(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】はんだペースト印刷システムおよびはんだペースト印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41F 15/08 20060101AFI20241206BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20241206BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
B41M1/12
H05K3/34 512A
H05K3/34 505B
(21)【出願番号】P 2021550523
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2020034049
(87)【国際公開番号】W WO2021070541
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2019185222
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 満
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】徳永 政昭
(72)【発明者】
【氏名】大石 光浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲矢
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-122613(JP,A)
【文献】特開2003-110288(JP,A)
【文献】特開2012-124399(JP,A)
【文献】特開平09-138156(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047268(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0156207(US,A1)
【文献】特開2007-024510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00 - 15/46
B41F 31/00 - 35/06
B41M 1/00 - 3/18
H05K 3/32 - 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ粒子とフラックスとを含むはんだペーストを基板に印刷する印刷機と、
前記基板に印刷された前記はんだペーストの前記はんだ粒子と前記フラックスとを検出する検出部と、
前記検出部による検出結果より前記フラックスの状態が良好か不良かを判定するフラックス状態判定部と、を備え、
前記フラックス状態判定部によって前記フラックスの状態が不良と判断されたら、前記印刷機は、未印刷基板に前記はんだペーストが印刷される前に前記はんだペーストの前記フラックスの状態を変更する操作を実行
し、
前記検出部は、
前記基板に印刷された前記はんだペーストを撮影するカメラと、
前記基板に第1照明光を照射する第1照明部と、
前記基板に、前記第1照明光よりも前記基板に対して傾いている第2照明光を照射する第2照明部と、を有し、
前記第1照明光を照射しながら前記カメラにより撮影された第1画像に基づき前記はんだ粒子を検出し、
前記第2照明光を照射しながら前記カメラにより撮影された第2画像に基づき前記フラックスを検出する、はんだペースト印刷システム。
【請求項2】
前記検出部による前記検出結果を記憶する記憶部をさらに備え、
前記フラックス状態判定部は、前記記憶部に記憶された前回の検出結果と前記検出部によって検出された今の検出結果に基づいて、前記フラックスの状態を判定する、請求項1に記載のはんだペースト印刷システム。
【請求項3】
前記フラックス状態判定部は、前記
第2画像における前記基板に印刷された前記フラックスの面積が基準を超えるとの判断結果に基づき前記フラックスの前記状態が不良と判定する、請求項
1または2に記載のはんだペースト印刷システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記はんだペーストが印刷される前の前記基板の印刷前重量と、前記はんだペーストが印刷された後の、前記基板と前記はんだペーストとの合計の重量である印刷後重量とを計測する計量器を有し、
前記フラックス状態判定部は、前記印刷前重量と前記印刷後重量とに基づき前記フラックスの状態を判定する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のはんだペースト印刷システム。
【請求項5】
前記フラックス状態判定部は、前記印刷前重量と前記印刷後重量の差より求められた前記フラックスの量がしきい値を超えるとの判断結果に基づき前記フラックスの前記状態が不良と判定する、請求項
4に記載のはんだペースト印刷システム。
【請求項6】
前記基板に印刷された前記はんだペーストの状態を検査する印刷はんだ検査装置をさらに備え、
前記検出部は、前記印刷はんだ検査装置に設けられた、請求項
1から
5のいずれか一項に記載のはんだペースト印刷システム。
【請求項7】
前記印刷機は、前記はんだペーストを前記基板に印刷するための開口部が設けられたスクリーンマスクと、前記スクリーンマスクをクリーニングするクリーニング機構とを含み、
前記印刷機における前記フラックスの前記状態を変更する操作は、前記クリーニング機構による前記スクリーンマスクのクリーニングである、請求項1から
6のいずれか一項に記載のはんだペースト印刷システム。
【請求項8】
前記印刷機は、前記はんだペーストを前記基板に印刷するための開口部が設けられたスクリーンマスクを含み、
前記印刷機における前記フラックスの前記状態を変更する操作は、前記印刷機が前記未印刷基板を前記スクリーンマスクに接触させて前記スクリーンマスク上のはんだペーストを前記未印刷基板に転写する条件を変更することである、請求項1から
6のいずれか一項に記載のはんだペースト印刷システム。
【請求項9】
前記印刷機は、前記はんだペーストを前記基板に印刷するための開口部が設けられたスクリーンマスクを含み、
前記印刷機における前記フラックスの前記状態を変更する操作は、前記印刷機が前記はんだペーストを前記未印刷基板に転写した後に前記未印刷基板を前記スクリーンマスクから引き離す条件を変更することである、請求項1から
6のいずれか一項に記載のはんだペースト印刷システム。
【請求項10】
はんだ粒子とフラックスを含むはんだペーストを基板に印刷するステップと、
前記基板に印刷された前記はんだペーストの前記はんだ粒子と前記フラックスとを検出して検出結果を求めるステップと、
前記検出結果より、前記フラックスの状態が良好か不良かを判定するステップと、
前記フラックスの状態が不良と判断されたら、未印刷基板に前記はんだペーストが印刷される前に前記はんだペーストの前記フラックスの状態を変更する操作を実行するステップと、を備え
、
前記検出結果を求めるステップにおいて、
前記はんだペーストが印刷された前記基板に第1照明光を照射しながらカメラにより撮影された第1画像に基づき前記はんだ粒子を検出し、
前記第1照明光よりも前記基板に対して傾いている第2照明光を前記基板に照射しながら前記カメラにより撮影された第2画像に基づき前記フラックスを検出する、はんだペースト印刷方法。
【請求項11】
前記検出結果を記憶するステップをさらに備え、
記憶された前回の検出結果と検出された今の検出結果に基づいて、前記フラックスの状態が、良好か不良かが判定される、請求項
10に記載のはんだペースト印刷方法。
【請求項12】
前記検出結果を求める際に、前記はんだペーストが印刷される前の前記基板の印刷前重量と、前記はんだペーストが印刷された後の、前記基板と前記はんだペーストとの合計重量である印刷後重量とを計測し、
前記フラックスの状態は、前記印刷前重量と前記印刷後重量とに基づき判定される、請求項
10または11に記載のはんだペースト印刷方法。
【請求項13】
前記はんだペーストは、開口部が設けられたスクリーンマスクを介して前記基板に印刷され、
前記フラックスの前記状態を変更する操作は、前記スクリーンマスクのクリーニングである、請求項
10から
12のいずれか一項に記載のはんだペースト印刷方法。
【請求項14】
前記はんだペーストを前記基板に印刷する際に、開口部が設けられたスクリーンマスクに接触させた前記基板に、前記スクリーンマスクを介して前記はんだペーストを転写し、
前記フラックスの前記状態を変更する操作は、前記はんだペーストを前記未印刷基板に転写する条件を変更することである、請求項
10から
12のいずれか一項に記載のはんだペースト印刷方法。
【請求項15】
前記はんだペーストを前記基板に印刷する際に、開口部が設けられたスクリーンマスクに接触させた前記基板に、前記スクリーンマスクを介して前記はんだペーストを転写し、
前記基板に前記はんだペーストを転写した後に、前記基板を前記スクリーンマスクから引き離し、
前記フラックスの前記状態を変更する操作は、前記未印刷基板を前記スクリーンマスクから引き離す条件を変更することである、請求項
10から
12のいずれかに記載のはんだペースト印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、はんだペーストを基板に印刷するはんだペースト印刷システムおよびはんだペースト印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機では、開口部が設けられたスクリーンマスクの下面が基板に接触する。次に、スキージがスクリーンマスク上で移動して、開口部にはんだ粒子とフラックスとを含むはんだペーストが押し込まれて基板にはんだペーストが転写される。はんだペーストが印刷された基板は、カメラによって撮影される。この撮影結果から印刷不良の有無が検出される。印刷不良は、転写されたはんだペーストが隣接するはんだペーストとつながった状態(はんだブリッジ)や、必要な位置からはんだペーストが欠落した状態を含む(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の検出方法では、基板とのコントラストが大きくなるように着色されたはんだペースト(クリーム状半田)を用い、このようなはんだペーストが印刷された基板をカメラが撮影する。そして、撮影されたはんだペーストの形状から印刷不良の有無が検査される。印刷不良が検出されるとスクリーンマスクが清掃される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示のはんだペースト印刷システムは、はんだ粒子とフラックスとを含むはんだペーストを基板に印刷する印刷機と、前記基板に印刷された前記はんだペーストの前記はんだ粒子と前記フラックスとを検出する検出部と、前記検出部による検出結果より前記フラックスの状態が良好か不良かを判定するフラックス状態判定部と、を備え、前記フラックス状態判定部によって前記フラックスの状態が不良と判断されたら、前記印刷機は、未印刷基板に前記はんだペーストが印刷される前に前記はんだペーストの前記フラックスの状態を変更する操作を実行し、前記検出部は、前記基板に印刷された前記はんだペーストを撮影するカメラと、前記基板に第1照明光を照射する第1照明部と、前記基板に、前記第1照明光よりも前記基板に対して傾いている第2照明光を照射する第2照明部と、を有し、前記第1照明光を照射しながら前記カメラにより撮影された第1画像に基づき前記はんだ粒子を検出し、前記第2照明光を照射しながら前記カメラにより撮影された第2画像に基づき前記フラックスを検出する。
【0006】
本開示のはんだペースト印刷方法では、はんだ粒子とフラックスを含むはんだペーストを基板に印刷するステップと、前記基板に印刷された前記はんだペーストの前記はんだ粒子と前記フラックスとを検出して検出結果を求めるステップと、前記検出結果より、前記フラックスの状態が良好か不良かを判定するステップと、前記フラックスの状態が不良と判断されたら、未印刷基板に前記はんだペーストが印刷される前に前記はんだペーストの前記フラックスの状態を変更する操作を実行するステップと、を備え、前記検出結果を求めるステップにおいて、前記はんだペーストが印刷された前記基板に第1照明光を照射しながらカメラにより撮影された第1画像に基づき前記はんだ粒子を検出し、前記第1照明光よりも前記基板に対して傾いている第2照明光を前記基板に照射しながら前記カメラにより撮影された第2画像に基づき前記フラックスを検出する。
【0007】
本開示によれば、印刷不良を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態に係るスクリーン印刷システムの概略構成図
【
図2】
図1に示すスクリーン印刷システムにおける印刷機の構成図
【
図3A】
図2に示す印刷機によりはんだペーストを印刷する工程を示す断面図
【
図3B】
図3Aに続く、はんだペーストを印刷する工程を示す断面図
【
図3C】
図3Bに続く、はんだペーストを印刷する工程を示す断面図
【
図4】
図1に示すスクリーン印刷システムにおける印刷はんだ検査装置の構成図
【
図5A】はんだペーストが印刷された基板を
図4に示す印刷はんだ検査装置の第1照射部で照射して、検査カメラで撮影した画像の例を示す図
【
図5B】
図5Aに示す基板を
図4に示す印刷はんだ検査装置の第2照射部で照射して、検査カメラで撮影した画像の例を示す図
【
図6】
図2に示す印刷機の制御系の構成を示す機能ブロック図
【
図7】
図4に示す印刷はんだ検査装置の制御系の構成を示す機能ブロック図
【
図8A】
図2に示す印刷機における印刷前のスクリーンマスクの状態の例を示す断面図
【
図8B】
図2に示す印刷機における印刷後のスクリーンマスクの状態の例を示す断面図
【
図8C】
図8Bに示す状態よりも多くの回数の印刷が実行された後のスクリーンマスクの状態の例を示す断面図
【
図8D】
図8Cに示す状態よりも多くの回数の印刷が実行された後のスクリーンマスクの状態の例を示す断面図
【
図9A】
図8Cに示す状態のスクリーンマスクを用いてはんだペーストが印刷された基板を、
図4に示す印刷はんだ検査装置の第1照射部で照射して、検査カメラで撮影した画像の例を示す図
【
図9B】
図9Aに示す基板を
図4に示す印刷はんだ検査装置の第2照射部で照射して、検査カメラで撮影した画像の例を示す図
【
図10A】
図8Dに示す状態のスクリーンマスクを用いてはんだペーストが印刷された基板を、
図4に示す印刷はんだ検査装置の第1照射部で照射して、検査カメラで撮影した画像の例を示す図
【
図10B】
図10Aに示す基板を
図4に示す印刷はんだ検査装置の第2照射部で照射して、検査カメラで撮影した画像の例を示す図
【
図11】
図7に示す印刷はんだ検査装置の第2記憶部に記憶されるフラックスの検出結果の例を示す図
【
図12】本開示の実施の形態のスクリーン印刷方法の一部を示すフローチャート
【
図13】本開示の実施の形態のスクリーン印刷方法の他の一部を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施の形態の説明に先立ち、本開示の着想に至った経緯を簡単に説明する。特許文献1では、着色したはんだペースト全体の形状からはんだブリッジなどの印刷不良を検出している。そのため、はんだペーストに含まれるはんだ粒子がつながったのかフラックスがつながったのかを区別することができない。しかしながら、はんだ粒子とフラックスとでは流動性が異なる。そのため、はんだブリッジなどの印刷不良が発生する前の両者の挙動も異なっている。したがって、繰り返し実行するスクリーン印刷の過程において印刷不良の予兆をとらえ、印刷不良が発生する前に適切な改善処理を実行するためにはさらなる改善の余地がある。
【0010】
本開示は、印刷不良を未然に防止することができるはんだペースト印刷システムおよびはんだペースト印刷方法を提供する。
【0011】
以下に図面を参照しながら、本開示の実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、スクリーン印刷システム、印刷機、印刷はんだ検査装置、管理コンピュータの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。以下、基板の搬送方向に平行な軸をX軸、X軸と水平面内において直交する軸(
図2における左右)をY軸、水平面に直交する軸(
図2における上下)をZ軸と定義する。
【0012】
まず
図1を参照して、本開示の実施の形態に係るはんだペースト印刷システムの一例であるスクリーン印刷システム1の構成について説明する。スクリーン印刷システム1は、管理コンピュータ3と、基板搬送方向の上流(紙面左)から下流(紙面右)に向けて直列に連結された印刷機M1と、印刷はんだ検査装置(以下、検査装置)M2とを含む。印刷機M1と検査装置M2とは、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。管理コンピュータ3は、各装置で使用される制御プログラムなどを含む生産データ、検査結果情報などを記憶し、印刷機M1、検査装置M2との間で情報を送受信する。
【0013】
印刷機M1は、スクリーンマスクに設けられた開口部を介して、上流から搬入された基板にはんだペーストを印刷する。検査装置M2は、検査カメラ、3次元センサなどを有している。検査装置M2は、これらを用いて、印刷機M1から搬送された基板の上面に印刷されたはんだペーストの状態やはんだペーストの量などを検査する。検査結果は、管理コンピュータ3に送信されるとともに、印刷機M1にも送信される。スクリーン印刷システム1は、基板に部品実装する実装基板製造ラインの上流側に配置され、検査装置M2で検査を終えた基板はその下流に配置される部品装着装置などへ搬送される。
【0014】
次に
図2を参照して、印刷機M1の構成を説明する。印刷機M1は、基台4上にX軸に沿って延びる一対のコンベア5を有している。基台4には、印刷制御部Cが設けられている。コンベア5は印刷制御部Cによって制御され、印刷機M1の上流から受け取った基板6をX軸に沿って作業位置へ搬送し、スクリーン印刷が終了すると、基板6を印刷機M1の下流に搬出する。X軸におけるコンベア5の中央付近には、印刷制御部Cによって制御される基板保持部7が設けられている。基板保持部7は、コンベア5が搬送する基板6を受け取って、所定のクランプ位置(作業位置)に保持する。
【0015】
基板保持部7の上方には、スクリーンマスク8が設置されている。スクリーンマスク8には、基板6にはんだペーストPstを印刷するための複数の開口部8aと、マスクマーク(図示省略)とが設けられている。スクリーンマスク8は、X軸とY軸とで定義される平面に広がって延びた矩形平板形状を有しており、その外周は枠部材8wによって支持されている。
【0016】
基台4上には、XYテーブル9、θテーブル10、基板昇降機構11が下方から順に設けられている。XYテーブル9は、θテーブル10を水平面内で(X軸、Y軸に沿って)移動させる。θテーブル10は、基板昇降機構11をZ軸周りに回転させる。基板昇降機構11は、矢印a1で示すように、基板保持部7を下方から支持して上下に移動させる。XYテーブル9、θテーブル10、基板昇降機構11は、印刷制御部Cによって制御されている。
【0017】
スクリーンマスク8の下方には、基板認識用のカメラとマスク認識用のカメラとを内蔵するカメラユニット13が設けられている。カメラユニット13は、矢印a2で示すように、
図6を参照して後述する第1移動機構14によって水平面内を移動する。第1移動機構14は、印刷制御部Cによって制御される。カメラユニット13は、基板6とスクリーンマスク8との間に移動して、基板6に形成された位置合わせ用の基板マークと、スクリーンマスク8に形成された位置合わせ用のマスクマークとを撮影する。印刷制御部Cは、カメラユニット13で撮影された画像に基づいてマスクマークの位置と基板マークの位置とを認識する。
【0018】
図3Aに示すように、基板6上には、複数のランド6aが設けられている。印刷制御部Cは、マークの認識結果に基づいて、XYテーブル9、θテーブル10、基板昇降機構11を制御する。そして、スクリーンマスク8に形成された複数の開口部8aと、基板保持部7が保持する基板6上の複数のランド6aが一致するように、スクリーンマスク8に対する基板6の位置と向きを合わせる。次いで印刷制御部Cは、基板保持部7を上昇させて、基板6を下方からスクリーンマスク8に接触させる。このように、XYテーブル9、θテーブル10、基板昇降機構11は、位置決め機構12を構成する。位置決め機構12は、基板保持部7を移動させて基板保持部7に保持された基板6をスクリーンマスク8に位置合わせする。
【0019】
スクリーンマスク8の上方には、印刷ヘッド20が設けられている。印刷ヘッド20は、
図6を参照して後述する第2移動機構15によって、矢印a3で示すように、Y軸に沿って移動する。印刷ヘッド20は、第2移動機構15によって水平面内を移動する移動ベース21を含む。移動ベース21には、2基のスキージ保持部22がY軸に沿って並んで配置されている。スキージ保持部22はそれぞれ、X軸に沿って延びたスキージ23を下端に保持し、移動ベース21に設けられた昇降機構24によって矢印a4で示すように、上下に移動する。第2移動機構15、印刷ヘッド20は、印刷制御部Cによって制御される。
【0020】
スクリーンマスク8の下方であってY軸のマイナス位置(前側)には、スクリーンマスク8の裏面や開口部8a内に残留したはんだペーストPstを掃除するクリーニング機構30が設けられている。クリーニング機構30は、
図6を参照して後述する第3移動機構16によって、矢印a5で示すように、Y軸に沿って移動する。第3移動機構16は、印刷制御部Cによって制御される。クリーニング機構30は、拭取りヘッド31を有している。拭取りヘッド31は、X軸に沿って延びており、矢印a6で示すように、Z軸に沿って移動する。
【0021】
クリーニング機構30において、Y軸における拭取りヘッド31を挟む前後には、未使用のクリーニングペーパ32を巻回したペーパロール33Aと、使用済みのクリーニングペーパ32を回収するペーパロール33Bとがそれぞれ装着されている。ペーパロール33Aから引き出されたクリーニングペーパ32は、拭取りヘッド31の上面を摺動しながら経て、ペーパロール33Bに巻き取られる。ペーパロール33Bは、印刷制御部Cによって制御されるロール回転機構34によって回転する。クリーニング機構30はさらに、塗布部35を有している。塗布部35は、印刷制御部Cによって制御され、はんだペーストPstに含まれるフラックスを溶かす溶剤をクリーニングペーパ32に塗布する。
【0022】
スクリーンマスク8に残留したはんだペーストPstを掃除する際、印刷制御部Cは、予め設定されたパターンで、湿式クリーニング方式、または、乾式クリーニング方式でスクリーンマスク8をクリーニングする。湿式クリーニング方式では、印刷制御部Cは、塗布部35によって溶剤を塗布されたクリーニングペーパ32を拭取りヘッド31で上昇させる。これにより、クリーニングペーパ32をスクリーンマスク8の裏面に当接させ、クリーニング機構30をY軸に沿って移動させる。このようにして、印刷制御部Cは、残留したはんだペーストPstを拭き取る。乾式クリーニング方式では、印刷制御部Cは、溶剤を塗布していないクリーニングペーパ32を拭取りヘッド31で上昇させてスクリーンマスク8の裏面に当接させる。そして、クリーニング機構30をY軸に沿って移動させて、残留したはんだペーストPstを拭き取る。
【0023】
次に
図3A~
図3Cを参照して、印刷機M1によってはんだペーストPstを基板6に印刷する印刷工程(印刷作業)について説明する。
図3Aに示すように、基板6の上面には電極である複数のランド6aが形成されている。基板6の上面の、ランド6a以外の部分には、絶縁体であるレジスト6bが形成されている。基板6は、スクリーンマスク8の下方まで移動して基板保持部7に保持されている。印刷工程では、まず、印刷制御部Cは、
図2に示す位置決め機構12を制御して、基板6をスクリーンマスク8に位置合わせする。次いで印刷制御部Cは、矢印b1で示すように、基板保持部7を上昇させて、基板6をスクリーンマスク8の下面に接触させる。
【0024】
次いで
図3Bに示すように、印刷制御部Cは、スキージ23を下降させてスクリーンマスク8上に当接させた後、矢印b2で示すように、Y軸に沿って摺動させる。この摺動によって、スクリーンマスク8上に供給されたはんだペーストPstは、開口部8aに押し込まれ、基板6に転写される。この転写工程において、印刷制御部Cは、所定の印刷条件で、はんだペーストPstを基板6に転写させる。所定の印刷条件は、スキージ23をスクリーンマスク8に押し付ける圧力(印圧)と、スキージ23を移動させる速度とを含む。
【0025】
図3Cに示すように、次いで印刷制御部Cは、矢印b3で示すように、基板保持部7を下降させながら、基板6をスクリーンマスク8から引き離す。この離版工程において、印刷制御部Cは、所定の下降速度で基板6を下降させる離反条件で、基板6をスクリーンマスク8から引き離す。これによって、基板6のランド6a上に、はんだペーストPstが印刷(堆積)される。はんだペーストPstは、はんだ粒子SとフラックスFとを含んでおり、基板6上に印刷されるとはんだ粒子Sの堆積物の外周に流動性があるフラックスFがにじんだ状態となる。このように、印刷機M1は、スクリーンマスク8に設けられた開口部8aを介して、はんだ粒子SとフラックスFとを含むはんだペーストPstを基板6に印刷する。
【0026】
次に
図4を参照して、検査装置M2の構成を説明する。検査装置M2は、基台40上にX軸に沿って延びる一対のコンベア41を有している。コンベア41は、上流の印刷機M1から受け取った印刷済基板(以下、基板とも称す)6PをX軸に沿って検査位置まで搬送して、検査が終了すると、検査装置M2の下流に搬出する。X軸におけるコンベア41の中央付近には、基板保持部42が設けられている。基板保持部42は、コンベア41が搬送する基板6Pを受け取って、所定のクランプ位置(検査位置)に保持する。基板保持部42には、基板6の重量を計測する計量器43が設置されている。
【0027】
基板保持部42の上方には、検査ヘッド44が設置されている。検査ヘッド44は、
図7を参照して後述する移動機構45によって水平面内を移動する。検査ヘッド44は、検査カメラ(以下、カメラ)46と、第1照明部47と、第2照明部48と、高さ検出部49とを有している。カメラ46は、光軸46aを下方に向けて設置されており、基板保持部42に保持された基板6の上方を移動して、基板6に印刷されたはんだペーストPstを撮影する。
【0028】
第1照明部47はカメラ46の周囲に配置されており、カメラ46が撮影する基板6上の部分を照明する。また、第2照明部48はカメラ46の周囲であって、カメラ46から見て第1照明部47より外側に配置されており、カメラ46が撮影する基板6上の部分を照明する。すなわち、第2照明部48から照射される第2照明光48aは、第1照明部47から照射される第1照明光47aよりも基板6に対して傾いている。
【0029】
検査装置M2では、カメラ46が撮影する対象に応じて、第1照明部47と第2照明部48とが切り替えられて、または、同時に使用される。あるいは、カメラ46が撮影する対象に応じて、第1照明部47から照射される第1照明光47aの強度と第2照明部48から照射される第2照明光48aの強度とが変更される。高さ検出部49は3Dセンサなどを含み、基板保持部42に保持された基板6の上方を移動して、計測光49aを照射しながら基板6上に印刷されたはんだペーストPstの位置、はんだペーストPstの高さを含む形状を計測し、基板6に印刷されたはんだペーストPstの状態を検出する。
【0030】
次に
図5A、
図5Bを参照して、印刷機M1においてはんだペーストPstが印刷された基板6Pを、検査装置M2が有するカメラ46で撮影した画像の例について説明する。
図5Aは第1照明部47から第1照明光47aを照射しながら、
図5Bは第2照明部48から第2照明光48aを照射しながら、それぞれ、カメラ46によって基板6上の同じ位置を撮影した画像50,51を示している。
図5Aにおいて、基板6の上面に形成されたランド6aには、スクリーンマスク8に形成された円形の開口部8aを介してはんだペーストPstが円柱状に印刷されている。
【0031】
第1照明光47aを照射しながら撮影した画像50には、基板6上のランド6aとレジスト6bとの境界の他、はんだペーストPstに含まれるはんだ粒子Sの堆積物が写っている。
図5Bにおいて、第2照明光48aを照射しながら撮影した画像51には、基板6上のランド6aとレジスト6bとの境界、はんだ粒子Sの堆積物に加え、はんだペーストPstに含まれるフラックスFが写っている。フラックスFは、基板6上に印刷されたはんだ粒子Sの堆積物から外に向かってにじみ出ている。このように、第2照明光48aが斜めに照射されることによって、基板6上のフラックスFの状態を検出することができる。
【0032】
このように、カメラ46と、カメラ46が撮影する基板6を照射する少なくとも1つの照明部(第1照明部47、第2照明部48)とは、基板6に印刷されたはんだペーストPstのはんだ粒子SとフラックスFを検出する検出部として機能する。検査装置M2は、基板6に印刷されたはんだペーストPstの状態を検査する。すなわち、この検出部は、スクリーン印刷システム1が有する検査装置M2に設けられている。
【0033】
次に
図6を参照して、印刷機M1の制御系の構成について説明する。印刷機M1が有する印刷制御部Cには、コンベア5、基板保持部7、位置決め機構12、カメラユニット13、第1移動機構14、第2移動機構15、第3移動機構16、タッチパネル17、印刷ヘッド20、クリーニング機構30が接続されている。タッチパネル17は、液晶パネルに印刷機M1の操作画面などを表示する表示機能と、表示された操作画面を操作することによりコマンドや各種情報などを入力する入力機能を有している。なお、タッチパネル17に代えて、液晶パネルなどの表示装置と、マウスやスイッチなどの入力装置とを別個に設けてもよい。
【0034】
印刷制御部Cは、記憶部60と、第1処理部61と、第2処理部62と、計画管理部63と、第3処理部64と、通信部65とを有している。通信部65は、ネットワーク通信装置であり、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3、検査装置M2との間で情報を送受信する。記憶部60は、書き換え可能なRAM(ランダムアクセスメモリ)などを含む記憶装置である。記憶部60は、基板6の種類毎に、印刷ヘッド20が基板6にはんだペーストPstを印刷する印刷条件、マスククリーニングを実行するマスククリーニング条件などを記憶している。
【0035】
印刷条件は、前述のように、スキージ23が複数の開口部8aにはんだペーストPstを押し込む圧力(印圧)、印刷時のスキージ23の移動速度、印刷後に基板6をスクリーンマスク8から引き離す離反速度などを含む。また、マスククリーニング条件は、マスククリーニングを実行するタイミングやクリーニング方式(湿式クリーニング、乾式クリーニング)などを含む。
【0036】
第1処理部61、第2処理部62、計画管理部63、第3処理部64は、CPU(中央演算処理装置)またはLSI(大規模集積回路)で構成されている。あるいは専用回路で構成されていてもよく、汎用のハードウェアを、一過性または非一過性の記憶装置から読みだしたソフトウェアで制御して実現してもよい。またこれらの2つ以上を一体に構成してもよい。
【0037】
第1処理部61は、記憶部60に記憶された印刷条件に基づいて、印刷ヘッド20を含む印刷機M1の各部を制御して印刷作業を実行させる。第2処理部62は、計画管理部63からの命令(指令)に従って、クリーニング機構30、第3移動機構16を制御してマスククリーニングを実行させる。計画管理部63は、記憶部60に記憶されるマスククリーニング条件に基づいて、所定枚数の基板6の印刷作業後に所定の方式でマスククリーニングを実行するように第2処理部62に命令する。
【0038】
ここで、
図11を参照して、通常クリーニング処理の例を説明する。計画管理部63は、カウンタ機能を有し、通常クリーニング処理では、湿式クリーニング以降の基板6の印刷枚数をカウントする。そして、横軸と図の上部に示すように、基板6が4枚(1枚目~4枚目)印刷されると、計画管理部63は、第2処理部62に乾式クリーニングを実行させる。さらに基板6が4枚(5枚目~8枚目)印刷されると、計画管理部63は、第2処理部62に再度、乾式クリーニングを実行させる。さらに基板6が4枚(9枚目~12枚目)印刷されると、計画管理部63は、第2処理部62に湿式クリーニングを実行させて、その後カウンタをリセットする。
【0039】
図6において、第3処理部64は、後述する検査装置M2における印刷状態判定処理、またはフラックス状態判定処理において、不良が検出されると、基板6に印刷されるはんだペーストPstの状態が改善されるように記憶部60に記憶されている印刷条件を変更する。
【0040】
次に
図7を参照して、検査装置M2の制御系の構成について説明する。検査装置M2が有する検査制御部70には、コンベア41、基板保持部42、計量器43、移動機構45、カメラ46、第1照明部47、第2照明部48、高さ検出部49、タッチパネル76が接続されている。タッチパネル76は、液晶パネルに検査装置M2の操作画面などを表示する表示機能と、表示された操作画面を操作することによりコマンドや各種情報などを入力する入力機能を有している。タッチパネル76もタッチパネル17と同様に、別個に設けられた表示装置と入力装置とに代えてもよい。
【0041】
検査制御部70は、第1記憶部71、第2記憶部72、検査処理部73、フラックス状態判定部(以下、判定部)74、通信部75を有している。通信部75はネットワーク通信装置であり、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3、印刷機M1との間で情報を送受信する。第1記憶部71、第2記憶部72は記憶装置である。第1記憶部71は、基板6の種類毎に、印刷前の基板6の重量、基板6に印刷されたはんだペーストPstの検査位置、検査基準などを含む検査条件を記憶している。第2記憶部72は、カメラ46により撮影された画像のデータ(以下、単に画像と称する)、検出されたはんだ粒子SとフラックスFの状態などを含む検査結果を記憶している。第1記憶部71、第2記憶部72も、記憶部60と同様に、書き換え可能なRAMや、フラッシュメモリ、ハードディスクなどを含んでいる。
【0042】
検査処理部73、判定部74は、CPU(中央演算処理装置)またはLSI(大規模集積回路)で構成されている。あるいは専用回路で構成されていてもよく、汎用のハードウェアを、一過性または非一過性の記憶装置から読みだしたソフトウェアで制御して実現してもよい。またこれらの2つを一体に構成してもよい。
【0043】
検査処理部73は、カメラ46、第1照明部47、第2照明部48を制御して、第1照明光47aまたは第2照明光48aを照射しながらカメラ46で基板6上を撮影させる。さらに検査処理部73は、撮影された画像を処理して基板6に印刷されたはんだ粒子SとフラックスFとを検出する。検出結果は、第2記憶部72に記憶される。すなわち、第2記憶部72は、カメラ46、第1照明部47、第2照明部48を含む検出部による検出結果を記憶する。
【0044】
また、検査処理部73は、計量器43を制御して、基板保持部42に搬入された印刷済基板6Pの重量を計測させる。計測結果は、第2記憶部72に記憶される。
【0045】
また、検査処理部73は、高さ検出部49を制御して、基板6に印刷されたはんだペーストPstの3次元形状を計測する。これにより検査処理部73は、ランド6aからのはんだペーストPstの高さと、レジスト6bからのはんだペーストPstの高さ、はんだ粒子Sの堆積物とフラックスFの段差などに基づいて、はんだ粒子SとフラックスFを検出する。検出結果は、第2記憶部72に記憶される。すなわち、高さ検出部49は、基板6に印刷されたはんだペーストPstのはんだ粒子SとフラックスFを検出する検出部として機能する。
【0046】
ここで
図8A~
図8Dを参照して、印刷作業後のスクリーンマスク8の状態について説明する。
図8Aは、印刷前、あるいは湿式クリーニング直後のスクリーンマスク8の状態を示しており、開口部8aおよびスクリーンマスク8の下面からはんだペーストPstは除去されている。
図8B~
図8Dは、マスククリーニングを実行することなく印刷作業を繰り返し実行した後のスクリーンマスク8の状態を模式的に表している。印刷作業後には、スクリーンマスク8の開口部8aおよび下面には、はんだ粒子SやフラックスFなどの残留物が付着し、印刷作業を繰り返すことで残留物の量が増加している。
【0047】
【0048】
これらの図から明らかなように、スクリーンマスク8に付着している残留物が増加するにつれて、基板6上に印刷されるはんだ粒子Sの堆積物の形状が崩れて、はんだ粒子Sは水平に広がっている。また、はんだ粒子Sからしみ出したフラックスFの面積も増加している。
図10Aの画像54において点線の円cで示す位置には、「はんだブリッジ」が発生している。すなわち、ランド6aに印刷されたはんだ粒子Sの堆積物が広がって隣接するはんだ粒子Sの堆積物とつながっている。
図10Bの画像55において、フラックスFは、隣接する2つのランド6aをつないでいる。
【0049】
このように、スクリーンマスク8の残留物が増加すると、基板6上に印刷されるフラックスFの量が増加する。そして、基板6上に印刷されたフラックスFの状態(フラックス状態)を観察することで、印刷作業を継続すると発生するはんだブリッジなどの印刷不良の発生を予測することができる。
【0050】
図7において、判定部74は、第2照明光48aを照射しながらカメラ46が撮影した画像51,53,55から、基板6上のフラックスFの状態が良好か不良かを判定する。例えば、判定部74は、印刷されたフラックスFの面積(フラックス量)を算出し、基準(しきい値)内の場合はフラックスFの状態が良好と判定する。基準を超えるとフラックスFの状態が不良と判定する。なお、判定部74は、印刷されたフラックスFの面積の他、フラックスFの形状からフラックスFの状態の良否を判定してもよい。
【0051】
ここで、
図11を参照して、判定部74によるフラックスFの状態の良否判定の例について説明する。
図11は、画像51,53,55から検出されたフラックスFのフラックス量を、基板6が印刷された順番で表したグラフである。実線dで結んだ白丸は、基板6上のフラックス量の正常な推移を模式的に表している。すなわち、湿式クリーニング後、次の湿式クリーニングまで(1枚目~12枚目)まではフラックス量が徐々に増加し、乾式クリーニング後(5枚目、9枚目)にフラックス量は微減し、湿式クリーニング後(13枚目)にフラックス量が一気に減少している。このように、正常な状態では、フラックス量がしきい値を超える前に湿式クリーニングが実行される。
【0052】
1点鎖線eで結んだ黒丸は、印刷作業後にスクリーンマスク8に残留するはんだペーストPstの残留物が正常状態よりも早く増加し、7枚目の基板6でフラックス量がしきい値を超過していることを示している。この場合、判定部74は、7枚目の基板6のフラックス状態が不良と判定する。
【0053】
点線fで結んだ白抜き三角は、6枚目の基板6の印刷作業後にスクリーンマスク8にはんだペーストPstの残留物が大量に付着して、7枚目の基板6のフラックス量がしきい値内ではあるが、急激に増加していることを示している。この場合、判定部74は、6枚目のフラックス量と7枚目のフラックス量とから8枚目以降でフラックス量がしきい値を超えてフラックス状態が不良になると予測する。すなわち、判定部74は、第2記憶部72に記憶された前回の検出結果(6枚目)と、検出部によって検出された今の検出結果(7枚目)とに基づいて、フラックスFの状態を判定する。
【0054】
図7に示す判定部74は、カメラ46により撮影された画像からフラックスFの状態を判定している。また、判定部74は、高さ検出部49によって検出されたフラックスFのフラックス量からフラックスFの状態を判定してもよい。また、判定部74は、第1記憶部71に記憶された印刷前の基板6の重量と、計量器43によって計測された印刷後の基板6の重量とから、印刷されたはんだペーストPstの重量を算出してもよい。さらに、判定部74は、カメラ46が撮影したはんだ粒子Sの画像から算出されるはんだ粒子Sの重量を、印刷されたはんだペーストPstの重量から引いて、フラックスFの重量を算出してもよい。
【0055】
すなわち、判定部74は、はんだペーストPstを印刷する前後の基板6の重量からフラックスFの状態を判定してもよい。このように、計量器43とカメラ46は、基板6に印刷されたはんだペーストPstのはんだ粒子SとフラックスFとを検出する検出部として機能する。そして、判定部74は、検出部(カメラ46、第1照明部47、第2照明部48、計量器43、高さ検出部49)による検出結果より、フラックスFの状態が良好か不良かを判定する。判定結果は、管理コンピュータ3と印刷機M1に送信される。
【0056】
検査装置M2の判定部74からフラックスFの状態が不良(例えば、フラックス量がしきい値を超えた)との判定結果を受けると、
図6に示す計画管理部63は、第2処理部62に湿式クリーニングを指示し、その後、カウンタをリセットする。なお、既に後続の基板6に対する印刷作業が開始されていた場合は、作業中の基板6の印刷後に湿式クリーニングを実行してもよい。
【0057】
具体的に
図11に示す黒丸の例で説明する。7枚目の基板6のフラックスFの状態を判定部74が不良と判定すると、不良との旨の判定結果が印刷機M1に送信される。印刷機M1では、計画管理部63が第2処理部62に湿式クリーニングを命令してカウンタをリセットする。その後、印刷機M1では、8枚目の基板6に対する印刷作業の前に湿式クリーニングが実行される。湿式クリーニングが実行されると、スクリーンマスク8に付着しているはんだ粒子SとフラックスFとが除去され、基板6上に印刷されるはんだペーストPstの状態が改善される。
【0058】
すなわち、印刷機M1は、判定部74によってフラックスFの状態が不良と判断されたら、基板6に印刷されるはんだペーストPstのフラックスFの状態を変更する操作を実行する。この場合、印刷機M1におけるフラックスFの状態を変更する操作は、印刷機M1が有するクリーニング機構30によるスクリーンマスク8のクリーニング(湿式クリーニング)である。これによって、はんだ粒子Sの印刷状態が不良となることを未然に防止することができる。
【0059】
判定部74からフラックスFの状態が不良との旨の判定結果が送信されると、
図6に示す第3処理部64は、記憶部60に記憶されている印刷条件を変更してもよい。すなわち、判定部74によってフラックスFの状態が不良と判断されて、基板6に印刷するはんだペーストPstのフラックスFの状態を変更する操作は、印刷条件の変更(更新)でもよい。
【0060】
すなわち、印刷機M1が基板6をスクリーンマスク8に接触させてはんだペーストPstを基板6に転写する条件、印刷機M1がはんだペーストPstを基板6に転写した後に基板6をスクリーンマスク8から引き離す条件などが変更される。より具体的には、印圧、スキージ23の移動速度、離反速度などが変更される。これによって、はんだ粒子Sの印刷状態が不良となることを未然に防止することができる。なお、印刷条件は、フラックス状態が不良との判定結果を受ける毎に変更する必要はない。例えば、通常クリーニング中に不良が発生することが2回連続発生したり、不良の発生が所定の頻度を超えたりすると印刷条件を変更するようにしてもよい。
【0061】
なお、上記の実施の形態では、判定部74が検査装置M2に設けられ、計画管理部63と第3処理部64が印刷機M1に設けられる例で説明したが、スクリーン印刷システム1はこの形態に限定されることはない。例えば、管理コンピュータ3が判定部74、計画管理部63、第3処理部64を有してもよい。また、印刷機M1が印刷前後の基板6の重量を計測する計量器43を有してもよい。
【0062】
次に
図12、
図13に沿って、スクリーン印刷システム1におけるスクリーン印刷方法について説明する。
図12において、まず、コンベア5によって、スクリーン印刷システム1の印刷機M1に基板6が搬入される(ST1)。次いで基板保持部7が基板6を保持して、位置決め機構12が、スクリーンマスク8に対して位置合わせし(ST2)、基板6をスクリーンマスク8に接触させる(ST3)。次いでスクリーンマスク8に接触させた基板6に、印刷ヘッド20がスクリーンマスク8を介してはんだペーストPstを転写し(ST4程)、その後、基板昇降機構11が、基板6をスクリーンマスク8から引き離す(ST5)。
【0063】
これにより、基板6にはんだペーストPstが印刷され、印刷済基板6Pが作製される。すなわち、ST2からST5までは、はんだペーストPstを基板6に印刷する印刷工程(ST30)である。次いで印刷済基板6Pが検査装置M2に移送される(ST6)。次いで少なくとも1つの照明部(第1照明部47、第2照明部48)が、基板6Pを照明し(ST7)、カメラ46が、基板6に印刷されたはんだペーストPstを撮影する(ST8)。次いで検査処理部73が、撮影された画像を画像認識して基板6に印刷されたはんだペーストPstのはんだ粒子SとフラックスFを認識する(ST9)。
【0064】
次いで計量器43が、はんだペーストPstが印刷された後の基板6Pの重量を計測する(ST10)。このように、ST7からST10までは、基板6に印刷されたはんだペーストPstのはんだ粒子SとフラックスFを検出する検出工程(ST31)である。次いで、検出工程(ST31)における検出結果が第2記憶部72に記憶される(ST11)。
【0065】
次いで
図13において、検査処理部73は、ST8において撮影された画像から、はんだ粒子Sの状態が良好か不良かを判定する(ST12)。印刷状態が不良の場合(ST12において不良)、下流の部品実装装置にその旨が送信される。また、印刷機M1ではスクリーンマスク8のクリーニング(乾式クリーニング)、印刷条件の変更などの印刷不良処理が実行される(ST13)。印刷状態が良好な場合(ST12において良好)、および印刷状態が不良で印刷不良処理(ST13)が実行された場合、次いでスクリーン印刷システム1から基板6Pが搬出される(ST14)。
【0066】
印刷済基板6Pの生産が終了していない場合は(ST15においてNo)、検出工程(ST31)における検出結果より、判定部74は、既に検査された印刷済基板6PのフラックスFの状態が予め定めた基準を超えるか否か、すなわちフラックス状態が不良か良好かを判定する(ST16)。また、判定部74は、記憶された前回の検出結果と検出工程(ST31)において検出された今の検出結果とに基づいて、フラックスFの状態を判定してもよい。具体的には、判定部74は、ST8において撮影された画像よりフラックスFの状態を判定する。また、判定部74は、基板6の印刷前の重量とST10において計測された印刷後の重量とからフラックスFの状態を判定してもよい。
【0067】
ST16においてフラックスFの状態が不良と判定されると、計画管理部63は第2処理部62に湿式クリーニングを実行させ(ST17)、カウンタをゼロにリセットする(ST18)。次いで第3処理部64は、記憶部60に記憶された印刷条件を変更する(ST19)。これにより、ST4においてはんだペーストPstを基板6に転写する条件および/または、ST5における基板6をスクリーンマスク8から引き離す条件が変更される。
【0068】
このように、ST17からST19までは、ST16においてフラックスFの状態が不良と判断されたら、基板6に印刷されるはんだペーストPstのフラックスFの状態を変更する操作を実行する変更操作工程(ST32)である。これによって、印刷不良を未然に防止することができる。
【0069】
ST16においてフラックスFの状態が良好と判定されると、計画管理部63はカウンタのカウントに従って通常クリーニングを実行させる(ST20)。変更操作工程(ST32)または通常クリーニング処理(ST20)の後、処理はST1に戻って次の基板6が搬入される。
【0070】
上記説明したように、スクリーン印刷システム1は、印刷機M1を有する。スクリーン印刷システム1は、基板6に印刷されたはんだペーストPstのはんだ粒子SとフラックスFを検出する検出部と、検出部による検出結果よりフラックスFの状態が良好か不良かを判定する判定部74とを有している。そして、印刷機M1は、判定部74によってフラックスFの状態が不良と判断されたら、基板6に印刷されるはんだペーストPstのフラックスFの状態を変更する操作を実行する。これによって、印刷不良を未然に防止することができる。なお、検出部は、はんだペーストPstのフラックスFの状態を検出できればよい。したがって、検出部が、カメラ46、第1照明部47、第2照明部48、計量器43、高さ検出部49の全てを有する必要はない。例えば、検出部が、カメラ46と、第1照明部47と第2照明部48との少なくとも一方とで十分にフラックスFの状態を検出できるのであれば、計量器43と高さ検出部49とを設けなくてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、フラックスFの状態の良否をスクリーンマスク8のクリーニングの実行のトリガーや、スクリーン印刷における印刷条件の変更にフィードバックする例を説明している。しかしながらフラックスFの状態の良否判定は、これらの利用に限定されない。例えば、スクリーン印刷以外の方法でランド6aにはんだ部を形成する場合に、はんだ部の形成状態を判定するために利用してもよい。さらにその判定結果に基づき、その方法において、はんだペーストのフラックスの状態を変更する操作を実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示のはんだペースト印刷システムおよびはんだペースト印刷方法は、印刷不良を未然に防止することができるという効果を有し、電子部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 スクリーン印刷システム
2 通信ネットワーク
3 管理コンピュータ
4,40 基台
5,41 コンベア
6 基板
6a ランド
6b レジスト
6P 印刷済基板(基板)
7 基板保持部
8 スクリーンマスク
8a 開口部
8w 枠部材
9 XYテーブル
10 θテーブル
11 基板昇降機構
12 位置決め機構
13 カメラユニット
14 第1移動機構
15 第2移動機構
16 第3移動機構
17,76 タッチパネル
20 印刷ヘッド
21 移動ベース
22 スキージ保持部
23 スキージ
24 昇降機構
30 クリーニング機構
31 拭取りヘッド
32 クリーニングペーパ
33A,33B ペーパロール
35 塗布部
42 基板保持部
43 計量器
44 検査ヘッド
45 移動機構
46 検査カメラ(カメラ)
46a 光軸
47 第1照明部
47a 第1照明光
48 第2照明部
48a 第2照明光
49 高さ検出部
49a 計測光
50,51,52,53,54,55 画像
60 記憶部
61 第1処理部
62 第2処理部
63 計画管理部
64 第3処理部
65,75 通信部
70 検査制御部
71 第1記憶部
72 第2記憶部
73 検査処理部
74 フラックス状態判定部(判定部)
C 印刷制御部
F フラックス
M1 印刷機
M2 印刷はんだ検査装置(検査装置)
Pst はんだペースト
S はんだ粒子