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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20241205BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L23/14 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024560409
(86)(22)【出願日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2024000300
【審査請求日】2024-10-11
(31)【優先権主張番号】63/440,617
(32)【優先日】2023-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】今村 武司
(72)【発明者】
【氏名】平子 正明
(72)【発明者】
【氏名】大橋 卓史
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-043164(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123799(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェイスダウン実装が可能な半導体装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板の表面側に形成された低濃度不純物層と、
前記半導体基板と前記低濃度不純物層とを合わせて半導体層とすると、
前記半導体層の第1の領域に形成された第1の縦型MOSトランジスタと、
前記半導体層の平面視において、前記第1の領域に隣接した第2の領域に形成された第2の縦型MOSトランジスタと、
前記半導体層の表面側に形成された、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソース電極と、
前記半導体層の表面側に形成された、前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のソース電極と、
前記半導体基板の裏面側に、導電性接着剤を介して形成された支持体と、を備え、
前記平面視において、前記支持体は前記半導体層よりも面積が大きく、かつ前記半導体層を内包し、
前記支持体の厚さは前記半導体層の厚さよりも大きく、
前記平面視において前記半導体層の中心と前記半導体層の外周とを含む、前記半導体装置の断面視において、前記半導体装置のうち、前記支持体および前記導電性接着剤を除いた半導体チップを見たとき、前記半導体チップは前記支持体から離れる方向に凸となる湾曲形状である
半導体装置。
【請求項2】
前記平面視において、前記半導体層は正方形状であり、
前記平面視における前記半導体層の外周において、前記半導体層の直下の前記導電性接着剤の厚さは、前記平面視における前記半導体層の中心において、前記半導体層の直下における前記導電性接着剤の厚さよりも小さい
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記平面視において、前記半導体層は6.2[mm]以上の面積であり、
前記半導体層の面積をS[mm]、前記半導体層の厚さをh[mm]とすると
h≦0.016×S-0.042の関係が成り立つ
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記平面視において、前記半導体層は11.5[mm]以下の面積であり、
h≦0.014×S-0.074の関係が成り立つ
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板の裏面側には、前記半導体基板の裏面全面に接触する金属層が備わり、
前記平面視において、前記半導体層の外周から前記支持体の外周までの最近接距離のうち最小の長さをL[mm]とし、
前記平面視における前記半導体層の角部において、前記半導体層の直下の前記金属層と前記導電性接着剤の厚さの合計を hp[mm]とすると、
L≧(h+hp)/tan(20[deg])の関係が成り立つ
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記支持体は金属から成る
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板の裏面側には、前記半導体基板の裏面全面に接触する金属層が備わり、
前記金属層の厚さよりも、前記第1のソース電極の厚さおよび前記第2のソース電極の厚さの方が大きい
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記導電性接着剤は、前記半導体基板の裏面側の全面で直接に接合する
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記支持体の表面側には、前記平面視で前記半導体基板よりも面積の大きい範囲に接続する支持体金属層が備わり、
前記支持体金属層の厚さは、前記第1のソース電極の厚さおよび前記第2のソース電極の厚さよりも大きく、
前記支持体は絶縁性材料から成る
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記平面視において、前記支持体の表面側は、前記支持体の中心を含み前記支持体の外周を含まない第1範囲と、前記第1範囲を取り囲む第2範囲とを有し、
前記断面視において、前記第1範囲は高さが一定であり、前記第2範囲には前記第1範囲の高さよりも低くなる部分が含まれ、
前記平面視において、前記第1範囲の面積は、前記半導体基板の面積よりも小さく、
前記平面視において、前記半導体基板は前記支持体の前記第1範囲をすべて被覆するように設置される
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2範囲には、前記第2範囲の高さが前記第1範囲の高さと同じになる部分も備わる
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記断面視において、前記支持体は前記半導体チップに向かう方向に凸となる湾曲形状であり、
前記支持体の湾曲量は、前記半導体チップの湾曲量よりも小さい
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記断面視において、前記支持体は前記半導体チップから離れる方向に凸となる湾曲形状であり、
前記支持体の湾曲量は、前記半導体チップの湾曲量よりも小さい
請求項3に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池を過充電、または/および過放電から保護する目的で、1チップで双方向の導通を制御できるデュアル構成の縦型MOSトランジスタが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4616413号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デュアル構成の縦型MOSトランジスタのオン抵抗を低くするには、デュアル構成の縦型MOSトランジスタ(以下、デュアル構成の縦型MOSトランジスタのことを「半導体チップ」とも称する)は、平面視における面積が大きく、半導体基板の薄い構造が好ましい。しかしそのような構造では半導体チップの反りが大きくなり、また半導体チップの強度が低下する。特許文献1には、プリント回路基板を、導電性接着剤を介して剛性の金属板に貼り付ける構造が開示されている。
【0005】
そこで本開示は、導電性接着剤を介して剛性の金属板を貼り付ける構造において、密着度を向上することのできるデュアル構成の縦型MOSトランジスタを備える半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示に係る半導体装置は、フェイスダウン実装が可能な半導体装置であって、半導体基板と、前記半導体基板の表面側に形成された低濃度不純物層と、前記半導体基板と前記低濃度不純物層とを合わせて半導体層とすると、前記半導体層の第1の領域に形成された第1の縦型MOSトランジスタと、前記半導体層の平面視において、前記第1の領域に隣接した第2の領域に形成された第2の縦型MOSトランジスタと、前記半導体層の表面側に形成された、前記第1の縦型MOSトランジスタの第1のソース電極と、前記半導体層の表面側に形成された、前記第2の縦型MOSトランジスタの第2のソース電極と、前記半導体基板の裏面側に、導電性接着剤を介して形成された支持体と、を備え、前記平面視において、前記支持体は前記半導体層よりも面積が大きく、かつ前記半導体層を内包し、前記支持体の厚さは前記半導体層の厚さよりも大きく、前記平面視において前記半導体層の中心と前記半導体層の外周とを含む、前記半導体装置の断面視において、前記半導体装置のうち、前記支持体および前記導電性接着剤を除いた半導体チップを見たとき、前記半導体チップは前記支持体から離れる方向に凸となる湾曲形状である半導体装置であることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、デュアル構成の縦型MOSトランジスタにおいて、オン抵抗を低減しつつ、半導体チップの反りを軽減し、また半導体チップの強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、半導体チップのオン抵抗を低減しつつ、半導体チップの反りを軽減し、さらに半導体チップの強度を向上した、デュアル構成の縦型MOSトランジスタを備える半導体装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る半導体装置の構造の一例を示す断面模式図である。
図2A図2Aは、実施形態1に係る半導体装置の構造の一例を示す平面模式図である。
図2B図2Bは、実施形態1に係る半導体装置に流れる主電流を示す断面模式図である。
図3A図3Aは、実施形態1に係る半導体装置の構造の一例を示す平面模式図である。
図3B図3Bは、実施形態1に係る半導体装置の構造の一例を示す斜視模式図である。
図4A図4Aは、実施形態1に係る半導体装置の製造工程の一部を示すフロー図である。
図4B図4Bは、実施形態1に係る半導体装置をフェイスダウン実装する工程を示す断面模式図である。
図5図5は、実施形態1に係る変形例1の半導体装置の構造の一例を示す断面模式図である。
図6図6は、実施形態1に係る半導体装置の効果を享受することのできる半導体チップの寸法範囲を示したグラフである。
図7A図7Aは、実施形態1に係る半導体装置の構造の一例を示す断面SEM像である。
図7B図7Bは、実施形態1に係る半導体装置の構造の一例を示す断面SEM像である。
図7C図7Cは、実施形態1に係る半導体装置の構造の一例を示す断面SEM像である。
図8A図8Aは、実施形態1に係る変形例2の半導体装置の構造の一例を示す断面模式図である。
図8B図8Bは、実施形態1に係る変形例3の半導体装置の構造の一例を示す断面模式図である。
図9図9は、実施形態2に係る半導体装置の構造の一例を示す断面模式図である。
図10図10は、実施形態2に係る半導体装置の製造工程の一部を示すフロー図である。
図11A図11Aは、実施形態3に係る半導体装置の構造の一例を示す断面模式図である。
図11B図11Bは、実施形態3に係る半導体装置のうち、加工支持体の構造の一例を示す平面模式図である。
図11C図11Cは、実施形態3に係る半導体装置の構造の一例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様に係る半導体装置の具体例について、図面を参照しながら説明する。ここで示す実施形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。従って、以下の実施形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置および接続形態は一例であって本開示を限定する趣旨ではない。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0011】
(実施形態1)
[1.半導体装置の構造]
図1は半導体装置の構造の一例を示す断面図である。図2Aはその平面図であり、半導体装置は矩形状(正方形あるいは長方形)であることを除いて、大きさおよび形状は一例である。またパッドの大きさおよび形状ならびに配置も一例である。図2Bは、半導体装置に流れる主電流を模式的に示す断面図である。図1および図2Bは、図2AのI-Iに沿って切断したときの切断面である。
【0012】
本開示においては、半導体装置1は、金属層30を備えるとして説明をするが、半導体装置1は、必ずしも金属層30を備える構成に限定されることはない。
【0013】
図1および図2Bに示すように、半導体装置1は、半導体基板32と、金属層30と、半導体基板32上に形成された低濃度不純物層33と、を有する。本開示では半導体基板32と低濃度不純物層33とを合わせて半導体層40と称する。
【0014】
半導体基板32は、半導体層40の裏面側に配置され、第1導電型の不純物を含む第1導電型のシリコンからなる。低濃度不純物層33は、半導体層40の表面側に配置され、半導体基板32に接触して形成され、半導体基板32の第1導電型の不純物の濃度より低い濃度の第1導電型の不純物を含んで、第1導電型である。低濃度不純物層33は、例えば、エピタキシャル成長により半導体基板32上に形成されてもよい。
【0015】
図1および図2Aに示すように、半導体装置1は、半導体層40内の第1の領域A1に形成された第1の縦型MOSトランジスタ10(以下、「トランジスタ10」とも称する)と、半導体層40内の第2の領域A2に形成された第2の縦型MOSトランジスタ20(以下、「トランジスタ20」とも称する)と、を有する。
【0016】
ここで、図2Aに示すように、第1の領域A1と第2の領域A2とは、半導体層40の平面視において互いに隣接し、面積で半導体層40を二等分する一方と他方である。図2Aでは第1の領域A1と第2の領域A2の仮想的な境界線90を破線で示している(分かりやすさのために、境界線90を示す破線は半導体層40および半導体装置1の外部まで延長して示している)。なお、図2Aにおいて、第1の領域A1と第2の領域A2とを示す破線は分かりやすさのため半導体層40および境界線90とは厳密に一致させず、若干の余白を置いて内側に示しているが、実質的に第1の領域A1の外周と第2の領域A2の外周は半導体層40の外周および境界線90と一致するものである。
【0017】
金属層30は、半導体層40(半導体基板32)の裏面側に接触して形成され、例えば銀(Ag)もしくは銅(Cu)からなる。なお、金属層30には、金属材料の製造工程において不純物として混入する金属以外の元素が微量に含まれていてもよい。また、金属層30は半導体層40(半導体基板32)の裏面側の全面に形成されていてもいなくてもどちらでもよい。金属層30の厚さは10[μm]以下であることが望ましく、さらには5[μm]以下であることが望ましい。金属層30の厚さは例えば3[μm]である。
【0018】
支持体42は導電性接着剤41を介して、金属層30の裏面側に間接的に接触して形成される。支持体42は、典型的には半導体層40の厚さの2倍以上の厚さであり、例えば面内で一様な200[μm]の厚さの平板金属板である。以降では支持体42を厚膜金属板42と称することもある。厚膜金属板42は、例えば銅(Cu)を主とする金属材料からなる。また導電性接着剤41は典型的には銀ペーストである。
【0019】
図1に示すように、本開示において、半導体装置1から支持体42と導電性接着剤41とを除いた構造を半導体チップ2と称する。半導体チップ2は図1に示すように、支持体42から離れる方向に凸となる湾曲形状を成している。湾曲形状とは、例えば、反りに起因して生じる形状のことである。半導体チップ2の反り量とは、半導体チップ2を断面視したときの、半導体層40の上面または下面、あるいは金属層30の下面の中での、Z方向における最も高い位置と、最も低い位置との差異である。半導体チップ2に生じる反りが、支持体42から離れる方向に凸となる反りである場合、最も高い位置は平面視における半導体層40の中心であり、最も低い位置は平面視における半導体層40の外周、特に外周にある角部である。
【0020】
なお、平面視における半導体層40の中心とは、平面視における半導体層40の対角線の交点をいうものとする。また、本開示でいう半導体装置1の断面視とは、平面視で半導体チップ2における半導体層40の中心と、平面視で半導体チップ2における半導体層40の外周とを共に含んだ面で半導体装置1の断面を見るときのことをいうものとする。このときの半導体層40の外周は、半導体層40の外周における任意の位置でよい。
【0021】
図1および図2Aに示すように、半導体層40(低濃度不純物層33)の第1の領域A1には、第1導電型と異なる第2導電型の不純物を含む第1のボディ領域18が形成されている。第1のボディ領域18には、第1導電型の不純物を含む第1のソース領域14と、第1のゲート導体15、および第1のゲート絶縁膜16が形成されている。
【0022】
第1のゲート絶縁膜16は、半導体層40の上面から第1のソース領域14および第1のボディ領域18を貫通して低濃度不純物層33の一部までの深さに形成された複数の第1のゲートトレンチ17の内部に形成され、第1のゲート導体15は第1のゲートトレンチ17の内部で、第1のゲート絶縁膜16上に形成されている。第1のゲート導体15は半導体層40の内部に埋め込まれた、埋め込みゲート電極であり、第1のゲートパッド119に電気的に接続される。
【0023】
第1のソース電極11は部分12と部分13とからなり、部分12は、部分13を介して第1のソース領域14および第1のボディ領域18に接続されている。第1のソース電極11の部分12は、フェイスダウン実装におけるリフロー時にはんだと接合される層であり、限定されない一例として、ニッケル、チタン、タングステン、パラジウムのうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。部分12の表面には、金などのめっきが施されてもよい。
【0024】
第1のソース電極11の部分13は、部分12と半導体層40とを接続する層であり、限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0025】
第1のソース電極11の厚さは部分12および部分13を合わせて、例えば2[μm]以上13[μm]以下である。
【0026】
低濃度不純物層33の第2の領域A2には、第2導電型の不純物を含む第2のボディ領域28が形成されている。第2のボディ領域28には、第1導電型の不純物を含む第2のソース領域24と、第2のゲート導体25、および第2のゲート絶縁膜26が形成されている。
【0027】
第2のゲート絶縁膜26は、半導体層40の上面から第2のソース領域24および第2のボディ領域28を貫通して低濃度不純物層33の一部までの深さに形成された複数の第2のゲートトレンチ27の内部に形成され、第2のゲート導体25は第2のゲートトレンチ27の内部で、第2のゲート絶縁膜26上に形成されている。第2のゲート導体25は半導体層40の内部に埋め込まれた、埋め込みゲート電極であり、第2のゲートパッド129に電気的に接続される。
【0028】
第2のソース電極21は部分22と部分23とからなり、部分22は、部分23を介して第2のソース領域24および第2のボディ領域28に接続されている。第2のソース電極21の部分22は、フェイスダウン実装におけるリフロー時にはんだと接合される層であり、限定されない一例として、ニッケル、チタン、タングステン、パラジウムのうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。部分22の表面には、金などのめっきが施されてもよい。
【0029】
第2のソース電極21の部分23は、部分22と半導体層40とを接続する層であり、限定されない一例として、アルミニウム、銅、金、銀のうちのいずれか1つ以上を含む金属材料で構成されてもよい。
【0030】
第2のソース電極21の厚さは部分22および部分23を合わせて、例えば2[μm]以上13[μm]以下である。
【0031】
トランジスタ10およびトランジスタ20の上記構成により、半導体基板32は、トランジスタ10の第1のドレイン領域およびトランジスタ20の第2のドレイン領域が共通化された、共通ドレイン領域として機能する。低濃度不純物層33の、半導体基板32に接する側の一部も、共通ドレイン領域として機能する場合がある。なお、低濃度不純物層33はトランジスタ10およびトランジスタ20に共通するドリフト層でもあり、本明細書中ではドリフト層33とよぶこともある。
【0032】
また金属層30はトランジスタ10のドレイン電極およびトランジスタ20のドレイン電極が共通化された、共通ドレイン電極として機能する。支持体42が厚膜金属板である場合、金属層30だけでなく、導電性接着剤41と厚膜金属板42も共通ドレイン電極として機能する。
【0033】
図1に示すように、第1のボディ領域18および第1のソース領域14は、開口を有する層間絶縁層34で覆われ、層間絶縁層34の開口を通して、第1のボディ領域18および第1のソース領域14に接続される第1のソース電極11の部分13に接続されている。層間絶縁層34および第1のソース電極11の部分13は、開口を有するパッシベーション層35で覆われ、パッシベーション層35の開口を通して第1のソース電極11の部分13に接続される部分12に接続されている。
【0034】
第2のボディ領域28および第2のソース領域24は、開口を有する層間絶縁層34で覆われ、層間絶縁層34の開口を通して、第2のボディ領域28および第2のソース領域24に接続される第2のソース電極21の部分23に接続されている。層間絶縁層34および第2のソース電極21の部分23は、開口を有するパッシベーション層35で覆われ、パッシベーション層35の開口を通して第2のソース電極21の部分23に接続される部分22に接続されている。
【0035】
したがって複数の第1のソースパッド111および複数の第2のソースパッド121は、それぞれ第1のソース電極11および第2のソース電極21が半導体装置1の表面に部分的に露出した領域、いわゆる端子の部分を指す。同様に、1以上の第1のゲートパッド119および1以上の第2のゲートパッド129は、それぞれ第1のゲート電極19(図1図2A図2Bには図示せず)および第2のゲート電極29(図1図2A図2Bには図示せず)が半導体装置1の表面に部分的に露出した領域、いわゆる端子の部分を指す。
【0036】
ところで本開示では、平面視で、第1の領域A1には第1の縦型MOSトランジスタ10を構成するものだけが備わり、第2の領域A2には第2の縦型MOSトランジスタ20を構成するものだけが備わるとする。また境界線90とは、第1のソース電極11の部分13と、第2のソース電極21の部分23との間隔の中央位置をたどる仮想線と捉えてよい。また、有限の幅となるが当該間隔そのものと捉えてもよい(当該間隔の場合であっても、肉眼あるいは低倍率での外観では線として認識することができる)。
【0037】
半導体装置1において、例えば、第1導電型をN型、第2導電型をP型として、第1のソース領域14、第2のソース領域24、半導体基板32、および、低濃度不純物層33はN型半導体であり、かつ、第1のボディ領域18および第2のボディ領域28はP型半導体であってもよい。
【0038】
また、半導体装置1において、例えば、第1導電型をP型、第2導電型をN型として、第1のソース領域14、第2のソース領域24、半導体基板32、および、低濃度不純物層33はP型半導体であり、かつ、第1のボディ領域18および第2のボディ領域28はN型半導体であってもよい。
【0039】
[2.デュアル構成の縦型MOSトランジスタの動作]
以下の説明では、トランジスタ10とトランジスタ20とが、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした、いわゆるNチャネル型トランジスタの場合として、半導体装置1の導通動作について説明する。
【0040】
図3Aおよび図3Bは、それぞれ、半導体装置1のX方向およびY方向に繰り返し形成される、トランジスタ10(またはトランジスタ20)の略単位構成の、平面図および斜視図である。図3Aおよび図3Bでは、分かりやすさのために半導体基板32と金属層30、導電性接着剤41、厚膜金属板42、さらにパッシベーション層35と第1のソース電極11(または第2のソース電極21)、層間絶縁層34は図示していない。
【0041】
トランジスタ10の構造とトランジスタ20の構造とは同様である。このため、以下では、略単位構成について、トランジスタ10の符号を用いて説明する。
【0042】
Y方向とは、半導体層40の上面と平行し、第1のゲートトレンチ17が延在する方向である。またX方向とは、半導体層40の上面と平行し、Y方向に直交する方向のことをいう。Z方向とはX方向にもY方向にも直交し、半導体装置の高さ方向を示す方向のことをいう。本開示ではY方向のことを第1の方向、X方向のことを第2の方向、Z方向のことを第3の方向と表すこともある。
【0043】
図3Aおよび図3Bに示すように、トランジスタ10には、第1のボディ領域18と第1のソース電極11とを電気的に接続する第1の接続部18aが備わる。第1の接続部18aは、第1のボディ領域18のうち、第1のソース領域14が形成されていない領域であり、第1のボディ領域18と同じ第2導電型の不純物を含む。第1のソース領域14と第1の接続部18aとは、Y方向に沿って交互に、かつ周期的に繰り返し配置される。トランジスタ20についても同様である。
【0044】
半導体装置1において、第1のソース電極11に高電圧および第2のソース電極21に低電圧を印加し、第2のソース電極21を基準として第2のゲート電極29(第2のゲート導体25)にしきい値以上の電圧を印加すると、第2のボディ領域28中の第2のゲート絶縁膜26の近傍に導通チャネルが形成される。その結果、第1のソース電極11-第1の接続部18a-第1のボディ領域18-低濃度不純物層33-半導体基板32-金属層30-導電性接着剤41-厚膜金属板42-導電性接着剤41-金属層30-半導体基板32-低濃度不純物層33-第2のボディ領域28に形成された導通チャネル-第2のソース領域24-第2のソース電極21という経路で主電流が流れて半導体装置1が導通状態となる。この導通経路における、第2のボディ領域28と低濃度不純物層33との接触面にはPNジャンクションがあり、ボディダイオードとして機能している。
【0045】
同様に、半導体装置1において、第2のソース電極21に高電圧および第1のソース電極11に低電圧を印加し、第1のソース電極11を基準として第1のゲート電極19(第1のゲート導体15)にしきい値以上の電圧を印加すると、第1のボディ領域18中の第1のゲート絶縁膜16の近傍に導通チャネルが形成される。その結果、第2のソース電極21-第2の接続部28a-第2のボディ領域28-低濃度不純物層33-半導体基板32-金属層30-導電性接着剤41-厚膜金属板42-導電性接着剤41-金属層30-半導体基板32-低濃度不純物層33-第1のボディ領域18に形成された導通チャネル-第1のソース領域14-第1のソース電極11という経路で主電流が流れて半導体装置1が導通状態となる。この導通経路における、第1のボディ領域18と低濃度不純物層33との接触面にはPNジャンクションがあり、ボディダイオードとして機能している。
【0046】
図2Bに双方向の主電流の流れを模式的に矢印で示した。水平方向(X方向)の主電流の流れは、金属層30、導電性接着剤41、厚膜金属板42および半導体基板32の各層でそれぞれ生じる。金属層30と厚膜金属板42の抵抗率は他の層に比べて低いので、金属層30あるいは厚膜金属板42を厚くすることで、主電流経路の断面積が拡大し、半導体装置1のオン抵抗を低減することができる。
【0047】
[3.半導体装置の製造方法]
半導体装置1の製造方法について説明する。
【0048】
図4Aは、本実施形態1における半導体装置1の製造工程の一部を簡易に示したものである。後に個片化される各々のデュアル構成の縦型MOSトランジスタの構造は、工程501までにシリコンウェーハ上にグリッド状に形成される。
【0049】
次に工程502において、シリコンウェーハ(後に個片化される各々のデュアル構成の縦型MOSトランジスタで見れば半導体基板32に相当する)の裏面側が薄化加工される。工程502における薄化加工では、半導体層40の厚さが15[μm]以上100[μm]以下となるように制御されることが望ましく、さらに望ましくは15[μm]以上75[μm]以下となるように制御されることが望ましい。
【0050】
次に工程503において、シリコンウェーハの薄化加工された裏面側に金属層30が形成される。金属層30は、例えば複数の金属層が含まれる多層構成であってもよい。複数の金属層は、蒸着、スパッタ、めっき、いずれの方法で個別に形成されてもよい。
【0051】
次に工程504でシリコンウェーハにダイシングをおこない、各々のデュアル構成の縦型MOSトランジスタが個片化される。個片化されたデュアル構成の縦型MOSトランジスタは、まだ厚膜金属板42が接合されていない状態にあるため、先に説明した、半導体チップ2とよぶことのできる状態にある。
【0052】
次に工程505では、あらかじめ銀ペースト等の導電性接着剤41が塗布された厚膜金属板42を準備し、半導体チップ2の金属層30の裏面側を接合する。通常は、導電性接着剤41が押し込まれる量が、例えば5[μm]~10[μm]で設定され、さらに硬化を経た接合後の導電性接着剤41の厚さがねらいの値(例えば20[μm]~60[μm])になるように計算して、導電性接着剤41を厚膜金属板42の表面に塗布しておく。
【0053】
導電性接着剤41は、金属層30の裏面側と厚膜金属板42を接合するための接着剤である。導電性接着剤41は、硬化を経て厚膜金属板42が接合された後の状態で見るとき、金属層30の裏面側全面が導電性接着剤41で満遍なく被覆されることが望ましい。
【0054】
厚膜金属板42は、平面視で、半導体基板32の面積を上回る面積のものを選択し、接合においては、平面視で、金属層30の外周辺から、最近接する厚膜金属板42の外周辺まで、概ね等しい幅で余白を設けるように位置合わせをおこなう。一例としては図2Aに示すように、厚膜金属板42は半導体層40の相似形状である。半導体層40と厚膜金属板42とが相似形状であるとは、平面視で半導体層40と厚膜金属板42とが同じ形状で面積だけが異なることを指す。
【0055】
また厚膜金属板42は、巨視的には厚さが面内で一様であり、段差や凹凸形状を持たない、いわゆる平板であると、半導体層40を接合するのに都合がよい。本実施形態1では厚膜金属板42は平板であるとして説明する。
【0056】
接合時は、相対的に面積の大きい厚膜金属板42を受け側として、相対的に面積の小さい半導体チップ2を合わせるようにすることが一般的である。平面視で金属層30の裏面から、導電性接着剤41がはみ出ていてもよい。導電性接着剤41がはみ出る量は、平面視で、半導体層40の外周に沿って一様であっても、そうでなくてもよい。図2Aでは一例として、導電性接着剤41のはみ出しが一様である場合を示している。
【0057】
工程505においては、銀ペースト等の導電性接着剤41を硬化させるために、半導体チップ2を合わせた状態で、厚膜金属板42をおよそ170[℃]まで高温化する熱処理をおこなう。170[℃]付近から導電性接着剤41は硬化し、金属層30と厚膜金属板42が接合して半導体装置1となる。
【0058】
なお厚膜金属板42を170[℃]へ高温化する熱処理時に、半導体チップ2は反りを生じる。上述したように、半導体層40の厚さは望ましくは15[μm]以上75[μm]以下であり、第1のソース電極11および第2のソース電極21の厚さは2[μm]以上13[μm]以下である。金属層30の厚さは望ましくは5[μm]以下である。それぞれの膜厚を適切に選択することで、170[℃]における半導体チップ2の反りの向きを制御することができる。
【0059】
例えば、半導体層40の厚さを53[μm]とし、第1のソース電極11および第2のソース電極21の厚さを5[μm]とし、金属層30の厚さを3[μm]とすると、170[℃]における半導体チップ2は、厚膜金属板42から離れる方向(図1における断面視で+Z方向)に凸となる反りを生じる。
【0060】
図4Bは半導体装置1をフェイスダウン実装する際の模式図である。
【0061】
[4.考察]
以降は本実施形態1に係る半導体装置1が奏する効果について説明する。
【0062】
デュアル構成の縦型MOSトランジスタでは、導通時のオン抵抗を低減するために、半導体基板32(半導体層40)を薄くし、金属層30を厚くすることが求められる。そのような構成の半導体チップ2は、高温で-Z方向に凸となる反りを生じやすくなる。半導体層40を薄くするほど、金属層30を厚くするほど高温時に生じる反りは大きくなる。
【0063】
特に、オン抵抗の低いデュアル構成の縦型MOSトランジスタが求められる場合、チャネルの総ゲート幅を増大させる目的で、平面視での半導体チップ2の面積を大きくすることが有効である。しかし面積が大きいと、半導体チップ2に生じる反りは顕著に増大してしまう。
【0064】
半導体チップ2を実装基板にフェイスダウン実装する際は、はんだ接合材を用いて240[℃]程度まで高温化するリフロー処理をおこなう必要がある。半導体チップ2の240[℃]における反り量が40[μm]を超えると、反りの向きに依らず実装不具合が生じやすくなることが分かっており、半導体チップ2の反り量は40[μm]を下回るように抑制することが求められる。
【0065】
本実施形態1に係る半導体装置1の構成は、上記のような、半導体層40の厚さが薄く、かつ面積が大きい半導体チップ2に対して特に有効である。半導体装置1では、支持体42を厚膜金属板にして、金属層30との間も導電性接着剤41で接続する。このため金属層30が薄くても、厚膜金属板42が十分に厚ければ、厚膜金属板42が水平方向の導通経路となるため半導体装置1のオン抵抗を低減することができる。そして半導体チップ2においては、金属層30を薄くすることで、生じる反りを軽減することができる。
【0066】
さらに半導体チップ2を厚膜金属板42へ接合するのは、240[℃]よりも低い170[℃]付近であるため、半導体チップ2の反り量を170[℃]付近で生じる程度の反り量に抑えることができる。導電性接着剤41として例えば銀ペーストのように、再溶融しない材料を選択すれば、半導体装置1を実装基板にフェイスダウン実装するときのリフロー処理(240[℃])で、厚膜金属板42に既に接合された半導体チップ2が反りを増大することがない。
【0067】
また、厚膜金属板42は十分に厚ければ、半導体チップ2に対する支持体の役割を果たすので、半導体層40を薄くすることによる半導体チップ2の強度低下を補うことができる。
【0068】
したがって本実施形態1に係る半導体装置1の厚膜金属板42は、半導体層40の薄さを物理的に補い、金属層30の薄さを電気的に補う効果がある。金属層30については、極論すれば存在しなくても構わない。その場合は図5に示す、本実施形態1の変形例1のように、導電性接着剤41が半導体基板32(半導体層40)の裏面側の全面で直接に接合する。
【0069】
本実施形態1に係る、厚膜金属板42を有する半導体装置1の構造は、半導体チップ2における半導体層40の平面視での面積が大きいほど、また半導体層40が薄いほど有用である。逆に半導体層40の平面視での面積が小さく、半導体層40が厚い半導体チップ2に対しては、厚膜金属板42を接合する意味は希薄である。そこで本実施形態1に係る、厚膜金属板42を有する半導体装置1の構造が有用になる、半導体チップ2の寸法(面積と厚さ)を検討した。
【0070】
図6に、半導体チップ2のオン抵抗を1[mΩ]以下とするために必要な、平面視での半導体層40の面積と厚さ(低濃度不純物層33の上面から半導体基板32の下面まで)、およびそのときに生じる半導体チップ2の反り量を算出したグラフを示す。ここで1[mΩ]は目安であるが、電池保護回路において近年需要が高まっている大電流通電時には、例えば1[mΩ]以下の低いオン抵抗が求められる。
【0071】
横軸は半導体チップ2における平面視での半導体層40の面積S[mm]であり、左の縦軸は半導体チップ2における半導体層40の厚さh[mm]である。半導体層40の形状は正方形としている。例えば2.5×2.5[mm]が面積6.2[mm]に、3.4×3.4[mm]が面積11.5[mm]に相当する。〇印でプロットされているのは半導体チップ2のオン抵抗がちょうど1.00[mΩ]となるときの半導体層40の厚さである。△印でプロットされているのは半導体チップ2のオン抵抗がちょうど0.75[mΩ]となるときの半導体層40の厚さである。この半導体層40の厚さを算出するときの半導体チップ2では、金属層30は材料が銀(Ag)であり、厚さが50[μm]であることを前提としている。
【0072】
1.00[mΩ]以下となる低いオン抵抗を実現するためには、〇印のプロットを繋ぐ曲線を含んでそれよりも下の領域に当てはまる構造となるように半導体チップ2を構成する必要がある。半導体チップ2における平面視での半導体層40の面積が小さければ半導体層40の厚さは薄くせねばならないが、半導体チップ2における平面視での半導体層40の面積が大きければ半導体層40の厚さはある程度まで厚くすることができる。
【0073】
〇印のプロットを繋ぐ線はおよそh=0.016×S-0.042の関係(図6中の破線、6.2≦S≦11.5で精度が良好)にあり、したがってオン抵抗を1.00[mΩ]以下とするには、半導体チップ2における半導体層40はh≦0.016×S-0.042の関係にあることが求められる。
【0074】
△印のプロットを繋ぐ線はおよそh=0.014×S-0.074の関係(図6中の破線、6.2≦S≦11.5で精度が良好)にあり、したがってオン抵抗を0.75[mΩ]以下とするには、半導体チップ2における半導体層40はh≦0.014×S-0.074の関係にあることが求められる。
【0075】
図6の右の縦軸は半導体チップ2が240[℃]の高温時に生じる反り量[μm]である。□印でプロットされているのは、〇印で示したそれぞれの半導体チップ2における半導体層40の構成(面積Sと厚さh)において、金属層30としてAgが50[μm]の厚さで形成された場合に生じる反り量である。半導体チップ2が備える金属層30として50[μm]の厚さのAgを設定したのは、厚膜金属板42を備える本実施形態1に係る半導体装置1の構造と対比できるようにするためである。金属層30を構成する材料としては、抵抗率の良好なAgとし、厚さ50[μm]もオン抵抗低減への寄与がほぼ飽和するところを選択した。
【0076】
なお、平面視で半導体層40の形状を正方形としたのは、同じ構成(面積Sと厚さh)であっても反り量が最も軽減されるのが正方形状であるためである。したがって図5の□印のプロットは、本実施形態1に係る半導体装置1と電気的に対比し得る半導体チップ2の状態での、最小の反り量を示したものであるといえる。
【0077】
図6によれば、オン抵抗を1.00[mΩ]以下とすることが求められる場合、面積が6.2[mm]以上で240[℃]の反り量が40[μm]を超えることが分かる。このため面積が6.2[mm]以上では、半導体チップ2のままで実装をおこなうことは難しく、反り量を軽減することのできる対策が必要になる。
【0078】
オン抵抗1.00[mΩ]であっても、平面視での半導体チップ2の面積が6.2[mm]未満である場合は、反り量が40[μm]を下回るので、半導体チップ2のままで実装をおこなうことができる。また平面視での半導体チップ2の面積が同じ6.2[mm]であっても、オン抵抗が1.00[mΩ]を上回ってもよいのであれば、半導体層40の厚さを過度に薄くする必要がないので、反り量が40[μm]を下回り、半導体チップ2のままで実装をおこなうことができる。
【0079】
したがって、平面視で正方形状であり、6.2[mm](2.5×2.5[mm])以上の面積を有する半導体チップ2に対して、オン抵抗を1.00[mΩ]以下とすることが求められる場合、すなわち半導体チップ2における半導体層40について、h≦0.016×S-0.042の関係が成り立つとき、本実施形態1に係る半導体装置1のように、厚膜金属板42を接合することが好ましい。
【0080】
また、例えばオン抵抗を0.75[mΩ]以下とすることが求められる場合は、半導体チップ2において半導体層40の厚さをさらに薄くする必要がある。すなわち半導体チップ2における半導体層40について、h≦0.014×S-0.074の関係が成り立つとき、本実施形態1に係る半導体装置1のように、厚膜金属板42を接合することがさらに好ましい。
【0081】
さて本実施形態1に係る半導体装置1は、半導体層40(半導体基板32)、第1のソース電極11および第2のソース電極21、金属層30の厚さを各々適切に選択することで、170[℃]における半導体チップ2の反りを、支持体42から離れる方向(+Z方向)に凸となるように制御することができる。
【0082】
図1に示すように、厚膜金属板42から見て金属層30の裏面が離れる方向(+Z方向)に凸となるように反ると、導電性接着剤41が、金属層30と厚膜金属板42との間で挟み込まれるようになる。特に金属層30の端部は、半導体チップ2の湾曲によって、厚膜金属板42へ相対的に近づく(-Z方向)こととなり、導電性接着剤41を厚膜金属板42側へ押し込む。半導体チップ2がこのような湾曲形状となると、半導体チップ2と厚膜金属板42との接合の密着度が高まる効果を享受できる。
【0083】
したがって半導体装置1は、半導体装置1の断面視において、半導体装置1のうち、厚膜金属板42および導電性接着剤41を除いた半導体チップ2を見たとき、半導体チップ2は厚膜金属板42から離れる方向に凸となる湾曲形状であることが望ましい。言い換えると、平面視における半導体層40の外周において、半導体層40の直下の導電性接着剤41の厚さは、平面視における半導体層40の中心において、半導体層40の直下における導電性接着剤41の厚さよりも薄くなることが望ましい。
【0084】
図7A図7B図7Cに、本実施形態1に係る半導体装置1を実装基板にフェイスダウン実装したときの断面SEM像を示す。図7Bは、図7Aの破線で囲まれた部分の拡大断面SEM像であり、図7Cは、図7Bの破線で囲まれた部分の拡大断面SEM像である。図7A図7Cに示す半導体装置1において、半導体層40の厚さは53[μm]、第1のソース電極11および第2のソース電極21の厚さは4[μm]、金属層30の厚さは3[μm]であり、厚膜金属板42の厚さは200[μm]である。
【0085】
図7Bおよび図7Cにおける水平線Aは、平面視での半導体層40の中心における半導体層40と金属層30との界面位置を、平面視での半導体層40の外周まで延長して示したものである。また図7Cにおける水平線Bは、半導体層40の外周における半導体層40と金属層30との界面位置を示したものである。図7Cにおいて、水平線Bは水平線Aよりも厚膜金属板42に近い側(-Z方向)にあり、水平線Aと水平線Bとの方向の間隔は2[μm]である。
【0086】
したがって、半導体チップ2は厚膜金属板42と離れる方向(+Z方向)を凸として反った形状を成しており、その反り量は2[μm]である。半導体チップ2と厚膜金属板42とを接合する導電性接着剤41は両者の間に挟み込まれるようにして硬化しており、半導体チップ2の裏面側全面を被覆している。導電性接着剤41には、ボイドの発生している個所や、剥がれそうな個所は見当たらず、密着度は良好である様子が確認できる。
【0087】
発明者らが検討した結果、半導体チップ2の170[℃]における反り量は、2[μm]以上あれば密着度を向上できる効果を安定して得られることが分かった。反り量が2[μm]を下回る場合、あるいは反りが逆の向きに凸となる場合は、半導体チップ2と厚膜金属板42との間で導電性接着剤41が挟み込まれる効果が安定しては得られず、導電性接着剤41が半導体装置1の端部で剥がれている痕跡が見られることもある。
【0088】
半導体チップ2が高温時に反るのは、半導体層40の表面側に第1のソース電極11および第2のソース電極21が形成されていることに起因する。また半導体層40の裏面側に金属層30が備わる場合には、金属層30が形成されていることも影響する。半導体層40、第1のソース電極11および第2のソース電極21、金属層30の、それぞれの線膨張係数やヤング率などの物性値と、それぞれの厚さとの関係で、半導体チップ2の反りの方向(湾曲の方向ともいう)と反り量(湾曲量ともいう)が決まる。
【0089】
半導体チップ2に金属層30が備わらない場合(図5で示した本実施形態1の変形例1においては)、半導体チップ2の反りは、半導体層40と、第1のソース電極11および第2のソース電極21の関係だけで決まる。線膨張係数は通常、金属種の方が大きいため、高温時に生じる反りの方向は+Z方向に凸となる。反り量は半導体層40と、第1のソース電極11および第2のソース電極21の厚さの相対的な関係で決まり、半導体層40が薄いほど、また第1のソース電極11および第2のソース電極21の厚さが厚いほど大きくなる。
【0090】
半導体チップ2に金属層30が備わる場合は、主に金属層30と、第1のソース電極11および第2のソース電極21の関係だけで決まる。さらには第1のソース電極11および第2のソース電極21を構成する金属種と、金属層30を構成する金属種とは、線膨張係数が近い値であることが多いため、それぞれの厚さだけで反りの方向や反り量が決まることが多い。+Z方向に凸となる反りへ制御することが求められる場合、金属層30の厚さは、第1のソース電極11の厚さおよび第2のソース電極21の厚さよりも薄くすることが望ましい。高温時には膜厚がより厚い方が膨張による応力を増大し、そちらの方向を凸とする湾曲形状になるためである。
【0091】
上述したように、金属層30と厚膜金属板42との接合の密着度を高めるには、半導体チップ2が厚膜金属板42から離れる方向(+Z方向)に反ることが求められるが、反り量が大きすぎると、平面視における半導体層40の中心付近で導電性接着剤41にボイドが生じやすくなる。発明者らが検討した結果、半導体チップ2の170[℃]における反り量は、20[μm]以下となるように調整されると、安定してボイドの発生を防げることが分かった。したがって半導体チップ2の170[℃]における反り量は、2[μm]以上20[μm]以下となることが好ましい。
【0092】
半導体チップ2が厚膜金属板42から離れる方向(+Z方向)に凸となる湾曲形状となるためには、半導体チップ2において半導体層40の厚さは100[μm]以下であることが好ましく、さらには75[μm]以下であることが好ましい。なぜなら第1のソース電極11および第2のソース電極21を極端に厚くして製膜することは難しく、半導体層40が薄い方が半導体チップ2を湾曲させやすいからである。また半導体層40が薄くなることによる半導体チップ2としての強度低下は、厚膜金属板42を接合することで補えるので、本開示では半導体層40を薄くすることによる副作用は軽減できる。
【0093】
しかしながら半導体層40の厚さが極端に薄くなると、例えば15[μm]未満となると、個片化する際に半導体層40(半導体基板32)にクラックが生じやすくなる。したがって、半導体層40の厚さは15[μm]以上100[μm]以下が好ましく、さらには15[μm]以上75[μm]以下が好ましい。
【0094】
第1のソース電極11の厚さおよび第2のソース電極21の厚さはそれぞれ、例えば2[μm]以上13[μm]以下であることが望ましい。半導体チップ2に金属層30が備わらない場合、半導体層40が薄ければ、第1のソース電極11の厚さおよび第2のソース電極21の厚さが2[μm]から5[μm]であっても170[℃]における反り量を2[μm]以上にすることができる。しかし半導体層40が厚いときは、第1のソース電極11の厚さおよび第2のソース電極21の厚さも10[μm]から13[μm]のように、応じて厚い方へ変化させることが望ましい。
【0095】
上記のような膜厚構成であれば、半導体チップ2が高温時に反る方向を、半導体チップ2が厚膜金属板42から離れる方向に凸となる方向(+Z方向)へ制御し、さらに反り量を2[μm]以上20[μm]以下に制御することができる。
【0096】
ところで図1に模式的に示すように、本実施形態1に係る半導体装置1では、導電性接着剤41は半導体チップ2の側壁に一部せりあがるように、概ね三角形状のフィレットを形成することが多い。本実施形態1に係る半導体装置1では、半導体チップ2が厚膜金属板42から離れる方向に凸となる湾曲形状を示すことに起因して、導電性接着剤41のフィレットは、図7A図7Cに示すように、半導体層40の上面に近い位置まで到達することがある。
【0097】
図7Cに示すように、厚膜金属板42の上面を基準としてフィレットの角度を定義すると、本実施形態1に係る半導体装置1では、最小でも20[deg]の角度を有することが分かった。したがって導電性接着剤41は、平面視で半導体層40の外周から、最大で(h+hp)/tan(20[deg])[mm]だけはみ出る可能性がある。ここで、平面視で半導体層40の角部における、直下の金属層30と導電性接着剤41の厚さの合計をhp[mm]としている。半導体層40の角部を指定しているのは、半導体チップ2の反りによって、導電性接着剤41が最も押し込まれる個所だからである。またtanは正接関数である。
【0098】
仮に平面視における厚膜金属板42の面積が、半導体層40の面積に比べて十分に大きくないと、導電性接着剤41のはみ出しが、厚膜金属板42の内部におさまらない懸念がある。したがって導電性接着剤41のフィレットの底辺の長さの分だけ、導電性接着剤41のはみ出しがあることを考慮して平面視での厚膜金属板42の面積を準備しなければならない。
【0099】
平面視において半導体層40の外周から厚膜金属板42の外周までの最近接距離のうち最小の長さをL[mm]とし、半導体層40の厚さをh[mm]とし、平面視における半導体層40の角部において、半導体層40の直下の金属層30と導電性接着剤41の厚さの合計をhp[mm]とすると、導電性接着剤41のフィレットが最小で20[deg]の角度のため、L≧(h+hp)/tan(20[deg])の関係が成り立つことが望ましい。この関係が成立すると、平面視で半導体層40の全周において導電性接着剤41のはみ出しが、厚膜金属板42の外周を越えることがない。
【0100】
以下では本実施形態1に係る半導体装置1の変形例について説明する。
【0101】
図8Aに、実施形態1に係る半導体装置1の変形例2の断面模式図を示す。変形例2に係る半導体装置1では、支持体42が、半導体チップ2に向かう方向に凸となる湾曲形状を有している。支持体42の湾曲形状とは、例えば、導電性接着剤41を介して金属層30と支持体42を接合する際の熱処理時に支持体42の反りに起因して生じる形状のことである。支持体42の反り量とは、支持体42を断面視したときの、支持体42の上面または下面の中で、Z方向における最も高い位置と、最も低い位置との差異である。支持体42に生じる反りが、半導体チップ2に向かう方向に凸となる反りである場合、最も高い位置は平面視における支持体42の中心であり、最も低い位置は平面視における支持体42の外周、特に外周にある角部である。
【0102】
支持体42の反りの方向や反り量は、170[℃]で生じる半導体チップ2の反り量と、支持体42の厚さまたは/および材質、さらに導電性接着剤41の厚さまたは/および材質、あるいは接合の条件を調整して制御することができる。最も容易な調整の仕方は、支持体42の厚さを薄くすることである。支持体42の厚さを薄くすると、半導体装置1が完成した時点での支持体42の反り量を増大させることができるが、半導体装置1としての剛性が低減する。このため目安として、支持体42の厚さは、支持体42の反り量が、半導体チップ2の反り量よりも小さくなるように設計されることが好ましい。
【0103】
図8Aに示すように、半導体装置1において、支持体42の湾曲量が半導体チップ2の湾曲量よりも小さいうえで、支持体42が、半導体チップ2に向かう方向に凸となる湾曲形状を有する場合、支持体42が湾曲形状でない場合に比べて導電性接着剤41の押さえつけが軽減するので、平面視で導電性接着剤41が半導体層40からはみ出す長さを抑制することができる。
【0104】
図8Bに、実施形態1に係る半導体装置1の変形例3の断面模式図を示す。変形例3に係る半導体装置1では、支持体42が、半導体チップ2から離れる方向に凸となる湾曲形状を有している。図8Bに示すように、半導体装置1において、支持体42の湾曲量が半導体チップ2の湾曲量よりも小さいうえで、支持体42が、半導体チップ2から離れる方向に凸となる湾曲形状を有する場合、支持体42が湾曲形状でない場合に比べて、平面視で半導体層40の中心付近において半導体チップ2と導電性接着剤41との間にボイドが生じることを防止することができる。
【0105】
(実施形態2)
以下、実施形態1に係る半導体装置1から、一部の構成が変更されて成る実施形態2に係る半導体装置100について説明する。
【0106】
実施形態2に係る半導体装置100は、実施形態1に係る厚膜金属板であった支持体42が、絶縁性支持体420へ変更され、さらに絶縁性支持体420の表面側、すなわち半導体チップ2と接合する面の側には、支持体金属層300が形成される構成の例となっている。
【0107】
ここでは、実施形態2に係る半導体装置100について、実施形態1に係る半導体装置1と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、半導体装置1との相違点を中心に説明する。
【0108】
[1.半導体装置の構成]
図9に、実施形態2に係る半導体装置100の断面模式図を示す。実施形態1に係る半導体装置1から、支持体42が絶縁性支持体420へ変更され、絶縁性支持体420の表面側には、支持体金属層300が形成されるところが異なる。支持体金属層300は絶縁性支持体420と側面を同一にするように、絶縁性支持体420の表面側の全面を被覆していてもよい。また図9に示すように、絶縁性支持体420の表面側の一部のみを被覆していてもよい。
【0109】
[2.半導体装置の製造方法]
図10に実施形態2に係る半導体装置100の製造過程の一部を簡易に示した。工程501~504は実施形態1に係る半導体装置1の製造過程と同様である。工程506は実施形態1における工程505に相当する工程である。
【0110】
本実施形態2では、工程506において半導体チップ2が絶縁性支持体420へ接合される。工程506では、あらかじめ絶縁性支持体420の表面側に支持体金属層300を形成しておき、支持体金属層300の上面に導電性接着剤41を塗布する。導電性接着剤41は、例えば銀ペーストであり、170[℃]への高温化で硬化し、半導体チップ2と絶縁性支持体420または支持体金属層300とを接合する。
【0111】
[3.考察]
本実施形態に係る半導体装置100では、絶縁性支持体420を用いるため、実施形態1に係る厚膜金属板よりも剛性を向上させることができる。剛性の良好な素材として、例えばシリコン基板がある。シリコン基板を絶縁性支持体420として使用する場合、実施形態1に係る半導体装置1において、厚膜金属板を用いたのと同じ効果を、より薄い寸法で実現することができる。
【0112】
一方、本実施形態2に係る半導体装置100では、絶縁性支持体420の表面に支持体金属層300が備わるので、これを導通経路として十分に低いオン抵抗を実現することができる。特に本実施形態2の半導体装置100が有用となるのは、支持体金属層300の厚さが、半導体チップ2における第1のソース電極11の厚さおよび第2のソース電極21の厚さよりも大きい場合である。
【0113】
実施形態1に係る半導体装置1では、半導体チップ2において金属層30の厚さを第1のソース電極11の厚さおよび第2のソース電極21の厚さよりも大きくすると、170[℃]において半導体チップ2に生じる反りの向きを、支持体42から離れる方向に凸とすることができない。これに対して本実施形態2に係る半導体装置100では、半導体チップ2における金属層30の厚さを第1のソース電極11の厚さおよび第2のソース電極21の厚さよりも小さくしておけば、170[℃]において半導体チップ2に生じる反りの向きを、支持体42から離れる方向に凸とすることができる。
【0114】
支持体金属層300は、半導体チップ2の裏面側が接合する範囲すべてを被覆することが望ましい。したがって絶縁性支持体420の表面側には、平面視で半導体層40よりも面積の大きい範囲に形成された支持体金属層300が備わり、支持体金属層300の厚さは、第1のソース電極11の厚さおよび第2のソース電極21の厚さよりも大きいことが望ましい。
【0115】
(実施形態3)
以下、実施形態に係る半導体装置1から、一部の構成が変更されて成る実施形態3に係る半導体装置200について説明する。
【0116】
実施形態3に係る半導体装置200では、実施形態1に係る厚膜金属板であって、面内で一様な厚さの平板である支持体42が、厚膜金属板であって表面に加工が施された加工支持体430へ変更される構成の例となっている。
【0117】
ここでは、実施形態3に係る半導体装置200について、実施形態1に係る半導体装置1と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、半導体装置1との相違点を中心に説明する。
【0118】
[1.半導体装置の構成]
図11Aに、実施の形態3に係る半導体装置200の断面模式図を示す。図11Bに、実施の形態3に係る加工支持体430の平面模式図を示す。図11Cに、加工支持体430に半導体チップ2を実装した後の半導体装置200の平面模式図を示す。実施形態1に係る半導体装置1から、支持体42が加工支持体430へ変更されるところが異なる。
【0119】
加工支持体430だけを見たとき、加工支持体430の表面(半導体チップ2と接合される面)は、図11Bに示すように、平面視で加工支持体430の中心を含み、加工支持体430の外周を含まない第1範囲と、第1範囲を取り囲み、加工支持体430の表面の残りの範囲である第2範囲とに区分される。図11Aおよび図11Bにおいては、第1範囲と第2範囲の仮想的な境界線を破線で示している。
【0120】
第1範囲においては加工支持体430の厚さは一定だが、第2範囲では、加工支持体430の表面の一部に溝状の加工が施され、加工支持体430の厚さが第1範囲よりも薄い部分が備わっている。本実施形態3では、第2範囲のうち、加工支持体430の外周付近で、加工支持体430の厚さが第1範囲における厚さと同等になるところが備わる例を示している。しかし第2範囲における加工支持体430の厚さは、一定であってもよいし、あるいは段階的に第1範囲における加工支持体430の厚さよりも薄くなる形状であってもよい。
【0121】
半導体装置200では、加工支持体430の表面側に導電性接着剤41を介して半導体チップ2が接合されるが、図11Aおよび図11Cに示すように、平面視で半導体チップ2における半導体層40の外周が、加工支持体430の第2範囲に形成された溝の幅内に内包されるように設置される。なお、図11Cでは、平面視で半導体チップ2からはみ出して見えるはずの導電性接着剤41の図示を省略している。
【0122】
したがって、本実施形態3に係る半導体装置200は、平面視で加工支持体430の表面における第1範囲の面積は、半導体チップ2における半導体層40の面積より小さく、平面視で半導体層40は第1範囲をすべて被覆するように接合される。
【0123】
[2.考察]
上記のような構成とすることで、平面視で、導電性接着剤41が半導体層40から水平方向にはみ出る長さを抑制することができる。加工支持体430の第2範囲に溝状の加工が施されるので、押し出された導電性接着剤41が溝内に流れ込む。溝内には、押し出された導電性接着剤41を一定程度ためることができるので、溝の幅や深さを適宜変更することで、水平方向のはみ出し長さや、半導体チップ2の側面へせり上がる高さを抑制することができる。
【0124】
以上、本開示の一態様に係る半導体装置について、実施形態1~3および変形例1~3に基づいて説明したが、本開示は、これら実施形態および変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形をこれら実施の形態に施したものや、異なる実施形態および変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本願発明に係る縦型MOSトランジスタを備える半導体装置は、電流経路の導通状態を制御する装置として広く利用できる。
【符号の説明】
【0126】
1、100、200 半導体装置
2 半導体チップ
10 トランジスタ(第1の縦型MOSトランジスタ)
11 第1のソース電極
12、13 部分
14 第1のソース領域
15 第1のゲート導体
16 第1のゲート絶縁膜
17 第1のゲートトレンチ
18 第1のボディ領域
18a 第1の接続領域
19 第1のゲート電極
20 トランジスタ(第2の縦型MOSトランジスタ)
21 第2のソース電極
22、23 部分
24 第2のソース領域
25 第2のゲート導体
26 第2のゲート絶縁膜
27 第2のゲートトレンチ
28 第2のボディ領域
28a 第2の接続領域
29 第2のゲート電極
30 金属層
32 半導体基板
33 低濃度不純物層(ドリフト層)
34 層間絶縁層
35 パッシベーション層
40 半導体層
41 導電性接着剤
42 支持体(厚膜金属板)
300 支持体金属層
420 絶縁性支持体
430 加工支持体
90 境界線
111 第1のソースパッド
119 第1のゲートパッド
121 第2のソースパッド
129 第2のゲートパッド
A1 第1の領域
A2 第2の領域
【要約】
半導体装置(1)は、半導体層(40)と、半導体層(40)に形成された第1の縦型MOSトランジスタ(10)および第2の縦型MOSトランジスタ(20)と、半導体層(40)の裏面側全面に接触接続する金属層(30)と、金属層(30)の裏面側に、導電性接着剤(41)を介して接合された支持体(42)とを備え、平面視において、支持体(42)は半導体層(40)よりも面積が大きく、かつ半導体層(40)を内包し、支持体(42)の厚さは半導体層(40)の厚さよりも大きく、平面視において半導体層(40)の中心と半導体層(40)の外周とを含む、半導体装置(1)の断面視において、半導体装置(1)から支持体(42)および導電性接着剤(41)を除いた半導体チップ(2)は、支持体(42)に離れる方向に凸となる湾曲形状である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C