(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/08 20120101AFI20241205BHJP
【FI】
G06Q40/08
(21)【出願番号】P 2024072224
(22)【出願日】2024-04-26
【審査請求日】2024-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】595140170
【氏名又は名称】東京海上日動火災保険株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下城 世那
(72)【発明者】
【氏名】大道 翔太
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-66674(JP,A)
【文献】特開2009-251822(JP,A)
【文献】特開2018-32229(JP,A)
【文献】特開2005-190271(JP,A)
【文献】特開2004-118471(JP,A)
【文献】特開2002-288435(JP,A)
【文献】損害保険ジャパン株式会社、ほか3社,生産設備等の「音響診断AI化支援コンサルティング」に関する日清紡マイクロデバイスとの協業開始[online],2022年02月15日,[令和6年11月12日検索]、インターネット<URL : https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2021/20220215_1.pdf?la=ja-JP>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが管理する管理設備に含まれる部品の保全に対する保険金の支払いを管理する情報処理装置であって、
設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに、所定の期間において当該部品が故障した回数と、当該部品の故障の間隔とを示す故障履歴データを記憶する記憶部と、
前記管理設備に含まれる部品であって保険の対象の部品である対象部品に関連する前記管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約後測定データと、前記ユーザが過去において前記対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約後実施データとを取得する取得部と、
前記契約後測定データと、前記契約後実施データと、前記管理設備及び前記対象部品の組み合わせに対応する前記故障履歴データとに基づいて、前記取得部が前記契約後測定データ及び前記契約後実施データを取得した時点において前記対象部品が故障するリスクの度合いを示す時点リスク値を算出する算出部と、
前記時点リスク値が、前記保険金を支払うか否かを判定するために定められた支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報を前記ユーザに提示する提示部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、保険の契約前において、前記管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に関連する前記管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約前測定データと、前記ユーザが過去において当該部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約前実施データとを取得し、
前記算出部は、前記管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に対応する前記契約前測定データと、当該部品に対応する前記契約前実施データと、前記管理設備及び当該部品の組み合わせに対応する前記故障履歴データとに基づいて、保険の満期までに当該部品が故障するリスクの度合いを示す期間リスク値を算出し、
前記提示部は、前記管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品を示す情報と、当該部品に対応する前記期間リスク値とを関連付けて前記ユーザに提示する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記提示部は、前記管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に対応する前記期間リスク値が、保険の満期までに当該部品の保全が必要であるか否かを判定するために定められた保全判定用閾値を上回るか否かを示す情報をさらに関連付けて前記ユーザに提示する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得部は、所定の間隔で、前記契約後測定データと、前記契約後実施データとを取得し、
前記情報処理装置は、前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回るか否かを判定する判定部をさらに有し、
前記提示部は、前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回ると前記判定部が判定したことを契機として、前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回ることを示す情報を前記ユーザに提示する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報処理装置は、
前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回るか否かを判定する判定部と、
前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回ると前記判定部が判定した場合に、前記対象部品の保全に対する前記保険金の支払いを許可する支払い管理部と、
をさらに有する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記支払い管理部が前記対象部品の保全に対する前記保険金の支払いを許可した場合、前記管理設備を示す情報と、前記対象部品を示す情報と、前記対象部品が保全された時期と、前記保険金の支払いが許可される直前に取得された前記契約後測定データとを関連付けたデータを、前記故障履歴データとして前記記憶部に記録する記録部をさらに有する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
ユーザが管理する管理設備に含まれる部品の保全に対する保険金の支払いを管理するコンピュータであって、設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに、所定の期間において当該部品が故障した回数と、当該部品の故障の間隔とを示す故障履歴データを記憶する記憶部を有するコンピュータが実行する、
前記管理設備に含まれる部品であって保険の対象の部品である対象部品に関連する前記管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約後測定データと、前記ユーザが過去において前記対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約後実施データとを取得するステップと、
前記契約後測定データと、前記契約後実施データと、前記管理設備及び前記対象部品の組み合わせに対応する前記故障履歴データとに基づいて、前記契約後測定データ及び前記契約後実施データを取得した時点において前記対象部品が故障するリスクの度合いを示す時点リスク値を算出するステップと、
前記時点リスク値が、前記保険金を支払うか否かを判定するために定められた支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報を前記ユーザに提示するステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項8】
ユーザが管理する管理設備に含まれる部品の保全に対する保険金の支払いを管理するコンピュータであって、設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに、所定の期間において当該部品が故障した回数と、当該部品の故障の間隔とを示す故障履歴データを記憶する記憶部を有するコンピュータを、
前記管理設備に含まれる部品であって保険の対象の部品である対象部品に関連する前記管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約後測定データと、前記ユーザが過去において前記対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約後実施データとを取得する取得部、
前記契約後測定データと、前記契約後実施データと、前記管理設備及び前記対象部品の組み合わせに対応する前記故障履歴データとに基づいて、前記取得部が前記契約後測定データ及び前記契約後実施データを取得した時点において前記対象部品が故障するリスクの度合いを示す時点リスク値を算出する算出部、及び
前記時点リスク値が、前記保険金を支払うか否かを判定するために定められた支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報を前記ユーザに提示する提示部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、故障し得る設備に対して、故障による損害を補償する損害保険が知られている。特許文献1には、設備が故障したことによる損害の補償を管理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
設備が故障してしまうと修理が完了するまで設備を停止しなければならず、設備の停止による損害が大きくなってしまうため、設備が故障する前に保全することが望ましい。しかしながら、従来の損害保険においては設備が故障したことを条件として保険金が支払われるため、設備が故障する前に保全してしまうと保険金が支払われない。そのため、故障する前における設備の保全に対して保険金を支払う仕組みを提供することが求められている。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、設備の保全に対して保険金を支払う仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る情報処理装置は、ユーザが管理する管理設備に含まれる部品の保全に対する保険金の支払いを管理する情報処理装置であって、設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに、所定の期間において当該部品が故障した回数と、当該部品の故障の間隔とを示す故障履歴データを記憶する記憶部と、前記管理設備に含まれる部品であって保険の対象の部品である対象部品に関連する前記管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約後測定データと、前記ユーザが過去において前記対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約後実施データとを取得する取得部と、前記契約後測定データと、前記契約後実施データと、前記管理設備及び前記対象部品の組み合わせに対応する前記故障履歴データとに基づいて、前記取得部が前記契約後測定データ及び前記契約後実施データを取得した時点において前記対象部品が故障するリスクの度合いを示す時点リスク値を算出する算出部と、前記時点リスク値が、前記保険金を支払うか否かを判定するために定められた支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報を前記ユーザに提示する提示部と、を有する。
【0007】
前記取得部は、保険の契約前において、前記管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に関連する前記管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約前測定データと、前記ユーザが過去において当該部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約前実施データとを取得してもよいし、前記算出部は、前記管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に対応する前記契約前測定データと、当該部品に対応する前記契約前実施データと、前記管理設備及び当該部品の組み合わせに対応する前記故障履歴データとに基づいて、保険の満期までに当該部品が故障するリスクの度合いを示す期間リスク値を算出してもよいし、前記提示部は、前記管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品を示す情報と、当該部品に対応する前記期間リスク値とを関連付けて前記ユーザに提示してもよい。
【0008】
前記提示部は、前記管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に対応する前記期間リスク値が、保険の満期までに当該部品の保全が必要であるか否かを判定するために定められた保全判定用閾値を上回るか否かを示す情報をさらに関連付けて前記ユーザに提示してもよい。
【0009】
前記取得部は、所定の間隔で、前記契約後測定データと、前記契約後実施データとを取得してもよいし、前記情報処理装置は、前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回るか否かを判定する判定部をさらに有してもよいし、前記提示部は、前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回ると前記判定部が判定したことを契機として、前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回ることを示す情報を前記ユーザに提示してもよい。
【0010】
前記情報処理装置は、前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回るか否かを判定する判定部と、前記時点リスク値が前記支払い判定用閾値を上回ると前記判定部が判定した場合に、前記対象部品の保全に対する前記保険金の支払いを許可する支払い管理部と、をさらに有してもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、前記支払い管理部が前記対象部品の保全に対する前記保険金の支払いを許可した場合、前記管理設備を示す情報と、前記対象部品を示す情報と、前記対象部品が保全された時期と、前記保険金の支払いが許可される直前に取得された前記契約後測定データとを関連付けたデータを、前記故障履歴データとして前記記憶部に記録する記録部をさらに有してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る情報処理方法は、ユーザが管理する管理設備に含まれる部品の保全に対する保険金の支払いを管理するコンピュータであって、設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに、所定の期間において当該部品が故障した回数と、当該部品の故障の間隔とを示す故障履歴データを記憶する記憶部を有するコンピュータが実行する、前記管理設備に含まれる部品であって保険の対象の部品である対象部品に関連する前記管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約後測定データと、前記ユーザが過去において前記対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約後実施データとを取得するステップと、前記契約後測定データと、前記契約後実施データと、前記管理設備及び前記対象部品の組み合わせに対応する前記故障履歴データとに基づいて、前記契約後測定データ及び前記契約後実施データを取得した時点において前記対象部品が故障するリスクの度合いを示す時点リスク値を算出するステップと、前記時点リスク値が、前記保険金を支払うか否かを判定するために定められた支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報を前記ユーザに提示するステップと、を有する。
【0013】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、ユーザが管理する管理設備に含まれる部品の保全に対する保険金の支払いを管理するコンピュータであって、設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに、所定の期間において当該部品が故障した回数と、当該部品の故障の間隔とを示す故障履歴データを記憶する記憶部を有するコンピュータを、前記管理設備に含まれる部品であって保険の対象の部品である対象部品に関連する前記管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約後測定データと、前記ユーザが過去において前記対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約後実施データとを取得する取得部、前記契約後測定データと、前記契約後実施データと、前記管理設備及び前記対象部品の組み合わせに対応する前記故障履歴データとに基づいて、前記取得部が前記契約後測定データ及び前記契約後実施データを取得した時点において前記対象部品が故障するリスクの度合いを示す時点リスク値を算出する算出部、及び前記時点リスク値が、前記保険金を支払うか否かを判定するために定められた支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報を前記ユーザに提示する提示部、として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設備の保全に対して保険金を支払う仕組みを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】情報処理システムの概要を説明するための図である。
【
図2】情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図3】故障履歴データベースの構成の一例を示す図である。
【
図4】契約管理データベースの構成の一例を示す図である。
【
図5】情報処理装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[情報処理システムSの概要]
図1は、情報処理システムSの概要を説明するための図である。情報処理システムSは、保険サービスを提供するために用いられるシステムである。保険サービスは、ユーザが管理する設備である管理設備の保全、具体的には、管理設備に含まれる部品の保全に対して保険金を支払うサービスである。
【0017】
ユーザは、管理設備を管理する事業者であって、保険サービスを利用する利用者、すなわち、保険サービスにおいて提供する保険の被保険者である。管理設備は、ユーザが事業を行うために稼働させる設備であって、複数の部品で構成される設備である。管理設備は、例えば、電気業における発電設備、情報通信業における通信設備、製造業における製造設備等である。部品は、例えば、設備が稼働することによって劣化する部品であって、修理や取り換えが可能な部品である。部品は、例えば、風力発電設備におけるモータ、プロペラ等である。部品は、モータやプロペラ等を構成するパーツであってもよい。部品の保全は、当該部品が故障する前において当該部品の劣化した箇所を直すこと、又は当該部品を新たな部品に交換すること等である。情報処理システムSは、ユーザ端末1と、情報処理装置2とを有する。
【0018】
ユーザ端末1は、ユーザ(例えば、事業者の従業員等)が使用する端末であり、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等である。
【0019】
情報処理装置2は、保険サービスを管理する装置であり、例えば、サーバである。情報処理装置2は、故障履歴データと、契約データとを管理している。故障履歴データは、保険の被保険者が管理する設備が故障した履歴を示すデータであり、例えば、設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに、所定の期間において当該部品が故障した回数と、当該部品の故障の間隔とを示すデータである。契約データは、被保険者の契約内容を示すデータであり、例えば、保険の対象となる設備の部品(以下、「対象部品」という。)を示す情報と、対象部品の保全に対して保険金を支払う条件とを含む。
【0020】
上記のとおり、保険サービスでは、管理設備の保全に対する保険を提供する。管理設備が突然故障してしまうと、修理するまで計画外に管理設備を停止しなければならず、ユーザが行う事業の損失が大きくなってしまうため、管理設備の保全の頻度を高くした方が良いように思える。しかしながら、計画内であってもユーザが管理設備を保全すると、一時的に当該管理設備を停止しなければならなくなり、管理設備を停止している間においては、ユーザが事業を行うことができなくなってしまうため、ユーザにとって管理設備を保全する頻度は低い方が望ましい。そのため、計画外に管理設備を停止しなければならない事態の発生を低減しつつ、管理設備の保全の頻度を低減することが求められる。
【0021】
そこで、情報処理システムSは、設備を保全した方が良いか否かをユーザに判断させるための情報を提示する。
以下において、情報処理システムSが実行する処理について説明する。
【0022】
図1に示す設備Fは、ユーザが管理する管理設備である。この場合において、まず、情報処理装置2は、測定データと実施データとを取得する(
図1における(1)、(2))。測定データは、対象部品に関連する設備Fの状態を測定するセンサが測定した測定値を含むデータである。センサは、例えば、温度計、湿度計、加速度センサ、圧力センサ等である。実施データは、ユーザが過去において設備Fに含まれる対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示すデータである。
【0023】
情報処理装置2は、測定データを設備Fから直接取得してもよいし、ユーザ端末1から取得してもよい。また、情報処理装置2は、例えば、実施データをユーザ端末1から取得する。
【0024】
情報処理装置2は、測定データと実施データと管理設備及び対象部品の組み合わせに対応する故障履歴データとに基づいて、対象部品のリスク値を算出する(
図1における(3))。リスク値は、対象部品が故障するリスクの度合を示す数値であり、例えば、数値が大きいほど対象部品が故障するリスクの度合が高いことを示し、数値が小さいほど対象部品が故障するリスクの度合いが低いことを示す。そして、情報処理装置2は、リスク値が、ユーザとの契約において定められた対象部品の保全に対して保険金を支払う条件を満たすか否かを示すレポートをユーザ端末1に送信することにより、レポートをユーザに提示する(
図1における(4))。
【0025】
このようにすることで、情報処理システムSは、管理設備の保全に対して保険金を支払う仕組みを提供することができる。例えば、ユーザは、レポートを受け取った時点において対象部品を保全した場合に保険金が支払われるか否か、すなわち、対象部品が保全すべき状態であるか否かを判断することができる。これにより、情報処理システムSは、対象部品の保全が必要なタイミングでユーザに当該対象部品を保全させることができる。その結果、情報処理システムSは、計画外に管理設備を停止しなければならない事態の発生を低減しつつ、管理設備の保全の頻度を低減することができる。
以下、情報処理装置2の構成について説明する。
【0026】
[情報処理装置2の構成]
図2は、情報処理装置2の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23とを備える。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示していないデータの流れがあってもよい。
図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0027】
通信部21は、ネットワークに接続するための通信インターフェースであり、外部の端末及び外部のサーバからデータを受信するための通信コントローラを有する。
【0028】
記憶部22は、情報処理装置2を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置2の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。記憶部22は、故障履歴データを管理する故障履歴管理データベースと、契約データを管理する契約管理データベースとを記憶している。
【0029】
図3は、故障履歴データベースの構成の一例を示す図である。故障履歴管理データベースには、様々な設備を管理する様々な被保険者の故障履歴データが記憶されている。
図3に示す例において、故障履歴管理データベースは、ユーザIDと、設備識別情報と、部品識別情報と、故障時期と、測定データ(センサ種類及び測定値)とを関連付けて記憶している。
【0030】
設備識別情報は、設備を識別するための情報であり、例えば、設備の名称、設備のID等である。部品識別情報は、設備に含まれる部品を識別するための情報であり、例えば、部品の名称、部品のID等である。故障時期は、部品が故障した時期を示すが、これに限らず、部品を保全した時期(例えば、部品を修理した時期又は部品を交換した時期等)であってもよい。測定データは、故障時期の直前に設備が備えるセンサが測定したデータである。
【0031】
情報処理装置2は、例えば、故障履歴管理データベースに記憶されている情報を参照し、所定の設備に含まれる所定の部品の故障の履歴(例えば、故障履歴管理データベースに記憶されている所定の設備及び所定の部品の組み合わせに対応するレコード数)を集計することにより、当該部品が故障した回数を特定することができる。また、情報処理装置2は、例えば、故障履歴管理データベースに記憶されている情報を参照し、所定の設備及び所定の部品に対応する複数の故障時期をもとに、当該部品の故障間隔を特定することができる。故障履歴管理データベースに記憶されている情報には、
図3に示す例に限らず、例えば、部品の修理又は部品の交換にかかった費用である補修費用がさらに含まれてもよい。
【0032】
図4は、契約管理データベースの構成の一例を示す図である。
図4に示す例において、契約管理データベースは、ユーザIDと、対象設備情報と、対象部品情報と、保険期間と、支払い判定用閾値とを関連付けて記憶している。
【0033】
対象設備情報は、保険の対象である対象部品を含む設備を示す情報であり、例えば、設備識別情報である。対象部品情報は、対象部品を示す情報であり、例えば、部品識別情報である。支払い判定用閾値は、対象部品の保全に対する保険金の支払いを許可するか否かを判定するために定められた数値である。契約管理データベースに記憶されている情報は、
図4に示す例に限らない。例えば、契約管理データベースは、支払いステータスをさらに関連付けて記憶してもよい。支払いステータスは、対象部品の保全に対する保険金の支払いを許可するか否かを示す情報である。
【0034】
図2に戻り、制御部23は、情報処理装置2のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することによって、取得部231、算出部232、提示部233、判定部234、契約管理部235、支払い管理部236及び記録部237として機能する。
【0035】
(保険契約前における処理)
まず、情報処理装置2が、ユーザの保険契約前において実行する処理について説明する。保険サービスでは、ユーザが当該保険サービスの利用を開始する前、すなわち、ユーザが保険を契約する前に、管理設備の状態を示すレポートを提示し、当該レポートを提示した後に、ユーザと当該保険サービスを提供する保険事業者との間で保険の契約を行う。情報処理装置2は、以下の3つのステップを実行することにより、保険の契約前のレポートである契約前レポートを提示する。
【0036】
第1のステップとして、取得部231は、測定データと、実施データとを取得する。具体的には、取得部231は、保険の契約前において、管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に関連する管理設備の状態を測定するセンサが測定した測定データである契約前測定データと、ユーザが過去において当該部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す実施データである契約前実施データとを取得する。
【0037】
取得部231は、例えば、ユーザ端末1から、管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に対応する情報としてユーザが関連付けた契約前測定データ及び契約前実施データを取得する。取得部231は、管理設備に関する情報をさらに取得してもよい。管理設備に関する情報は、例えば、管理設備に対応する設備識別情報、管理設備に含まれる各部品に対応する部品識別情報、及び管理設備の耐用年数等が含まれる。
【0038】
例えば、提示部233は、ユーザ端末1に情報を表示させる表示処理部として機能し、ユーザがユーザ端末1において保険サービスを提供するサイトにアクセスする操作を行うと、提示部233は、保険サービスのメニュー画面をユーザ端末1に表示させる。メニュー画面は、生命保険、火災保険、自動車保険等のように各種の保険に関するメニューが表示された表示画面である。ユーザがメニュー画面から設備保全保険を選択すると、提示部233は、契約前要求画面をユーザ端末1に表示させる。
【0039】
契約前要求画面は、契約前レポートを作成するための情報の提供を要求する表示画面である。ユーザが契約前要求画面において、管理設備に関する情報と一以上の契約前測定データと一以上の契約前実施データと入力(例えば、文字の入力又はファイルの添付等)し、管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に対応する情報として、入力した契約前測定データ及び契約前実施データを関連付ける操作を行うと、取得部231は、管理設備に関する情報と、管理設備に含まれる部品ごとの契約前測定データ及び契約前実施データの組み合わせとを取得する。
【0040】
第2のステップとして、算出部232は、取得部231が取得した測定データと、取得部231が取得した実施データと、記憶部22に記憶されている故障履歴データとに基づいて、リスク値を算出する。詳細については後述するが、算出部232は、管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に対応する契約前測定データと、当該部品に対応する契約前実施データと、当該管理設備及び当該部品の組み合わせに対応する故障履歴データとに基づいて、期間リスク値を算出する。
【0041】
管理設備及び部品の組み合わせに対応する故障履歴データは、例えば、故障履歴管理データベースにおいて、管理設備に対応する設備識別情報と、当該管理設備に含まれる部品に対応する部品識別情報とに関連付けて記憶されている故障時期等の情報である。管理設備及び部品の組み合わせに対応する故障履歴データには、様々な被保険者が管理する設備に含まれる部品の故障の履歴が含まれる。
【0042】
期間リスク値は、保険の満期までに当該部品が故障するリスクの度合いを示すリスク値であり、例えば、保険の満期の時点において想定されるリスク値である。保険の満期は、予め保険サービスにおいて定められた保険期間が経過する時期である。保険サービスにおいては、保険期間として1つの期間が定められてもよいし、ユーザによって選択される複数の期間(例えば、1年、3年、5年、10年等)が定められてもよい。保険期間として複数の期間が定められている場合、算出部232は、定められた期間ごとに当該期間に対応する期間リスク値を算出してもよい。
【0043】
第3のステップとして、提示部233は、管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品を示す情報と、当該部品に対応する期間リスク値とを関連付けてユーザに提示する。提示部233は、例えば、算出部232が期間リスク値を算出すると、契約前レポート画面をユーザ端末1に表示させる。契約前レポート画面は、管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品を示す情報と、当該部品に対応する期間リスク値とが関連付けられた契約前レポートを表示する表示画面である。
【0044】
提示部233は、契約前レポートを作成し、作成した契約前レポートを添付ファイルとしてユーザ端末1に送信してもよい。このようにすることで、情報処理装置2は、どの部品にどのくらいの故障のリスクがあるかをユーザに認識させることができる。
【0045】
提示部233は、管理設備に含まれる部品ごとに、保険の満期までに当該部品の保全が必要であるか否かを示す情報をさらにユーザに提示してもよい。具体的には、提示部233は、管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品に対応する期間リスク値が保全判定用閾値を上回るか否かを示す情報をさらに関連付けてユーザに提示する。
【0046】
保全判定用閾値は、保険の満期までに部品の保全が必要であるか否かを判定するために予め定められた数値である。例えば、情報処理装置2には、設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに、当該組み合わせに対応する保全判定用閾値が定められている。この場合において、まず、判定部234は、管理設備に含まれる部品ごとに、算出部232が算出した当該部品に対応する期間リスク値が、当該管理設備及び当該部品の組み合わせに対応する保全判定用閾値を上回るか否かを判定する。
【0047】
そして、提示部233は、管理設備に含まれる部品ごとに、当該部品を示す情報と、当該部品に対応する期間リスク値と、判定部234が判定した当該部品に対応する判定結果を示す情報とを関連付けてユーザに提示する。このようにすることで、情報処理装置2は、保険の満期までに管理設備に含まれる部品を保全する必要があるか否かをユーザに判断させやすくすることができる。
【0048】
保険サービスは、契約前レポートをユーザに提示した後に、ユーザと保険事業者との間で保険の契約を行う。具体的には、情報処理装置2は、以下の2つのステップを実行することにより、ユーザと保険事業者との間において保険の契約を行うための処理を実行する。
【0049】
第1のステップとして、取得部231は、ユーザ端末1から保険の契約データを取得する。例えば、契約前レポート画面には、保険の契約を行うためのボタンが設けられており、ユーザが当該ボタンを押下する操作を行うと、提示部233は、契約内容入力画面をユーザ端末1に表示させる。
【0050】
契約内容入力画面は、保険の契約内容を入力させるための表示画面であり、ユーザを示す情報(例えば、事業者の名称等)、管理設備を示す情報、保険の対象とする部品である対象部品を示す情報等を入力するための複数の入力項目が設けられている。ユーザが契約内容入力画面において複数の入力項目それぞれに情報を入力する操作を行うと、取得部231は、ユーザが複数の入力項目それぞれに入力した情報を含む契約データを取得する。契約期間として複数の期間が定められている場合、取得部231は、ユーザが複数の期間の中から選択した期間を契約期間としてさらに含む契約データを取得してもよい。また、取得部231は、対象部品の保全に対して保険金を支払う条件(例えば支払い判定用閾値)をさらに含む契約データを取得してもよい。
【0051】
第2のステップとして、契約管理部235は、取得部231が取得した契約データに基づいて、契約処理を実行する。契約管理部235は、例えば、取得部231が契約データを取得すると、ユーザIDを発行し、発行したユーザIDと、契約データとを関連付けて契約管理データベースに記憶させる。なお、契約管理部235は、取得部231が取得した契約データに基づいて保険事業者の担当者が契約を許可するか否かを審査し、当該担当者が契約を許可すると判断した場合に、契約処理を実行してもよい。
【0052】
契約管理部235は、取得部231が取得した契約データに基づく保険料の支払いをユーザが承諾した場合に、契約処理を実行してもよい。例えば、まず、契約管理部235は、取得部231が取得した契約データに基づいて保険料を算出する。契約管理部235は、例えば、予め定められた手法を用いて契約データをもとに保険料を算出する。契約管理部235は、ユーザが選択した契約期間が長いほど保険料を高く算出してもよい。また、契約管理部235は、ユーザが設定した支払い判定用閾値が小さいほど保険料を高く算出してもよい。
【0053】
そして、提示部233は、契約管理部235が算出した保険料を契約内容入力画面に表示させ、ユーザが契約内容入力画面において表示された保険料に承諾するための操作(例えば承諾ボタンを押下等)を行った場合に、契約管理部235は、契約処理を実行する。
【0054】
上記において、ユーザが、管理設備に含まれる複数の部品のうち、どの部品を保険の対象とするかを決定する例を説明したが、これに限らない。例えば、契約管理部235は、管理設備に含まれる複数の部品のうち、保険の満期までに故障するリスクが低い部品を保険の対象として決定してもよい。
【0055】
具体的には、契約管理部235は、管理設備に含まれる部品のうち、算出部232によって算出された期間リスク値が保全判定用閾値を上回らない部品を、保険の対象とする部品として決定する。契約管理部235は、例えば、ユーザが管理設備に含まれる複数の部品の中から選択した部品に対応する期間リスク値が当該部品に対応する保全判定用閾値を上回るか否かを判定し、期間リスク値が保全判定用閾値を上回らないと判定した場合に、当該部品を保険の対象とすることを許可する。
【0056】
なお、契約管理部235は、管理設備に含まれる複数の部品のうち、算出部232によって算出された期間リスク値が保全判定用閾値を上回らない部品の一覧からユーザが選択した部品を保険の対象とする部品として決定してもよい。具体的には、まず、提示部233は、管理設備に含まれる複数の部品のうち、算出部232によって算出された期間リスク値が保全判定用閾値を上回らない部品の一覧を、保険の対象とすることを許可する部品の一覧としてユーザに提示する。そして、契約管理部235は、提示部233が提示した部品の一覧からユーザが選択した部品を、保険の対象として決定する。
【0057】
ユーザは、管理設備に含まれる部品を保全する時期を定め、当該時期における当該部品の保全にかかる費用を予算化(確保)することにより、管理設備の保全計画を策定する。この場合において、管理設備の保全計画に含まれない部品が故障してしまうと、当該部品を修理するための費用を急遽予算化したり、予定していた部品の保全を先送りしたりすることが生じてしまい、管理設備の保全計画どおりに管理設備を保全することができない事態が生じ得る。
【0058】
しかしながら、情報処理装置2は、ユーザが保険を契約する前に、管理設備の状態を示すレポート(契約前レポート)をユーザに提示することにより、保険を契約した場合における保険の満期までに故障するリスクがある部品を把握させることができる。これにより、ユーザは、故障するリスクが高い部品を管理設備の保全計画における保全の対象として含めることができ、管理設備の保全計画の高度化を図ることができる。その結果、情報処理装置2は、管理設備の保全計画に含まれない部品が故障してしまう事態の発生を低減させることができる。
【0059】
また、仮に、管理設備の保全計画において予定されていない部品が故障した場合であっても、ユーザに提供する保険サービスにおいて当該部品の保全に対して保険金を支払うことにより、ユーザが当該部品を保全するための費用を急遽予算化したり、管理設備の保全計画において予定していた部品の保全を先送りしたりすることを防ぐことができるため、ユーザは管理設備の保全計画どおりに管理設備を保全することができる。なお、契約管理部235は、管理設備に含まれる複数の部品すべてを保険の対象として決定してもよい。
【0060】
情報処理装置2は、保険の契約前にレポートを提示する場合に限らず、保険の更新前にレポートをユーザに提示してもよい。この場合、情報処理装置2は、保険の更新前に提示したレポートの内容(例えば、更新後の保険の満期までに部品の保全が必要であるか否かを示す情報)に基づいて、対象部品に対して保険の更新を許可するか否かを判定してもよい。
【0061】
(保険契約後における処理)
続いて、情報処理装置2が、ユーザの保険契約後において実行する処理について説明する。情報処理装置2は、ユーザが保険サービスの利用を開始した後、すなわち、ユーザと保険事業者との間で保険が契約された後に、管理設備に含まる部品であって保険の対象である対象部品の状態を示すレポートを提示する。具体的には、情報処理装置2は、以下の3つのステップを実行することにより、保険の契約後のレポートである契約後レポートを提示する。
【0062】
第1のステップとして、取得部231は、管理設備に含まれる部品であって保険の対象の部品である対象部品に関連する管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約後測定データと、ユーザが過去において対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約後実施データとを取得する。取得部231は、例えば、ユーザ端末1から、対象部品ごとに、当該対象部品に対応する情報としてユーザが関連付けた契約後測定データ及び契約後実施データを取得する。
【0063】
例えば、メニュー画面には、会員画面にアクセスするためのボタンが設けられており、ユーザがメニュー画面において当該ボタンを押下する操作を行うと、提示部233は、会員画面をユーザ端末1に表示させる。
【0064】
会員画面には、契約後レポートを作成するための情報の提供を要求する表示画面である契約後要求画面と、契約後レポートを表示する表示画面である契約後レポート画面とが含まれる。契約後要求画面には、対象部品ごとに、測定データ及び実施データを入力するための入力項目が設けられており、ユーザが契約後要求画面において対象部品ごとに契約後測定データと契約後実施データと入力する操作を行うと、取得部231は、対象部品ごとに契約後測定データと契約後実施データとを取得する。
【0065】
ユーザが契約後測定データと契約後実施データとを提示するタイミングは、予め定められていてもよいし(例えば毎月等)、定められていなくてもよい。また、ユーザが契約後測定データと契約後実施データとを提示するタイミングは、ユーザが対象部品の保全を行い、当該保全に対する保険金の支払いを要求するときであってもよい。
【0066】
第2のステップとして、算出部232は、契約後測定データと、契約後実施データと、管理設備及び対象部品の組み合わせに対応する故障履歴データとに基づいて、時点リスク値を算出する。時点リスク値は、取得部231が契約後測定データ及び契約後実施データを取得した時点において対象部品が故障するリスクの度合いを示すリスク値である。算出部232が時点リスク値を算出する処理の詳細については後述する。
【0067】
第3のステップとして、提示部233は、時点リスク値が、保険金を支払うか否かを判定するために定められた支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報をユーザに提示する。具体的には、まず、判定部234は、対象部品ごとに、当該対象部品に対応する時点リスク値が当該対象部品に対応する部品識別情報に関連付けて契約管理データベースに記憶されている支払い判定用閾値を上回るか否かを判定する。
【0068】
そして、提示部233は、判定部234が判定した結果を含む契約後レポートが表示された契約後レポート画面をユーザ端末1に表示させる。提示部233は、契約後レポートを作成し、作成した契約後レポートを添付ファイルとしてユーザ端末1に送信してもよい。
【0069】
提示部233は、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回った場合に、その旨を通知してもよい。具体的には、まず、取得部231は、所定の間隔(毎日、毎週、毎月等)で、契約後測定データと、契約後実施データとを取得する。取得部231は、例えば、所定の間隔で、予め定められている場所(例えば、ユーザが管理する不図示のサーバ)に格納されている契約後測定データと契約後実施データとを取得する。判定部234は、取得部231が契約後測定データと契約後実施データとを取得したことを契機として算出部232が算出した時点リスク値が支払い判定用閾値を上回るか否かを判定する。
【0070】
そして、提示部233は、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回ると判定部234が判定したことを契機として、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回ることを示す情報をユーザに提示する。提示部233は、例えば、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回ると判定部234が判定した場合に、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回ることを示す情報をユーザ端末1に通知する。このようにすることで、情報処理装置2は、対象部品が保全すべき状態であることを早期にユーザに知らせることができる。
【0071】
情報処理装置2は、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回った場合に、対象部品の保全に対する保険金の支払いを許可するための処理である許可処理を実行する。具体的には、支払い管理部236は、許可処理として、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回ると判定部234が判定した場合に、対象部品の保全に対する保険金の支払いを許可する。
【0072】
例えば、ユーザが対象部品の保全をまだ行っていない場合、支払い管理部236は、契約管理データベースに記憶されている対象部品の支払いステータスを、保険金の支払いを許可することを示す情報に設定する。例えば、ユーザが対象部品の保全を行い、当該保全に対する保険金の支払いを要求した場合、支払い管理部236は、当該保険金をユーザに支払うための処理を実行する。
【0073】
情報処理装置2は、対象部品の保全に対する保険金の支払いを許可した場合、対象部品に関する情報を記憶してもよい。具体的には、記録部237は、支払い管理部236が対象部品の保全に対する保険金の支払いを許可した場合、管理設備を示す情報と、対象部品を示す情報と、対象部品が保全された時期と、保険金の支払いが許可される直前に取得された契約後測定データとを関連付けたデータを、故障履歴データとして故障履歴管理データベースに記録する。このようにすることで、情報処理装置2は、リスク値を算出するための統計的な情報を蓄積することができる。
【0074】
(リスク値の算出処理)
続いて、情報処理装置2が、リスク値を算出する処理について説明する。上述のとおり、算出部232は、取得部231が取得した測定データと、取得部231が取得した実施データと、管理設備及び当該管理設備に含まれる部品(対象部品)の組み合わせに対応する故障履歴データとに基づいて、リスク値を算出する。具体的には、算出部232は、以下の2つのステップを実行することにより、リスク値を算出する。
【0075】
第1のステップとして、算出部232は、部品が故障する要因を示す故障要因のスコアを算出する。故障要因は、各種の設備に共通する要因であってもよいし、設備ごとに異なる要因であってもよいし、設備及び当該設備に含まれる部品の組み合わせごとに異なる要因であってもよい。故障要因は、例えば、耐用年数、稼働時間、経過日数、測定値、直近の稼働状態、前年の故障数、故障間隔のうちの少なくともいずれかを含む。なお、故障要因には、補修費用、設備の重要度等のように、部品が故障する要因とは直接的には関係が無い要因が含まれてもよい。
【0076】
耐用年数は、管理設備又は管理設備に含まれる部品が正常に機能する年数である。算出部232は、例えば、取得部231が取得した管理設備に関する情報を参照して、耐用年数を特定する。
【0077】
稼働時間は、例えば、所定の単位期間(例えば1週間、1か月、1年等)あたりの管理設備が稼働した時間である。例えば、実施データには、実施された点検の内容として、日ごと、週ごと又は月ごとの管理設備が稼働した時間が含まれている。この場合において、算出部232は、取得部231が取得した実施データを参照し、所定の単位期間分の管理設備が稼働した時間を集計することにより、稼働時間を算出する。
【0078】
経過日数は、稼働開始日(例えば、部品が修理された日、又は部品が交換された日)から現在日までの日数を示す。例えば、実施データには、実施された保全又は故障対応の内容として、部品が修理された日付又は部品が交換された日付が含まれている。なお、稼働開始日は、管理設備の稼働を開始した最初の日であってもよい。管理設備に関する情報には、例えば、管理設備の稼働を開始した日付が含まれている。この場合において、算出部232は、取得部231が取得した管理設備に関する情報又は実施データを参照し、管理設備の稼働を開始した日、部品が修理された日、又は部品が保全された日から現在日までの日数を算出することにより、経過日数を算出する。
【0079】
測定値は、部品に関連する管理設備の状態を測定するセンサが測定した値である。例えば、測定データには、センサが測定した測定値が含まれる。この場合において、算出部232は、取得部231が取得した測定データを参照して、測定値を特定する。
【0080】
直近の稼働状態は、現在日から所定の期間(例えば、1か月、3か月等)前までの期間における管理設備の稼働の状態であり、例えば、直近の管理設備の稼働時間と、直近の管理設備のバッチ数を含む。例えば、実施データには、実施された点検の内容として、日ごと又は週ごとの管理設備のバッチ数が含まれている。この場合において、算出部232は、取得部231が取得した実施データを参照し、現在日から所定の期間前までの期間における管理設備が稼働した時間を集計することにより、直近の管理設備の稼働時間を算出し、現在日から所定の期間前までの期間における管理設備のバッチ数を集計することにより、直近の管理設備のバッチ数を算出する。
【0081】
前年の故障数は、前年において管理設備が故障した回数である。なお、前年の故障数は、前年において管理設備に含まれる部品を修理した回数であってもよいし、前年において管理設備に含まれる部品を交換した回数であってもよい。例えば、実施データには、実施された保全又は故障対応の内容として、管理設備が故障した日付が含まれている。この場合において、算出部232は、取得部231が取得した実施データを参照し、前年において管理設備が故障した回数を集計することにより、前年の故障数を算出する。
【0082】
故障間隔は、管理設備及び当該管理設備に含まれる部品の組み合わせと同じ種類の設備及び部品の組み合わせにおいて、当該部品が故障した日から当該部品が新たに故障する日までの期間の統計値(例えば、平均値、最頻値、中央値等)である。なお、故障間隔は、管理設備及び当該管理設備に含まれる部品の組み合わせと同じ種類の設備及び部品の組み合わせにおいて、当該部品が修理された日から当該部品が新たに修理されるまでの期間の統計値であってもよいし、当該部品が交換された日から当該部品が新たに交換されるまでの期間の統計値であってもよい。算出部232は、例えば、故障履歴管理データベースを参照し、管理設備及び当該管理設備に含まれる部品の組み合わせと同じ種類の設備及び部品の組み合わせに関連付けられている各故障日に基づいて、当該部品が故障した日から当該部品が新たに故障する日までの期間の統計値を算出することにより、故障間隔を算出する。
【0083】
補修費用は、部品の修理に係る費用又は部品の交換にかかる費用の統計値(例えば、平均値、最頻値、中央値等)である。算出部232は、例えば、故障履歴管理データベースを参照し、管理設備及び当該管理設備に含まれる部品の組み合わせと同じ種類の設備及び部品の組み合わせに関連付けられている各補修費用に基づいて、当該部品の修理又は交換にかかる費用の統計値を算出することにより、補修費用を算出する。なお、補修費用は、ユーザが提示した費用であってもよい。
【0084】
設備の重要度は、ユーザが行う事業に対する管理設備の重要性の度合いを示す。例えば、管理設備に関する情報には、ユーザが行う事業に対する管理設備の重要性の度合いを示す指標(例えばランク)であって、ユーザが指定した指標が含まれている。この場合において、算出部232は、取得部231が取得した管理設備に関する情報を参照して、設備の重要度を特定する。
【0085】
第2のステップとして、算出部232は、算出した各故障要因のスコアに基づいて、リスク値を算出する。例えば、情報処理装置2には、各故障要因に対応する要因係数が予め定められている。要因係数は、故障要因のスコアをリスク値に変換するために定められた数値である。要因係数は、正数であってもよいし、負数であってもよい。
【0086】
この場合において、まず、算出部232は、故障要因ごとに、算出した当該故障要因のスコアと、当該故障要因に対応する要因係数とを乗算することにより、要因リスク値を算出する。そして、算出部232は、算出した各要因リスク値に基づいて、リスク値を算出する。算出部232は、例えば、算出した各要因リスク値を加算、乗算又は平均することにより、リスク値を算出する。
【0087】
なお、要因係数は、年数ごとに定められてもよい。例えば、期間リスク値(保険の満期の時点において想定されるリスク値)を算出する場合、算出部232は、故障要因ごとに、算出した当該故障要因のスコアと、当該故障要因と現在年から保険の満期の年までの年数とに対応する要因係数とを乗算することにより、要因リスク値を算出する。また、例えば、時点リスク値(取得部231が測定データ及び実施データを取得した時点におけるリスク値)を算出する場合、算出部232は、故障要因ごとに、算出した当該故障要因のスコアと、当該故障要因と0年の年数とに対応する要因係数とを乗算することにより、要因リスク値を算出する。
【0088】
なお、部品の故障に影響を及ぼす度合いは、故障要因ごとに異なり得る。そこで、算出部232は、故障要因ごとに部品の故障に影響を及ぼす度合いに応じて重み付けをしてもよい。例えば、情報処理装置2には、各故障要因に対応する重み係数が予め定められている。重み係数は、部品の故障に影響を及ぼす度合いを示す数値であり、ある故障要因に対して部品の故障に影響を及ぼす度合いが大きいほど当該故障要因に対応する要因リスク値が大きくなるようにし、部品の故障に影響を及ぼす度合いが少ないほど当該故障要因に対応する要因リスク値が小さくなるようにするための数値であり、例えば、故障履歴管理データベースに記憶されている情報を分析することによって定められた数値である。この場合において、算出部232は、故障要因ごとに、算出した当該故障要因のスコアと、当該故障要因に対応する要因係数と、当該故障要因に対応する重み係数とを乗算することにより、要因リスク値を算出する。
【0089】
上記において、算出部232が、様々な故障要因のスコアをもとにリスク値を算出する例を説明したが、これに限らない。例えば、算出部232は、稼働開始日と、対象日と、部品の故障間隔と、部品の故障回数と、センサが測定した測定値とに基づいて、リスク値を算出してもよい。対象日は、算出されるリスク値が期間リスク値である場合、現在日から保険の満期を経過した日であり、算出されるリスク値が時点リスク値である場合、現在日である。
【0090】
具体的には、算出部232は、対象日が、稼働開始日と部品の故障間隔とによって想定される当該部品が故障する日付である想定故障日に近いほど要因リスク値を高く算出し、対象日が想定故障日から遠いほど要因リスク値を小さく算出する。算出部232は、例えば、想定故障日を対象日で減算した減算日数と、所定の係数とを乗算することにより要因リスク値を算出する。所定の係数は、乗算する日数が多いほど要因リスク値を小さくし、乗算する日数が少ないほど要因リスク値を高くするために定められた数値である。
【0091】
また、算出部232は、対象部品の故障回数が多いほど要因リスク値を高く算出し、対象部品の故障回数が少ないほど要因リスク値を小さく算出する。算出部232は、例えば、対象部品の故障回数と、所定の係数とを乗算することにより要因リスク値を算出する。所定の係数は、乗算する故障回数が多いほど要因リスク値を小さくし、乗算する故障回数が少ないほど要因リスク値を高くするために定められた数値である。
【0092】
また、例えば、故障履歴管理データベースには、所定の部品が故障したときにセンサが測定した測定値が記憶されており、算出部232は、取得部231が取得した測定データによって示される測定値と、故障履歴管理データベースを参照し、管理設備及び当該管理設備に含まれる部品の組み合わせと同じ種類の設備及び部品の組み合わせに関連付けられている測定値との差が小さいほど要因リスク値を高く算出し、当該差が大きいほど要因リスク値を小さく算出する。算出部232は、例えば、2つの測定値の差と、所定の係数とを乗算することにより要因リスク値を算出する。所定の係数は、乗算する2つの測定値の差が大きいほど要因リスク値を小さくし、乗算する2つの測定値の差が小さいほど要因リスク値を高くするために定められた数値である。
【0093】
算出部232は、算出した上記3つの要因リスク値に基づいて、リスク値を算出する。算出部232は、例えば、算出した上記3つの要因リスク値を加算、乗算又は平均することにより、リスク値を算出する。
【0094】
[情報処理装置2の処理]
続いて、情報処理装置2が実行する処理の流れについて説明する。
図5は、情報処理装置2が実行する処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートは、取得部231が、データ(契約後測定データ及び契約後実施データ)を取得したことを契機として開始する(S1)。
【0095】
算出部232は、契約後測定データと、契約後実施データと、管理設備及び対象部品の組み合わせに対応する故障履歴データとに基づいて、対象部品に対応する時点リスク値を算出する(S2)。判定部234は、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回るか否かを判定する(S3)。
【0096】
時点リスク値が支払い判定用閾値を上回ると判定部234が判定した場合(S3においてYESの場合)、支払い管理部236は、対象部品の保全に対する保険金の支払いを許可するための許可処理を実行する(S4)。時点リスク値が支払い判定用閾値を上回らないと判定部234が判定した場合(S3においてNOの場合)、又はS4において支払い管理部236が許可処理を実行した後に、提示部233は、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報を含む契約後レポートをユーザに提示する(S5)。
【0097】
[本実施の形態における効果]
以上説明したとおり、情報処理装置2は、契約後測定データと契約後実施データと故障履歴データとに基づいて時点リスク値を算出し、算出した時点リスク値が支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報をユーザに提示する。このようにすることで、情報処理装置2は、管理設備の保全に対して保険金を支払う仕組みを提供することができる。例えば、ユーザは、レポートを受け取った時点において対象部品を保全した場合に保険金が支払われるか否か、すなわち、対象部品が保全すべき状態であるか否かを判断することができる。これにより、情報処理装置2は、対象部品の保全が必要なタイミングでユーザに当該対象部品を保全させることができる。その結果、情報処理装置2は、計画外に管理設備を停止しなければならない事態の発生を低減しつつ、管理設備の保全の頻度を低減することができる。
【0098】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0099】
1 ユーザ端末
2 情報処理装置
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
231 取得部
232 算出部
233 提示部
234 判定部
235 契約管理部
236 支払い管理部
237 記録部
S 情報処理システム
【要約】
【課題】設備の保全に対して保険金を支払う仕組みを提供する。
【解決手段】情報処理装置2は、設備及び部品の組み合わせごとに、所定の期間において当該部品が故障した回数と、当該部品の故障の間隔とを示す故障履歴データを記憶する記憶部22と、対象部品に関連する管理設備の状態を測定するセンサが測定した契約後測定データと、ユーザが過去において対象部品に対して実施した点検、保全及び故障対応のうちの少なくともいずれかの内容を示す契約後実施データとを取得する取得部231と、契約後測定データと、契約後実施データと、管理設備及び対象部品の組み合わせに対応する故障履歴データとに基づいて、時点リスク値を算出する算出部232と、時点リスク値が支払い判定用閾値を上回るか否かを示す情報をユーザに提示する提示部233と、を有する。
【選択図】
図2