(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/00 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
E03D9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021009676
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西山 裕子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真人
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133244(JP,A)
【文献】特開2009-221794(JP,A)
【文献】特開2009-084821(JP,A)
【文献】特表2018-528413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウルと、
超音波が前記ボウル内の溜め水を通過するように設けられた超音波センサと、
前記超音波センサによる前記超音波の送受信により、前記超音波の前記溜め水内での通過時間を計測し、該通過時間にもとづいて前記溜め水内の排泄物の概略サイズを算出する算出部と、を備
え、
前記算出部は、前記超音波が前記排泄物及び前記溜め水を含む複数の媒質の媒質間の境界部を通過する際に発生する反射波が前記超音波センサに返ってくるまでの時間を前記通過時間として計測し、計測した前記通過時間を用いて前記排泄物の前記概略サイズを算出する構成とされ、前記境界部には前記排泄物の端面が含まれることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記超音波センサは、送信された送出波が前記溜め水内で前記排泄物のうちの便の一方向の両端面のそれぞれで反射して生成された反射波を受信できるように構成されており、
前記算出部は、前記便の一方向の両端面のそれぞれに対応した、前記送出波の送信から前記反射波の受信までの到達時間の時間差にもとづいて前記便の概略寸法を算出することを特徴とする便器装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記超音波センサが複数設けられていることを特徴とする便器装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記算出部は、前記排泄物のうちの便の一方向に沿った複数部位における概略寸法を算出することを特徴とする便器装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記超音波センサは、送信された送出波が前記溜め水の水面で反射して生成された反射波を受信できるように構成されており、
前記算出部は、排泄前後における、前記送出波の送信から前記反射波を受信するまでの往復時間を計測し、該往復時間の時間差にもとづいて、前記溜め水の水位変化を算出し、該水位変化により前記溜め水内の前記排泄物の概略体積を算出することを特徴とする便器装置。
【請求項6】
請求項5において、
着座前の人を検知する人検知手段をさらに備えており、
該人検知手段が人を検知したタイミングで、前記送出波の送信から前記反射波の受信までの往復時間をもとに前記水位変化の基準値が算出されることを特徴とする便器装
置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボウル内の溜め水に排泄された排泄物の概略サイズを算出することができる便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来には、ボウルに排泄される便(大便)による健康観察が可能な便器装置が多く提案されている。特許文献1に記載された便器装置は、落下中の便をカメラで撮影して便の分析を行うものである。また、この文献技術は、使用者のプライバシーを保護するために、カメラで撮影した画像のうちの使用者の身体に相当する画像領域をマスキングするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記文献のものでは、ボウル内における便の落下タイミングが限られたきわめて短い時間間隔であるため、また便の落下空間が限られたきわめて小さな領域であるため、便の全体を正しく捉えることが困難であるという問題がある。また、前記のように身体に相当する画像領域がマスキングされたとしても、使用者によっては、カメラをトイレ室や便器に設置することに抵抗を感じる者もいる。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、排泄物の状態判断のために、簡易に確実に排泄物の概略サイズを算出でき、かつ使用者のプライバシーを保護することもできる便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の便器装置は、ボウルと、超音波が前記ボウル内の溜め水を通過するように設けられた超音波センサと、前記超音波センサによる前記超音波の送受信により、前記超音波の前記溜め水内での通過時間を計測し、該通過時間にもとづいて前記溜め水内の排泄物の概略サイズを算出する算出部と、を備え、前記算出部は、前記超音波が前記排泄物及び前記溜め水を含む複数の媒質の媒質間の境界部を通過する際に発生する反射波が前記超音波センサに返ってくるまでの時間を前記通過時間として計測し、計測した前記通過時間を用いて前記排泄物の前記概略サイズを算出する構成とされ、前記境界部には前記排泄物の端面が含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の便器装置は前述した構成とされているため、排泄物の状態判別のために、簡易に確実に排泄物の概略サイズを算出でき、かつ使用者のプライバシーを保護することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る便器装置の電気的構成を示す基本ブロック図である。
【
図2】(a)は同便器装置の内部を模式的に示した模式的断面図、(b)は他例の便器装置の内部を模式的に示した模式的断面図である。
【
図3】(a)(b)は、溜め水内での超音波の送受信による便の概略サイズの算出原理を説明するための模式図である。
【
図4】(a)(b)は、底部に設置された超音波センサによる超音波の送受信による便の概略寸法の算出態様の2例を示す模式図である。
【
図5】同概略寸法の算出態様の他例を示す模式図である。
【
図6】(a)は側部に設置された超音波センサによる超音波の送受信による便の概略寸法の算出態様の1例を示す模式図であり、(b)(c)は同概略寸法の算出態様の他例を示す模式図である。
【
図7】超音波センサによる超音波の送受信による便の概略体積の算出態様の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。まず、実施形態に係る便器装置の概略基本構成について記述する。
【0010】
便器装置1は、ボウル12と、超音波がボウル12内の溜め水31を通過するように設けられた超音波センサ22と、を備えている。さらに便器装置1は、超音波センサ22による超音波の送受信により、超音波の溜め水31内での通過時間を計測し、通過時間にもとづいて溜め水31内の排泄物の概略サイズを算出する算出部23を備えている。
ついで、この便器装置の詳細な構成について説明する。
【0011】
図1~
図7は便器装置1の説明図である。なお、
図2(a)(b)は、洗浄方式(構造)が相異する2形態を示す便器装置1の内部を模式的に示した模式的断面図であり、いずれの方式のものであってもよい。
【0012】
便器装置1は、トイレ空間内の床や壁などに固定される腰掛式の洋風便器装置である。この便器装置1の本体10は、上方に向けて開口したボウル12がスカート部11に囲まれるように内装され、ボウル12の上側にはボウル12の開口面に対し起倒自在とした、相互に同一の回転軸とした便座21、便蓋20を備えている。ボウル12の素材は樹脂、陶器のいずれであってもよい。
【0013】
スカート部11の内部空間には、ボウル12内の汚水を排出するとともに、給水口14からボウル12内に洗浄水を供給しボウル12内を洗浄する便器洗浄部13が配されている。この便器洗浄部13は給水機構と排水機構とを有する。
【0014】
給水機構は、給水口14と、水道管(不図示)から供給される洗浄水をボウル12内に給水口14を通じて供給する洗浄水供給路15と、洗浄水供給路15の途中に配されている、ボウル12への給水を供給または遮断する給水弁16とを備えている。
【0015】
図2(a)に示した排水機構は、ボウル12の底部より後方に延びるように接続された筒状の屈曲状のトラップ17を有し、そのトラップ17がさらに下方に延び排水口18に接続されている。この種の排水機構としては、サイホン式やサイホンゼット式、サイホンボルテックス式などがあり、サイホン作用により排水状態または封水状態が形成される機構とされている。
【0016】
また排水機構としては、
図2(b)に示すような可動式のトラップ17Aを有した構造であってもよい。このトラップ17Aは、駆動部(不図示)によって矢印方向に回動されて排水状態または封水状態を形成する。図例のトラップ17Aは封水状態での位置にあり、排水状態ではトラップ17Aの開放端が排水口18に向くように回転動作する。なおトラップ17Aはトラップケース(不図示)に囲まれて、汚水や臭気が外部に漏れないようになっている。
【0017】
また便器装置1には、サイホン式、可動式のいずれでもない排水機構、例えば洗い落とし式の排水機構も適用可能である。
【0018】
また、図例では、便器装置1を、水洗タンク(ロータンク)を備えていない、水道直結式のタンクレスタイプとした例を示しているが、水洗タンクを備えた構成としてもよい。
【0019】
便器装置1は前述したように超音波センサ22を備えている。この超音波センサ22は、
図2(a)(b)に示すようにボウル12の底部12aに設けられればよく、後述するように側部12bに設けられてもよい。
【0020】
また、超音波センサ22はボウル12の外側に埋設されることが望ましい。ボウル12の素材が樹脂、陶器のいずれであっても、ボウル12の外側から送信される超音波はボウル12を介してボウル12内の溜め水31を通過するため、超音波センサ22はボウル12の外側に設けることに支障はない。なお、超音波センサ22はボウル12の内側に配されてもよい。ボウル12の外側に超音波センサ22を設置する際、音響インピーダンスの小さい空気が超音波センサ22とボウル12の間に入り、超音波が反射してしまうのを防止するために、音響整合層を設けてもよい。
【0021】
また便器装置1は、便座21に対する着座/離座の状態を検知する着座センサ24と、人の入室有/無の状態を検知する人感センサ25とをさらに備えている。着座センサ24としては、例えば便座21に内装された、着座/離座を検知する荷重センサや、便座21の回転軸部の近傍より着座/離座を検知する赤外線センサなどが採用される人感センサ25としては、例えば赤外線センサが用いられる。
【0022】
さらに便器装置1は操作部27を備えている。この操作部27は、洗浄の指示を制御部5を介して便器洗浄部13に対して出力する大便用洗浄ボタン(不図示)および小便用洗浄ボタン(不図示)や、便座開閉操作部(不図示)、便蓋開閉操作部(不図示)などを備えている。なお、操作部27は本体操作部(不図示)、リモコン(不図示)のいずれにも配されていることが望ましい。これらには、各種の操作や設定などができる操作スイッチや操作ボタンなども設けてある。リモコンとしては赤外線通信のものが好適に用いられる。
【0023】
便器装置1は、上記制御対象(便器洗浄部13の給水弁16や便蓋駆動部(不図示)、便座駆動部(不図示)など)を制御する一方、操作部27や超音波センサ22、着座センサ24、人感センサ25などからの出力信号を受ける制御部5を備えている。この制御部5はCPUやMPUなどのプロセッサおよび種々のプログラムを含んで構成される。算出部23は、この制御部5の下で動作する。便器装置1はさらに、計時部29および電源部(不図示)を備えている。
【0024】
また、便器装置1は、装置の異常や状態、ガイダンスを音や音声合成で報知するスピーカなどで構成された報知部28を備えている。なお報知部28としては、音出力のものに代えてあるいは加えて、LEDなどのディスプレイを備えた構成としてもよい。
【0025】
つぎに、本便器装置1の具体的な動作態様について、
図3~
図7を参照しながら説明する。まず、
図3(a)(b)にもとづいて、溜め水内の排泄物の概略サイズの算出原理について説明する。なお、排泄物には便32(大便)と尿(小便)とがある。
【0026】
本便器装置1の排泄物の概略サイズの算出方式は、媒質により音の伝搬速度に差があることを利用したものである。そのために超音波センサ22が用いられる。より具体的には、音の伝搬のしやすさの指標である音響インピーダンスが媒質により、またはその密度により異なるため、音が伝搬する距離が同じであっても媒質が異なれば伝搬速度に差が生じる。
【0027】
したがって、ボウル12内において、排泄物(便32)が混在していない溜め水31と、便32が混在している溜め水31とでは、超音波が移動する距離が同じであっても、超音波の通過時間は異なる。この原理を利用すれば、溜め水31中に便32が存在するか否かなどを判断することができる。
【0028】
また、超音波は複数の媒質を通過すれば、その境界部で反射する。その反射波が返ってくるまでの時間を用いて種々の概略サイズを算出することもできる。
【0029】
図3(a)は、底部12aに設けた超音波センサ22による超音波の送出波と反射波のさまざまな態様を示した図である。この図に示すように、溜め水31内に便32がある場合、超音波センサ22から送信された送出波は便32の下面で反射し、さらに便32の下面を通過した送出波は便32の上面で反射し、さらに便32の上面を通過した送出波は溜め水31の水面で反射する。これらの反射波は底部12a側に戻ってきて底部12aの超音波センサ22で受信される。また、溜め水31の水面で反射した反射波の一部は、便32の上面との間で反射する。
【0030】
本便器装置1は、前述したように超音波の溜め水31内での通過時間(到達時間)をもとに排泄物の概略サイズを算出するものである。
図4~
図6に例示した態様は算出対象を便32の概略寸法としたものであり、
図7に例示した態様は算出対象を尿、便32のすくなくとも一方の概略体積(量)としたものである。
【0031】
この種の算出方式は、例えば
図3(b)の受信波形に示すように、送信した送出波の2種の反射波(便32の下面の反射波、便32の上面の反射波)の受信までの時間差にもとづいて、排泄物(
図3では便32が対象)の概略寸法を算出するものである。ここで、媒質としての便32の密度は一定のものと仮定し、その伝搬速度も一定であるとして概略寸法を算出することが望ましい。
【0032】
なお、到達時間の計測は算出部23と計時部29との協働によりなされればよい。また、到達時間の時間差だけではなく到達時間そのものをもとに種々の概略寸法を算出することもできる。
【0033】
このように超音波の到達時間にもとづく算出可能な概略サイズとしては、便32の概略寸法、例えば太さや長さ、形状が含まれ、さらに便32や尿の概略体積が含まれる。なお、概略サイズを数値で表す場合、「時間」そのものや、「時間×係数」などで表現すればよい。
【0034】
以下、種々の例について説明する。なお、
図3~
図5には便32がその長手方向が横方向に沿うように浮かぶ場合を例示してあるが、これには限らず便32がその長手方向が上下方向に沿うように浮かぶ場合も想定される。このように、便32は溜め水31内で種々の状態で残留するので、以下では便32の太さおよび長さを、便32の横方向の大きさを表す「X値」、便32の上下方向の大きさを表す「Y値」を付記して表現する。
【0035】
図3(a)のように超音波センサ22を底部12aに設けて、横方向に浮かんだ便32の太さ(Y値)を算出する場合、
図4(a)に示すように、1つの超音波センサ22が超音波の送信と受信の両方を担うようにしてもよい。また
図4(b)に示すように、送信用と受信用で個別の超音波センサ22を配してもよい。さらに受信用の超音波センサ22を2つ以上設けてもよい。
【0036】
超音波センサ22が1つであれば、超音波による概略サイズ算出システムを、より簡易な構成で、より低価格で実現することができる。また、超音波センサ22が複数であれば、反射波を確実に受信できるように送信用、受信用の超音波センサ22を配置すればよく、計測の確実性が向上する。また、受信用の超音波センサ22を複数設ければ、超音波の受信もれを極力減らすことができる。
【0037】
また、
図5に示すように、底部12aの3以上の箇所に超音波センサ22を設ければ、さらに種々の概略寸法を算出することができる。
図5の例では、便32の太さ(Y値)と長さ(X値)が算出可能とされる。
【0038】
具体的には、
図5中の左の超音波センサ22は、送出波が便32のない箇所を通過するため、水面に反射し、その反射波を受信することで水中の通過時間を計測することができる。便32のない状態での水面反射の超音波の到達時間を水面基準値として記憶しておき、排泄後の到達時間と水面基準値とを比較することで、その到達時間が便32のない箇所での水面反射によるものか否かを判別することができる。
【0039】
また、
図5の左から2番目の超音波センサ22は、送出波が便32で反射するため、その反射波を受信する。その反射波の到達時間は水面基準値と時間差があるから、超音波が便32で反射したことが判断される。
【0040】
図5の例のように、隣接する2つの超音波センサ22の一方が便32の存在しない場合の反射波であり、他方が便32が存在する場合の反射波である場合、それらの間に便32の端部(図例では左端)が位置していることを、算出部23は判断することができる。
【0041】
また、
図5の右の超音波センサ22の場合、図例では便32の右端位置に相当する箇所に配されているため、水面による反射波と便32による反射波が混じる。算出部23はそれらの反射波を解析することで便32の端部を判断することができる。具体的には、超音波センサ22は便32のない箇所を通過し水面で反射した反射波と、便32を透過し水面で反射した反射波とを受信するが、それらは到達時間や音圧の強度が異なるため、それらにもとづいて便32の端部を判断することができる。
【0042】
このように
図5の例では、算出部23は、溜め水31内で横向きに浮かんだ便32の長手方向の概略の端部位置を算出し、それにより便32の長さ(Y値)を算出することができる。
【0043】
さらに、
図5の中央の2つの超音波センサ22によれば、
図4(a)に示したものと同様に、いずれも便32の太さ(X値)を算出することができる。つまり、便32で反射した反射波を受信する超音波センサ22が複数箇所に配されれば、算出部23は便32の複数部位での太さ(X値)を算出することができる。
【0044】
また、便32の長手方向の各部での太さと、長さが算出されれば、便32の概略形状も算出される。底部12aに設ける超音波センサ22が多ければ多いほど、便32の長さや太さ、形状がより精緻に算出される。
【0045】
図5では便32が横方向に浮かんだ例を示したが、上下方向に立つように浮かんだ場合でも便32の概略寸法の算出は可能である。なお、底部12aに代えて、または加えて、側部12bに超音波センサ22を設けてもよい。側部12bに設けた超音波センサ22は、送出波を溜め水31の水面で反射させにくいが、反対側の側部12bで反射させることができるため、
図4および
図5に例示した算出方法と同様の方法で便32の概略寸法が算出される。
【0046】
また、
図6(a)は、便32の概略寸法を側部12bに設けた超音波センサ22で計測する一方式を説明するための図であり、
図6(b)(c)は同他方式を説明するための図である。
【0047】
図6(a)は、便32の一方の端部(左面)で反射した反射波の到達時間と、他方の端部(右面)で反射した反射波の到達時間との時間差で便の長さ(X値)を算出する方式を示した図である。原理的には
図4(a)の方式と同様である。
【0048】
また、
図6(b)(c)は、相対する側部12bの一方に送信用の超音波センサ22を配置し、他方に受信用の超音波センサ22を配置し、それらで便32の概略長さを算出する方式を示した例図である。
【0049】
この方式では、排泄前において、便32が存在しない溜め水31のみがボウル12に溜めてある状態において、対をなす2つの超音波センサ22で到達時間(横方向基準値)を計測しておく(
図6(b)参照)。そして、算出部23は排便後に、計測した到達時間と横方向基準値との時間差を計測することで便32の長さを算出することができる。
【0050】
また前述したように、側部12bに設けた超音波センサ22により、上下方向に立つように浮かんだ便32の太さ(Y値)を計測することもできる。側部12bで複数の超音波センサ22の設置が可能であれば、上下方向に立つように浮かんだ便32の長さ(Y値)を算出することもできる。
【0051】
以上には、超音波センサ22を底部12aのみに設けた場合と、側部12bのみに設けた場合とを説明したが、底部12aおよび側部12bの両方に設けて、種々の概略寸法を算出するようにしてもよい。
【0052】
このような便器装置1を用いれば、排泄物のうちの便32については以上のようにして概略サイズ(太さや長さなどの概略寸法)を算出することができる。
【0053】
つぎに、排泄物の概略体積の算出方式について、
図7(a)(b)を参照しながら説明する。なお
図7には、超音波センサ22がボウル12の底部12aに設けられたものを例示した。
【0054】
この算出方式は、排泄前後における、送出波の送信から反射波を受信するまでの往復時間の時間差にもとづいて、溜め水31の水位変化を算出する方式である。
図7(a)は溜め水31内に尿や便32がない状態を示した図であり、
図7(b)は排泄後の状態を示した図である。排泄により尿や便32が溜め水31内に残留するから、水位はL0からL1に変化する。
【0055】
この方式では排泄前に、
図7(a)に示すように、溜め水31内に尿や便32がない状態での超音波の往復時間(水位変化基準値)を算出しておく。算出部23は、排泄したのちの超音波の往復時間(
図7(b)参照)と、排泄前の水位変化基準値との時間差を算出し、その時間差をもとにボウル12内の変化量を算出し、その変化量にもとづいて概略体積を算出すればよい。
【0056】
なお、超音波が便32を透過するので、複数の超音波センサ22を配して、便32が残留しにくい位置に設けた超音波センサ22による往復時間を採用することが望ましい。
【0057】
この算出方式を用いる場合、
図2(a)(b)に示すようにトラップ17、17A内の溜め水31の水位が排泄前および排泄後において上限に達しないことが前提とされる。そうすれば、尿や便32の排泄によりボウル12およびトラップ17、17Aの水が上限を超えて排水口18へ流れ出ないかぎりは、この方式で尿および便32の体積を算出することができる。
【0058】
この算出方式を用いれば、排泄が排便のみ、または排尿のみである場合には、溜め水31に尿と便32の両方が混在しないため、算出部23は便32、尿のそれぞれの概略体積を算出することができる。便32と尿がともに残留していれば、算出部23はそれら全体の概略体積を算出することができる。
【0059】
前記水位変化基準値としては、
図5の態様でも用いられる水面基準値と同じものを利用することができる。水位変化基準値および水面基準値は溜め水31内に排泄物のない状態の数値である。これらの基準値としては、あらかじめ計測などにより得た定数を用いてもよいが、排泄前状態の溜め水31の水位が環境などにより変化することを想定して、前述したように排泄前に算出部23が計測するようにしてもよい。
【0060】
具体的には、人検知手段が排泄前の人を検知したタイミングで算出部23が基準値を計測すればよい。人検知手段としては、人感センサ25または着座センサ24が挙げられ、人感センサ25による人の入室タイミング、または着座センサ24による着座タイミングなどで計測が実施されればよい。
【0061】
以上のように、本便器装置1は排泄物の概略寸法および概略体積を算出できる構成であるため、排泄のつど、算出部23が算出した算出結果を報知部28より報知させることで、利用者に健康管理情報として提供することができる。
【0062】
また、本便器装置1は超音波センサ22を用いる構成であるため、排泄物が溜め水31内に残留してさえいれば、その時間中に排泄物の状態検出をすることができ、概略サイズの算出をしやすくすることができる。排泄物が移動(落下)している間に検出するものにくらべ、検出の精度、確実性は高くなる。
【0063】
また、超音波センサ22のほかにカメラなどのセンサを用いなくてもよく、また超音波センサ22はボウル12に取りつけられればよいため、概略サイズ算出システムを簡易な構成で実現することができる。また、カメラを用いなくてもよいため、人の局部や排泄物が画像として保存されることはなく、利用者のプライバシーを保護することができる。
【0064】
算出部23が算出する情報は、利用者ごとに紐づけて便器装置1あるいは外部の装置に記憶することが望ましい。例えば、所定期間(例えば1日)の排泄物の概略サイズの集計情報を利用者別に保存してもよい。
【0065】
このように利用者ごとに集計情報やその他算出データを紐づけて記憶しておけば、利用者ごとの長期にわたる健康管理を行うこともできる。便器装置1が利用者を判断するためには、便器装置1に個人を特定できる識別コードを登録しておき、使用の際に識別コードの入力操作を行うようにすればよい。また、1日のデータなどをまとめて、あるいは合算などをしてスマートフォンなどの外部装置を通じて表示するようにしてもよい。
【0066】
概略寸法および概略体積の両方を算出できる構成のものにおいては、算出された概略寸法、概略体積間で誤差(数値的な矛盾)が発生する場合がある。その誤差は便32の密度に起因することも想定できるから、その誤差により便32が硬軟いずれの状態であるかを判断することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1 便器装置
5 制御部
11 スカート部
12 ボウル
12a 底部
12b 側部
13 便器洗浄部
14 給水口
15 洗浄水供給路
16 給水弁
17、17A トラップ部
18 排水口
20 便蓋
21 便座
22 超音波センサ
23 算出部
24 人感センサ
25 着座センサ
27 操作部
28 報知部
29 計時部
31 溜め水
32 便