(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241205BHJP
B29C 41/12 20060101ALI20241205BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20241205BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241205BHJP
B29C 41/46 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B29C41/12
C08G73/14
G09F9/00 302
B29C41/46
(21)【出願番号】P 2022165887
(22)【出願日】2022-10-14
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0176442
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184330
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンヨン
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-165399(JP,A)
【文献】特開2021-030734(JP,A)
【文献】特開2021-030735(JP,A)
【文献】特開2021-098863(JP,A)
【文献】特開2021-075702(JP,A)
【文献】特開2012-163931(JP,A)
【文献】特開2020-003781(JP,A)
【文献】特開2021-070764(JP,A)
【文献】特開2021-148936(JP,A)
【文献】特開2021-148938(JP,A)
【文献】特開2017-047684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C41/00-41/36
41/46-41/52
70/00-70/88
C08G73/00-73/26
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド-イミド系重合体を含み、
前記ポリアミド-イミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を5:95~50:50のモル比で含み、
前記ポリアミド-イミド系重合体は、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物の重合体であり、
前記ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を含み、
前記ジアンヒドリド化合物は、2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)及び3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)、イソフタロイルクロリド(IPC)からなる群より選択される1種以上を含み、
フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)および窒素(N)元素の重量の合計を基準に6重量%~7.5重量%であり、
前記フィルム内の窒素(N)および水素(H)元素の含有量の合計が、フィルムの総重量を基準に6重量%~9重量%である、ポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項2】
前記フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルムの総重量を基準に4重量%~7重量%であり、
前記フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内炭素(C)元素100重量部に対して8重量部~11重量部である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項3】
前記フィルムをTD方向に区画したN領域、C領域、およびS領域のそれぞれから任意の2か所を選択して、計6か所において透過度、ヘイズ、黄色度、およびモジュラスを測定した際、
透過度の平均値が80%以上で、透過度の偏差率が0.3%以下であり、
ヘイズの平均値が1%以下で、ヘイズの偏差率が10%以下であり、
黄色度の平均値が5以下で、黄色度の偏差率が10%以下であり、
モジュラスの平均値が5GPa以上で、モジュラスの偏差率が10%以下である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項4】
前記フィルムをMIBKに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHzM)が0.2%以下であり、
前記フィルムをIPAに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHzI)が0.1%以下である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項5】
下記式1で定義されるEC
A値が15.9以上であり、
下記式2で定義されるEC
B値が15.3以上であり、
下記式3で定義されるEC
C値が14以上であり、
下記式4で定義されるEC
D値が10.5以上である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム:
前記式1~4において、
前記C
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている炭素(C)元素の含有量(重量%)であり、
前記O
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている酸素(O)元素の含有量(重量%)であり、
前記H
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている水素(H)元素の含有量(重量%)であり、
前記N
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている窒素(N)元素の含有量(重量%)である。
【請求項6】
下記式5で定義されるR
MO値が95%~105%であり、
下記式6で定義されるR
EL値が90%~110%である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム:
前記式5および6において、
MO
Tは、前記フィルムのTD方向を長さ方向にして測定したモジュラスであり、
MO
Mは、前記フィルムのMD方向を長さ方向にして測定したモジュラスであり、
EL
Tは、前記フィルムのTD方向を長さ方向にして測定した伸び率であり、
EL
Mは、前記フィルムのMD方向を長さ方向にして測定した伸び率である。
【請求項7】
前記フィルムを60℃にてUV-A LAMP(波長340nm)を0.63W/m
2でフィルムに72時間照射した後、黄色度を測定した際の黄色度変化量(△YI)が5以下である、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルム。
【請求項8】
ポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体を含み、
前記ポリアミド-イミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を5:95~50:50のモル比で含み、
前記ポリアミド-イミド系重合体は、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物の重合体であり、
前記ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を含み、
前記ジアンヒドリド化合物は、2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)及び3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)、イソフタロイルクロリド(IPC)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)および窒素(N)元素の重量の合計を基準に6重量%~7.5重量%であり、
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)および水素(H)元素の含有量の合計が、フィルムの総重量を基準に6重量%~9重量%である、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項9】
表示部と、
前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウがポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体を含み、
前記ポリアミド-イミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を5:95~50:50のモル比で含み、
前記ポリアミド-イミド系重合体は、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物の重合体であり、
前記ジアミン化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を含み、
前記ジアンヒドリド化合物は、2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)及び3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(BPDC)、イソフタロイルクロリド(IPC)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に6重量%~7.5重量%であり、
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)および水素(H)元素の含有量の合計が、フィルムの総重量を基準に6重量%~9重量%である、ディスプレイ装置。
【請求項10】
有機溶媒上でジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して、ポリアミド-イミド系重合体溶液を調製する段階と、
前記溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、
前記ゲルシートを熱処理する段階とを含み、
前記ゲルシートを熱処理する段階は、前記ゲルシートのTD方向に離隔された第1ヒーター、第2ヒーターおよび第3ヒーターによって熱処理する段階を含み、
前記ゲルシートの中心部に対応する前記第1ヒーターの温度をT
HCとし、前記ゲルシートの両端部に対応する前記第2ヒーターおよび前記第3ヒーターの温度をそれぞれT
HN、T
HSとすると、前記T
HNおよび前記T
HSが前記T
HCよりも摂氏温度を基準に2%~18%高い、請求項1に記載のポリアミド-イミド系フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アミド-イミド)(poly(amide-imide)、PAI)等のようなポリイミド系樹脂は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリイミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリイミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリイミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリイミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に用いるメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物のような汚染物をろ過する装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリイミドをフィルム化することにより、より安価でありながらも光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリイミド系フィルムが開発されている。このようなポリイミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に、反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリイミド系フィルムを後工程過程において溶剤に浸漬させる場合、またはフィルムが紫外線などの光にさらされる場合、光学特性が低下したり、カバーウィンドウやディスプレイ装置に適用する場合、フィルムの幅品質が不均一となるかまたはフィルムの方向によって性質が異なるため最終製品の品質信頼性および製品歩留まりが低下したりするという問題があった。
【0006】
したがって、前記問題を解決するとともに、フィルムの品質が均一であり、等方性を有し、機械的特性、光学特性、耐溶剤性、および耐光性に優れるフィルム開発に対する要求が持続的に増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実現例は、フィルムの品質が均一であり、等方性を有し、機械的特性、光学特性、耐溶剤性、および耐光性に優れるポリアミド-イミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、6重量%~7.5重量%である。
【0009】
他の実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、6重量%~7.5重量%である。
【0010】
また他の実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、6重量%~7.5重量%である。
【0011】
一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒上でジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して、ポリアミド-イミド系重合体溶液を調製する段階と、前記溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含み、前記ゲルシートを熱処理する段階は、前記ゲルシートのTD方向に離隔された第1ヒーター、第2ヒーターおよび第3ヒーターによって熱処理する段階を含み、前記ゲルシートの中心部に対応する前記第1ヒーターの温度をTHCとし、前記ゲルシートの両端部に対応する前記第2ヒーターおよび前記第3ヒーターの温度をそれぞれTHN、THSとすると、前記THNおよび前記THSが前記THCよりも高い。
【発明の効果】
【0012】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、特定レベルの窒素(N)元素の含有量の値を有することにより、TD方向において物性のバラツキがほとんど発生しないため幅方向の品質が均一であり、優れた機械的特性、光学特性、および耐溶剤性の特性を有し得る。
【0013】
前記ポリアミド-イミド系フィルム製造後、耐指紋性、帯電防止、飛散防止および付着力向上のような機能を付与するための機能層を積層する工程などの後工程を経ることとなる。このような後工程において、追加の熱処理が行われる際、フィルム品質の不均一性が増幅され、最終製品の不良率が増加し得るので、ポリアミド-イミド系フィルム自体の均一な品質は、重要な管理要素となる。
【0014】
そこで、実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの場合、窒素(N)元素の含有量値が特定の範囲で制御されることにより、前記フィルムが適用されたディスプレイ装置用カバーウィンドウまたはディスプレイ装置のような最終製品の品質信頼度および製品歩留まりを向上させ得る。
【0015】
また、後工程の際フィルムが溶剤にさらされることがあるが、耐溶剤性の低いフィルムの場合、溶剤浸漬後にヘイズが急速に増加するなど、光学的、機械的特性が低下するおそれがあるので、フィルムの耐溶剤性に優れるものが有利である。
【0016】
さらに、フィルムが紫外線などの光にさらされることがあるが、耐光性の低いフィルムの場合、光によって黄変現象が生じ、フィルムのヘイズが急激に増加するなど、光学特性が低下するおそれがあるので、フィルムの耐光性に優れるものが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的分解図である。
【
図2】
図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的斜視図である。
【
図3】
図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的断面図である。
【
図4】
図4は、一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法の概略的手順を示すものである。
【
図5】
図5は、一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、ヒーターを通過させる段階を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、ヒーターを通過させる段階におけるヒーター装着部およびゲルシートを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書で説明する実現例に限定されない。
【0019】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものと記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0020】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0021】
本明細書において、単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0022】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0023】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0024】
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0025】
[ポリアミド-イミド系フィルム]
実現例は、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、窒素(N)元素の含有量が特定レベルを満足することにより、TD方向において物性のバラツキがほとんど発生しないため、品質が均一であり、優れた機械的特性、光学特性、耐溶剤性および耐光性の特性を有するポリアミド-イミド系フィルムを提供する。
【0026】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、前記フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、6重量%~7.5重量%である。
【0027】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのフィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、6重量%以上、6.1重量%以上、6.2重量%以上、6.3重量%以上であり、7.5重量%以下、7.4重量%以下、7.3重量%以下、または7重量%以下であり得る。
【0028】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのフィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、6重量%~7.3重量%、6重量%~7重量%、6.3重量%~7.5重量%、6.3重量%~7.3重量%、または6.3重量%~7重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の含有量は、元素分析装置(element analysis;EA)例えば、モデル名Flash2000(Thermo Fisher Scientific社, Germany)を用いて測定した値であり得る。また、各元素含有量は核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance;NMR)により測定した値であり得る。
【0030】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルムの総重量を基準に4重量%~7重量%であり得る。
【0031】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内の窒素(N)元素の含有量が4重量%以上、4.2重量%以上、4.4重量%以上、4.6重量%以上、4.8重量%以上、5重量%以上、または5.2重量%以上であり、7重量%以下、6.8重量%以下、6.6重量%以下、6.4重量%以下、6.2重量%以下、6重量%以下、または5.8重量%以下であり得る。
【0032】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内の窒素(N)元素の含有量が5重量%~7重量%、5重量%~6.2重量%、5重量%~6重量%、5重量%~5.8重量%、5.2重量%~7重量%、5.2重量%~6.2重量%、5.2重量%~6重量%、または5.2重量%~5.8重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)元素100重量部に対して、8重量部~12重量部であり得る。
【0034】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルム内の炭素(C)元素100重量部に対して、フィルム内窒素(N)元素の含有量が、8重量部以上、8.2重量部以上、8.4重量部以上、8.6重量部以上、8.8重量部以上、または9重量部以上であり、12重量部以下、11.8重量部以下、11.6重量部以下、11.4重量部以下、11.2重量部以下、11重量部以下、10.8重量部以下、10.6重量部部以下、10.5重量部以下、10.4重量部以下、10.2重量部以下、または10重量部以下であり得る。
【0035】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルム内の炭素(C)元素100重量部に対して、フィルム内窒素(N)元素の含有量が、8重量部~11.2重量部、8重量部~11重量部、8重量部~10.6重量部、8重量部~10重量部、9重量部~12重量部、9重量部~11.2重量部、9重量部~11重量部、9重量部~10.6重量部、または9重量部~10重量部であり得るが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)および水素(H)元素の含有量の合計が、フィルムの総重量を基準に6重量%~9重量%であり得る。
【0037】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内の窒素(N)および水素(H)元素の含有量の合計が、6重量%以上、6.2重量%以上、6.4重量%以上、6.6重量%以上、6.8重量%以上、7重量%以上、7.2重量%以上、または7.4重量%以上であり、9重量%以下、8.8重量%以下、8.6重量%以下、8.4重量%以下、8.2重量%以下、または8重量%以下であり得る。
【0038】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内窒素(N)および水素(H)元素の含有量の合計が、7重量%~9重量%、7重量%~8.8重量%、7重量%~8重量%、7.4重量%~9重量%、7.4重量%~8.8重量%、または7.4重量%~8重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0039】
一実現例によると、ポリアミド-イミド系フィルムは、下記式1で定義されるEC
A値が15.9以上であり得る。
[式1]
前記式1において、
前記C
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている炭素(C)元素の含有量(重量%)であり、
前記O
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている酸素(O)元素の含有量(重量%)であり、
前記H
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている水素(H)元素の含有量(重量%)であり、
前記N
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている窒素(N)元素の含有量(重量%)である。
【0040】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのECA値が、16以上、16.2以上、16.4以上、16.6以上、または16.8以上であり、21以下、20.5以下、20以下、19.5以下、19以下、18.5以下、または18以下であり得る。
【0041】
より具体的に、前記ポリアミドイミド系フィルムのECA値は、15.9~20、15.9~19、15.9~18、16~20、16~19、または16~18であり得るが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、下記式2で定義されるEC
B値が15.3以上であり得る。
[式2]
前記式2において、
前記C
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている炭素(C)元素の含有量(重量%)であり、
前記O
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている酸素(O)元素の含有量(重量%)であり、
前記H
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている水素(H)元素の含有量(重量%)であり、
前記N
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている窒素(N)元素の含有量(重量%)である。
【0043】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのECB値が15.5以上、15.8以上、16以上、16.3以上、16.5以上、16.8以上、または17以上であり、21以下、20.5以下、20以下、19.5以下、19以下、18.5以下、または18以下であり得る。
【0044】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのECB値が、15.3~20、15.3~19、15.3~18、16~20、16~19、16~18、16.8~20、16.8~19、または16.8~18であり得るが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、下記式3で定義されるEC
C値が14以上であり得る。
[式3]
前記式3において、
前記C
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている炭素(C)元素の含有量(重量%)であり、
前記O
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている酸素(O)元素の含有量(重量%)であり、
前記H
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている水素(H)元素の含有量(重量%)であり、
前記N
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている窒素(N)元素の含有量(重量%)である。
【0046】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのECC値が、14.3以上、14.5以上、14.8以上、15以上、15.3以上、または15.5以上であり、20以下、19.5以下、19以下、18.5以下、18以下、17.5以下、17以下、または16.5以下であり得る。
【0047】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのECC値が、14~19、14~18、14~17、14~16.5、15~19、15~18、15~17、15~16.5、15.3~19、15.3~18、15.3~17、または15.3~16.5であり得るが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、下記式4で定義されるEC
D値が10.5以上であり得る。
[式4]
前記式4において、
前記C
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている炭素(C)元素の含有量(重量%)であり、
前記O
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている酸素(O)元素の含有量(重量%)であり、
前記N
wは、前記フィルムの総重量を基準に、前記フィルム内に含まれている窒素(N)元素の含有量(重量%)である。
【0049】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのECD値が、11以上、11.3以上、11.5以上、11.8以上、12以上、12.2以上、または12.3以上であり、17以下、16.5以下、16以下、15.5以下、15以下、または14.5以下であり得る。
【0050】
より具体的に、前記ポリアミドイミド系フィルムのECD値が、10.5~17、10.5~16、10.5~15、10.5~14.5、11.5~17、11.5~16、11.5~15、11.5~14.5、12~17、12~16、12~15、または12~14.5であり得るが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、前記フィルム内炭素(C)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)および窒素(N)元素の重量の合計を基準に66.7重量%以上であり得る。
【0052】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのフィルム内炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、フィルム内炭素(C)元素の含有量が、67重量%以上、67.4重量%以上、67.6重量%以上、68重量%以上、68.4重量%以上、68.6重量%以上、または69重量%以上であり、73重量%以下、72.5重量%以下、72重量%以下、71.5重量%以下、71重量%以下、70.5重量%以下、または70重量%以下であり得る。
【0053】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのフィルム内炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に、フィルム内炭素(C)元素の含有量が、66.7重量%~72重量%、66.7重量%~71重量%、66.7重量%~70重量%、67重量%~72重量%、67重量%~71重量%、67重量%~70重量%、68.4重量%~72重量%、68.4重量%~71重量%、または68.4重量%~70重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0054】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの元素含有量が前記範囲を満足することにより、TD方向の品質のばらつきが著しく減少し等方性を有し、後工程等に主に使用される溶剤に浸漬したり、光に一定時間露出されたりした後も、ヘイズ変化量が特定レベル以下を示すことにより、フィルムの耐溶剤性および耐光性に優れる。
【0055】
一方、実現例によるポリアミド-イミド系フィルム内の元素含有量が前記範囲から外れると、溶剤に浸漬させたり紫外線に露出されたりした後、ヘイズ変化量が大きいため、後工程等を経た後、光学的特性が低下し、後述するフィルムのTD方向の品質のばらつきおよび/またはMD方向およびTD方向間の品質のばらつきも大きくなり、フィルム自体の品質が低下するだけでなく、後工程に適用する際に不良率の高い製品に直結し得る。
【0056】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の炭素(C)元素の含有量が、フィルムの総重量を基準に53重量%~60重量%であり得る。
【0057】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内炭素(C)元素の含有量が、53重量%以上、54重量%以上、55重量%以上、55.5重量%以上、56重量%以上、または56.5重量%以上であり、60重量%以下、59.5重量%以下、59重量%以下、または58.5重量%以下であり得る。
【0058】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内炭素(C)元素の含有量が、55重量%~60重量%、55重量%~59重量%、55重量%~58.5重量%、56重量%~60重量%、56重量%~59重量%、または56重量%~58.5重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の水素(H)元素の含有量が、フィルムの総重量を基準に1.5重量%~3.5重量%であり得る。
【0060】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内水素(H)元素の含有量が、1.5重量%以上、1.8重量%以上、または2.1重量%以上であり、3.5重量%以下、3.2重量%以下、3重量%以下、または2.8重量%以下であり得る。
【0061】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内水素(H)元素の含有量が、1.8重量%~3.5重量%、1.8重量%~3重量%、1.8重量%~2.8重量%、2.1重量%~3重量%、または2.1重量%~2.8重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の酸素(O)元素の含有量が、フィルムの総重量を基準に15重量%~19重量%であり得る。
【0063】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内の酸素(O)元素の含有量が、15重量%以上、15.5重量%以上、16重量%以上、または16.5重量%以上であり、19重量%以下、18.5重量%以下、または18重量%以下であり得る。
【0064】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内酸素(O)元素の含有量が、15.5重量%~18.5重量%、15.5重量%~18重量%、16重量%~18.5重量%、または16重量%~18重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計が、フィルムの総重量を基準に80重量%~85重量%であり得る。
【0066】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計が、80重量%以上、80.5重量%以上、81重量%以上、または81.5重量%以上であり、85重量%以下、84.5重量%以下、または84重量%以下であり得る。
【0067】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの総重量を基準に、フィルム内炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計が、81.5重量%~84.5重量%、81.5重量%~84重量%、82重量%~84.5重量%、または82重量%~84重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0068】
前記フィルムは、TD方向に3つの区画された領域であるN領域、C領域、およびS領域を含む。前記フィルムにおいて、N領域の幅をwN、C領域の幅をwC、S領域の幅をwSとすると、フィルムの幅はwN、wC、wSの和に等しい。
【0069】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムを、TD方向に区画されたN領域、C領域、およびS領域のそれぞれから任意の2か所を選択して、計6か所において透過度を測定した際、透過度の平均値が80%以上であり、透過度の偏差率が0.5%以下であり得る。
【0070】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの透過度の平均値は、82%以上、84%以上、86%以上、88%以上、または89%以上であり、透過度の偏差率は、0.4%以下、0.3%以下、0.25%以下、0.2%以下、または0.15%以下であり得る。
【0071】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムを、TD方向に区画されたN領域、C領域、およびS領域のそれぞれから任意の2か所を選択して、計6か所においてヘイズを測定した際、ヘイズの平均値が1%以下であり、ヘイズの偏差率が10%以下であり得る。
【0072】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのヘイズの平均値は、0.7%以下、0.5%以下または0.4%以下であり、ヘイズの偏差率は、9.5%以下、9%以下、8.5%以下、8%以下、または7.5%以下であり得る。
【0073】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムを、TD方向に区画されたN領域、C領域、およびS領域のそれぞれから任意の2か所を選択して、計6か所において黄色度を測定した際、黄色度の平均値が5以下であり、黄色度の偏差率が10%以下である。
【0074】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムの黄色度の平均値は、4.5以下、4以下または3.5以下であり、黄色度の偏差率は8%以下、7%以下または6%以下であり得る。
【0075】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムを、TD方向に区画されたN領域、C領域、およびS領域のそれぞれから任意の2か所を選択して、計6か所においてモジュラスを測定した際、モジュラスの平均値が5GPa以上であり、モジュラスの偏差率が10%以下である。
【0076】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのモジュラスの平均値は、5.5GPa以上または6GPa以上であり、モジュラスの偏差率は、7%以下、5%以下、4%以下、または3%以下であり得る。
【0077】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの透過度、ヘイズ、黄色度、および/またはモジュラスに関する平均値および偏差率が前述の範囲であると、物性そのものに優れるだけでなく、フィルムの幅方向(TD方向)を基準に主要物性偏差が少ないので、フィルム製造後の後工程に適用する際に所望の形状や大きさにカットするとき、品質のばらつきがほとんどないので、製品歩留まりが向上し、経済的である。
【0078】
一方、実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの透過度、ヘイズ、黄色度、および/またはモジュラスに関する平均値または偏差率が前記範囲から外れると、フィルムの位置ごとに微細ながらも品質が異なるということを意味するので、製品に適用する際に不良が多く発生し得る。特に、前記フィルムを製品化する場合、追加の熱処理のような過酷な条件に置かれることとなり得るが、そのような過程で不均一な品質がさらに増幅し得る。
【0079】
実現例において、ポリアミド-イミド系フィルムは、下記式5で定義されるR
MO値が95%~105%であり得る。
[式5]
前記式5において、
MO
Tは、前記フィルムのTD方向を長さ方向にして測定したモジュラスであり、
MO
Mは、前記フィルムのMD方向を長さ方向にして測定したモジュラスである。
【0080】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのRMO値が、95%以上、96%以上、97%以上、または98%以上であり、105%以下、104%以下、103%以下、102%以下、101%以下、または100%以下であり得る。
【0081】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのRMO値が、95%~103%、95%~100%、97%~105%、97%~103%、97%~100%、98%~105%、98%~103%、または98%~100%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのTD方向を長さ方向にして測定したモジュラス(MOT)は、5GPa以上であり得る。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上、5.7GPa以上、6GPa以上、または6.2GPa以上であり得る。また、前記モジュラスは10GPa以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのMD方向を長さ方向にして測定したモジュラス(MOM)は、5GPa以上であり得る。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上、5.7GPa以上、6GPa以上、または6.2GPa以上であり得る。また、前記モジュラスは10GPa以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0084】
実現例において、ポリアミド-イミド系フィルムは、下記式6で定義されるR
EL値が90%~110%であり得る。
[式6]
前記式6において、
EL
Tは、前記フィルムのTD方向を長さ方向にして測定した伸び率であり、
EL
Mは、前記フィルムのMD方向を長さ方向にして測定した伸び率である。
【0085】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのREL値が、90%以上、92%以上、94%以上、96%以上、または97%以上であり、110%以下、108%以下、106%以下、104%以下、または100%以下であり得る。
【0086】
より具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのREL値が90%~104%、90%~100%、94%~110%、94%~104%、94%~100%、97%~110%、97%~104%、または97%~100%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのTD方向を長さ方向にして測定した伸び率(ELT)は、15%~35%であり得る。具体的に、前記伸び率は、15%以上、17%以上、20%以上、または22%以上であり、35%以下、32%以下、30%以下、27%以下、または25%以下であり得る。より具体的に、前記伸び率は、15%~30%、15%~25%、20%~35%、20%~30%、または20%~25%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0088】
前記ポリアミド-イミド系フィルムのMD方向を長さ方向にして測定した伸び率(ELM)は、15%~35%であり得る。具体的に、前記伸び率は、15%以上、17%以上、20%以上、または22%以上であり、35%以下、32%以下、30%以下、27%以下、または25%以下であり得る。より具体的に、前記伸び率は、15%~30%、15%~25%、20%~35%、20%~30%、または20%~25%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0089】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムのモジュラスおよび/または伸び率並びにこれらのTD方向/MD方向比率が上述の範囲であると、物性そのものに優れるだけでなく、フィルムの幅方向(TD方向)および長さ方向(MD方向)間の物性偏差が少ないため、フィルムが等方性を有し、品質信頼性が向上する。また、フィルム製造後に後工程を適用する際に必要な形状や大きさに切断するとき、品質のばらつきがほとんどないので、製品歩留まりが向上し、経済的である。
【0090】
一方、実現例によるポリアミド-イミド系フィルムのモジュラスおよび/または伸び率に関する値および比率(TD方向/MD方向)が前記範囲から外れると、フィルムの方向によって品質が異なるということを意味するので、製品に適用する際に不良が多く発生し得る。特に、前記フィルムを製品化する場合、後工程において追加の熱処理などの過酷な条件に置かれることとなり得るが、そのような過程で不均一な品質がさらに増幅し得る。
【0091】
一部の実現例において、前記ポリアミドイミド系フィルムの透過度が80%以上であり、ヘイズが1%以下であり、黄色度が5以下であり、MD方向モジュラスが5GPa以上であり、TD方向モジュラスが5GPa以上であり、MD方向伸び率が20%~30%であり、TD方向伸び率が20%~30%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの透過度、ヘイズ、黄色度等の物性は、任意の2以上のポイントで測定した値を平均した値であり得る。具体的に、製造されたフィルムのN領域、C領域、S領域のそれぞれから任意の2か所を選択して計6か所で測定した値を平均した値であり得る。
【0093】
一部の実現例において、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が3μm以下、2μm以下、1.5μm以下、または1.2μm以下であり得る。また、前記厚さ偏差率は、5%以下、4%以下、3%以下、または2.5%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0094】
前記厚さ偏差および偏差率は、前記フィルムをTD方向に区画されたN領域、C領域、およびS領域のそれぞれから任意の2か所を選択して計6か所で測定した厚さの平均値、これらの偏差、および偏差率のことを意味し得る。この場合、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、均一な厚さを有し、各ポイントにおける光学特性および機械的特性が均一に現れ得る。
【0095】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをMIBKに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHzM)が0.2%以下であり得る。
【0096】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのMIBK浸漬後のヘイズ変化量(ΔHzM)は、0.19%以下、0.18%以下、0.17%以下、0.15%以下、または0.12%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0097】
前記△HzM(%)はHzM-Hz0の値であり、前記Hz0は前記フィルムの初期ヘイズ(%)を示し、HzMは、前記フィルムをMIBK溶剤に5秒間浸漬後、80℃にて3分間乾燥させた後測定したヘイズ(%)を示す。
【0098】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをIPAに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHzI)が0.1%以下であり得る。
【0099】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのIPA浸漬後のヘイズ変化量(ΔHzI)は、0.08%以下、0.06%以下または0.05%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0100】
前記△HzI(%)はHzI-Hz0の値であり、前記Hz0は前記フィルムの初期ヘイズ(%)を示し、HzIは、前記フィルムをIPA溶剤に5秒間浸漬後、80℃にて3分間乾燥させた後測定したヘイズ(%)を示す。
【0101】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをMIBKに5秒間浸漬後、80℃にて3分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(△HzM)および前記ポリアミド-イミド系フィルムをIPAに5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHzI)の平均値(ΔHzAVG)が0.15%以下であり得る。
【0102】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのヘイズ変化量の平均値(ΔHzAVG)は、0.13%以下、0.11%以下または0.1%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0103】
前記ヘイズ変化量の平均値(ΔHzAVG)は、フィルムの耐容制性を判断する尺度となり得る。
【0104】
前記ポリアミド-イミド系フィルムを60℃にてUV-A LAMP(波長340nm)を0.63W/m2でフィルムに72時間照射した後、黄色度を測定したときの黄色度変化量(△YI)が5以下であり得る。
【0105】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系フィルムのUV照射後の黄色度変化量(ΔYI)は、4.8以下、4.6以下、4.4以下、4.2以下、または4以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0106】
前記△YIはYI1~YI0の値であり、前記YI0はポリアミド-イミド系フィルムの初期黄色度を示し、前記YI1は、60℃でUV-A LAMP(波長340nm)を0.63W/m2でフィルムに72時間照射した後測定した黄色度を示す。
前記黄色度変化量ΔYIは、フィルムの耐光性を判断する尺度となり得る。
【0107】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの黄色度変化量が前記範囲であると、フィルムが紫外線など光に露出される場合でも外観変化がほとんどないので、高品質の製品に直結し得る。
【0108】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0109】
前記ポリアミド-イミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて10mm/分の速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0110】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの表面硬度はHB以上であり得る。具体的に、前記表面硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0111】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、引張強度が15kgf/mm2以上であり得る。具体的に、前記引張強度が18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0112】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が16%以上、17%以上、または18%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0113】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmになるようにフォルディングする際、破断する前までのフォルディング回数が20万回以上であり得る。
【0114】
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmになるように曲げて広げることを1回とする。
【0115】
前記ポリアミド-イミド系フィルムが前記範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0116】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm~0.07μmまたは0.01μm~0.06μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0117】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの表面粗さが前記範囲を満足することにより、ディスプレイ装置に適用するために有利な輝度条件や質感を実現するのに有利であり得る。
【0118】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の残留溶媒の含有量は1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下、または300ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0119】
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発せず、最終的に製造されたフィルムに残留する溶媒の量のことを意味する。
【0120】
前記ポリアミド-イミド系フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、フィルムの品質バラツキにも影響を及ぼし得る。特に、機械的強度に影響を及ぼすため、フィルムの後加工の際に不利な影響を及ぼし、フィルムの吸水性を加速化させ、機械的物性に加えて光学物性や耐溶剤性および耐熱特性もまた低下し得る。
【0121】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体を含み、前記ポリアミド-イミド系重合体は、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成され得る。
【0122】
前記ポリアミド-イミド系重合体は、イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とを含む重合体である。
【0123】
具体的に、前記ポリアミド-イミド系重合体は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含み得る。
【0124】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して、共重合体を形成する化合物である。
【0125】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
【0126】
[化1]
前記化学式1において、
Eは、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択され得る。
【0127】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0128】
前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0129】
具体的に、前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0130】
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0131】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0132】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0133】
一部の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を含み得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0134】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl、
TFMB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0135】
前記ジアンヒドリド化合物は、複屈折値が低いため、前記ポリアミド-イミド系重合体を含むフィルムの透過度のような光学物性の向上に寄与し得る化合物である。
【0136】
前記ジアンヒドリド化合物は特に限定されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアンヒドリド化合物であり得る。例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2の化合物であり得る。
[化2]
【0137】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、もしくは置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択された連結基によって結合されている。
【0138】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0139】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-2aで表される基、前記化学式2-8aで表される基、または前記化学式2-9aで表される基であり得る。
【0140】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物、ビフェニル基を有する化合物、またはケトン基を有する化合物を含み得る。
【0141】
前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0142】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、1種の単一成分または2種の混合成分からなり得る。
【0143】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)および3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0144】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してポリアミック酸を生成し得る。
【0145】
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され得、前記ポリイミドはイミド繰り返し単位を含む。
【0146】
前記ポリイミドは、下記化学式Aで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化A]
前記化学式Aにおいて、E、G、およびeに関する説明は、前述の通りである。
【0147】
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0148】
[化A-1]
前記化学式A-1におけるnは1~400の整数であり得る。
【0149】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]
【0150】
前記化学式3において、
Jは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0151】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0152】
前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0153】
具体的に、前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0154】
より具体的に、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0155】
例えば、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基または前記化学式3-2bで表される基であり得る。
【0156】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、1種のジカルボニル化合物を単独で使用するか、または互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0157】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0158】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0159】
前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0160】
例えば、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0161】
または、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-2およびB-3で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0162】
[化B-1]
前記化学式B-1のxは1~400の整数である。
【0163】
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0164】
[化B-3]
前記化学式B-3のyは1~400の整数である。
【0165】
一実現例によると、前記ポリアミド-イミド系重合体は、下記化学式Aで表される繰り返し単位および下記化学式Bで表される繰り返し単位を含み得る。
【0166】
【0167】
【0168】
前記化学式AおよびBのうち、
EおよびJは互いに独立して、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され、
eおよびjは互いに独立して1~5の整数の中から選択され、
eが2以上の場合、2以上のEは互いに同一または異なり、
jが2以上の場合、2以上のJは互いに同一または異なり、
Gは、置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合して縮合環を形成するか、もしくは置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択された連結基によって結合されている。
【0169】
前記ポリアミド-イミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を2:98~70:30のモル比で含み得る。具体的に、前記イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位のモル比は、2:98~60:40、2:98~55:45、2:98~50:50、5:95~70:30、5:95~60:40、5:95~55:45、5:95~50:50、または10:90~40:60であり得るが、これに限定されるものではない。
【0170】
イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とのモル比が前記範囲であると、ポリアミド-イミド系フィルム内の窒素(N)元素含有量を効果的に制御することができ、特徴的な工程方法と結びついて、フィルムの品質信頼性を高め得る。
【0171】
前記ポリアミド-イミド系重合体において、前記化学式Aで表される繰り返し単位および前記化学式Bで表される繰り返し単位のモル比は、2:98~70:30であり得る。具体的に、前記化学式Aで表される繰り返し単位および前記化学式Bで表される繰り返し単位のモル比は、2:98~60:40、2:98~55:45、2:98~50:50、5:95~70:30、5:95~60:40、5:95~55:45、5:95~50:50、または10:90~40:60であり得るが、これに限定されるものではない。
【0172】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体に加えて、フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上をさらに含み得る。
【0173】
前記フィラーは例えば、金属または準金属の酸化物、炭酸化物、硫酸化物などを含み得る。例えば、前記フィラーは、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0174】
前記フィラーは粒子状で含まれ得る。また、前記フィラーは、表面に特別なコーティング処理がされていない状態であり、フィルム全体に亘って均一に分散されている。
【0175】
前記ポリアミド-イミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは光学特性の低下もなく、広い視野角を確保することができ、粗度および巻取性を向上させ得るとともに、フィルム製造の際の走行性スクラッチ改善効果を向上させ得る。
【0176】
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は、1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
【0177】
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、フィルムのx方向屈折率(nx)、y方向屈折率(ny)およびz方向屈折率(nz)に関連する複屈折値が適切に調節され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
【0178】
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲から外れると、フィルム上でフィラーの存在が目視されたり、フィラーによってヘイズが上昇したりする問題が生じ得る。
【0179】
前記フィラーの含有量は、ポリアミド-イミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~15000ppmであり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド-イミド系重合体固形分の総重量を基準に、100ppm~14500ppm、100ppm~14200ppm、200ppm~14500ppm、200ppm~14200ppm、250ppm~14100ppm、または300ppm~14000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0180】
前記フィラーの含有量が前記範囲から外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して、異物感が目視で確認されたり、生産工程において走行に問題が発生したり、巻取性が低下し得る。
【0181】
一部の実現例において、前記青色顔料は、前記ポリアミド-イミド系重合体の総重量に対して50ppm~5000ppmで含まれ得る。好ましくは、前記青色顔料は、前記ポリアミド-イミド系重合体の総重量に対して、100ppm~5000ppm、200ppm~5000ppm、300ppm~5000ppm、400ppm~5000ppm、50ppm~3000ppm、100ppm0~3000ppm、200ppm~3000ppm、300ppm~3000ppm、400ppm~3000ppm、50ppm~2000ppm、100ppm~2000ppm、200ppm~2000ppm、300ppm~2000ppm、400~2000ppm、50ppm~1000ppm、100ppm~1000ppm、200ppm~1000ppm、300~1000ppm、または400ppm~1000ppmで含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0182】
前記UVA吸収剤は、当技術分野で使用される10nm~400nm波長の電磁波を吸収する吸収剤を含み得る。例えば、前記UVA吸収剤はベンゾトリアゾール(benzotriazole)系化合物を含み、前記ベンゾトリゾール系化合物はN-フェノールベンゾトリアゾール(N-phenolic benzotriazole)系化合物を含み得る。一部の実現例において、前記N-フェノールベンゾトリアゾール系化合物は、フェノール基が炭素数1~10のアルキル基で置換されたN-フェノールベンゾトリゾールを含み得る。前記アルキル基は、2個以上で置換され、直鎖状、分枝状または環状であり得る。
【0183】
一部の実現例において、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド-イミド系重合体の総重量に対して0.1重量%~10重量%で含まれ得る。好ましくは、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド-イミド系重合体の総重量に対して、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0184】
前術の前記ポリアミド-イミド系フィルムの物性は、40μm~80μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド-イミド系フィルムの物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0185】
前述のポリアミド-イミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は互いに組み合わされ得る。
【0186】
また、前記ポリアミド-イミド系フィルムの前述の各元素の含有量、フィルム内の窒素(N)元素の含有量、透過度/ヘイズ/黄色度/モジュラスの平均値および偏差率等は、前記ポリアミド-イミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的物性とともに、後述する前記ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、各段階の具体的な工程条件が総合して調節され得る。
【0187】
例えば、前記ポリアミド-イミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、添加剤の種類および含有量、フィルム製造工程における重合条件および熱勾配などの熱処理条件などと、全てのものが総合され、目的とする範囲の元素含有量および各物性の幅方向平均値、偏差および偏差率を実現し得る。
【0188】
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド-イミド系フィルムおよび機能層を含む。
【0189】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、フィルム内の窒素(N)元素の含有量がフィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に6重量%~7.5重量%である。
【0190】
一実現例によると、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、前記式1で定義されるECA値が15.9以上であり得る。
【0191】
前記ポリアミド-イミド系フィルムに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0192】
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0193】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウがポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含む。
【0194】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、フィルム内の窒素(N)元素の含有量がフィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、および窒素(N)元素の重量の合計を基準に6重量%~7.5重量%である。
【0195】
一実現例によると、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、前記式1で定義されるECA値が15.9以上であり得る。
【0196】
前記ポリアミド-イミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0197】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な分解図である。
図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図である。
図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な断面図である。
【0198】
具体的に、
図1~
図3には、表示部400と、前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド-イミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300とが配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0199】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0200】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0201】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0202】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0203】
また、前記表示部400および前記カバーウィンドウ300の間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であって良く、特に限定されない。
【0204】
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実施例によるディスプレイ装置の外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0205】
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド-イミド系フィルムと機能層とを含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド-イミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0206】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、均一な厚さ、低いヘイズ、高い透過率および透明性を有するディスプレイ装置を提供し得るので、過度の工程変更やコスト増加を必要としないので、生産コストを削減できるという利点もある。
【0207】
実現例によるポリアミド-イミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性およびモジュラス、柔軟性などの機械的特性を有することができ、紫外線にさらされても光学/機械的特性の変化(劣化)が抑制され得る。
【0208】
具体的に、前述した範囲の窒素(N)元素含有量を有するポリアミド-イミド系フィルムの場合、TD方向において物性偏差がほとんど生じないため品質が均一であり、優れた機械的特性、光学特性および耐熱特性を有し得る。これにより、前記ポリアミド-イミド系フィルムをディスプレイ装置用カバーウィンドウまたはディスプレイ装置に適用した場合、最終製品の品質信頼度および製品歩留まりを向上させ得る。
【0209】
[ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0210】
一実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して、ポリアミド-イミド系重合体溶液を調製する段階(S100)と、前記溶液をキャスティングした後、乾燥して、ゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む(
図4参照)。
【0211】
一部の実現例によるポリアミド-イミド系フィルムの製造方法は、前記ポリアミド-イミド系重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)、前記ポリアミド-イミド系重合体溶液を熟成させる段階(S120)および/または前記ポリアミド-イミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。
【0212】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ポリアミド-イミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド-イミド系重合体は、構造単位としてイミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とを所定のモル比で含む重合体である。
【0213】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド-イミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製され得る(S100)。
【0214】
一実現例において、前記重合体溶液を有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時投入して反応させることにより調製され得る。
【0215】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸(Polyamic acid、PAA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸(PAA)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させて、アミド結合およびイミド結合を形成する段階とを含み得る。前記ポリアミック酸溶液は、ポリアミック酸繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0216】
または、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸溶液を脱水してポリイミド(Polyimide、PI)溶液を調製する段階と、前記ポリイミド(PI)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させて、アミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリイミド溶液は、イミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0217】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを1次混合および反応させて、ポリアミド(Polyamide、PA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミド(PA)溶液に前記ジアンヒドリド化合物を2次混合および反応させて、イミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0218】
このようにして調製された前記重合体溶液は、ポリアミック酸(PAA)繰り返し単位、ポリアミド(PA)繰り返し単位およびポリイミド(PI)繰り返し単位からなる群より選択される1種以上を含む重合体が含有された溶液であり得る。
【0219】
または、前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来のイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来のアミド繰り返し単位とを含む。
【0220】
前記ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は、前述の通りである。
【0221】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得る。または、前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は15重量%~25重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0222】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において、効果的にポリアミド-イミド系フィルムが製造され得る。また、製造されたポリアミド-イミド系フィルムは、フィルムの方向に応じて類似の熱的特性を示し、品質が均一であり、優れた機械的特性、光学特性および耐熱特性を有し得る。
【0223】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、触媒を投入する段階をさらに含み得る。
【0224】
この際、前記触媒は、ベータピコリン、酢酸無水物、イソキノリン(isoquinoline、IQ)およびピリジン系化合物からなる群より選択される1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0225】
前記触媒は、前記ポリアミック酸1モルを基準に、0.01モル当量~0.5モル当量、0.01モル当量~0.4モル当量、または0.01モル当量~0.3モル当量を投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0226】
前記触媒を投入すると、反応速度を向上させることができ、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内の化学的結合力を向上させ得る。
【0227】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)をさらに含み得る。前記重合体溶液の粘度は、常温を基準に、80000cps~500000cps、100000cps~500000cps、150000cps~500000cps、150000cps~450000cps、200000cps~450000cps、200000cps~400000cps、200000cps~350000cps、または250000cps~350000cpsで調整され得る。この場合、ポリアミド-イミド系フィルムの製膜性を向上させることにより、厚さ均一度を向上させ得る。
【0228】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合および反応させて、第1重合体溶液を調製する段階と、前記ジカルボニル化合物を追加投入して目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階とを含み得る。
【0229】
前記第1重合体溶液を調製する段階および第2重合体溶液を調製する段階の場合、調製された重合体溶液の粘度が異なる。例えば、前記第1重合体溶液よりも前記第2重合体溶液の粘度がさらに高い。
【0230】
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度とが異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度より速くあり得る。
【0231】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
【0232】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
【0233】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
【0234】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0235】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0236】
他の実現例において、前記重合体溶液に、フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上を添加し得る。
【0237】
前記フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤の種類、含有量などの具体的な内容は前述の通りである。前記フィラー、青色顔料および/またはUVA吸収剤は、前記重合体溶液内で前記ポリアミド-イミド系重合体と混合され得る。
【0238】
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
【0239】
前記温度にて保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0240】
一部の実現例において、前記重合体溶液または前記粘度調整された重合体溶液を熟成させ得る(S120)。
【0241】
前記熟成は、前記重合体溶液を、24時間以上-10~10℃の温度条件に静置して行われ得る。この場合、前記重合体溶液に含まれているポリアミド-イミド系重合体または未反応物が、例えば、反応を仕上げたり、化学平衡をなしたりすることによって、前記重合体溶液が均質化され、これにより形成されたポリアミド-イミド系フィルムの機械的特性および光学特性が、フィルムの全面積に対して実質的に均一となり得る。好ましくは、前記熟成は-5~10℃、-5~5℃または-3~5℃の温度条件にて行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0242】
一実現例において、前記ポリアミド-イミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。前記脱気により前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現し得る。
【0243】
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容された反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件にて真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内部の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0244】
また、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件にて前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの優れた光学物性および優れた機械的物性などを実現し得る。
【0245】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0246】
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別の工程で行われ得る。
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0247】
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド-イミド系フィルム表面の物性が向上し得る。
【0248】
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液を支持体上で塗布、押出および/または乾燥してゲルシートを形成し得る。
【0249】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度とを確保し得る。
【0250】
前記重合体溶液の粘度は前述のように、常温にて150000cps~500000cpsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がキャスティングされる際に欠陥なく均一な厚さにキャスティングされ、乾燥過程において局所的/部分的な厚さ変化もなく、実質的に均一な厚さのポリアミド-イミド系フィルムを形成し得る。
【0251】
前記重合体溶液をキャスティングした後、60℃~150℃、70℃~150℃、80℃~150℃、または90℃~150℃の温度で、5分~60分間乾燥してゲルシートを製造し得る。具体的に、前記重合体溶液を90℃~140℃の温度で15分~40分間乾燥してゲルシートを製造し得る
【0252】
前記乾燥中に前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造され得る。
【0253】
前記乾燥されたゲルシートを熱処理して、ポリアミド-イミド系フィルムを形成し得る(S300)。
前記ゲルシートの熱処理は、例えば、熱硬化装置により行われ得る。
【0254】
前記ゲルシートを熱処理する段階は、少なくとも1つのヒーターによって熱処理する段階を含む。
【0255】
また、前記ゲルシートを熱処理する段階は、熱風によって熱処理する段階をさらに含み得る。
【0256】
一実現例において、前記ゲルシートを熱処理する段階は、熱風によって熱処理する段階と、少なくとも1つのヒーターによって熱処理する段階とを含む。
【0257】
一実現例において、前記熱風による熱処理する段階を行うと、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さが実現できないか、または表面品質が不均一となることがあり、表面エネルギーが上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0258】
前記熱風による熱処理は、60℃~500℃の範囲で5分~200分間行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、80℃~300℃の範囲で1.5℃/分~20℃/分の速度で昇温させながら10分~150分間行われ得る。より具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、140℃~250℃の温度範囲で行われ得る。
【0259】
この際、前記ゲルシートの熱処理開始温度は60℃以上であり得る。具体的に、前記ゲルシートの熱処理開始温度は80℃~180℃であり得る。また、熱処理中の最高温度は200℃~500℃であり得る。
【0260】
また、前記ゲルシートの熱風による熱処理は、2段階以上で行われ得る。具体的に、前記ゲルシートの熱風による熱処理は、第1熱風処理段階と第2熱風処理段階とを順次行い、前記第2熱風処理段階における温度が、第1熱風処理段階における温度より高くあり得る。
【0261】
一実現例において、前記ゲルシートを熱処理する段階は、少なくとも1つのヒーターによって熱処理する段階、具体的には、複数のヒーターによって熱処理する段階を含み得る。
【0262】
一例として、
図5および
図6を参照すると、複数のヒーターは、ゲルシート(ポリアミド-イミド系フィルム)のTD方向に離隔された第1ヒーターHC、第2ヒーターHNおよび第3ヒーターHSを含み得る。第1ヒーターHCは、ゲルシートの中心部に対応するようにヒーター装着部A1、B1に装着され、第2ヒーターHNは、ゲルシートの両端部の一方に対応するようヒーター装着部A1、B1に装着され、第3ヒーターHSは、ゲルシートの両端部の他方に対応するようヒーター装着部A1、B1に装着され得る。すなわち、第1ヒーターHCは、第2ヒーターHNと第3ヒーターHSとの間に位置するようにヒーター装着部A1、B1に装着され得る。ヒーター装着部A1、B1は、ゲルシートに対向するように設けられ得る。一例として、ヒーター装着部A1、B1は、ゲルシートと離隔して対向するように設けられ得る。好ましくは、第1ヒーターHCと第2ヒーターHNとの間の間隔は、第1ヒーターHCと第3のヒーターHSとの間の間隔と同一であり得る。ヒーター装着部A1、B1は、ゲルシート(ポリアミド-イミド系フィルム)の進行方向(または長さ方向)に沿って2つ以上配置され得る。
【0263】
前記少なくとも1つのヒーターは、IRヒーターを含み得る。ただし、少なくとも1つのヒーターの種類は、前記の例に限定されず、様々に変更され得る。
【0264】
具体的に、前記複数のヒーターはIRヒーターを含み得る。より具体的に、前記第1ヒーター、前記第2ヒーター、および前記第3ヒーターはIRヒーターを含み得る。
【0265】
前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理は、300℃以上の温度範囲で行われ得る。具体的に、前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理は、300℃~500℃の温度範囲で1分~30分、または1分~20分間行われ得る。
【0266】
図6を参照すると、ヒーター装着部B1およびゲルシートB2は平行に位置し、ベルトA3上に配置された前記ゲルシートB2から特定距離の分で離隔した位置にヒーター装着部B1が位置する。
【0267】
前記ゲルシートB2は、TD方向に3つの区画された領域(N領域、C領域、S領域)を含む。前記3つの区画領域において、C領域がゲルシートの中間に位置する領域であり、N領域およびS領域はゲルシートの端部に位置する領域である。
【0268】
N領域の幅をw1、C領域の幅をw2、S領域の幅をw3とすると、ゲルシートの幅w0はw1、w2、w3の和に等しい。
【0269】
また、前記3つの区画領域の幅に関して、w1:w2:w3の幅比は1:0.5~1.5:1であり得る。具体的に、前記3つの区画領域の幅に関して、w1=w2=w3であり得る。
【0270】
前記ゲルシートB2から特性距離の分で離隔された位置に、平行してヒーター装着部B1が位置し、ヒーター装着部B1のうちゲルシートB2のN領域に対応する領域は第2ヒーターHNを含み、ヒーター装着部B1のうちゲルシートB2のC領域に対応する領域は第1ヒーターHCを含み、ヒーター装着部B1のうちゲルシートB2のS領域に対応する領域は第3ヒーター(HS)を含む。
【0271】
一実現例において、前記少なくとも1つのヒーターによって熱処理する段階において、前記ゲルシートのTD方向に3つの離隔されたヒーターが位置するヒーター装着部において、第1ヒーターHCの温度をTHCとし、第2ヒーターHNおよび第3ヒーターHSの温度をそれぞれTHN、THSとすると、前記THNおよびTHSがTHCよりも高い。
【0272】
他の実現例において、前記ゲルシートを熱処理する段階は、前記ゲルシートのTD方向に離隔された第1ヒーター、第2ヒーター、および第3ヒーターによって熱処理する段階を含み、前記ゲルシートの中心部に対応する前記第1ヒーターの温度をTHCとし、前記ゲルシートの両端部に対応する前記第2ヒーターおよび前記第3ヒーターの温度をそれぞれTHN、THSとすると、前記THNおよびTHSがTHCよりも高い。
【0273】
具体的に、前記THCは300℃~360℃、300℃~350℃、または310℃~350℃である。
【0274】
前記THNおよびTHSは、310℃~420℃、330℃~420℃、または340℃~400℃である。
【0275】
前記THNおよびTHSは、THCよりも2%~18%、3%~18%、5%~15%、8%~15%、10%~20%、または10%~15%さらに高い。
【0276】
前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理段階において、各ヒーターの間に前述のような温度勾配を設けることにより、目的とする範囲の元素含有率値を制御することができ、フィルムの方向に応じて類似の熱的特性を実現し得る。また、フィルムの熱的特性だけでなく、透過度、ヘイズ、黄色度、モジュラスなど他の機械的物性、光学物性も、フィルムのTD方向にて物性偏差がほとんど生じなく、フィルムの方向によって物性偏差がほとんど生じないので、均一な品質のフィルムを得ることができる。
【0277】
次いで、前記ゲルシートを熱処理する段階以降、硬化したフィルムを移動させながら冷却する段階を行い得る。
【0278】
前記硬化フィルムを移動させながら冷却する段階は、100℃/分~1000℃/分の速度で減温する第1減温段階と、40℃/分~400℃/分の速度で減温する第2減温段階とを含み得る。
【0279】
この際、具体的に、前記第1減温段階後に前記第2減温段階が行われ、前記第1減温段階の減温速度は、前記第2減温段階の減温速度より速くあり得る。
【0280】
例えば、前記第1減温段階中の最大速度が、前記第2減温段階中の最大速度よりも速い。または、前記第1減温段階中の最低速度が、前記第2減温段階中の最低速度よりも速い。
【0281】
前記硬化フィルムの冷却段階が、このように多段階で行われることにより、前記硬化フィルムの物性をより安定化することができ、前記硬化過程で確立したフィルムの光学物性および機械的物性をより安定して長期間維持し得る。
【0282】
また、前記冷却した硬化フィルムを、ワインダー(winder)により巻取る段階を行い得る。
【0283】
この際、前記乾燥時のベルト上においてゲルシートの移動速度:巻取時の硬化フィルムの移動速度の比は1:0.95~1:1.40である。具体的に、前記移動速度の比は、1:0.99~1:1.20、1:0.99~1:1.10、または1:1.00~1:1.05であり得るが、これに限定されるものではない。
【0284】
前記移動速度の比が前記範囲から外れると、前記硬化フィルムの機械的物性が損なわれるおそれがあり、柔軟性および弾性特性が低下するおそれがある。
【0285】
前記ポリアミド-イミド系フィルムの製造方法において、下記一般式1による厚さ偏差(%)は3%~30%であり得る。具体的に、前記厚さ偏差(%)は5%~20%であり得るが、これに限定されるものではない。
[一般式1]
厚さ偏差(%)={(M1-M2)/M1}×100
前記一般式1において、M1は前記ゲルシートの厚さ(μm)であり、M2は巻取時の冷却された硬化フィルムの厚さ(μm)である。
【0286】
前記ポリアミド-イミド系フィルムは、前述の製造方法に基づいて製造されることにより、光学的、機械的に優れた物性を示すだけでなく、等方性を示し均一な品質を有し得る。このようなポリアミド-イミド系フィルムは、柔軟性および透明性が求められる様々な用途に適用可能であり得る。例えば、前記ポリアミド-イミド系フィルムは、ディスプレイ装置だけでなく、太陽電池、半導体素子、センサなどにも適用され得る。
【0287】
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド-イミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0288】
(実施例)
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0289】
(実施例1)
温度調節が可能な反応器に、10℃の窒素雰囲気下で有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)を満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を徐々に投入しながら溶解した。
【0290】
その後、ジアンヒドリド化合物として、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)を徐々に投入して2時間撹拌した。
【0291】
そして、ジカルボニル化合物として、テレフタロイルクロリド(TPC)を投入して1時間撹拌し、イソフタロイルクロリド(IPC)を投入し1時間撹拌して、重合体溶液を調製した。
【0292】
得られた重合体溶液を支持体上に塗布し、90℃~140℃の温度範囲で乾燥してゲルシートを製造した。
【0293】
その後、第1熱処理段階として、前記ゲルシートを140℃~250℃の温度で熱風処理した。次いで、前記ゲルシートの第2熱処理段階として、TD方向に温度勾配を設けて複数のヒーターを通過させる段階を行った。この際、複数のヒーターとしてIRヒータ(最高温度1200℃のIRヒータ)を使用した。具体的に、フィルムのTD方向に3つの離隔されたヒーターが位置するヒーター装着部において、中間に位置するヒータ(第1ヒーター)の温度を330℃(THC)に設定し、ヒーター装着部の両端部に位置する2つのヒーター(第2ヒーターおよび第3ヒーター)の温度を、中間に位置するヒーターの温度より15%高い温度である379.5℃(THN、THS、1.15THC)に設定してゲルシートを通過させ、厚さ50μmのポリアミド-イミド系フィルムを得た。
【0294】
ポリアミド-イミド系重合体の具体的な組成およびモル比は、下記表1の製造例に記載の通りである。また、製造されたフィルム内の各元素含有量を元素分析装置(モデル名Flash2000(Thermo Fisher Scientific社, Germany))を用いて、窒素(N)、炭素(C)、酸素(O)、および水素(H)元素の含有量を測定しており、フィルム内元素の含有率は下記表2および表3に記載の通りである。
【0295】
(実施例2、3および比較例1~3)
下記表1および表2に記載のように、重合体の組成およびモル比、複数のヒーターを通過させる段階でヒーターの温度およびTD方向の温度勾配の程度等を異にしたことを除いて、実施例1と同様の方法によりフィルムを製造した。
(製造例:重合体の組成)
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
(評価例)
前記実施例および比較例において製造されたフィルムについて、下記のように物性を測定および評価し、その結果を下記表4および表5に示した。
【0300】
(評価例1:フィルムの厚さ測定)
日本ミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547-401を用いて、N領域、C領域、およびS領域それぞれにおいて任意の2か所を選択して計6カ所で測定した厚さの平均値、それらの偏差、および偏差率計算した。
【0301】
(評価例2:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7136規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0302】
(評価例3:黄色度測定)
黄色度(Yellow Index、YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65、10°の条件で、ASTM-E313規格により測定した。
【0303】
(評価例4:モジュラスおよび伸び率測定)
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交した方向に10cm以上、および主収縮方向に10mmでカットし、10cm間隔のクリップに装着した後、常温にて破断が起きるまで10mm/分の速度で伸しながら応力-ひずみ曲線(stress-strain curve)を得た。前記応力-ひずみ曲線において、初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。また、破断の際、初期長さを基準に変形した長さの変化率を伸び率(%)とした。
【0304】
前記モジュラスおよび伸び率測定に関して、フィルムのMD方向およびTD方向を長さ方向にしてそれぞれ測定し、TD方向を長さ方向にして測定した値を、MD方向を長さ方向にして測定した値で除した後100を乗じて、その比率を求めており、それぞれの値(RMOおよびREL)を下記表5に示した。
【0305】
(評価例5:耐光性評価)
Q-Lab社のQUV/Spray/RP装置を用いて、60℃にてUV-A LAMP(波長340nm)をフィルムに0.63W/m2で72時間照射した後、前記評価例3による方法により再度黄色度を測定し、黄色度変化量(ΔYI)を計算して、黄色度変化量が少ないほど耐光性に優れるものと評価した。
【0306】
(評価例6:耐溶剤性評価)
N、C、S領域を有するフィルムサンプル(5cm×15cm)を溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて3分間乾燥させ、前記評価例2による方法により再度ヘイズを測定し、前記3つの領域のフィルムサンプルのヘイズ変化量(ΔHz)の平均値を計算して、ヘイズ変化量が少ないほど耐溶剤性に優れるものと評価した。前記溶媒としては、MIBKまたはIPAが用いられた。
【0307】
また、前述のフィルムの厚さ、透過度、ヘイズ、黄色度、モジュラスに関して、製造されたフィルムのN領域、C領域、S領域のそれぞれから任意の2か所を選択して計6か所で測定した値の平均値、それらの偏差、および偏差率を求めて表4に記載した。前記偏差率は、偏差を平均値で除した後、100を乗じて計算された値である。
【0308】
【0309】
【0310】
表4および表5を参照すると、フィルム内の窒素(N)元素の含有量が、フィルム内の炭素(C)、水素(H)、酸素(O)および窒素(N)元素の重量の合計を基準に6重量%~7.5重量%に調整された実施例によるフィルムの場合、透過度、ヘイズ、黄色度、モジュラスなどフィルムの主要物性の面でTD方向の品質のばらつきを著しく減少させ、等方性を有して、フィルム品質の信頼性を改善することができ、後工程等に主に用いられる溶剤に浸漬したり、光に一定時間露出させたりした後でも、ヘイズ変化量が特定レベル以下を示すことにより、フィルムの耐溶剤性および耐光性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0311】
100:ポリアミド-イミド系フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:カバーウィンドウ
400:表示部
500:接着層
A1、B1:ヒーター装着部
A2、B2:ゲルシート
A3:ベルト
HN、HC、HS:ヒーター