(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】光モジュール、光モジュールの製造装置、および、光モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/30 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
G02B6/30
(21)【出願番号】P 2021069715
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 淳一
(72)【発明者】
【氏名】古田 寛和
(72)【発明者】
【氏名】白石 竜朗
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06526204(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0235388(US,A1)
【文献】特開2015-129795(JP,A)
【文献】特開2004-157304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に対向する対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通する
貫通穴と貫通路が形成されている光ファイバブロックと、
前記光ファイバブロックを貫通するように配置されている光ファイバと、
前記光ファイバブロックを前記基板に固定する接着剤層と、を備え、
前記光ファイバは前記貫通穴に配置される一方で、前記貫通路に配置されず、
前記光ファイバの基板側端と前記基板との間には、前記貫通路に連通するガス層が形成されている、
光モジュール。
【請求項2】
前記光ファイバブロックには、前記対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通し、前記ガス層に連通する第2貫通路が形成されており、
前記光ファイバは、前記貫通路と前記第2貫通路で挟まれる位置に配置されて
おり、
前記光ファイバは前記第2貫通路に配置されていない、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光ファイバブロックを貫通するように配置されている第2光ファイバをさらに備え、
前記第2光ファイバは、前記貫通路と前記第2貫通路で挟まれる位置に配置されている、
請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記接着剤層と前記ガス層との境界は、前記貫通路と前記対向面の縁との間に位置する、
請求項2または3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記光ファイバブロックは、複数の溝が形成されたホルダと、前記複数の溝の1つに配置された前記光ファイバを前記ホルダとともに挟み込むリッドとを有しており、
前記貫通路は、
前記ホルダに形成された溝であって、前記光ファイバが配置された溝とは別の溝と前記リッドの前記ホルダ側の面とにより形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記複数の溝は互いに同じ形状である、
請求項5に記載の光モジュール。
【請求項7】
基板に対向する対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通する貫通路が形成され、かつ、光ファイバを保持する光ファイバブロックの前記貫通路を介して、前記基板に向けてガスを供給するガス供給部と、
前記基板と前記光ファイバブロックとに接するように接着剤を供給する接着剤供給部と、
前記接着剤を硬化させることで、前記基板に前記光ファイバブロックを固定する硬化部と、
を備える、光モジュールの製造装置。
【請求項8】
前記光ファイバブロックには、前記対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通する第2貫通路が形成されており、
前記ガス供給部は、前記貫通路および前記第2貫通路を介してガスを供給する、
請求項7に記載の光モジュールの製造装置。
【請求項9】
前記硬化部は、前記ガス供給部がガスを供給している間に、前記接着剤を硬化させる、
請求項7または8に記載の光モジュールの製造装置。
【請求項10】
前記ガス供給部は、1Pa以上1.0MPa以下の圧力でガスを供給する、
請求項7から9のいずれか一項に記載の光モジュールの製造装置。
【請求項11】
基板に対向する対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通する貫通路が形成され、かつ、光ファイバを保持する光ファイバブロックの前記貫通路を介して、前記基板に向けてガスを供給し、
前記基板と前記光ファイバブロックとに接するように接着剤を塗布し、
前記接着剤を硬化させる、
光モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記光ファイバブロックには、前記対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通する第2貫通路が形成されており、
前記光ファイバは、前記貫通路と前記第2貫通路で挟まれる位置に配置されており、
前記第2貫通路を介してガスを供給する、
ことをさらに備える、請求項11に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記接着剤の硬化は、前記貫通路を介してガスが供給されている間に行われる、
請求項11または12に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項14】
ガスの供給は、1Pa以上1.0MPa以下の圧力で行われる、
請求項11から13のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、高速通信、大容量通信、および、センシングの分野において、光の活用が検討されている中で、シリコンフォトニクスが注目されている。シリコンフォトニクスは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスでシリコン基板上に光回路を形成する技術である。
【0002】
シリコンフォトニクスにより形成される光回路は、光制御機能を有する微細なサイズの回路である。光回路は、光入出力部、および、光変調器を有する。光入出力部、および、光変調器は、互いに導波路で接続されている。この導波路は、サブミクロンオーダーの径を有する細線の導波路である。
【0003】
この導波路に対して、光ファイバ等の外部伝送体を高い精度で接続するために、様々な光インターフェースの開発が盛んに行われている。
【0004】
通常、基板上の導波路に対する光ファイバの接続(Fiber-to-Chip接続)を行う方法として、基板の接続端面と1以上の光ファイバを束ねる光ファイバブロックの接続端面とを接着剤を介して接続する方法が採用されている。
【0005】
この方法を採用して基板に光ファイバブロックを固定する場合、光ファイバから基板に対して出射されるレーザ光が、光ファイバと基板との間の接着剤の層を通過する。接着剤の層はレーザ光によって化学的に変化するので、導波路に対するレーザ光の入射量が小さくなる。すなわち、接続ロスが生じる。この接続ロスは、レーザ光が出力されてから経時的に大きくなることが知られており、レーザ光の出力が大きいほど接続ロスが生じやすい。
【0006】
そこで、基板に対して光ファイバと基板との間、つまり、レーザ光が通過する箇所に接着剤が配置されないように光ファイバブロックを接続する必要がある。
【0007】
しかながら、光ファイバブロックを基板に固定する際、光ファイバブロックの側面のみに接着剤を塗布したとしても、接着剤が毛細管現象により光ファイバブロックと基板との間に侵入し、光ファイバと基板との間に達してしまう。
【0008】
特許文献1には、堰き止め用溝を光ファイバブロックまたは基板に形成することで、光ファイバと基板との間への接着剤の侵入を防止することが開示されている。なお、堰き止め用溝は、光ファイバを挟み込むように位置し、かつ、光ファイバの配列方向および光の進行方向に対して垂直方向に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光ファイバブロックのサイズが微細である場合、特許文献1の堰き止め用溝の形成加工は困難である。また、基板には精密素子が配置されているので、基板に対する溝形成加工は慎重かつ精密に行う必要がある。すなわち、光ファイバブロック、および、基板のいずれに対しても溝形成加工を施すのは困難である。
【0011】
本開示は、接続ロスを抑制できる光モジュール、光モジュールの製造装置、および、光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係る光モジュールは、基板と、前記基板に対向する対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通する貫通路が形成されている光ファイバブロックと、前記光ファイバブロックを貫通するように配置されている光ファイバと、前記光ファイバブロックを前記基板に固定する接着剤層と、を備え、前記光ファイバの基板側端と前記基板との間には、前記貫通路に連通するガス層が形成されている。
【0013】
本開示の一態様に係る光モジュールの製造装置は、基板に対向する対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通する貫通路が形成され、かつ、光ファイバを保持する光ファイバブロックの前記貫通路を介して、前記基板に向けてガスを供給するガス供給部と、前記基板と前記光ファイバブロックとに接するように接着剤を供給する接着剤供給部と、前記接着剤を硬化させることで、前記基板に前記光ファイバブロックを固定する硬化部と、を備える。
【0014】
本開示の一態様に係る光モジュールの製造方法は、基板に対向する対向面から前記対向面とは異なる面にかけて貫通する貫通路が形成され、かつ、光ファイバを保持する光ファイバブロックの前記貫通路を介して、前記基板に向けてガスを供給し、前記基板と前記光ファイバブロックとに接するように接着剤を塗布し、前記接着剤を硬化させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、接続ロスを抑制できる光モジュール、光モジュールの製造装置、および、光モジュールの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る光モジュールの概略を示す断面図
【
図2】実施形態に係る光モジュールの光ファイバアレイを示す分解斜視図
【
図3】実施形態に係る光モジュールの製造装置の概略を示す斜視図
【
図4】実施形態に係る光モジュールの製造装置が実行する光モジュールの製造プロセスを示すフローチャート
【
図5】製造装置が実行するガス供給について説明する図
【
図8】変形例に係る光モジュールの概略を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。図面に示されている構成部材の形状、および、寸法は、実際の構成部材の形状、および、寸法とそれぞれ異なる。さらに、本開示の各構成部材の材料は、本実施形態に記載されているものに限定されない。なお、図面中のx軸、y軸、および、z軸は、互いに直交し、右手座標系を構成する。
【0018】
<光モジュール>
図1は、実施形態に係る光モジュール1の概略を示す断面図である。光モジュール1は、後述する光モジュール1の製造装置100(
図3参照)により製造される実装基板である。
【0019】
光モジュール1は、基板10、光ファイバブロック20、光ファイバ51、および、接着剤層60を備えている。
【0020】
基板10には、その表面11に導波路(不図示)および光回路(不図示)が配置されている。光回路は、例えば、フォトリソグラフィによるパターニングによって表面11に形成される。基板10は、石英、または、シリコンなどの物質で形成されている。
【0021】
光ファイバブロック20は、基板10に光を入力するための部品であり、光ファイバ51を保持する。光ファイバブロック20は、接着剤層60を介して基板10に固定されている。
【0022】
光ファイバブロック20は、対向面31、および、面36を有している。対向面31は、基板10の表面11に対向する面である。
【0023】
光ファイバブロック20の対向面31は、例えば、CMP(chemical mechanical polishing)等の工法を利用して研磨されている。研磨されている理由は、光ファイバ51から出射される光が基板10に対して所定の角度で入射するように光ファイバブロック20を傾けたときに、基板10の表面11に対して対向面31を平行にするためである。
【0024】
面36は、光ファイバブロック20における対向面31の反対側にある面である。
【0025】
図2は、光ファイバブロック20を示す分解斜視図である。光ファイバブロック20は、ホルダ30およびリッド40を備えている。ホルダ30は、溝形成面38に複数の溝35が形成されている部材である。
【0026】
複数の溝35は、一列に並んでおり、各溝35は、対向面31から面36(
図1参照)にかけて延在している。複数の溝35のうちの中央に位置する溝35には、光ファイバ51が対向面31から面36にかけて配置される。中央の溝35以外の溝35には、光ファイバは配置されない。
【0027】
複数の溝35は、互いに同じ形状である。溝35の形状は、溝の幅寸法が溝の底部に向かうほど短くなる形状である。本実施形態では、溝35の形状は、対向面31に三角形状の切り欠きを形成する形状である。
【0028】
溝35の深さは、1μm程度である。溝35の1つの側面と、該側面に対向する溝35の側面との開き角度は、1度以上180度未満である。
【0029】
なお、溝35の形状は、幅寸法が溝の底部に向かうほど短ければよく、対向面31を見たときに当該底部が直線を描く形状であってもよいし、曲線を描く形状であってもよい。
【0030】
溝35は、切削加工またはフォトリソグラフィによるパターニングによってホルダ30の溝形成面38に形成される。
【0031】
ホルダ30は、石英、または、シリコンなどの物質で形成されている。
【0032】
リッド40は、光ファイバ51をホルダ30とともに挟み込む部材である。
図2の41は、リッド40のホルダ30側の面である。リッド40は、ホルダ30側の面41が、ホルダ30の溝形成面38に合わせられることで、光ファイバ51をホルダ30とともに挟み込むことができる。これにより、光ファイバ51が光ファイバブロック20によって保持される。
【0033】
リッド40は、石英、または、シリコンなどの物質で形成されている。
【0034】
図1に示されているように、光ファイバブロック20には、複数の溝35とリッド40のホルダ30側の面41とにより、貫通穴32、貫通路33、および、第2貫通路34が形成される。本実施形態において、貫通穴32、貫通路33、および、第2貫通路34は、対向面31から面36にかけて貫通している。
【0035】
貫通穴32は、光ファイバ51を通す穴である。貫通穴32は、貫通路33と第2貫通路34で挟まれる位置に位置する。貫通路33、および、第2貫通路34は、基板10に向けてガスを供給するときに利用される穴である。上述したように、本実施形態では、ホルダ30の溝35の形状は互いに同じなので、貫通穴32、貫通路33、および、第2貫通路34の形状は互いに同じである。
【0036】
光ファイバ51は、シングルモードファイバ、マルチモードファイバ、石英ファイバ、または、プラスチックファイバ等の光を伝送する媒体である。光ファイバ51は、光ファイバブロック20を貫通するように配置されている。
【0037】
接着剤層60は、接着剤が硬化されることで形成される層である。接着剤層60は、光ファイバブロック20を基板10に固定する。接着剤の成分は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルエポキシ樹脂、または、シリコン樹脂などの光硬化性の樹脂である。
【0038】
光ファイバブロック20と基板10との間には、ガス層80が形成されている。ガス層80は、貫通穴32、貫通路33、および、第2貫通路34に連通している。よって、光ファイバ51の基板側端511は、ガス層80を介して基板10の表面11に接続される。
【0039】
接着剤層60とガス層80との境界90は、貫通路33と対向面31の縁37との間、および、第2貫通路34と対向面31の縁37との間に位置する。より正確には、光ファイバブロック20と基板10との間において、境界90が、貫通路33から所定距離対向面31の縁37寄り、かつ、第2貫通路34から所定距離対向面31の縁37寄りとなるように、ガス層80が形成されている。
【0040】
ガス層80は、乾燥空気により形成されている。なお、ガス層80は、窒素、または、アルゴン、もしくは、それらの混合気体により形成されていてもよい。
【0041】
<光モジュールの製造装置>
以下、実施形態に係る光モジュール1の製造装置100について説明する。
図3は、実施形態に係る光モジュール1の製造装置100の概略を示す斜視図である。
【0042】
製造装置100は、ステージ101、基板調整装置102、光ファイバ調心機構103、受光部104、光測定装置(不図示)、受光部調心機構105、ガス供給部106、接着剤供給部107、硬化部108、および、制御装置109を備えている。
【0043】
ステージ101は、基板10が固定される台である。ステージ101は基板10を固定できる部材であればよい。ステージ101には、基板10をステージ101に吸着させるための吸着穴が形成されていてもよい。この場合、吸引装置(不図示)が、吸着穴を介して基板10を吸引することで基板10をステージ101に密着させる。
【0044】
基板調整装置102は、制御装置109の制御の下、ステージ101を移動させることで、ステージ101上の基板10の位置を調整する装置である。基板調整装置102は、例えば、直動ステージを備えていてもよい。また、基板調整装置102は、カメラ等の撮像機器を備えていてもよい。基板調整装置102が撮像機器を備える場合、基板調整装置102は、制御装置109による制御の下、撮像機器による撮像結果に基づいて基板10の位置を調整してもよい。
【0045】
基板調整装置102は、後述するアライメント動作(調心動作)が実行されるうえで適した位置(以下、基準位置と称す。)に基板10が配置されるように、基板10の位置を調整する。この基準位置は、光ファイバ調心機構103による光ファイバブロック20の可動域に応じて決定される。
【0046】
光ファイバ調心機構103は、制御装置109の制御の下、光ファイバブロック20の位置および姿勢を調整する機構である。光ファイバ調心機構103は、第1保持部材103aおよび第1可動ステージ(不図示)を備えている。
【0047】
第1保持部材103aは、光ファイバ51を保持する。第1可動ステージは、光ファイバブロック20を移動させるステージであり、例えば、リニアボールガイドに沿って移動する直動ステージ、および、ゴニオステージなどのステージが複数組み合わされている。
【0048】
光ファイバ調心機構103は、互いに直交する3つの軸に沿う方向に光ファイバブロック20を移動させることができる。また、光ファイバ調心機構103は、互いに直交する3つの軸周りに光ファイバブロック20を傾けることができる。本実施形態では、3つの軸は、x軸、y軸、および、z軸である。
【0049】
なお、光ファイバ調心機構103は、光ファイバブロック20を傾けることができず、光ファイバブロック20を1軸方向に移動するように構成されていてもよい。また、光ファイバ調心機構103は、光ファイバブロック20を移動させることができず、光ファイバブロック20を1軸周りに傾けるように構成されていてもよい。
【0050】
本実施形態の光ファイバ調心機構103は、3つの軸方向に光ファイバブロック20を移動させることができるとともに、3つの軸周りに光ファイバブロック20を傾けることができるので、光ファイバブロック20の位置および姿勢を自在に調整できる。よって、基板10に対する光ファイバブロック20の位置および姿勢調整の精度が高くなるので、基板10に光を入力するときの光の伝達効率が向上するとともに、製造される光モジュール1の品質を高めることができる。
【0051】
受光部104は、例えば、光ファイバである。受光部104は、光ファイバ51から出射される光に応じて基板10の光回路から出射される光を受光し、受光した光を光検出装置に出力する。
【0052】
光測定装置は、光の強度を測定する装置であり、受光部104が受光した光の強度を測定し、測定結果を制御装置109に出力する。
【0053】
受光部調心機構105は、制御装置109の制御の下、受光部104の位置および姿勢を調整する機構である。受光部調心機構105は、第2保持部材および第2可動ステージを備えている。
【0054】
第2保持部材は、受光部104を保持する。第1可動ステージは、受光部104を移動させるステージであり、例えば、リニアボールガイドに沿って移動する直動ステージ、および、ゴニオステージなどのステージが複数組み合わせられている。
【0055】
受光部調心機構105は、互いに直交する3つの軸に沿う方向に受光部104を移動させることができる。また、受光部調心機構105は、互いに直交する3つの軸(x軸、y軸、および、z軸)周りに受光部104を傾けることができる。
【0056】
なお、受光部調心機構105は、受光部104を傾けることができず、受光部104を1軸方向に移動するように構成されていてもよい。また、受光部調心機構105は、受光部104を移動させることができず、受光部104を1軸周りに傾けるように構成されていてもよい。
【0057】
本実施形態の受光部調心機構105は、3つの軸方向に光ファイバブロック20を移動させることができるとともに、3つの軸周りに光ファイバブロック20を傾けることができるので、基板10に対して受光部104の位置および姿勢を自在に調整できる。よって、光測定装置による基板10から出射される光の検出精度が高くなり、基板10に対する光ファイバブロック20の位置および姿勢調整の精度を向上させることができる。ひいては、製造される光モジュール1において基板10に光を入力するときの光の伝達効率が向上するとともに、製造される光モジュール1の品質を高めることができる。
【0058】
ガス供給部106は、光ファイバブロック20の貫通路33および第2貫通路34を介して、基板10に向けてガスを供給するガス供給装置である。本実施形態において、ガス供給部106は、乾燥空気を供給する。このガスは、乾燥空気以外の気体、例えば、窒素、または、アルゴン、もしくは、それらの混合気体であってもよい。
【0059】
ガス供給部106は、例えば、ボンベ、エアチューブ、および、エアニードルを備えており、ボンベ内のガスを、エアチューブおよびエアニードルを介して貫通路33および第2貫通路34に供給する。
【0060】
ガス供給部106は、1Pa以上1MPa以下の圧力でガスを供給する。
【0061】
接着剤供給部107は、基板10に接着剤を供給する塗布装置であり、例えば、ディスペンサである。接着剤供給部107は、1つの光モジュール1を製造する際に、例えば1nL以上1000μL以下の量の接着剤を供給する。
【0062】
硬化部108は、例えば、紫外線を発光する光源である。硬化部108は、基板10に塗布された接着剤に紫外線を照射することで、接着剤を硬化させ、接着剤層60(
図1参照)を形成する。
【0063】
制御装置109は、製造装置100の動作全般を制御する。制御装置109は、例えば、マイクロコンピュータである。
【0064】
制御装置109は、光ファイバ調心機構103を介してアライメント動作を実行する。また、制御装置109は、ガス供給部106によるガス供給量の制御、接着剤供給部107による接着剤の供給量の制御、並びに、硬化部108による紫外線の照射強度、および、照射時間の制御を行う。
【0065】
以下、製造装置100が実行する光モジュール1の製造プロセスについて説明する。
図4は、製造装置100が実行する光モジュール1の製造プロセスを示すフローチャートである。
【0066】
制御装置109は、基板10の位置を調整する(ステップS10)。ステップS10において、基板調整装置102は、制御装置109の制御の下、基板10が固定されているステージ101を移動させて、基板10を基準位置に配置する。
【0067】
次に、制御装置109は、アライメント動作を実行する(ステップS20)。
【0068】
アライメント動作とは、光ファイバブロック20の対向面31が基板10の表面11に対して平行になるように光ファイバブロック20の姿勢を調整しつつ、光ファイバブロック20をxy平面における所定の位置に移動させることである。所定の位置とは、光ファイバ51を介して基板10に出射された光に応じて基板10の光回路から出射された光の強度が最大となるxy平面における光ファイバブロック20の位置である。光ファイバブロック20が所定の位置に移動されることで、基板10に対して光ファイバブロック20の光軸が調心される。
【0069】
ステップS20において、まず、制御装置109は、光ファイバ調心機構103を制御して、光ファイバブロック20の対向面31が基板10の表面11に平行となるように光ファイバブロック20の姿勢を調整する。次に、制御装置109は、受光部調心機構105を制御して、受光部104の位置および姿勢を調整する。次に、制御装置109は、光ファイバ51を介して光を出射させる。受光部104は、光ファイバ51から出射された光に応じて光回路から出射される光を受光し、受光結果を光測定装置に出力する。光測定装置は、受光部104が受光した光の強度を測定し、測定結果を制御装置109に出力する。
【0070】
制御装置109は、光測定装置による測定結果に基づき光ファイバ調心機構103を制御して、光測定装置による測定結果(光の強度)が最大となるように、光ファイバブロック20の位置を調整する。
【0071】
次に、制御装置109が、光測定装置による測定結果(つまり、光の強度)が最大か否かを判定する(ステップS30)。
【0072】
光測定装置による測定結果(光の強度)が最大ではない場合(ステップS30のNO)、制御装置109は、光測定装置による測定結果(つまり、光の強度)が最大となるまで、ステップS20を実行する。
【0073】
なお、ステップS20の動作による、光ファイバブロック20の光軸の調心の精度は、ナノメートルオーダーである。ステップS20の動作が、調心の精度がマイクロメートルオーダーとなるように実行されてもよい。
【0074】
光測定装置による測定結果が最大になった場合(ステップS30のYES)、制御装置109は、ガス供給部106を制御して、第1ガス供給を実行する(ステップS40)。
【0075】
図5は、製造装置100によるガス供給について説明する図である。ステップS40において、
図5に示されているように、ガス供給部106は、光ファイバブロック20の貫通路33および第2貫通路34を介して、基板10に向けてガスを供給する。ステップS40において、ガス供給部106は、1Pa以上0.1MPa以下の圧力でガスを供給する。
【0076】
図6は、基板10に接着剤が供給される前のガス層80を示す底面図である。
図5は、基板10の表面11側から光ファイバブロック20を見たときのガス層80の様子を示している。
【0077】
貫通路33および第2貫通路34を介してガスが供給されたことで、基板10と光ファイバブロック20との間において、貫通路33および第2貫通路34それぞれから、貫通路33および第2貫通路34を中心としてガスが徐々に円状に広がる。その結果、
図6に示されているガス層80が形成される。
【0078】
次に、制御装置109は、接着剤供給部107を制御して、基板10と光ファイバブロック20とに接するように接着剤を塗布する(ステップS50)。なお、第1ガス供給は、ステップS50が実行される前に終了する。
【0079】
次に、制御装置109は、ガス供給部106を制御して、第2ガス供給を開始する(ステップS60)。ステップS60において、ガス供給部106は、貫通路33および第2貫通路34を介して基板10に向けてガスを供給する。なお、ステップS60において、ガス供給部106は、1Pa以上1.0MPa以下の圧力でガスを供給する。この圧力範囲は、第1ガス供給のときの圧力範囲とは異なる。
【0080】
基板10に塗布された接着剤は、毛細管現象により光ファイバブロック20と基板10の間に侵入する。なお、接着剤が光ファイバブロック20と基板10との間に侵入するのは、接着剤が基板10に対する濡れ性が比較的大きいことにも起因する。
【0081】
しかし、ステップS60で、基板10と光ファイバブロック20との間にガスが供給されているので、光ファイバブロック20と基板10との間への接着剤の侵入圧と、ガス層80の圧力とが釣り合う位置で接着剤の侵入が停止する。これにより、接着剤とガス層80との境界が決まる。
【0082】
次に、制御装置109は、硬化部108を制御して、接着剤を硬化させる(ステップS70)。ステップS70において、硬化部108は、接着剤に対して紫外線を照射する。これにより、接着剤が硬化され、接着剤層60となる。その結果、基板10に光ファイバブロック20が固定される。
【0083】
図7は、接着剤が基板10に供給された後のガス層80を示す底面図である。第2ガス供給が実行されている間に接着剤の硬化が行われるので、ステップS60において、決まったガス層80と接着剤の境界の位置が変化することなく、接着剤を硬化することができる。その結果、
図7に示されているように、光ファイバ51と基板10との間に接着剤層60が存在せずに、ガス層80が存在する。
【0084】
次に、制御装置109は、ガス供給部106を制御して、第2ガス供給を停止する(ステップS80)。
【0085】
以上のプロセスが実行されることで、
図1に示されている光モジュール1が製造される。
【0086】
なお、ステップS20の動作(アライメント動作)の後、光ファイバ51の位置および姿勢がずれた場合、その都度、アライメント動作が実行されてもよい。
【0087】
以上説明したように、光モジュール1は、貫通路33および第2貫通路が形成されている光ファイバブロック20を備えている。このため、光モジュール1の製造プロセスにおいて、貫通路33を介してガスを供給しつつ、光ファイバブロック20を基板10に固定することができる。これにより、光ファイバ51の基板側端511と基板10との間(以下、光路空間と称す。)には、貫通路33に連通するガス層80が形成されるので、光ファイバ51は基板10と接着剤層60を介して接続しない。
【0088】
よって、貫通路33を形成する簡単な加工を光ファイバブロック20に施すだけで、製造プロセスにおいて、接着剤の光路空間への侵入を防止できる。ひいては、基板10に対する光ファイバ51の経時的に大きくなる接続ロスを抑制できる。
【0089】
光ファイバブロック20と基板10とは、主に光ファイバブロック20の側面と基板10の表面11とを接着剤層60で接続することで固定されている。よって、光ファイバ51の経時的に大きくなる接続ロスを抑制しつつ、強固に光ファイバブロック20を基板10に固定できる。
【0090】
光ファイバ51は、貫通路33と第2貫通路34とで挟まれる位置に配置されている。よって、光ファイバブロック20に貫通路33のみが形成されている場合と比べて、より確実に光路空間にガス層80を形成できる。
【0091】
光ファイバブロック20と基板10との間において、境界90が、貫通路33から所定距離対向面31の縁37寄り、かつ、第2貫通路34から所定距離対向面31の縁37寄りとなるように、ガス層80が形成されている。
【0092】
光ファイバブロック20の対向面31と基板10の表面11との間に接着剤層60がなく、光ファイバブロック20の側面と基板10の表面11とを接着剤層60で接続する場合と比べて、より強固に基板10に光ファイバブロック20を固定することができる。一方、接着剤層60が貫通路33および第2貫通路に達している場合と比べて、光ファイバブロック20の側面と基板10の表面11との接続に寄与する接着剤層60の体積を、より多めに確保できる。すなわち、本実施形態によれば、基板10の表面11に対して光ファイバブロック20の側面および対向面31を、接着剤層60を介してバランスよく固定することができる。よって、外力に対して強い接続を実現できる。
【0093】
光ファイバブロック20は、複数の溝35が形成されたホルダ30と、溝35に配置された光ファイバ51をホルダ30とともに挟み込むリッド40とを有している。よって、溝35に配置される光ファイバのサイズがやや大きかったとしても、その光ファイバをホルダ30およびリッド40で挟み込むことで固定できる。
【0094】
複数の溝35は互いに同じ形状である。すなわち、貫通穴32、貫通路33、および、第2貫通路34は互いに同じ形状である。このため、光ファイバ51を配置する溝35の形成と同じ加工処理を光ファイバブロック20に施すだけで、貫通路33、および、第2貫通路34を形成できる。つまり、貫通穴32に加えて、貫通路33、および、第2貫通路34を光ファイバブロック20に容易に形成することができる。
【0095】
このため、形成が困難であり、形成中に基板10の光回路を破損する可能性がある溝を基板10に形成する必要がない。すなわち、基板10に配置されている光回路の特性の信頼性を維持することができる。
【0096】
製造装置100は、ガスを供給している間に接着剤を硬化させる。このため、光路空間への接着剤の侵入をより確実に防止できる。
【0097】
製造装置100は、接着剤を塗布するときには、ガス供給を停止する。よって、基板10と光ファイバブロック20との間から漏れてくるガスによって妨げられることなく、接着剤を基板10および光ファイバブロック20に塗布できる。
【0098】
(変形例)
以下、変形例に係る光モジュール1について、主に実施形態と異なる点を説明する。
図8は、変形例に係る光モジュール1の概略を示す断面図である。変形例に係る光モジュール1は、光ファイバ51に加えて、第2光ファイバ52を備えている。
【0099】
第2光ファイバ52は、光ファイバブロック20を貫通するように配置されている。
【0100】
それに応じて、ホルダ30には、4つの溝35が形成されており、中央部分の2つの溝35の一方に、第2光ファイバ52が配置される。よって、その溝35は、リッド40のホルダ30側の面41とともに第2光ファイバ52を通す貫通穴32を形成する。その結果、第2光ファイバ52は、貫通路33と第2貫通路34で挟まれる位置に配置される。
【0101】
第2光ファイバ52は、光ファイバ51とともに、貫通路33と第2貫通路34とで挟まれる位置に配置されているので、光ファイバブロック20が束ねる光ファイバの数が増えたとしても、より確実に光路空間にガス層80を形成することができる。なお、光ファイバブロック20は、光ファイバを3以上束ねていてもよい。その場合、光ファイバブロック20には、光ファイバの数と同数の貫通穴32が形成される。また、その貫通穴32は、いずれも貫通路33と第2貫通路34で挟まれる位置に形成される。
【0102】
(その他の変形例)
上述した実施形態では、光ファイバブロック20は、ホルダ30およびリッド40を備えているとして説明したが、1つのブロック部材で形成されていてもよい。この場合、貫通穴32、貫通路33、および、第2貫通路34は、光ファイバブロック20を構成するブロック部材を貫通する穴として形成される。
【0103】
上述の実施形態では、面36は、対向面31の反対側にある面であるとして説明した。しかしながら、面36は、必ずしも、対向面31の反対側にある面でなくてもよく、光ファイバブロック20の対向面31以外の面であればよい。例えば、貫通路33および第2貫通路34は、対向面31から光ファイバブロック20の側面(例えば、
図2においてx軸の正の方向を向く面)にかけて形成されていてもよい。
【0104】
光ファイバブロック20には、貫通路33のみが形成され、第2貫通路34が形成されていなくてもよい。また、光ファイバブロック20には、3以上の貫通路が形成されていてもよい。例えば、貫通路33、貫通穴32、および、第2貫通路34の配列方向に対して垂直方向に第3貫通路、貫通穴32、および、第4貫通路が配列されるように、第3貫通路、および、第4貫通路が、光ファイバブロック20に形成されてもよい。
【0105】
ガス層80は、少なくとも、貫通路33に連通し、かつ、光路空間に位置していればよい。このため、接着剤層60は、基板10の表面11と光ファイバブロック20の対向面31との間に位置していなくてもよい。つまり、接着剤層60とガス層80との境界90は、水平方向において縁37と一致する位置に位置していてもよい。
【0106】
ガス供給部106は、貫通穴32を介して、つまり、光ファイバブロック20と光ファイバ51との隙間を介してガスを供給してもよい。また、ガス供給部106は、接着剤の塗布前から接着剤が硬化された後まで継続してガスを供給し続けてもよい。この場合、ガス供給部106は、接着剤供給部107による接着剤の塗布が完了するまでは、第1ガス供給を実行し、接着剤の塗布が完了した後、第2ガス供給を実行してもよい。上述したように、第1ガス供給時の圧力範囲の最大値(0.1MPa)は、第2ガス供給時の圧力範囲の最大値(1.0MPa)よりも小さい。したがって、基板10と光ファイバブロック20との間から漏れてくるガスによって、接着剤の塗布が妨げられにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示は、光ファイバを基板に接続することで製造される光モジュール、光モジュールの製造装置、および、光モジュールの製造方法に好適に利用できる。ひいては、シリコンフォトニクスに代表される高速光通信、および、レーザ光を用いた高精度センシング等の分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 光モジュール
10 基板
20 光ファイバブロック
30 ホルダ
31 対向面
32 貫通穴
33 貫通路
34 第2貫通路
35 溝
36 面
37 縁
40 リッド
41 面
51 光ファイバ
511 基板側端
52 第2光ファイバ
511 基板側端
60 接着剤層
70 接着剤
80 ガス層
90 境界
100 製造装置
101 ステージ
102 基板調整装置
103 光ファイバ調心機構
104 受光部
105 受光部調心機構
106 ガス供給部
107 接着剤供給部
108 硬化部
109 制御装置