(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】複合ペイン及びP偏光放射を含む投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241205BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20241205BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241205BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B27/01
C03C27/12 N
B60K35/23
H04N5/64 521Z
(21)【出願番号】P 2023544583
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2022052515
(87)【国際公開番号】W WO2022179817
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-07-24
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ヤン-ヘンドリック ハーゲマン
(72)【発明者】
【氏名】バレンティーン シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ゴマー
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073408(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080355(WO,A1)
【文献】特開平10-096874(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0333593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
C03C 27/12
B60K 35/23
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影装置(100)であって、
-透明な外側ペイン(2)、熱可塑性中間層(4)、反射層(9)、及び透明な内側ペイン(3)を有する複合ペイン(1)を有しており、
前記外側ペイン(2)は、前記熱可塑性中間層(4)とは反対側を向いた外側面(I)、及び前記熱可塑性中間層(4)に面した内側面(II)を有し、前記内側ペイン(3)は、前記熱可塑性中間層(4)に面した外側面(III)、及び前記熱可塑性中間層(4)とは反対側を向いた内側面(IV)を有しており、
前記反射層(9)は、前記外側ペイン(2)と前記内側ペイン(3)との間に配置され、p偏光(10)を反射するのに適しており、
前記反射層(9)自体は不透明であるか、又は前記内側ペイン(3)の前記内側面(IV)から進んで前記複合ペイン(1)を通して見たときに、不透明な背景の前に空間的に配置されており、
-画像表示装置(8)が、前記反射層(9)に向けられ、前記内側ペイン(3)を通してp偏光(10)を前記反射層(9)に照射し、
前記反射層(9)は、前記p偏光(10)を反射し、
前記反射層(9)は、少なくとも1つの金属を含有し、又はホログラフィック光学素子である、
投影装置(100)。
【請求項2】
前記反射層(9)は、前記反射層(9)に入射する前記p偏光(10)の、30%以
上を反射する、請求項1に記載の投影装置(100)。
【請求項3】
前記画像表示装置(8)は
、ディスプレ
イである、請求項1又は2に記載の投影装置(100)。
【請求項4】
前記不透明な背景は、少なくとも1つのマスキングストリップ(5)として実装され、前記外側ペイン(2)の縁部領域に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の投影装置(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのマスキングストリップ(5)は、前記外側ペイン(2)の前記内側面(II)上に配置される、請求項4に記載の投影装置(100)。
【請求項6】
前記反射層(9)は、前記内側ペイン(3)の前記外側面(III)上に配置されている、請求項4又は5に記載の投影装置(100)。
【請求項7】
前記反射層(9)は、前記外側ペイン(2)の前記内側面(II)上の前記マスキングストリップ(5)上に配置される、請求項5に記載の投影装置(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのマスキングストリップ(5)は、前記複合ペイン(1)の前記縁部領域において周縁的に実装され、特に前記反射層(9)と重なる部分(11’)において、それとは異なる部分(11’’)よりも広い幅を有する、請求項4~7のいずれか一項に記載の投影装置(100)。
【請求項9】
前記反射層(9)は、コーティングされたフィルム又はコーティングされていないフィルムであり、前記熱可塑性中間層(4)内に配置されている、請求項1~5までのいずれか一項に記載の投影装置(100)。
【請求項10】
前記反射層(9)は、金属を含まない反射フィルムからなる、請求項1~8までのいずれかに記載の投影装置(100)。
【請求項11】
少なくとも1.7の屈折率を有する高屈折率コーティング(14)が、少なくとも前記内側ペイン(3)の前記内側面(IV)の領域において配置されており、前記領域は前記反射層(9)と完全に重なっている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の投影装置(100)。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の投影装置(100)を製造する方法であって、
(a)透明な外側ペイン(2)、熱可塑性中間層(4)、反射層(9)、及び透明な内側ペイン(3)を配置して、層スタックを形成すること、
前記外側ペイン(2)は、前記熱可塑性中間層(4)とは反対側を向いた外側面(I)、
及び前記熱可塑性中間層(4)に面した内側面(II)を有し、前記内側ペイン(3)は、前記熱可塑性中間層(4)に面した外側面(III)、及び前記熱可塑性中間層(4)とは反対側を向いた内側面(IV)を有しており、
前記反射層(9)は、前記外側ペイン(2)と前記内側ペイン(3)との間に配置され、p偏光(10)を反射するのに適しており、
前記反射層(9)自体は不透明であるか、又は前記内側ペイン(3)の前記内側面(IV)から進んで前記層スタックを通して見たときに、不透明な背景の前に空間的に配置される、
(b)前記層スタックを積層
処理して、複合ペイン(1)を形成すること、
(c)前記反射層(9)に向けられ、前記内側ペイン(3)を通してp偏光(10)を前記反射層(9)に照射する画像表示装置(8)を配置すること、
前記反射層(9)は、前記p偏光(10)を反射する、
を含む、方法。
【請求項13】
陸上、空中、又は水上を移動する乗り物における、請求項1~
11のいずれか一項に記載の投影装置(100)の使
用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影装置、その製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、今日の乗り物及び航空機において頻繁に使用されている。ヘッドアップディスプレイは、イメージングユニットを使用して動作し、これは、光学モジュール及び映写表面を使用して、ドライバーが虚像として認識する画像を投影する。この画像を、例えば、投影表面としての乗り物のフロントガラス(ウィンドシールド)を介して反射させると、交通安全を大きく高める重要な情報を利用者に表示することができる。
【0003】
通常、乗り物のフロントガラスは、2枚のガラスペインで構成されており、これらは、少なくとも1枚の熱可塑性フィルムを介して互いに積層されている。上述したヘッドアップディスプレイには、プロジェクタ画像がフロントガラスの両方の表面で反射するという問題が生じる。このように、運転者は、望ましい一次画像だけを知覚するわけではない(これは、フロントガラスの内部側表面上の反射(一次反射)によって生ずる)。運転者はまた、わずかにずれた二次画像も知覚する(これは、通常、強度が弱く、フロントガラスの外部側表面上の反射(二次反射)によって生ずる)。この問題は一般に、反射表面を互いに対して意図的に選択された角度で配置することによって、一次画像及び二次画像が一致し、その結果、二次画像がもう気にならないほど目立たなくなることで、解決される。
【0004】
ヘッドアップディスプレイプロジェクタの放射は、典型的に、実質的にs偏光である;なぜなら、これは、p偏光と比較してフロントガラスの反射特性が優れているためである。しかしながら、運転者は、p偏光のみを透過する偏光選択性サングラスを着用している場合、HUD画像をほとんど認識できないか、又はまったく認識できない。この結果、偏光選択性サングラスと適合性のあるHUD投影装置が必要である。従って、これに関連した問題の解決策は、p偏光を用いる投影装置を使用することである。
【0005】
独国特許出願公開第102014220189号明細書は、p偏光放射で動作して、ヘッドアップディスプレイ画像を生成する、ヘッドアップディスプレイ投影装置を開示している。典型的に、入射角は、ブリュースター角(偏光角)に近く、それ故にp偏光は、ガラス表面によってわずかしか反射されないため、そのフロントガラスは、運転者の方向においてp偏光を反射できる反射構造を有する。厚さ5nm~9nmの単一金属層(例えば、銀製又はアルミニウム製)を、乗用車の内部とは反対側に面している、内側ペインの外側面上に適用することが、反射構造として提案されている。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0135742号も同様に、p偏光放射で動作して、ヘッドアップディスプレイ画像を生成し、運転者の方向においてp偏光放射を反射できる反射構造を有する、ヘッドアップディスプレイ投影装置を開示している。国際公開第96/19347号サーチレポートにおいて開示されている多層ポリマー層が、反射構造として提案されている。
【0007】
ヘッドアップディスプレイ技術に基づいてディスプレイを設計するとき、対応する高出力をプロジェクタが有することによって、(特には太陽光が入射した場合に)投影された画像が十分な明るさを持ち、視聴者によって容易に認識できるようにすることを、確保するためにさらに注意を払わなければならない。これには、ある程度のサイズのプロジェクタが必要であり、それに応じた電力消費が伴う。
【0008】
未公開の欧州特許出願20200006.3号明細書及び欧州特許出願20200009.7号明細書は、フロントガラスの縁部領域におけるマスキングストリップの使用を示しており、マスキングストリップの前に透明要素が配置されており、これが、その要素上に投影された画像を乗り物内部に反射する。背景が不透明なため、画像はより高いコントラストで認識されうる。
【0009】
独国特許出願公開第102009020824号明細書は、虚像システムを有するフロントガラスを開示している。画像表示装置は、反射領域に向けられ、これは不透明な反射層自体であるか、又は不透明な背景の前に配置されている。反射層は、乗り物内部に面する内側ペインの面上に配置されている。これにより、高いコントラストをもって反射画像を認識することができる。しかしながら、反射層は、外部の有害な影響からは保護されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した問題に対応して、本発明の目的は、これらの欠点を回避できる改良された投影装置を提供することにある。例えば、次のようなヘッドアップディスプレイ技術に基づく投影装置を有することが望ましい:望ましくない二次画像が発生しない:投影装置が、比較的容易に実装され、表示される画像情報の十分な明るさ及びコントラストを備える良好な認識性を有する。さらに、光反射のために提供された要素は、外部の影響から可能な限り保護されるべきであり、エネルギー消費を比較的低くするべきであり、偏光レンズを有するサングラスを着用していても投影装置を認識できるようにするべきである。さらに、投影装置は、製造が簡単かつ経済的であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、独立請求項1、14及び15に従う投影装置によって、本発明により達成される。好ましい実施形態は、従属請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明による投影装置の例示的な実施形態の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明による投影装置の様々な実施形態のうちの1つの拡大断面図である。
【
図4】
図4は、本発明による投影装置の様々な実施形態のうちの1つの拡大断面図である。
【
図5】
図5は、本発明による投影装置の様々な実施形態のうちの1つの拡大断面図である。
【
図6】
図6は、本発明による投影装置の様々な実施形態のうちの1つの拡大断面図である。
【
図7】
図7は、本発明による投影装置の様々な実施形態のうちの1つの拡大断面図である。
【
図8】
図8は、2つの異なる複合ペインにおいて測定された反射率Rを波長WLの関数として示す図である。
【
図9】
図9は、本発明による方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、投影装置が記載されている。投影装置は、複合ペイン、及び複合ペイン上に配置された画像表示装置を有する。複合ペインは、透明な外側ペイン、透明な内側ペイン、熱可塑性中間層、及び反射層(ミラー層)を有する。外側ペインは、熱可塑性中間層とは反対側を向く外側面、及び熱可塑性中間層に面する内側面を有し、内側ペインは、熱可塑性中間層に面する外側面、及び熱可塑性中間層とは反対側を向く内側面を有する。好ましくは、複合ペインは、乗り物のフロントガラスとして機能する。
【0014】
反射層は、外側ペインと内側ペインとの間に配置され、「間」とは、熱可塑性中間層内であること、及び、外側ペインの内側面及び内側ペインの外側面上における直接の空間的接触の、両方を意味しうる。反射層は、p偏光、好ましくは可視光を反射するように、適切に実装される。反射層は、それ自体が不透明であるか、又は内側ペインの内側面から進んで複合ペインを通して見たときに、不透明な背景の前に空間的に配置される。この文脈において、不透明な背景は、外側ペインの外側面又は内側面上において、又は熱可塑性中間層内に配置されうる。
【0015】
もちろん、反射層自体を、不透明にすることもでき、かつなおも、内側ペインを通して見たときに不透明な背景の前に空間的に配置することもできる。本発明の文脈において、反射層が配置されている複合ペインの領域は、不透明である。反射層が不透明な背景の前に配置される場合、反射層は、好ましくは透明である。
【0016】
本発明は、少なくとも1つの不透明な背景と重なる反射層によって、不透明な背景に対して高いコントラストを有する良好な画像表示が可能となり、それにより、画像は明るく見え、このようにして視認性にも優れるという、知見に基づいている。有利なことに、これによって、画像表示装置の電力の低減が可能になり、その結果、エネルギー消費の低減が可能になる。これは本発明の主要な利点である。
【0017】
「複合ペインを通して見たとき」という表現は、複合ペインを通して、内側ペインの内側面から進んで見ることを意味する。本発明の文脈において、「の前に空間的に」とは、反射層を、少なくとも不透明な背景よりも、外側ペインの外側面から空間的に遠くに配置することを意味する。反射層は、不透明な背景上に直接適用されうる。しかしながら、不透明な背景上に直接適用されているかどうかに関係なく、反射層は、複合ペインを通して見るとき、常に不透明な背景と完全に重なっている。換言すれば、反射層はこのようにして、内側ペインの内側面で出発して、「複合ペインを通して見たとき」、不透明な背景と重なって、配置される。
【0018】
画像表示装置はp偏光を生成し、これは内側ペインの内側面において複合ペインに入り、少なくとも部分的に内側ペインを通じて透過する。p偏光は、反射層上に選択的に投影(すなわち、射出)される。反射層上に入射するp偏光は、少なくとも部分的に反射され、内側ペインの内側面において複合ペインから出射する。画像表示装置によって発生する光は、好ましくは、可視光、すなわち、380nm~780nmの波長範囲内の光である。
【0019】
画像表示装置の放射は、好ましくは、45°~75°、特に好ましくは55°~65°、特には57°の入射角で、反射層の領域において、複合ペインに当たる。入射角は、画像表示装置の放射の入射ベクトルと反射層の幾何学的中心における面法線との間の角度である。HUD投影配置に対して典型的な約65°の入射角は、空気/ガラス転移に対するブリュースター角(56.5°、ソーダ石灰ガラス)に比較的近いため、画像表示装置により発せられるp偏光放射は、ペインの表面によってほとんど反射されない。
【0020】
「p偏光」という用語は、主にp偏光を有する光からなる可視スペクトル範囲からの光を意味する。p偏光は、好ましくは、50%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上、とりわけ約100%のp偏光を有する光の割合を有する。
【0021】
偏光方向の表示は、複合ペイン上への放射の入射平面を指す。「p偏光放射」という表現は、その電場が入射平面内において振動する放射を指す。「S偏光放射線」とは、その電場が入射平面に対して垂直に振動する放射を指す。入射平面は、入射ベクトル及び照射領域の幾何学的中心における複合ペインの面法線によって生成される。
【0022】
換言すれば、偏光、すなわち特にp偏光放射及びs偏光放射の割合は、画像表示装置によって照射される領域の点において、好ましくは照射領域の幾何学的中心において、決定される。複合ガラスは湾曲してもよく(例えば、フロントガラスとして設計されているとき)、これは画像表示装置の放射の入射平面に影響を与えるため、残りの領域において、これからわずかに逸脱した偏光比率が発生しうるが、これは物理学的理由から避けられない。
【0023】
不透明な背景は、好ましくは、不透明なマスキングストリップである。マスキングストリップは、好ましくは、1つ以上の層を含むコーティングである。しかしながら、代替的には、複合ペイン内に挿入される不透明な要素、例えばフィルムであってもよい。
【0024】
複合ペインの好ましい実施形態によれば、マスキングストリップは単一層からなる。これは、複合ペインを特に簡単かつ経済的に製造できるという利点を有する;なぜなら、マスキングストリップ用に単一層だけを形成すればよいためである。
【0025】
本発明の文脈において説明した作用モードに加えて、マスキングストリップは、それが無ければ設置された状態のペインを通して認識可能である構造のマスキング(覆い)としても機能しうる。特には、フロントガラスの場合、マスキングストリップは、フロントガラスを乗り物本体内に接着するための接着剤ビード(接着剤の滴)をマスキングするのに役立つ。これは、通常不規則に適用された接着剤ビードが外側から見えるのを防ぐことで、フロントガラス全体の調和のとれた印象が生み出されることを意味する。一方、マスキングストリップは、使用される接着剤のための紫外線保護として機能する。UV光を照射し続けることで接着剤が損傷し、時間の経過とともに乗り物本体へのペインの接着が緩むであろう。電気的に制御可能な機能層を備えたペインの場合、マスキングストリップを、例えば、バスバー及び/又は接続要素を隠すためにも使用しうる。
【0026】
マスキングストリップは、好ましくは、外側ペイン上に、特にはスクリーン印刷によって、印刷される。印刷インクは、目の細かい織物を通してガラスペイン上に押し付けられる。印刷インクは、例えばゴム製のスクイージーを使って織物を通して押し付けられる。織物は、印刷インクを透過する領域及びそのインクを透過しない領域を有し、これらが印刷の幾何学的形状を定義する。このようにして、織物は、印刷用のステンシルとして機能する。印刷インクは、液相(溶媒)、例えば水又はアルコールなどの有機溶媒中に懸濁された、少なくとも1つの顔料及びガラスフリットを含有する。顔料は、典型的には、黒色顔料、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、ボーンブラック、酸化鉄ブラック、スピネルブラック、及び/又はグラファイトである。
【0027】
インクを印刷した後、ガラスペインは温度処理を受け、この処理において、液相が蒸発によって排出され、ガラスフリットが溶け、ガラス表面に恒久的に接着される。温度処理は、典型的には、450℃~700℃の範囲内の温度において行われる。顔料は、溶融ガラスフリットによって形成されたガラスマトリックス中に、マスキングストリップとして残る。マスキングストリップは、好ましくは、5μm~50μm、特に好ましくは8μm~25μmの厚さを有する。
【0028】
代替的には、マスキングストリップは、色づけされた又着色された、好ましくは黒く着色された、熱可塑性複合フィルムであって、好ましくは、ポリビニルブチラール(PVB)、エチルビニルアセテート(EVA)、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、好ましくはPVBに基づく熱可塑性複合フィルムである。複合フィルムの色づけ又は着色は、自由に選択できるが、好ましくは黒色である。色づけされた又は着色された複合フィルムは、外側ペインと内側ペインとの間に配置されることが好ましい;しかしながら、内側ペインの外側面上には配置されない。色づけされた又は着色された熱可塑性複合フィルムは、好ましくは0.25mm~1mmの厚さを有する。好ましくは、色づけされた又は着色された複合フィルムは、複合ペインの表面の最大50%、特に好ましくは最大30%にわたって延在する。複合ペインにおける厚さの違いを避けるために、透明なさらなる熱可塑性複合フィルムが外側ペインと内側ペインの間に配置され、これは、複合ペインの表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも30%にわたって延在する。色づけされた又は着色された複合フィルムは、透明な熱可塑性複合ペインからずれた(オフセットされた)複合ペインの表面において、それらが重なったり一致したりしないように配置される。
【0029】
マスキングストリップは、一部の領域において着色された又は色づけされた熱可塑性複合フィルムであってもよい。この場合、反射層は、熱可塑性複合フィルムの着色された又は色づけされた領域の前に空間的に配置される。複合フィルムの着色又は色づけは、好ましくは、複合ペインの表面の最大50%、特に好ましくは最大30%の領域にわたって延在する。一部の領域において着色された又は色づけされた熱可塑性複合フィルムの残りの部分は、透明、すなわち着色又は色づけ無しで実装される。一部の領域において着色された又は色づけされた熱可塑性複合フィルムは、好ましくは、複合ペインの表面全体に延在する。マスキングストリップを、着色した又は色づけした熱可塑性複合フィルムとして、又は一部の領域において着色した又は色づけした熱可塑性複合フィルムとして実装すると、複合ペインの製造が簡素化され、その安定性が向上する。不透明な背景を作成するために外側ペイン又は内側ペインを事前にコーティングする必要がないことは、非常に有利である:なぜなら、これらの事前のコーティングは、複合ペインの安定性及びプロセス効率に悪影響を及ぼしうるためである。
【0030】
外側ペイン及び内側ペインは、好ましくは下記を含み、又は下記でできている:ガラス、特に好ましくは平坦なガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸ガラス、又は透明なプラスチック、好ましくは硬質の透明なプラスチック、特にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、及び/若しくはそれらの混合物。
【0031】
外側ペイン及び内側ペインは、それ自体公知のさらに適切なコーティング、例えば、反射防止コーティング、焦げ付き防止コーティング、耐傷性コーティング、光触媒コーティング、又は日射遮蔽コーティング若しくは低放射率コーティングを有しうる。
【0032】
個々のペイン(外側ペイン及び内側ペイン)の厚さは広い範囲の種々の値であってよく、個々のケースの要件に適合しうる。好ましくは、0.5mm~5mm、好ましくは1.0mm~2.5mmの標準厚さを有するペインを用いる。ペインのサイズは広い範囲の種々の値であってよく、用途によって決める。
【0033】
複合ペインは、望ましい任意の三次元形状を有しうる。好ましくは、外側ペイン及び内側ペインは、シャドーゾーンを有さないことで、例えば、これらを陰極スパッタリングによってコーティングできる。好ましくは、外側ペイン及び内側ペインは、平坦であってもよいし、又は1つ若しくは複数の空間方向においてわずかに若しくは強く湾曲していてもよい。
【0034】
本発明の文脈において、「透明」とは、複合ペインの全透過率が、フロントガラスに対する法的要件(例えば、欧州連合ECE-R43の指令)に従い、好ましくは、50%以上、特に60%以上、例えば70%以上の、可視光に対する透過率を有することを意味する。このようにして、「透明な内側ペイン」及び「透明な外側ペイン」は、複合ペインの透視領域を通した透視がフロントガラスの法的要件を満たすように、内側ペイン及び外側ペインが透明であることを意味する。従って、「不透明」とは、10%未満、好ましくは5%未満、特には0%の光透過率を意味する。
【0035】
本発明の文脈において、「透明な外側ペイン」及び「透明な内側ペイン」は、内側ペイン及び外側ペインを通した透視が可能であることを意味する。好ましくは、透明な外側ペイン及び透明な内側ペインの光透過率のレベルは、少なくとも55%、特に好ましくは少なくとも60%、とりわけ少なくとも70%である。
【0036】
層がある材料に基づくとき、その層は、大部分がこの材料からなり、特には任意の不純物又はドーパントに加えて実質的にこの材料からなる。
【0037】
熱可塑性中間層は、随意にポリエチレンテレフタレート(PET)と組み合わせて、下記を含み、又は下記でできている:少なくとも1つの熱可塑性物質、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、及び/若しくはポリウレタン(PU)、又はそれらのコポリマー若しくは誘導体。しかしながら、熱可塑性中間層は、下記を含んでいてもよい:例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアセテート樹脂、注型樹脂(キャスティング樹脂)、アクリレート、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニル、及び/若しくはエチレンテトラフルオロエチレン、又はそれらのコポリマー若しくは混合物。
【0038】
熱可塑性中間層は、好ましくは、少なくとも1つの熱可塑性複合フィルムとして実装され、下記を含み、又は下記でできている:ポリビニルブチラール(PVB)、特に好ましくはポリビニルブチラール(PVB)及び可塑剤などの当業者に公知の添加剤。好ましくは、熱可塑性中間層は、少なくとも1つの可塑剤を含む。
【0039】
可塑剤は、プラスチックをより軟らかく、より柔軟に、より平滑にし、かつ/又はより弾性を高める化合物である。可塑剤は、プラスチックの熱弾性範囲をより低い温度にシフトさせることで、プラスチックが、使用温度範囲において望ましいより高い弾性特性を有するようにする。好ましい可塑剤は、カルボン酸エステル、特には低揮発性カルボン酸エステル、脂肪、油、軟質樹脂、及び樟脳(カンファ―)である。他の可塑剤は、好ましくは、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコールの脂肪族ジエステルである。可塑剤として特に好ましく使用されるのは、3G7、3G8、又は4G7であり、この場合、最初の桁はエチレングリコール単位の数を示し、最後の桁は化合物のカルボン酸部分における炭素原子の数を示す。したがって、3G8は、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、換言すれば、式C4H9CH(CH2CH3)CO(OCH2CH2)3O2CCH(CH2CH3)C4H9の化合物を表す。
【0040】
好ましくは、PVBに基づく熱可塑性中間層は、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%、さらにより好ましくは少なくとも30重量%、及びとりわけ少なくとも35重量%の可塑剤を含む。
【0041】
可塑剤は、例えば、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)を含み、又はこれでできている。
【0042】
熱可塑性中間層を、単一のフィルムによって形成してもよいし、複数のフィルムによって形成してもよい。熱可塑性中間層を、上下に配置された1つ以上の熱可塑性フィルムによって形成してよく、熱可塑性中間層の厚さは、好ましくは0.25mm~1mm、典型的には0.38mm又は0.76mmである。
【0043】
熱可塑性中間層は、機能性熱可塑性中間層、特には音響減衰特性を有する中間層、赤外線反射中間層、赤外線吸収中間層、及び/又は紫外線吸収中間層であってもよい。例えば、熱可塑性中間層は、可視光の狭い帯域を遮断する帯域フィルタフィルムであってもよい。
【0044】
反射層は、画像表示装置の光、好ましくは可視光を反射するように適切に設計される。反射層は、反射層上に入射する画像表示装置からのp偏光を、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは70%以上、特には90%以上の反射率で反射する。反射率は、全入射放射のうち反射される割合を表す。これは、%(100%の入射放射に基づく)で又は0~1の単位のない数値(入射放射に正規化されたもの)として示される。波長の関数としてプロットすると、反射スペクトルが形成される。p偏光放射に対する反射率に関する記述は、本発明の文脈において、内部側面上の表面法線に対して65°の入射角において測定された反射率を指す。反射率又は反射率スペクトルに関するデータは、検討中のスペクトル範囲内で均一に発光する光源であって、100%の正規化された放射強度を有する光源を用いた反射測定を指す。
【0045】
本発明による投影装置の好ましい実施形態によれば、画像表示装置、ディスプレイと呼んでもよい、を、下記として実装してよい:液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜トランジスタディスプレイ(TFT)、発光ダイオードディスプレイ(LED)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、マイクロLEDディスプレイなど、好ましくは、LCDのディスプレイ。p偏光の高い反射率のため、ヘッドアップディスプレイ用途において通常使用されるような、エネルギーを大量に消費するプロジェクタは必要ない。上述したディスプレイの種々の態様及び他の同様の省エネ画像表示装置で十分である。その結果、エネルギー消費量を削減することができる。
【0046】
好ましくは、本発明による投影装置は、複合ペインの縁部領域において少なくともマスキングストリップを有し、これは典型的にはペインの縁部に隣接する。この配置の大きな利点は、複合ガラスを乗り物におけるフロントガラスとして用いることに起因する:なぜなら、不透明な縁部領域が、このようにして運転者の視野の外にあるためである。
【0047】
マスキングストリップは、原則として、外側ペインのどちらの側にも配置してよい。複合ペインの場合、これは外部の影響から保護される、外側ガラスの内側面に適用されることが好ましい。
【0048】
本発明による投影装置の好ましい実施形態によれば、反射層を、内側ペインの外側面上に配置し、これにより簡単な製造が可能になる。この配置を用いると、反射光の割合が特に高くなることが判明した:なぜなら、熱可塑性中間層を通るp偏光の透過が回避されるためである。
【0049】
本発明による投影装置の別の好ましい実施形態によれば、反射層を、外側ペインの内側面上の(不透明な)マスキング層上に配置する。この配置を用いると、p偏光を有する反射光の割合が特に高くなることが判明した。1つ又は複数の追加の層を、マスキング層と反射層との間に配置しうる。
【0050】
本発明による投影装置の別の好ましい実施形態によれば、外側ペインの内側面上の第1マスキングストリップに加えて、少なくとも1つのさらなるマスキングストリップを、内側ペインの外側面上及び/又は内側ペインの内側面上に配置する。さらなるマスキングストリップは、外側ペインと内側ペインの接着を改善するのに役立ち、好ましくは、マスキングストリップに粗くて接着性のある表面を与えるセラミック粒子と混合される。これは、例えば、内側ペインの内側面上において、複合ペインを乗り物本体内に接着するのをサポートする。内側ペインの外側面上において、これは複合ペインの2つの個別のペインの積層をサポートする。内側ペインの内側面上に適用されるさらなるマスキングストリップは、美的理由、例えば、反射層の縁部を隠すため、又は透明領域への移行の縁部を形作るために設けてもよい。
【0051】
本発明による投影装置の別の好ましい実施形態によれば、マスキングストリップは、好ましくは、外側ペインの内側面上の、反射層がマスキングストリップと重なる部分において、幅広部が提供される。これは、マスキングストリップが、他の部分よりも広い幅(延長方向に垂直な寸法)を有することを意味する。このようにして、マスキングストリップを反射層の寸法に適切に適合させることができる。マスキングストリップは、縁部領域を取り囲むようにも形成される。
【0052】
反射層は、好ましくは、下記からなる群から選択される、少なくとも1種の金属を含む:アルミニウム、錫、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、又はそれらの混合合金。独立して、又は追加として、反射層は、酸化ケイ素を含有してよい。
【0053】
本発明の特定の一実施形態において、反射層は、薄膜スタック、すなわち薄い個々の層の層配列を含有するコーティングである。この薄膜スタックは、銀に基づく1つ以上の導電層を含有する。銀に基づく導電層は、反射コーティングに、基本的な反射特性並びにIR反射効果及び導電性をも与える。導電層は銀に基づく。導電層は、好ましくは、少なくとも90重量%の銀、特に好ましくは少なくとも99重量%の銀、最も特に好ましくは少なくとも99.9重量%の銀を含有する。銀層は、例えばパラジウム、金、銅、又はアルミニウムなどのドーパントを有してよい。銀に基づいた材料は、p偏光の反射に特に適している。反射層において銀を用いると、p偏光の反射において特に有利であることが証明されている。コーティングは、5μm~50μm、好ましくは8μm~25μmの厚さを有する。
【0054】
反射層をコーティングとして実装する場合、反射層を、好ましくは物理蒸着(PVD)によって内側ペイン上又は外側ペイン上に適用し、特に好ましくは陰極スパッタリング(「スパッタリング」)によって、最も特に好ましくはマグネトロン増強陰極スパッタリング(「マグネトロンスパッタリング」)によって適用する。コーティングを、好ましくは、内側ペインの外側面に適用するが、外側ペインの内側面に適用してもよい。しかしながら、原理的には、コーティングを、化学蒸着(CVD)(例えば、プラズマ化学蒸着(PECVD))によって、蒸着によって、又は原子層蒸着(ALD)によって適用してもよい。コーティングを、好ましくは、積層前にペインに適用する。
【0055】
反射層を、p偏光を反射する反射フィルムとして形成してもよい。反射層は、反射コーティングを備えたキャリアフィルム又は反射ポリマーフィルムであってよい。反射コーティングは、好ましくは、交互の屈折率を有する金属及び/又は誘電体層配列に基づく、少なくとも1つの層を含む。金属に基づく層は、好ましくは、銀及び/又はアルミニウムを含有する、又は銀及び/又はアルミニウムでできている。誘電体層は、例えば、下記に基づく:窒化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズ亜鉛、シリコン窒化ジルコニウムなどの混合シリコン金属窒化物、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン又は炭化ケイ素。上述の酸化物及び窒化物を、化学量論的、準化学量論的、又は超化学量論的に堆積してよい。これらは、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、又はホウ素などのドーパントを有してよい。反射ポリマーフィルムは、好ましくは、誘電ポリマー層を含む、又は誘電ポリマー層からなる。誘電性ポリマー層は、好ましくは、PETを含有する。反射層を反射フィルムとして実施する場合、その厚さは、好ましくは30μm~300μm、特に好ましくは50μm~200μm、とりわけ好ましくは100μm~150μmである。
【0056】
反射層がコーティングされた反射フィルムの場合、CVD又はPVDコーティング法を製造のために用いてもよい。
【0057】
本発明による投影装置の別の好ましい実施形態によれば、反射層を反射フィルムとして実装し、熱可塑性中間層内に配置する。この配置の利点は、薄膜技術 (CVD又はPVDなど)を用いて反射層を外側ペイン又は内側ペインに適用する必要がないことである。これにより、反射層におけるp偏光のより均一な反射など、さらに有利な機能を有する反射層が用いられることになる。さらに、複合ペインの製造を簡素化することができる;なぜなら、積層前に追加のプロセスを介して外側又は内側ペインに反射層を配置する必要がないためである。
【0058】
本発明の特に好ましい実施形態において、反射層は、反射フィルムであって、これは金属を含まず、p偏光の可視光線を反射する。反射層は、互いに相乗的に作用するプリズム及び反射偏光子に基づいて機能するフィルムである。反射層として用いるためのそのようなフィルムは、例えば3M社から市販されている。
【0059】
本発明の別の好ましい実施形態において、反射層はホログラフィック光学素子(HOE)である。「HOE」という用語は、ホログラフィーの動作原理に基づいた素子を指す。HOEは、通常は屈折率における変化としてホログラム内に保存された情報を用いて、ビーム経路内の光を変化させる。それらの機能は、干渉パターンが望ましい光学効果を生み出す平面又は球面の光波の重ね合わせに基づく。HOEは、輸送分野(例えばヘッドアップディスプレイなど)において、すでに用いられている。単純な反射層と比較したHOEの使用の利点は、目及びプロジェクタの位置の配置、並びにプロジェクタ及び反射層などのそれぞれの傾斜角に関する、幾何学的設計の自由度が大きいことに起因する。さらに、この変形例を用いると、二重画像が、特に大幅に軽減される、又はさらには防止される。HOEは、実画像又は仮想画像さえも、異なる画像幅において表示するのに適している。さらに、HOEを用いて幾何学的な反射角を調整しうるため、例えば乗り物内での利用の場合、運転者に送信される情報を、所望の視野角から非常によく表示できる。
有利なことに、反射層は、ペインにおける光の単なる反射と比較して、反射されたp偏光の特性を改善することができる。反射されるp偏光の割合は比較的高く、光の反射率は例えば約90%である。
【0060】
本発明の特定の一実施形態において、高屈折率コーティングを、内側ペインの内側面の全部又は一部の領域に適用する。高屈折率コーティングは、好ましくは、内側ペインの内側面と空間的に直接接触している。高屈折率コーティングは、複合ペインを通して見たときに反射層と完全に重なる、内側ペインの内側面上の領域内に、少なくとも配置されている。これは、画像表示装置によって反射層上に投影されるp偏光が、反射層に当たる前に高屈折率コーティングを通過することを意味する。本発明の文脈において、要素Aと要素Bとの「完全な重なり」とは、要素Bの平面に対する要素Aの正規直交射影が完全に要素B内に配置されることを意味する。
【0061】
高屈折率コーティングは、少なくとも1.7、特に好ましくは少なくとも1.9、最も特に好ましくは少なくとも2.0の屈折率を有する。屈折率の増加により高屈折効果が得られる。高屈折率コーティングが、内側ペインの内部側表面におけるp偏光の反射を弱めることで、反射コーティングの望ましい反射が、より大きなコントラストで現れるようにする。
【0062】
発明者による説明によれば、この効果は、高屈折率コーティングによる内部側表面の屈折率の増加に基づくものである。これにより、界面でのブリュースター角αBrewsterが増加する;なぜなら、次式として決定されることが知られているためである;ここで、n1は空気の屈折率であり、n2は放射が当たる材料の屈折率である。
【0063】
【0064】
高い屈折率を有する高屈折率コーティングは、ガラス表面の実効屈折率の増加をもたらし、このようにして、コーティングされていないガラス表面と比較して、ブリュースター角がより大きな値にシフトするよう導く。その結果、HUD技術に基づく投影装置の一般的な幾何学的関係によって、入射角とブリュースター角の差が小さくなることで、内側ペインの内側面におけるp偏光の反射が、抑制され、これによって、発生するゴースト像(ゴーストイメージ)が弱められる。
【0065】
高屈折率コーティングは、好ましくは単一層から形成され、この層の上下にさらなる層を有さない。この効果を達成するには単一層で十分であり、層を重ねて適用するよりも技術的に簡単である。しかしながら、原理的には、高屈折率コーティングは、複数の個別の層を有してもよく、これは、個別の場合において特定のパラメータを最適化するために望ましい場合がある。
【0066】
高屈折率コーティングに適した材料は、下記の通りである;窒化ケイ素(Si3N4)、ケイ素と金属の混合窒化物(例えば、ケイ素と窒化ジルコニウム(SiZrN)、混合ケイ素とアルミニウムの窒化物、混合ケイ素とハフニウムの窒化物、又は混合ケイ素と窒化チタンなど)、窒化アルミニウム、酸化スズ、酸化マンガン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化チタン、スズ・亜鉛混合酸化物、及び酸化ジルコニウム。また、遷移金属酸化物(酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化タンタルなど)又はランタニド酸化物(酸化ランタン、酸化セリウムなど)を用いてもよい。高屈折率コーティングは、好ましくは、これらの材料の1つ以上を含有する、又はそれらに基づく。
【0067】
高屈折率コーティングを、物理蒸着又は化学蒸着によって適用してよく、すなわち、PVD又はCVDコーティングとしてよい(PVD:物理蒸着、CVD:化学蒸着)。コーティングが好ましくは基づく適切な材料は、下記の通りである;特には窒化ケイ素、ケイ素-金属の混合窒化物(例えば、ケイ素-窒化ジルコニウム、混合ケイ素-窒化アルミニウム、混合ケイ素-ハフニウム窒化物、又は混合ケイ素-窒化チタン)、窒化アルミニウム、酸化スズ、酸化マンガン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、又はスズ-亜鉛混合酸化物。好ましくは、高屈折率コーティングは、陰極スパッタリング(「スパッタリング」)によって適用され、特にはマグネトロン増強陰極スパッタリング(「マグネトロンスパッタリング」)によって適用されるコーティングである。
【0068】
代替的には、高屈折率コーティングはゾルゲルコーティングである。ゾルゲル法において、まず、コーティングの前駆体を含有するゾルを提供し、熟成させる。熟成は、前駆体の加水分解及び/又は前駆体間の(部分的な)反応を含みうる。前駆体は、通常、溶媒、好ましくは水、アルコール(特にはエタノール)、又は水とアルコールの混合物中に存在する。この場合、ゾルは、好ましくは、溶媒中に酸化ケイ素前駆体を含有する。前駆体は、好ましくは、シラン、特にはテトラエトキシシラン又はメチルトリエトキシシラン(MTEOS)である。しかしながら、代替的には、下記を前駆体として使用してもよい;ケイ酸塩、特にはケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、又はケイ酸カリウム、例えばオルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、オルトケイ酸テトライソプロピル、又は一般形R2nSi(OR1)4-nのオルガノシラン。ここで、R1は、好ましくは、アルキル基である;R2は、アルキル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、アミン、フェニル、又はビニル基である;nは0~2の整数である。ハロゲン化ケイ素又はアルコキシドを用いてもよい。酸化ケイ素前駆体によって、酸化ケイ素のゾルゲルコーティングが形成される。コーティングの屈折率を本発明による値まで高めるために、屈折率を高める添加剤、好ましくは酸化チタン及び/若しくは酸化ジルコニウム、又はそれらの前駆体を、ゾルに添加する。完成したコーティングにおいて、屈折率を高める添加剤が酸化ケイ素マトリックス中に存在する。酸化ケイ素の、屈折率を高める添加剤に対するモル比を、望ましい屈折率に応じて自由に選択でき、例えば約1:1である。
【0069】
原則として、本発明の文脈において、屈折率を、特に明記しない限り、550nmの波長に基づいて指定する。屈折率を決定する方法は、当業者に知られている。本発明の文脈において示される屈折率を、例えば偏光解析法(エリプソメトリー)によって決定してよく、この場合、市販の偏光解析装置を用いてよい。
【0070】
本発明の別の特定の実施形態において、高屈折率コーティングを、追加のマスキングストリップ全体上又はその一部の領域上に適用し、追加のマスキングストリップを、内側ペインの内側面に適用する。これに関連して、「その一部の領域上に」という用語は、高屈折率コーティングを、追加のマスキングストリップ上に部分的又は完全に配置するが、さらに内側ペインの内側面上に適用してもよいことを意味する。これは、内側ペインにマスキングストリップが事前に適用されているかどうかに関係なく、高屈折率層を内側ペイン全体に適用できるという利点を有する。
【0071】
本発明はさらに、本発明による投影装置を製造する方法にも及ぶ。この方法は以下を含む:
【0072】
(a)第1のステップにおいて、熱可塑性中間層及び反射層を、透明な外側ペインと透明な内側ペインとの間に配置して、層スタックを形成する。外側ペインは、熱可塑性中間層とは反対側を向く外側面、及び熱可塑性中間層に面する内側面を有し、内側ペインは、熱可塑性中間層に面する外側面、及び熱可塑性中間層とは反対側を向く内側面とを有する。反射層を、p偏光を反射するために適切に実装する。さらに、反射層自体は、不透明であるか、又は内側ペインの内側面から進んで複合ペインを通して見たときに、不透明な背景の前に空間的に配置される。
【0073】
(b)第2ステップにおいて、層スタックを積層処理して複合ペインを形成する。
【0074】
(c)最後のステップにおいて、画像表示装置を配置し、これは、反射層に向けられ、内側ペインを通してp偏光を反射層に照射する。反射層はp偏光を反射する。p偏光は、内側ペインの内側面上において複合ペインから出る。
【0075】
層スタックは、熱、真空、及び/又は圧力の作用下で積層処理され、個々の層は少なくとも1つの熱可塑性中間層によって互いに接合(積層)される。複合ペインを製造するために、それ自体既知の方法を用いてよい。例えば、いわゆるオートクレーブ法を、約10bar~15barの高圧、及び130℃~145℃の温度において、およそ2時間にわたって実行してよい。それ自体公知の真空バッグ又は真空リング方法は、例えば、およそ200ミリバール及び130℃~145℃において動作する。複合ペインを形成するために、外側ペイン、内側ペイン、及び熱可塑性中間層を、少なくとも一対のローラー間のカレンダー内においてプレスしてもよい。複合ペインを製造するためのこのタイプの設備は知られており、通常、プレスから上流に少なくとも1つの加熱トンネルを有する。プレス作業の際の温度は、例えば40℃~150℃である。カレンダー加工及びオートクレーブ法の組み合わせは、実際に特に有用であることが証明されている。代替的には、真空ラミネーターを使用してよい。これらは、1つ以上の加熱可能かつ排気可能なチャンバーからなり、その中で外側ペイン及び内側ペインを、例えば、0.01ミリバール~800ミリバールの減圧下、80℃~170℃の温度において、約60分以内にわたって積層処理してよい。
【0076】
本発明はさらに、陸上、空中、又は水上を移動するための移動手段、特には自動車における、本発明による複合ペインの使用にまで及び、この場合、複合ペインを、例えば、フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ、及び/又はルーフパネルとして用いてよい。複合ペインを乗り物のフロントガラスとして用いることが好ましい。代替的には、グレージングは、例えば、建物の外部ファサード若しくは建物内部の仕切りにおける建築用グレージング、又は家具若しくは家電製品における組み込み部品であってよい。
【0077】
本発明の様々な実施形態を、個別に、又は任意の組み合わせにおいて実施してよい。特に、上述及び以下に説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は単独において用いてよい。
【0078】
本発明は、例示的な実施形態を用いて、添付の図面を参照して、以下でより詳細に説明される。それらは、縮尺どおりではなく、簡略化して図示している。
【0079】
図1 本発明による投影装置の例示的な実施形態の断面図、
図2 図1の複合ペインの平面図、
図3~7 本発明による投影装置の様々な実施形態の拡大断面図、
図8 2つの異なる複合ペインにおいて測定された反射率Rを波長WLの関数として示す図、及び
図9 本発明による方法を示すフローチャート。
【0080】
図1は、乗り物における本発明による投影装置100の例示的な実施形態の断面図を、非常に簡略化した概略図において示している。投影装置100の複合ペイン1の平面図が
図2において示されている。
図1の断面図は、
図2において示されるように、複合ペイン1の切断線A-A’に対応する。
【0081】
複合ペイン1は、複合ペインの形態において実現され(
図3~4参照)、熱可塑性中間層4を備えた外側ペイン2及び内側ペイン3を有し、熱可塑性中間層4は、それらのペインの間に配置されている。複合ペイン1は、例えば、乗り物内に設置され、乗り物内部12を外部環境13から分離する。複合ペイン1は、例えば、自動車のフロントガラスである。
【0082】
外側ペイン2及び内側ペイン3は、それぞれガラス、好ましくは熱強化ソーダ石灰ガラスでできており、可視光に対して透明である。熱可塑性中間層4は、熱可塑性物質、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。
【0083】
外側ペイン2の外側面Iは、熱可塑性中間層4の反対側を向いており、同時に複合ペイン1の外側表面でもある。外側ペイン2の内側面II及び内側ペイン3の外側面IIIは、それぞれ中間層4に面する。内側ペイン3の内側面IVは、熱可塑性中間層4とは反対側を向いており、同時に複合ペイン1の内側面でもある。複合ペイン1が、任意の適切な幾何学的形状及び/又は曲率を有しうることは言うまでもない。複合ペイン1は、典型的には凸状の曲率を有する。
【0084】
複合ペイン1の縁部領域11において、外側ペイン2の内側面II上に、枠状の周縁的な第1マスキングストリップ5がある。第1マスキングストリップ5は、不透明であり、複合ペイン1の内側に配置された構造の視界を妨げる:この構造は、例えば、複合ペイン1を乗り物本体内に接着するための接着剤ビードである。第1マスキングストリップ5は、好ましくは黒色である。第1マスキングストリップ5は、マスキングストリップ用に従来から用いられている非導電性材料、例えば焼き付けられた黒色のスクリーン印刷インクでできている。
【0085】
さらに、複合ペイン1は、内側ペイン3の内側面IV上の縁部領域11において、第2マスキングストリップ6を有する。第2のマスキングストリップ6は、枠のような形で周縁的に実装される。第1マスキングストリップ5と同様に、第2マスキングストリップ6は、マスキングストリップ用に従来から用いられている非導電性材料、例えば焼き付けられた黒色のスクリーン印刷インクでできている。
【0086】
第1マスキングストリップ5上において、PVD法によって蒸着された反射層9が存在する。複合ペイン1を通して見るとき、反射層9は、第2マスキングストリップ6と一致しない。反射層9は、例えば、少なくとも1つの銀層及び1つの誘電体層を備えた、少なくとも1つの薄層スタックを含む金属コーティングである。代替的には、反射層9を、反射フィルムとして実装してもよく、第1マスキングストリップ5上に配置してもよい。反射フィルムは、金属コーティングを含んでよいが、又は層シーケンスにおける誘電性ポリマー層でできていてよい。これらの変形態様の組み合わせもありうる。
【0087】
複合ペイン1を通して見たとき、反射層9は、第1マスキングストリップ5と重なって配置され、第1マスキングストリップ5は、反射層9と完全に重なっている。すなわち、反射層9は、第1マスキングストリップ5と重なっていない部分を有さない。ここで、反射層9は、例えば、複合ペイン1の縁部領域11の下方(エンジン側)部分11'内にのみ配置されている。しかしながら、反射層9を、上方(ルーフ側)部分11''又は縁部領域11の側方部分内に配置することもできるであろう。さらに、複数の反射層9を提供してよく、例えば、縁部領域11の下方(エンジン側)部分11’及び上方(ルーフ側)部分11’’内に配置してよい。例えば、反射層9を、(部分的な)周縁画像が生成されるように配置してよい。
【0088】
第1マスキングストリップ5は、縁部領域11の下方(エンジン側)部分11’において、幅が広くなっている。すなわち、第1のマスキングストリップ5は、縁部領域11の下方(エンジン側)部分11’において、複合ペイン1の縁部領域11の上方(ルーフ側)部分11’’におけるものよりも(縁部領域11の側方部分におけるものも同様、
図1では見えない)、より広い幅を有する。「幅」とは、第1マスキングストリップ5の延在部に垂直な寸法を意味する。ここで、反射層9は、例えば、第2マスキングストリップ6の上側に(換言すれば、重ならないように)配置される。
【0089】
投影装置100は、ダッシュボード7内に配置された、画像生成装置として画像表示装置8をさらに有する。画像表示装置8は、p偏光10(画像情報)を生成するために用いられ、これは、反射層9に向けられ、反射層9によって反射光10’として乗り物内部12内に反射され、そこで観察者、例えば運転者によって見ることができる。反射層9は、画像表示装置8のp偏光10、すなわち画像表示装置8からの画像を反射するように適切に設計される。画像表示装置8のp偏光10は、好ましくは、複合ペイン1に、50°から80°、特に60°から70°、典型的には約65°の入射角において当たり、これはHUD投影配置の慣例である。例えば、画像表示装置8を自動車のAピラー内又はルーフ上(いずれの場合も乗り物内部側)に配置することもできるであろう(反射層9がこのために適切に配置されている場合)。複数の反射層9が提供されているとき、各反射層9に別個の画像表示装置8を対応付けてよい。すなわち複数の画像表示装置8を配置してよい。画像表示装置8は、例えば、LCDディスプレイ、OLEDディスプレイ、ELディスプレイ、又はμLEDディスプレイ等のディスプレイである。例えば、複合ペイン1がルーフパネル、側面ペイン、又は後部ペインであってもよいだろう。
【0090】
図2の平面図は、複合ペイン1の縁部領域11の下方部分11’に沿って延在する反射層9を示す。
【0091】
ここで、
図3~
図7を参照すると、複合ペイン1の様々な実施形態の拡大断面図が示されている。
図3~7の断面図は、
図2に示すように、複合ペイン1の縁部領域11の下方部分11’における切断線A-Aに対応する。
【0092】
図3に示す複合ペイン1の変形例において、第1(不透明)マスキングストリップ5は、外側ペイン2の内側面II上に位置する。反射層9は、第1マスキングストリップ5上に直接適用される。画像表示装置8からのp偏光10は、反射層9によって反射光10'として乗り物内部12内に反射される。光10、10’のp偏光は、概略的に示されている。複合ペイン1上へのp偏光10の入射角がブリュースター角に近いため、p偏光10は、内側ペイン3を通じた透過率においてほとんど妨げられない。この変形例は、入射p偏光10の比較的大きい割合が反射されるという利点を有する;そして、入射角が、反射角と等しいという事実により(
図3及び
図4にαによって示されている)、入射p偏光10の比較的大きい割合は、ほとんど妨げられることなく内側ペイン3を通って乗り物内部12内に伝達されるという利点を有する。さらに、画像は、不透明な(第1)マスキング層5の背景に対して高いコントラストをもって容易に認識可能である。
【0093】
図4に示す複合ペイン1の変形例は、反射層9が、p偏光10を乗り物内部12内に反射する反射フィルムとして実装されるという点のみにおいて、
図3の変形例と異なる。この変形例は、
図1及び3に示す反射層9に対する実行可能な代替物を表し、例えば、これはPVD技術を用いてマスキングストリップ5上に蒸着される。
【0094】
図3の変形例とのさらなる違いとして、
図4における反射層9は、複合ペイン1内の2つの熱可塑性中間層4’、4’’(例えば、PVBフィルム)の間に積層されている。複合ペイン1の残りの部分に対して反射層9によって引き起こされる高低差(厚さジャンプ)を埋め合わせるため、熱可塑性中間層4、4'が、その領域の外側(反射層9が提供されていない部分)よりも、対応してより薄い厚さを有することが有利である。このようにして、外側ペイン2と内側ペイン3との間の均一な距離(すなわち、一定の合計厚さ)を達成することができることで、積層の際のガラスの破損を確実かつ安全に回避する。例えば、PVBフィルムを用いるとき、反射層9の領域において、反射層9が提供されていない領域よりも薄い厚みを有する。さらに、画像は、不透明な(第1)マスキング層5の背景に対して、高いコントラストをもって容易に認識可能である。複合ペイン1の内部において、反射層9は、外部の影響から十分に保護されている。
【0095】
図5に示す複合ペイン1の変形例は、第1(不透明)マスキングストリップ5が、光に対して不透過性の熱可塑性中間層として実装され、これは外側ペイン2の内側面II上に配置される、という点のみにおいて、
図4の変形例と異なる。第1マスキングストリップ5は、例えば、色づけされたPVB、EVA、又はPETフィルムに基づいて形成される。この場合、反射層9は、熱可塑性中間層4と第1マスキングストリップ5との間に積層される。
【0096】
図6に示す複合ペイン1の変形例は、外側ペイン2の外側又は内側面I、II上に、(不透明な)マスキングストリップ5が配置されておらず、反射層9自体が不透明であるという点のみにおいて、
図4の変形例と異なる。反射層9は、例えば、光に対して不透過性の反射フィルムであり、これは熱可塑性中間層4'、4''内に配置される。反射層9の不透明性のため、p偏光10の反射率は90%を超える。このようにして、反射して投影された画像は、見る人にとってよく認識できる。
【0097】
図7に示す複合ペイン1の変形例は、高屈折率コーティング14が内側ペイン3の内側面IV上に配置される点のみにおいて、
図3の変形例と異なる。高屈折率コーティング14は、例えばゾルゲル法によって適用され、酸化チタンコーティングからなる。高屈折率コーティング14の屈折率が内側ペイン3に比べて高い(例えば、1.7)ため、通常約56.5°(ソーダ石灰ガラスの場合)のブリュースター角を、拡大することができ、これによって、適用が簡素化され、内側ペイン3の内側面IVにおける反射による二重像の乱れの影響が軽減される。
【0098】
全ての例示的な実施形態において、反射層9は、第1マスキングストリップ5の乗り物内部側に配置される。すなわち、複合ペイン1の内側面から見たとき、反射層9は、第1マスキングストリップ5の前に配置される。
【0099】
図8は、(入射p偏光10の%で表される)測定された反射率Rを波長λ(nm)の関数として、複合ペイン1上へのp偏光10の異なる入射角を用いて、図示する。測定は、法線に対して50°(PL1)、55°(PL2)、及び65°(PL3)の角度において行われた。曲線は、マスキングストリップ5上に配置された反射層9を有する複合ペイン1に関する。この場合、マスキングストリップ5は、外側ペイン2の内側面II上に配置される。
【0100】
波長>395nmに対して、全ての角度における反射率が90%~100%であることが分かりうる。
【0101】
図9は、本発明による方法をフローチャートによって示している。
【0102】
A:熱可塑性中間層4及び反射層9を、透明な外側ペイン2と透明な内側ペイン3との間に配置して、層スタックを形成する。反射層9は、それ自体が不透明であるか、又は不透明な背景よりも外側ペイン2の外側面Iから空間的に遠くに配置される。不透明な背景とは、例えばマスキングストリップ5であり、これは外側ペイン2の外側面I若しくは内側面II又は外側ペイン2と内側ペイン3の間に配置される。
【0103】
B:層スタックを積層処理して、複合ペイン1を形成する。
【0104】
C:画像表示装置8を複合ペイン1上に配置し、この場合、画像表示装置8の発光素子が、反射層9と関連付けられ、反射層9が、内側ペイン3を通してp偏光10を用いて照射され、反射層9は、p偏光10を反射する。
【0105】
上記の記述から、本発明は、高コントラストをもって良好な画像表示を可能にする、改良された投影配置を利用可能にするということになる。不要な二次画像を回避できる。本発明による投影装置を、既知の製造方法を用いて簡単かつ経済的に製造できる。
本開示は、下記の態様を含む。
投影装置(100)であって、
-透明な外側ペイン(2)、熱可塑性中間層(4)、反射層(9)、及び透明な内側ペイン(3)を有する複合ペイン(1)を有しており、
前記外側ペイン(2)は、前記熱可塑性中間層(4)とは反対側を向いた外側面(I)、及び前記熱可塑性中間層(4)に面した内側面(II)を有し、前記内側ペイン(3)は、前記熱可塑性中間層(4)に面した外側面(III)、及び前記熱可塑性中間層(4)とは反対側を向いた内側面(IV)を有しており、
前記反射層(9)は、前記外側ペイン(2)と前記内側ペイン(3)との間に配置され、p偏光(10)を反射するのに適しており、
前記反射層(9)自体は不透明であるか、又は前記内側ペイン(3)の前記内側面(IV)から進んで前記複合ペイン(1)を通して見たときに、不透明な背景の前に空間的に配置されており、
-画像表示装置(8)が、前記反射層(9)に向けられ、前記内側ペイン(3)を通してp偏光(10)を前記反射層(9)に照射し、
前記反射層(9)は、前記p偏光(10)を反射する、
投影装置(100)。
<態様2>
前記反射層(9)は、前記反射層(9)に入射する前記p偏光(10)の、30%以上、好ましくは50%以上、特には70%以上を反射する、態様1に記載の投影装置(100)。
<態様3>
前記画像表示装置(8)は、LCDディスプレイ、LEDディスプレイ、OLEDディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイなどのディスプレイ、好ましくはLCDディスプレイである、態様1又は2に記載の投影装置(100)。
<態様4>
前記不透明な背景は、少なくとも1つのマスキングストリップ(5)として実装され、前記外側ペイン(2)の縁部領域に配置される、態様1~3のいずれかに記載の投影装置(100)。
<態様5>
前記少なくとも1つのマスキングストリップ(5)は、前記外側ペイン(2)の前記内側面(II)上に配置される、態様4に記載の投影装置(100)。
<態様6>
前記反射層(9)は、前記内側ペイン(3)の前記外側面(III)上に配置されている、態様4又は5に記載の投影装置(100)。
<態様7>
前記反射層(9)は、前記外側ペイン(2)の前記内側面(II)上の前記マスキングストリップ(5)上に配置される、態様5に記載の投影装置(100)。
<態様8>
前記少なくとも1つのマスキングストリップ(5)は、前記複合ペイン(1)の前記縁部領域において周縁的に実装され、特に前記反射層(9)と重なる部分(11’)において、それとは異なる部分(11’’)よりも広い幅を有する、態様4~7のいずれかに記載の投影装置(100)。
<態様9>
前記反射層(9)は、コーティングされたフィルム又はコーティングされていないフィルムであり、前記熱可塑性中間層(4)内に配置されている、態様1~5までのいずれかに記載の投影装置(100)。
<態様10>
前記反射層(9)は、少なくとも1つの金属、好ましくは銀を含有する、態様1~9までのいずれかに記載の投影装置(100)。
<態様11>
前記反射層(9)は、金属を含まない反射フィルムからなる、態様1~8までのいずれかに記載の投影装置(100)。
<態様12>
前記反射層(9)は、蒸着プロセス、好ましくは、CVDプロセス又はPVDプロセスによって、前記外側ペイン(2)、前記不透明な背景、前記内側ペイン(3)、及び/又はフィルムに適用される、態様10に記載の投影装置(100)。
<態様13>
少なくとも1.7の屈折率を有する高屈折率コーティング(14)が、少なくとも前記内側ペイン(3)の前記内側面(IV)の領域において配置されており、前記領域は前記反射層(9)と完全に重なっている、態様1~12のいずれかに記載の投影装置(100)。
<態様14>
態様1~13のいずれかに記載の投影装置(100)を製造する方法であって、
(a)透明な外側ペイン(2)、熱可塑性中間層(4)、反射層(9)、及び透明な内側ペイン(3)を配置して、層スタックを形成すること、
前記外側ペイン(2)は、前記熱可塑性中間層(4)とは反対側を向いた外側面(I)、
及び前記熱可塑性中間層(4)に面した内側面(II)を有し、前記内側ペイン(3)は、前記熱可塑性中間層(4)に面した外側面(III)、及び前記熱可塑性中間層(4)とは反対側を向いた内側面(IV)を有しており、
前記反射層(9)は、前記外側ペイン(2)と前記内側ペイン(3)との間に配置され、p偏光(10)を反射するのに適しており、
前記反射層(9)自体は不透明であるか、又は前記内側ペイン(3)の前記内側面(IV)から進んで前記層スタックを通して見たときに、不透明な背景の前に空間的に配置される、
(b)前記層スタックを積層して、複合ペイン(1)を形成すること、
(c)前記反射層(9)に向けられ、前記内側ペイン(3)を通してp偏光(10)を前記反射層(9)に照射する画像表示装置(8)を配置すること、
前記反射層(9)は、前記p偏光(10)を反射する、
を含む、方法。
<態様15>
陸上、空中、又は水上を移動する乗り物における、態様1~13のいずれかに記載の投影装置(100)の使用であって、前記複合ペイン(1)が好ましくはフロントガラスである、使用。
【符号の説明】
【0106】
1 複合ペイン
2 外側ペイン
3 内側ペイン
4、4’、4’’ 熱可塑性中間層
5 第1マスキングストリップ
6 第2マスキングストリップ
7 ダッシュボード
8 画像表示装置
9 反射層
10、10’ p偏光
11、11’、11’’ 縁部領域
12 乗り物内部
13 外部環境
14 高屈折率コーティング
100 投影装置
【0107】
I 外側ペイン2の外側面
II 外側ペイン2の内側面
III 内側ペイン3の外側面
IV 内側ペイン3の内側面
A-A’ 断面線