(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】バックグラインド用粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241205BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2022516946
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2021014713
(87)【国際公開番号】W WO2021215247
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020076702
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】安井 浩登
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏嘉
(72)【発明者】
【氏名】木下 仁
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-138183(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061132(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/110426(WO,A1)
【文献】特開2002-203828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層と、を備え、かつ、電子部品の表面を保護するために用いられる、バックグラインド用粘着性フィルムであって、
下記(方法)により測定される、紫外線硬化後の前記粘着性樹脂層の破断伸度が20%以上200%以下であり、
前記基材層と前記粘着性樹脂層とが直に接しているバックグラインド用粘着性フィルム。
(方法)
シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に厚み20μmの粘着性樹脂層を形成し、次いで、前記粘着性樹脂層上にコロナ処理されたエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(MFR:1.7g/10min、酢酸ビニル含量:9質量%、厚み:140μm)を貼り合わせて積層体を得る。次いで、得られた積層体をオーブンで40℃、3日間加熱し、熟成させる。
前記積層体の前記エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム側から前記粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm
2
で紫外線量1080mJ/cm
2
照射して前記粘着性樹脂層を光硬化させる。次いで、前記粘着性樹脂層を光硬化させた積層体を長さ110mm、幅10mmに切り、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを前記積層体から剥がす。
次いで、前記粘着性樹脂層を前記エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムとともに、初期のチャック間距離Loが50mmになるように、引張試験機でチャックする。サンプルを30mm/分の速度で引張り、目視にて前記粘着性樹脂層に破断が観測された点を破断点とし、その時のチャック間距離をLとする。破断伸度(%)は、(L-Lo)/Lo×100(%)によって求める。
【請求項2】
請求項1に記載のバックグラインド用粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層は、分子中に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂と、光開始剤と、を含むバックグラインド用粘着性フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバックグラインド用粘着性フィルムにおいて、
前記電子部品は、ハーフカットされている、または改質層が形成されているバックグラインド用粘着性フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバックグラインド用粘着性フィルムにおいて、
前記粘着性樹脂層の厚みが10μm以上100μm以下であるバックグラインド用粘着性フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバックグラインド用粘着性フィルムにおいて、
前記基材層を構成する樹脂がポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンエーテルから選択される一種または二種以上を含むバックグラインド用粘着性フィルム。
【請求項6】
回路形成面を有する電子部品と、前記電子部品の前記回路形成面側に貼り合わされた粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記電子部品の前記回路形成面側とは反対側の面をバックグラインドする工程(B)と、
前記粘着性フィルムに紫外線を照射した後に前記電子部品から前記粘着性フィルムを除去する工程(C)と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法であって、
前記粘着性フィルムが請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバックグラインド用粘着性フィルムである電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(A)は、
前記電子部品をハーフカットする工程(A1-1)および前記電子部品に対してレーザーを照射し、前記電子部品に改質層を形成する工程(A1-2)から選択される少なくとも一種の工程(A1)と、
前記工程(A1)の後に、前記電子部品の前記回路形成面側に前記バックグラインド用粘着性フィルムを貼り付ける工程(A2)と、
を含む電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックグラインド用粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の製造工程の中で、電子部品を研削する工程においては、電子部品を固定したり、電子部品の損傷を防止したりするために、電子部品の回路形成面に粘着性フィルムが貼り付けられる。
このような粘着性フィルムには、一般的に、基材フィルムに粘着性樹脂層を積層させたフィルムが用いられている。
【0003】
高密度実装技術の進歩に伴い、半導体ウエハ等の電子部品の薄厚化の要求があり、例えば50μm以下の厚さまで薄厚加工することが求められている。
このような薄厚加工の一つとして、電子部品の研削加工の前に、電子部品の表面に所定の深さの溝を形成し、次いで研削を行うことで電子部品を個片化する先ダイシング法がある。また、研削加工の前に、電子部品内部にレーザーを照射することで改質領域を形成し、次いで研削を行うことで電子部品を個片化する先ステルス法がある。
【0004】
このような先ダイシング法や先ステルス法用の粘着性フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2014-75560号公報)および特許文献2(特開2016-72546号公報)に記載のものが挙げられる。
【0005】
特許文献1には、基材上に粘着剤層を有する表面保護シートであって、下記要件(a)~(d)を満たす、表面保護シートが記載されている。
(a)上記基材のヤング率が、450MPa以上である
(b)上記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率が、0.10MPa以上である
(c)上記粘着剤層の50℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以下である
(d)上記粘着剤層の厚さが、30μm以上である
特許文献1には、このような表面保護シートは、ワークの裏面研削工程の際に、ワークが割断され形成される間隙からワークの被保護表面に、水の浸入(スラッジ浸入)を抑制して、ワークの被保護表面の汚染を防止し得ると記載されている。
【0006】
特許文献2には、基材樹脂フィルムと、上記基材樹脂フィルムの少なくとも片面側に形成された放射線硬化性の粘着剤層とを有し、上記基材樹脂フィルムは、引張弾性率が1~10GPaである剛性層を少なくとも1層有し、上記粘着剤層を放射線硬化させた後における剥離角度30°での剥離力が、0.1~3.0N/25mmであることを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープが記載されている。
特許文献2には、このような半導体ウエハ表面保護用粘着テープによれば、先ダイシング法または先ステルス法を適用した半導体ウエハの裏面研削工程において、個片化された半導体チップのカーフシフトを抑制するとともに、半導体ウエハを破損や汚染することなく加工することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-75560号公報
【文献】特開2016-72546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らの検討によれば、例えば、先ダイシング法や先ステルス法等を用いた電子装置の製造プロセスおいて、バックグラインド工程後に電子部品から粘着性フィルムを剥離する際に、電子部品側に糊残りが生じやすいことが明らかになった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、バックグラインド工程後において、電子部品から粘着性フィルムを剥離する際の電子部品側の糊残りを抑制することが可能なバックグラインド用粘着性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、基材層と、紫外線硬化型の粘着性樹脂層と、を備える粘着性フィルムにおいて、紫外線硬化後の破断伸度が特定の範囲にある粘着性樹脂層を用いることにより、バックグラインド工程後において、電子部品から粘着性フィルムを剥離する際の電子部品側の糊残りを抑制することができることを見出して、本発明を完成させた。
【0011】
本発明によれば、以下に示すバックグラインド用粘着性フィルムおよび電子装置の製造方法が提供される。
【0012】
[1]
基材層と、上記基材層の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層と、を備え、かつ、電子部品の表面を保護するために用いられる、バックグラインド用粘着性フィルムであって、
紫外線硬化後の上記粘着性樹脂層の破断伸度が20%以上200%以下であるバックグラインド用粘着性フィルム。
[2]
上記[1]に記載のバックグラインド用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層は、分子中に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂と、光開始剤と、を含むバックグラインド用粘着性フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載のバックグラインド用粘着性フィルムにおいて、
上記電子部品は、ハーフカットされている、または改質層が形成されているバックグラインド用粘着性フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のバックグラインド用粘着性フィルムにおいて、
上記粘着性樹脂層の厚みが10μm以上100μm以下であるバックグラインド用粘着性フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のバックグラインド用粘着性フィルムにおいて、
上記基材層を構成する樹脂がポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンエーテルから選択される一種または二種以上を含むバックグラインド用粘着性フィルム。
[6]
回路形成面を有する電子部品と、上記電子部品の上記回路形成面側に貼り合わされた粘着性フィルムと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
上記電子部品の上記回路形成面側とは反対側の面をバックグラインドする工程(B)と、
上記粘着性フィルムに紫外線を照射した後に上記電子部品から上記粘着性フィルムを除去する工程(C)と、
を少なくとも備える電子装置の製造方法であって、
上記粘着性フィルムが上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のバックグラインド用粘着性フィルムである電子装置の製造方法。
[7]
上記[6]に記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(A)は、
上記電子部品をハーフカットする工程(A1-1)および上記電子部品に対してレーザーを照射し、上記電子部品に改質層を形成する工程(A1-2)から選択される少なくとも一種の工程(A1)と、
上記工程(A1)の後に、上記電子部品の上記回路形成面側に上記バックグラインド用粘着性フィルムを貼り付ける工程(A2)と、
を含む電子装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バックグラインド工程後において、電子部品から粘着性フィルムを剥離する際の電子部品側の糊残りを抑制することが可能なバックグラインド用粘着性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施形態の粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0016】
1.粘着性フィルム
図1は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るバックグラインド用粘着性フィルム50は、基材層10と、基材層10の一方の面側に設けられた紫外線硬化型の粘着性樹脂層20と、を備え、かつ、電子部品30の表面を保護するために用いられる、バックグラインド用粘着性フィルム50であって、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の破断伸度が20%以上200%以下である。
ここで、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の破断伸度は以下の方法で測定した値である。
(方法)
コロナ処理されたエチレン・酢酸ビニル共重合体押出フィルム(MFR:1.7g/10min、酢酸ビニル含量:9質量%、厚み:140μm)のコロナ処理面に、本実施形態に係るバックグラインド用粘着性フィルム50の粘着性樹脂層20と厚み、組成等が同等のものを積層し、さらに当該粘着性樹脂層20側にシリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム等の離型フィルム(セパレータ)が積層された状態の測定用サンプルを作製する。
積層方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に粘着性樹脂層20を形成し、次いで、粘着性樹脂層20上にコロナ処理されたエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムを貼り合わせて積層体を得る。次いで、得られた積層体をオーブンで40℃、3日間加熱し、熟成させる。
次いで、得られた積層体のエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム側から粘着性樹脂層20に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm
2で紫外線量1080mJ/cm
2照射して粘着性樹脂層20を光硬化させる。次いで、粘着性樹脂層20を光硬化させた積層体を長さ110mm、幅10mmに切り、セパレータであるポリエチレンテレフタレートフィルムを積層体から剥がす。
次いで、粘着性樹脂層20をエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムとともに、初期のチャック間距離Loが50mmになるように、引張試験機(例えば、島津製作所、オートグラフAGS-X)でチャックする。サンプルを30mm/分の速度で引張り、目視にて粘着性樹脂層20に破断が観測された点を破断点とし、その時のチャック間距離をLとする。破断伸度(%)は、(L-Lo)/Lo×100(%)によって求める。
【0017】
上述したように、本発明者らの検討によれば、例えば、先ダイシング法や先ステルス法等を用いた電子装置の製造プロセスおいて、バックグラインド工程後に電子部品から粘着性フィルムを剥離する際に、電子部品側に糊残りが生じやすいことが明らかになった。
この理由は明らかではないが、通常の電子部品のバックグラインド工程と異なり、割断された電子部品からバックグラインド用粘着性フィルム50を剥離する必要があるため、割断された電子部品のエッジ部に糊残りが生じやすくなると考えられる。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、基材層10と、紫外線硬化型の粘着性樹脂層20と、を備える粘着性フィルム50において、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の破断伸度が上記範囲にある粘着性樹脂層20を用いることにより、バックグラインド工程後において、電子部品30から粘着性フィルム50を剥離する際の電子部品30側の糊残りを抑制することができることを初めて見出した。
【0018】
本実施形態に係る粘着性フィルム50において、紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の破断伸度は20%以上200%以下であるが、粘着性樹脂層20に適度な靭性を持たせることで、糊残りが生じにくい粘着性樹脂層20を設計する観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、そして、好ましくは150%以下、より好ましくは100%以下、さらに好ましくは80%以下である。
紫外線硬化後の粘着性樹脂層20の破断伸度は、例えば、粘着性樹脂層20を構成する粘着性樹脂や架橋剤、光開始剤の種類や配合割合、粘着性樹脂における各モノマーの種類や含有割合を制御することにより上記範囲内に制御することができる。
【0019】
本実施形態に係る粘着性フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは50μm以上600μm以下であり、より好ましくは50μm以上400μm以下であり、さらに好ましくは50μm以上300μm以下である。
【0020】
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、本発明の効果を損なわない範囲で、各層の間に凹凸吸収性樹脂層や接着層、帯電防止層(図示せず)等の他の層を設けてもよい。凹凸吸収性樹脂層によれば、粘着性フィルム50の凹凸吸収性を向上させることができる。接着層によれば、各層の間の接着性を向上させることができる。また、帯電防止層によれば、粘着性フィルム50の帯電防止性を向上させることができる。
【0021】
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、電子装置の製造工程において、電子部品30の表面を保護するために用いられ、より具体的には電子装置の製造工程の一つである電子部品30を研削する工程(バックグラインド工程とも呼ぶ)において電子部品30の回路形成面30A(すなわち回路パターンを含む回路面)を保護するために使用するバックグラインドテープとして用いられる。具体的には電子部品30の回路形成面30Aに粘着性フィルム50を貼付けて保護し、当該回路形成面30Aとは反対側の面を研削する工程に用いられる。特に、先ダイシング法や先ステルス法等を用いた電子装置の製造プロセスおいて、バックグラインド工程後に電子部品30から粘着性フィルム50を剥離する際に、電子部品30側に糊残りが生じやすいため、先ダイシング法や先ステルス法等を用いた電子装置の製造プロセスに、本実施形態に係る粘着性フィルム50を好適に適用することができる。
ここで、先ダイシング法では、電子部品30は、
図1に示すようにハーフカットされている。また、先ステルス法では、電子部品30は、レーザー照射により形成された改質層(電子部品30の内部にレーザーによって内部加工された領域)が形成されている。
【0022】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム50を構成する各層について説明する。
【0023】
<基材層>
基材層10は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
基材層10は、電子部品30を加工する際に加わる外力に耐えうる機械的強度があれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
基材層10を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、機械物性および透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体およびポリブチレンテレフタレートから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0024】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、基材層10の機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。基材層10は研削後の電子部品の反りを抑制する観点から、予めアニール処理されているものが好ましい。基材層10は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0025】
基材層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、20μm以上250μm以下が好ましく、30μm以上200μm以下がより好ましく、50μm以上150μm以下がさらに好ましい。
【0026】
<粘着性樹脂層>
本実施形態に係る粘着性フィルム50は紫外線硬化型の粘着性樹脂層20を備える。
粘着性樹脂層20は、基材層10の一方の面側に設けられる層であり、粘着性フィルム50を電子部品30の回路形成面30Aに貼り付ける際に、電子部品30の回路形成面30Aに接触して粘着する層である。
【0027】
粘着性樹脂層20を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0028】
また、粘着性樹脂層20を構成する粘着剤としては、紫外線により粘着力を低下させる紫外線架橋型粘着剤を用いることが好ましい。
紫外線架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層20は、紫外線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、粘着性フィルム50から電子部品30を剥離し易くなる。
【0029】
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
紫外線架橋型の(メタ)アクリル系粘着剤としては、分子中に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂と、光開始剤を含み、必要に応じて架橋剤により上記(メタ)アクリル系樹脂を架橋させて得られる粘着剤を例示することができる。紫外線架橋型の(メタ)アクリル系粘着剤は、分子内に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物をさらに含んでもよい。
【0031】
分子中に重合性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル系樹脂は、具体的には次のようにして得られる。まず、エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーを共重合させる。次いで、この共重合体に含まれる官能基(P)と、該官能基(P)と付加反応、縮合反応等を起こしうる官能基(Q)を有するモノマーとを、該モノマー中の二重結合を残したまま反応させ、共重合体分子中に重合性炭素-炭素二重結合を導入する。
【0032】
上記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルモノマー、酢酸ビニルの如きビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等のエチレン性二重結合を有するモノマーの中から、1種又は2種以上が用いられる。
【0033】
上記官能基(P)を有する共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
上記エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーの割合は、上記エチレン性二重結合を有するモノマーが70~99質量%であり、官能基(P)を有する共重合性モノマーが1~30質量%であることが好ましい。さらに好ましくは、上記エチレン性二重結合を有するモノマーが80~95質量%であり、官能基(P)を有する共重合性モノマーが5~20質量%である。
上記官能基(Q)を有するモノマーとしては、例えば、上記官能基(P)を有する共重合性モノマーと同様のモノマーを挙げることができる。
【0034】
エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基(P)を有する共重合性モノマーとの共重合体に、重合性炭素-炭素二重結合を導入する際に反応させる官能基(P)と官能基(Q)の組み合わせとして、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、水酸基とイソシアネート基等、容易に付加反応が起こる組み合わせが望ましい。又、付加反応に限らずカルボン酸基と水酸基との縮合反応等、重合性炭素-炭素二重結合が容易に導入できる反応であれば如何なる反応を用いてもよい。
【0035】
分子中に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。分子中に重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物の添加量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは5~18質量部である。
【0036】
光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4'-モルフォリノブチロフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)ブタン-1-オン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いてもよい。光開始剤の添加量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは1~10質量部であり、さらに好ましくは4~10質量部である。
【0037】
上記紫外線硬化型粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。上記紫外線硬化型粘着剤は、溶剤タイプ、エマルションタイプ、ホットメルトタイプ等の何れでもよい。
【0038】
架橋剤の含有量は、通常、架橋剤中の官能基数が(メタ)アクリル系樹脂中の官能基数よりも多くならない程度の範囲が好ましい。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。
(メタ)アクリル系粘着剤中の架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層20の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0039】
粘着性樹脂層20は、例えば、基材層10上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等の従来公知の塗布方法を採用することができる。塗布された粘着剤の乾燥条件は特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と(メタ)アクリル系樹脂との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
【0040】
本実施形態に係る粘着性フィルム50において、粘着性樹脂層20の厚みは好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。粘着性樹脂層20の厚みが上記範囲内であると、電子部品30への表面への粘着性と、取扱い性とのバランスが良好である。
【0041】
2.電子装置の製造方法
図2は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、例えば、以下の3つの工程を少なくとも備えている。
(A)回路形成面30Aを有する電子部品30と、電子部品30の回路形成面30A側に貼り合わされた粘着性フィルム50と、を備える構造体100を準備する工程
(B)電子部品30の回路形成面30A側とは反対側の面をバックグラインドする工程(B)と、
(C)粘着性フィルム50に紫外線を照射した後に電子部品30から粘着性フィルム50を除去する工程
そして、粘着性フィルム50として、本実施形態に係る粘着性フィルム50を使用する。本実施形態に係る電子装置の製造方法は、電子部品30の裏面を研削する際に、本実施形態に係る粘着性フィルム50を、いわゆるバックグラインドテープとして用いることに特徴がある。
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0042】
(工程(A))
はじめに、回路形成面30Aを有する電子部品30と、電子部品30の回路形成面30A側に貼り合わされた粘着性フィルム50と、を備える構造体100を準備する。
このような構造体100は、例えば、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層20から離型フィルムを剥離し、粘着性樹脂層20の表面を露出させ、その粘着性樹脂層20上に、電子部品30の回路形成面30Aを貼り付けることにより作製することができる。
【0043】
ここで、粘着性フィルム50に電子部品30の回路形成面30Aを貼り付ける際の条件は特に限定されないが、例えば、温度は20~80℃、圧力は0.05~0.5MPa、貼り付け速度は0.5~20mm/秒とすることができる。
【0044】
工程(A)は、電子部品30をハーフカットする工程(A1-1)および電子部品30に対してレーザーを照射し、電子部品30に改質層を形成する工程(A1-2)から選択される少なくとも一種の工程(A1)と、工程(A1)の後に、電子部品30の回路形成面30A側にバックグラインド用粘着性フィルム50を貼り付ける工程(A2)と、をさらに含むことが好ましい。
前述したように、本実施形態に係る粘着性フィルム50は、先ダイシング法や先ステルス法等を用いた電子装置の製造プロセスに、好適に用いることができる。そのため、先ダイシング法となる上記工程(A1-1)や先ステルス法となる上記工程(A1-2)をおこなう製造方法が好ましい。
【0045】
工程(A2)では、電子部品30の回路形成面30Aに粘着性フィルム50を加温して貼り付けることができる。これにより、粘着性樹脂層20と電子部品30との接着状態を長時間にわたって良好にすることができる。加温温度としては特に限定されないが、例えば、60~80℃である。
【0046】
粘着性フィルム50を電子部品に貼り付ける操作は、人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着性フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行うことができる。
【0047】
粘着性フィルム50に貼り付ける電子部品30としては特に限定されないが、回路形成面30Aを有する電子部品30であることが好ましい。例えば、半導体ウエハ、エポキシモールドウエハ、モールドパネル、モールドアレイパッケージ、半導体基板等が挙げられ、好ましくは半導体ウエハおよびエポキシモールドウエハである。
また、半導体ウエハは、例えば、シリコンウエハ、サファイアウエハ、ゲルマニウムウエハ、ゲルマニウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、タンタル酸リチウムウエハ等が挙げられるが、シリコンウエハに好適に用いられる。エポキシモールドウエハは、ファンアウト型WLPの作製方法のひとつであるeWLB(Embedded Wafer Level Ball Grid Array)プロセスによって作製されたウエハが挙げられる。
回路形成面を有する半導体ウエハおよびエポキシモールドウエハとしては特に限定されないが、例えば、表面に配線、キャパシタ、ダイオードまたはトランジスタ等の回路が形成されたものに用いられる。また、回路形成面にプラズマ処理がされていてもよい。
【0048】
電子部品30の回路形成面30Aは、例えば、バンプ電極等有することにより、凹凸面となっていてもよい。
また、バンプ電極は、例えば、電子装置を実装面に実装する際に、実装面に形成された電極に対して接合されて、電子装置と実装面(プリント基板等の実装面)との間の電気的接続を形成するものである。
バンプ電極としては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプ、ピラーバンプ等が挙げられる。すなわち、バンプ電極は、通常凸電極である。これらのバンプ電極は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
バンプ電極の高さおよび径は特に限定されないが、それぞれ、好ましくは10~400μm、より好ましくは50~300μmである。その際のバンプピッチにおいても特に限定されないが、好ましくは20~600μm、より好ましくは100~500μmである。
また、バンプ電極を構成する金属種は特に限定されず、例えば、はんだ、銀、金、銅、錫、鉛、ビスマス及びこれらの合金等が挙げられるが、粘着性フィルム50はバンプ電極がはんだバンプの場合に好適に用いられる。これらの金属種は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0049】
(工程(B))
次に、電子部品30の回路形成面30A側とは反対側の面(裏面とも呼ぶ。)をバックグラインドする。
ここで、バックグラインドするとは、電子部品を破損したりすることなく、所定の厚みまで薄化加工することを意味する。
例えば、研削機のチャックテーブル等に構造体100を固定し、電子部品の裏面(回路非形成面)を研削する。
【0050】
このような裏面研削操作において、電子部品30は、厚みが所望の厚み以下になるまで研削される。研削する前の電子部品の厚みは、電子部品30の直径、種類等により適宜決められ、研削後の電子部品30の厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類等により適宜決められる。
また、電子部品30がハーフカットされている、またはレーザー照射により改質層が形成されている場合、
図1に示すように工程(B)によって、電子部品30は個片化される。
【0051】
裏面研削方式としては特に限定されないが、公知の研削方式を採用することができる。それぞれ研削は、水を電子部品と砥石にかけて冷却しながら行うことができる。必要に応じて、研削工程の最後に研削水を用いない研削方式であるドライポリッシュ工程を行うことができる。裏面研削終了後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは、弗化水素酸、硝酸、硫酸、酢酸等の単独若しくは混合液からなる酸性水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液からなる群から選ばれたエッチング液に、粘着性フィルム50を貼着した状態で電子部品を浸漬する等の方法により行われる。該エッチングは、電子部品の裏面に生じた歪みの除去、電子部品のさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液は、上記の目的に応じて適宜選択される。
【0052】
(工程(C))
次いで、粘着性フィルム50に紫外線を照射した後に電子部品30から粘着性フィルム50を除去する。電子部品30から粘着性フィルムを除去する前に、ダイシングテープ、またはダイアタッチフィルム付きダイシングテープ上に電子部品30をマウントしてもよい。電子部品30から粘着性フィルム50を除去する操作は、人手により行われる場合もあるが、一般には自動剥がし機と称される装置により行うことができる。
粘着性フィルム50を剥離した後の電子部品30の表面は、必要に応じて洗浄してもよい。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、電子部品の表面の汚染状況により適宜選択することができる。
【0053】
工程(C)では、粘着性フィルム50に対し、例えば、200mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下の線量の紫外線を照射することによって、粘着性樹脂層20を光硬化させて粘着性樹脂層20の粘着力を低下させた後に、電子部品30から粘着性フィルム50を除去する。
また、紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を用いておこなうことができる。
紫外線の照射強度は、例えば、50mW/cm2以上500mW/cm2以下である。
【0054】
(その他の工程)
工程(A)~工程(C)を行った後、得られた半導体チップを回路基板に実装する工程等をさらに行ってもよい。これらの工程は、公知の情報に基づいておこなうことができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
粘着性フィルムの作製に関する詳細は以下の通りである。
【0057】
<基材層>
基材層1:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、製品名:E7180、厚み:50μm、片面コロナ処理品)
【0058】
基材層2:低密度ポリエチレンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルム/低密度ポリエチレンフィルムからなる積層フィルム(総厚み:110μm)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、製品名:ルミラーS10、厚み:50μm)の両側に低密度ポリエチレンフィルム(密度:0.925kg/m3、厚み:30μm)をラミネートして得た。得られた積層フィルムの片側にコロナ処理を実施した。
【0059】
基材層3:ポリエチレンテレフタレートフィルム/エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム/アクリルフィルムからなる積層フィルム(総厚み:145μm)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、製品名:E7180、厚み:50μm)とエチレン・酢酸ビニル共重合体(三井・ダウポリケミカル株式会社製、MFR:2.5g/10分)フィルム(厚み:70μm)を、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムとの貼り合わせ面側にコロナ処理を施すことで積層した。さらに、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムの反対面側にもコロナ放電処理を施した。
次に、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)の離型面に次に示す基材用のアクリル系樹脂塗布液をドライ厚み20μmになるようにコート・乾燥させ、上記のポリエチレンテレフタレートフィルム/エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムからなる積層フィルムにエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムを介して貼り合わせ、熟成(40℃、3日間)した。次いで、セパレータを剥離し、基材層3を得た。
【0060】
<基材用のアクリル系樹脂塗布液>
重合開始剤として4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド(大塚化学社製、製品名:ACVA)を0.5質量部用い、アクリル酸ブチル74質量部、メタクリル酸メチル14質量部、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル9質量部、メタクリル酸2質量部、アクリルアミド1質量部、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウムの水溶液(第一工業製薬社製、製品名:アクアロンHS-1025)3質量部を、脱イオン水中で70℃において9時間乳化重合させた。重合終了後、アンモニア水でpH=7に調整し、固形分濃度42.5%のアクリルポリマー水系エマルジョンを得た。次に、このアクリルポリマー水系エマルジョン100質量部に対し、アンモニア水を用いて、pH=9以上に調整するとともに、アジリジン系架橋剤(日本触媒化学工業製、ケミタイトPZ-33)0.75質量部、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル5質量部を配合し、基材用の塗布液を得た。
【0061】
<(メタ)アクリル系樹脂溶液>
(メタ)アクリル系樹脂溶液1:
アクリル酸エチル49質量部、アクリル酸-2-エチルヘキシル20質量部、アクリル酸メチル21質量部、メタクリル酸グリシジル10質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド系重合開始剤0.5質量部をトルエン65質量部および酢酸エチル50質量部中で80℃で10時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を冷却し、冷却した溶液にキシレン25質量部、アクリル酸5質量部、およびテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド0.5質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で32時間反応させ、(メタ)アクリル系樹脂溶液1を得た。
【0062】
(メタ)アクリル系樹脂溶液2:
アクリル酸n-ブチル77質量部、メタクリル酸メチル16質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル16質量部、および重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.3質量部を、トルエン20質量部および酢酸エチル80質量部中で85℃で10時間反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにトルエン30質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製、製品名:カレンズMOI)7質量部、およびジラウリル酸ジブチル錫0.05質量部を加え、空気を吹き込みながら85℃で12時間反応させ、(メタ)アクリル系樹脂溶液2を得た。
【0063】
(メタ)アクリル系樹脂溶液3:
アクリル酸エチル30質量部、アクリル酸メチル11質量部、アクリル酸-2-エチルヘキシル26質量部、メクリル酸2-ヒドロキシエチル7質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド系重合開始剤0.8質量部を、トルエン7質量部および酢酸エチル50質量部中で80℃で9時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を冷却し、冷却した溶液にトルエン25質量部を加え、(メタ)アクリル系樹脂溶液3を得た。
【0064】
<破断伸度評価用粘着性フィルム>
アクリル系樹脂溶液に表1に示す添加剤を加えることで、粘着性樹脂層用の粘着剤塗布液を調製した。この塗布液を、シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)の離型処理面に塗布し、120℃で3分間乾燥させて、厚み20μmの粘着性樹脂層を形成した。次いで、粘着性樹脂層上に、コロナ処理されたエチレン・酢酸ビニル共重合体押出フィルム(MFR:1.7 g/10min、酢酸ビニル含量:9質量%、厚み:140μm)のコロナ処理面を貼り合わせて積層体を得た。次いで、得られた積層体をオーブンで40℃、3日間加熱し、熟成させた。
【0065】
<粘着力および先ダイシング評価用粘着性フィルム>
アクリル系樹脂溶液に表1に示す添加剤を加えることで、粘着性樹脂層用の粘着剤塗布液を調製した。この塗布液を、シリコーン離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)に塗布した。次いで、120℃で3分間乾燥させて、厚み20μmの粘着性樹脂層を形成し、基材層に貼り合わせた。基材層1および2については、コロナ処理面に貼り合わせた。基材層3については、セパレータを剥がし、アクリル層側に貼り合わせた。得られた積層体をオーブンで40℃、3日間加熱し、熟成させた。
【0066】
<評価方法>
(1)紫外線硬化後の粘着性樹脂層の破断伸度
破断伸度評価用粘着性フィルムのエチレン・酢酸ビニル共重合体押出フィルム側から粘着性樹脂層に対し、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm2で紫外線量1080mJ/cm2照射した。次いで、長さ110mm、幅10mmに切り、セパレータであるポリエチレンテレフタレートフィルムを積層体から剥がした。
次いで、粘着性樹脂層をエチレン・酢酸ビニル共重合体押出フィルムとともに、初期のチャック間距離Loが50mmになるように、引張試験機(島津製作所、製品名:オートグラフAGS-X)でチャックした。サンプルを30mm/分の速度で引張り、目視にて粘着性樹脂層に破断が観測された点を破断点とし、その時のチャック間距離をLとした。破断伸度(%)は、(L-Lo)/Lo×100(%)によって求めた。評価はN=2で実施し、その値を平均して測定値とした。
【0067】
(2)粘着力評価
被着体ウエハ:
シリコンミラーウエハ(SUMCO社製、4インチ片面ミラーウエハ)の鏡面をUVオゾン洗浄装置(テクノビジョン社製、UV-208)により、オゾン洗浄した(オゾン処理時間:60秒)。その後、ウエハ鏡面をエタノールでふき取ったものを被着体ウエハとした。
【0068】
紫外線照射前粘着力:
23℃、50%RHの環境下、粘着力評価用粘着性フィルムを横幅50mmに切り、セパレータを剥がし、ハンドローラを用いて、粘着性フィルムをその粘着性樹脂層を介して、被着体ウエハ鏡面に貼り付け、1時間放置した。放置後、引張試験機(島津製作所、製品名:オートグラフAGS-X)を用いて、粘着性フィルムの一端を挟持し、剥離角度:180度、剥離速度:300mm/分で被着体ウエハの表面から粘着性フィルムを剥離した。その際の応力を測定してN/25mmに換算し、粘着力を求めた。評価はN=2で実施し、その値を平均して測定値とした。
紫外線照射後粘着力:23℃、50%RHの環境下、粘着力評価用粘着性フィルムを横幅50mmに切り、セパレータを剥がし、ハンドローラを用いて、粘着性フィルムをその粘着性樹脂層を介して、被着体ウエハ鏡面に貼り付け、1時間放置した。放置後、25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm2で、粘着性フィルムに紫外線量1080mJ/cm2を照射した。その後、引張試験機(島津製作所、製品名:オートグラフAGS-X)を用いて、粘着性フィルムの一端を挟持し、剥離角度:180度、剥離速度:300mm/分で被着体ウエハの表面から粘着性フィルムを剥離した。その際の応力を測定してN/25mmに換算し、粘着力を求めた。評価はN=2で実施し、その値を平均して測定値とした。
【0069】
糊残り評価:
上記剥離後の被着体ウエハを目視により観察し、次の基準で評価した。
〇:糊残りが確認されなかったもの
×:糊残りが確認されたもの
【0070】
(3)先ダイシング法評価
評価ウエハ1:
ダイシングソーを用いて、ミラーウエハ(ケイ・エス・ティ・ワールド社製、8インチミラーウエハ、直径:200±0.5mm、厚さ:725±50μm、片面ミラー)の鏡面をハーフカットし、評価ウエハ1を得た。(ブレード:ZH05-SD3500-N1-70-DD、チップサイズ:5mm×8mm、切込み深さ:58μm、ブレード回転速度:30000rpm)。評価ウエハ1を光学顕微鏡で観察したところ、カーフ幅は35μmであった。
【0071】
評価ウエハ2:
ダイシングソーを用いて、ミラーウエハ(ケイ・エス・ティ・ワールド社製、8インチミラーウエハ、直径:200±0.5mm、厚さ:725±50μm、片面ミラー)の鏡面に1段階目のハーフカットを実施した(ブレード:Z09-SD2000-Y1 58×0.25A×40×45E-L、チップサイズ:5mm×8mm、切込み深さ:15μm、ブレード回転速度:30000rpm)。光学顕微鏡で観察したところ、カーフ幅は60μmであった。続いて、2段階目のハーフカットを実施し(ブレード:ZH05-SD3500-N1-70-DD、チップサイズ:5mm×8mm、切込み深さ:58μm、ブレード回転速度:30000rpm)、評価ウエハ2を得た。
【0072】
先ダイシング法:
テープラミネータ(日東電工社製、DR3000II)を用いて、先ダイシング評価用粘着性フィルムを上記評価ウエハのハーフカットされた面に貼り付けた(23℃、貼付速度:5mm/分、貼付圧力:0.36MPa)。
続いて、グラインダ(DISCO社製、DGP8760)を用いて、上記ウエハを裏面研削し(粗削りおよび精密削り、精密削り量:40μm、ポリッシュなし、研削後厚み:38μm)、個片化した。
先ダイシング時のチップ飛びは、裏面研削実施後、目視にて次の基準で評価した。
〇:三角コーナー部を含めて、チップ飛びが確認されなかったもの
×:三角コーナー部を含めて、チップ飛びが確認されたもの
【0073】
さらに、UV照射および先ダイシング評価用粘着性フィルム剥離を行い、先ダイシング法後の糊残りを評価した。
UV照射は25℃の環境下で高圧水銀ランプを用いて主波長365nmの紫外線を照射強度100mW/cm2で、先ダイシング評価用粘着性フィルムに紫外線量1080mJ/cm2を照射した。
先ダイシング評価用粘着性フィルムの剥離は、以下の手順でおこなった。まず、ウエハマウンター(日東電工社製、MSA300)を用いて、別途用意したダイシングテープ(マウント用テープとして利用)を当該ダイシングテープの粘着面を介して、8インチウエハ用リングフレームおよび上述の個片化されたウエハのウエハ側に貼り付けた。続いて、テープ剥離機(日東電工社製、HR3000III)を用いて、剥離テープ(ラスティングシステム社製、PET38REL)により、ウエハノッチ部から先ダイシング評価用粘着性フィルムを剥離した。装置剥離性は、次の基準で評価した。
〇:1度目で先ダイシング評価用粘着性フィルムをウエハから剥離できたもの
×:1度目で先ダイシング評価用粘着性フィルムをウエハから剥離できなかったもの
【0074】
先ダイシング法後の個片化されたウエハ上の糊残りは、光学顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、以下の基準で評価した。
〇:糊残りが確認されなかったもの
×:糊残りが確認されたもの
【0075】
[実施例1]
(メタ)アクリル系樹脂溶液1(固形分)100質量部に対して、光開始剤としてベンジルジメチルケタール(IGM社製、商品名:オムニラッド651)6.9質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学社製、商品名:オレスターP49-75S)0.93質量部を添加し、粘着性樹脂層用の粘着剤塗布液1を得た。上述の方法により、破断伸度評価用粘着性フィルム、粘着力評価用粘着性フィルムおよび先ダイシング評価用粘着性フィルムを作製した。また、先に述べた評価方法に基づき、紫外線硬化後の粘着材の破断伸度、粘着力評価および先ダイシング法評価を実施した。結果を表1に示した。
【0076】
[実施例2~10および比較例1および2]
粘着性樹脂層および基材層の種類を表1に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして、粘着性フィルムをそれぞれ作製した。また、実施例1と同様に各評価をそれぞれ行った。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
なお、表1に記載されている化合物は以下の通りである。
オムニラッド651(IGM社製):2,2―ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン
オムニラッド369(IGM社製):2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-4'-モルフォリノブチロフェノン
アロニックスM400(東亜合成社製):ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物
NKエステルAD-TMP(新中村化学工業社製):ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
【0077】
【0078】
この出願は、2020年4月23日に出願された日本出願特願2020-076702号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0079】
10 基材層
20 粘着性樹脂層
30 電子部品
30A 回路形成面
50 粘着性フィルム
100 構造体