(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】複数のエネルギー貯蔵手段を有する電気駆動システムを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/493 20070101AFI20241205BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20241205BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20241205BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02M7/493
B60L9/18 L
B60L58/18
B60L7/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023078833
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】10 2022 111 881.9
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ホラー
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ネレス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フーベルト
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220392(JP,A)
【文献】特開2021-180551(JP,A)
【文献】特開2020-022302(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020657(WO,A1)
【文献】特開2019-180210(JP,A)
【文献】特開2020-120566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0033274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 - 7/98
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(27)を有する電気駆動システム(20)を動作させるための方法であって、
前記電気機械が、第1のインバータ(25)に動作的に接続されている第1の多相巻線を備え、第2のインバータ(26)に接続されている少なくとも1つの第2の多相巻線を備え、第1のエネルギー貯蔵手段(23)が、前記第1のインバータ(25)の上流に配置され、第2のエネルギー貯蔵手段(24)が、前記第2のインバータ(26)の上流に配置され、
前記方法が、
前記第1のエネルギー貯蔵手段(23)と前記第1の多相巻線との間に第1の電力の流れを提供することによって、前記電気機械(27)を動作することと、
前記第2のエネルギー貯蔵手段(24)と前記第2の多相巻線との間に第2の電力の流れが提供されるように、前記第2のインバータ(26)を接続することと、
前記第1の電力の流れだけによって前記電気機械(27)が動作する間に、前記第1のインバータ(25)を流れる前記第1の電力の流れが負荷閾値を超えるとき、前記第2のエネルギー貯蔵手段(24)から前記第2の多相巻線への前記第2の電力の流れを提供することを含み、
前記第2の電力の流れが、前記第2の多相巻線から前記第2のエネルギー貯蔵手段(24)まで発生し、その結果、前記第2のエネルギー貯蔵手段(24)が充電され、
前記第2のエネルギー貯蔵手段(24)の充電は、前記第2のエネルギー貯蔵手段(24)が完全に充電されておらず、且つ前記電気機械(27)を動作させるために必要な電力が第2の負荷閾値を下回るときに生じ、
前記第2の負荷閾値は、前記負荷閾値より低い電力閾値の50%である、方法。
【請求項2】
前記電気機械(27)の動作中に前記両インバータ(25、26)を流れる総電力が
前記負荷閾値を下回るときに、前記第2の電力の流れを提供する電流経路が非アクティブ化されるように、前記第2のインバータ(26)を非アクティブ化することを更に含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のインバータ(26)を非アクティブ化することは、前記第2のインバータ(26)内の電流導電素子を長期的にオープンにすることを含む、
請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記多相巻線の各々が三相設計されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記負荷閾値は、前記電気機械(27)のモータ動作に適用される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のエネルギー貯蔵手段(23)の内部に配置される複数のエネルギー貯蔵セルの相互接続が、前記第2のエネルギー貯蔵手段(24)と異なる相互接続である、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電気駆動システム(20)であって、
第1のインバータ(25)に動作可能に接続されている第1の多相巻線を備え、かつ第2のインバータ(26)に接続されている少なくとも1つの第2の多相巻線を備えている、電気機械(27)と、
前記第1のインバータ(25)の上流に配置されている第1のエネルギー貯蔵手段(23)と、前記第2のインバータ(26)の上流に配置されている第2のエネルギー貯蔵手段(24)と、
前記2つのインバータ(25、26)の制御端子に接続され、かつ請求項1~
6のいずれか一項に記載の電気駆動システムを動作するための方法を実行するように構成された制御回路(28)と、を備える、電気駆動システム(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のエネルギー貯蔵手段を有する電気駆動システムを動作させるための方法に関し、この方法は、好ましくは電気自動車で使用することができる。本発明は更に、本発明による駆動システムの動作を制御するように構成された制御回路を有する、対応する駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の世界では、エレクトロモビリティのトピックが急速に重要になり、それゆえに対応する車両が市場シェアを獲得している。走行用駆動部の電気モータは、通常、分布又は集中巻線、径巻線、又は所望の巻線を有する三相で形成される。電気モータは、走行用バッテリの電源によって電力供給され、電圧源インバータ(VSI)は、電圧を適切に変換し、それに応じて電気モータを駆動するためにインバータとして使用されることが多い。この目的のために、インバータの出力上にクロック電圧信号が提供され、これは電気モータの大きなインダクタンスにより、ほぼ正弦波の電流の流れをもたらす。使用されるクロック式インバータは、パルス幅変調(PWM)又はパルス振幅変調(PAM)の原理に従って動作し、前者は、電気駆動でより頻繁に見られる。
【0003】
電気自動車は、そのドライビングダイナミクスが内燃機関を装備した車両のドライビングダイナミクスを上回ることが多いという事実故、ますます人気が高まっている。電気駆動は、基本的には、スポーティではない電気車両であっても、ほぼ全速度範囲にわたって即時の加速が可能になり、それゆえに、通常、著しくパワフルな内燃機関を有するスポーツカーでのみ可能となる機敏な運転性能が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気モータの高トルクレベルを達成するために、インバータによって電気モータの巻線に供給される電流は必ず増加し、それによりインバータの設計及び冷却がますます複雑になる。これらの不利な影響に対抗するために、インバータに印加されるDC電圧を増大させながら、インバータ電流(DC及びAC電流)を低減しようと試みることができる。従来は、この目的のために、より多くのバッテリパック又はバッテリセルを直列に有することによってバッテリの電圧を増加させた。しかしながら、このアプローチは、バッテリパックの中で最も弱いセルがパック全体の電力出力を制限するため、バッテリパック内に配置されるバッテリセルの数と共にバッテリパックが故障する可能性が増加するという欠点を有する。
【0005】
更に、バッテリ電圧を増加させることは、様々な充電状態(SoC)での電圧負荷の増加をもたらし、これが次にインバータ及び電気機械の過大化をもたらす。
【0006】
これを考慮すると、本発明の目的は、高負荷レンジで電気モータ又は対応する電気駆動システムを安全かつ確実に動作させる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、独立特許請求の範囲による電気駆動システムを動作させるための方法によって、及び対応するよう構成される電気駆動システムによって達成される。更なる好ましい実施形態は、従属請求項に見出すことができる。
【0008】
様々な実施形態が、電気駆動システムを動作させる方法を提供する。本発明による方法に基づく駆動システムは、第1のインバータに動作可能に接続された第1の多相巻線と、第2のインバータに接続された少なくとも1つの第2の多相巻線とを備える電気機械(電気モータ)を実質的に備える。用語「動作可能に接続された」は、インバータの出力端子が、関連する巻線の相端子に電気的に接続され、その結果、電気機械の適切な動作がインバータの動作によって提供され得ることを意味する。インバータは、従来技術から公知の従来のインバータであってもよく、例えば、平均相タップを有する半ブリッジ当たり少なくとも2つのパワー半導体スイッチからなる複数の半ブリッジを備え、半ブリッジの数は巻線の相数に対応し、好ましくは3つであってもよい。
【0009】
電気駆動システムは、第1のインバータの上流に配置された第1のエネルギー貯蔵手段と、第2のインバータの上流に配置された少なくとも1つの第2のエネルギー貯蔵手段とを更に備える。別の言い方をすると、各エネルギー貯蔵手段の電圧出力は、各インバータの入力端子に接続され、その結果、各インバータは、そのインバータに供給される電圧の電圧変換を行うことができる。更に、先行技術で周知のように、各電力貯蔵部とインバータペアとの間に中間回路を配置することができ、中間回路は特にキャパシタを含むことができる。エネルギー貯蔵手段は、本質的に走行用バッテリであってもよく、その各々が複数のバッテリモジュールを備え、その各々が複数のバッテリセルを備える。第1のエネルギー貯蔵手段は、高エネルギーバッテリとすることができる。第2のエネルギー貯蔵手段は、高電力バッテリとすることができる。更なる実施形態では、第2のエネルギー貯蔵手段は、キャパシタに接続された燃料バッテリを備えてもよく、そこから、燃料バッテリの高出力を必要に応じて電気機械によって引き出すことができる。
【0010】
2つのエネルギー貯蔵手段は、概して異なる特性及び電圧を有し得る。2つの技術のそれぞれの利点を利用することができ、同時に、他の技術の欠点のバランスを取ることができ、結果として、電気パワートレインの動作に悪影響を与えないため、バッテリ特性の広い分散が有利であり得る。言い換えれば、1つのバッテリ技術は、他のバッテリ技術の欠点の少なくとも一部を最適にカバーする。広い分散は、2つのバッテリが接続されている方法でも反映され得る。
【0011】
この点で、第1の要素及び第2の要素の両方、すなわち第1のエネルギー貯蔵手段、第1のインバータ及び第1の巻線は、他のパワートレインから電気的に分離された(ただし必ずしも電磁的ではない)パワートレインを提供し、それによって、用語「パワートレイン」は、この文脈で、電気機械を駆動するために使用される電気パワートレインを指すために使用される。別の言い方をすると、第1のパワートレインは、第2のパワートレインとは全く独立して動作することができる。
【0012】
本発明による方法は、電気駆動部内の電気機械の動作の2つの異なる段階を含む。基本モード又は制御動作モードと呼んでもよい第1のモードでは、本発明による方法は、第1のエネルギー貯蔵手段と第1の多相巻線との間に第1の電力の流れを提供することによって、電気機械を動作させることを含む。この場合、第1のパワートレインのみがアクティブであり、第2のパワートレイン(第2のエネルギー貯蔵手段、第2のインバータ、及び第2の巻線を含む)は非アクティブである。この基本モードは、電気機械が電力を供給できるモード、又は電力閾値を下回る電力が電気機械から要求されるモードに対応することができる。これは、第1のパワートレイン内の電力/電圧供給及び/又は変換に関与する電気及び/又は電子構成要素の動作パラメータに対する制限を維持しながら、提供又はアクセス(要求)される電力を提供できることを意味し得る。別の言い方をすれば、電力閾値は、第1のパワートレイン内の最大電流及び/又は最大電圧及び/又は周波数に基づいて決定することができる。また、電力閾値は、第1のパワートレイン全体が過負荷にならないようにし、例えば、その公称負荷閾値より5%又は10%以上低い状態で動作する任意の値に対応することができる。
【0013】
基本モードは、一般に、電気駆動システムによって最大電力が提供されないか又はアクセスされない、電気駆動システムの動作モードとすることができる。例えば、電流値及び/又は電圧値、又はそこから導出された値は、第1のパワートレイン内の所定の点において使用されて、提供される電力及び/又は取得された電力と電気機械、例えば、第1のインバータを通る電力の流れとの間の比を決定することができる。更に、基本モードでは、電気機械は実質的にモータ動作である。
【0014】
第2のモードでは、本発明による方法は、第2のエネルギー貯蔵手段と第2の多相巻線との間の第2の電力の流れが提供され得るように、第2のインバータをオン/アクティブ化することを含む。第2のエネルギー貯蔵手段の通電は、間欠的に、即ち限られた時間の間、発生することができ、電気機械の特定の運転状況によって決定することができ、これは次に、関連する電気車両の特定の運転条件(例えば、強力な加速、制動)によって決定することができる。特に加速移動(例えば、トルク要求)の間、エネルギーは有利には、例えばローンチコントロールがアクティブにされたときに、両方のエネルギー貯蔵手段から引き出され得る。電気機械の動作状態に応じて、第2のエネルギー貯蔵手段からの第2の電力の流れは、電気機械(第2のパワートレインの観点からの電気機械のモータ動作)、又はその逆(電気機械の発電機ベースの動作)を意味する。この場合、電気機械は、2つのエネルギー貯蔵手段からの電力の流れを介して動作するので、第2のモードでの電気機械のモータ動作は、高電力モードと呼んでもよい。電気機械の回生動作は、例えば、電気車両などのシステム全体が回復的に減速され電力の流れの方向が逆転する回復動作を意味すると理解される。更に、第2のモードは、例えば、電気車両がトレーラーで運転しているときなど、増加した負荷で車両を運転するときにも起動することができる。
【0015】
2つの多相巻線の各々は、関連するエネルギー貯蔵手段、特にその電圧能力に適合されるか、又は最適に設計され得る。電気モータの巻線を最適に設計することによって、それぞれのエネルギー貯蔵手段の電圧を最適に利用することができる。これを達成する方法はたくさんある。例えば、第2のエネルギー貯蔵部の巻線は、特に、高性能貯蔵手段として設計される場合、より厚いコンダクタ断面を有してもよく、及び/又は電気モータへのより高い電力の流れを可能にするより強い絶縁を有してもよい。更に、2つの巻線は、異なる数のコイルを有してもよく、ここで、それぞれの電圧能力又はエネルギー貯蔵手段からの電力フローに対するそれらの相互作用は調整される。更に、2つのパワートレインの調節もまた異なってもよく、第2のパワートレインの調節は、高電力の流れ、例えば、ブロック動作又は過剰変調のために最適化され得る。
【0016】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、第2のエネルギー貯蔵手段から第2の多相巻線への第2の電力の流れは、第1の電力のみに基づいて電気機械が動作中に、第1のインバータを流れる第1の電力の流れが負荷閾値を超えたときに発生し得る。第2のインバータに通電すると、第2のパワートレインがアクティブ化し、電気機械におけるトルク形成を支援する。別の言い方をすると、第2のモードでは、電気機械は、2つの三相巻線の存在を考慮すると2×3相電気機械として動作し、別個の巻線は、2つの別個の三相インバータによって電力供給される。したがって、一般的に、第2のインバータを通る電力の流れは、高負荷のためのみに使用され、一方、第1のインバータを通る電力の流れは、全負荷スペクトラムで、即ち、それぞれの運転モードにかかわらず電気パワートレインが動作中に使用される。
【0017】
高電力モータ相における電気パワートレインの動作に第2のエネルギー貯蔵手段を組み込むことによって、自由度及びそれゆえに最適化電位は、均等な電力出力のために設計された単一のエネルギー貯蔵手段と比べて増加する。更に、第1のエネルギー貯蔵手段の低電荷レベル(SoC)でのピーク電力出力は、第1のエネルギー貯蔵手段上の望ましくない電圧降下を低減できるように、最適化することができる。更に、第2のエネルギー貯蔵手段によって、より高い電力出力又は消費が、第1のパワートレインを過負荷にすることなく、短時間で達成することができる。
【0018】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、第2の電力の流れは、第2の多相巻線から第2のエネルギー貯蔵手段に生じ、それによって当該第2のエネルギー貯蔵手段を充電することができる。本発明による方法のこの実施形態では、エネルギー交換は、これら2つを電気機械により接続することによって、第1のエネルギー貯蔵手段と第2のエネルギー貯蔵手段との間で行われる。更に、2つの多相巻線の中性点は互いに接続されない。一つのエネルギー貯蔵手段から他のエネルギー貯蔵手段へ電気モータを介してエネルギーを誘導的に伝達するために、電気機械内の2つの多相巻線は、可能な限り大きいカップリングを有し得る。この目的のために、多相巻線の各々は、ステータ全体にわたって存在することができ、ステータの溝における2つの多相巻線の巻線は各々、例えば、互いの周りに一緒に配置することができる。言い換えれば、変圧器の原理は電気モータに実装され、第1のエネルギー貯蔵手段に関連付けられた多相巻線は、第1の変圧器側に対応し、第2のエネルギー貯蔵手段に関連付けられた多相巻線は、第2の変圧器側に対応する。各巻線は、相空間全体を覆うことができるため、各多相巻線の個々の相は、互いに対して120°シフトされる。
【0019】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、第2のエネルギー貯蔵手段は、第2のエネルギー貯蔵手段が完全に充電されておらず、かつi)電気機械を動作させるために必要な電力が第2の負荷閾値を下回るか、又はii)電気機械が発電動作中であるときに、充電され得る。
【0020】
事例i)は、電気機械によって要求された電力が第1のパワートレインにより提供可能な電力を著しく下回る動作シナリオに対応する。この文脈では、動作モードは、電気機械の動作に加えて、第2のエネルギー貯蔵手段が第1のエネルギー貯蔵手段からの電力の流れによって充電される基本モードに対応することができる。例えば、第2の負荷閾値は、前述の電力閾値の50%とすることができる。
【0021】
事例ii)は、ブレーキエネルギーが回復する(回復ブレーキ)動作シナリオに対応する。次に、この回収されたエネルギーを、主に第2のエネルギー貯蔵手段を充電するために使用することができる。
【0022】
更に、第2のエネルギー貯蔵手段の動作は、追加の要因により条件付けされる場合がある。第2のエネルギー貯蔵手段が完全に充電されていないとき、及び対応する所定の走行状況が検出されたときに第2のエネルギー貯蔵手段が充電されるように、第2のエネルギー貯蔵手段の充電が、車両のステアリング角についての情報と組み合わせて及び/又はABSシステムと組み合わせて、実施され得る。言い換えれば、ステアリング角度信号及び/又はABSシステムは、とりわけ、第2のエネルギー貯蔵手段を充電するためのトリガ-であり得る。例えば、第2のエネルギー貯蔵手段の充電は、曲線移動の間及び/又は(適切に強力な)ブレーキ操作の間に開始され得る。更なる移動データを使用して、移動状況、例えば、最後の所定の間隔における平均速度、最新の加速イベントの頻度及び/又は強度、道路条件(例えば、温度、水分など)を推定することができる。このデータに基づいて、第2のエネルギー貯蔵手段によって電力ブーストを提供することができるように、運転手が電気車両を大幅に加速したいと考えているときを、より正確な精度で検出することができる。
【0023】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、電気機械の動作中に、インバータを経由する総電力が負荷閾値を下回るときに、第2の電力が流れる電流経路が非アクティブにされるように、第2のインバータを否アクティブ化することを更に含むことができる。言い換えれば、本発明による方法の範囲で、第2のインバータ又は第2のパワートレイン全体を、高負荷での動作段階中に必要に応じてオンにすることができる。
【0024】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、第2のインバータを非アクティブにすることは、第2のインバータ内の電流導電素子(例えば、スイッチ)又は電流導電経路を永久に開放することを含むことができる。この文脈では、通常のサイクル動作中のインバータの負荷スイッチの通常の短期開通動作よりも一桁分長い任意の開放を意味すると理解される。
【0025】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、多相巻線の各々は三相に設計され得る。したがって、インバータはそれぞれ三相出力を備えてもよく、電気機械は2×3相機械として構成されてもよい。
【0026】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、負荷閾値は、主に電気機械のモータ動作に適用することができる。回復ブレーキ動作の場合、電気機械によって生成される電力の流れが、負荷閾値の範囲内又はそれを超えても増加すると予想され得る場合、負荷閾値は、電気機械の発電機動作にも適用され得る。例えば、発電機の負荷閾値を使用して、パワートレイン保護機能を実施することができる。例えば、ABS及び電気モータのESP使用下での重いブレーキ操作が高電力を生成する場合、この高電力は両方のエネルギー貯蔵手段により吸収されることができる。
【0027】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、電気機械の発電機動作中の負荷閾値は、電気機械のモータ動作中の負荷閾値とは異なってもよい。
【0028】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、第1のエネルギー貯蔵手段は、その中に配設されるエネルギー貯蔵セルの相互接続が、第2のエネルギー貯蔵手段と異なってもよい。第2のエネルギー貯蔵手段は、それゆえに高性能貯蔵手段として設計されてもよく、非常に高い電力を提供及び取得するように設計されてもよい。この文脈では、2つのエネルギー貯蔵手段内のバッテリセルは、例えば、それらのセル化学特性又は使用される技術原理(例えば、キャパシタ及びバッテリセル)に関して、追加的に異なってもよい。
【0029】
本発明による方法の更なる実施形態によれば、特に前の実施形態に加えて、第1のエネルギー貯蔵手段は、そのセル化学特性に関して高エネルギーセルとして設計される、すなわち、特に高エネルギー密度のために設計されるエネルギーセルを備え得る。第2のエネルギー貯蔵手段は、そのセル化学特性に関して高性能セルとして設計されたエネルギーセル、すなわち、特に大きな電力フロー用に設計されるエネルギーセルを備え得る。
【0030】
2つのエネルギー貯蔵所内のセルの異なる相互接続、及び/又は2つのエネルギー貯蔵所内のセルの異なるセル化学特性によって、それらは、それらの電力出力及び/又は最大電圧能力に関して異なってもよい。
【0031】
更なる実施形態は、第1のインバータに動作可能に接続された第1の多相巻線と、第2のインバータに動作可能に接続された少なくとも1つの第2の多相巻線を含む電気機械を備える電気駆動システムを提供する。当該駆動システムは、第1のインバータの上流に配置される第1のエネルギー貯蔵手段と、第2のインバータの上流に配置される第2のエネルギー貯蔵手段と、2つのインバータの制御端子に接続され本発明による電気駆動システムを動作させるための方法に従って電気機械の動作を制御するよう構成された制御回路を更に備える。
【0032】
当然のことながら、上述した特徴及び以下でこれから論じる特徴は、本発明の範囲を離れることなく、それぞれ指定された組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも、又はそれ自体でも使用できることを理解されたい。
【0033】
本発明の更なる優位性と実施例は、以下の説明及び図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】先行技術による電気駆動システムを示す図である。
【
図2】本発明による方法に基づく電気駆動システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1では、DCリンク(中間回路)を介してインバータ3に接続される(DCリンクキャパシタはインバータにグラフィカルに割り当てられる)、走行用バッテリの形態のエネルギー貯蔵手段2を本質的に含む通常の電気駆動システム1が描写されている。典型的には、三相インバータ3の出力は、電気機械の巻線の対応する相入力に接続される。
図1に概説した電気システムの動作は、先行技術から周知であり、より詳細には説明されない。
【0036】
本発明による方法の根底にある改善型電気駆動システム20が
図2に概略示される。このシステムは、第1のインバータ25の上流に接続される第1のエネルギー貯蔵手段23を備え、システムは、同様に、第2のインバータ26の上流に接続される第2のエネルギー貯蔵手段24を備える。電気駆動システム20は、第1のインバータ25に動作可能に接続された第1の多相巻線(
図2に明示的に示さず)及び第2のインバータ26に接続された少なくとも1つの第2の多相巻線(
図2にも明示的に示さず)を有する電気機械27を更に備える。第1のエネルギー貯蔵手段23、第1のインバータ25、及び第1の巻線は、第1のパワートレイン21を形成する。第2のエネルギー貯蔵手段24、第2のインバータ26、及び第2の巻線は、同様に第2のパワートレイン22を形成する。しかしながら、両方の巻線は、電気機械27内の同じステータ上に配置される。電気駆動システム20は、2つのインバータ25、26の制御端子に接続され、本発明による方法に従って電気機械27の動作を制御するように構成される制御回路28を更に含む。
【0037】
言い換えれば、概して、動作中、電気機械27によって引き出される電力の量にかかわらず、第1のパワートレイン21は常にアクティブであり、そのため、電気機械27は、第1の多相巻線と第1のエネルギー貯蔵手段23との間の第1の電流の流れを提供することによって駆動され、機械的作業を実施することができる。
【0038】
しかしながら、第1の電流の流れのみに基づいて、即ち、第1のパワートレイン21による電気機械27の動作中に、第1のインバータ25を介した電力の流れが負荷閾値を、超えた場合、第2のインバータ26が追加的に起動され、第2のパワートレイン22が接続されて、第2の多相巻線と第2のエネルギー貯蔵手段24との間の第2の電流の流れが提供される。その結果、高(モータ又は発電機)負荷が電気機械27に印加される場合、両方のパワートレインが、それぞれ、電気機械(モータ動作)27における磁界形成のための電流の流れを提供するか、又は電気機械(回復動作)27によって生成される電流は、両方のエネルギー貯蔵手段23、24に貯蔵される。