(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】円順列変異ハロアルカントランスフェラーゼ融合分子
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241206BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20241206BHJP
A01K 67/027 20240101ALI20241206BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20241206BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241206BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241206BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241206BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241206BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20241206BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20241206BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A01H5/00 A
A01K67/027
C07K14/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/10
C12N15/54
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2021561901
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2020060785
(87)【国際公開番号】W WO2020212537
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-04
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500449363
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フェルデルンク デル ヴィッセンシャフテン エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ヒブロット,ジュリエン
(72)【発明者】
【氏名】ハッパーツ,マグナス
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,カイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナス,ウィルヘルム
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/219953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 19/00
A01H 5/00
A01K 67/027
C07K 14/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 9/10
C12N 15/54
C12N 15/62
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュラーポリペプチドであって:
- 第1の部分エフェクター配列であり、
○ 配列番号002又は配列番号002と少なくとも
90%同一の配列を特徴とする、N末端の第1のエフェクター配列部分、
〇 配列番号003、又は配列番号003と少なくとも
90%同一の配列を特徴とする、C末端の第1のエフェクター配列部分、
〇
配列番号005の配列からなる内部cpHaloリンカーであり、前記内部cpHaloリンカーは、N末端の第1のエフェクター配列部分のC末端をC末端の第1のエフェクター配列部分のN末端に接続する、前記内部cpHaloリンカー、
を含むか、又はそれから
なる、前記第1の部分エフェクター配列、
- センサーモジュール配列であり、前記第1の部分エフェクター配列がこれに接続される、前記センサーモジュール配列、
- 配列番号006(PEP1)
及び配列番号007(PEP2)
の配列から選択される配列
からなる、第2の部分エフェクター配列であり、前記センサーモジュール配列がこれに接続される、前記第2の部分エフェクター配列、
を含み
、
前記第1及び第2の部分エフェクター配列は共に、円順列変異ハロアルカンデハロゲナーゼを構成し、互いに近接する場合に、ハロゲンアルカン部分の共有結合をもたらすことができ、かつ、
- 前記センサーモジュール配列は、
a. 分析物化合物の存在又は濃度に応じて、第1のコンフォメーションから第2のコンフォメーションへのコンフォメーション変化を受けることができる単一のセンサーポリペプチドであり、
前記第1の部分エフェクター配列が前記センサーモジュール配列(前記単一のセンサーポリペプチド)のC末端に結合され、かつ前記第2の部分エフェクター配列が前記センサーモジュール配列(前記単一のセンサーポリペプチド)のN末端に結合されている場合に、
・ 前記第1のコンフォメーションでは、前記第1及び第2の部分エフェクター配列が近接し(前記第1及び第2の部分エフェクター配列が触媒的に活性な実体を構成することをもたらす)、及び
・ 第2のコンフォメーションでは、前記第1及び第2の部分エフェクター配列は近接しない(前記第1及び第2の部分エフェクター配列が触媒的に不活性な実体を構成することをもたらす)、
前記単一のセンサーポリペプチド、
及び
b. 第1のセンサーポリペプチド及び第2のセンサーポリペプチドを含むセンサーポリペプチド対であり、前記第1のセンサーポリペプチドは、ペプチド結合を介して、前記第1の部分エフェクター配列に共有結合し、かつ前記第2のセンサーポリペプチドは、前記第2の部分エフェクター配列に共有結合し、
前記第1のセンサーポリペプチド及び前記第2のセンサーポリペプチドは、特異的な分子間相互作用(タンパク質間結合)が可能であり、
かつ前記第1及び第2のセンサーポリペプチドは、別個のポリペプチド鎖の部分である、前記センサーポリペプチド対、
から選択される、センサーモジュール配列である、
前記モジュラーポリペプチド。
【請求項2】
前記第1の部分エフェクター配列及び前記第2の部分エフェクター配列は、互いに近接している場合、N-(10-(2-カルボキシ-5-((2-(2-((6-クロロヘキシル)オキシ)エトキシ)エチル)カルバモイル)フェニル)-7-(ジメチルアミノ)-9,9-ジメチルアントラセン-2(9H)-イリデン)-N-メチルメタンアミニウムを基質として使用する蛍光偏向アッセイにおいて、10
2s
-1M
-1の活性を特徴とする、請求項1に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項3】
前記第1の部分エフェクター配列及び前記第2の部分エフェクター配列は、互いに近接している場合、少なくとも0.5%
の配列番号001の活性を有する、請求項1に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項4】
前記第1の部分エフェクター配列は、
a. 配列番号004、又は
b. 配列番号004と少なくとも
90%同一の配列、又は
c. リンカーによって配列番号003に結合された配列番号002からなるコンストラクトと少なくとも
90%同一の配列、
を含むか、又は
それからなり、
前記第1及び第2の部分エフェクター配列は共に、配列番号007(PEP2)を伴う配列番号004の活性の少なくとも0.5%
を特徴とする、請求項1~
3のいずれかに記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項5】
- 前記第1の部分エフェクター配列は、第1のモジュール間リンカー配列によって前記センサーモジュール配列に接続され、及び/又は
- 前記第2の部分エフェクター配列は、第2のモジュール間リンカー配列によって前記センサーモジュール配列に接続される、
請求項1~
4のいずれか一項に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項6】
前記センサーモジュール配列は、センサーリンカー配列によって接続されるN末端の第1の部分センサー配列及びC末端の第2の部分センサー配列からなる単一のセンサーポリペプチドである、請求項1~5のいずれか一項に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項7】
前記第1の部分センサー配列及び前記第2の部分センサー配列は、カルモジュリン結合ペプチド及びカルモジュリンポリペプチドから選択され、
前記第1の部分センサー配列は、カルモジュリンポリペプチドであり、かつ前記第2の部分センサー配列は、カルモジュリン結合ペプチドであり、
前記カルモジュリンポリペプチドは、配列番号009(CaM)、又は配列番号009(CaM)と少なくとも90%同一であり、かつ
同じ生物学的活性を有する配列であるか、又はそれを含み、かつ前記カルモジュリン結合ペプチドは、配列番号008(M13)であるか、又はそれを含み、
前記センサーモジュール配列は:
a. カルモジュリン結合ペプチドであるか、又はそれを含む第1のセンサーペプチドであり、
前記カルモジュリン結合ペプチドは、配列番号008(M13)であるか、又はそれを含む、前記第1のセンサーペプチド、及び
b. カルモジュリンポリペプチドであるか、又はそれを含む第2のセンサーポリペプチドであり、
前記カルモジュリンポリペプチドは、配列番号009(CaM)、又は配列番号009(CaM)と少なくとも90%同一であり、かつ
同じ生物学的活性を有する配列であるか、又はそれを含む、前記第2のセンサーポリペプチド、
を含むセンサーポリペプチド対によって構成され、
前記第1のセンサーペプチドは、ペプチド結合を介して、前記第1の部分エフェクター配列に共有結合し、かつ前記第2のセンサーポリペプチドは前記第2の部分エフェクター配列に共有結合し、かつ前記第1及び前記第2のセンサーポリペプチドは、別個のポリペプチド鎖の部分であり、
前記第1の部分エフェクター配列は、2~6個のアミノ酸を有する第1のモジュラー間リンカー配列によって前記第1のセンサーペプチドのC末端に接続され、及び/又は前記第2の部分エフェクター配列は、2~6個のアミノ酸を有する第2のモジュラー間リンカーによって前記第2のセンサーポリペプチドのN末端に接続され、
前記第1のモジュラー間リンカー配列及び前記第2のモジュラー間リンカー配列は、ジペプチド又はトリペプチドであり、それらのアミノ酸構成要素は、それぞれ独立して、G、S及びT残基から選択される、請求項
6に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項8】
前記モジュラーポリペプチドは、配列番号010(SPLT1)又は配列番号010(SPLT1)と少なくとも90%同一の配列からなるか、又はそれを含む第1のポリペプチド配列、及び配列番号011(SPLT2)又は配列番号011(SPLT2)と少なくとも90%同一の配列からなるか、又はそれを含む第2のポリペプチド配列を特徴とし、前記第1のポリペプチド配列及び前記第2のポリペプチド配列は共に、少なくとも0.5%
の配列番号010(SPLT1)と配列番号011(SPLT2)との組み合わせの活性を有する、請求項
7に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項9】
前記センサーモジュール配列は、N末端からC末端へ、
a. カルモジュリンポリペプチド
であって、
配列番号009(CaM)、又は配列番号009(CaM)と少なくとも90%同一であり、かつ
同じ生物学的活性を有する配列;
b. ペプチドリンカー
であって、
ポリプロリン型剛性ヘリックス
であり、
nが15~35の整数から選択され、任意に1~4個のアミノ酸が隣接するPnプロリンポリペプチド;
c. カルモジュリン結合ペプチド(第2の部分センサー配列)
であって、
配列番号008(M13)を含むか、又はそれからなる配列、
を含む単一のセンサーポリペプチドによって構成され、
前記モジュラーポリペプチドは、配列番号013(CONF1)及び配列番号014(CONF2)、又は少なくとも0.5%
の配列番号013(CONF1)の活性を有する配列番号014(CONF2)又は配列番号013(CONF1)と少なくとも90%同一である配列から選択される配列を含むか、又はそれらからなる、請求項
7又は
8に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項10】
前記センサーモジュール配列は、
a. グルタミン酸結合タンパク質のN末端部分であり、
前記第1のセンサーポリペプチドは、配列番号020(GLT1)、又は配列番号020(GLT1)と少なくとも90%同一である配列であるか、又はそれを含む、前記グルタミン酸結合タンパク質のN末端部分、及び
グルタミン酸結合タンパク質のC末端部分であり、
前記第2のセンサーポリペプチドは、配列番号021(GLT2)、又は配列番号021(GLT2)と少なくとも90%同一であり、かつ
同じ生物学的活性を有する配列であるか、又はそれを含む、前記グルタミン酸結合タンパク質のC末端部分
であり;
ここで、前記第1のセンサーポリペプチドと前記第2のセンサーポリペプチドとの組み合わせであって、該組み合わせは、配列番号020(GLT1)と配列番号021(GLT2)との組み合わせと
同じ生物学的活性を有し、
又は
b. ポリペプチドリンカーにより配列番号021(GLT2)に結合した配列番号020(GLT1)からなるコンストラクトと少なくとも
90%同一の配列であり、
前記センサーモジュール配列は、配列番号022(GLT3)、又は配列番号022(GLT3)と少なくとも90%同一であり、かつ
同じ生物学的活性を有する配列であるか、又はそれを含む、前記配列、
を含むか、又は
それからなり、
前記モジュラーポリペプチドは、配列番号023(GLTIND1)、又は配列番号023(GLTIND1)と少なくとも90%同一の配列からなるか、又はそれを含む第1のポリペプチド配列、及び配列番号024(GLTIND2)、又は配列番号024(GLTIND2)と少なくとも90%同一の配列からなるか、又はそれを含む第2のポリペプチド配列を特徴とし、前記第1のポリペプチド配列及び前記第2のポリペプチド配列は共に、少なくとも0.5%
の配列番号025(GLTIND3)の活性を有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項11】
前記センサーモジュール配列は:
a. FKBP12ポリペプチドであるか、又はそれを含む第1のセンサーポリペプチドであり、
前記FKBP12ポリペプチドは、配列番号015(FKBP)、又は配列番号015(FKBP)と少なくとも90%同一であり、かつ
同じ生物活性を有する配列であるか、又はそれを含む、前記第1のセンサーポリペプチド、及び
b. FRBペプチドであるか、又はそれを含む第2のセンサーポリペプチドであり、
前記FRBペプチドは、配列番号016(FRB)、又は配列番号016(FRB)と少なくとも90%同一であり、かつ
同じ生物活性を有する配列であるか、又はそれを含む、前記第2のセンサーポリペプチド、
を含むセンサーポリペプチド対によって構成され、
前記第1のセンサーポリペプチドは、ペプチド結合を介して、前記第1の部分エフェクター配列に共有結合し、かつ前記第2のセンサーポリペプチドは、前記第2の部分エフェクター配列に共有結合し、かつ前記第1及び前記第2のセンサーポリペプチドは、別個のポリペプチド鎖の部分であり、
前記第1の部分エフェクター配列は、2~9個のアミノ酸を有する第1のモジュラー間リンカー配列によって前記第1のセンサーポリペプチドのC末端に接続され、及び/又は前記第2の部分エフェクター配列は、2~9個のアミノ酸を有する第2のモジュラー間リンカーによって前記第2のセンサーポリペプチドのN末端に接続され、
前記第1のモジュール間リンカー配列及び前記第2のモジュール間リンカー配列はトリペプチドであり、そのアミノ酸構成要素がそれぞれ独立してG、S及びT残基から選択される、
請求項1~
5のいずれか一項に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項12】
前記モジュラーポリペプチドは、配列番号017(RAPIND1)、又は配列番号017(RAPIND1)と少なくとも90%同一の配列からなるか、又はそれを含む第1のポリペプチド配列、及び配列番号018(RAPIND2)及び配列番号019(RAPIND3)、又は配列番号018(RAPIND2)と少なくとも90%同一である配列から選択される第2のポリペプチド配列を特徴とし、前記第1及び前記第2のポリペプチド配列が共に、配列番号017(RAPIND1)と配列番号018(RAPIND2)との組み合わせの少なくとも50%の活性を有する、請求項
11に記載のモジュラーポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載のモジュラーポリペプチドをコードする、1つ又は複数の
核酸。
【請求項14】
核酸の組み合わせであって、
a. 第1の部分エフェクター配列をコードする第1の核酸配列であり、前記コードされた第1の部分エフェクター配列は、N末端からC末端へ、
i. 配列番号002、又は配列番号002と少なくとも
90%同一の配列、
ii.
配列番号005の配列からなるポリペプチドリンカー配列、
iii. 配列番号003、又は配列番号003と少なくとも
90%同一の配列、
を含む、前記第1の
核酸;
b. 配列番号006(PEP1)又は007(PEP2)を特徴とする第2の部分エフェクター配列をコードする
、第2の
核酸、
を含み、
前記第1及び前記第2の部分エフェクター配列は共に、円順列変異ハロアルカンデハロゲナーゼを構成し、互いに近接する場合に、ハロゲンアルカン部分の共有結合をもたらすことができる、前記
核酸の組み合わせ。
【請求項15】
a. 請求項
13に記載の
核酸、又は
b. 請求項
14に記載の第1の
核酸、及び請求項
14に記載の第2の
核酸、
を含み、
各核酸は、1つのプロモーター配列の制御下にある、核酸発現システム。
【請求項16】
請求項
15に記載の核酸発現システムを含む細胞であって、
前記プロモーターは、前記細胞において作動可能である、前記細胞。
【請求項17】
請求項
13に記載の
核酸、請求項
14に記載の
核酸の組み合わせ、又は請求項
15に記載の核酸発現システムを含む非ヒトトランスジェニック動物又は植物。
【請求項18】
請求項
13~
15のいずれか一項に記載の
核酸又は核酸発現システム、及びハロタグ7基質を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境刺激に応答してこの酵素活性を調節することができるハロアルカントランスフェラーゼ酵素活性を含むポリペプチド配列に関する。
【背景技術】
【0002】
経時的に生化学的プロセスを統合する方法は、科学的に非常に興味深いものである。これらの生化学的プロセスには、例えば、タンパク質間相互作用、代謝物濃度の変化、又はタンパク質の細胞内(再)局在化が包含される。現在、これらの生化学的プロセスは、主にオーダーメードのバイオセンサーを使用したリアルタイム蛍光顕微鏡を使用して研究されている。しかし、これらのアプローチにはいくつかの欠点がある。特に神経生物学では、in vivoでの蛍光イメージングに必要な実験的セットアップが動物の動きを制限し、研究対象の挙動に影響を与える。腸や心臓などの臓器で発生する生化学的プロセスは、それらの固有の生理学的運動のために細胞レベルで解像するのが複雑となる。より一般的には、蛍光顕微鏡は限られた視野及び組織の深さに制限されている。機器、画像処理、及びバイオセンサーの設計が大幅に改善されたにもかかわらず、蛍光顕微鏡で完全な齧歯類の臓器の基本的な事象をin vivoで研究することは依然として不可能である。
【0003】
代替的アプローチは、後の時点で読み取ることができる生化学的プロセスの記録にある。この記録プロセスは「統合(integration)」として定義されている。それは、調査中の生化学的プロセスに応じて、時間の経過と共に不可逆的なマークが蓄積されることをもたらす。
【0004】
実験の「事後」評価は、in vivo研究に役立つだけでなく、細胞ベースのアッセイにも有益である。特に、まれにしか発生しない生化学的プロセスの場合、時間の経過に伴うシグナル統合により、信号対雑音比が向上するため、読み出しを改善することができる。ハイスループットのスクリーニングにおいて、シグナル統合は研究される現象のスナップショットを提供し、それによりリアルタイム顕微鏡を介して長時間の記録を置き換えることで、多重化を促進し、かつコストを削減することができる。最後に、蛍光基質を使用することで、下流の分析や治療のために、代謝/シグナルプロファイルに基づいて細胞集団を識別し、かつ最終的には選別することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の最新技術に基づいて、本発明の目的は、経時的に生化学的プロセスを統合するための手段及び方法を提供することである。この目的は、本明細書の独立請求項の主題によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
自己標識タンパク質ハロタグ(Halo Tag)7に基づいて、本発明者らは、所与の生化学的プロセスに応答してクロロアルカン基質と不可逆的に反応するように操作されたタンパク質の化学遺伝学的なインテグレーター(integrator)ファミリーを提供する。これらのインテグレーターは、生化学的プロセスに応答してコンフォメーションを変化させ、標識活性を引き起こすハロタグ7の分割円順列変異体(split circular permutant)からなる。典型的な実験では、記録ウィンドウは、化学遺伝学的なインテグレーターを(共有結合で)標識できるクロロアルカン基質の時間的存在によって定義される。パルスチェイス実験では、異なる標識基質を順次使用することができ、同じ生物学的サンプルでの異なる連続現象の研究の可能性を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】cpHaloΔ9merと9merペプチドとの間の親和性を測定するためのITCアッセイの図である:9merペプチド(30mM)をcpHaloΔ9mer(0.6mM)溶液に滴定した際の代表的な測定値。上段:2つの連結された測定値のベースラインを引いた後の生のITCデータ。下段:ΔHを9merとcpHaloΔ9merのモル比に対してプロットし(点)、1つの部位の結合モデルに当てはめた(線)。ペプチドの希釈熱は分析前に差し引いている。K
dは独立した3回の測定から算出し、誤差は標準偏差を表す。
【
図2】蛍光性ハロタグリガンドとハロタグ7D106Aの親和性を示す図である。触媒作用のない(catalytically dead)変異体ハロタグ7D106Aを、FP結合アッセイにおいて25nMの5つの異なる蛍光ハロタグリガンドに対して滴定した(Halo-カルボピロニン、Halo-TMR、Halo-TMR-アゼチジン、Halo-Oregon Green、Halo Alexa Fluor 488)。蛍光リガンドの構造を各グラフに示す。データは1つの部位の結合モデルに適合され、導出されたK
d値が表にまとめられている。0.1nM及び1nMでのデータポイントは、いずれのタンパク質も添加していない値に対応するが、低濃度に配置され、対数目盛で表示される。すべての実験は3重に実施され、誤差バーと注釈付きの不確実性は標準偏差を表す。
【
図3】ハロタグ7D106Aに対する蛍光発生ハロタグリガンドの親和性を示す図である:触媒作用のない変異体ハロタグ7D106Aを、蛍光強度に基づく結合アッセイにおいて、25nMの3つの異なる蛍光発生ハロタグリガンドに対して滴定した(Halo-シリコンローダミン、Halo-Janelia Fluor646及びHalo-JaneliaFluor 635)。前記蛍光発生リガンドの構造を各グラフに示す。データを1つの部位の結合モデルに適合させ、導出されたK
d値をグラフに示す。蛍光発生基質の親和性が低いため、適合性を改善するために、完全に標識されたハロタグ7(完全な結合に類似する)に基づいて10
9nMのデータポイントを推定した。1nMのデータポイントは、いずれのタンパク質も添加していない値に対応するが、低濃度に配置され、対数目盛で表示される。すべての実験は3重に行われ、誤差バーと注釈付きの不確実性は標準偏差を表す。
【
図4】ハロタグ7D106AとcpHaloΔ9merD106Aの蛍光基質結合との比較を示す図である:触媒作用のない変異体ハロタグ7Δ9merD106A(青)を、FP結合アッセイにいて25nMの3つの異なる蛍光ハロタグリガンドに対して滴定した(Halo-TMR、Halo-TMR-アゼチジン、Halo-カルボピロニン)。それぞれの蛍光リガンドの構造は、各グラフ上に示されている。データを1つの部位の結合モデルに適合させ、導出されたK
d値をグラフに示す。0.01nM及び0.1nMでのデータポイントは、いずれのタンパク質も添加していない値に対応するが、低濃度に配置され、対数目盛で表示される。データを、同じ蛍光色素分子(赤)のハロタグ7D106A結合と比較した。結合親和性の違いは、K
d値の相対的な倍率変化によって示される。すべての実験は3重に行われ、誤差バーは標準偏差を表す。
【
図5】cpHaloΔ9merのバックグラウンド標識を示す図である:2μM蛍光リガンドの存在下でのcpHaloΔ9mer(1μM)のバックグラウンド標識(37℃にて)は、ゲル蛍光測定によって決定した。サンプルを変性させ、SDS-PAGEとそれに続くゲル蛍光スキャンにより分析した(上;ゲルは薄暗いバンドを強調するために偽色で表されている)。強度は、それぞれの蛍光色素分子で標識されたハロタグ7に対して正規化した(下)。
【
図6】M13-cpHaloΔ9mer及び9mer-CaMリンカーの長さの最適化を示す図である:M13-(GGS)
1-3-cpHaloΔ9mer及び9mer-(GGS)
1-3-CaMで構成される分割インテグレーターのすべての組み合わせを、カルシウム又はEGTAの存在下でFPカイネティックスアッセイで試験した。
【
図7】分割ハロタグ7(CaProLa)に基づく分子内カルシウムインテグレーターの一般的な概念を示す図である:(A):分子内カルシウムインテグレーターCaProLaの基本的な構造の概略図(N末端からC末端)。(B):分割カルシウムインテグレーターの2つの部分は、CaMとM13とをリンカードメインで接続して結合し、単鎖センサーを形成する。(C):CaProLaのモデル化された構造:ハロタグ7(PDB 4KAF)の結晶構造とGCaMP3(PDB 3SG3)のCaM-M13ドメインが修飾され、CaProLaアーキテクチャに類似するように配置された。
【
図8】異なるM13-CaMリンカーを使用したCaProLaコンストラクトの性能を示す図である:以下の4つの条件下での異なるCaProLaコンストラクトと分割インテグレーターのFPカイネティックス:カルシウムの存在下(赤)、カルシウムの非存在下(紫)、カルシウムの非存在下だが、1時間後にカルシウムを急増(スパイク)(シアン)、カルシウムの存在で、続いて反応を停止するためのEGTAを急増させ、続いて反応を再開するためのカルシウムを急増させた(緑色)。小さな矢印は、EGTAとカルシウムのスパイクを示す。カルシウム(赤)の存在下での曲線を二次反応速度式に適合させて、速度定数を決定した。すべての実験は3重に実施した。GGTGGS:配列番号027。
【
図9】異なるM13-CaMリンカーを有するCaProLaコンストラクトのカルシウム応答性を示す図である:(A)CaProLaコンストラクトの標識反応を、0nM~39μMの範囲の遊離カルシウム濃度でFPを介して観察した。曲線を二次反応速度式に適合し、初期反応速度をこの適合から計算した。(B)初期速度を遊離カルシウム濃度に対してプロットし(0nMカルシウムを0.01nMに調整して対数目盛で表示)、4パラメーターロジスティックモデルをデータに適合させて、各コンストラクトのEC
50を決定した。これらの実験は、エフェクター部分1とエフェクター部分2との間の分子内ΔcpHaloリンカーに関し、センサー-エフェクター間のモジュラー間リンカーには関するものではない。すべての実験は3重に実施され、誤差バーと注釈付きの不確実性は標準偏差を表す。GGSGGT:配列番号028.
【
図10】第2世代CaProLaコンストラクトのEC
50を示す図である:(A)CaProLa 2.1~2.3の標識反応を、10nM~3.2μMの範囲の遊離カルシウム濃度でFPを介して得た。曲線を二次反応速度式に適合し、初期反応速度をこの適合から計算した。(B)初期速度を遊離カルシウム濃度に対してプロットし、4つのパラメーターロジスティックモデルをデータに適合させて、各コンストラクトのEC
50を決定した。すべての実験は3重に実施し、誤差バーと注釈付きの不確実性は標準偏差を表す。
【
図11】2世代のCaProLaコンストラクトの性能を示す図である:CaProLa 2.1~2.3のHalo-TMRを使用した蛍光偏光のカイネティックスアッセイは、カルシウムの存在下(赤)、カルシウムの非存在下(紫)、カルシウムの非存在下だが、1時間後にカルシウムを急増(スパイク)(シアン)、カルシウムの存在下で、反応を停止するためのEGTAを急増、続いてカルシウムを急増(緑)の4つの条件下で実行した。小さな矢印は、EGTAとカルシウムのスパイクを示す。カルシウム(赤)の存在下での曲線を二次反応速度式に適合させて、速度定数を決定した。すべての実験は3重に実施した。
【
図12】ゲルカイネティックスを介してアッセイされたCaProLa2.2のカルシウム依存性標識を示す図である:(A)CaProLa 2.2を、カルシウム又はEGTAの存在下でHalo-CPYと共にインキュベートした。さまざまなインキュベーション時間の後にサンプルを採取し、SDS-PAGEとそれに続くゲル内蛍光スキャンにより分析した(ゲルは薄暗いバンドを強調するために偽色で表されている)。(B)蛍光強度を定量化し、完全に標識されたハロタグ7に対して正規化した。
【
図13】分割ハロタグ性能を試験するためのモデルシステムを示す図である:左:FKBP/FRBベースのモデルシステムを説明するスキーム。cpHaloΔと9merペプチドは、それぞれFKBPとFRBとに融合され、この分割の補完性及び活性は、それらのラパマイシン依存性相互作用に依存することになる。右:モデルシステムの標識カイネティックスを、ラパマイシン(Rap)の存在下又は非存在下での蛍光偏光アッセイによって追跡した。Halo-TMRを基質として使用し、各実験を3重に実施した。
【
図14】FKBP/FRBモデルシステムにおける異なる柔軟性リンカーの影響を示す図である:異なる柔軟性リンカーを使用してFKBP及びFRBに融合した分割ハロタグの標識カイネティックスを、ラパマイシンの存在下又は非存在下での蛍光偏光アッセイを介して観察した。Halo-TMRを基質として使用し、各実験を3重に実施した。
【
図15】分割システムの概略図を示す(センサーモジュールは2つのペプチド鎖に分割されており、それぞれがエフェクターシステムの部分に接続されている)。
【
図16】cpHaloΔの10mer補完ペプチドに対するALAスキャンの標識カイネティックス研究を示す図である。ARETFQAFRT:配列番号029
【
図17】dGluProLaの標識化カイネティックスと、それに続く蛍光偏光を示す図である。技術的3重±標準誤差(SEM)
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の概要
本発明は、2つの部分に分割(スプリット)された円順列変異ハロアルカントランスフェラーゼを含む融合タンパク質に関する。これらは、センサーポリペプチドモジュールが空間的に近接すると触媒的に活性であるが、そうでなければ触媒的に不活性である。
【0009】
特に、本発明は、
〇 配列番号002又は配列番号002と≧90%同一の配列を特徴とするN末端の第1エフェクター配列部分、
〇 配列番号003又は配列番号003と≧90%同一の配列を特徴とするC末端の第1エフェクター配列部分、
〇 内部cpHaloリンカーが、前記N末端の第1エフェクター配列部分のC末端を前記C末端の第1エフェクター配列部分のN末端に接続する、10~35個のアミノ酸からなる前記内部cpHaloリンカー、
を含む、センサーモジュール配列に接続される第1の部分エフェクター配列を含むモジュラーポリペプチドシステムに関し、
前記センサーモジュール配列は、配列番号006(PEP1)及び007(PEP2)、又は配列番号007(PEP2)と≧75%同一の配列から選択される配列を含むか、又は本質的になる第2の部分エフェクター配列に接続され、
前記第1及び第2の部分エフェクター配列は、円順列変異ハロアルカンデハロゲナーゼを共に構成し、互いに近接すると、ハロゲンアルカン部分の共有結合をもたらすことができ、かつ前記センサーモジュールは、
a. 分析物化合物の存在又は濃度に応じて、第1のコンフォメーションから第2のコンフォメーションへのコンフォメーション変化を受けることができる単一のセンサーポリペプチドであり、
前記第1の部分エフェクター配列が前記センサーモジュール配列(前記単一のセンサーポリペプチド)のC末端に結合し、かつ前記第2の部分エフェクター配列が前記センサーモジュール配列(前記単一のセンサーポリペプチド)のN末端に結合している場合に、
・ 前記第1のコンフォメーションでは、前記第1及び第2の部分エフェクター配列が近接し(これは、前記第1及び第2の部分エフェクター配列が触媒的に活性な実体を構成することをもたらす)、かつ
・ 第2のコンフォメーションでは、前記第1及び第2の部分エフェクター配列は近接しない(これは、前記第1及び第2の部分エフェクター配列が触媒的に不活性な実体を構成することをもたらす)、
前記単一のセンサーポリペプチド、
及び
b. 第1のセンサーポリペプチドと第2のセンサーポリペプチドとを含むセンサーポリペプチド対であり、前記第1のセンサーポリペプチドは、ペプチド結合を介して前記第1の部分エフェクター配列に共有結合し、かつ前記第2のセンサーポリペプチドは、前記第2の部分エフェクター配列に共有結合する、前記センサーポリペプチド対、
から選択され、
前記第1のセンサーポリペプチド及び前記第2のセンサーポリペプチドは、特異的な分子間相互作用(タンパク質間結合)が可能であり、
かつ前記第1のセンサーポリペプチド及び前記第2のセンサーポリペプチドは、別個のポリペプチド鎖の部分である。
【0010】
本発明の第2の態様は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸に関する。あるいは、円順列変異ハロアルカントランスフェラーゼの2つの部分(第1の部分エフェクター配列及び第2の部分エフェクター配列)をコードする核酸が提供される。第1及び第2の部分エフェクターをコードするこれらの核酸配列は、未だ未解明の相互作用パートナー又はセンサーモジュールを用いて、分析物の濃度又はタンパク質間相互作用を感知できる他の融合タンパク質を作成するのに有用である。
【0011】
さらに、本発明は、本発明の融合タンパク質又はコードする核酸を含む発現システム、細胞、及びトランスジェニック非ヒト動物を提供する。同様に、トランスジェニック発現コンストラクトを迅速に構築するための核酸、及び適切な基質化合物を提供するキットも、本発明に包含される。
【0012】
発明の詳細な説明
用語と定義
本明細書の文脈における「蛍光色素」という用語は、可視又は近赤外のスペクトルで蛍光を発することができる低分子に関するものである。蛍光標識又は可視色を示す標識の例には、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、アロフィコシアニン(APC)、ペリジニンクロロフィル(PerCP)、フィコエリスリン(PE)、alexa Fluor(登録商標)(Life Technologies、カールスバッド、カリフォルニア州、米国)、dylight fluor(登録商標)(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)ATTO Dye(ATTO-TEC GmbH、ジーゲン、ドイツ)、BODIPY Dye(4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンベースの色素)などを含むがこれらに限定されない。
【0013】
アミノ酸配列はアミノ末端からカルボキシル末端へ与えられる。配列位置の大文字は、1文字のコードのL-アミノ酸を指す(Stryer、Biochemistry、第3編、p.21)。アミノ酸配列位置の小文字は、対応するD-又は(2R)-アミノ酸を指す。
【0014】
Jはイソロイシン又はロイシンである。
【0015】
本明細書の文脈における「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸がペプチド結合によって接続されている直鎖を形成する50個以上のアミノ酸からなる分子を指す。ポリペプチドのアミノ酸配列は、(生理学的に見出されるとおり)タンパク質全体又はその断片のアミノ酸配列を表し得る。
【0016】
本明細書の文脈における「ペプチド」という用語は、最大50個のアミノ酸、特に8~30個のアミノ酸、より特に8~15個のアミノ酸からなる分子に関連し、これらのアミノ酸は、ペプチド結合によって接続される直鎖を形成する。
【0017】
本明細書の文脈では、「配列の同一性」及び「配列の同一性の割合」という用語は、2つのアラインメントされた配列を比較することにより決定される値を指す。比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野でよく知られている。比較のための配列のアラインメントは、Smith及びWatermanのlocal homology algorithm, Adv.Appl. Math.2:482(1981)、Needleman及びWunschのglobal alignment algorithm、J.Mol.Biol.48:443(1970)、Pearson及びLipmanのsearch for similarity method、Proc.Nat.Acad.Sci.85:2444(1988)、又はこれらに限定されないが、CLUSTAL、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA及びTFASTAなどのこれらのアルゴリズムのコンピュータによる実装によって実施することができる。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology-Information(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)などで公開され利用可能である。
【0018】
アミノ酸配列の比較の一例として、デフォルトの設定:期待閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ範囲の最大一致:0;マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:存在11,拡張1;組成調節:条件付組成スコアマトリックス調整を用いたBLASTPアルゴリズムがある。核酸配列の比較の一例として、デフォルトの設定:期待閾値:10;ワードサイズ:28;クエリ範囲の最大一致:0;一致/不一致スコア:1.-2;ギャップコスト:線形を用いたBLASTNアルゴリズムがある。特に明記しない限り、本明細書に記載されている配列同一性の値は、プログラムのBLASTスイート(Altschulら、J.Mol.Biol.Biol.215:403-410(1990))を用いて、タンパク質及び核酸の比較のためにそれぞれ上記の同定されたデフォルトパラメーターを使用して得られた値を指す。
【0019】
本明細書の文脈において「実質的に同じ活性を有する」という用語は、エフェクターポリペプチド対の活性、特に配列番号004及び配列番号007(PEP2)の活性、すなわちハロアルカントランスフェラーゼ活性に関する。「実質的に同じ活性を有する」と認定されたポリペプチドは、必ずしも基準のポリペプチドと同じ量の活性を示す必要はなく、本発明の特定の場合では、基準ペプチドcpHaloに対する酵素回転数の減少が、特定の用途では実際に望ましい可能性がある。以下に述べるとおり、本発明によってカバーされるポリペプチドとカバーされないポリペプチドとを区別する目的で、本発明者らは、基質としてHalo-CPYを用いて、実施例9で記載されるとおりの標準的なアッセイにおいて、102s-1M-1の活性の閾値を提案している。
【0020】
活性の上記の定義が適用可能でない場合では、ハロアルカントランスフェラーゼ活性に関してバックグラウンドを超える3標準偏差が、「実質的に同じ活性を有する」ための基準閾値として取られるものとする。特定の実施形態では、少なくとも5標準偏差が基準閾値として使用される。特に特定の実施形態では、少なくとも10標準偏差が基準閾値として使用される。
【0021】
本明細書の文脈において、「アミノ酸リンカー」という用語は、一本鎖ポリペプチドを生成するために、2つのポリペプチドを接続するために使用される可変長のポリペプチドを意味する。別段の定めがない限り、本明細書で規定する本発明の実施に有用なリンカーの例示的な実施形態は、1、2、3、4、5、10、20、30、40又は50個のアミノ酸からなるオリゴペプチド鎖である。
【0022】
本明細書の文脈では、「Gltl」という用語は、細菌のペリプラズムグルタミン酸結合タンパク質(Uni-Prot-ID:H4UFY3)の略語である。
【0023】
本発明の第1の態様は、センサーポリペプチドモジュールによって再構成される、ハロタグ7活性を有する分割エフェクターポリペプチド配列を含むか、又はそれから本質的になる、モジュラー分析物センサーポリペプチドシステム(本明細書ではモジュラーポリペプチドともいう)に関する。
【0024】
モジュラー分析物センサーポリペプチドシステムは、配列番号002、又は配列番号002と少なくとも(≧)90%同一(特に≧93%、≧95%、≧97%又は≧98%同一)の配列を特徴とするN末端の第1のエフェクター配列部分、配列番号003、又は配列番号003と少なくとも(≧)90%同一(特に≧93%、≧95%、≧97%又は≧98%同一)の配列を特徴とするC末端の第1のエフェクター配列部分、及び10~35個のアミノ酸からなる内部cpHaloリンカーを含むか、又はそれから本質的になる第1の部分エフェクターポリペプチド配列(cpHaloΔ)を含むか、又はそれから本質的になる。
【0025】
内部cpHaloリンカーは、N末端の第1のエフェクター配列部分のC末端をC末端の第1エフェクター配列部分のN末端に接続する。
【0026】
特定の実施形態において、cpHaloリンカーは、12~20個のアミノ酸からなる。特定の実施形態において、cpHaloリンカーは、特に約15個のアミノ酸からなる。
【0027】
第1の部分エフェクターポリペプチド配列は、ペプチド鎖の部分として、そのN末端を介して、センサーモジュールポリペプチド配列に共有結合し、このセンサーモジュールポリペプチド配列は、ペプチド鎖の部分として第2の部分エフェクターペプチド配列に結合し、この第2の部分エフェクターペプチド配列は、cpHaloΔの配列を補完し、かつハロアルカントランスフェラーゼ活性を再構成する。これは、配列番号006(PEP1)、及び007(PEP2)、又は配列番号007(PEP2)と少なくとも(≧)75%同一(特に特に≧80%、≧85%、≧90%、又は≧95%同一)の配列から選択された配列を含むか、又はそれから本質的になる。
【0028】
第1及び第2の部分エフェクター配列は共に、円順列変異ハロアルカンデハロゲナーゼを構成し、互いに近接する場合に第1のエフェクター配列へのハロゲンアルカン部分の共有結合をもたらすことができる。
【0029】
本発明のモジュラー分析物センサーポリペプチドシステムの特定のバリエーションは、本明細書で提供される実施例よりも著しく少ない活性を示すように設計され得る。天然のハロタグ7及びその円順列変異形態は、非常に活性であり、一部の用途のために、より低い/より遅い活性が望ましい場合がある。一例では、長期間にわたるニューロン活性の記録であり、ここでは非常に活性なシステムが、システムを急速に過飽和にし、長期間にわたって展開する事象の記録を妨げる傾向がある可能性がある。
【0030】
本明細書で定義されるとおり、分割エフェクターモジュールとセンサーモジュール配列との組み合わせのための閾値では、実施例9に示されるような標準的なアッセイにおいて102s-1M-1の最小活性が提供される。
【0031】
特定の実施形態において、配列番号004と、又はリンカーによって結合された配列番号002及び配列番号003からなるコンストラクトと≧90%同一である第1のエフェクター配列、及び第2の部分エフェクター配列からなる分割エフェクターモジュールの組み合わせは、配列番号004の変異体が配列番号007(PEP2)と空間的に近接している場合、バックグラウンドシグナルより少なくとも3標準偏差(≧3Σ)値、特にバックグラウンドシグナルより≧5Σ又はさらに≧10Σの値を特徴とする。
【0032】
配列同一性を計算する目的で、配列番号002及び配列番号003の寄与を秤量すべきであるが、この2つの配列を結合するリンカー分子は、得られるコンストラクトの機能に影響を与えることなく実質的に変えることができることが理解される。
【0033】
特定の実施形態では、配列番号004と、又はリンカーによって結合された配列番号002及び配列番号003からなるコンストラクトと≧90%同一である第1のエフェクター配列、及び第2の部分エフェクター配列からなる分割エフェクターモジュールの組み合わせは、配列番号007(PEP2)と空間的に近接する場合に、配列番号004の少なくとも0.5%、特に≧1又は≧2%の活性を特徴とする。
【0034】
特定の実施形態において、配列番号004と、又はリンカーによって結合された配列番号002及び配列番号003からなるコンストラクトと≧90%同一である第1のエフェクター配列、及び第2の部分エフェクター配列からなる分割エフェクターモジュールの組み合わせは、配列番号004が配列番号007(PEP2)と空間的に近接している場合に、配列番号004の少なくとも5%の活性を特徴とする。
【0035】
特定の実施形態では、配列番号004と、又はリンカーによって結合された配列番号002及び配列番号003からなるコンストラクトと≧90%同一である第1のエフェクター配列、及び第2の部分エフェクター配列からなる分割エフェクターモジュールの組み合わせは、配列番号007(PEP2)と空間的に近接している場合、配列番号004の少なくとも15%、25%、40%、又はさらに50%の活性を特徴とする。
【0036】
センサーモジュール(本明細書では、センサーモジュール配列ともいう)は、単一のセンサーポリペプチド及びセンサーポリペプチド対から選択される。
【0037】
センサーモジュールは、センサーモジュール配列に近接する分析物化合物の存在又は濃度に応じて、第1のコンフォメーションから第2のコンフォメーションへのコンフォメーション変化を受けることができる単一のセンサーポリペプチドであり得る。コンフォメーション変化は、分析物の不在、又は環境からのその除去によっても影響を受けることもある。第1の部分エフェクター配列がセンサーモジュール(単一のセンサーポリペプチド)のC末端に結合し、第2の部分エフェクター配列がセンサーモジュール(単一のセンサーポリペプチド)のN末端に結合される場合、第1のコンフォメーションでは、第1及び第2の部分エフェクター配列は近接し、言い換えれば、それらの近接性は、第1及び第2の部分エフェクター配列が触媒的に活性な実体を構成することをもたらす。
【0038】
対照的に、第2のコンフォメーションでは、第1の部分エフェクター配列がセンサーモジュールのC末端に結合し、第2の部分エフェクター配列が、センサーモジュール配列のN末端に結合される場合に、第1及び第2の部分エフェクター配列は近接しておらず、したがって、第1及び第2の部分エフェクター配列が触媒的に不活性な実体を構成することをもたらす。
【0039】
単一のセンサーポリペプチドのC末端は、直接ペプチド結合を介して、又はリンカーペプチドを介して、第1の部分エフェクター配列のN末端に共有結合し、単一のセンサーポリペプチドのN末端は、第2の部分エフェクター配列のC末端に共有結合している。
【0040】
代替的には、センサーモジュールは、第1のセンサーポリペプチド及び第2のセンサーポリペプチドを含むセンサーポリペプチド対であり得、ここで、直接ペプチド結合を介して、又はリンカーペプチドを介して、前記第1のセンサーポリペプチドのC末端は、第1の部分エフェクター配列のN末端に共有結合し、かつ前記第2のセンサーポリペプチドのN末端は、第2の部分エフェクター配列のC末端に共有結合しており、前記第1のセンサーポリペプチド及び前記第2のセンサーポリペプチドは、特異的な分子相互作用(タンパク間結合)が可能である。この代替では、第1と第2のセンサーポリペプチドとは、別個のポリペプチド鎖の部分である。
【0041】
第2の部分エフェクター配列は、近接する場合、第1の部分エフェクター配列を補完する。本発明者らは、C末端のスレオニン残基が異なる配列番号006(PEP1)及び007(PEP2)が、そうするのに最も効果的であることを見出した。これは、これらの部分配列の相互の親和性を高める目的で、又は他の目的のために、前記ペプチドのさらなる未来の展開を不可能にするものではない。PEP2配列における1個の余分なスレオニンは、カルモジュリン/M13センサーシステムとの組み合わせにおいて反応速度を大幅に増加させるが、FKPB/FRBセンサーシステムと組み合わせて使用した場合、あまり効果がない。
【0042】
当業者は、構造への個々の位置の寄与に応じて、第2の部分エフェクター配列の変異体も許容され得ることを理解するであろう。タンパク質と相互作用することが知られているAla145、Arg146、Thr148、Phe149、Phe152、及びArg153では、類似の化学的性質の残基(又はさらに類似性の低いもの)で置換可能である可能性が低い。溶媒により暴露されるアミノ酸(すなわち、Glu147、Gln150、Ala151、及びThr154)は、まったく同じように維持するために先験的にはそれほど重要ではないであろう。本発明者の手によって、変異研究によりこれらの意見を確認した。位置Ala150は、修飾に耐性があることが明らかになり、位置Arg146及びThr148は、インテグレーター機能にとって重要であることが明らかになった(カルシウムシグナル統合の文脈において)。
【0043】
ペプチドはアルファヘリックス構造に折りたたまれる必要があるため、アルファヘリックス傾向のあるAAの表を使用してAAを階層化することができる。このような表は、Paceら、BiophysicalJournal、75、422-427頁、doi:10.1016/s0006-3495(98)77529-0で見ることができる。
【0044】
特定の実施形態において、第1の部分エフェクターポリペプチド配列及び第2の部分エフェクター配列は、互いに近接している場合、共に、配列番号001の少なくとも0.5%、特に≧1%又は≧2%の生物学的活性を有する。特定の実施形態において、第1の部分エフェクターポリペプチド配列及び第2の部分エフェクター配列は、互いに近接している場合、実施例9に示されるとおり、標準アッセイにおいて少なくとも102s-1M-1の活性を有する。
【0045】
前文の定義及び本明細書に含まれる他のそのような定義が包含する配列を定義する目的のための配列番号001の活性とは、実施例9の蛍光偏光アッセイにおける配列の性能である。特に明記しない限り、前記活性は、生物学的活性の比較の目的で、Halo-CPY(以下の基質の表を参照)を使用して、実施例9に与えられた手順に従って測定される。
【0046】
特定の実施形態では、内部cpHaloリンカーは、アミノ酸G、A、J、S、T、P、C、V、Mを含むか、又はそれからなり、特に前記cpHaloリンカーは、アミノ酸G、S、A、Tを含むか、又はそれからなる。
【0047】
特定の実施形態では、cpHaloリンカーは、(GGΣ)nであり、nは整数であり、かつn≧3(特にnは4、5、6、7又は8)であり、Σは、S及びTから選択される。
【0048】
特定の実施形態では、cpHaloリンカーは、(GGS)nであり、nは整数であり、かつn≧3(特にnは4、5、6、7又は8)である。
【0049】
特定の実施形態では、cpHaloリンカーは、(GGT)nであり、nは整数であり、かつn≧3(特にnは4、5、6、7又は8)である。
【0050】
特定の実施形態では、cpHaloリンカーは、(GΣG)n又は(GGΣ)nであり、nは整数であり、かつn≧3(特にnは4、5、6、7又は8)であり、各Σ は、S及びTから独立して選択される。
【0051】
特定の実施形態では、cpHaloリンカーは、(ΓΓΣ)nであり、nは整数であり、かつn≧3(特にnは4、5、6、7又は8)であり、かつ各Γは、任意の他のΓから独立して、A、G及びVから選択され、かつ各 Σは、独立して、S及びTから選択される。
【0052】
cpHaloリンカーの長さ及び配列組成に関して、本発明者らの結果によれば、機能するためには、10個、最適には12個のアミノ酸に相当する長さを持つ任意のリンカーが期待される。ただし、予測される構造により、結果として得られるタンパク質の溶解性を妨げることが予期されるリンカーは例外である。本発明者らは、25アミノ酸よりも長いリンカーの調査を行わないことを決定したが、そのような長さのリンカーが機能すると予期するべきでないという理由はない。
【0053】
リンカー配列を選択する際に重要視したのは、溶解性及び柔軟性であった。本明細書に開示される実施例のために選択される実際のcpHaloリンカー配列はGGTGGSGGTGGSGGS(配列番号005)であるが、当業者は、本明細書の教示及びリンカー設計に関して利用可能な知識に基づいて、Chen etら,Advanced Drug Delivery Reviews 65(2013),1357-1369、及びEversら,Biochemistry 2006,45,13183-13192に例示されるとおり、組成及び長さにおいてこの配列を容易に変えることができる。
【0054】
特定の実施形態において、第1の部分エフェクターポリペプチド配列は、配列番号004、又は配列番号004と少なくとも(≧)90%同一(特に≧93%、≧95%、≧97%又は≧98%同一)の配列を含むか、又は本質的にそれからなり、前記第1及び第2の部分エフェクター配列は共に、配列番号007(PEP2)と空間的に近接している配列番号004の少なくとも1%の活性を特徴とする。
【0055】
特定の実施形態において、第1の部分エフェクターポリペプチド配列は、配列番号004と少なくとも(≧)90%同一(特に≧93%、≧95%、≧97%又は≧98%同一)の配列を含むか、又は本質的にそれからなり、前記第1及び第2の部分エフェクター配列は共に、配列番号007(PEP2)と空間的に近接している配列番号004の≧5%、10%、17%又は33%の活性を特徴とする。
【0056】
前記センサー及びエフェクターモジュールは互いに直接接続することができるが、構造のいくつかの調整を可能にするために、当業者は、リンカー配列を使用して前記モジュールを接続することができることを認識している。
【0057】
特定の実施形態において、第1の部分エフェクターポリペプチド配列は、第1のモジュラー間リンカーペプチド配列によってセンサーモジュールポリペプチド配列(本明細書ではセンサーモジュール配列とも呼ばれる)に接続され、及び/又は第2の部分エフェクターポリペプチド配列は、第2のモジュラー間リンカーポリペプチド配列によってセンサーモジュールポリペプチド配列に接続される。
【0058】
本発明者らは、nが整数であり、かつn≦4(特にnは1、2又は3)であり、ΨがG、S及びTから選択される、(GGΨ)nを特徴とする特に有用な第1のモジュラー間リンカー配列を見出した。
【0059】
同様に、本発明者らは、nが整数であり、かつn≦4(特にnは1、2又は3)であり、Ψ がG、S、及びTから選択される、(GGΨ)nを特徴とする特に有用な第2のモジュラー間リンカー配列を見出した。
【0060】
特定の実施形態では、第1及び/又は第2のモジュール間リンカーは、1つ又は2つのアミノ酸リンカーGΨ、ΨG、 ΨΨ、 G、又はΨ 単独であり得、式中、Ψ はG、S及びTから選択される。アラニンは、上記の配列においてG、S及びTのうちの1つを置換することができるアミノ酸の一例である。
【0061】
対象の分析物の存在下で再構成された後に、バックグラウンド標識及びバックグラウンド上に顕著なシグナルないことを特に重要視する必要がある。センサーモジュールに応じて、当業者は、モジュール間リンカー配列を変えて、モジュールの所与の組み合わせに対してどの長さが最良の結果をもたらすかを試験することができるであろう。リンカーの長さではなく、配列組成に関して、上記のcpHaloリンカーについて例示的に提示された代替の配列はまた、モジュラー間リンカーにも適用される。
【0062】
特定の実施形態では、センサーモジュール配列は、センサーリンカー配列によって接続されたN末端の第1の部分センサー配列及びC末端の第2のセンサー配列からなる単一のセンサーポリペプチドである。
【0063】
特定の実施形態では、センサーモジュール配列は、オリゴプロリン配列、特にnが15~35の間の整数であるPn配列によって達成され得るような剛性(rigid)センサーリンカー配列によって接続されたN末端の第1の部分センサー配列及びC末端の第2のセンサー配列からなる単一のセンサーポリペプチドである。
【0064】
特定の実施形態では、センサーリンカー配列は、前項で例示したようなポリプロリン配列であるが、(これに限定されないが)(GGΨ)n(nは整数であり、nは1、2、3から選択され、かつΨ はG、S、及びTから選択される)のような柔軟性のあるモチーフの短い挿入を含む。同様に、前記挿入されたリンカーは、GΨ、ΨG、 ΨΨ、 G、又はΨ 単独のような短い長さを有していてもよい。本発明者らの手でうまくいった例としては、15個のプロリン伸長の次にGGSを2回繰り返し、再び15個のプロリンが続くものである。そのような設計は、プロリンによって形成されたばねにおけるヒンジを容易にすることができる。本発明者らは、リンカー(ほとんどが剛性(rigid)である)が特定の利点を提供するが、前記リンカー配列を、最終コンストラクトの活性を損なうことなく、広範囲の配列にわたって変化させることができることを観察した。繰り返しになるが、特定の用途では、なおバックグラウンドのノイズと明確に区別できる低い活性が、実際には非常に活性なコンストラクトよりも好ましい場合があることを覚えておく必要がある。Brunら(J Am Chem Soc 2011,133(40)16235-16242)は、本発明に適応可能なリンカーのバリエーションを教示している。前述のChenら,(ibid.)及びEversら(ibid.)を再度参照されたい。
【0065】
特定の実施形態では、第1の部分センサー配列及び第2の部分センサー配列は、カルモジュリン結合ペプチド及びカルモジュリンポリペプチドから選択される。
【0066】
特に特定の実施形態では、第1の部分センサー配列はカルモジュリンポリペプチドであり、第2の部分センサー配列はカルモジュリン結合ペプチドである。
【0067】
多数の異なるカルモジュリン変異体及び結合ペプチドが、とりわけいかに記載されるとおり存在する:Zhaoら、Science 2011 vol 333(6051)1888-91 doi:10.1126/science.1208592;Wuら、2013 ACS Chemical Neuroscience vol 4(6)963-972 doi:10.1021/cn400012b;Horikawaら、2010NatMethods 2010年9月;7(9):729-32 doi:10.1038/nMeth.1488;Chenら、Nature 2013年7月18日;499(7458):295-300、doi:10.1038/nature12354;Moeyaertら、Nat Commun.2018年10月25日;9(1):4440 doi:10.1038/s41467-018-06935-2;Danaら、2018 bioRxiv 434589;Gaoら、2015 doi:10.1038/nn.4016;Leeら、2017 doi:10.1038/nbt.3902;Mindererら、2012 doi:10.1113/jphysiol.2011.219014;De Juan-Sanzら、2017 doi:10.1016/j.neuron.2017.01.010;Dingら、2015 doi:10.1038/nmeth.3261及びAkerboomら、2011、doi:10.1523/JNEUROSCI.2601-12.2012。
【0068】
特定の実施形態において、カルモジュリンポリペプチドは、配列番号009(CaM)、又は配列番号009(CaM)と少なくとも90%同一であり、かつ実質的に同じ生物学的活性を有する配列であるか、又はそれを含み、カルモジュリン結合ペプチドは、配列番号008(M13)であるか、又はそれを含む。
【0069】
特定の実施形態では、センサーモジュールは、配列番号008(M13)によって例示されるカルモジュリン結合ペプチドであるか、又はそれを含む第1のセンサーペプチド、及びカルモジュリンポリペプチド、特に配列番号009(CaM)、又は配列番号009(CaM)と少なくとも90%同一であり、かつ実質的に同じ活性を有する配列であるか、又はそれを含む第2のセンサーポリペプチドを含むセンサーポリペプチド対によって構成される。第1のセンサーペプチドは第1の部分エフェクター配列にペプチド結合を介して共有結合しており、かつ第2のセンサーポリペプチドは第2の部分エフェクター配列に共有結合しており、かつ第1のセンサーポリペプチドと第2のセンサーポリペプチドとは別々のポリペプチド鎖の部分となっている。
【0070】
特定の実施形態では、カルモジュリン結合ペプチドは、当技術分野で知られているカルモジュリン結合ペプチドのいずれかから選択される。同じように機能する、より長い変異体が報告されており、上記の引用文献を参照されたい。
【0071】
特に特定の実施形態において、第1の部分エフェクター配列は、2~6個のアミノ酸を有する第1のモジュラー間リンカー配列によって第1のセンサーペプチドのC末端に接続され、及び/又は第2の部分エフェクター配列は、2~6個のアミノ酸を有する第2のモジュラー間リンカーによって第2のセンサーポリペプチドのN末端に接続される。
【0072】
より特に特定の実施形態において、第1のモジュラー間リンカー配列及び第2のモジュラー間リンカー配列は、ジペプチド又はトリペプチドであり、それらのアミノ酸構成要素は、それぞれ独立して、G、S及びT残基から選択される。
【0073】
特定の実施形態において、モジュラーポリペプチドは、配列番号010(SPLT1)又は配列番号010(SPLT1)と少なくとも90%同一である配列からなるか、又は含む第1のポリペプチド配列、及び配列番号011(SPLT2)又は配列番号011(SPLT2)と少なくとも90%同一の配列である第2のポリペプチド配列を特徴とし、前記第1及び第2のポリペプチド配列が共に、配列番号010(SPLT1)と配列番号011(SPLT2)との組み合わせの少なくとも0.5%、特に≧1%又は≧2%の活性を有する。特定の実施形態では、センサーモジュールは、N末端からC末端へ、
カルモジュリンポリペプチド、特に配列番号009(CaM)、又は配列番号009(CaM)と少なくとも90%同一であり、かつ実質的に同じ活性を有する配列;
ペプチドセンサーリンカー配列、特にポリプロリン型剛性ヘリックス、より特に、nが15~35までの整数から選択され、任意に1~4個のアミノ酸が隣接するPnプロリンポリペプチド、又はG、T、S、Aから選択される1~10残基の短い柔軟なストレッチによって遮られたポリプロリン配列;
カルモジュリン結合ペプチド(第2の部分センサー配列)、特に配列番号008(M13)を含む又はそれからなる配列
を含む、単一センサーペプチドによって構成される。
【0074】
特定の実施形態において、本発明のモジュラーポリペプチドは、配列番号013(CONF1)及び配列番号014(CONF2)、又は配列番号013(CONF1)の少なくとも0.5%、特に≧1%又は≧2%の活性を有する配列番号014(CONF2)又は配列番号013(CONF1)と少なくとも90%同一の配列から選択される配列を含むか、又はそれらからなる。
【0075】
特定の実施形態では、センサーモジュール配列は、以下を含むか、又は本質的にそれからなる:
a. グルタミン酸結合タンパク質のN末端部分であり、特に第1のセンサーポリペプチドが配列番号020(GLT1)、又は配列番号020(GLT1)と少なくとも90%同一である配列であるか、又はそれを含む、前記グルタミン酸結合タンパク質のN末端部分、及び
グルタミン酸結合タンパク質のC末端部分であり、特に第2のセンサーポリペプチドが配列番号021(GLT2)、又は配列番号021(GLT2)と少なくとも90%同一であり、かつ実質的に同じ生物学的活性を有し、特に細菌ペリプラズムグルタミン酸結合タンパク質、より特にGltl由来である配列であるか、又はそれを含む、前記グルタミン酸結合タンパク質のC末端部分;
ここで、第一のセンサーポリペプチドと第二のセンサーポリペプチドとの組み合わせが、配列番号020(GLT1)と配列番号021(GLT2)との組み合わせと実質的に同じ生物活性を有する;
又は
b. ポリペプチドリンカーにより配列番号021(GLT2)に結合した配列番号020(GLT1)からなるコンストラクトと少なくとも(≧)90%同一の配列であり、特にセンサーモジュールの配列が配列番号022(GLT3)、又は配列番号022(GLT3)と少なくとも90%同一であり、かつ実質的に同じ生物学的活性を有する配列であるか、又はそれを含む、前記配列。
【0076】
特定の実施形態において、モジュラーポリペプチドは、配列番号023(GLTIND1)、又は配列番号023(GLTIND1)と少なくとも90%同一である配列からなるか、又はそれを含む第1のポリペプチド配列、及び配列番号024(GLTIND2)又は配列番号024(GLTIND2)と少なくとも90%同一の配列である第2のポリペプチド配列を特徴とし、前記第1のポリペプチド配列及び第2のポリペプチド配列は共に、少なくとも0.5%、特に≧1%又は≧2%の配列番号025(GLTIND3)の活性を有する。
【0077】
特定の実施形態では、センサーモジュールは、以下を含むセンサーポリペプチド対によって構成される:
FKBP12ポリペプチドであるか、又はそれを含む第1のセンサーポリペプチドであり、特にFKBP12ポリペプチドが配列番号015(FKBP)、又は配列番号015(FKBP)と少なくとも90%同一であり、かつ本質的に同じ生物活性を有する配列であるか、又はそれを含む、前記第1のセンサーポリペプチド、及び
FRBペプチドであるか、又はそれを含む第2のセンサーポリペプチドであり、特にFRBペプチドが配列番号016(FRB)、又は配列番号016(FRB)と少なくとも90%同一であり、かつ本質的に同じ生物活性を有する配列であるか、又はそれを含む、前記第2のセンサーポリペプチド、
ここで、前記第1のセンサーポリペプチドは、ペプチド結合を介して、第1の部分エフェクター配列に共有結合しており、かつ第2のセンサーポリペプチドは第2の部分エフェクター配列に共有結合しており、かつ第1のセンサーポリペプチドと第2のセンサーポリペプチドとは別々のポリペプチド鎖の部分である。
【0078】
特に特定の実施形態において、第1の部分エフェクター配列は、2~9個のアミノ酸を有する第1のモジュラー間リンカー配列によって第1のセンサーポリペプチドのC末端に接続され、及び/又は第2の部分エフェクター配列は、2~9個のアミノ酸を有する第2のモジュラー間リンカーによって第2のセンサーポリペプチドのN末端に接続される。
【0079】
より特に特定の実施形態において、第1のモジュラー間リンカー配列及び第2のモジュラー間リンカー配列は、トリペプチドであり、アミノ酸構成要素は、それぞれ独立して、G、S及びT残基から選択される。
【0080】
特定の実施形態において、モジュラーポリペプチドは、配列番号017(RAPIND1)又は配列番号017(RAPIND1)と少なくとも90%同一である配列からなるか、又はそれを含む第1のポリペプチド配列、及び配列番号018(RAPIND2)及び配列番号019(RAPIND3)又は配列番号018(RAPIND2)と少なくとも90%同一の配列から選択される第2のポリペプチド配列を特徴とし、前記第1及び第2のポリペプチド配列は共に、少なくとも0.5%、特に≧1%、又は≧2%の配列番号017(RAPIND1)と配列番号018(RAPIND2)との組み合わせの活性を有する。特に特定の実施形態では、第1及び第2のポリペプチド配列は共に、5%、10%、15%、20%、又は33%の配列番号017(RAPIND1)と配列番号018(RAPIND2)との組み合わせの活性を有する。
【0081】
本発明の別の態様は、本明細書の態様、実施形態、又は実施例のいずれかに記載されるとおり、本発明によるモジュラー分析物センサーポリペプチドをコードする1つの核酸配列又は複数の核酸配列に関する。
【0082】
本発明は、以下を含む核酸配列の組み合わせによって同様に具体化することができる:
- 第1の部分エフェクターポリペプチド配列をコードする第1の核酸配列であり、前記コードされた第1の部分エフェクター配列は、N末端からC末端に、
-配列番号002、又は配列番号002と少なくとも(≧)90%同一(特に≧93%、≧95%、≧97%又は≧98%同一)の配列、
-G、A、J、S、Tから選択される10~35個(特に約15個)のアミノ酸、より特に12~20個のアミノ酸を有するポリペプチドリンカー配列、
-配列番号003、又は配列番号003と少なくとも(≧)90%同一(特に≧93%、≧95%、≧97%、又は≧98%同一)の配列、
を含む、前記第1の核酸配列;
- 配列番号006(PEP1)、配列番号007(PEP2)、又は配列番号006(PEP1)と少なくとも(≧)95%同一(特に≧96%、≧97%、≧98%、又は≧99%同一)の配列を特徴とする、第2の部分エフェクターペプチド配列をコードする第2の核酸配列、
ここで、前記第1及び第2の部分エフェクターポリペプチド配列は、共に、円順列変異ハロアルカンデハロゲナーゼを構成し、互いに近接している場合に、ハロゲンアルカン部分の共有結合をもたらすことができる。この場合も、本発明に包含されるとみなされる配列変異体を定義する目的で、センサーモジュール配列と組み合わせることができる分割エフェクターモジュールの組み合わせの閾値は、実施例9に記載されているとおり標準アッセイにおいて活性が102s-1M-1である。
【0083】
特定の実施形態において、分割エフェクターモジュールは、上記の実施例及び実施形態のとおり空間的近接性に有利な条件下で組み合わされる場合、配列番号001の活性の少なくとも0.5%、特に≧1%又は≧2%を示す。特定の実施形態において、分割エフェクターモジュールは、上記の実施例及び実施形態のとおり空間的近接性に有利な条件下で組み合わされる場合、実施例9に示されるとおり、標準アッセイにおいて少なくとも102s-1M-1の活性を有する。
【0084】
この組み合わせは、例えば、実験的センサーモジュールをコードする核酸を挿入するための核酸ベクターとして、又はエフェクターモジュールの補完される活性によって相互作用が調べられるコードされたペプチドのペアへの融合のために提供され得る。
【0085】
本発明の別の態様は、前述の態様による核酸配列、又は本明細書に記載のとおりの配列のエフェクターモジュール対をコードする核酸の組み合わせ(各核酸配列は、プロモーター配列の制御下にある)を含む核酸発現システムに関する。
【0086】
本発明の別の態様は、本明細書に開示されるとおりの核酸発現システム又は核酸配列を含む単離された細胞又はトランスジェニック非霊長類動物に関し、特に前記細胞においてプロモーターが作動可能である。
【0087】
同様に、本発明は、本明細書に開示されるとおりの核酸配列又は核酸発現システム、及びハロタグ7基質、特に蛍光色素に共有結合されるハロアルカン部分を含むキットによって具体化することができる。
【0088】
ハロタグシステムは、Losらによって最初に公開された(ACS Chemical Biology 2008Vo 3(6)373-382)。これは、Englandら.Bioconjugate Chemistry 2015,26 975-986で再考察されている。ハロタグシステム及びそこで有用な基質分子の一般的な態様を示す特許文献には、米国特許第8202700B2号、米国特許第7867726号、PCT/US2013/074756、米国特許第9927430B2号、米国特許第10168323B2号及び米国特許第2014322738号が含まれ、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
本発明で使用することができる例示的な蛍光色素分子の基質には、以下の表に示される蛍光色素分子の基質化合物が含まれるが、これらに限定されない:
【0090】
【0091】
単一の分離可能な特徴の代替がどこであれ、そのような代替は、本明細書に開示される本発明の別個の実施形態を形成するために自由に組み合わせることができることが理解されるべきである。
【0092】
本発明は、以下の実施例及び図によってさらに説明され、そこから、さらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの例は、本発明を説明することを意図しているが、その範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0093】
実施例1:分割ハロタグ7に基づくカルシウムシグナルインテグレーターの設計
ハロタグ7は、Rhodococcus rhodochrousのハロアルカンデヒドロゲナーゼDhaAに由来する自己標識タンパク質であり、合成クロロアルカンリガンドと特異的に反応して共有結合する。分割システムを生成した。ここではハロタグ7の元の末端を、(GGS/T)5リンカーを介して接続し、cpHalo141~145(cpハロタグ7は位置141及び145で新しい末端を有する)及びcpHalo156~154の円順列変異(circular permutant:CP)部位の間のペプチドをハロタグ7タンパク質から切除した。これらの位置の間の部分を切除して、cpHalo156~141からなる分割体と、位置145~153/154までの短い9merペプチドを生成した。
【0094】
cpHaloΔ9mer-9merペプチドのカップルは有望な予備的結果を示したため、カルシウムインテグレーターの第1のバージョンを、GGSリンカーを介してそれぞれM13ペプチドとカルモジュリンタンパク質とに融合することによって設計した。カルシウム濃度が高くなると、カルモジュリンは最大4つのカルシウムイオンに結合し、M13認識ペプチドへの親和性を大幅に高める大きなコンフォメーション変化をもたらす。結果として生じるカルモジュリンとM13との結合は、9merペプチドによるcpHaloΔ9merの補完化をもたらす。補完される場合、この酵素は活性を取り戻し、蛍光ハロタグ基質と反応することができ、永続的なマークを残すため、このシグナルを統合することができる。
【0095】
実施例2:cpHaloΔ9merと9merペプチドとの間の親和性
等温滴定熱量測定
cpHalo_9merと9merペプチドとの間の親和性を、等温滴定熱量測定(ITC:isothermal titration calorimetry)を使用した標識なしのアプローチによって測定した。
【0096】
9merペプチドは、活性バッファー(HEPES 50mM pH 7.3-NaCl 50mM)に約30mMで溶解し、そして強い温度依存様式で高濃度にてゲルを形成する。このペプチドの最大濃度は、0.6mMのcpHaloΔ9merに対して滴定された(
図1)。異常に高いK
dを確認するために、cpHaloΔ9merの異なるバッチで実験を3回繰り返した。5.3+/-1.5mMのK
d値は、3回の独立した測定値から計算することができた。
【0097】
実施例3:ハロタグ7及びcpHaloΔ9merに対する蛍光リガンドの親和性
本発明者らは、いくつかの代表的な蛍光ハロタグ基質を用いて実験を行うことを決定した。アラニンによる活性部位のアスパラギン酸106残基の交換により、自己標識反応の原因となる求核体を除去し、このタンパク質の触媒活性を排除した。ハロタグ7(ハロタグ7D106A)及びcpHaloΔ9mer(cpHalo_9merD106A)の触媒作用のない変異体を生成して、酵素反応により平衡が変位することなしに基質親和性を測定した。
【0098】
ハロタグ7による蛍光発生リガンドの結合は、蛍光の強力な増加を引き起こすために、ハロタグ7D106Aに対する異なる蛍光基質の親和性をFP結合アッセイで決定し(
図2)、一方で蛍光発生シリコン-ローダミン由来基質の親和性を蛍光強度に基づく結合アッセイ(
図3)により測定した。どちらの場合も、0μM~100μMの範囲のハロタグ7D106A濃度を、25nMの色素に対して滴定した。ハロタグ7D106Aは、Haloカルボピロニン(Halo-CPY)の622+/-3.7nMからHalo-Janelia Fluor635の172.2+/-8.2μMの範囲の親和性でリガンドに結合する(表1)。観察された親和性は、異なる基質で記録された標識カイネティックスと一致している(データは示さず)。一般に、蛍光発生基質は、同じ範囲の親和性を特徴とするHalo-Alexa Fluor 488を除いて、非蛍光発生基質よりもハロタグ7D106Aに対する親和性が低くなる。さらに、シリコンローダミン誘導体内では、アゼチジン部分又は3-フルオロアゼチジン部分の存在が、結合親和性に影響を及ぼし、これはローダミン構造と比較してより顕著である。ハロタグ7に対して最高の親和性を示す蛍光ハロタグリガンドの親和性を、FP結合アッセイでcpHaloΔ9merD106Aを使用して試験し、結果をハロタグ7D106Aを使用した測定値と比較した(
図4、表1)。
【0099】
実施例4:cpHaloΔ9merのバックグラウンド標識
タンパク質補完アッセイを十分に機能させるには、低いバックグラウンドを必要とする。したがって、本発明者らは、異なる蛍光色素分子(Halo-TMR、Halo-CPY及びHalo-SiR)によるcpHaloΔ9merのバックグラウンド標識の程度を測定した。したがって、cpHaloΔ9merを過剰の異なる蛍光リガンドと共にインキュベートした。
【0100】
37℃及び異なる時点での標識効率を、ゲル蛍光測定によって決定した(
図5)。Halo-TMR及びHalo-SiRでは、非常に低いバックグラウンド標識を観察した。Halo-CPYはわずかに強いバックグラウンド標識を示し、24時間後に最終的に20%に達した。これらの発見は、蛍光リガンドの親和性と一致している(
図4)。実際、Halo-CPYはcpHaloΔ9merに対して最も高い親和性を示し、2μMでリガンドに対してある程度の親和性を示しており、実験の設定を考慮してもなお最低限残る標識をもたらす。
【0101】
実施例5:スプリットハロタグ7に基づくカルシウムシグナルインテグレーターの特性評価と最適化:リンカーの最適化
カルシウムインテグレーターの初期設計は、cpHaloΔ9merとM13ペプチド、及び9merペプチドとカルモジュリンとの融合からなる。両方の融合パートナーは、GCaMP6fのカルシウム感知ドメインから得られる。基質としてHalo-TMRを使用した蛍光偏光によるカイネティックスは、カルシウムの非存在下ではバックグラウンドがなく、カルシウムの存在下で標識の2次速度定数は6.7+/-0.5*103s-1M-1であることが明らかになった。
【0102】
最適なリンカーは、cpHaloΔ9merを補完するために、9merペプチドを良好な距離と適切な方向とに配置するのに役立つべきである。したがって、分割の各部分の3つの変異体を、さまざまなリンカー長((GGS)
1~3)で生成した。これらのコンストラクトにより、最適な組み合わせで機能するために、リンカーの長さのすべての組み合わせをスクリーニングすることができた。M13-cpHaloΔ9merリンカーと9mer-カルモジュリンリンカーの両方で、リンカーの長さが増加すると、カルシウム誘導活性が大幅に低下することを観察した。興味深いことに、最初に選択した単一のGGSリンカーは、カルシウムによる最速の標識速度を示し、2.5時間後に検出可能なバックグラウンドを示さないため、明らかに最高の性能を示した(
図6)。
【0103】
実施例6:分割ハロタグ7に基づく分子内カルシウムインテグレーターの設計及び試験
本発明者らは、異なるリンカードメインを使用してカルモジュリンとM13の間の2つのインテグレーターのコンパートメントを融合することにより、「CaProLa」(カルシウム依存性タンパク質標識)と呼ばれる単純化された分子内カルシウムインテグレーターを設計した(
図7)。以下のカルモジュリン-M13リンカーを、この第1世代のCaProLaコンストラクトに対して試験した:
・ 柔軟性GGTGGS(配列番号026)リンカー-(CaProLa1.1)
・ 部分的に柔軟性で、部分的に剛性のPro15-(GGS)
2-Pro
15リンカー-(CaProLa1.2)
・ 剛性Pro30リンカー-(CaProLa1.3)
・ Pro15リンカーが隣接するSNAPタグドメイン-(CaProLa1.4)
【0104】
各コンストラクト及び分割システムを、以下の4つの異なる条件でHalo-TMRを基質として使用するFPカイネティックスアッセイにおいて試験した(
図8):
・ 標識カイネティックス及び速度定数を決定するためのカルシウムの存在下(陽性実験)
・ バックグラウンド標識をアッセイするための、カルシウム非存在における、EGTAの添加による確認(陰性実験)
・ 基質との長時間のインキュベーション後の活性を示すための、カルシウム非存在だが、1時間後にカルシウムを急増させる(スパイク)(スパイク実験)
・ センサーの可逆性を示すための、カルシウムの存在下において、続いてEGTA急増で反応を停止し、次いでカルシウム急増で反応を再開させる(可逆性実験)
【0105】
試験したすべての変異体は、カルシウムの存在下で3*103s-1M-1~5*103s-1M-1の範囲の同様の速度定数を示した。さらに、1時間後のカルシウムスパイクによる誘導及び可逆性実験は成功し、9merペプチドがcpHaloΔ9mer構造に結合すると、(分子内システムでさえ)結合を解くことができ、優れたダイナミクスを提供することを示唆した。
【0106】
ただし、センサーのバックグラウンド標識には違いが見られる。分割インテグレーターは2時間にわたって検出可能なバックグラウンドを示さなかったが、CaProLaコンストラクトはさまざまな程度のバックグラウンド標識を示し、M13-CaMリンカーの剛性と相関していた。最小のバックグラウンドは、Pro30リンカーとPro15-SNAP-Pro15ドメインで観察された。
【0107】
実施例7:異なるCaProLaコンストラクトのカルシウム応答性
CaProLaの第1の設計用に選択されたカルモジュリン-M13ペアを、GCaMP6fから得た。構造的な状況に応じて、カルシウムに対するペアの応答性は変化することができる。カルモジュリン部分は、非常に複雑なアロステリック挙動で最大4つのカルシウム原子に結合する。ただし、センサーに組み込まれている場合、遊離カルシウム濃度に対するセンサー活性の単純な滴定は、センサーの応答範囲を表すEC50の同定につながる。
【0108】
異なるM13-CaMリンカーを持つCaProLaコンストラクトのカルシウム依存性を、カルシウム依存性EC
50を測定することによって特徴づけた。したがって、異なるカルシウム濃度での標識を、FPカイネティックスアッセイでモニターした。ナノモル範囲で定義されたカルシウム濃度を達成するために、K
2EGTA-CaEGTA緩衝システムを使用した。カルシウム依存性EC
50を計算するために初期反応速度を決定した(
図9)。測定されたEC
50値は、低ナノモル範囲(19nM~146nM)であり、M13-CaMリンカーの剛性に依存する。リンカーの剛性を高めると、EC
50が高くなる。比較のために、同じカルモジュリン-M13のカップルを使用したGCaMP6fは、375+/-14nMのEC
50を示す。
【0109】
実施例8:CaProLaコンストラクトのカルシウム応答性の調整
ニューロンの安静時カルシウム濃度は50nM~100nMであると報告されている。結果として、第1世代のCaProLaは、カルシウムに対して感受性が高すぎてニューロンで機能できないと考えられた。したがって、第2世代のCaProLaは、特にEC50の増加に伴い、異なるカルシウム応答性を示す異なるコンストラクトを生成することを目的として設計した。
【0110】
カルモジュリン-M13のカップルは高度に研究されており、カルシウム応答性を改変するために多数の変異が報告され、かつセンサーにおいて使用されている。したがって、本発明者らは、Addgeneに寄託されたカルシウムインテグレーターCaMPARI2の未だ公開されていないバージョン(Schreiter,E、Addgeneプラスミド、番号101061、番号101062及び番号101064)に基づいて設計を行うことを決定した。これらのCaMPARI2の変異体は、110nM~825nMの範囲のEC50値で注釈が付けられており、同様の用途に設計されている。
【0111】
修飾されたM13ペプチドのうち3つを、第2世代のCaProLaコンストラクト(CaProLa2.1~2.3)に実装した。これらのコンストラクトは、バックグラウンドが低いため、すべてCaProLa1.3(Pro
30M13-CaMリンカー)をベースにしている。新しいCaProLaコンストラクトのEC
50値は、上記のとおり決定した(
図10)。
【0112】
CaProLa2.1~2.3のEC50値は、CaMPARI2に注釈が付けられている値に匹敵する(表2)。CaProLa2.1と2.2はどちらも、バージョン1.4よりも大幅に高いEC50を特徴とし、ニューロンのカルシウム波の統合に適している可能性がある(500nM~10μM)。
【0113】
第1世代と同様に、すべての新しいCaProLaコンストラクトは、FPカイネティックスの実験において、カルシウムが誘導されるカイネティックス、可逆性、及びバックグラウンド標識に関して試験した(
図11)。試験した3つのコンストラクトから、CaProLa2.2のみが期待どおりに機能した。第1のCaProLa生成よりも少し遅いが(2.3+/-0.014
*10
3s
-1M
-1の速度定数)、4時間のインキュベーション中にバックグラウンドは観察されず、標識反応は可逆的であった。CaProLa2.1、及び特に2.3は、わずかに遅いカイネティックス(約1
*10
3s
-1M
-1)、及びさらに重要なことに、より高いバックグラウンド標識により劣っていた。しかし、EC
50の測定ではすべてのコンストラクトが良好に機能したため、実験的間違いを排除するためには、これらの実験を繰り返す必要がある。
【0114】
次いで、FPアッセイで得られた結果を確認するために、CaProLa2.2コンストラクトをゲル内蛍光法で試験した(
図12)。Halo-CPYを基質としてゲル内蛍光測定を実施し、この蛍光色素分子では2時間後にバックグラウンドが顕著になり始めることを示した。より直接的な読み取り(FPがいずれの結合を観察する)の性質により、これらの結果は細胞アッセイでの転移を促進するCaProLa 2.2の良好な機能を確認した。
【0115】
実施例9:ハロタグ7又はハロタグ7の円順列変異の性能を試験するための蛍光偏光に基づくアッセイ:
タンパク質の生産及び精製
精製タグ(Hisタグ及び可能なStrepタグ)に融合したタンパク質(ハロタグ7-cpHalo変異体又はX-ProLa)は、Escherichia coli BL21(DE3)-pLysS株で発現され、古典的IMAC(及び可能なStrep Trapアフィニティークロマトグラフィー法)を使用して精製される。バッファー交換及び濃縮の後、必要に応じて(cpHalo変異体の場合)、N末端のHisタグをTEV切断及び逆IMAC精製によって除去した。バッファーを適切なバッファー(例えば、50mM NaCl、50mM HEPES、pH7.3)に交換する。必要に応じて、同じバッファーでサイズ排除クロマトグラフィーによりタンパク質をさらに精製することができる。
【0116】
蛍光偏光アッセイ(Fluorescence polarization assay)
100μLのタンパク質(400nMにて)を、100μLの蛍光ハロタグ基質(すなわちHalo-CPY)(100nMにて)と、96ウェルプレート(黒色-結合しない-平底)にバッファー 50mM NaCl、50mM HEPES、pH 7.3、0.5mg/mlBSAにおいて混合して標識カイネティックスを実施した。蛍光偏光の増加を、適切なスペクトルフィルター/モノクロメーター(TECAN Spark20)を備えたマイクロプレートリーダーを使用して記録する。cpHalo変異体とハロタグ7のカイネティックスは通常非常に速いため、混合と測定開始との間のずれを最小限に抑えるために、内部インジェクターを備えたプレートリーダーを使用する必要がある。ただし、この装置を使用しても、1秒未満で完了する反応を観察することは不可能な場合がある。この場合、高いサンプリング速度で蛍光偏光を測定できるストップトフローセットアップが必要である(例:BioLogicSFM)。このような機器の感度が低下すると、蛍光基質及びタンパク質の濃度を上げる必要がある(つまり、1μMの基質及び10μMのタンパク質を1:1で混合)。
【0117】
さらに、希釈及び蒸発の影響を考慮するために、いずれのタンパク質を含まない蛍光偏光の時間経過が常に記録され、かつデータから差し引かれる。得られたカイネティックスのデータを二次反応速度則(下の式を参照)に適合させて、二次速度定数(k)を導き出す。誤差を推定するために、実験は少なくとも3重に実行する必要がある。異なる変異体を比較するには、すべてのアッセイを同じ濃度及び基質で実行する必要がある。
【0118】
【0119】
X-ProLa変異体のアッセイの概論
蛍光偏光アッセイは、X-ProLa変異体の性能を試験するためにも使用される。一般的な手順は、上記と同じである。ただし、これらのコンストラクトはハロタグ7又はそのCP変異体よりも遅いことが多いため、プレートリーダーアッセイで十分な場合がある。また、蛍光基質に加えて、センサーを活性化するそれぞれの代謝物/イオン/小分子も追加する必要がある。代謝物がある場合とない場合の標識カイネティックスを記録することにより、バックグラウンドを超えるシグナルを測定でき、異なる代謝物濃度を滴定することにより、X-ProLaのEC50値を導き出すことができる(EC50は、標識の速度が標識の最大速度の半分になる濃度として定義される)。
【0120】
実施例10:タンパク質間アッセイシステム
本発明者らはさらに、単純なモデルシステムにおいてタンパク質間相互作用を標識するための本発明の分割ハロタグシステムの性能を試験した。本発明者らは、小分子薬物ラパマイシンの存在を条件とするタンパク質FKBPとFRBとの強い相互作用を使用した。分割ハロタグ断片をFKBPに融合した後、FRB標識はラパマイシンの存在下でのみ観察され、これは我々の戦略がモデルシステムで機能することを示している(
図13)。 相互作用するタンパク質(FKBP/FRP)と分割ハロタグ断片との間に異なる柔軟性リンカー(GGSを1~3倍)を配置して、リンカーの長さの影響を評価し、性能の高いリンカーの組み合わせを見出した(
図14)。すべてのリンカーの組み合わせでは、ノイズに対して少なくとも最小限のシグナルを出したが、特定の組み合わせ(FKBP-GGSx3-cpHaloΔ及び9mer-GGSx1-FRB)は明らかに優れた性能を示した。これらのアッセイは、センサーがタンパク質間相互作用を統合でき、in vitro又はin vivoでのシグナル伝達経路の活性を記録するために使用できる可能性があることを示している。
【0121】
表1:触媒作用のない変異体ハロタグ7D106A及びcpHaloΔ9merD106AのKd値に対する蛍光リガンドの親和性は、非線形回帰から生じる標準誤差で与えられる。
【0122】
【0123】
実施例11:補完するペプチドの変異耐性のスキャン
実験手順
バッファー 50mM NaCl、50mM HEPES、100μM EGTA、0.5g/l BSA、pH 7.3で実行された蛍光偏光によるカイネティックス。37℃で平衡化した黒色の平底96ウェルプレートで、100μlの400nMタンパク質及び100nMのHalo-TMRをバッファーで混合。100μlの10mM CaCl2 をバッファーに注入して反応を開始。最終濃度:200nM タンパク質、50nM Halo-TMR、5mM CaCl2。タンパク質を添加なしでバックグラウンドウェルの追加。平坦域(plateau)に達するまで、蛍光偏光の読み出し。測定値からバックグラウンド値を差し引く。二次反応速度をフィッティングして、k2
appを得る。
【0124】
結果
cpHaloΔの活性を補完することができる10merペプチドの変異は、天然の配列と比較して、配列保存(%)に直接大きな影響を有する。したがって、本発明者らは、カルシウム飽和での全体的な標識カイネティックスに対するペプチド変異の影響を評価するために、すでに最適化されたCaProLaコンストラクトの状況でペプチドに対してアラニンスキャンを実施した(
図16)。このアラニンスキャニングは、アラニンが存在する場合でも、各残基が1つずつアラニンに変異されたことを意味し、α-ヘリックスの状況で最も「特性保存的」であると発明者が考えるロイシンによって置き換えられた。
【0125】
そして、標識カイネティックスの比較は次のことを示唆している:
- Ala145のロイシンへの変異は、インテグレーターのカイネティックスに影響を与える。これは、この領域の疎水性パッキングが緊密であることから説明でき、ロイシンの扱いにくさが、このパッキングを破壊し、ペプチドがαヘリックスに折りたたまれる能力、及び/又は基質と相互作用する能力を低下することができる。
- Arg146、Glu147、及びThr148のアラニンへの変異は、インテグレーターの機能に悪影響を与えなかった。本発明者らは、この位置では、αヘリックスを形成する能力が必須であるのみと仮定する。
- Phe149及びGln150の変異は、特に基質調節部位の疎水性の中心部(heart)にかかわるフェニルアラニンの場合、インテグレーターのカイネティックスを劇的に低下させる。このGlnはより表面に露出するが、領域をキャップしているようで、ペプチドの適切な折り畳みに役立つ。
- ロイシンへのA151の変異は、親タンパク質と比較して、予想外に標識速度の増加をもたらした(約3倍)。したがって、本発明者らは、この位置での変異をさらに調査し、メチオニン変異が親タンパク質と同等に機能する一方で、他のすべての試験された修飾(Cys/Phe/Ile/Thr/Val)が活性に有害であると評価した。
- Phe152及びArg153の変異により、タンパク質の標識する能力が失われることになる。Phe152はタンパク質活性部位の疎水性の中心部の一部であるが、Arg153は周囲の複数の残基と相互作用する。それらは最もおそらく両方ともペプチドの適切なα-ヘリックス折りたたみにとって重要である。
- Thr154の変異はまた、タンパク質の標識速度の低下にもつながり、この残基は、隣接するα-ヘリックスの残基と相互作用することにより、ペプチドを適切な方向に固定するようである。
【0126】
要約すると、Ala145、Phe149、Gln150、Phe152、及びArg153は、CaProLaセンサーの状況において修飾しやすいものではないようである。一方、Arg146、Glu147、及びThr148の修飾では問題が少ない。最後に、A151の修飾はなお活性の増加につながる可能性もあるが、修飾の性質に大きく依存する。
【0127】
実施例12:cpHaloΔ/H-ペプチドに基づくグルタミン酸インテグレーターの開発
実験手順
蛍光偏向カイネティック実験は、37℃又は22℃で黒い平底96ウェルプレートにおいて実施した。バッファーの組成は、50mM NaCl、50mM HEPES、0.5g/L BSA、pH 7.3であった。150μLの400nMタンパク質及び2倍の最終濃度のグルタミン酸を30分間平衡化し、100μLのHalo-CPYをバッファーに注入して反応を開始した。試薬の最終濃度は、200nMのタンパク質及び50nMのHalo-CPYであった。測定値が平坦域(plateau)に達するまで、蛍光偏光を読み取った。Prism 8(GraphPad)で、曲線を単指数関数に適合した。グルタミン酸の飽和は1mMで観察される。
【0128】
結果
本発明者らは、哺乳動物の中枢神経系(CNS)における主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸(GluProLa:グルタミン酸依存性タンパク質標識)のインテグレーターの生成を成功させた。GluProLaは、グルタミン酸の既存のリアルタイム強度測定センサーであるiGluSnFRのアーキテクチャを中心に設計されている。iGluSnFRは、細菌のペリプラズムグルタミン酸結合タンパク質Gltlに由来する。Gltlの柔軟なヒンジに円順列変異緑色蛍光タンパク質(cpGFP:circularly permuted green fluorescent protein)を挿入すると、蛍光強度の増加に伴ってグルタミン酸濃度の変化に応答する緑色蛍光センサーが得られた。GltlのN末端とC末端はGltlの同じ面にあり、iGluSnFRの機構的研究では、これらの位置が相対距離及び/又は配向のグルタミン酸結合依存性変化を示すはずであることを示唆しているため、発明者らはこれらがH-ペプチド及びcpHaloΔへの融合に適した部位であると理由付けた。したがって、本発明者らは、H-ペプチド(配列番号007(PEP2))をiGluSnFRのN末端に連結し、cpHaloΔ(配列番号004)をC末端に連結するGluProLaコンストラクトを作成した。本発明者らは、H-ペプチドとiGluSnFRとの間及びiGluSnFRとcpHaloΔとの間の柔軟なGGTGGS(配列番号026)及び/又はPro10リンカーを有するコンストラクトの小さなファミリーをクローン化し精製した。すべてのコンストラクトは、in vitro蛍光偏向アッセイによって決定されるとおり、グルタミン酸及び蛍光ハロタグ基質の存在下で標識を示した(例えば、
図17)。本発明者らは、グルタミン酸の存在下又は非存在下での相対的な標識カイネティックスが、リンカー組成を変えることによって調整できることを見出した。H-ペプチド/iGluSnFR及びiGluSnFR/cpHaloΔの両方の位置にGGTGGS(配列番号026)配列を有するコンストラクトは、最も低い非特異的標識率を示した。本発明者らは、cpGFPに点変異(G67A)を導入した。この変異は、wtGFPの発色団形成を防ぎ、G67A変異(暗色の場合はdGluProLasと呼ばれる)を持つgGluProLa(gは緑を表す)変異体もまた非蛍光性であることがわかった。GluProLa変異体は、グルタミン酸濃度に依存する標識を示した。dGluProLa変異体は、親のgGluProLa配列よりも遅い標識カイネティックスを示したが、グルタミン酸に対して同じ親和性を維持していた。最良のコンストラクトは、標識カイネティックスの点で(すなわち活性)15倍の違いを表す(
図17)。
【0129】
表2:CaM-M13変異体を使用した第2世代CaProLaコンストラクトの概要、CaMPARI2について報告されたEC
50値、及びCaProLaについて測定されたEC
50
【表3】
【0130】
配列
ハロタグ7(GenBank AQS79242参照);本発明の作成に採用されたcpバージョンは、この配列のC-末端の27個のアミノ酸を含まない。
【0131】
【配列表】