(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】データ収集装置
(51)【国際特許分類】
G01D 9/04 20060101AFI20241205BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241205BHJP
G01R 13/32 20060101ALI20241205BHJP
G01D 9/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01D9/04
H02J13/00 301A
G01R13/32 D
G01R13/32 A
G01D9/00 A
(21)【出願番号】P 2024135389
(22)【出願日】2024-08-14
【審査請求日】2024-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591212718
【氏名又は名称】株式会社正興電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 勇気
(72)【発明者】
【氏名】今川 一樹
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 隆
(72)【発明者】
【氏名】森田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】米谷 英明
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-251855(JP,A)
【文献】特開2011-034320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 9/04
H02J 13/00
G01R 13/32
G01D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の機器から電流を含む記録対象を取り込むチャンネルと、
前記チャンネルから取り込まれた前記記録対象を監視し、前記記録対象の値が所定のトリガ条件を満たす場合に、前記記録対象の値をデータ保持部に記録する記録手段と、を備え、
前記記録手段は、第1の記録時間にわたって前記記録対象の値を所定数だけ均等周期で記録する第1の記録要素と、前記第1の記録時間と異なる第2の記録時間にわたって前記記録対象の値を前記所定数だけ均等周期で記録する第2の記録要素とで、同時に記録可能で、
前記第1の記録時間と前記第2の記録時間とを設定可能となって
おり、
前記記録対象が交流の場合に、前記記録手段は、前記記録対象の実効値を前記データ保持部に記録可能で、
前記第1の記録要素、前記第2の記録要素、および前記実効値を記録する第3の記録要素のうち、同時に2つの記録要素での記録を選択可能となっている、
ことを特徴とするデータ収集装置。
【請求項2】
前記チャンネルを複数備え、互いに連動するチャンネルを設定可能で、
前記記録手段は、1つのチャンネルから取り込まれた記録対象の値が所定のトリガ条件を満たす場合に、該記録対象の値を前記データ保持部に記録するとともに、該チャンネルに連動するチャンネルから取り込まれた記録対象の値を前記データ保持部に記録する、
ことを特徴とする請求項
1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記記録手段は、外部からトリガ要求が入力されると、前記トリガ条件を満たすか否かに関わらず前記記録対象の値を、前記第1の記録要素、前記第2の記録要素および前記第3の記録要素のうち、選択された2つの記録要素で前記データ保持部に記録する、
ことを特徴とする請求項
1に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
前記所定のトリガ条件を満たす場合とは、前記記録対象の定常値に対して上げ幅の閾値を超えた場合、または、前記記録対象の定常値に対して下げ幅の閾値を下回った場合であり、前記定常値は、現在から過去に遡った所定の前記記録対象の値の平均値であり、
常時行って更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流値などのデータを常時収集し、トリガ条件を満たしたときにデータを記録するデータ収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、変電所における各種機器の健全性を確認するために、現地での巡視、点検などを行っていたが、多大な労力と時間を要するため、各機器から電流値や電圧値などを収集するデータ収集装置が導入されている。このデータ収集装置は、電流や電圧などの波形データが所定のトリガ条件を満たすと、波形データを記録するものであり、データ解析の効率化などを図るために、特定の範囲の波形データだけを選択的に記録するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この装置は、波形データを記録する波形データ記録部と、波形データの記録を開始するためのトリガ条件の初期値、記録の終了条件、トリガ条件の値を変更するための変更用情報を予め記憶する記憶条件記録部を備える。そして、トリガ条件および終了条件に対応させて波形データ記録部への波形データの記録の開始および終了を、変更用情報に基づいてトリガ条件の値を初期値から順次変更して実行するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、機器が起動して波形データが所定のトリガ条件を満たした場合に、起動直後の瞬時における詳細な波形データを知りたいとともに、その後の長期にわたる波形データを知りたい場合がある。しかしながら、特許文献1に記載の装置では、トリガ条件を満たしてから終了条件を満たすまでの、一連の一種類の(記録周期や記録時間が一律の)波形データしか記録することができない。
【0006】
そこで本発明は、1つのトリガで複数種の波形データを記録可能なデータ収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、外部の機器から電流を含む記録対象を取り込むチャンネルと、前記チャンネルから取り込まれた前記記録対象を監視し、前記記録対象の値が所定のトリガ条件を満たす場合に、前記記録対象の値をデータ保持部に記録する記録手段と、を備え、前記記録手段は、第1の記録時間にわたって前記記録対象の値を所定数だけ均等周期で記録する第1の記録要素と、前記第1の記録時間と異なる第2の記録時間にわたって前記記録対象の値を前記所定数だけ均等周期で記録する第2の記録要素とで、同時に記録可能で、前記第1の記録時間と前記第2の記録時間とを設定可能となっており、前記記録対象が交流の場合に、前記記録手段は、前記記録対象の実効値を前記データ保持部に記録可能で、前記第1の記録要素、前記第2の記録要素、および前記実効値を記録する第3の記録要素のうち、同時に2つの記録要素での記録を選択可能となっている、ことを特徴とするデータ収集装置である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のデータ収集装置において、前記チャンネルを複数備え、互いに連動するチャンネルを設定可能で、前記記録手段は、1つのチャンネルから取り込まれた記録対象の値が所定のトリガ条件を満たす場合に、該記録対象の値を前記データ保持部に記録するとともに、該チャンネルに連動するチャンネルから取り込まれた記録対象の値を前記データ保持部に記録する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載のデータ収集装置において、前記記録手段は、外部からトリガ要求が入力されると、前記トリガ条件を満たすか否かに関わらず前記記録対象の値を、前記第1の記録要素、前記第2の記録要素および前記第3の記録要素のうち、選択された2つの記録要素で前記データ保持部に記録する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載のデータ収集装置において、前記所定のトリガ条件を満たす場合とは、前記記録対象の定常値に対して上げ幅の閾値を超えた場合、または、前記記録対象の定常値に対して下げ幅の閾値を下回った場合であり、前記定常値は、現在から過去に遡った所定の前記記録対象の値の平均値であり、常時行って更新する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、1回のトリガで同じ記録対象の値が、第1の記録時間にわたって所定数だけ均等周期で記録されるとともに、第1の記録時間と異なる第2の記録時間にわたって同じ所定数だけ均等周期で記録される。つまり、同じ記録対象の値が、第1の記録周期(=第1の記録時間÷所定数)で第1の記録時間記録されると同時に、第2の記録周期(=第2の記録時間÷所定数)で第2の記録時間記録され、1つのトリガで複数種の波形データを記録することが可能となる。この結果、適正な解析・考察などを行うことが可能となる。しかも、第1の記録時間と第2の記録時間(第1の記録周期と第2の記録周期)とが設定可能なため、所望の記録周期や記録時間の波形データを複数記録することが可能で、適正な解析・考察などが可能となる。
【0013】
また、請求項1に記載の発明によれば、記録対象が交流の場合、上記請求項1の波形データに加えて記録対象の実効値も記録可能なため、より多様な波形データを記録することが可能となる。この結果、適正な解析・考察などを行うことが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、1つのチャンネルの記録対象に対してトリガがかかると、この記録対象の値が記録されるとともに、このチャンネルに連動するチャンネルの記録対象の値も記録される。つまり、1つの記録対象に対してトリガがかかった場合に、他の記録対象の値も記録されるため、適正な解析・考察などを行うことが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、外部からトリガ要求が入力されると、その時点で(即座に)上記請求項2に記載のような記録が行われるため、任意のときに複数種の波形データを記録することが可能となる。この結果、トリガがかからない平常時における波形データを取得して、適正な解析・考察などを行うことが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、記録対象の定常値が常時演算されて更新され、この定常値に基づいて記録対象の値が所定のトリガ条件を満たすか否かが判定されるため、常に最新の定常値に基づく適正な判定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態に係るデータ収集装置の配設状態を示す概念図である。
【
図2】
図1のデータ収集装置の本体を示す正面図(a)と、平面図(b)と、背面図(c)である。
【
図3】
図1のデータ収集装置の直流用ケーブルを示す図(a)と、交流用ケーブルを示す(b)である。
【
図4】
図1のデータ収集装置における定常値の説明図(a)と、記録周期の説明図(b)である。
【
図5】
図1のデータ収集装置において、トリガ条件を満たした場合の動作を示す説明図である。
【
図6】
図1のデータ収集装置において、トリガ要求が入力された場合の動作を示す説明図である。
【
図7】
図1のデータ収集装置において、停止要求が入力された場合の動作を示す説明図である。
【
図8】
図1のデータ収集装置において、連動して記録する動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態に係るデータ収集装置1の配設状態を示す概念図であり、
図2は、このデータ収集装置1の本体10を示す正面図(a)と、平面図(b)と、背面図(c)である。このデータ収集装置1は、電流値や電圧値などのデータを常時収集し、トリガ条件を満たしたときにデータを記録する動作特性測定装置である。この実施の形態では、変電所における各種機器の電流(記録対象)を収集、記録する場合について説明するが、工場などのその他の施設にも適用可能であり、また、電流以外を記録対象として収集、記録してもよい。
【0020】
ここで、データ収集装置1は、通信ネットワークを介して上位装置と通信可能に接続され、さらに、上位装置は、通信ネットワークを介して電力事業者の解析システムと通信可能に接続されている。これにより、データ収集装置1で収集、記録されたデータを、上位装置を介して解析システムで解析できるようになっている。また、メンテナンスPC(パソコン)によってデータ収集装置1を保守したり、後述するトリガ条件、記録時間や記録要素、連動チャンネルなどを設定したりできるようになっている。
【0021】
データ収集装置1の本体10の正面には、外部の機器(直流電源装置や所内盤など)から電流を含む記録対象を取り込むためのチャンネルCH1~CH9が複数(この実施の形態では、9つ)設けられている。すなわち、
図3(a)に示すような直流用ケーブル2の端子21をチャンネルCH1~CH9に装着し、直流用ケーブル2のクランプ22で外部の機器のケーブルを把持することで、直流電流を取り込めるようになっている。同様に、
図3(b)に示すような交流用ケーブル3の端子31をチャンネルCH1~CH9に装着し、交流用ケーブル3のクランプ32で外部の機器のケーブルを把持することで、交流電流を取り込めるようになっている。ここで、直流または交流の電流を取り込むための設定ピンがケーブル2、3に設けられ、かつ、直流か交流かを判定するためのプログラムが本体10に設けられ、どのチャンネルCH1~CH9にも直流用ケーブル2および交流用ケーブル3を接続できるようになっている。
【0022】
さらに、本体10の正面には、制御電源開閉用の電源スイッチ11、電源用のヒューズ12、制御電源を入力するための電源接続用端子台13、外部入力および外部出力のためのDI/DO用コネクタコ14、上位装置と通信するためのLAN接続用コネクタ15が設けられている。また、本体10の背面には、メンテナンスPCと通信するためのLAN接続用コネクタ16、内部電源用やチャンネルCH1~CH9用のLED(表示灯)17が設けられている。
【0023】
このようなデータ収集装置1の本体10には、電流値(記録対象の値)を記録・保持するメモリ(データ保持部)4と、電流値をメモリ4に記録する(書き込む)ための記録タスク(記録手段)5と、を備える。
【0024】
記録タスク5は、各チャンネルCH1~CH9から取り込まれた電流を監視し、電流値が所定のトリガ条件を満たす場合に、電流値をメモリ4に記録するタスク・プログラムであり、次の3つ記録要素(記録形態)で電流値を記録可能となっている。まず、第1の記録時間にわたって電流値を所定数だけ均等周期で記録する第1の記録要素と、第1の記録時間と異なる第2の記録時間にわたって電流値を同じ所定数だけ均等周期で記録する第2の記録要素と、を有する。
【0025】
すなわち、この実施の形態では、所定数が5000で、第1の記録要素および第2の記録要素ともに、5000個のデータ・電流値を記録し、かつ、第1の記録時間および第2の記録時間として、1秒から70分まで1秒単位で任意の時間を設定可能となっている。このため、例えば、
図4(b)に示すように、第1の記録時間を1秒と設定した場合、第1の記録周期が0.2msec(=1sec÷5000)となり、トリガ条件が成立後に、0.2msec間隔で電流値を1秒間記録する。同様に、第2の記録時間を8秒と設定した場合、第2の記録周期が1.6msec(=8sec÷5000)となり、トリガ条件が成立後に、1.6msec間隔で電流値を8秒間記録する。
【0026】
さらに、電流が交流の場合に、交流電流の実効値を記録する第3の記録要素を有する。すなわち、電流が交流の場合、1.4msec間隔で常時実効値を算出、更新し、トリガ条件が成立後に、実効値を所定数(5000個)記録する。
【0027】
そして、第1の記録要素、第2の記録要素および第3の記録要素のうち、同時に2つの記録要素での記録を選択可能となっている。例えば、第1の記録要素と第2の記録要素とを選択して、電流値を0.2msec間隔で1秒間記録(瞬時値を記録)するとともに、電流値を1.6msec間隔で8秒間記録できるようになっている。同様に、第1の記録要素と第3の記録要素とを選択して、電流値を0.2msec間隔で1秒間記録するとともに、交流電流の実効値を記録できるようになっている。
【0028】
また、この実施の形態では、選択した2つの記録要素ともに、トリガ条件が成立する直前の電流値を所定のプリトリガ数だけ、プリトリガデータとして記録する。すなわち、この実施の形態では、トリガ条件の成立時から遡って25個の電流値を記録する。
【0029】
ここで、トリガ条件とは、電流値の記録を開始するための条件であり、この実施の形態では、定常値(平常値)に対する上げ幅あるいは下げ幅の閾値をトリガ条件とする。すなわち、定常値に対して上げ幅の閾値を超えた場合や、定常値に対して下げ幅の閾値を下回った場合に、トリガ条件が成立したとする。例えば、トリガ条件(上げ幅の閾値)を「+5A」とした場合、定常値よりも5A超えた場合に、トリガ条件が成立したとする。同様に、トリガ条件(下げ幅の閾値)を「-5A」とした場合、定常値よりも5A下回った場合に、トリガ条件が成立したとする。なお、電流が交流の場合には、実効値でトリガ条件を設定する。このようなトリガ条件をチャンネルCH1~CH9ごとに設定する。
【0030】
また、定常値は、過去に遡った所定数の電流値の平均値から演算する。すなわち、この実施の形態では、
図4(a)に示すように、現在から遡って過去25個前から44個前までの20個の電流値を平均化したものを定常値とする。従って、例えば、0.2msec間隔で1秒間記録(瞬時値を記録)する場合、4msec(=0.2msec×20)間の平均値となり、交流電流の実効値を記録する場合、28msec(=1.4msec×20)間の平均値となる。そして、このような定常値の演算を常時行って更新し、この定
常値と最新値とを比較して、トリガ条件を満たすか否かを逐次判定するものである。なお、トリガがかかった場合には、その後、トリガ時の電流値を含めて定常値を演算する。
【0031】
ここで、メモリ4は、チャンネルCH1~CH9ごとに、記録日時(トリガ日時)と、2つの記録要素による電流値と、を関連付けて記録・保持する。この際、ワークエリアに一時保存し、第1の記録時間や第2の記録時間などの記録時間が経過した後に、メモリ4に記録・保持してもよい。
【0032】
記録タスク5は、さらに次のような動作・機能を有する。
【0033】
第1の動作・機能として、上記のようなトリガ条件を満たし、2つの記録要素のうち1つでも記録中に再度トリガ条件を満たした場合には、
図5に示すように、このトリガ(記録起動)は受け付けない。換言すると、2つの記録要素の両方ともに記録中でない状態でトリガ条件を満たした場合にのみ、記録を開始する。
【0034】
第2の動作・機能として、
図6に示すように、外部からトリガ要求が入力されると、トリガ条件を満たすか否かに関わらず、電流値を上記の選択された2つの記録要素でメモリ4に記録する。すなわち、メンテナンスPC等からチャンネルCH1~CH9を指定してトリガ要求が入力されると、その時点で即座に、そのチャンネルCH1~CH9に取り込まれた電流値を、このチャンネルCH1~CH9に対して選択された2つの記録要素によってメモリ4に記録する。この際、上記の第1の動作・機能と同様に、2つの記録要素の両方ともに記録中でない状態でトリガ要求が入力された場合にのみ、記録を開始する。
【0035】
第3の動作・機能として、
図7に示すように、外部から停止要求が入力されると、電流値の記録を停止する。すなわち、メンテナンスPC等からチャンネルCH1~CH9を指定して停止要求が入力されると、そのチャンネルCH1~CH9の電流値が記録中の場合、その時点で即座に、そのチャンネルCH1~CH9に対する電流値の記録を停止する。従って、停止要求が入力されるまでの電流値をメモリ4に記録する。これにより、第1の記録時間や第2の記録時間だけ待つことなく、次のトリガで即座に新たな電流値を記録することが可能となる。
【0036】
第4の動作・機能として、互いに連動するチャンネルCH1~CH9を設定可能で、いずれか1つのチャンネルCH1~CH9から取り込まれた電流値が所定のトリガ条件を満たす場合に、この電流値をメモリ4に記録するとともに、このチャンネルCH1~CH9に連動するチャンネルCH1~CH9から取り込まれた電流値もメモリ4に記録する。すなわち、まず、どのチャンネルCH1~CH9とどのチャンネルCH1~CH9とが連動するかを任意に設定可能で、例えば、
図8に示すように、チャンネルCH5とチャンネルCH7とが連動する、と設定可能である。また、連動するチャンネルCH1~CH9は、2つ(1対1)だけではなく、任意の数だけ設定可能であり、最大9チャンネルすべて連動するように設定可能である。
【0037】
そして、例えば、
図8に示すように、チャンネルCH5から取り込まれた電流値が所定のトリガ条件を満たすと、この電流値をメモリ4に記録するとともに、このチャンネルCH5に連動するチャンネルCH7から取り込まれた電流値を、このチャンネルCH7のトリガ条件を満たすか否かに関わらず、メモリ4に記録する。同様に、チャンネルCH7からの電流値が所定のトリガ条件を満たすと、チャンネルCH7とチャンネルCH5からの電流値をメモリ4に記録する。ここで、それぞれのチャンネルCH5、CH7に対して選択された2つの記録要素で、電流値をメモリ4に記録する。さらに、チャンネルCH5、CH7、CH8が連動すると設定した場合には、チャンネルCH8からの電流値もメモリ4に記録する。
【0038】
このような構成のデータ収集装置1によれば、1回のトリガで1つのチャンネルCH1~CH9からの電流が、第1の記録時間にわたって所定数だけ均等周期で記録されるとともに、第1の記録時間と異なる第2の記録時間にわたって同じ所定数だけ均等周期で記録される。つまり、同じ電流値が、第1の記録周期(=第1の記録時間÷所定数)で第1の記録時間記録されると同時に、第2の記録周期(=第2の記録時間÷所定数)で第2の記録時間記録され、1つのトリガで複数種の波形データを記録することが可能となる。この結果、解析システムなどにおいて適正な解析・考察などを行うことが可能となる。しかも、第1の記録時間と第2の記録時間(第1の記録周期と第2の記録周期)とが設定可能なため、所望の記録周期や記録時間の波形データを複数記録することが可能で、適正な解析・考察などが可能となる。
【0039】
例えば、機器が起動した直後の瞬時においては、記録周期を短くして詳細な波形データを取得・記録し、その後においては、記録周期を長くして長期にわたる波形データを取得・記録することで、適正な解析・考察などが可能となる。しかも、この実施の形態では、トリガ条件が成立する前の電流値もプリトリガデータとして記録されるため、例えば、トリガ時前後のデータ・電流値を比較することで、より適正な解析・考察などを行うことが可能となる。
【0040】
さらに、このような2つの波形データに加えて、記録対象が交流の場合に、その実効値も記録可能なため、より多様な波形データを記録することが可能となる。この結果、解析システムなどにおいて適正な解析・考察などを行うことが可能となる。
【0041】
また、1つのチャンネルCH1~CH9の電流に対してトリガがかかると、この電流値が記録されるとともに、このチャンネルCH1~CH9に連動するチャンネルCH1~CH9の電流値も記録される。つまり、1つの電流に対してトリガがかかった場合に、他の電流値も記録されるため、解析システムなどにおいて適正な解析・考察などを行うことが可能となる。例えば、3相交流の場合に、各相それぞれにチャンネルCH1~CH9を接続して連動させることで、いずれか1つの相にトリガがかかると、3相すべての電流値が記録される。このため、3相それぞれの電流値を見て、適正な解析・考察などを行うことが可能となる。
【0042】
さらに、外部からトリガ要求が入力されると、その時点で(即座に)2つの記録要素による記録が行われるため、任意のときに複数種の波形データを記録することが可能となる。この結果、トリガがかからない平常時における波形データを取得して、適正な解析・考察などを行うことが可能となる。つまり、任意のときに任意のチャンネルCH1~CH9の電流値を取得・記録して、所望の解析・考察などを行うことが可能となる。
【0043】
一方、電流の定常値が常時演算されて更新され、この定常値に基づいて電流値が所定のトリガ条件を満たすか否かが判定されるため、常に最新の定常値に基づく適正な判定を行うことが可能となる。
【0044】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要領を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、メンテナンスPCによってトリガ条件や2つの記録要素、連動チャンネルなどを設定しているが、データ収集装置1自体で設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 データ収集装置
10 本体
CH チャンネル
2 直流用ケーブル
3 交流用ケーブル
4 メモリ(データ保持部)
5 記録タスク(記録手段)
【要約】
【課題】1つのトリガで複数種の波形データを記録可能なデータ収集装置を提供する。
【解決手段】 外部の機器から電流を取り込むチャンネルCH1~CH9と、チャンネルCH1~CH9から取り込まれた電流を監視し、電流値が所定のトリガ条件を満たす場合に、電流値をメモリ4に記録する記録タスク5と、備え、記録タスク5は、第1の記録時間にわたって電流値を所定数だけ均等周期で記録する第1の記録要素と、第1の記録時間と異なる第2の記録時間にわたって電流値を所定数だけ均等周期で記録する第2の記録要素とで、同時に記録可能で、第1の記録時間と第2の記録時間とを設定可能となっている。
【選択図】
図2