(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 55/04 20060101AFI20241205BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20241205BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B62D55/04
B66F11/04
B66F9/06 B
(21)【出願番号】P 2023121868
(22)【出願日】2023-07-26
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2023012452
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】312004721
【氏名又は名称】株式会社タダノユーティリティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰久
(72)【発明者】
【氏名】神津 英寿
(72)【発明者】
【氏名】金 龍俊
(72)【発明者】
【氏名】新井 健司
(72)【発明者】
【氏名】湯本 誠一
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113460177(CN,A)
【文献】特開平09-272469(JP,A)
【文献】特開2000-272892(JP,A)
【文献】特開2000-247594(JP,A)
【文献】実開平05-094075(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/04
B66F 11/04
B66F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降用ブームの先端に設けられたバスケットに作業者を収容して走行動作、昇降動作及び旋回動作可能な高所作業車であって、
車両に備えた各動作部に作動油を供給する油圧装置と、車両に作用する転倒側質量に対して安定側質量を提供するメインカウンタウェイトと、を有する車体フレームと、
前記車体フレームに搭載され、前記油圧装置より作動油を供給されて前記昇降用ブームを昇降させブーム先端に支持された前記バスケットを所望の高さに移動させる昇降装置と、
前記車体フレームを旋回可能に支持すると共に、接地面を走行する走行装置と、を備え、
前記走行装置は、走行用シャーシの対向面に各々設けられた同一結合部において、両端部に車輪を保持する前方アクスル及び後方アクスルが各々結合されたホイール式走行装置とクローラが架設された駆動輪及び従動輪を支持するトラックフレームが各々結合されたクローラ式走行装置のうちいずれかが換装可能に組み付けられている高所作業車。
【請求項2】
前記クローラ式走行装置は、前記トラックフレームは、複数のフレームどうしがアジャストシリンダによって連結されて伸縮可能に嵌合しており、前記アジャストシリンダを作動することで前記駆動輪及び前記従動輪の間隔を調整可能となっている請求項
1記載の高所作業車。
【請求項3】
前記ホイール式走行装置は、前記走行用シャーシに設けられた揺動軸を中心に前方揺動アクスル及び後方揺動アクスルが揺動可能に各々支持され、前記走行用シャーシの両側に支持された一対の揺動シリンダのシリンダロッドが前記前方揺動アクスル及び前記後方揺動アクスルの両端部に各々連結されている請求項
1記載の高所作業車。
【請求項4】
前記ホイール式走行装置及び前記クローラ式走行装置の駆動輪には走行用モータが連結されている請求項
1記載の高所作業車。
【請求項5】
前記車体フレームの第一取付部にエンジン駆動ユニットが装着されると第二取付部にはカウンターウェイトが装着され、前記第一取付部に電動駆動ユニットが装着されると、前記第二取付部にはバッテリーが装着される請求項
1記載の高所作業車。
【請求項6】
前記昇降用ブームの先端部と前記バスケットとの間には、ブーム先端ブロックにレベリングブラケットが回動可能に連結され、これらを連結するレベリングシリンダにより前記バスケットの水平姿勢を維持する先端結合機構と、
前記先端結合機構に加えて前記レベリングブラケットに回動可能に連結する一対のジブブームと一対のジブリンクを介して前記バスケットと接続され、前記ジブブームと前記ジブリンクを連結するジブシリンダにより前記ジブブームを起伏可能な先端ジブ結合機構のいずれかが換装可能に組み付けられている請求項
1記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用シャーシの両側に4輪を有するホイール走行装置と一対のクローラを有するクローラ走行装置のうちいずれかが換装可能に組み付けられている高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車に代表される作業用車両は、駆動源として備えたエンジン駆動ユニットにより油圧ポンプを駆動することにより、クローラを有する走行装置を走行させたり、車体フレームを旋回させたり、ブームを昇降させたりしている。高所作業が行われる環境は様々であり、建設作業現場やメンテナンス作業現場などで目的に合わせて高所作業車が使用されている。
【0003】
高所作業車の走行装置は、ホイール式とクローラ式の2種類があり、舗装路のような整地された場所ではホイール式が用いられ、不整地ではクローラ式が好適に用いられる。これらの走行面の状態に応じて2種類の高所作業車を用意するとすれば、車両コストが嵩むことになる。
【0004】
走行装置をホイール式からクローラ式に交換する場合、駆動輪の出力回転数が異なる。このため、減速機構に回転数の異なる複数のアクスルを設けておいて、大径の減速ギヤに対応するアクスルに車輪が組み付けられ、小径の減速ギヤに対応するアクスルに駆動スプロケットが組み付けられて後輪のみを半履帯式(セミクローラ式)に換装する技術が提案されている(特許文献1:特開2002-316675号公報参照)。
また、4輪を有するホイール式の小型トラックを車輪に替えて4輪をセミクローラ式に換装する技術も提案されている(特許文献2:US8,801,115号公報,特許文献3:US10,017,216号公報参照)。
更には、スキッドステアローダをホイール式走行装置からクローラ式走行装置に変換するために、車両本体の両側面に前後に取付アッセンブリを各々組み付け、駆動アクスルからスプロケットに駆動伝達され、クローラを回転駆動するクローラアセンブリに換装する技術も提案されている(特許文献4:US2010/0060075号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-316675号公報
【文献】US8,801,115号公報
【文献】US10,017,216号公報
【文献】US2010/0060075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、走行面の状態に応じてホイール式とクローラ式の2種類の走行装置を備える高所作業車を用意するとすれば車両コストが嵩む。また、ホイール式の4輪若しくは2輪を各々セミクローラ式に変更するとすれば、換装作業に手間取り、作業車の稼働率が低下する。特に、ホイール式走行装置の場合、例えば凹凸路面を走行する際に、4輪接地しない場合があるため、走行状態が不安定となるおそれがある。
【0007】
また、クローラ式走行装置の場合、クローラは経年劣化によりリンク伸びが発生する。この場合、クローラがたるんで駆動輪(スプロケットホイール)から外れるおそれがある。また前輪及び後輪を半履帯式(セミクローラ式)に変更した場合や後輪のみをセミクローラ式に変更した場合には、重心位置が高くなると共に接地面圧も高くなるため不整地での走行が不安定となりやすく、狭い作業現場で方向転換しようとしても超信地旋回(スピンターン)を行うことができない。
【0008】
更には、高所作業車においては、走行面の状態に応じてホイール式走行装置とクローラ式走行装置を換装する技術について未だに知見はない。特に、油圧装置の駆動源としてエンジン駆動ユニットと電動駆動ユニットを換装可能な高所作業車について走行面の状態を含む使用環境に応じて走行装置を換装する技術について未だに知見はない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、走行面の状態を含む使用環境に応じて走行用シャーシに対してホイール式走行装置とクローラ式走行装置を換装可能であり、車両コストを削減すると共に稼働効率を高めた高所作業車を提供することにある。
【0012】
上記目的を達成するため、発明の実施形態で説明する高所作業車は以下の構成を備える。昇降用ブームの先端に設けられたバスケットに作業者を収容して走行動作、昇降動作及び旋回動作可能な高所作業車であって、車両に備えた各動作部に作動油を供給する油圧装置と、車両に作用する転倒側質量に対して安定側質量を提供するメインカウンタウェイトと、を有する車体フレームと、前記車体フレームに搭載され、前記油圧装置より作動油を供給されて前記昇降用ブームを昇降させブーム先端に支持された前記バスケットを所望の高さに移動させる昇降装置と、前記車体フレームを旋回可能に支持すると共に、接地面を走行する走行装置と、を備え、前記走行装置は、走行用シャーシの対向面に各々設けられた同一結合部において、両端部に車輪を保持する前方アクスル及び後方アクスルが各々結合されたホイール式走行装置とクローラが架設された駆動輪及び従動輪を支持するトラックフレームが各々結合されたクローラ式走行装置のうちいずれかが換装可能に組み付けられていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、舗装路のように整地された場所では、走行用シャーシの対向面に設けられた同一結合部に、両端部に車輪を保持する前方アクスル及び後方アクスルが各々結合されたホイール式走行装置を用いて作業を行うことができる。また、作業現場などの不整地では、走行用シャーシの対向面に設けられた同一結合部から前方アクスル及び後方アクスルを各々取り外し、クローラが架設された駆動輪及び従動輪を支持するトラックフレームを結合してクローラ式走行装置に換装して作業を行うことができる。よって、同一の走行用シャーシを共用して使用環境に応じてホイール式走行装置とクローラ式走行装置を換装して車両コストを削減し、高所作業車の稼働効率を高めることができる。
特に走行用シャーシの同一結合部に対してホイール式走行装置とクローラ式走行装置を換装できるので、換装作業を簡略化することができる。
【0014】
前記クローラ式走行装置は、前記トラックフレームは、複数のフレームどうしがアジャストシリンダによって連結されて伸縮可能に嵌合しており、前記アジャストシリンダを作動することで前記駆動輪及び前記従動輪の間隔を調整可能となっていることが好ましい。
これにより、クローラが経年劣化によりリンク伸びが発生してたるみが生じても、アジャストシリンダによってトラックフレームに支持された駆動輪及び前記従動輪の間隔を調整することでクローラのテンションを一定に保つことができ、駆動輪からクローラが外れることがなくなる。
【0015】
前記ホイール式走行装置は、前記走行用シャーシに設けられた揺動軸を中心に前方揺動アクスル及び後方揺動アクスルが揺動可能に各々支持され、前記走行用シャーシの両側に支持された一対の揺動シリンダのシリンダロッドが前記前方揺動アクスル及び前記後方揺動アクスルの両端部に各々連結されていることが好ましい。
これにより、ホイール式走行装置により凹凸路面を走行する場合でも、走行用シャーシの両側に設けられた一対の揺動シリンダのシリンダロッドが伸縮して前方揺動アクスル及び後方揺動アクスルが揺動軸を中心に各々揺動するので、4輪接地状態を維持することができ、安定した走行動作を維持することができる。また、昇降装置の昇降動作などの作業時には、揺動シリンダに対する作動油の流れを止めることにより、昇降動作などの作業時に生じた負荷(モーメント)を接地した4輪で受け止めて作業を行うことができる。
【0016】
前記ホイール式走行装置及び前記クローラ式走行装置の駆動輪には走行用モータが連結されていてもよい。
このように、ホイール式走行装置及びクローラ式走行装置の駆動輪には走行用モータが連結されていると、駆動伝達機構が簡略化されるため、走行用シャーシに対してホイール式走行装置とクローラ式走行装置を換装する場合の換装レイアウトの自由度が広がる。
【0017】
前記車体フレームの第一取付部にエンジン駆動ユニットが装着されると第二取付ユニットにはカウンターウェイトが装着され、前記第一取付部に電動駆動ユニットが装着されると、前記第二取付部にはバッテリーが装着されるようになっていてもよい。
これにより、油圧装置の駆動源としてエンジン駆動ユニットと電動駆動ユニットの換装が実現でき、エンジン駆動によるホイール式走行装置とクローラ式走行装置の使い分けと、電動駆動よるホイール式走行装置とクローラ式走行装置の使い分けが実現でき、車両コストを更に削減することができる。
よって、使用環境として電源供給設備がない作業現場、外気温が40度を超える高温環境下、外気温が0度以下となる低温環境下においては、エンジン駆動ユニットを有し、走行面の状態に応じてホイール式又はクローラ式走行装置を備えた高所作業車を用いることができる。また、排気ガスの排出ができない室内作業場や騒音が規制される街中の使用や夜間作業現場においては、電動駆動ユニットを有し走行面の状態に応じてホイール式又はクローラ式走行装置を備えた高所作業車を用いることができる。このように同一の高所作業車を用いて走行面の状態を含む使用環境に応じた車両のバリエーションが増えるので、使い勝手が良く車両コストの削減と稼働効率の向上が見込める。
【0018】
前記昇降用ブームの先端部と前記バスケットとの間には、ブーム先端ブロックにレベリングブラケットが回動可能に連結され、これらを連結するレベリングシリンダにより前記バスケットの水平姿勢を維持する先端結合機構と、前記先端結合機構に加えて前記レベリングブラケットに回動可能に連結する一対のジブブームと一対のジブリンクを介して前記バスケットと接続され、前記ジブブームと前記ジブリンクを連結するジブシリンダにより前記ジブブームを起伏可能な先端ジブ結合機構のいずれかが換装可能に組み付けられていてもよい。
これにより、作業空間となる周囲の環境に障害物がない場合には、昇降用ブームの先端部とバスケットとの間に先端結合機構を接続して高所作業を行うことができる。また、作業空間となる周囲の環境に障害物がある場合やバスケット位置の微調整が必要な場合には、先端ジブ結合機構を接続して高所作業を行うことができる。これにより、バスケットの障害物に対する乗り越えと回り込みが可能となるうえに、高所でバスケット位置の微調整が可能となる。よって、同一の高所作業車を用いて使用環境に応じた車両のバリエーションやバスケットの高さ位置の操作性が向上するので、使い勝手が良く車両コストの削減と稼働効率の向上が見込める。
【発明の効果】
【0019】
走行面の状態を含む使用環境に応じて走行用シャーシに対してホイール式走行装置とクローラ式走行装置を換装可能であり、車両コストを削減すると共に稼働効率を高め、しかもエンジン駆動又は電動駆動に応じて走行装置を自由に換装可能な高所作業車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ホイール式走行装置を備えた高所作業車の正面図、平面図、左側面図である。
【
図2】クローラ式走行装置を備えた高所作業車の正面図、平面図、左側面図である。
【
図3】
参考例に係るホイール式走行装置の斜視説明図である。
【
図4】
図3のホイール式走行装置の分解状態の斜視説明図である。
【
図5】
図3のホイール式走行装置の組付状態の斜視説明図である。
【
図6】
図3の前方アクスルの正面図及び車輪部分の垂直断面図並びに前方アクスルの平面図及び車輪部分の水扁断面図である。
【
図7】
参考例に係るクローラ式走行装置の斜視説明図である。
【
図8】
図7のクローラ式走行装置の分解状態の斜視説明図である。
【
図9】
図7のクローラ式走行装置の組付状態の斜視説明図である。
【
図10】第
一実施例に係るホイール式走行装置の斜視説明図である。
【
図11】
図10のホイール式走行装置の分解状態の斜視説明図である。
【
図12】
図10のホイール式走行装置の組付状態の斜視説明図である。
【
図13】第
一実施例に係るクローラ式走行装置の斜視説明図である。
【
図14】
図13のクローラ式走行装置の分解状態の斜視説明図である。
【
図15】
図13のクローラ式走行装置の組付状態の斜視説明図である。
【
図16】車体フレームに対するエンジン駆動ユニットと電動駆動ユニットの換装例を示す平面レイアウト図である。
【
図17】車体フレームから揺動アスクルシリンダへ供給される油圧回路の構成例を示す説明図である。
【
図18】第
二実施例に係る昇降用ブームと前記バスケットとの間に換装される先端結合機構及び先端ジブ結合機構の説明図である。
【
図19】先端第一結合部と先端第二結合部の実施態様を示す説明図である。
【
図20】先端ジブ結合機構を備えたホイール式高所作業車の正面図、平面図、左側面図である。
【
図21】先端ジブ結合機構を備えたクローラ式高所作業車の正面図、平面図、左側面図である。
【
図22】エンジン駆動ユニットと電動駆動ユニットを換装、ホイール式走行装置とクローラ式走行装置の換装及び、先端結合機構及び先端ジブ結合機構の換装を示す高所作業車のバリエーションを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、高所作業車の概略構成について
図1(a)~(c)及び
図2(a)~(c)を参照して説明する。
図1(a)(b)に示すように、高所作業車1は、昇降用ブーム先端に設けられたバスケット2に作業者を収容して走行動作、昇降動作及び旋回動作可能な作業車である。車体フレーム3は、後述するように駆動源や駆動源により駆動される油圧ポンプ11aやコントロールバルブ11bを含む油圧装置11(
図16参照)を内蔵している。
図1(a)(c)に示すように、車体フレーム3は走行装置4上に旋回可能に搭載されている。走行装置4はホイール式走行装置4Aである。ホイール式走行装置4Aは、走行用シャーシ4aの長手方向前方に配置された前方アクスル4bの両端部及び長手方向後方に配置された後方アクスル4cの両端部に車輪4dが各々回転可能に支持されている。また、
図2(a)(c)に示す走行装置4はクローラ式走行装置4Bである。クローラ式走行装置4Bは走行用シャーシ4aの両側面にクローラ4tが架設された駆動輪(スプロケットホイール)4u及び従動輪4vを両端部に支持するトラックフレーム4wが連結アーム4xを介して連結されている。
【0022】
車体フレーム3上には、昇降装置5が搭載されている。昇降装置5は油圧装置(
図16参照)より油圧を供給されて昇降用ブームを昇降させ、ブーム先端に支持されたバスケット2を所望の高さに移動させる。例えば
図1(a)及び
図2(a)に示すように、昇降装置5には、起伏可能な第一ブーム5a及び第一ブーム5aに対して伸縮可能な第二ブーム5bが同心状に配置されている。第一ブーム5aには昇降用シリンダ5c(
図16参照)が連係しており、第一ブーム5aが回転軸3aを中心に起伏動作を行う。
【0023】
図1(a)(b)及び
図2(a)(b)に示すように、第二ブーム5bの先端には、バスケット2がリンク機構及び回動軸5dを介して連係している。第一ブーム5aが起伏動作したり第二ブーム5bが第一ブーム5aに対して伸縮したりしても、バスケット2が回動軸5dを中心に相対回転して水平姿勢を保持するように組み付けられている。バスケット2内の作業者は、昇降用シリンダ5cを作動させて第一ブーム5aが回転軸3aを中心とする起伏動作することによりバスケット2を昇降させることができる。また、図示しない伸縮用シリンダを作動させて第一ブーム5aに対して第二ブーム5bを伸縮させることによりバスケット2の更なる昇降が可能となっている。これにより、作業者がバスケット2を所望の高さに移動させることができる。尚、第一ブーム5aと第二ブーム5bが連結部を介して折りたたまれる屈折タイプの昇降装置5では、第一ブーム5aの起伏動作と第二ブーム5bの起伏動作を各々シリンダ駆動によって行ってもよい。また、本実施例では、第一ブーム5aに対して第二ブーム5bが伸縮する2段伸縮を採用しているが、3段以上の伸縮或いは屈折するブームを備えていてもよい。
【0024】
図1(b)及び
図2(b)に示すように、バスケット2は、作業者を支持する床面2aと床面2aを囲むガードフレーム2bを備える。バスケット2には、作業車の各動作部に指令を送出する操作部2c(操作ハンドル、操作スイッチ、操作レバー、操作パネルや表示装置など)が備えられている。昇降装置5は車体フレーム3に搭載されている。本実施例では昇降装置5は車体フレーム3の幅方向(進退方向と直交する方向)の中央部に配置されているが、中央部からいずれか一方側に偏った位置に配置されていてもよい。また、車体フレーム3の前端部(バスケット2と反対側端部)にはメインカウンタウェイト6が設けられている。メインカウンタウェイト6は、バスケット2や昇降装置5などの車両に作用する転倒側質量に対して安定側質量を提供している。
【0025】
次に、車体フレーム3の内部構造について
図16を参照して説明する。
図16左半図は、油圧装置11の駆動源としてエンジン駆動ユニット7を用いた車体フレーム3の構成例を示す。尚、
図16において、車体フレーム3に搭載されている昇降装置5の第一ブーム5a及び第二ブーム5bやバスケット2の表示は省略されている。
図16左半図に示すように、車体フレーム3には、エンジン駆動ユニット7を配置した第一取付部8(
図16破線で囲まれた部分)と、カウンターウェイト9を配置した第二取付部10(
図16破線で囲まれた部分)が昇降装置5(昇降用シリンダ5a)を挟んで両側に配置されている。エンジン駆動ユニット7には、エンジン7a、ラジエータ7b及び燃料タンク7cを含む。エンジン7aには、図示しない燃焼室に接続する吸気管7d及び排気管7eが各々設けられている。
【0026】
また、
図16左半図に示すように、車体フレーム3には、共用ユニットとして油圧装置11が設けられている。油圧装置11は、作動油を圧送りする油圧ポンプ11a、作動油を装置各部へ送出するコントロールバルブ11b、車体フレーム3を旋回動作させる旋回モータ11c、作動油を貯留する作動油タンク11dが含まれている。共用ユニットとしては油圧装置11の他に電装装置12が含まれる。電装装置12は、車両に備えた各動作部への電源供給、動作制御、各種スイッチなどの電装部品が配線用の端子台と共に設けられている。
【0027】
図16の右半図は、油圧装置11の駆動源として電動駆動ユニット13を用いた車体フレーム3の構成例を示す。車体フレーム3には、電動駆動ユニット13を配置した第一取付部8(
図16に示す破線で囲まれた部分)と、バッテリー14を配置した第二取付部10(
図16に示す破線で囲まれた部分)が昇降装置5(昇降用シリンダ5a)を挟んで両側に配置されている。電動駆動ユニット13には、電動モータ13a、モータコントローラ13bなどが含まれている。
【0028】
車体フレーム3の第一取付部8には、エンジン駆動ユニット7に替えて電動駆動ユニット13を換装可能となっている。また、第二取付部10には、カウンターウェイト9に替えて重量バランスが均衡したバッテリー14を換装可能となっている。このように交換されるエンジン駆動ユニット7及び電動駆動ユニット13の重量を極力減らすことで、換装作業が容易に行える。尚、本実施例では第一取付部8と第二取付部10は、車体フレーム3上に昇降装置5(昇降用シリンダ5c)の両側に配置されているが、昇降装置5のいずれか一方側に第一取付部8と第二取付部10を配置してもよい。
【0029】
また、
図16において、第一取付部8にエンジン駆動ユニット7が装着されると第二取付部10にはカウンターウェイト9が装着され、第一取付部8に電動駆動ユニット13が装着されると、第二取付部10にはバッテリー14が装着される。これにより、以下のような使用環境下においては、電動駆動ユニット13に替えてエンジン駆動ユニット7を備えた高所作業車1を用いることができる。例えば、電源供給設備がない作業現場、外気温が40度を超える高温環境下(電気部品がオーバーヒートを起こし易くなり冷却時間が必要となり工期が長くなる)、外気温が0度以下となる低温環境下(バッテリーの消耗が激しくなり稼働時間が短くなる)においては、エンジン駆動ユニット7が好適に用いられる。
また、排気ガスの排出ができない室内作業場や騒音が規制される街中の使用や夜間作業現場においては、エンジン駆動ユニット7に替えて電動駆動ユニット13を備えた高所作業車1を用いることができる。
【0030】
このように、同一の高所作業車1を使用して、使用環境に応じて、駆動源となるエンジン駆動ユニット7と電動駆動ユニット13を換装して使い分けることができ、車両コストを削減することができる。尚、エンジン駆動ユニット7と電動駆動ユニット13は車体フレーム3に固定されており、必ずしも換装可能になっていなくてもよい。
また、第二取付部10においては重量バランスが均衡したカウンターウェイト9とバッテリー14を換装することができるので、第一取付部8においてユニットの換装作業の前後で車両の重心位置が不変となるようにバランス取りが可能となる。尚、カウンターウェイト9とバッテリー14は車体フレーム3に固定されており、必ずしも換装可能になっていなくてもよい。また、車体フレーム3に備えた油圧装置11は共用されるので、駆動ユニット交換に際して油圧ポンプ11aに接続する油圧配管の変更はないため、換装作業を効率よく行える。
【0031】
[
参考例]
次にホイール式走行装置4Aの一例について
図3乃至
図6を参照して説明する。
図3において、走行用シャーシ4aの上面には、旋回用ベアリング4eが設けられている。車体フレーム3(
図1(a)参照)は、旋回用ベアリング4eを介して旋回可能に走行用シャーシ4aに搭載される。走行用シャーシ4aの長手方向前端部及び長手方向後端部には取付ベース4f1,4f2が各々固定されている。取付ベース4f1,4f2の中央部には揺動軸4g1,4g2(図示せず)が各々設けられている。この揺動軸4g1を中心として前方アクスル4bが揺動可能に支持され、揺動軸4g2を中心として後方アクスル4cが揺動可能に支持されている。尚、取付ベース4f1,4f2は省略されていてもよく、この場合、揺動軸4g1,4g2は走行用シャーシ4aに設けられていてもよい。
【0032】
前方アクスル4bは、前方揺動アクスル4b1の両端部に設けられた第一結合部15において前方結合アクスル4b2が各々着脱可能に結合されている。前方結合アクスル4b2には車輪4dが回転可能に支持されている。車輪4dのハブ4d1には走行用モータMが連結(内蔵)されている。後方アクスル4cは、後方揺動アクスル4c1の両端部に設けられた第一結合部15において後方結合アクスル4c2が各々着脱可能に結合されている。後方結合アクスル4c2には車輪4dが回転可能に支持されている。車輪4dのハブ4d1には走行用モータMが連結されている。
【0033】
また、
図3に示すように、取付ベース4f1,4f2の左右両側には一対の揺動シリンダ4h1,4h2が保持されている(取付ベース4h2側の図示は省略されている)。揺動シリンダ4h1,4h2の各シリンダロッド4iは前方揺動アクスル4b1,後方揺動アクスル4c1の両端部に各々連結されている。尚、取付ベース4f1,4f2が省略されている場合には、揺動シリンダ4h1,4h2は走行用シャーシ4aの両側に設けられていてもよい。
図17に示すように、一対の揺動シリンダ4h1,4h2には、車体フレーム3内に設けられた油圧装置11より作動油が供給されてシリンダロッド4iが各々伸縮し、油圧回路に設けられたロックバルブ11eの開閉制御によって作動油の供給が停止される。
【0034】
これにより、
図17に示すようにホイール式走行装置4Aが凹凸路面を走行する場合でも、揺動シリンダ4h1,4h2の各シリンダロッド4iが凹凸面に応じて伸縮して前方揺動アクスル4b1,後方揺動アクスル4c1が揺動軸4g1,4g2を中心に各々揺動するので、4輪接地状態を維持することができ、安定した走行動作を維持することができる。また、昇降装置5の昇降動作時などの作業時には、ロックバルブ11eを閉じて揺動シリンダ4h1,4h2への作動油の供給を止めることにより、昇降動作などの作業により生じた負荷(モーメント)を接地した4輪で受け止めて安定した姿勢で作業を行うことができる。
【0035】
前方アクスル4bの両端に設けられた車輪4dを操舵する構成例について
図6(a)(b)を参照して説明する。
図6(a)(b)に示すように、車輪4dのハブ4d1には走行用モータMが連結されている。ハブ4d1から突設されたフランジ状のナックル4d2が前方結合アスクル4b2のフランジ部4b21と重ね合わせて鉛直方向に貫通するピン4d3を中心に回動可能に連結されている。左右のナックル4d2には、ナックルアーム4mが各々突設されている(
図6(b)参照)。前方揺動アクスル4b1には、一対のステアリングシリンダ4jが左右両側に保持されている。一対のステアリングシリンダ4jのシリンダロッド4kは、ナックルアーム4mに各々接続されている。また、前方揺動アスクル4b1と並んで配置されたステアリングロッド4nの両端部は、ナックルアーム4mに各々接続されている。
【0036】
これにより、バスケット2内に設けたステアリングハンドルの操作により車体フレーム3内の油圧装置11から一対のステアリングシリンダ4jに作動油が供給されて、一方のシリンダロッド4kが伸び他方のシリンダロッド4kが縮む。これにより、ステアリングロッド4nが左右いずれかの方向に移動することで、ナックルアーム4mを介して左右のナックル4d2がピン4d3を中心に回動し、左右の前方車輪4dの向きを変更するようになっている。
【0037】
尚、本参考例では4輪箇所の車輪4dのハブ4d1に走行用モータMが連結されて4輪駆動となるように構成されている。4輪駆動でなくとも、走行用モータMは前輪側の車輪4dのみに設けてもよいし、後輪側の車輪4dのみに設けてもよい。また、走行用モータMは油圧装置11から作動油を供給される油圧モータであってもよいし、バッテリー14から電力供給されて駆動する電動モータであってもよい。
【0038】
図4は、走行用シャーシ4aの長手方向前端部に設けられた前方揺動アスクル4b1と前方結合アスクル4b2を第一結合部15で分離した状態並びに走行用シャーシ4aの長手方向後端部に設けられた後方揺動アスクル4c1と後方結合アクスル4c2を第一結合部15で分離した状態を示す。
図5は、走行用シャーシ4aの長手方向前端部に設けられた前方揺動アスクル4b1と前方結合アスクル4b2を第一結合部15で結合した状態並びに走行用シャーシ4aの長手方向後端部に設けられた後方揺動アスクル4c1と後方結合アクスル4c2を第一結合部15で結合した状態を示す。
【0039】
第一結合部15の結合構造は、以下に述べるように様々な態様が採用され得る。少なくとも対向面であるフランジ部どうしを重ね合わせる構造を有することが好ましい。例えば、フランジ部同士を重ね合わせてボルト孔にボルトをねじ嵌合させて締結してもよいし、対向するフランジ部にクレビスを設けてピンを締結して連結するようにしてもよい。また、これらの併用によって結合してもよい。また、フランジ部同士を重ね合わせてボルト孔にボルトをねじ嵌合すると共に対向面に設けられた係止部にフックを係止させて結合するようにしてもよい。更には、フランジ部同士を重ね合わせてボルト孔にボルトをねじ嵌合させると共に、対向面に設けられた鉤孔に鉤爪を挿入係止させて結合するようにしてもよい。
【0040】
次にクローラ式走行装置4Bの一例について
図7乃至
図9を参照して説明する。
図7において、走行用シャーシ4aの両側面には第二結合部16が各々設けられている。この第二結合部16を用いてホイール式走行装置4Aからクローラ式走行装置4Bへの換装が行われる。作業現場などの不整地では、前方アクスル4b及び後方アクスル4cの中途部に設けられた第一結合部15において車輪4dを保持する前方結合アクスル4b2及び車輪4dを保持する後方結合アクスル4c2が取り外される。尚、必要に応じてステアリングシリンダ4j及びステアリングロッド4nを取り外してもよい。そして、走行用シャーシ4aの両側面に設けられた第二結合部16にトラックフレーム4wが各々結合されたクローラ走行装置4Bに換装して作業が行われる。具体的には、クローラ式走行装置4Bはトラックフレーム4wから延設された連結アーム4xを用いて第二結合部16において走行シャーシ4aと結合される。第二結合部16の結合構造は、第一結合部15の結合構造と同様に少なくとも対向面であるフランジ部どうしを重ね合わせる構造を有しており、具体的な説明を省略する。
【0041】
このように、クローラ走行装置4Bの前方アクスル4b及び後方アクスル4cを各々分割して車輪4dを着脱することで、前方アクスル4b及び後方アクスル4cとクローラ4tが干渉するおそれがなくなり、走行用シャーシ4aの長手方向に沿って広い接地面積を有するクローラ式走行装置4Bを換装することができる。
【0042】
図8に示すように、クローラ式走行装置4Bは、トラックフレーム4wの両端部に駆動輪4u及び従動輪4vが回転可能に支持されている。駆動輪4uと従動輪4vとの間にはクローラ4tが架設されている。トラックフレーム4wは、複数のフレームどうしがアジャストシリンダ4yによって連結されて伸縮可能に嵌合している。アジャストシリンダ4yを作動することで駆動輪4u及び従動輪4vの間隔を調整可能となっている。また、トラックフレーム4wの長手方向に沿って複数のトラックローラ4zがクローラ4tの内周面に当接して従動回転しながら支持するようになっている。これにより、クローラ4tが経年劣化によりリンク伸びが発生してたるみが生じても、アジャストシリンダ4yによってトラックフレーム4wに支持された駆動輪4u及び従動輪4vの間隔を調整することでクローラ4tのテンションを一定に保つことができ、駆動輪4uからクローラ4tが外れることがなくなる。
【0043】
尚、本参考例では駆動輪4uのハブに走行用モータMが同軸配置されている。走行用モータMは、油圧装置11から作動油を供給される油圧モータであってもよいし、バッテリー14から電力供給されて駆動する電動モータであってもよい。
このように、ホイール式走行装置4Aの車輪4dやクローラ式走行装置4Bの駆動輪4uのハブに走行用モータMが連結されていると、駆動伝達機構が簡略化されるため、走行用シャーシ4aに対してホイール式走行装置4Aとクローラ式走行装置4Bを換装する場合の換装レイアウトの自由度が広がる。
【0044】
図8は、走行用シャーシ4aの長手方向両側面部に設けた第二結合部16において、連結アーム4xを分離してクローラ式走行装置4Bを取り外した状態を示す。
図9は、走行用シャーシ4aの長手方向両側面部に設けた第二結合部16において、連結アーム4xを重ね合わせてクローラ式走行装置4Bを結合した状態を示す。舗装路のように整地された場所では、第二結合部16において連結アーム4xの結合を解除してクローラ装置を分離し、走行用シャーシ4aに配置された前方揺動アクスル4b1及び後方揺動アクスル4c1の両端部(前方アクスル4b及び後方アクスル4cの中途部)に設けられた第一結合部15に、車輪4dを保持する前方結合アクスル4b2及び後方結合アクスル4c2を各々結合させて(必要に応じて取り外されたステアリングシリンダ4j及びステアリングロッド4nを装着して)ホイール走行装置4Aに換装して作業を行うことができる。
【0045】
[第
一実施例]
次にホイール式走行装置4A及びクローラ式走行装置4Bの
一例について説明する。先ず、ホイール式走行装置4Aについて
図10乃至
図12を参照して説明する。尚、
前述した参考例と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとし、以下では、異なる構成を中心に説明するものとする。
【0046】
図10において、走行用シャーシ4aの上面には、旋回用ベアリング4eが設けられている。走行用シャーシ4aの長手方向に対向する前端面及び後端面に結合部(フランジ部)17が各々設けられている。各結合部17においては、取付ベース4f1と取付ベース4f2が着脱可能に各々組み付けられている。取付ベース4f1,4f2の中央部には揺動軸4g1,4g2(図示せず)が各々設けられている。尚、取付ベース4f1,4f2は省略されていてもよく、この場合、揺動軸4g1,4g2は走行用シャーシ4aに設けられていてもよい。揺動軸4g1,4g2を中心として、前方揺動アクスル4b1には車輪4dが第一実施例と同様な機構により回転及び操舵可能に支持されている(
図6(a)(b)参照)。後方アクスル4cは、後方揺動アクスル4c1の両端部に車輪4dが回転可能に支持されている。各車輪4dのハブ4d1には、第一実施例と同様に走行用モータMが連結されている。
【0047】
図11において、取付ベース4f1,4f2には一対の揺動シリンダ4h1,4h2が保持されている(取付ベース4h2側の図示は省略されている)。揺動シリンダ4h1,4h2の各シリンダロッド4iは前方揺動アクスル4b1,後方揺動アクスル4c1の両側端部に各々連結されている。尚、取付ベース4f1,4f2が省略されている場合には、揺動シリンダ4h1,4h2は走行用シャーシ4aの両側に設けられていてもよい。
図17に示すように、一対の揺動シリンダ4h1,4h2には、車体フレーム3内に設けられた油圧装置11より作動油が供給されてシリンダロッド4iが各々伸縮し、油圧回路に設けられたロックバルブ11eの開閉制御によって作動油の供給が停止される。
【0048】
これにより、
図17に示すようにホイール式走行装置4Aが凹凸路面を走行する場合でも、揺動シリンダ4h1,4h2の各シリンダロッド4iが凹凸面に応じて伸縮して前方揺動アクスル4b1,後方揺動アクスル4c1が揺動軸4g1,4g2を中心に各々揺動するので、4輪接地状態を維持することができ、安定した走行動作を維持することができる。また、昇降装置5の昇降動作時などの作業時には、ロックバルブ11eを閉じて揺動シリンダ4h1,4h2への作動油の供給を止めることにより、昇降動作などの作業により生じた負荷(モーメント)を接地した4輪で受け止めて安定した姿勢で作業を行うことができる。
【0049】
尚、バスケット2内に設けたステアリングハンドルの操作により車体フレーム3内の油圧装置11から一対のステアリングシリンダ4jに作動油が供給されて一方のシリンダロッド4kが伸び他方のシリンダロッド4kが縮んでステアリングロッド4nが左右いずれかの方向に移動することで、左右のナックル4d2がピン4d3を中心に回動し、左右の前方車輪4dの向きを変える構成は同様である(
図6(a)(b)参照)。
【0050】
また、本実施例では4輪存在する車輪4dの内部に走行用モータMが連結されているが、走行用モータMは前輪側の車輪4dのみに設けてもよいし、後輪側の車輪4dのみに設けてもよい。また、走行用モータMは油圧装置11から作動油を供給される油圧モータであってもよいし、バッテリー14から電力供給されて駆動する電動モータであってもよい。
【0051】
図11は、走行用シャーシ4aの長手方向前端面に設けられた結合部(フランジ部)17において取付ベース4f1を分離し、前方揺動アスクル4b1及び前方車輪4dを分離した状態並びに走行用シャーシ4aの長手方向後端面に設けられた結合部(フランジ部)17において取付ベース4f2を分離し、後方揺動アスクル4c1及び後方車輪4dを分離した状態を示す。
図12は、走行用シャーシ4aの長手方向前端面に設けられた結合部(結合フランジ)17において取付ベース4f1を結合し、前方揺動アスクル4b1及び前方車輪4dを組み付けた状態並びに走行用シャーシ4aの長手方向後端面に設けられた結合部(結合フランジ)17において取付ベース4f2を結合し、後方揺動アスクル4c1及び後方車輪4dを組み付けた状態を示す。
【0052】
上述した結合部(結合フランジ)17の結合構造は様々な態様が採用され得る。例えば、フランジ面同士を重ね合わせてボルト孔にボルトをねじ嵌合させて締結してもよいし、対向するフランジ面にクレビスを設けてピンを締結して連結するようにしてもよい。また、これらの併用によって結合してもよい。また、フランジ面同士を重ね合わせてボルト孔にボルトをねじ嵌合すると共に対向面に設けられた係止部にフックを係止させて結合するようにしてもよい。更には、フランジ面同士を重ね合わせてボルト孔にボルトをねじ嵌合させると共に、対向面に設けられた鉤孔に鉤爪を挿入係止させて結合するようにしてもよい。
【0053】
次にクローラ式走行装置4Bの
一例について
図13乃至
図15を参照して説明する。
図13において、走行用シャーシ4aの長手方向に対向する前端面及び後端面に設けられた同一の結合部(フランジ部)17を用いてクローラ式走行装置4Bが着脱可能に組み付けられている。クローラ式走行装置4Bはトラックフレーム4wの側面部を結合部17に重ね合わせて走行シャーシ4aと結合される。結合部17の結合構造は、ホイール式と同様であるので説明を援用するものとする。
【0054】
図14に示すように、クローラ式走行装置4Bは、トラックフレーム4wの両端部に駆動輪4u及び従動輪4vが回転可能に支持され、駆動輪4uと従動輪4vとの間にはクローラ4tが架設されている構造は同様である。また、トラックフレーム4wは、複数のフレームどうしがアジャストシリンダ4yによって連結されて伸縮可能に嵌合し、アジャストシリンダ4yを作動することで駆動輪4u及び従動輪4vの間隔を調整可能となっている点も同様である。
尚、本実施例では駆動輪4uに走行用モータMが同軸配置されている。走行用モータMは油圧装置11から作動油を供給される油圧モータであってもよいし、バッテリー14から電力供給されて駆動する電動モータであってもよい。
【0055】
図14は、走行用シャーシ4aの長手方向に対向する前端面及び後端面に設けられた結合部17において、トラックフレーム4wを分離してクローラ式走行装置4Bを取り外した状態を示す。
図15は、走行用シャーシ4aの長手方向に対向する前端面及び後端面に設けた結合部17において、トラックフレーム4wの側面部を重ね合わせてクローラ式走行装置4Bを結合した状態を示す。
【0056】
以上説明したように、舗装路のように整地された場所ではホイール走行装置4Aを用い、作業現場などの不整地ではクローラ走行装置4Bというように、同一の走行用シャーシ4aを共用して使用環境に応じてホイール式走行装置4Aとクローラ式走行装置4Bを換装することができ、車両コストを削減し高所作業車1の稼働効率を高めることができる。特に走行用シャーシ4aに設けられた同一の結合部17に対してホイール走行装置4Aとクローラ走行装置4Bを換装できるので、換装作業を簡略化することができる。
【0057】
〔第二実施例〕
高所作業車1の使用環境によっては、障害物の有無やバスケット2の位置の微調整を行いたい場合がある。この場合にも、走行装置4がホイール式かクローラ式によって、或いは駆動源がエンジン駆動か電動駆動によって、昇降装置5とバスケット2との間に先端結合機構20又は先端ジブ結合機構21のいずれかを換装して使用することができると、ユーザーの選択肢の幅が広がり、装置コストも削減することができる。
尚、以下の説明では、車体フレーム3、走行装置4、昇降装置5などの構成が参考例、第一実施例と共通である部分は、同一番号を付して説明を援用するものとする。
【0058】
図18(a)は昇降装置5とバスケット2との間に換装される先端結合機構20の説明図である。第一ブーム5aから伸縮する第二ブーム5bとブーム先端ブロック22の一端側は、先端第一結合部23において着脱可能に組み付けられている。ブーム先端ブロック22の他端側は回動軸5dによりレベリングブラケット24と回動可能に連結している。ブーム先端ブロック22とレベリングブラケット24との間にはレベリングシリンダ25が連結されている。レベリングシリンダ25は、昇降装置5の動作に応じてレベリングブラケット24より先端側に配置されるバスケット2を含む先端部分の水平姿勢を維持するものである。また、ブーム先端ブロック22にはコンロトールバルブ22aが設けられている。コントロールバルブ22aは、レベリングシリンダ25などのアクチュエータにバルブを開閉して油圧を供給する。レベリングブラケット24はバスケット支持ブラケット26と先端第二結合部31において着脱可能に組み付けられている。バスケット支持ブラケット26は、バスケット2を左右に旋回させるバスケット旋回アクチュエータ26aを保持している。バスケット2の周囲に障害物がない場合には、昇降装置5とバスケット2との間に先端結合機構20を換装されて、より簡素な構成の高所作業車1を使用することができる。
【0059】
図18(b)は、昇降装置5とバスケット2との間に換装される先端ジブ結合機構21の説明図である。
図18(a)と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。第一ブーム5aから伸縮する第二ブーム5bとブーム先端ブロック22の一端側は、先端第一結合部23において着脱可能に組み付けられている。ブーム先端ブロック22の他端側は回動軸5dによりレベリングブラケット24と回動可能に連結している。ブーム先端ブロック22とレベリングブラケット24との間にはレベリングシリンダ25が連結されている。また、ブーム先端ブロック22にはコンロトールバルブ22aが設けられている。レベリングブラケット24には、一対のジブブーム27と一対のジブリンク28の一端が回動可能に連結され、一対のジブブーム27と一対のジブリンク28の他端は連結リンク29に回動可能に各々連結されている。一対のジブブーム27と一対のジブリンク28はジブシリンダ30により連結されている。ジブシリンダ30を作動させることにより一対のジブブーム27を上下方向に起伏させることができる。また、レベリングシリンダ25は、昇降装置5の動作に応じてレベリングブラケット24より先端側に配置される一対のジブブーム27やバスケット2を含む先端部分の水平姿勢を維持する。連結リンク29とバスケット支持ブラケット26は先端第二結合部31において着脱可能に組み付けられている。バスケット支持ブラケット26は、バスケット2を左右に旋回させるバスケット旋回アクチュエータ26aを保持している。バスケット2の周囲に障害物が存在し或いはバスケット位置の微調整を必要とする場合には、昇降装置5とバスケット2との間に先端ジブ結合機構21を換装して、より操作性の高い高所作業車1を使用することができる。
【0060】
ここで先端第一結合部23の構成例を
図19(a)(b)に、先端第二結合部31の構成例を
図19(c)(d)に示す。
先端第一結合部23は、
図19(a)に示すように、第二ブーム5bの先端部とブーム先端ブロック22が、連結ピン23aにより連結固定されていてもよいし、或いは
図19(b)に示すように、第二ブーム5bの先端部とブーム先端ブロック22が、複数のボルト23bにより連結固定されていてもよい。
【0061】
また先端第二結合部31は、
図19(c)に示すように、レベリングブラケット24とバスケット支持ブラケット26が、複数のボルト31aにより連結固定されていてもよいし、或いは
図19(d)に示すように、レベリングブラケット24とバスケット支持ブラケット26が連結ピン31bにより連結固定されていてもよい。尚、先端第一結合部23及び先端第二結合部31の構成例として固定ピン及びボルトを例示したが、これら以外の連結構造(凹凸嵌合等)により着脱するようにしてもよい。
尚、上記実施例は、先端第一結合部23の構成を援用して部品を付加する形態で先端第二結合部31の構成を説明したが、両者は共通部品を用いてもよいし、異なる部品を用いてもよい。
【0062】
図20(a)~(c)は、ホイール式走行装置4Aに先端ジブ結合機構21を組み合わせた高所作業車1の実施態様を示している。
図1(a)~(c)に示す高所作業車1と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。尚、油圧装置の駆動源としてエンジン駆動ユニット7と電動駆動ユニット13のいずれを採用してもよい(
図16参照)。ホイール式走行装置4Aを採用した走行装置4上には、車体フレーム3が旋回可能に搭載されている。車体フレーム3上には昇降装置5が搭載され、昇降装置5には起伏可能な第一ブーム5a及び第一ブーム5aに対して伸縮可能な第二ブーム5bが同心状に配置されている。昇降装置5とバスケット2との間に先端ジブ結合機構21が換装されている(
図20(a)(b)参照)。舗装路のように整地された場所では、ホイール式走行装置4Aが好適に用いられる。また、バスケット2の周囲に障害物が存在し或いはバスケット位置の微調整が必要な場合には、先端ジブ結合機構21が好適に用いられる。第一ブーム5aを起伏動作し第二ブーム5bを第一ブーム5aに対して伸縮させることでバスケット2を昇降させることができるほかに、ジブシリンダ30を作動させることで、ジブブーム27及びジブリンク28を起伏させてバスケット2を昇降させることができ、また、レベリングシリンダ25を作動させることでレベリングブラケット24より先端側のバスケット2を含む部位の水平姿勢を維持することができる。これによりバスケット2の障害物に対する乗り越えと回り込みが容易に行えるうえに、高所でバスケット位置の微調整が可能となる。
【0063】
また、
図21(a)~(c)は、クローラ式走行装置4Bに先端ジブ結合機構21を組み合わせた高所作業車1の実施態様を示している。
図2(a)~(c)に示す高所作業車1と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。尚、油圧装置の駆動源としてエンジン駆動ユニット7と電動駆動ユニット13のいずれを採用してもよい(
図16参照)。クローラ式走行装置4Bを採用した走行装置4上には、車体フレーム3が旋回可能に搭載されている。車体フレーム3上には昇降装置5が搭載され、昇降装置5には起伏可能な第一ブーム5a及び第一ブーム5aに対して伸縮可能な第二ブーム5bが同心状に配置されている。昇降装置5とバスケット2との間に先端ジブ結合機構21が換装されている(
図21(a)(b)参照)。作業現場などの不整地では、クローラ式走行装置4Bが好適に用いられる。また、バスケット2の周囲に障害物が存在し或いはバスケット位置の微調整が必要な場合には、先端ジブ結合機構21が好適に用いられる。この場合もバスケット2の障害物に対する乗り越えと回り込みが容易に行えるうえに、高所でバスケット位置の微調整が可能となる。
【0064】
図22は、車体フレーム3内の駆動源をエンジン駆動ユニット7と電動駆動ユニット13とで換装した場合と、走行装置4をホイール式走行装置4Aとクローラ式走行装置4Bとで換装した場合、更には先端結合機構20と先端ジブ結合機構21とで換装した場合の高所作業車1の使用態様をまとめた説明図である。尚、
図22において、先端結合機構20を備えた場合を「JIB無し」と表記し、先端ジブ結合機構21を備えた場合を「JIB装備」と表記した。
使用環境として電源供給設備がない作業現場、外気温が40度を超える高温環境下、外気温が0度以下となる低温環境下においては、エンジン駆動ユニット7を有し、走行面の相違に応じてホイール式走行装置4A又はクローラ式走行装置4Bを備えた高所作業車1を用いることができる。また、排気ガスの排出ができない室内作業場や騒音が規制される街中の使用や夜間作業現場においては、電動駆動ユニット13を有し走行面の相違に応じてホイール式走行装置4A又はクローラ式走行装置4Bを備えた高所作業車1を用いることができる。
また、障害物の有無やバスケット2の位置の微調整を行いたい場合にも、走行装置4がホイール式かクローラ式によって、或いは駆動源がエンジン駆動か電動駆動によって、昇降装置5とバスケット2との間に先端結合機構20又は先端ジブ結合機構21のいずれかを換装した高所作業車1を使用することができる。
このように同一の高所作業車1を用いて走行面の状態を含む使用環境に応じた車両のバリエーションが増えるので、使い勝手が良く、車両コストの削減と稼働効率の向上が見込める。
【符号の説明】
【0065】
1 高所作業車 2 バスケット 2a 床面 2b ガードフレーム 2c 操作部 3 車体フレーム 3a,5d 回転軸 4 走行装置 4A ホイール式走行装置 4B クローラ式走行装置 4a 走行用シャーシ 4b 前方アクスル 4b1 前方揺動アクスル 4b2 前方結合アクスル 4c 後方アスクル 4c1 後方揺動アクスル 4c2 後方結合アクスル 4d 車輪 4d1 ハブ 4d2 ナックル 4d3 ピン 4e 旋回用ベアリング 4f1,4f2 取付ベース 4g1,4g2 揺動軸 4h1,4h2 揺動シリンダ 4i,4k シリンダロッド 4j ステアリングシリンダ 4m ナックルアーム 4n ステアリングロッド 4t クローラ 4u 駆動輪 4v 従動輪 4w トラックフレーム 4x 連結アーム 4y アジャストシリンダ 4zトラックローラ5 昇降装置 5a 第一ブーム 5b 第二ブーム 5c 昇降用シリンダ 6 メインカウンタウェイト 7 エンジン駆動ユニット 7a エンジン 7b ラジエータ 7c 燃料タンク 8 第一取付部 9 カウンターウェイト 10 第二取付部 11 油圧装置 11a 油圧ポンプ 11b コントロールバルブ 11c 旋回モータ 11d 作動油タンク 11e ロックバルブ 12 電装装置 13 電動駆動ユニット 13a 電動モータ 13b モータコントローラ 14 バッテリー 15 第一結合部 16 第二結合部 17 結合部 M 走行用モータ 20 先端結合機構 21 先端ジブ結合機構 22 ブーム先端ブロック 22a コントロールバルブ 23 先端第一結合部 23a,31b 連結ピン 23b,31a ボルト 24 レベリングブラケット 25 レベリングシリンダ 26 バスケット支持ブラケット 26a バスケット旋回アクチュエータ 27 ジブブーム 28 ジブリンク 29 連結リンク 30 ジブシリンダ 31 先端第二結合部