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特許7599097電解コンデンサ用導電性ペーストおよび電解コンデンサ
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  • 特許-電解コンデンサ用導電性ペーストおよび電解コンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用導電性ペーストおよび電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20241206BHJP
   H01G 9/055 20060101ALI20241206BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20241206BHJP
   H01G 9/042 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H01G9/008 303
H01G9/055 103
H01G9/15
H01G9/042 500
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022501836
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021004992
(87)【国際公開番号】W WO2021166765
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2020027575
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 孝志
(72)【発明者】
【氏名】長崎 純久
(72)【発明者】
【氏名】宮地 祐治
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-298654(JP,A)
【文献】特開2016-121241(JP,A)
【文献】特開2006-032412(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103569(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/217509(WO,A1)
【文献】特開2006-049106(JP,A)
【文献】特開平07-205395(JP,A)
【文献】特開2016-089038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/008
H01G 9/055
H01G 9/15
H01G 9/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、導電性粒子と、を含み、
前記導電性粒子は、薄片状金属粒子と、針状導電粒子と、を含み、
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂と、反応性希釈剤と、イミダゾール化合物と、を含み、
前記反応性希釈剤は、50~400g/eq.のエポキシ当量を有し、
前記イミダゾール化合物は、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基と、イミダゾール構造に直接結合したフェニル基と、を有し、
電解コンデンサの導電性高分子を含む陰極部と陰極リード端子とを接続するための溶剤の含有量が0.1質量%以下である無溶剤タイプの電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項2】
前記導電性ペーストに含まれる導電性粒子の含有量は、50質量%以上、70質量%以下である、請求項1に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項3】
前記薄片状金属粒子と前記針状導電粒子との合計に占める前記薄片状金属粒子の質量割合は、60%以上、80%以下である、請求項1または2に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項4】
前記薄片状金属粒子の含有量が、35質量%以上、45質量%以下であり、
前記針状導電粒子の含有量が、12質量%以上、22質量%以下であり、
前記熱硬化性樹脂の含有量が、33質量%以上、45質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項5】
前記薄片状金属粒子は、
厚みに対する最大径のアスペクト比が、平均で20以上であり、
平均の最大径が、1μm以上、30μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項6】
前記針状導電粒子は、
繊維径に対する繊維長のアスペクト比が、平均で10以上であり、
平均繊維径が、0.1μm以上、2μm以下であり、
平均繊維長が、5μm以上、30μm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項7】
前記薄片状金属粒子が、銀を主成分とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項8】
前記針状導電粒子は、針状のセラミック粒子と、前記セラミック粒子の表面の少なくとも一部を覆う金属皮膜と、を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項9】
前記金属皮膜が、銀を主成分とする、請求項8に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項10】
前記セラミック粒子は、チタン酸カリウム、グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、酸化亜鉛およびホウ化チタンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項8または9に記載の電解コンデンサ用導電性ペースト。
【請求項11】
陽極部および導電性高分子を含む陰極部を備えるコンデンサ素子と、
前記陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、
前記陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、
前記陰極部と陰極リード端子との間に介在する接合部と、
を備え、
前記接合部の空隙率は、5体積%以下であり、
前記接合部は、樹脂硬化物と、前記樹脂硬化物中に埋め込まれた導電性粒子と、を含み、
前記導電性粒子は、薄片状金属粒子と、針状導電粒子と、を含み、
前記接合部において、
前記薄片状金属粒子の含有量が、35質量%以上、45質量%以下であり、
前記針状導電粒子の含有量が、12質量%以上、22質量%以下であり、
前記樹脂硬化物の含有量が、33質量%以上、45質量%以下であり、
前記薄片状金属粒子は、
厚みに対する粒径のアスペクト比が、平均で20以上であり、
平均粒径が、1μm以上、30μm以下であり、
前記針状導電粒子は、
繊維径に対する繊維長のアスペクト比が、平均で10以上であり、
平均繊維径が、0.1μm以上、2μm以下であり、
平均繊維長が、5μm以上、30μm以上である、電解コンデンサ。
【請求項12】
前記薄片状金属粒子が、銀を主成分とする、請求項11に記載の電解コンデンサ。
【請求項13】
前記針状導電粒子は、針状のセラミック粒子と、前記セラミック粒子の表面の少なくとも一部を覆う金属皮膜と、を有する、請求項11または12に記載の電解コンデンサ。
【請求項14】
前記金属皮膜が、銀を主成分とする、請求項13に記載の電解コンデンサ。
【請求項15】
前記セラミック粒子は、チタン酸カリウム、グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、酸化亜鉛およびホウ化チタンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項13または14に記載の電解コンデンサ。
【請求項16】
前記コンデンサ素子を封止するとともに前記陽極リード端子の一部および前記陰極リード端子の一部をそれぞれ露出させる外装部材を有する、請求項11~15のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用導電性ペーストおよび電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、等価直列抵抗(ESR)が小さく、周波数特性が優れているため、様々な電子機器に搭載されている。電解コンデンサは、通常、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、陰極部と電気的に接続する陰極リード端子とを備える。コンデンサ素子は、通常、外装部材により封止されている。
【0003】
特許文献1は、ESRが低く、素子と端子の接続強度に優れた固体電解コンデンサを提供することを目的として、陽極体表面に誘電体皮膜、陰極層が順次形成されたコンデンサ素子を備え、該コンデンサ素子上に、導電性接着剤層を介して板状端子を取り付けた固体電解コンデンサにおいて、導電性接着剤は扁平形状の導電性部材を含み、扁平形状の導電性部材が前記板状端子に沿って横たわる領域と、扁平形状の導電性部材が導電性接着剤層の厚み方向に立っている領域とを有する構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-187016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように導電性接着剤に扁平形状の導電性部材を含ませるだけでは、素子と端子の接続強度を高めるのに限界がある。また、特許文献1の導電性接着剤は2塩基酸エステルからなる有機溶媒を含むため、素子と端子との間にボイドが生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、熱硬化性樹脂と、導電性粒子と、を含み、前記導電性粒子は、薄片状金属粒子と、針状導電粒子と、を含み、電解コンデンサの陰極部と陰極リード端子とを接続する、電解コンデンサ用導電性ペーストに関する。
【0007】
本発明の別の側面は、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、前記陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、前記陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、前記陰極部と陰極リード端子との間に介在する接合部と、を備え、前記接合部は、樹脂硬化物と、前記樹脂硬化物中に埋め込まれた導電性粒子と、を含み、前記導電性粒子は、薄片状金属粒子と、針状導電粒子と、を含む、電解コンデンサに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電解コンデンサの陰極部と陰極リード端子との接合部の強度を高めるとともに良好なESRを達成することができる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る電解コンデンサ用導電性ペースト(以下、単に導電性ペーストとも称する。)は、陰極部と陰極リード端子とを接続するのに用いられる。電解コンデンサは、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、陰極部と陰極リード端子との間に介在する接合部とを備える。コンデンサ素子の陰極部は、導電性高分子を含み得る。導電性ペーストは接合部の形成に用いられる。
【0011】
導電性ペーストは、熱硬化性樹脂と、導電性粒子とを含む。導電性粒子は、薄片状金属粒子と針状導電粒子とを含む。熱硬化性樹脂には、加熱により反応する材料(主に有機物)が全て含まれる。すなわち、熱硬化性樹脂は、硬化剤、反応性希釈剤なども含む概念である。
【0012】
導電性粒子として薄片状金属粒子と針状導電粒子とを併用することで、陰極部と陰極リード端子との間に形成される接合部は、抵抗が小さく、かつ機械的強度に優れたものとなる。これは、導電性粒子間の接触割合が増加して導電性が向上するとともに、針状導電粒子の存在により接合部の強度が向上するためと考えられる。以上により、電解コンデンサの陰極部と陰極リード端子との間に高強度かつ低ESRを達成し得る接合部を形成することができる。また、薄片状金属粒子が幾重にも重ねられた状態で導電性ペーストが膜状に硬化するため、酸素の侵入経路が長くなり、酸化による陰極部(特に導電性高分子)への影響が少なくなる。よって、接合部の形成時の熱による導電性高分子の特性低下が小さくなる。
【0013】
接合部の抵抗の低下が顕著である場合、導電性粒子の使用量を抑制することが可能となる。すなわち、導電性粒子の使用量を低減し、導電性ペーストに占める熱硬化性樹脂の割合を増やすことができるため、接合部の機械的強度は更に向上する。また、導電性粒子の使用量を低減することで、導電性ペーストの製造コストを低減することができる。
【0014】
導電性ペーストに含まれる導電性粒子の含有量は、例えば、50質量%以上、70質量%以下であってもよく、55質量%以上、66質量%以下であってもよい。ここで、導電性粒子は、薄片状金属粒子と針状導電粒子とを導電性粒子全体の80質量%以上の割合で含んでもよく、90質量%以上の割合で含んでもよく、実質的に全ての導電性粒子(例えば99質量%以上)が薄片状金属粒子と針状導電粒子とで構成されていてもよい。
【0015】
薄片状金属粒子と針状導電粒子との合計に占める薄片状金属粒子の質量割合は、例えば、60%以上、80%以下(すなわち、針状導電粒子の質量割合は、20%以上、40%以下)であってもよい。このような割合で薄片状金属粒子と針状導電粒子とを併用する場合、導電性粒子間の接触が効果的に増加するため、接合部の導電性が顕著に向上する。より好ましくは、薄片状金属粒子と針状導電粒子との合計に占める薄片状金属粒子の質量割合を65%以上、75%以下(すなわち、針状導電粒子の質量割合は、25%以上、35%以下)としてもよい。
【0016】
より具体的には、電解コンデンサのESRを効果的に低減するとともに導電性ペーストの塗布性を高めるために、導電性ペーストにおける薄片状金属粒子の含有量を35質量%以上、45質量%以下としてもよく、38質量%以上、43質量%以下としてもよい。また、同様の観点から、導電性ペーストにおける針状導電粒子の含有量を12質量%以上、22質量%以下としてもよく、15質量%以上、20質量%以下としてもよい。上記範囲で薄片状金属粒子と針状導電粒子とを含む場合、接合部の抵抗が顕著に低減するとともに、導電性ペーストの塗布性が更に向上する。このとき、導電性ペーストにおける熱硬化性樹脂の含有量を33質量%以上、45質量%以下としてもよく、36質量%以上、43質量%以下としてもよい。これにより、より高強度の接合部を形成しやすくなる。
【0017】
薄片状金属粒子は、フレーク状の薄片で構成されている。薄片状金属粒子の厚み(最小幅)をTとするとき、厚さTの方向と平行な方向から見た薄片状金属粒子の最大径(長径)Lと、最大径に直交する最大径(短径)Wとは、L≧Wを満たし、TはWよりも十分小さい。
【0018】
薄片状金属粒子の厚みTに対する最大径Lのアスペクト比:L/Tは、例えば、平均で20以上であり、30≦L/Tを満たすことが好ましい。同様に、薄片状金属粒子の厚みTに対する短径Wのアスペクト比:W/Tは、平均で20以上であり、30≦W/Tを満たすことが好ましい。また、平均の最大径は1μm以上、30μm以下であってもよく、2μm以上、10μm以下であってもよい。
【0019】
薄片状金属粒子の厚みT、長径Lおよび短径Wは、導電性ペーストから導電性粒子を分離し、遠心分離などの手法で導電性粒子から薄片状金属粒子と針状導電粒子とを分離し、任意に選択した10個以上の薄片状金属粒子を電子顕微鏡で撮影して画像解析することで測定できる。例えば、撮影した10個以上の薄片状金属粒子の長径Lをそれぞれ測定し、分布のうち最大値から20%、最小値から20%の数値を除き、残りの中間の60%(撮影した粒子が10個であれば6個)の数値を平均して長径Lを求めることができる。次に、中間の60%の粒子の厚み求め、平均して厚みTを求めることができる。また、中間の60%の粒子について、それぞれ各アスペクト比を求め、平均すればアスペクト比:L/TおよびW/Tを得ることができる。
【0020】
薄片状金属粒子の比表面積は、例えば、1m2/g以上、5m2/g以下であり、1.5m2/g以上、3m2/g以下であってもよい。比表面積は、上記と同様に分離された薄片状金属粒子の比表面積をBET法で測定すればよい。
【0021】
薄片状金属粒子の嵩密度は、例えば、0.3g/cm3以上、1g/cm3以下であり、0.4g/cm3、0.9g/cm3以下であってもよい。嵩密度は、JIS Z 2504に準拠する条件で測定することができる。
【0022】
薄片状金属粒子を構成する金属は、特に限定されないが、金、銀などが好ましい。中でも電気伝導性、耐食性、コスト的に優れる点で、銀が好ましい。銀は薄片状金属粒子の主成分であってもよい。主成分とは、薄片状金属粒子の50質量%以上を占める成分をいう。銀は、薄片状金属粒子の80質量%以上を占めてもよく、99質量%以上を占めてもよい。
【0023】
針状導電粒子は、ウィスカ状の線状片で構成されている。針状導電粒子の繊維長をFLとするとき、長さ方向の中心における長さ方向に垂直な方向の厚みが繊維径Dであり、DはFLよりも十分小さい。
【0024】
針状導電粒子の繊維径Dに対する繊維長FLのアスペクト比:FL/Dは、例えば、平均で10以上であり、20≦FL/Dを満たすことが好ましい。また、平均繊維径は、例えば、0.1μm以上、2μm以下であり、0.3μm以上、1μm以下であってもよい。平均繊維長は、例えば、5μm以上、30μm以下であり、8μm以上、20μm以下であってもよい。
【0025】
繊維径D、繊維長FLおよびアスペクト比:FL/Dは、上記と同様に分離された針状導電粒子から任意に選択した10個以上の針状導電粒子を電子顕微鏡で撮影して画像解析することで測定できる。例えば、撮影した10個以上の針状導電粒子の繊維径をそれぞれ測定し、分布のうち最大値から20%、最小値から20%の数値を除き、残りの中間の60%(撮影した粒子が10個であれば6個)の数値を平均して繊維径Dを求めることができる。次に、中間の60%の粒子の繊維長を求め、平均して繊維長FLを求めることができる。また、中間の60%の粒子について、それぞれ各アスペクト比を求め、平均すればアスペクト比:FL/Dを得ることができる。
【0026】
針状導電粒子の比表面積は、例えば、0.5m2/g以上、1.5m2/g以下であり、0.8m2/g以上、1.2m2/g以下であってもよい。比表面積は、上記と同様に分離された針状導電粒子の比表面積をBET法で測定すればよい。
【0027】
針状導電粒子の嵩密度は、例えば、0.5g/cm3以下であり、0.3g/cm3以下であってもよい。嵩密度は、JIS Z 2504に準拠する条件で測定することができる。
【0028】
針状導電粒子は、針状のセラミック粒子と、当該セラミック粒子の表面の少なくとも一部を覆う金属皮膜とを有してもよい。針状のセラミック粒子としては、各種セラミックスの針状結晶(ウィスカ)を用い得る。針状のセラミック粒子をコアとして用いることで、針状導電粒子自体の強度が顕著に高められる。よって、接合部の機械的強度が向上しやすく、特に剥離に対する耐性が顕著に向上する。
【0029】
針状導電粒子に含まれるセラミック成分(セラミック粒子のコア)の含有量は、例えば20質量%以上であれば、機械的強度を十分に高めることができる。一方、針状導電粒子の電気伝導性を高く維持する観点から、針状導電粒子に含まれるセラミック成分の含有量を、例えば、40質量%以下(金属皮膜の含有量は60質量%以上)としてもよい。
【0030】
金属皮膜を構成する金属は、特に限定されないが、金、銀などが好ましい。中でも電気伝導性、耐食性、コスト的に優れる点で、銀が好ましい。銀は金属皮膜の主成分であってもよい。主成分とは、金属皮膜の50質量%以上を占める成分をいう。銀は、金属皮膜の80質量%以上を占めてもよく、99質量%以上を占めてもよい。
【0031】
針状のセラミック粒子としては、例えば、チタン酸カリウム、グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、酸化亜鉛、ホウ化チタンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、強度の点で、チタン酸カリウムが特に好ましい。
【0032】
導電性ペーストは、溶剤を含まない無溶剤タイプであってよい。換言すれば、導電性ペーストに含まれ得る溶剤の含有量は、0.1質量%以下であってよい。溶剤とは、反応に関与せず、導電性ペーストの硬化の際に揮発する成分をいう。
【0033】
なお、一般的な無溶剤タイプの導電性ペーストは、良好なESRを達成するためには、導電性粒子を85質量%程度の含有量で含ませる必要がある。この場合、導電性ペーストの塗布性が低くなり、かつ接合部の強度が不十分になりやすい。一方、導電性ペーストに溶剤を含ませると、塗布性は向上するが、接合部に溶剤に由来する空隙が形成される。導電性ペーストは、陰極部と陰極リード端子とで挟持された状態で加熱により硬化させるため、溶剤が残存して空隙を形成しやすい。空隙の存在は、接合部の強度を低下させる要因となる。
【0034】
熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と反応性希釈剤とを含む。反応性希釈剤を含むことで、塗布性により優れた導電性ペーストを得ることができるようになる。反応性希釈剤の25℃における粘度は、例えば、60Pa・s以下が望ましく、20Pa・s以下であってもよい。このような低粘度の反応性希釈剤は、溶剤と同様の役割を果たし、導電性ペーストの塗布性を顕著に向上させ得る。ここで、粘度は、回転型のレオメータを用いて、せん断速度2.5s-1の条件で測定される粘度をいう。
【0035】
電解コンデンサの生産性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂の硬化時間を短縮することが望まれている。硬化時間を短縮する上で、導電性ペーストの溶融時の粘度を低くすることは効果的である。ただし、短時間で熱硬化性樹脂を硬化させるためには、より高温での加熱が必要になる。仮に、溶剤を含む導電性ペーストを高温かつ短時間で硬化させると、溶剤が急激に揮発して陰極部と陰極リード端子との間から抜け出ることが困難になり、空隙が増大しやすい。一方、反応性希釈剤は、溶剤と共通の役割を果たす一方で熱硬化性樹脂として反応して接合部の一部を形成するため、空隙が増大する懸念がない。
【0036】
反応性希釈剤は、導電性ペーストの粘度を考慮すると、50~400g/eq、更には100~350g/eqのエポキシ当量(EEW)を有することが望ましい。また、反応性希釈剤は、単官能または2官能のエポキシ化合物であることが望ましい。
【0037】
単官能のエポキシ化合物としては、例えば炭素数3~15のアルコールエーテルであるアルキルグリシジルエーテルもしくはアルケニルグリシジルエーテル、フェノキシ基を1つ有する芳香族グリシジルエーテルなどが挙げられる。2官能のエポキシ化合物としては、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンジジグリシジルエーテルなどが挙げられる。より具体的には、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
熱硬化性樹脂には、反応性希釈剤を、エポキシ樹脂100質量部あたり、例えば30質量部以上、50質量部以下、更には35質量部以上、45質量部以下の含有量で含ませてもよい。これにより、塗布性に優れるとともに、強度により優れた接合部を形成することができる。より具体的には、導電性ペーストにおいて、エポキシ樹脂の含有量は、例えば、25質量%以上、30質量%以下であり、反応性希釈剤の含有量は、例えば、9質量部以上、15質量部以下であってもよい。
【0039】
エポキシ樹脂は、特に制限されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリエーテル型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも良好な塗布性の導電性ペーストを得る観点から、分子量320以上、400以下のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが好ましく、立体障害が少なく粘度の低いビスフェノールF型エポキシ樹脂がより望ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社のJER(登録商標)825、JER(登録商標)827、JER(登録商標)828などが挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社のJER(登録商標)806、JER(登録商標)807が挙げられる。
【0040】
熱硬化性樹脂は、硬化剤を含む。硬化剤としては、フェノール樹脂、酸無水物、アミン化合物、イミダゾール化合物、リン化合物、ホスホニウム塩化合物、双環式アミジン類、有機金属錯体、ポリアミンの尿素化物、ジシアンジアミド、アミンアダクト型脂肪族3級アミン、マイクロカプセル型硬化剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でもイミダゾール化合物が好ましく、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基(OH基)と、イミダゾール構造に直接結合したフェニル基と、を有するイミダゾール化合物(以下、「イミダゾール化合物PH」とも称する。)を用いることがより望ましい。イミダゾール化合物PHを用いる場合、高温かつ短時間での熱硬化性樹脂の硬化が可能となる。その結果、電解コンデンサの生産性が顕著に向上することに加え、電解コンデンサのESRを更に効率的に低減させることができる。高温かつ短時間で反応性希釈剤を含む熱硬化性樹脂を硬化させることで、接合部の熱収縮が大きくなり、導電性粒子間の接触がより増大しやすくなるものと考えられる。
【0041】
イミダゾール化合物PHは、エポキシ樹脂と反応性希釈剤の合計100質量部あたり、例えば3質量部以上、10質量部以下の割合で熱硬化性樹脂に含ませればよい。熱硬化性樹脂の硬化後に形成される接合部において、イミダゾール化合物PHに由来する構造の含有率は、例えば2~6質量%程度である。
【0042】
イミダゾール化合物PHとしては、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。中でも2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールは、電解コンデンサのESRの低減により効果的であり、かつ接合部の長期的な接続信頼性を向上させる。イミダゾール化合物PHのOH基が導電性粒子の酸化防止の役割を有し、接合部の抵抗が低く維持されるものと考えられる。
【0043】
なお、導電性ペーストには、一般的な添加剤を含ませてもよい。例えば、エポキシ樹脂と導電性粒子との密着性を向上させるために、導電性ペーストにシランカップリング剤を含ませてもよく、導電性粒子の分散性を得るためにアニオン系、カチオン系、非イオン系などの分散剤を添加してもよい。
【0044】
熱硬化性樹脂(すなわち導電性ペースト)の硬化時間は、電解コンデンサの生産性を向上させる観点から、例えば、5分以下、更には2分以下(好ましくは1分程度)の短時間であることが望ましい。イミダゾール化合物PHを用いることで、このような短時間での硬化が可能となる。より短時間での硬化を達成するために、硬化温度を、例えば180℃以上、250℃以下としてもよく、200℃以上、230℃以下としてもよい。
【0045】
次に、本実施形態に係る電解コンデンサは、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、陰極部と陰極リード端子との間に介在する接合部とを備える。ここで、接合部は、樹脂硬化物と、樹脂硬化物中に埋め込まれた導電性粒子とを含み、導電性粒子は、薄片状金属粒子と針状導電粒子とを含む。このような電解コンデンサは、本実施形態に係る導電性ペーストを用いて接合部を形成することで得ることができる。
【0046】
接合部の空隙率は、例えば5体積%以下であり、好ましくは3体積%以下である。導電性ペーストの粘度もしくは塗布性を反応性希釈剤によって制御する場合、高温かつ短時間で導電性ペーストを硬化させる場合でも、熱で揮発する成分がほとんどなく、接合部に空隙が形成されにくい。空隙が低減されることで、機械的強度により優れた接合部が形成される。
【0047】
接合部の空隙率は、電解コンデンサの接合部(陰極部と陰極リード端子との間の領域R)の断面写真を撮影し、二値化処理などの画像処理を行えば、領域Rの面積に対する空隙の占める面積の割合として算出することができる。ただし、少なくとも100000μm以上の領域Rを対象として空隙率を求めることが望ましい。
【0048】
接合部の構造は、導電性ペーストの組成を反映している。例えば、接合部に含まれる導電性粒子の含有量は、50質量%以上、70質量%以下である。接合部に含まれる導電性粒子の含有量は、電解コンデンサを分解し、接合部を分離して接合部の試料を準備し、試料を熱分析すれば測定することができる。より具体的には、示差走査熱量計を用いて樹脂硬化物の燃焼により減少する試料の質量を測定すれば、導電性粒子の含有量が求められる。
【0049】
また、接合部において、薄片状金属粒子と針状導電粒子との合計に占める薄片状金属粒子の質量割合は、60%以上、80%以下である。この質量割合は、樹脂硬化物を燃焼させた後の残渣(導電性粒子)を遠心分離などの手法で分離すれば測定できる。
【0050】
より具体的には、好ましい一態様の接合部において、薄片状金属粒子の含有量は、35質量%以上、45質量%以下であり、針状導電粒子の含有量は、12質量%以上、22質量%以下であり、樹脂硬化物の含有量は、33質量%以上、45質量%以下である。
【0051】
接合部に含まれる薄片状金属粒子および針状導電粒子の形状等は、電解コンデンサの接合部(陰極部と陰極リード端子との間の領域R)の厚み方向の断面写真を撮影し、画像処理を行えば測定することができる。断面写真では、薄片状金属粒子と針状導電粒子とを目視で判別可能である。
【0052】
薄片状金属粒子は、接合部の厚み方向の断面では、当該厚み方向に垂直な方向に配向している。よって、薄片状金属粒子の厚みと、当該厚みに垂直な方向の粒子長さXを測定可能である。ここでは、粒子長さXを長径Lと見なしてよい。断面写真に含まれる任意の10個以上の薄片状金属粒子の粒子長さXをそれぞれ測定し、分布のうち最大値から20%、最小値から20%の数値を除き、残りの中間の60%(撮影した粒子が10個であれば6個)の数値を平均すればよい。次に、中間の60%の粒子の厚みを求め、平均して厚みTを求めることができる。また、中間の60%の粒子について、それぞれアスペクト比を求め、平均すればアスペクト比:L(X)/Tを得ることができる。
【0053】
針状導電粒子は、薄片状金属粒子に比べるとランダムに配向している。断面写真に含まれる針状導電粒子から、全長を測定可能な任意の10個以上の針状導電粒子を選択し、その繊維長をそれぞれ測定し、分布のうち最大値から20%、最小値から20%の数値を除き、残りの中間の60%(撮影した粒子が10個であれば6個)の数値を平均して繊維長FLを求めることができる。次に、中間の60%の粒子の繊維径を求め、平均して繊維径Dを求めることができる。また、中間の60%の粒子について、それぞれ各アスペクト比を求め、平均すればアスペクト比:FL/Dを得ることができる。
【0054】
電解コンデンサは、コンデンサ素子を封止するとともに陽極リード端子の一部および陰極リード端子の一部をそれぞれ露出させる外装部材を有してもよい。外装部材は、コンデンサ素子を外部からの熱や水分から保護するとともに、接合部の機械的強度を補強する役割を有する。外装部材は、例えば、絶縁性の熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される。熱硬化性樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂などを主成分として含み、無機物粒子などの絶縁フィラーを含有してもよい。
【0055】
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す縦断面図である。電解コンデンサ200は、対向する3組の平面を含む略六面体の外形形状を有しており、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を封止する外装部材50と、外装部材50の外部に露出する陽極リード端子20および陰極リード端子40とを備える。
【0056】
コンデンサ素子10は、陽極ワイヤ12の一部が埋設された、陽極体である多孔質焼結体11と、その表面に形成された誘電体層13と、誘電体層13の表面に形成された固体電解質層14と、固体電解質層14の表面に形成された陰極層15とを有する。固体電解質層14は導電性高分子を含み得る。陽極ワイヤ12と多孔質焼結体11とが陽極部を構成する。固体電解質層14と陰極層15とが陰極部を構成する。
【0057】
多孔質焼結体11から突出した陽極ワイヤ12の露出部分12bは、抵抗溶接等によって陽極リード端子20に電気的に接続される。一方、陰極部の陰極層15は、外装部材50内において導電性ペースト30を介して陰極リード端子40に電気的に接続される。図1に示す陽極リード端子20および陰極リード端子40は、外装部材50から突出し、その下面が外装部材50の底面と同一平面上に配設されるように折曲加工されている。陽極リード端子20および陰極リード端子40の下面は、電解コンデンサ200を搭載すべき基板(図示せず)との半田接続等に用いられる。
【0058】
多孔質焼結体11は、例えば、金属粒子を焼結して得られる直方体の成形体である。金属粒子としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などの弁作用金属の粒子が用いられる。
【0059】
陽極ワイヤ12は、導電性材料から構成されている。陽極ワイヤ12の材料は特に限定されず、例えば、上記弁作用金属の他、銅、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。
【0060】
誘電体層13は、例えば、金属酸化物から構成されている。多孔質焼結体11の表面に金属酸化物を含む層を形成する方法として、例えば、化成液中に多孔質焼結体11を浸漬して多孔質焼結体11の表面を陽極酸化する方法や、多孔質焼結体11を、酸素を含む雰囲気下で加熱する方法が挙げられる。
【0061】
固体電解質層14は、誘電体層13の少なくとも一部を覆うように形成されている。固体電解質層14には、例えば、マンガン化合物や導電性高分子が用いられる。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルフェノール、ポリピリジン、あるいは、これらの高分子の誘導体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、導電性高分子は、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。これらのうちでは、導電性に優れる点で、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが好ましい。なかでも、撥水性に優れる点で、ポリピロールが好ましい。
【0062】
陰極層15は、例えば、固体電解質層14を覆うように形成されたカーボン層と、カーボン層の表面に形成された金属ペースト層とを有している。カーボン層は、黒鉛等の導電性炭素材料と樹脂を含む。金属ペースト層は、例えば、金属粒子(例えば、銀)と樹脂とを含む。なお、陰極層15の構成は、この構成に限定されない。
【0063】
陽極リード端子20は、陽極ワイヤ12を介して、陽極部と電気的に接続している。陽極リード端子20の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されず、金属であっても非金属であってもよい。その形状は、例えば、長尺かつ平板状である。
【0064】
陰極リード端子40は、硬化された導電性ペーストである接合部30を介して、陰極部と電気的に接続している。陰極リード端子40の材質も、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば、特に限定されず、金属であっても非金属であってもよい。その形状も特に限定されず、例えば、長尺かつ平板状である。
【0065】
外装部材50は、例えば、トランスファー成型法、圧縮成型法等により、金型内で熱硬化性樹脂組成物を成形することによって形成される。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、以下は本発明を限定するものではない。
【0067】
熱硬化性樹脂の調製に用いた材料の詳細を以下に示す。
<エポキシ樹脂>
(a)ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EEW:165g/eq)
(b)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EEW:190g/eq)
【0068】
<反応性希釈剤>
(a)2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(EEW:205g/eq、粘度(25℃):3mPa・s)
(b)1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(EEW:117g/eq、粘度(25℃):10mPa・s)
【0069】
<硬化剤>
(a)2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール
(b)2,4-ジアミノ-6-(2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン
(c)ジシアンジアミド
(d)アミンアダクト型脂肪族3級アミン
【0070】
《実施例1》
下記の導電性粒子を準備した。
(薄片状金属粒子A)
厚みT=0.2μm、最大径L=5.5μm、アスペクト比:L/T=27.5の銀フレーク(Ag含有量100%)
【0071】
(針状導電粒子B)
繊維径D=0.7μm、繊維長FL=8μm、アスペクト比:FL/D=11.4の銀皮膜を有するチタン酸カリウムウィスカ(Ag含有量75質量%)
【0072】
(熱硬化性樹脂A)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(上記エポキシ樹脂(a))100質量部と、反応性希釈剤である2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(上記反応性希釈剤(a))42質量部と、硬化剤である2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(上記硬化剤(a))10質量部とを混合して熱硬化性樹脂を調製した。
【0073】
(導電性ペーストA)
薄片状金属粒子A、針状導電粒子Bおよび熱硬化性樹脂Aを用いて、薄片状金属粒子Aの含有量が41質量%であり、針状導電粒子Cの含有量が17質量%以下であり、熱硬化性樹脂Aの含有量が42質量%である導電性ペーストAを調製した。
【0074】
《比較例1》
下記の導電性粒子を準備した。
(薄片状金属粒子C)
厚みT=1μm、最大径L=6μm、アスペクト比:L/T=6の銀フレーク(Ag含有量100%)
【0075】
(熱硬化性樹脂X)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(上記エポキシ樹脂(a))100質量部と、硬化剤であるジシアンジアミド(上記硬化剤(c))6質量部と、硬化触媒として2-フェニルイミダゾール2質量部と、溶剤であるジエチレングリコールモノエチルエーテル35質量部とを混合して熱硬化性樹脂Xを調製した。
【0076】
(導電性ペーストX)
薄片状金属粒子Cおよび熱硬化性樹脂Xを用いて、薄片状金属粒子Cの含有量が90質量%であり、熱硬化性樹脂Xの非揮発成分(すなわち、溶剤以外の成分)の含有量が10質量%である導電性ペーストXを調製した。
【0077】
《比較例2》
(熱硬化性樹脂Y)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(上記エポキシ樹脂(a))100質量部と、硬化剤であるジシアンジアミド(上記硬化剤(c))6質量部と、硬化触媒として2-フェニルイミダゾール2質量部とを混合して熱硬化性樹脂Yを調製した。
【0078】
(導電性ペーストY)
熱硬化性樹脂Yと比較例1で用いたのと同じ薄片状金属粒子Cを用いて、薄片状金属粒子Cの含有量が85質量%であり、熱硬化性樹脂Yの含有量が15質量%である導電性ペーストYを調製した。
【0079】
[評価]
(1)ESR
定格電圧16V、定格静電容量100μFの電解コンデンサを以下の要領で作製した。
【0080】
(陽極部の準備)
弁作用金属として一次粒子の平均粒径D50が約0.1μmのタンタル金属粒子を所定形状に成形し、その後、焼結させて、タンタル製の陽極ワイヤの一部が埋め込まれた多孔質焼結体(陽極部)を得た。
【0081】
(誘電体層の形成)
化成槽に多孔質焼結体を浸漬し、陽極酸化により多孔質焼結体の表面に酸化タンタルの誘電体層を形成した。化成電圧は60Vとした。
【0082】
(高分子分散体の調製)
3,4-エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸(PSS、重量平均分子量10万)とをイオン交換水に溶かし、得られた混合溶液を撹拌しながら硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。その後、反応液を透析して未反応モノマーおよび酸化剤を除去し、約5質量%のPSSがドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)を含む高分子分散体を得た。
【0083】
(固体電解質層の形成)
減圧雰囲気(40kPa)中で、高分子分散体に陽極部を5分間浸漬し、その後、高分子分散体から陽極部を引き上げた。その後、高分子分散体を含浸させた陽極部を乾燥させて誘電体層の少なくとも一部を被覆する固体電解質層を形成した。
【0084】
(陰極部の形成)
固体電解質層の表面にカーボンペーストでカーボン層を形成し、カーボン層の表面に銀ペーストを塗布して銀ペースト層を形成した。こうしてカーボン層と銀ペースト層とで構成される陰極部を有するコンデンサ素子を得た。
【0085】
(リード端子の接合)
単一のアルミニウム箔から陽極リード端子と陰極リード端子とが一体化されたリードフレームを切り出した。次に、固体電解質層の表面に所定の導電性ペーストを塗布し、リードフレームの陰極リート端子と接続した。一方、陽極ワイヤの露出部をリードフレームの陽極リート端子と溶接した。その後、210℃で1分間の加熱を行い、導電性ペーストを硬化させて陰極部と陰極リード端子との間に接合部を形成した。
【0086】
(コンデンサ素子の封止)
リードフレームとコンデンサ素子を外装部材で封止して、図1に示すような電解コンデンサを完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、95℃で90分のエージングを行った。エージング後の電解コンデンサのESRを測定した。ESRが標準値以下の場合を“〇”、標準値より0.5mΩ未満高い場合を“△”、標準値より0.5mΩ以上高い場合を“×”とした。
【0087】
(2)接合強度
2枚の引張試験用のアルミニウム片を導電性ペーストで貼り合わせ、210℃で1分間の加熱を行い、導電性ペーストを硬化させた後、株式会社今田製作所の引張圧縮試験機を用いて引張強度を測定した。引張強度が標準値以上の場合を“〇”、標準値より2N未満低い場合を“△”、標準値より2N以上低い場合を“×”とした。
【0088】
(3)空隙率
既述の方法にて、電解コンデンサの接合部の断面を電子顕微鏡で撮影し、画像処理を行って空隙率を算出した。空隙率が5体積%以下の場合を“〇”、5体積%を超える場合を“×”と評価した。
【0089】
(4)塗布性
ディスペンサで導電性ペーストを塗布したときに角立ちがなく塗布できた場合を“〇”、糸引き、もしくは角立ちが発生した場合を“×”と評価した。
【0090】
【表1】
【0091】
表1より、薄片状金属粒子Aと針状導電粒子Bとを併用した導電性ペーストAを用いた場合には、従来の溶剤タイプもしくは無溶剤タイプの導電性ペーストに比べて、高い接合強度が得られることが理解できる。また、導電性ペーストAは塗布性に優れ、これを用いた場合には接合部の空隙率も少なくなることが理解できる。
【0092】
《実施例2~5》
薄片状金属粒子A、針状導電粒子Bおよび熱硬化性樹脂Aの含有量を表2に示すように変化させたこと以外、実施例1と同様に、実施例2~5の導電性ペーストB~Eを調製した。
【0093】
【表2】
【0094】
表2より、導電性粒子が所定の組成を有する場合に、より良好な塗布性が達成されることや、物性バランスに優れた接合部を形成できることが理解できる。
【0095】
《実施例6~8》
熱硬化性樹脂の組成を表3に示すように変化させたこと以外、実施例1と同様に、実施例6~8の導電性ペーストF~Hを調製した。
【0096】
<実施例6>
(熱硬化性樹脂F)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂(a))100質量部と、反応性希釈剤である2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(反応性希釈剤(a))42質量部と、硬化剤である2,4-ジアミノ-6-(2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン(硬化剤(b))10質量部とを混合して熱硬化性樹脂Fを調製した。
【0097】
<実施例7>
(熱硬化性樹脂G)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂(b))100質量部と、反応性希釈剤である1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(反応性希釈剤(b))を42質量部と、硬化剤であるジシアンジアミド(硬化剤(c))8質量部と硬化触媒である2-フェニルイミダゾール3質量部とを混合して熱硬化性樹脂Gを調製した。
【0098】
<実施例8>
(熱硬化性樹脂H)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂(b))100質量部と、反応性希釈剤である1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(反応性希釈剤(b))42質量部と、硬化剤であるアミンアダクト型3級アミン(硬化剤(d))29質量部とを混合して熱硬化性樹脂を調製した。
【0099】
【表3】
【0100】
表3より、反応性希釈剤や硬化剤の種類を変更した場合にも、良好な塗布性が達成されることや、物性バランスに優れた接合部を形成できることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、陽極部が多孔質焼結体、金属箔などを具備する電解コンデンサに利用することができ、特に陽極部に形成された誘電体層の表面に固体電解質層を有する固体電解コンデンサにおいて有用である。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0102】
10:コンデンサ素子
12:陽極ワイヤ
12b:露出部分
13:誘電体層
14:固体電解質層
15:陰極層
20:陽極リード端子
30:接合部(硬化した導電性ペースト)
40:陰極リード端子
50:外装部材
200:電解コンデンサ


図1