(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】紫外線硬化性樹脂組成物、光学部品、光学部品の製造方法、発光装置、及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/844 20230101AFI20241206BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20241206BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241206BHJP
H10K 59/90 20230101ALI20241206BHJP
H10K 71/13 20230101ALI20241206BHJP
【FI】
H10K50/844 445
C08G59/68
H10K59/10
H10K59/90
H10K71/13
(21)【出願番号】P 2020159020
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千秋 考弘
(72)【発明者】
【氏名】浦岡 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕基
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦史
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-059945(JP,A)
【文献】特開2019-029355(JP,A)
【文献】特表2020-521300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
C08G 59/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物(A)と光重合開始剤(B)と増感剤とを含有する紫外線硬化性樹脂組成物であり、
前記光重合性化合物(A)は、水溶性化合物(C)を含有し、前記紫外線硬化性樹脂組成物に対する前記水溶性化合物(C)の百分比は、10質量%以上であり、
25℃における粘度が30mPa・s以下であり、
前記光重合性化合物(A)は、カチオン重合性化合物(A2)を含有し、
前記カチオン重合性化合物(A2)は、環状エーテル化合物を含有し、
前記環状エーテル化合物は、エポキシ化合物及びオキセタン化合物を含有し、
前記エポキシ化合物が、
水溶性エポキシ化合物(C21)を含有し、
前記オキセタン化合物に対する前記水溶性エポキシ化合物(C21)の百分比が、10/60質量%以上50質量%以下であり、
前記増感剤は、9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ジエトキシアントラセンのうちいずれか一方又は両方を含有する、
紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記光重合性化合物(A)に対する前記水溶性化合物(C)の百分比は、50質量%以下である、
請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
光源が発する光を透過させる光学部品を作製するための、
請求項1又は2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
インクジェット法で成形される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、
光学部品。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形してから、前記紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることを含む、
光学部品の製造方法。
【請求項7】
窒化ケイ素膜の上に前記光学部品を作製する、
請求項6に記載の光学部品の製造方法。
【請求項8】
光源と、前記光源が発する光を透過させる光学部品とを備え、前記光学部品は、請求項1から4のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、
発光装置。
【請求項9】
窒化ケイ素膜を更に備え、
前記光学部品は、前記窒化ケイ素膜上に重なっている、
請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
光源と、前記光源が発する光を透過させる光学部品とを備える発光装置を製造する方法であり、
前記光学部品を、請求項6又は7に記載の方法で製造することを含む、
発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性樹脂組成物、光学部品、光学部品の製造方法、発光装置、及び発光装置の製造方法に関し、詳しくはインクジェット法で成形可能な紫外線硬化性樹脂組成物、前記紫外線硬化性樹脂組成物から作製される光学部品、前記紫外線硬化性樹脂組成物を用いる光学部品の製造方法、前記光学部品を備える発光装置、及び前記紫外線硬化性樹脂組成物を用いる発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL発光装置などの発光装置は、照明、ディスプレイなどに適用されており、今後の普及が期待されている。
【0003】
発光装置は、例えば支持基板上に発光素子を配置し、支持基板に対向するように透明基板を配置して構成される。この場合、発光素子が発する光は透明基板を通過して外部へ出射する。
【0004】
有機EL素子などの発光素子は、水分によって劣化すると、ダークスポットとよばれる発光しない部分が生じることがある。そのため、発光素子を透明な封止材及び窒素化合物製のパッシベーション層で覆うことで、外部から発光素子への水分の侵入を抑制することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、発光装置の薄型化にともない、パッシベーション層の上で封止材を作製するにあたり、封止材の薄型化を試みたところ、封止材を薄くするほど、封止材の表面の平坦性及び平滑性が悪化するという問題を見いだした。封止材の表面の平坦性及び平滑性が悪化すると、発光装置の発光性能が悪化してしまう。
【0007】
本発明の課題は、無機質材上で硬化させて硬化膜を作製した場合に硬化膜が平坦かつ平滑になりやすい紫外線硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物から作製される光学部品、紫外線硬化性樹脂組成物を用いる光学部品の製造方法、光学部品を備える発光装置、及び紫外線硬化性樹脂組成物を用いる発光装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る紫外線硬化性樹脂組成物は、光重合性化合物(A)と光重合開始剤(B)とを含有する。前記光重合性化合物(A)は、水溶性化合物(C)を含有し、前記紫外線硬化性樹脂組成物に対する前記水溶性化合物(C)の百分比は、10質量%以上である。紫外線硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が30mPa・s以下である。
【0009】
本発明の一態様に係る光学部品は、前記紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0010】
本発明の一態様に係る光学部品の製造方法は、前記紫外線硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形してから、前記紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させることを含む。
【0011】
本発明の一態様に係る発光装置は、光源と、前記光源が発する光を透過させる光学部品とを備える。前記光学部品は、前記紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0012】
本発明の一態様に係る発光装置の製造方法は、光源と、前記光源が発する光を透過させる光学部品とを備える発光装置を製造する方法である。本方法は、前記光学部品を、前記光学部品の製造方法で製造することを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によると、無機質材上で膜状に成形された場合に平坦かつ平滑になりやすい紫外線硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物から作製される光学部品、紫外線硬化性樹脂組成物を用いる光学部品の製造方法、光学部品を備える発光装置、及び紫外線硬化性樹脂組成物を用いる発光装置の製造方法が、得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における発光装置の一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態に係る紫外線硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、光重合性化合物(A)と光重合開始剤(B)とを含有する。光重合性化合物(A)は、水溶性化合物(C)を含有する。組成物(X)に対する水溶性化合物(C)の百分比は、10質量%以上である。組成物(X)の25℃における粘度が30mPa・s以下である。
【0017】
なお、水溶性化合物(C)は、光重合性を有し、かつ水溶性を有する化合物である。水溶性を有する化合物とは、1気圧において、温度20℃で同容量の純水と混合して混合液を調製し、この混合液を緩やかにかき混ぜてから静置した場合に、混合液の流動がおさまった後も当該混合液が均一な外観を維持する化合物のことをいう。
【0018】
本実施形態によると、水溶性化合物(C)によって組成物(X)と窒化ケイ素などの無機質材との間の親和性を高めることができ、かつ組成物(X)の粘度が30mPa・s以下であることで組成物(X)の流動性を高めることができる。このため、組成物(X)を窒化ケイ素などの無機質材の上に塗布して塗膜を形成した場合に、塗膜及びこの塗膜を硬化させて得られる硬化膜の表面が平坦かつ平滑になりやすい。このため、無機質材上で組成物(X)から硬化膜を作製すると、無機質材の表面が凹凸を有する場合、及び硬化膜の厚みが小さい場合であっても、硬化膜が平坦かつ平滑になりやすい。
【0019】
組成物(X)に対する水溶性化合物(C)の百分比は、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であれば更に好ましい。また、組成物(X)に対する水溶性化合物(C)の百分比は、50質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)及び硬化物からの水溶性化合物(C)の揮発によるアウトガスが抑制される。水溶性化合物(C)の百分比は、40質量%以下であればより好ましく、30質量%以下であれば更に好ましい。
【0020】
組成物(X)から光学部品を製造することができ、また光学部品を備える発光装置を製造することもできる。なお、組成物(X)の用途は、光学部品の製造のみには制限されず、組成物(X)の特質を利用した種々の用途に適用可能である。
【0021】
組成物(X)は、インクジェット法で成形されることが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化物を位置精度良く作製しやすい。また、スクリーン印刷法などの接触を伴う印刷法で成形する場合と比べて、組成物(X)をインクジェット法で成形する場合は、組成物(X)及びその硬化物に異物が混入しにくく、そのため、光学部品を作製するに当たっての歩留まりが悪化しにくい。本実施形態では、上記のとおり組成物(X)の25℃での粘度が30mPa・s以下であることで、組成物(X)をインクジェット法で成形しやすい。この粘度が25mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。この粘度が1mPa・s以上であることも好ましく、5mPa・s以上であることも好ましい。
【0022】
このような組成物(X)の低い粘度は、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。なお、粘度の測定方法及び条件は、後掲の実施例の欄において詳しく説明する。
【0023】
組成物(X)の硬化物を100℃で30分間加熱した場合に生じるアウトガスの割合が200ppm以下であることが好ましい。この場合、硬化物からアウトガスが生じにくい。このため、例えば硬化物を含む光学部品を備える発光装置内にアウトガスに起因する空隙を生じにくくできる。このため空隙を通じて発光素子に水及び酸素が到達するようなことを起こりにくくして、発光素子が水及び酸素により劣化しにくくできる。アウトガスの割合が100ppm以下であればより好ましく、50ppm以下であれば更に好ましい。なお、アウトガスの割合の測定方法及び条件は、後掲の実施例の欄において詳しく説明する。
【0024】
組成物(X)は、溶剤を含有せず又は溶剤の含有量が1質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)及び組成物(X)の硬化物からは、溶剤に由来するアウトガスが発生しにくい。また、光学部品及び発光装置の製造時に組成物(X)及び硬化物から溶剤を除去するための乾燥工程を不要にできる。組成物(X)及び硬化物の少なくとも一方から溶剤を除去するための乾燥工程があってもよいが、この場合は乾燥工程における加熱温度の低減と加熱時間の短縮化との、少なくとも一方を可能とできる。このため、光学部品及び発光装置の製造効率を低下させることなく、光学部品からアウトガスを生じにくくできる。さらに、組成物(X)を特にインクジェット法で成形する場合に、成形後の組成物(X)から溶剤が揮発することによる厚みの減少が生じにくく、そのため光学部品の厚みの減少が生じにくい。そのため、インクジェット法で成形しながら、光学部品の厚みをできるだけ大きく確保できる。溶剤の含有量は、0.5質量%以下であればより好ましく、0.3質量%以下であれば更に好ましく、0.1質量%以下であれば特に好ましい。組成物(X)は、溶剤を含有せず、又は不可避的に混入する溶剤のみを含有することが、特に好ましい。
【0025】
組成物(X)の硬化物のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましい。すなわち、組成物(X)は、硬化することでガラス転移温度が80℃以上の硬化物になる性質を有することが好ましい。この場合、硬化物は良好な耐熱性を有することができる。そのため、例えば硬化物に温度上昇を伴う処理が施された場合に、硬化物が劣化しにくい。このため、例えば光学部品に重なる無機質材料の層(例えばパッシベーション層6)をプラズマCVD法といった蒸着法で作製する場合、光学部品が加熱されても、光学部品が劣化しにくい。また、耐熱性を高めることで、光学部品を、耐熱性に対する要求が厳しい車載用途に適合させることもできる。硬化物のガラス転移温度は100℃以上であればより好ましく、120℃以上であれば更に好ましい。この硬化物のガラス転移温度は、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
【0026】
組成物(X)20mgを、熱重量分析計を用いて100℃30分の条件で加熱する処理をした場合の揮発性は、40%以下であることが好ましい。組成物(X)の揮発性は、処理前の組成物(X)の重量に対する、処理後の組成物(X)の重量減少量(組成物(X)の、処理前の重量と処理後の重量との差)の百分比で規定される。この場合、組成物(X)の揮発性が低いことで、組成物(X)の保存安定性を高めることができる。また、組成物(X)の硬化物及び光学部品からアウトガスが生じにくくなる。そのため、発光装置内にアウトガスに起因する空隙が更に生じにくくなる。組成物(X)の揮発性は、組成物(X)20mgを熱重量分析計を用いて100℃30分の条件で加熱する処理をし、処理前の重量に対する処理後の重量の重量減少量を算出することで求めることができる。組成物(X)20mgを、熱重量分析計を用いて100℃30分の条件で加熱する処理をした場合の揮発性は、30%以下であることがより好ましく、20%以下であれば更に好ましい。組成物(X)の揮発性の下限は特に限定されないが、例えば、0.1%以上であってよい。
【0027】
組成物(X)が含有する成分について、更に詳しく説明する。
【0028】
光重合性化合物(A)は、紫外線の照射を受けて重合反応を生じうる化合物である。光重合性化合物(A)は、例えばモノマー、オリゴマー及びプレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0029】
光重合性化合物(A)は、例えばラジカル重合性化合物(A1)とカチオン重合性化合物(A2)とのうち少なくとも一方を含有する。光重合性化合物(A)がラジカル重合性化合物(A1)を含有する場合、光重合開始剤(B)は光ラジカル重合開始剤(B1)を含有することが好ましい。光重合性化合物(A)がカチオン重合性化合物(A2)を含有する場合、光重合開始剤(B)は光カチオン重合開始剤(B2)(カチオン硬化触媒)を含有することが好ましい。
【0030】
光重合性化合物(A)がラジカル重合性化合物(A1)を含有する場合、ラジカル重合性化合物(A1)は、アクリル化合物(Y)を含有することが好ましい。アクリル化合物(Y)は、一分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。
【0031】
アクリル化合物(Y)は、一分子中に(メタ)アクリロイル基を含む二つ以上のラジカル重合性官能基を有する多官能アクリル化合物(Y1)を含有することが好ましい。この場合、多官能アクリル化合物(Y1)は、硬化物のガラス転移温度を高めることができ、このため、硬化物の耐熱性を高めることができる。多官能アクリル化合物(Y1)の百分比は、アクリル化合物(Y)全体に対して50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。アクリル化合物(Y)は、多官能アクリル化合物(Y1)のみを含有してもよい。
【0032】
多官能アクリル化合物(Y1)が、下記式(200)に示す構造を有する化合物(Y11)を含有してもよい。
【0033】
CH2=CR1-COO-(R3-O)n-CO-CR2=CH2 …(200)
式(200)において、R1及びR2の各々は水素又はメチル基、nは1以上の整数、R3は炭素数1以上のアルキレン基であり、nが2以上の場合は一分子中の複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。アクリル化合物(Y)に対する化合物(Y11)の百分比は50質量%以上であることが好ましい。この場合、硬化物の水に対する親和性が特に高められにくい。アクリル化合物(Y)に対する化合物(Y11)の百分比は、例えば100質量%以下であり、又は95質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。化合物(Y11)は、例えばアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートと、ポリアルキレングルコールジ(メタ)アクリレートと、アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0034】
多官能アクリル化合物(Y1)がポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含有すれば、特に好ましい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、粘度が低く、かつ揮発しにくいため、組成物(X)の低粘度化に寄与でき、かつ組成物(X)の保存安定性の向上及び硬化物からのアウトガスの低減に寄与できる。アクリル化合物(Y)に対するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの百分比は、40質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0035】
多官能アクリル化合物(Y1)は、一分子中に(メタ)アクリロイル基を含む三つ以上のラジカル重合性官能基を有する化合物を含有してもよい。この場合、多官能アクリル化合物(Y1)は、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。この場合、硬化物のガラス転移温度を特に高めることができ、このため、硬化物の耐熱性を特に高めることができる。多官能アクリル化合物(Y1)は、特にペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。アクリル化合物(Y)に対するペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの百分比は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0036】
アクリル化合物(Y)は、一分子中のラジカル重合性官能基が一つの(メタ)アクリロイル基のみである単官能アクリル化合物(Y2)を含有することも好ましい。単官能アクリル化合物(Y2)は、組成物(X)の硬化時の収縮を抑制できる。アクリル化合物(Y)全量に対する単官能アクリル化合物(Y2)の量は、0質量%より多く50質量%以下であることが好ましい。
【0037】
単官能アクリル化合物(Y2)は、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加物、2-フェノキシエチルアクリレートのプロピレンオキサイド付加物、アクリロイルモルホリン、アクリル酸モルホリン-4-イル、ジシクロペンタニルアクリレ-ト、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド及び3-アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0038】
アクリル化合物(Y)は、下記式(100)に示す化合物を含有してもよい。この場合、組成物(X)の反応性を高めることができ、かつ硬化物と無機材料との密着性を向上できる。
【0039】
【0040】
式(100)において、R0はH又はメチル基である。Xは単結合又は二価の炭化水素基である。R1からR11の各々はH、アルキル基又は-R12-OH、R12はアルキレン基でありかつR1からR11のうち少なくとも一つはアルキル基又は-R12-OHである。R1からR11は互いに化学結合していない。
【0041】
ラジカル重合性化合物(A1)は、アクリル化合物(Y)以外のラジカル重合性化合物(Z)を含有してもよい。アクリル化合物(Y)と重合性化合物(Z)との合計量に対するラジカル重合性化合物(Z)の量は、例えば10質量%以下である。
【0042】
光重合性化合物(A)がラジカル重合性化合物(A1)を含有する場合、ラジカル重合性化合物(A1)は、水溶性化合物(C)の少なくとも一部であるラジカル重合性の水溶性化合物(C1)を含有してよい。水溶性化合物(C1)は、例えば、協栄社化学株式会社製のライトエステルシリーズのHO-250(N)、130MA、EG、HOA(N)、ライトアクリレートシリーズの130A、3EG-A、及び三菱ケミカル株式会社製のメタクリル酸等からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0043】
光ラジカル重合開始剤(B1)は、紫外線が照射されるとラジカル種を生じさせる化合物であれば、特に制限されない。光ラジカル重合開始剤(B1)は、例えば芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0044】
ラジカル重合性化合物(A1)に対する光ラジカル重合開始剤(B1)の百分比は、6質量%以上であることが好ましい。この百分比は7質量%以上であればより好ましく、8質量%以上であれば更に好ましい。またこの百分比は例えば30質量%以下であり、20質量%以下であれば好ましく、18質量%以下であれば更に好ましい。
【0045】
光ラジカル重合開始剤(B1)は、この光ラジカル重合開始剤(B1)の一部として増感剤を含有してもよい。増感剤は、例えば9,10-ジブトキシアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、アントラキノン、1,2-ジヒドロキシアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ジエトキシナフタレン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノベンゾフェノン、p-ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、及びp-ジエチルアミノベンズアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。なお、増感剤が含みうる成分は前記には限られない。組成物(X)中の増感剤の含有量は、例えば組成物(X)の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である。
【0046】
組成物(X)は、光ラジカル重合開始剤(B1)に加えて、重合促進剤を含有してもよい。重合促進剤は、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、安息香酸-2-ジメチルアミノエチル、p-ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルといったアミン化合物を含有する。なお、重合促進剤が含有しうる成分は前記には限られない。
【0047】
光重合性化合物(A)がカチオン重合性化合物(A2)を含有する場合、カチオン重合性化合物(A2)は、例えば多官能カチオン重合性化合物(W1)と単官能カチオン重合性化合物(W2)とのうち少なくとも一方を含有する。
【0048】
多官能カチオン重合性化合物(W1)は、シロキサン骨格を有さない多官能カチオン重合性化合物(W11)と、シロキサン骨格を有する多官能カチオン重合性化合物(W12)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。
【0049】
多官能カチオン重合性化合物(W11)は、シロキサン骨格を有さず、一分子あたり二以上のカチオン重合性官能基を有する。多官能カチオン重合性化合物(W11)の一分子あたりのカチオン重合性官能基の数は2~4個であることが好ましく、2~3個であれば更に好ましい。
【0050】
カチオン重合性官能基は、例えば環状エーテル基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。環状エーテル基は、例えばエポキシ基とオキセタン基とのうち少なくとも一方である。
【0051】
多官能カチオン重合性化合物(W11)は、例えば多官能脂環式エポキシ化合物、多官能ヘテロ環式エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、及びアルキレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルからなる群から選択される化合物のうち、少なくとも一種の化合物を含有する。
【0052】
多官能脂環式エポキシ化合物は、例えば下記式(1)に示す化合物と下記式(20)に示す化合物とのうち、いずれか一方又は両方を含有する。
【0053】
【0054】
式(1)において、R1~R18の各々は独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基である。炭化水素基の炭素数は1~20の範囲内であることが好ましい。炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基といった炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、アリル基といった炭素数2~20のアルケニル基;又はエチリデン基、プロピリデン基といった炭素数2~20のアルキリデン基である。炭化水素基は、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい。R1~R18の各々は独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0055】
式(1)において、Xは単結合又は二価の有機基であり、有機基は、例えば-CO-O-CH2-である。
【0056】
式(1)に示す化合物の例は、下記式(1a)に示す化合物及び下記式(1b)に示す化合物を含む。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
式(20)中、R1~R12の各々は独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~20の炭化水素基である。ハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。炭素数1~20の炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基といった炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、アリル基といった炭素数2~20のアルケニル基;又はエチリデン基、プロピリデン基といった炭素数2~20のアルキリデン基である。炭素数1~20の炭化水素基は、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい。
【0061】
R1~R12の各々は独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0062】
式(20)に示す化合物の例は、下記式(20a)に示すテトラヒドロインデンジエポキシドを含む。
【0063】
【0064】
多官能ヘテロ環式エポキシ化合物は、例えば下記式(2)に示すような三官能エポキシ化合物を含有する。
【0065】
【0066】
多官能オキセタン化合物は、例えば下記式(3)に示すような二官能オキセタン化合物を含有する。
【0067】
【0068】
アルキレングリコールジグリシジルエーテルは、例えば下記式(4)~(7)に示す化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
アルキレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルは、例えば下記式(8)に示す化合物を含有する。
【0074】
【0075】
より具体的には、多官能カチオン重合性化合物(W11)は、例えばダイセル製のセロキサイド2021P及びセロキサイド8010、日産化学製のTEPIC-VL、東亞合成製のOXT-221、並びに四日市合成製の1,3-PD-DEP、1,4-BG-DEP、1,6-HD-DEP、NPG-DEP及びブチレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0076】
多官能カチオン重合性化合物(W11)は、多官能脂環式エポキシ化合物を含有することも好ましい。この場合、組成物(X)は特に高いカチオン重合反応性を有することができる。
【0077】
多官能脂環式エポキシ化合物は、特に式(1)に示す化合物及び式(20)に示す化合物のうち、いずれか一方又は両方を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)はより高いカチオン重合反応性を有することができる。
【0078】
多官能脂環式エポキシ化合物が式(1)に示す化合物を含有する場合、式(1)に示す化合物は、式(1a)に示す化合物を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)は、より高いカチオン重合反応性を有するとともに、特に低い粘度を有することができる。
【0079】
また、特に式(20)に示す化合物は、低い粘度を有するため、式(20)に示す化合物を含有する場合、組成物(X)は、良好な紫外線硬化性を有することができるとともに、特に低い粘度を有することができる。さらに、式(20)に示す化合物は、低い粘度を有するわりには、揮発しにくい性質を有する。そのため、組成物(X)が式(20)に示す化合物を含有しても、組成物(X)には、式(20)に示す化合物の揮発による組成の変化が生じにくい。このため、組成物(X)は、式(20)に示す化合物を含有することで、保存安定性を損なうことなく低粘度化されうる。
【0080】
式(20)に示す化合物は、例えばテトラヒドロインデン骨格を有する環状オレフィン化合物を、酸化剤を用いて酸化することで合成できる。
【0081】
式(20)に示す化合物は、2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体を含みうる。式(20)に示す化合物は、4つの立体異性体のいずれを含んでもよい。すなわち、式(20)に示す化合物は、4つの立体異性体からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。式(20)に示す化合物中における、4つの立体異性体のうちのエキソ-エンド体とエンド-エンド体の合計量の百分比は、エポキシ化合物(A1)全体に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であれば更に好ましい。この場合、硬化物の耐熱性を向上できる。なお、式(20)に示す化合物中の特定の立体異性体の百分比は、ガスクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに現れるピーク面積比に基づいて、求めることができる。
【0082】
式(20)に示す化合物中のエキソ-エンド体及びエンド-エンド体の量を少なくするためには、式(20)に示す化合物を精密蒸留する方法、シリカゲルなどを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーを適用する方法といった、適宜の方法を適用できる。
【0083】
組成物(X)が多官能カチオン重合性化合物(W11)を含有する場合、樹脂成分全量に対する多官能カチオン重合性化合物(W11)の百分比は、5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。なお、樹脂成分とは、組成物(X)中のカチオン重合性を有する化合物のことをいい、多官能カチオン重合性化合物(W1)及び単官能カチオン重合性化合物(W2)を含む。多官能カチオン重合性化合物(W11)の百分比が5質量%以上であれば組成物(X)は光カチオン重合反応時に特に優れた反応性を有することができ、またそれによって、硬化物が高い強度(硬度)を有することができる。また、多官能カチオン重合性化合物(W11)の百分比が95質量%以下であれば、組成物(X)が吸湿剤(D)を含有する場合に、組成物(X)中で吸湿剤(D)を特に均一に分散させやすくできる。この多官能カチオン重合性化合物(W11)の百分比は、12質量%以上であればより好ましく、15質量%以上であれば更に好ましく、20質量%以上であれば更に好ましく、25質量%以上であれば特に好ましい。またこの多官能カチオン重合性化合物(W11)の百分比は、85質量%以下であればより好ましく、60質量%以下であれば更に好ましい。例えば多官能カチオン重合性化合物(W11)の百分比が20~60質量%の範囲内であることが好ましい。
【0084】
多官能カチオン重合性化合物(W11)が多官能脂環式エポキシ化合物を含有する場合、多官能脂環式エポキシ化合物は、多官能カチオン重合性化合物(W11)の一部であってもよく、全部であってもよい。多官能カチオン重合性化合物(W11)に対する、多官能脂環式エポキシ化合物の百分比は、15質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この百分比が15質量%以上であると、多官能脂環式エポキシ化合物は組成物(X)の紫外線硬化性の向上に特に寄与できる。
【0085】
多官能カチオン重合性化合物(W12)は、シロキサン骨格と、一分子あたり二以上のカチオン重合性官能基とを有する。多官能カチオン重合性化合物(W12)の一分子あたりのカチオン重合性官能基の数は、2~6個であることが好ましく、2~4個であれば更に好ましい。多官能カチオン重合性化合物(W12)は、組成物(X)のカチオン重合反応性の向上に寄与できるとともに、硬化物及び光学部品の耐熱変色性の向上に寄与できる。多官能カチオン重合性化合物(W12)は硬化物及び光学部品の低弾性率化にも寄与できる。組成物(X)が吸湿剤を含有する場合、多官能カチオン重合性化合物(W12)は組成物(X)中及び硬化物中の吸湿剤の分散性の向上にも寄与できる。
【0086】
多官能カチオン重合性化合物(W12)は、25℃で液体であることが好ましい。特に多官能カチオン重合性化合物(W12)の25℃における粘度は、10~300mPa・sの範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X)の粘度上昇を抑制できる。
【0087】
多官能カチオン重合性化合物(W12)が有するカチオン重合性官能基は、例えばエポキシ基、オキセタン基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
【0088】
多官能カチオン重合性化合物(W12)が有するシロキサン骨格は、直鎖状でも分岐鎖状でも環状でもよい。シロキサン骨格が有するSi原子の数は、2~14の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X)は特に低い粘度を有することができる。このSi原子の数は、2~10の範囲内であればより好ましく、2~7の範囲内であれば更に好ましく、3~6の範囲内であれば特に好ましい。
【0089】
多官能カチオン重合性化合物(W12)は、例えば式(10)に示す化合物と、式(11)に示す化合物とのうち、少なくとも一方を含有する。
【0090】
【0091】
【0092】
式(10)及び式(11)の各々におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、アルキレン基であることが好ましい。Yはシロキサン骨格であり、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、そのSi原子の数は2~14の範囲内の範囲内であることが好ましく、2~10の範囲内であることがより好ましく、2~7の範囲内であれば更に好ましく、3~6の範囲内であれば特に好ましい。nは2以上の整数であり、2~4の範囲内であることが好ましい。
【0093】
より具体的には、例えば多官能カチオン重合性化合物(W12)は、次の式(10a)に示す化合物を含有する。
【0094】
【0095】
式(10a)におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、炭素数1~4のアルキレン基であることが好ましい。式(10a)におけるnは0以上の整数である。nは、0~12の範囲内であることが好ましく、0~8の範囲内であることがより好ましく、0~5の範囲内であれば更に好ましく、1~4の範囲内であれば特に好ましい。
【0096】
式(10a)に示す化合物は、下記式(30)に示す化合物を含有することが好ましい。すなわち、多官能カチオン重合性化合物(W12)は、下記式(30)に示す化合物を含有することが好ましい。
【0097】
より具体的には、多官能カチオン重合性化合物(W12)は、例えば信越化学株式会社製の品番X-40-2669、X-40-2670、X-40-2715、X-40-2732、X-22-169AS、X-22-169B、X-22-2046、X-22-343、X-22-163、及びX-22-163Bからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。
【0098】
多官能カチオン重合性化合物(W12)は脂環式エポキシ構造を有することが好ましく、多官能カチオン重合性化合物(W12)が式(10a)に示す化合物を含有すれば特に好ましい。式(10a)に示す化合物は、組成物(X)のカチオン重合反応性の向上と低粘度化とに特に寄与できるとともに、硬化物及び光学部品の耐熱変色性の向上及び低弾性率化に特に寄与できる。組成物(X)が吸湿剤(D)を含有する場合は組成物(X)中の吸湿剤(D)の分散性向上にも特に寄与できる。
【0099】
組成物(X)が多官能カチオン重合性化合物(W12)を含有する場合、樹脂成分全量に対する多官能カチオン重合性化合物(W12)の百分比は、5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。この場合、特に組成物(X)が吸湿剤(D)を含有すると、組成物(X)中及び硬化物中での吸湿剤(D)の分散性が特に向上し、かつ組成物(X)が特に高い光カチオン重合反応性を有することができる。
【0100】
単官能カチオン重合性化合物(W2)は、カチオン重合性官能基を一分子に対して一つのみ有する。カチオン重合性官能基は、例えばエポキシ基、オキセタン基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
【0101】
単官能カチオン重合性化合物(W2)の25℃における粘度は8mPa・s以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)が溶媒を含有しなくても、単官能カチオン重合性化合物(W2)は組成物(X)の粘度を低減できる。特に単官能カチオン重合性化合物(W2)の25℃における粘度は、0.1~8mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0102】
単官能カチオン重合性化合物(W2)は、例えば下記式(12)~(17)に示す化合物及びリモネンオキシドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
樹脂成分全量に対する単官能カチオン重合性化合物(W2)の百分比は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。単官能カチオン重合性化合物(W2)の百分比が5質量%以上であれば組成物(X)の粘度を特に低減できる。また、単官能カチオン重合性化合物(W2)の百分比が50質量%以下であれば、組成物(X)は光カチオン重合反応時に特に優れた反応性を有することができ、またそれによって、硬化物が高い強度(硬度)を有することができる。この単官能カチオン重合性化合物(W2)の百分比は、10質量%以上であればより好ましく、15質量%以上であれば更に好ましい。また、この単官能カチオン重合性化合物(W2)の百分比は、40質量%以下であればより好ましく、35質量%以下であれば更に好ましく、30質量%以下であれば特に好ましい。単官能カチオン重合性化合物(W2)の百分比が特に35質量%以下であれば、組成物(X)を保管している間の組成物(X)中の成分の揮発量を効果的に低減でき、そのため組成物(X)を長期間保存しても組成物(X)の特性が損なわれにくい。さらに、硬化物にタックが生じることを特に抑制できる。例えば単官能カチオン重合性化合物(W2)の百分比が10~35質量%の範囲内であることが好ましい。
【0110】
また、特に組成物(X)が多官能カチオン重合性化合物(W11)と多官能カチオン重合性化合物(W12)とを含有する場合、樹脂成分全量に対して、多官能カチオン重合性化合物(W11)の百分比は、30質量%以上60質量%以下、多官能カチオン重合性化合物(W12)の百分比は15質量%以上30質量%以下、単官能カチオン重合性化合物(W2)の百分比は15質量%以上40質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の良好な保存安定性と低い粘度と良好なカチオン重合反応性とをバランス良く達成でき、更に硬化物の優れた透明性、優れた吸湿性及び高い屈折率をバランス良く達成できる。
【0111】
カチオン重合性化合物(A2)が、式(3)に示す化合物と式(16)に示す化合物とを含有すれば、両者の比率を調整することで、組成物(X)から光硬化物を作製する場合の硬化反応の進行のしやすさを適度に調整しつつ、組成物(X)の低粘度化と保存安定性の向上とを実現できる。
【0112】
式(16)に示す化合物の量は、組成物(X)が前記の特性を有するように適宜調整される。例えば式(16)に示す化合物の量は、樹脂成分全量に対して10質量%以上40質量以下であることが好ましい。
【0113】
カチオン重合性化合物(A2)は、下記式(30)で示される化合物(f1)(以下、芳香族エポキシ化合物(f1)ともいう)を含有することが好ましい。
【0114】
【0115】
式(30)中、Xはハロゲン、H、炭化水素基及びアルキレングルコール基からなる群から選択される少なくとも一種であり、一分子中にXが複数ある場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。炭化水素基は、例えばアルキル基又はアリール基である。Xが炭化水素基である場合のXの炭素数は例えば1から10までの範囲内である。Rは単結合又は二価の有機基である。Rが二価の有機基である場合、二価の有機基は例えばアルキレン基、オキシアルキレン基、カルボニルオキシアルキレン基(例えば-CO-O-CH2-)、又は-C(Ph)2-O-CH2-基である。YはH又は一価の有機基である。Yが一価の有機基である場合、一価の有機基は例えばアルキル基又はアリール基である。
【0116】
カチオン重合性化合物(A2)が芳香族エポキシ化合物(f1)を含有すると、芳香族エポキシ化合物(f1)は低い粘度を有するため、芳香族エポキシ化合物(f1)は組成物(X)を低粘度化させやすい。また、芳香族エポキシ化合物(f1)は揮発しにくく、そのため組成物(X)を保存していても、組成物(X)には芳香族エポキシ化合物(f1)の揮発による組成の変化が生じにくい。そのため芳香族エポキシ化合物(f1)は組成物(X)の保存安定性を高めやすい。また、芳香族エポキシ化合物(f1)は高い反応性を有するため、硬化物中に未反応の成分が残留しにくく、そのため硬化物からアウトガスを発生させにくい。さらに、芳香族エポキシ化合物(f1)は硬化物のガラス転移温度を高めやすく、そのため硬化物の耐熱性を高めやすい。
【0117】
また、芳香族エポキシ化合物(f1)は、組成物(X)をインクジェット法で吐出する場合に、サテライトと呼ばれる不良な液滴を生じさせにくい。
【0118】
式(30)中のRが単結合又はアルキレン基であることが好ましい。式(30)中のnが2又は3である場合には、式(30)中の複数のRのうち少なくとも一つが単結合又はアルキレン基であることが好ましい。これらの場合、芳香族エポキシ化合物(f1)の反応性が高くなりやすく、そのため組成物(X)に紫外線を照射した場合の組成物(X)の硬化性が高くなりやすい。
【0119】
芳香族エポキシ化合物(f1)は、例えば下記式(301)~(318)にそれぞれ示される化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
【0120】
【0121】
特に芳香族エポキシ化合物(f1)が式(301)~(305)、(312)、(314)及び(318)にそれぞれ示される化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。これらの化合物は、化合物中の少なくとも一つのエポキシ基(オキシラン)とベンゼ環とが単結合又はアルキレン基で結合されていることで、高い反応性を有しやすく、そのため組成物(X)の硬化性を高めやすい。
【0122】
カチオン重合性化合物(A2)全体に対する芳香族エポキシ化合物(f1)の百分比は、5質量%以上であることが好ましい。この場合、芳香族エポキシ化合物(f1)による上記の作用が特に得られやすい。この百分比は、95質量%以下であることも好ましい。この場合、組成物(X)の保管性が良好となりやすい。この百分比は10質量%以上90質量%以下であればより好ましく、20質量%以上85質量%以下であれば更に好ましい。
【0123】
カチオン重合性化合物(A2)が、オキシアルキレン骨格を有する化合物(f2)を含有してもよい。オキシアルキレン骨格とは、一又は複数の直鎖状のオキシアルキレン単位からなる直鎖状の骨格である。
【0124】
カチオン重合性化合物(A2)が化合物(f2)を含有すると、化合物(f2)は低い粘度を有するため、化合物(f2)は組成物(X)を低粘度化させやすい。また、化合物(f2)は揮発しにくく、そのため組成物(X)を保存していても、組成物(X)には芳香族エポキシ化合物(f1)の揮発による組成の変化が生じにくい。そのため化合物(f2)は組成物(X)の保存安定性を高めやすい。
【0125】
また、化合物(f2)は、組成物(X)をインクジェット法で吐出する場合に、サテライトと呼ばれる不良な液滴を生じさせにくい。さらに、化合物(f2)は、インクジェット法で吐出される液滴の速度を速くしてもサテライトを生じにくくできる。そのため、インクジェットの条件にもよるが、例えばサテライトを生じさせることなくインクジェット法による液滴の吐出速度を4m/s又はそれ以上にすることも可能である。液滴の速度を速くできると、液滴の軌跡が外乱の影響を受けにくくなるので、組成物(X)から作製される硬化物の寸法精度を高めることができる。さらに、化合物(f2)は上述のとおり組成物(X)の保存安定性を高めることができるので、組成物(X)を長期間保管しても、サテライトを生じにくいという組成物(X)の特性が維持されやすい。
【0126】
オキシアルキレン骨格は、特に「-C-C-O-」という構造、すなわちオキシメチレン単位を含むことが好ましい。この場合、サテライトが特に生じにくくなり、例えばインクジェット法で組成物(X)を吐出するに当たっての駆動周波数を変動させてもサテライトが生じにくくなる。また、化合物(f2)がより揮発しにくく、かつより低粘度になりやすく、更に組成物(X)の無機材料に対する親和性(濡れ性)が高まりやすい。
【0127】
化合物(f2)におけるオキシアルキレン骨格中のオキシアルキレン単位の数は1以上8以下であることが好ましい。この場合、化合物(f2)がより低粘度になりやすいため、サテライトが特に生じにくくなり、かつ硬化物の架橋密度が高くなりやすいことで硬化物のガラス転移温度が特に高くなりやすい。このオキシアルキレン単位の数は1以上6以下であればより好ましく、1以上4以下であれば更に好ましい。
【0128】
なお、化合物(f2)におけるオキシアルキレン骨格中のオキシアルキレン単位には、水素以外の置換基が結合していてもよい。例えばオキシアルキレン骨格に含まれているオキシメチレン単位が「-CH(CH3)-CH2-O-」という構造を有してもよい。
【0129】
化合物(f2)の百分比はカチオン重合性化合物(A2)に対して10質量%以上であることが好ましい。この場合、インクジェット性が良好となり、基材への濡れ性がよくなる。この百分比が70質量%以下であることも好ましい。この場合、十分にガラス転移温度を高めることができる。この百分比は15質量%以上60質量%以下であればより好ましく、20質量%以上50質量%以下であれば更に好ましい。
【0130】
化合物(f2)は、例えばオキシアルキレン骨格とエポキシ基とを有する化合物(f21)と、オキシアルキレン基とオキセタン基とを有する化合物(f22)とのうち、少なくとも一種の化合物を含有する。
【0131】
化合物(f21)は、例えば上記の式(1b)に示す化合物、式(4)に示す化合物、式(5)に示す化合物、式(6)に示す化合物、式(7)に示す化合物、式(8)に示す化合物、式(13)に示す化合物、式(14)に示す化合物等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、化合物(f21)が含有しうる成分は前記のみには制限されない。
【0132】
化合物(f22)は、例えば上記の式(3)に示す化合物、式(12)に示す化合物、式(16)に示す化合物、及び式(17)に示す化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、化合物(f22)が含有しうる成分は前記のみには制限されない。
【0133】
カチオン重合性化合物(A2)は、環状エーテル化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物は、例えば上述のカチオン重合性化合物(A2)に含まれうる化合物のうちの環状エーテル基を有する化合物のうち、少なくとも一種の化合物を含有する。
【0134】
環状エーテル化合物は、例えばエポキシ化合物とオキセタン化合物とのうち少なくとも一方を含有する。エポキシ化合物は、例えば上述のカチオン重合性化合物(A2)に含まれうる化合物のうちのエポキシ基を有する化合物のうち、少なくとも一種の化合物を含有する。オキセタン化合物は、例えば上述のカチオン重合性化合物(A2)に含まれうる化合物のうちのオキセタン基を有する化合物のうち、少なくとも一種の化合物を含有する。
【0135】
環状エーテル化合物がエポキシ化合物を含有すると、組成物(X)に紫外線が照射され際に速やかに硬化反応が進行しやすくなり、組成物(X)の硬化性が高まりやすい。カチオン重合性化合物(A2)の全体に対するエポキシ化合物の百分比は、20質量%以上であることが好ましい。また、このエポキシ化合物の百分比は、60質量%以下であることが好ましい。
【0136】
また、環状エーテル化合物がオキセタン化合物を含有すると、組成物(X)に紫外線を照射した場合の、反応の急激な進行を抑制して硬化物に黄変及び白濁を生じにくくでき、かつ反応を十分に進行させて硬化物からアウトガスを発生しにくくできる。カチオン重合性化合物(A2)全体に対するオキセタン化合物の百分比は、40質量%以上であることが好ましい。また、この百分比は、80質量%以下であることが好ましい。
【0137】
組成物(X)が環状エーテル化合物を含有する場合、環状エーテル化合物は、水溶性化合物(C)の少なくとも一部である環状エーテル基を有する水溶性化合物(C2)を含有してよい。環状エーテル化合物は、本来的には組成物(X)と無機質材との親和性を損ないやすく、そのため無機質材の上に形成された塗膜及び硬化物の平坦性及び平滑性を損ないやすい。しかし、環状エーテル化合物が水溶性化合物(C2)を含有すると、組成物(X)が環状エーテル化合物を含有していても、塗膜及び硬化物の表面が平坦かつ平滑になりやすい。水溶性化合物(C2)は、例えば水溶性エポキシ化合物(C21)と水溶性オキセタン化合物(C22)とのうち、少なくとも一方を含有する。
【0138】
水溶性エポキシ化合物(C21)は、例えばナガセケムテックス株式会社製のEX-145、EX-171、EX-810、EX-920、阪本薬品工業株式会社製のSR-PG、SR-EGM、SR-2EG、四日市合成株式会社製のA-EP、DY-BP、エポゴーセーBD(D)、共栄社化学株式会社製のエポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、及びエポライト400Eよりなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0139】
水溶性オキセタン化合物(C22)は、例えば東亜合成株式会社製のOXT-101、宇部興産株式会社製のEXO、HBOX、及び四日市合成株式会社製のAL-OXよりなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0140】
組成物(X)がカチオン重合性化合物(A2)を含有する場合、組成物(X)は、増感剤を更に含有することが好ましい。この場合、組成物(X)は特に高いカチオン重合反応性を有することができる。増感剤は、例えば9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ジエトキシアントラセンのうちいずれか一方又は両方を含有する。カチオン重合性化合物(A2)に対する増感剤の百分比は、0質量%より多く、1質量%以下の範囲内であることが好ましい。この場合、増感剤が硬化物の透明性を阻害しにくく、そのため硬化物は良好な透明性を有することができる。
【0141】
組成物(X)がカチオン重合性化合物(A2)を含有する場合、光重合開始剤(B)は、光カチオン重合開始剤(B2)を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤(B2)は、光照射を受けてプロトン酸又はルイス酸を発生する触媒であれば、特に制限されない。光カチオン重合開始剤(B2)は、イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒と、非イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒とのうち、少なくとも一方を含有できる。
【0142】
イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒は、オニウム塩類と有機金属錯体とのうち少なくとも一方を含有できる。オニウム塩類の例は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、及び芳香族スルホニウム塩を含む。有機金属錯体の例は、鉄-アレン錯体、チタノセン錯体、及びアリールシラノール-アルミニウム錯体を含む。イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒は、これらの成分のうち少なくとも一種の成分を含有できる。
【0143】
非イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒は、例えばニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、及びN-ヒドロキシイミドホスホナートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。なお、非イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒が含有しうる成分は前記には限られない。
【0144】
光カチオン重合開始剤(B2)が含有できる化合物のより具体的な例は、みどり化学製のDPIシリーズ(105,106、109、201など)、BI-105、MPIシリーズ(103、105、106、109など)、BBIシリーズ(101、102、103、105、106、109、110、200、210、300、301など)、TSPシリーズ(102、103、105、106、109、200、300、1000など)、HDS-109、MDSシリーズ(103、105、109、203、205、209など)、BDS-109、MNPS-109、DTSシリーズ(102、103、105、200など)、NDSシリーズ(103、105、155、165など)、DAMシリーズ(101、102、103、105、201など)、SIシリーズ(105、106など)、PI-106、NDIシリーズ(105、106、109、1001、1004など)、PAIシリーズ(01、101、106、1001、1002、1003、1004など)、MBZ-101、PYR-100、NBシリーズ(101、201など)、NAIシリーズ(100、1002,1003、1004、101、105、106、109など)、TAZシリーズ(100、101、102、103、104、107、10
8、109、110、113、114、118、122、123、203、204など)、NBC-101、ANC-101、TPS-Acetate、DTS-Acetate、Di-Boc Bisphinol A、tert-Butyl lithocholate、tert-Butyl deoxycholate、tert-Butyl cholate、BX、BC-2、MPI-103、BDS-105、TPS-103、NAT-103、BMS-105、及びTMS-105;
米国ユニオンカーバイド社製のサイラキュアUVI-6970、サイラキュアUVI-6974、サイラキュアUVI-6990、及びサイラキュアUVI-950;
BASF社製のイルガキュア250、イルガキュア261及びイルガキュア264;
チバガイギー社製のCG-24-61;
株式会社ADEKA製のアデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-151、アデカオプトマーSP-170及びアデカオプトマーSP-171;
株式会社ダイセル製のDAICAT II;
ダイセル・サイテック株式会社製のUVAC1590及びUVAC1591;
日本曹達株式会社製のCI-2064、CI-2639、CI-2624、CI-2481、CI-2734、CI-2855、CI-2823、CI-2758、及びCIT-1682;
ローディア社製のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トルイルクミルヨードニウム塩であるPI-2074;
3M社製のFFC509;
米国Sartomer社製のCD-1010、CD-1011及びCD-1012;
サンアプロ株式会社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-110P、CPI-110A及びCPI-210S;並びに
ダウ・ケミカル社製のUVI-6992及びUVI-6976を、含む。光カチオン重合開始剤(B2)は、これらの化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0145】
カチオン重合性化合物(A2)に対する光カチオン重合開始剤(B2)の百分比は、1質量%以上4質量%以下であることが好ましい。この百分比が1質量%以上であることで、組成物(X)は特に良好なカチオン重合反応性を有することができる。また、この百分比が4質量%以下であることで、組成物(X)は良好な保存安定性を有することができ、また過剰な光カチオン重合開始剤(B2)を含有しないことで製造コスト削減が可能である。
【0146】
組成物(X)は吸湿剤(D)を更に含有してもよい。組成物(X)が吸湿剤(D)を含有すると、組成物(X)の硬化物は吸湿性を有することができる。このため、硬化物を含む封止材5は、発光装置1における発光素子4へ水分が更に侵入しにくくできる。吸湿剤(D)の平均粒径は200nm以下であることが好ましい。この場合、硬化物は高い透明性を有することができる。
【0147】
吸湿剤(D)は、吸湿性を有する無機粒子であることが好ましく、例えばゼオライト粒子、シリカゲル粒子、塩化カルシウム粒子、及び酸化チタンナノチューブ粒子からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。吸湿剤(D)がゼオライト粒子を含有することが特に好ましい。
【0148】
平均粒径200nm以下のゼオライト粒子は、例えば一般的な工業用ゼオライトを粉砕することで製造できる。ゼオライト粒子を製造するに当たって、ゼオライトを粉砕してから水熱合成などによって結晶化させてもよく、この場合、ゼオライト粒子は特に高い吸湿性を有することができる。このようなゼオライト粒子の製造方法の例は、特開2016-69266号公報、特開2013-049602号公報などに開示されている。
【0149】
ゼオライト粒子は、ナトリウムイオンを含有することが好ましい。このため、ゼオライト粒子は、A型ゼオライト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種から作製されることが好ましい。ゼオライト粒子が、A型ゼオライトのうち4A型ゼオライトから作製されることが特に好ましい。これらの場合、ゼオライト粒子は、水分の吸着に好適な結晶構造を有する。
【0150】
ゼオライト粒子のpHは7以上10以下であることが好ましい。ゼオライト粒子のpHが7以上であると、ゼオライト粒子の結晶が破壊されにくくなり、そのためゼオライト粒子を含有する組成物(X)の硬化物が特に高い吸湿性を有することができる。また、ゼオライト粒子のpHが10以下であると、組成物(X)を硬化させる場合にゼオライト粒子が硬化を阻害しにくい。なお、ゼオライト粒子のpHは、イオン交換水99.95gにゼオライト粒子0.05gを入れて得られた分散液を、90℃で24時間加熱してから、分散液の上澄みのpHをpH測定器で測定することで得られる値である。pH測定器としては、例えば堀場製作所製のコンパクトpHメータ<LAQUAtwin>B-711を用いることができる。
【0151】
吸湿剤(D)の平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましい。この平均粒径が200nm以下であれば、硬化物は特に高い透明性を有することができる。また、この平均粒径が10nm以上であれば、吸湿剤(D)の良好な吸湿性を維持できる。なお、この平均粒径は、動的光散乱法による測定結果から算出されるメディアン径、すなわち累積50%径(D50)である。なお、測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社のナノトラックNanotrac Waveシリーズを用いることができる。
【0152】
吸湿剤(D)の平均粒径は、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であれば更に好ましく、70nm以下であれば特に好ましい。また、吸湿剤(D)の平均粒径が20nm以上であることが好ましく、50nm以上であればより好ましい。この場合、硬化物は、特に良好な透明性と吸湿性とを有することができる。
【0153】
吸湿剤(D)の累積90%径(D90)が100nm以下であることも好ましい。この場合、硬化物は特に高い透明性を有することができる。
【0154】
組成物(X)が吸湿剤(D)を含有する場合、組成物(X)の全量に対する吸湿剤(D)の百分比は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。吸湿剤(D)の百分比が1質量%以上であれば硬化物は特に高い吸湿性を有することができる。また、吸湿剤(D)の百分比が20質量%以下であれば組成物(X)の粘度を特に低減でき、組成物(X)がインクジェット法で塗布可能な程度の十分な低粘度を有することもできる。吸湿剤(D)の百分比は、3質量%以上であれば更に好ましく、5質量%以上であれば特に好ましい。また、吸湿剤(D)の百分比は、15質量%以下であればより好ましく、13質量%以下であれば特に好ましい。
【0155】
組成物(X)は、吸湿剤(D)以外の無機充填材を更に含有してもよい。例えば組成物(X)は、ナノサイズの高屈折率粒子を含有してもよい。高屈折率粒子の例はジルコニア粒子を含む。組成物(X)が高屈折率粒子を含有すると、硬化物の良好な透明性を維持しながら、硬化物を高屈折率化することができる。そのため、硬化物を光学部品に適用した場合に、光学部品を透過して外部へ出射する光の取り出し効率を向上することができる。高屈折率粒子の平均粒径は、5~30nmの範囲内であることが好ましく、10~20nmの範囲内であれば更に好ましい。
【0156】
組成物(X)中の高屈折率粒子の百分比は、硬化物が所望の屈折率を有するように適宜設計される。特に高屈折率粒子は、硬化物の屈折率が1.45以上、1.55未満の範囲内になるように組成物(X)に含有されることが好ましい。この場合、発光装置1の光の取り出し効率が特に向上する。
【0157】
組成物(X)が吸湿剤(D)を含有する場合、組成物(X)は更に分散剤(E)を含有することが好ましい。この場合、分散剤(E)は組成物(X)中での吸湿剤(D)の分散性を向上できる。このため、組成物(X)には、吸湿剤(D)による粘度の増大と保存安定性の低下とが生じにくい。
【0158】
なお、分散剤(E)は、粒子に吸着しうる界面活性剤である。分散剤(E)は、粒子に吸着されうる吸着基(一般にアンカーともいう)と、吸着基が粒子に吸着することでこの粒子に付着する分子骨格(一般にテールともいう)とを、有する。分散剤(E)は、例えばテールがアクリル系の分子鎖であるアクリル系分散剤と、テールがウレタン系の分子鎖であるウレタン系分散剤と、テールがポリエステル系の分子鎖であるポリエステル系分散剤とからなら群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。吸着基は、例えば塩基性の極性官能基と酸性の極性官能基とのうち少なくとも一方を含む。塩基性の極性官能基は、例えばアミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、及び含窒素複素環基からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。酸性の極性官能基は、例えばカルボキシル基とリン酸基とからなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。分散剤(E)は、例えば日本ルーブルリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ及び味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0159】
組成物(X)が吸湿剤(D)を含有する場合、吸湿剤(D)100質量部に対する分散剤(E)の量は、5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。分散剤(E)の量が5質量部以上であることで分散剤(E)の機能が効果的に発現でき、また60質量部以下であることで硬化物中の分散剤(E)の遊離の分子が硬化物と無機材料製の部材との間の密着性を阻害することを抑制できる。また、分散剤(E)の量は15質量部以上であればより好ましく、50質量部以下であることもより好ましく、40質量部以下であればより更に好ましく、30質量部以下であれば特に好ましい。
【0160】
発光装置1の構造について説明する。発光装置1は、光源と、光源が発する光を透過させる光学部品とを備える。例えば、発光装置1は、発光素子4と、発光素子4を覆う封止材5及びパッシベーション層6とを備える。この場合、発光素子4が光源であり、封止材5が光学部品であり、パッシベーション層6が窒化ケイ素膜などの無機質層である。封止材5とパッシベーション層6とは重なっている。
【0161】
発光素子4は、例えば発光ダイオードを含む。発光ダイオードは、例えば有機EL素子(有機発光ダイオード)とマイクロ発光ダイオードとのうち少なくとも一方を含む。発光素子4が有機発光ダイオードを含む場合は、発光素子4を備える発光装置1は例えば有機ELディスプレイである。発光素子4がマイクロ発光ダイオードを含む場合は、発光素子4を備える発光装置1は例えばマイクロLEDディスプレイである。なお、ELとはエレクトロルミネッセンスの略である。
【0162】
発光装置1の構造の例を、
図1を参照して説明する。この発光装置1は、トップエミッションタイプである。発光装置1は、支持基板2、支持基板2と間隔をあけて対向する透明基板3、支持基板2の透明基板3と対向する面の上にある発光素子4、並びに発光素子4を覆うパッシベーション層6及び封止材5を備える。
【0163】
支持基板2は、例えば樹脂材料から作製されるが、これに限定されない。透明基板3は透光性を有する材料から作製される。透明基板3は、例えば、ガラス製基板又は透明樹脂製基板である。発光素子4は、例えば一対の電極41、43と、電極41、43間にある有機発光層42とを備える。有機発光層42は、例えば正孔注入層421、正孔輸送層422、有機発光層423及び電子輸送層424を備え、これらの層は前記の順番に積層している。
【0164】
発光装置1は複数の発光素子4を備え、かつ複数の発光素子4が、支持基板2上でアレイ9(以下素子アレイ9という)を構成している。素子アレイ9は、隔壁7も備える。隔壁7は、支持基板2上にあり、隣合う二つの発光素子4の間を仕切っている。隔壁7は、例えば感光性の樹脂材料をフォトリソグラフィ法で成形することで作製される。素子アレイ9は、隣合う発光素子4の電極43及び電子輸送層424同士を電気的に接続する接続配線8も備える。接続配線8は、隔壁7上に設けられている。
【0165】
パッシベーション層6は窒化ケイ素膜又は酸化ケイ素膜であることが好ましく、窒化ケイ素膜であることが特に好ましい。
図1に示す例では、パッシベーション層6は、第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62とを含む。第一パッシベーション層61は素子アレイ9に直接接触した状態で、素子アレイ9を覆うことで、発光素子4を覆っている。第二パッシベーション層62は、第一パッシベーション層61に対して、素子アレイ9とは反対側の位置に配置され、かつ第二パッシベーション層62と第一パッシベーション層61との間には間隔があけられている。第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62との間に、封止材5が充填されている。すなわち、発光素子4と、発光素子4を覆う封止材5との間に、第一パッシベーション層61が介在している。
【0166】
さらに、第二パッシベーション層62と透明基板3との間に、第二封止材52が充填されている。第二封止材52は、例えば透明な樹脂材料から作製される。第二封止材52の材質は特に制限されない。第二封止材52の材質は、封止材5と同じであっても、異なっていてもよい。
【0167】
組成物(X)を用いる封止材5の作製方法及び発光装置1の製造方法について説明する。
【0168】
本実施形態では、組成物(X)をインクジェット法で成形してから、組成物(X)に紫外線を照射して硬化することで、封止材5を作製することが好ましい。本実施形態では、インクジェット法で組成物(X)を塗布して成形することが可能である。本実施形態では、上述のとおり、組成物(X)の酸素の百分比が75質量%以下であるため、組成物(X)をインクジェット法で成形する場合の不良が生じ難い。
【0169】
より具体的には、例えばまず、支持基板2を準備する。この支持基板2の一面上に隔壁7を、例えば感光性の樹脂材料を用いてフォトリソグラフィ法で作製する。続いて、支持基板2の一面上に複数の発光素子4を設ける。発光素子4は、蒸着法、塗布法といった適宜の方法で作製できる。特に発光素子4を、インクジェット法といった塗布法で作製することが好ましい。これにより、支持基板2に素子アレイ9を作製する。隔壁7の頂部は発光素子4の表面よりも突出しており、発光素子4の表面から隔壁7の頂部までの寸法は、例えば0.1μm以上1.5μm以下である。また、隣り合う隔壁7の間隔は例えば30μm以上150μm以下である。
【0170】
次に、素子アレイ9の上に第一パッシベーション層61を設ける。第一パッシベーション層61は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。
【0171】
第一パッシベーション層61は、複数の発光素子4と隔壁7とを覆うように形成される。上記のように隔壁7の頂部は発光素子4の表面よりも突出しているため、第一パッシベーション層61の表面は隔壁7の形状に沿った凹凸を有する。
【0172】
次に、第一パッシベーション層61の上に組成物(X)を、例えばインクジェット法で成形して、塗膜を作製する。発光素子4の形成と組成物(X)の塗布のいずれにもインクジェット法を適用すれば、発光装置1の製造効率を特に向上できる。
【0173】
上述のとおり、本実施形態では、組成物(X)が10質量%以上の水溶性化合物(C)を含有し、かつ組成物(X)の粘度が30mPa・s以下であるため、窒化ケイ素膜等である第一パッシベーション層61の上に組成物(X)の塗膜が形成され、かつ第一パッシベーション層61の表面が凹凸を有しても、塗膜の表面は平坦かつ平滑になりやすい。
【0174】
組成物(X)の塗膜に紫外線を照射することで、塗膜を硬化させる。これにより、組成物(X)の硬化膜である封止材5を作製する。この封止材5の表面は平坦かつ平滑になりやすい。
【0175】
次に、封止材5の上に第二パッシベーション層62を設ける。第二パッシベーション層62は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。
【0176】
次に、支持基板2の一面上に、第二パッシベーション層62を覆うように、紫外線硬化性の樹脂材料を設けてから、この樹脂材料に透明基板3を重ねる。透明基板3は、例えばガラス製基板又は透明樹脂製基板である。
【0177】
次に外部から透明基板3へ向けて紫外線を照射する。紫外線は透明基板3を透過して紫外線硬化性の樹脂材料へ到達する。これにより、紫外線硬化性の樹脂材料が硬化し、第二封止材52が作製される。
【0178】
封止材5の厚みは、例えば50μm以下である。この場合、封止材5を薄型化することで、発光装置1を薄型化することができ、フレキシブル性を有する発光装置1を得ることも可能となる。また、本実施形態では、封止材5の表面は平坦かつ平滑になりやすいため、封止材5の厚みが15μm以下であっても、平坦かつ平滑な表面を有する封止材5が得られやすい。封止材の厚みは10μm以下であればより好ましく、5μm以下であれば更に好ましい。また、封止材5によって発光素子4への水分を効果的に抑制するためには、封止材5の厚みは1μm以上であることが好ましく、2μm以上であればより好ましい。
【0179】
封止材5に重なっているパッシベーション層6の厚みは、例えば0.1μm以上2μm以下である。上記のようにパッシベーション層6が第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62とを含む場合、第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62との各々の厚みが0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。
【0180】
なお、本実施形態に係る組成物(X)の用途は、発光素子4のための封止材5の作製に限られない。組成物(X)は、光源が発する光を透過させる種々の光学部品を作製するために用いることができる。例えば、光学部品がカラーレジストであってもよい。すなわち、例えば組成物(X)に蛍光体を含有させ、この組成物(X)からカラーフィルタにおけるカラーレジストを、無機質材の上に作製してもよい。このカラーフィルタを、例えば発光装置である有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイといった表示装置に設けることができる。
【実施例】
【0181】
1.組成物の調製
下記表に示す成分を混合することで、実施例及び比較例の組成物を調製した。
【0182】
なお、表中に示される成分の詳細は次のとおりである。また、下記の各成分の粘度はレオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用し、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定された値である。
-エポキシ化合物1:非水溶性、化合物名テトラヒドロインデンジエポキシド、ENEOS株式会社製、品名THI-DE、粘度20mPa・s。
-エポキシ化合物2:水溶性、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、四日市合成株式会社製、品名エポゴーセーBD(D)、粘度8.4mPa・s。
-エポキシ化合物3:水溶性、エチレングリコールジグリシジルエーテル、共栄社化学株式会社製、品名エポライト400E、粘度85mPa・s。
-オキセタン化合物1:非水溶性、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン(式(3)に示す化合物)、東亞合成社製、品番OXT-221、粘度10mPa・s。
-オキセタン化合物2:水溶性、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)、東亞合成社製、品番OXT-101、粘度19.5mPa・s。
-オキセタン化合物3:水溶性、(3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチロキシメチル)オキセタン、宇部興産株式会社製、品番ETERNACOLL(登録商標)HBOX、粘度29mPa・s。
-光重合開始剤:トリアリールスルホニウム塩系光酸発生剤、サンアプロ株式会社、品番CPI-210S。
-増感剤:川崎化成工業株式会社製、品名アントラキュアー(登録商標)UVS1331。
-レベリング剤:フェニルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、品名KBM-103。
【0183】
2.評価試験
実施例及び比較例について、次の評価試験を実施した。その結果を表に示す。
【0184】
(1)平坦性・平滑性(ウロコムラ)
感光性ポリイミド樹脂(東レ製、品名Photoneece DL-1000)をガラス基板上に塗布してからホットプレートを用いて120℃で3分間加熱することで、プリベーク膜を作製した。プリベーク膜の厚みを日立ハイテクノロジーの分光光度計(U-4100)で測定したところ、2μmであった。このプリベーク膜を、フォトマクスを介して露光してから、現像液(水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%溶液)に60秒間さらすことで現像し、更にクリーンオーブンで250℃60分加熱した。これにより、ガラス基板上に、格子状に配置された、高さ0.5μmの隔壁(ブラックマトリクス)を作製した。隔壁に囲まれた開口部の平面視寸法は70μm×250μmである。
【0185】
ガラス基板の隔壁を形成した面の全面に、厚み500nmの窒化ケイ素膜を隔壁を覆うように形成した。
【0186】
組成物をインクジェットプリンター(富士フイルム社製、マテリアルプリンタMP2831)のカートリッジに入れ、インクジェットプリンターにおけるノズルからカートリッジ内の組成物を吐出しうることを確認してから、ノズルから組成物の液滴を600dpiの条件で吐出させて、最大厚み5μmの塗膜を作製した。
【0187】
塗膜を作製してから5分経過時に、乾燥大気中でシーシーエス株式会社製のLED-UV照射器を用いて、ピーク波長395nm、出力100mW/cm2、積算光量1500mJ/cm2の条件で光を照射することで塗膜を光硬化させ、封止材を作製した。
【0188】
塗膜を作製してから5分経過時の光を照射する直前に塗膜を観察し、塗膜の表面が平坦である場合を「A」と評価した。
【0189】
「A」と評価されない場合には、上記において、塗膜を作製してから光を照射せずに20分間放置してから、塗膜を観察した。その結果、塗膜の表面が平坦である場合は「B」と評価し、塗膜の表面がうねっている場合は「C」と評価した。
【0190】
(2)粘度
組成物の粘度を、レオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用して、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定した。
【0191】
(3)透過率
組成物を塗布して厚み10μmの塗膜を作製し、この塗膜に、ウシオ株式会社製のLED-UV照射器(型番 E075IIHD、ピーク波長395nm)を用いて、大気下で、紫外線を3W/cm2の照射強度で5.3秒間照射し、続いて100℃で5分間加熱することで、フィルムを作製した。このフィルムの、JIS K7361-1による全光線透過率を測定した。
【0192】
(4)インクジェット性
組成物をインクジェットプリンター(富士フイルム製、形式DMP2831)のカートリッジに入れ、温度30℃、周波数1kHz、の条件でインクジェットプリンターのノズルから組成物の液滴を吐出した。この液滴をハイスピードカメラで観察し、ミストとサテライトのいずれも認められなかった場合は「A」、ミストとサテライトとのうち少なくとも一方が認められる場合を「B」と、評価した。
【0193】
(5)ガラス転移温度
組成物を塗布して塗膜を作製し、この塗膜を、大気雰囲気下、ウシオ電機製の型番Unijet E075IIHD(ピーク波長395nm)を用いて、紫外線を照射強度5W/cm2、かつ積算光量5000mJ/cm2の条件で照射することで塗膜を光硬化させ、厚み200μmのフィルムを作製した。このフィルムから切り出したサンプルのガラス転移温度を、粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、型番DMA7100)を用いて測定した。
【0194】
(6)アウトガス評価
組成物の硬化物を加熱した場合のアウトガスをヘッドスペース法でサンプリングしてガスクロマトグラフにより測定した。詳しくは、まず容積22mLのヘッドスペース用バイアルに組成物を100mg入れた。続いて、組成物に、大気雰囲気下、ウシオ電機製の型番Unijet E075IIHD(ピーク波長395nm)を用いて、紫外線を照射強度5W/cm2、かつ積算光量1500mJ/cm2の条件で照射することで組成物を硬化させた後、バイアルを封止した。続いて組成物を100℃で30分間加熱してから、バイアル中の気相部分をガスクロマトグラフに導入して分析した。その結果、得られたガスクロマトグラムのピーク面積に基づいて、組成物から発生したアウトガスの濃度を特定した。アウトガスの濃度とは、バイアルの容積(22mL)に対する、バイアルの気相中のアウトガスの体積分率である。
【0195】
なお、アウトガスの濃度は、トルエンを基準物質として特定した。具体的には、バイアル中でトルエンを揮発させることで、トルエン濃度が1000ppmと100ppmの二つの基準サンプルを用意した。各基準サンプルをガスクロマトグラフに導入して分析した。これにより得られた二つのクロマトグラムのピーク面積から、ピーク面積と濃度との関係を規定し、この結果に基づいて、上記のアウトガスの濃度を特定した。
【0196】
その結果、アウトガスの濃度(体積分率)が50ppm以下であった場合を「A」、50ppmを超え100ppm以下であった場合を「B」、100ppmを超え200ppm以下であった場合を「C」、200ppmを超える場合を「D」と、評価した。
【0197】