(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ライン制御システムおよび優先順決定方法ならびに生産設備
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20241206BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20241206BHJP
B23Q 41/08 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/04 Z
B23Q41/08 B
(21)【出願番号】P 2020109222
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019136930
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 俊英
(72)【発明者】
【氏名】中薗 淳
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-061699(JP,A)
【文献】特開2012-114467(JP,A)
【文献】特開2018-056254(JP,A)
【文献】特開2013-207120(JP,A)
【文献】特開2011-003097(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
H05K 13/04
B23Q 41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに作業をして生産物を生産する生産設備を複数備えた生産ラインを制御するライン制御システムにおいて、
複数の前記生産設備のうち少なくともひとつは、
ワークを並行して搬送する複数の搬送部と、
前記ワークに
対して交互に作業を行う
複数の作業部とを備え、
前記ライン制御システムは、
複数の前記生産設備から
前記ワークの作業状況を取得する取得部と、
取得された前記作業状況から、
並行して搬送される複数枚の
前記ワークのうち、
前記複数の作業部で作業すべき
前記ワークの優先順を決定する優先順決定部と、
決定された前記優先順に基づいて、前記生産設備に作業を指示する指示部と、
前記作業状況が取得されたタイミングに、当該タイミング以降に要する前記ワークの生産時間を推定する生産時間推定部と、を備え、
前記優先順決定部は、前記ワークに対する作業または搬送のタイミングに推定された前記生産時間に基づいて、前記優先順を決定する、ライン制御システム。
【請求項2】
複数の前記搬送部に作業可能なワークがある場合に、前記優先順決定部は複数の前記ワークのうち推定された前記生産時間が短いワークの前記優先順を高くする、請求項1に記載のライン制御システム。
【請求項3】
一の前記搬送部で一のワークに作業を行っている間に、他の前記搬送部に他のワークが搬入される場合に、前記優先順決定部は複数の前記ワークのうち推定された前記生産時間が短いワークの前記優先順を高くする、請求項1または2に記載のライン制御システム。
【請求項4】
前記生産時間推定部は、前記ワークが搬送される最後尾の前記生産設備における前記ワークに対する作業が終了するまでの前記生産時間を推定する、請求項1から3のいずれかに記載のライン制御システム。
【請求項5】
前記取得部は、複数の前記生産設備で生じたイベント情報をさらに取得し、
取得された前記イベント情報から、前記生産設備における作業の停止または遅延の発生を推定する設備状況推定部をさらに備え、
前記優先順決定部は、前記作業の停止または遅延が発生すると推定された前記生産設備の前記搬送部に搬送されるワークの前記優先順を低くする、請求項1に記載のライン制御システム。
【請求項6】
取得された前記作業状況から前記生産設備におけるワークの滞留の発生を推定する滞留推定部をさらに備え、
前記優先順決定部は、前記滞留が発生すると推定された前記生産設備の前記搬送部に搬送されるワークの前記優先順を低くする、請求項1に記載のライン制御システム。
【請求項7】
前記生産設備には、基板に部品を実装して部品実装基板を生産する部品実装装置が少なくとも含まれる、請求項1から6のいずれかに記載のライン制御システム。
【請求項8】
ワークに作業をして生産物を生産する生産設備を複数備え、複数の前記生産設備のうち少なくともひとつは、ワークを並行して搬送する複数の搬送部と、前記ワークに
対して交互に作業を行う
複数の作業部とを有する生産ラインにおける優先順決定方法であって、
複数の前記生産設備から
前記ワークの作業状況を取得し、
前記作業状況が取得されたタイミングに、当該タイミング以降に要する前記ワークの生産時間を推定し、
取得された前記作業状況から
並行して搬送される複数枚の
前記ワークのうち、
前記複数の作業部で作業すべき
前記ワークの優先順を決定することを含み、
前記ワークに対する作業または搬送のタイミングに推定された前記生産時間に基づいて、前記優先順を決定する、優先順決定方法。
【請求項9】
複数の前記搬送部に作業可能なワークがある場合に、複数の前記ワークのうち推定された前記生産時間が短いワークの前記優先順を高くする、請求項8に記載の優先順決定方法。
【請求項10】
一の前記搬送部で一のワークに作業を行っている間に、他の前記搬送部に他のワークが搬入される場合に、複数の前記ワークのうち推定された前記生産時間が短いワークの前記優先順を高くする、請求項8または9に記載の優先順決定方法。
【請求項11】
前記ワークが搬送される最後尾の前記生産設備における前記ワークに対する作業が終了するまでの前記生産時間が推定される、請求項8から10のいずれかに記載の優先順決定方法。
【請求項12】
複数の前記生産設備で生じたイベント情報をさらに取得し、
取得された前記イベント情報から、前記生産設備における作業の停止または遅延の発生を推定することをさらに含み、
前記作業の停止または遅延が発生すると推定された前記生産設備の前記搬送部に搬送されるワークの前記優先順を低くする、請求項8に記載の優先順決定方法。
【請求項13】
取得された前記作業状況から前記生産設備におけるワークの滞留の発生を推定することをさらに含み、
前記滞留が発生すると推定された前記生産設備の前記搬送部に搬送されるワークの前記優先順を低くする、請求項8に記載の優先順決定方法。
【請求項14】
前記生産設備には、基板に部品を実装して部品実装基板を生産する部品実装装置が少なくとも含まれる、請求項8から13のいずれかに記載の優先順決定方法。
【請求項15】
ワークに作業をして生産物を生産する生産設備を複数備えた生産ラインの生産設備であって、
ワークを並行して搬送する複数の搬送部と、
前記ワークに
対して交互に作業を行う
複数の作業部と、
前記生産設備から
前記ワークの作業状況を取得する設備取得部と、
取得された前記作業状況から
並行して搬送される複数枚の
前記ワークのうち、
前記複数の作業部で作業すべき
前記ワークの優先順を決定する設備優先順決定部と、
前記作業状況が取得されたタイミングに、当該タイミング以降に要する前記ワークの生産時間を推定する生産時間推定部と、
決定された前記優先順に基づいて、前記作業部を制御する制御部と、を備え、
前記設備優先順決定部は、前記ワークに対する作業または搬送のタイミングに推定された前記生産時間に基づいて、前記優先順を決定する、生産設備。
【請求項16】
前記作業状況は、前記生産設備の下流の前記生産設備から前記搬送部毎に発信される基板要求信号を含む、請求項15に記載の生産設備。
【請求項17】
前記設備優先順決定部は、先に取得した前記基板要求信号の前記搬送部側の作業を優先するように前記優先順を決定する、請求項16に記載の生産設備。
【請求項18】
前記生産設備には、基板に部品を実装して部品実装基板を生産する部品実装装置が少なくとも含まれる、請求項15から17のいずれかに記載の生産設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備を複数備えた生産ラインを制御するライン制御システムおよび優先順決定方法ならびに生産設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに作業をして生産物を生産する生産設備として、基板に部品を実装して部品実装基板を生産する部品実装装置が知られている。また、部品実装装置として、基板を搬送する搬送レーンを2つ備え、それぞれの搬送レーンにおいて並行して部品実装作業を行うデュアルレーンタイプの部品実装装置が広く用いられている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、空いた搬送レーンから順に基板を振り分けて部品実装作業を行うことで、生産効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、1つの生産設備における生産効率の向上は図れるものの、複数の生産設備にワークを引き渡しながら生産物を生産する生産ラインでは、空いた搬送レーンから順に作業を行うことが必ずしも生産効率として最適ではないという課題があり、生産ラインとして生産効率を向上させるためにはさらなる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、生産設備を複数備えた生産ラインにおいて生産効率が良い作業の優先順を決定することができるライン制御システムおよび優先順決定方法ならびに生産設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のライン制御システムは、ワークに作業をして生産物を生産する生産設備を複数備えた生産ラインを制御するライン制御システムにおいて、複数の前記生産設備のうち少なくともひとつは、ワークを並行して搬送する複数の搬送部と、前記ワークに対して交互に作業を行う複数の作業部とを備え、前記ライン制御システムは、複数の前記生産設備から前記ワークの作業状況を取得する取得部と、取得された前記作業状況から、並行して搬送される複数枚の前記ワークのうち、前記複数の作業部で作業すべき前記ワークの優先順を決定する優先順決定部と、決定された前記優先順に基づいて、前記生産設備に作業を指示する指示部と、前記作業状況が取得されたタイミングに、当該タイミング以降に要する前記ワークの生産時間を推定する生産時間推定部と、を備え、前記優先順決定部は、前記ワークに対する作業または搬送のタイミングに推定された前記生産時間に基づいて、前記優先順を決定する。
【0007】
本発明の優先順決定方法は、ワークに作業をして生産物を生産する生産設備を複数備え、複数の前記生産設備のうち少なくともひとつは、ワークを並行して搬送する複数の搬送部と、前記ワークに対して交互に作業を行う複数の作業部とを有する生産ラインにおける優先順決定方法であって、複数の前記生産設備から前記ワークの作業状況を取得し、前記作業状況が取得されたタイミングに、当該タイミング以降に要する前記ワークの生産時間を推定し、取得された前記作業状況から並行して搬送される複数枚の前記ワークのうち、前記複数の作業部で作業すべき前記ワークの優先順を決定することを含み、前記ワークに対する作業または搬送のタイミングに推定された前記生産時間に基づいて、前記優先順を決定する。
【0008】
本発明の生産設備は、ワークに作業をして生産物を生産する生産設備を複数備えた生産ラインの生産設備であって、ワークを並行して搬送する複数の搬送部と、前記ワークに対して交互に作業を行う複数の作業部と、前記生産設備から前記ワークの作業状況を取得する設備取得部と、取得された前記作業状況から並行して搬送される複数枚の前記ワークのうち、前記複数の作業部で作業すべき前記ワークの優先順を決定する設備優先順決定部と、前記作業状況が取得されたタイミングに、当該タイミング以降に要する前記ワークの生産時間を推定する生産時間推定部と、決定された前記優先順に基づいて、前記作業部を制御する制御部と、を備え、前記設備優先順決定部は、前記ワークに対する作業または搬送のタイミングに推定された前記生産時間に基づいて、前記優先順を決定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産設備を複数備えた生産ラインにおいて生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装ラインが備える部品実装装置の構成説明図
【
図3】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態の部品実装ラインが備える部品実装装置における交互実装モードによる部品実装作業の説明図
【
図4】本発明の一実施の形態の部品実装システムの制御系の構成を示すブロック図
【
図5】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態のライン制御システムによる優先順の決定と作業の指示を説明する図
【
図6】(a)(b)本発明の一実施の形態のライン制御システムによる優先順の決定を説明する図
【
図7】本発明の一実施の形態の優先順決定方法のフロー図
【
図8】本発明の一実施の形態のライン制御システムにおいて使用される推定モデルの例を説明する図
【
図9】本発明の他の実施の形態の部品実装ラインの制御系の構成を示すブロック図
【
図10】(a)(b)本発明の他の実施の形態の部品実装ラインにおける優先順の決定を説明する図
【
図11】(a)(b)本発明の他の実施の形態の部品実装ラインにおける優先順の決定を説明する図
【
図12】(a)(b)本発明の他の実施の形態の部品実装ラインにおける優先順の決定を説明する図
【
図13】本発明の他の実施の形態の部品実装方法のフロー図
【
図14】本発明の他の実施の形態の基板要求方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装ライン、ライン管理コンピュータ、印刷装置、部品実装装置、コンベアなどの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1では、紙面左側を基板搬送方向の上流側、紙面右側を基板搬送方向の下流側と称し、紙面下側を前側、紙面上側を後側と称する。
【0012】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、1本の部品実装ラインL1が有線または無線による通信ネットワーク2によって接続され、ライン管理コンピュータ3によって管理される構成となっている。部品実装ラインL1は、後述するように部品実装装置を含む複数の生産設備を連結して構成され、基板に部品を実装した部品実装基板を生産する機能を有している。すなわち、生産ライン(部品実装ラインL1)は、ワーク(基板)に作業をして生産物(部品実装基板)を生産する生産設備を複数備えている。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインは1本である必要はなく、2本以上でも良い。
【0013】
部品実装ラインL1を構成する生産設備は、それぞれ通信ネットワーク2を介してライン管理コンピュータ3に接続されている。各生産設備の作業状況、各生産設備で発生したイベント情報などは、逐次、ライン管理コンピュータ3に送信される。例えば、搬入搬出される基板の情報、部品実装装置が供給している部品の残数、部品実装装置において実行される部品補給作業の状況、生産設備で発生した装置エラー、生産設備に入力された情報、生産設備が作業した情報、作業者によるエラー復旧作業の状況などがライン管理コンピュータ3に収集される。
【0014】
次に
図1を参照して、部品実装ラインL1の詳細な構成を説明する。
図1は、部品実装ラインL1を模式的に表したものである。部品実装ラインL1には、上流側から下流側に向けて、ローダM1、第1コンベアM2、印刷装置M3、第2コンベアM4、印刷検査装置M5、第3コンベアM6、部品実装装置M7、部品実装装置M8、第4コンベアM9、実装検査装置M10、第5コンベアM11、リフロー装置M12、アンローダM13などの生産設備が直列に連結されている。
【0015】
各生産設備は、上流側から下流側に向けて基板(ワーク)を搬送する2基の搬送部4を前側と後側に備えている。部品実装ラインL1において互いに連結された搬送部4は、前側の前側搬送レーン4Fと後側の後側搬送レーン4Rを構成する。すなわち、部品実装ラインL1は、前側搬送レーン4Fと後側搬送レーン4Rを並列に備えており、並行して基板を搬送することができる。なお、各生産設備が備える搬送部4は2基に限定されることはなく、3基以上であってもよい。このように、生産設備は、複数のワーク(基板)を並行して搬送する複数の搬送部4を備えている。なお、少なくともひとつの生産設備が複数の搬送部4を備えていればよく、ひとつの搬送部4を備える生産設備を含んで構成された部品実装ラインL1でもよい。
【0016】
図1において、ローダM1は、下流側の生産設備に基板または基板に部品が実装された部品実装基板を供給する基板供給作業部(作業部)を2つ備えている。以下、特に区別する場合を除いて、部品実装基板や半田が印刷された生産途中の状態も含めて、単に基板と称する。印刷装置M3は、基板に部品接合用の半田をスクリーン印刷する半田印刷作業を実行する印刷作業部(作業部)を2つ備えている。印刷検査装置M5は、基板に印刷された半田の状態を検査する印刷検査作業を実行する印刷検査作業部(作業部)を2つ備えている。部品実装装置M7,M8は、半田が印刷された基板に部品を実装する部品実装作業を実行する実装作業部(作業部)を2つ備えている。
【0017】
実装検査装置M10は、基板に搭載された部品の状態を検査する実装検査作業を実行する実装検査作業部(作業部)を2つ備えている。リフロー装置M12は、基板を加熱して半田を融解させた後に硬化させ、基板の電極と部品の端子とを半田接合するリフロー作業を実行するリフロー作業部(作業部)を2つ備えている。アンローダM13は、上流側から搬送された基板を回収する基板回収作業を実行する基板回収作業部(作業部)を2つ備えている。第1コンベアM2、第2コンベアM4、第3コンベアM6、第4コンベアM9、第5コンベアM11は、上流側の生産設備から搬出された基板を一時保管して、下流側の生産設備に搬送する基板搬送作業を実行する基板搬送作業部(作業部)を2つ備えている。
【0018】
なお、部品実装ラインL1は、印刷作業部(作業部)を1つ備えた印刷装置M3で構成してもよいし、印刷作業部(作業部)を1つ備えた印刷装置M3を複数台含んで構成してもよい。また、部品実装ラインL1は、印刷検査作業部(作業部)を1つ備えた印刷検査装置M5で構成してもよい。また、部品実装ラインL1は、実装作業部(作業部)を1つ備えた部品実装装置M7,M8で構成してもよい。また、部品実装ラインL1は、実装検査作業部(作業部)を1つ備えた実装検査装置M10で構成してもよい。また、リフロー作業部(作業部)を1つ備えたリフロー装置M12で構成してもよい。
【0019】
このように、生産設備は、ワーク(基板)に作業を行う複数の作業部を備えている。部品実装ラインL1では、前側搬送レーン4Fおよび後側搬送レーン4Rにおいて、上流側から下流側の生産設備の搬送部4によって基板を搬送しながら生産設備の作業部によって基板に対して生産作業が実行されて部品実装基板が生産される。部品実装ラインL1では、前側搬送レーン4Fおよび後側搬送レーン4Rにおいて同じ基板種の部品実装基板を並行して生産することも、異なる基板種の部品実装基板を並行して生産することもできる。
【0020】
なお、部品実装ラインL1は、生産する部品実装基板の種類、生産量に応じて、生産設備の構成が自在に変更される。また、上記説明した生産設備の他、基板にレーザで番号などを刻印するレーザマーク装置、基板にはんだを塗布するはんだ塗布装置、基板に付されたマークを読み取るカメラを有するマーク読み取り機能を内蔵するコンベア装置、基板の表面と裏面を反転させる基板反転装置、リフロー後の基板の状態を検査するリフロー後検査装置などを備えてもよい。また、部品実装ラインL1は、印刷装置M3と部品実装装置M7,M8を備えていればその他の生産設備の配置は限定されない。
【0021】
次に
図2を参照して、部品実装装置M7,M8の構成について説明する。部品実装装置M7,M8は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M7について説明する。部品実装装置M7の前面中央の上方には、基板に部品を実装する実装ヘッド5や、実装ヘッド5を水平移動させるヘッド移動機構(図示省略)などの可動部に作業者が誤って触れないように保護するシャッター6が設置されている。部品実装装置M7の前面中央の下方(シャッター6の下方)には、部品供給部7が設けられている。
【0022】
部品供給部7には、上部に部品供給装置である複数のテープフィーダ8を並列に保持する台車9が装着されている。台車9において、テープフィーダ8の下方には、部品を格納する部品供給テープを巻回収納する複数のリール10が並列に保持されている。テープフィーダ8は、リール10から引き出された部品供給テープを内部で搬送しながら部品供給テープに格納された部品を順に部品実装装置M7に供給する。部品供給テープが収納する部品の残数が少なくなると、部品を供給している部品供給テープの後端に新しい部品供給テープを継合したり、テープフィーダ8に新しい部品供給テープを挿入したりして、テープフィーダ8に部品を補給する部品補給作業が作業者によって行われる。また、部品の供給形態は部品供給テープに限らず、部品を収納したスティック状のケース、部品を載置したトレイケース、部品を収納したバルクケース等でもよく、それらに適した供給手段で供給される。
【0023】
図2において、前面の右上部には、タッチパネル11が設置されている。タッチパネル11は、その表示部に各種情報、警告情報、操作ボタン、入力ボタンなどを表示する。作業者は、タッチパネル11に表示される操作ボタン、入力ボタンなどを操作して、部品実装装置M7の操作を行う。部品実装装置M7には、前面の他、後面にも実装ヘッド5、ヘッド移動機構、シャッター6、部品供給部7、タッチパネル11が設けられている。部品実装装置M7の搬送部4、実装ヘッド5、ヘッド移動機構、テープフィーダ8、タッチパネル11は、部品実装装置M7が備える実装制御部12によって制御されている。
【0024】
実装制御部12は、テープフィーダ8が供給する部品を実装ヘッド5によってピックアップさせ、実装ヘッド5が保持する部品を搬送部4の実装作業位置に保持されている基板の実装位置に移載させる一連のターンを繰り返す部品実装作業を実行させる。すなわち、実装ヘッド5、ヘッド移動機構、テープフィーダ8は、部品実装作業を実行する実装作業部(作業部)を構成する。つまり、部品実装装置M7は、基板(ワーク)を並行して搬送する2つの搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)と、基板に部品実装作業を行う2つの実装作業部(前側実装作業部13A、後側実装作業部13B)(作業部)を備えている(
図9、
図10参照)。
【0025】
このように、部品実装装置M7は、基板に部品を実装して部品実装基板を生産する。実装制御部12は、ライン管理コンピュータ3からの作業指示に従って、2つの搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)と2つの実装作業部(前側実装作業部13A、後側実装作業部13B)に、それぞれの作業を実行させる。また、実装制御部12は、部品実装装置M7における部品実装作業の状況、発生したイベント情報などを、ライン管理コンピュータ3に送信する。
【0026】
実装制御部12は、効率的に部品実装作業が実行されるように、前後2つの実装作業部(前側実装作業部13A、後側実装作業部13B)を連動させて制御する。ここで
図3を参照して、部品実装装置M7における交互実装モードによる部品実装作業の例について説明する。交互実装モードでは、搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)の実装作業位置に保持された基板に対して、前側と後側の2つの実装ヘッド5によって交互に部品を実装する。
【0027】
図3(a)は、前側搬送レーン4Fの搬送部4(前側搬送部4A)に保持された基板B1に対する交互実装モードでの部品実装作業を示している。すなわち、前側の実装ヘッド5(以下「前側実装ヘッド5F」と称する。)が前側の部品供給部7(以下「前側部品供給部7F」と称する。)から部品を取り出して基板B1に実装するターン(矢印a1)と、後側の実装ヘッド5(以下「後側実装ヘッド5R」と称する。)が後側の部品供給部7(以下「後側部品供給部7R」と称する。)から部品を取り出して基板B1に実装するターン(矢印a2)が交互に繰り返される。
【0028】
図3(b)において、所定回数のターンを繰り返して基板B1に対する部品実装作業が完了すると、次いで後側搬送レーン4Rの搬送部4(後側搬送部4B)に保持された基板B2に対する交互実装モードでの部品実装作業が実行される。すなわち、前側実装ヘッド5Fが前側部品供給部7Fから部品を取り出して基板B2に実装するターン(矢印a3)と、後側実装ヘッド5Rが後側部品供給部7Rから部品を取り出して基板B2に実装するターン(矢印a4)が交互に繰り返される。基板B2への部品実装作業の間には、前側搬送レーン4Fの搬送部4から基板B1が下流側に搬出され(矢印a5)、次の基板B3が搬入される。
【0029】
図3(c)において、基板B2に対する部品実装作業が完了すると、次いで前側搬送レーン4Fの搬送部4に保持された基板B3に対する交互実装モードでの部品実装作業が実行される(矢印a6,a7)。そして、基板B3への部品実装作業の間には、後側搬送レーン4Rの搬送部4から基板B2が下流側に搬出され(矢印a8)、次の基板が搬入される。
【0030】
このように、交互実装モードでは、一方の実装ヘッド5で部品供給部7から部品をピックアップしている間に、他方の実装ヘッド5が基板に部品を実装するため、部品実装作業の効率が高い。また、一方の搬送部4において部品実装作業を実行している間に、他方の搬送部4において基板の入れ替えを実行するため、基板搬送による待ち時間が削減できる。なお、リフロー装置M12を除く、ひとつの作業部を備える生産設備でも上述の交互実装モードでの部品実装作業を実行できる。
【0031】
次に
図4を参照して、部品実装システム1の制御系の構成について説明する。ここでは、部品実装ラインL1の前側搬送レーン4Fと後側搬送レーン4Rにおいて並行して搬送される複数の基板(ワーク)に対する作業の優先順を決定する優先順決定処理に関係する構成について説明する。ライン管理コンピュータ3は、情報処理装置20、記憶装置21、表示部22を備えている。記憶装置21には、生産データ情報23、作業状況情報24、イベント情報25、優先順情報26、推定生産時間情報27などが記憶されている。
【0032】
情報処理装置20は、内部処理部として取得部28、優先順決定部29、指示部30、生産時間推定部31、設備状況推定部32、滞留推定部33を備えている。表示部22は液晶パネルなどの表示装置であり、記憶装置21が記憶する各種データ、優先順情報、報知情報などを表示する。なお、ライン管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶装置、内部処理部の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0033】
図4において、生産データ情報23には、部品実装ラインL1において生産される部品実装基板の品種毎、基板毎に、基板に実装される部品の部品種、実装位置、部品実装装置M7,M8の部品供給部7における部品の供給位置など部品実装作業に必要な情報が記憶されている。また、生産データ情報23には、各生産設備において予想される基板1枚当たりの標準作業時間(論理サイクルタイム)が含まれている。
【0034】
取得部28は、部品実装ラインL1を構成する複数の生産設備から基板(ワーク)の作業状況を取得して、作業状況情報24として記憶装置21に記憶させる。また、取得部28は、複数の生産設備で生じた装置エラー、エラー復旧作業、生産設備のイベント情報、生産設備への部材(半田、部品)の補給作業などの生産に付随して発生する各種情報を取得して、イベント情報25として記憶装置21に記憶させる。
【0035】
図4において、生産時間推定部31は、生産設備から基板(ワーク)の作業状況が取得されたタイミングに、作業状況情報24と生産データ情報23に含まれる標準作業時間に基づいて、当該タイミング以降に要する基板の生産時間(推定生産時間)を推定し、推定生産時間情報27として記憶装置21に記憶させる。その際、生産時間推定部31は、基板が搬送される最後尾の生産設備における基板に対する作業(部品実装ラインL1ではアンローダM13における基板回収作業)が終了するまでの推定生産時間を推定する。
【0036】
例えば、
図3(a)において部品実装装置M7の前側搬送レーン4Fにおける基板B1に対する部品実装作業が終了したとの作業状況が取得されると、生産時間推定部31は、基板B1の部品実装装置M8への搬送作業からアンローダM13における基板回収作業までの推定生産時間を算出する。この推定生産時間には、部品実装装置M8における部品実装作業、実装検査装置M10における実装検査作業、リフロー装置M12におけるリフロー作業、アンローダM13における基板回収作業、第4コンベアM9と第5コンベアM11における基板搬送作業にそれぞれ要する生産時間の他、下流側の生産設備の作業終了を待機する待機時間が含まれる。
【0037】
すなわち、同じ作業位置からの推定作業時間であっても、下流側の生産設備の作業状況によって異なる推定作業時間が推定される場合がある。例えば、
図3(a)に示す基板B1と
図3(c)に示す基板B3は、前側搬送レーン4Fの同じ生産設備で同じ生産作業が実行されるが、推定作業時間を推定するタイミングでの下流側の生産設備の作業状況、または、基板が搬送される時点に予想される生産設備の作業状況によって、推定される推定作業時間が異なることがある。
【0038】
図4において、優先順決定部29は、基板(ワーク)に対する作業または搬送のタイミングに、推定生産時間情報27(推定された推定生産時間)に基づいて、基板に対する作業の優先順を決定し、優先順情報26として記憶装置21に記憶させる。すなわち、優先順決定部29は、作業状況情報24(取得された作業状況)から基板に対する作業の優先順を決定する。これによって、生産設備を複数備えた生産ライン(部品実装ラインL1)において生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。なお、優先順は生産設備毎に決定してもよいし、生産ラインで決定してもよい。指示部30は、優先順情報26(決定された優先順)に基づいて、生産設備に作業を指示する。
【0039】
具体的には、複数の搬送部4に作業可能な基板がそれぞれある場合、優先順決定部29は複数の基板のうち推定された推定生産時間が短い基板の優先順を高くする。例えば、
図3(a)に示すように、前側搬送レーン4Fの搬送部4には基板B1があり、後側搬送レーン4Rの搬送部4に基板B2があり、いずれの基板B1,B2にも作業が可能な状態であって基板B1の推定生産時間が基板B2より短い場合、優先順決定部29は、基板B1の優先順を基板B2より高くする。そして、指示部30は、部品実装装置M7に交互実装モードによる基板B1への部品実装作業を指示する。
【0040】
また、一の搬送部4で一の基板(ワーク)に作業を行っている間に、他の搬送部4に他の基板が搬入される場合に、優先順決定部29は複数の基板のうち推定された推定生産時間が短い基板の優先順を高くする。例えば、
図5(a)に示すように、前側搬送レーン4Fの搬送部4の基板B4に部品実装作業(矢印b1,b2)を行っている間に、他の後側搬送レーン4Rの搬送部4に基板B5が搬入される時(矢印b3)、生産時間推定部31は基板B5の推定生産時間を計算する。基板B4より基板B5の推定生産時間が短い場合、優先順決定部29は基板B5の優先順を基板B4の優先順より高くて、指示部30は部品実装装置M7に基板B5への部品実装作業を優先するように指示する。
【0041】
図5(b)において、ライン管理コンピュータ3から指示を受けた部品実装装置M7は、基板B4への部品実装作業を一時中断して、基板B5への部品実装作業を実行する(矢印b4,b5)。例えば、部品実装装置M7は、5ターン目で基板B4への部品実装作業を中断し、基板B5への部品実装作業を開始する。
図5(c)において、部品実装装置M7は、基板B5への部品実装作業が終了すると、基板B5を下流側の部品実装装置M8に搬出(矢印b6)するとともに、基板B4への部品実装作業を6ターン目から再開させる(矢印b7、b8)。
【0042】
図4において、設備状況推定部32は、取得されたイベント情報25から生産設備における作業の停止または遅延の発生を推定し、優先順決定部29は、作業の停止または遅延が発生すると推定された生産設備の搬送部4に搬送される基板(ワーク)の優先順を低くする。ここで、
図6(a)に示す、部品実装装置M7の前側搬送レーン4Fの搬送部4にある基板Bf7と後側搬送レーン4Rの搬送部4にある基板Br6の優先順を決定する例を説明する。前側搬送レーン4Fにおいて、リフロー装置M12には基板Bf1~3が、実装検査装置M10には基板Bf4が、第4コンベアM9には基板Bf5が、部品実装装置M8には基板Bf6が、部品実装装置M7には基板Bf7が、第3コンベアM6には基板Bf8がある。
【0043】
また、後側搬送レーン4Rにおいて、リフロー装置M12には基板Br1~4が、実装検査装置M10には基板Br5が、部品実装装置M7には基板Br6が、第3コンベアM6には基板Br7がある。すなわち、後側搬送レーン4Rにおいて、部品実装装置M8、第4コンベアM9には基板がない。この状況で、実装検査装置M10の後側において装置エラーが発生し、取得部28がイベント情報25として取得したとする。設備状況推定部32は、取得されたイベント情報25から実装検査装置M10の後側搬送レーン4Rのおける作業が停止または遅延すると推定する。
【0044】
そこで、優先順決定部29は、部品実装装置M7では作業が停止または遅延すると推定した実装検査装置M10の後側搬送レーン4Rに搬送される基板Br6の優先順を前側搬送レーン4Fにある基板Bf7より低くする。この決定に基づいて、指示部30は部品実装装置M7に指示を送信し、部品実装装置M7では基板Bf7への部品実装作業が開始される。すなわち、後側搬送レーン4Rの方が空いているが、先に基板Br6の部品実装作業をしても実装検査装置M10で生産が停止すると推定して、Bf7への部品実装作業を優先させる。
【0045】
図4において、滞留推定部33は、作業状況情報24(取得された作業状況)から生産設備における基板(ワーク)の滞留の発生を推定し、優先順決定部29は、滞留が発生すると推定された生産設備の搬送部4に搬送される基板の優先順を低くする。ここで、
図6(b)に示す、部品実装装置M7の前側搬送レーン4Fの搬送部4にある基板Bf17と後側搬送レーン4Rの搬送部4にある基板Br16の優先順を決定する例を説明する。前側搬送レーン4Fにおいて、リフロー装置M12には基板Bf11~13が、第5コンベアM11には基板Bf14が、実装検査装置M10には基板Bf15が、第4コンベアM9には基板Bf16が、部品実装装置M7には基板Bf17が、第3コンベアM6には基板Bf18がある。
【0046】
また、後側搬送レーン4Rにおいて、リフロー装置M12には基板Br11~14が、部品実装装置M8には基板Br15が、部品実装装置M7には基板Br16が、第3コンベアM6には基板Br17がある。すなわち、前側搬送レーン4Fにおいて、第4コンベアM9からリフロー装置M12の搬送部4にはそれぞれ基板があるため、滞留推定部33は、第4コンベアM9から下流側のリフロー装置M12までの前側搬送レーン4Fで滞留が発生すると推定する。
【0047】
そこで、優先順決定部29は、部品実装装置M8の前側搬送レーン4Fが空いているが、その下流側の生産設備で滞留が発生すると推定されたため、前側搬送レーン4Fの搬送部4に搬送される基板Bf17の優先順を後側搬送レーン4Rにある基板Br16より低くする。この決定に基づいて、指示部30は部品実装装置M7に指示を送信し、部品実装装置M7では基板Br16への部品実装作業が開始される。すなわち、下流側の搬送部4が空いているにもかかわらず、部品実装装置M8の下流側で滞留が発生すると推定して、基板Br16への部品実装作業を優先させる。
【0048】
上記説明したように、生産ライン(部品実装ラインL1)が備える複数の生産設備は、複数のワーク(基板)を並行して搬送する複数の搬送部4と、ワークに作業を行う複数の作業部とを備えている。本実施の形態のライン管理コンピュータ3は、複数の生産設備からワークの作業状況を取得する取得部28と、取得された作業状況からワークに対する作業の優先順を決定する優先順決定部29と、決定された優先順に基づいて、生産設備に作業を指示する指示部30とを備え、生産ラインを制御するライン制御システムである。そして、優先順決定部29は、ワークに対する作業または搬送のタイミングに優先順を決定する。これによって、生産設備を複数備えた生産ラインにおいて生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。
【0049】
次に
図7のフローに沿って、部品実装ラインL1(生産ライン)における基板の優先順決定方法について説明する。まず、取得部28は、複数の生産設備から基板(ワーク)の作業状況を取得して、作業状況情報24として記憶させる(ST1)。次いで取得部28は、複数の生産設備で生じたイベント情報25を取得して記憶させる(ST2)。次いで生産時間推定部31は、作業状況が取得されたタイミングに、当該タイミング以降に要する基板の推定生産時間を推定して、推定生産時間情報27として記憶させる(ST3)。次いで設備状況推定部32は、取得されたイベント情報25から、生産設備における作業の停止または遅延の発生を推定する(ST4)。
【0050】
次いで滞留推定部33は、取得された作業状況(作業状況情報24)から生産設備における基板の滞留の発生を推定する(ST5)。次いで優先順決定部29は、推定された推定生産時間、作業の停止または遅延の発生、基板の滞留の発生に基づいて、基板に対する作業の優先順を決定する(ST6)。次いで指示部30は、決定された優先順に基づいて、生産設備に作業を指示する(ST7)。そして、部品実装ラインL1での部品実装基板が終了するまで(ST8においてNo)、(ST1)に戻って作業状況が取得されて優先順が決定される。このように、基板に対する作業または搬送のタイミングに基板に対する優先順が決定される。これによって、生産効率の良い作業の優先順を決定することができる。
【0051】
生産時間推定部31による推定生産時間の推定方法は、任意である。一例として以下を説明する。
【0052】
推定生産時間の算出では、各生産設備において予想される基板1枚当たりの標準作業時間(論理サイクルタイム)を用いる。理想的な生産時間は、各生産設備における標準作業時間の総和である。そのため、前側搬送レーン4Fと後側搬送レーン4Rに搬送されるワーク(基板)の標準作業時間の総和を推定生産時間として算出する。そして、推定生産時間が小さい方のワーク(基板)を各生産設備において優先的に作業する。
【0053】
別の推定生産時間の算出では、取得した生産設備毎の作業時間の実績をそのまま、または統計的に処理して用いる。実際の生産設備毎の作業時間を用いることで、設備の劣化起因や作成した生産データの影響等による微小な作業遅延を考慮することができ、より精確な推定生産時間を算出することができる。また、生産設備の作業時間の取得タイミングは、限定されることはなく、過去に取得した生産設備の作業時間を用いてもよいし、直前に取得した生産設備の作業時間を用いてもよい。
【0054】
上述の推定生産時間の算出は、生産設備の作業の停止または遅延の発生がない場合における算出方法である。次に生産設備における作業の停止または遅延の発生の推定についての一例を説明する。
【0055】
生産設備の作業停止の推定では、生産設備におけるイベント情報25、作業の停止要因と作業の標準停止時間の相関テーブルを用いる。相関テーブルは予め作成されたものであり、停止時間は過去の実績値、手動、自動による(または、重み付け値、複数の割合値の選択項目の)更新に基づいて設定される。停止要因は停止するまで(またはその後も含む)に取得したイベント情報25から停止要因を特定する。
【0056】
例えば、部品をノズルで吸着したイベント情報25、吸着した部品を認識したイベント情報25、および認識した部品の認識エラーのイベント情報25を取得した後に作業停止した場合には、部品の認識エラーが作業停止要因であるとして、認識エラーによる作業停止の標準停止時間に基づいて生産設備における作業の停止または遅延の発生を推定する。また、取得したイベント情報25に該当する停止要因を特定できない場合は、予め定められた標準停止時間に基づいて生産設備における作業の停止または遅延の発生を推定する。そして、作業者は実際に停止した停止時間、取得したイベント情報25、作業停止要因を関連付けて相関テーブルを作成する。作業停止要因は作業者による手動設定でも作業停止する直前のイベント情報25から自動特定してもよい。
【0057】
また、より正確な停止時間を算出する手法では、作業の停止から停止要因を解消するためのイベント情報25を用いる。作業の停止を解消するにあたり生産設備の動作情報または作業者による生産設備への入力をイベント情報25として、停止要因の解消までにかかる時間を推定する。例えば、上述の認識エラーの場合に所定時間内に再認識をさせるイベント情報25を取得したか、認識パラメータを修正する画面への遷移のイベント情報25を取得したかによって、停止時間を重み付けして所定時間から増減させて推定する。
【0058】
また、生産設備における作業の停止要因と作業の標準停止時間の相関テーブルを用いる推定方法以外に、機械学習等を用いた学習アルゴリズムに従い推定生産時間を学習した推定モデルであってもよい。推定モデルは、予めまたは実生産で、イベント情報25と生産時間とを含むデータ集合に基づく学習を反復実行させて作成したものである。
【0059】
機械学習の一例として、ニューラルネットワークを用いた推定モデルを説明する。
図8に、ニューロンNを組み合わせて構成した複数層のニューラルネットワークの推定モデルEを模式的に示す。左側から複数のイベント情報25(X1~X5)が入力され、それぞれに対応する重みWが乗算されて、右側から結果として推定生産時間(Y1~Y5)が出力される。なお、推定モデルEによって最終的に推定生産時間を推定できればよいため、イベント情報25に基板1枚当たりの標準作業時間(論理サイクルタイム)を含めて、推定生産時間を推定してもよいし、イベント情報のみを入力として、標準作業時間からの時間差を推定してから推定生産時間を推定してもよい。
【0060】
推定モデルEは、入力されたイベント情報25をイベント毎の他に、時間、作業者、または基板種等で細分化して構成された学習アルゴリズムで構築してもよい。また、それらの複数の学習アルゴリズムをひとつにした学習アルゴリズムで構築してもよい。
【0061】
時間毎に細分化して構成された学習アルゴリズムの一例として、生産時間に起因して発生する生産遅延または作業停止について説明する。生産工場によっては、所定時刻に休憩時間が設けられており、生産設備は稼働したままで一部またはすべての作業者が休憩することがある。このような時間帯において生産設備への作業が発生すると対応可能な作業者が不足して、作業遅延や作業停止に陥る恐れがある。そのため、このような関係性を用いて、休憩等の作業者数が変動する時間帯と作業遅延または作業停止時間を学習アルゴリズムで学習させて推定モデルEを構築してもよい。
【0062】
また、他の一例として、初期生産段階、基板種の切り替わり、部品の切り替わりの生産時間帯のタイミングによって生産設備が安定稼働しないことや、生産データの自動調整が発生したりすることで、生産設備の作業遅延や作業停止をすることがある。そのため、このような関係性を用いて、生産時間の時間帯(生産初期時間帯)と作業遅延または作業停止時間を学習アルゴリズムで学習させて推定モデルEを構築してもよい。
【0063】
次に作業者毎に細分化して構成された学習アルゴリズムの一例として、生産設備に対応する作業者数に起因して発生する生産遅延または作業停止について説明する。作業者の数によって単位時間当たりに対応できる生産設備への作業能力が異なる。また、作業者の数が多ければ対応できる生産設備への作業能力は増加し、所定の作業者数以上で定常化する。また、作業者の数が少なければ対応できる生産設備への作業能力は減少する。そのため、このような関係性を用いて、生産設備に対応する作業者数と過去に発生した作業遅延または作業停止時間を学習アルゴリズムで学習させて推定モデルEを構築することで、推定生産時間の算出することができる。
【0064】
また、他の学習アルゴリズムとして、生産設備に対応する特定作業者に起因して発生する生産遅延または作業停止について説明する。作業者の作業能力によって単位時間当たりに対応できる生産設備への作業能力が異なってくる。経験年数が高ければ生産設備への作業能力は増加し、所定の経験年数以上で定常化する。そのため、このような関係性を用いて、生産設備に対応する作業能力とその作業者が作業していた際に発生した作業遅延または作業停止時間を学習アルゴリズムとして学習して推定モデルEを構築することで、推定生産時間の算出をすることができる。
【0065】
次に基板種毎に細分化して構成された学習アルゴリズムの一例として、生産設備で生産する基板の種類に起因して発生する生産遅延または作業停止について説明する。生産設備で生産する基板は、実装する部品や回路形成パターン、基板の材質等によって実装難易度が異なる。例えば、微小部品や狭隣接実装等は高い印刷精度と実装精度を必要とされ、印刷不良や実装不良の発生が増えるため生産遅延や作業停止が増加する傾向がある。そのため、このような関係性を用いて、基板種と作業遅延または作業停止時間を学習アルゴリズムとして学習して推定モデルEを構築することで、推定生産時間の算出をすることができる。なお、ここで言う基板種には、生産機種を意味する他に、実装する部品や回路形成パターン、基板の材質等の種類も含む。
【0066】
本実施形態は特定の機械学習に限定されるものではなく、例えば入力情報に対して出力情報が付与された教師データを用いて入力と出力との関係を学習する教師あり学習、出力情報のない入力のみからデータの構造を構築する教師なし学習、出力情報ありと出力情報なしのどちらも扱う半教師あり学習、状態の観測結果から選択した行動に対するフィードバックを得ることにより、最も多くのフィードバックを得ることができる行動を学習する強化学習等が挙げられる。また、機械学習の具体的な手法として、ニューラルネットワーク(多層のニューラルネットワークを用いた深層学習を含む)、遺伝的プログラミング、決定木、ベイジアン・ネットワーク、サポート・ベクター・マシン(SVM)等が挙げられる。
【0067】
また、上述で説明した相関テーブルの一例と同様に、生産設備の作業停止の推定のためにイベント情報25として、生産設備の作業停止後のイベント情報25、作業の停止を解消するにあたり生産設備の動作情報または作業者による生産設備への入力をイベント情報25に含めて作業停止時間を推定してもよい。
【0068】
なお上記は、ライン管理コンピュータ3が、取得部28、優先順決定部29を備える構成で説明したが、ライン制御システムはこの構成に限定されることはない。例えば、部品実装装置M7,M8などの生産設備が取得部28、優先順決定部29を備え、各生産設備がそれぞれ作業する基板の優先順を決定する構成であってもよい。
【0069】
次に
図9を参照して、他の実施の形態の部品実装ラインL1の制御系の構成について説明する。他の実施の形態は、部品実装装置M7,M8などの生産設備が、それぞれワーク(基板)の作業状況に基づいてワークに対する作業の優先順を決定するところが、ライン制御システム(ライン管理コンピュータ3)が優先順を決定する上述の部品実装システム1と異なる。ここでは、部品実装ラインL1において隣接して配置された部品実装装置M7,M8と第4コンベアM9を例に説明する。部品実装装置M7,M8は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M7について説明する。
【0070】
図9において、部品実装装置M7が備える実装制御部12には、前側搬送レーン4Fを構成する前側搬送部4A、後側搬送レーン4Rを構成する後側搬送部4B、前側実装作業部13Aを構成する前側実装ヘッド5F、前側部品供給部7F、後側実装作業部13Bを構成する後側実装ヘッド5R、後側部品供給部7R、タッチパネル11が接続されている。実装制御部12は、実装記憶部40、設備取得部41、設備優先順決定部42、搬送処理部43、実装処理部44、基板要求処理部45、実装通信部46を備えている。実装記憶部40は記憶装置であり、生産データ47、履歴データ48などを記憶する。
【0071】
生産データ47には、基板の種類(基板種)毎に、基板に実装される部品の種類、部品供給部7(前側部品供給部7F、後側部品供給部7R)における部品を供給するテープフィーダ8の位置、部品の実装位置(XY座標)、実装方向(θ方向)など、部品実装作業に必要な情報が記憶されている。履歴データ48は、部品実装作業の進捗状況などの作業履歴が記憶されている。実装通信部46は、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M8、第3コンベアM6を含む他の生産設備との間でデータの送受信を行う。
【0072】
図9において、設備取得部41は、下流の他の生産設備からワーク(基板)の作業状況を取得する。部品実装装置M7が取得する生産状況には、下流の部品実装装置M8(生産設備)から搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)毎に発信される後述する基板要求信号、予告信号が含まれる。また、部品実装装置M8が取得する生産状況には、下流の第4コンベアM9(生産設備)から搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)毎に発信される基板要求信号が含まれる。
【0073】
搬送処理部43は、前側搬送部4Aおよび後側搬送部4Bを制御して、上流の生産設備(第3コンベアM6、部品実装装置M7)から基板を搬入する。また、搬送処理部43は、設備取得部41が下流の生産設備(部品実装装置M8、第4コンベアM9)から基板要求信号を取得すると、要求されている側の搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)を制御して、部品実装作業後の基板を下流の生産設備(部品実装装置M8、第4コンベアM9)に搬出させる。
【0074】
図9において、設備優先順決定部42は、設備取得部41によって取得された基板要求信号、予告信号を含む作業状況からワーク(基板)に対する作業の優先順を決定する。具体的には、設備優先順決定部42は、ワークに対する作業または搬送のタイミングに、先に取得した基板要求信号または予告信号の搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)側の作業を優先するように優先順を決定する。
【0075】
実装処理部44(制御部)は、設備優先順決定部42によって決定された優先順に基づいて、前側実装作業部13Aおよび後側実装作業部13B(作業部)を制御する。具体的には、優先順が高い搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)側のワーク(基板)の部品実装作業が先に終了するように交互実装モードで部品実装作業を実行させる。
【0076】
図9において、基板要求処理部45は、いずれかの搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)がワーク(基板)を下流に搬出する基板搬送作業を開始すると、上流の生産装置(第3コンベアM6、部品実装装置M7)に対して、ワークを搬出している側の搬送部4に次のワークを搬出するように基板要求信号を送信する。また、基板要求処理部45は、生産データ47および履歴データ48に基づいて、ワークへの部品実装作業の残量が所定より少なくなると、上流の生産装置(第3コンベアM6、部品実装装置M7)に対して、そちら側の搬送部4のワークの部品実装作業が間もなく終了する旨の予告信号を送信する。
【0077】
所定の残量は、例えば、残りの予定作業時間が10秒になる時点や、実装予定の部品の80%の部品実装作業が終了した時点(残りの部品が20%の時点)などと、適宜設定される。また、基板要求処理部45は、ワークへの部品実装作業の残量に加えて、下流の生産設備(部品実装装置M8、第4コンベアM9)から基板要求信号や予告信号を受信していることを条件に、上流の生産設備(第3コンベアM6、部品実装装置M7)に予告信号を送信するようにしてもよい。
【0078】
図9において、第4コンベアM9(生産設備)は、前側搬送レーン4Fを構成する搬送部4および後側搬送レーン4Rを構成する搬送部4を備える基板搬送作業部50と、基板搬送作業部50を制御するコンベア制御部51を備えている。コンベア制御部51は、搬送処理部52、基板要求処理部53、コンベア通信部54を備えている。コンベア通信部54は、通信ネットワーク2を介して部品実装装置M8、実装検査装置M10を含む他の生産設備との間でデータの送受信を行う。
【0079】
搬送処理部52は、基板搬送作業部50を制御して、上流の生産設備(部品実装装置M8)からワーク(基板)を搬入する。また、搬送処理部52は、上流の実装検査装置M10から発信された基板要求信号に基づいて基板搬送作業部50を制御して、基板要求信号で要求されている側の搬送部4からワークを搬出させる。基板要求処理部53は、いずれかの搬送部4がワーク(基板)を下流に搬出する基板搬送作業を開始すると、上流の生産装置(部品実装装置M8)に対して、ワークを搬出している側の搬送部4にワークを搬出するように基板要求信号を送信する。
【0080】
次に
図10~
図12を参照して、他の実施の形態の部品実装ラインL1における優先順の決定方法の例について説明する。ここでは、部品実装ラインL1において隣接して配置された部品実装装置M7,M8と第4コンベアM9を例に説明する。
【0081】
図10(a)の例では、部品実装装置M7,M8、第4コンベアM9の前側搬送レーン4Fの搬送部4と後側搬送レーン4Rの搬送部4には、それぞれ基板が停止している。部品実装装置M8では、前側搬送レーン4Fの搬送部4(前側搬送部4A)に停止している基板Bf22に対して、前側実装作業部13Aおよび後側実装作業部13B(作業部)が交互実装モードで部品実装作業を実行している。ここで、第4コンベアM9の後側搬送レーン4Rの搬送部4から基板Br21が下流に搬出されると(矢印c)、第4コンベアM9の基板要求処理部53は、上流の部品実装装置M8(生産設備)に対して後側搬送レーン4Rの搬送部4に基板Br22を搬出する旨の基板要求信号S1(作業状況)を送信する。
【0082】
図10(b)において、部品実装装置M8の設備優先順決定部42は、下流の第4コンベアM9(生産設備)から発信された基板要求信号S1(作業状況)に基づいて、後側搬送レーン4Rの搬送部4(後側搬送部4B)側の作業を優先するように優先順を変更する。次いで部品実装装置M8の実装処理部44(制御部)は、決定された優先順に基づいて、前側搬送部4Aに停止している基板Bf22に対する部品実装作業を一時中断し、後側搬送部4Bに停止している基板Br22に対する部品実装作業を開始する。
【0083】
これにより、部品実装ラインL1(生産ライン)において、下流が空いている部品実装装置M8の後側搬送レーン4Rの搬送部4(後側搬送部4B)側の基板Br22に対する部品実装作業と基板搬送作業を優先的に行える、生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。
【0084】
図11(a)の例では、部品実装装置M7と第4コンベアM9の前側搬送レーン4Fの搬送部4と後側搬送レーン4Rの搬送部4には、それぞれ基板が停止している。また、部品実装装置M8では、前側搬送部4Aに停止している基板Bf32に対して、前側実装作業部13Aおよび後側実装作業部13B(作業部)が交互実装モードで部品実装作業を実行している。また、部品実装装置M8の後側搬送部4Bには基板がなく、部品実装装置M8の基板要求処理部45は、上流の部品実装装置M7(生産設備)に対して後側搬送部4Bに基板Br32を搬出する旨の基板要求信号S2(作業状況)を送信している。
【0085】
図11(a)において、部品実装装置M7の搬送処理部43は、下流の部品実装装置M8(生産設備)から発信された基板要求信号S2(作業状況)に基づいて、後側搬送部4Bから基板Br32を搬出している(矢印d1)。ここで、第4コンベアM9の後側搬送レーン4Rの搬送部4から基板Br31が下流に搬出されると(矢印d2)、第4コンベアM9の基板要求処理部53は、上流の部品実装装置M8(生産設備)に対して後側搬送レーン4Rの搬送部4に基板Br32を搬出する旨の基板要求信号S3を送信する。
【0086】
図11(b)において、部品実装装置M8の設備優先順決定部42は、下流に隣接する第4コンベアM9(生産設備)から発信された基板要求信号S3(作業状況)に基づいて、後側搬送部4B側の作業を優先するように優先順を変更する。部品実装装置M8の後側搬送部4Bに基板Br32が停止すると、次いで実装処理部44(制御部)は、決定された優先順に基づいて、前側搬送部4Aに停止している基板Bf32に対する部品実装作業を一時中断し、後側搬送部4Bに停止してた基板Br32に対する部品実装作業を開始する。
【0087】
これにより、部品実装ラインL1(生産ライン)において、下流が空いている部品実装装置M8の後側搬送レーン4Rの搬送部4(後側搬送部4B)側の基板Br32に対する部品実装作業と基板搬送作業を優先的に行える、生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。
【0088】
図12(a)の例では、部品実装装置M7,M8、第4コンベアM9の前側搬送レーン4Fの搬送部4と後側搬送レーン4Rの搬送部4には、それぞれ基板が停止している。部品実装装置M8では、後側搬送部4Bに停止している基板Br42に対して、前側実装作業部13Aおよび後側実装作業部13B(作業部)が交互実装モードで部品実装作業を実行している。また、部品実装装置M7では、前側搬送部4Aに停止している基板Bf43に対して、前側実装作業部13Aおよび後側実装作業部13B(作業部)が交互実装モードで部品実装作業を実行している。
【0089】
図12(a)において、ここで、第4コンベアM9の後側搬送レーン4Rの搬送部4から基板Br41が下流に搬出されると(矢印e)、第4コンベアM9の基板要求処理部53は、上流の部品実装装置M8(生産設備)に対して後側搬送レーン4Rの搬送部4に基板Br42を搬出する旨の基板要求信号S4を送信する。
図12(b)において、部品実装装置M8の後側搬送部4Bに停止している基板Br42に対する部品実装作業の残量が所定より少なくなると、基板要求処理部45は、上流の部品実装装置M7(生産設備)に対して後側搬送部4B側の基板Br42の部品実装作業が間もなく終了する旨の予告信号V1を送信する。
【0090】
図12(b)において、次いで部品実装装置M7の設備優先順決定部42は、部品実装装置M8から発信された予告信号V1(作業状況)に基づいて、後側搬送部4B側の作業を優先するように優先順を変更する。そして、部品実装装置M7の実装処理部44(制御部)は、決定された優先順に基づいて、前側搬送部4Aに停止している基板Bf43に対する部品実装作業を一時中断し、後側搬送部4Bに停止している基板Br43に対する部品実装作業を開始する。
【0091】
これにより、部品実装ラインL1(生産ライン)において、下流が空いている部品実装装置M7と部品実装装置M8の後側搬送レーン4Rの搬送部4(後側搬送部4B)側の基板Br42、基板Br43に対する部品実装作業と基板搬送作業を優先的に行える、生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。
【0092】
次に
図13のフローに沿って、
図10~
図12を参照しながら、他の実施の形態の部品実装装置M7,M8による部品実装方法について説明する。まず、部品実装装置M7,M8のいずれかの搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)に基板が搬入されると(ST11)、設備優先順決定部42は、他方の搬送部4に停止している基板に対して部品実装作業が行われているか否かを判断する(ST12)。
図11(b)では、部品実装装置M8の一方の後側搬送部4Bに基板Br32が搬入されると(ST11)、設備優先順決定部42によって、他方の前側搬送部4Aに停止している基板Bf32に対して部品実装作業が行われているか否かが判断される(ST12)。
【0093】
図13において、他方側で部品実装作業中の場合(ST12においてYes)、設備優先順決定部42は、下流の生産設備(部品実装装置M8、第4コンベアM9)から他方側の搬送部4に対して基板要求信号または予告信号が発信されているか否かを判断する(ST13)。他方側の搬送部4に基板要求信号または予告信号が発信中の場合(ST13においてYes)、設備優先順決定部42は優先順を変更せず、(ST12)に戻って他方側の搬送部4に停止している基板に対する部品実装作業が継続される。
【0094】
他方側の搬送部4に基板要求信号または予告信号が発信されていない場合(ST13においてNo)、設備優先順決定部42は、下流の生産設備(部品実装装置M8、第4コンベアM9)から基板が搬入された側(一方側)の搬送部4に対して基板要求信号または予告信号が発信されているか否かを判断する(ST14)。基板が搬入された側(一方側)の搬送部4に対して基板要求信号または予告信号が発信されていない場合(ST14においてNo)、設備優先順決定部42は優先順を変更せず、(ST12)に戻って他方側の搬送部4に停止している基板に対する部品実装作業が継続される。
【0095】
図13において、基板が搬入された側(一方側)の搬送部4に対して基板要求信号または予告信号が発信中の場合(ST14においてYes)、設備優先順決定部42は、基板が搬入された側(一方側)が優先されるように優先順を変更する。すなわち、先に基板要求信号または予告信号を取得した側の搬送部4に停止している基板に対する部品実装作業が優先される。これにより、搬入された基板(一方側)に対する部品実装作業が開始される(ST15)。また、他方側で部品実装作業が行われていない場合も(ST12においてNo)、搬入された基板(一方側)に対する部品実装作業が開始される(ST15)。
【0096】
図10(a)では、部品実装装置M8の他方の前側搬送部4Aに停止している他方の基板Bf22に対して部品実装作業中であり(ST12においてYes)、下流の第4コンベアM9から部品実装装置M8の他方の前側搬送部4Aに対する基板要求信号は発信されていない(ST13においてNo)。その一方で、下流の第4コンベアM9から部品実装装置M8の一方の後側搬送部4Bに対する基板要求信号S1が発信されている(ST14においてYes)。そのため、部品実装装置M8の設備優先順決定部42は、一方の後側搬送部4B側が優先されるように優先順を変更する。これにより、他方の基板Bf22に対する部品実装作業が一時中断され、後側搬送部4Bに停止していた一方の基板Br22に対する部品実装作業が開始される(ST15)(
図10(b))。
【0097】
図11(b)では、下流の第4コンベアM9から部品実装装置M8の他方の前側搬送部4Aに対する基板要求信号は発信されておらず(ST13においてNo)、下流の第4コンベアM9から部品実装装置M8の一方の後側搬送部4Bに対する基板要求信号S3が発信されている(ST14においてYes)。そのため、部品実装装置M8の設備優先順決定部42は、他方の前側搬送部4Aに停止している他方の基板Bf32よりも、一方の後側搬送部4Bに搬入された一方の基板Br32の方が優先されるように優先順を変更する。これにより、他方の基板Bf32に対する部品実装作業は一時中断され、搬入された一方の基板Br32に対する部品実装作業が開始される。
【0098】
図12(a)では、部品実装装置M7の前側搬送部4Aに停止している他方の基板Bf43に対して部品実装作業中であり(ST12においてYes)、下流の部品実装装置M8から部品実装装置M7の他方の前側搬送部4Aに対する基板要求信号または予告信号は発信されていない(ST13においてNo)。この状態で、下流の部品実装装置M8から部品実装装置M7の一方の後側搬送部4Bに対する予告信号V1が発信される(ST14においてYes)。そのため、部品実装装置M7の設備優先順決定部42は、一方の後側搬送部4B側が優先されるように優先順を変更する。これにより、他方の基板Bf43に対する部品実装作業が一時中断され、一方の後側搬送部4Bに停止していた一方の基板Br43に対する部品実装作業が開始される(ST15)(
図12(b))。
【0099】
図13において、搬入された基板に対する部品実装作業が終了すると、部品実装作業が終了した基板は下流に搬出される(ST16)。未作業の基板がある場合は(ST17においてNo)、(ST11)に戻って次の基板が搬入される。全ての基板に対する作業が終了すると(ST17においてYes)、部品実装装置M7,M8における部品実装作業が終了する。なお、ST12において他方の実装作業が終了すると他方側の基板が搬出される。
【0100】
このように、設備優先順決定部42は、先に取得した基板要求信号(
図10の基板要求信号S1、
図11の基板要求信号S3)または予告信号(
図12(b)の予告信号V1)の搬送部4側の作業を優先するように優先順を決定する。これによって、生産設備(部品実装装置M7,M8)を複数備えた生産ライン(部品実装ラインL1)において生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。
【0101】
次に
図14のフローに沿って、
図11、
図12を参照しながら、他の実施の形態の部品実装装置M7,M8による基板要求方法について説明する。部品実装装置M7,M8の基板要求処理部45は、いずれかの搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)から基板が搬出された後、次の基板が搬出されるまでの間に、搬送部4毎に下記の基板要求方法に従って上流の生産設備に基板要求信号または予告信号を送信(発信)する。
【0102】
図14において、いずれかの搬送部4から基板が搬出されると、基板要求処理部45は、その搬送部4に次の基板が搬入されるのを監視する(ST21)。次の基板が搬入されると(ST21においてYes)、基板要求処理部45は、その搬送部4に搬入された基板の部品実装作業の残量を監視する(ST22)。部品実装作業の残量が所定以下になると(ST22においてYes)、基板要求処理部45は、上流の生産設備に対してその搬送部4の部品実装作業が間もなく終了する旨の予告信号を送信する(ST23)。
【0103】
図12(b)では、部品実装装置M8の基板要求処理部45は、監視していた後側搬送部4Bに停止している基板Br42の部品実装作業の残量が所定以下になり(ST22においてYes)、基板要求処理部45が基板Br42への部品実装作業が間もなく終了する旨の予告信号V1を上流の部品実装装置M7に送信している(ST23)。
【0104】
図14において、予告信号V1を送信すると、基板要求処理部45は、その搬送部4から基板が搬出されるのを監視する(ST24)。基板が搬出されると(ST24においてYes)、基板要求処理部45は、上流の生産設備に対してその搬送部4に基板を搬出するように基板要求信号を送信する(ST25)。
図11(a)では、部品実装装置M8の基板要求処理部45は、後側搬送部4Bから基板が搬出されたため(ST24においてYes)、上流の部品実装装置M7に対して後側搬送部4Bに基板を搬出するように基板要求信号S2を送信している(ST25)。
【0105】
図14において、基板が搬出されて基板要求信号が送信された後、未作業の基板がある場合は(ST26においてNo)、(ST21)に戻って次の基板の搬入が監視される。全ての基板に対する作業が終了すると(ST26においてYes)、部品実装装置M7,M8における部品実装作業が終了する。このように、基板要求処理部45が基板要求信号を送信する前に、部品実装作業の進捗に基づいて予告信号V1を送信することで、上流の生産設備が適切に部品実装作業の優先順を決定することができる。これによって、部品実装ラインL1(生産ライン)において生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。
【0106】
上記説明したように、他の実施の形態の部品実装装置M7,M8は、ワーク(基板)に作業をして生産物(実装基板)を生産する生産設備を複数備えた生産ライン(部品実装ラインL1)の生産設備であって、ワークを並行して搬送する複数の搬送部4(前側搬送部4A、後側搬送部4B)と、ワークに作業を行う作業部(前側実装作業部13A、後側実装作業部13B)と、生産設備からワークの作業状況を取得する設備取得部41と、取得された作業状況からワークに対する作業の優先順を決定する設備優先順決定部42と、決定された優先順に基づいて、作業部を制御する制御部(実装処理部44)と、を備えている。
【0107】
そして、設備優先順決定部42は、ワークに対する作業または搬送のタイミングに優先順を決定している。これによって、生産設備を複数備えた生産ライン(部品実装ラインL1)において生産効率が良い作業の優先順を決定することができる。
【0108】
なお、上述の交互実装モードのほか、ひとつの実装ヘッド5を備えた構成において作業状況から優先順を決定して、一方または他方の搬送部4の基板を優先して実装しても同様の効果を得ることができる。
【0109】
また、上記は生産ラインとして基板に部品を実装する部品実装ラインL1を例にライン制御システムを説明したが、生産ラインはこれに限定されることはない。例えば、生産ラインは半導体を製造する半導体製造ラインであっても、電気機器を組立てる組立て生産ラインであっても、食品加工製品を生産する食品加工ラインであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のライン制御システムおよび優先順決定方法ならびに生産設備は、生産設備を複数備えた生産ラインにおいて生産効率が良い作業の優先順を決定することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0111】
3 ライン管理コンピュータ(ライン制御システム)
4 搬送部
4A 前側搬送部(搬送部)
4B 後側搬送部(搬送部)
5 実装ヘッド(作業部)
5F 前側実装ヘッド(作業部)
5R 後側実装ヘッド(作業部)
8 テープフィーダ(作業部)
13A 前側実装作業部(作業部)
13B 後側実装作業部(作業部)
B1~B5、Bf1~Bf8、Bf11~Bf18、Bf21~Bf22、Bf31~Bf32、Bf41~Bf43、Br1~Br7、Br11~Br17、Br21~Br22、Br31~Br32、Br41~Br43 基板(ワーク)
L1 部品実装ライン(生産ライン)
M1 ローダ(生産設備)
M2 第1コンベア(生産設備)
M3 印刷装置(生産設備)
M4 第2コンベア(生産設備)
M5 印刷検査装置(生産設備)
M6 第3コンベア(生産設備)
M7,M8 部品実装装置(生産設備)
M9 第4コンベア(生産設備)
M10 実装検査装置(生産設備)
M11 第5コンベア(生産設備)
M12 リフロー装置(生産設備)
M13 アンローダ(生産設備)