領域A
pは、局所的平均温度値と比べて比較的低い温度T
pに対応し、そして
● 形態指数Mは、
【数1】
によって決定され、
ここで、U、I、表面温度T
OF、反応ガス組成及び体積流量を含む群から選択される少なくとも1つのパラメータを変動させることによって、前記堆積は、
タイプBポリシリコンの生成のために、Mが0.1~1の値を有し、
タイプCポリシリコンの生成のために、Mが1~3の値を有し、又は、
タイプDポリシリコンの生成のために、Mが3~5の値を有するように制御され、ここで、Uは50~500Vの範囲であり、Iは500~4500Aの範囲であり、T
OFは950℃~1200℃の範囲であり、前記体積流量は1500~9000m3/hの範囲であり、かつ、前記反応器内への導入前の前記反応ガスは水素を50%~90%の割合で含む、方法。
【請求項2】
前記指数Mは、堆積の間
、一定に保たれる、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記指数Mの決定は、堆積全体の間に連続的に行われるか、又は堆積の間の種々の時点で不連続的に行われる、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記指数Mの決定は
、時間間隔で断続的に行われる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Mを決定するために、同じシリコン棒又は異なるシリコン棒の少なくとも2つのサーモグラフィック画像を作成する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記区分は、ランクフィル
タによって行われる、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定領域A
maxは、10~300cm
2
のサイズを有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶(polycrystalline)シリコンを生成する方法に関し、ここで、該方法においてシリコンの形態が指数Mに基づいて決定され、かつ該方法はMが0~5の値になるように制御される。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン(ポリシリコン)は、例えば、るつぼ引き上げ(チョクラルスキー又はCZ処理)によるか、又は帯域融解(フロートゾーン法)による、単結晶(single-crystal)(単結晶(monocrystalline))シリコンの生成における開始物質として寄与する。単結晶シリコンは、半導体産業において電子部品(チップ)の製造のために使用される。
【0003】
ポリシリコンはまた、例えば、ブロック鋳造プロセスによるマルチ結晶(multicrystalline)シリコンの生成のためにも必要とされる。ブロックの形態で得られたマルチ結晶シリコンは、太陽電池の製造のためにも使用され得る。
【0004】
ポリシリコンは、シーメンス法-化学蒸着法によって得られ得る。これは、電流の直接経路及びシリコン含有成分と水素とを含む反応ガスの導入による、ベル型反応器(シーメンス反応器)における支持体(通常、ポリシリコンからなる)の加熱を含む。シリコン含有成分は、一般に、モノシラン(SiH4)又は一般組成SiHnX4-n(n=0、1、2、3;X=Cl、Br、I)のハロシランである。これは、典型的にはクロロシラン又はクロロシラン混合物であり、通常、トリクロロシラン(SiHCl3、TCS)である。主に、SiH4又はTCSは水素との混合物で使用される。代表的なシーメンス反応器の構造は、例として、EP2077252A2又はEP2444373A1に記載されている。反応器の底(底プレート)には、一般に、支持体を受ける電極が配されている。支持体は、慣用的にシリコン製のフィラメント棒(細い棒)である。典型的には、2つのフィラメント棒が架橋(シリコン製)を介して連結し、電極を介した回路を形成する棒対を形成している。フィラメント棒の表面温度は、典型的には、堆積の間、1000℃を超える。これらの温度で反応ガスのシリコン含有成分は分解し、そして元素シリコンが蒸気相からポリシリコンとして堆積する。結果として、フィラメント棒及び架橋の径が増大する。棒が所定の径に達した後、通常、堆積は停止し、そして得られたポリシリコン棒は取り出される。架橋が取り出された後、ほぼ筒状であるシリコン棒が得られる。
【0005】
ポリシリコンの、すなわちポリシリコン棒及びそこから生成された塊の形態は、一般に、さらなる処理の間の性能に強い影響を有する。ポリシリコン棒の形態は、本来、堆積プロセスのパラメータ(例えば、棒温度、シラン及び/又はクロロシラン濃度、特定の流量)によって決定される。パラメータに依存して、孔及び溝までを含むはっきりした境界面が形成し得る。これらは、一般に、棒の内側に均質には分布しない。対照的に、異なる(通常、同心円の)形態的領域を有するポリシリコン棒が、例えば、EP2662335A1に記載されるように、パラメータを変動させることによって形成され得る。形態の棒温度に対する依存性は、例えば、US2012/0322175A1において表されている。この文献は、少なくとも1つのポリシリコン棒堆積の間の抵抗測定を介して、表面温度をモニタリングするための方法を記載する。しかし、該方法はシリコンの形態に関する結論を何ら認めず、むしろ均一な形態が不可欠である。
【0006】
ポリシリコンの形態は、緻密かつ滑らかであるものから多孔性で裂け目のあるものまでの範囲に及び得る。緻密なポリシリコンは、実質的に、罅、孔、つなぎ目及び裂け目がない。このタイプのポリシリコンの見かけ密度は、シリコンの真の密度と同等とされ得、又は、少なくとも真の密度の良好な近似値に相当し得る。シリコンの真の密度は、2.329g/cm3である。
【0007】
多孔性で裂け目のある形態は、特にポリシリコンの結晶化作用に対して否定的な結果をもたらす。このことは、単結晶シリコンを生成するためのCZ処理において、特に明らかである。この点で、裂け目のある多孔性のポリシリコンの使用は、経済的に受け入れ難い収量をもたらす。CZ処理において、特に緻密なポリシリコンは、一般に、より著しく高い収量をもたらす。しかし、緻密なポリシリコンの生成は、通常、よりゆっくりとした堆積プロセスが必要となるため、よりコストがかかる。加えて、全ての用途で特に緻密なポリシリコンの使用が必要であるわけではない。例えば、ブロック鋳造プロセスによるマルチ結晶シリコンの生成の際の形態の要件は、よりずっと低い。一般に、結晶化プロセス又はそのようなプロセスの特定の形態は、使用された開始物質が限界値を超えない形態を有するポリシリコンである場合に経済的最適条件に達する。
【0008】
したがって、ポリシリコンは純度及び塊サイズによってのみではなく、その形態によっても識別及び分類される。種々のパラメータが用語『形態』の範疇に含まれ得るので、例えば、気孔率(密閉気孔率及び開放気孔率の合計)、特定の表面積、粗さ、光沢及び色彩、形態の再現可能性の決定などは大きな課題となる。特にWO2014/173596A1において提案された堆積後のポリシリコン棒又は断片の視認評価は、表面の形態と著しく異なる可能性があるという欠点を有する。
【0009】
例えば、気孔率の決定のために、試験対象の体積を差異のある方法により決定してもよく、次いで、有効密度を相対密度と比較してもよい。もっとも単純な場合では、試験対象を満水コンテナ内に浸して、あふれ出した水の体積が試験対象の体積に相当する。ポリシリコンに適用する場合、酸化及び夾雑物混入を防ぎ、かつ表面を完全に濡らすために、好適な液体が使用されるべきである。特に、シーメンス法によって生成されたポリシリコン棒の場合、これは2~4mの間の長さを有し得るが、これにはかなりの努力が伴う。ポリシリコンの場合の密度測定のための選択肢は、例えば、WO2009/047107A2に記載される。形態のその後の検査の根本的な欠点は、堆積プロセスに影響を及ぼすほど遅く、それにより形態を制御することが難しいことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第2077252号明細書
【文献】欧州特許第2444373号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0322175号明細書
【文献】国際公開第2009/047107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ポリシリコンの生成及び加工をより効率的にするために、堆積の間にポリシリコンの形態を決定するための方法を提供するという目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、水素に加えてシラン及び/又は少なくとも1つのハロシランを含む反応ガスを、気相堆積反応器の反応空間内に導入することを含む、多結晶シリコンを生成する方法によって、達成される。ここで、反応空間は、堆積によって上にシリコンが溶着して多結晶シリコン棒を形成する、少なくとも1つの加熱されたフィラメント棒を含み、ここで、堆積の間に、シリコン棒の形態を決定するために、
● 測定領域A
maxを含む、棒の表面の少なくとも1つのサーモグラフィック画像が作成され、
● 画像処理により、測定領域A
maxの第1部分領域及び第2部分領域への区分が行われ、ここで、第1部分領域A
tは、局所的平均温度値と比べて比較的高い温度T
tに対応し、かつ第2部分領域A
pは、局所的平均温度値と比べて比較的低い温度T
pに対応し、そして
● 形態指数Mは、
【数1】
によって決定される。堆積は、Mが0~5の値になるように制御されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、既に記載されている通り、種々の形態を有するポリシリコンは堆積パラメータに依存して形成され得るが、ここで、境界面によって互いに分かれている異なる形態の領域は、同じポリシリコン棒の中で、特にその横断面の径方向に生じてもよい。形態は、ここでは、特に、穴、孔及び溝の頻度及び配置から生じるポリシリコンにおける裂け目の程度を意味すると理解される。形態はまた、互いに及び周囲とつながる全ての空洞と互いにつながっていない空洞との合計からなる、ポリシリコン全体の多孔性を意味すると理解され得る。全体の多孔性、すなわちポリシリコン全体の体積における全ての孔の体積(解放孔及び閉鎖孔)の割合は、DIN-EN 1936によって決定され得る。
【0014】
堆積の間の孔及び溝の形成は、ポップコーン様の表面構造から明らかである。側面から見ると、ポップコーン表面は、隆起(山)と溝(谷)との蓄積である。隆起及び溝は、堆積の間のその温度の点で異なっている。典型的には、このことは正に平らな表面においてのみ最適な測定結果が達成できるがゆえに、シリコン棒の表面温度TOFの決定の際の問題となる。しかし、ここで、正にシリコン表面における溝と隆起との間の温度差が、堆積の間の棒の形態に関する結論を下すことができることを見出した。
【0015】
本発明による方法において、形態は、少なくとも1つのサーモグラフィック画像を記録することによって堆積の間に直接的に決定され、ここで、高い温度の表面領域(くぼみ)の画像処理により、低い温度の表面領域から分けられる。次いで、形態指数Mが、式Iによって算出される。
【0016】
一般に、全体又は塊の形態のポリシリコン棒の、困難かつ通常は不正確な視認分析は、堆積後に必要ではない。サーモグラフィック画像もまた、何らかの場合に表面温度TOFを決定するために作成されるか、又は少なくとも同じ機器、特に高温計で作成され得るので、装置の要件は非常に低い。したがって、Mの決定は、多くの労力なしでプロセス制御のための既存のシステムに組み込まれ得る。プロセス制御のための形態指数Mの使用は、品質保証及び生産力の最大化のための実質的な能力を提供する。特に、形態の恒久的なモニタリング及び形態によるプロセス制御は、消費者のニーズに応じて正確にポリシリコンを生成することを可能にする。
【0017】
Mは無次元の指数であり、この値が増大すると、ポリシリコン棒がより裂け目が多くなる/多孔性になる。例えば、Mが3を超えるポリシリコン棒は、ポップコーンのかなりの部分を有する。Mが0の値を有する場合、非常に滑らかな表面を有する棒、すなわち非常に緻密に堆積したポリシリコンに関係する。
【0018】
Mが0~4の値、特に、0.1~3の値、特に好ましくは0.1~2の値を有することが、特に好ましい。
【0019】
例えば、タイプAポリシリコンの生成のために、堆積は、好ましくはMが0~0.1の値を有するように制御される。タイプAは一般に非常に緻密であり、半導体の生産のために、特にCZ処理のために無転位収量を最大化する目的を意図される。
【0020】
例えば、タイプBポリシリコンの生成のために、堆積は、好ましくはMが0.1~1の値を有するように制御される。タイプBは、一般に中程度の緻密さを有し、特に、コストを最適化した粗製の半導体用途、及び単結晶シリコン(CZ処理)を用いるソーラー用途の需要のために使用される。
【0021】
例えば、特に単結晶シリコンを用いる粗製のソーラー用途に必要とされるタイプCポリシリコンの生成のために、堆積は、好ましくはMが1~3の値を有するように制御される。タイプCはタイプBよりも緻密ではなく、より安価であり、CZ処理における再充電プロセスに特に好適である。
【0022】
例えば、タイプDポリシリコンの生成のために、堆積は、好ましくは、Mが0.3~5の値を有するように制御される。タイプDは、高い割合のポップコーンを有する。これは、比較的裂け目の多い表面及び高い多孔性を有する。これは、特に、方向性凝固又はブロック鋳造により、ソーラー用途のためのマルチ結晶シリコンの生成のために使用される。
【0023】
Mは、好ましくは、堆積の間、実質的に一定に保たれる。『実質的に』とは、特に、プラス/マイナス0.1である、Mについてのセットポイント値からの一時的な偏差が生じ得ることを意味すると理解される。偏差は、任意にプラス/マイナス0.2であってもよい。
【0024】
指数Mの決定は、堆積の続く間全体にわたって連続的に起こってもよく、又は堆積の間の種々の時点で、好ましくは同じ時間間隔で不連続的に起こってもよい。Mは、好ましくは堆積の特に正確な制御を保証するために連続的に決定される。
【0025】
Mの決定はさらに、時間間隔をおいて断続的に行われてもよく、ここで、この時間間隔は、特にシリコン棒の径の特定の伸長に対応し得る。このことは、特定の時間間隔で伸長するシリコン棒の領域(同心円領域)の形態に関する情報を提供する。特定の時間間隔でのMの計算は、Mの時間積分に相当する算出を必要とする。
【0026】
Mを決定するために、同じシリコン棒の、特に異なる位置での、少なくとも2つのサーモグラフィック画像が作成されることが好ましい。代替的に又はこれに加えて、1つ以上のサーモグラフィック画像がそれぞれ異なるシリコン棒から作成されてもよい。次いで、形態指数Mが、得られた個々の値の平均として算出されてもよい。
【0027】
サーモグラフィック画像の作成は、好ましくはサーモグラフィックカメラ(放射高温計)によって、特に検査窓を通して反応器の外側から行われる。また、ビデオを作成し、次いで好ましくはビデオの個々の画像を画像処理に供することもできる。画像処理は、特に、好ましくはプロセス制御ステーションのシステムに組み込まれる、ソフトウェアを用いて実施されてもよい。
【0028】
反応器の周りの異なる位置に配置された2つ以上のサーモグラフィックカメラを使用することもまた可能である。サーモグラフィックカメラは、好ましくは(反応器の周方向に)並んで、それぞれ検査窓の前に配置される。これらはまた、検査窓の前に、互いに隣り合って配置されても、重なって配置されてもよい。カメラは、異なる高さに位置していてもよい。サーモグラフィック画像の作成は、典型的には検査窓に最も近いシリコン棒において行われる。サーモグラフィック画像が、例えば、棒の中間(架橋と電極との中間)の高さで作成されようと、又は棒の上部3分の1又は下部3分の1の高さで作成されようと、一般に重要ではない。サーモグラフィック画像は、好ましくは棒中間点から作成される。
【0029】
TOFもまた、サーモグラフィックカメラによって決定され得るので、両値の決定は同じ(単数又は複数の)シリコン棒において決定されてもよい。TOF決定に関して、未公開の出願PCT/EP2017/081551に対してもまた参照され得る。
【0030】
TOFは、一般に重要な影響を及ぼす変数であり、典型的には堆積の間の変動する電流フローによってモニタリングされ、かつ適合され得る。シリコン棒からの熱流は、棒の径及びそれゆえに表面積が増大するので、原則的に堆積時間と共に増大する。したがって、典型的には堆積の間の電流の強度を適合させる必要がある。
【0031】
径の決定は、好ましくは検査窓を通して反応器の外側から、特にカメラ(例えば、デジタル/CCDカメラ)を使用して行われる。カメラの位置決め及び径の決定の方法論に関しては、上記の文献及び未公開特許出願PCT/EP2017/081551が参照され得る。径の決定は、原則として1つ以上のサーモグラフィック画像を用いて実施され得る。
【0032】
気相堆積反応器内に配置されたシリコン棒/シリコン棒対の数もまた、一般に本発明による方法の実施に重要ではない。気相堆積反応器は、導入部及び、例えば、EP2662335A1において記載したように、好ましくはシーメンス反応器である。したがって、フィラメント棒は、好ましくは、シリコン製の架橋を介して棒対につながったシリコン製の2つの細い棒であり、ここで、棒対の2つの自由端は、反応器床にて電極とつながっている。反応器におけるシリコン棒の数の代表的な例は、36本(18棒対)、48本(24棒対)、54本(27棒対)、72本(36棒対)又は96本(48棒対)である。良好な近似値のために、シリコン棒は、堆積の間の全ての時点で筒状として記載され得る。この細い棒が筒状であるか、又は、例えば、四角であるかどうかは特に関係ない。
【0033】
Mが決定される場所である測定領域Amaxは、好ましくは10~300cm2、好ましくは30~200cm2、特に好ましくは50~150cm2の大きさを有する。Amaxは、特に、作成したサーモグラフィック画像の部分に相当する。しかし、Amaxはまた、サーモグラフィック画像全体に相当してもよい。シリコン棒の径の増大に伴う曲率の変化は、Amaxを特定する際に無視し得る。
【0034】
第1部分領域At及び第2部分領域Apへの測定領域Amaxの区分は、好ましくはランクフィルタ、特に中央値フィルタによって行われる。これは、例えば、30*30ピクセルの中央値フィルタ(考慮するピクセルの環境の大きさが30*30ピクセルである)であってもよい。他の中央値フィルタもまた使用され得る。
【0035】
2つの画像の分割(平滑化画像によって分割された元画像)は、中央値からの局所的偏差を与える。これに続き、0未満による分離を行い、ポップコーン(隆起)の部分領域を得る。より小さな構造は任意に削除されてもよく、かつ「穴」は標準的画像処理アルゴリズムを用いて(例えば、the National Instruments library:Dilate,Erode,Fill Holes,Separate Objectsからのコマンドによって)塞がれてもよい。穴は、一般に画像処理からのアーチファクトである。次いで、マスクを使用し、隆起(ポップコーン)及び溝(谷)を、測定機器によって作成されたサーモグラフィック画像(温度アレイ)のフィルタリング/分離によって分離する。次いで、それぞれの場合において温度Tt及びTpは、分離によって得られた2つのサーモグラフィック画像(温度アレイ)からの中央値評価によって決定され得る。
【0036】
第1部分領域Atは、溝(谷)によって占められる領域に相当し、温度Ttを有する。第2部分領域Apは、隆起(山)によって占められる領域に相当し、温度Tpを有する。
【0037】
シリコン表面における溝と隆起との間の温度差は、典型的には30℃であってもよい。堆積の間の表面温度TOFは、典型的には950℃~1200℃の範囲内である。
【0038】
堆積は、好ましくは、U、I、TOF、反応ガス組成及び体積流量を含む群から選択される少なくとも1つのパラメータの変動によって制御される。
【0039】
I(棒電流)は、フィラメント棒/シリコン棒が加熱されている(ジュール熱)電流強度である。Uは、棒電流を発生させるためにシリコン棒又はフィラメント棒の末端を横切って適用される電圧である。U及びIは、市販の測定機器を用いて測定され得る。体積流量は、典型的には、例えば、DIN EN 1343に準拠して、反応ガスの反応器への導入より前に測定される。U、I、TOF及び体積流量は、通常、常に表示されており、任意にプロセス制御ステーションにてプロットされる。このことは、一般にプロセス制御ステーションへの連続的又は不連続的なフィードバックによってなされ、ここで、パラメータは、このようにMについての所望の標的値を達成するために、所定の形態指数Mに従って適合させられる。
【0040】
電圧U(棒対あたり)は、好ましくは50~500V、特に好ましくは55~250V、特に60~100Vの範囲内である。
【0041】
電流強度I(棒対あたり)は、好ましくは500~4500A、特に好ましくは1500~4000A、特に2500~3500Aの範囲内である。
【0042】
反応器内への導入前に、反応ガスは、好ましくは水素を、50%~90%、好ましくは60%~80%の割合で含む。反応ガスの組成は、反応器に供給される前に、ラマン分光法及び赤外線分光法を介して、及びまたガスクロマトグラフィーを介して決定され得る。
【0043】
反応ガスの体積流量(DIN EN 1343に準拠して測定され得る)は、好ましくは1500~9000m3/h、特に好ましくは3000~8000m3/hである。
【0044】
広範な種々の質のポリシリコン(例えば、タイプA、B、C及びD)が、堆積を制御することによって生成可能である。例えば、種々の形態の同心円領域を有するシリコン棒もまた生成され得る。堆積プロセス全体は、反応器の最も経済的な操作を常に選択するために、特定の品質要件に特に有利に適合させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図2】ポリシリコンの2つのタイプについての径の関数としての、形態指数Mのプロフィールを示す。
【実施例】
【0046】
実施例1
図1は、例示的なサーモグラフィック画像Aを示す。これを、シーメンス反応器内のシリコン棒から、架橋と電極との間の半ばの高さで、検査窓を通して赤外線カメラによって記録した。シリコン棒は、検査窓に非常に近接していた。記録を、約90時間の堆積時間の後に実施した。シーメンス反応器を24棒対に適合させ、ここで、フィラメント棒は2.5mの長さ(架橋と電極との間の長さ)を有した。タイプCポリシリコンを堆積させた。それに応じて、Mは、1~3の値を有するものであった。測定領域A
maxは、破線の内側の領域に対応する。
【0047】
画像B及び画像Cは、サーモグラフィック画像の区分の結果を示す。ソフトウェアLabVIEW(Fa.National Instruments)及び中央値フィルター(30*30ピクセル)を使用して、部分領域Ap(画像B、破線内の白における隆起、温度Tp=1027℃)と部分領域At(画像C、破線内の白における溝、温度Tt=1033℃、At=20cm2)への区分を行った。測定領域Amaxは、57cm2であった。堆積時間のこの時点で、式Iに従ってMは2.1であり、これはポリシリコンタイプCについての標的値範囲内であった。
【0048】
実施例2:
図2は、2つの異なる堆積プロセスについての、すなわち2つの異なるポリシリコン品質についての、シリコン棒径d[mm]に対するMのプロフィールをプロットする。上の曲線はタイプDの生成に関する。下の曲線はタイプCの生成に関する。タイプCはタイプDより緻密であり、より繊細な用途のために使用される。タイプCはMについて1~3の値を有するべきであり、他方でタイプDは3~5の値を有するべきである。両プロセスを、同じシーメンス反応器内で、しかし、U、I、T
OF、反応ガス組成及び体積流量を含む群からの少なくとも1つのパラメータについては異なる設定で行った。Mの決定を、堆積時間全体の間、連続的に行った。デジタルカメラ及び画像処理によって、2つの棒に対して棒径を決定した。
【0049】
両プロセスを、非常に緻密なシリコン製のフィラメント棒に特に起因する、0に近いMの値を有する緻密に堆積したポリシリコンで開始する。タイプDの生成のために、堆積の開始後すぐにMについて比較的急峻なプロフィールを選択した。約3.5のMの標的レベルは、棒径約90mmにて早くも達成した。幾分多孔性であるポリシリコンに向かう急峻なプロフィールを、特に、表面温度、ガス組成及び/又は体積流量を変えることによって達成した。続いて、Mを3.5~3.9の間(平均約3.7)の値に合わせた。
【0050】
タイプCの生成についても、約1.5の標的値を約90mmにて達成した。上述のパラメータの制御を適宜適合させた。残りの堆積時間について、Mは平均1.6で一定に保たれた。
【0051】
広範な種々のポリシリコンタイプを生成するために、指数Mを用いていかに簡便に堆積が制御され得るかは、この実施例から明らかである。