(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】三次元画像の生成方法、三次元画像生成装置、ガイダンス装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/521 20170101AFI20241205BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20241205BHJP
【FI】
G06T7/521
G06T19/00 A
(21)【出願番号】P 2023190572
(22)【出願日】2023-11-08
(62)【分割の表示】P 2019183014の分割
【原出願日】2019-10-03
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519358416
【氏名又は名称】KYOTO’S 3D STUDIO株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519096806
【氏名又は名称】株式会社デンカリノテック
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】栖原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 和也
(72)【発明者】
【氏名】室川 正範
(72)【発明者】
【氏名】氏家 崇志
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/080914(WO,A1)
【文献】特開2006-214893(JP,A)
【文献】特開2012-141758(JP,A)
【文献】特開2018-181056(JP,A)
【文献】特開2010-170288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/521
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定することにより、前記構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを生成する点群データ生成工程と、
前記複数の点群データを処理することにより、前記構造物の三次元画像を生成する三次元画像生成工程と、
を含み、
前記点群データ生成工程において、前記構造物より高い位置に配置される前記測定装置間の間隔は、前記構造物より低い位置に配置される前記測定装置間の間隔よりも広くなるようにし、
前記測定装置は、3Dレーザスキャナであり、
前記点群データ生成工程において、前記構造物より高い位置に配置される前記3Dレーザスキャナは、レーザの照射間隔を、前記構造物より低い位置に配置される前記3Dレーザスキャナよりも粗くして、スキャニングを行い、前記点群データを生成する、三次元画像の生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、隣り合う前記部分を測定した2つの前記点群データにおいて、前記隣り合う2つの前記部分は、部分的に互いに重なっている三次元画像の生成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元画像の生成方法において、
前記三次元画像生成工程において、複数の前記測定装置により取得される前記点群データを結合する際に、前記重なっている部分の少なくとも一部を削除する、三次元画像の生成方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、少なくとも一部の前記点群データを生成するとき、前記測定装置の高さを前記構造物より高い位置に配置する、三次元画像の生成方法。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程は、天候が曇りのときに行う、三次元画像の生成方法。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程を行う時間帯を、前記構造物の部分毎に揃える、三次元画像の生成方法。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の三次元画像の生成方法において、
前記構造物は、文化財、寺社仏閣、世界遺産、産業遺産、近代化産業遺産、土木遺産、景勝地、地形、あるいは、今後後世に残す必要がある建造物および景勝地の少なくともいずれか一つを含む歴史的建造物および遺跡を含み、
前記三次元画像は、前記構造物の風合い、色合いを後世に伝えるためのものである、三次元画像の生成方法。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の三次元画像の生成方法により生成される、測定装置の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定することにより、前記構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを取得する点群データ取得手段と、
前記複数の点群データを処理することにより、前記構造物の三次元画像を生成する三次元画像生成手段と、を備え、
前記構造物より高い位置に配置される前記測定装置間の間隔は、前記構造物より低い位置に配置される前記測定装置間の間隔よりも広くなるようにし、
前記測定装置は、3Dレーザスキャナであり、
前記構造物より高い位置に配置される前記3Dレーザスキャナは、レーザの照射間隔を、前記構造物より低い位置に配置される前記3Dレーザスキャナよりも粗くして、スキャニングを行わせ、
前記点群データ取得手段は、前記3Dレーザスキャナが生成した前記点群データを取得する、三次元画像生成装置。
【請求項9】
コンピュータに、請求項
8に記載の三次元画像生成装置を実現させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の三次元画像の生成方法を実行するために、作業者に三次元画像の生成方法のガイダンスを提示する提示手段を備える、ガイダンス装置。
【請求項11】
コンピュータに、請求項
10に記載のガイダンス装置を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元画像の生成方法、三次元画像生成装置、ガイダンス装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築作業現場において、施工段階の出来型形状を把握するために、三次元スキャナを用いて建築現場の出来型表面の三次元データを点群データとして立体的に計測し、施工段階前に実際の出来型形状に応じた建築計画の変更を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載されたような建築現場で利用される三次元画像は、形状が把握できればよいが、例えば、文化財などの建造物を歴史の継承として後世に残すために三次元画像を生成するような場合においては、形状だけでなく、風合いや色合い、情景を実物により近づけて表現されることが望まれる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構造物の風合いや色合いを表現できる三次元画像の生成技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の各側面では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0007】
第一の側面は、三次元画像の生成方法に関する。
第一の側面に係る三次元画像の生成方法は、
測定装置の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定することにより、前記構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを生成する点群データ生成工程と、
前記複数の点群データを処理することにより、前記構造物の三次元画像を生成する三次元画像生成工程と、
を含み、
前記点群データ生成工程において、前記構造物より高い位置に配置される前記測定装置間の間隔は、前記構造物より低い位置に配置される前記測定装置間の間隔よりも広くなるようにし、
前記測定装置は、3Dレーザスキャナであり、
前記点群データ生成工程において、前記構造物より高い位置に配置される前記3Dレーザスキャナは、レーザの照射間隔を、前記構造物より低い位置に配置される前記3Dレーザスキャナよりも粗くして、スキャニングを行い、前記点群データを生成する。
【0008】
第二の側面は、三次元画像生成装置に関する。
第二の側面に係る三次元画像生成装置は、上記第一の側面の三次元画像の生成方法により生成される、測定装置の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定することにより、前記構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを取得する点群データ取得手段と、
前記複数の点群データを処理することにより、前記構造物の三次元画像を生成する三次元画像生成手段と、を有し、
前記構造物より高い位置に配置される前記測定装置間の間隔は、前記構造物より低い位置に配置される前記測定装置間の間隔よりも広くなるようにし、
前記測定装置は、3Dレーザスキャナであり、
前記構造物より高い位置に配置される前記3Dレーザスキャナは、レーザの照射間隔を、前記構造物より低い位置に配置される前記3Dレーザスキャナよりも粗くして、スキャニングを行わせ、
前記点群データ取得手段は、前記3Dレーザスキャナが生成した前記点群データを取得する。
【0009】
第三の側面は、ガイダンス装置に関する。
第三の側面に係るガイダンス装置は、上記第一の側面の三次元画像の生成方法を実行するために、作業者に三次元画像の生成方法のガイダンスを提示する提示手段を有する。
【0010】
なお、本発明の他の側面としては、上記第二および第三の側面の装置を実現させるための少なくとも1つのコンピュータに実行させるプログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
このコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに、各装置上で、その処理方法を実施させるコンピュータプログラムコードを含む。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0012】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、などでもよい。
【0013】
また、本発明の方法およびコンピュータプログラムには複数の手順を順番に記載しているが、その記載の順番は複数の手順を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の方法およびコンピュータプログラムを実施するときには、その複数の手順の順番は内容的に支障のない範囲で変更できる。
【0014】
さらに、本発明の方法およびコンピュータプログラムの複数の手順は個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある手順の実行中に他の手順が発生すること、ある手順の実行タイミングと他の手順の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、などでもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記各側面によれば、構造物の風合いや色合いを表現できる三次元画像の生成技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の画像処理システムのシステム構成を概念的に示す図である。
【
図2】三次元画像生成装置を実現するコンピュータの構成の一例を示す図である。
【
図3】三次元画像生成装置の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】三次元画像の生成方法の工程を説明するフローチャートである。
【
図5】複数の測定装置の配置の一例を示す図である。
【
図6】複数の点群データの重複部分を説明するための図である。
【
図7】点群データの重複部分の削除方法を説明するための図である。
【
図8】点群データの重複部分の削除方法を説明するための図である。
【
図9】点群データの重複部分の削除方法を説明するための図である。
【
図10】点群データの重複部分の削除方法を説明するための図である。
【
図11】点群データの重複部分の削除方法を説明するための図である。
【
図12】点群データの重複部分の削除方法を説明するための図である。
【
図13】複数の測定装置の高さを千鳥状に配置した例と、同じ高さで配置したときの比較例とを示す図である。
【
図14】構造物より高い位置と低い位置に測定装置を配置する例を示す図である。
【
図15】ガイダンス装置の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図16】測定装置のレーザの照射方向について説明する図である。
【
図17】測定装置の設置位置による測定範囲を説明するための図である。
【
図18】測定装置の設置位置による測定範囲を説明するための図である。
【
図19】測定装置の設置位置による測定範囲を説明するための図である。
【
図20】測定装置の設置位置による測定範囲を説明するための図である。
【
図21】測定装置の設置位置による測定範囲を説明するための図である。
【
図22】測定装置の設置例を説明するための図である。
【
図23】測定装置の設置例を説明するための図である。
【
図24】測定装置の設置例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態の画像処理システム1のシステム構成を概念的に示す図である。なお、以下の各図において、本発明の本質に関わらない部分の構成については省略してあり、図示されていない。
画像処理システム1は、構造物を複数の測定装置5を用いて得られた計測データを用いて三次元画像を生成する三次元画像生成装置100を備えている。測定装置5は、例えば、3Dレーザスキャナであり、3Dデジタル計測を行い、点群データを出力する。点群データは、構造物の三次元の形状を示す複数点のデータの集合であり、各点の位置を示す計測データ(相対的または絶対的な座標情報)と、各点の色情報を含む。
【0019】
測定装置5で計測された点群データは、通信ネットワーク3を介して記憶装置110に格納されてもよいし、測定装置5の記録媒体に格納されてもよい。三次元画像生成装置100は、記憶装置110または記録媒体から点群データを読み出せる。
【0020】
後述する本実施形態の三次元画像生成装置100の各機能は、コンピュータによって実現される。
図2は、三次元画像生成装置100を実現するコンピュータ60の構成の一例を示す図である。
【0021】
コンピュータ60は、CPU(Central Processing Unit)62、メモリ64、メモリ64にロードされた三次元画像生成装置100の構成要素を実現するプログラム80、そのプログラム80を格納するストレージ66、I/O(Input/Output)68、および通信ネットワーク接続用のインタフェース(通信I/F)70を備える。
【0022】
CPU62、メモリ64、ストレージ66、I/O68、通信I/F70は、バス69を介して互いに接続され、CPU62により三次元画像生成装置100全体が制御される。ただし、CPU62などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0023】
メモリ64は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。ストレージ66は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカードなどの記憶装置である。
【0024】
ストレージ66は、RAMやROMなどのメモリであってもよい。ストレージ66は、コンピュータ60の内部に設けられてもよいし、コンピュータ60がアクセス可能であれば、コンピュータ60の外部に設けられ、コンピュータ60と有線または無線で接続されてもよい。あるいは、コンピュータ60に着脱可能に設けられてもよい。
【0025】
CPU62が、ストレージ66に記憶されるプログラム80をメモリ64に読み出して実行することにより、以下に説明する
図3の三次元画像生成装置100の各ユニットの各機能を実現できる。
【0026】
I/O68は、コンピュータ60と他の入出力装置間のデータおよび制御信号の入出力制御を行う。他の入出力装置とは、たとえば、コンピュータ60に接続されるキーボード、タッチパネル、マウス、およびマイクロフォンなどの入力装置72と、ディスプレイ、プリンタ、およびスピーカなどの出力装置74と、これらの入出力装置とコンピュータ60のインタフェースとを含む。さらに、I/O68は、他の記録媒体の読み取りまたは書き込み装置(不図示)とのデータの入出力制御を行ってもよい。
【0027】
通信I/F70は、コンピュータ60と外部の装置との通信を行うためのネットワーク接続用インタフェースである。通信I/F70は、有線回線と接続するためのネットワークインタフェースでもよいし、無線回線と接続するためのネットワークインタフェースでもよい。たとえば、三次元画像生成装置100を実現するコンピュータ60は、通信I/F70により通信ネットワーク3を介して各測定装置5と接続されてもよい。
【0028】
後述する
図3の本実施形態の三次元画像生成装置100の各構成要素は、
図2のコンピュータ60のハードウェアとソフトウェアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。以下説明する各実施形態の三次元画像生成装置100を示す機能ブロック図は、ハードウェア単位の構成ではなく、論理的な機能単位のブロックを示している。
【0029】
三次元画像生成装置100は、複数のコンピュータ60により構成されてもよいし、仮想サーバにより実現されてもよい。あるいは、SaaS(Software as a Service)により、利用者の端末にサーバコンピュータ上で動作しているアプリケーションの利用を提供する形態であってもよい。
【0030】
本実施形態のプログラム80は、三次元画像生成装置100を実現させるためのコンピュータ60に、以下の手順を実行させるように記述されている。コンピュータが実行する手順は、測定装置5の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定することにより、構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを取得する手順、および、複数の点群データを処理することにより、構造物の三次元画像を生成する手順、を含む。
【0031】
本実施形態のコンピュータプログラム80は、コンピュータ60で読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。記録媒体は特に限定されず、様々な形態のものが考えられる。また、プログラム80は、記録媒体からコンピュータ60のメモリ64にロードされてもよいし、通信ネットワーク3を通じてコンピュータ60にダウンロードされ、メモリ64にロードされてもよい。
【0032】
コンピュータプログラム80を記録する記録媒体は、非一時的な有形のコンピュータ60が使用可能な媒体を含み、その媒体に、コンピュータ60が読み取り可能なプログラムコードが埋め込まれる。コンピュータプログラム80が、コンピュータ60上で実行されたとき、コンピュータ60に、三次元画像生成装置100を実現させる。
【0033】
図3は、本実施形態の三次元画像生成装置100の論理的な構成を示す機能ブロック図である。三次元画像生成装置100は、点群データ取得部102と、画像生成部104と、備える。
点群データ取得部102は、測定装置5の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定された結果得られる、構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを取得する。
画像生成部104は、複数の点群データを処理することにより、構造物の三次元画像を生成する。
ただし、点群データ取得部102が取得する構造物の互いに異なる部分とは、構造物の互いに異なる部分だけでなく、同じ部分を含んでもよい。
【0034】
実施形態において「取得」とは、自装置が他の装置や記録媒体に格納されているデータまたは情報を取りに行くこと(能動的な取得)、および、自装置に他の装置から出力されるデータまたは情報を入力すること(受動的な取得)の少なくとも一方を含む。能動的な取得の例は、他の装置にリクエストまたは問い合わせしてその返信を受信すること、および、他の装置や記録媒体にアクセスして読み出すことなどがある。また、受動的な取得の例は、配信(または、送信、プッシュ通知など)される情報を受信することなどがある。さらに、「取得」とは、受信したデータまたは情報の中から選択して取得すること、または、配信されたデータまたは情報を選択して受信することであってもよい。
【0035】
本実施形態において、好ましくは、構造物は、文化財、寺社仏閣、世界遺産(世界遺産委員会認定)、産業遺産(国際産業遺産保存委員会認定)、近代化産業遺産(経済産業省認定)、土木遺産(土木学会選奨)、景勝地、地形、あるいは、今後後世に残す必要がある建造物および景勝地の少なくともいずれか一つを含む歴史的建造物および遺跡を含む。この場合、本実施形態の三次元画像生成装置100により生成される三次元画像は、構造物の風合い、色合いを後世に伝えるためのものである。一般的な建築現場では構造物の測量が目的であるため、三次元画像により形状が把握できればよい。これに対し、本実施形態では、構造物の形状、風合いを後世に伝えることが目的であるため、形状だけでなく、風合い、色合い、情景が三次元画像に表現されることが好ましい。
【0036】
また、文化財などの歴史的な木造建築では、屋根や庇、天井などの下の複数の梁や小梁が格子状に配置され,これらの梁や小梁の背面に直接レーザがあたらない。また、和室においては、床の間、天袋、欄間、落とし掛け、書棚など、いりくんだ複雑な形状が多いため、レーザの死角が多数発生する。本実施形態では、このような死角をなくすための方法を提供する。
【0037】
図4は、本実施形態の三次元画像の生成方法の工程を説明するフローチャートである。
本実施形態の三次元画像の生成方法は、点群データ生成工程(ステップS101)と、三次元画像生成工程(ステップS103)とを含む。
ステップS101の点群データ生成工程では、測定装置5の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定することにより、構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを生成する。
ステップS103の三次元画像生成工程では、複数の点群データを処理することにより、構造物の三次元画像を生成する。
【0038】
図16は、測定装置5のレーザの照射方向について説明する図である。測定装置5は、水平方向に360度の範囲(
図16(a))でレーザの照射角度を変えるとともに、鉛直方向については、水平位置を0度として天頂方向に90度、下方は-60度の範囲(
図16(b))でレーザの照射角度を変えながら測定対象物をスキャンする。
図16(c)は測定装置5の測定範囲全体を示している。
【0039】
上記したように、文化財などの歴史的な木造建築では、屋根や庇などの下の複数の梁や小梁が多数配置されることから、これらの梁や小梁の背面に直接レーザが当たらない死角が発生する。以下、図面を用いて本発明の測定装置5の設置方法により、これらの死角を効率よく削減する例を説明する。
【0040】
図17~
図21は、屋根の縦断面図である。
図17に示すような屋根の下に小梁10がある例では、測定装置5aを屋根の下の位置Laに設置した場合、太線部分が、レーザ照射可能な範囲、すなわち、測定可能な範囲を示している。それ以外の領域は、死角となっている。
【0041】
図18の例では、
図17の測定装置5aの位置Laと水平方向は同じ位置で、鉛直方向により低い位置Lbに測定装置5bを設置した場合の例を示している。測定装置5bの測定範囲(図中、太線で示す)は、
図17の測定装置5aの測定範囲より広範囲をカバーしている。ただし、測定装置5bの点群密度は、測定装置5aの点群密度より低くなる。
【0042】
図19の例では、
図17の測定装置5aの位置と水平方向と鉛直方向の両方を変えた位置Lcに測定装置5cを設置した場合の例を示している。測定装置5cの測定範囲は、図中、太線で示されている。
図19の例では、
図17の例と点群密度は略同じである。
【0043】
図20の例では、
図19の測定装置5cの位置Lcと水平方向は同じ位置で、鉛直方向により低く、かつ、
図18の測定装置5bより高い位置Ldに測定装置5dを設置した場合の例を示している。測定装置5dの測定範囲は、図中、太線で示されている。
図20の測定装置5dの点群密度は、測定装置5a、5b、5cの中間の値である。
【0044】
これらの組み合わせを考える。位置Lbの測定装置5bと位置Ldの測定装置5dを組み合わせた場合、小梁10ならびに小梁10の間の屋根の下面を網羅できる。他の組み合わせでは、死角がそれぞれ残る。ただし、測定装置5bと測定装置5dの組み合わせは、他の組み合わせに比べて点群密度が低くなる。そこで、位置Laの測定装置5aと位置Lcの測定装置5cにより、上記の組み合わせの点群密度の低いところを補完するスキャンを行うことができる。
【0045】
一方、
図21に示すように、測定装置5aの位置を、鉛直方向に少し下げた位置Leとした場合の比較例では、測定装置5aと測定装置5dで測定対象を全体的に網羅することができる。しかしながら、この例では、点群が重なっている部分が、主に小梁10の下面のみとなる。つまり、小梁10の下面のみの点群密度が高くなるため、他の部分との点群密度の濃淡が明確になってしまう。そのため、風合いを表現することが重要である本発明の測定対象である文化財などの歴史的な構造物の場合には、好ましくない。
【0046】
図5は、複数の測定装置5の配置の一例を示す図である。
複数の測定装置5は、その設置位置を水平方向および鉛直方向を異ならせて配置されている。ここで、測定装置5は必ずしも複数台なくてもよく、測定装置5の複数の設置場所に、少なくとも1台の測定装置5を移動させて測定を行ってもよい。つまり、複数の測定装置5とは、複数の設置場所に設置される測定装置5を意味しており、測定に使用される測定装置5の台数を意味するものではない。複数の測定装置5のうち、スキャニングは1台ずつ順番に行ってもよいし、所定台数で同時に行ってもよい。
【0047】
測定装置5の配置方法は以下に例示される。
(1)対象(以下、測定対象ということもある)の一面に対して、比較的低い視点から測定できる位置に、一面から所定の距離離れた位置に、隣り合う測定装置5のスキャニング領域(点群データ)が重なるように、間隔を空けて複数並べる。
(2)(1)の死角をなくすために、(1)より高い視点から測定できる位置に、(1)と同じ所定の距離一面から離して複数配置する。
(3)さらに、(1)の死角をなくすために、(1)より一面からさらに離れた位置で、かつ、斜めの視点から測定できる位置に配置する。配置する位置は、対象の両サイドでもよく、対象の付随物を測定できる位置でもよい。高さは、(1)と(2)の間の高さでもよい。一面との距離は、(1)の測定装置5のスキャニング領域と(3)の測定装置5のスキャニング領域の少なくとも一部が重なる程度離す距離がよい。
(4)対象の周囲の付随物を測定するために、(3)よりさらに一面から離れた位置に複数配置する。複数の測定装置5はそれぞれ高さを変えてもよい。一面との距離は、(3)の測定装置5のスキャニング領域と(4)の測定装置5のスキャニング領域の少なくとも一部が重なる程度離す距離がよい。
(5)(4)の死角をなくすために、さらに測定装置5を、(4)よりさらに一面から離れた位置に複数配置してもよい。複数の測定装置5はそれぞれ高さを変えてもよい。一面との距離は、(4)の測定装置5のスキャニング領域と(5)の測定装置5のスキャニング領域の少なくとも一部が重なる程度離す距離がよい。以下、測定対象とその付随物が測定されるまで(5)を繰り返す。なお,死角とは測定対象の構造物の形状に起因して生じる部分以外にも、測定装置5自身の死角(自身の足元、三脚類、
図16(b)の下方-60度から-90度(地面まで)の範囲)も含む。
【0048】
図5の例で具体的に説明する。例えば、4つの測定装置5aは、比較的低い視点から測定できる位置に配置されており、門の庇の下、柱の内側、門の形状を測定する。測定装置5aの配置数は,庇の下の小梁と小梁の空きの空間の死角をなくすことが望ましい。2つの測定装置5bは、測定装置5aの死角を補填するために測定装置5aより高い視点から測定できる位置に配置されている。2つの測定装置5cも、測定装置5aの死角を補填するために、測定装置5aより斜め後方の低い視点から測定できる位置に配置されており、門の外側、柱の外側、土塀の瓦の下を測定する。4つの測定装置5dも、測定装置5a、5b,5cの死角を補填するために、測定装置5a、5b,5cの斜め後方のより低い視点から測定できる位置に配置されており、門の前の階段のステップ(踏面、踊り場)や蹴上を測定する。4つの測定装置5eは、測定装置5a、5b、5c、5dの死角を補填するために、測定装置5a、5b、5c、5dの斜め後方のより低い視点から測定できる位置に配置されている。
【0049】
このように、複数の測定装置5は、位置を変えるとともに、高さを変えることで、木造建築の梁の裏側や、複雑にいりくんだ形状などによる死角を効果的になくすことができる。また、測定装置5の測定方向については、例えば、
図16(b)のように鉛直方向に240度測定してもよいし、所定の範囲に測定方向(言い換えるとレーザの照射角度)を限定してもよい。例えば、屋外での測定の場合には、測定装置5の天頂方向に構造物や樹木などが存在していないことが明らかな場合、天頂方向を測定範囲から除外してもよい。測定範囲を限定することで点群データの容量を削減できる。ただし、測定範囲を部分的に除外した場合、点群データ同士の結合が困難となる場合もある。そのため、点群データ同士の結合に影響を及ぼさない範囲で測定範囲を限定することがより好ましい。
【0050】
ステップS101の点群データ生成工程において、測定対象を複数の領域に分けて測定して生成された複数の点群データのうち、隣り合う領域を測定した2つの点群データにおいて、隣り合う領域は、部分的に互いに重なっている。言い換えると、生成される2つの点群データにおいて隣り合う領域は、部分的に重なるように測定装置5を配置して測定される。
図6(a)に示すように、それぞれ生成された2つの点群データが示す領域(以下、範囲ということもある)R1とR2は、測定対象の同じ箇所を測定した部分(星マークSで示される部分)を含む。言い換えると、この2つの点群データの領域R1とR2は、星マークSで示される部分が重複している。
【0051】
ステップS103の三次元画像生成工程では、この重なっている部分を基準にして2つの点群データを結合させることができる。
図6(b)に示すように、
図6(a)の2つの点群データの範囲R1とR2は、星マークSで位置合わせをして結合できる。重ねられた部分は、ハッチングで示されている。
【0052】
具体的な例として、例えば、特に、門の開閉ができない建造物において、門の内側と外側で見通しがきかないような場合に、門の内側と門の外側のそれぞれからスキャニングを行う。スキャニングを行う場合に、スキャニング範囲に共通の部分を含むように測定装置5の位置を選ぶ。門の内側と外側のそれぞれからのスキャニングの結果得られた2つの点群データを、共通の部分を重ねて位置合わせをして結合する。共通の部分は、点群データを重ね合わせる際に目印となるような箇所を選んでもよい。
【0053】
重複する部分は、複数となるように測定装置5の位置を選ぶのが好ましい。また、重複部分を結合するとき、複数の重複部分のうち、結合精度が最も高いものを選んで結合するのがよい。
【0054】
このようにして複数の測定装置5により死角をなくすことはできるが、結果として多数の点群データを重ねて三次元画像を生成することとなるため、ノイズも多く発生し、さらに測定対象の風合いや品質を低下させてしまう。
【0055】
そこで、本実施形態では、測定装置5によって得られた点群データをすべては使用せずに、部分的に使用する。ステップS103の三次元画像生成工程において、複数の測定装置5により取得される点群データを結合する際に、重なっている部分の少なくとも一部を削除する。例えば、点群データの重複する部分や不要な部分は画像処理によって削除し、部分的に使用する。これにより、ノイズが低減し、風合いの確保が可能になる。
図6(b)で説明すると、2つの点群データの範囲R1とR2が重なっているハッチング部分について、いずれか一方の点群データを削除してもよい。
あるいは、2つの点群データの重複部分について、平均値、中間値など統計処理を行ってもよい。
【0056】
図7~
図12を用いて、重複部分の削除方法について説明する。ここでは、測定対象となる構造物が対象A、対象B、対象Cの3つがあるとする。対象Aは、文化財であり、対象Bと対象Cは、例えば、土塀などの付随物であるとする。
【0057】
図7に示すように、対象Aを測定するために、6つの測定装置5aが配置され、領域R11、R12の範囲が測定される。次に、
図8に示すように、対象Bを測定するために、3つの測定装置5bが配置され、領域R21、R22の範囲が測定される。次に、
図9に示すように、対象Cを測定するために、2つの測定装置5cが配置され、領域R31~R34が測定される。
【0058】
このような測定により得られた点群データをすべて重ねると、
図10に示すように、各領域が重なる部分が多く存在する。この場合、風合いが損なわれる可能性が高い。そこで、
図11に示すように、重複している部分的な点群データを削除する。例えば、領域R21、R33、R34を削除する。
【0059】
さらに、
図12に示すように、対象Bの測定装置5aによる領域R12内の点群データを削除してもよい。このようにすることで、風合いを確保できる。
【0060】
文化財などの構造物において、高所にある欄間、長押、小梁などは、それ自身が影となり、レーザの死角が生まれる。また、長い廊下や通路、通りなどでは、スキャニングの位置の高さが低いと、箪笥の上面、庇の上部などにも多くの死角が発生する。
【0061】
これらの測定には、スキャニング位置の高さを高くする(例えば、7メートルなど)ことにより、高い視点からのスキャニングができるので、死角をなくせる。
【0062】
また、長い廊下や通路、通りなどでは、通路の長手方向に沿って配置される複数の測定装置5のスキャニングの高さを互いに変えるのが好ましい。第1の高さ、第1の高さより高い第2の高さ、第2の高さより高い第3の高さなどを、組み合わせでもよい。例えば、第3の高さ、第1の高さ、第3の高さ、第1の高さ、第2の高さ、第1の高さ、第3の高さなどにスキャニングの高さを変えて複数の測定装置5を、所定の間隔を開けて配置するのが好ましい。上記したように、測定装置5間の所定の間隔は、各測定装置5のスキャン領域が少なくとも部分的に重なるように設定する。
【0063】
図13(a)に示すように、本実施形態の複数の測定装置5は、例えば、第1の高さh1と、第1の高さh1より高い第2の高さh2に、測定装置5の高さを交互に千鳥状に設定する。
【0064】
ステップS101の点群データ生成工程において、構造物より高い位置に配置される複数の測定装置5間の間隔は、構造物より低い位置に配置される測定装置5間の間隔よりも広くなるようにする。さらに、ステップS101の点群データ生成工程において、構造物より高い位置に配置される測定装置5により取得される点群データの密度は、構造物より低い位置に配置される測定装置5により取得される点群データの密度より低く設定する。
【0065】
第2の高さh2の位置からスキャニングを行う場合、第1の高さh1の低い位置からスキャニングを行う場合よりも地面に照射されるレーザの角度が鉛直に近くなるため、レーザの照射密度が高くなる。また,レーザの反射強度も高くなる。そのため、第2の高さh2の位置からスキャニングを行う方が、第1の高さh1の位置からスキャニングする場合よりもレーザの照射間隔を粗くでき、結果として同一精度かつ同一範囲の点群データを得るためのスキャン時間も短くできる。高い視点からのスキャンの間に低い視点からのスキャンを組み合わせて千鳥配置にすることで、死角を効果的になくすことができる。
【0066】
例えば、
図13(b)のように、第1の高さh1に複数の測定装置5の高さを設定する場合、測定装置5の設置間隔は、
図13(a)の2分の1になり、測定装置5の必要台数も5箇所に増加する。これは、高い視点からのスキャンは、スキャニングのカバー範囲が広がり、点群同士の結合が容易となることから、スキャン間隔を大きくできる。結果として、現地でのスキャン作業を短くできる。
【0067】
同程度の精度の点群データを得る場合であっても、
図13(a)の配置の方が、
図13(b)の配置より、スキャニング密度を低くでき、スキャン時間も短くできる。よって、得られる点群データのデータ容量も
図13(a)の配置の方が削減できる。また、作業工程時間も
図13(a)の配置の方が短縮でき、人件費も削減できる。また、後述するように、構造物のスキャニングは屋外で行われるものが多く、その場合、時間がかかると、日照の方角が変わり、影のでき方や光の強さが変わるため、三次元画像の風合いや色合いに影響がでる可能性も高くなるため、作業時間が短い程、好ましい。
【0068】
また、ステップS101の点群データ生成工程において、少なくとも一部の点群データを生成するとき、測定装置5の高さを構造物より高い位置に配置する。さらに、
図14に示すように、ステップS101の点群データ生成工程において、測定装置5の設置位置を、構造物より高い位置(高さh2)と、構造物より低い位置(高さh1)と、が交互に繰り返されるようにする。
【0069】
図22~
図24は、測定装置5の設置例を説明するための図である。
図22(a)、
図23(a)、
図24(a)は上から見た平面図であり、
図22(b)、
図23(b)、
図24(b)はそれぞれ
図22(a)、
図23(a)、
図24(a)の線I-Iから見た断面図である。
図22は、通路の中央に同じ高さで測定装置5aを一列に並べた例であり、これは一般的な測量で用いられる配置例である。この配置例の場合、両脇の土塀と建屋の庇の下は死角となる。
【0070】
図23は、庇の下の死角をなくすために同じ高さの測定装置5bを追加した例である。測定装置5の総台数が12台に増加し、スキャン数は、
図22の例の6スキャンの2倍の12スキャンになる。このため
図23の例では、
図22の例に比べて測定範囲は広がるが、ノイズが発生し、測定時間も長くなる。
【0071】
図24は、異なる高さに測定装置5を配置した例である。この例では、通路の中央に高さを高くした測定装置5cを配置し、庇の下をスキャンする測定装置5dを配置している。高い位置の測定装置5cにより、スキャニング領域が広がるので全体を測定でき、屋根の上も測定できる。低い位置の測定装置5dにより、庇の下を測定できる。この例では、高い位置の測定装置5cが広範囲をカバーするため、低い位置の測定装置5dの間隔を
図23の例の測定装置5bの間隔に比べて広くとることができる。このため、
図24の例では、
図23の例に比較して少ないスキャン数で、屋根、庇下等の死角もなくしたスキャンが可能になる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の測定装置5の高さを変えて配置して測定して得られる点群データを用いて構造物の三次元画像を生成するので、測定装置5の死角をなくすことができる。また、複数の測定装置5により得られる点群データのうち、部分的に重なっている部分を削除するので、構造物の風合いや色合い、および情景を損なうことなく実物により近い三次元画像を生成できる。
【0073】
測定装置5の高さを高くすることで、スキャニング密度を削減し、スキャン時間を短縮できる。これにより、点群データのデータ容量を削減できる。点群データを転送する場合、転送時間も短くなる。作業効率も向上し、作業コストも低減できる。
【0074】
(第2の実施の形態)
本実施形態の三次元画像の生成方法は、上記実施形態とは、点群データ生成工程において、測定条件を規定する点以外は、上記実施形態と同様である。
【0075】
構造物の三次元画像の風合いおよび色合いは、スキャニングの環境、例えば、天候、時間帯、季節、太陽の位置および角度、および日差しの有無などに大きく左右される。1箇所あたりのスキャニングは、スキャンする点群密度により異なるが3~15分程度が実用的な範囲である。そのため、特に屋外においては、スキャニング時に、太陽が、雲に隠れたり、雲から出たりするのを繰り返すと、日差しがまちまちとなるため、測定対象の影のでき方、光の当たり方、光の強さが秒単位で異なり、風合いおよび色合いを再現することが難しくなる。また、スキャン数が多くなる場合、時間帯によって影のでき方が異なり、一つの建屋をスキャンしても、午前と午後のスキャンでは影が不自然になり、同様に風合いおよび色合いを再現することが難しくなる。
【0076】
このような課題があるため、本実施形態において、ステップS101の点群データ生成工程は、天候が曇りのときに行うのが好ましく、さらに、屋内であれば雨天でもよい。さらに、ステップS101の点群データ生成工程を行う時間帯を、構造物の部分毎に揃えるのが好ましい。例えば、対象が文化財であれば、構造物のうち、文化財建築の部分と、その付随物である土塀などの部分とを区別して、測定時間帯を部分毎に揃える。
【0077】
また、ステップS101の点群データ生成工程において、日差しが斜光の場合には、測定装置5の影が写り込まない位置に当該測定装置5を設置する。また、風の強さが所定の風速以下の場合に、屋外の構造物のスキャニングを行うのが好ましい。所定の風速は、例えば、測定装置5が風によって揺れない程度の値(例えば、6m/s)以下であるのが好ましい。
【0078】
影の出き方によっては、時間帯を制限したスキャニングがよい。構造物の各部分が、例えば、対象Aおよび対象Bからなる例では、対象Aは「午前のみ」、対象Bは「夕方のみ」に限定する。これにより、対象毎に影のでき方が統一され、また光の強さも統一されることから、風合いおよび色合いを引き出すことができる。また、日が低い場合(所謂、斜光の場合)には、測定装置5の本体や三脚の影が写り込む可能性があるため、測定装置5の配置には、これらの写り込みのない位置を選定する。
【0079】
また、屋内においては、窓または開口部からの入光が、風合いおよび色合いに影響を与える可能性がある。影響を与える可能性がある場合には、屋外と同様な対策を行う。また、屋内では、照明を一定にするのが好ましい。
【0080】
さらに、ステップS101の点群データ生成工程において、構造物が反射面を含む場合、当該反射面に写り込みがない位置に測定装置5を配置する。
【0081】
例えば、構造物に窓ガラスまたは鏡などの反射面が含まれる場合、当該反射面に写り込んだ物体の像が点群データに含まれてしまう。よって、測定装置5を設置する際、反射面に写り込みがない位置を選ぶ。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、天候や時間帯を考慮して効率よくスキャニングを行うことができる。また、光の強度や影により風合いや色合いを損ねることを防げる。
【0083】
(第3の実施の形態)
本実施形態は、上記実施形態の三次元画像の生成方法を実行するために、作業者に三次元画像の生成方法のガイダンスを出力するガイダンス装置200を備える点以外は上記実施形態の少なくともいずれか一つと同じである。
【0084】
図15は、本実施形態のガイダンス装置200の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
本実施形態のガイダンス装置200は、例えば、作業者が現場で使用できるように、携帯型の端末装置により実現されるのが好ましい。ガイダンス装置200は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)である。これらの端末装置は、上記した
図2のコンピュータ60により実現される。あるいは、後述する三次元画像処理用のガイダンスの場合、ガイダンス装置200は、三次元画像生成装置100に含まれてもよい。
【0085】
ガイダンス装置200を実現するプログラム80は、コンピュータ60上で実行されたとき、コンピュータ60に、ガイダンス装置200を実現させる。プログラム80は、作業者に三次元画像の生成方法のガイダンスを提示する手順をコンピュータ60に実行させる。
【0086】
本実施形態のガイダンス装置200は、コンピュータ60に、当該ガイダンス装置を実現するアプリケーションプログラムをインストールして実行することにより実現されてよい。あるいは、ガイダンス装置200は、コンピュータ60上でブラウザなどのプログラムを起動し、所定のウェブサイトにアクセスして、ガイダンスの内容を含むコンテンツを表示させることにより実現されてもよい。所定のウェブサイトは、例えば、予めユーザ登録された認証情報(ユーザIDとパスワードなど)を入力してログインすることによりアクセスできるのが好ましい。
【0087】
ガイダンス装置200は、上記実施形態で説明した三次元画像の生成方法を、作業者に実行させるためのガイダンスを提示する提示部202を備える。
【0088】
ガイダンスは、音声、画像、映像、およびテキストの少なくともいずれか一つを含むコンテンツによって提示される。提示部202は、ガイダンスを、画面を表示するディスプレイ、および音声を出力するスピーカの少なくともいずれか一つを含む出力装置74に出力するとともに、オペレータの操作を受け付ける操作部、例えば、タッチパネル、操作スイッチ、キーボードなどの少なくともいずれか一つを含む入力装置72から、操作を受け付ける。操作部は、ディスプレイに表示される、グラフィカルユーザインタフェース(GUI(Graphical User Interface))も含む。
【0089】
ガイダンス内容は、現場で作業者が測定作業を行う際に必要な手順や注意点、三次元画像処理の際に必要な手順や注意点を含む。
【0090】
<死角をなくすためのガイダンス>
文化財と、その付随物の対象ごとに測定装置5の設置位置をアナウンスする。
具体的には、まず、文化財の周囲に、所定間隔を開けて、測定装置5を、高さを変えて配置することをアナウンスする。間隔および高さの設定の推奨値をアナウンスしてもよい。スキャニング密度と時間の推奨値をアナウンスしてもよい。
【0091】
次に付随物の周囲に、所定間隔を開けて、測定装置5を、高さを変えて配置することをアナウンスする。間隔および高さの設定の推奨値をアナウンスしてもよい。スキャニング密度と時間の推奨値をアナウンスしてもよい。構造物より高い位置と、低い位置の両方に測定装置5を配置するのが好ましいことをアナウンスする。
【0092】
また、高い位置と低い位置を交互に配置するのが好ましいことをアナウンスする。さらに、構造物より高い位置に配置される測定装置5間の間隔は、構造物より低い位置に配置される測定装置5間の間隔よりも広くなるようにすることをアナウンスする。さらに、構造物より高い位置に配置される測定装置5により取得される点群データの密度を、構造物より低い位置に配置される測定装置5により取得される点群データの密度より低く設定するようにアナウンスする。
【0093】
測定対象の選択(例えば、文化財および付随物のうちのいずれかを選択)画面を提示し、当該選択を促し、選択を受け付けた後、対応する測定装置5の設置位置のガイダンスを選択して提示してもよい。上記実施形態で説明したように、文化財が対象の場合と、付随物が対象の場合で、測定装置5の配置方法や、スキャニング密度や時間の推奨値が変更されて提示される。
【0094】
他の例では、構造物の種別(門、階段、参道、鳥居、本堂など)の選択を受け付け、受け付けた構造物の種別に応じた測定装置5の設置位置を提案するガイダンスを行ってもよい。また、構造物に梁があるか否かを受け付け、梁がある場合は、梁の裏側を測定できるように測定装置5を配置し、ガイダンスを提示してもよい。
【0095】
例えば、
図5のような構造物の門を測定する場合、はじめに、門の前の下方、1列に測定装置5を配置することをアナウンスする。次に、門の屋根の裏側の梁の裏の死角をなくすために、最初に配置した測定装置5より高い位置に測定装置5を配置することをアナウンスする。さらに、門から離れた位置から門の外観を測定できる位置に測定装置5を配置することをアナウンスしてもよい。また、階段の場合、階段の各ステップと蹴上部分を測定できる位置に測定装置5の高さを変えて、測定装置5を配置することをアナウンスしてもよい。
【0096】
<風合い、色合いを確保するためのガイダンス>
測定日時の天気予報を提示し、曇りが最も好ましく、次に雨天が好ましいことをアナウンスする。また、測定日の曇りの時間帯と、当該時間帯に屋外を測定するのが好ましいことをアナウンスする。あるいは、測定日の雨天の時間帯と、当該時間帯は屋内を測定するのが好ましいことをアナウンスする。
【0097】
具体的には、提示部202は、オペレータに測定日時と測定場所の入力を受け付ける画面を表示し、入力を促すメッセージを出力し、オペレータの画面操作により入力を受け付ける。そして、入力された測定日時と測定場所から天気予報のウェブサイトにアクセスして天気予報の情報を取得する。そして、取得した天気予報の情報を提示するとともに、ガイダンスを提示する。
【0098】
また、晴天や曇りなどの天候によって測定装置5によるスキャニング密度や時間の推奨値を変更してもよい。さらに、天気予報から風速の情報も取得してもよい。測定日時の風速が所定値以上の場合、屋外の測定には向かないことをアナウンスしてもよい。あるいは、時間帯によって風速が異なる場合、所定値未満の時間帯に屋外を測定することを推奨するメッセージを提示してもよい。
【0099】
測定日時が、斜光の時間帯の場合、測定装置5本体や三脚の影が写り込まない位置に測定装置5の設置場所を選ぶようにアナウンスする。天候が晴天の場合や屋内の場合、構造物に反射面(窓ガラスや鏡)があるか否かの選択を受け付け、反射面がある場合、反射面に写り込みがない位置に測定装置5の設置場所を選ぶようにアナウンスする。
【0100】
<三次元画像生成の画像処理のガイダンス>
上記実施形態で
図7~
図12を用いて説明した、複数の測定装置5から取得される点群データの重複部分の削除方法をガイダンスしてもよい。ガイダンス装置200は、点群データの重複部分を検出する検出部(不図示)をさらに備えてもよい。
【0101】
点群データの重複部分削除のガイダンスは、以下の構成としてもよい。例えば、提示部202は、現場で測定装置5から取得した測定値から点群データを生成する際に、測定装置5の測定位置から重複部分を求め、重複部分の点群データを削除するか否かを問合せるメッセージを出力し、削除するか否かの操作を受け付け、削除するとの操作を受け付けた場合に、重複部分の削除処理を行う構成としてもよい。
【0102】
この構成によれば、点群データを生成時に重複部分を削除できるので、三次元画像生成装置100の点群データ取得部102が取得する点群データのデータ容量を削減できる。測定装置5から三次元画像生成装置100へのデータ転送容量を削減できるので転送時間を短縮できる。あるいは、測定装置5から点群データを書き込む記録媒体のデータ容量を削減でき、記録媒体とのデータの書き込みまたは読み込み時間を削減できる。
【0103】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、上記実施形態の三次元画像の生成方法を現場で実行する前に、事前に測定条件および測定装置5の設置位置およびスキャニング密度、時間などの計画を立てるスキャニング計画工程をさらに含んでもよい。そして、上記実施形態のガイダンス装置200の提示部202は、当該スキャニング計画工程をオペレータに実行させるためのガイダンスをさらに提示してもよい。つまり、提示部202は、事前にスキャニング計画を立てる際に必要な内容を含むガイダンスを提示してもよい。
【0104】
このスキャニング計画工程において、本実施形態の測定条件と、上記実施形態の測定装置5の設置位置とを適切に組み合わせる。事前に、対象毎にスキャニングを実行する時間帯を考慮するのが好ましい。例えば、対象毎にスキャニングを実行する時間帯の制約条件を考慮する。事前に天気予報により天候を予測し、スキャニング計画を立てるのが好ましい。例えば、屋外で、文化財建築そのものの測定対象である対象Aと、文化財の付随物である土塀などの対象Bと、屋内の対象Cをスキャニングする場合、午前中、曇りで午後晴天の天気予報である場合、午前中に対象Aと対象Bをスキャニングし、午後に対象Cをスキャニングするよう計画を立てる。
【0105】
また、対象Aと対象Bのスキャニング計画は、測定装置5の設置位置およびスキャニングの精度や時間を、測定対象そのものである対象Aと付随物である対象Bとをそれぞれ区別して計画を立てる。
【0106】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0107】
以下、参考形態の例を付記する。
1. 測定装置の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定することにより、前記構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを生成する点群データ生成工程と、
前記複数の点群データを処理することにより、前記構造物の三次元画像を生成する三次元画像生成工程と、
を含む、三次元画像の生成方法。
2. 1.に記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、隣り合う前記部分を測定した2つの前記点群データにおいて、前記隣り合う2つの前記部分は、部分的に互いに重なっている三次元画像の生成方法。
3. 2.に記載の三次元画像の生成方法において、
前記三次元画像生成工程において、複数の前記測定装置により取得される前記点群データを結合する際に、前記重なっている部分の少なくとも一部を削除する、三次元画像の生成方法。
4. 1.から3.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、少なくとも一部の前記点群データを生成するとき、前記測定装置の高さを前記構造物より高い位置に配置する、三次元画像の生成方法。
5. 4.に記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、前記測定装置の設置位置を、前記構造物より高い位置と、前記構造物より低い位置と、が交互に繰り返されるようにする、三次元画像の生成方法。
6. 1.から5.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、前記構造物より高い位置に配置される前記測定装置間の間隔は、前記構造物より低い位置に配置される前記測定装置間の間隔よりも広くなるようにする、三次元画像の生成方法。
7. 6.に記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、前記構造物より高い位置に配置される前記測定装置により取得される前記点群データの密度は、前記構造物より低い位置に配置される前記測定装置により取得される前記点群データの密度より低く設定する、三次元画像の生成方法。
8. 1.から7.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程は、天候が曇りのときに行う、三次元画像の生成方法。
9. 1.から8.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程を行う時間帯を、前記構造物の部分毎に揃える、三次元画像の生成方法。
10. 1.から9.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、
日差しが斜光の場合には、前記測定装置の影が写り込まない位置に当該測定装置を設置する、三次元画像の生成方法。
11. 1.から10.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法において、
前記点群データ生成工程において、
前記構造物が反射面を含む場合、当該反射面に写り込みがない位置に前記測定装置を配置する、三次元画像の生成方法。
12. 1.から11.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法において、
前記構造物は、文化財、寺社仏閣、世界遺産(世界遺産委員会認定)、産業遺産(国際産業遺産保存委員会認定)、近代化産業遺産(経済産業省認定)、土木遺産(土木学会選奨)、景勝地、地形、あるいは、今後後世に残す必要がある建造物および景勝地の少なくともいずれか一つを含む歴史的建造物および遺跡を含み、
前記三次元画像は、前記構造物の風合い、色合いを後世に伝えるためのものである、三次元画像の生成方法。
【0108】
13. 1.から12.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法により生成される、測定装置の設置位置を水平方向および鉛直方向の少なくとも一方を異ならせた状態で、構造物を複数回測定することにより、前記構造物の互いに異なる部分の形状および色を示す複数の点群データを取得する点群データ取得手段と、
前記複数の点群データを処理することにより、前記構造物の三次元画像を生成する三次元画像生成手段と、を備える、三次元画像生成装置。
14. コンピュータに、13.に記載の三次元画像生成装置を実現させるためのプログラム。
15. 1.から12.のいずれか一つに記載の三次元画像の生成方法を実行するために、作業者に三次元画像の生成方法のガイダンスを提示する提示手段を備える、ガイダンス装置。
16. コンピュータに、15.に記載のガイダンス装置を実現させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0109】
1 画像処理システム
3 通信ネットワーク
5、5a、5b、5c、5d、5e 測定装置
10 小梁
60 コンピュータ
62 CPU
64 メモリ
66 ストレージ
68 I/O
69 バス
70 通信I/F
72 入力装置
74 出力装置
80 プログラム
100 三次元画像生成装置
102 点群データ取得部
104 画像生成部
110 記憶装置
200 ガイダンス装置
202 提示部
A、B、C 対象
h1、h2 高さ
La、Lb、Lc、Ld、Le 位置
R1、R2、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R33、R34 領域
S 星マーク
S101 点群データ生成工程
S103 三次元画像生成工程