(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】エラバサイクリンの結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 295/15 20060101AFI20241205BHJP
A61K 31/65 20060101ALI20241205BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C07D295/15 CSP
A61K31/65
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2022172268
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2019520717の分割
【原出願日】2017-10-19
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511032017
【氏名又は名称】テトラフェース ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ラフランス,ダニー
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン,フィリップ,シー.
(72)【発明者】
【氏名】リウ,イエンシェン
(72)【発明者】
【氏名】フー,ミンシャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チー-リー
(72)【発明者】
【氏名】ニウ,ジョン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0012480(US,A1)
【文献】特表2019-531321(JP,A)
【文献】国際公開第2016/065290(WO,A1)
【文献】Organic Process Research & Development,2013年,Vol.17,pp.838-845
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,2007年01月15日,Vol.6, No.10,pp.20-25
【文献】平山令明編,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008年07月25日,pp.57-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式1:
【化1】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形の物を調製する方法であって、
前記結晶形の物は、Form Iであり、且つ7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
前記方法は、
(a)エタノール、水および濃HClの混合物に、構造式1の化合物の結晶形Bの物を懸濁させ、それにより結晶形Bの物のスラリーを形成すること、ここで、結晶形Bの物は、以下の値:9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする、
(b)結晶形Iの物の粒子のスラリーを形成するのに十分な時間および十分な温度で、結晶形Bの物のスラリーを撹拌すること、
ならびに
(c)結晶形Iの物の粒子を単離すること
を含む、方法。
【請求項2】
構造式1:
【化2】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形の物を調製する方法であって、
前記結晶形の物は、Form Jであり、且つ7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
前記方法は、
(a)結晶形Iの物を、約70%~約90%の相対湿度にて約20℃~約45℃の温度に曝露すること、ここで、前記結晶形Iの物は、7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする、
および
(b)結晶形Jの物の粒子を単離すること
を含む、
方法。
【請求項3】
構造式1:
【化3】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形の物であって、
前記結晶形の物は、Form Bであり、且つ以下の値±0.2°:9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
構造式(1)で表される化合物は、水およびメタノールの共溶媒和物である、結晶形の物。
【請求項4】
前記結晶形の物は、以下の値±0.2°:9.19°、9.66°、17.63°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピークを特徴とする、請求項3記載の結晶形の物。
【請求項5】
前記結晶形の物は、2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
少なくとも3つのx線粉末回折ピークは、以下の値±0.2°:9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択され、残りのピークは、以下の値±0.2°:6.10°、9.48°、13.05°、17.63°、17.77°、19.94°および20.48°から選択される、請求項3記載の結晶形の物。
【請求項6】
前記結晶形の物は、以下の値±0.2°:9.19°、9.66°、17.63°、23.32°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、請求項3記載の結晶形の物。
【請求項7】
前記結晶形の物は、2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
少なくとも3つのx線粉末回折ピークは、以下の値±0.2°:9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択され、残りのピークは、以下の値±0.2°:6.10°、9.48°、13.05°、17.63°、17.77°、19.94°、20.48°および23.87°から選択される、請求項3記載の結晶形の物。
【請求項8】
前記結晶形の物は、以下の値±0.2°:6.10°、9.19°、9.48°、9.66°、12.08°、13.05°、17.63°、17.77°、19.54°、19.94°、20.48°、23.32°、23.87°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、請求項3記載の結晶形の物。
【請求項9】
前記結晶形の物は、
以下の図
:
で示されたものと一致するx線粉末回折パターンを特徴とする、請求項3記載の結晶形の物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年10月19日に出願された米国仮出願第62/410,230号明細書の利益を主張する。上記出願の教示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
本発明は、Department of Health and Human Servicesにより与えられた契約番号HHSO100201200002Cおよび下請契約番号7834S1の下で、政府の支援より行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、エラバサイクリンの結晶形に関する。
【背景技術】
【0004】
テトラサイクリンは、ヒトおよび獣医の医薬で広く使用されている広域スペクトル抗菌剤である。発酵または半合成によるテトラサイクリンの総生産量は、年間数千メートルトンである。
【0005】
治療目的のためのテトラサリクリンの広範な使用により、感受性が高い細菌種の間でさえも、この抗生物質に対する耐性が出現している。抗菌活性が改善されており且つ他のテトラサイクリン応答性の疾患または障害に対して有効であるテトラサイクリン類似体が説明されている(例えば、特許文献1を参照されたい)。特に強力な化合物は、エラバサイクリン(7-フルオロ-9-ピロリジノアセトアミド-6-デメチル-6-デオキシテトラサイクリン)であり、このエラバサイクリンは、構造式1:
【化1】
で示す化学構造を有する。
【0006】
化合物の固体形態は、医薬組成物の製剤化において重要であり得る。例えば、化合物の結晶形および非晶形は、医薬組成物での使用に対する適合性に関する物理的特性(例えば、安定性、溶解速度、密度等)が異なり得る。物理的特性の相違は、例えば医薬組成物での使用に適した形態の合成における中間体としての、結晶質または非晶質の有用性にも影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱力学的に安定であり且つ医薬組成物での使用に適してる(例えば、容易に溶解可能であり、良好な流動特性および/または良好な化学的安定性を示す)、エラバサイクリンの結晶形が必要とされている。さらには、医薬組成物での使用のためのエラバサイクリンを高収率および高純度で製造可能な物理的特性を有する、エラバサイクリンの結晶形が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、結晶Form A、結晶Form B、結晶Form Iおよび結晶Form Jと命名された、構造式1で表される化合物のビスHCl塩の結晶形と、この結晶形を含む組成物とに関する。
【0010】
一実施形態では、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が提供され、この結晶形はForm Iである。この実施形態では、結晶Form Iは、7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする。
【0011】
別の実施形態では、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が提供され、この結晶形はForm Jである。この実施形態では、結晶Form Jは、7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする。
【0012】
さらに別の実施形態では、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が提供され、この結晶形はForm Aである。この実施形態では、結晶Form Aは、3.31°、6.01°、6.33°および8.73°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする。
【0013】
別の実施形態では、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が提供され、この結晶形はForm Bである。この実施形態では、結晶Form Bは、9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする。
【0014】
別の実施形態は、構造式1:
【化2】
のビスHCl塩で表される化合物の1種または複数種の結晶形の粒子を含む組成物であり、この粒子は下記から選択される:7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form Iの粒子;7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶形Form Jの粒子;3.31°、6.01°、6.33°および8.73°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form Aの粒子;ならびに9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form Bの粒子。具体的な態様では、この組成物は、結晶Form Iの粒子および結晶form Jの粒子を含む。別の態様では、この組成部中での結晶Form Jの重量百分率は25%以下(例えば、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下または約1%)である。
【0015】
別の実施形態は、Form Iの粒子、Form Jの粒子、Form Aの粒子、Form Bの粒子またはこれらの混合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0016】
さらなる実施形態は、テトラサイクリン応答性の疾患または障害を処置するまたは予防する方法であって、結晶Form I、Form J、Form A、Form Bまたはこれらの混合物の治療上有効なまたは予防上有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。一態様では、このテトラサイクリン応答性の疾患または障害は感染である。具体的な態様では、この感染は細菌により引き起こされる。
【0017】
上記は、本発明の例示的実施形態の下記のより具体的な説明から明らかであるだろう。
【0018】
即ち、本発明の要旨は、以下のものに関する。
項1
構造式1:
【化A-1】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形であって、
前記結晶形はForm Iであり、且つ7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする、
結晶形。
項2
前記結晶形は、7.22°、7.80°、8.19°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項1に記載の結晶形。
項3
前記結晶形は、7.22°、7.80°、8.19°、10.41°、11.11°、15.00°、16.47°および20.44°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項1に記載の結晶形。
項4
前記結晶形は、7.22°、7.80°、8.19°、10.41°および11.11°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項1に記載の結晶形。
項5
前記結晶形は、7.22°、7.80°、8.19°、10.41°、11.11°、15.00°、16.47°および20.44°から選択される2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項1に記載の結晶形。
項6
前記結晶形は、7.22°、7.80°、8.19°、10.41°、11.11°、12.17°、13.52°、15.00°、15.70°、16.47°、19.96°および20.44°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項1に記載の結晶形。
項7
前記結晶形は、
図5で示されたものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする、項1~6のいずれか一項に記載の結晶形。
項8
構造式1の化合物は共溶媒和物の形態である、項1~7のいずれか一項に記載の結晶形。
項9
前記共溶媒和物は、水およびエタノール溶媒和物である、項8に記載の結晶形。
項10
前記共溶媒和物は、二水和物およびヘミエタノレート共溶媒和物である、項8に記載の結晶形。
項11
前記共溶媒和物は可変性の共溶媒和物である、項8に記載の結晶形。
項12
構造式1:
【化A-2】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形であって、
前記結晶形はForm Jであり、且つ7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする、
結晶形。
項13
前記結晶形は、7.02°、7.80°、10.25°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項12に記載の結晶形。
項14
前記結晶形は、7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、13.29°、13.60°、14.98°、21.92°、22.13°、23.22°、24.02°および25.28°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項12に記載の結晶形。
項15
前記結晶形は、7.02°、7.80°、10.25°、22.13°および23.22°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項12に記載の結晶形。
項16
前記結晶形は、7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、13.29°、13.60°、14.98°、21.92°、22.13°、23.22°、24.02°および25.28°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項12に記載の結晶形。
項17
前記結晶形は、7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、11.85°、13.29°、13.60°、14.98°、15.27°、16.21°、16.39°、17.04°、20.10°、21.53°、21.92°、22.13°、22.52°、23.22°、24.02°、24.41°、25.28°、26.08°、26.35°、26.78°および27.90°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項12に記載の結晶形。
項18
前記結晶形は、
図7で示されたものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする、項12~17のいずれか一項に記載の結晶形。
項19
構造式1:
【化A-3】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形であって、
前記結晶形はForm Aであり、且つ3.31°、6.01°、6.33°および8.73°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする、
結晶形。
項20
前記結晶形は、3.31°、6.01°、6.33°、8.73°および14.06°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項19に記載の結晶形。
項21
前記結晶形は、3.31°、6.01°、6.33°、8.73°、10.49、14.06°および16.55°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項19に記載の結晶形。
項22
前記結晶形は、3.31°、6.01°、6.33°および8.73°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項19に記載の結晶形。
項23
前記結晶形は、3.31°、6.01°、6.33°、8.73°、10.49、14.06°および16.55°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項19に記載の結晶形。
項24
前記結晶形は、
図1で示されたものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする、項19~23のいずれか一項に記載の結晶形。
項25
構造式1の化合物は溶媒和物の形態である、項19~24のいずれか一項に記載の結晶形。
項26
構造式1の化合物は共溶媒和物の形態である、項19~24のいずれか一項に記載の結晶形。
項27
前記共溶媒和物は、水およびエタノール共溶媒和物である、項26に記載の結晶形。
項28
構造式1:
【化A-4】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形であって、
前記結晶形はForm Bであり、且つ9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする、
結晶形。
項29
前記結晶形は、9.19°、9.66°、17.63°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項28に記載の結晶形。
項30
前記結晶形は、6.10°、9.19°、9.48°、9.66°、13.05°、17.63°、17.77°、19.94°、20.48°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項28に記載の結晶形。
項31
前記結晶形は、9.19°、9.66°、23.32°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項28に記載の結晶形。
項32
前記結晶形は、9.19°、9.66°、17.63°、23.32°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項28に記載の結晶形。
項33
前記結晶形は、6.10°、9.19°、9.48°、9.66°、13.05°、17.63°、17.77°、19.94°、20.48°、23.32°、23.87°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする、項28に記載の結晶形。
項34
前記結晶形は、6.10°、9.19°、9.48°、9.66°、12.08°、13.05°、17.63°、17.77°、19.54°、19.94°、20.48°、23.32°、23.87°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、項28に記載の結晶形。
項35
前記結晶形は、
図3のいずれかで示されたものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする、項28~34のいずれか一項に記載の結晶形。
項36
前記構造式1の化合物は溶媒和物の形態である、項28~35のいずれか一項に記載の結晶形。
項37
構造式1の化合物は共溶媒和物の形態である、項28~35のいずれか一項に記載の結晶形。
項38
前記溶媒和物は、水およびメタノール共溶媒和物である、項37に記載の結晶形。
項39
構造式1:
【化A-5】
のビスHCl塩で表される化合物の1種または複数種の結晶形の粒子を含む組成物であって、
前記1種または複数種の結晶形は下記から選択される:
前記粒子は、7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form Iである;
前記粒子は、7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶形Form Jである;
前記粒子は、3.31°、6.01°、6.33°および8.73°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form Aである;
ならびに
前記粒子は、9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form Bである、
組成物。
項40
前記組成物は、結晶Form Iの粒子および結晶form Jの粒子を含む、項39に記載の組成物。
項41
前記組成物中での結晶Form Jの重量百分率は25%以下である、項40に記載の組成物。
項42
項1~38のいずれか一項に記載の結晶形または項39~41のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
項43
テトラサイクリン応答性の疾患または障害を処置するまたは予防する方法であって、項1~38のいずれか一項に記載の結晶形、項39~41のいずれか一項に記載の組成物、または項41に記載の医薬組成物の治療上有効なまたは予防上有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法。
項44
前記テトラサイクリン応答性の疾患または障害は感染である、項43に記載の方法。
項45
前記感染は細菌により引き起こされる、項44に記載の方法。
項46
前記感染はグラム陽性菌により引き起こされる、項45に記載の方法。
項47
前記感染はグラム陰性菌により引き起こされる、項45に記載の方法。
項48
前記感染は尿路感染である、項44に記載の方法。
項49
前記感染は腹腔内感染である、項44に記載の方法。
項50
前記テトラサイクリン応答性の疾患または障害は口腔粘膜炎である、項43に記載の方法。
項51
前記患者は頭頸部癌に罹患している、項50に記載の方法。
項52
前記頭頸部癌は、喉頭;下咽頭;鼻腔;副鼻腔;鼻咽頭;口腔;中咽頭;および唾液腺から選択される、項51に記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、エラバサイクリンの結晶形が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ビスHCl塩)-Form Aとしての構造式1のx線粉末回折(XRPD)パターンを示す図である。
【
図2A】構造式1-Form Aの熱重量分析(TGA)サーモグラムを示す図である。
【
図2B】構造式1-Form Aの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
【
図3】構造式1-Form BのXRPDパターンを示す図である。
【
図4A】構造式1-Form BのTGAサーモグラムを示す図である。
【
図4B】構造式1-Form BのDSCサーモグラムを示す図である。
【
図5】構造式1-Form IのXRPDパターンを示す図である。
【
図6A】構造式1-Form IのTGAサーモグラムを示す図である。
【
図6B】構造式1-Form IのDSCサーモグラムを示す図である。
【
図7】構造式1-Form JのXRPDパターンを示す図である。
【
図8A】構造式1-Form JのTGAサーモグラムを示す図である。
【
図8B】構造式1-Form JのDSCサーモグラムを示す図である。
【
図10】構造式1-Form AのDVSを示す図である。
【
図11】構造式1-Form BのDVSを示す図である。
【
図12】構造式1-Form IのDVSを示す図である。
【
図13】構造式1-Form JのDVSを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の例示実施形態の説明は下記である。
【0022】
エラバサイクリンの結晶形
本明細書で提供されるのは、結晶Form A、結晶Form B、結晶Form Iおよび結晶Form Jと命名された、構造式1で表される化合物のビスHCl塩の結晶形である。
【0023】
「結晶」は、本明細書で使用される場合、構成部分間の距離が固定されている、原子、イオンまたは分子(例えば、無水分子もしくはその塩、その溶媒和物、または上述の組合せ)の三次元パターンの反復により形成される均一な固体を指す。単位格子は、このパターンで最も単純な反復単位である。
【0024】
本明細書で提供される結晶形は、単結晶形であり得る、または2種以上の異なる結晶形の混合物を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、構造式1の化合物の結晶Form A、B、IおよびJは、単結晶形(即ち、単結晶Form A、単結晶Form B、単結晶Form I、単結晶Form J)として提供される。あるいは、結晶形は、構造式1の化合物の2種以上の結晶形の混合物(例えば、結晶Form A、B、IおよびJのうちの2種以上の混合物、具体的には、結晶Form IおよびJの混合物)を含み得る。
【0025】
「単結晶形」は、本明細書で使用される場合、結晶性固体の単一結晶、または結晶性固体の複数の結晶であって、この複数の結晶のそれぞれは同一の結晶形を有する、複数の結晶を指す。
【0026】
本明細書で提供される結晶形を、x線粉末回折(XRPD)分析における特徴的なピークに基づいて同定し得る。XRPDは、散乱角の関数として、粉末または微結晶の物質により散乱されたx線、中性子または電子を測定する科学技術である。XRPDを使用して結晶性固体を同定して特徴付け得、なぜならば、特定の固体により生じる回折パターンは概して、この固体に特有であり、この固体を同定するための「指紋」として使用され得るからである。例えば、参照XRPDパターンまたはディフラクトグラムと実質的に一致するXRPDパターンまたはディフラクトグラム(例えば、未知の試料等の試料により生じるパターンまたはディフラクトグラム)を使用して、試料物質と参照物質との間の同一性を決定し得る。XRPDディフラクトグラムにおけるピークの位置および相対強度の両方が、物質の特定の位相および同一性を示す。
【0027】
図1、
図3、
図5および
図7は、本明細書で説明された様々な結晶形のXRPDパターンを示す。XRPDパターンまたはディフラクトグラムを示す本明細書の1つまたは複数の図面と「実質的に一致する」XRPDパターンは、本明細書で提供された1つまたは複数の図面のXRPDパターンを生じた構造式1の化合物の試料と同一の結晶形の構造式1の化合物を表すと当業者により考えられることになるXRPDパターンである。そのため、実質的に一致するXRPDパターンは、図面のうちの1つのXRPDパターンと同一であり得る、またはより可能性が高いのは、図面のうちの1つまたは複数と若干異なり得る。図面のうちの1つまたは複数と若干異なるXRPDパターンは、本明細書で表された回折パターンの線のそれぞれを必ずしも示すとは限らない、および/またはこれらの線の外観もしくは強度の僅かな変化またはこれらの線の位置のシフトを示す場合がある。これらの相違は概して、データの入手に関与する条件の相違またはデータを入手するために使用される試料の純度の差異に起因する。当業者は、結晶性化合物の試料が、本明細書で開示された形態と同一の形態または異なる形態であるかどうかを、この試料のXRPDパターンと、本明細書で開示された、対応するXRPDパターンとの比較により決定し得る。
【0028】
本明細書で指定される任意の2θ角は、この指定の値±0.2°を意味することを理解すべきである。例えば、説明された実施形態または請求項が4.4°の2θを指定する場合には、このことは4.4°±0.2°(即ち、4.2°から4.6°の2θ角)を意味すると理解すべきである。
【0029】
同様に、本明細書で提供された結晶形を、示差走査熱量測定(DSC)および/または熱重量分析(TGA)に基づいても同定し得る。DSCは、試料の温度を上昇させるために必要とされる熱量の差異が温度の関数として測定される熱分析技術である。DSCを使用して、試料の物理的変換(例えば相転移)を検出し得る。例えば、DSCを使用して、試料が結晶化、融解またはガラス転移を受ける温度を検出し得る。
【0030】
TGAは、熱重量分析の方法であって、物質の物理的なおよび化学的な特性の変化が、(一定の加熱速度を伴う)温度上昇の関数として、または(一定の温度および/もしくは一定の質量損失を伴う)時間の関数として測定される、方法である。TGAは、二次相転移等の物理現象についての情報、または脱溶媒和および/もしくは分解等の化学現象についての情報を提供し得る。
【0031】
図2B、
図4B、
図6Bおよび
図8Bは、本明細書で説明された様々な結晶形のDSCサーモグラムを示す。
図2A、
図4A、
図6Aおよび
図8Aは、本明細書で説明された様々な結晶形のTGAサーモグラムを示す。DSCまたはTGAのサーモグラムを示す本明細書の1つまたは複数の図面と「実質的に一致する」DSCまたはTGAのサーモグラムは、本明細書で提供された1つまたは複数の図面のDSCまたはTGAのサーモグラムを生じた構造式1の化合物の試料と同一の結晶形の構造式1の化合物を表すと当業者により考えられることになるDSCまたはTGAのサーモグラムである。
【0032】
本明細書で指定されたDSCまたはTGAと関連する任意の温度は、この指定値±5℃以下を意味することを理解すべきである。例えば、実施形態または請求項が約179℃で吸熱ピークを指定する場合には、このことは179℃±5℃以下(即ち、174℃~184℃の温度)を意味すると理解すべきである。好ましい実施形態では、DSC温度またはTGA温度は指定値±3℃であり、より好ましい実施形態では±2℃である。
【0033】
いくつかの実施形態では、結晶形は溶媒和物である。「溶媒和物」は、本明細書で使用される場合、溶質(例えば、構造式1の化合物)と1種または複数種の溶媒(例えば、メタノール、エタノール、水)との相互作用により形成される化合物を指す。そのため、「溶媒和物」として、単一種の溶媒分子を含む溶媒和物、および複数種の溶媒分子を含む溶媒和物(混合溶媒和物または共溶媒和物)が挙げられる。典型的には、本明細書で説明された溶媒和物中の1種または複数種の溶媒は、有機溶媒または有機溶媒の組合せであるが、水も、水和物と称される溶媒和物を形成し得る。
【0034】
例えば、本明細書で説明されたForm Iは、エタノールが0.5当量であるヘミエタノレート(hemi-ethanolate)として特徴付けられている。本明細書で説明されたForm Jは、Iの脱溶媒型Formとして特徴付けられている。
【0035】
FORM I:
第1の実施形態では、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が提供され、この結晶形は、Form Iであり、且つ7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピーク、または7.22°、7.80°、8.19°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピーク、7.22°、7.80°、8.19°、10.41°、11.11°、15.00°、16.47°および20.44°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする。特定の実施形態では、Form Iは、7.22°、7.80°、10.41°および11.11°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.22°、7.80°、8.19°、10.41°および11.11°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.22°、7.80°、8.19°、10.41°、11.11°、15.00°、16.47°および20.44°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.22°、7.80°、8.19°、10.41°、11.11°、12.17°、13.52°、15.00°、15.70°、16.47°、19.96°および20.44°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶Form Iは、
図5に示すものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする。
【0036】
結晶Form Iは、約116℃での幅広くて弱い吸熱ピークまたは約171℃での弱い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とし得る。いくつかの実施形態では、TGAサーモグラムおよび/またはDSCサーモグラムは、
図6Aまたは
図6Bのものと実質的に一致する。
【0037】
特定の実施形態では、Form Iは溶媒和物の形態であり、例えば、エタノール溶媒和物(例えば、構造式1の化合物の1モル当量当たり約0.5モル当量の溶質を含むヘミエタノレート)の形態である。
【0038】
別の実施形態では、Form Iは共溶媒和物の形態である。特定の実施形態では、この共溶媒和物は、二水和物およびヘミエタノール共溶媒和物である。
【0039】
FORM J:
第2の実施形態では、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が提供され、この結晶形は、Form Jであり、且つ7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピーク、7.02°、7.80°、10.25°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピーク、または7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、13.29°、13.60°、14.98°、21.92°、22.13°、23.22°、24.02°および25.28°から選択される2θでの少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする。
【0040】
特定の実施形態では、Form Jは、7.02°、7.80°、22.13°および23.22°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.02°、7.80°、10.25°、22.13°および23.22°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、13.29°、13.60°、14.98°、21.92°、22.13°、23.22°、24.02°および25.28°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする。別の特定の実施形態では、Form Jは、7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、11.85°、13.29°、13.60°、14.98°、15.27°、16.21°、16.39°、17.04°、20.10°、21.53°、21.92°、22.13°、22.52°、23.22°、24.02°、24.41°、25.28°、26.08°、26.35°、26.78°および27.90°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶Form Jは、
図7に示すものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする。
【0041】
結晶Form Jは、約118℃での幅広い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とし得る。いくつかの実施形態では、TGAサーモグラムおよび/またはDSCサーモグラムは、
図8Aまたは
図8Bのものと実質的に一致する。
【0042】
FORM A:
第3の実施形態では、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が提供され、この結晶形は、Form Aであり、且つ3.31°、6.01°、6.33°および8.73°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピーク、3.31°、6.01°、6.33°、8.73°および14.06°から選択される2θ角での少なくとも4つx線粉末回折ピーク、または3.31°、6.01°、6.33°、8.73°、10.49°、14.06°および16.55°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする。特定の実施形態では、Form Aは、3.31°、6.01°、6.33°および8.73°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または3.31°、6.01°、6.33°、8.73°および14.06°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または3.31°、6.01°、6.33°、8.73°、10.49°、14.06°および16.55°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶Form Aは、
図1に示すものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする。
【0043】
結晶Form Aは、約120℃での幅広い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とし得る。いくつかの実施形態では、TGAサーモグラムおよび/またはDSCサーモグラムは、
図2Aまたは
図2Bのものと実質的に一致する。
【0044】
特定の実施形態では、Form Aは溶媒和物または共溶媒和物の形態であり、例えば、水およびエタノール共溶媒和物の形態である。特定の実施形態では、この水およびエタノール共溶媒和物は可変性の共溶媒和物(variable co-solvate)である。
【0045】
FORM B
第4の実施形態では、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が提供され、この結晶形は、Form Bであり、且つ9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピーク、9.19°、9.66°、17.63°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピーク、または6.10°、9.19°、9.48°、9.66°、13.05°、17.63°、17.77°、19.94°、20.48°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする。特定の実施形態では、Form Bは、9.19°、9.66°、23.32°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または9.19°、9.66°、17.63°、23.32°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または6.10°、9.19°、9.48°、9.66°、13.05°、17.63°、17.77°、19.94°、20.48°、23.32°、23.87°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または6.10°、9.19°、9.48°、9.66°、12.08°、13.05°、17.63°、17.77°、19.54°、19.94°、20.48°、23.32°、23.87°および24.35°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶Form Bは、
図3のいずれかに示すものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする。
【0046】
結晶Form Bは、
図4Bの示差走査熱量測定サーモグラムおよび128℃の融解ピークをさらに特徴とし得る。いくつかの実施形態では、TGAサーモグラムおよび/またはDSCサーモグラムは、
図4Aまたは
図4Bのものと実質的に一致する。
【0047】
特定の実施形態では、Form Bは溶媒和物または共溶媒和物の形態であり、例えば、水およびメタノール共溶媒和物の形態である。
【0048】
結晶Form Bを、望ましい純度および収率で、本明細書で開示された方法に従って調製し得る。結晶Form Bの非常に高い純度を、医薬用途のためのより高純度の結晶Form I、結晶Form Jまたは結晶Form IおよびJの混合物へと変換し得る。結晶Form Bの結晶Form I、結晶Form Jまたはこれらの混合物への変換のための、本明細書で説明された手順を使用することにより、結晶Form I、結晶Form Jまたはこれらの混合物を、医薬組成物としての製剤化の準備ができている組成物(例えば、許容可能な純度、容易に溶解可能、および/または良好な流動特性を示す)として単離し得る。
【0049】
組成物および医薬組成物
別の実施形態では、本発明は、構造式1:
【化3】
のビスHCl塩で表される化合物の1種または複数種の結晶形の粒子を含む組成物であって、
この1種または複数種の結晶形は下記から選択される:
7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form I;
7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶形Form J;
3.31°、6.01°、6.33°および8.73°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form A;
ならびに
9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とする結晶Form B、
組成物に関する。
【0050】
特定の実施形態では、この組成物は、結晶Form Iおよび結晶Form Jの混合物である粒子を含む。一態様では、この組成物中での結晶Form Jの重量百分率は、25%以下(例えば、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、または約1%)である。
【0051】
同様に本明細書で提供されるのは、本明細書で説明された組成物の結晶形(例えば、Form A、B、IまたはJ)と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。この組成物は、構造式1の化合物のビスHCl塩の1種または複数種の結晶形(例えば、Form A、B、IまたはJ)の粒子を含む。例えば、この医薬組成物は、Form I、Form J、Form A、Form B、またはForm I、Form J、Form AおよびFormBのうちの複数の組合せを含む。特定の実施形態では、この医薬組成物は、Form IおよびForm Jの混合物を含む。
【0052】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物および医薬組成物であって、結晶形は、7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピーク、7.22°、7.80°、8.19°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピーク、または7.22°、7.80°、8.19°、10.41°、11.11°、15.00°、16.47°および20.44°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする、組成物および医薬組成物に関する。
【0053】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物および医薬組成物であって、結晶形は、7.22°、7.80°、10.41°および11.11°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、7.22°、7.80°、8.19°、10.41°および11.11°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.22°、7.80°、8.19°、10.41°、11.11°、15.00°、16.47°および20.44°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、組成物および医薬組成物に関する。
【0054】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物および医薬組成物であって、結晶形は、
図5に示すものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする、組成物および医薬組成物に関する。
【0055】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物および医薬組成物であって、結晶形は、約116℃での幅広くて弱い吸熱ピークまたは約171℃での弱い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とする、組成物および医薬組成物に関する。ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物のいずれかであって、結晶形は、約116℃での幅広くて弱い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とする、組成物のいずれかに関する。ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物のいずれかであって、結晶形は、約171℃での弱い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とする、組成物のいずれかに関する。
【0056】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物および医薬組成物であって、結晶形は、7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピーク、7.02°、7.80°、10.25°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも4つのx線粉末回折ピーク、または7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、13.29°、13.60°、14.98°、21.92°、22.13°、23.22°、24.02°、25.28°から選択される2θ角での少なくとも5つのx線粉末回折ピークを特徴とする、組成物および医薬組成物に関する。
【0057】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物のいずれかであって、結晶形は、7.02°、7.80°、22.13°および23.22°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.02°、7.80°、10.25°、22.13°および23.22の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、13.29°、13.60°、14.98°、21.92°、22.13°、23.22°、24.02°および25.28°の2θ角でのx線粉末回折ピーク、または7.02°、7.80°、10.25°、11.00°、11.85°、13.29°、13.60°、14.98°、15.27°、16.21°、16.39°、17.04°、20.10°、21.53°、21.92°、22.13°、22.52°、23.22°、24.02°、24.41°、25.28°、26.08°、26.35°、26.78°および27.90°の2θ角でのx線粉末回折ピークを特徴とする、組成物のいずれかに関する。
【0058】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物または医薬組成物であって、結晶形は、
図7に示すものと実質的に一致するx線粉末回折パターンを特徴とする、組成物または医薬組成物に関する。
【0059】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物のいずれかであって、結晶形は、118℃での幅広い吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムをさらに特徴とする、組成物のいずれかに関する。
【0060】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物のいずれかであって、結晶形は、Form Iの粒子のx線粉末回折パターンと比較して、7.2o 2θでのピーク上で広い肩を有するx線粉末回折パターンを特徴とする、組成物のいずれかに関する。
【0061】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された組成物のいずれかであって、この組成物は、Form Iの粒子およびForm Jの粒子の混合物を含み、結晶形は、Form Iの粒子のx線粉末回折パターンと比較して、7.2o 2θでのピーク上で広い肩を有するx線粉末回折パターンを特徴とする、組成物のいずれかに関する。
【0062】
用語「薬学的に許容される担体」は、医薬組成物の形成(即ち、対象に投与可能な剤形)を可能にするために活性成分と混合される非毒性の溶媒、分散剤、添加剤、アジュバントまたは他の物質を意味する。「薬学的に許容される担体」は、製剤化される化合物の活性を破壊すべきではない。薬学的に許容される担体は、当分野で公知である。
【0063】
本発明の医薬組成物で使用され得る薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルとして、下記が挙げられるがこれらげに限定されない:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂。
【0064】
本発明の医薬組成物を、経口的に、吸入噴霧により非経口的に(例えば、皮下、筋肉内、静脈内および皮内)、局所的に、直腸に、経鼻的に、頬側に、経膣的に、または埋込型リザーバーを介して投与し得る。いくつかの実施形態では、提供される医薬組成物は、静脈内および/または腹腔内に投与可能である。
【0065】
用語「非経口」は、本明細書で使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、硝子体内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、腹腔内、病変内および頭蓋内の注射および注入の技術を含む。好ましくは、本医薬組成物を、経口的に、皮下に、腹腔内にまたは静脈内に投与する。本発明の医薬組成物の無菌注射形態は、水性または油性の懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤と懸濁化剤とを使用して、当分野で既知の技術に従って製剤化し得る。無菌注射調製物は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような、無毒の非経口的に許容可能な希釈剤中のまたは溶媒中の無菌注射溶液または無菌注射懸濁液でもあり得る。許容可能なビヒクルおよび溶媒の中でも、水、リンゲル溶液および等張塩化ナトリウム溶液が用いられる。加えて、溶媒および懸濁媒体として無菌不揮発性油が従来用いられている。
【0066】
本発明の医薬組成物を、任意の経口的に許容される剤形(例えば、限定されないがカプセル剤、錠剤、水性の懸濁液剤または溶液剤)で経口投与し得る。経口使用のための錠剤の場合には、一般に使用される担体として、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤も概して添加する。カプセル形態での経口投与の場合には、有用な希釈剤としてラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液剤が経口使用に必要とされる場合には、活性成分を乳化剤および懸濁化剤と組み合わせる。必要に応じて、ある特定の甘味料、香味料または着色料も添加し得る。いくつかの実施形態では、提供される経口製剤は、即時放出用にまたは持続/遅延放出用に製剤化される。いくつかの実施形態では、この組成物は、頬側投与または舌下投与に適している(例えば、錠剤、ロゼンジ剤およびトローチ剤)。提供される化合物はまた、マイクロカプセル化形態でもあり得る。
【0067】
錠剤またはカプセル剤等の経口製剤での使用に適した、具体的な薬学的に許容される担体として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:微結晶セルロース(Avicel PH101)、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol)、コリドン30粉末(ポリビニルピロリドン、ポビドン)、コロイド状二酸化ケイ素M5-P、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース(Avcel PH102)、ラウリル硫酸ナトリウム(Kolliphor SLS Fine)および頃以上二酸化ケイ素M5-P。上記で列挙した担体をそれぞれ、単独にてまたは任意の組合せにて経口製剤で使用し得る。
【0068】
錠剤またはカプセル剤等の経口製剤での使用に適したさらなる薬学的に許容される担体として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:微結晶セルロース(Avicel PH112)、クロスポビドン(ポリプラスドンXL-10)、コロイド状二酸化ケイ素(Cab-O-Sil M-5P)、タルク、スターチ、およびステアリン酸カルシウム。特定の実施形態では、結晶形(例えば、Form A、Form B、Form I、Form J、またはForm IおよびForm Jの混合物)は、経口製剤中に約25~45重量(遊離塩基重量)%で存在する。他の態様では、この経口製剤中にはEDTA二ナトリウムも存在する。ある特定の態様では、このEDTAにより、活性物質のバイオアベイラビリティが増加する。特定の実施形態では、活性物質のバイオアベイラビリティは、約1.5倍~約20倍(例えば、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20倍)増加する。この製剤中にEDTAが存在する場合には、本結晶形(遊離塩基重量)とEDTAとの重量/重量比は、約1:0.25~約1:15の範囲(例えば、1:0.25、1:0.5、1:1、1:2.5、1:5または1:15)である。眼科的使用の場合には、提供される医薬組成物を、微粉化懸濁液剤として、またはワセリン等の軟膏剤に製剤化し得る。
【0069】
本発明の組成物を、鼻エアロゾルまたは吸入によっても投与し得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、腹腔内投与用に製剤化する。
【0071】
本発明の医薬組成物中での構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形の量は、生体サンプル中において、または対象中において、テトラサイクリン応答性の疾患または障害を測定可能に処置するのにまたは予防するのに有効であるような量である。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、そのような医薬組成物の、必要とする対象への投与用に製剤化されている。用語「対象」は、本明細書で使用される場合、動物を意味する。いくつかの実施形態では、この動物は哺乳動物である。ある特定の実施形態では、この対象は、獣医学的患者(即ち、非ヒト哺乳動物患者、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、または齧歯動物、例えばマウスもしくはラット)である。いくつかの実施形態では、この対象はイヌである。他の実施形態では、この対象はヒト(例えばヒト患者)である。
【0072】
単一剤形の医薬組成物を製造するために薬学的に許容される担体物質と組み合わされ得る構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形の量は、処置される宿主および/または具体的な投与様式に応じて変動するだろう。一実施形態では、本医薬組成物を、構造式1の化合物の0.01~100mg/体重kg/日の投与量を、この組成物を投与する患者に投与し得るように製剤化すべきである。別の実施形態では、この投与量は、4~120時間毎に、または具体的な薬物の要求に従って、約0.5~約100mg/体重kgまたは1mg~1000mg/用量である。典型的には、本発明の医薬組成物を、1日当たり約1~約6回投与する。例示的な用量として、4~14日にわたり1.0mg/kgを1日に2回および5~10日にわたり1.5mg/kgを1日に1回が挙げられるがこれらに限定されない。
【0073】
任意の特定の対象(例えば患者)のための具体的な投与量および処置レジメンは、様々な因子に依存し、この因子として、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組合せ、ならびに処置する医師の判断および処置される特定の疾患の重症度が挙げられることも理解すべきである。
【0074】
対象の状態が改善すると、必要に応じて、本発明の医薬組成物の維持用量を投与し得る。続いて、症状が所望のレベルまで軽減されている場合には、改善された状態が維持されるレベルまで、症状の関数として、投与量もしくは投与の頻度または両方を低減し得る。しかしながら、対象は、疾患症状のあらゆる再発のために、長期にわたり断続的な処置を必要とする場合がある。
【0075】
処置の方法および医薬組成物の使用
本明細書で説明された医薬組成物は、テトラサイクリン応答性の疾患または障害の処置または予防に概して有用である。そのため、ある特定の実施形態では、本発明は、テトラサイクリン応答性の疾患または障害を処置する方法であって、構造式1の化合物のビスHCl塩の結晶形(例えば結晶形)または本明細書で説明された医薬組成物の治療上有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。構造式1の化合物もしくはその結晶形、それらの医薬組成物、または上述の組合せを、例えばインビトロもしくはエクスビボで培養中の細胞に投与して、または例えばインビボで対象に投与して、様々な障害(例えば、本明細書で説明されたもの)を処置する、予防するおよび/または診断することもできる。
【0076】
用語「処置する(treat)」または「処置すること(treating)」は、症状を軽減すること、症状の原因を一時的にもしくは永続的に除去すること、または示された障害もしくは状態の症状の出現を遅延させることを意味する。
【0077】
用語「治療上有効な量」は、障害または状態の1種または複数種の症状の処置またはこの症状の重症度または緩和で有効である、(典型的には、本明細書で説明された医薬組成物中での)構造式1の化合物のビスHCl塩またはその結晶形の量を意味する。
【0078】
「テトラサイクリン応答性の疾患または障害」は、本発明のテトラサイクリン化合物の投与により処置され得る、予防され得る、またはその他の方法で改善され得る疾患または障害を指す。テトラサイクリン応答性の疾患または障害として下記が挙げられる:感染、癌、炎症性障害、自己免疫疾患、動脈硬化症、角膜潰瘍、気腫、関節炎、骨粗鬆症、変形性関節症、多発性硬化症、骨肉腫、骨髄炎、気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患、皮膚および眼の疾患、歯周炎、骨粗鬆症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、前立腺炎、腫瘍の増殖および浸潤、転移、糖尿病、糖尿病性の蛋白尿、汎細気管支炎;大動脈または血管の動脈瘤、皮膚組織の創傷、ドライアイ、骨、軟骨分解、マラリア、老化、糖尿病、血管性脳卒中、神経変性障害、心疾患、若年性糖尿病、急性および慢性の気管支炎、副鼻腔炎、および呼吸器感染、例えば感冒;ウェゲナー肉芽腫症;好中球性皮膚症および他の炎症性疾患、例えば疱疹状皮膚炎、白血球破壊性血管炎、水疱性エリテマトーデス、膿疱性乾癬、持久性隆起性紅斑;白斑;円板状エリテマトーデス;壊疽性膿皮症;膿疱性乾癬;眼瞼炎、または瞼板腺炎;アルツハイマー病;変性黄斑症;急性および慢性の胃腸炎および大腸炎;急性および慢性の膀胱炎および尿道炎;急性および慢性の皮膚炎;急性および慢性の結膜炎;急性および慢性の漿膜炎;尿毒症性心膜炎;急性および慢性の胆嚢;嚢胞性線維症、急性および慢性の腟炎;急性および慢性のぶどう膜炎;薬物反応;虫刺され;熱傷および日焼け、骨量障害、急性肺損傷、慢性肺障害、虚血、発作または虚血性発作、皮膚創傷、大動脈または血管の動脈瘤、糖尿病性網膜症、出血性脳卒中、血管新生、ならびにテトラサイクリン化合物が有効であることが発見されている他の状態(例えば、米国特許第5,789,395号明細書;同第5,834,450号明細書;同第6,277,061号明細書および同第5,532,227号明細書(これらはそれぞれ、参照により本明細書に明確に組み込まれる)を参照されたい)。
【0079】
加えて、本発明は、一酸化窒素、メタロプロテアーゼ、炎症誘発性のメディエーターおよびサイトカイン、活性酸素種、免疫応答の成分、例えば走化性、リンパ球幼若化、遅延型過敏症、抗体産生、食作用、および貪食細胞の酸化代謝の発現および/または機能の調節の利益を得る可能性があるあらゆる疾患または病状を処置する方法に関する。C反応性タンパク質の発現および/もしくは機能、シグナル伝達経路(例えば、FAKシグナル伝達経路)の調節、ならびに/またはCOX-2およびPEG2産生の発現の増大の利益を得る可能性があるあらゆる疾患または病状を処置するための方法が含まれる。血管新生の阻害の利益を得る可能性があるあらゆる疾患または病状を処置する方法が含まれる。
【0080】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物を使用して、重要な哺乳動物のおよび獣医学の疾患(例えば、下痢、尿路感染、皮膚および皮膚構造の感染、耳、鼻および喉の感染、創傷感染、乳腺炎および同類のもの)を予防し得る、または処置し得る。加えて、本発明のテトラサイクリン化合物を使用して新生物を処置する方法も含まれる(van der Bozert et al.,Cancer Res.,48:6686-6690(1988))。
【0081】
本発明の組成物を使用して処置され得る感染として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:皮膚感染、GI感染、尿路感染(例えば、合併上UTI)、複雑な腹腔内感染、泌尿生殖器感染、気道感染、洞感染、中耳感染、全身感染、コレラ、インフルエンザ、気管支炎、ざ瘡、マラリア、性行為感染症、例えば梅毒および淋病、在郷軍人病、ライム病、ロッキー山紅斑熱、Q熱、発疹チフス、腺ペスト、ガス壊疽、院内感染、レプトスピラ症、百日咳、炭疽、および性病性リンパ肉芽腫に関与する薬剤により引き起こされる感染、封入体結膜炎、またはオウム病。感染は、細菌性、真菌性、寄生虫性およびウイルス性の感染(他のテトラサイクリン化合物に対して耐性を示すものを含む)であり得る。
【0082】
一実施形態では、この感染は細菌により引き起こされ得る。別の実施形態では、この感染はグラム陽性菌により引き起こされる。この実施形態の具体的な態様では、この感染は、下記から選択されるグラム陽性菌により引き起こされる:スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、バチルス(Bacillus)種、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ノカルジア(Nocardia)種、クロストリジウム(Clostridium)種、アクチノバクテリア(Actinobacteria)種、およびリステリア(Listeria)種。
【0083】
別の実施形態では、この感染はグラム陰性菌により引き起こされる。この実施形態の一態様では、この感染はプロテオバクテリア(例えば、ベータプロテオバクテリア(Betaproteobacteria)およびガンマプロテオバクテリア(Gammaproteobacteria))により引き起こされ、このプロテオバクテリアとして下記が挙げられる:大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、他の腸内細菌科、シュードモナス(Pseudomonas)、モラクセラ(Moraxella)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、デロビブリオ(Bdellovibrio)、酢酸菌、レジオネラ(Legionella)、またはアルファ-プロテオバクテリア、例えばボルバキア(Wolbachia)。別の態様では、この感染は、シアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌または緑色非硫黄細菌から選択されるグラム陰性菌により引き起こされる。この実施形態の具体的な態様では、この感染は下記から選択されるグラム陰性菌により引き起こされる:腸内細菌科(例えば、大腸菌(E.coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumonia)、例えば、広域スペクトルのベータ-ラクタマーゼおよび/またはカルバペネマーゼを含むもの)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)(例えば、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis))、ビブリオ科(Vibrionacea)(ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae))、パスツレラ属(Pasteurellae)(例えば、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenza))、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)(例えば、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、ナイセリア科(Neisseriaceae)(例えば、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis))、リケッチア属(Rickettsiae)、モラクセラ科(Moraxellaceae)(例えば、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis))、プロテア属(Proteeae)の任意の種、アシネトバクター(Acinetobacter)種、ヘリコバクター(Helicobacter)種およびカンピロバクター(Campylobacter)種。
【0084】
特定の実施形態では、この感染は、腸内細菌科(例えば、大腸菌(E.coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumonia))、シュードモナス(Pseudomonas)およびアシネトバクター(Acinetobacter)種からなる群から選択されるグラム陰性菌により引き起こされる。
【0085】
別の実施形態では、この感染は、下記からなる群から選択される生物により引き起こされる:K.ニューモニエ(K.pneumoniae)、サルモネラ(Salmonella)、E.ヒラエ(E.hirae)、A.バウマニイ(A.baumanii)、M.カタラーリス(M.catarrhalis)、H.インフルエンザ(H.influenzae)、P.アエルギノザ(P.aeruginosa)、E.フェシウム(E.faecium)、大腸菌(E.coli)、S.アウレウス(S.aureus)およびE.フェカリス(E.faecalis.)。
【0086】
別の実施形態では、この感染は、リケッチア、クラミジア、レジオネラ(Legionella)種およびマイコプラズマ(Mycoplasma)種からなる群から選択される生物により引き起こされる。
【0087】
別の実施形態では、この感染は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン抗生物質の第一世代および第二世代の任意のメンバー(例えば、ドキシサイクリンもしくはミノサイクリン)に対して耐性を示す生物により引き起こされる。
【0088】
別の実施形態では、この感染は、メチシリンに対して耐性を示す生物により引き起こされる。
【0089】
別の実施形態では、この感染は、バンコマイシンに対して耐性を示す生物により引き起こされる。
【0090】
別の実施形態では、この感染は、キノロンまたはフルオロキノロンに対して耐性を示す生物により引き起こされる。
【0091】
別の実施形態では、この感染は、チゲサイクリンに対して耐性を示す生物により引き起こされる。
【0092】
別の実施形態では、この感染は、多剤耐性病原体(任意の2種以上の抗生物質に対して中程度のまたは完全な耐性を有する)により引き起こされる。別の実施形態では、この感染はバチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)感染である。「バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)感染」は、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)またはバチルス・セレウス(Bacillus cereus)の細菌群の別のメンバーへの曝露により引き起こされるもしくはこの曝露により生じるまたはこの曝露が疑われている任意の状態、疾患または障害を含む。別の実施形態では、この感染は、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)(炭疽病)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)(ペスト)またはフランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)(野兎病)により引き起こされる。
【0093】
さらに別の実施形態では、この感染は、上記で説明された複数種の生物により引き起こされる可能性がある。そのような感染の例として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:腹腔内感染(多くの場合、大腸菌(E.coli)のようなグラム陰性種とB.フラジリス(B.fragilis)のような嫌気性菌との混合物)、糖尿病性足病変(ストレプトコッカス(Streptococcus)、セラチア(Serratia)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)およびエンテロコッカス(Enterococcus)種、嫌気性菌の様々な組合せ(S.E.Dowd,et al.,PloS one 2008;3:e3326)、ならびに呼吸器疾患(特に、嚢胞性線維症のような慢性感染を有する患者-例えば、S.アウレウス(S.aureus)およびP.アエルギノザ(P.aeruginosa)またはH インフルエンザ(H influenza)、非定型の病原体)、創傷および膿瘍(様々なグラム陰性菌およびグラム陽性菌、特にMSSA/MRSA、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌、アシネトバクター(Acinetobacter)、P.アエルギノザ(P.aeruginosa)、大腸菌(E.coli)、B.フラジリス(B.fragilis))、ならびに血流感染(13%は多微生物性であった(H.Wisplinghoff,et al.,Clin.Infect.Dis.2004;39:311-317))。
【0094】
さらなる実施形態では、このテトラサイクリン応答性の疾患または障害は、細菌感染ではない。別の実施形態では、本発明の組成物は本質的に非抗菌性である。例えば、非抗菌性組成物は、約4μg/mLよりも大きいMIC値を有し得る。別の実施形態では、本発明の組成物は、抗菌効果および非抗菌効果の両方を有する。
【0095】
テトラサイクリン応答性の疾患または障害として、炎症プロセス関連状態(inflammatory process associated states)(IPAS)と関連する疾患または障害も挙げられる。用語「炎症プロセス関連状態」は、炎症または炎症因子(例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、酸化窒素(NO)、TNF、インターロイキン、血漿タンパク質、細胞防御システム、サイトカイン、脂質代謝、プロテアーゼ、毒性ラジカル、接着分子等)が関与している、または異常な量(例えば、例えば対象に利益をもたらすために変更するのに有利であり得る量)で、ある領域に存在している状態を含む。この炎症プロセスは、損傷に対する、生きている組織の応答である。炎症の原因は、物理的損傷、化学物質、微生物、組織の壊死、癌、または他の因子に起因し得る。急性炎症は短期間であり、ごく数日しか続かない。しかしながら、より長く続く場合には、慢性炎症と称される場合がある。
【0096】
IPASとして、炎症性障害が挙げられる。炎症性障害は概して、発熱、発赤、腫脹、疼痛および機能喪失を特徴とする。炎症性障害の原因の例として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:微生物感染(例えば、細菌感染および真菌感染)、物理的因子(例えば、火傷、放射線および外傷)、化学的因子(例えば、毒素および腐食性物質)、組織の壊死、ならびに様々なタイプの免疫反応。
【0097】
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を使用して処置され得る炎症性障害の例として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:変形性関節症、関節リウマチ、急性および慢性の感染(細菌および真菌、例えばジフテリアおよび百日咳);急性および慢性の気管支炎、副鼻腔炎、および上気道感染、例えば風邪;急性および慢性の胃腸炎および大腸炎;炎症性腸障害;急性および慢性の膀胱炎および尿道炎;血管炎;敗血症;腎炎;膵炎;肝炎;狼瘡;炎症性皮膚障害、例えば湿疹、皮膚炎、乾癬、壊疽性膿皮症、酒さ性ざ瘡、ならびに急性および慢性の皮膚炎;急性および慢性の結膜炎;急性および慢性の漿膜炎(心膜炎、腹膜炎、滑膜炎、胸膜炎および腱炎);尿毒症性心膜炎;急性および慢性の胆嚢;急性および慢性の膣炎;急性および慢性のぶどう膜炎;薬物反応;虫刺され;熱傷(熱、化学および電気);ならびに日焼け。
【0098】
IPASとして、マトリックスメタロプロテイナーゼ関連状態(MMPAS)も挙げられる。MMPASとして、異常な量のMMPまたはMMP活性を特徴とする状態が挙げられる。
【0099】
本発明の組成物を使用して処置され得るマトリックスメタロプロテイナーゼ関連状態(「MMPAS」)の例として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:動脈硬化症、角膜潰瘍、気腫、変形性関節症、多発性硬化症(Liedtke et al.,Ann.Neurol.1998,44:35-46;Chandler et al.,J.Neuroimmunol.1997,72:155-71)、骨肉腫、骨髄炎、気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患、皮膚および眼の疾患、歯周炎、骨粗鬆症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、炎症性障害、腫瘍の増殖および浸潤(Stetler-Stevenson et al.,Annu.Rev.Cell Biol.1993,9:541-73;Tryggvason et al.,Biochim.Biophys.Acta 1987,907:191-217;Li et al.,Mol.Carcillog.1998,22:84-89))転移、急性肺損傷、脳卒中、虚血、糖尿病、大動脈または血管の動脈瘤、皮膚組織の創傷、ドライアイ、骨および軟骨の分解(Greenwald et al.,Bone 1998,22:33-38;Ryan et al.,Curr.Op.Rheumatol.1996,8:238-247)。他のMMPASとして、米国特許第5,459,135号明細書;同第5,321,017号明細書;同第5,308,839号明細書;同第5,258,371号明細書;同第4,935,412号明細書;同第4,704,383合明細書、同第4,666,897号明細書およびRE第34,656号明細書で説明されているものが挙げられ、これらの明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
さらなる実施形態では、IPASとして、米国特許第5,929,055号明細書;および同第5,532,227号明細書で説明されている障害が挙げられ、これらの明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
テトラサイクリン応答性の疾患または障害として、NO関連状態と関連する疾患または障害も挙げられる。用語「NO関連状態」は、酸化窒素(NO)または誘導可能な酸化窒素シンターゼ(iNOS)に関与するまたはこれらと関連する状態を含む。NO関連状態として、異常な量のNOおよび/iNOSを特徴する状態が挙げられる。好ましくは、このNO関連状態を、本発明のテトラサイクリン化合物を投与することにより処置し得る。米国特許第6,231,894号明細書;同第6,015,804号明細書;同第5,919,774号明細書;および同第5,789,395号明細書で説明されている障害、疾患および状態も、NO関連状態として含まれる。これら特許のそれぞれの内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
本発明の組成物を使用して処置され得るNO関連状態と関連する疾患または障害の例として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:マラリア、老化、糖尿病、血管性脳卒中、神経変性障害(アルツハイマー病およびハンチントン病)、心疾患(梗塞後の再灌流関連損傷)、若年性糖尿病、炎症性障害、変形性関節症、関節リウマチ、急性、再発性および慢性の感染(細菌、ウイルスおよび真菌);急性および慢性の気管支炎、副鼻腔炎および呼吸器感染、例えば風邪;急性および慢性の胃腸炎および大腸炎;急性および慢性の膀胱炎および尿道炎;急性および慢性の皮膚炎;急性および慢性の結膜炎;急性および慢性の漿膜炎(心膜炎、腹膜炎、滑膜炎、胸膜炎および腱炎);尿毒症性心膜炎;急性および慢性の胆嚢;嚢胞性繊維症、急性および慢性の腟炎;急性および慢性のぶどう膜炎;薬物反応;虫刺され;熱傷(熱、化学および電気);ならびに日焼け。
【0103】
別の実施形態では、テトラサイクリン応答性の疾患または障害は、癌である。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を使用して処置され得る癌の例として、全ての固形腫瘍が挙げられ、即ち、癌腫(例えば腺癌)および肉腫が挙げられる。腺癌は、腺組織に由来する癌腫、または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫である。肉腫は、細胞が胎生結合組織のような原線維物質または均質物質に埋め込まれている腫瘍を広く含む。本発明の方法を使用して処置され得る癌腫の例として、前立腺、乳房、卵巣、精巣、肺、結腸および乳房の癌腫が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の方法はこれらの腫瘍型の処置に限定されず、あらゆる臓器系に由来するあらゆる固形腫瘍に及ぶ。処置可能な癌の例として、結腸癌、膀胱癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、およびさらに様々な他の癌が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の方法はまた、腺癌(例えば、前立腺、乳房、腎臓、卵巣、睾丸および結腸の腺癌)での癌増殖の阻害も引き起こす。一実施形態では、本発明の方法により処置される癌として、米国特許第6,100,248号明細書;同第5,843,925号明細書;同第5,837,696号明細書;または同第5,668,122号明細書で説明されているものが挙げられ、これらの明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
あるいは、本組成物は、例えば、外科的切除または放射線療法の後に残存癌を処置するために、癌再発の予防または癌再発の可能性の低減に有用であり得る。本発明に従って有用な組成物は、他の癌処置と比較して実質的に非毒性であることから特に有利である。
【0105】
さらなる実施形態では、本発明の組成物を、限定されないが化学療法等の標準的な癌治療と組み合わせて投与する。
【0106】
本発明の組成物またはその薬学的に許容される塩を使用して処置され得るテトラサイクリン応答状態の例として、神経精神障害および神経変性障害の両方を含む神経障害も挙げられ、限定されないが、例えば下記も挙げられる:アルツハイマー病、アルツハイマー病に関連する認知症(例えばピック病)、パーキンソン病、および他のびまん性のレヴィ小体病、老年認知症、ハンチントン病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性核上麻痺、てんかん、およびクロイツフェルト・ヤコブ病;自律神経機能障害、例えば高血圧および睡眠障害、ならびに精神神経障害、例えばうつ病、統合失調症、統合失調感情障害、コルサコフ症候群、躁病、不安症、または恐怖症性障害;学習障害および記憶障害、例えば健忘症または加齢性記憶喪失、注意欠陥障害、気分変調性障害、大うつ病性障害、躁病、強迫性障害、精神活性物質使用障害、不安、恐怖症、パニック症、ならびに双極性感情障害、例えば重症双極性感情(気分)障害(BP-1)、双極性感情神経障害、例えば偏頭痛および肥満。
【0107】
さらなる神経障害として、例えば、American Psychiatric Association’s Diagnostic and Statistical manual of Mental Disorders (DSM)に列挙されているものが挙げられ、この最新版はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
別の実施形態では、テトラサイクリン応答性の疾患または障害は、糖尿病である。本発明の組成物を使用して処置され得る糖尿病として、若年性糖尿病、真性糖尿病、I型糖尿病またはII型糖尿病が挙げられるがこれらに限定されない。さらなる実施形態では、タンパク質グリコシル化は、本発明の組成物の投与の影響を受けない。別の実施形態では、本発明の組成物を、限定されないがインスリン治療等の標準的な糖尿病治療と組み合わせて投与する。
【0109】
別の実施形態では、テトラサイクリン応答性の疾患または障害は、骨量障害である。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を使用して処置され得る骨量障害として、対象の骨が障害である障害、ならびに骨の形成、修復またはリモデリングが有利である状態が挙げられる。例えば、骨量障害として、骨粗鬆症(例えば、骨の強度および密度の減少)、骨折、外科手技と関連する骨形成(例えば、顔面再構築)、骨形成不全症(骨粗鬆症)、低ホスファターゼ血症、パジェット病、線維性骨異形成症、大理石骨病、骨髄腫骨疾患、および原発性副甲状腺機能亢進症に関連する場合等の骨中のカルシウムの枯渇が挙げられる。骨量障害は、骨の形成、修復またはリモデリングが対象にとって有利である全ての状態、ならびに本発明の組成物で処置され得る対象の骨および骨格系と関連する全ての他の障害を含む。さらなる実施形態では、骨量障害として、米国特許第5,459,135号明細書;同第5,231,017号明細書;同第5,998,390号明細書;同第5,770,588号明細書;RE第34,656号明細書;米国特許第5,308,839号明細書;同第4,925,833号明細書;同第3,304,227号明細書;および同第4,666,897号明細書で説明されているものが挙げられ、これらの明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
別の実施形態では、テトラサイクリン応答性の疾患または障害は、急性肺損傷である。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を使用して処置され得る急性肺損傷として、成人性呼吸促迫症候群(ARDS)、ポストポンプ症候群(PPS)および外傷が挙げられる。外傷として、外因性の因子または事象により引き起こされる、生きている組織へのあらゆる損傷が挙げられる。外傷の例として、挫傷、硬質面との接触、または切り傷もしくは肺への他の損傷が挙げられるがこれらに限定されない。
【0111】
本発明のテトラサイクリン応答性の疾患または障害として、慢性肺障害も挙げられる。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を使用して処置され得る慢性肺障害の例として、喘息、嚢胞性繊維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および気腫が挙げられるがこれらに限定されない。さらなる実施形態では、本発明の組成物を使用して処置され得る急性および/または慢性の肺障害として、米国特許第5,977,091号明細書;同第6,043,231号明細書;同第5,523,297号明細書;および同第5,773,430号明細書で説明されているものが挙げられ、これらの明細書はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
さらに別の実施形態では、テトラサイクリン応答性の疾患または障害は、虚血、脳卒中、または虚血性脳卒中である。
【0113】
さらなる実施形態では、本発明の組成物を使用して、上記で説明されたような障害、ならびに米国特許第6,231,894号明細書;同第5,773,430号明細書;同第5,919,775号明細書および同第5,789,395号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)で説明されたような障害を処置し得る。
【0114】
別の実施形態では、テトラサイクリン応答性の疾患または障害は、皮膚創傷である。本発明はまた、急性の外傷性損傷(例えば、切り傷、熱傷、擦り傷等)に対する上皮化組織(例えば、皮膚、粘膜)の治癒応答を改善するための方法も提供する。この方法は、急性創傷を治癒する上皮化組織の能力を改善するための、本発明の組成物の使用を含む。この方法は、治癒組織のコラーゼン蓄積速度を増加させ得る。この方法はまた、MMPのコラーベン分解および/またはゼラチン分解活性を減少させることにより、上皮化組織中でのタンパク質分解活性も減少させ得る。さらなる実施形態では、本発明のテトラサイクリン化合物またはその薬学的に許容される塩を、皮膚の表面に(例えば局所的に)投与する。さらなる実施形態では、本発明の組成物を使用して、皮膚創傷、ならびに例えば米国特許第5,827,840号明細書;同第4,704,383号明細書;同第4,935,412号明細書;同第5,258,371号明細書;同第5,308,839号明細書、同第5,459,135号明細書;同第5,532,227号明細書;および同第6,015,804号明細書で説明されているような他の障害を処置し得、これらの明細書はそれぞれ、その全体が参照により組み込まれる。
【0115】
さらに別の実施形態では、テトラサイクリン応答性の疾患または障害は、対象(例えば、大動脈もしくは血管の動脈瘤等を有する対象、またはこの動脈瘤等を有するリスクがある対象)の血管組織における大動脈または血管の動脈瘤である。本組成物は、血管動脈瘤のサイズの低減に有効であり得る、または血管動脈瘤が防止されるように、この動脈瘤の発症前に対象に投与され得る。一実施形態では、この血管組織は動脈であり、例えば大動脈であり、例えば腹部大動脈である。さらなる実施形態では、本発明の組成物を使用して、米国特許第6,043,225号明細書および同第5,834,449号明細書で説明されている障害を処置し、これらの明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物、組成物および医薬組成物を使用して口腔粘膜炎を処置し得る。特定の実施形態では、この口腔粘膜炎は、化学療法、放射線または両方の結果である。別の特定の態様では、口腔粘膜炎を有する対象は、頭頸部癌のための化学療法および/または放射線療法を受けている。具体的な態様では、この頭頸部癌は、喉頭;下咽頭;鼻腔;副鼻腔;鼻咽頭;口腔;中咽頭;および唾液腺から選択される。
【0117】
併用療法
いくつかの実施形態では、ビスHCl塩構造式1で表される化合物の結晶形(例えば、Form A、B、IまたはJ)を、追加の「第2の」治療薬やまたは処置と一緒に投与する。第2の治療薬の選択を、適応される疾患または状態を処置するために単剤療法で概して使用されるあらゆる薬剤から行い得る。本明細書で使用される場合、用語「一緒に投与する」および関連する用語は、本発明に従う治療薬の同時のまたは連続的な投与を指す。例えば、構造式1の化合物を、別々の単位剤形で、または一緒の単位剤形で、同時にまたは連続的に、別の治療薬と共に投与し得る。従って、本発明は、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形(例えば、Form A、B、IまたはJ)、追加の治療薬、および薬学的に許容される担体を含む単位剤形を提供する。
【0118】
一実施形態では、第2の治療薬を対象に投与する場合、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形の有効量は、この第2の治療薬を投与しない場合の有効量と比べて少ない。別の実施形態では、第2の治療薬の有効量は、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形が投与されない場合の有効量と比べて少ない。このようにして、いずれかの薬剤の高用量と関連する望ましくない副作用を最小限に抑え得る。他の潜在的な利点(例えば、限定されないが、改善された投与レジメンおよび/または薬剤費の削減)が当業者に明らかであるだろう。
【0119】
合成法
同様に本明細書で提供されるのは、構造式1のビスHCl塩で表される化合物の結晶形を調製する合成法である。いくつかの態様では、結晶形の混合物が製造される。例えば、この混合物は、Form A、Form B、Form IまたはForm Jから選択される2種以上の結晶形を含み得、より具体的には、Form B、Form IまたはForm Jから選択される2種以上の結晶形を含み得る。いくつかの態様では、この混合物はForm Aを含まない。
【0120】
FORM B:
一実施形態では、本発明は、構造式1:
【化4】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形を調製する方法であって、
この結晶形は、Form Bであり、且つ9.19°、9.66°、23.32°および24.35°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
この方法は、
(a)遊離塩基と、構造式1の化合物の非晶形と、メタノール、エタノールの第1の部分、水および濃HClを含む溶媒混合物とを一緒に添加し、それにより非晶質化合物の再結晶混合物を形成すること、
(b)結晶Form Bの粒子を形成するのに十分な量、十分な時間および十分な温度で、撹拌しつつ、この再結晶混合物に、エタノールの第2の部分を添加すること、
ならびに
(c)この結晶Form Bの粒子を単離することを
を含み、
それにより、構造式1の化合物のビスHCl塩の結晶Form Bの粒子を含む組成物を調製する、
方法に関する。
【0121】
Form Bを調製する方法のある特定の態様では、再結晶混合物中でのメタノール、エタノールの第1の部分、水および濃HClの体積比は、体積で、約1~約8(メタノール)、約1~約3(エタノール)、約0.1~約1.0(水)および約0.1~約2(濃HCl)である。具体的な態様では、エタノールの第2の部分の体積は、エタノールの第1の部分の体積の約4~約6倍である。
【0122】
Form Bを調製する方法の別の態様では、再結晶混合物の撹拌(エタノールの第2の部分の添加ありまたはこの添加なしの両方)を、約15℃~約25℃の温度で行う。
【0123】
Form Bを調製する方法の別の態様では、この粒子をろ別により単離する。
【0124】
さらに別の態様では、Form Bを調製する方法は、例えば、エタノールにより、またはメタノール、水および濃HClの混合物により、結晶Form Bの粒子を洗浄する工程をさらに含む。
【0125】
FORM I:
ある特定の実施形態では、本発明は、構造式1:
【化5】
で表される化合物のビスHClの結晶形を調製する方法であって、
この結晶形は、Form Iであり、且つ7.22°、7.80°、10.41°および11.11°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
この方法は、
(a)エタノール、水および濃HClの混合物に、構造式1の化合物の結晶Form Bを懸濁させ、それによりForm Bのスラリーを形成すること、
(b)結晶Form I粒子のスラリーを形成するのに十分な時間および十分な温度で、Form Bのスラリーを撹拌すること、
ならびに
(c)結晶Form Iの粒子を単離すること
を含む、
方法に関する。
【0126】
Form Iを調製する方法のある特定の態様では、エタノール、水および濃HClの混合物中でのエタノール対水対濃HClの体積比は、約4.0~6.0対約0.3~0.5対約0.3~0.5であり、例えば、約5.0対約0.4対約0.4または約5.0対約0.4対約0.35である。
【0127】
他の態様では、Form Iを調製する方法は、Form Bのスラリーに、ある量の結晶Form Iを添加し、それにより種添加混合物を形成する工程(b’)をさらに含む。
【0128】
Form Iを調製する方法の別の態様では、Form Bのスラリーまたは種添加混合物を撹拌することを、約12時間~約40時間にわたり約18℃~約25℃の温度で行う。
【0129】
ある特定の態様では、Form Iを調製する方法は、Form Iのスラリーに貧溶媒を添加し、それにより貧溶媒スラリーを形成する工程(b’’)をさらに含む。例えば、この貧溶媒はエタノールであり得る。特定の態様では、この貧溶媒はエタノールであり、且つ約1時間~約15時間(例えば、約1時間~約5時間)かけて添加し、例えば約1時間、3時間または10時間かけて添加する。
【0130】
Form Iを調製する方法の別の態様では、この粒子をろ別により単離する。
【0131】
ある特定の態様では、Form Iを調製する方法は、例えば、エタノールにより、またはエタノール、水および濃HClの混合物により、固体粒子を洗浄する工程(c’)をさらに含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、本発明は、構造式1:
【化6】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形を調製する方法であって、
この結晶形は、Form Jであり、且つ7.02°、7.80°、22.13°および23.22°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
この方法は、
(a)結晶Form Iを、約70%~約90%の相対湿度にて約20℃~約45℃の温度に曝露すること、
および
(b)結晶Form Jの粒子を単離すること
を含む、
方法に関する。
【0133】
Form Jを調製する方法のある特定の態様では、結晶Form Iを、約40℃の温度および約75%の相対湿度に曝露する。
【0134】
Form Jを調製する方法の他の態様では、結晶Form Iを、約25℃の温度および約75%~約85%の相対湿度に曝露する。
【0135】
ある特定の実施形態では、本発明は、構造式1:
【化7】
で表される化合物のビスHCl塩の結晶形を調製する方法であって、
この結晶形は、Form Aであり、且つ3.31°、6.01°、6.33°および8.73°から選択される2θ角での少なくとも3つのx線粉末回折ピークを特徴とし、
この方法は、
(a)非晶形の構造式1の化合物のビスHCl塩と、エタノールおよび水の溶媒混合物とを撹拌しつつ一緒に組み合わせ、それにより非晶質化合物の溶液を形成すること、
(b)この非晶質化合物の溶液に、濃HClおよびメタノールを添加し、次いで撹拌し、それによりスラリーを形成すること、
(c)このスラリーに貧溶媒を添加し、それにより結晶Form Aのスラリーを形成すること、
ならびに
(d)結晶Form Aの固体粒子を単離すること
を含み、
それにより、構造式1の化合物の結晶Form Aの粒子を含む組成物を調製する、
方法に関する。
【0136】
Form Aを調製する方法のある特定の態様では、エタノールおよび水の混合物でのエタノール対水の体積比は、約3.0~5.0対約0.3~0.5であり、例えば約4.0対約0.4である。
【0137】
Form Aを調製する方法のある特定の態様では、濃HCl対メタノールの体積比は、約0.2~0.4対約0.1~0.4であり、例えば約0.3対約0.2である。
【0138】
他の態様では、Form Aを調製する方法は、非晶質化合物のスラリーに、ある量の結晶Form Aを添加し、それにより種添加混合物を形成する工程(b’)、および約1時間~約24時間にわたり約20℃~約25℃の温度で、この種添加混合物を撹拌する工程(b’’)をさらに含む。
【0139】
Form Aを調製する方法のある特定の態様では、貧溶媒はエタノールである。より具体的な態様では、この貧溶媒を約2時間~約6時間かけて添加し、例えば約4時間かけて添加する。
【0140】
別の態様では、Form Aを調製する方法は、Form Aのスラリーを約0℃まで冷却する工程(c’)をさらに含む。
【0141】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で説明された方法(結晶Form I、B、JまたはAを製造する方法)のいずれかであって、例えば約12時間~約5日(例えば約12時間~約24時間)にわたり約22℃~約30℃で、約18時間にわたり約26℃で、または約1時間~約20時間にわたり窒素ガス下で、次いで、約15時間~約25時間にわたり真空条件下で、または約1時間にわたり窒素ガス下で、次いで約20時間にわたり真空条件下で、または約10時間にわたり窒素ガス下で、次いで約25℃での真空条件下で、単離粒子を乾燥させる工程をさらに含む方法に関する。
【0142】
「溶媒系」は、本明細書で使用される場合、単一の溶媒または2種以上(典型的には2種)の異なる溶媒の混合物を指す。溶媒系の例示的な溶媒として、水ならびに有機溶媒(例えば、限定されないがメタノール、エタノール、ジイソプロピルエーテル、2-プロパノール、酢酸エチル、および酢酸イソプロピル)が挙げられる。
【0143】
本明細書で使用される「形成を誘導すること」は、構造式1の化合物が特定の結晶形(例えば、結晶Form Bまたは結晶Form I)として結晶化することを誘導する任意の条件を含む。形成を誘導することは、特定の結晶形の固体粒子を、例えばいかなる工程も積極的に実施することなく、溶液またはスラリーから沈殿させることを単に可能にすることを含む。形成を誘導することはまた、適切な溶媒系中で構造式1の化合物を含む溶液を熟成すること(例えば、冷却および/もしくは循環しつつもしくはなしでの熟成)、ならびに/または適切な溶媒系中で構造式1の化合物を含む溶液が、冷却しつつもしくはなしで、緩やかに蒸発することを可能にすることも含む。形成を誘導することはまた、構造式1の化合物、または構造式1の化合物を含む溶液を冷却することも含む。結晶性固体の形成を誘導する他の方法が当分野で既知であり、例えば、貧溶媒および蒸気拡散の使用が挙げられる。好ましい実施形態では、形成を誘導することは、構造式1の化合物、または適切な溶媒系中で構造式1の化合物を含む溶液もしくはスラリーを冷却することを含む。
【0144】
結晶Form B、Form I、Form JまたはForm Aの固体粒子を単離することは概して、ろ別、および任意選択で、ろ別された固体を溶媒(例えば、冷却された溶媒)ですすぐことにより達成され、但し、この固体粒子を単離する他の手段が当分野で既知である。結晶Form B、Form I、Form JまたはForm Aの固体粒子を単離する他の手段として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:この固体粒子から液体を留去すること、または他の手段でこの固体粒子を乾燥させること、例えば、加熱することにより、減圧(例えば真空)にかけることにより、もしくは上述の任意の組合せにより乾燥させること。
【0145】
「室温」および「周囲温度」は、本明細書で使用される場合、約16℃~約25℃の温度を意味する。
【0146】
「周囲条件」は、本明細書で使用される場合、室温条件および大気圧条件を指す。
【0147】
構造式1の化合物の結晶Form B、Form I、Form JもしくはForm Aまたは構造式1の化合物の2種以上の結晶形を含む混合物を乾燥させることを、例えば下記により達成し得る:この固体結晶形から、存在するあらゆる液体を留去すること、この固体結晶形を周囲条件に曝露すること、またはこの固体結晶形上に窒素ガス等のガス流を通すこと(および、それにより、あらゆる液体または捕捉された揮発性物質の蒸発または脱溶媒和を誘導すること)、この固体結晶形を減圧(例えば真空)にかけること、または上述の任意の組合せ。特に、結晶Form Iを、結晶Form Iからエタノールが脱溶媒和し得る条件下で乾燥させることにより、例えば、結晶Form Iを減圧(例えば真空)にかけることにより、または結晶Form Iを周囲条件に曝露するもしくは結晶Form I上にガス流を通すことにより、結晶Form Jに変換し得る。
【0148】
実際には、本明細書で説明された方法に従って結晶Form B、Form I、Form JまたはForm Aを調製する工程は、加熱すること、熟成させることおよび/または乾燥させることの組合せを伴うことが非常に多いことが理解される。
【実施例】
【0149】
例証
概括的な物質および方法
本明細書で使用される場合、TP-434-046は、構造式1で表せる化合物のビスHCl塩である。
【0150】
XRPD
本出願で提示されたデータは、標識されたピークを有するx線回折パターンと、ピークリストを有する表とを含む。収集されるデータの範囲は機器に依存する。ほとんどの場合では、最大約30°2θの範囲内のピークを選択した。丸めアルゴリズムを使用し、データの収集に使用する機器および/または固有のピーク分解能に応じて、各ピークを最も近い0.1°または0.01°2θに丸めた。図面および表の両方においてx軸に沿ったピークの位置(°2θ)を、プロプライエタリソフトウェア(TRIADS(商標)v2.0)を使用して決定し、上記基準に基づいて小数点後の1つまたは2つの有効数字に丸めた。x線粉末回折での変動性に関するUSP議論で概説されている推奨に基づいて、ピーク位置の変動性を±0.2°2θ内で付与する(United States Pharmacopeia,USP 38-NF 33 through S1,<941>8/1/2015)。d空間のリストに関して、d間隔を算出するために使用する波長は、Cu-Kα1波長である1.5405929Åであった(Phys.Rev.A56(6)4554-4568(1997))。d間隔の推定値と関連する変動性を各d間隔でUSP推奨から算出し、各表に記載した。
【0151】
USPガイドラインにより、可変性の水和物および溶媒和物は0.2°2θよりも大きいピーク分散を示す場合があるため、これらの物質には0.2°2θのピーク分散を適用しない。
【0152】
「顕著なピーク」は、観察したピークリスト全体のサブセットである。強度が強く、好ましくは重なっていない低角度のピークを識別することにより、観察したピークから顕著なピークを選択する。
【0153】
複数の回折パターンが利用可能である場合には、粒子統計(PS)および/または優先配向(PO)の評価が可能である。単一の回折計で解析された複数の試料からのXRPDパターンの間の再現性は、粒子統計が適切であることを示す。複数の回折計からのXRPDパターンの間の相対強度の整合性は、良好な配向統計を示す。あるいは、利用可能である場合、観察したXRPDパターンを、結晶構造に基づく算出XRPDパターンと比較し得る。面積検出器を使用する二次元散乱パターンも使用して、PS/POを評価し得る。PSおよびPOの両方の影響を無視できると決定した場合には、XRPDパターンは試料の粉末平均強度を表し、顕著なピークを「代表ピーク」として識別し得る。一般的に、代表ピークを決定するために収集したデータが多いほど、これらのピークの分類はより信頼できる可能性がある。
【0154】
「特徴的ピーク」は、このピークが存在する限りにおいて、代表ピークのサブセットであり、ある結晶多形を別の結晶多形(多形は、同一の化学組成を有する結晶形である)から区別するために使用される。どの代表ピーク(存在する場合)が、ある化合物の全ての他の既知の結晶多形に対して、この化合物のある結晶多形に存在するかを±0.2°2θ内で評価することにより、特徴的ピークを決定する。化合物の全ての結晶多形が少なくとも1つの特徴的ピークを必ずしも有するわけではない。
【0155】
TG
本明細書で説明された結晶Form A、IおよびJのTG分析を、TA Instruments 2050熱重量分析器を使用して実施した。ニッケルおよびAlumel(商標)を使用して温度較正を実施した。各試料を白金蒸発皿に入れ、TG炉に入れた。この炉を窒素パージ下で加熱した。データ収集パラメータを、図面中の各サーモグラム上に示す。サーモグラムの方法コードは、開始温度および終了温度ならびに加熱速度の略語であり、例えば00-350-10は、「10℃/分にて周囲から350℃へ」を意味する。
【0156】
結晶Form BのTG分析を、Netzsch Thermo-Microbalance TG 209およびBruker FT-IR Spectrometer Vector 22を使用するTG-FTIRとして実行した。Alるつぼ(開放または微細孔あり)、N2雰囲気、加熱速度10℃分-1。
【0157】
DSC
本明細書で説明された結晶Form A、IおよびJのDSCを、TA Instruments Q2000示差走査熱量計を使用して実施した。NISTトレーサブルインジウム金属を使用して温度較正を実施した。各試料を、アルミニウムTzero圧着(T0C)DSC蒸発皿に入れて蓋で覆い、重量を正確に記録した。試料蒸発皿として構成された、秤量したアルミニウム蒸発皿を、セルの基準側面に置いた。各サーモグラムのデータ収集パラメータおよび蒸発皿構成を図面に示す。サーモグラム上の方法コードは、開始温度および終了温度ならびに加熱速度の略語であり、例えば30-250-10は、「10℃/分にて-30℃から250℃へ」を意味する。他の略語:T0C=Tzero圧着蒸発皿;HS=密封された蓋;HSLP=密封され且つレーザーピンホールで穿孔された蓋;C=圧着された蓋;NC=圧着されていない蓋。
【0158】
本明細書で説明された結晶Form BのDSCを、密閉Auるつぼ、加熱速度:10または20℃分-1、範囲:-50℃~250℃と共にPerkin Elmer DSC 7を使用して実施した。
【0159】
実施例1-Form A
種添加なしのForm Aの調製
米国特許第8,906,887号明細書で詳述されている手順に従って非晶質TP-434-046(ビスHCl塩)を得、この明細書の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。非晶質TP-434-046を、約10分にわたりメタノール中のHCl(1.25M、1V)およびEtOH中のHCl(1.25M、2V)の混合物中で撹拌し、続いてエタノール(4V)を添加した。この懸濁液を一晩周囲温度で撹拌し、次いで0℃まで冷却した。次いで、Form Aを単離した。
【0160】
種添加ありのForm Aの調製
第二世代プロセス-Form A
この結晶化プロセスを、0~22℃でメタノール/エタノール/水/濃HCl(1.91V/0.84V/0.19V/0.47V)の混合物にTP-434-046(ビスHCl塩)を溶解させ、続いてポリッシュろ過し(polish filtration)、エタノール(1.75V)ですすぐことにより開始した。次いで、この溶液にForm Aを種添加し、2時間にわたり周囲温度で撹拌して懸濁液を得た。次いで、追加のエタノール(1部のTP-434-046に対して5.4V)を1時間かけて添加し、この混合物を3時間にわたり連続的に撹拌した。0℃まで冷却して3時間にわたり0℃で撹拌した後、固体をろ別により単離した。
【0161】
第三世代プロセス-Form A
第三世代のForm A結晶化プロセスでは、非晶質TP-434-046(ビスHCl塩)をEtOH/水(3.5V/0.4V)の混合物に溶解させ、続いてポリッシュろ過し、EtOH/濃HCl/MeOH(1.5V/0.3V/0.1V)の溶液ですすいだ。次いで、この溶液にForm Aを種添加し、一晩撹拌した。追加のエタノール(4V)を4時間かけて添加した。1時間超にわたり周囲温度で撹拌した後、この懸濁液を0℃まで冷却し、2時間にわたり0℃で撹拌し、次いで単離した。Form Aは、EtOHおよび水との共溶媒和物である。Form AのXRPDパターンを
図1に示し、ピークの一覧を表1に示す。
【0162】
【0163】
Form Aのバッチのうちの1つのTGAトレースを
図2Aに示す。TGサーモグラムでは、周囲~125℃で約4.7%および125~200℃で約2.7%の重量減少を観察した。200℃超で起こる重量減少は、おそらく分解に起因する。
【0164】
Form AのDSCトレースを
図2Bに示す。DSCサーモグラムは、TGデータと相関する約120℃での幅広い吸熱を示す。融解/分解に起因している可能性がある、約222℃で示される吸熱も存在する。
【0165】
実施例2-Form B
種添加なしのForm Bの調製
TP-434-遊離塩基からTP-434-046 Form Bへの変換
【化8】
手順:
乾燥させた5Lフラスコに無水メタノール814mlを入れ、続いて200プルーフ無水エタノール358mLを入れた。この混合物を0~2℃に冷却した。水(81mL)を入れ、続いて37%濃HCl 199.7mlを入れた。温度が1.8℃から19.0℃まで上昇した。この反応混合物の温度が0℃に戻った後、温度を20℃未満に維持しつつ、固体のTP-434遊離塩基(426g、約0.763モル)を30分かけて徐々に入れた。
【0166】
わずか4分後に固体懸濁液が現れ、顕微鏡により、板状結晶(Form B)が形成されたことが分かる。この黄色懸濁液を、20~23℃で2時間にわたり撹拌した。
【0167】
この混合物に、無水200プルーフエタノール(1.91L)を3時間かけて添加した。得られた黄色懸濁液を1時間かけて0~1℃に冷却し、この懸濁液を30分にわたり0~2℃で連続的に撹拌した。
【0168】
「M」フリット化フィルタ漏斗に通してろ別することにより、固体を集めた。この固体ケーキを無水200プローフエタノール250mlで洗浄した。この洗浄後、このケーキを、14時間にわたり窒素ブランケットで真空吸引することにより、このフィルタ漏斗中で連続的に乾燥させた。
【0169】
この固体(610g)を2つのトレイに移し、(約24時間かけて)恒量に達するまで室温(25±5℃)にて高真空オーブン中で乾燥させて、黄色固体(466g)を得た。KFは6.2%である。1H-NMRは、TP-434-046/MeOH/EtOHのモル比が1/0.97/0.16であることを示した。
【0170】
この固体(459g)を、1日にわたり湿気を含む真空(乾燥オーブン中での、水が入ったビーカーによる、60~80%湿度、真空0.043mpa)下でさらに乾燥させ、次いで、2日にわたりオイルポンプによる真空下で乾燥させて、TP-434-046を淡黄色固体(458g)として得た。
【0171】
生成物のHPLCは、98.88%のTP-434を示した。w/wのアッセイは、この生成物が75.3%のTP-434遊離塩基を含むことを示した(この生成物のw/w分析に基づいて、この結晶化の収率は、出発物質のw/wアッセイ補正なしで少なくとも81%である)。残留メタノールは1.3重量%であり、1H-NMRによりエタノールを検出しなかった。KFによる残留水は11.18%であった。CNHおよび塩化物の分析は、C,45.07%;H,5.80%;N,7.88%;Cl-,9.88%を示した。C27H33Cl2F1N4O8+5H2Oの場合の算出値:C,44.94%;H,6.01%;N,7.76%;Cl-,9.83;水,12.5%。生成物のXRPDはForm Bと一致した。
【0172】
種添加ありのForm Bの調製
粗TP-434-046をメタノール(6V)に溶解させた。この溶液を、0.45μmインラインフィルタに通してポリッシュろ過し、メタノール(1V)、水(0.56V)および濃HCl(0.16V)の溶液ですすいだ。この溶液に、上記で説明したように調製したForm B種(0.5重量%)を種添加し、約4時間にわたり21±2℃で撹拌した。ポリッシュろ過した濃HCl(0.28V)を徐々に添加し、温度を21±2℃で制御した。この混合物を約16時間にわたり21±2℃で撹拌し、約30分で0℃まで冷却し、3時間にわたり0℃で保持した。ろ別により固体を集め、MeOH/水/濃HCl(2×1V,0.87/0.07/0.06)の溶液で洗浄した。この固体(Form B)を、真空下および窒素下の両方で乾燥させた。
【0173】
Form Bを、顕微鏡下での板状結晶および特有のXRPDを有するメタノレート(1当量のメタノールを有する)として特徴付けた。Form Bの結晶化により、高い回収率と不純物を除去する良好な能力とが得られる。Form Bは、メタノールの存在に起因して医薬用途に最も望ましい形態ではない可能性があるが、非晶質TP-434-046からの望ましい純度および高収率の結晶Form Bを、医薬用途の純粋な結晶Form I、Form Jまたはこれらの混合物へと変換し得る。Form Bは、MeOH(約1当量)および水との共溶媒和物である。Form BのXRPDパターンを
図3に示し、ピークの一覧を表2に示す。
【0174】
【0175】
Form BのTGAトレースを
図4Aに示す。TG-FTIR測定は、50~150℃の範囲でのMeOHおよび少量の水の放出を示した(12.7重量%の重量減少)。この試料の分解を200℃超で検出した。
【0176】
Form BのDSCトレースを
図4Bに示す。DSC測定を、密閉したAuるつぼ(窒素流下で密閉した)中で実行した。この試料を、128℃での融解ピーク(ΔH
f=56.3J/g)およびこの試料の分解の開始を示す-50~205℃の範囲で加熱した。
【0177】
実施例3-Form I/Form Jの発見
Form Iの調製
結晶Form Bを、EtOH(5体積)および水(0.4体積)に溶解させた。この混合物を4時間にわたり35℃で保持し、次いで30℃まで冷却して2時間にわたり保持した。追加の溶媒(濃HCl 0.3体積およびMeOH 0.1体積)を添加し、この溶液に5%結晶Form Aを種添加し、次いで室温まで冷却した。室温で一晩撹拌した後、新しい形状の結晶を観察した。次いで、この混合物を1時間にわたり35℃まで加熱し、次いで室温まで冷却した。この結晶は、新規の形態に完全に変換された。この新規の形態の最初のロットは後に、Form JおよびForm Iの混合物であることが分かった。Form IおよびJは、顕微鏡下で不規則な形状の六角形、ダイヤモンドまたはクラスタとして現れ、且つ特有のXRPDを有する。
【0178】
実施例4-Form I
Form Iは、約0.5当量(または約3.5重量%)のエタノールを含むヘミエタノレートである。Form Iの含水量は約3.4%である(KFにより決定した)。Form Iは、斜方晶の単位格子、空間群P212121であり、単位格子パラメータは下記である:
a=11.8オングストローム
b=12.8Å
c=39.9Å
Vol=6024Å
3。
Form Iに関して観察したXRPDピークを
図5に示し、表3に列挙する。
【0179】
【0180】
TGAにより、Form Iは、周囲~120℃で約4.8%の重量減少を示し、続いて120~180℃で約2.2%の重量減少を示し、このことは、加熱時の揮発性物質の減少を示す(
図6A)。約218℃でのTGAサーモグラムの勾配の劇的な変化は、分解と一致する。残留エタノールが失われると、Form IはForm Jへと変換され得る。
【0181】
DSCサーモグラムは、揮発性物質の減少に起因するTGAによる最初の重量減少ステップと同時に起こる、約116℃での幅広くて弱い吸熱を示す。別の弱い吸熱を約171℃で観察し、この吸熱は、TGAでの第2の少ない重量減少におそらく対応する。約235℃超で観察した一連の急に重なる吸熱および発熱の推移は、おそらく分解に起因する(
図6B)。
【0182】
実施例5-Form J(Form Iの脱溶媒和形態)
Form Jを、40℃/75%RHで保存したForm Iの1ヶ月にわたり安定した試料から同定した。ほぼ全ての残留エタノールが除去されるまで、40
oC/75%RH下で、またはRHが75~85%である室温で、Form Iを曝露することにより、Form Jを生成し得る。Form JはForm Iの脱溶媒和形態であると決定した。Form Jは斜方晶であり、空間群P212121であり、単位格子パラメータは下記である:
a=11.8Å
b=13.3Å
c=38.5Å
Vol=6060Å
3。
Form Jに関して観察したピークを
図7に示し、表4に列挙する。
【0183】
【0184】
TGAにより、Form Jは、周囲~125℃で約5.6の重量減少を示し、このことは、加熱時の揮発性物質の減少を示す(
図8A)。約223℃でのTGAサーモグラムの勾配の劇的な変化は、分解と一致する。
【0185】
DSCサーモグラム(
図8B)は、揮発性物質の減少に起因するTGAによる重量減少ステップと同時に起こる、約118℃での幅広い吸熱を示す。弱くて、より鋭い吸熱を約236℃で観察し、この吸熱は融解/分解と関連する可能性がある。
【0186】
実施例6-Form IおよびForm Jの関係性
Form Iの単位格子およびForm Jの単位格子は、これらが異なる形態であると称するのに十分に異なる(上記を参照されたい)。Form IおよびForm Jは同一の空間群を有し、且つ分子の充填配置において同形構造の可能性があることから類似の相対寸法を有する。Form Iは、湿度および熱への曝露(例えば、45℃/75%RH下、または180℃までの加熱)により、Form Jへと完全に変換され得る。Form IおよびForm Jの混合物が多くの試料で見られるという事実は、Form IおよびForm Jが異なる熱力学相を表すことを示す。
【0187】
実施例7-結晶形の利点
結晶Form A、B、IおよびJは、非晶質よりも多くの利点を有する。非晶質物質は吸湿性が非常に高く、湿気に曝露された場合には容易に脱溶離(deliquite)し得る。非晶質物質は不安定であり、エピマー化の速度ははるかに大きい。下記の表5、表6および表7のデータを参照されたい。構造式1のビスHCl塩は、Form A、B、IおよびJとして単離された場合には、非晶質として単離された場合と比べて、含まれる不純物が少ない(下記の表8を参照されたい)。実際には、非常に高い純度のForm Bは、医薬用途のために、高純度の結晶Form I、結晶Form J、または結晶Form Iおよび結晶Form Jの混合物へと変換され得る。結晶Form Bを結晶Form I、結晶Form Jまたはこれらの混合物へと変換するための、本明細書で説明された手順を使用することにより、結晶Form I、結晶Form Jまたはこれらの混合物を、医薬組成物としての製剤化の準備ができている組成物(例えば、許容される純度、容易に溶解可能および/または良好な流動特性を示す)として単離され得る。
【0188】
Form A、IおよびJのうち、Form IおよびJは、活性医薬成分(API)としてForm Aを超える利点を有することが分かった。一般に、Form IおよびJは、現在の結晶化システムにおいて他の形態と比べて熱力学的に安定しており、より広いプロセス/操作範囲を許容し;Form Aと比べて単離収率が高く;Form Aと比べて速くろ別されて容易に乾燥され;Form Aと比べて5~85%RHで吸湿性がはるかに低く;Form Aと比べて嵩密度が高く且つ流動特性が良好である。詳細なデータを下記で論じる。
【0189】
実施例8-エピマー化研究
室温および40℃でのForm A、Form Bおよび非晶質の比較
式1の化合物(全ての形態)の主な分解物は、テトラサイクリンコアのA環のC-4炭素でのエピマーである。非晶形、Form AおよびForm Bの室温および40℃の両方での4週間安定性研究でのエピマー増加の概要を表5に示す。室温および40℃の両方での非晶形のエピマー増加は、Form AおよびBの場合と比べてはるかに高い。
【0190】
【0191】
さらなるエピマー化研究
5℃および室温でのForm A、B、IおよびJならびに非晶質の比較
所望の試料をバイアルに入れ、このバイアルに蓋をし、次いでこのキャップの上にパラフィルムを置くことにより、安定性試験を3ヶ月かけて行なった。このバイアルを指定の温度で保存した。試験開始および試験終了の両方で、試料をHPLCで分析した。
【0192】
ある安定性研究では、非晶形を、Form AおよびForm Bと並べて比較した。5℃および室温(RT)の両方での3ヶ月安定性試料におけるエピマー変化の概要を表6に示す。非晶質試料でのエピマー増加は、3ヶ月後に5℃およびRTでそれぞれ3.42%および5.47%であり、これらは、Form AおよびBで見られるものと比べてはるかに高い。これらのデータから、非晶形はForm AおよびBと比べてはるかに速くエピマー化し且つ安定性がはるかに低いことが実証された。
【0193】
【0194】
別の安定性研究では、Form A、IおよびJの安定性を比較した。所望の安定性試料を、バッグ間に乾燥が入った二重PEバッグに入れ、次いでホイルバッグで密封した。この安定性試料を、指定の安定性温度下で保存した。試験開始および3ヶ月後に試料をHPLCで分析した。
【0195】
5℃および室温(RT)の両方での3ヶ月安定性試料における、対応するエピマー変化の概要を表7に示す。Form IおよびJは、Form Aで見られたものに匹敵するエピマー量を示した。
【0196】
【0197】
両方の安定性研究のデータから、結晶形A、B、IおよびJは非晶形と比べて安定であることが実証された。
【0198】
実施例9-動的蒸気吸着(Dynamic Vapor Sorption)/脱着(DVS)
Form A、IおよびJに関して、VTI SGA-100 Vapor Sorption Analyzerで湿気の吸着/脱着データを集めた。吸着および脱着のデータを、窒素パージ下において、10%RH増分で5%~95%RHの範囲にわたり集めた。
【0199】
非晶質固体の場合には、動的蒸気吸着(DVS)を、SMS(表面測定システム)DVS固有装置(DVS Intrinsic instrument)により測定した。下記のプログラムを使用して、吸着および脱着を集めた:10%RH増分で25%RH~95%RH~0%RH~95%RH。
【0200】
Form Bの場合には、動的蒸気吸着(DVS)を、SMS(表面測定システム)DVS-1水蒸気吸着アナライザにより測定した。下記のプログラムを使用して、吸着および脱着を集めた:5%RH/h増分で50%RH~0%RH~96%RH~50%RH。
【0201】
DVSプロットを
図9~13に示す(それぞれ、非晶質、Form A、Form B、Form IおよびForm J)。下記のDVSデータは、相対湿度が25%RHから95%RHに上昇した場合に、非晶質TP-434-046の重量が最も増加したことを示す:非晶質(約35.5%)、Form A(約19.5%)、Form B(約11%)、Form I(約24.5%)、Form J(約21%)。ほとんどの場合では、吸着曲線が始まる前に形状が変化したことから、これらのデータを、DVSの吸収曲線から作成する。
【0202】
実施例10-不純物除去研究
本明細書で説明されたForm BからForm I/Jへのスラリー-スラリー変換の不純物除去能力の概要を下記の表8に示し、本明細書で説明されたForm AおよびBの結晶化プロセスと比較する。注目すべきことに、非晶形を生成するための沈殿では、いかなる不純物も除去されない。Form Bでは、除去することが困難である不純物M-16(TP-6773)の必須の減少がもたらされる。加えて、Form B結晶化により、他の不純物も必須のレベルで除去される(例えば、NMPおよびTP-630を参照されたい)。Form Bはメタノレートであることから、Form Bは、APIとして使用するのに本明細書で説明された最も所望されるFormではない可能性があるが、高い不純物除去能力は、熱力学的に安定したForm I、Form Jまたはこれらの混合物への変換に有利である。
【0203】
【0204】
【0205】
実施例11-Form IおよびForm Jの大規模バッチ
50gスケールアップバッチ
50gスケールアップのスラリー-スラリープロセスを実施した。Form Bを一晩で新たな形態へと変換した。18時間後の上清濃度は、21mg/g(TP-434遊離塩基)であった。固体をろ別し(高速ろ別)、エタノール(1体積)で洗浄し、26℃にて真空オーブン中で乾燥させた。スキーム1は、この実験からの結果の概要を示す。この物質のXRPDパターンから、この物質は大部分がForm Iであり、わずかにForm Jであることを確認した。TP-434の遊離塩基(FB)可能性を、TP-434参照標準を使用したHPLC重量/重量アッセイにより決定した。
【化10】
【0206】
100gスケールアップバッチ
Form B 100gを使用して、Form Iの調製をスケールアップした。この実験を、EtOH 5体積、水0.4体積、濃HCl 0.4の溶液にForm Bを添加し、続いてForm Iの種を入れる(2.5重量%の種負荷)ことにより実行し、Form I合計85gを単離した。このデータの概要をスキーム2に示す。Form Iの純度は先のバッチと一致した。
【化11】
【0207】
300gスケールアップバッチ
Form BからForm Iへの300gスケールのスラリー-スラリー変換を実施した。このバッチの概要をスキーム3に示す。
【化12】
【0208】
300gスケールの結晶化速度は、予想と比べて遅かった。室温で一晩撹拌した後、Form I結晶化のための上清濃度は通常、8~15mg/mLの遊離塩基である。しかしながら、300gスケールバッチの場合では、この濃度は39mg/mgであった。この懸濁液を10℃まで冷却し、次いで0度まで冷却しても、この濃度は、Form Aの場合と同等の操作ほど速く低下しなかった。全体で30時間の後、この懸濁液に0℃でEtOH 1体積を添加した。このバッチを、全体で最大48時間にわたり室温で撹拌した。この時点で、この濃度は11mg/mLに達し、このバッチをろ別し、洗浄し、生成物を一晩真空オーブン中で乾燥させて、TP-434-046(Form I)を得た。
【0209】
664gスケールアップバッチ
Form B(664g)で出発し、現在のForm BからForm Iへの変換手順を使用して、このスケールアップを実行し、真空オーブン中で乾燥させた後にTP-434-046(575g、84%収率、3.1%EtOHおよび4.5%水を含む)を得た。このバッチの概要をスキーム4に示す。XRPDは、一部がForm JであるForm Iと一致した。
【化13】
【0210】
1.83kgスケールアップバッチ
Form B 1.83kgで出発して、スケールアップバッチを製造した。詳細な手順を下記で説明する。
【化14】
【0211】
【0212】
1. 20L反応容器に、EtOH(9150mL)、H2O(732mL)および濃HCl(732mL)を入れる。注:使用前に、この溶液を0.22μmフィルタに通してろ過する。
2. TP-434-046 form B(1830g)を一度に入れ、5分にわたり撹拌して、この溶液を飽和状態にする。
3 form I(90g)を一度に種添加し、一晩18時間、室温で撹拌する。
4. 顕微鏡で、form BのForm Iへの変換をチェックする。注:FORM Iを確認する。
5. HPLCを使用して、上清重量/重量アッセイは1.77%である。
6. エタノール(5490mL、2体積)を3時間かけて添加する。注:使用前に、この溶液を0.22μmフィルタに通してろ過する。
7. この反応混合物を、室温でさらに1時間撹拌する。
8. 18インチのクロックフィルタにより、固体をろ別して集める。
9. 次いで、このケーキを、最初の溶媒比(EtOH 3294mL/ H2O 183mL/濃HCl 183mL)で構成されたすすぎ溶液3660mLですすぐ。注:使用前に、この溶液を0.22μmフィルタに通してろ過する。
10. 一晩にわたり窒素流下で乾燥させる[EtOH(HNMRによる):3.63重量%;KF:6.27%]
11. 25℃にて、恒量を得るまで真空オーブンで乾燥させる。
EtOH(HNMRによる):3.45重量%
KF: :3.83 %
【0213】
パイロットプラントでのForm Iの形成
粗TP-434-046を結晶化してForm Bを得、続いてForm BからForm I/Jへとスラリー-スラリー変換した。
【0214】
Form BをEtOH/水/濃HCl(5V/0.4V/0.4V)の混合物に入れ、5~15分(10分を目標とする)にわたり15℃~25℃(21℃を標的とする)で撹拌し、続いてForm I種(5重量%)を添加した。この混合物を、10~18時間(14時間を標的とする)にわたり18℃~23℃(21℃を標的とする)で撹拌した。試料を採取し、上清濃度および顕微鏡に関して分析した。この上清濃度が≦6.0%であり、且つForm I/Jの排他的形成を顕微鏡で確認した場合には、エタノール(3V)を、18℃~23℃(21℃を標的とする)で最低3時間かけて添加した。次いで、この混合物を、最低1時間にわたり撹拌した後にろ別した。
【0215】
最初の製造では、このForm BスラリーにForm Iを種添加して、80rpmの撹拌速度にて21℃で14時間にわたり撹拌した後、顕微鏡は、Form AおよびForm I/Jの混合物を示した。FP-000205の製造において、Form AからForm Iへの変換をスピードアップさせるために、温度を21℃から約22.5℃(依然として、18℃~23℃の定義された温度範囲内)まで上昇させ、撹拌速度を80rpmから120rpmへと増加させた。6時間以内に、全てのForm AがForm Iへと変換された。TP-434-046の上清濃度は3.6%であり、≦6.0%の仕様を満たした。エタノール(3V)を3時間かけて入れ、この混合物を約10時間にわたり撹拌した後にろ別した。
【0216】
Form Aの形成を回避し、Form Aが生じる場合にはForm AからForm I/Jへの変換の速度を増加させるために、次の2つの製造に関していくつかの改変を行なった。エージングの温度および持続時間を両方とも、10~18時間(14時間を標的とする)にわたる18℃~23℃(21℃を標的とする)から24~36時間(24時間を標的とする)にわたる18℃~25℃へと増加させ、最初の12時間では温度範囲の上部を標的とし、2番目の12時間では21℃を標的とした。
【0217】
最後の2つのバッチの製造を、改訂した手順に従って実行した。種添加した混合物を約12時間にわたり約24℃で撹拌した後、いずれのバッチでも、顕微鏡ではForm Aの存在を検出しなかった。21℃で12時間にわたり連続的に撹拌した後、試料を採取し、上清濃度はそれぞれ2.5%および2.8%であった。貧溶媒(EtOH 3V)を3時間かけて添加した後、第2のバッチでの混合物を約8時間にわたり撹拌し、第3のバッチでの混合物を約3時間にわたり撹拌した後、ろ別した。
【0218】
収率、XRPD、残留溶媒、粒径およびHPLC純度に関する結果の簡潔な概要を表10にまとめる。
【0219】
【0220】
XRPDデータに基づいて、7°θ付近のForm Iの最初のピークに関して滑らかな肩で実証されているように、バッチ1はForm Iのみを含む。7°θ付近のForm Iの最初のピークの広い肩で実証されているように、バッチ2は、Form IおよびわずかなForm Jと一致する。7°θ付近のForm Iの最初のピークの肩上のピークで実証されているように、バッチ3は、より多くのForm Jを含む。3つの登録バッチ全てが、「Form I、Form J、またはForm IおよびJの混合物に対する一致」として定義されるXRPD仕様を満たす。
【0221】
純粋なForm Iを含むバッチ1に関して、Form BのForm Iへの変換の最中での一時的な動的形態としてのForm Aの形成が、生成物のXRPDおよび粒径に影響を及ぼしている可能性がある。バッチ1での粒子は、より小さくて明確に定義された個々の結晶で大部分が構成されており、バッチ2およびバッチ3での粒子は、個々の結晶のクラスタを含む大きい結晶で構成されている。これらの3つのバッチの結晶の形態を、単離された生成物に関する偏光顕微鏡によっても確認した(データを示さない)。顕微鏡下での観察を、バッチ1のD50がバッチ2およびバッチ3でのD50の半分未満である粒度分布データによっても確認し、バッチ1では、はるかに広い粒度分布を観察した(データを示さない)。
【0222】
これら3つのバッチのTGA分析およびDSC分析は、実質的に同一であった。
【0223】
本明細書中で引用された全ての特許、公開された出願および参考文献の教示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0224】
本発明を、その例示的な実施形態を参照して具体的に示して説明しているが、特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形態をおよび詳細の様々な変更を行ない得ることが当業者に理解されるだろう。