(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】電源システム及び電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20241206BHJP
H02J 3/04 20060101ALI20241206BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20241206BHJP
H02H 7/26 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/04
H02J9/06 120
H02H7/26 H
(21)【出願番号】P 2022135039
(22)【出願日】2022-08-26
【審査請求日】2024-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-146331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/04
H02J 9/06
H02H 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記機械式スイッチを制御するスイッチ制御部と、
前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と、
前記電力変換器を制御する電力変換器制御部と、
前記電力系統の異常を検出した場合に、前記機械式スイッチの開放指令を前記スイッチ制御部に出力する異常検出部と
、
前記機械式スイッチに流れる電流を測定し、その測定値を前記電力変換器制御部に出力するスイッチ電流測定部とを備え、
前記電力変換器制御部は、前記開放指令の出力に伴って、前記機械式スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、前記電流遮断制御の後に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行
い、
前記電流遮断制御において、前記機械式スイッチに流れる電流を0とする指令値と前記測定値との偏差に基づいて、比例ゲインを用いた比例制御を前記電力変換器に対して行う、電源システム。
【請求項2】
前記電力変換器制御部は、前記機械式スイッチに流れる電流を0とするように、前記電力変換器における電圧の目標値である電圧目標値を算出し、
前記電圧目標値を所定の範囲内に制限するリミッタ部をさらに備える、請求項
1記載の電源システム。
【請求項3】
前記スイッチ制御部は、前記機械式スイッチの開放が完了した場合に、前記電力変換器制御部に対し、前記機械式スイッチの開放完了を示す開放完了信号を出力し、
前記電力変換器制御部は、前記開放完了信号の出力を受けて、前記電流遮断制御から前記電圧補償制御に切り替える、請求項
1又は2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記電力変換器制御部は、前記開放指令を受けてから所定の時間経過後に、前記電流遮断制御から前記電圧補償制御に切り替える、請求項
3に記載の電源システム。
【請求項5】
電力系統の正常時に当該電力系統から負荷に給電し、前記電力系統の異常時に前記電力系統から前記負荷への給電を遮断するととともに、蓄電部から前記負荷に給電する電源システムの制御方法であって、
前記電源システムは、前記電力系統から前記負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と
、
前記機械式スイッチに流れる電流を測定するスイッチ電流測定部とを備えるものであり、
前記電力系統の異常を検出した場合に、前記機械式スイッチの開放指令を出力し、
前記開放指令の出力に伴って、前記機械式スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、前記電流遮断制御の後に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行
い、
前記電流遮断制御において、前記機械式スイッチに流れる電流を0とする指令値と前記スイッチ電流測定部により測定された測定値との偏差に基づいて、比例ゲインを用いた比例制御を前記電力変換器に対して行う、電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及び電源システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電源システムでは、電力系統の異常が発生した場合、電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられた遮断器を開放することによって、電力系統から負荷への給電を遮断している。そして、電力系統から負荷への遮断の完了後に、負荷側に接続された分散型電源が負荷へと給電することによって、負荷の電圧を補償している。
【0003】
この種の電源システムでは、遮断器の開放を補助するために、例えば、特許文献1に示すように、遮断器と並列に接続された転流回路をさらに備える電源システムが提案されている。この電源システムでは、電力系統の異常を検出した場合、遮断器を開放すると同時に転流回路を投入し、転流回路は、遮断器を流れる事故電流に高調波電流を重畳し、事故電流の電流ゼロ点を形成している。その結果、電流ゼロ点が強制的に形成されるので、遮断器は短時間で開放され、電力系統から負荷が遮断される。その後、分散型電源が負荷へと給電し、負荷の電圧を補償する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記の電源システムでは、遮断器の開放を補助する場合に転流回路を用いている一方、遮断器の開放後に負荷の電圧を補償する場合に分散型電源を用いている。すなわち、この種の電源システムでは、遮断器の開放を補助する装置と、遮断器の開放後に負荷の電圧を補償する装置とが異なるので、電源システムの構成が複雑になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、遮断器の開放を補助する装置と、遮断器の開放後に負荷の電圧を補償する装置とを共通にして、電源システムの構成を簡単にすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る電源システムは、電力系統から負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記機械式スイッチを制御するスイッチ制御部と、前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器と、前記電力変換器を制御する電力変換器制御部と、前記電力系統の異常を検出した場合に、前記機械式スイッチの開放指令を前記スイッチ制御部に出力する異常検出部とを備え、前記電力変換器制御部は、前記開放指令の出力に伴って、前記機械式スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、前記電流遮断制御の後に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行うものである。
【0008】
このような電源システムであれば、電流遮断制御では、電力変換器制御部によって制御された電力変換器が、機械式スイッチに流れる電流を0とするように電力線への給電を行う。また、電圧補償制御では、電力変換器制御部によって制御された電力変換器が、負荷の電圧を補償するように電力線への給電を行う。すなわち、機械式スイッチの開放を補助するための給電を行う装置、及び、負荷の電圧を補償するための給電を行う装置とが、電力変換器によって共通になるので、電源システムの構成を簡単にすることができる。
また、電力変換器制御部は、機械式スイッチに流れる電流を0とするように電力変換器をフィードバック制御するので、機械式スイッチに流れる電流の電流ゼロ点が強制的に形成される。したがって、機械式スイッチをより速く開放することができるので、電力系統から負荷をより速く遮断することができる。
【0009】
前記電力変換器制御部は、前記機械式スイッチに流れる電流を測定し、その測定値を前記電力変換器制御部に出力するスイッチ電流測定部をさらに備え、前記電力変換器制御部は、前記機械式スイッチに流れる電流を0とする指令値と前記測定値との偏差に基づいて前記電力変換器を比例制御することが好ましい。
この電力変換器制御部であれば、機械式スイッチに流れる電流を0にする指令値と測定値との偏差に応じて比例制御を行うので、機械式スイッチに流れる電流の電流ゼロ点を強制的に形成することができ、機械式スイッチをより短時間で開放することができる。
【0010】
前記電力変換器制御部は、前記機械式スイッチに流れる電流を0とするように、前記電力変換器における電圧の目標値である電圧目標値を算出し、前記電圧目標値を所定の範囲内に制限するリミッタ部をさらに備えることが望ましい。
この電力変換器制御部であれば、リミッタ部が電圧目標値を所定の範囲内に制限するので、電力変換器から電力線へと給電する場合に、電力線に過大な電力を供給することを防ぐことができ、電力変換器の過電流を防止することができる。
【0011】
前記スイッチ制御部は、前記機械式スイッチの開放が完了した場合に、前記電力変換器制御部に対し、前記機械式スイッチの開放完了を示す開放完了信号を出力し、前記電力変換器制御部は、前記開放完了信号の出力を受けて、前記電流遮断制御から前記電圧補償制御に切り替えることが挙げられる。
このような構成であれば、開放完了信号の出力によって、電力系統から負荷が完全に遮断された状態となり、この状態において、電力変換器制御部は、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替えることとなる。そして、電力変換器制御部が電圧補償制御を行い、電力変換器が負荷へと給電をするので、負荷の電圧を確実に補償することができる。
【0012】
前記電力変換器制御部は、前記開放指令が出力されてから所定の時間経過後に、前記電流遮断制御から前記電圧補償制御に切り替えることが挙げられる。
このような構成であれば、開放指令が出力されてから所定の時間経過後に電圧補償制御に切り替えるので、スイッチ制御部による開放完了信号に不具合が生じた場合であっても、確実に電圧補償制御を開始することができる。例えば、スイッチ制御部が故障して開放完了信号が出力されない場合、又は、開放完了信号が出力されて電力変換器制御部へ到達するまでに遅れが生じた場合でも、電力変換器制御部は、開放指令が出力されてから所定の時間経過後に、電流遮断制御から電圧補償制御に切り替えることができる。
【0013】
また、本発明に係る電源システムの制御方法としては、電力系統の正常時に当該電力系統から負荷に給電し、前記電力系統の異常時に前記電力系統から前記負荷への給電を遮断するととともに、蓄電部から前記負荷に給電する電源システムの制御方法であって、前記電源システムは、前記電力系統から前記負荷に給電するための電力線に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記電力線に接続され、蓄電部の直流電力を交流電力に変換して前記電力線に給電する電力変換器とを備えるものであり、前記電力系統の異常を検出した場合に、前記機械式スイッチの開放指令を出力し、前記開放指令の出力に伴って、前記機械式スイッチに流れる電流を0とするように前記電力変換器をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、前記電流遮断制御の後に、前記負荷の電圧を補償するように前記電力変換器を制御する電圧補償制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、遮断器の開放を補助する装置と、遮断器の開放後に負荷の電圧を補償する装置とを共通にして、電源システムの構成を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態における電源システムの構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態における制御ブロックを示す模式図である。
【
図3】同実施形態におけるリミッタ部の条件を示す模式図である。
【
図4】同実施形態における電流遮断制御及び電圧補償制御を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る電源システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し、又は、誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0017】
<1.装置構成>
本実施形態における電源システム100は、
図1に示すように、電力系統10と負荷20との間に設けられ、三相回路を構成するものである。この電源システム100は、電力系統10の正常時に電力系統10から負荷20に給電し、電力系統10の短絡事故等により生じる電力系統10の異常時に電力系統10から負荷20への給電を遮断して、蓄電部7から負荷20に給電する。なお、本実施形態における電源システム100は、三相回路であるが、一相であってもよく、相の数は特に限定されない。
【0018】
具体的に電源システム100は、電力系統10から負荷20への給電を開閉によって切り替える機械式スイッチ3と、電力系統10に生じる電圧を測定する電圧測定部4と、機械式スイッチ3に流れる電流を測定するスイッチ電流測定部5と、電力系統10の異常を検出する異常検出部6と、蓄電部7の直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電する電力変換器8と、機械式スイッチ3及び電力変換器8を制御する制御装置9とを備える。
【0019】
機械式スイッチ3は、電力系統10から負荷20に給電するための電力線L1に設けられ、機械的な動作で電力線L1の開閉を切り替えるものである。機械式スイッチ3は、端子間の接続及び切断を切り替えることによって、電力系統10から負荷20への給電の供給及び遮断を切り替える。機械式スイッチ3は、電力系統10の異常が発生した場合に、電力系統10から負荷20への給電をより速く遮断するために、電力系統10よりも負荷20側に設けられることが好ましいが、これに限定されない。
【0020】
電圧測定部4は、電力系統10に生じる電圧を測定し、その測定された電圧を異常検出部6に出力するものである。具体的に電圧測定部4は、
図1に示すように、系統変圧器41を介して電力線L1に接続されており、電力系統10の電圧をより速く測定することができるように、機械式スイッチ3よりも電力系統10側の電圧を測定している。
【0021】
スイッチ電流測定部5は、機械式スイッチ3に流れる電流を測定し、その測定値Iを制御装置9に出力するものである。具体的にスイッチ電流測定部5は、
図1に示すように、電力線L1に設けられ、機械式スイッチ3よりも電力系統10側の電流を測定している。より詳細には、スイッチ電流測定部5は、
図1に示すように、電力変換器8と電力線L1との接続点の間に設けられ、機械式スイッチ3に直列、かつ、電力変換器8と並列に接続される。
【0022】
異常検出部6は、電力系統10の異常を検出した場合に、機械式スイッチ3を開放させる開放指令Cを出力するものである。本実施形態において、異常検出部6は、電圧測定部4が測定した電圧に基づいて、電力系統10の異常を検出する。具体的に異常検出部6は、複数サイクルに亘って系統電圧が整定値未満となった場合に、電力系統10の異常と判断する。なお、本実施形態の整定値は、瞬低又は停電を検出するための電圧値である。
【0023】
蓄電部7は、例えば、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)である。この蓄電部7は、直流電力を貯蔵しており、電力系統10の異常が検出された場合、蓄電部7に貯蔵された直流電力は、電力変換器8へと給電される。
【0024】
電力変換器8は、注入トランスTを介して電力線L1に接続されており、蓄電部7の直流電力を交流電力に変換して電力線L1に給電するものである。具体的に電力変換器8は、
図1に示すように、電力線L1において、機械式スイッチ3と並列に接続されている。
【0025】
また、電力変換器8の具体的な構成は、蓄電部7からの直流電力を交流電力に変換するインバータ81と、インバータ81の出力側に直列に接続され、交流電流を安定化させる連系リアクトル82と、連系リアクトル82に接続され、電圧を安定化させるコンデンサ83とである。なお、連系リアクトル82及びコンデンサ83は、蓄電部7の直流電力を整流するために、インバータ81の入力側に接続されてもよい。
【0026】
制御装置9は、電力系統10の異常が発生した場合に、機械式スイッチ3及び電力変換器8を制御するものである。制御装置9は、機械式スイッチ3を制御するスイッチ制御部91と、電力変換器8を制御する電力変換器制御部92とを備える。
【0027】
スイッチ制御部91は、機械式スイッチ3のオンとオフとを切り替える制御を行うものである。本実施形態において、スイッチ制御部91は、異常検出部6によって出力された開放指令Cを受けて、機械式スイッチ3を開放する制御を行う。機械式スイッチ3の開放が完了した場合、スイッチ制御部91は、電力変換器制御部92に対し、機械式スイッチ3の開放完了を示す開放完了信号Sを出力する。
【0028】
そして、電力変換器制御部92は、異常検出部6が出力した開放指令Cに伴って、機械式スイッチ3に流れる電流を0とするように電力変換器8をフィードバック制御する電流遮断制御を行い、電流遮断制御の後に、負荷20の電圧を補償するように電力変換器8を制御する電圧補償制御を行うものである。具体的に電力変換器制御部92は、
図2に示すように、電流遮断制御を行う電流遮断制御部921と、電流遮断制御部921による制御を所定の範囲内に制限するリミッタ部922と、電圧補償制御を行う電圧補償制御部923と、電流遮断制御部921又は電圧補償制御部923による出力に基づいて、電力変換器8を制御する出力制御部924とを備える。
【0029】
電流遮断制御部921は、開放指令Cの出力に伴って、機械式スイッチ3に流れる電流を0とするように電力変換器8をフィードバック制御する電流遮断制御を行うものである。本実施形態において、電流遮断制御部921は、
図2に示すように、スイッチ電流測定部5が出力した測定値Iと、機械式スイッチ3に流れる電流を0とする指令値Irefとの偏差ΔIに基づいて、比例ゲインKpを用いた比例制御を行い、電力変換器8における電圧の目標値である電圧目標値Voutを算出する。なお、本実施形態において、比例ゲインKpは、(1)式を満足している。
Kp≧V
2/S(V:定格電圧、S:電力変換器8の定格容量) (1)
【0030】
リミッタ部922は、電流遮断制御部921に備えられ、電圧目標値Voutを、(2)式で表される最大電圧Vmaxの範囲内となるように制御するものである。リミッタ部922は、電圧目標値Voutと最大電圧Vmaxとを比較し、電圧目標値Voutが最大電圧Vmaxの範囲内の場合、リミッタ部922は、電圧目標値Voutを出力制御部924に出力する。一方、電圧目標値Voutが最大電圧Vmaxの範囲を超えている場合、リミッタ部922は、最大電圧Vmaxを出力制御部924に出力する。なお、インピーダンスZは、
図3に示すように、連系リアクトル82、コンデンサ83、及び、注入トランスTによって構成される。
Vmax=Imax×Z(Imax:最大電流、Z:インピーダンス) (2)
【0031】
電圧補償制御部923は、電流遮断制御によって低下した負荷20の電圧を補償するように電力変換器8を制御するものである。具体的には、
図2に示すように、電圧補償制御部923は、電圧測定部4が測定した電圧Vと電圧指令値Vrefとの偏差に基づいて、負荷20の電圧を補償する電圧補償値を算出し、電力変換器8をフィードバック制御する。
【0032】
出力制御部924は、電流遮断制御部921又は電圧補償制御部923による出力を受けて、電力変換器8に所定の電圧が生じるように制御するものである。具体的に出力制御部924は、電流遮断制御部921が算出した電圧目標値Vout又は最大電圧Vmaxに基づいて、電力変換器8を制御する。また、出力制御部924は、電圧補償制御部923が算出した電圧補償値に基づいて、電力変換器8を制御する。
【0033】
さらに、出力制御部924は、開放完了信号Sを受けて、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替える切替信号を電流遮断制御部921及び電圧補償制御部923に出力する。一方、出力制御部924が開放完了信号Sを受けるよりも先に、開放指令Cの出力から所定の時間が経過した場合、出力制御部924は、切替信号を電流遮断制御部921及び電圧補償制御部923に出力する。なお、ここで言う所定の時間とは、例えば開放指令Cが出力されてから2msの時間を言うが、この値に限られない。
【0034】
<2.電源システムの制御動作>
次に電源システム100の制御動作について説明する。
【0035】
(1)電力系統10の正常時
電圧測定部4は、電力系統10の電圧を常時測定しており、その測定した電圧を異常検出部6に入力している。異常検出部6は、電圧測定部4が測定した電圧と予め定められた整定値とを比較する。
【0036】
電力系統10が正常の場合には、電圧測定部4が測定した電圧は整定値以上であり、機械式スイッチ3は閉じた状態となる。これにより、電力系統10から負荷20に交流電力が供給される。
【0037】
(2)電力系統10の異常時
電力系統10が異常の場合には、電圧測定部4が測定した電圧は整定値未満となる。このとき、異常検出部6は、機械式スイッチ3を開放するように指令する開放指令Cを制御装置9に出力する。
【0038】
開放指令Cに伴って、電力変換器制御部92が、電力変換器8に対して電流遮断制御を行い、電力変換器8は、蓄電部7からの直流電力を交流電力に変換して、電力線L1に給電する。この交流電力は、機械式スイッチ3に流れる電流を0とするように給電されるので、機械式スイッチ3に流れる電流では、強制的に電流ゼロ点が形成される。電流ゼロ点が形成されると、スイッチ制御部91は、図示しない駆動回路を介して、機械式スイッチ3を開放させる。
【0039】
機械式スイッチ3が開放されて、スイッチ制御部91が開放完了信号Sを出力すると、出力制御部924は、電流遮断制御から電圧補償制御へと切り替える切替信号を電流遮断制御部921及び電圧補償制御部923に対し出力する。なお、開放完了信号Sが出力されるよりも前に、開放指令Cの出力から所定の時間が経過した場合、出力制御部924は、切替信号を強制的に出力する。
【0040】
出力制御部924からの切替信号を受けて、電流遮断制御部921は、電流遮断制御を終了する。一方、電圧補償制御部923は、電流遮断制御によって低下した負荷20の電圧を補償するように電力変換器8を制御する。その結果、
図4に示すように、負荷20の電圧は、電流遮断制御から電圧補償制御へ切り替わった初期では低下しているが、電圧補償制御によって、低下分の電圧が電力変換器8から負荷20へと給電される。そして、負荷20の電圧が補償された後、電力系統10の電圧が回復する。
【0041】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、電力変換器制御部92の制御によって、電力変換器8が機械式スイッチ3及び負荷20への給電を行うので、機械式スイッチ3の開放を補助する装置と、機械式スイッチ3の開放後に負荷20の電圧を補償する装置とを、電力変換器8によって共通にすることができる。
【0042】
また、電力変換器制御部92は、電流遮断制御の際に、機械式スイッチ3に流れる電流を0とするように電力変換器8をフィードバック制御するので、機械式スイッチ3に流れる電流において、強制的に電流ゼロ点を形成することができる。その結果、機械式スイッチ3をより速く開放することができるので、電力系統10から負荷20への給電をより速く遮断することができる。
【0043】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0044】
本実施形態における異常検出部6は、系統電圧の変化に基づいて電力系統10の異常を検出するものであったが、異常の検出はこれに限られない。例えば、異常検出部6は、電力系統10における電流又は周波数の変化に基づいて、電力系統10の異常を検出するものであってもよい。これに伴い、異常検出部6の整定値は、電力系統10の電圧値に限られず、電力系統10における電流値又は周波数であってもよい。
【0045】
本実施形態における出力制御部924は、開放完了信号Sの出力よりも先に開放指令Cが出力されてから所定の時間が経過した場合、強制的に電流遮断制御から電圧補償制御に切り替えるものであったが、開放指令Cの出力された時間を始点としなくともよい。例えば、電力系統10の異常を検出した時間、電流遮断制御部921が制御を開始した時間、もしくは機械式スイッチ3に流れる電流の測定値Iが0になった時間のいずれかの時間を始点として、その始点とした時間から所定の時間経過後に、出力制御部924が、強制的に電流遮断制御から電圧補償制御に切り替えるものであってもよい。
【0046】
本実施形態において、電力系統10から負荷20への給電は、交流電力としていたが、電力系統10から負荷20への給電は、直流電力としてもよい。
【0047】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
100・・・電源システム
10 ・・・電力系統
20 ・・・負荷
3 ・・・機械式スイッチ
4 ・・・電圧測定部
5 ・・・スイッチ電流測定部
6 ・・・異常検出部
7 ・・・蓄電部
8 ・・・電力変換器
9 ・・・制御装置
91 ・・・スイッチ制御部
92 ・・・電力変換器制御部
L1 ・・・電力線
C ・・・開放指令
S ・・・開放完了信号