(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】物理量計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/024 20060101AFI20241206BHJP
G01F 1/66 20220101ALI20241206BHJP
【FI】
G01N29/024
G01F1/66 101
(21)【出願番号】P 2020214487
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】名和 基之
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕治
(72)【発明者】
【氏名】松田 正誉
(72)【発明者】
【氏名】三好 麻子
(72)【発明者】
【氏名】高倉 裕也
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-189518(JP,A)
【文献】特開2015-224870(JP,A)
【文献】特開昭50-109760(JP,A)
【文献】特開昭57-066313(JP,A)
【文献】特開2014-071109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0238364(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01F 1/00 - G01F 1/90
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01N 23/00 - G01N 23/2276
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測流体が流れる矩形断面の主流路と、
前記主流路の一部により形成される助走部と、
前記助走部より下流において前記矩形断面の前記主流路の長辺を外方向に後退させて形成した第1の後退壁と、
前記第1の後退壁の上流側に設けた上流開口部と、
前記第1の後退壁の下流側に設けた下流開口部と、
前記第1の後退壁の外方向に設けられ前記上流開口部と前記下流開口部とを接続する副流路と、
前記副流路に配置した一対の超音波送受波器と、
前記被計測流体の温度を検知する温度センサと、
前記一対の前記超音波送受波器からの信号と前記温度センサからの信号を受けて流体の成分濃度を判別する信号処理部と、を備え、
前記第1の後退壁の後退長さは、前記主流路を流れる流体のコアンダ効果により形成される低圧領域が、前記下流開口部からの流れを誘引するように構成し、
前記副流路の高さは、前記主流路の高さよりも小さくし
、
前記被計測流体が流れる方向と前記高さの方向の双方に直交する方向に沿った、前記副流路の幅は、前記主流路の幅よりも小さくした物理量計測装置。
【請求項2】
被計測流体が流れる矩形断面の主流路と、
前記主流路の一部により形成される助走部と、
前記助走部より下流において前記矩形断面の前記主流路の長辺を外方向に後退させて形成した第1の後退壁と、
前記第1の後退壁の上流側に設けた上流開口部と、
前記第1の後退壁の下流側に設けた下流開口部と、
前記第1の後退壁の外方向に設けられ前記上流開口部と前記下流開口部とを接続する副流路と、
前記副流路に配置した一対の超音波送受波器と、
前記被計測流体の温度を検知する温度センサと、
前記一対の前記超音波送受波器からの信号と前記温度センサからの信号を受けて流体の
成分濃度を判別する信号処理部と、を備え、
前記第1の後退壁の後退長さは、前記主流路を流れる流体のコアンダ効果により形成される低圧領域が、前記下流開口部からの流れを誘引するように構成し、
前記第1の後退壁に対向する長辺を前記主流路の外方向に後退させて第2の後退壁を形成し、前記第1の後退壁の後退長さは前記第2の後退壁の後退長さよりも小さくした物理量計測装置。
【請求項3】
被計測流体が流れる矩形断面の主流路と、
前記主流路の一部により形成される助走部と、
前記助走部より下流において前記矩形断面の前記主流路の長辺を外方向に後退させて形成した第1の後退壁と、
前記第1の後退壁の上流側に設けた上流開口部と、
前記第1の後退壁の下流側に設けた下流開口部と、
前記第1の後退壁の外方向に設けられ前記上流開口部と前記下流開口部とを接続する副流路と、
前記副流路に配置した一対の超音波送受波器と、
前記被計測流体の温度を検知する温度センサと、
前記一対の前記超音波送受波器からの信号と前記温度センサからの信号を受けて流体の成分濃度を判別する信号処理部と、を備え、
前記第1の後退壁の後退長さは、前記主流路を流れる流体のコアンダ効果により形成される低圧領域が、前記下流開口部からの流れを誘引するように構成し、
前記第1の後退壁に対向する長辺を前記主流路の外方向に後退させて第2の後退壁を形成し、前記第2の後退壁の上流側には、前記助走部に設けた助走開口部と前記第2の後退壁の上流端に設けた開口部とを接続するバイアス流路を備えた物理量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動する使用流体の一部をサンプリングして、流体に含まれる成分の濃度等の特性を計測するための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流路を流れる流体の流れの乱れの影響を受けることなく、流体に含まれる成分の濃度計測を行うことが必要とされる用途がある。
【0003】
従来、流体の成分を測定する計測装置として、超音波流量計の流量計測部を流れる流体をサンプリングする成分計測部を流量計測部に併設したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6は、特許文献1に記載された超音波流量計の一部分の断面図を示したものである。
【0005】
この流量計では、計測流路101は仕切板102で多層に分割して多層流路103を形成している。この多層流路103部に流体の成分を計測する副流路104を併設している。そして、多層流路103部の入口側に計測流路101へ突出部105を配置して流路断面を部分的に絞り、エジェクタ効果により多層流路103aの上流側の開口部106から流体を計測流路101に引き込むことで、ガスメータ内の流体を図示していない開口部から副流路104に流入させている。そして、この副流路104において、赤外線により主流中のガス成分を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、流体の成分を計測する副流路に主流路の流体を誘引するエジェクタ効果を発揮させるためには、流路断面を部分的に絞らねばならず、圧力損失が発生する。しかし、この圧力損失を小さくすると副流路に流入させる十分な吸引力が得られないという課題がある。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、流体に含まれる成分の濃度等の特性を計測する副流路に、安定した流れを供給し、主流路での圧力損失が少ない構成の計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の物理量計測装置は、被計測流体が流れる矩形断面の主流路の長辺を外方向に後退させて形成した第1の後退壁と、この第1の後退壁の上流側に設けた上流開口部と、第1の後退壁の下流側に設けた下流開口部と、第1の後退壁の外方向に設けた上流開口部と下流開口部とを接続する副流路を備え、第1の後退壁の後退長さは、主流路を流れる流体のコアンダ効果により形成される低圧領域が、下流開口部からの流れを誘引するように構成し、副流路の高さは、主流路の高さよりも小さくし、前記被計測流体が流れる方向と前記高さの方向の双方に直交する方向に沿った、前記副流路の幅は、前記主流路の幅よりも小さくすることで、副流路に安定した流れを供給し副流路での計測精度を向上できる。また主流路での圧力損失を低減でき、さらに主流路での流れの乱れを低減できる。
【0010】
また、第1の後退壁に対向する長辺を主流路の外方向に後退させて第2の後退壁とし、第1の後退壁の後退長さは第2の後退壁の後退長さよりも小さくした構成とすることで、助走部出口の両側の壁を共に後退させることにより流れの偏向が生じ易い状態とし、後退距離が小さい側へのコアンダ効果をより確実に発生させることができる。
【0011】
また、第1の後退壁に対向する長辺を主流路の外方向に後退させて第2の後退壁とし、第2の後退壁の上流側には、助走部に設けた助走開口部と第2の後退壁の上流端に設けた開口部とを接続するバイアス流路を備えた構成とすることで、コアンダ効果による自由噴流の第1の後退壁への流れの偏向に加えて、バイアス流路の流れにより自由噴流の第1の後退壁への付着をより強固なものとし、副流路における流れの生成をさらに確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の物理量計測装置は、矩形断面の主流路の長辺の一部を外方向に後退させて形成した第1の後退壁を備え、この第1の後退壁の後退長さは、主流路を流れる流体のコアンダ効果により形成される低圧領域が下流開口からの流れを誘引するように構成することで、副流路に安定した流れを供給し副流路での計測精度を向上でき、また主流路での圧力損失の低減でき、主流路での流れの乱れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1における物理量計測装置の構成断面図
【
図2】(a)本発明の実施の形態1における物理量計測装置の平面図、(b)
図1のA矢視図
【
図3】本発明の実施の形態2における物理量計測装置の構成断面図
【
図4】本発明の実施の形態2における
図3のA矢視図
【
図5】本発明の実施の形態3における物理量計測装置の構成断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、被計測流体が流れる矩形断面の主流路と、前記主流路の一部により形成される助走部と、前記助走部より下流において前記矩形断面の主流路の長辺を外方向に後退させて形成した第1の後退壁と、前記第1の後退壁の上流側に設けた上流開口部と、前記第1の後退壁の下流側に設けた下流開口部と、前記第1の後退壁の外方向に設けられ前記上流開口部と前記下流開口部とを接続する副流路と、前記副流路に配置した一対の超音波送受波器と、前記被計測流体の温度を検知する温度センサと、前記一対の前記超音波送受波器からの信号と前記温度センサからの信号を受けて流体の成分濃度を判別する信号処理部を備え、前記第1の後退壁の後退長さは、前記主流路を流れる流体のコアンダ効果により形成される低圧領域が、前記下流開口からの流れを誘引するように構成することで、副流路に安定した流れを供給し副流路での計測精度を向上でき、主流路での圧力損失の低減でき、主流路での流れの乱れを低減できる。
【0015】
第2の発明は、前記第1の後退壁に対向する長辺を前記主流路の外方向に後退させて第2の後退壁を形成し、前記第1の後退壁の後退長さは前記第2の後退壁の後退長さよりも小さくしたことを特徴とすることで、助走部出口の両側の壁を共に後退させることにより流れの偏向が生じ易い状態とし、後退距離が小さい側へのコアンダ効果をより確実に発生させることができる。
【0016】
第3の発明は、前記第1の後退壁に対向する長辺を前記主流路の外方向に後退させて第2の後退壁を形成し、前記第2の後退壁の上流側には、前記助走部に設けた助走開口部と前記第2の後退壁の上流端に設けた開口部とを接続するバイアス流路を備えたことを特徴
とすることで、コアンダ効果による自由噴流の第1の後退壁への流れの偏向に加えて、バイアス流路の流れにより自由噴流の第1の後退壁への付着をより強固なものとし、副流路における流れの生成をさらに確実なものとすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0018】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0019】
(実施の形態1)
実施の形態1について、
図1~
図2を用いて説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態1における物理量計測装置の構成断面図であり、
図2(a)は本発明の実施の形態1における
図1のG方向から見た平面図、
図2(b)は、
図1のA方向から見たA矢視図である。
【0021】
図1、
図2において、物理量計測装置20は、主流路部21と副流路部22と信号処理部12から構成され、主流路部21の内部には、被計測流体が流れる主流路1が形成され、副流路部22の内部には主流路1に連通する副流路8が形成されている。
【0022】
被計測流体が流れる主流路1は、その断面が長辺1aを幅W、短辺1bを高さHで示すアスペクト比が大きく二次元流れを実現する矩形断面の流路であり、主流路1は入口2および出口3を備える。主流路1の入口2側には主流路1の一部により形成される助走部4を設け、この助走部4の下流側には長辺1aの一部を主流路1の外方向に後退長さDとして後退させて形成した第1の後退壁5を配置している。この第1の後退壁5の上流側には上流開口部6を設けるとともに下流側には下流開口部7を設けている。
【0023】
第1の後退壁5の主流路1に対して外方には、上流開口部6と下流開口部7とを接続する長さLの副流路8を設けている。この副流路8には流れ方向に対向配置した一対の超音波送受波器9、10と流体の温度を検知する温度センサ11を配置している。
【0024】
この一対の超音波送受波器9、10と温度センサ11は信号処理部12と電気的に接続され、この信号処理部12はこの一対の超音波送受波器9、10からの信号と温度センサ11からの信号を受けて被計測流体の成分濃度を計測する。
【0025】
助走部4に対する第1の後退壁5の後退長さDは、主流路1を流れる流体のコアンダ効果により形成される低圧領域Bが、下流開口部7からの流れを誘引するように設定して構成している。また、下流開口部7には流れ方向の上流側に主流路1の内壁に沿って延伸させた流入促進部13を配置し、主流路1から副流路8へ流体が流入し易くしている。なお、副流路8の高さhは、主流路1の高さHよりも小さくして(h<H)、主流路1の流れよりも、副流路8の乱れが小さくなるようにしている。また、副流路8や流入促進部13には流体の流れが滑らかになるように、曲がり部等にはコーナR(丸み付け)を行っている。
【0026】
次に、本発明の物理量計測装置20の動作について説明する。
【0027】
主流路1を流れる被計測流体は、入口2から
図1の白抜き矢印で示すように流入し、助
走部4からの流れF1は、断面が急拡大する第1の後退壁5部に来ると、低圧の渦領域である低圧領域Bを形成する。この低圧領域Bの負圧により、流れF1は第1の後退壁5の壁面に再付着する流れをコアンダ効果により形成する。このとき低圧になった低圧領域Bは上流開口部6を介して副流路8の被計測流体を誘引する。一方、第1の後退壁5の壁面に再付着した流れF2は下流開口部7に達すると、下流開口部7に流入し、副流路8に安定した穏やかな流れを供給する。
【0028】
副流路8では、その高さhは、主流路1の高さHよりも小さく設定されているため、副流路8における流れの乱れは、主流路1の流れの乱れよりも小さくなる。また、上流開口部6、下流開口部7および流入促進部13を含めた曲がり部などにはコーナR(丸み付け)を付与するとともに断面積の急変を避けるように構成している。このため、副流路8での流れF3は、流れが一層滑らかになるようにされている。
【0029】
従って、副流路8において、主流路1での流体と副流路8での流体が滞留すること無く流動するという流体成分の濃度計測に必要な条件を満たしているため、副流路8において一対の超音波送受波器9、10を用いて音速を計測し、温度センサ11からの流体の温度と合わせて、公知の方法で、流体に含まれる成分濃度を計測することができる。
【0030】
このように副流路8では、主流路1の流体が滞留すること無く流入し、主流路1の流体と濃度等も均一で穏やかで、乱れの少ない安定した流れを実現するため、計測の信頼性や計測精度を高めることができる。
【0031】
(実施の形態2)
実施の形態2について、
図3~
図4を用いて説明する。
図3は本発明の実施の形態2における物理量計測装置の構成断面図であり、
図4は本発明の実施の形態2における
図3のA方向から見たA矢視図である。なお、実施の形態1と同じ機能のものは同一番号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
図3、
図4において、第1の後退壁5を設けた長辺1aと反対側にある対向する長辺1c側にも、長辺1cの一部を主流路1の外方向に後退長さEとして後退させて形成した第2の後退壁14を配置している。ここで、助走部4に対する第1の後退壁5の後退長さDは、第2の後退壁14の後退長さEよりも小さく(D<E)設定して構成している。
【0033】
次に、本発明の物理量計測装置30の動作について説明する。
主流路1を流れる被計測流体は、第2の後退壁14側でも第1の後退壁5側と同様に、第2の後退壁14の上流部に低圧の渦領域である低圧領域Gを形成する。
【0034】
実施の形態2では、第1の後退壁5および第2の後退壁14により
図5における上下方向に断面が急拡大となるため、助走部4の下流端部から流出する流れが自由噴流の状態になり、流れの偏向が生じ易い条件となる。
【0035】
しかし、ここでは第1の後退壁5の後退長さDと第2の後退壁14の後退長さEは異なる大きさであり、第1の後退壁5の後退長さDは第2の後退壁14の後退長さEよりも小さく(D<E)設定されている。このため、低圧の渦領域である低圧領域Bおよび低圧領域Gでの圧力に違いを生じ、第1の後退壁5側の低圧領域Bは第2の後退壁14側の低圧領域Gよりも低い圧力となる。
【0036】
従って、助走部4の下流端部から流出する自由噴流は、後退長さが小さい第1の後退壁5側にコアンダ効果を強く受けて、より一層確実に第1の後退壁5に付着する。
【0037】
このように低圧領域Bの負圧効果と確実に付着する流れF1を形成することにより、副流路8に安定した穏やかな流れの一層確実な形成がなされる。
【0038】
このように、助走部4の下流端部の両側の壁を共に後退させることにより流れの偏向が生じ易い状態とし、後退距離が小さい側へのコアンダ効果をより確実に発生させることで、より一層確実に副流路8に穏やかで安定した流れを供給し、流体に含まれる成分濃度を計測する計測精度の向上や計測の信頼性を高めることができる。
【0039】
(実施の形態3)
実施の形態3について、
図5を用いて説明する。
図5は本発明の実施の形態3における物理量計測装置の構成断面図である。なお、実施の形態1および実施の形態2と同じ機能のものは同一番号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
図5において、実施の形態2の
図4に示したものと同様に本実施の形態3においても第1の後退壁5を設けた長辺1a(図示せず)と反対側にある対向する長辺1c(図示せず)側にも、長辺1c(図示せず)の一部を主流路1の外方向に後退長さKとして後退させて形成した第2の後退壁14を配置している。ここでは、助走部4に対する第2の後退壁14の後退長さKは、第1の後退壁5の後退長さDとほぼ同等(K≒D)に設定して構成している。
【0041】
この第2の後退壁14の上流側の助走部4には助走開口部15を設け、さらに第2の後退壁14の上流端に開口部16を設けるとともに、この助走開口部15と開口部16とをバイアス流路17で接続している。
【0042】
次に、本発明の物理量計測装置40の動作について説明する。
【0043】
主流路1を流れる被計測流体は、第1の後退壁5および第2の後退壁14により
図5における上下方向に断面が急拡大となるため、助走部4の下流端部から流出する流れは自由噴流の状態になり、流れの偏向が生じ易い条件となる。
【0044】
実施の形態3では、第2の後退壁14の上流端部において、助走開口部15から流入しバイアス流路17を流れるバイアス流F5が開口部16から流入する。
【0045】
助走部4より流出する自由噴流は、第1の後退壁5にコアンダ効果による自由噴流の偏向だけでなく、第2の後退壁14の上流端から流入するバイアス流F5の流れが
図5における上方に自由噴流を押し上げるように作用するため、自由噴流の第1の後退壁5への付着がより強固になされ、副流路8における流れの生成をさらに確実なものとすることができる。
【0046】
このように、助走部4の下流端部の両側の壁を共に後退させることにより流れの偏向が生じ易い状態とし、コアンダ効果による自由噴流の第1の後退壁5への流れの偏向に加えて、バイアス流路17の流れにより自由噴流の第1の後退壁5への付着をより強固なものとし、副流路8における流れの生成をさらに確実なものとすることができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態において、副流路8の幅(
図1、
図3、
図5における奥行き方向)は主流路1の幅W方向の長辺1aの幅の一部で説明したが、幅W方向の全域であっても良い。また、流体の成分を計測する物理量計測装置として説明したが、主流路1での圧力損失の低減だけでなく、主流路1での流れの乱れを低減し安定化できるので、主流路1の上流側あるいは下流側に流量計測部を直列に配置した流量計、あるいは副流路8を有する主流路1に流量計測部を並列配置した流量計として展開できるのは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明の物理量計測装置は、副流路に安定した流れを供給し主流路での圧力損失が少ない構成の計測装置を提供できるもので、主流路での流れの安定化も可能となるので、流体の成分の計測装置だけで無く、流量計測部を併設して計測精度および汎用性の高い流量計を実現できる。
【符号の説明】
【0049】
1 主流路
2 入口
3 出口
4 助走部
5 第1の後退壁
6 上流開口部
7 下流開口部
8 副流路
9、10 超音波送受波器
11 温度センサ
12 信号処理部
13 流入促進部
14 第2の後退壁
15 助走開口部
16 開口部
17 バイアス流路
20、30、40 物理量計測装置