(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ジオセル用またはコーラルセル用複合樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/06 20060101AFI20241205BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241205BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20241205BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08L23/06
C08K3/013
C08L23/26
C08J5/18 CES
(21)【出願番号】P 2023537305
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2021018830
(87)【国際公開番号】W WO2022131711
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0178053
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ イン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン-ヒュン
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-057637(JP,A)
【文献】特開2017-179305(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00171513(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第104292588(CN,A)
【文献】国際公開第2016/031789(WO,A1)
【文献】特開2017-179304(JP,A)
【文献】特表2012-504058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/06
C08K 3/013
C08L 23/26
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)~(C)の総重量を基準として、(A)高密度ポリエチレン樹脂
75.0~85.0重量%と、(B)炭酸カルシウム
13.0~22.0重量%と、および(C)変性ポリオレフィン樹脂2.0~4.0重量%とを含み、密度が1.0~1.2g/cm
3である
複合樹脂組成物であり、
前記複合樹脂組成物を成形して得られる複合樹脂成形品は、伸び率が300~600%である、複合樹脂組成物。
【請求項2】
190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI
2.16)が0.1~0.3g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(MI
21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI
2.16)の比(melt flow ratio、MFR)が80~120である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項3】
高密度ポリエチレン樹脂(A)の密度が0.930~0.960g/cm
3、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI
2.16)が0.1~1.0g/10分、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(MI
21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI
2.16)の比(MFR)が60~140である、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項4】
炭酸カルシウムの平均粒径が2.0~5.0μmである、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項5】
変性ポリオレフィン樹脂(C)は無水マレイン酸(maleic anhydride)がグラフトされたポリエチレンである、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項6】
変性ポリオレフィン樹脂(C)中の無水マレイン酸の含有量が0.3~2.0重量%である、請求項5に記載の複合樹脂組成物。
【請求項7】
成分(A)~(C)100重量部に対して、3重量部以下の含有量で添加剤(D)をさらに含む、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項8】
添加剤(D)が、酸化防止剤、中和剤、補強材、耐候安定剤、帯電防止剤、活剤、滑り剤、カーボンブラック、顔料および染料からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項7に記載の複合樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項の複合樹脂組成物を成形して得られ、密度が1.0~1.2g/cm
3、引張強度が150~300kgf/cm
2、伸び率が300~600%である、複合樹脂成形品。
【請求項10】
複合樹脂成形品がシートまたはフィルムである、請求項9に記載の複合樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオセルまたはコーラルセル用複合樹脂組成物に関する。詳しくは、本発明は、密度が高く、引張強度および伸び率などの機械的物性に優れたジオセルまたはコーラルセル用複合樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオセル(geocell)は、軟弱な地盤を補強するために使用される土木用補強材で、一定の幅を持つ複数枚の高密度ポリエチレンストリップ(strip)を一定の間隔で超音波融着して製作される3次元ハニカム形状を持つ。ジオセルを地盤の上に広く広げた後、その内部に土砂やその他の充填材などを埋めて固め、地盤の剛性および工学的特性を向上させる(韓国特許出願公開第10-2016-0104634号、第10-2017-0112806号など参照)。
【0003】
近年、東南アジアなどで急激な気候変動により降雨量が増加し、河床が陥没するケースが頻繁に発生しており、これを防止するためのジオセルの役割が期待されている。
【0004】
一方、コーラルセル(coralcell)は沿岸の侵食を防止するために使用される人工サンゴ礁で、従来のコンクリートベースの人工サンゴ礁に比べて製作と施工が容易でコストが安いという利点がある(韓国特許出願公開第10-2020-0088784号など参照)。
【0005】
ところで、ジオセルおよびコーラルセルに使用される従来の高密度ポリエチレン(high-density polyethylene)樹脂組成物は、その密度が約1.0g/cm3以下であり、水中で浮遊してその機能を失う場合が生じることがある。
【0006】
したがって、従来のジオセルまたはコーラルセル用ポリエチレン樹脂組成物より密度が高く、引張強度や伸び率などの機械的物性に優れた複合樹脂組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、密度が高く、引張強度および伸び率などの機械的物性に優れたジオセルまたはコーラルセル用複合樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の一実施形態によれば、成分(A)~(C)の総重量を基準として、(A)高密度ポリエチレン樹脂70.0~88.0重量%と、(B)炭酸カルシウム10.0~30.0重量%と、(C)変性ポリオレフィン樹脂2.0~4.0重量%とを含み、密度が1.0~1.2g/cm3である複合樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明の実施形態において、複合樹脂組成物は、成分(A)~(C)の総重量を基準として、(A)高密度ポリエチレン樹脂77.0~82.0重量%と、(B)炭酸カルシウム15.0~20.0重量%と、(C)変性ポリオレフィン樹脂2.5~3.0重量%とを含み、密度が1.04~1.10g/cm3であることができる。
【0010】
本発明の実施形態において、複合樹脂組成物は、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI2.16)が0.1~0.3g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(MI21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI2.16)の比(melt flow ratio、 MFR)が80~120であることができる。
【0011】
本発明の実施形態において、高密度ポリエチレン樹脂(A)は、密度が0.930~0.960g/cm3、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI2.16)が0.1~1.0g/10分、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(MI21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI2.16)の比(MFR)が60~140であることができる。
【0012】
本発明の実施形態では、炭酸カルシウムは、平均粒子径が2.0~5.0μmであることができる。
【0013】
本発明の実施形態では、変性ポリオレフィン樹脂(C)は、無水マレイン酸(maleic anhydride)がグラフトされたポリエチレンであることができる。
【0014】
このとき、変性ポリオレフィン樹脂(C)中の無水マレイン酸の含有量が0.3~2.0重量%であることができる。
【0015】
本発明の実施形態において、複合樹脂組成物は、成分(A)~(C)100重量部に対して、3重量部以下の含有量で添加剤(D)をさらに含むことができる。このとき、添加剤(D)は、酸化防止剤、中和剤、補強材、耐候安定剤、帯電防止剤、活剤、スリップ剤、カーボンブラック、顔料および染料からなる群から選択される少なくとも一つであることができる。
【0016】
本発明の他の実施形態によれば、前記複合樹脂組成物を成形して得られ、密度が1.0~1.2g/cm3、引張強度が150~300kgf/cm2、伸び率が300~600%の複合樹脂成形品が提供される。
【0017】
本発明の実施形態では、複合樹脂成形品は、シートまたはフィルムであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態による複合樹脂組成物は、密度が高く、引張強度および伸び率などの機械的物性に優れており、ジオセルまたはコーラルセルを製造するために効果的に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0020】
複合樹脂組成物
本発明の一実施形態によれば、成分(A)~(C)の総重量を基準として、(A)高密度ポリエチレン樹脂70.0~88.0重量%と、(B)炭酸カルシウム10.0~30.0重量%と、および(C)変性ポリオレフィン樹脂2.0~4.0重量%とを含み、密度が1.0~1.2g/cm3である複合樹脂組成物が提供される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、成分(A)~(C)の総重量を基準として、(A)高密度ポリエチレン樹脂77.0~82.0重量%と、(B)炭酸カルシウム15.0~20.0重量%と、および(C)変性ポリオレフィン樹脂2.5~3.0重量%とを含み、密度が1.04~1.10g/cm3である複合樹脂組成物が提供される。
【0022】
(A)高密度ポリエチレン樹脂
本発明の実施形態による複合樹脂組成物は、成分(A)~(C)の総重量を基準として、70.0~88.0重量%、好ましくは75~85重量%または77.0~82.0重量%の高密度ポリエチレン樹脂(A)を含む。高密度ポリエチレン樹脂(A)の含有量が70.0重量%未満の場合、複合樹脂組成物から成形品の製造が容易でない、または複合樹脂組成物から得られる成形品の伸び率が低下することがある。一方、高密度ポリエチレン樹脂(A)の含有量が88.0重量%を超える場合、成形品の引張強度などの機械的物性が低下することがある。
【0023】
ここで、高密度ポリエチレン樹脂(A)を製造する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知の高密度ポリエチレン樹脂の製造方法をそのまま、または適切に変形して使用することができる。例えば、気相重合法、溶液重合法またはスラリー重合法などで製造することができる。好ましくは、オレフィン系モノマーの重合を気相重合で行うことができ、具体的には、オレフィン系モノマーの重合を気相流動層反応器内で行うことができる。
【0024】
本発明の実施形態において、高密度ポリエチレン樹脂(A)は、密度が0.930~0.960g/cm3であることができる。好ましくは、高密度ポリエチレン樹脂(A)の密度が0.935~0.950g/cm3であることができる。高密度ポリエチレン樹脂(A)の密度がこの範囲である場合、1.0g/cm3以上の密度を有する複合樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
本発明の実施形態において、高密度ポリエチレン樹脂(A)は、190℃で2.16kg荷重で測定される溶融指数(MI2.16)が0.1~1.0g/10分であることができる。好ましくは、高密度ポリエチレン樹脂(A)の190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数が0.1~0.5g/10分であることができる。高密度ポリエチレン樹脂(A)の溶融指数がこの範囲である場合、複合樹脂組成物の加工性が十分であり、これにより製造される成形品の機械的物性が優れている。
【0026】
本発明の実施形態において、高密度ポリエチレン樹脂(A)は、190℃で21.6kgの荷重で測定される融解指数(MI21.6)と2.16kgの荷重で測定される融解指数(MI2.16)の比(MFR)が60~140であることができる。好ましくは、高密度ポリエチレン樹脂(A)のMFRが70~130であることができる。高密度ポリエチレン樹脂(A)のMFRがこの範囲である場合、複合樹脂組成物の加工性が十分である。
【0027】
(B) 炭酸カルシウム
本発明の実施形態による複合樹脂組成物は、成分(A)~(C)の総重量を基準として、10.0~30.0重量%、好ましくは13.0~22.0重量%または15.0~20.0重量%の炭酸カルシウム(B)を含む。炭酸カルシウム(B)の含有量が10.0重量%未満の場合、複合樹脂組成物から得られる成形品の引張強度などの機械的物性が低下することがある。一方、炭酸カルシウム(B)の含有量が30.0重量%を超える場合、成形品の製造が容易でなくなったり、成形品の伸び率が低下することがある。
【0028】
本発明の実施形態において、炭酸カルシウムは平均粒子径が2.0~5.0μmであることができる。炭酸カルシウム(C)の平均粒子径がこの範囲内である場合、樹脂マトリックス内での分散度が向上し、成形品の機械的物性を向上させるのに有効である。
【0029】
成形品の機械的物性の低下を防ぐために、無機物と高密度ポリエチレン樹脂の結合力を強化して無機物の移行(migration)を防止しなければならない。このため、変性ポリオレフィン樹脂を商用化剤として使用することができ、変性ポリオレフィン樹脂のカルボキシル(carboxyl)基と炭酸カルシウムのヒドロキシル(hydroxyl)基間の水素結合を通じて結合力を強化することができる。
【0030】
また、変性ポリオレフィンのオレフィン鎖(chain)と高密度ポリエチレンの鎖は、物理的な絡み合い(physical entanglement)を形成し、熱安定性を高め、複合樹脂組成物の引張強度および伸び率の低下を防止することができる。
【0031】
(C)変性ポリオレフィン樹脂
本発明の実施形態による複合樹脂組成物は、成分(A)~(C)の総重量を基準として、2.0~4.0重量%、好ましくは2.5~3.5重量%または2.5~3.0重量%の変性ポリオレフィン樹脂(C)を含む。変性ポリオレフィン樹脂(C)の含有量が増加するほど、高密度ポリエチレン樹脂(A)と炭酸カルシウム(B)間の混和性(compatibility)が良くなるが、この含有量が4.0重量%を超えると、複合樹脂組成物から製造される成形品の引張強度などの機械的物性が低下することがある。
【0032】
本発明の実施形態において、変性ポリオレフィン樹脂(C)は、無水マレイン酸(maleic anhydride)がグラフトされたポリエチレンであることができる。このとき、無水マレイン酸がグラフトされるポリエチレンは、気相重合で製造されたものであってもよい。
【0033】
ここで、変性ポリオレフィン樹脂(C)中の無水マレイン酸の含有量が0.3~2.0重量%であることができる。無水マレイン酸のグラフト率が前記範囲内である場合、極性基材に対する接着性を向上させる効果が得られる。例示的な一実施形態において、本発明の複合樹脂組成物に含まれる無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、密度が0.91~0.97g/cm3であり、溶融指数が0.2~1.5g/10分のポリエチレンに無水マレイン酸をグラフト重合して製造することができる。
【0034】
(D) 添加剤
本発明の実施形態による複合樹脂組成物は、成分(A)~(C)100重量部に対して、3重量部以下の含有量で添加剤(D)をさらに含むことができる。
【0035】
具体的な一実施形態において、添加剤(D)は、例えば酸化防止剤、中和剤、補強材、耐候安定剤、帯電防止剤、活剤、滑り剤、カーボンブラック、顔料および染料からなる群から選択される少なくとも1種であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
例示的な一実施形態では、添加剤(D)は、ラジカルを除去して加工熱安定性を改善する一次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤、BHT(butylated Hydroxytoluene)、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3114および一次酸化防止剤によって生成された過酸化物を分解する二次酸化防止剤である亜リン酸塩系酸化防止剤であるIrgafos 168から選択される少なくとも1つの酸化防止剤を含むことができる。
【0037】
このとき、酸化防止剤は、複合樹脂組成物100重量部を基準として、0.01~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部の含有量で含有することができる。酸化防止剤の含有量が0.01重量部未満であれば、複合樹脂組成物の酸化防止効果を確保することが難しく、1重量部を超えると、酸化防止効果の増加がわずかであり、複合樹脂組成物の価格経済性が低下する可能性があり、好ましくない。
【0038】
前記成分を含む本発明の実施形態による複合樹脂組成物は、密度が1.0~1.2g/cm3である。好ましくは、複合樹脂組成物の密度が1.04~1.10g/cm3または1.05~1.09g/cm3であることができる。複合樹脂組成物の密度がこの範囲である場合、これから製造されるシートを加工して得られるジオセルまたはコーラルセルが水中で浮遊せず、その機能を維持することができる。
【0039】
本発明の実施形態において、複合樹脂組成物は、190℃で2.16kg荷重で測定される溶融指数(MI2.16)が0.1~0.3g/10分であることができる。好ましくは、190℃で2.16kg荷重で測定される複合樹脂組成物の溶融指数が0.1~0.2g/10分であることができる。複合樹脂組成物の溶融指数がこの範囲である場合、複合樹脂組成物の加工性が十分であり、これにより製造される成形品の機械的物性が優れている。
【0040】
本発明の実施形態において、複合樹脂組成物は、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(MI21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(MI2.16)の比(melt flow ratio、MFR)が80~120であることができる。好ましくは、複合樹脂組成物のMFRが85~110または90~110であることができる。複合樹脂組成物のMFRがこの範囲である場合、複合樹脂組成物の加工性が十分であることができる。
【0041】
本発明の複合樹脂組成物を製造する方法に特別な制限はなく、本発明の属する技術分野に公知の複合樹脂組成物の製造方法をそのまま、または適切に変形して使用することができ、前記の各樹脂成分を特別な順序の制限なく、所望の順序に応じて自由に選択して混合することができる。具体的に例えば、前記の各樹脂と添加剤などを必要量だけニーダー(needer)、ロール(roll)、バンバリーミキサー(Banbury mixer)などの混練機または1軸/2軸押出機などに投入した後、これらの機器を使って投入された原料をブレンドする方法によって本発明の複合樹脂組成物を製造することができる。
【0042】
好ましくは、前記の各樹脂と添加剤等を二軸スクリュー押出機で60~210℃の温度で溶融ブレンドしてペレット化する。
【0043】
複合樹脂成形品
本発明の他の実施形態によれば、本発明の複合樹脂組成物を成形して製造される複合樹脂成形品が提供される。
【0044】
本発明の実施形態による複合樹脂組成物から成形品を製造する方法に特に制限はなく、本発明が属する技術分野に公知の方法を使用することができる。例えば、本発明の実施形態による複合樹脂組成物を射出成形、押出成形、鋳造成形、メルトブロー成形などの通常の方法で成形して複合樹脂成形品を製造することができる。
【0045】
本発明の実施形態では、複合樹脂成形品が押出成形品または鋳造成形品である。より具体的には、複合樹脂成形品がシートまたはフィルムであり、より具体的には、複合樹脂成形品がジオセルまたはコーラルセル用シートである。
【0046】
本発明の実施形態では、複合樹脂成形品は、密度が1.0~1.2g/cm3である。好ましくは、複合樹脂成形品の密度が1.04~1.10g/cm3または1.05~1.09g/cm3であることができる。複合樹脂成形品の密度がこの範囲である場合、これを加工して得られるジオセルまたはコーラルセルが水中で浮遊せず、その機能を維持することができる。
【0047】
また、複合樹脂成形品は引張強度が150~300kgf/cm2である。好ましくは、複合樹脂成形品の引張強度が200~270kgf/cm2である。複合樹脂成形品の引張強度がこの範囲である場合、これを加工して得られるジオセルまたはコーラルセルが外力によって変形せず、その機能を維持することができる。
【0048】
また、複合樹脂成形品は、伸び率が300~600%である。好ましくは、複合樹脂成形品の伸び率が350~550%である。複合樹脂成形品の伸び率がこの範囲である場合、これを加工して得られるジオセルまたはコーラルセルが外力によって破壊されず、その機能を維持することができる。
【0049】
実施例
以下、実施例と比較例により本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらだけに限定されるものではない。
【0050】
実施例と比較例で下記のような樹脂および化合物を使用した。
【0051】
A1: 高密度ポリエチレン(Hanwha Solution, 9031、密度 0.944g/cm3、溶融指数0.2g/10 min、MFR 113)
B1: 炭酸カルシウム(コーツ、CMS8000、平均粒径3.0μm)
B2: タルク(コーツ、KC5000L、平均粒径3.0μm)
C1: 無水マレイン酸グラフトポリエチレン樹脂(ロッテ化学、Adpoly EM101、無水マレイン酸の含有量0.5~1.0重量%)
製造例
下記表1のような種類と含有量(単位:重量部)の樹脂および化合物を二軸スクリュー押出機で60~210℃の温度で溶融ブレンドしてペレット化した。このとき、無機充填材は、その形状を維持するために押出機中段の側面から投入した。
【0052】
その後、成形プレス(molding press)を利用して190℃、30barで2mm厚のシートを製作した後、ASTM D638試験片カッターを利用して物性測定用の試験片を製作した。
【0053】
【0054】
試験例
実施例と比較例の組成物および成形品の物性は下記の方法で測定した。その結果を下表2に示した。
【0055】
(1) 密度
ASTM D1505に準拠して測定した。
【0056】
(2) 溶融指数(melt index)および溶融指数比(melt flow ratio、MFR)
ASTM D1238に基づき、190℃で21.6kgの荷重と2.16kgの荷重でそれぞれ融解指数を測定し、その比(MI21.6/MI2.16)を求めた。
【0057】
(3) 引張強度および伸び
ASTM D638に準拠し、200mm/minの条件下で測定した。
【0058】
【0059】
前記表1および2から確認されるように、本発明の範囲に属する実施例の複合樹脂組成物から製造された試験片は、密度が高く、引張強度および伸び率が優れていた。
【0060】
一方、本発明の範囲外の比較例の複合樹脂組成物から製造された試験片は、密度、引張強度および伸び率の少なくとも1つが劣っていた。
【0061】
具体的には、高密度ポリエチレンの含有量が高く、炭酸カルシウムの含有量が低く、変性ポリオレフィン樹脂を使用しない比較例1の場合、試験片の密度と引張強度が劣っていた。高密度ポリエチレンの含有量が高く、炭酸カルシウムの含有量が低い比較例2の場合、試験片の密度が劣っていた。高密度ポリエチレンの含有量が高く、変性ポリオレフィン樹脂を使用しない比較例3の場合、試験片の引張強度と伸び率が劣っていた。変性ポリオレフィン樹脂を使用しない比較例4の場合、試験片の引張強度と伸び率が劣っていた。高密度ポリエチレンの含有量が高く、炭酸カルシウムの代わりにタルクを使用し、変性ポリオレフィン樹脂を使用しなかった比較例5の場合、試験片の密度と伸びが劣っていた。炭酸カルシウムの代わりにタルクを使用した比較例6の場合、試験片の密度と伸び率が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
したがって、本発明の範囲に属する実施例による複合樹脂組成物は、密度が高く、引張強度および伸び率が優れているため、これから製造される成形品、具体的にはシートは、ジオセルまたはコーラルセルを製造するために効果的に使用することができる。