IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 睦月電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ナノバブル液剤を利用するための装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ナノバブル液剤を利用するための装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20230101AFI20241206BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20241206BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241206BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C02F1/68 520Z
C02F1/68 510A
C02F1/68 530Z
A61K33/00
A61P1/02
A61P31/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022212904
(22)【出願日】2022-12-16
(65)【公開番号】P2024053521
(43)【公開日】2024-04-15
【審査請求日】2022-12-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2022168694
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305011787
【氏名又は名称】睦月電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】睦月 邦年
(72)【発明者】
【氏名】睦月 伸季
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】原 賢一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/262540(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/261464(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131723(WO,A1)
【文献】特開2021-91619(JP,A)
【文献】特開2019-103958(JP,A)
【文献】特開2022-21148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-1/78
B01F21/00-25/90
B01J4/00-7/02
A61K31/33-33/44
A61P1/00-43/00
A01G2/00-31/06
A01H1/00-17/00
C12N1/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスおよびマイナスに帯電した部位が存在する適用対象に対して静電相互作用もしくは静電的相互作用を有し、マイナスに帯電した第1のナノバブル水とプラスに帯電した第2のナノバブル水の双方を同時に使用する帯電したナノバブル液剤の利用に用いられ、前記第1のナノバブル水を供給する配管及び前記適用対象に対し前記第1のナノバブル水を注入するノズル装置、前記第2のナノバブル水を供給する配管及び前記適用対象に前記第2のナノバブル水を注入するノズル装置を有する、ナノバブル液剤を利用するための装置であって、
前記適用対象を歯として、前記第1のナノバブル水が歯の表面に適用されて歯の表面の歯垢のプラス電荷を静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着し、前記第2のナノバブル水が歯根部位に適用されて歯根部位のマイナス電荷の雑菌を静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着し、当初は前記第2のナノバブル水を多くし、終了する段階では前記第1のナノバブル水を多くする、ナノバブル液剤を利用するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電したナノバブル水を含有するナノバブル液剤を利用するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オゾンマイクロナノバブル水を含有する処理液により半導体基板の表面に酸化膜を形成する半導体基板の製造において、段落番号0014にマイクロナノバブルとは、直径が1nm以上100μm未満の気泡と定義し、段落番号0031にマイクロナノバブルは、その生成方法によりプラスおよびマイナスの電位を有することが可能であり、この電位をシリコンウェーハの持つ電位と逆の電位とすることで、処理液のウェーハに対する表面張力低下、つまり濡れ性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-111093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1においては、マイクロナノバブルは、プラスおよびマイナスの電位を有することが可能であっても、プラス電位のマイクロナノバブル水とマイナス電位のマイクロバブル水との双方を同時に用いて静電相互作用もしくは静電的相互作用を適用して種々の用途に利用できるナノバブル水とすることは開示されていない。
【0005】
そこで、本発明は、種々の用途に利用できる帯電したナノバブル液剤を利用するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のナノバブル液剤を利用するための装置は、プラスおよびマイナスに帯電した部位が存在する適用対象に対して静電相互作用もしくは静電的相互作用を有し、マイナスに帯電した第1のナノバブル水とプラスに帯電した第2のナノバブル水の双方を同時に使用する帯電したナノバブル液剤の利用に用いられ、前記第1のナノバブル水を供給する配管及び前記適用対象に対し前記第1のナノバブル水を注入するノズル装置、前記第2のナノバブル水を供給する配管及び前記適用対象に前記第2のナノバブル水を注入するノズル装置を有する、ナノバブル液剤を利用するための装置であって、前記適用対象を歯として、前記第1のナノバブル水が歯の表面に適用されて歯の表面の歯垢のプラス電荷を静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着し、前記第2のナノバブル水が歯根部位に適用されて歯根部位のマイナス電荷の雑菌を静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着し、当初は前記第2のナノバブル水を多くし、終了する段階では前記第1のナノバブル水を多くする、ナノバブル液剤を利用するための装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のナノバブル液剤を利用するための装置は、マイナスに帯電した第1のナノバブル水とプラスに帯電した第2のナノバブル水を含有しており、その双方を同時に用いて、静電相互作用もしくは静電的相互作用を適用することにより、種々の用途に利用できるナノバブル水を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ナノバブル液剤を適用対象に接触させて利用する概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のナノバブル液剤は、マイナスに帯電した第1のナノバブル水とプラスに帯電した第2のナノバブル水を含有しており、第1のナノバブル水と第2のナノバブル水は水道水、酸素水、オゾン水などの溶液で、その溶液中にはナノバブルの気泡が含まれており、そのナノバブルとしては、例えば、気泡径が1nm~30nmで、密度が1016個/ml以上である。
【0010】
また、本発明のナノバブル液剤はプラスやマイナスに帯電した部位が存在する適用対象に対して静電相互作用もしくは静電的相互作用を有し、第1のナノバブル水と第2のナノバブル水の双方を同時に使用する帯電した液剤であって、第1のナノバブル水と第2のナノバブル水との配合量は、適用対象に用いて利用する目的により設定して運用する。
【0011】
(ナノバブル液剤の作用の説明)
ナノバブル液剤は、マイナスに帯電した第1のナノバブル水とプラスに帯電した第2のナノバブル水を含有しているので、プラスおよびマイナスに帯電した部位が存在する適用対象に使用して、その帯電した部位における反対符号の電荷に対して静電相互作用もしくは静電的相互作用により第1のナノバブル水および第2のナノバブル水がその帯電した部位を吸着してその部位を除去したり、その部位に添加する。このような除去や添加の作用については後述するナノバブル液剤の利用例で説明する。従って、適用対象がプラスとマイナスの何れか一方に帯電した部位の用途に限らず、双方に帯電した部位の用途に適用することになるので、種々の用途に利用できる。
【0012】
(第1のナノバブル水の生成)
前記ナノバブルの気泡が含まれるように第1のナノバブル水2を生成するために、株式会社シグマテクノロジー製のシグマ酸素水(登録商標)を使用し、同社の特許第5555892号に記載の水撃力を利用したマイクロ・ナノバブル発生装置によりナノバブル状態の微細気泡でできたナノバブル水が得られる。このようにして得られたナノバブル水はマイナスに帯電されていることにより、ナノバブル状態の微細気泡でマイナスに帯電した第1のナノバブル水2が生成される。
【0013】
(第2のナノバブル水の生成その1)
ナノバブル水が水素イオン濃度(pH)に依存する表面電位をもっており、酸性の場合には微細気泡がプラスに帯電している状態となる性質があるので、第2のナノバブル水3を生成するために、ナノバブル水の水素イオン濃度(pH)を少なくするように第1のナノバブル水2のシグマ酸素水(登録商標)に代えて水素イオン濃度(pH)2~3のレモン水をろ過して、前記水撃力を利用したマイクロ・ナノバブル発生装置により製造されたナノバブル水を得るか、または、水素イオン濃度(pH)2~3の希塩酸を混合することにより、ナノバブル状態の微細気泡でプラスに帯電した第2のナノバブル水3が生成される。
【0014】
(第2のナノバブル水の生成その2)
前記水撃力を利用したマイクロ・ナノバブル発生装置により製造された第1のナノバブル水2にプラス電荷を帯びた添加剤を供給して混合することにより、プラスに帯電した添加剤を有する第2のナノバブル水3が生成される。この添加剤はプラス電荷を有しているマグネシウム、ナトリウム、鉄、カルシウムなどが例示できる。
【0015】
(ナノバブル液剤を利用する作用の説明)
図1は、ナノバブル液剤を注入、吹き付け、散布などにより適用対象に接触させて利用する概要図を示す。
【0016】
図1において、ナノバブル液剤1は、前記ナノバブルの気泡が含まれて、マイナスに帯電した第1のナノバブル水2とプラスに帯電した第2のナノバブル水3を含有してできている。そのうち、第1のナノバブル水2は配管21から(図1において矢印方向)適用対象4に供給され、同時に、第2のナノバブル水3は配管31から(図1において矢印方向)適用対象4に供給されて、ナノバブル液剤1はプラス電荷やマイナス電荷が存在する適用対象4に利用できる。第1のナノバブル水2および第2のナノバブル水3がそれぞれ配管21および配管31から適用対象4に供給される方法としては、ノズル装置5で適用対象4に注入、吹き付け、散布などにより適用対象4に接触させることが例示でき、その接触させて利用する適用対象4としては、以下に記載するナノバブル利用例その1における歯の部位、ナノバブル利用例その2における生け花や盆栽や花束およびナノバブル利用例その3における植物が例示できる。
【0017】
(ナノバブル液剤の利用例その1)
前記第1のナノバブル水の生成および前記第2のナノバブル水の生成その1により生成された第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3を含有したナノバブル液剤1において、第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3の双方を同時に注入するようにして、ナノバブル液剤1を適用対象4の歯の部位に適用して歯周病の治療に用いると、プラス電荷の第2のナノバブル水3が歯根部位に適用されて、第2のナノバブル水3のプラス電荷と歯根部位に存在するマイナス電荷の雑菌とが静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着することにより歯根部位から雑菌を除去する。そして、歯の表面に雑菌と唾液のカルシウムやナトリウムなどの無機成分により形成される歯垢はプラス電荷を帯びており、マイナス電荷の第1のナノバブル水2が歯の表面に適用されて、歯の表面の歯垢のプラス電荷を静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着することにより歯垢の形成をさせ難くする。このように、ナノバブル液剤1は、適用対象4の歯の部位に適用することにより、第2のナノバブル水3の前記作用と歯垢の形成をさせ難くする第1のナノバブル水2の前記作用により歯周病の治療に利用することができる。この場合、第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3との配合量を適用対象4に応じて調整することについては、治療当初は雑菌の除去ができるように第2のナノバブル水3を多くし、治療が進行して終了する段階では第1のナノバブル水2を多くするように運用する。
【0018】
(ナノバブル液剤の利用例その2)
前記第1のナノバブル水の生成および前記第2のナノバブル水の生成その1により生成された第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3を含有したナノバブル液剤1において、第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3の双方を同時に吹き付けるようにして、ナノバブル液剤1を適用対象4の生け花や盆栽や花束に適用すると、プラス電荷の第2のナノバブル水3がマイナス電荷の植物の雑菌や害虫を静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着することにより雑菌や害虫を除去するとともに、マイナス電荷の第1のナノバブル水2が生け花や盆栽や花束の周囲におけるプラス電荷を帯びた汚れた粒子を静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着してその汚れた粒子を除去することにより、生け花や盆栽や花束を萎れ難く活性化することができる。このように、ナノバブル液剤1は、適用対象4の生け花や盆栽や花束に適用することにより、第2のナノバブル水3の前記作用と生け花や盆栽や花束の周囲の空気中の汚れた粒子を除去する第1のナノバブル水2の前記作用により生け花や盆栽や花束の活性化に利用することができる。この場合、第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3との配合量を適用対象4に応じて調整することについては、生け花や盆栽や花束における雑菌や害虫を除去することを考慮して第2のナノバブル水3を多くするように運用する。
【0019】
(ナノバブル液剤の利用例その3)
前記第1のナノバブル水の生成および前記第2のナノバブル水の生成その2により生成された第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3を含有したナノバブル液剤1において、第2のナノバブル水3に混合されたプラス電荷を帯びた添加剤におけるマグネシウム、ナトリウム、鉄、カルシウムなどがプラス電荷を帯びた性質を含有する栄養素となっており、第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3の双方を同時に散布するようにして、ナノバブル液剤1を適用対象4の植物に適用して、植物の水耕栽培に用いると、植物の根における根毛はマイナス電荷を有するので、第2のナノバブル水3のプラス電荷の添加剤が植物の根毛のマイナス電荷に静電相互作用もしくは静電的相互作用で吸着され、その添加剤の栄養素が植物の根毛に集積されて植物の水耕栽培における植物の生育促進を提供することができる。一方、その過程において、第1のナノバブル水はマイナスに帯電しているので、第2のナノバブル水3の添加剤のプラス電荷は第1のナノバブル水にも吸着されるが、その吸着に影響されて、植物の根毛との静電相互作用もしくは静電的相互作用が促進される。このように、ナノバブル液剤1は、適用対象4の植物の水耕栽培に適用することにより、第1のナノバブル水2の前記作用と第2のナノバブル水3に混合されたプラス電荷を帯びた添加剤の前記作用により植物の水耕栽培として利用することができる。この場合、第1のナノバブル水2と第2のナノバブル水3との配合量を適用対象4に応じて調整することについては、植物の根毛に栄養素が添加され集積されやすくすることを考慮すると、第2のナノバブル水3を多くするように運用する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のナノバブル液剤は、帯電したナノバブル水により、歯周病の治療や植物の水耕栽培や盆栽など種々の用途に有用である。
【符号の説明】
【0021】
1 ナノバブル液剤
2 第1のナノバブル水
3 第2のナノバブル水
4 適用対象
図1