IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用操舵装置 図1
  • 特許-車両用操舵装置 図2
  • 特許-車両用操舵装置 図3
  • 特許-車両用操舵装置 図4
  • 特許-車両用操舵装置 図5
  • 特許-車両用操舵装置 図6
  • 特許-車両用操舵装置 図7
  • 特許-車両用操舵装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20241205BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R16/027 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023043762
(22)【出願日】2023-03-20
(65)【公開番号】P2024133796
(43)【公開日】2024-10-03
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 高太郎
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特許第7155920(JP,B2)
【文献】特開2017-88105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0037485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
B60R 16/027
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用操舵装置であって、
運転者による車両の操舵操作を受け付ける操舵操作子と、
前記操舵操作子に設けられ、運転者が前記操舵操作子を把持するのに応じて静電容量が変化するように構成された静電容量センサと、
前記静電容量センサの静電容量が第1閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定し、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値未満である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していないと判定する制御装置と、
運転者が前記操舵操作子を把持していないと前記制御装置が判定した場合に、運転者に対する報知を行う報知装置と、を備え、
前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、且つ、前記第1閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行う車両用操舵装置。
【請求項2】
前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上まで増加した後に前記第2閾値未満まで減少し、且つ、前記第1閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行う請求項1に記載の車両用操舵装置。
【請求項3】
前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に第3閾値以上減少し、且つ、前記第1閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行う請求項1に記載の車両用操舵装置。
【請求項4】
前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、且つ、所定期間の間継続して前記第1閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行う請求項1に記載の車両用操舵装置。
【請求項5】
前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、所定期間の間継続して前記第1閾値以上であり、且つ、前記所定期間における前記静電容量センサの静電容量の変化量の合計値が第4閾値未満である場合に、運転者に対する報知を行う請求項1に記載の車両用操舵装置。
【請求項6】
前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、所定期間の間継続して前記第1閾値以上であり、且つ、前記所定期間における前記静電容量センサの静電容量の変化量の合計値が第4閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行わない請求項1に記載の車両用操舵装置。
【請求項7】
前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、且つ、前記第1閾値以上である場合に、前記操舵操作子を把持することを促す報知を行う請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用操舵装置。
【請求項8】
前記報知装置は、前記操舵操作子を把持することを促す報知を開始した後、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値未満まで減少した後に前記第1閾値以上まで増加した場合に、前記操舵操作子を把持することを促す報知を終了する請求項7に記載の車両用操舵装置。
【請求項9】
前記制御装置は、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定したときの前記静電容量センサの静電容量に基づいて、前記第1閾値を更新する請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中の脆弱な立場にある人々に配慮し、このような人々に持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。その実現に向けて、運転支援技術に関する開発を通して、交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発が注目されている。特に、運転支援技術に関する開発として、車両用操舵装置に関する開発が注目されている。
【0003】
例えば、静電容量センサの静電容量に基づいて運転者が操舵操作子(例えば、ステアリングホイール)を把持しているか否かを判定するように構成された車両用操舵装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-82806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような車両用操舵装置において、異物(例えば、濡れたタオル)が操舵操作子に置かれたときに、運転者が操舵操作子を把持したときと同程度に、静電容量センサの静電容量が変化する場合がある。このような場合、静電容量センサの静電容量の収束値のみに基づいて、異物が操舵操作子に置かれたのか運転者が操舵操作子を把持したのかを判定することは困難である。そのため、異物が操舵操作子に置かれた場合に、運転者が操舵操作子を把持していないにも関わらず、運転者が操舵操作子を把持していると誤って判定してしまい、運転者に対する報知を適切に行うことができない恐れがある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、異物が操舵操作子に置かれた場合に、運転者に対する報知を適切に行うことを課題とし、延いては、持続可能な輸送システムの発展に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車両用操舵装置(3)であって、運転者による車両(1)の操舵操作を受け付ける操舵操作子(22)と、前記操舵操作子に設けられ、運転者が前記操舵操作子を把持するのに応じて静電容量が変化するように構成された静電容量センサ(53~58)と、前記静電容量センサの静電容量が第1閾値以上である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定し、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値未満である場合に、運転者が前記操舵操作子を把持していないと判定する制御装置(15)と、運転者が前記操舵操作子を把持していないと前記制御装置が判定した場合に、運転者に対する報知を行う報知装置(8)と、を備え、前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、且つ、前記第1閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行う。
【0008】
運転者が操舵操作子を把持した場合、運転者の手のみが操舵操作子に接近し、操舵操作子に接触する。そのため、静電容量センサの静電容量は、単純に増加した後に、一定の値に落ち着く。これに対して、異物が操舵操作子に置かれた場合、乗員の手と異物の両方が操舵操作子に接近した後に、異物を操舵操作子に残したまま乗員の手だけが操舵操作子から遠ざかる。そのため、静電容量センサの静電容量は、いったん増加した後に減少し、一定の値に落ち着く。そこで、報知装置は、静電容量センサの静電容量が第1閾値を超えて増加した後に減少し、且つ、第1閾値以上である場合(つまり、静電容量センサの静電容量がいったん増加した後に減少し、一定の値に落ち着く場合)に、運転者に対する報知を行う。これにより、異物が操舵操作子に置かれた場合に、運転者に対する報知を適切に行うことができる。延いては、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0009】
上記の態様において、前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上まで増加した後に前記第2閾値未満まで減少し、且つ、前記第1閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行っても良い。
【0010】
この態様によれば、運転者の手のみが操舵操作子に接近した場合の静電容量センサの静電容量よりも十分に大きな値に第2閾値を設定しておくことで、運転者が操舵操作子を正常に把持しているにも関わらず運転者に対する報知が行われるのを抑制することができる。
【0011】
上記の態様において、前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に第3閾値以上減少し、且つ、前記第1閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行っても良い。
【0012】
この態様によれば、運転者が操舵操作子を握り直したり操舵操作子から手を少し浮かせたりした場合の静電容量センサの静電容量の減少量よりも十分に大きな値に第3閾値を設定しておくことで、運転者が操舵操作子を正常に把持しているにも関わらず運転者に対する報知が行われるのを抑制することができる。
【0013】
上記の態様において、前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、且つ、所定期間の間継続して前記第1閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行っても良い。
【0014】
この態様によれば、静電容量センサの静電容量が第1閾値以上の値に落ち着いたことを確認した上で、運転者に対する報知を行うことができる。
【0015】
上記の態様において、前記制御装置は、前記静電容量センサの静電容量を記憶し、前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、所定期間の間継続して前記第1閾値以上であり、且つ、前記所定期間における前記静電容量センサの静電容量の変化量の合計値が第4閾値未満である場合に、運転者に対する報知を行っても良い。
【0016】
異物が操舵操作子に置かれた場合、通常、異物の位置は変化しない。そのため、静電容量センサの静電容量は、一定の値に落ち着いた後、安定した状態を保つ。上記の態様によれば、所定期間における静電容量センサの静電容量の変化量の合計値が第4閾値未満である場合(つまり、静電容量センサの静電容量が安定した状態を保つ場合)に、運転者に対する報知が行われる。これにより、異物が操舵操作子に置かれた場合に、運転者に対する報知を確実に行うことができる。
【0017】
上記の態様において、前記制御装置は、前記静電容量センサの静電容量を記憶し、前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、所定期間の間継続して前記第1閾値以上であり、且つ、前記所定期間における前記静電容量センサの静電容量の変化量の合計値が第4閾値以上である場合に、運転者に対する報知を行わなくても良い。
【0018】
運転者が操舵操作子を把持した場合、通常、運転者が操舵操作子を握り直したり持ち替えたりすることで、運転者の手の位置が微妙に変化する。そのため、静電容量センサの静電容量は、一定の値に落ち着いた後も、わずかに増減する。上記の態様によれば、所定期間における静電容量センサの静電容量の変化量の合計値が第4閾値以上である場合(つまり、静電容量センサの静電容量が増減する場合)に、運転者に対する報知が行なわれない。これにより、運転者が操舵操作子を正常に把持しているにも関わらず運転者に対する報知が行われるのを抑制することができる。
【0019】
上記の態様において、前記報知装置は、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値を超えて増加した後に減少し、且つ、前記第1閾値以上である場合に、前記操舵操作子を把持することを促す報知を行っても良い。
【0020】
この態様によれば、異物が操舵操作子に置かれた場合に、操舵操作子を把持することを運転者に促すことができる。
【0021】
上記の態様において、前記報知装置は、前記操舵操作子を把持することを促す報知を開始した後、前記静電容量センサの静電容量が前記第1閾値未満まで減少した後に前記第1閾値以上まで増加した場合に、前記操舵操作子を把持することを促す報知を終了しても良い。
【0022】
この態様によれば、運転者が操舵操作子を把持したことを確認した上で、操舵操作子を把持することを促す報知を終了することができる。
【0023】
上記の態様において、前記制御装置は、運転者が前記操舵操作子を把持していると判定したときの前記静電容量センサの静電容量に基づいて、前記第1閾値を更新しても良い。
【0024】
この態様によれば、運転者の手の特性(例えば、水分量や大きさ)に応じて、第1閾値を適切な値に設定することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の態様によれば、異物が操舵操作子に置かれた場合に、運転者に対する報知を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用操舵装置が適用された車両を示す機能構成図
図2】本発明の第1実施形態に係る報知実行制御を示すフローチャート
図3】本発明の第1実施形態に係る静電容量センサの静電容量の変化を例示するグラフ
図4】本発明の第1実施形態に係る報知終了制御を示すフローチャート
図5】本発明の第2実施形態に係る報知実行制御を示すフローチャート
図6】本発明の第2実施形態に係る静電容量センサの静電容量の変化を例示するグラフ
図7】本発明の第3実施形態に係る報知実行制御を示すフローチャート
図8】本発明の第3実施形態に係る静電容量センサの静電容量の変化を例示するグラフ
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、図1図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。
【0028】
<車両1>
まず、図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る車両用操舵装置3が適用された車両1について説明する。例えば、車両1は、自動車である。他の実施形態では、車両1は、自動車以外の車両(例えば、2輪車)であっても良い。
【0029】
車両1は、駆動装置5と、ブレーキ装置6と、ステアリング装置7と、HMI8(Human Machine Interface:報知装置の一例)と、運転操作子9と、ナビゲーション装置10と、外界センサ11と、車両センサ12と、運転者センサ13と、制御装置15と、を有する。以下、車両1の構成要素について順番に説明する。
【0030】
駆動装置5は、車両1に駆動力を付与する装置である。駆動装置5は、車両1を走行させるための駆動力を発生させる駆動源を含む。例えば、駆動源は、内燃機関及び/又は電動モータによって構成されている。
【0031】
ブレーキ装置6は、車両1に制動力を付与する装置である。例えば、ブレーキ装置6は、ブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダと、を含む。
【0032】
ステアリング装置7は、車輪17を転舵することで、車輪17の舵角を変える装置である。例えば、ステアリング装置7は、車輪17に接続されたラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータと、を含む。
【0033】
HMI8は、車両1の乗員(例えば、運転者)に対して情報を提示すると共に、乗員による情報の入力を受け付ける装置である。HMI8は、タッチパネル19と、音声出力装置20と、を含む。タッチパネル19は、乗員に対して各種画面を表示すると共に、乗員による各種画面に対する入力操作を受け付ける。音声出力装置20は、音声ガイダンスや警告音等を出力する。
【0034】
運転操作子9は、運転者による運転操作を受け付ける装置である。運転操作子9は、運転者による車両1の操舵操作を受け付けるステアリングホイール22(操舵操作子の一例)と、運転者による車両1の加速操作を受け付けるアクセルペダル23と、運転者による車両1の制動操作を受け付けるブレーキペダル24と、を含む。
【0035】
ナビゲーション装置10は、車両1の目的地への経路案内等を行う装置である。ナビゲーション装置10は、人工衛星から受信したGNSS信号に基づいて、車両1の現在位置を特定する。ナビゲーション装置10は、車両1の現在位置と乗員がタッチパネル19に入力した車両1の目的地とに基づいて、車両1の目的地までの経路を設定する。
【0036】
外界センサ11は、車両1の外界の状態を検出する装置である。外界センサ11は、複数のカメラ26と、複数のレーダ27と、複数のライダ28(LiDAR)と、を含む。各カメラ26は、車両1の周囲に存在する物標(前走車等の周辺車両、歩行者、道路上の構造物、区画線等)の画像を撮影する。各レーダ27は、ミリ波等の電波を車両1の周囲に発射し、その反射波を捉えることにより、車両1の周囲に存在する物標の位置を検出する。各ライダ28は、赤外線等の光を車両1の周囲に照射し、その反射光を捉えることにより、車両1の周囲に存在する物標の位置を検出する。
【0037】
車両センサ12は、各種の車両状態を検出するセンサである。車両センサ12は、車両1の車速を検出する車速センサ30と、車両1の左右方向の加速度(横加速度)を検出する加速度センサ31と、運転者による車両1の操舵操作に応じて発生する操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ32と、を含む。
【0038】
運転者センサ13は、運転者の状態を検出するセンサである。運転者センサ13は、ドライバモニタカメラ34と、静電容量センサ35と、を含む。ドライバモニタカメラ34は、運転者の画像を撮影する。静電容量センサ35は、ステアリングホイール22に設けられている。静電容量センサ35は、1つだけ設けられていても良いし、複数設けられていても良い。静電容量センサ35は、ステアリングホイール22に接近した物体と容量結合可能な電極によって構成されている。運転者の手がステアリングホイール22に接近するのに応じて、運転者の手と電極との距離が短くなり、静電容量センサ35の静電容量が上昇する。ここで、「静電容量センサ35の静電容量」は、静電容量センサ35の静電容量の値そのものであっても良いし、静電容量センサ35の静電容量と対応する静電容量センサ35の出力値(出力電圧)であっても良い。
【0039】
制御装置15は、ステアリング装置7、HMI8、運転操作子9(特に、ステアリングホイール22)、及び、運転者センサ13(特に、静電容量センサ35)と共に、車両用操舵装置3を構成している。
【0040】
制御装置15は、各種処理を実行するように構成されたコンピュータからなる電子制御装置(ECU)である。制御装置15は、演算処理装置(CPU、MPU等のプロセッサ)と、記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)と、を含む。演算処理装置は、記憶装置から必要なソフトウェアを読み取り、読み取ったソフトウェアに従って所定の演算処理を実行する。制御装置15は、1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。制御装置15は、CAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークによって車両1の各構成要素に接続されており、車両1の各構成要素を制御する。
【0041】
制御装置15は、機能的な構成要素として、外界認識部37と、走行制御部38と、運転支援制御部39と、自動運転制御部40と、把持判定部41と、を含む。制御装置15の機能的な構成要素の少なくとも一部は、LSI、ASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0042】
外界認識部37は、外界センサ11の検出結果に基づいて、車両1の外界の状態を認識する。例えば、外界認識部37は、外界センサ11の検出結果に基づいて、車両1の周囲に存在する物標(前走車等の周辺車両、歩行者、道路上の構造物、区画線等)を認識する。
【0043】
走行制御部38は、運転者による運転操作子9に対する運転操作に応じて、車両1の走行を制御する。例えば、走行制御部38は、運転者によるステアリングホイール22に対する車両1の操舵操作に応じてステアリング装置7を制御し、車両1を旋回させる。走行制御部38は、運転者によるアクセルペダル23に対する車両1の加速操作に応じて駆動装置5を制御し、車両1を加速させる。走行制御部38は、運転者によるブレーキペダル24に対する車両1の制動操作に応じてブレーキ装置6を制御し、車両1を減速させる。
【0044】
運転支援制御部39は、外界認識部37の認識結果に基づいて、車両1の先進運転支援制御(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)を実行する。先進運転支援制御は、SAEの自動運転レベル1~2に相当する制御である。先進運転支援制御の実行時には、運転者が車両1の運転主体となり、車両1の運転権限を有する。以下、先進運転支援制御のことを、「運転支援制御」と略称する。
【0045】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、追従走行制御(ACC:Adaptive Cruise Control)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、ACCの実行時に、車両1を前走車に所定の車間距離を保って追従走行させるべく、駆動装置5及びブレーキ装置6を制御する。
【0046】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、車線維持支援制御(LKAS;Lane Keeping Assistance System)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、LKASの実行時に、車両1が車線内の走行位置を維持するように運転者による車両1の操舵操作を支援すべく、ステアリングホイール22及びステアリング装置7を制御する。
【0047】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、衝突軽減ブレーキ制御(CMBS:Collision Mitigation Brake System)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、CMBSの実行時に、車両1と車外の物体との衝突を軽減すべく、ブレーキ装置6を制御する。
【0048】
自動運転制御部40は、車両1の自動運転制御(AD:Autonomous Driving)を実行する。自動運転制御は、SAEの自動運転レベル3以上に相当する制御である。自動運転制御の実行時には、自動運転制御部40が車両1の運転主体となり、車両1の運転権限を有する。自動運転制御の実行時に、自動運転制御部40は、駆動装置5、ブレーキ装置6、及び、ステアリング装置7を自動的に制御し、車両1を自動的に走行させる。
【0049】
把持判定部41は、静電容量センサ35の静電容量に基づいて、運転者がステアリングホイール22を把持しているか否かを判定する。より詳細には、把持判定部41は、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値以上である場合に、運転者がステアリングホイール22を把持していると判定する。一方で、把持判定部41は、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値未満である場合に、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定する。
【0050】
以下、説明の便宜上、制御装置15の機能的な構成要素を区別せずに、単に「制御装置15」と記載する。
【0051】
<報知実行制御>
次に、図2を参照しつつ、運転者に対する報知(後述する第1、第2把持促進報知)を行うための報知実行制御について説明する。例えば、制御装置15は、車両1の運転権限を運転者に移行する必要が生じた場合(自動運転レベルを3以上から2以下に移行する必要が生じた場合)に、報知実行制御を実行すると良い。以下、報知実行制御の開始時において、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満であると仮定する。
【0052】
まず、制御装置15は、報知実行制御の開始時から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上まで増加しているか否かを判定する(ステップST1)。
【0053】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満である場合(ステップST1:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定し、HMI8に第1把持促進報知を行わせる(ステップST2)。第1把持促進報知は、運転者にステアリングホイール22を把持することを促す報知である。例えば、HMI8のタッチパネル19は、第1把持促進報知として、運転者にステアリングホイール22を把持することを促すメッセージを表示しても良い。例えば、HMI8の音声出力装置20は、第1把持促進報知として、運転者にステアリングホイール22を把持することを促す音声ガイダンスや警告音を出力しても良い。
【0054】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上まで増加している場合(ステップST1:Yes)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していると判定する。この場合、制御装置15は、ステップST1の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1よりも大きい第2閾値TH2以上まで増加しているか否かを判定する(ステップST3)。
【0055】
静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2未満である場合(ステップST3:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定し、運転者に対する報知をHMI8に行わせることなく、報知実行制御を終了する。
【0056】
静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2以上まで増加している場合(ステップST3:Yes)、制御装置15は、ステップST3の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2未満まで減少しているか否かを判定する(ステップST4)。
【0057】
静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2以上である場合(ステップST4:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定し、運転者に対する報知をHMI8に行わせることなく、報知実行制御を終了する。
【0058】
静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2未満まで減少している場合(ステップST4:Yes)、制御装置15は、ステップST4の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少しているか否かを判定する(ステップST5)。
【0059】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少している場合(ステップST5:Yes)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定し、HMI8に第1把持促進報知を行わせる(ステップST2)。
【0060】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上である場合(ステップST5:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持しているか、又は、異物がステアリングホイール22に置かれていると判定し、HMI8に第2把持促進報知を行わせる(ステップST6)。第2把持促進報知の内容は、第1把持促進報知の内容と同一であるため、説明を省略する。
【0061】
<報知実行制御の作用>
次に、図3を参照しつつ、上述の報知実行制御の作用について説明する。以下、ステップと記載する場合には、上述の報知実行制御におけるステップを示す。
【0062】
図3(A)は、運転者の手のみがステアリングホイール22に接近し、そのままステアリングホイール22の位置に残った場合(例えば、運転者がステアリングホイール22を正常に把持した場合)の静電容量センサ35の静電容量の変化を例示している。この場合、運転者の手のみがステアリングホイール22に接近することで、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1を超えて増加した後、第2閾値TH2未満の値で安定する。その結果、ステップST1の判定がYesとなり、ステップST3の判定がNoとなる。そのため、HMI8は、運転者に対する報知を行わない。
【0063】
図3(B)は、運転者の手と異物(例えば、濡れたタオル)の両方がステアリングホイール22に接近し、そのままステアリングホイール22の位置に残った場合(例えば、運転者がステアリングホイール22を把持する時に、異物がステアリングホイール22に掛かった場合)の静電容量センサ35の静電容量の変化を例示している。この場合、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22に接近することで、静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2以上まで増加した後、第2閾値TH2以上の値で安定する。その結果、ステップST1、ステップST3の判定がYesとなり、ステップST4の判定がNoとなる。そのため、HMI8は、運転者に対する報知を行わない。
【0064】
図3(C)は、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22に接近した後、ステアリングホイール22から離れた場合(例えば、運転者がステアリングホイール22を濡れたタオルで拭いた場合)の静電容量センサ35の静電容量の変化を例示している。この場合、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22に接近することで、静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2以上まで増加する。その後、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22から離れることで、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少する。その結果、ステップST1、ステップST3~ST5の判定がYesとなる。そのため、HMI8は、運転者に対する第1把持促進報知を行う。
【0065】
図3(D)は、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22に接近した後、運転者の手と異物のいずれか一方がステアリングホイール22から離れた場合(例えば、異物がステアリングホイール22に置かれた場合)の静電容量センサ35の静電容量の変化を例示している。この場合、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22に接近することで、静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2以上まで増加する。その後、運転者の手と異物のいずれか一方がステアリングホイール22から離れることで、静電容量センサ35の静電容量が第2閾値TH2未満まで減少し、第1閾値TH1以上の値で安定する。その結果、ステップST1、ステップST3、ステップST4の判定がYesとなり、ステップST5の判定がNoとなる。そのため、HMI8は、第2把持促進報知を行う。
【0066】
このように、HMI8は、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1を超えて増加した後に減少し、且つ、第1閾値TH1以上である場合に、第2把持促進報知を行う。これにより、異物がステアリングホイール22に置かれた場合に、乗員に対する報知を適切に行うことができる。
【0067】
<報知終了制御>
次に、図4を参照しつつ、上述の第2把持促進報知を終了するための報知終了制御について説明する。以下、報知終了制御の開始時において、第2把持促進報知の実行中であると仮定する。
【0068】
まず、制御装置15は、報知終了制御の開始時から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少しているか否かを判定する(ステップST11)。
【0069】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上である場合(ステップST11:No)、制御装置15は、第2把持促進報知を継続したまま、ステップST11の判定を繰り返す。
【0070】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少している場合(ステップST11:Yes)、制御装置15は、ステップST11の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上まで増加しているか否かを判定する(ステップST12)。
【0071】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満である場合(ステップST12:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定し、第2把持促進報知を継続したまま、ステップST12の判定を繰り返す。
【0072】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上まで増加している場合(ステップST12:Yes)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していると判定し、第2把持促進報知を終了する(ステップST13)。
【0073】
<第1閾値TH1の更新>
制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定したときの静電容量センサ35の静電容量に基づいて、第1閾値TH1を更新する。例えば、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定したときの静電容量センサ35の静電容量よりも一定の値だけ小さくなるように、第1閾値TH1を更新する。
【0074】
これにより、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定したときの静電容量センサ35の静電容量が比較的大きい場合(運転者の手が水分を多く含んでいる場合)、第1閾値TH1も比較的大きくなる。これに対して、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定したときの静電容量センサ35の静電容量が比較的小さい場合(例えば、運転者の手が水分をあまり含んでいない場合)には、第1閾値TH1も比較的小さくなる。
【0075】
(第2実施形態)
以下、図5図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態について説明する。なお、制御装置15が実行する報知実行制御以外の内容は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
<報知実行制御>
図5を参照して、第2実施形態に係る報知実行制御のステップST21~ST22は、第1実施形態に係る報知実行制御のステップST1~ST2と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上まで増加している場合(ステップST21:Yes)、制御装置15は、ステップST21の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が減少しているか否かを判定する(ステップST23)。
【0078】
静電容量センサ35の静電容量が減少していない場合(ステップST23:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定し、運転者に対する報知をHMI8に行わせることなく、報知実行制御を終了する。
【0079】
静電容量センサ35の静電容量が減少している場合(ステップST23:Yes)、制御装置15は、ステップST23の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第3閾値TH3以上減少しているか否かを判定する(ステップST24)。つまり、制御装置15は、静電容量センサ35の静電容量が減少開始から単位時間以内に第3閾値TH3以上減少しているか否かを判定する。
【0080】
静電容量センサ35の静電容量が第3閾値TH3以上減少していない場合(ステップST24:No)、制御装置15は、ステップST24の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少しているか否かを判定する(ステップST25)。
【0081】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少している場合(ステップST25:Yes)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定し、HMI8に第1把持促進報知を行わせる(ステップST22)。
【0082】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上である場合(ステップST25:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定し、運転者に対する報知をHMI8に行わせることなく、報知実行制御を終了する。
【0083】
静電容量センサ35の静電容量が第3閾値TH3以上減少している場合(ステップST24:Yes)、制御装置15は、ステップST24の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少しているか否かを判定する(ステップST26)。
【0084】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1未満まで減少している場合(ステップST26:Yes)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定し、HMI8に第1把持促進報知を行わせる(ステップST22)。
【0085】
静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1以上である場合(ステップST26:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持しているか、又は、異物がステアリングホイール22に置かれていると判定し、HMI8に第2把持促進報知を行わせる(ステップST27)。
【0086】
<報知実行制御の作用>
次に、図6を参照しつつ、上述の報知実行制御の作用について説明する。以下、ステップと記載する場合には、上述の報知実行制御におけるステップを示す。
【0087】
図6(A)は、運転者がステアリングホイール22を把持した後、ステアリングホイール22の握りを弱めた場合の静電容量センサ35の静電容量の変化を例示している。この場合、運転者がステアリングホイール22を把持することで、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1を超えて増加する。その後、運転者がステアリングホイール22の握りを弱めることで、静電容量センサ35の静電容量が第1変動量C1(但し、第1変動量C1<第3閾値TH3)減少し、第1閾値TH1以上の値で安定する。その結果、ステップST21、ステップST23の判定がYesとなり、ステップST24、ステップST25の判定がNoとなる。そのため、HMI8は、運転者に対する報知を行わない。
【0088】
図6(B)は、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22に接近した後、運転者の手と異物のいずれか一方がステアリングホイール22から離れた場合(例えば、異物がステアリングホイール22に置かれた場合)の静電容量センサ35の静電容量の変化を例示している。この場合、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22に接近することで、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1を超えて増加する。その後、運転者の手と異物のいずれか一方がステアリングホイール22から離れることで、静電容量センサ35の静電容量が第2変動量C2(但し、第2変動量C2≧第3閾値TH3)減少し、第1閾値TH1以上の値で安定する。その結果、ステップST21、ステップST23、ステップST24の判定がYesとなり、ステップST26の判定がNoとなる。そのため、HMI8は、運転者に対する第2把持促進報知を行う。
【0089】
このように、HMI8は、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1を超えて増加した後に第3閾値TH3以上減少し、且つ、第1閾値TH1以上である場合に、第2把持促進報知を行う。これにより、異物がステアリングホイール22に置かれた場合に、乗員に対する報知を適切に行うことができる。
【0090】
(第3実施形態)
以下、図7図8を参照しつつ、本発明の第3実施形態について説明する。なお、制御装置15が実行する報知実行制御以外の内容は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
<報知実行制御>
図7を参照して、第3実施形態に係る報知実行制御のステップST31~ST33は、第2実施形態に係る報知実行制御のステップST21~ST23と同様であるため、説明を省略する。
【0092】
静電容量センサ35の静電容量が減少している場合(ステップST33:Yes)、制御装置15は、ステップST33の判定から所定時間経過後に、静電容量センサ35の静電容量が所定期間Xの間継続して第1閾値TH1以上であるか否かを判定する(ステップST34)。
【0093】
静電容量センサ35の静電容量が所定期間Xの間継続して第1閾値TH1以上でない場合(ステップST34:No)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定し、HMI8に第1把持促進報知を行わせる(ステップST32)。
【0094】
静電容量センサ35の静電容量が所定期間Xの間継続して第1閾値TH1以上である場合(ステップST34:Yes)、制御装置15は、所定期間Xにおける静電容量センサ35の静電容量の変化量の合計値(以下、単に「変化量の合計値」と記載する)を算出し、この変化量の合計値が第4閾値TH4以上であるか否かを判定する(ステップST35)。
【0095】
変化量の合計値が第4閾値TH4以上である場合(ステップST35:Yes)、制御装置15は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持していると判定し、HMI8に報知を行わせることなく、報知実行制御を終了する。
【0096】
変化量の合計値が第4閾値TH4未満である場合(ステップST35:No)、制御装置15は、異物がステアリングホイール22に置かれていると判定し、HMI8に第2把持促進報知を行わせる(ステップST36)。
【0097】
<報知実行制御の作用>
次に、図8を参照しつつ、上述の報知実行制御の作用について説明する。以下、ステップと記載する場合には、上述の報知実行制御におけるステップを示す。
【0098】
図8(A)は、運転者がステアリングホイール22を把持した後、ステアリングホイール22の握りを弱めた場合の静電容量センサ35の静電容量の変化を例示している。この場合、運転者がステアリングホイール22を把持することで、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1を超えて増加する。その後、運転者がステアリングホイール22の握りを弱めることで、静電容量センサ35の静電容量が減少し、第1閾値TH1以上の値で安定する。そのため、静電容量センサ35の静電容量は、所定期間Xの間継続して第1閾値TH1以上となる。また、運転者の手がステアリングホイール22を握り直したり持ち替えたりすることで、静電容量センサ35の静電容量が僅かに増減する。そのため、変化量の合計値が第4閾値TH4以上となる。その結果、ステップST31、ステップST33~ST35の判定がYesとなる。そのため、HMI8は、運転者に対する報知を行わない。
【0099】
図8(B)は、異物がステアリングホイール22に置かれた場合の静電容量センサ35の静電容量の変化を例示している。この場合、運転者の手と異物の両方がステアリングホイール22に接近することで、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1を超えて増加する。その後、運転者の手がステアリングホイール22から離れることで、静電容量センサ35の静電容量が減少し、第1閾値TH1以上の値で安定する。そのため、静電容量センサ35の静電容量は、所定期間Xの間継続して第1閾値TH1以上となる。また、異物がステアリングホイール22に置かれた状態では、異物の位置が変化しない。そのため、変化量の合計値が第4閾値TH4未満となる。その結果、ステップST31、ステップST33~ST34の判定がYesとなり、ステップST35の判定がNoとなる。そのため、HMI8は、運転者に対する第2把持促進報知を行う。
【0100】
このように、HMI8は、静電容量センサ35の静電容量が第1閾値TH1を超えて増加した後に減少し、所定期間Xの間継続して第1閾値TH1以上であり、且つ、変化量の合計値が第4閾値TH4未満である場合に、第2把持促進報知を行う。これにより、異物がステアリングホイール22に置かれた場合に、乗員に対する報知を適切に行うことができる。
【0101】
<変形例>
上記の第1実施形態では、第2把持促進報知(ステップST6)の内容が第1把持促進報知(ステップST2)の内容と同一である。他の実施形態では、第2把持促進報知の内容が第1把持促進報知の内容と異なっていても良い。第1把持促進報知は、運転者がステアリングホイール22を把持していないと制御装置15が判定した場合の報知である。これに対して、第2把持促進報知は、運転者がステアリングホイール22を正常に把持しているか、又は、異物がステアリングホイール22に置かれていると制御装置15が判定した場合の報知である。そこで、第1把持促進報知は、ステアリングホイール22を把持することを運転者に直接的に指示するメッセージを含み、第2把持促進報知は、ステアリングホイール22を把持しているか否かを運転者に問い合わせるメッセージを含んでいても良い。
【0102】
上記の第3実施形態では、静電容量センサ35の静電容量が所定期間Xの間継続して第1閾値TH1以上である場合(ステップST34:Yes)、制御装置15は、変化量の合計値が第4閾値TH4以上であるか否かを判定している(ステップST35)。他の実施形態では、静電容量センサ35の静電容量が所定期間Xの間継続して第1閾値TH1以上である場合(ステップST34:Yes)、制御装置15は、ステップST35の判定を行わずに、HMI8に第2把持促進報知を行わせても良い。
【0103】
上記の第1~第3実施形態では、異物(例えば、濡れたタオル)がステアリングホイール22に置かれている状況において、本発明が利用されている。他の実施形態では、異物がステアリングホイール22に置かれている状況に加えて、水分(例えば、乗員の飲み物)がステアリングホイール22に付着している状況において、本発明が利用されても良い。
【0104】
上記の第1~第3実施形態では、ステアリングホイール22が操舵操作子として用いられている。他の実施形態では、ステアリングホイール22以外の操作子(例えば、操縦桿)が操舵操作子として用いられても良い。
【0105】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 :車両
3 :車両用操舵装置
8 :HMI(報知装置)
15 :制御装置
22 :ステアリングホイール(操舵操作子の一例)
35 :静電容量センサ
TH1 :第1閾値
TH2 :第2閾値
TH3 :第3閾値
TH4 :第4閾値
X :所定期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8