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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/152 20210101AFI20241206BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/159 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/164 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/56 20210101ALI20241206BHJP
【FI】
H01M50/152
H01M50/107
H01M50/119
H01M50/159
H01M50/164
H01M50/169
H01M50/56
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020562549
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051607
(87)【国際公開番号】W WO2020138492
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018248605
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018248606
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 一路
(72)【発明者】
【氏名】船見 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高崎 裕史
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-195490(JP,A)
【文献】特開2000-182576(JP,A)
【文献】特開2001-110372(JP,A)
【文献】特開2001-052759(JP,A)
【文献】特開2012-094358(JP,A)
【文献】特開2014-075280(JP,A)
【文献】特開2009-140753(JP,A)
【文献】特開2014-035871(JP,A)
【文献】特開2009-146645(JP,A)
【文献】実公昭51-003369(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、前記筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁部の開口を封口するように前記筒部に固定された封口部材と、を備え、
前記封口部材は、前記開口を覆う蓋部を含み、
前記筒部の前記開口縁部側の前記端部に第1係合部が形成され、
前記蓋部の外周側の端部に第2係合部が形成され、
前記第1係合部が有する第1の面と、前記第2係合部が有する第2の面とが重なった状態で接合されており、
前記開口縁部が、前記筒部の軸方向に垂直な径方向において前記筒部の外側または内側に向かって屈曲して延びる第1部分を有し、
前記第1部分が、前記第1係合部を形成し、
前記第1の面および前記第2の面は、前記径方向および前記軸方向に対して斜めに傾いている、電池。
【請求項2】
前記蓋部の外周側の端部が、前記筒部の軸方向における前記底部側または前記開口縁部側に向かって屈曲して延びる第2部分を有し、
前記第2部分が、前記第2係合部を形成する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、前記筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁部の開口を封口するように前記筒部に固定された封口部材と、を備え、
前記封口部材は、前記開口を覆う蓋部を含み、
前記筒部の前記開口縁部側の前記端部に第1係合部が形成され、
前記蓋部の外周側の端部に第2係合部が形成され、
前記第1係合部が有する第1の面と、前記第2係合部が有する第2の面とが重なった状態で接合されており、
前記蓋部の外周側の端部が、前記筒部の軸方向における前記底部側または前記開口縁部側に向かって屈曲して延びる第2部分を有し、
前記第2部分が、前記第2係合部を形成し、
前記第1の面および前記第2の面は、前記軸方向および前記軸方向に垂直な径方向に対して斜めに傾いている、電池。
【請求項4】
前記蓋部の外周側の端部は、前記筒部の軸方向における前記底部側または前記開口縁部側に向かって屈曲して延びる第3部分と、前記第3部分から前記第3部分の屈曲方向と反対方向に屈曲して延びる第4部分と、を有し、
前記第4部分が、前記第2係合部を形成する、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、前記筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁部の開口を封口するように前記筒部に固定された封口部材と、を備え、
前記封口部材は、前記開口を覆う蓋部を含み、
前記筒部の前記開口縁部側の前記端部に第1係合部が形成され、
前記蓋部の外周側の端部に第2係合部が形成され、
前記第1係合部が有する第1の面と、前記第2係合部が有する第2の面とが重なった状態で接合されており、
前記蓋部の外周側の端部は、前記筒部の軸方向における前記底部側または前記開口縁部側に向かって屈曲して延びる第3部分と、前記第3部分から前記第3部分の屈曲方向と反対方向に屈曲して延びる第4部分と、を有し、
前記第4部分が、前記第2係合部を形成する、電池。
【請求項6】
前記第3部分は、前記筒部の内周面に沿って延びている、請求項4または5に記載の電池。
【請求項7】
前記蓋部に、前記電極体と対向する表面に立設されるとともに前記筒部の内周面に沿って延びるリブが設けられた、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記第1の面および前記第2の面は、前記軸方向および前記軸方向に垂直な径方向に対して斜めに傾いている、請求項5または6に記載の電池。
【請求項9】
前記第1の面は、前記筒部における外周面、内周面、または、端面である、請求項1、2、4、7および8のいずれか1項に記載の電池。
【請求項10】
前記第2の面は、前記蓋部における前記底部側の表面、前記開口縁部側の表面、または、端面である、請求項8または9に記載の電池。
【請求項11】
前記筒部の端面が、前記開口縁部の延出方向に垂直な面から傾斜しており、傾斜面が前記第1の面を形成し、および/または、前記蓋部の外周側の端面が、前記蓋部の外周側の端部の延出方向に垂直な面から傾斜しており、傾斜面が前記第2の面を形成している、請求項1~8のいずれか1項に記載の電池。
【請求項12】
前記第1の面と前記第2の面のいずれか一方に、他方と重なることなく外部に露出した領域が存在する、請求項3および8~11のいずれか1項に記載の電池。
【請求項13】
前記筒部の前記開口縁部側の端部と、前記蓋部の外周側の端部とが、合金部により接合されており、
前記合金部が鉄とニッケルとを含み、前記合金部に含まれるニッケルの含有量が1.4質量%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の電池。
【請求項14】
前記開口縁部の端面の全面が前記合金部で覆われている、請求項13に記載の電池。
【請求項15】
前記蓋部の外周側の端面の全面が前記合金部で覆われているか、または、前記蓋部の外周側の端面の一部が前記合金部で覆われているとともに、前記蓋部の外周側の端面の残部が第1のニッケル層で覆われている、請求項13または14に記載の電池。
【請求項16】
前記蓋部の外表面を構成する主面が、第2のニッケル層で覆われている、請求項13~15のいずれか1項に記載の電池。
【請求項17】
前記蓋部の外周側の端面の一部が、前記第1のニッケル層で覆われ、
前記蓋部の外表面を構成する主面が、第2のニッケル層で覆われ、
前記第1のニッケル層の厚みは、前記第2のニッケル層の厚みより厚い、請求項15に記載の電池。
【請求項18】
前記第2のニッケル層は、前記合金部と隣接する第1領域と、前記第1領域に隣接して前記合金部と反対側に位置する第2領域に形成され、
前記第1領域における前記第2のニッケル層の厚みが、前記第2領域における前記第2のニッケル層の厚みよりも厚い、請求項16または17に記載の電池。
【請求項19】
前記合金部内において、前記開口縁部側よりも前記蓋部側でニッケルの濃度が高い、請求項13~18のいずれか1項に記載の電池。
【請求項20】
前記蓋部の外周側の端部は、前記筒部の軸方向において外方に向かって屈曲しており、
屈曲して外方に向かう突出壁の先端に前記合金部が形成されている、請求項13~19のいずれか1項に記載の電池。
【請求項21】
前記筒部は鉄またはその合金を含む、請求項13~20のいずれか1項に記載の電池。
【請求項22】
前記電池缶の軸方向における前記合金部の寸法は、前記電池缶の径方向における前記合金部の寸法より小さい、請求項13~21のいずれか1項に記載の電池。
【請求項23】
前記封口部材は、端子部をさらに有し、
前記蓋部は貫通孔を有し、前記端子部が、前記蓋部と絶縁された状態で前記貫通孔を塞いでいる、請求項1~22のいずれか1項に記載の電池。
【請求項24】
前記電極体は、第1電極と第2電極とを有し、
前記第1電極は、前記端子部と電気的に接続し、
前記第2電極は、前記電池缶と電気的に接続した、
請求項23に記載の電池。
【請求項25】
一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、前記筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶を準備する工程と、
前記開口縁部の開口を覆う蓋部を有する封口部材を準備する工程と、
前記封口部材を前記電池缶に溶接する溶接工程と、を有し、
前記電池缶は、前記開口縁部が屈曲しており、前記筒部の径方向に対して斜めに傾いた第1の面を前記開口縁部に有し、
前記蓋部は、前記筒部の軸方向に対して斜めに傾いた第2の面を、前記蓋部の外周側の端部に有し、
前記溶接工程は、前記開口縁を塞ぐように、前記封口部材を電極体が収容された前記電池缶に載置するとともに、前記筒部の前記第1の面を前記蓋部の前記第2の面に押圧しながら重ね合わせて、溶接により接合する工程である、電池の製造方法。
【請求項26】
前記電池缶を準備する工程において、前記筒部の側周面および前記底部の表面にニッケル層が形成され、前記開口縁部の端面にニッケル層が形成されていない電池缶を準備し、
金属の前記蓋部の少なくとも外周側の端面にニッケル層が形成されており、
前記ニッケル層の厚みが3μm以上であり、
前記溶接工程において、前記ニッケル層が形成された前記蓋部の端部と、ニッケルを含まない前記開口縁部の端部とを溶融させて合金部を形成する、請求項25に記載の電池の製造方法。
【請求項27】
前記筒部は鉄またはその合金を含み、
前記電池缶を準備する工程において、前記開口縁部の端面には鉄層または鉄合金層が露出している、請求項26に記載の電池の製造方法。
【請求項28】
前記溶接工程において、前記開口縁部の端面の全面に前記合金部を形成する、請求項26または27に記載の電池の製造方法。
【請求項29】
前記封口部材は端子部をさらに有し、
前記蓋部は貫通孔を有し、前記端子部が、前記蓋部と絶縁された状態で前記貫通孔を塞いでいる、請求項25~28のいずれか1項に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極体を電池缶に収容後、電池缶の開口を封口する方法としては、特許文献1に示すように、電池ケース(電池缶)の開口付近を内側に縮径して環状の溝を形成後、溝部の上段部上にガスケットおよび封口板を載置し、電池ケースの開口端部をガスケットを介して封口板にかしめてかしめ部を形成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-105933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記溝部およびかしめ部を有する電池は、溝部の上に封口部材が載置され、封口部材の上にガスケットを介してかしめ部が形成されるため、封口板近傍の電池の高さ方向における寸法が大きくなり易い。そのため、電池としてエネルギー密度を高めるのに限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面は、一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、前記筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁部の開口を封口するように前記筒部に固定された封口部材と、を備え、前記封口部材は、前記開口を覆う蓋部を含み、前記筒部の前記開口縁部側の前記端部に第1係合部が形成され、前記蓋部の外周側の端部に第2係合部が形成され、前記第1係合部が有する第1の面と、前記第2係合部が有する第2の面とが重なった状態で接合されている、電池に関する。
【0006】
本発明の別の局面は、一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、前記筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶を準備する工程と、前記開口縁部の開口の少なくとも一部を覆う蓋部を有する封口部材を準備する工程と、前記封口部材を前記電池缶に溶接する溶接工程と、を有し、前記電池缶は、前記開口縁部が屈曲しており、前記筒部の径方向に対して斜めに傾いた第1の面を前記開口縁部に有し、前記蓋部は、前記筒部の軸方向に対して斜めに傾いた第2の面を、前記蓋部の外周側の端部に有し、前記溶接工程は、前記開口縁を塞ぐように、前記封口部材を電極体が収容された前記電池缶に載置するとともに、前記筒部の前記第1の面を前記蓋部の前記第2の面に押圧しながら重ね合わせて、溶接により接合する工程である、電池の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エネルギー密度が高い電池を容易に実現できる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の例を示す模式図である。
図1B】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の例を示す模式図である。
図1C】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の例を示す模式図である。
図1D】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の例を示す模式図である。
図1E】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の例を示す模式図である。
図1F】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の例を示す模式図である。
図2A】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の他の例を示す模式図である。
図2B】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の他の例を示す模式図である。
図2C】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の他の例を示す模式図である。
図2D】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の他の例を示す模式図である。
図2E】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の他の例を示す模式図である。
図2F】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法の他の例を示す模式図である。
図3A】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法のさらに他の例を示す模式図である。
図3B】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法のさらに他の例を示す模式図である。
図3C】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法のさらに他の例を示す模式図である。
図3D】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法のさらに他の例を示す模式図である。
図3E】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法のさらに他の例を示す模式図である。
図3F】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法のさらに他の例を示す模式図である。
図3G】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法のさらに他の例を示す模式図である。
図3H】本発明の実施形態に係る電池において、蓋部と開口縁部の接合方法のさらに他の例を示す模式図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る電池の縦断面模式図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る電池の縦断面模式図である。
図6】同電池において、蓋部と開口縁部の接合部分を拡大した縦断面模式図である。
図7】同電池において、蓋部と開口縁部とを接合する前の状態を示す縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る電池は、一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、筒部に収容された電極体と、開口縁部の開口を封口するように筒部に固定された封口部材と、を備える。封口部材は、開口を覆う蓋部を含む。
【0010】
ここで、筒部の両方の端部が向かい合う方向を軸方向とする。また、便宜上、開口縁部から底部に向かう方向を下方向とし、底部から開口縁部に向かう方向を上方向とする。つまり、電池缶を底部が下になるように直立させたときの筒部の軸方向の向きに基づいて、電池の上下方向が定義されるものとする。軸方向に垂直な方向は、横方向あるいは径方向と呼ぶ場合がある。
【0011】
筒部の開口縁部側の端部には第1係合部が形成されている。一方、蓋部の外周側の端部には第2係合部が形成されている。そして、第1係合部が有する第1の面と、第2係合部が有する第2の面とが重なった状態で接合されている。
【0012】
接合は、例えば、溶接により行うことができる。溶接により、電池缶内が密封されるとともに、蓋部が電池缶に強固に固定され得る。この場合、従来の環状溝(縮径部ともいう)および開口縁部に形成されるかしめ部を設ける必要がないため、電極体と封口部材との距離を短くすることができる。例えば、電極体を端子部とより近接して配置する、あるいは、端子部に近接する位置まで電極体の高さを高めることが可能となる。よって、電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0013】
しかしながら、溶接により開口縁部を封口する場合、溶接不良が発生しないように、開口縁部と、蓋部の外周側の端部との間の隙間をなくすことが求められる。このため、電池缶の封口においては、開口縁部と蓋部の外周側端部を周方向において略同一形状に加工することが求められ、高い加工精度が必要であった。
【0014】
これに対し、本実施形態の電池では、第1係合部における第1の面と第2係合部における第2の面とが重ねられて、溶接により接合され得る。すなわち、第1の面と第2の面とは面接触した状態で溶接されており、これにより開口縁部と蓋部の外周側端部との間に隙間が発生し難くなるとともに、接合強度を高めることができる。例えば、第2係合部を第1係合部に押圧することにより、周方向の隙間が低減され、第1の面と第2の面とが面接触し得る。
【0015】
第1係合部の一態様として、開口縁部が、径方向において筒部の外側または内側に向かって屈曲して延びる第1部分を有していてもよい。この場合、第1部分が、第1係合部を形成し得る。
なお、「屈曲して延びる」とは、折れ曲がって延びる場合に限られるものではなく、屈曲後の延出部分が曲線形状であり、連続的に延出方向が変化する場合(すなわち、湾曲して延びる場合)を含むものとする。これは、後述の第2~第4部分についても同様とする。
【0016】
ここで、筒部の軸方向であって、底部から開口縁部に向かう方向をZ方向とする。また、軸方向に垂直な方向(径方向)であって、筒部の軸から外周に向かう方向をr方向とする。
開口縁部の第1部分が、径方向において筒部の外側または内側に向かって屈曲して延びるとは、筒部の所定部分の延出方向(例えば、筒部の軸方向)を表す単位ベクトルをV0とし、当該所定部分から屈曲して延びる第1部分の延出方向を表す単位ベクトルをV1とするとき、V1のr方向の成分が、V0のr方向の成分から変化していることをいう。この場合に、V1のr方向の成分がV0のr方向の成分から減少する場合、開口縁部は径方向の内側に向かって屈曲し、増加する場合、開口縁部は径方向の外側に向かって屈曲している。言い換えれば、開口縁部が屈曲して延びるとは、筒部の軸方向に延びる仮想直線から、径方向に離間するように延びていることを意味する。
【0017】
また、第2係合部の一態様として、蓋部の外周側の端部が、軸方向における底部側または開口縁部側に向かって屈曲して延びる第2部分を有していてもよい。この場合、第2部分が、第2係合部を形成し得る。
ここで、蓋部の第2部分が、軸方向における底部側または開口縁側に向かって屈曲して延びるとは、蓋部の所定部分の延出方向(例えば、筒部の軸に対して垂直な方向)を表す単位ベクトルをW0とし、当該所定部分から屈曲して延びる第2部分の延出方向を表す単位ベクトルをW1とするとき、W1のZ方向の成分が、W0のZ方向の成分から変化していることをいう。この場合に、W1のZ方向の成分がW0のZ方向の成分から減少する場合、蓋部の外周側の端部は、底部側に向かって屈曲し、増加する場合、開口縁部側に向かって屈曲している。これは、後述の第3および第4部分についても同様とする。言い換えれば、蓋部が屈曲して延びるとは、筒部の軸に垂直な方向に延びる仮想直線から、軸方向に離間するように延びていることを意味する。
【0018】
筒部(開口縁部)に屈曲した延出部分(第1部分)が設けられていることで、筒部は軸方向の力に対して(バネのように)たわみ易くなっている。このため、押圧しない状態では、周方向の一部において、第1係合部と第2係合部の間に僅かな隙間が介在する場合であっても、押圧により筒部および蓋部の外周側端部が適度に変形し、第1の面と第2の面との間の隙間が低減された状態で第1係合部と第2係合部とが接触し得る。よって、この状態で開口縁部と蓋部の外周側端部とを溶接することにより、溶接不良が低減される。第1部分に対応して、第1の面と第2の面とが重なるように、蓋部には第2部分が設けられ得る。
【0019】
蓋部の外周側の端部は、筒部の軸方向における底部側または開口縁側に向かって屈曲して延びる第3部分と、第3部分から第3部分の屈曲方向と反対方向に屈曲して延びる第4部分と、を有していてもよい。この場合、第4部分が、第2係合部を形成し得る。第3部分と第4部分の屈曲方向が反対であるとは、第3部分が底部側に向かって屈曲して延びている場合、第4部分は開口部側に向かって屈曲して延びているか、または、第3部分が開口縁部側に向かって屈曲して延びている場合、第4部分は底部側に向かって屈曲して延びていることを意味する。したがって、第3部分および第4部分が設けられた蓋部は、外周方向に向かってジグザグに屈曲している。蓋部は、外周方向に向かってジグザグに屈曲していてもよく、クランク形状に屈曲してもよい。
【0020】
なお、少なくとも第3部分を有した蓋部では、第3部分が、第2係合部を形成していてもよい。換言すると、上述の第2部分を有する蓋部が、第2部分の端部側でさらに屈曲し、第2部分の屈曲方向から異なる方向に延びていてもよい。
【0021】
第3部分は、筒部の内周面に沿って延びていてもよい。これにより、蓋部の径方向の位置ずれが抑制され、蓋部と筒部との接合部の断面形状のばらつきを最小限に抑えることができる。よって、接合強度の不均一性が抑制される。
【0022】
また、第3部分を設ける代わりに、電極体と対向する表面に立設されるとともに筒部の内周面に沿って延びるリブを、蓋部に設けてもよい。リブにより、第3部分を筒部の内周面に沿って延ばすのと同様の効果を得ることができる。
【0023】
第1係合部の第1の面、および、第2係合部の第2の面は、径方向および軸方向に対して斜めに傾いていてもよい。傾斜した第1の面は、筒部における外周面、内周面、または、端面であり得る。傾斜した第2の面は、蓋部における底部側の表面(内表面あるいは下面)、蓋部における開口縁部側の表面(外表面)、または、端面であり得る。第1の面が筒部の端面である場合、第2の面は蓋部における底部側の表面であってもよい。第2の面が蓋部の端面である場合、第1の面は、筒部における内周面であってもよい。
【0024】
筒部の端面が開口縁部の延出方向に垂直な面から傾斜し、傾斜面が第1の面を形成していてもよい。または、蓋部の外周側の端面が、蓋部の外周側の端部の延出方向に垂直な面から傾斜し、傾斜面が第2の面を形成していてもよい。すなわち、筒部の端面および/または蓋部の外周側の端面は、金属板を斜めに切断して、および/または、切断面が斜めになるように加工して得られた、金属板の端面であってもよい。
【0025】
溶接の方法は特に限定されず、蓋部および電池缶の材質に応じて適宜選択すればよい。溶接方法としては、例えば、レーザ溶接、抵抗溶接、摩擦攪拌接合、ろう接等が挙げられる。
【0026】
第1の面と前記第2の面のいずれか一方に、他方と重なることなく外部に露出した領域が存在していてもよい。これにより、熱伝導によるレーザ溶接を行い易い。
【0027】
封口部材には、端子部が設けられている。端子部は、電極体の一方の電極(第1電極)と電気的に接続され得る。また、電池缶は、電極体の他方の電極(第2電極)と電気的に接続され得る。例えば、蓋部は金属であり、貫通孔を有する。この場合、端子部は、蓋部と絶縁された状態で貫通孔を塞いでいる。端子部と蓋部との間の絶縁および封止は、ガスケットを介することにより行ってもよいし、端子部と蓋部との当接部分に絶縁剤を塗布する、あるいは、両部材のうち一方の部材の表面を絶縁加工することにより行ってもよい。
【0028】
蓋部は、合金部を介して電池缶の筒部と電気的に接続されている。これにより、蓋部は電極体の第2電極と電気的に接続され得る。したがって、電池缶と接続する外部端子の電圧を電池の上側(端子部側)から、特に蓋部の天板部分から取り出すことが可能になる。
【0029】
通常の電池において、端子部は電池の第1電極(例えば、正極)の外部端子として機能し、電池缶は第2電極(例えば、負極)の外部端子として機能する。各外部端子に外部リード線をそれぞれ接続する場合、一方の外部リード線は電池の上面から導出され、他方の外部リード線は電池の下面から導出される。この場合、電池の上下方向に配線のための空間が必要となる。
【0030】
これに対して、本実施形態の電池では、蓋部を、電池缶に接続する第2電極の外部端子として機能させることができる。そのため、第1電極および第2電極をともに、電池の上側(端子部側)から集電することができる。よって、各外部端子に接続するリードを配線するための空間(配線空間)は、端子部側に存在すればよく、配線空間は省スペース化される。
【0031】
本実施形態に係る電池の製造方法は、例えば、(i)一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶を準備する工程と、(ii)開口縁部の開口を覆う蓋部を有する封口部材を準備する工程と、(iii)封口部材を電池缶に溶接する溶接工程と、を有する。このとき、工程(i)で準備される電池缶は、開口縁部が屈曲しており、筒部の径方向に対して斜めに傾いた第1の面を開口縁部に有する。工程(ii)で準備される蓋部は、筒部の軸方向に対して斜めに傾いた第2の面を、蓋部の外周側の端部に有する。上記(iii)溶接工程は、開口縁を塞ぐように、封口部材を電極体が収容された電池缶に載置するとともに、筒部の第1の面を蓋部の前記第2の面に押圧しながら重ね合わせて、溶接により接合する工程であり得る。
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る電池について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0033】
[第1実施形態]
図1図3は、本実施形態に係る電池において、蓋部330を筒部120の開口縁部110に溶接により接合する方法の例を示す模式図である。図1図1A図1F)は、開口縁部110の端部を径方向の外側に向かって屈曲させた例である。図2図2A図2F)は、開口縁部110の端部を径方向の内側に向かって屈曲させた例である。図3図3A図3H)は、開口縁部110が屈曲部を有さないストレート形状の例である。
【0034】
図1図3に示す各例において、開口縁部110の端部に、第1係合部401が形成されている。蓋部330の外周側の端部に、第2係合部402が形成されている。第1係合部401は、第1の面S1を有し、第2係合部402は、第2の面S2を有する。第1の面S1と第2の面S2とは、溶接時において、蓋部330が筒部120に押圧されることで、面接触する。
【0035】
図1A図1Fでは、開口縁部110は、その端部において、径方向の外側に向かって屈曲して延びる第1部分411を有している。第1部分411により、第1係合部401が形成されている。図1A図1Fでは、第1の面S1は、筒部における内周面の一部であり、軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。第1の面S1に対応して、第2の面S2も軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。
【0036】
図1A図1B図1Dおよび図1Eでは、第2の面S2は、蓋部の底部側の表面(下面)の一部である。図1Cでは、第2の面S2は、蓋部の端面であり、蓋部の端面が蓋部の外周側端部の延出方向(径方向)に垂直な面から傾斜している。これにより第2の面S2は軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。図1Fでは、第2の面S2は、蓋部の屈曲した外表面(上面)の一部である。
【0037】
図1A図1Dおよび図1Eでは、蓋部330の外周側の端部は、筒部の軸方向における開口縁部側に向かって屈曲して延びる第2部分412を有する。第2部分412により、第2係合部402が形成されている。
【0038】
図1Bでは、蓋部330の外周側の端部は、筒部の軸方向における底部側に向かって屈曲して延びる第3部分413と、第3部分413から第3部分の屈曲方向と反対方向に屈曲して延びる第4部分414と、を有する。言い換えれば、蓋部330の端部は蓋部330の下面側で折り返えされて第4部分414が形成されている。第4部分414により、第2係合部402が形成されている。図1Bの構成では、電池缶100内の空間を広げることが可能である。
【0039】
図1Fでは、蓋部330の外周側の端部は、筒部の軸方向における底部側に向かって屈曲して延びた後、さらに径方向の内側に向かって屈曲して延びて、蓋部の屈曲した端部である第5部分415の外表面が開口縁部110の内周面の一部である第1の面S1と接触する。すなわち、第5部分415により、第2係合部402が形成されている。
【0040】
図1Eでは、第2の面S2の外周側の一部領域は、溶接時においても第1の面S1と重なることなく、外部に露出している。一方、図1Fでは、第1の面S1の外周側の一部領域は、溶接時においても第2の面S2と重なることなく、外部に露出している。
【0041】
図1A図1Fにおいて、蓋部330は、溶接により筒部120の開口縁部110と接合され得る。溶接は、レーザ溶接を用いることができる。レーザ溶接を行う場合、図1A図1Dの例では、斜め上方向からレーザ光を照射することで、突き合わせ溶接が可能である。また、上方からレーザ光を照射することで、突き合わせ溶接および重ね合わせ溶接が可能である。図1Eでは、横方向からレーザ光を照射することで、例えば突き合わせ溶接および重ね合わせ溶接が可能である。図1Fでは、上方からレーザ光を照射することで、例えば突き合わせ溶接が可能である。
【0042】
図2A図2Fでは、開口縁部110は、その端部において、径方向の内側に向かって屈曲して延びる第1部分411を有している。第1部分411により、第1係合部401が形成されている。図2A図2Eの例では、第1の面S1は、筒部の端面である。図2Fの例では、第1の面S1は、開口縁部110の第1部分411の外周面である。第1の面S1は、開口縁部110の端部が屈曲していることにより、軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。第1の面S1に対応して、第2の面S2も軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。
【0043】
図2A図2B図2D図2Fでは、第2の面S2は、蓋部の底部側の内表面(下面)である。図2Cでは、第2の面S2は、蓋部の端面であり、蓋部の端面が蓋部の外周側端部の延出方向(径方向)に垂直な面から傾斜している。これにより第2の面S2は軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。
【0044】
図2A図2Dおよび図2Eでは、蓋部330の端部は、筒部の軸方向における開口縁部側に向かって屈曲して延びる第2部分412を有する。第2部分412により、第2係合部402が形成されている。
【0045】
図2Bの例では、蓋部330の端部は、筒部の軸方向における底部側に向かって屈曲して延びる第3部分413と、第3部分413から第3部分の屈曲方向と反対方向に屈曲して延びる第4部分414と、を有する。第4部分414により、第2係合部402が形成されている。図2Bの構成では、図2Eなどの構成と比べて電池缶100内の空間を広げることが可能である。
【0046】
図2Fでは、蓋部330の端部は、筒部の軸方向における開口縁部側(電池の上方)に向かって屈曲して延びる第3部分413と、第3部分413から第3部分の屈曲方向と反対方向に屈曲して延びる第4部分414と、を有する。第4部分414により、第2係合部402が形成されている。この構成により、蓋部と開口縁部とが重なる領域を広げることが容易となり、電池の径方向の寸法を大型化させずに、蓋部を開口縁部へ安定して係合させることができる。
【0047】
図2Eでは、第2の面S2の外周側の一部領域は、溶接時においても第1の面S1と重なることなく、外部に露出している。一方、図2Fでは、第1の面S1の外周側の一部領域は、溶接時においても第2の面S2と重なることなく、外部に露出している。
【0048】
図2A図2Fにおいて、蓋部330は、溶接により筒部120の開口縁部110と接合され得る。溶接は、レーザ溶接を用いることができる。レーザ溶接を行う場合、図2A図2Dでは、斜め上方向からレーザ光を照射することで、突き合わせ溶接が可能である。また、上方からレーザ光を照射することで、突き合わせ溶接および重ね合わせ溶接が可能である。
【0049】
図2Eでは、例えば横方向からレーザ光を照射することで、突き合わせ溶接が可能である。図2Fでは、例えば横方向からレーザ光を照射することで、突き合わせ溶接および重ね合わせ溶接が可能である。
【0050】
図3A図3Hの例では、第1の面S1は、筒部の端面である。ただし、図3B図3C図3Fおよび図3Gでは、筒部の端面が開口縁部の延出方向(軸方向)に垂直な面から傾斜しており、これにより第1の面S1は軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。第1の面S1に対応して、第2の面S2も軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。
【0051】
図3A図3C図3E図3G図3Hの例では、第2の面S2は、蓋部の底部側の表面(内表面)である。図3Bおよび図3Fの例では、第2の面S2は、蓋部の端面であり、蓋部の端面が蓋部の外周側端部の延出方向(径方向)に垂直な面から傾斜している。これにより第2の面S2は軸方向および径方向に対して斜めに傾いている。
【0052】
図3A図3Dでは、蓋部330の端部は、筒部の軸方向における開口縁部側(電池の上方)に向かって屈曲して延びる第3部分413と、第3部分413から第3部分の屈曲方向と反対方向に屈曲して延びる第4部分414と、を有する。第4部分414により、第2係合部402が形成されている。第3部分413は、筒部120の内周面に沿って延び、第4部分414は、第3部分413から筒部の径方向において外方に延びている。言い換えれば、図3A図3Dにおいて蓋部330の端部にクランク部が形成されているといえる。
【0053】
図3E図3Hでは、蓋部330における電極体(図示せず)との対向面にリブ403が設けられている。リブ403は、蓋部330の筒部の内周面に沿って、蓋部から電極体に向かって延びている。図3Gでは、蓋部の端部は、筒部の軸方向における開口縁部側(電池の上方)に向かって屈曲して延びる第2部分412を有し、第2部分412により第2係合部402が形成されている。
【0054】
図3C図3D図3Gおよび図3Hでは、第1の面S1の外周側の一部領域は、溶接時においても第2の面S2と重なることなく、外部に露出している。
【0055】
図3A図3Hにおいて、蓋部330は、溶接により筒部120の開口縁部110と接合され得る。溶接は、レーザ溶接を用いることができる。レーザ溶接を行う場合、図3Aおよび図3Eの例では、上方からレーザ光を照射することで、重ね合わせ溶接が可能である。図3B図3D図3F図3Hの例では、例えば、重ね合わせ溶接および突き合わせ溶接、のいずれも可能である。
【0056】
なお、図3A図3Hでは、蓋部において、筒部の内周面と対向する部分(すなわち、第3部分413またはリブ403の外周面)に絶縁材から構成されたOリングを配してもよい。これにより、蓋部を開口縁部へ挿入する際に、蓋部が擦れて金属塵が電池缶内へ入ることを抑制できる。
また、図1図3では、蓋部と開口縁部との当接状態を抜粋して説明するため、図面上では、蓋部と筒部しか図示していない。しかし、図1図3に開示した構成においても後述する端子部やガスケットなどの封口部材の構成は、当然適用される。
【0057】
図4は、本実施形態に係る電池10の縦断面模式図である。なお、図4では、電池の筒部、特に開口縁部110近傍の状態が強調して描かれている。端子部310、ガスケット320、蓋部330等の構成部材の各要素間の寸法比は、実際の寸法比と一致しない場合がある。
【0058】
電池10は、円筒型を有し、円筒型の有底の電池缶100と、缶内に収容された円筒型の電極体200と、電池缶100の開口を封口する封口部材300とを具備する。電池缶100は、電極体200を収容する筒部120と、底部130と、を有する。筒部120は、その一方の端部に開口縁部110を有し、他方の端部は底部130によって閉じられている。筒部120は、開口縁部110と、電極体を収容する収容部150とを含む。開口縁部110の開口は、封口部材300により閉じられている。
【0059】
封口部材300は、端子部310と、ガスケット320と、蓋部330と、を有する。蓋部330は、電池缶100の開口縁部110と、接合部420を介して接続している。
接合部420は、上述の図1図3に示した通り、開口縁部110と蓋部330の端部同士を重ね、例えばレーザ溶接を行うことにより、形成され得る。図4において、開口縁部110、および、蓋部330の外周側端部は、図1Cに類似した態様であり、径方向の内側に向かって屈曲して延びる第1部分411の内周面(第1の表面)と、蓋部330の端面(第2の表面)とが、軸方向および径方向に対して斜めに傾いた状態で面接触している。
【0060】
端子部310は、例えば円盤状であり、防爆機能を有していてもよい。具体的には、端子部310は、構造的強度を確保するための厚肉の周縁部311および中央領域312と、防爆機能を発揮する薄肉部313とを具備する。薄肉部313は、周縁部311と中央領域312との間の領域に設けられる。中央領域312の内側面には、電極体200を構成する正極または負極から導出されたリード線210の端部が接続されている。よって、端子部310は一方の端子機能を有する。
【0061】
電池缶100の内圧が上昇すると、端子部310が外方に向けて盛り上がり、例えば周縁部311と薄肉部313との境界部に張力による応力が集中し、その境界部から破断が生じる。その結果、電池缶100の内圧が開放され、電池10の安全性が確保される。なお、本発明の効果を奏するにあたって、防爆機能は必須ではない。
【0062】
ガスケット320は、蓋部330と端子部310との間を封止する。ガスケット320は、例えば、端子部310の周縁部311の上方を覆う外側リング部321と、端子部310の周縁部311の下方を覆う内側リング部322と、外側リング部と内側リング部とを繋ぐ中継リング部323とを有する。例えば、ガスケット320の外側リング部321、内側リング部322および中継リング部323は一体化された成型体である。
【0063】
端子部310と、ガスケット320とは、相互に接合されていてもよい。例えば、端子部310とガスケット320とを一体成型することで、端子部310とガスケット320とが相互に接合された封口体が得られる。一体成型の方法としては、インサート成型を用いることができる。この場合、端子部310およびガスケット320の形状は限定されず、任意の形状に設計できる。また、端子部310とガスケット320とが一体成型されることで、端子部310とガスケット320とを一部品として取り扱うことができ、電池の製造が容易になる。
【0064】
蓋部330は、例えばリング状の板、貫通孔と、貫通孔を覆う天板部分331を有する。貫通孔は、端子部310により塞がれている。蓋部330は、ガスケット320によって端子部310と電気的に絶縁されている。
【0065】
蓋部330は導電性であり、電池缶100と同じ極性を有する。よって、蓋部330には、端子部310とは極性が異なる他方の端子機能を持たせることができる。そのため、電池10の両方の電極を、ともに封口部材300の上面から集電することができる。例えば、蓋部330の天板部分331に第1外部リード線501を接続し、端子部310の中央領域312の外側面に第2外部リード線502を接続することができる。
【0066】
蓋部330は、支持部334をさらに有していてもよい。支持部334は、蓋部の内表面(下面)から直立し、底部130に向かって軸方向に延在している。支持部334により、ガスケット320が、蓋部330と端子部310との間が封止された状態で、蓋部330に固定される。支持部334の立設箇所を軸方向から見たときの輪郭線は、例えば、ガスケット320の外縁に相似する形状である。ただし、輪郭線は必ずしも閉じた連続的な曲線である必要はなく、支持部334が設けられない領域を周方向の一部に有していてもよい。輪郭線は、ガスケット320の外周面の周方向において断続的であってもよい。
【0067】
ガスケット320の外径は、無負荷状態において、支持部334の内径よりも大きくしてもよい。この場合、圧入により、ガスケット320の側壁部が支持部334に密着して、蓋部330と端子部310との間を封止することができる。
【0068】
支持部334は、底部130に向かって軸方向に延びた後、さらにガスケット320の内側リング部322に沿うように屈曲し、端子部310の中央領域312に向かうように内側に延びている。これにより、蓋部330と端子部310との間の封止性をより高めることができる。支持部334が屈曲して延びる部分は、直立した支持部334の一部を内周側にかしめて、屈曲させることで形成され得る。屈曲して延びる部分は、支持部334の全周に形成されている必要はなく、周方向に沿って間欠的に形成されていてもよい。
【0069】
支持部334の立設位置より外周側に、第2のガスケット350が配されていてもよい。第2のガスケット350は、蓋部330と、電極体200を開口縁部110および支持部334から絶縁する上部絶縁板との間に挟持され得る。第2のガスケット350は、上部絶縁板を介して(または、直接)電極体200と当接することにより、電極体200が電池缶100内で変位することを抑制する。これにより、電極体200と電気的に接続するリード線に機械的ストレスが加わることを抑制し、あるいは電極体200が電池缶100や封口部材300と衝突して、電極体200内の電極やセパレータが変形することが抑制される。
【0070】
[第2実施形態]
筒部の開口縁部側の端部と、蓋部の外周側の端部とが、鉄とニッケルとを含む合金部により接合されていてもよい。この場合において、合金部に含まれるニッケルの含有量は1.4質量%以上であってもよい。
【0071】
本実施形態に係る電池は、一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、筒部に収容された電極体と、開口縁部の開口を封口するように筒部に固定された封口部材と、を備える。封口部材は、開口縁部の上記開口のを覆う蓋部を含む。
【0072】
筒部の開口縁部側の端部と、蓋部の外周側の端部とは、合金部により接合されている。接合は、例えば、溶接により行うことができる。溶接により、電池缶内が密封されるとともに、蓋部が電池缶に強固に固定され得る。蓋部は、合金部を介して電池缶の筒部と電気的に接続されている。これにより、蓋部は電極体の他方の電極と電気的に接続され得る。
【0073】
しかしながら、溶接により合金部を形成し、筒部の開口縁部と蓋部とを封止する場合、合金部に錆が発生することで密閉性が低下し、封止耐圧が低下して、通常の電池使用環境で漏液やガス漏れが発生する場合がある。このため、合金部における錆の発生を抑制することが、エネルギー密度が高い電池を実現する上で求められていた。
【0074】
この問題の解決のため、本実施形態の電池では、合金部が鉄(Fe)とニッケル(Ni)とを含む。鉄とニッケルとを含む合金は、防錆性を有する。特に、合金部に含まれるNiの含有量を1.4質量%以上とした場合、封止耐圧の低下を抑制するのに必要な高い防錆特性が得られ、高エネルギー密度の電池を実現できる。より好ましくは、合金部に含まれるNiの含有量を3質量%以上としてもよい。この場合、封止耐圧の低下が一層抑制される。
【0075】
電池缶(筒部)および蓋部は、例えば、鋼板またはステンレス鋼板などの鉄(Fe)を含む材料で構成され得る。電池缶(筒部)および蓋部は、鉄(Fe)のほか、鉄以外の元素を含んでいてもよい。鉄以外の元素は、例えば、炭素(C)、Cr、Mn、Ni、Co、Alなどが挙げられる。電池缶(筒部)および/または蓋部は、鉄と鉄以外の元素との合金であってもよい。電池缶(筒部)および/または蓋部に占める鉄の割合は、50質量%以上であってもよい。
【0076】
溶接により合金部を形成する場合、合金部には、電池缶の筒部の開口縁部に含まれる元素と、蓋部の外周側の端部に含まれる元素の両方が含まれ得る。開口縁部および/または蓋部が鉄(Fe)を含む場合、開口縁部および/または蓋部のいずれか一方がニッケル(Ni)を含んでいれば、鉄とニッケルとを含む合金部が形成され得る。
【0077】
ニッケルめっき処理を行い、表面にニッケル層を形成した電池缶を用いてもよい。これにより、防錆性能を高めることができる。ところが、ニッケルめっきされた電池缶は、通常、予めニッケルめっきされた鋼板を切断し、筒状に加工した後、開口側の筒部を切り揃えることで製造される。この場合、電池缶の開口縁部の端面には、ニッケルめっきされていない下地金属が露出している。この状態で開口縁部と蓋部の端部同士を溶接し、合金部を形成しても、開口縁部の端面には下地金属の鉄が露出し、Niが殆ど存在しないため、合金部に含まれるNi含有量を1.4質量%以上に高めることは困難である。
製造後の電池缶に対して、開口縁部の端面を再度ニッケルめっきする処理を行ってから溶接することで、合金部に含まれるNi含有量を1.4質量%以上に高めることも可能である。しかしながら、成形後の電池缶は単板に比べて形状が複雑であるため、むらを抑制しながらめっきをしようとすると製造工程数が増加する。加えて、封口部材と比べて、電池缶は体積が大きくなり易く、製造設備が大型化し易い。結果、製造コストが高くなり易い。
【0078】
そこで、本実施形態では、合金部に含まれるNi含有量を高める方法の一例として、蓋部の少なくとも外周側の端部にニッケル層を例えばめっきにより形成し、且つ、ニッケル層の厚みを厚く形成しておく。これにより、溶接時の高温によって蓋部の外周側端部のニッケル層に存在するNiが開口縁部側に拡散し、FeとNiとを含む合金部が形成される。合金層のNi含有量は、蓋部の外周側の端部に形成するニッケル層の厚みにより制御され、1.4質量%以上に高めることも容易である。なお、蓋部の端部を開口縁部の内周面と対向および当接させて溶接する場合、蓋部の上面(電池缶の底部から遠い面)において、外周縁部のニッケル層が内周側よりも厚く形成された状態で溶接してもよい。
溶接の方法は特に限定されず、蓋部および電池缶の材質に応じて適宜選択すればよい。溶接方法としては、例えば、レーザ溶接、抵抗溶接、摩擦攪拌接合等が挙げられる。
【0079】
合金部は、開口縁部の端面の全面を覆っていてもよい。この場合、溶接前における開口縁部の端面は、合金部の形成により消失し、合金部と筒部との境界において、外部に露出しない新たな開口縁部の端面が形成されている。同様に、合金部は、蓋部の外周側端面の全面を覆っていてもよい。この場合、溶接前における蓋部の外周側端面は、合金部の形成により消失し、合金部と蓋部との境界において、外部に露出しない新たな端面が形成されている。
【0080】
以下において、蓋部の外周側端面を覆うニッケル層を、第1のニッケル層と呼ぶ。溶接前において、蓋部の外周側端面に第1のニッケル層を形成する場合、溶接後において、蓋部の外周側端面の一部が合金部で覆われ、蓋部の外周側端面の残部が第1のニッケル層で覆われていてもよい。
【0081】
蓋部の外表面を構成する主面がニッケルめっきされ、主面を覆うニッケル層が形成されていてもよい。以下において、蓋部の外表面を構成する主面を覆うニッケル層を、第2のニッケル層と呼ぶ。第1のニッケル層の少なくとも一部は、溶接工程により合金部に変化する。蓋部の外周側端面に第1のニッケル層が溶接後に残存している場合、第1のニッケル層の厚みは、第2のニッケル層の厚みより厚くてもよい。
【0082】
蓋部の外周側端面に第1のニッケル層を形成し、蓋部の上記主面に第2のニッケル層を形成する場合、第2のニッケル層は、合金部と隣接する第1領域と、第1領域に隣接して合金部と反対側に位置する第2領域に形成され得る。このうち、第1領域に形成される第2のニッケル層は、合金部の形成後において残存する第1のニッケル層でもあってもよい。この場合、第1の主面側から見ると、第2のニッケル層の厚みは、第1領域において、第2領域よりも厚くなり得る。
【0083】
また、合金部に含まれるNiは、第1のニッケル層から供給される。合金部は、第1のニッケル層のNiが開口縁部の端部側へと拡散することで形成されるものであるため、開口縁部側よりも蓋部側でNiの濃度が高く、合金部内でNi濃度の分布を有し得る。
【0084】
蓋部の外周側の端部は、筒部の軸方向において、外方(上方向)に向かって屈曲し、屈曲して外方(上方向)に向かう突出壁の先端に合金部が形成されていてもよい。接合面を上に向けることで、レーザ溶接が容易となる。また、溶接箇所を電極体から遠ざけることで、溶接時の溶接部に加わる熱が電極体および/または電解液に伝わり、電極体および/または電解液が劣化するのを抑制できる。
【0085】
本実施形態に係る電池は、例えば、上述の電池缶を準備する工程(i)において、筒部の側周面および底部の表面にニッケル層が形成され、開口縁部の端面にニッケル層が形成されていない電池缶を準備し、工程(ii)において、金属の蓋部の少なくとも外周側の端面にニッケル層が形成された封口部材を準備することで製造することができる。ニッケル層は、例えばめっきにより形成され得る。ニッケル層の厚みは3μm以上である。ニッケル層の厚みは7μm以上が好ましい。
【0086】
そして、(iii)溶接工程において、ニッケル層が形成された蓋部の端部と、ニッケルを含まない開口縁部の端部とを溶融させる。これにより、少なくとも開口縁部の端面にニッケルを含む合金部を形成し、蓋部と開口縁部とを接合する。
【0087】
筒部は鉄またはその合金を含み得る。その場合、電池缶を準備する工程(i)において、開口縁部の端面には鉄層または鉄合金層が露出し得る。しかしながら、工程(ii)において、蓋部の外周側の端面にニッケル層が形成された封口部材を準備し、工程(iii)において、筒部と蓋部との端部同士を溶接して合金部を形成することによって、開口縁部の端面の全面を、ニッケルを含む合金部で覆うことができる。合金部に含まれるNi含有量が1.4質量%以上となるように、ニッケル層の厚みを制御することで、防錆性に優れ、高エネルギー密度の電池が製造される。
【0088】
ニッケル層を形成するためのめっき方法は、公知のものを使用すればよい。めっき法として、例えば、電解めっき、無電解めっき、スパッタリング等を用いることができる。
【0089】
図5は、ニッケルを含む合金部を有する本実施形態に係る電池11の縦断面模式図である。図6は、電池11における蓋部と開口縁部の接合部分を拡大した模式的な断面図である。図7は、蓋部と開口縁部とを接合する前の状態を示す模式図である。なお、図5では、電池の筒部、特に開口縁部110近傍の状態が強調して描かれている。端子部310、ガスケット320、蓋部330等の構成部材の各要素間の寸法比は、実際の寸法比と一致しない場合がある。
【0090】
電池11は、電池10と同様、円筒型を有し、円筒型の有底の電池缶100と、電池缶100内に収容された円筒型の電極体200と、電池缶100の開口を封口する封口部材300とを具備する。電池缶100は、電極体200を収容する筒部120と、底部130と、を有する。筒部120は、その一方の端部に開口縁部110を有し、他方の端部は底部130によって閉じられている。筒部120は、開口縁部110と、電極体を収容する収容部150とを含む。開口縁部110の開口は、封口部材300により閉じられている。
【0091】
封口部材300は、端子部310と、ガスケット320と、蓋部330と、を有する。蓋部330は、電池缶100の開口縁部110と、合金部421を介して接続している。
【0092】
図7において、開口縁部110と蓋部330の端部同士を重ね、例えばレーザ溶接を行うことにより、図6に示す合金部421が形成され得る。図6において、蓋部330の外表面S3および内表面S4は、いずれもニッケル層(第2のニッケル層)422で覆われている。
【0093】
溶接前の状態では、図7に示すように、電池缶100の内表面および外表面がニッケルめっきされ、電池缶の内表面および外表面がニッケル層424で覆われている。しかしながら、開口縁部110の端面110Tはニッケル層424で覆われておらず、鉄を含む下地金属層425が露出している。一方、蓋部330の外周側端面330Tはニッケルめっきされ、外周側端面330Tがニッケル層(第1のニッケル層)423で覆われている。
【0094】
溶接により、合金部421が形成されると、開口縁部110の端面110Tの少なくとも一部、および、蓋部330の端面330Tの少なくとも一部が消失する。このとき、合金部421と筒部120との境界面が、開口縁部110の新たな端面となり、合金部421と蓋部330との境界面が、蓋部330の新たな端面となる。図6の例では、合金部421は、開口縁部110の端面、および、蓋部330の外周側の端面の全面を覆うように形成されている。この場合、図7における開口縁部110の溶接前の端面110Tの全面、および、図7における蓋部330の溶接前の端面330Tの全面が、合金部421の形成により消失し、外部に露出しない開口縁部110および蓋部330の端面が形成されている。
【0095】
合金部421は、例えば、レーザ溶接によって、開口縁部110の端部と蓋部330の外周側端部との接触領域を溶融させることにより形成され得る。このとき、蓋部のニッケル層423に含まれていたNiが開口縁部110側に拡散し、FeおよびNiを含む合金部421が形成される。合金部421に含まれるNiの含有量は、1.4質量%以上である。ただし、Niは、蓋部のニッケル層423から開口縁部110側に拡散するため、合金部421内でNi濃度に分布を有し、開口縁部側(筒部側)よりも蓋部側でNi濃度が高くなり得る。
【0096】
図7において、蓋部の端面を覆うニッケル層423の膜厚は、Ni含有量が1.4質量%以上の合金部421を形成するために、3μm以上であればよく、7μm以上であってもよい。
【0097】
図6において、蓋部330の外表面S3を覆うニッケル層422は、合金部421と隣接する領域(第1領域)に形成されたニッケル層422Aと、第1領域に隣接して合金部421と反対側の領域(第2領域)に形成されたニッケル層422Bと、を有する。ニッケル層422Aは、図7におけるニッケル層423の溶接後における残存部分である。合金部421が、例えば図6のように、開口縁部110と蓋部330との接触領域から円弧を含む形状の断面(例えば、扇形状)を有するように形成される場合、合金部421より内周側の蓋部にニッケル層423が残存し得る。この場合、蓋部の外表面S3から見ると、ニッケル層423の残存部分であるニッケル層422Aの厚みは、ニッケル層422Bの厚みよりも厚くなり得る。
【0098】
電池缶100の軸方向(上下方向)における合金部421の寸法(最大幅)は、電池缶の径方向(筒部の厚さ方向)における合金部421の寸法(最大幅)より小さいことが好ましい。この構成より、溶融部分においてニッケル層423が占める割合が高まり易くなる。よって、合金部421におけるニッケルの濃度を高め易くなる。
【0099】
なお、合金部421は、蓋部330の外周側端面330Tの全面に形成されず、端面330Tの一部がニッケル層423で覆われていてもよい。
【0100】
蓋部の外周側の端部は、筒部の軸方向において外方(上方)に向かって屈曲し、外方(上方向)に向かって突出する突出壁332が形成されている。そして、突出壁332の先端に合金部421が形成されている。
電池11の他の構成については、第1実施形態における電池10と同様である。
【0101】
本実施形態では、蓋部330の端面を覆うニッケル層423の厚みを、蓋部330の外表面および内表面を覆うニッケル層422よりも大きくしている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば図2Eに示す開口縁部110および蓋部330の構成に対して本実施形態を適用する場合、蓋部330の第2部分412の内表面を覆うニッケル層を、蓋部330の端面を覆うニッケル層よりも厚く形成してもよい。
【0102】
第1実施形態に係る電池に対しても、本実施形態の方法を適用できる。例えば、図1図3に示す開口縁部110および蓋部330の構成の場合、蓋部の第2の面S2を覆うニッケル層の厚みを、他の部分よりも厚く形成してもよい。つまり、蓋部330の第2係合部402において、開口縁部110と当接する界面およびその近傍のニッケル層を他の部分よりも厚く形成してもよい。また、蓋部330の第2係合部402の溶接部形成面およびその近傍のニッケル層の厚みを他の部分よりも厚く形成してもよい。
【0103】
電池缶100の材質は特に限定されず、鉄、および/または鉄合金(ステンレス鋼を含む)、銅、アルミニウム、アルミニウム合金(マンガン、銅などの他の金属を微量含有する合金など)、などが例示できる。蓋部330の材質も特に限定されず、電池缶100と同じ材質を例示することができる。
【0104】
ガスケット320および350の材質は限定されないが、例えば、一体成型が容易な材料として、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)などを用いることができる。
【0105】
次に、リチウムイオン二次電池を例に、電極体200の構成について例示的に説明する。
円筒型の電極体200は、捲回型であり、正極と負極とをセパレータを介して渦巻状に捲回して構成されている。正極および負極の一方には内部リード線210が接続されている。内部リード線210は、端子部310の中央領域312の内側面に溶接等により接続される。正極および負極の他方には、別のリード線が接続され、別のリード線は電池缶100の内面に溶接等により接続される。また、電池缶100の底部130と電極体200の間に別の絶縁板(下部絶縁板)を設けてもよい。この場合、別のリード線は別の絶縁板を迂回して延びるか、別の絶縁板に形成された貫通孔に挿通されていてもよい。
【0106】
(負極)
負極は、帯状の負極集電体と、負極集電体の両面に形成された負極活物質層とを有する。負極集電体には、金属フィルム、金属箔などが用いられる。負極集電体の材料は、銅、ニッケル、チタンおよびこれらの合金ならびにステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。負極集電体の厚みは、例えば5~30μmであることが好ましい。
【0107】
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて結着剤と導電剤を含む。負極活物質層は、気相法(例えば蒸着)で形成される堆積膜でもよい。負極活物質としては、Li金属、Liと電気化学的に反応する金属もしくは合金、炭素材料(例えば黒鉛)、ケイ素合金、ケイ素酸化物、金属酸化物(例えばチタン酸リチウム)などが挙げられる。負極活物質層の厚みは、例えば1~300μmであることが好ましい。
【0108】
(正極)
正極は、帯状の正極集電体と、正極集電体の両面に形成された正極活物質層とを有する。正極集電体には、金属フィルム、金属箔(ステンレス鋼箔、アルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔)などが用いられる。
【0109】
正極活物質層は、正極活物質および結着剤を含み、必要に応じて導電剤を含む。正極活物質は、特に限定されないが、LiCoO、LiNiOのようなリチウム含有複合酸化物を用いることができる。正極活物質層の厚みは、例えば1~300μmであることが好ましい。
【0110】
各活物質層に含ませる導電剤には、グラファイト、カーボンブラックなどが用いられる。導電剤の量は、活物質100質量部あたり、例えば0~20質量部である。活物質層に含ませる結着剤には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ゴム粒子などが用いられる。結着剤の量は、活物質100質量部あたり、例えば0.5~15質量部である。
【0111】
(セパレータ)
セパレータとしては、樹脂製の微多孔膜や不織布が好ましく用いられる。セパレータの材料(樹脂)としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミドなどが好ましい。セパレータの厚さは、例えば8~30μmである。
【0112】
(電解質)
電解質にはリチウム塩を溶解させた非水溶媒を用い得る。リチウム塩としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、イミド塩類などが挙げられる。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0113】
上記では、リチウムイオン二次電池を例として説明したが、本発明は、一次電池か二次電池かを問わず、封口体を用いて電池缶の封口を行う電池において利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る電池は、種々の缶型の電池に利用可能であり、例えば携帯機器、ハイブリッド自動車、電気自動車等の電源として使用するのに適している。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0115】
10、11:電池
100:電池缶
120:筒部
110:開口縁部
110T:端面
150:収容部
130:底部
200:電極体
210:内部リード線
300:封口部材
310:端子部
311:周縁部
312:中央領域
313:薄肉部
320:ガスケット
321:外側リング部
322:内側リング部
323:中継リング部
330:蓋部
330T:端面
331:天板部分
332:突出壁
334:支持部
350:第2のガスケット
401:第1係合部
402:第2係合部
411:第1部分
412:第2部分
413:第3部分
414:第4部分
415:第5部分
420:接合部
421:合金部
422、422A、422B:ニッケル層(第2のニッケル層)
423:ニッケル層(第1のニッケル層)
424:開口縁部の表面に形成されたニッケル層
425:下地金属層
501:第1外部リード線
502:第2外部リード線
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4
図5
図6
図7