(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】疲労推定システム、推定装置、及び疲労推定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20241206BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A61B5/16 200
A61B5/107 300
(21)【出願番号】P 2023564901
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2022043178
(87)【国際公開番号】W WO2023100718
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021194910
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】小野 正貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】井澤 洋介
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/112096(WO,A1)
【文献】特開2021-093037(JP,A)
【文献】特開2021-103850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置から見て、
什器によって一部が
非可視部位として隠れた対象者の疲労度
であって、前記対象者の姿勢が固定された静止姿勢をとることによって蓄積する疲労度を推定する疲労推定システムであって、
前記対象者及び前記対象者の周囲の什器を含む画像を撮像する前記撮像装置と、
前記撮像装置から、前記画像を取得する画像取得部と、
取得された前記画像に含まれる前記
対象者の周囲の什器の天面を検出する検出部と、
前記対象者の姿勢を推定する姿勢推定部であって、前記画像に含まれる前記対象者に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れていない前記対象者の可視部位の姿勢を推定し、検出された前記天面に基づいて
水平面を検出し、前記非可視部位の
骨格であって、前記水平面に対してなす角度を決定することができる骨格の伸びる方向を推定することにより、前記非可視部位の姿勢を推定する姿勢推定部と、
推定した前記対象者の姿勢に基づいて、前記対象者の
前記疲労度を推定する疲労推定部と、を備える
疲労推定システム。
【請求項2】
前記可視部位は、前記対象者の腰部関節を含み、
前記非可視部位は、前記腰部関節から延びる骨格である前記対象者の大腿部骨格を含み、
前記姿勢推定部は、推定された前記可視部位の姿勢に含まれる前記腰部関節の位置から、前記天面に対して所定の角度をなす方向に延びる前記大腿部骨格の延伸方向を推定する
請求項1に記載の疲労推定システム。
【請求項3】
前記可視部位は、前記対象者の背部関節を含み、
前記非可視部位は、前記背部関節から延びる骨格である前記対象者の腰椎骨格を介して前記背部関節とつながる前記対象者の腰部関節、及び、前記腰部関節から延びる骨格である前記対象者の大腿部骨格を含み、
前記疲労推定システムは、さらに、
前記腰椎骨格の長さを取得する長さ取得部と、
前記腰部関節の高さを取得する高さ取得部を備え、
前記姿勢推定部は、
推定された前記可視部位の姿勢に含まれる前記背部関節の位置から、取得した前記腰椎骨格の長さの範囲内、かつ、取得した前記腰部関節の高さに一致する前記腰部関節の位置を推定し、
推定された前記腰部関節の位置から、前記天面に対して所定の角度をなす方向に延びる前記大腿部骨格の延伸方向を推定する
請求項1に記載の疲労推定システム。
【請求項4】
前記対象者が立位の場合、前記所定の角度は、80度~100度の範囲内の角度である
請求項2に記載の疲労推定システム。
【請求項5】
前記対象者が立位の場合、前記所定の角度は、90度である
請求項4に記載の疲労推定システム。
【請求項6】
前記対象者が座位の場合、前記所定の角度は、-10度~10度の範囲内の角度である
請求項2に記載の疲労推定システム。
【請求項7】
前記対象者が座位の場合、前記所定の角度は、0度である
請求項6に記載の疲労推定システム。
【請求項8】
前記
対象者の周囲の什器は、前記対象者が使用する机であり、
前記天面は、前記机の机上面である
請求項1に記載の疲労推定システム。
【請求項9】
前記非可視部位は、前記撮像装置から見て前記
対象者の周囲の什器によって隠れている
請求項1~8のいずれか1項に記載の疲労推定システム。
【請求項10】
撮像装置から見て、
什器によって一部が
非可視部位として隠れた対象者の疲労度
であって、前記対象者の姿勢が固定された静止姿勢をとることによって蓄積する疲労度を推定する推定装置であって、
前記撮像装置から、前記対象者及び前記対象者の周囲の什器を含む画像を取得する画像取得部と、
取得された前記画像に含まれる前記
対象者の周囲の什器の天面を検出する検出部と、
前記対象者の姿勢を推定する姿勢推定部であって、前記画像に含まれる前記対象者に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れていない前記対象者の可視部位の姿勢を推定し、検出された前記天面に基づいて
水平面を検出し、前記非可視部位の
骨格であって、前記水平面に対してなす角度を決定することができる骨格の伸びる方向を推定することにより、前記非可視部位の姿勢を推定する姿勢推定部と、
推定した前記対象者の姿勢に基づいて、前記対象者の
前記疲労度を推定する疲労推定部と、を備える
推定装置。
【請求項11】
撮像装置から見て、
什器によって一部が
非可視部位として隠れた対象者の疲労度
であって、前記対象者の姿勢が固定された静止姿勢をとることによって蓄積する疲労度を推定する
推定装置によって実行される疲労推定方法であって、
前記推定装置は、
前記撮像装置から、前記対象者及び前記対象者の周囲の什器を含む画像を取得し、
取得された前記画像に含まれる前記什器の天面を検出し、
前記画像に含まれる前記対象者に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れていない前記対象者の可視部位の姿勢を推定し、
検出された前記天面に基づいて
水平面を検出し、前記非可視部位の
骨格であって、前記水平面に対してなす角度を決定することができる骨格の伸びる方向を推定することにより、前記非可視部位の姿勢を推定し、
推定した前記対象者の姿勢に基づいて、前記対象者の
前記疲労度を推定する
疲労推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象者の疲労度を推定するための疲労推定システム、当該推定システムに使用される推定装置、及び疲労推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、疲労の蓄積から体調不良をはじめ、怪我及び事故等につながるといった事例が散見される。これに対して、疲労の程度を推定することにより、体調不良、怪我及び事故等を未然に防ぐ技術に注目されるようになった。例えば、疲労度を推定するための疲労推定システムとして、特許文献1には、力計測、及び生体電気インピーダンス計測に基づいて疲労の有無及び疲労の種類を判定する、疲労判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に例示される従来の疲労判定装置等では、推定される疲労度の精度が十分でない場合がある。そこで、本開示では、より高精度に疲労度を推定する疲労推定システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る疲労推定システムは、撮像装置から見て、一部が隠れた対象者の疲労度を推定する疲労推定システムであって、前記対象者及び前記対象者の周囲の什器を含む画像を撮像する前記撮像装置と、前記撮像装置から、前記画像を取得する画像取得部と、取得された前記画像に含まれる前記什器の天面を検出する検出部と、前記対象者の姿勢を推定する姿勢推定部であって、前記画像に含まれる前記対象者に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れていない前記対象者の可視部位の姿勢を推定し、検出された前記天面に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れている前記対象者の非可視部位の姿勢を推定する姿勢推定部と、推定した前記対象者の姿勢に基づいて、前記対象者の疲労度を推定する疲労推定部と、を備える。
【0006】
また、本開示の一態様に係る推定装置は、撮像装置から見て、一部が隠れた対象者の疲労度を推定する推定装置であって、前記撮像装置から、前記対象者及び前記対象者の周囲の什器を含む画像を取得する画像取得部と、取得された前記画像に含まれる前記什器の天面を検出する検出部と、前記対象者の姿勢を推定する姿勢推定部であって、前記画像に含まれる前記対象者に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れていない前記対象者の可視部位の姿勢を推定し、検出された前記天面に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れている前記対象者の非可視部位の姿勢を推定する姿勢推定部と、推定した前記対象者の姿勢に基づいて、前記対象者の疲労度を推定する疲労推定部と、を備える。
【0007】
また、本開示の一態様に係る疲労推定方法は、撮像装置から見て、一部が隠れた対象者の疲労度を推定する疲労推定方法であって、前記撮像装置から、前記対象者及び前記対象者の周囲の什器を含む画像を取得し、取得された前記画像に含まれる前記什器の天面を検出し、前記画像に含まれる前記対象者に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れていない前記対象者の可視部位の姿勢を推定し、検出された前記天面に基づいて、前記撮像装置から見たときに隠れている前記対象者の非可視部位の姿勢を推定し、推定した前記対象者の姿勢に基づいて、前記対象者の疲労度を推定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る疲労推定システム等は、より高精度に疲労度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態に係る疲労度の推定を説明するための第1図である。
【
図1B】
図1Bは、実施の形態に係る疲労度の推定を説明するための第2図である。
【
図1C】
図1Cは、実施の形態に係る疲労度の推定を説明するための第3図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る疲労推定システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態に係る姿勢の推定について説明する第1図である。
【
図3B】
図3Bは、実施の形態に係る姿勢の推定について説明する第2図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態に係る疲労度の推定方法を示すフローチャートである。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態に係る一部のステップの詳細を示すサブフローチャートである。
【
図6A】
図6Aは、実施の形態に係る推定される対象者の疲労度の蓄積を説明する第1図である。
【
図6B】
図6Bは、実施の形態に係る推定される対象者の疲労度の蓄積を説明する第2図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る推定結果の表示例を示す第1図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る推定結果の表示例を示す第2図である。
【
図9】
図9は、実施の形態の変形例に係る姿勢の推定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0012】
(実施の形態)
[疲労推定システム]
以下、実施の形態に係る疲労推定システムの全体構成について説明する。
図1Aは、実施の形態に係る疲労度の推定を説明するための第1図である。
図1Bは、実施の形態に係る疲労度の推定を説明するための第2図である。
図1Cは、実施の形態に係る疲労度の推定を説明するための第3図である。
【0013】
本開示における疲労推定システム200(後述する
図2参照)は、実施の形態では、撮像装置201を用いた対象者11の撮像によって出力された画像を用いて、当該対象者11における疲労度を推定するシステムである。撮像装置201は、対象者11を撮像して画像を出力するカメラであればその形態に限定はなく、
図1Aに示すように、建物等の壁面又は天井等に設置される固定式のカメラであってもよく、対象者11が操作するPC、スマートフォン、又はタブレット端末等に搭載されたカメラであってもよい。
【0014】
ここで対象者は、椅子12に着座し、机13に置かれた作業対象物を用いて作業を行っている姿勢である。本開示における疲労推定システム200では、対象者11における疲労のうち、姿勢が固定された静止姿勢をとることによって蓄積する疲労をもとに対象者11の疲労度を推定する。これはつまり、姿勢が固定された状態により、筋肉及び関節の少なくとも一方における負荷ならびに悪化する血流(以下、血流量の低下ともいう)によって蓄積される疲労を推定している。したがって、対象者11は、少なくとも一定の期間において座位、臥位又は立位で静止した静止姿勢である。一定の期間とは、例えば、数十秒又は数秒等、疲労推定システム200において疲労が推定可能な最小の期間である。このような期間は、疲労推定システム200を構成する撮像装置201及び推定装置100(後述する
図2参照)による処理能力に依存して決定される。
【0015】
このような静止姿勢をとる対象者11としては、例えば、オフィスにおけるデスクワーカ、移動体を操舵するドライバ、静止姿勢での負荷を利用した筋力トレーニングを行う者、病院等の施設の入所者、飛行機等の乗客及び乗員等が挙げられる。
【0016】
撮像装置201によって撮像され、出力された画像は、推定装置100によって処理され、
図1Bに示すように対象者11の姿勢が推定される。推定された対象者11の姿勢は、一例として剛体リンクモデル11aとして出力される。具体的には、
図1Bに示すように、直線で示す骨格が黒点で示す関節によって接続され、一つの関節によって接続される二つの骨格同士の位置関係によって、対象者11の姿勢を再現できる。姿勢の推定は、画像認識によって行われ、関節と骨格との位置関係に基づき、上記の剛体リンクモデル11aとして出力される。
【0017】
推定された剛体リンクモデル11aを、
図1Cに示すような筋骨格モデル11bに当てはめることで、骨格同士を引っ張り合う筋肉、及び、当該骨格同士の位置関係を変更可能に接続する関節の各々の身体部位について、推定された姿勢に応じた位置関係に維持するために、個々の身体部位の筋肉及び関節の少なくとも一方にかかる負荷量を推定値として算出する。この各々の身体部位の筋肉及び関節の少なくとも一方における負荷量の推定値が、上記静止姿勢が継続された継続時間が延びるほど蓄積されるため、負荷量の推定値と継続時間とを用いた演算によって対象者11が静止姿勢を維持することによる疲労度が算出される。なお、以降の説明では、「筋肉及び関節の少なくとも一方」を「筋肉及び/又は関節」とも表現する。
【0018】
また、本実施の形態では、上記の筋肉及び/又は関節にかかる負荷量の推定値に加え、対象者11の血流量の推定値に基づく疲労度の推定を行うことができる。以下の説明では、筋肉への負荷量及び関節への負荷量の推定値を用いて対象者11の疲労度の推定を行う例を中心に説明するが、ここに血流量の推定値を組み合わせて対象者11の疲労度の推定をより高精度に行うことも可能である。さらに、対象者11の疲労度の推定は、対象者11の筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び血流量のいずれか一つの推定値を用いて行うことも可能である。
【0019】
すなわち、疲労推定システム200は、対象者11の姿勢を推定した後、当該姿勢の継続時間に基づいて、対象者11の筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び血流量の少なくとも一つを推定する。疲労推定システム200は、推定した対象者11の筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び血流量の少なくとも一つの推定値に基づいて対象者11の疲労度の推定を行う。以下、簡略化のため、負荷量の推定値を、単に負荷量又は推定値と表現する場合がある。また、推定値に血流量の推定値が含まれる場合には、負荷量を血流量と読み替え、負荷量が多いことを血流量の低下に、負荷量が少ないことを血流量の上昇にそれぞれ置き換えてもよい。
【0020】
また、血流量とは、上記したように、対象者11が姿勢を維持することで悪化する血流を数値化するための情報である。血流量は、低下するほど、対象者11の血流が悪化していることを意味し、血流の悪化によって引き起こされる疲労の指標として利用できる。血流量は、測定時点における絶対的な数値として取得されてもよく、異なる2時点間での数値の相対的な数値として取得されてもよい。例えば、対象者11の姿勢と、当該姿勢の開始時点と終了時点との2時点における血流量の相対的数値によって、対象者11の血流の悪化の程度を推定できる。また、対象者11の姿勢及び当該姿勢の継続時間と、血流の悪化との間に相関関係が存在するため、単に、象者11の姿勢及び当該姿勢の継続時間から対象者の血流量を推定してもよい。
【0021】
また、以降の説明では、上記した筋骨格モデル11bを用いて、対象者11の姿勢からの、筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び血流量の少なくとも一つの推定を行うが、姿勢から、筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び血流量を推定する方法として、上記の筋骨格モデル11bの他に、実測データを用いる方法を適用することも可能である。この実測データは、つまり、姿勢ごとに計測された、筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び血流量の実測値を姿勢と対応付けて蓄積することで構築されたデータベースである。この場合の疲労推定システム200では、推定された対象者11の姿勢をデータベースに入力することで、対応する姿勢での、筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び血流量の実測値を出力として得ることができる。
【0022】
実測データは、対象者11の個人差を考慮して、個人ごとの実測値を用いて構築されてもよく、不特定多数の被検者から得られたビッグデータについて、統計解析、又は機械学習等の解析処理によって対象者11ごとに適合するよう、適格化して構築されてもよい。
【0023】
次に、本開示における疲労推定システム200の機能構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態に係る疲労推定システムの機能構成を示すブロック図である。
【0024】
図2に示すように、本開示における疲労推定システム200は、推定装置100、撮像装置201、計時装置202、圧力センサ203、受付装置204、記憶装置215、高さセンサ216、表示装置205、及び回復装置206を備える。
【0025】
推定装置100は、第1取得部101と、第2取得部102と、第3取得部103と、第4取得部104と、第5取得部115と、第6取得部116と、姿勢推定部105と、第1算出部106と、第2算出部107と、疲労推定部108と出力部109と、を備える。
【0026】
第1取得部101は、撮像装置201に接続され、撮像装置201から対象者11が撮像された画像を取得する通信モジュールである。つまり、第1取得部101は、取得部の一例である。なお、第1取得部101は、取得した画像に含まれる什器(例えば、椅子12や机13)を検出し、その什器の天面を検出する機能も併せ持つ。すなわち、第1取得部101は、画像に含まれる什器の天面を検出する検出部の一例でもある。第1取得部101と撮像装置201との接続は、有線又は無線によって行われ、当該接続を介して行われる通信の方式にも特に限定はない。
【0027】
第2取得部102は、計時装置202に接続され、計時装置202から時間を取得する通信モジュールである。第2取得部102と計時装置202との接続は、有線又は無線によって行われ、当該接続を介して行われる通信の方式にも特に限定はない。
【0028】
第3取得部103は、圧力センサ203に接続され、圧力センサ203から圧力分布を取得する通信モジュールである。第3取得部103と圧力センサ203との接続は、有線又は無線によって行われ、当該接続を介して行われる通信の方式にも特に限定はない。
【0029】
第4取得部104は、受付装置204に接続され、受付装置204から個人情報を取得する通信モジュールである。第4取得部104と受付装置204との接続は、有線又は無線によって行われ、当該接続を介して行われる通信の方式にも特に限定はない。
【0030】
第5取得部115は、記憶装置215に接続され、対象者11の腰椎骨格11m(
図3A参照)の長さL(
図3B参照)を取得する通信モジュールである。つまり、第1取得部101は、取得部の一例である。なお、第5取得部115は、腰椎骨格11mの長さを取得する長さ取得部の一例である。第5取得部115は、記憶装置215にあらかじめ記憶された対象者11の腰椎骨格11mの長さLを、記憶装置215にアクセスすることによって取得する。例えば、第5取得部115は、対象者11に関する情報(対象者11を他者から識別するための識別情報)をクエリとして記憶装置215に送信し、そのクエリに対する応答結果として、当該対象者11の腰椎骨格11mの長さLを取得する。腰椎骨格の長さとは、対象者11の背部関節11l(
図3A参照)から延びて、腰部関節11n(
図3A参照)につながる、関節同士を接続する骨格の1つである。第5取得部115は、対象者において非可視部位11c(
図3A参照)がどの領域にまで及ぶかによって、用いられる場合と用いられない場合とがある。言い換えると、撮像装置201から見て対象者11の隠れていない可視部位11d(
図3A参照)と、隠れている非可視部位11cとの境界が対象者11のどの部位にあたるかによって、第5取得部115が必要でない場合がある。このような場合、第5取得部115は、備えられなくてもよい。つまり、第5取得部115は、必須の構成ではない。なお、記憶装置215は、以下に説明される図示しない記憶装置等の機能を兼ねていてもよい。
【0031】
また、第5取得部115は、対象者11が着座したときに、座面から腰部関節11nまでの高さH2(
図3B参照)を取得する。この高さH2には、対象者11の体重、及び、着座に関与する臀部の肉厚などが関与している。例えば、記憶装置215には、対象者11の体重及び臀部の肉厚等に関する情報が入力されると、これらの数値から算出される高さH2が記憶される。そして、第5取得部115は、対象者11に関する情報をクエリとして記憶装置215に送信し、そのクエリに対する応答結果として、当該対象者11の高さH2を取得する。
【0032】
第5取得部115と記憶装置215との接続は、有線又は無線によって行われ、当該接続を介して行われる通信の方式にも特に限定はない。
【0033】
第6取得部116は、高さセンサ216に接続され、対象者11が着座する椅子12の座面の高さH1(
図3B参照)を取得する通信モジュールである。高さセンサ216は、椅子12に取り付けられており、対象者11が椅子12に着座しているときの高さH1を検知して送信している。一方で、第6取得部116は、高さセンサ216が検知した高さH2を受信する。高さH2は、高さH1と合わせることにより、対象者11の腰部関節11nの高さに一致する。つまり、第5取得部115及び第6取得部116は、高さH2及び高さH1をそれぞれ受信して、腰部関節11nの高さを取得しているといえる。したがって、第5取得部115と第6取得部116とを併せて、高さ取得部の一例であるともいえる。
【0034】
高さ取得部は、他に、対象者11が着座している状態の画像を取得して、当該画像から対象者11の腰部関節11nの高さを算出する処理部等によって実現されてもよい。この場合、画像は、撮像装置201によって取得されてもよいが、撮像装置201と対象者11との位置関係によって、腰部関節11nが画像に写らない場合がある。この場合には、対象者11をあらかじめ画像に写る範囲に移動するように誘導し、この範囲内で椅子12に着座させることで、腰部関節11nの高さ撮像装置201で撮像された画像によって取得することもできる。
【0035】
第6取得部116と高さセンサ216との接続は、有線又は無線によって行われ、当該接続を介して行われる通信の方式にも特に限定はない。
【0036】
姿勢推定部105は、プロセッサ及びメモリを用いて所定のプログラムが実行されることにより実現される処理部である。姿勢推定部105の処理により、第1取得部101において取得された画像、及び第3取得部103において取得された圧力分布に基づいて、対象者11の姿勢が推定される。
【0037】
第1算出部106は、プロセッサ及びメモリを用いて所定のプログラムが実行されることにより実現される処理部である。第1算出部106の処理により、推定された対象者11の姿勢、及び第4取得部において取得された個人情報に基づいて、個々の筋肉及び/又は関節にかかる負荷量が算出される。
【0038】
第2算出部107は、プロセッサ及びメモリを用いて所定のプログラムが実行されることにより実現される処理部である。第2算出部107の処理により、推定された対象者の姿勢の変化における変化量に基づいて、個々の筋肉及び/又は関節における疲労の回復量が算出される。
【0039】
疲労推定部108は、プロセッサ及びメモリを用いて所定のプログラムが実行されることにより実現される処理部である。疲労推定部108は、姿勢推定部105において推定された姿勢と、第2取得部102において取得された時間とを用いて、推定された姿勢の継続時間に基づいて、対象者11の疲労度を推定する。
【0040】
出力部109は、表示装置205及び回復装置206に接続され、推定装置100による疲労度の推定結果に基づく内容を表示装置205及び回復装置206に出力する通信モジュールである。出力部109と表示装置205又は回復装置206との接続は、有線又は無線によって行われ、当該接続を介して行われる通信の方式にも特に限定はない。
【0041】
撮像装置201は、上記したように、対象者11を撮像して画像を出力する装置であり、カメラによって実現される。撮像装置201として、防犯カメラ、定点カメラ等の疲労推定システム200を適用する空間に既存のカメラが用いられてもよく、専用のカメラが新たに設けられてもよい。このような撮像装置201は、画像を対象者11の身体部位の位置に関する情報として出力する情報出力装置の一例である。したがって、出力される情報は、画像であり、対象者11の身体部位の、投影された撮像素子上での位置関係を含む情報である。
【0042】
計時装置202は、時間を計測する装置であり、時計によって実現される。計時装置202は、接続された第2取得部102へと時間を送信可能である。ここで、計時装置202によって計測される時間とは、絶対的な時刻であってもよく、相対的な起点からの経過時間であってもよい。計時装置202は、対象者11の静止を検出した時点と、疲労度を推定する時点との2時点の間の時間(つまり静止姿勢の継続時間)が計測できればどのような形態で実現されてもよい。
【0043】
圧力センサ203は、検出面を有するセンサであり、当該検出面を1以上に区切る単位検出面のそれぞれに付与される圧力を計測する。圧力センサ203は、このように単位検出面ごとの圧力を計測し、検出面上における圧力分布を出力する。圧力センサ203は、対象者11が検出面上に位置するように設けられる。
【0044】
例えば、圧力センサ203は、対象者11が着座する椅子の座面、及びバックレストに設けられる。また、例えば、圧力センサ203は、検出面上にマーカが付され、「マーカの上に座ってください」等の表示によって、対象者11を検出面上に誘導するようにしてもよい。また、このようにして、床上の一部分に設けられた圧力センサ203の検出面上に対象者11を誘導することで、圧力センサ203は、床上での対象者11の圧力分布を出力してもよい。なお、圧力分布は、疲労度の推定精度を向上する目的で使用されるため、十分な精度が確保される場合には、圧力センサ203を備えずに疲労推定システム200を実現してもよい。
【0045】
受付装置204は、対象者11の個人情報の入力を受け付けるユーザインタフェースであり、タッチパネル又はキーボード等の入力装置によって実現される。個人情報は、年齢、性別、身長、体重、筋肉量、ストレス度、体脂肪率、及び運動に対する習熟度のうち少なくとも一つを含む。対象者11の年齢は、具体的な数値であってもよく、10代、20代、及び30代のように、10歳ごとに区分された年齢帯であってもよく、59歳以下又は60歳以上のように所定の年齢を境とした二区分の年齢帯であってもよく、その他であってもよい。
【0046】
また、対象者11の性別は、男性又は女性の二者のうちから選択される、対象者11に適切な一方である。また、身長及び体重は、対象者11の身長及び体重の数値がそれぞれ受け付けられる。また、筋肉量は、体組成計等を用いて計測された対象者11の筋肉の組成比率が受け付けられる。また、対象者11のストレス度は、対象者11が感じる主観的なストレスの程度として、高度、中度及び低度等の選択肢の中から対象者11自身によって選択される。
【0047】
また、対象者11の体脂肪率は、対象者11の体重に占める体脂肪の重量の比率であり、例えば、100分率等で表現される。
【0048】
また、対象者11の運動に対する習熟度は、所定の運動プログラムを対象者11が実施した際のスコアで定量化されていてもよく、対象者11が普段取り組む運動の状況であってもよい。前者では、例えば、背筋を10回行うのに要した時間、50mを走るのに要した時間、遠投の飛距離等によって定量化される。後者では、例えば、一週間に何日運動を行うか、又は何時間運動を行うか等によって定量化される。なお、個人情報は、疲労度の推定精度を向上する目的で使用されるため、十分な精度が確保される場合には、受付装置204を備えずに疲労推定システム200を実現してもよい。
【0049】
記憶装置215は、上記したように、情報を記憶することができる装置である。記憶装置215は、半導体メモリ、光学ディスク、又は、磁気ディスクなどによって実現される。
【0050】
高さセンサ216は、上記したように、対象の高さを検知するためのセンサである。高さセンサ216は、ここでは、椅子12の座面を対象として、その高さを検知するように構成されている。
【0051】
表示装置205は、出力部109によって出力された、疲労度の推定結果に基づく内容を表示するための装置である。表示装置205は、例えば、液晶パネルまたは有機EL(Electro Luminescence)パネルなどの表示パネルによって、疲労度の推定結果に基づく内容を示す画像を表示する。表示装置205によって表示される内容については後述する。また、疲労推定システム200は、対象者11に対して回復装置206を用いて対象者11の疲労度を低下させるのみの構成である場合、回復装置206のみを備えればよく、表示装置205は必須でない。
【0052】
回復装置206は、対象者11の血行を促進させることで対象者11の疲労度を低下させる装置である。回復装置206は、具体的には、電圧印加、加圧、加振もしくは加温等、又は、椅子12に備えられた機構により椅子12の各部の配置が変化することで、着座する対象者11の姿勢を能動的に変更する。これにより、回復装置206は、対象者11の筋肉及び関節の少なくとも一方の負荷の態様を変更し、また、血行を促進させる。血流量の観点においても、このようにして血行が促進されることで、対象者11が静止姿勢であることによる血流悪化の影響が低減され、疲労度が回復する。回復装置206は、装置の構成に応じて、対象者11の適切な身体部位にあらかじめ装着又は接触される。
【0053】
なお、加温により対象者11の血行を促進させる場合、対象者11の周囲の空間ごと加温するため、このような場合は、対象者11の適切な身体部位に装着又は接触される必要はない。また、疲労推定システム200は、対象者11に対して疲労度の推定結果を表示するのみの構成である場合、表示装置205のみを備えればよく、回復装置206は必須でない。
【0054】
ここで、
図3A及び
図3Bを用いて、対象者11の可視部位11dと非可視部位11cとについて説明する。
図3Aは、実施の形態に係る姿勢の推定について説明する第1図である。
図3Bは、実施の形態に係る姿勢の推定について説明する第2図である。
【0055】
図3A及び
図3Bでは、対象者11が椅子12に着座し、机13に図示しない作業対象物を置いて作業している様子が示されている。
図3A及び
図3Bでは、対象者11の左右方向(対象者11、椅子12、及び、机13の並び面に直交する方向)から対象者11を平面視した図が示されている。
【0056】
図示するように、対象者11と机13と撮像装置201との位置関係によっては、撮像装置201から見て対象者11の一部(非可視部位11c)が机13の裏側に位置することになり、撮像装置201によって撮像された画像では、このような非可視部位11cについて、姿勢の推定を行うことは困難である。一方で、対象者11の疲労度の推定において、腰椎骨格11mと大腿部骨格11oとがなす角度11xは、体幹部分の姿勢を決める重要な部分である。しかしながら、対象者11が机13を用いる場合に、非可視領域に大腿部骨格11oが含まれることが多く、角度11xの推定を行うことが困難となる状況が多く発生する。
【0057】
本開示に係る発明者らは、このような場合でも、大腿部骨格11oが一定の法則で水平面と所定の角度をなす可能性が高いことから、可視部位11dの、非可視部位11c側の端部から、大腿部骨格11oの延びる方向を推定することが可能となることを見出した。上記の一定の法則とは、例えば、対象者11が座位である場合に、大腿部骨格11oの延びる方向が水平面に平行(所定の角度が0度)に近い、すなわち、所定の角度が-10度~10度の範囲内の角度となることである。また、一定の法則とは、例えば、対象者11が立位である場合に、大腿部骨格11oの延びる方向が水平面に垂直(所定の角度が90度)に近い、すなわち、所定の角度が80度~100度の範囲内の角度となることである。
【0058】
また、一定の法則とは、例えば、対象者11が臥位である場合に、大腿部骨格11oの延びる方向が水平面に平行(所定の角度が0度)に近い、すなわち、所定の角度が-10度~10度の範囲内の角度となることである。なお、以上の所定の角度に関する角度範囲は一例であり、対象者11の姿勢の癖などに合わせて、より広い範囲の角度範囲が適用されてもよい。また、このような相対的な角度の関係に方向性はなく、上記の0度は、180度と同じである。同様に、上記の90度は、270度と同じである。つまり、本説明では、所定の角度に180度の倍数を加減しても所定の角度と同じものとして扱われる。
【0059】
なお、本説明では、大腿部骨格11oを例として扱うが、水平面に対して、一定の法則で所定の角度を決定することができる骨格であれば、同様に非可視部位11cとなった場合に、本願発明を適用して姿勢の推定を行うことが可能である。つまり、ここでの姿勢の推定対象は、大腿部骨格11oに限られない。
【0060】
また、通常、画像から水平面を検出するためには、水平面を検出するために机13等の什器の天面を利用することで、机上面13aの画像内での変形の程度に基づいて、撮像装置201の撮像方向に対する相対的な方向として、画像内で効率的に水平面を検出することが可能となる。例えば、矩形の天面は、撮像方向に直交する方向に近づくほど直角の矩形となり、撮像方向に平行な方向に近づくほど上底と下底との長さの差が大きい台形形状となる。なお、水平面の検出に用いる什器は、対象者11の周囲にある什器であればよい。言い換えると、対象者11とともに画像に含まれる什器であれば机13以外の什器が用いられてもよい。例えば、収納庫等が対象者11の近くに存在すれば、その収納庫の上面を天面として検出し、水平面として利用することもできる。
【0061】
以上を利用して、
図3A及び
図3Bに示す、可視部位11d及び非可視部位11cを含む対象者11の姿勢の推定を説明する。まず、
図3Aでは、非可視部位11cは、図中の剛体リンクモデル11aに含まれる破線及び白抜き丸印のように、大腿部骨格11o、ならびに、それよりも足先側の関節及び骨格を含む。そして、可視部位11dは、図中の剛体リンクモデル11aに含まれる実線及び黒塗り丸印のように、腰部関節11n、ならびに、それよりも頭部側の関節及び骨格を含む。
【0062】
この例では、机上面13aから推定される水平面(二点鎖線)に平行となるように、腰部関節の位置から大腿部骨格11oが延びるように、非可視部位11cの姿勢を推定すれば、容易に角度11xを推定することが可能となる。
【0063】
次に、
図3Bでは、非可視部位11cは、腰椎骨格11m、腰部関節11n及び大腿部骨格11o、ならびに、それよりも足先側の関節及び骨格を含む。そして、可視部位11dは、図中の剛体リンクモデル11aに含まれる背部関節11l、ならびに、それよりも頭部側の関節及び骨格を含む。
【0064】
この例では、まず、背部関節の位置から、第5取得部115が取得した腰椎骨格11mの長さLで可動範囲内となる、背部関節11lを中心とする半径が長さLの球面上、かつ、第5取得部115及び第6取得部116が取得した腰部関節の高さ(H1+H2)の高さ面で交差する円周上に一致する腰部関節11nがあると推定される。なお、推定した腰部関節11nの位置の候補が複数ある場合には、そのうちの1つを選択するようにすればよい。このような選択の方法として、例えば、過去の対象者11の姿勢をいくつか記憶しておき、とりうる姿勢の傾向から、上記の選択を行えばよい。そして、机上面13aから推定される水平面(二点鎖線)に平行となるように、推定した腰部関節11nの位置から大腿部骨格11oが延びるように、非可視部位11cの姿勢を推定すれば、容易に角度11xを推定することが可能となる。
【0065】
なお、以上のように、非可視部位11cの姿勢の推定は、推定可能ないくつかの部位のみが行われる。その他の部位(膝部関節等)は、無視されてもよいし、別の手法で推定されてもよい。
【0066】
[動作]
次に、実施の形態における疲労推定システム200を用いた対象者11の疲労度の推定について、
図4A~
図6Bを用いて説明する。
図4Aは、実施の形態に係る疲労度の推定方法を示すフローチャートである。また、
図4Bは、実施の形態に係る一部のステップの詳細を示すサブフローチャートである。
【0067】
疲労推定システム200は、はじめに対象者11の個人情報を取得する(ステップS101)。個人情報の取得は、受付装置204への入力によって、対象者11本人又は対象者11の疲労度を管理する管理者等によって行われる。入力された対象者11の個人情報は、図示しない記憶装置等に格納され、疲労度の推定の際に読み出されて使用される。
【0068】
疲労推定システム200は、撮像装置201により対象者11の検知を行う(ステップS102)。対象者11の検知は、撮像装置201であるカメラの画角内に対象者11が入り込んだか否かの判定によって行われる。なお、このとき対象者11は、特定の対象者11であってもよく、不特定多数の中から、カメラの画角内に入った人物が対象者11となってもよい。不特定多数の中から対象者11が選択される場合、個人情報の入力が省略されてもよい。また、特定の対象者11を検知する場合には、画像認識等により対象者11を特定するステップが追加される。
【0069】
本実施の形態では、対象者11本人が個人情報を入力したうえ、撮像装置201による検知エリアを把握して、当該検知エリア内に入ることで、疲労度の推定が行われる例を説明する。したがって、画像認識等は不要であり、かつ、個人情報を加味して疲労度が推定される。
【0070】
疲労推定システム200は、対象者11が検知されていないと判定された場合(ステップS102でNo)、対象者11が検知されるまでステップS102を繰り返す。一方、対象者11が検知された場合(ステップS102でYes)、撮像装置201によって出力された画像が第1取得部101によって取得される(ステップS103、取得ステップの一例)。ここで、取得された画像において、対象者11が静止している(静止姿勢である)ことが検知されると(ステップS104)、推定装置100において対象者11の姿勢の推定が行われる。具体的には、まず、第3取得部103は、圧力センサ203から検出面に付与される圧力分布を取得する(ステップS105)。
【0071】
姿勢推定部105は、取得された画像及び圧力分布に基づき対象者11の姿勢を推定する(姿勢推定ステップS106)。ここで、姿勢推定ステップS106は、
図4Bに示す、サブフローチャートに従って実行される。まず、第1取得部101が、取得した画像内で什器(ここでは机13)の検出を行い、その天面(机上面13a)を検出する(ステップS106a)。これにより、画像内で、水平面に平行な方向を推定できる。次に、姿勢推定部105は、画像に含まれる対象者に基づいて、可視部位11dの姿勢を推定する(ステップS106b)。この結果、可視部位11dに含まれる関節及び骨格の位置が推定される。
【0072】
次に、姿勢推定部105は、検出された天面に基づいて、非可視部位11cの姿勢を推定する(ステップS106c)。ここでは、例えば、大腿部骨格11oの位置が推定される。そして、姿勢推定部105は、第3取得部103が取得した圧力分布に基づいて、推定された姿勢(可視部位11d及び非可視部位11cの姿勢)を補正する(ステップS106d)。
【0073】
圧力分布に基づく姿勢の補正は、例えば、以下のように行われる。圧力分布は、例えば、偏った圧力が付与されている場合、推定される姿勢を当該偏りが形成されるように補正するために使用される。次に、第1算出部106は、姿勢の推定結果から、対象者11の個々の筋肉及び/又は関節における負荷量を算出する。このとき、あらかじめ取得した個人情報を用いて、負荷量を補正して算出する(ステップS107)。なお、対象者11の姿勢の推定は
図1Bを用いて、負荷量の算出は
図1Cを用いてそれぞれ説明した通りであるため、具体的な説明を省略する。
【0074】
個人情報を用いた負荷量の補正では、例えば、対象者11の年齢が筋肉の発達のピーク年齢に近いほど負荷量を少なくし、当該ピーク年齢から離れるほど負荷量を多くする。このようなピーク値は対象者11の性別に基づいてもよい。また、対象者11の性別が男性であれば負荷量を少なく、女性であれば負荷量を多くしてもよい。また、対象者11の身長及び体重が小さい値であるほど負荷量を少なく、身長及び体重が大きい値であるほど負荷量を多くしてもよい。
【0075】
また、対象者11の筋肉量が大きい組成比率であるほど負荷量を少なく、筋肉量が小さい組成比率であるほど負荷量を多くしてもよい。また、対象者11のストレス度が低いほど負荷量を少なく、ストレス度が高いほど負荷量を多くしてもよい。また、対象者11の体脂肪率が高いほど負荷量を多く、体脂肪率が低いほど負荷量を少なくしてもよい。さらに、対象者11の運動に対する習熟度が高いほど負荷量を少なく、運動に対する習熟度が低いほど負荷量を多くしてもよい。
【0076】
ここで、第2取得部102において取得される時間をもとに、対象者11の静止姿勢の継続時間を計測する(ステップS108)。疲労推定部108は、継続時間が単位時間を経過するごとに上記で算出した負荷量を加算し、この時点における対象者11の疲労度を推定する(疲労推定ステップS109)。ステップS108及び疲労推定ステップS109の処理を、対象者11の静止状態が解除されるまで継続する。具体的に、姿勢推定部105において推定される姿勢が、ある静止姿勢から変更されたか否かにより、静止状態の解除の有無を判定する(ステップS110)。
【0077】
静止状態が解除されたと判定されない場合(ステップS110でNo)、ステップS108に戻り、継続時間を計測し、疲労推定ステップS109に進み、負荷量の加算を行うことで、静止姿勢が継続される限り対象者11の疲労度を積算していく。つまり、疲労推定部108は、ステップS108及び疲労推定ステップS109を繰り返すことで、継続時間に対して、算出された負荷量に相当する傾きを有する疲労度の増加関数を用いて対象者11の疲労度を推定する。したがって、算出した負荷量が多いほど、単位時間当たりに増加する対象者11の疲労度が大きくなる。なお、このような疲労度の積算においては、起点である静止姿勢の開始タイミングで対象者11の疲労度が初期化(疲労度0に設定)される。
【0078】
一方で、静止状態が解除されたと判定された場合(ステップS110でYes)、姿勢推定部105は、元の静止状態の姿勢から、変化した現時点の姿勢までの姿勢の変化量を算出する。姿勢の変化量は、上記の負荷量と同様に個々の筋肉及び/又は関節ごとに算出される。このように姿勢が変化した際、筋肉及び関節の少なくとも一方に対する負荷が変化し、また、血流量の観点では、悪化していた血流が一時的に緩和され、対象者11の疲労度は回復に転じる。回復によって低減される疲労度は、姿勢の変化量に関連する。これにしたがって、第2算出部107は、姿勢の変化量に基づき、疲労度の回復の程度である回復量を算出する(ステップS111)。
【0079】
第2取得部102において取得される時間をもとに、対象者11の姿勢の変更が継続する時間である変化時間を計測する(ステップS112)。回復量と変化時間との関係は、負荷量と継続時間との関係と同様であり、姿勢の変化が継続される限り対象者11の回復量を積算していく。つまり、疲労推定部108は、このように対象者11の姿勢が変化するタイミングでは、単位時間が経過するごとに回復量を減算することで対象者11の疲労度を推定する(ステップS113)。
【0080】
ステップS111、ステップS112及びステップS113の処理を、対象者11の姿勢が静止されるまで継続する。具体的に、姿勢推定部105において推定される姿勢が、ある静止姿勢であるか否かを対象者11の静止が検出されているか否かによって判定する(ステップS114)。対象者11の静止が検出されない場合(ステップS114でNo)、ステップS111に戻り、回復量を算出し、ステップS112に進み、変化時間を計測し、ステップS113に進み、回復量の減算を行うことで、姿勢の変更が継続される限り対象者11の疲労度が回復するように積算していく。
【0081】
つまり、疲労推定部108は、ステップS111、ステップS112及びステップS113を繰り返すことで、変化時間に対して、算出された回復量に相当する傾きを有する疲労度の減少関数を用いて対象者11の疲労度を推定する。疲労度の回復量は、姿勢の変化量に依存しているため、姿勢の変化量が大きいほど、単位時間当たりに減少する対象者11の疲労度が大きくなる。
【0082】
一方で、対象者11の静止が検出された場合(ステップS114でYes)、ステップS105に戻り、再度新たな静止姿勢について、姿勢及び疲労度の推定を行う。このようにして、疲労推定システム200では、画像に基づき静止姿勢での継続時間を考慮して対象者11の疲労度が算出されるため、対象者11の負担が少なく、かつ、より高精度に対象者11の疲労度を推定することができる。
【0083】
以上に関して、さらに
図5A~
図6Bを用いて具体的に説明する。
図5Aは、姿勢Aで静止する対象者を示す図である。また、
図5Bは、姿勢Bで静止する対象者を示す図である。
【0084】
図5A及び
図5Bに示す対象者11は、
図1Aに示したものと同様に、椅子12に着座した座位にて静止姿勢をとっている。なお、
図5A及び
図5Bでは、図示しないテーブルやPC等が実際には存在するが、ここでは対象者11及び椅子12のみを図示している。
図5Aに示す対象者11の静止姿勢は、肩への負荷が比較的に多い姿勢Aである。一方で、
図5Bに示す対象者11の静止姿勢は、肩への負荷が比較的に少ない姿勢Bである。
【0085】
このような姿勢A又は姿勢Bで静止する対象者11において推定される疲労度は、
図6A及び
図6Bのように蓄積される。
図6Aは、実施の形態に係る推定される対象者の疲労度の蓄積を説明する第1図である。また、
図6Bは、実施の形態に係る推定される対象者の疲労度の蓄積を説明する第2図である。
【0086】
図6Aに示すように、対象者11の姿勢が
図5Aに示す姿勢A又は
図5Bに示す姿勢Bのまま静止している場合、対象者11の疲労度は、姿勢から算出される負荷量を傾きとする一次関数によって表現される。
【0087】
上記したように、姿勢Aは、姿勢Bに比べて負荷が大きい姿勢である。したがって、例えば、対象者11のある筋肉(ここでは肩の可動に関する筋肉)において、姿勢Aの負荷量(姿勢Aの直線の傾き)は、姿勢Bの負荷量(姿勢Bの直線の傾き)よりも大きい。このため、対象者11は、姿勢Aでは、姿勢Bで静止している場合に比べ、より短時間により多くの疲労度が蓄積(積算)されてしまう。
【0088】
一方で、
図6Bに示すように、対象者11の姿勢が
図5Aに示す姿勢Aから
図5Bに示す姿勢Bへと変化する場合、対象者11の疲労度は、姿勢から算出される負荷量を傾きとする一次関数と、姿勢の変化量を傾きとする一次関数とが連結された関数によって表現される。
【0089】
したがって、例えば、対象者11のある筋肉において、姿勢Aで静止している間は、対象者11の疲労度は、
図6Aと同様に、姿勢Aの負荷量に相当する正の傾きの増加関数によって疲労度の蓄積(加算)として推定され、対象者11が姿勢を変更し始めた変化点において蓄積(加算)が回復(減少)に転じる。対象者11の疲労度は、姿勢の変更量に相当する負の傾きの減少関数によって、図中に変化時間として示す姿勢の変更が継続している期間に、対象者11の疲労度が、図中に変化幅として示す量だけ回復(減少)する。対象者11の姿勢が姿勢Bで再び静止した変化点以降では、対象者11の疲労度は、姿勢Bの負荷量に相当する正の傾きの増加関数で、疲労度の蓄積(加算)として推定される。
【0090】
このように、本実施の形態における疲労推定システム200では、対象者11の姿勢の静止と変更とに応じて蓄積及び回復が反映された対象者11の疲労度が推定される。
【0091】
次に、推定された疲労度に基づく出力部109の出力の一例を説明する。
図7は、実施の形態に係る推定結果の表示例を示す第1図である。また、
図8は、実施の形態に係る推定結果の表示例を示す第2図である。
【0092】
図7及び
図8に示すように、疲労推定システム200では、対象者11の疲労度の推定結果を、表示装置205を用いて表示してフィードバックすることができる。具体的には、
図7に示すように、対象者11の疲労度を可視化することで、視覚的に対象者11がどの程度疲労しているかを把握することができる。図中では、対象者11を模した人形と、対象者11の肩部、背部、及び要部の疲労度のそれぞれとを、表示装置205によって一体的に表示している。対象者11が直感的に疲労度を把握しやすくするため、肩部の疲労度が「肩こり度」、背部の疲労度が「背部痛度」、腰部の疲労度が「腰痛度」としてそれぞれ示されている。
【0093】
ここで、図中の表示では、対象者11の3か所の疲労度が一挙に表示されているが、これら3か所の疲労度の推定は、一度に撮像された画像から行われる。つまり、推定装置100は、対象者11の第1部位(例えば肩部)及び第2部位(例えば背部)、及び第3部位(例えば腰部)を含む複数の身体部位の各々における筋肉及び/又は関節について、対象者11の一つの姿勢から疲労度を推定する。したがって、対象者11の姿勢が一定であっても、身体部位ごとに筋肉及び/又は関節に蓄積される疲労度は異なるが、疲労推定システム200では、このように異なる疲労度を同時かつ個別に推定できる。
【0094】
図1Cを用いて説明したように、本実施の形態では、対象者11の筋肉及び/又は関節一つひとつについて負荷量が算出されるため、処理リソースの制限がなければ、筋肉及び/又は関節の一つひとつの疲労度を推定することができる。したがって、一度に撮像された画像から疲労度が推定される身体部位の数に限定はなく、1か所でもよく、2か所でもよく、4か所以上でもよい。
【0095】
推定装置100では、複数の身体部位の各々で負荷量を算出し、対象者11の一つの姿勢において、第1部位で算出された負荷量による第1部位の疲労度(上記の肩こり度)と、第2部位で算出された負荷量による第2部位の疲労度(上記の背部痛度)と、第3部位で算出された負荷量による第3部位の疲労度(上記の腰痛度)と、を推定できる。
【0096】
また、図中の例では、僧帽筋の負荷量から肩こり度が推定され、広背筋の疲労度から背部痛度が推定され、腰部傍脊柱筋の負荷量から腰痛度が推定される。このように、一つの筋肉及び/又は関節の負荷量から、一つの疲労度を推定してもよいが、複数の筋肉及び/又は関節の複合的な負荷量から、一つの疲労度を推定してもよい。例えば、僧帽筋と、肩甲挙筋と、菱形筋と、三角筋との負荷量の平均値から肩こり度(つまり肩部の一つの疲労度)が推定されてもよい。また、疲労度の推定では、単純な平均値ではなく、当該身体部位の疲労度に特に大きく影響する筋肉及び/又は関節の負荷量に重みづけすることで、より現実に即したな疲労度の推定を行ってもよい。
【0097】
このようにして推定された疲労度は、それぞれ図示するように最小値を0、最大値を100とする基準メータ上の相対位置として示されてもよい。ここで、基準メータ上の所定の位置に基準値が設けられる。このような基準値は、疫学的調査等によって事前に数値化された一般的な対象者11において痛みなどの自覚症状が発現し得る疲労度の相対位置(又はその前後等)に設定される。したがって、基準値は、各身体部位の疲労度に応じて異なる値が設定されてもよい。
【0098】
さらに、表示装置205は、推定された対象者11の疲労度が基準値に達したことを契機に、対象者11に対する警告を推定結果として表示してもよい。ここでの基準値は、第1閾値の一例である。図中では、このような警告の一例として、表示装置205の下部に表示されているように「肩こり度が基準値を超えています。」を示している。また、このような警告に関連して、表示装置205は、図中に併記されているように「休憩をおすすめします。」等の具体的な対処方法を表示してもよい。
【0099】
また、
図8に示すように、表示装置205は、推定された対象者11の疲労度が基準値に達したことを契機に、対象者11に対して、現在推定されている対象者11の姿勢よりも、基準値に達した身体部位における負荷量が少ない推奨姿勢を表示してもよい。ここでの基準値は、第2閾値の一例であり、第1閾値と同一であってもよく、異なっていてもよい。表示される推奨姿勢には、当該姿勢をとる人形とともに「椅子の背もたれに体重を預ける」及び「座面に深く腰掛ける」のように、具体的な注意点が併記されてもよい。
【0100】
また、以上のように、対象者11に対して推定結果を表示することで対象者11自身が蓄積される疲労度に対処することを促す構成の他、疲労推定システム200がアクティブに対象者11の疲労度を回復させる構成も考えられ得る。具体的には、
図2に示した回復装置206が動作することで、対象者11の疲労度が回復される。回復装置206の具体的な構成については、上記したとおりであるので説明を省略するが、推定された対象者11の疲労度が基準値に達したことを契機に、回復装置206が動作し、対象者11の筋肉及び関節の少なくとも一方に対する負荷を変化させ、また、血行を促進させることで対象者の疲労度を低下させる。ここでの基準値は、第3閾値の一例であり、第1閾値及び第2閾値のいずれかと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0101】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態の第1態様における疲労推定システム200は、撮像装置201から見て、一部が隠れた対象者11の疲労度を推定する疲労推定システム200であって、対象者11及び対象者11の周囲の什器(机13等)を含む画像を撮像する撮像装置201と、撮像装置201から、画像を取得する第1取得部101(以下、画像取得部)と、取得された画像に含まれる什器の天面(机上面13a等)を検出する検出部(例えば、機能の1つとして第1取得部101に含まれる)と、対象者11の姿勢を推定する姿勢推定部105であって、画像に含まれる対象者11に基づいて、撮像装置201から見たときに隠れていない対象者11の可視部位11dの姿勢を推定し、検出された天面に基づいて、撮像装置201から見たときに隠れている対象者11の非可視部位11cの姿勢を推定する姿勢推定部105と、推定した対象者11の姿勢に基づいて、対象者11の疲労度を推定する疲労推定部108と、を備える。
【0102】
このような疲労推定システム200は、非可視部位11cの姿勢を、什器の天面に基づいて推定することができる。よって、非可視部位11cが存在して、当該非可視部位に係る疲労度が推定されない場合に比べて、推定した非可視部位11cの姿勢に基づいて対象者11の疲労度を推定することができるので、より高精度に疲労度を推定することができる。
【0103】
また、例えば、本実施の形態の第2態様では、可視部位11dは、対象者11の腰部関節11nを含み、非可視部位11cは、腰部関節11nから延びる骨格である対象者11の大腿部骨格11oを含み、姿勢推定部105は、推定された可視部位11dの姿勢に含まれる腰部関節11nの位置から、天面に対して所定の角度をなす方向に延びる大腿部骨格11oの延伸方向を推定する、第1態様に記載の疲労推定システムである。
【0104】
これによれば、可視部位11dが対象者11の腰部関節11nを含み、非可視部位11cが腰部関節11nから延びる骨格である対象者11の大腿部骨格11oを含む場合に、推定した大腿部骨格11oの姿勢に基づいて対象者11の疲労度を推定することができるので、より高精度に疲労度を推定することができる。
【0105】
また、例えば、本実施の形態の第3態様では、可視部位11dは、対象者11の背部関節11lを含み、非可視部位11cは、背部関節11lから延びる骨格である対象者11の腰椎骨格11mを介して背部関節11lとつながる対象者11の腰部関節11n、及び、腰部関節11nから延びる骨格である対象者11の大腿部骨格11oを含み、疲労推定システム200は、さらに、腰椎骨格11mの長さを取得する第5取得部115(以下、長さ取得部)と、腰部関節11nの高さを取得する第5取得部115及び第6取得部116(以下、高さ取得部)を備え、姿勢推定部105は、推定された可視部位11dの姿勢に含まれる背部関節11lの位置から、取得した腰椎骨格11mの長さの範囲内、かつ、取得した腰部関節11nの高さに一致する腰部関節11nの位置を推定し、推定された腰部関節11nの位置から、天面に対して所定の角度をなす方向に延びる大腿部骨格11oの延伸方向を推定する、第1態様に記載の疲労推定システムである。
【0106】
これによれば、可視部位11dは、対象者11の背部関節11lを含み、非可視部位11cは、背部関節11lから延びる骨格である対象者11の腰椎骨格11mを介して背部関節11lとつながる対象者11の腰部関節11n、及び、腰部関節11nから延びる骨格である対象者11の大腿部骨格11oを含む場合に、推定した腰部関節11n及び大腿部骨格11oの姿勢に基づいて対象者11の疲労度を推定することができるので、より高精度に疲労度を推定することができる。
【0107】
また、例えば、本実施の形態の第4態様では、対象者11が立位の場合、所定の角度は、80度~100度の範囲内の角度である、第2又は第3態様に記載の疲労推定システムである。
【0108】
これによれば、立位の対象者11において、天面に対して、80度~100度の範囲内の所定の角度の方向に延びる非可視部位11cの姿勢を推定することができる。
【0109】
また、例えば、本実施の形態の第5態様では、対象者11が立位の場合、所定の角度は、90度である、第4態様に記載の疲労推定システムである。
【0110】
これによれば、立位の対象者11において、天面に対して、90度の方向に延びる非可視部位11cの姿勢を推定することができる。
【0111】
また、例えば、本実施の形態の第6態様では、対象者11が座位の場合、所定の角度は、-10度~10度の範囲内の角度である、第2又は第3態様のいずれか1態様に記載の疲労推定システムである。
【0112】
これによれば、座位の対象者11において、天面に対して、-10度~10度の範囲内の所定の角度の方向に延びる非可視部位11cの姿勢を推定することができる。
【0113】
また、例えば、本実施の形態の第7態様では、対象者11が座位の場合、所定の角度は、0度である、第6態様に記載の疲労推定システムである。
【0114】
これによれば、座位の対象者11において、天面に対して、0度の方向に延びる非可視部位11cの姿勢を推定することができる。
【0115】
また、例えば、本実施の形態の第8態様では、什器は、対象者11が使用する机13であり、天面は、机13の机上面13aである、第1~第7態様のいずれか1態様に記載の疲労推定システムである。
【0116】
これによれば、什器としての机13における、天面としての机上面13aを用いて、非可視部位11cの姿勢を、推定することができる。
【0117】
また、例えば、本実施の形態の第9態様では、非可視部位11cは、撮像装置201から見て什器によって隠れている、第1~第8態様のいずれか1態様に記載の疲労推定システムである。
【0118】
これによれば、什器に隠れる対象者11の非可視部位11cの姿勢を当該什器の天面を用いて、非可視部位11cの姿勢を推定することができる。
【0119】
また、例えば、対象者11の身体部位の位置に関する情報を出力する情報出力装置(例えば、撮像装置201)と、情報出力装置において出力された情報(例えば、画像)に基づいて、対象者11の姿勢を推定し、推定した姿勢及び姿勢の継続時間に基づいて、対象者11の疲労度を推定する推定装置100と、を備えてもよい。
【0120】
また、例えば、情報出力装置は、対象者11を撮像して、身体部位の位置に関する情報として画像を出力する撮像装置201であり、推定装置100は、撮像装置201において出力された画像に基づいて、対象者11の姿勢を推定してもよい。
【0121】
このような疲労推定システム200は、撮像装置201によって出力された画像を用いて対象者11の疲労度を推定できる。対象者11の疲労度の推定では、出力された画像から推定される対象者11の姿勢が用いられる。具体的には、対象者11の姿勢が静止している静止姿勢で経過した継続時間から、一定の静止姿勢が維持されることによる筋肉への負荷量、関節への負荷量、血流の悪化等に伴う疲労の蓄積が疲労度として数値化される。このように、疲労推定システム200では、画像に基づき、静止姿勢での継続時間を考慮して対象者11の疲労度が算出されるため、対象者11の負担が少なく、かつ、より高精度に対象者11の静止姿勢での疲労度を推定することができる。
【0122】
また、例えば、推定装置100は、推定した姿勢の維持に用いられる対象者11の筋肉及び関節の少なくとも一方への負荷量を、筋骨格モデル11bを用いて算出し、継続時間に対する疲労度の増加関数を用いて疲労度を推定し、疲労度の推定に用いられる増加関数では、算出した負荷量が多いほど、単位時間当たりに増加する疲労度を大きくしてもよい。
【0123】
これによれば、筋骨格モデル11bを用いて個々の筋肉及び関節の少なくとも一方についての負荷量が算出される。このようにして算出された負荷量を傾きとする増加関数により、容易に、対象者11の疲労度を推定することができる。よって、容易に、より高精度な対象者11の疲労度の推定が実施できる。
【0124】
また、例えば、推定装置100は、対象者11の身体部位のうちの第1部位及び第2部位を含む2以上の身体部位の各々における筋肉及び関節の少なくとも一方で負荷量を算出し、対象者11の一の姿勢において、少なくとも、第1部位で算出された負荷量による第1部位の第1疲労度と、第2部位で算出された負荷量による第2部位の第2疲労度と、を推定してもよい。
【0125】
これによれば、一度の撮像で、対象者11の2以上の身体部位についての疲労度の算出を行うことができる。身体部位ごとに疲労度の推定のための測定等を行う必要がなく、複数の身体部位における疲労度の推定を迅速かつ略同時に行うことができる。また、略同時に推定された疲労度により、対象者11の疲労しやすい身体部位を容易に特定できるため、疲労度を回復させるための対処方法を講じる際に有効である。よって、迅速に有効な対象者11の疲労度の推定が実施できる。
【0126】
また、例えば、推定装置100は、姿勢が変更された場合に、時間に対する疲労度の減少関数を用いて疲労度を推定し、疲労度の推定に用いられる減少関数では、姿勢の変更量が大きいほど、単位時間当たりに減少する疲労度を大きくしてもよい。
【0127】
これによれば、対象者11の姿勢の変更に伴い、筋肉及び関節の少なくとも一方に対する負荷を変化させること、ならびに、血流を改善させることによる疲労度の回復が、推定される疲労度に反映される。よって、より高精度に対象者11の静止姿対象者の身体部位の位置に関する勢での疲労度を推定することができる。
【0128】
また、例えば、疲労推定システム200は、さらに、推定装置100において推定された対象者11の疲労度が第1閾値に達したことを契機に、対象者11に対する警告を推定結果として表示する表示装置205を備えてもよい。
【0129】
これによれば、対象者11等は、表示装置205に表示される警告により、対象者11の疲労度が第1閾値に達したことを知ることができる。対象者11は、表示された警告に従って、蓄積された疲労度に対処することで、疲労による体調不良、怪我及び事故等の不調が生じる可能性を抑制することができる。よって、より高精度に推定された疲労度を用いて、対象者11の疲労によってきたされる不調が抑制される。
【0130】
また、例えば、疲労推定システム200は、さらに、推定装置100において推定された対象者11の疲労度が第2閾値に達したことを契機に、対象者11に対して、姿勢よりも負荷量が少ない推奨姿勢を表示する表示装置205を備えてもよい。
【0131】
これによれば、対象者11等は、表示装置205に表示される推奨姿勢により、第2閾値に達した対象者11の疲労度に対処することができる。推奨姿勢に変更することにより、対象者11の疲労度の回復が見込まれるため、対象者11は、特に意識することなく疲労の蓄積を抑制できる。よって、より高精度に推定された疲労度を用いて、対象者11の疲労によってきたされる不調が抑制される。
【0132】
また、例えば、疲労推定システム200は、さらに、推定装置100において推定された対象者11の疲労度が第3閾値に達したことを契機に、対象者11の血行を促進させることで対象者11の疲労度を低下させる回復装置206を備えてもよい。
【0133】
これによれば、回復装置206によって対象者11の疲労度の回復が見込まれるため、対象者11は、特に意識することなく疲労の蓄積を抑制できる。よって、より高精度に推定された疲労度を用いて、対象者11の疲労によってきたされる不調が抑制される。
【0134】
また、例えば、疲労推定システム200は、さらに、検出面上に付与される圧力の分布を示す圧力分布を出力する圧力センサ203を備え、推定装置100は、圧力センサ203によって出力された圧力分布に基づいて、推定された対象者11の姿勢を補正し、補正した姿勢を維持するための負荷量を算出してもよい。
【0135】
これによれば、圧力センサ203によって出力された圧力分布を対象者11の姿勢の推定に用いることができる。したがって、圧力分布での補正により高精度に対象者11の姿勢が推定される。よって、より高精度に対象者11の疲労度を推定することができる。
【0136】
また、例えば、疲労推定システム200は、さらに、対象者11の年齢、性別、身長、体重、筋肉量、ストレス度、体脂肪率、及び運動に対する習熟度のうちの少なくとも一つを含む個人情報の入力を受け付ける受付装置204を備え、推定装置100は、推定した姿勢を維持するための負荷量を算出する際に、受付装置204において入力を受け付けた個人情報に基づいて負荷量を補正してもよい。
【0137】
これによれば、受付装置204によって受け付けられた個人情報を負荷量の算出に用いることができる。したがって、個人情報での補正により高精度に静止姿勢における負荷量が算出される。よって、より高精度に対象者11の疲労度を推定することができる。
【0138】
また、本実施の形態の第10態様における推定装置100は、撮像装置201から見て、一部が隠れた対象者11の疲労度を推定する推定装置100であって、撮像装置201から、対象者11及び対象者11の周囲の什器(机13等)を含む画像を取得する第1取得部101(以下、画像取得部)と、取得された画像に含まれる什器の天面(机上面13a等)を検出する検出部(例えば、機能の1つとして第1取得部101に含まれる)と、対象者11の姿勢を推定する姿勢推定部105であって、画像に含まれる対象者11に基づいて、撮像装置201から見たときに隠れていない対象者11の可視部位11dの姿勢を推定し、検出された天面に基づいて、撮像装置201から見たときに隠れている対象者11の非可視部位11cの姿勢を推定する姿勢推定部105と、推定した対象者の姿勢に基づいて、対象者の疲労度を推定する疲労推定部108と、を備える。
【0139】
このような推定装置100は、撮像装置201と組み合わせて上記に記載の疲労推定システム200と同様の効果を奏することができる。
【0140】
また、例えば、対象者11の身体部位の位置に関する情報を取得する第1取得部101と、第1取得部101において取得された情報に基づいて、対象者11の姿勢を推定する姿勢推定部105と、姿勢推定部105において推定された姿勢の継続時間に基づいて、疲労度を推定する疲労推定部108と、を備えてもよい。
【0141】
このような推定装置100は、取得された画像等の情報を用いて対象者11の疲労度を推定できる。対象者11の疲労度の推定では、取得された画像等から推定される対象者11の姿勢が用いられる。具体的には、対象者11の姿勢が静止している静止姿勢で経過した継続時間から、一定の静止姿勢が維持されることによる、筋肉及び関節の少なくとも一方に対する負荷、ならびに、血流の悪化に伴う疲労の蓄積が疲労度として数値化される。このように、推定装置100では、静止姿勢での継続時間を考慮して対象者11の疲労度が算出されるため、より高精度に対象者11の静止姿勢での疲労度を推定することができる。
【0142】
また、本実施の形態の第11態様における疲労推定方法は、撮像装置201から見て、一部が隠れた対象者11の疲労度を推定する疲労推定方法であって、撮像装置201から、対象者11及び対象者11の周囲の什器(机13等)を含む画像を取得し、取得された画像に含まれる什器の天面(机上面13a等)を検出し、画像に含まれる対象者11に基づいて、撮像装置201から見たときに隠れていない対象者11の可視部位11dの姿勢を推定し、検出された天面に基づいて、撮像装置201から見たときに隠れている対象者11の非可視部位11cの姿勢を推定し、推定した対象者11の姿勢に基づいて、対象者11の疲労度を推定する。
【0143】
このような疲労推定方法では、上記に記載の疲労推定システム200と同様の効果を奏することができる。
【0144】
また、例えば、対象者11の身体部位の位置に関する情報を取得する取得ステップ(ステップS103等)と、取得ステップにおいて取得された情報に基づいて、対象者11の姿勢を推定する姿勢推定ステップS106と、姿勢推定ステップS106において推定された姿勢の継続時間に基づいて、疲労度を推定する疲労推定ステップS109と、を含んでもよい。
【0145】
このような疲労推定方法では、上記の推定装置100と同様の効果を奏する。
【0146】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0147】
例えば、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0148】
また、本開示における疲労推定システム又は推定装置は、複数の構成要素の一部ずつを有する複数の装置で実現されてもよく、複数の構成要素のすべてを有する単一の装置で実現されてもよい。また、構成要素の機能の一部が別の構成要素の機能として実現されてもよく、各機能が各構成要素にどのように分配されてもよい。実質的に本開示の疲労推定システム又は推定装置を実現し得る機能がすべて備えられる構成を有する形態であれば本開示に含まれる。
【0149】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0150】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0151】
また、本開示の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0152】
また、上記実施の形態では、画像認識によって生成した剛体リンクモデルを用いて画像から対象者の姿勢を推定し、推定した対象者の姿勢から負荷量を算出し、負荷量と継続時間とに基づいて対象者の疲労度を推定したが、疲労度の推定方法はこれに限らない。画像から対象者の姿勢を推定する方法として、既存のいかなる方法が用いられてもよいし、対象者の姿勢から負荷量を推定する方法として、既存のいかなる方法が用いられてもよい。
【0153】
また、対象者の姿勢の推定方法として、撮像装置を用いる構成の他、位置センサを用いる構成により本開示を実現することも可能である。具体的に
図9を用いて説明する。
図9は、実施の形態の変形例に係る姿勢の推定について説明する図である。
図9に示すように、本変形例では、位置センサ207a及び電位センサ207bを含むセンサモジュール207を用いて対象者11の姿勢が推定される。ここでは、センサモジュール207は、対象者11に複数装着されているが、対象者11に装着されるセンサモジュール207の数に特に限定はない。センサモジュール207が対象者11に一つだけ装着されていてもよい。
【0154】
また、センサモジュール207の装着様式にも特に限定はなく、対象者11の所定の身体部位の位置を計測できればどのような様式であってもよい。一例として
図9では、センサモジュール207が複数取り付けられた衣装を着用することで、これら複数のセンサモジュール207が対象者11に装着されている。
【0155】
センサモジュール207は、対象者11の所定の身体部位に装着され、当該所定の身体部位に連動するようにして検知又は計測の結果を示す情報を出力する装置である。具体的には、センサモジュール207は、対象者11の所定の身体部位の空間位置に関する位置情報を出力する位置センサ207a、及び、対象者11の所定の身体部位における電位を示す電位情報を出力する電位センサ207bを有する。図中では、位置センサ207a及び電位センサ207bのいずれも有するセンサモジュール207が示されているが、センサモジュール207は、位置センサ207aを有していれば、電位センサ207bは必須ではない。
【0156】
このようなセンサモジュール207における位置センサ207aは、位置情報を対象者11の身体部位の位置に関する情報として出力する情報出力装置の一例である。したがって、出力される情報は、位置情報であり、対象者11の所定の身体部位の相対的又は絶対的な位置を含む情報である。また、出力される情報には、例えば、電位情報が含まれてもよい。電位情報は、対象者11の所定の身体部位において計測される電位の値を含む情報である。位置情報及び電位情報について、以下、位置センサ207a及び電位センサ207bとともに詳しく説明する。
【0157】
位置センサ207aは、センサモジュール207が装着される対象者11の所定の身体部位の空間的な相対位置又は絶対位置を検知し、検知結果である所定の身体部位の空間位置に関する情報を出力する検知器である。空間位置に関する情報は、上記のように空間内における身体部位の位置が特定可能な情報と、体動に伴う身体部位の位置の変化を特定可能な情報とを含む。具体的には、空間位置に関する情報は、関節及び骨格の空間内における位置と当該位置の変化を示す情報とを含む。
【0158】
位置センサ207aは、加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサ、及び測距センサ等の各種のセンサを組み合わせて構成される。位置センサ207aによって出力される位置情報は、対象者11の所定の身体部位の空間位置に近似することができるため、所定の身体部位の空間位置から対象者11の姿勢を推定することができる。
【0159】
電位センサ207bは、センサモジュール207が装着される対象者11の所定の身体部位における電位を計測し、計測結果である所定の身体部位の電位を示す情報を出力する検知器である。電位センサ207bは、複数の電極を有し、当該複数の電極間において生じる電位を電位計によって計測する計測器である。電位センサによって出力される電位情報は、対象者11の所定の身体部位において生じた電位を示し、当該電位が、所定の身体部位における筋肉の活動電位等に相当するため、所定の身体部位の活動電位等から推定される対象者11の姿勢の推定精度を向上することができる。
【0160】
本変形例における疲労推定システムは、上記のようにして推定された対象者11の姿勢を用いて、対象者11の疲労度を推定する。なお、対象者11の姿勢の推定以降の処理は、上記実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0161】
以上、本変形例における疲労推定システムでは、情報出力装置は、対象者11の所定の身体部位に装着され、対象者11の身体部位の位置に関する情報として所定の身体部位の空間位置に関する位置情報を出力する位置センサ207aであり、推定装置100は位置センサ207aにおいて出力された位置情報に基づいて、対象者11の姿勢を推定する。
【0162】
これによれば、位置センサ207aによって出力された位置情報を用いて対象者11の疲労度を推定できる。対象者11の疲労度の推定では、出力された情報から推定される対象者11の姿勢が用いられる。具体的には、対象者11の姿勢が静止している静止姿勢で経過した継続時間から、一定の静止姿勢が維持されることによる疲労の蓄積が疲労度として数値化される。このように、疲労推定システムでは、センサモジュールでの207での検知及び計測の結果に基づき、静止姿勢での継続時間を考慮して対象者11の疲労度が算出されるため、対象者11の負担が少なく、かつ、より高精度に対象者11の静止姿勢での疲労度を推定することができる。
【0163】
また、上記実施の形態では、増加関数及び減少関数を直線的な一次関数であるものとして説明したが、これに限らない。増加関数は、時間の経過に応じて疲労度が増加する関数であれば曲線的な関数であってもよい。また、減少関数は、時間の経過に応じて疲労度が減少する関数であれば曲線的な関数であってもよい。
【0164】
また、上記に説明した推定装置は、対象者の姿勢から推定した筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び、血流量の推定値を用いて、対象者の疲労度を推定する態様を説明したが、計測装置を用いて計測した値によって推定値を補正してより高精度な疲労度の推定を実現することもできる。具体的には、推定装置は、計測装置によって対象者を計測した計測結果に基づく計測値であって、推定値に対応する計測値を取得する。
【0165】
検知装置は、例えば、筋電計、筋硬度計、圧力計、及び、近赤外線分光計等であり、筋肉への負荷量、関節への負荷量、及び血流量に関する計測値を計測によって得ることができる。例えば、筋電計は、電位計測によって計測された電位をもとに、当該電位に対応する筋肉の動きを推定することができる。つまり、筋肉の動きを推定した値を計測値として得ることができる。筋肉の動きを推定した値は、すなわち、筋肉への負荷量に換算することができるため、筋肉への負荷量の推定値を計測値によって補正することができる。ここでの補正は、例えば、推定値と計測値との平均値をとること、推定値と計測値とのいずれかを選択すること、及び、推定値と計測値との相関関数に推定値を代入すること等である。
【0166】
筋硬度計は、筋肉に圧力を付与した際の応力によって筋肉の硬さを推定することができる。筋肉の硬さ推定した値は、筋肉への負荷量に換算することができるため、上記と同様にして推定値の補正に利用できる。
【0167】
圧力計は、対象者の身体部位にどのような圧力がかかっているかを計測値として得ることができる。このような圧力のパラメータは、筋骨格モデルに入力することが可能である。圧力などの付加パラメータを入力することで筋骨格モデルの推定精度が向上され、筋骨格モデルを用いて推定される推定値をより高精度に補正できる。
【0168】
近赤外線分光計は、対象者の血流量を分光学的に計測した計測値を得ることができる。上記の実施の形態のように、推定値に血流量が含まれない場合に、赤外線分光計によって計測された血流量を組み合わせることで、推定値の補正を行ってもよい。また、推定値に血流量が含まれる場合であっても、当該血流量の推定値の信頼性が低い場合などに計測された血流量が用いられてもよい。
【0169】
このように別の側面から得られた推定値に対応する計測値を用いて、推定値をより高精度にするための補正を行うことで、より正確な対象者の疲労度の推定を行うことが可能となる。
【0170】
また、上記実施の形態において説明した疲労推定システムを用いて、対象者の疲労の要因を特定する疲労要因特定システムを構成してもよい。従来における、「肩こり度」及び「腰痛度」等として疲労の程度を推定する装置又はシステム等では、このような「肩こり度」及び「腰痛度」の要因となる筋肉及び関節の使い方(つまり要因となる姿勢)を特定することは困難であった。そこで、本開示における疲労推定システムを用いることで、上記の課題に対応することができる。
【0171】
すなわち、本開示における疲労要因特定システムでは、対象者がとる静止姿勢において、疲労が蓄積しやすい身体部位(各種疲労を促進する推定量の多い身体部位)を疲労要因部位として特定する。さらに、疲労要因特定システムは、単に、対象者がとる一つの静止姿勢のうちの疲労要因部位を特定してもよく、対象者がとる複数の静止姿勢のうちから、最も疲労要因部位における推定量の多い疲労要因姿勢を特定してもよい。また、このように特定した疲労要因姿勢に代わる推奨姿勢を提示してもよく、疲労要因姿勢における疲労要因部位に対して回復装置を用いた疲労度の回復動作を行ってもよい。
【0172】
疲労要因特定システムは、上記実施の形態において説明した疲労推定システムと、推定された疲労度に関する情報を格納するための記憶装置とを備える。このような記憶装置は、例えば半導体メモリ等を用いて実現され、疲労推定システムを構成する各主記憶部等が用いられてもよく、推定装置に通信接続される記憶装置が新たに設けられてもよい。
【0173】
また、本開示は、疲労推定システム又は推定装置が実行する疲労推定方法として実現されてもよい。本開示は、このような疲労推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0174】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0175】
11 対象者
11a 剛体リンクモデル
11b 筋骨格モデル
11c 非可視部位
11d 可視部位
11l 背部関節
11m 腰椎骨格
11n 腰部関節
11o 大腿部骨格
11x 角度
12 椅子
13 机(什器)
13a 机上面(天面)
100 推定装置
101 第1取得部(画像取得部)
102 第2取得部
103 第3取得部
104 第4取得部
115 第5取得部
116 第6取得部
105 姿勢推定部
106 第1算出部
107 第2算出部
108 疲労推定部
109 出力部
200 疲労推定システム
201 撮像装置
202 計時装置
203 圧力センサ
204 受付装置
215 記憶装置
216 高さセンサ
205 表示装置
206 回復装置
207 センサモジュール
207a 位置センサ
207b 電位センサ