(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】放電装置
(51)【国際特許分類】
H01T 23/00 20060101AFI20241206BHJP
B05B 5/10 20060101ALI20241206BHJP
B05B 5/057 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H01T23/00
B05B5/10
B05B5/057
(21)【出願番号】P 2021125195
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2024-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 慎
(72)【発明者】
【氏名】秦 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】石上 陽平
(72)【発明者】
【氏名】大森 崇史
(72)【発明者】
【氏名】滝川 裕基
(72)【発明者】
【氏名】青野 哲典
(72)【発明者】
【氏名】裏谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】伊東 幹夫
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046635(JP,A)
【文献】特開2018-125301(JP,A)
【文献】特開2011-245382(JP,A)
【文献】特開2020-035624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
H05F 1/00 - 7/00
A61L 9/00 - 9/22
B05B 5/00 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持する放電電極を含む負荷に出力電圧を印加することにより、前記放電電極に放電を生じさせる電圧印加回路を備え、
前記電圧印加回路は、
前記出力電圧の大きさを変動させる機能と、
前記出力電圧の大きさを変動させる周期である放電周期を、複数の周期のいずれかに
経過時間に基づいて切り替える機能と、を有する
放電装置。
【請求項2】
前記複数の周期の平均は、前記出力電圧の変動によって生じる前記液体の振動の振幅が最大になる共振周期を含む所定範囲に含まれている
請求項1記載の放電装置。
【請求項3】
前記複数の周期のそれぞれは、周期的に変動する前記出力電圧によって生じる前記液体の振動の振幅が最大になる共振周期に前記共振周期の半値を加えた値である第1値以下、かつ、前記共振周期から前記半値を引いた値である第2値以上、である
請求項1又は2記載の放電装置。
【請求項4】
前記放電電極に前記液体を供給する液体供給部、を更に備える
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の放電装置。
【請求項5】
前記液体は、前記放電によって静電霧化される
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の放電装置。
【請求項6】
前記電圧印加回路は、前記放電周期を所定回数繰り返す毎に、前記放電周期を前記複数の周期のいずれかに切り替える
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の放電装置。
【請求項7】
前記電圧印加回路は、前記放電周期を前記複数の周期のいずれかにランダムに切り替える
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の放電装置。
【請求項8】
液体を保持する放電電極を含む負荷に出力電圧を印加することにより、前記放電電極に放電を生じさせる電圧印加回路を備え、
前記電圧印加回路は、
前記出力電圧の大きさを変動させる機能と、
前記出力電圧の大きさを変動させる周期である放電周期を、複数の周期のいずれかに時間の経過に伴って切り替える機能と、を有し、
前記電圧印加回路は、前記放電周期を所定回数繰り返す毎に、前記放電周期を前記複数の周期のいずれかに切り替える
放電装置。
【請求項9】
液体を保持する放電電極を含む負荷に出力電圧を印加することにより、前記放電電極に放電を生じさせる電圧印加回路を備え、
前記電圧印加回路は、
前記出力電圧の大きさを変動させる機能と、
前記出力電圧の大きさを変動させる周期である放電周期を、複数の周期のいずれかに時間の経過に伴って切り替える機能と、を有し、
前記電圧印加回路は、前記放電周期を前記複数の周期のいずれかにランダムに切り替える
放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電電極と電圧印加回路とを備えた放電装置が提供されている。
【0003】
例えば特許文献1の放電装置では、電圧印加回路は、液体を保持する放電電極を含む負荷に電圧を印加することにより、放電電極に放電を生じさせる。電圧印加回路は、負荷に印加する電圧の大きさを、液体の共振周波数を含む所定範囲内の駆動周波数にて周期的に変動させることにより、液体を機械的に振動させる。そして、放電電極に保持されている液体が、放電によって静電霧化される。その結果、ラジカルを含有する帯電微粒子液が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放電装置では、放電電極の放電時に放電音が発生する。そこで、放電装置に対して、放電音を低減させることが求められている。
【0006】
本開示の目的は、放電音を低減させることができる放電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る放電装置は、液体を保持する放電電極を含む負荷に出力電圧を印加することにより、前記放電電極に放電を生じさせる電圧印加回路を備える。前記電圧印加回路は、前記出力電圧の大きさを変動させる機能と、前記出力電圧の大きさを変動させる周期である放電周期を、複数の周期のいずれかに経過時間に基づいて切り替える機能と、を有する。
本開示の一態様に係る放電装置は、液体を保持する放電電極を含む負荷に出力電圧を印加することにより、前記放電電極に放電を生じさせる電圧印加回路を備える。前記電圧印加回路は、前記出力電圧の大きさを変動させる機能と、前記出力電圧の大きさを変動させる周期である放電周期を、複数の周期のいずれかに時間の経過に伴って切り替える機能と、を有する。前記電圧印加回路は、前記放電周期を所定回数繰り返す毎に、前記放電周期を前記複数の周期のいずれかに切り替える。
本開示の一態様に係る放電装置は、液体を保持する放電電極を含む負荷に出力電圧を印加することにより、前記放電電極に放電を生じさせる電圧印加回路を備える。前記電圧印加回路は、前記出力電圧の大きさを変動させる機能と、前記出力電圧の大きさを変動させる周期である放電周期を、複数の周期のいずれかに時間の経過に伴って切り替える機能と、を有する。前記電圧印加回路は、前記放電周期を前記複数の周期のいずれかにランダムに切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、放電音を低減させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る放電装置のブロック図である。
【
図2】
図2Aは、同上の放電装置において放電電極に保持されている液体が伸びた状態を示す模式図である。
図2Bは、同上の放電装置において放電電極に保持されている液体が縮んだ状態を示す模式図である。
【
図3】
図3Aは、同上の放電装置における放電電極及び対向電極の具体例を示す斜視図である。
図3Bは、
図3AのX1-X1線断面図である。
【
図4】
図4は、同上の放電電極の先端形状を示す側面図である。
【
図5】
図5は、同上の放電装置の一例を示す回路図である。
【
図6】
図6Aは、同上の放電装置の出力を概略的に示すグラフである。
図6Bは、比較例に係る放電装置の出力を概略的に示すグラフである。
【
図7】
図7は、同上の放電装置及び比較例に係る放電装置の各放電音の周波数特性を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施形態の第1変形例に係る放電装置の出力を簡略的に示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態の第2変形例に係る放電装置の出力を簡略的に示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態の第3変形例に係る放電装置の出力を簡略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態は、一般に放電装置に関する。より詳細に、実施形態は、液体を保持する放電電極に放電を生じさせる放電装置に関する。
【0011】
以下、実施形態に係る放電装置について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
また、以下に説明する実施形態は、本開示の実施形態の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(実施形態)
(1)概要
まず、本実施形態に係る放電装置10の概要について、
図1を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る放電装置10は、
図1に示すように、電圧印加装置1と、負荷4と、液体供給部5と、を備えている。
【0015】
電圧印加装置1は、放電を生じさせるための電圧Voを負荷4に印加する装置であり、電圧印加回路2、及び検出回路3を有している。つまり、放電装置10は、電圧印加回路2を備えている。なお、以降では、電圧Voを出力電圧Voと称す。
【0016】
負荷4は、放電電極41、及び対向電極42を有している。対向電極42は、放電電極41と隙間を介して対向するように配置される電極である。つまり、放電電極41は、対向電極42に対向して配置されている。負荷4では、放電電極41と対向電極42との間に出力電圧Voが印加されることにより、放電電極41と対向電極42との間に放電が生じる。
【0017】
液体供給部5は、放電電極41に液体50を供給する機能を有する。
【0018】
このように、本実施形態に係る放電装置10は、電圧印加回路2、検出回路3、液体供給部5、放電電極41、及び対向電極42を、構成要素に含んでいる。ただし、放電装置10は、電圧印加回路2を最低限の構成要素として含んでいればよく、検出回路3、放電電極41、対向電極42、及び液体供給部5等の各々は、放電装置10の構成要素に含まれていなくてもよい。
【0019】
本実施形態に係る放電装置10では、放電電極41に液体50が保持されている状態において、電圧印加回路2が放電電極41と対向電極42との間に出力電圧Voを印加する。放電電極41に液体50が保持されている状態とは、例えば放電電極41の表面に液体50が付着している状態である。つまり、電圧印加回路2は、液体50を保持する放電電極41を含む負荷4に出力電圧Voを印加する。これにより、放電電極41と対向電極42との間で放電が生じ、放電電極41に保持されている液体50が、放電によって静電霧化される。すなわち、本実施形態に係る放電装置10は、いわゆる静電霧化装置を構成する。放電装置10では、放電電極41と対向電極42との間に生じる放電によって、放電電極41に保持されている液体50が静電霧化される。本実施形態において、放電電極41に保持されている液体50、つまり静電霧化の対象となる液体50を、単に「液体50」とも呼ぶ。
【0020】
電圧印加回路2は、放電電極41及び対向電極42に電気的に接続されている。具体的には、対向電極42が電圧印加回路2の正極(プラス)に電気的に接続され、放電電極41が電圧印加回路2の負極(グランド)に電気的に接続されている。電圧印加回路2は、放電電極41と対向電極42との間に出力電圧Voを印加する。
【0021】
そして、電圧印加回路2は、負荷4(放電電極41と対向電極42との間)に出力電圧Voを印加することにより、放電電極41と対向電極42との間に放電を生じさせる。特に、本実施形態では、電圧印加回路2は、出力電圧Voの大きさを周期的に変動させることにより、放電を間欠的に生じさせる。すなわち、出力電圧Voは、出力電圧Voが上昇して高電圧となる期間と、出力電圧Voが低下して低電圧となる期間と、を交互に繰り返し、出力電圧Voの大きさが周期的に変動することで、液体50には機械的な振動が生じる。なお、ここでいう「高電圧」とは、放電電極41に放電が生じるように設定された電圧であればよく、一例として、ピークが7.0kV程度となる電圧である。ただし、出力電圧Voの電圧値は、7.0kV程度に限らず、例えば、放電電極41及び対向電極42の形状、又は放電電極41と対向電極42と間の距離W1(
図3B参照)等に応じて適宜設定される。また、「低電圧」とは、放電電極41に放電が生じないように設定された電圧であればよく、上述の「高電圧」より低い電圧であり、0Vより大きい電圧、及び0Vのいずれであってもよい。なお、以降では、「出力電圧Voの大きさが周期的に変動する」ことを、「出力電圧Voが周期的に変動する」ということがある。
【0022】
具体的に、負荷4に出力電圧Voが印加されると、出力電圧Voが高電圧となる期間では、放電電極41に保持されている液体50は、
図2Aに示すように、電界による力を受けてテイラーコーン(Taylor cone)と呼ばれる円錐状の形状を成す。そして、テイラーコーンの先端部(頂点部)に電界が集中することで、放電が発生する。このとき、テイラーコーンの先端部が尖っている程、つまり円錐の頂角が小さく(鋭角に)なる程に、絶縁破壊に必要な電界強度が小さくなり、放電が生じやすくなる。また、出力電圧Voが低電圧となる期間では、放電電極41に保持されている液体50は、
図2Bに示すように、電界による力が低下することで略球状の形状を成す。そして、出力電圧Voが周期的に変動することで、放電電極41に保持されている液体50は、機械的な振動に伴って、
図2Aに示す形状と
図2Bに示す形状とに交互に変形する。その結果、上述したようなテイラーコーンが周期的に形成されるため、
図2Aに示すようなテイラーコーンが形成されるタイミングに合わせて、放電が間欠的に発生することになる。なお、
図2A及び
図2Bでは、先端部411と液体50とを区別しやすいように、液体50に対してドットハッチングを施している。
【0023】
そして、放電装置10は、負荷4の放電電極41と対向電極42との間に放電を生じさせることによって、ラジカルを生成し、かつ、放電電極41に保持されている液体50を静電霧化する。而して、放電装置10は、静電霧化された液体50の微細液滴中にラジカルを含有しているナノメータサイズの帯電微粒子液(帯電微粒子水)を生成する。つまり、放電装置10は、帯電微粒子液生成装置として機能する。ラジカルは、除菌、脱臭、保湿、保鮮、ウイルスの不活性化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。以降、ラジカル、及び帯電微粒子液などを有効成分と総称することがある。また、有効成分には、後述の空気イオンも含まれる。
【0024】
上述の放電装置10は、ラジカルを含有する帯電微粒子液を生成することによって、ラジカルが単体で空気中に放出される場合に比べて、ラジカルの長寿命化を図ることができる。さらに、帯電微粒子液が例えばナノメータサイズであることで、比較的広範囲に帯電微粒子液を浮遊させることができる。
【0025】
そして、本実施形態に係る放電装置10では、電圧印加回路2は、負荷4に印加する出力電圧Voの大きさを周期的に変動させる機能と、出力電圧Voの大きさを変動させる周期である放電周期を、複数の周期のいずれかに時間の経過に伴って切り替えることが可能なように構成されている。すなわち、放電装置10は、放電周期を時間の経過に伴って切り替える機能と、を有することで、複数の周期で放電を生じさせる。この結果、放電装置10は、放電周期を単一の周期としたときに比べて、放電音を低減させることができる。
【0026】
(2)詳細
次に、本実施形態に係る放電装置10の詳細について、
図1~
図7を参照して説明する。
【0027】
(2.1)全体構成
本実施形態に係る放電装置10は、
図1に示すように、電圧印加装置1と、負荷4と、液体供給部5と、を備えている。電圧印加装置1は、電圧印加回路2と、検出回路3と、を有している。負荷4は、放電電極41と、対向電極42と、を有している。液体供給部5は、放電電極41に液体50を供給する。
【0028】
(2.1.1)電極
図3A及び
図3Bに示すように、放電電極41及び対向電極42の各々は、電気絶縁性を有する合成樹脂製のハウジング40に保持されている。
【0029】
(放電電極)
放電電極41は、棒状の電極である。放電電極41は、軸部41a、及び基端部41bを備える。軸部41aは、円形断面の棒状に形成されており、軸部41aの長手方向の第1端に先端部411を有する。軸部41aの長手方向の第2端(先端部411とは反対側の端部)には、平板形状の基端部41bが連続一体に形成されている。先端部411は、軸部41aの先端に近付くにつれて断面積が小さくなる先細り形状である。すなわち、放電電極41は、先端部411が先細り形状に形成された針電極である。ここでいう「先細り形状」とは、先端が鋭く尖っている形状に限らず、
図2A及び
図2Bに示すように、先端が丸みを帯びた形状を含む。
【0030】
放電電極41の先端部411の形状について、
図4を参照して説明する。なお、
図4では、先端部411と液体50とを区別しやすいように、液体50に対してドットハッチングを施している。
【0031】
放電電極41の先端部411の形状は、例えば、円錐部を含んだ形状である。先端部411のうち対向電極42との対向部分の形状(ここでは円錐部の先端の形状)は、例えばR形状である。すなわち、先端部411における基端部41b側(
図3B参照)と反対側の部分の形状は、R形状である。本開示でいう「R形状」とは、ある部材の表面が丸みを帯びている(丸みを有している)ことを含み得る。本実施形態の先端部411の先端面は、凸の丸みを有する曲面を含んでいる。本実施形態の放電電極41の先端面は、放電電極41の中心軸を含む断面形状が、先端部411の側面から連続的につながる弧状に形成されており、角を含まない。つまり、放電電極41の先端面は全体が曲面(湾曲面)である。例えば、先端部411の形状は、半球形状(又は、ほぼ半球形状)である。
【0032】
先端部411は、第1部分4111、及び第2部分4112を有している。第1部分4111は、先端部411において第2部分4112よりも基端部41bに近い部分であり、放電電極41の軸方向において扁平な、円柱状である。第2部分4112は、先端部411において第1部分4111よりも基端部41bから遠い部分であり、円錐状である。要するに、先端部411は、円柱部に相当する第1部分4111と、円錐部に相当する第2部分4112とを有している。
【0033】
また、放電電極41と対向電極42との間に電圧を印加させることにより、放電電極41に保持されている液体50は、
図4に示すように、電界による力を受けてテイラーコーンと呼ばれる円錐状の形状を成す。テイラーコーンの形状は、
図4に示すように、放電電極41の先端部411の円錐部に沿った円錐状である。放電電極41の先端部411のうち第2部分4112は、テイラーコーン形状の液体50内に入り込んでいる。すなわち、本実施形態に係る放電装置10では、第2部分4112により、テイラーコーン形状の液体50内に入り込んでいる先端部411の一部が構成されている。
【0034】
(対向電極)
対向電極42は、
図3A及び
図3Bに示すように、放電電極41の先端部411に対向するように配置されている。対向電極42は、例えば、平板状の支持部422を備え、支持部422の略中央には第1凹部421が設けられている。第1凹部421は、支持部422の略中央を放電電極41側に凹ませることにより円錐台状に形成されている。第1凹部421の底壁4211の中央部には、突台部423が一体に形成されている。突台部423は、第1凹部421の底壁4211の一部を放電電極41側とは反対側に突出させることにより円錐台状(ドーム形状)に形成されている。言い換えると、底壁4211の中央部を放電電極41とは反対向きに凹ませることにより、底壁4211に円錐台状の第2凹部424が形成されている。
【0035】
第1凹部421が窪んでいる向き(第1凹部421が凹む方向)と突台部423が突出している向き(第2凹部424の凹設方向)とは、反対方向である。突台部423の天壁4231(第2凹部424の底壁4231)の中央部には、円形状の開口部4232が形成されている。開口部4232は、天壁4231を天壁4231の厚さ方向に貫通している。
【0036】
上述の対向電極42は、放電電極41に向かって窪んでいる円錐台状の第1凹部421と、第1凹部421の底面4211において放電電極41から離れる向きに突出している円錐台状の突台部423と、突台部423の天壁4231に形成されている開口部4232と、を備える。
【0037】
ここで、対向電極42の厚さ方向(開口部4232の貫通方向)が放電電極41の長手方向に一致している。そして、平面視において(対向電極42の厚さ方向から見て)、放電電極41の先端部411は、対向電極42の開口部4232の中心付近に位置する。また、放電電極41の先端部411は、対向電極42の第2凹部424の外側に位置し、第1凹部421の底壁4211よりも、放電電極41の基端部41bの側に位置している。つまり、対向電極42と放電電極41との間には、少なくとも対向電極42の第2凹部424の開口4241によって隙間(空間)が確保される。言い換えると、対向電極42は、放電電極41に対して隙間を介して対向するように配置されており、放電電極41と空間的に離れている。
【0038】
上述の対向電極42の突台部423(第2凹部424)は、放電電極41に対向しており、平面視において、放電電極41の軸部41aに対して軸対象の形状となるように形成されている。第2凹部424の開口4241の周縁(突台部423において開口部4232に対向している開口4241の周縁)は、底壁4211と突台部423との境界部分を構成する円環状の縁部425となる。平面視では、円環状の縁部425の中心に、放電電極41の先端部411が位置する。すなわち、円環状の縁部425と先端部411との間の距離W1(
図3B参照)は、縁部425の全周に亘って等しくなる。
【0039】
(2.1.2)液体供給部
液体供給部5は、放電電極41に対して静電霧化用の液体50を供給する。液体供給部5は、一例として、
図3Bに示す冷却装置51を用いて実現される。冷却装置51は、放電電極41を冷却して、放電電極41に液体50として結露水を発生させる。具体的には、冷却装置51は、一対のペルチェ素子511、及び一対の放熱板512を備えている。一対のペルチェ素子511は、一対の放熱板512に保持されている。冷却装置51は、一対のペルチェ素子511への通電によって放電電極41を冷却する。一対の放熱板512は、一対の放熱板512の各々における一部がハウジング40に埋め込まれることにより、ハウジング40に保持されている。一対の放熱板512のうち、少なくともペルチェ素子511を保持する部位は、ハウジング40から露出している。
【0040】
一対のペルチェ素子511は、放電電極41の基端部41bに対して、例えば、半田により機械的かつ電気的に接続されている。また、一対のペルチェ素子511は、一対の放熱板512に対して、例えば、半田により機械的かつ電気的に接続されている。一対のペルチェ素子511への通電は、一対の放熱板512及び放電電極41を通じて行われる。したがって、液体供給部5を構成する冷却装置51は、基端部41bを通じて放電電極41の全体を冷却する。これにより、空気中の水分が凝結して放電電極41の表面に結露水として付着する。この結露水が、液体50として放電電極41に保持される。すなわち、液体供給部5は、放電電極41を冷却して放電電極41の表面に液体50としての結露水を生成するように構成されている。この構成では、液体供給部5は、空気中の水分を利用して、放電電極41に液体50(結露水)を供給できるため、放電装置10への液体の供給、及び補給が不要になる。
【0041】
(2.1.3)電圧印加回路及び検出回路
電圧印加回路2は、
図1に示すように、駆動回路21、及び電圧発生回路22を有している。駆動回路21は、電圧発生回路22を駆動する回路である。電圧発生回路22は、電源部6からの電力供給を受けて、負荷4に印加する電圧である出力電圧Voを生成する回路である。電源部6は、例えば、数V~十数V程度の直流電圧を発生する電源回路である。本実施形態では、電源部6が電圧印加装置1の構成要素に含まれないこととして説明するが、電源部6は電圧印加装置1の構成要素に含まれていてもよい。電圧印加回路2は、電源部6からの入力電圧Vinを周期的に昇圧することで出力電圧Voを生成し、出力電圧Voを負荷4に印加する。
【0042】
電圧印加回路2は、負荷4(放電電極41及び対向電極42)に電気的に接続されている。電圧印加回路2は、周期的に変動する出力電圧Voを負荷4に印加する。電圧印加回路2は、放電電極41を負極(グランド)、対向電極42を正極(プラス)として、放電電極41と対向電極42との間に出力電圧Voを印加するように構成されている。電圧印加回路2が負荷4に出力電圧Voを印加しているとき、放電電極41と対向電極42との間に、対向電極42側を高電位、放電電極41側を低電位とする電位差が生じる。
【0043】
そして、電圧印加回路2は、少なくとも第1モード及び第2モードのいずれかの動作モードで動作する。第1モードは、出力電圧Voを時間経過に伴って上昇させ、絶縁破壊に至らせて放電を開始し、出力電流Io(放電電流)を生じさせるためのモードである。第2モードは、放電を終わらせるために出力電流Ioを遮断するためのモードである。つまり、電圧印加回路2は、動作モードとして、第1モード、及び第2モードを有する。具体的に、駆動回路21は、第1モード及び第2モードのいずれかで電圧発生回路22を駆動する。
【0044】
検出回路3は、出力電圧Vo及び出力電流Ioの各大きさを検出する。電圧印加回路2は、電圧印加装置1が駆動される駆動期間において、検出回路3の検出結果に基づいて、動作モードとして第1モードと第2モードとを交互に繰り返す。
【0045】
これにより、放電電極41に保持されている液体50に作用する電気エネルギーの大きさが周期的に変動することになり、結果的に、放電電極41に保持されている液体50が出力電圧Voを変動させる周期にて機械的に振動する。
【0046】
本実施形態では、電圧印加回路2は、検出回路3の監視対象に基づいて動作する。ここでいう「監視対象」は、電圧印加回路2の出力電流Io及び出力電圧Voである。なお、「監視対象」は、電圧印加回路2の出力電流Io及び出力電圧Voの少なくとも一方であってもよい。
【0047】
検出回路3は、
図1に示すように、電圧検出回路31、及び電流検出回路32を有している。電圧検出回路31は、電圧印加回路2の出力電圧Voを監視対象とし、出力電圧Voの大きさ(電圧値)を検出する。そして、電圧検出回路31は、出力電圧Voの大きさのデータを含む電圧検出信号Si1を、電圧印加回路2の駆動回路21に出力する。電流検出回路32は、電圧印加回路2の出力電流Ioを監視対象とし、出力電流Ioの大きさ(電流値)を検出する。そして、電流検出回路32は、出力電流Ioの大きさのデータを含む電流検出信号Si2を、電圧印加回路2の駆動回路21に出力する。駆動回路21は、電圧検出信号Si1及び電流検出信号Si2に基づいて電圧発生回路22を駆動し、出力電圧Voを制御する。すなわち、検出回路3は、電圧印加回路2の出力電流Io及び出力電圧Voの両方を監視対象とする。また、検出回路3は、電圧印加回路2の出力電流Io及び出力電圧Voの一方を監視対象としてもよい。
【0048】
なお、電圧印加回路2の出力電圧Vo(二次側電圧)と、電圧印加回路2の入力電圧Vin(一次側電圧)との間には相関関係があるので、電圧検出回路31は、入力電圧Vinから間接的に出力電圧Voを検出してもよい。同様に、電圧印加回路2の出力電流Io(二次側電流)と、電圧印加回路2の入力電流(一次側電流)との間には相関関係があるので、電流検出回路32は、入力電流から間接的に出力電流Ioを検出してもよい。
【0049】
電圧印加回路2は、監視対象の大きさが閾値未満であれば第1モードで動作し、監視対象の大きさが閾値以上になると第2モードで動作するように構成されている。まず、電圧印加回路2が第1モードで動作し、出力電圧Voが時間経過に伴って上昇すると、放電電極41においては局所的な絶縁破壊によりコロナ放電が開始され、出力電流Ioが生じる。監視対象の大きさが閾値に達すると、電圧印加回路2は第2モードで動作し、出力電圧Voが低下し、放電電極41と対向電極42との間の電位差が低下することで、出力電流Ioが遮断される。すなわち、電圧印加回路2は、負荷4が放電した後、出力電圧Voを低下させることによって出力電流Ioを消滅(立ち消え)させる。そして、電圧印加回路2は、第1モードで再び動作し、上記動作を繰り返す。なお、電圧印加回路2は、負荷4が放電してから一定時間が経過した時点で、動作モードを第1モードから第2モードに切り替えてもよい。
【0050】
具体的に、電圧印加回路2は、出力電圧Voが電圧閾値Vs1(
図6A参照)未満、かつ、出力電流Ioが電流閾値Is1(
図6A参照)未満であれば、第1モードで動作して、出力電圧Voを時間経過に伴って上昇させる。そして、電圧印加回路2は、第1モードで動作しているときに出力電流Ioが電流閾値Is1(
図6A参照)以上になれば、動作モードを第1モードから第2モードに切り替えて放電を終わらせる。なお、
図6Aでは、電圧印加回路2は、出力電流Ioが電流閾値Is1以上になってから一定時間が経過した時点で、動作モードを第1モードから第2モードに切り替えている。
【0051】
このように、電圧印加回路2は、駆動期間において第1モードと第2モードとを交互に繰り返すように動作し、放電電極41と対向電極42との間に印加する出力電圧Voの大きさを周期的に変動させる。電圧印加回路2は、まず動作モードを第1モードとして、液体50を保持している放電電極41の先端部411において局所的なコロナ放電を生じさせる。放電が開始されると、電圧印加回路2は、動作モードを第2モードとして放電を終了させる。この結果、放電電極41においては、間欠的に放電が繰り返される。
【0052】
なお、駆動回路21、及び電圧発生回路22(昇圧回路B1)の具体的な回路構成については、後述の「(2.2)回路構成」の欄で説明する。
【0053】
(2.2)回路構成
次に、電圧印加装置1の具体的な回路構成について、
図5を参照して説明する。
図5は、放電装置10の回路構成の一例を概略的に示す回路図である。なお、
図5では、電源部6の図示を省略している。
【0054】
電圧印加回路2は、上述したように、駆動回路21と、電圧発生回路22と、を有している。
図5の例では、電圧印加回路2は、絶縁型のDC/DCコンバータであり、昇圧回路B1を有している。昇圧回路B1は、電源部6からの直流の入力電圧Vin(例えば13.8V)を周期的に昇圧し、出力電圧Voとして出力する。ここでは、電圧発生回路22が昇圧回路B1として機能する。出力電圧Voは、印加電圧として負荷4(放電電極41、及び対向電極42)に印加される。すなわち、電圧印加回路2は、周期的に変動する出力電圧Voを負荷4に印加することにより、放電電極41に周期的に放電を生じさせる。
【0055】
電圧発生回路22(昇圧回路B1)は、絶縁トランス220を有している。絶縁トランス220は、一次巻線221、二次巻線222、及び補助巻線223を具備する、一次巻線221、及び補助巻線223は、二次巻線222に対して電気的に絶縁されており、かつ磁気的に結合している。二次巻線222の第1端には対向電極42が電気的に接続されている。つまり、昇圧回路B1は、一次側(一次巻線221側)に入力される入力電圧Vinを昇圧して、負荷4と電気的に接続された二次側(二次巻線222側)から出力電圧Voを出力する絶縁トランス220を含む。
【0056】
駆動回路21は、トランジスタQ1を有し、トランジスタQ1のスイッチング動作により、絶縁トランス220の一次巻線221に電力を供給するように構成されている。駆動回路21は、トランジスタQ1の他、トランジスタQ1を駆動するマイクロコンピュータMC1を有している。トランジスタQ1は、一例として、npn型のバイポーラトランジスタからなる。
【0057】
トランジスタQ1のコレクタは一次巻線221に接続され、トランジスタQ1のエミッタはグランドに接続されている。一次巻線221及びトランジスタQ1の直列回路には、電源部6から入力電圧Vinが印加される。トランジスタQ1のベースは、抵抗R1を介してマイクロコンピュータMC1の出力ポートに接続されている。制御電源は、制御電圧Vcc(例えば5V)を生成し。駆動回路21に対して制御電圧Vccを印加する。
【0058】
上記構成により、電圧印加回路2は他励式のコンバータを構成する。すなわち、マイクロコンピュータMC1によりトランジスタQ1がオン、オフを繰り返し、パルス状の電圧が一次巻線221に発生する。これにより、絶縁トランス220の二次巻線222に高電圧が誘起され、二次巻線222に誘起した高電圧は、放電電極41及び対向電極42を介して負荷4に印加される。電圧印加回路2は、これらの動作により、入力電圧Vinを周期的に昇圧した出力電圧Voを生成し、出力電圧Voを負荷4に印加する。
【0059】
検出回路3は、
図5に示す電圧検出回路31及び電流検出回路32を有している。
【0060】
電圧検出回路31は、ダイオードD11、抵抗R11-R13、及びコンデンサC11を有している。ダイオードD11のアノードは、補助巻線223の第1端に接続されている。補助巻線223の第2端は、グランドに接続されている。ダイオードD11のカソードは、抵抗R11を介してコンデンサC11の第1端に接続されている。コンデンサC11の第2端は、グランドに接続されている。さらに、コンデンサC11の第1端は、抵抗R12を介してマイクロコンピュータMC1の入力ポートに接続され、抵抗R12,R13の直列回路を介してグランドに接続されている。
【0061】
上記構成により、電圧検出回路31は、補助巻線223の誘起電圧を監視することによって、監視対象となる電圧印加回路2の出力電圧Vo(二次巻線222の誘起電圧)を間接的に監視する。具体的に、コンデンサC11は、ダイオードD11及び抵抗R11を介して、補助巻線223の誘起電圧によって充電される。抵抗R12、R13で分圧されたコンデンサC11の電圧は、電圧検出信号Si1として、マイクロコンピュータMC1の入力ポートに入力される。出力電圧Voが増加すると、電圧検出信号Si1は増加し、出力電圧Voが減少すると、電圧検出信号Si1は減少する。
【0062】
電流検出回路32は、抵抗R21、R22、及びコンデンサC21、C22を有している。抵抗R21の第1端には制御電圧Vccが印加され、抵抗R21の第2端にはコンデンサC21の第1端が接続されている。コンデンサC21の第2端はグランドに接続されている。抵抗R21とコンデンサC21との接続点は、絶縁トランス220の二次巻線222の第2端が接続されている。二次巻線222の第2端は、対向電極42が接続されている二次巻線222の第1端とは反対側の端部である。すなわち、制御電圧Vccは、抵抗R21及び二次巻線222を介して対向電極42に印加されている。また、二次巻線222の第2端は、抵抗R22とコンデンサC22との直列回路を介してグランドに接続されている。そして、コンデンサC22の電圧は、電流検出信号Si2として、マイクロコンピュータMC1の入力ポートに入力される。出力電流Ioが増加すると、電流検出信号Si2は増加し、出力電流Ioが減少すると、電流検出信号Si2は減少する。
【0063】
マイクロコンピュータMC1は、電圧検出信号Si1に基づいて出力電圧Voを監視し、電流検出信号Si2に基づいて出力電流Ioを監視する。そして、マイクロコンピュータMC1は、出力電圧Voが電圧閾値(
図6AのVs1参照)未満、かつ、出力電流Ioが電流閾値(
図6AのIs1参照)未満であれば、動作モードを第1モードとして、トランジスタQ1をオン、オフ駆動する。マイクロコンピュータMC1は、第1モードで動作しているときに出力電流Ioが電流閾値以上になれば、動作モードを第2モードとし、トランジスタQ1のオン、オフ駆動を停止して、トランジスタQ1をオフ状態に維持する。なお、
図6Aでは、出力電流Ioが電流閾値Is1以上になってから一定時間が経過した時点で動作モードを第2モードとし、トランジスタQ1のオン、オフ駆動を停止して、トランジスタQ1をオフ状態に維持している。また、マイクロコンピュータMC1は、第1モードで動作しているときに出力電圧Voが電圧閾値(
図6AのVs1参照)以上になると、所定時間が経過した後に動作モードを第2モードとし、トランジスタQ1のオン、オフ駆動を停止して、トランジスタQ1をオフ状態に維持する。
【0064】
(2.3)放電制御
図6Aは、本実施形態の電圧印加回路2による放電制御を示す。
図6Aは、出力電圧Voの波形、及び出力電流Ioの波形を示す。なお、
図6Aでは、横軸が時間、左側の縦軸が電圧、右側の縦軸が電流をそれぞれ示す。
【0065】
電圧印加回路2が出力電圧Voを周期的に変動させることで、放電電極41と対向電極42との間には周期的に放電が生じる。負荷4においては、放電電極41及び対向電極42間の電位差によって、放電電極41と対向電極42との間に放電が生じる。そして、負荷4の放電電極41と対向電極42との間に生じた放電によって、ラジカルが生成され、かつ、放電電極41に保持されている液体50が静電霧化される。而して、放電装置10は、静電霧化された液体50の微細液滴中にラジカルを含有しているナノメータサイズの帯電微粒子液を生成する。生成された帯電微粒子液は、例えば、対向電極42の開口部4232を通して、放電装置10の周囲に放出される。
【0066】
電圧印加回路2が出力電圧Voを変化させる周期を放電周期とすると、各放電周期では、電圧印加回路2は、まず第1モードで動作して、出力電圧Voを最小値Vo2から最大値Vo1にまで増加させる。そして、電圧印加回路2は、出力電圧Voが最大値Vo1に達すると、出力電圧Voを最大値Vo1に維持する。このとき、出力電圧Voが最小値Vo2から増加すると、放電電極41に保持されている液体50の先端で局所的な絶縁破壊が発生して、コロナ放電による微小放電が始まる。その後、出力電圧Voが更に増加して最大値Vo1に達し、出力電流Ioが流れる。
【0067】
そして、電圧印加回路2は、第1モードで動作しているときに、出力電流Ioが電流閾値Is1以上になれば、動作モードを第1モードから第2モードに切り替えて、出力電圧Voを低下させることで、放電を停止させる。なお、
図6Aでは、出力電流Ioが電流閾値Is1以上になってから一定時間が経過した時点で動作モードを第1モードから第2モードに切り替えて、出力電圧Voを低下させることで、放電を停止させている。すなわち、出力電圧Voの波形は台形状になっている。
【0068】
また、電圧印加回路2は、第1モードで動作しているときに出力電圧Voが電圧閾値Vs1以上になると、所定時間が経過した後に動作モードを第2モードとし、動作モードを第1モードから第2モードに切り替えて、出力電圧Voを低下させることで、放電を停止させる。
【0069】
上述のように、出力電圧Voは、最大値Vo1と最小値Vo2とを交互に繰り返し、放電周期で周期的に変動する。すなわち、出力電圧Voの大きさは、駆動期間において0Vを上回る範囲で変動する。出力電圧Voの最大値Vo1は、放電を生じさせる放電電圧に相当する。出力電圧Voの最小値Vo2は、0Vより高く、最大値Vo1より低い。最大値Vo1は、例えば7.0kV程度である。最小値Vo2は、放電電極41に放電が生じないように設定された電圧であればよく、0Vより高く、最大値Vo1より低い電圧である。
【0070】
図6Aでは、出力電圧Voが最小値Vo2から最大値Vo1に増加するとき、出力電圧Voは、時間経過に対して略線形に増加している。出力電圧Voが最大値Vo1から最小値Vo2に減少するとき、出力電圧Voは、時間経過に対して略線形に減少している。なお、出力電圧Voは、時間経過に対して非線形に増加又は減少してもよい。
【0071】
そして、電圧印加回路2は、出力電圧Voを変動させる周期である放電周期を、第1周期T1及び第2周期T2のいずれかに時間の経過に伴って切り替える。具体的に、電圧印加回路2は、
図6Aに示すように、放電周期の1周期毎に、放電周期を第1周期T1と第2周期T2とに交互に切り替える。第1周期T1と第2周期T2とは互いに異なる放電周期である。例えば、第1周期T1は2.2msec(周波数455Hz)、第2周期T2は1.8msec(周波数555Hz)である。すなわち、電圧印加回路2は、放電周期として第1周期T1及び第2周期T2の2つの周期を用いる。放電周期としての第1周期T1及び第2周期T2は、放電電極41に保持されている液体50の共振周期の近傍となるように設定される。液体50の共振周期は、出力電圧Voの変動によって生じる液体50の振動の振幅が最大になる周期である。
【0072】
液体50の共振周期は、液体50の体積(量)に依存し、[1/a・V-0.5]にて表される。「V」は、放電電極41に保持されている液体50の体積である。「a」は、放電電極41に保持されている液体50の表面張力及び粘度等に依存する比例係数である。
【0073】
例えば、テイラーコーンの体積が0.0917mm3、先端部411の第2部分4112の体積が0.0650mm3であれば、テイラーコーンを形成する液体50の体積は0.076μLであり、このとき液体50の共振周期は0.33msecとなる。本実施形態では、テイラーコーンを形成する液体50の体積を0.46μLとし、液体50の共振周期を2msとしている。
【0074】
(2.4)放電音の改善
以下、本実施形態に係る放電装置10における放電音の改善について、
図6A、
図6B、及び
図7を参照して説明する。
【0075】
上述の通り、負荷4への印加電圧、すなわち出力電圧Voの大きさを、放電周期で周期的に変動させることで、放電電極41に保持されている液体50に作用する電気エネルギーの大きさが、周期的に変動する。結果的に、液体50は、放電周期にて機械的に振動する。そして、放電周期が液体50の共振周期(共振周波数の逆数)又は共振周期の近傍に設定されていると、出力電圧Voの大きさが変動することに伴う液体50の機械的な振動の振幅は、比較的大きくなる。液体50の振幅が増加すると、テイラーコーン形状の液体50(
図4参照)の先端部がより尖った(鋭利な)形状となり、放電しやすくなる。
【0076】
しかし、放電装置10では、液体50の機械的な振動による放電音が発生する。液体50の振動の振幅が大きい程、放電音の音圧も大きくなる。液体50に作用するエネルギーを抑制すれば、放電音は小さくなるが、放電装置10が生成するラジカル及び帯電微粒子液などの有効成分も減少してしまう。而して、有効成分の生成量の減少を抑えながら、放電音を低減させることが求められている。
【0077】
そこで、
図6Aに示すように、放電装置10の電圧印加回路2は、出力電圧Voを変動させる周期である放電周期を、第1周期T1及び第2周期T2のいずれかに時間の経過に伴って切り替える。本実施形態では、電圧印加回路2は、放電周期として第1周期T1及び第2周期T2の2つの周期を用いて、放電周期の1周期毎に、放電周期をT1→T2→T1→T2→・・・と交互に切り替える。したがって、放電装置10の放電音は、第1周期T1の音成分及び第2周期T2の音成分を主に含むようになる。
【0078】
ここで、第1周期T1と第2周期T2との平均は、液体50の共振周期を含む所定範囲に含まれていることが好ましい。この場合、液体50の共振周期を含む所定範囲は、放電装置10が生成する有効成分の量を十分に確保できる範囲であればよい。この結果、放電装置10が生成する有効成分の量は、後述の
図6Bの比較例が生成する有効成分の量とほぼ同じにでき、放電装置10が生成する有効成分の減少を抑えることができる。具体的に、液体50の共振周期2msec(周波数500Hz)に対して、第1周期T1は2.2msec(周波数455Hz)、第2周期T2は1.8msec(周波数555Hz)に設定される。すなわち、第1周期T1と第2周期T2との平均は、液体50の共振周期に等しくなる。なお、第1周期T1と第2周期T2との平均が液体50の共振周期に近い程、放電装置10が生成する有効成分の量を増やすことができる。
【0079】
一方、
図6Bは、比較例の放電形態を示す。比較例では、放電周期として1つの周期T11のみを用いる。ここで、周期T11は、液体50の共振周期2msec(周波数500Hz)に設定される。したがって、放電装置10の放電音は、周期T11の音成分を主に含むようになる。
【0080】
図7は、横軸に周波数、縦軸を放電音の音圧(大きさ)としたグラフであり、特性Y1、Y11を示す。特性Y1は、
図6Aの放電形態で動作する放電装置10が発する放電音の周波数特性である。特性Y11は、
図6Bの放電形態で動作する比較例が発する放電音の周波数特性である。
【0081】
特性Y1では、第1周期T1と第2周期T2との平均に相当する周波数500Hz(周期2msec)において、音圧が最大値(ピーク値)P1になる。特性Y11では、周期T11に相当する周波数500Hz(周期2msec)において、音圧が最大値(ピーク値)P11になる。特性Y1の音圧の最大値P1は、特性Y11の音圧の最大値P11より小さく、放電装置10の放電音は、比較例の放電音より小さくなる。
図7では、特性Y1の音圧の最大値P1は、特性Y11の音圧の最大値P11より4~5dB程度低減(約40%低減)している。すなわち、放電装置10は、比較例に比べて放電音を低減させることができる。
【0082】
上述では、第1周期T1及び第2周期T2のそれぞれを、放電電極41に保持されている液体50の共振周期の近傍から選択しており、放電装置10が生成する有効成分の量を、比較例が生成する有効成分の量とほぼ同じにできる。しかしながら、第1周期T1を0.5msec、第2周期T2を3.5msecとすると、第1周期T1及び第2周期T2の平均は共振周期と同じ2msecになるが、放電装置10が生成する有効成分の量は、比較例に比べて大幅に減少してしまう。これは、第1周期T1及び第2周期T2のそれぞれが、共振周期から離れ過ぎているためである。そのため、第1周期T1及び第2周期T2のそれぞれは、共振周期と離れ過ぎていないことが好ましい。すなわち、放電周期としての第1周期T1及び第2周期T2は、共振周期の近傍となるように設定されることが好ましい。
【0083】
具体的に、第1周期T1及び第2周期T2のそれぞれは、共振周期に共振周期の半値を加えた値である第1値以下、かつ、共振周期から半値を引いた値である第2値以上、であることが好ましい。例えば、共振周期が2msecであれば、共振周期の半値は1msecとなる。この場合、第1値は3msec(=2msec+1msec)となり、第2値は1msec(=2msec-1msec)となる。すなわち、第1周期T1及び第2周期T2のそれぞれは、1msec以上、かつ、3msec以下の範囲から選択される。この結果、放電装置10が生成する有効成分の減少をより抑えることができる。
【0084】
(3)第1変形例
電圧印加回路2は、放電周期を所定回数繰り返す毎に、放電周期を複数の周期のいずれかに切り替えることが好ましい。
【0085】
上述の実施形態では、電圧印加回路2は、放電周期の1周期毎(1つの放電周期毎)に、放電周期を第1周期T1と第2周期T2とに交互に、T1→T2→T1→T2→T1→・・・と切り替えている。
【0086】
また、電圧印加回路2は、放電周期の複数周期毎(複数の放電周期毎)に、放電周期を第1周期T1と第2周期T2とに交互に切り替えてもよい。例えば、
図8では、電圧印加回路2は、放電周期の2周期毎(2つの放電周期毎)に、放電周期を第1周期T1と第2周期T2とに交互に、T1→T1→T2→T2→T1→T1→T2→T2→・・・と切り替えている。
【0087】
(4)第2変形例
電圧印加回路2は、時間の経過に伴って、放電周期を3つ以上の周期のいずれかに切り替えてもよい。
【0088】
放電周期として3つの周期T1、T2、T3を用いる場合、電圧印加回路2は、例えば
図9に示すように、放電周期の1周期毎に、放電周期を第1周期T1、第2周期T2、第3周期T3の順に、T1→T2→T3→T1→T2→T3→・・・と切り替える。
【0089】
また、電圧印加回路2は、放電周期の複数周期毎に、放電周期を第1周期T1、第2周期T2、第3周期T3の順に切り替えてもよい。例えば、電圧印加回路2は、放電周期の2周期毎に、放電周期をT1→T1→T2→T2→T3→T3→T1・・・と切り替える。
【0090】
本変形例においても、第1周期T1と第2周期T2と第3周期T3との平均は、液体50の共振周期に等しいことが好ましい。
【0091】
また、第1周期T1、第2周期T2、及び第3周期T3のそれぞれは、共振周期に共振周期の半値を加えた値である第1値以下、かつ、共振周期から半値を引いた値である第2値以上、であることが好ましい。例えば、共振周期が2msecであれば、第1周期T1、第2周期T2、及び第3周期T3のそれぞれは、1msec以上、かつ、3msec以下の範囲から選択される。
【0092】
なお、放電周期として4つ以上の周期を用いてもよい。
【0093】
(5)第3変形例
電圧印加回路2は、放電周期を複数の周期のいずれかにランダムに切り替えることが好ましい。
【0094】
例えば、
図10では、電圧印加回路2は、放電周期の1周期毎に、放電周期を第1周期T1、第2周期T2、第3周期T3のいずれかにランダムに切り替えている。例えば、電圧印加回路2は、乱数発生器(乱数発生機能)を有している。電圧印加回路2は、第1周期T1、第2周期T2、及び第3周期T3のうち、乱数発生器が生成した乱数に対応する周期を、次の放電周期に設定する。
【0095】
本変形例においても、第1周期T1と第2周期T2と第3周期T3との平均は、液体50の共振周期に等しいことが好ましい。
【0096】
また、第1周期T1、第2周期T2、及び第3周期T3のそれぞれは、共振周期に共振周期の半値を加えた値である第1値以下、かつ、共振周期から半値を引いた値である第2値以上、であることが好ましい。例えば、共振周期が2msecであれば、第1周期T1、第2周期T2、及び第3周期T3のそれぞれは、1msec以上、かつ、3msec以下の範囲から選択される。
【0097】
なお、放電周期として4つ以上の周期を用いてもよい。
【0098】
(6)第4変形例
上述の実施形態における放電電極41及び対向電極42による放電は、コロナ放電であるが、放電電極41及び対向電極42による放電はコロナ放電に限定されない。
【0099】
例えば、放電電極41及び対向電極42による放電は、コロナ放電から進展して、放電電極41と対向電極42との間の絶縁破壊に至る、という現象が間欠的に繰り返される放電(以下、リーダ放電と称す)であってもよい。リーダ放電では、電圧印加回路2が第1モードで動作して、出力電圧Voが時間経過に伴って上昇し、放電電極41での局所的なコロナ放電が進展して絶縁破壊に至ると、比較的大きな出力電流Ioが瞬間的に流れる。その直後に、電圧印加回路2が第2モードで動作して、出力電圧Voが低下して出力電流Ioが遮断される。その後、電圧印加回路2が、動作モードとして第1モードと第2モードとを交互に繰り返すことで、コロナ放電 → 絶縁破壊 → 放電電流 → 放電遮断、という一連の過程が繰り返される。つまり、リーダ放電では、放電電極41と対向電極42との間に放電経路が間欠的に形成され、パルス状の出力電流Io(放電電流)が繰り返し発生する。
【0100】
このようなリーダ放電においては、コロナ放電と比較して大きなエネルギーでラジカルが生成され、コロナ放電と比較して2~10倍程度の大量のラジカルが生成される。このようにして生成されるラジカルは、除菌、脱臭、保湿、保鮮、ウイルスの不活化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。ここで、リーダ放電によってラジカルが生成される際には、オゾンも発生する。但し、リーダ放電では、コロナ放電と比較して2~10倍程度のラジカルが生成されるのに対して、オゾンの発生量はコロナ放電の場合と同程度に抑えられる。したがって、ラジカルの生成量を増大させながらも、オゾンの発生量を抑制できる。
【0101】
一般的には、一対の電極間にエネルギーを投入して放電を生じさせると、投入したエネルギーの量に応じて、放電形態がコロナ放電から、火花放電、グロー放電、アーク放電へと進展する。
【0102】
コロナ放電は、一方の電極で局所的に発生する放電であり、一対の電極(例えば、放電電極41及び対向電極42)間の絶縁破壊を伴わない放電である。火花放電、グロー放電、及びアーク放電は、一対の電極間での絶縁破壊を伴う放電である。火花放電は、瞬間的(単発的)に放電経路が形成される放電である。グロー放電、及びアーク放電においては、一対の電極間にエネルギーが投入されている間、絶縁破壊によって形成される放電経路が維持され、一対の電極間に放電電流が継続的に発生する。電源(例えば、電圧印加回路2)から一対の電極間に対して単位時間当たりに放出可能な電流容量が十分に大きければ、一度形成された放電経路は途切れることなく維持され、コロナ放電、火花放電から、グロー放電、アーク放電へと進展する。
【0103】
一方、リーダ放電は、一対の電極間での絶縁破壊を伴うものの、絶縁破壊が継続的に生じるのではなく、絶縁破壊が間欠的に発生する放電である。そのため、一対の電極間に生じる放電電流は、間欠的に発生する。すなわち、コロナ放電から絶縁破壊に進展した途端一対の電極間に印加する電圧を低下させることで、放電経路が途切れて放電が停止する。このような放電の発生及び停止が繰り返されることにより、一対の電極間に放電電流が間欠的に流れる。このように、リーダ放電は、放電エネルギーの高い状態と放電エネルギーの低い状態とを繰り返す点において、絶縁破壊が瞬間的(単発的)に発生する火花放電、絶縁破壊が継続的に発生する(つまり放電電流が継続的に発生する)グロー放電、及びアーク放電とは相違する。
【0104】
特に、放電電極41と対向電極42が上述の(2.1.1)のように構成されることによって、対向電極42において先端部411との間の距離W1(
図3B参照)が最短となる箇所は、円環状の縁部425となる。したがって、放電電極41と対向電極42との間の放電経路は、円環状の縁部425と先端部411との間に生成されやすくなる。すなわち、対向電極42の円環状の縁部425に電界集中が生じやすくなる。その結果、対向電極42の縁部425と放電電極41の先端部411との間を結ぶ円錐側面状に広がる放電経路を形成する放電(以下、ラウンド放電と称す)が安定して生じやすくなる。ラウンド放電では、放電電極41と対向電極42との間の放電経路は、先端部411から円環状の縁部425に至る経路、すなわち点から広がって円環に至る円錐の側面に沿った経路になる。
【0105】
また、放電電極41及び対向電極42による放電は、絶縁破壊を間欠的に発生させるラウンド放電(以下、ラウンドリーダ放電と称す)であってもよい。ラウンドリーダ放電は、リーダ放電及びラウンド放電の両方の利点を有している。ラウンドリーダ放電では、放電経路を円錐側面状に広げることで電界集中が急激に成長し全路破壊放電へ進展することを防ぎ、部分破壊放電を空間的に広げることができる。すなわち、ラウンドリーダ放電では、有効成分の生成量をより増大させることができる。
【0106】
また、上述のリーダ放電、ラウンド放電、及びラウンドリーダ放電のそれぞれにおいて、放電電極41と対向電極42との間には、部分的に絶縁破壊された放電経路を形成することが好ましい。この場合、放電経路は、放電電極41の周囲に生成される第1絶縁破壊領域と、対向電極42の周囲に生成される第2絶縁破壊領域と、を含む。すなわち、放電電極41と対向電極42との間には、全体的にではなく部分的(局所的)に、絶縁破壊された放電経路が形成される。本開示でいう「絶縁破壊」は、導体間を隔離している絶縁体(気体を含む)の電気絶縁性が破壊され、絶縁状態が保てなくなることを意味する。気体の絶縁破壊は、例えば、イオン化された分子が電場により加速されて他の気体分子に衝突してイオン化し、イオン濃度が急増して気体放電を起こすために生じる。要するに、部分的(局所的)に絶縁破壊された放電経路では、放電電極41と対向電極42とを結ぶ経路上に存在する気体(空気)において、部分的に、つまり一部でのみ、絶縁破壊が生じることになる。すなわち、放電電極41と対向電極42との間に形成される放電経路は、全路破壊には至らず、部分的に絶縁破壊された経路であることが好ましい。このように部分的な絶縁破壊が生じた放電経路(一部は絶縁破壊されていない放電経路)であっても、放電電極41と対向電極42との間には、放電経路を通して電流が流れ、放電が生じる。このように、部分的に絶縁破壊された放電経路が形成される形態の放電を、「部分破壊放電」と称する。この部分破壊放電では、縁部425は、底壁4211と突台部423との間を断面円弧状の曲面で連結する形状となるように構成されることが好ましい。縁部425を曲面とすることで、部分破壊放電が生じやすくなる。
【0107】
このような部分破壊放電においては、コロナ放電と比較して大きなエネルギーでラジカルが生成され、コロナ放電と比較して2~10倍程度の大量のラジカルが生成される。このようにして生成されるラジカルは、除菌、脱臭、保湿、保鮮、ウイルスの不活化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。ここで、部分破壊放電によってラジカルが生成される際には、オゾンも発生する。ただし、部分破壊放電では、コロナ放電と比較して2~10倍程度のラジカルが生成されるのに対して、オゾンの発生量はコロナ放電の場合と同程度に抑えられる。
【0108】
また、部分破壊放電とは別に、コロナ放電から進展して、放電電極41と対向電極42との間に連続した絶縁破壊(全路破壊)が生じた放電経路(放電電極41から対向電極42に至るまで連続して絶縁破壊されている放電経路)が形成される形態の放電がある。このような形態の放電を、以下では「全路破壊放電」と称する。全路破壊放電では、コロナ放電から進展して全路破壊に至ると比較的大きな出力電流Io(放電電流)が瞬間的に流れ、その直後に出力電圧Voが低下して出力電流Ioが遮断され、また出力電圧Voが上昇して絶縁破壊に至る、という現象が繰り返される。全路破壊放電においては、部分破壊放電と同様に、コロナ放電と比較して大きなエネルギーでラジカルが生成され、コロナ放電と比較して2~10倍程度の大量のラジカルが生成される。ただし、全路破壊放電のエネルギーは、部分破壊放電のエネルギーに比べても更に大きい。そのため、エネルギー準位が「中」の状態で、オゾンが消失しラジカルが増加することによって、ラジカルが大量に発生したとしても、その後の反応経路においてエネルギー準位が「高」となることで、ラジカルの一部が消失する可能性がある。
【0109】
言い換えれば、全路破壊放電では、その放電に係るエネルギーが高すぎるが故に、生成されたラジカル等の有効成分の一部が消失して、有効成分の生成効率の低下につながる可能性がある。結果的に、部分破壊放電を採用することで、全路破壊放電を採用したときに比較して、有効成分の生成効率の向上を図ることができる。
【0110】
上述のように、放電装置10において、一対の電極(例えば、放電電極41及び対向電極42)間の放電は、コロナ放電に限定されず、リーダ放電、ラウンド放電、又はラウンドリーダ放電であってもよい。
【0111】
リーダ放電は、一対の電極間に放電経路を間欠的に形成し、放電電流(出力電流Io)を間欠的に繰り返し発生させる。
【0112】
ラウンド放電は、一対の電極間を結ぶ円錐側面状に広がる放電経路を形成する。
【0113】
ラウンドリーダ放電は、一対の電極間を結ぶ円錐側面状に広がる放電経路を間欠的に形成し、放電電流(出力電流Io)を間欠的に繰り返し発生させる。
【0114】
また、リーダ放電、ラウンド放電、及びラウンドリーダ放電のそれぞれは、部分破壊放電及び全路破壊放電のいずれであってもよい。
【0115】
部分破壊放電は、一対の電極間に、部分的に絶縁破壊された放電経路を形成する。
【0116】
全路破壊放電は、一対の電極間に、連続した絶縁破壊が生じた放電経路(一方の電極から他方の電極に至るまで連続して絶縁破壊されている放電経路)を形成する。
【0117】
(7)その他の変形例
対向電極42は、上述の実施形態の形状に限定されず、放電電極41との間に放電が生じる形状であればよい。例えば、対向電極42は、針形状の突起部を備えて、この針形状の突起部と放電電極41との間で絶縁破壊領域を生成するように構成されてもよい。
【0118】
放電装置10は、帯電微粒子液を生成するための液体供給部5が省略されていてもよい。この場合、放電装置10は、放電電極41、及び対向電極42間に生じる部分破壊放電によって、空気イオンを生成する。この構成では、空気イオンが有効成分に含まれる。
【0119】
また、液体供給部5は、上述の実施形態のように放電電極41を冷却して放電電極41に結露水を発生させる構成に限らない。液体供給部5は、例えば、毛細管現象、又はポンプ等の供給機構を用いて、タンクから放電電極41に液体50を供給する構成であってもよい。さらに、液体50は、水(結露水を含む)に限らず、水以外の液体であってもよい。
【0120】
また、電圧印加回路2は、放電電極41を正極(プラス)、対向電極42を負極(グランド)として、放電電極41と対向電極42との間に出力電圧Voを印加するように構成されていてもよい。さらに、放電電極41と対向電極42との間に電位差(電圧)が生じればよいので、電圧印加回路2は、高電位側の電極(正極)をグランドとし、低電位側の電極(負極)をマイナス電位とすることで、負荷4にマイナスの電圧を印加してもよい。すなわち、電圧印加回路2は、放電電極41をグランドとし、対向電極42をマイナス電位としてもよいし、又は放電電極41をマイナス電位とし、対向電極42をグランドとしてもよい。
【0121】
また、電圧印加装置1は、電圧印加回路2と、放電電極41又は対向電極42との間に、制限抵抗を備えていてもよい。制限抵抗は、部分破壊放電において、絶縁破壊後に流れる出力電流Io(放電電流)のピーク値を制限するための抵抗器である。制限抵抗は、例えば、電圧印加回路2と放電電極41との間、又は電圧印加回路2と対向電極42との間に電気的に接続される。
【0122】
また、電圧印加装置1の具体的な回路構成は適宜変更可能である。例えば、電圧印加回路2は、他励式のコンバータに限らず、自励式のコンバータであってもよい。また、電圧発生回路22は、圧電素子を有する変圧器(圧電トランス)にて実現されてもよい。
【0123】
また、電圧印加回路2が放電電極41と対向電極42との間に印加する出力電圧Voの波形は、
図6A、及び
図8-
図10に示す波形に限定されない。出力電圧Voは、徐々に増加して、放電経路が形成されて出力電流Io(放電電流)が流れるとすぐに低下する三角波状であってもよい。
【0124】
また、放電装置10は、対向電極42が省略されていてもよい。この場合、放電は、放電電極41と、放電電極41の周囲に存在する部材(例えば筐体等)と、の間で生じる。さらに、放電装置10は、液体供給部5と対向電極42との両方が省略されていてもよい。
【0125】
また、上述の電圧印加装置1と同様の機能は、電圧印加回路2の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化されてもよい。すなわち、電圧印加回路2の機能を、電圧印加回路2の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化してもよい。
【0126】
また、放電装置10は、静電霧化装置以外に、イオン発生装置などであってもよい。
【0127】
(8)まとめ
上述の実施形態に係る第1の態様の放電装置(10)は、液体(50)を保持する放電電極(41)を含む負荷(4)に出力電圧(Vo)を印加することにより、放電電極(41)に放電を生じさせる電圧印加回路(2)を備える。電圧印加回路(2)は、出力電圧(Vo)の大きさを変動させる機能と、出力電圧(Vo)の大きさを変動させる周期である放電周期を、複数の周期(T1、T2、T3)のいずれかに時間の経過に伴って切り替える機能と、を有する。
【0128】
上述の放電装置(10)は、放電音を低減させることができる。
【0129】
上述の実施形態に係る第2の態様の放電装置(10)では、第1の態様において、複数の周期(T1、T2、T3)の平均は、出力電圧(Vo)の変動によって生じる液体(50)の振動の振幅が最大になる共振周期を含む所定範囲に含まれていることが好ましい。
【0130】
上述の放電装置(10)は、有効成分の生成量の減少を抑えながら、放電音を低減させることができる。
【0131】
上述の実施形態に係る第3の態様の放電装置(10)では、第1又は第2の態様において、複数の周期(T1、T2、T3)のそれぞれは、周期的に変動する出力電圧(Vo)によって生じる液体(50)の振動の振幅が最大になる共振周期に共振周期の半値を加えた値である第1値以下、かつ、共振周期から前記半値を引いた値である第2値以上、であることが好ましい。
【0132】
上述の放電装置(10)は、有効成分の生成量の減少をより抑えながら、放電音を低減させることができる。
【0133】
上述の実施形態に係る第4の態様の放電装置(10)は、第1乃至第3の態様のいずれか1つにおいて、放電電極(41)に液体(50)を供給する液体供給部(5)、を更に備えることが好ましい。
【0134】
上述の放電装置(10)は、放電電極(41)に液体(50)が自動的に供給されるので、放電電極(41)に液体(50)を供給する人の作業が不要となる。
【0135】
上述の実施形態に係る第5の態様の放電装置(10)では、第1乃至第4の態様のいずれか1つにおいて、液体(50)は、放電によって静電霧化されることが好ましい。
【0136】
上述の放電装置(10)は、ラジカルを含有する帯電微粒子液を生成することができる。したがって、ラジカルが単体で空気中に放出される場合に比べて、ラジカルの長寿命化を図ることができる。さらに、帯電微粒子液が例えばナノメータサイズであることで、比較的広範囲に帯電微粒子液を浮遊させることができる。
【0137】
上述の実施形態に係る第6の態様の放電装置(10)では、第1乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、電圧印加回路(2)は、放電周期を所定回数繰り返す毎に、放電周期を複数の周期(T1、T2、T3)のいずれかに切り替えることが好ましい。
【0138】
上述の放電装置(10)は、放電音を低減させることができる。
【0139】
上述の実施形態に係る第7の態様の放電装置(10)では、第1乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、電圧印加回路(2)は、放電周期を複数の周期(T1、T2、T3)のいずれかにランダムに切り替えることが好ましい。
【0140】
上述の放電装置(10)は、放電音を低減させることができる。
【符号の説明】
【0141】
10 放電装置
2 電圧印加回路
4 負荷
41 放電電極
5 液体供給部
50 液体
Vo 出力電圧
T1、T2、T3 周期