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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】高圧回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/915 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01H33/915
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023012798
(22)【出願日】2023-01-31
(65)【公開番号】P2023113131
(43)【公開日】2023-08-15
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】22154785
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・シュテディング
(72)【発明者】
【氏名】ヤクプ・コルベル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ビルト
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04319105(US,A)
【文献】特開2003-109476(JP,A)
【文献】特開2003-187681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/00 - 7/16
H01H 33/70 - 33/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧回路遮断器であって、
絶縁ガスの体積(2)を画定する筐体(1)と、
前記筐体(1)内に配置された少なくとも2つの投入・遮断ユニット(3)とを備え、各投入・遮断ユニット(3)は、導電接続を形成するための第1の接触要素(4)と第2の接触要素(5)とを含み、少なくとも前記第1の接触要素(4)は、前記高圧回路遮断器の軸方向に延在するスイッチング軸(6)に沿って移動可能であり、前記少なくとも2つの投入・遮断ユニット(3)の前記第1の接触要素(4)は動作結合され、前記高圧回路遮断器はさらに、
少なくとも1つの投入・遮断ユニット(3)の前記第1の接触要素(4)に接続され、かつ、前記第1の接触要素(4)を、導電接続を分離するための移動距離にわたって、前記スイッチング軸(6)に沿って移動させるように構成された駆動装置(7)と、
前記少なくとも1つの投入・遮断ユニット(3)の前記第1の接触要素(4)に接続され、かつ、前記移動距離に対して増加する減衰力で前記第1の接触要素(4)の移動を減衰させるように構成されたガスダンパー(9)とを備える、高圧回路遮断器。
【請求項2】
前記減衰力は、前記移動距離に対して比例して、非線形に、または指数関数的に増加する、請求項1に記載の高圧回路遮断器。
【請求項3】
前記ガスダンパー(9)は、特に径方向に延在する外側面および/または軸方向に延在する側面に配置された少なくとも1つの貫通孔を含む、請求項1または2に記載の高圧回路遮断器。
【請求項4】
前記ガスダンパー(9)は、閉鎖された第1の端部(11)を有する減衰体積(10)と、前記第1の端部(11)の反対側の第2の端部から前記減衰体積(10)内に移動するように構成されたピストン要素(12)とを含む、請求項1または2に記載の高圧回路遮断器。
【請求項5】
前記第1の端部(11)は、閉鎖された径方向に延在する外側面を有するカップ状および/または管状に設けられている、請求項4に記載の高圧回路遮断器。
【請求項6】
前記減衰体積(10)は、軸方向に延在する側面に少なくとも1つの開口部(13)を含み、軸方向に延在する他の側面は、移動する前記ピストン要素(12)を案内するために開口部がない状態で設けられている、請求項4に記載の高圧回路遮断器。
【請求項7】
前記開口部(13)は、導電接続を分離すると、移動方向において比例して、非線形に、または指数関数的に減少する幅を含む、請求項6に記載の高圧回路遮断器。
【請求項8】
閉鎖された前記第1の端部(11)の径方向に延在する外側面と、前記外側面に隣接する軸方向に延在する側面の少なくとも一部とは、開口部がない状態、および/または孔がない状態で設けられている、請求項6に記載の高圧回路遮断器。
【請求項9】
前記投入・遮断ユニット(3)の少なくとも1つを取り囲むことによって、前記駆動装置(7)と前記ガスダンパー(9)とを接続する少なくとも2つのサイドロッド(15)さらに備える、請求項1または2に記載の高圧回路遮断器。
【請求項10】
マルチ投入・遮断ユニット用の高圧回路遮断器の開放動作を減速させるための方法であって、前記高圧回路遮断器は、
絶縁ガスの体積(2)を画定する筐体(1)と、
前記筐体(1)内に配置された少なくとも2つの投入・遮断ユニット(3)とを含み、各投入・遮断ユニット(3)は、導電接続を形成するための第1の接触要素(4)と第2の接触要素(5)とを含み、少なくとも前記第1の接触要素(4)は、前記高圧回路遮断器のスイッチング軸(6)に沿って移動可能であり、前記少なくとも2つの投入・遮断ユニット(3)の前記第1の接触要素(4)は動作結合され、前記高圧回路遮断器はさらに、
少なくとも1つの投入・遮断ユニット(3)の前記第1の接触要素(4)に接続され、かつ、前記第1の接触要素(4)を、導電接続を分離するための移動距離にわたって前記スイッチング軸(6)に沿って移動させるように構成された駆動装置(7)を含み、前記方法は、
前記少なくとも1つの投入・遮断ユニット(3)の前記第1の接触要素(4)の移動を、前記移動距離に対して増加する減衰力で減衰させるステップを備える、方法。
【請求項11】
前記減衰力は、前記移動距離に対して比例して、または指数関数的に増加する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記高圧回路遮断器は、前記少なくとも1つの投入・遮断ユニット(3)の前記第1の接触要素(4)の移動を減衰させるために、特に径方向に延在する外側面および/または軸方向に延在する側面に配置された少なくとも1つの貫通孔を有するガスダンパー(9)を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記ガスダンパー(9)は、閉鎖された第1の端部(11)を有する減衰体積(10)と、前記第1の端部(11)の反対側の第2の端部から前記減衰体積(10)内に移動するように構成されたピストン要素(12)とを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の端部(11)は、閉鎖された径方向に延在する外側面を有するカップ状および/または管状に設けられている、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は高圧回路遮断器に関し、高圧回路遮断器は、絶縁ガスの体積を画定する筐体と、筐体内に配置された少なくとも2つの投入・遮断ユニットとを備え、各投入・遮断ユニットは、導電接続を形成するための第1の接触要素と第2の接触要素とを含み、第1の接触要素は、高圧回路遮断器の軸方向に延在するスイッチング軸に沿って移動可能であり、少なくとも2つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素は動作結合され、高圧回路遮断器はさらに駆動装置を備え、駆動装置は、少なくとも1つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素に接続され、かつ、第1の接触要素を、導電接続を分離するための移動距離にわたって、スイッチング軸に沿って移動させるように構成されている。
【背景技術】
【0002】
背景技術
特に高定格電流および高定格電圧用の高圧回路遮断器、特に代替ガスの性能が悪いSF6フリー遮断器は、大型になることが多く、遮断性能を保証するために高い開放速度を必要とする。そのような回路遮断器には、導電接続を分離する際に移動の終了において開閉動作を安全に減速させるためのガスダンパーが使用されている。
【0003】
しかしながら、今日の高圧回路遮断器用のガスダンパーの実現例は、高速の機械的開閉動作がマルチチャンバ用の高圧回路遮断器において生じる場合、効果的な制動を必要とする。そのような制動は、SF6またはSF6フリー回路遮断器に特に必要とされる複数のチャンバの質量が大きいため、実現がさらに困難であり、場合によっては不可能でさえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、改良されたガスダンパーを有する高圧回路遮断器およびその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、独立請求項の特徴によって解決される。好ましい実現例が、従属請求項において詳述されている。
【0006】
したがって、上記目的は高圧回路遮断器によって解決され、高圧回路遮断器は、
絶縁ガスの体積を画定する筐体と、
筐体内に配置された少なくとも2つの投入・遮断ユニットとを備え、各投入・遮断ユニットは、導電接続を形成するための第1の接触要素と第2の接触要素とを含み、少なくとも第1の接触要素は、高圧回路遮断器の軸方向に延在するスイッチング軸に沿って移動可能であり、少なくとも2つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素は動作結合され、高圧回路遮断器はさらに、
少なくとも1つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素に接続され、かつ、第1の接触要素を、導電接続を分離するための移動距離にわたって、スイッチング軸に沿って移動させるように構成された駆動装置と、
少なくとも1つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素に接続され、かつ、移動距離に対して増加する減衰力で第1の接触要素の移動を減衰させるように構成されたガスダンパーとを備える。
【0007】
したがって、本発明の重要な点は、提案されたガスダンパーが、疲労強度を増大させると同時に第1の接触要素の高開放速度を維持することであり、これは、SF6を含まない用途に特に有利である。ガスダンパーは、必要な減衰圧力を低減させ、後述する複合材料サイドロッドなどの追加の要素における圧力による力を低減または排除する。それによって、有利なことに、そのような力は逆にされて張力になる。その結果、高圧回路遮断器の安定性が大幅に増加し、圧力による力に起因する撓みが大幅に低減される。減衰力が移動距離に対して増加し、たとえば移動の終了時に移動の開始時よりもはるかに大きいため、破断力は遮断性能を妨げない。
【0008】
言い換えれば、このように、制動動作中に運動エネルギーを効果的に散逸させながら、大きな力のピークを生じることなくストロークの終了にゆっくりと入ることが可能になる。提案された解決策はさらに、ハイドロメカニカル式駆動装置の許容減衰圧力の限界を克服し、典型的には、より低い圧縮強度および著しく高い張力を有する複合材料で作製される絶縁構成要素に対する負荷を低減する一方で、そのような要素の座屈または非可逆変形を防止する。提案された高圧回路遮断器は、防止されない場合は距離および公差を増加させることによって克服する必要があるこれらおよび他の要素の振動をさらに低減させ、したがって、高圧、好ましくはガス絶縁回路遮断器の重量および体積を増加させる。
【0009】
筐体は、好ましくは気密な状態で設けられ、および/または、スイッチング軸に沿って延在する管状もしくは円筒状の形状からなる。第1の接触要素および/または第2の接触要素は、好ましくは、スイッチング軸に沿って延在する。第2の接触要素は、筐体に対して固定することができるが、スイッチング軸に沿って移動可能に配置することができる。動作結合という用語は、少なくとも1つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素が駆動装置によって移動される場合、少なくとも1つの他の投入・遮断ユニットの第1の接触要素が平行に移動され、好ましくは、すべての第1の接触要素が平行に移動されることを意味する。駆動装置は、好ましくは電動式であり、および/または、筐体の外側に設けられている。そのような実現例では、駆動装置は、プルロッドを介して第1の接触要素に接続することができる。駆動装置は、駆動装置に対する関連付けおよび/または統合が可能な追加のダンパを含み得る。
【0010】
投入・遮断ユニットは、断続器として設けることができる。少なくとも2つの投入・遮断ユニットは、好ましくは、直列に電気的に接続され、および/または、駆動装置から異なる距離に配置されている。ガスダンパーは、好ましくは、ガスダンパーから最も離れて配置された少なくとも1つの投入・遮断ユニットに関連付けられている、および/または配置されている。たとえば、第1の投入・遮断ユニットが駆動装置に隣接する状態で3つの投入・遮断ユニットが順に配置されている場合、ガスダンパーは、好ましくは、第2の投入・遮断ユニットと第3の投入・遮断ユニットとの間に配置されている。
【0011】
移動距離は、少なくとも、第1の接触要素および第2の接触要素が導電接続を形成する状態と、当該接触要素がそのような導電接続を形成しない他の状態との間の距離であることが好ましい。移動距離に対して増加する減衰力で第1の接触要素の移動を減衰させるという表現は、特に、減衰力が移動距離と共に増加することを意味し、たとえば、第1の接触要素と第2の接触要素とが依然として導電接続を形成する開始時に、好ましくはゼロまたは最小の移動距離で、低いかまたはゼロでさえある可能性があり、第1の接触要素と第2の接触要素とがもはや導電接続を形成しないとき、好ましくは移動距離が最大であるときに、最も高くなる可能性がある。
【0012】
高圧という用語は、1kVを超える電圧に関する。高圧は、好ましくは、72kVを超えて800kVまでの範囲、たとえば145kV、245kVまたは420kVの公称電圧に関する。高圧回路遮断器は、回路遮断器として設けられてもよく、および/または、パッファ型シリンダ、セルフブラストチャンバ、圧力収集空間、圧縮空間、もしくはパッファ体積、および膨張空間等の1つ以上の構成要素を含み得る。高圧回路遮断器は、そのような構成要素のうちの1つ以上によって導電接続を遮断し、それによって、導電接続における電流の流れを停止させ、および/または導電接続が遮断されたときに生じるアークを消滅させることができる。「軸方向」という用語は、軸の方向の延在部、距離などを示す。部品間の軸方向の分離とは、これらの部品が、軸の方向に眺めたまたは測定したときに、互いから分離されていることを意味する。「径方向」という用語は、軸に垂直な方向の延在部、距離などを示す。「断面」という用語は、軸に垂直な平面を意味し、「断面積」という用語は、そのような平面内の面積を意味する。軸は、ここではスイッチング軸である。
【0013】
絶縁ガスは、電流遮断動作中に接触要素間に形成される電気アークを適切に消弧することを可能にする任意の適切なガスでもよく、たとえば、六フッ化硫黄SF6などの不活性ガスであるが、これに限定されない。具体的には、使用される絶縁ガスは、SF6ガスまたは任意の他の誘電性絶縁媒体であってもよく、気体および/または液体であってもよく、特に、誘電性絶縁ガスもしくはアーク消弧ガスであってもよい。そのような誘電性絶縁媒体は、たとえば、有機フッ素化合物を含む媒体を包含することができ、そのような有機フッ素化合物は、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミン、フルオロケトン、フルオロオレフィン、フルオロニトリル、ならびにこれらの混合物および/または分解生成物からなる群から選択される。本明細書において、「フルオロエーテル」、「オキシラン」、「フルオロアミン」、「フルオロケトン」、「フルオロオレフィン」および「フルオロニトリル」という用語は、少なくとも部分的にフッ素化された化合物を指す。特に、「フルオロエーテル」という用語は、ハイドロフルオロエーテルとペルフルオロエーテルとの両方を包含し、「オキシラン」という用語はハイドロフルオロオキシランとペルフルオロオキシランとの両方を包含し、「フルオロアミン」という用語はハイドロフルオロアミンとペルフルオロアミンとの両方を包含し、「フルオロケトン」という用語はハイドロフルオロケトンとペルフルオロケトンとの両方を包含し、「フルオロオレフィン」という用語はハイドロフルオロオレフィンとペルフルオロオレフィンとの両方を包含し、「フルオロニトリル」という用語はハイドロフルオロニトリルとペルフルオロニトリルとの両方を包含する。したがって、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミンおよびフルオロケトンが完全にフッ素化されている、すなわちペルフルオロ化されていることが好ましい場合がある。
【0014】
誘電性絶縁媒体は、ハイドロフルオロエーテル、ペルフルオロケトン、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロニトリル、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。特に、本発明の文脈で使用される「フルオロケトン」という用語は、広く解釈されるべきであり、フルオロモノケトンとフルオロジケトンとの両方、または一般にフルオロポリケトンを包含するものとする。明示的には、炭素原子に挟まれた2つ以上の炭素原子が分子中に存在し得る。この用語はまた、炭素原子間の二重および/または三重結合を含む飽和化合物と不飽和化合物との両方を包含するものとする。フルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、任意に環を形成し得る。誘電性絶縁媒体は、フルオロモノケトンである、ならびに/または、1つ以上の炭素原子に置換される、分子の炭素骨格に組込まれたヘテロ原子(窒素原子、酸素原子および硫黄原子のうちの少なくとも1つなど)も含む少なくとも1つの化合物を含んでもよい。より好ましくは、フルオロモノケトン、特にペルフルオロケトンは、3~15個または4~12個の炭素原子、特に5~9個の炭素原子を有し得る。最も好ましくは、正確に5個の炭素原子および/または正確に6個の炭素原子および/または正確に7個の炭素原子および/または正確に8個の炭素原子を含み得る。
【0015】
さらに、誘電性絶縁媒体は、少なくとも3個の炭素原子を含むハイドロフルオロオレフィン(HFO)、正確に3個の炭素原子を含むハイドロフルオロオレフィン(HFO)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)、およびこれらの混合物からなる群から選択される、フルオロオレフィンである少なくとも1つの化合物を含み得る。有機フッ素化合物は、フルオロニトリル、特にペルフルオロニトリルであってもよい。特に、有機フッ素化合物は、2個の炭素原子、および/または3個の炭素原子、および/または4個の炭素原子を含むフルオロニトリル、具体的にはペルフルオロニトリルであってもよい。より詳細には、フルオロニトリルは、ペルフルオロアルキルニトリル、具体的にはペルフルオロアセトニトリル、ペルフルオロプロピオニトリル(C2F5CN)および/またはペルフルオロブチロニトリル(C3F7CN)であってもよい。最も詳細には、フルオロニトリルは、(式(CF3)2CFCNに従う)ペルフルオロイソブチロニトリルおよび/または(式CF3CF(OCF3)CNに従う)ペルフルオロ-2-メトキシプロパンニトリルであってもよい。これらのうち、ペルフルオロイソブチロニトリル(すなわち、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-トリフルオロメチルプロパンニトリル、別名i-C3F7CN)は、毒性が低いため特に好ましい。誘電性絶縁媒体は、有機フッ素化合物とは異なる(特に、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミン、フルオロケトンおよびフルオロオレフィンとは異なる)背景ガスまたはキャリアガスをさらに含んでもよく、実施形態では、空気、N2、O2、CO2、希ガス、H2;NO2、NO、N2O;フルオロカーボン、特にペルフルオロカーボン(CF4など);CF3I、SF6;およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。たとえば、誘電性絶縁ガスは、ある実施形態ではCO2であってもよい。
【0016】
好ましい実現例によれば、減衰力は、移動距離に対して比例して、非線形に、または指数関数的に増加する。したがって、制動は、制動動作の終了時に、すなわち、接触要素が分離されてもはや導電性でなくなるときに、または最大移動距離に向かってもしくは最大移動距離において、より効果的となることが好ましい。言い換えれば、本実施例によれば、減衰力は、移動距離に対して、または移動距離が増加するにつれて、増加することが好ましい。たとえば、減衰力は、接触要素の接続を解除するための移動の開始時に非常に低くなるかまたはゼロになることがあり、制動が実際に必要になると、減衰力は、接続が解除された状態においてその最大値に向かって比例して、非線形に、または指数関数的に増加する。
【0017】
別の好ましい実現例では、ガスダンパーは、特に径方向に延在する外側面および/または軸方向に延在する側面に配置された少なくとも1つの貫通孔を含む。たとえば、1,2,5,10,20または50mmの直径を有するそのような貫通孔によって、ガスダンパーによって画定される減衰体積は、筐体に向かって密閉されたままにならず、それによって、達成可能な最大破断圧力が低減することになる。ガスダンパーは、一定の距離に配置された、または移動距離の始まりでより近い距離に配置された複数の孔を備えてもよい。
【0018】
さらに別の好ましい実現例によれば、ガスダンパーは、閉鎖された第1の端部を有する減衰体積と、第1の端部の反対側の第2の端部から減衰体積内に移動するように構成されたピストン要素とを含む。減衰体積および/またはガスダンパーは、軸方向に延在するバレル、すなわち円筒形状からなってもよい。このように、ピストン要素は、好ましくは、減衰体積内に摺動可能におよび/または接触して配置された、径方向に延在する円形プレートとして設けられている。好ましくは、減衰体積は、第1の端部で閉鎖されたシリンダとして設けられ、ピストン要素は第2の端部に設けられている。ピストン要素は、好ましくは、駆動装置が接触要素の接続を解除するときに第1の端部に向かって移動する。さらに好ましくは、ガスダンパーは、少なくとも2つの投入・遮断ユニットの間に配置され、たとえば、第1の端部が第1の投入・遮断ユニットの第2の接触要素に面し、第2の端部が第2の投入・遮断ユニットに面する。この点に関して、ピストン要素の第2の端部は、第2の投入・遮断ユニットの第1の接触要素に接続され得る。
【0019】
さらに別の好ましい実現例によれば、減衰体積は、軸方向に延在する側面に少なくとも1つの開口部を含み、軸方向に延在する他の側面は、ピストン要素の移動を案内するために開口部がない状態で設けられている。このように、開口部のない側面は、従来技術の減衰の解決策の調整に関する問題を克服する。開口部は、長方形または正方形の形状からなってもよく、複数の開口部が一定の距離で設けられていてもよい。
【0020】
別の好ましい実現例では、開口部は、導電接続を分離すると、移動方向において比例して、または指数関数的に減少する幅を含む。幅が減少するので、ガスダンパー内に存在する絶縁ガスは、接触要素の接続を解除する際に移動の開始時に減衰体積から容易に逃げることができるが、幅が減少するにつれて逃げることがより困難になって、ピストン要素の減衰が増大する。
【0021】
さらに別の好ましい実現例によれば、閉鎖された第1の端部の径方向に延在する外側面と、この外側面に隣接する軸方向に延在する側面の少なくとも一部とは、開口部がない状態、および/または孔がない状態で設けられている。このように、減衰体積および/または第1の端部は、好ましくは、閉鎖された径方向に延在する外側面を有するカップ状および/または管状に設けられている。径方向に延在する外側面は、好ましくは、ディスクのような形状からなる。軸方向に延在する側面の一部は、好ましくは、管のような形状からなり、および/または径方向に延在する外側面と一体に設けられている。
【0022】
別の好ましい実現例では、高圧回路遮断器は、投入・遮断ユニットの少なくとも1つを取り囲むことによって、駆動装置とガスダンパーとを接続する少なくとも2つのサイドロッドを備える。好ましくは、少なくとも2つのサイドロッドは、ポール、バーもしくはポストとして設けられ、および/または、同様にガスダンパーを取り囲む。サイドロッドは、好ましくは、投入・遮断ユニットの少なくとも一つの周りに一定間隔で配置されている。サイドロッドは、好ましくは、一方の側で投入・遮断ユニットの少なくとも1つの第1の接触要素に接続され、他方の側でガスダンパーに接続されている。サイドロッドは、好ましくは、スイッチング軸に対して平行に、かつずれた軸方向に延在する。さらに別の好ましい実現例では、そのような少なくとも2つのサイドロッドの複数の対が設けられ、各対は、異なる投入・遮断ユニットに関連付けられている。このようなサイドロッドによって、サイドロッド、チャンバフランジと、シールドとの間で必要な間隔がより小さくなり、サイドロッドの制動分離を減少させることができるため、投入・遮断ユニット全体の直径を減少させることができる。
【0023】
この目的はさらに、マルチ投入・遮断ユニット用の高圧回路遮断器の開放動作を減速させるための方法によって解決され、高圧回路遮断器は、
絶縁ガスの体積を画定する筐体と、
筐体内に配置された少なくとも2つの投入・遮断ユニットとを含み、各投入・遮断ユニットは、導電接続を形成するための第1の接触要素と第2の接触要素とを含み、少なくとも第1の接触要素は、高圧回路遮断器のスイッチング軸に沿って移動可能であり、少なくとも2つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素は動作結合され、高圧回路遮断器はさらに、
少なくとも1つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素に接続され、第1の接触要素を、導電接続を分離するための移動にわたってスイッチング軸に沿って移動させるように構成された駆動装置を含み、方法は、
少なくとも1つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素の移動を、移動距離に対して増加する減衰力で減衰させるステップを備える。
【0024】
そのような方法によって、高圧回路遮断器の疲労強度を増加させつつ、高い開放速度が実現される。この方法によって、駆動装置において必要な減衰圧力を低減すると同時に、複合材料のサイドロッドなどの追加の要素における圧力による力が低減または排除される。その結果、高圧回路遮断器の安定性が大幅に増加し、圧力による力に起因する撓みが大幅に低減される。
【0025】
好ましい実現例では、減衰力は、移動距離に対して比例してまたは指数関数的に増加する。
【0026】
別の好ましい実現例では、高圧回路遮断器は、少なくとも1つの投入・遮断ユニットの第1の接触要素の移動を減衰させるために、特に径方向に延在する外側面および/または軸方向に延在する側面に配置された少なくとも1つの貫通孔を有するガスダンパーを含む。
【0027】
さらに別の好ましい実現例によれば、ガスダンパーは、閉鎖された第1の端部を有する減衰体積と、第1の端部の反対側の第2の端部から減衰体積内に移動するように構成されたピストン要素とを含む。
【0028】
別の好ましい実現例では、第1の端部は、閉鎖された径方向に延在する外側面を有するカップ状および/または管状に設けられている。
【0029】
本方法のさらに別の実現例および利点は、当業者によって、前述のような高圧回路遮断器から直接的かつ明確に導出される。
【0030】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実現例から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】好ましい実現例に係る高圧回路遮断器を示す概略断面図である。
図2】部分的に開放されたガスダンパーを有する、図1の高圧回路遮断器の一部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実現例の説明
図1は、好ましい実現例に係る高圧回路遮断器を示す概略断面図である。
【0033】
高圧回路遮断器は、SF6または代替物などの絶縁ガスを収容する閉鎖体積2を画定する気密筐体1を備える。軸方向に延在するスイッチング軸6に沿って筐体1内に配置されているのは、従来技術から一般に知られているような、2つの連続して配置された投入・遮断ユニット3である。各投入・遮断ユニット3は、高圧回路遮断器の軸方向に延在するスイッチング軸6に沿って導電接続を形成するための第1の接触要素4と第2の接触要素5とを含む。図1は、導電接続された第1の接触要素4および第2の接触要素5を示す。各投入・遮断ユニット3の第1の接触要素4は、スイッチング軸6に沿って、動作固定された第2の接触要素5から離れるように、およびそれに向かうように移動可能である。さらに、すべての投入・遮断ユニット3の第1の接触要素4は、以下でより詳細に説明されるように、動作結合される。
【0034】
高圧回路遮断器はさらに、図2の左端の第1の投入および遮断ユニット3の第1の接触要素4の延在部においてスイッチング軸6に沿って配置された、概略的にのみ示される電動駆動装置7を備える。駆動装置7は、スイッチング軸7に沿って軸方向に延在するプルロッド8を介して、左端の第1の接触要素4の左端に接続され、このように、接続された左端の第1の接触要素4を、導電接続4,5を分離するための移動距離にわたって、スイッチング軸6に沿って移動させるように構成されている。すべての投入・遮断ユニット3の第1の接触要素4が動作結合されているので、駆動装置7は、実際に、導電接続4,5を分離すると、すべての第1の接触要素4をそれぞれ移動させる。
【0035】
高圧回路遮断器はさらに、2つの投入・遮断ユニット3の間に配置された状態で、第1の左端の投入・遮断ユニット3の第1の接触要素4に接続されたガスダンパー9を備える。図1は断面図を示すが、図2は、ガスダンパー9を部分的に開放された概略斜視図でより詳細に示す。ガスダンパー9は、移動距離に対して増加する減衰力で、第1の接触要素4の移動を減衰させる。すべての投入・遮断ユニット3の第1の接触要素4が動作結合されると、ガスダンパー9は、すべての第1の接触要素4の移動を減衰させる。
【0036】
ここで特に図2を参照すると、ガスダンパー9は、スイッチング軸6に沿って延在し、それによって減衰体積10を画定する、バレル、すなわち円筒形状からなり、減衰体積は、図2では、前方に向かって部分的に開放されて示されている。減衰体積10は、駆動装置7、左端、すなわち第2の接触要素5に面する閉鎖された第1の端部11を含む。第1の閉鎖された第1の端部11は、閉鎖された径方向に延在する外側面を有するカップ状および/または管状に設けられている。ダンパ9はさらに、スイッチング軸6に沿って第1の端部11の反対側の第2の端部から減衰体積内に移動し、それによってガスダンパー9内に存在する絶縁ガスを圧縮し、それぞれ運動エネルギーを散逸させるように構成されたピストン要素12を含む。ピストン要素12は、ガスダンパー9のバレル、すなわち円筒形状によって案内される。
【0037】
円形状の径方向に延在する外側面を形成する第1の端部11が閉鎖されているが、ガスダンパー9のバレル、すなわち円筒形状の隣接する軸方向に延在する側面は、開口部がない、および/または孔がない状態で設けられている。それに隣接して、外側面の残りの部分は、ピストン要素12への案内を提供するために、部分的に開口部がない、および/または孔がない状態で設けられている一方で、外側面には、部分的に開口部13が設けられている。図2は、1つの開口部13のみを示しているが、2つ、3つ、またはそれ以上の開口部13が外側面に設けられ、開口がない、および/または孔がない外側面によって分離されている。
【0038】
図2において、開口部は矩形形状からなり、代替的な実現例では、開口部13は、導電接続を分離すると、ピストン要素12の移動方向に比例して、または指数関数的に減少する幅で構成され得る。さらに別の代替的な実現例では、ガスダンパー9は、減衰体積10の径方向に延在する外側面および/または軸方向に延在する側面に配置された少なくとも1つの貫通孔を含む。
【0039】
これらの実現例によって、減衰力は、移動距離に対して比例して、または指数関数的に増加する。このように、制動が主に移動距離の終わりで、すなわちピストン要素12が第1の端部11に近づくと作用するので、投入・遮断ユニット3の性能は影響を受けない。貫通孔および/または開口部13のサイズ、すなわち直径は、駆動装置7の減衰圧力を超えないような寸法であることが好ましい。
【0040】
次に図1図2との両方を参照すると、左から開始して、駆動装置7がプルロッド8を介して、第1の、すなわち左端の投入・遮断ユニット3の第1の接触要素4と接続されていることが分かる。この第1の接触要素4は、径方向に延在するストラップ状装置14を介してプルロッド8に接続されている。第2のストラップ状装置14は、ピストン要素12と、第2の、すなわち右側の投入・遮断ユニット3の第1の接触要素4との間に配置され、それによって、ピストン要素12を、第2の、すなわち右側の投入・遮断ユニット3の当該第1の接触要素4にも接続する。両方のストラップ状装置14は、2つの軸方向に延在するサイドロッド15によって接続されている。
【0041】
サイドロッド15は、互いに径方向に対向して配置され、それによって、第1の、すなわち左端の投入・遮断ユニット3およびガスダンパー9を取り囲み、2つの投入・遮断ユニット3の第1の接触要素4の動作結合をもたらす。図1には示されていないが、高圧回路遮断器はさらに、3つ以上の投入・遮断ユニット3を接続するロッド15のさらに別の対を備えてもよい。また、2つの投入・遮断ユニット3を接続するために3つ以上のサイドロッド15が存在してもよく、サイドロッド15は一定の距離に配置されていることが好ましい。
【0042】
本発明は、図面および前述の説明において詳細に図示および説明されているが、そのような図示および説明は、説明的または例示的であって限定的ではないとみなされるべきであり、本発明は、開示された実現例に限定されない。開示される実現例に対する他の変形例は、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲の考察から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、実施され得る。請求項において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0043】
参照符号のリスト
1 筐体、2 体積、3 投入・遮断ユニット、4 第1の接触要素、5 第2の接触要素、6 スイッチング軸、7 駆動装置、8 プルロッド、9 ガスダンパー、10 減衰体積、11閉鎖された第1の端部、12ピストン要素、13 開口部、14 ストラップ状装置、15 サイドロッド。
図1
図2