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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】多方向振動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/12 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02K33/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023529135
(86)(22)【出願日】2022-12-31
(86)【国際出願番号】 CN2022144408
(87)【国際公開番号】W WO2024130790
(87)【国際公開日】2024-06-27
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】202211619627.6
(32)【優先日】2022-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522237667
【氏名又は名称】エーエーシー テクノロジーズ (ナンジン) カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Technologies (Nanjing) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】8th Floor, R&D Building, Emerging Industry Incubation Base, Nanda Science Park, Yuanhua road, Xianlin University Town, Qixia district, Nanjing City, Jiangsu Province, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 杰
(72)【発明者】
【氏名】毛 路斌
(72)【発明者】
【氏名】▲湯▼ ▲贇▼
(72)【発明者】
【氏名】李 子昂
(72)【発明者】
【氏名】宋 威
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/259087(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/114307(WO,A1)
【文献】特開2018-160999(JP,A)
【文献】特開2020-019008(JP,A)
【文献】特開2020-022346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多方向振動モータであって、
収容空間を有するハウジングと、前記収容空間内に収容された振動ユニットと、前記ハウジングに固定されて前記振動ユニットの振動を駆動するコイルユニットとを含み、
前記振動ユニットは、前記コイルユニットと相互作用して駆動力を提供する磁性鋼システムを含み、前記磁性鋼システムは、円柱状を呈し、前記磁性鋼システムは、その軸方向に平行な第1方向に沿って着磁され、
前記コイルユニットは、前記ハウジング内に位置しかつ前記磁性鋼システムに正対して設けられ、
前記多方向振動モータは、前記ハウジングに固定されかつ環状を呈する周辺磁気リングをさらに含み、前記周辺磁気リングは、前記コイルユニットを取り囲みかつ前記コイルユニットと間隔を隔てて設置され、前記振動ユニットの運動を阻害する減衰力を生成するように、前記周辺磁気リングの内側は、それに隣接する前記磁性鋼システムの前記周辺磁気リングの内側に対向する側と、磁極が同じであり、
前記周辺磁気リングは、複数であり、かつ2つずつ対称を呈する磁性鋼で共に構成され、前記周辺磁気リングは、第2方向に沿って前記コイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置された2つの第1磁気リングと、第3方向に沿って前記コイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置された2つの第2磁気リングとを含み、前記第2方向と前記第3方向は、いずれも同一の平面に分布し、かついずれも前記第1方向と垂直である、ことを特徴とする多方向振動モータ。
【請求項2】
前記磁性鋼システムは、前記コイルユニットと相互作用して駆動力を提供する中心磁性鋼及び中心磁気リングを含み、前記中心磁性鋼は、円柱状を呈し、前記中心磁気リングは、環状を呈しかつ前記中心磁性鋼を取り囲んで設置され、前記中心磁性鋼と前記中心磁気リングは、いずれも前記第1方向に沿って着磁され、かつ前記中心磁性鋼の一端は、それに隣接する前記中心磁気リングの一端と、磁極が逆である、ことを特徴とする請求項1に記載の多方向振動モータ。
【請求項3】
前記振動ユニットは、環状を呈する質量ブロックを含み、前記質量ブロックは、前記中心磁気リングの外側を取り囲みかつ前記中心磁気リングと固定接続されている、ことを特徴とする請求項2に記載の多方向振動モータ。
【請求項4】
前記周辺磁気リングの着磁方向は、径方向着磁、軸方向着磁及び単方向着磁のいずれかを含み、前記単方向着磁は、前記第1磁気リングが前記第2方向に沿って着磁され、前記第2磁気リングが前記第3方向に沿って着磁されることである、ことを特徴とする請求項1に記載の多方向振動モータ。
【請求項5】
前記第2方向は、前記第3方向と互いに垂直であることである、ことを特徴とする請求項1に記載の多方向振動モータ。
【請求項6】
前記ハウジングは、下カバープレート、前記下カバープレートの周縁から折り曲げて延在する側壁、及び前記側壁に蓋設されかつ前記下カバープレートと対向して設置された上カバープレートを含み、前記下カバープレート、前記側壁及び前記上カバープレートは、共に前記収容空間を取り囲み、
前記コイルユニットは、前記収容空間内に収容された第1コイル及び第2コイルを含み、前記第1コイルは、前記下カバープレートに固定され、前記第2コイルは、前記上カバープレートに固定され、前記第1コイルと前記第2コイルの配置方向の間に夾角を呈するように設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の多方向振動モータ。
【請求項7】
前記第1コイルは、2つあり、2つの前記第1コイルに通電する電流方向は、逆であり、前記第2コイルは、2つあり、2つの前記第2コイルに通電する電流方向は、逆であり、前記第1コイルと前記第2コイルは、いずれもトラック型又は半円形を呈する、ことを特徴とする請求項6に記載の多方向振動モータ。
【請求項8】
前記下カバープレートと前記上カバープレートは、いずれも導磁性材料で製造される、ことを特徴とする請求項6に記載の多方向振動モータ。
【請求項9】
前記振動ユニットは、前記磁性鋼システムの前記第1方向に対向する両側にそれぞれ設置された2つの平板をさらに含み、前記多方向振動モータは、前記ハウジングに固定されたスライド板をさらに含み、前記スライド板は、前記周辺磁気リングと前記コイルユニットとの間に位置し、前記スライド板の前記平板に近接する側、前記周辺磁気リングの前記平板に近接する側、及び前記コイルユニットの前記平板に近接する側は、面一であり、かつ、いずれも前記平板と間隔を隔てて隙間を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の多方向振動モータ。
【請求項10】
前記平板は、非導磁性材料で製造され、前記スライド板は、自己潤滑材料で製造される、ことを特徴とする請求項9に記載の多方向振動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、特にモバイル電子製品の分野に応用される多方向振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の発展に伴い、例えば携帯電話、携帯ゲーム機、ナビゲーション装置或いは携帯マルチメディア娯楽装置などの携帯型の消費性電子製品はますます人々に注目され、これらの電子製品は、一般的に振動モータを用いてシステムフィードバックを行い、例えば携帯電話の着信提示、メッセージ提示、ナビゲーション提示、ゲーム機の振動フィードバックなどが挙げられる。このような広範な応用は、振動モータの性能が優れ、耐用寿命が長いことを要求する。
【0003】
関連技術に係る振動モータは、収容空間を有する台座、振動ユニット、前記台座に固定されかつ前記振動ユニットを前記収容空間に懸架する弾性アセンブリ、及び前記台座に固定されて前記振動ユニットの振動を駆動するコイルユニットを含み、コイルユニットにより生成された電界が振動ユニットにより生成された磁界と相互作用することにより、前記振動ユニットが往復直線運動を行うように駆動して振動を生成する。
【0004】
しかしながら、関連技術に係る振動モータでは、振動ユニットが振動過程において振動ユニットのダンピングが存在するため、振動ユニットの安定性が影響され、関連技術において磁気液又はダンピングフォームを添加する手段を採用することにより、振動ユニットのダンピングを調整するが、磁気液又はフォームの体積が大きいため、振動モータの全体の体積が大きくなる。また、関連技術に係る振動モータにおいて弾性アセンブリが採用されても、同様に振動モータの全体の体積が大きくなる。複数の方向での振動を実現するために、関連技術に係る振動モータの振動ユニットとコイルユニットは、単独で設置され、各方向に1つの振動ユニット及び対応するコイルユニットが設置され、同様に振動モータの全体の体積が大きくなる。
【0005】
したがって、新たな振動モータを提供して上記問題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術課題は、多方向での振動を実現できかつ体積が小さい多方向振動モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術課題を解決するために、本発明は、多方向振動モータを提供し、当該多方向振動モータは、収容空間を有するハウジングと、前記収容空間内に収容された振動ユニットと、前記ハウジングに固定されて前記振動ユニットの振動を駆動するコイルユニットとを含み、前記振動ユニットは、前記コイルユニットと相互作用して駆動力を提供する磁性鋼システムを含み、前記磁性鋼システムは、円柱状を呈し、前記磁性鋼システムは、その軸方向に平行な第1方向に沿って着磁され、前記コイルユニットは、前記ハウジング内に位置しかつ前記磁性鋼システムに正対して設けられ、前記多方向振動モータは、前記ハウジングに固定されかつ環状を呈する周辺磁気リングをさらに含み、前記周辺磁気リングは、前記コイルユニットを取り囲みかつ前記コイルユニットと間隔を隔てて設置され、前記振動ユニットの運動を阻害する減衰力を生成するように、前記磁気リングの内側は、それに隣接する前記磁性鋼システムの前記磁気リングの内側に対向する側と、磁極が同じであり、前記周辺磁気リングは、複数であり、かつ2つずつ対称を呈する磁性鋼で共に構成され、前記周辺磁気リングは、第2方向に沿って前記コイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置された2つの第1磁気リングと、第3方向に沿って前記コイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置された2つの第2磁気リングとを含み、前記第2方向と前記第3方向は、いずれも同一の平面に分布し、かついずれも前記第1方向と垂直である。
【0008】
好ましくは、前記磁性鋼システムは、前記コイルユニットと相互作用して駆動力を提供する中心磁性鋼及び中心磁気リングを含み、前記中心磁性鋼は円柱状を呈し、前記中心磁気リングは環状を呈しかつ前記中心磁性鋼を取り囲んで設置され、前記中心磁性鋼と前記中心磁気リングは、いずれも前記第1方向に沿って着磁され、かつ前記中心磁性鋼の一端は、それに隣接する前記中心磁気リングの一端と、磁極が逆である。
【0009】
好ましくは、前記振動ユニットは環状を呈する質量ブロックを含み、前記質量ブロックは、前記中心磁気リングの外側を取り囲みかつ前記中心磁気リングと固定接続されている。
【0010】
好ましくは、前記周辺磁気リングの着磁方向は、径方向着磁、軸方向着磁及び単方向着磁のいずれかを含み、前記単方向着磁は、前記第1磁気リングが前記第2方向に沿って着磁され、前記第2磁気リングが前記第3方向に沿って着磁されることである。
【0011】
好ましくは、前記第2方向は、前記第3方向と互いに垂直である。
【0012】
好ましくは、前記ハウジングは、下カバープレート、前記下カバープレートの周縁から折り曲げて延在する側壁、及び前記側壁に蓋設されかつ前記下カバープレートと対向して設置された上カバープレートを含み、前記下カバープレート、前記側壁及び前記上カバープレートは、共に前記収容空間を取り囲み、前記コイルユニットは、前記収容空間内に収容された第1コイル及び第2コイルを含み、前記第1コイルは、前記下カバープレートに固定され、前記第2コイルは、前記上カバープレートに固定され、前記第1コイルと前記第2コイルの配置方向の間に夾角を呈するように設置されている。
【0013】
好ましくは、前記第1コイルは、2つあり、2つの前記第1コイルに通電する電流方向は、逆であり、前記第2コイルは、2つあり、2つの前記第2コイルに通電する電流方向は、逆であり、前記第1コイルと前記第2コイルは、いずれもトラック型又は半円形を呈する。
【0014】
好ましくは、前記下カバープレートと前記上カバープレートは、いずれも導磁性材料で製造される。
【0015】
好ましくは、前記振動ユニットは、前記磁性鋼システムの前記第1方向に対向する両側にそれぞれ設置された2つの平板をさらに含み、前記多方向振動モータは、前記ハウジングに固定されたスライド板をさらに含み、前記スライド板は、前記周辺磁気リングと前記コイルユニットとの間に位置し、前記スライド板の前記平板近接する側、前記周辺磁気リングの前記平板に近接する側、及び前記コイルユニットの前記平板に近接する側は、面一であり、かつ、いずれも前記平板と間隔を隔てて隙間を形成する。
【0016】
好ましくは、前記平板は、非導磁性材料で製造され、前記スライド板は、自己潤滑材料で製造される。
【発明の効果】
【0017】
関連技術に比べて、本発明の多方向振動モータは、ハウジング内に円柱状を呈する前記磁性鋼システムと、前記磁性鋼システムに正対して設けられた前記コイルユニットとが設置され、そして、前記磁性鋼システムは、その軸方向に平行な第1方向に沿って着磁され、前記磁性鋼システムを有する前記振動ユニットは、本発明の多方向振動モータの可動子とし、前記コイルユニットは、前記ハウジングの中央位置に固定されて本発明の多方向振動モータの固定子とし、ハウジング内に環状を呈する周辺磁気リングがさらに設置され、前記周辺磁気リングは、前記コイルユニットを取り囲みかつ前記コイルユニットと間隔を隔てて設置され、前記周辺磁気リングの内側は、それに隣接する前記磁性鋼システムの前記周辺磁気リングの内側に対向する側と、磁極が同じであるように設置され、それにより、前記振動ユニットの運動を阻害する減衰力を生成し、即ち磁界の反発力を生成し、前記周辺磁気リングは、本発明の多方向振動モータの磁気バネとする。該構造が簡単であり、かつハウジング内の空間を利用して固定子、可動子及び磁気バネを取り付けることができ、それにより本発明の多方向振動モータは体積が小さい。前記周辺磁気リングは、複数であり、かつ2つずつ対称を呈する磁性鋼で共に構成される。
好ましくは、複数の磁性鋼に2つの第1磁気リングと2つの第2磁気リングが設置され、2つの前記第1磁気リングは、第2方向に沿って前記コイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置され、2つの前記第2磁気リングは、第3方向に沿って前記コイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置され、ここで、前記第2方向と前記第3方向は、いずれも同一の平面に分布し、かついずれも前記第1方向と垂直である。該構造は、前記コイルユニットが前記第1磁気リングを駆動することにより、前記振動ユニットは、前記第2方向に沿って単独振動し、或いは、前記コイルユニットが前記第2磁気リングを駆動することにより、前記振動ユニットは、前記第3方向に沿って単独で振動し、或いは、前記コイルユニットが前記第1磁気リング及び前記第2磁気リングを同時に駆動することにより、前記振動ユニットは、前記第2方向と前記第3方向との合力方向に沿って振動し、それにより、本発明の多方向振動モータは、多方向振動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の多方向振動モータの構成を示す斜視模式図である。
図2】本発明の多方向振動モータの一部の構成を示す分解斜視模式図である。
図3図1に示すA-A線における断面図である。
図4】本発明の多方向振動モータの磁極分布を示す模式図である。
図5】本発明の多方向振動モータの他の角度の磁極分布を示す模式図である。
図6】本発明の多方向振動モータにおけるコイルユニットの構成を示す模式図である。
図7】本発明の多方向振動モータにおける周辺磁気リングの構成を示す模式図である。
図8】本発明の多方向振動モータの別の実施例の磁極分布を示す模式図である。
図9】本発明の多方向振動モータの他の実施例の磁極分布を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面及び実施形態を参照しながら、本発明をさらに説明する
【0020】
本発明は多方向振動モータ100を提供する。
【0021】
図1-7に示すように、前記多方向振動モータ100は、ハウジング1、振動ユニット2、コイルユニット3、周辺磁気リング4、スライド板5、第1導電部材6及び第2導電部材7を含む。
【0022】
前記ハウジング1は、収容空間10を有している。
【0023】
具体的には、前記ハウジング1は、下カバープレート11、前記下カバープレート11の周縁から折り曲げて延在する側壁12、及び前記側壁12に蓋設されかつ前記下カバープレート11と対向して設置された上カバープレート13を含む。前記下カバープレート11、前記側壁12及び前記上カバープレート13は、共に取り囲んで前記収容空間10を形成する。当然のことながら、これに限定されず、前記下カバープレート11と前記側壁12は、一体成形されてもよい。
【0024】
本実施形態において、前記下カバープレート11と前記上カバープレート13は、いずれも導磁性材料で製造される。前記下カバープレート11と前記上カバープレート13が導磁される時、磁力線によって回路が形成されることに役立ち、駆動力を増強し、さらに前記多方向振動モータ100の全体の漏れ磁束量を効果的に低減する。
【0025】
前記振動ユニット2は、前記収容空間10内に収容されている。
【0026】
具体的には、前記振動ユニット2は、磁性鋼システム21、質量ブロック22及び平板23を含む。
【0027】
前記磁性鋼システム21は、前記コイルユニット3と相互作用して駆動力を提供する。
【0028】
前記磁性鋼システム21は、円柱状を呈する。前記磁性鋼システム21は、その軸方向に平行な第1方向Zに沿って着磁される。本実施形態において、前記第1方向Zは、前記多方向振動モータ100の厚さの方向である。
【0029】
具体的には、前記磁性鋼システム21は、前記コイルユニット3と相互作用して駆動力を提供する中心磁性鋼211及び中心磁気リング212を含む。
【0030】
前記中心磁性鋼211は、円柱状を呈する。
【0031】
前記中心磁気リング212は、環状を呈しかつ前記中心磁性鋼211を取り囲んで設置されている。本実施形態では、前記中心磁気リング212は、円環である。
【0032】
前記中心磁性鋼211及び前記中心磁気リング212は、いずれも前記第1方向Zに沿って着磁される。
【0033】
前記中心磁性鋼211の一端は、それに隣接する前記中心磁気リング212の一端と、磁極が逆である。該構造は、磁力線が前記コイルユニット3を貫通して、磁気回路が形成される。
【0034】
前記質量ブロック22は、環状をなしている。前記質量ブロック22は、前記中心磁気リング212の外側を取り囲みかつ前記中心磁気リング212と固定接続されている。前記質量ブロック22は、カウンターウェイトに用いられる。
【0035】
前記平板23は、2つあり、2つの前記平板23は、それぞれ前記磁性鋼システム21の前記第1方向Zに対向する両側に設置されている。2つの前記平板23は、前記中心磁性鋼211、前記中心磁気リング212及び前記質量ブロック22を第1方向Zに一体に形成するために用いられ、前記振動ユニット2が一体に形成することに役立ち、かつ前記多方向振動モータ100の可動子とすることにより、前記振動ユニット2は、前記収容空間10内で振動しやすい。
【0036】
本実施形態において、前記平板23は、非導磁性材料で製造される。非導磁性材料で製造された前記平板23は、厚さを減少させることができ、摩擦面の平面度を効果的に保証し、摩擦係数を低下させることができ、前記多方向振動モータ100の小型化及び振動性能の向上に役立つ。
【0037】
前記コイルユニット3は、前記ハウジング1に固定されて前記振動ユニット2の振動を駆動する。
【0038】
前記コイルユニット3は、前記ハウジング1内に位置しかつ前記磁性鋼システム21に正対して設置されている。本実施形態では、前記コイルユニット3は、前記ハウジング1の中央位置に位置する。
【0039】
具体的には、前記コイルユニット3は、前記収容空間10内に収容された第1コイル31及び第2コイル32を含む。
【0040】
前記第1コイル31は、前記下カバープレート11に固定されている。前記第1コイル31は、第2方向Xに沿って延在するか又は第3方向Yに沿って延在して設置されている。ここで、前記延在して設置されることは、前記第1コイル31の大部分の電流が流れる方向であり、即ち電流方向である。
【0041】
前記第2方向Xと前記第3方向Yは、いずれも同一の平面に分布しかついずれも前記第1方向Zと垂直である。本実施形態では、前記第2方向Xと前記第3方向Yは、互いに垂直である。
【0042】
前記第1コイル31は、2つある。2つの前記第1コイル31に通電する電流方向は、逆である。
【0043】
前記第2コイル32は、前記上カバープレート13に固定されている。前記第2コイル32は、前記第3方向Yに沿って延在するか又は前記第2方向Xに沿って延在して設置されている。ここで、前記延在して設置されることは、前記第2コイル32の大部分の電流が流れる方向であり、即ち電流方向である。このように、前記第1コイル31と前記第2コイル32の配置方向の間に夾角を呈するように設置されている。本実施例において、前記配置方向は、前記電流方向であり、即ち前記第1コイル31と前記第2コイル32の前記延在して設置される方向の間に夾角を呈するように設置されている。
【0044】
前記第2コイル32は、2つある。2つの前記第2コイル32に通電する電流方向は、逆である。図6に示すように、前記第1コイル31の電流I2の方向は、前記第3方向Yであり、前記第2コイル32の電流I1の方向は、前記第2方向Xである。前記コイルユニット3は、通電された後に、電流方向と垂直な駆動力を形成し、例えば前記第1コイル31は、前記第3方向Yでの駆動力を形成し、前記第2コイル32は、前記第2方向Xでの駆動力を形成する。
【0045】
前記第1コイル31及び前記第2コイル32は、いずれもトラック型又は半円形を呈する。本実施形態では、前記第1コイル31と前記第2コイル32は、いずれも半円形を呈する。半円形を呈する前記第1コイル31及び前記第2コイル32は、有効なセグメントの割合を増加させることができ、同じ体積での利用率は、トラック型の前記第1コイル31及び前記第2コイル32より約10%向上する。
【0046】
前記周辺磁気リング4は、前記ハウジング1に固定されている。
【0047】
前記周辺磁気リング4は、環状を呈する。前記周辺磁気リング4は、前記コイルユニット3を取り囲みかつ前記コイルユニット3と間隔を隔てて設置されている。
【0048】
前記周辺磁気リング4の内側は、それに隣接する前記磁性鋼システム21の前記周辺磁気リング4の内側に対向する側と、磁極が同じであり、それにより、前記振動ユニット2の運動を阻害する減衰力を生成する。
【0049】
前記周辺磁気リング4は、前記磁性鋼システム21における前記中心磁気リング212に反発力を提供し、前記第2方向X及び前記第3方向Yでの復帰剛性を形成する。前記中心磁気リング212が外部によって駆動されていない場合、前記中心磁気リング212は、反発力を受けて前記多方向振動モータ100の中心点に自動的に復帰する。実際の組み立て工程において、前記中心磁気リング212は、前記周辺磁気リング4から受ける反発力がバランスを取らず、トルクを形成して回転する可能性があり、そのため、前記中心磁気リング212は、円環であると、回転による悪影響を回避することができる。
【0050】
前記周辺磁気リング4は、複数であり、かつ2つずつ対称を呈する磁性鋼で共に構成される。該構造は、磁性鋼の着磁と組立に役立つ。
【0051】
具体的には、前記周辺磁気リング4は、第2方向Xに沿って前記コイルユニット3の対向する両側にそれぞれ設置された2つの第1磁気リング41と、第3方向Yに沿って前記コイルユニット3の対向する両側にそれぞれ設置された2つの第2磁気リング42とを含む。
【0052】
2つの前記第1磁気リング41の形状は、同じである。2つの前記第2磁気リング42の形状は、同じである。前記第1磁気リング41の形状と前記第2磁気リング42の形状は、同じであってもよく、異なってもよい。前記第1磁気リング41の形状と前記第2磁気リング42の形状が同じである場合、前記多方向振動モータ100は、前記第2方向Xにおける剛性と前記第3方向Yにおける剛性が同じであり、この時、前記多方向振動モータ100は、2つの方向での周波数が一致し、単一周波数の双方向モータである。前記第1磁気リング41の形状と前記第2磁気リング42の形状が異なる場合、前記多方向振動モータ100の前記第2方向Xでの剛性と前記第3方向Yでの剛性が異なり、この時、前記多方向振動モータ100は、2つの方向での周波数が異なり、デュアル周波数の双方向モータである。具体的な実際の選択は、設計要求に基づいて考慮され、ここで、詳細な説明を省略する。
【0053】
前記周辺磁気リング4の着磁される方向は、径方向着磁、軸方向着磁及び単方向着磁のいずれかを含む。
【0054】
本実施形態において、前記周辺磁気リング4の着磁方向は、径方向着磁である。図4~5を同時に参照すると、前記上カバープレート13に近接する側における磁極を例として、前記中心磁性鋼211の一端の磁極は、N極であり、前記中心磁気リング212の一端の磁極は、S極である。即ち、前記中心磁性鋼211の一端は、それに隣接する前記中心磁気リング212の一端と、磁極が逆である。前記周辺磁気リング4の内側の磁極は、N極であり、即ち、前記周辺磁気リング4の内側は、それに隣接する前記磁性鋼システム21の前記周辺磁気リング4の内側に対向する側と、磁極が同じである。
【0055】
本実施形態において、従来の磁気バネ式モータは、モータのハウジングが非導磁性材料を採用する時に漏れ磁束が深刻であり、導磁性材料を採用する場合、振動子の磁性鋼とハウジングは、大きな吸引力を形成し、深刻な場合には、振動子をしっかり吸引して駆動できない恐れがある。本発明の多方向振動モータ100は、前記周辺磁気リング4と前記中心磁気リング212とは、反発力を形成し、振動子がある側の前記側壁12に吸引されると、対応的に反発力が同期的に増加し、振動子がしっかり吸引されるという問題を効果的に低減することができ、設計上、合理的なパラメータ設計を経て、振動子が受けた反発力は、前記下カバープレート11と前記上カバープレート13による吸引力とバランスを取ることができ、さらにしっかり吸引される問題を徹底的に解決する。
【0056】
図8に示すように、図8は、本発明の多方向振動モータの別の実施例の磁極分布を示す模式図である。別の実施例において、前記周辺磁気リング4の着磁方向は軸方向着磁である。本実施例との相違点は、前記周辺磁気リングの着磁方向である。
【0057】
図9に示すように、図9は、本発明の多方向振動モータの他の実施例の磁極分布を示す模式図である。他の実施例において、前記周辺磁気リング4の着磁方向は、前記単方向着磁である。具体的には、前記単方向着磁は、前記第1磁気リング41が前記第2方向Xに沿って着磁され、前記第2磁気リング42が前記第3方向Yに沿って着磁されることである。前記単方向着磁を採用する場合、コストが低く、かつ着磁しやすい。
【0058】
前記スライド板5は、前記ハウジング1に固定されている。前記スライド板5は、前記周辺磁気リング4と前記コイルユニットとの間に位置する。
【0059】
本実施形態において、前記スライド板5の前記平板23に近接する側、前記周辺磁気リング4の前記平板23に近接する側、及び前記コイルユニット3の前記23平板に近接する側は、面一であり、かつ、いずれも前記平板23と間隔を隔てて隙間を形成する。該構造は、前記スライド板5と前記平板23との摩擦摩耗を回避することに役立ち、それにより本発明の多方向振動モータ100の振動性能を向上させる。
【0060】
前記スライド板5は、自己潤滑材料で製造される。本実施形態において、前記スライド板5は、ポリテトラフルオロエチレン複合材料で製造される。
【0061】
前記第1導電部材6は、前記第1コイル31と電気的に接続され、前記第1導電部材6は、前記第1コイル31に制御電流を提供するために用いられる。
【0062】
前記第2導電部材7は、前記第2コイル32と電気的に接続され、前記第1導電部材6は、前記第2コイル32に制御電流を提供するために用いられる。
【0063】
関連技術に比べて、本発明の多方向振動モータは、ハウジング内に円柱状を呈する前記磁性鋼システムと前記磁性鋼システムに正対して設けられた前記コイルユニットが設置され、かつ前記磁性鋼システムは、その軸方向に平行な第1方向に沿って着磁され、前記磁性鋼システムを有する前記振動ユニットは本発明の多方向振動モータの可動子とし、前記コイルユニットは、前記ハウジングの中央位置に固定されて本発明の多方向振動モータの固定子とし、ハウジング内に環状を呈する周辺磁気リングがさらに設置され、前記周辺磁気リングは、前記コイルユニットを取り囲みかつ前記コイルユニットと間隔を隔てて設置され、前記周辺磁気リングの内側は、それに隣接する前記磁性鋼システムの前記周辺磁気リングの内側に対向する側と、磁極が同じであるように設置され、それにより、前記振動ユニットの運動を阻害する減衰力を生成し、即ち磁界の反発力を生成し、前記周辺磁気リングは、本発明の多方向振動モータの磁気バネとする。該構造が簡単であり、かつハウジング内の空間を利用して固定子、可動子及び磁気バネを取り付けることができ、それにより本発明の多方向振動モータは体積が小さい。前記周辺磁気リングは、複数であり、かつ2つずつの対称を呈する磁性鋼で共に構成される。好ましくは、複数の磁性鋼に2つの第1磁気リングと2つの第2磁気リングが設置され、2つの前記第1磁気リングは、第2方向に沿って前記コイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置され、2つの前記第2磁気リングは、第3方向に沿って前記コイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置され、ここで、前記第2方向と前記第3方向は、いずれも同一の平面に分布し、かついずれも前記第1方向と垂直である。該構造は、前記コイルユニットが前記第1磁気リングを駆動することにより、前記振動ユニットは、前記第2方向に沿って単独で振動し、又は前記コイルユニットが前記第2磁気リングを駆動することにより、前記振動ユニットは、前記第3方向に沿って単独で振動し、又は前記コイルユニットが前記第1磁気リング及び前記第2磁気リングを同時に駆動することにより、前記振動ユニットは、前記第2方向と前記第3方向と合力方向に沿って振動し、それにより、本発明の多方向振動モータは、多方向振動を実現することができる。
【0064】
以上は本発明の実施例だけであり、本発明の特許範囲を限定するものではなく、本発明の明細書及び図面内容を利用して行われた等価構造又は等価フロー変換、又は他の関連する技術分野に直接的又は間接的に適用することは、いずれも同様に本発明の特許保護範囲内に含まれる。


【要約】
【課題】本発明は多方向振動モータを提供する。
【解決手段】多方向振動モータはハウジング、振動ユニット及びコイルユニットを含み、振動ユニットは円柱状を呈する磁性鋼システムを含み、磁性鋼システムはその軸方向に平行な第1方向に沿って着磁され、コイルユニットはハウジング内に位置して磁性鋼システムに正対し、多方向振動モータはハウジングに固定されかつ環状を呈する周辺磁気リングをさらに含み、周辺磁気リングはコイルユニットを取り囲みかつコイルユニットと間隔を隔てて設けられる。周辺磁気リングの内側は、それに隣接する磁性鋼システムの周辺磁気リングの内側に対向する側と、磁極が同じであり、周辺磁気リングは複数であり、かつ2つずつの対称を呈する磁性鋼で共に構成され、周辺磁気リングは、第2方向に沿ってコイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置された2つの第1磁気リングと、第3方向に沿ってコイルユニットの対向する両側にそれぞれ設置された2つの第2磁気リングとを含み、第2方向と第3方向はいずれも同一の平面に分布し、かついずれも第1方向と垂直である。関連技術に比べて、本発明の多方向振動モータは多方向での振動を実現できかつ体積が小さい。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9