(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】入力装置及び入力システム
(51)【国際特許分類】
H01H 19/00 20060101AFI20241206BHJP
H01H 19/02 20060101ALI20241206BHJP
H01H 25/00 20060101ALI20241206BHJP
H01H 89/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H01H19/00 Y
H01H19/02 C
H01H25/00 E
(21)【出願番号】P 2022515210
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003159
(87)【国際公開番号】W WO2021210240
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2020073692
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 公太
(72)【発明者】
【氏名】西小野 博昭
(72)【発明者】
【氏名】全 素希
(72)【発明者】
【氏名】西本 巧
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸夫
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159100(JP,A)
【文献】特開2003-131800(JP,A)
【文献】特許第6627085(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/00
H01H 19/02
H01H 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される少なくとも2つの固定電極と、
前記少なくとも2つの固定電極に対して可動な操作部と、
前記少なくとも2つの固定電極に接続された複数の接触子と、
前記操作部と一緒に動くことで前記接触子と接触及び離間する可動電極と、を備え、
前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動であり、
前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化し、
前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化し、
前記整数Nは、約数に4を含まない数であり、
前記接触子及び前記可動電極のうち、一方は金属で形成され、他方は、導電性を有する非金属で形成されている、
入力装置。
【請求項2】
複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される少なくとも2つの固定電極と、
前記少なくとも2つの固定電極に対して可動な操作部と、を備え、
前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動であり、
前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化し、
前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化し、
前記整数Nは、約数に4を含まない数であり、
前記少なくとも2つの固定電極は、前記操作部の動きに応じてオンとオフに切り替わるプッシュスイッチと接続された固定電極を含む、
入力装置。
【請求項3】
前記操作部が前記一対のクリック点の間を動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、4未満の回数変化する、
請求項1~2のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項4】
前記操作部が前記一対のクリック点の間を動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、1回である、
請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記操作部は、前記少なくとも2つの固定電極に対して回転可能である、
請求項1~4の何れか1項に記載の入力装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの固定電極はそれぞれ、異なる前記所定の配線電極に重なる、
請求項1~5の何れか1項に記載の入力装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の入力装置と、
前記複数の配線電極と、
前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う信号処理部と、を備える、
入力システム。
【請求項8】
複数の配線電極と、
前記複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される少なくとも2つの固定電極と、
前記少なくとも2つの固定電極に対して可動な操作部と、
前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う信号処理部と、を備え、
前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動であり、
前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化し、
前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化し、
前記整数Nは、約数に4を含まない数であり、
前記信号処理部は、前記複数の配線電極のうち、前記所定の配線電極以外の配線電極の出力信号に対して補正を行い、前記所定の配線電極の出力信号に対しては、補正を行わない、
入力システム。
【請求項9】
複数の配線電極と、
前記複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される少なくとも2つの固定電極と、
前記少なくとも2つの固定電極に対して可動な操作部と、
前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う信号処理部と、を備え、
前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動であり、
前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化し、
前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化し、
前記整数Nは、約数に4を含まない数であり、
前記信号処理部は、前記複数の配線電極のうち、前記所定の配線電極の出力信号と、前記所定の配線電極以外の配線電極の出力信号とで、異なる補正を行う、
入力システム。
【請求項10】
前記信号処理部は、前記所定の配線電極の出力信号に対して補正を行い、前記補正の前後で、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の相対関係は維持される、
請求項9に記載の入力システム。
【請求項11】
前記信号処理部は、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の相対関係に基づいて、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の初期状態を決定し、前記初期状態に基づいて前記操作部の位置を検出する、
請求項7~10の何れか1項に記載の入力システム。
【請求項12】
複数の配線電極と、
前記複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される少なくとも2つの固定電極と、
前記少なくとも2つの固定電極に対して可動な操作部と、
前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う信号処理部と、を備え、
前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動であり、
前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化し、
前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化し、
前記整数Nは、約数に4を含まない数であり、
前記信号処理部は、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の相対関係に基づいて、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の初期状態を決定し、前記初期状態に基づいて前記操作部の位置を検出し、
前記相対関係が前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態が同じという相対関係である場合は、前記信号処理部は、前記相対関係の状態から前記操作部が動いたときの前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化に基づいて、前記初期状態を決定する、
入力システム。
【請求項13】
複数の配線電極と、
前記複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される少なくとも2つの固定電極と、
前記少なくとも2つの固定電極に対して可動な操作部と、
前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う信号処理部と、を備え、
前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動であり、
前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化し、
前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化し、
前記整数Nは、約数に4を含まない数であり、
前記信号処理部は、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の相対関係に基づいて、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の初期状態を決定し、前記初期状態に基づいて前記操作部の位置を検出する、
前記相対関係が前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態が異なるという相対関係である場合は、前記信号処理部は、前記相対関係に基づいて、前記初期状態を決定する、
入力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入力装置及び入力システムに関する。より詳細には、本開示は、複数の配線電極のうちの所定の配線電極の上に配置される入力装置、及び、その入力装置を備える入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の入力装置は、センサ電極(配線電極)と、2つの電極(固定電極)と、回転操作ノブ(操作部)とを備える。2つの電極は、センサ電極と離間して対向するように配置される。回転操作ノブは、金属製であり、グランド電極として機能する。回転操作ノブは、2つの電極に対して回転可能である。回転操作ノブは、回転することで、2つの電極と個別に導通及び遮断することで、センサ電極と2つの電極との間の電気的状態を変化させる。
【0003】
上記の入力装置では、回転操作ノブがクリック点に位置するときに、センサ電極の出力電圧に対するキャリブレーション(すなわちセンサ電極の基準値の設定)が行われる。このとき、電極と対向するセンサ電極がその電極を正しく検出するために、キャリブレーション時は、2つの電極は、グランド電極と遮断される必要がある。すなわち、上記の入力装置は、各クリック点で2つの電極がグランド電極と必ず遮断されるように構成される必要がある。このように構成するには、回転操作ノブがクリック点間を動く間に、2つの電極の電気的状態は、合計で4回変化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、操作部がクリック点間を動いたときの固定電極の電気的状態の変化の総数を、より自由な回数に設定できる入力装置及び入力システムを提供することである。
【0006】
本開示の一態様に係る入力装置は、少なくとも2つの固定電極と、操作部と、複数の接触子と、可動電極と、を備える。前記少なくとも2つの固定電極は、複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される。前記操作部は、前記少なくとも2つの固定電極に対して可動である。前記複数の接触子は、前記少なくとも2つの固定電極に接続される。前記可動電極は、前記操作部と一緒に動くことで前記接触子と接触及び離間する。前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動である。前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化する。前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化する。前記整数Nは、約数に4を含まない数である。前記接触子及び前記可動電極のうち、一方は金属で形成され、他方は、導電性を有する非金属で形成されている。
本開示の一態様に係る入力装置は、少なくとも2つの固定電極と、操作部とを備える。前記少なくとも2つの固定電極は、複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される。前記操作部は、前記少なくとも2つの固定電極に対して可動である。前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動である。前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化する。前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化する。前記整数Nは、約数に4を含まない数である。前記少なくとも2つの固定電極は、前記操作部の動きに応じてオンとオフに切り替わるプッシュスイッチと接続された固定電極を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る入力システムは、前記一の態様に係る入力装置と、前記複数の配線電極と、前記信号処理部と、を備える。前記信号処理部は、前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う。
本開示の一態様に係る入力システムは、複数の配線電極と、少なくとも2つの固定電極と、操作部と、信号処理部と、を備える。前記少なくとも2つの固定電極は、前記複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される。前記操作部は、前記少なくとも2つの固定電極に対して可動である。前記信号処理部は、前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う。前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動である。前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化する。前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化する。前記整数Nは、約数に4を含まない数である。前記信号処理部は、前記複数の配線電極のうち、前記所定の配線電極以外の配線電極の出力信号に対して補正を行い、前記所定の配線電極の出力信号に対しては、補正を行わない。
本開示の一態様に係る入力システムは、複数の配線電極と、少なくとも2つの固定電極と、操作部と、信号処理部と、を備える。前記少なくとも2つの固定電極は、前記複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される。前記操作部は、前記少なくとも2つの固定電極に対して可動である。前記信号処理部は、前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う。前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動である。前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化する。前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化する。前記整数Nは、約数に4を含まない数である。前記信号処理部は、前記複数の配線電極のうち、前記所定の配線電極の出力信号と、前記所定の配線電極以外の配線電極の出力信号とで、異なる補正を行う。
本開示の一態様に係る入力システムは、複数の配線電極と、少なくとも2つの固定電極と、操作部と、信号処理部と、を備える。前記少なくとも2つの固定電極は、前記複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される。前記操作部は、前記少なくとも2つの固定電極に対して可動である。前記信号処理部は、前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う。前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動である。前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化する。前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化する。前記整数Nは、約数に4を含まない数である。前記信号処理部は、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の相対関係に基づいて、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の初期状態を決定し、前記初期状態に基づいて前記操作部の位置を検出する。前記相対関係が前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態が同じという相対関係である場合は、前記信号処理部は、前記相対関係の状態から前記操作部が動いたときの前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化に基づいて、前記初期状態を決定する。
本開示の一態様に係る入力システムは、複数の配線電極と、少なくとも2つの固定電極と、操作部と、信号処理部と、を備える。前記少なくとも2つの固定電極は、前記複数の配線電極のうちの所定の配線電極と重なるように配置される。前記操作部は、前記少なくとも2つの固定電極に対して可動である。前記信号処理部は、前記複数の配線電極の出力信号に対して信号処理を行う。前記操作部は、複数のクリック点を含む可動範囲内で可動である。前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態は、前記操作部の動きに応じて、複数の状態の間で変化する。前記複数のクリック点のうち隣り合う一対のクリック点の間を前記操作部が動いたとき、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の変化の総数は、整数N回変化する。前記整数Nは、約数に4を含まない数である。前記信号処理部は、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の相対関係に基づいて、前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態の初期状態を決定し、前記初期状態に基づいて前記操作部の位置を検出する。前記相対関係が前記少なくとも2つの固定電極の電気的状態が異なるという相対関係である場合は、前記信号処理部は、前記相対関係に基づいて、前記初期状態を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る入力システムを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の入力システムを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に含まれる入力装置を上側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の入力装置を下側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の入力装置を示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に含まれる回転接点板を後側から見た平面図である。
【
図8】
図8は、
図6に含まれるケースを前側から見た平面図である。
【
図9】
図9は、
図2に含まれるタッチパネル本体を示す分解斜視図である。
【
図10】
図10は、タッチパネル側から第1配線電極、第2配線電極及び固定電極を見た平面図である。
【
図11】
図11は、操作部の回転による固定電極の電気的状態の変化の一例を説明する説明図である。
【
図13】
図13は、比較例における操作部の回転による固定電極の電気的状態の変化の一例を説明する説明図である。
【
図14】
図14は、検出回路の動作を説明するフローチャートである。
【
図15】
図15は、検出回路の別の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る入力システムについて、図面を参照して詳細に説明する。以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0010】
(実施形態)
(概略)
図1~
図5を参照して、実施形態に係る入力システム1について説明する。
【0011】
図1~
図5に示すように、入力システム1は、入力装置2と、タッチパネル3(タッチセンサとも言う)と、表示装置4とを有する。表示装置4は、入力システム1の構成に含まれなくてもよい。
【0012】
表示装置4は、例えば液晶ディスプレイ又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの表示装置であって、各種情報を表示可能な表示装置である。表示装置4は、一般的な周知の表示装置を用いることができる。
【0013】
タッチパネル3は、表示装置4の表示画面4aに配置され、操作者による表示画面4aへのタッチ位置を検出する装置である。タッチ位置とは、操作者の指が表示画面4aに接触したときの表示画面4a上の位置である。タッチパネル3は、タッチパネル本体31と、カバーパネル32とを備えている(
図2参照)。タッチパネル本体31は、操作者による表示画面4aへのタッチ位置を検出する部分である。タッチパネル本体31は、表示画面4aの全体を覆うように表示画面4aに設けられている。カバーパネル32は、タッチパネル3の前面3aを覆う部材である。カバーパネル32は、例えばガラスによって形成されている、または、カバーパネル32は、透明樹脂によってシート状に形成されている。
【0014】
入力装置2は、操作者の操作(回転操作及び押し操作)を受け付ける装置である。入力装置2は、例えば円環形状である。入力装置2の前側には、操作者によって操作される操作部20が設けられており(
図3参照)、入力装置2の後面には、固定電極29a~29dが設けられている(
図4参照)。入力装置2は、入力装置2の後面とタッチパネル3の前面3aとが対向するように、タッチパネル3の前面3aの任意の位置に配置される(
図1参照)。この配置状態で、操作部20が操作されると、4つの固定電極29a~29dの電気的状態が変化する。この電気的状態がタッチパネル3のタッチ位置検出機能によって検出されることで、操作部20の操作が検出される。
【0015】
(詳細説明)
(入力装置の詳細)
図3~
図6を参照して入力装置2について説明する。
【0016】
図6に示すように、入力装置2は、操作部20と、回転体21と、固定部材22と、押圧部材23と、復帰ばね24と、クリックばね25と、回転クリックカム26と、回転接点板27とを備える。さらに、入力装置2は、ケース28と、複数(例えば4つ)の固定電極29a~29dと、複数(例えば4つ)の接触子30a~30dと、プッシュスイッチPS1とを備える。
【0017】
操作部20は、操作者の回転操作及び押し操作される部品である。操作部20は、ケース28(従って固定電極29a~29d)に対して回転可能である。操作部20は、開口部20sを有する平面視円環形の箱状である。操作部20の後面は、開口している。なお、操作部20は開口部20sを有していない外形でもよく、この場合では後述する内周壁部20cの有無は限定されない。
【0018】
操作部20の内部には、各構成要素(回転体21、固定部材22、押圧部材23、復帰ばね24、クリックばね25、回転クリックカム26、回転接点板27及びケース28)が収容される。操作部20は、基板部20aと、外周壁部20bと、内周壁部20cとを有する。基板部20aは、円板状である。外周壁部20bは、基板部20aの外周縁から後方に突出している。内周壁部20cは、基板部20aの内周縁から後方に突出している。
【0019】
操作部20は、複数の凹部と、複数の突起部とを有する。複数の凹部は、回転体21の後述の突起部21eと嵌り合って突起部21eを周方向に位置決めする。上記の複数の凹部は、操作部20の外周壁部20bの内周面において周方向に間隔を空けて設けられる。上記の複数の凹部は、操作部20の外周壁部20bの内周面に前後方向に沿って設けられる。上記の複数の突起部は、上記の複数の凹部と1対1に対応し、対応する凹部の底面に設けられる。上記の突起部は、対応する凹部に嵌り合った突起部21eと引っ掛かることで、操作部20を回転体21に固定する。
【0020】
回転体21は、ケース28に対して回転可能に配置される。回転体21は、操作部20と連結して操作部20と一緒に回転可能である。回転体21は、押し操作時の操作部20の前後動に連動して前後動可能である。回転体21は、
図2などで示すように、例えば開口部21sを有する平面視円環形の枠状である。回転体21は、基板部21aと、外周壁部21bと、内周壁部21cと、フランジ部21dとを有する。基板部21aは、円板状である。外周壁部21bは、基板部21aの外周縁から後方に突出している。内周壁部21cは、基板部21aの内周縁から後方に僅かに突出している。フランジ部21dは、内周壁部21cの内周面から開口部21sに突出している。内周壁部21cの後端面は、押圧部材23を押圧する部分である。フランジ部21dは、固定部材22のフランジ部22bに引っ掛かる部分である。なお、回転体21も、開口部21sを有していない形状であってもよく、この場合では内周壁部21cの有無は限定されない。
【0021】
回転体21は、複数の突起部21eと、複数の凹部21fとを有する。複数の突起部21eは、回転体21の外周面(外周壁部21bの外周面)において、周方向に間隔を空けて設けられている。複数の突起部21eは、操作部20における上記の複数の突起部と1対1に対応すると共に上記の複数の凹部と1対1に対応する。複数の突起部21eは、対応する凹部に嵌り合って、対応する突起部に引っ掛かる。複数の凹部21fは、回転クリックカム26の後述の固定片26cが嵌り合う部分である。複数の凹部21fは、回転体21の内周壁部21cにおいて、下端側から上端側に向かって切り欠くように設けられている。
【0022】
固定部材22は、回転体21を回転可能にケース28に固定する部材である。固定部材22は、回転体21の内側に配置するようにケース28に固定される。固定部材22は、
図6などに示すように、例えば開口部を有する平面視円環状形の筒状である。固定部材22も開口部を有していない形状などとしてもよい。
【0023】
固定部材22は、筒状部22aと、フランジ部22bと、複数の引掛片22cとを有する。筒状部22aは、短尺な円筒状である。フランジ部22bは、筒状部22aの前縁端から外周側に突出している。フランジ部22bは、回転体21のフランジ部21dの前面に引っ掛かる部分である。フランジ部22bは、回転体21の前方向の動きを規制する。フランジ部22bは、押し操作時の回転体21の操作支点となる。複数の引掛片22cは、ケース28の後述の突起部28eに引っ掛かる部分である。複数の引掛片22cは、筒状部22aの後端において、後方に突出すると共に周方向に間隔を空けて並んでいる。引掛片22cには、ケース28の後述の突起部28eが引っ掛かる引掛孔が設けられている。
【0024】
押圧部材23は、回転体21を介して操作部20の前後動に応じて前後動することで、ケース28内の後述のプッシュスイッチPS1を押圧する部材である。押圧部材23は、回転体21の後側に配置し且つケース28に対して回転不能にケース28に配置される。押圧部材23は、短尺な円筒状である。押圧部材23は、押圧部材本体23aと、複数の突起部23bとを有する。押圧部材本体23aは、短尺な円筒状である。複数の突起部23bは、ケース28の後述の凹部28fと嵌り合うことで、押圧部材23をケース28において周方向に位置決めする。複数の突起部23bは、押圧部材本体23aの外周面において周方向に間隔を空けて設けられている。
【0025】
復帰ばね24は、操作部20を前方に付勢する部材である。復帰ばね24は、弾性金属製の薄板状である。復帰ばね24は、ばね本体24aと、複数の固定片24bとを有する。ばね本体24aは、円環板状であり、周方向に沿って前後に湾曲している。複数の固定片24bは、ケース28に固定される部分である。複数の固定片24bは、ばね本体24aの外周縁において、周方向に間隔を空けて設けられ且つ後方に突出している。復帰ばね24は、回転体21とケース28の外周壁(後述する)の前端との間に配置される。この状態で、復帰ばね24の固定片24bは、ケース28の外周壁部28b(後述する)の外周面に固定される。復帰ばね24は、回転体21を前方に付勢することで、操作部20を前方に付勢する。
【0026】
クリックばね25は、回転クリックカム26と共に、操作者による回転操作に対してクリック感触を発生させる部品である。クリックばね25は、回転クリックカム26の前面の後述の凹凸部26bに接触するようにケース28に固定される。クリックばね25は、弾性金属製で円環形の薄板状である。クリックばね25は、ばね本体25aと、2つの突出部25bと、4つの固定片25cと、2つの突出片25dとを有する。ばね本体25aは、円環形の薄板状である。2つの突出部25bは、ばね本体25aにおいて、周方向に間隔を空けて設けられ且つばね本体25aの前面側から後面側に円弧状に突出している。4つの固定片25cは、固定部材22の筒状部22aの後端とケース28の後述の内周壁部28cの前端との間に挟まれて固定される部分である。4つの固定片25cは、ばね本体25aの内周端において、周方向に沿って間隔を空けて設けられ且つ内側に突出している。2つの突出片25dは、固定部材22の引掛片22cの引掛孔に引っ掛かる部分である。突出片25dが引掛片22cの引掛孔に引っ掛かることで、固定部材22においてクリックばね25の周方向の位置が位置決めされる。
【0027】
回転クリックカム26は、クリックばね25と共に、操作者による回転操作に対してクリック感触を発生させる部品である。回転クリックカム26は、クリックばね25の後側でクリックばね25の突出部25bに接触し且つ回転可能にケース28内に配置される。回転クリックカム26は、例えば合成樹脂によって形成されている。回転クリックカム26は、円環板状である。回転クリックカム26は、回転クリックカム本体26aと、凹凸部26bと、2つの固定片26cとを有する。回転クリックカム本体26aは、中央孔26sを有する円環板状である。凹凸部26bは、回転クリックカム本体26aの前面において、周方向の全体にわたって設けられている。凹凸部26bは、凸部と凹部を交互に繰り返すように形成されている。凹凸部26bにクリックばね25の突出部25bが弾性的に接触することで、回転クリックカム26が回転したときに凹凸部26bの各凸部を超えるごとにクリック感触が得られる。2つの固定片26cは、回転クリックカム本体26aの外周縁において、周方向に間隔を空けて設けられ且つ前方に突出している。各固定片26cが回転体21の凹部21fに嵌り合うことで、回転クリックカム26は、回転体21と一体的に回転する。
【0028】
回転接点板27は、円環板状である。回転接点板27は、回転接点板本体27aと、可動電極27bとを有する(
図7参照)。回転接点板本体27aは、絶縁性を有する絶縁基板であり、中央孔27sを有する円環板状である。可動電極27bは、回転接点板本体27aの後面に設けられている。可動電極27bは、複数の電極部27cと、複数の配線部27dとを有する。複数の電極部27cは、接触子30a~30dが接触する部分であり、例えば矩形状である。複数の電極部27cは、回転接点板本体27aの後面において周方向に間隔を空けて並んでいる。各配線部27dは、複数の電極部27cを電気的に接続する部分である。回転接点板本体27aの後面のうち、可動電極27b以外の領域(絶縁基板)は、絶縁領域を形成している。回転接点板本体27aの前面は、回転クリックカム26の後面に固定されている。これにより、回転接点板27は、回転クリックカム26と一体的に回転する。したがって、可動電極27bは、回転クリックカム26と一体的に回転(可動)する。回転接点板本体27aの後面には、接触子30a~30dが弾性的に接触している。
【0029】
ケース28には、各構成要素(操作部20、回転体21、固定部材22、押圧部材23、復帰ばね24、クリックばね25、回転クリックカム26、回転接点板27、4つの固定電極29a~29dと、4つの接触子30a~30d及びプッシュスイッチPS1)が取り付けられる(
図4及び
図8参照)。4つの固定電極29a~29dは、4つの接触子30a~30dと1対1に対応している。
【0030】
ケース28は、絶縁性を有する樹脂製である。ケース28は、中央孔28sを有する平面視円環形で前面開放の箱状である。ケース28は、底部28aと、外周壁部28bと、内周壁部28cとを有する。底部28aは、例えば円板状である。外周壁部28bは、底部28aの外周縁から前方に突出している。内周壁部28cは、底部28aの内周縁から前方に突出している。
【0031】
ケース28は、複数(例えば2つ)の凹部28dと、複数(例えば4つ)の突起部28eと、複数(例えば4つ)の凹部28fとを有する。複数の凹部28dは、復帰ばね24の固定片24bが嵌り合って固定される部分である。複数の凹部28dは、外周壁部28bの外周面において周方向に間隔を空けて設けられている。複数の突起部28eは、固定部材22の複数の引掛片22cと引っ掛かる部分である。4つの突起部28eは、内周壁部28cの内周面において周方向に間隔を空けて設けられている。複数の凹部28fは、押圧部材23の複数の突起部23bが前後方向に移動可能で且つ周方向に移動不能に嵌る部分である。複数の凹部28fは、外周壁部28bの内周面において、周方向に間隔を空けて設けられ且つ前後方向に延びている。
【0032】
底部28aの後面には、4つの固定電極29a~29dが設けられている(
図4参照)。固定電極29a~29dは、入力装置2がタッチパネル3の前面3aに配置されたとき、タッチパネル3の後述の第1配線電極X1及び第2配線電極Y1と重なる電極である。各固定電極29a~29dは、例えば略矩形状である。各固定電極29a~29dは、ケース28の後面において、周方向に間隔(例えば等間隔)を空けて配置されている。
【0033】
底部28aの前面には、4つの接触子30a~30dと、プッシュスイッチPS1とが固定されている(
図8参照)。各接触子30a~30dは、回転接点板27の後面と弾性的に接触する(すなわち可動電極27bと電気的に接触する)部品である。各接触子30a~30dは、回転接点板27と接触する接点S1~S4を有する。各接触子30a~30dは、底部28aの前面に設けられた配線を介して、対応する固定電極29a~29cと電気的に接続されている。なお、接触子30aは、固定電極29aと接続され、接触子30bは、固定電極29bと接続され、接触子30c,30dは、固定電極29cと接続されている。プッシュスイッチPS1は、操作部20の押し操作によってオンとオフとが切り替えられる押しボタン式のスイッチである。プッシュスイッチPS1は、オンとオフに応じて、固定電極29dと固定電極29cとを導通及び遮断する。プッシュスイッチPS1は、底部28aの所定箇所に設けられている。
【0034】
以下、固定電極29cを共通電極29cと呼ぶ場合がある。
【0035】
図5に示すように、ケース28には、回転体21、固定部材22、押圧部材23、復帰ばね24、クリックばね25及び回転クリックカム26が取り付けられている。
【0036】
固定部材22は、固定部材22の引掛片22cがケース28の突起部28eに引っ掛かることで、ケース28の内周壁部28cの前側に固定されている。回転クリックカム26は、ケース28の内部において、内周壁部28cの外側に隣接し且つ回転可能に配置されている。この状態で、回転クリックカム26の後面の回転接点板27とケース28の底部28aの4つの接触子30a~30dとが弾性的に接触している。クリックばね25は、固定片25cが固定部材22の筒状部22aの後端とケース28の内周壁部28cの前端との間に挟まることで、回転クリックカム26の前側に固定されている。クリックばね25は、突出片25dが固定部材22の引掛片22cの引掛孔に引っ掛かることで、クリックばね25の周方向に移動が禁止されている。また、クリックばね25の突出部25bは、回転クリックカム26の凹凸部26bに弾性的に接触している。押圧部材23は、ケース28の内部において、外周壁部28bの外側に隣接して配置されている。この状態で、押圧部材23の突起部23bが外周壁部28bの凹部28fに嵌ることで、押圧部材23は、ケース28に対して前後方向に移動可能で且つ周方向に移動不能である。押圧部材23の後ろには、プッシュスイッチPS1が配置されている。
【0037】
回転体21は、ケース28の外周側を覆うようにケース28に配置される。この状態で、回転体21の内部にケース28の外周壁部28b及び押圧部材23が配置される。この状態で、回転体21のフランジ部21dが固定部材22のフランジ部22bの後側に配置されることで、回転体21の前方への移動(すなわちケース28からの脱落)が禁止される。回転体21の凹部21fに回転クリックカム26の固定片26cが嵌り合うことで(
図6参照)、回転クリックカム26は、回転体21と一体的に回転可能である。また、復帰ばね24は、ケース28の外周壁部28bの前端と回転体21との間に配置されて、回転体21を前方に付勢している。復帰ばね24は、固定片24bがケース28の凹部28dに嵌り合うことで(
図6参照)、外周壁部28bの前端に固定されている。操作部20は、固定部材22及び回転体21を覆うようにケース28に取り付けられている。この状態で、回転体21の突起部21eが、操作部20の上記の凹部に嵌り合うと共に操作部20の上記の突起部に引っ掛かる。これにより、操作部20は、回転体21と一体的に回転可能に回転体21に固定される。操作部20は、回転体21を介してケース28に取り付けられている。
【0038】
この入力装置2では、固定部材22及びクリックばね25は、ケース28に固定されている。また、押圧部材23は、回転体21の前後動に応じて前後動可能にケース28内に配置されている。また、操作部20、回転体21及び回転クリックカム26は、一体的に回転可能に連結されている。操作部20及び回転体21は、更に一体的に前後動可能に連結されている。
【0039】
したがって、操作部20が回転操作されると、操作部20と一緒に回転クリックカム26が回転する。これにより、ケース28に設けられた接触子30a~30dの接点S1~S4が、回転クリックカム26に固定された回転接点板27の後面上を移動する。この移動によって、接触子30a~30dと回転接点板27の可動電極27bとの接触及び離間が繰り返される。このとき、各接触子30c,30dの少なくとも一方と接触子30aとが共に可動電極27bと接触すると、固定電極29aと共通電極29cとが導通する。また、接触子30aと接触子30c,30dとの何れか一方が可動電極27bと離間すると、固定電極29aと共通電極29cとが遮断する。各接触子30c,30dの少なくとも一方と接触子30bとが共に可動電極27bと接触すると、固定電極29bと共通電極29cとが導通する。また、接触子30bと接触子30c,30dとの何れか一方が可動電極27bと離間すると、固定電極29bと共通電極29cとが遮断する。
【0040】
また、回転クリックカム26の回転によって、クリックばね25の突出部25bが回転クリックカム26の凹凸部26b上を相対的に移動する。突出部25bが凹凸部26bの各凸部を超えるときに、操作部20にクリック感触が発生する。
【0041】
また、操作部20が押し操作されると、操作部20と一緒に回転体21及び押圧部材23が後方に移動し、押圧部材23の押圧によってプッシュスイッチPS1がオンになる。また、操作部20の押し操作が解除されると、復帰ばね24によって操作部20、回転体21及び押圧部材23が元の位置に復帰する。これにより、プッシュスイッチPS1がオフになる。なお、プッシュスイッチPS1がオンになると、固定電極29c,29d間が導通し、プッシュスイッチPS1がオフになると、固定電極29c,29d間が遮断される。
【0042】
操作部20は、360度回転可能である。換言すれば、操作部20は、360度の可動範囲を有する。凹凸部26bの各凹部の位置をクリック点と呼ぶと、操作部20の可動範囲は、等間隔に並んだ複数のクリック点を含む。操作部20は、各クリック点を順番に辿りながら可動範囲内を回転する(すなわち動く)。各クリック点は、凹凸部26bの各凹部の位置であるため、可動範囲内で操作部20が安定する位置である。隣り合う一対のクリック点の間隔を1クリックとすると、操作部20は、回転するとき、1クリック単位で回転する。
【0043】
本実施形態では、上述のように、各固定電極29a,29bは、操作部20の回転操作に応じて、共通電極29cと導通及び遮断する。各固定電極29a,29bの電気的状態は、共通電極29cとの導通及び遮断によって変化する。また、固定電極29dも、操作部20の押し操作に応じて、共通電極29cと導通及び遮断する。固定電極29dの電気的状態も、共通電極29cとの導通及び遮断によって変化する。なお、電気的状態とは、固定電極29a,29b,29dの静電容量値、出力可能な電荷量、又は出力可能な電位である。すなわち、各固定電極29a,29b,29dが共通電極29cと導通すると、各固定電極29a,29b,29dの静電容量値は、通電極の静電容量値の分、増加(変化)する。これにより、各固定電極29a,29b,29dが出力可能な電荷量は、共通電極29cの帯電電荷量の分、増加する。このとき、各固定電極29a,29b,29dの出力電位も増加(変化)する。
【0044】
以下では、固定電極29a,29b,29dが共通電極29cと導通しているときの固定電極29a,29b,29dの電気的状態を、導通状態(又はHigh状態(以後、H状態とよぶ))と記載する場合がある。また、固定電極29a,29b,29dが共通電極29cと遮断しているときの固定電極29a,29b,29dの電気的状態を、遮断状態(又はLow状態(以後、L状態と呼ぶ))と記載する場合がある。これらの場合、固定電極29a,29b,29dの電気的状態は、操作部20の動きに応じて、導通状態と遮断状態との間で変化可能である。
【0045】
(タッチパネル本体の詳細)
図9に示すように、タッチパネル本体31は、複数の第1配線電極X1と、複数の第2配線電極Y2と、フィルム基材311と、フィルム基材312と、光学透明粘着シート313と、駆動回路314と、検出回路315とを備えている。以下、複数の第1配線電極X1を区別するときは、第1配線電極X11,X12,X13,・・・と記載する(
図10参照)。複数の第2配線電極Y1を区別するときは、第2配線電極Y11,Y12,Y13,・・・と記載する(
図10参照)。
【0046】
フィルム基材311は、透明性を有する部材(樹脂又はガラス)によって形成されている。フィルム基材311は、例えば、2組の対辺311s,311tを有する矩形のシート状である。フィルム基材312も、フィルム基材311と同様に、2組の対辺312s,312tを有する矩形のシート状である。フィルム基材312は、フィルム基材311と同形同大の矩形のシート状である。複数の第1配線電極X1及び第2配線電極Y1は、透明性を有する導電部材(例えばITO(Indium Tin Oxide))によって形成されている。
【0047】
複数の第1配線電極X1は、フィルム基材311の前面311aに膜状に形成されている。複数の第1配線電極X1は、フィルム基材311の前面311aにおいて、前面311aの一方の対辺311tに沿って互いに平行に延びると共に他方の対辺311sに沿って互いに間隔を空けて並んでいる。第1配線電極X1は、例えば細長い帯状である(
図10参照)。複数の第1配線電極X1は、フレキシブルプリント配線基板316を介して駆動回路314に接続される。複数の第1配線電極X1の各々によって、タッチパネル3の前面3aは、敷き詰められている状態になっている。
【0048】
なお、本実施形態では、第1配線電極X1の電極形状は、
図9及び
図10に図示したものに限定されず、図示したもの以外に、ダイヤモンド形のパッドが連結されて構成されたダイヤモンド形状などであってもよいし、複数の拡幅部と複数の挟幅部とを延出方向に沿って規則的に繰り返して配置した形状などであってもよい。
【0049】
複数の第2配線電極Y1は、フィルム基材312の前面312aに膜状に形成されている。複数の第2配線電極Y1は、フィルム基材312の前面312aにおいて、一方の対辺312sに沿って互いに平行に延びると共に他方の対辺312tに沿って並んでいる。第2配線電極Y1は、例えば細長い帯状に形成されている。複数の第2配線電極Y1は、フレキシブルプリント配線基板316を介して検出回路315に接続される。複数の第2配線電極Y1の幅は、第1配線電極X1の幅よりも細い。
【0050】
なお、第2配線電極Y1も、ダイヤモンド形のパッドが連結されて構成されたダイヤモンド形状などであってもよいし、複数の拡幅部と複数の挟幅部とを延出方向に沿って規則的に繰り返して配置した形状などであってもよい。
【0051】
フィルム基材311とフィルム基材312は、光学透明粘着シート313を介して互いに重ね合わされることで、互いに接着されている。光学透明粘着シート313は、フィルム基材311の前面311aとフィルム基材312の後面312bとの間に挟み込まれている。光学透明粘着シート313は、透明性を有するシートの両面に粘着剤が塗布された部材である。
【0052】
フィルム基材311,312が互いに接着された状態では、フィルム基材311,312に直交する方向から見て、複数の第2配線電極Y1は、複数の第1配線電極X1に交差(直交)している(
図10参照)。複数の第1配線電極X1と複数の第2配線電極Y1は、フィルム基材311及び光学透明粘着シート313によって互いに間隔を空けて配置されている。
【0053】
フィルム基材312の前面312aには、光学透明粘着シートによってカバーパネル32(
図2参照)が接着される。フィルム基材311の後面311bには、両面テープによって金属板5(
図2参照)が接着される。
【0054】
駆動回路314は、複数の第1配線電極X1に対して、一方の端の第1配線電極X11から他方の端の第1配線電極X1nに向かって1つずつ選択的に走査電圧を印加する。駆動回路314は、複数の第1配線電極X1のうち、走査電圧が印加されない残りの第1配線電極X1を基準電位(すなわちグランド電位)に接続する。
【0055】
検出回路315は、第1配線電極X1毎に、1つの第1配線電極X1に走査電圧が印加されている間、複数の第2配線電極Y1の各々の出力電圧を、一方の端の第2配線電極Y11から他方の端の第2配線電極Y1nに向かって1つずつ選択的に検出する。これにより、検出回路315は、静電容量値が変化した第2配線電極Y1を検出する。すなわち、操作者がタッチパネル3の前面3aの任意の位置をタッチすると、そのタッチ位置に重なる第2配線電極Y1の静電容量値が変化する。検出回路315は、上記のように第2配線電極Y1の出力電圧(静電容量値)の変化を検出することで、その検出時に選択された第1配線電極X1の配列位置及び第2配線電極Y1の配列位置とから、タッチパネル3の前面3aでのタッチ位置を検出する。以下、このようにタッチ位置を検出する機能を、タッチ位置検出機能と呼ぶ。
【0056】
検出回路315は、タッチパネル3の前面3aに入力装置2が配置されている状態で、入力装置2の操作部20が操作(回転操作又は押し操作)されたとき、タッチ位置検出機能を用いて、操作部20の操作を検出する。
【0057】
検出回路315は、タッチパネル3の起動時(すなわち電源投入時)等に、各第2配線電極Y1の出力電圧に対して、キャリブレーションを行う。なお、キャリブレーションは、タッチパネル3の起動時等に、タッチパネル3上に金属電極(例えば入力装置2の固定電極29a~29d)が存在すると、この金属電極の影響をキャンセルするように、各第2配線電極Y1の出力電圧を補正することである。
【0058】
なお、検出回路315は、配線電極Y1の出力電圧に対して信号処理を行う信号処理部の一例である。
【0059】
図10を参照して、検出回路315の動作(より詳細には、操作部20の操作時の固定電極29a,29b,29dの電気的状態の検出手順)を説明する。
【0060】
図10では、複数の第1配線電極X1は、
図10の紙面の上下方向に延びると共に
図10の紙面の左右方向に並んでいる。複数の第2配線電極Y1は、
図10の紙面の左右方向に延びると共に
図10の紙面の上下方向に並んでいる。
図10では、複数の第2配線電極Y1は、複数の第1配線電極X1の裏側(
図10の紙面の垂直方向の奥側)に配置されている。
【0061】
入力装置2がタッチパネル3の前面3aに配置された状態では、第1配線電極X1の長手方向に沿った方向において、各固定電極29a~29dは互いに重ならない。換言すれば、タッチパネル3の正面から見て、固定電極29a~29dは、互いに同じ第1配線電極X1と重ならない。
【0062】
入力装置2の操作部20が回転操作されると、回転クリックカム26が回転する。これにより、接触子30a~30cが、回転接点板27の可動電極27bと接触及び離間を交互に繰り返す。これにより、各固定電極29a,29bは、共通電極29cと導通(H状態)及び遮断(L状態)を交互に繰り返す。
【0063】
そして、タッチパネル3のタッチ位置検出機能によって、固定電極29a,29bの電気的状態が導通状態であるか又は遮断状態であるかが検出される。例えば、固定電極29a,29c間が導通し、固定電極29b,29c間が遮断した状態を考える。
【0064】
この状態で、複数の第1配線電極X1のうち、第1配線電極X12に選択的に走査電圧が印加されると、選択された第1配線電極X12以外の残り全部の第1配線電極X1は、基準電位(すなわちグランド電位)に接続される。この接続状態では、固定電極29aは、選択された第1配線電極X12と容量結合し、共通電極29cは、基準電位に接続された第1配線電極X19と容量結合している。これにより、固定電極29a,29cの静電電荷が一緒になって第1配線電極X19を介して基準電位に放電される。この結果、その放電の分、第1配線電極X12と固定電極29aとの間の静電容量値が大きく変化する。この静電容量値の変化を、タッチパネル3の検出回路315が、固定電極29aと重なる第2配線電極Y15の出力電圧に基づいて検出する。
【0065】
その後、複数の第1配線電極X1のうち、第1配線電極X17に選択的に走査電圧が印加されると、選択された第1配線電極X17以外の残り全部の第1配線電極X1は、基準電位(すなわちグランド電位)に接続される。この接続状態では、固定電極29bは、第1配線電極X16,X17と容量結合している。これにより、固定電極29bの静電電荷が第1配線電極X16を介して基準電位に放電される。このとき、固定電極29bは、共通電極29cと遮断しているため、共通電極29cの静電容量値は加算されない。このため、第1配線電極X17と固定電極29bとの間の静電容量値は、あまり変化しない。この静電容量値の変化を、タッチパネル3の検出回路315が、固定電極29bと重なる第2配線電極Y13の出力電圧に基づいて検出する。
【0066】
このように、検出回路315は、配線電極Y1の出力信号に基づいて、操作部20の回転操作時の固定電極29a,29bの電気的状態を検出する。
【0067】
他方、操作部20が押し操作された場合は、プッシュスイッチPS1がオンになる。これにより、固定電極29d,29c間が導通する。この状態で、複数の第1配線電極X1のうち、第1配線電極X14に選択的に走査電圧が印加されると、選択された第1配線電極X14以外の残り全部の第1配線電極X1は、基準電位(すなわちグランド電位)に接続される。この接続状態では、固定電極29dは、選択された第1配線電極X14と容量結合し、共通電極29cは、基準電位に接続された第1配線電極X19と容量結合している。これにより、固定電極29d,29cの静電電荷が一緒になって第1配線電極X19を介して基準電位に放電される。この結果、その放電の分、第1配線電極X14と固定電極29dとの間の静電容量値が大きく変化する。この静電容量値の変化を、タッチパネル3の検出回路315が、固定電極29dと重なる第2配線電極Y19の出力電圧に基づいて検出する。なお、プッシュスイッチPS1がオフのときは、固定電極29dは、共通電極29cと導通しないため、第1配線電極X14と固定電極29dとの間の静電容量値があまり変化しない。そして、この静電容量値の変化を、タッチパネル3の検出回路315が、固定電極29dと重なる第2配線電極Y19の出力電圧に基づいて検出する。
【0068】
このように、検出回路315は、配線電極Y1の出力信号に基づいて、操作部20の押し操作時の固定電極29dの電気的状態を検出する。
【0069】
なお、上記の説明では、一例として、回転操作時は、固定電極29a,29bのうち、固定電極29aが導通状態になることで、第2配線電極Y15の出力電圧が増加し、固定電極29bが遮断状態となることで、第2配線電極Y13の出力電圧はあまり変わらない。この場合は、固定電極29aの電気的状態は、固定電極29bの電気的状態よりも大きい。検出回路315は、第2配線電極Y13,Y15の出力電圧から、このような固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係を検出する。
【0070】
このように操作部20が回転操作されると、固定電極29a,29bの電気的状態(導通状態または遮断状態)が変化する。そして、検出回路315が、固定電極29a,29bに重なる第2配線電極Y13,Y15の出力電圧に基づいて、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係(例えば大小関係)を検出する。そして、検出回路315は、後述のように、検出した相対関係に基づいて、固定電極29a,29bの電気的状態が導通状態であるか遮断状態であるかを判定する。そして、検出回路315は、そのように判定した固定電極29a,29bの電気的状態に基づいて、操作部20の回転位置を時系列的に検出し、この検出結果から操作部20の回転量及び回転方向を検出する。
【0071】
(入力システムの特徴)
以下、入力システム1の特徴を説明する。入力システム1では、操作部20が1クリック分回転するとき、各固定電極29a,29bの電気的状態の変化の総数が1回となるように設定されている。
【0072】
ここで、固定電極29a,29bの電気的状態を「個別の電気的状態」と記載し、固定電極29a,29bの全体の電気的状態を「全体の電気的状態」と記載する場合がある。この場合、上記の「操作部20が1クリック分回転するとき、固定電極29a,29bの電気的状態の変化の総数が1回となる」とは、操作部20が1クリック分回転するとき、固定電極29a,29bの全体の電気的状態が1回だけ変化することである。なお、固定電極29a,29bの個別の電気的状態は、同時に変化しないものとする。
【0073】
図11及び
図12A~
図12Dを参照して、操作部20が回転したときの固定電極29a,29bの全体の電気的状態の変化の様子を説明する。以下、上述の通り、固定電極29a,29bが共通電極29cと導通しているときの固定電極29a,29bの個別の電気的状態(H状態)をHと記載する。また、固定電極29a,29bが共通電極29cと遮断しているときの固定電極29a,29bの個別の電気的状態(L状態)をLと記載する。各固定電極29a,29bの個別の電気的状態Q1,Q2は、操作部20の動きに応じて、HとLの2つの状態の間を変化可能である。各固定電極29a,29bの全体の電気的状態Q12は、固定電極29a,29bの個別の電気的状態Q1,Q2を組み合わせた状態であり、(Q1,Q2)と表記される。すなわちQ12=(Q1,Q2)である。そうすると、固定電極29a,29bの全体の電気的状態Q12は、操作部20の動きに応じて、(H,L)、(L,H)、(H,L)及び(L,L)の4つの状態(複数の状態)の間で変化可能である。本実施形態では、操作部20が1クリック分回転するとき、固定電極29a,29bの全体の電気的状態Q12は、1回だけ変化するように設定されている。なお、1クリックとは、上述の通り、隣り合う一対のクリック点の間の距離である。
【0074】
具体的には、本実施形態では、
図11に示すように、操作部20の回転位置がクリック点C1であるとき、電気的状態Q12(=(Q1,Q2))が(L,H)であるとする。この場合、操作部20が各クリック点C2~C3を順番に回転していくと、すなわち、操作部がクリック点C1から1クリックΔC分ずつ回転すると、電気的状態Q12は、(L,H)から順番に(L,L)、(H,L)及び(H,H)と変化する。
【0075】
より詳細には、操作部20がクリック点C1に位置するときは、
図12Aに示すように、接触子30a,30cの接点S1,S3が可動電極27bと離間し、接触子30b,30dの接点S2,S4が可動電極27bと接触する。この結果、固定電極29aは共通電極29cと遮断し、固定電極29bは共通電極29cと導通する。すなわち、電気的状態Q12は(L,H)となる。そして、操作部20がクリック点C1からクリック点C2へと回転すると、
図12Bに示すように、接触子30a~30d全ての接点S1~S4が可動電極27bと離間する。この結果、固定電極29a,29bは共に共通電極29cと遮断される。すなわち、電気的状態Q12は(L,L)となる。そして、操作部20がクリック点C2からクリック点C3へと更に回転すると、
図12Cに示すように、接触子30a,30cの接点S1,S3が可動電極27bと接触し、接触子30b,30dの接点S2,S4が可動電極27bと離間する。この結果、固定電極29aは共通電極29cと導通し、固定電極29bは共通電極29cと遮断する。すなわち、電気的状態Q12は(H,L)となる。そして、操作部20がクリック点C3からクリック点C4へと更に回転すると、
図12Dに示すように、接触子30a~30d全ての接点S1~S4が可動電極27bと接触する。この結果、固定電極29a,29bは共に共通電極29cと導通される。すなわち、電気的状態Q12は(H,H)となる。
【0076】
このように、本実施形態では、操作部20が1クリック分回転するとき、固定電極29a,29bの全体の電気的状態Q12が1回だけ変化するように設定される。これにより、固定電極29a,29bの個別の電気的状態Q1,Q2の変化の時間間隔をより長くできる。この結果、タッチパネル3上で入力装置2を回転操作しているときに、複数の第2配線電極Y1をより速いスキャン速度でスキャンしても、各配線電極Y1の出力電圧の読み取りの失敗を抑制できる。すなわち、スキャン速度に対する読み取りの追随性を向上できる。
【0077】
なお、
図13を参照して、比較例の入力装置の場合の電気的状態Q12(=(Q1,Q2))の変化の様子を説明する。比較例の入力装置では、操作部20が各クリック点(例えばC1~C3)に位置するとき、固定電極29a,29bの全体の電気的状態Q12は必ず(L,L)となるように設定されている。この場合は、操作部20がクリック点C1からクリック点C2まで1クリック分回転すると、電気的状態Q12は、(L,L)から順に(H,L)、(H,H)、(L,H)及び(L,L)と4回変化する。
【0078】
このように、比較例の入力装置では、操作部20が1クリック分回転するとき、電気的状態Q12が4回変化するため、個別の電気的状態Q1,Q2の変化の時間間隔は、本実施形態の場合と比べて短くなる。この結果、タッチパネル3上で比較例の入力装置を回転操作しているときに、複数の第2配線電極Y1をスキャンすると、各配線電極Y1の出力電圧の読み取りを失敗する場合が生じる。これに対し、本実施形態の入力装置2では、操作部20が1クリック分回転するとき、電気的状態Q12は1回変化するだけであるため、各配線電極Y1の出力電圧の読み取りの失敗を抑制できる。この結果、スキャンに対する配線電極Y1の読取追随性を向上できる。
【0079】
次に、タッチパネル3での各配線電極Y1の出力電圧に対するキャリブレーションについて説明する。
【0080】
比較例(従来)のタッチパネルでは、タッチパネルの前面に直交する方向から見て入力装置2の固定電極29a,29bが重なる配線電極Y1の出力電圧が第1閾値を超えると、固定電極29a,29bの電気的状態はH状態(導通状態)であると判定される。なお、第1閾値は、配線電極Y1に重なる固定電極29a,29bが導通状態であるか遮断状態であるかを判定するための閾値である。また、配線電極Y1の出力電圧が第1閾値を超えないと、配線電極Y1上に重なる固定電極29a,29bの電気的状態はL状態(遮断状態)であると判定される。このように、入力装置2の固定電極29a,29bの電気的状態が判定され、この判定結果(固定電極29a,29bの電気的状態の時系列など)に基づいて、入力装置2に対する回転操作(回転量及び回転方向)が検出される。
【0081】
また、比較例(従来)のタッチパネルでは、配線電極Y1の出力電圧に対するキャリブレーション(すなわち通常のキャリブレーション)では、タッチパネルの起動時(すなわち電源投入時)等に、配線電極Y1上に金属電極が存在すると、この金属電極の静電容量値の影響をキャンセルするように、配線電極Y1の出力電圧が補正される。具体的には、タッチパネル3上の入力装置2において、固定電極29a,29bと共通電極29cとが導通した状態で、その固定電極29a,29bと重なる配線電極Y1の出力電圧に対してキャリブレーションが行われる。この場合、このキャリブレーションで使用される補正値は、固定電極29aの静電容量値と共通電極29cの静電容量値との和になり、共通電極29cの静電容量値分、補正され過ぎる。このため、このように過剰補正された配線電極Y1では、固定電極29a,29bの電気的状態がH状態であっても、配線電極Y1の出力電圧(補正後の出力電圧)が上記の所定閾値を超えなくなる。これにより、固定電極29a,29bの電気的状態がH状態であることを、正しく検出できなくなる。この結果、入力装置2に対する回転操作を、正しく検出できなくなる。
【0082】
一般的に(すなわち比較例のタッチパネルでも本実施形態のタッチパネル3でも)、キャリブレーションは、クリック点で行われる。このため、上記の過剰補正を避けるためには、固定電極29a,29bの全体の電気的状態Q12は、クリック点で(L,L)であることが望ましい。本実施形態では、操作部20が1クリック分回転するとき、電気的状態Q12が1回だけ変化するように設定される。このため、電気的状態Q12が各クリック点で(L,L)にならない場合がある。そこで、本実施形態では、電気的状態Q12が各クリック点で(L,L)にならなくても、上記の過剰補正を避けるように、後述のようにキャリブレーションを行う。以下、本実施形態でのキャリブレーションについて説明する。
【0083】
本実施形態のタッチパネル3では、検出回路315は、複数の配線電極Y1のうち、タッチパネル3の前面3aに直交する方向から見て入力装置2の固定電極29a~29dと重なる配線電極Y1(所定の配線電極)と、タッチパネル3の前面3aに直交する方向から見て入力装置2の固定電極29a~29dと重ならない配線電極Y1(所定の配線電極以外の配線電極)とで、異なるキャリブレーションを行う。
【0084】
より詳細には、検出回路315は、入力装置2の固定電極29a~29dと重ならない配線電極Y1に対しては、上述の通常のキャリブレーションを行う。また、検出回路315は、入力装置2の固定電極29a~29dと重なる配線電極Y1に対しては、固定電極29a,29bの個別の電気的状態の相対関係(例えば大小関係)を変化させるキャリブレーション(例えば上記の通常のキャリブレーション)を行わない。この場合、検出回路315は、入力装置2の固定電極29a~29dと重なる配線電極Y1に対しては、補正値をゼロとしたキャリブレーションを行う。すなわち、検出回路315は、固定電極29a,29bと重なる配線電極Y1の出力電圧に対してキャリブレーションを行い、そのキャリブレーションの前後で、固定電極29a,29bの(個別の)電気的状態の相対関係を維持する。
【0085】
なお、補正値をゼロとした上記のキャリブレーションは、実質的に、キャリブレーションを行わないことと同じである。このため、固定電極29a~29dに重なる配線電極Y1の出力電圧に対しては、キャリブレーションを行わないとしてもよい。この場合は、固定電極29a~29dと重ならない配線電極Y1の出力電圧に対しては、キャリブレーション(例えば通常のキャリブレーション)が行われる。そして、固定電極29a~29dと重なる配線電極Y1の出力電圧に対しては、キャリブレーションは行われない。
【0086】
また、検出回路315は、入力装置2の固定電極29a~29dと重なる配線電極Y1の出力電圧に基づいて、入力装置2の回転操作を検出する。このとき、検出回路315は、固定電極29a,29bの個別の電気的状態の相対関係に基づいて、各固定電極29a,29bの個別の電気的状態を判定する。検出回路315は、この判定結果に基づいて入力装置2の操作部20の回転位置を判定し、この回転位置の時系列から回転操作の回転量及び回転方向を判定する。
【0087】
次に、検出回路315の上述のキャリブレーションの動作を
図14のフローチャートに基づいて説明する。検出回路315は、複数の配線電極Y1に対して順番にステップS1~S3の処理を行う。ステップS1では、検出回路315は、判定対象の配線電極Y1が入力装置2の固定電極29a~29dと重なっているか否かを判定する。より詳細には、検出回路315は、判定対象の配線電極Y1の出力電圧が第2閾値を超えるか否かを判定する。なお、第2閾値は、配線電極Y1上に固定電極29a~29dが配置されているか否かを判定するための閾値であり、上記の第1閾値よりも低い値である。
【0088】
検出回路315は、上記の出力電圧が第2閾値を超える場合は、判定対象の配線電極Y1は固定電極29a~29dと重なっていると判定する。また、検出回路315は、上記の出力電圧が第2閾値を超えない場合は、判定対象の配線電極Y1は固定電極29a~29dと重なっていないと判定する。この判定では、配線電極Y1が固定電極29a~29dと重なっている場合は、配線電極Y1の出力電圧が、固定電極29a~29dの静電容量値の分高くなって第2閾値を超えるという現象を利用している。
【0089】
そして、検出回路315は、判定対象の配線電極Y1が入力装置2の固定電極29a~29dと重なっていないと判定した場合(S1:NO)は、判定対象の配線電極Y1の出力電圧に対して、上述の通常のキャリブレーションを行う(ステップS2)。そして、処理が終了する。また、検出回路315は、判定対象の配線電極Y1が入力装置2の固定電極29a~29dと重なっていると判定した場合(S1:YES)は、判定対象の配線電極Y1の出力電圧に対して、通常とは別のキャリブレーションを行う(ステップS3)。例えば、検出回路315は、補正値をゼロとしてキャリブレーションを行う。そして、処理が終了する。なお、ステップ3では、検出回路315は、入力装置2の固定電極29a~29dと重なっている配線電極Y1の出力電圧に対しては、キャリブレーションを行わないとしてもよい。
【0090】
次に
図15を参照して、検出回路315が操作部20の回転位置を検出するときの動作を説明する。本実施形態では、複数の配線電極Y1のうち、入力装置2の固定電極29a~29dと重なる配線電極Y1の出力電圧に対しては、補正値がゼロのキャリブレーションが行われる(すなわち実質的にキャリブレーションが行われない)。このため、固定電極29a~29dと重なる各配線電極Y1の出力電圧は、ともに一定電圧ずれている可能性がある。このため、上記の第1閾値を用いた判定方法では、固定電極29a,29bの電気的状態(H状態かL状態か)は正しく判定できない。このため、固定電極29a,29bと重なる各配線電極Y1の出力電圧からは、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係(例えば大小関係)しか分からない。以下の説明では、このような場合の操作部20の回転位置の検出の仕方を説明する。
【0091】
検出回路315は、複数の配線電極Y1の中から、固定電極29a,29b(すなわち操作部20の回転位置の検出に関係する固定電極)と重なる配線電極Y1を特定する(ステップS10)。より詳細には、入力装置2の回転操作時(すなわち操作部20の回転時)は、4つの固定電極29a~29dに重なる配線電極Y1のうち、固定電極29a,29bに重なる配線電極Y1の出力電圧は、他の固定電極29c,29dに重なる配線電極Y1の出力電圧と比べて、例えば大きく変化する。このため、検出回路315は、そのように変化する配線電極Y1を、固定電極29a,29bに重なる配線電極Y1として特定する。このとき、例えば、各固定電極29a,29bに重なる配線電極Y1が1つずつ計2つ特定される。以下、特定された2つの配線電極Y1を所定の配線電極Y1と記載する。
【0092】
そして、検出回路315は、所定の配線電極Y1の出力電圧に基づいて、固定電極29a,29bの電気的状態の初期状態を決定する手順を開始する(ステップS11)。より詳細には、検出回路315は、まず、所定の配線電極Y1の出力電圧に基づいて、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係(すなわち大小関係)が「同じ」であるか否かを判定する(ステップS12)。ここで、相対関係が「同じ」とは、固定電極29a,29bの電気的状態が同じであることである。なお、相対関係が「同じ」でないとは、固定電極29a,29bの電気的状態が同じでない(すなわち異なる)ことである。
【0093】
検出回路315は、上記の相対関係が「同じ」でないと判定した場合(S12:NO)、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係に基づいて、上記の初期状態を決定する(ステップS13)。より詳細には、検出回路315は、固定電極29a,29bのうち、電気的状態の大きい方の初期状態をH状態(導通状態)と決定し、電気的状態の小さい方の初期状態をL状態(遮断状態)と決定する。
【0094】
他方、検出回路315は、上記の相対関係が「同じ」であると判定した場合(S12:YES)は、上記の相対状態から操作部20が1クリック分回転したときの所定の配線電極Y1の出力電圧の変化(すなわち固定電極29a,29bの電気的状態の変化)に基づいて、上記の初期状態を決定する(ステップS14)。より詳細には、検出回路315は、上記のように電気的状態が変化すると、電気的状態の相対関係が「同じ」でなくなる。これにより、検出回路315は、固定電極29a,29bのうち電気的状態が大きい方の初期状態をH状態(導通状態)と決定し、電気的状態が小さい方の初期状態をL状態(遮断状態)と決定する。
【0095】
すなわち、上記の相対関係が「同じ」である場合は、固定電極29a,29bは、ともに同じ電気的状態であるが、ともにL状態であるか、ともにH状態であるかは分からない。この相対関係の状態から操作部20が動くと、相対関係が変化して「同じ」でなくなる。このとき、固定電極29a,29bの一方の電気的状態が低下すれば、その低下した方の初期状態をL状態(遮断状態)と決定し、他方の初期状態をH状態(導通状態)と決定する。
【0096】
そして、操作部20が更に1クリック分回転すると、検出回路315は、決定した初期状態と、上記の更なる1クリック分の回転時に検出された所定の配線電極Y1の出力電圧(すなわち固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係)とから、上記の更なる1クリック分の回転時の固定電極29a,29bの電気的状態を判定する(ステップS15)。
【0097】
すなわち、本実施形態では、所定の配線電極Y1の出力電圧からは、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係しか分からない。このため、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係から初期状態を決定(推定)し、決定した初期状態と、次の1クリック分の回転時に検出された相対関係とから、当該次の1クリック分の回転時の電気的状態を判定(特定)している。
【0098】
そして以降は、検出回路315は、所定の配線電極Y1の出力電圧から固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係が検出される毎に、検出された相対関係と、その検出時の1つ前に判定された電気的状態とに基づいて、当該検出時の電気的状態を判定する(ステップS16)。
【0099】
そして、検出回路315は、ステップS15,S16の処理結果(すなわち判定した固定電極29a,29bの電気的状態)に基づいて、入力装置2の操作部20の回転位置を検出する(ステップS17)。このように、本実施形態では、検出回路315は、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係に基づいて、固定電極29a,29bの電気的状態の初期状態を決定し、その初期状態に基づいて操作部20の回転位置(位置)を検出する。
【0100】
次に、入力装置2の回転接点板27の可動電極27bの材質について説明する。可動電極27bは、導電性を有する非金属で形成されている。導電性を有する非金属とは、例えば、導電性フィラー(例えばカーボンフィラー)を混入した樹脂である。可動電極27bを、導電性を有する非金属で形成することで、可動電極27bと接触子30a~30bとの溶着を抑制できる。これにより、可動電極27bと接触子30a~30dとの溶着を抑制するための潤滑剤(例えばグリス)を可動電極27bと接触子30a~30bとの接触点に塗布する必要をなくせる。この結果、上記の潤滑剤がタッチパネル3の前面3aに漏れることを防止できる。なお、本実施形態では、接触子30a~30dが金属で形成され、可動電極27bが導電性を有する非金属で形成される。ただし、可動電極27bと接触子30a~30dとのうちの少なくとも一方が、導電性を有する非金属で形成されればよい。
【0101】
なお、本実施形態では、上述の通り、電気的状態Q1,Q2の変化の時間間隔が比較例と比べて長くなるため、可動電極27bと接触子30a~30dとの間の接触時間も比較例と比べて長くなる。このため、可動電極27bと接触子30a~30dとの一方が非金属で形成されても、可動電極27bと接触子30a~30dとの接触時の導通性を十分に確保できる。
【0102】
(主要な効果)
本実施形態では、操作部20が1クリック分回転するとき、固定電極29a,29bの電気的状態Q1,Q2の変化の総数は、1回となるが、4の倍数以外の回数であればよい。換言すれば、上記の総数は、整数N回であって、整数Nは、約数に4を含まない数であればよい。これにより、クリック点間における固定電極29a,29bの電気的状態の変化の総数が4の倍数に制限されない。この結果、上記の総数を、より自由な回数に設定できる。
【0103】
望ましくは、上記の総数は4回未満であり、更に望ましくは、上記の総数は1回である。これにより、上述の通り、上記の比較例と比べて、上記の総数を低減できる。このため、各配線電極Y1の出力電圧の読み取りの失敗を抑制でき、スキャンに対する配線電極Y1の読取追随性を向上できる。
【0104】
(変形例)
次に上記の実施形態の変形例を説明する。下記の変形例は、組み合わせて実施されてもよい。
【0105】
(変形例1)
上記の実施形態では、検出回路315は、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係から固定電極29a,29bの電気的状態の初期状態を決定し、その初期状態とその後に検出される固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係とに基づいて操作部20の回転位置を検出する。ただし、検出回路315は、初期状態を決定せずに、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係が検出される毎に、その相対関係だけに基づいて、検出時の固定電極29a,29bの電気的状態を判定してもよい。より詳細には、検出回路315は、検出された相対関係が「同じ」でないときは、その相対関係に基づいて検出時の固定電極29a,29bの電気的状態を判定する。他方、検出回路315は、検出された相対関係が「同じ」であるときは、1つ前の相対関係の状態が現在(検出時)の相対関係の状態に変化したときのその変化に基づいて、検出時の固定電極29a,29bの電気的状態を判定する。例えば、現在(検出時)の相対状態が「同じ」である場合において、1つ前の相対状態(「同じ」でない相対状態)が、固定電極29aの電気的状態が増加して現在の相対状態に変化した場合は、検出回路315は、現在の相対状態を、固定電極29a,29bの電気的状態が共にH状態である相対状態であると判定する。
【0106】
(変形例2)
上記の実施形態では、検出回路315は、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係から固定電極29a,29bの電気的状態の初期状態を決定し、その初期状態に基づいて操作部20の回転位置を検出する。ただし、検出回路315は、変換テーブルを用いて、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係に基づいて、固定電極29a,29bの電気的状態を判定してもよい。この場合の変換テーブルは、固定電極29a,29bの電気的状態の相対関係と、固定電極29a,29bの電気的状態との対応関係を示す。
【0107】
(変形例3)
上記の実施形態では、検出回路315は、タッチパネル3の起動時にキャリブレーションを行う。ただし、検出回路315は、タッチパネル3の周囲温度の影響によって固定電極29a,29bの出力電圧が所定閾値以下になると、キャリブレーションを行ってもよい。この場合、検出回路315は、複数の配線電極Y1のうち、入力装置2の固定電極29a,29bに重なる配線電極Y1と、入力装置2の固定電極29a,29bに重ならない配線電極Y1とで、異なるキャリブレーションを行う。
【0108】
より詳細には、検出回路315は、固定電極29a,29bに重ならない配線電極Y1に対しては、上述の通常のキャリブレーションを行い、固定電極29a,29bに重なる配線電極Y1に対して、通常と異なるキャリブレーションを行う。この場合の通常のキャリブレーションでは、使用する補正値は、補正対象の配線電極Y1の出力電圧に応じて決まる。この場合の通常と異なるキャリブレーションでは、使用する補正値として、通常のキャリブレーションで使用された補正値(すなわち固定電極29a,29bと重ならない各配線電極Y1で使用された補正値)の平均値を使用する。これにより、固定電極29a,29bと重なる配線電極Y1は、キャリブレーションが行われても、補正され過ぎることが防止される。
【0109】
すなわち、温度変化が原因で配線電極Y1の出力電圧が変化する場合は、それらの出力電圧は、複数の配線電極Y1の全体で同じように変化する。このため、固定電極29a,29bに重なる配線電極Y1で使用される補正値を、固定電極29a,29bと重ならない配線電極Yで使用した補正値の平均値という形で推定している。
【0110】
(変形例4)
上記の実施形態では、タッチパネル3の複数の第1配線電極X1は全て、タッチ検出機能用の配線電極である場合を例示する。ただし、複数の第1配線電極X1は、タッチ位置検出機能用の配線電極以外に、入力装置2の固定電極29a~29dの電圧変化を検出する専用の配線電極を含んでもよい。また、複数の第1配線電極X1は全て、入力装置2の固定電極29a~29dの電圧変化を検出する専用の配線電極であってもよい。
【0111】
(その他の変形例)
上記の実施形態では、操作部20の回転位置の検出に関する固定電極は、固定電極29a,29bの2つであるが、3つ以上であってもよい。この場合、操作部20の回転位置の検出に関する固定電極の電気的状態は、操作部20の動きに応じて、4以上の複数の電気的状態の間で変化してもよい。
【0112】
上記の実施形態では、操作部20は、回転式の操作部であるが、スライド式の操作部であってもよい。
【0113】
(まとめ)
第1の態様の入力装置(2)は、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)と、操作部(20)とを備える。少なくとも2つの固定電極(29a,29b)は、複数の配線電極(Y1)のうちの所定の配線電極(Y1)と重なるように配置される。操作部(20)は、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)に対して可動である。操作部(20)は、複数のクリック点(例えばC1~C4)を含む可動範囲内で可動である。少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)は、操作部(20)の動きに応じて、複数の状態の間で変化する。複数のクリック点(例えばC1~C4)のうち隣り合う一対のクリック点の間を操作部(20)が動いたとき、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化の総数は、整数N回変化する。整数Nは、約数に4を含まない数である。
【0114】
この構成によれば、クリック点間における少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化の総数が、4の倍数の回数に制限されない。このため、操作部(20)がクリック点間を動いたときの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化の総数を、より自由な回数に設定できる。
【0115】
第2の態様の入力装置(2)は、第1の態様において、操作部(20)が一対のクリック点の間を動いたとき、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化の総数は、4未満の回数変化する。
【0116】
この構成によれば、クリック点間における少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化の総数を低減できる。これにより、複数の配線電極(Y1)をより速いスキャン速度でスキャンしても、各配線電極(Y1)の出力信号(例えば出力電圧)の読み取りの失敗を抑制できる。すなわち、スキャン速度に対する読み取りの追随性を向上できる。
【0117】
第3の態様の入力装置(2)は、第2の態様において、操作部(20)が一対のクリック点の間を動いたとき、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化の総数は、1回である。
【0118】
この構成によれば、クリック点間における少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化の総数を更に低減できる。すなわち、スキャン速度に対する読み取りの追随性を更に向上できる。
【0119】
第4の態様の入力装置(2)は、第1~第3の態様の何れか1つにおいて、操作部(20)は、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)に対して回転可能である。
【0120】
この構成によれば、回転式の操作部(20)に適用可能である。
【0121】
第5の態様の入力装置(2)は、第1~第4の態様の何れか1つにおいて、複数の接触子(30a~30d)と、可動電極(27b)と、を備える。複数の接触子(30a~30d)は、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)に接続されている。可動電極(27b)は、操作部(20)と一緒に動くことで接触子(30a~30d)と接触及び離間する。接触子(30a~30d)及び可動電極(27b)のうち、一方は金属で形成され、他方は、導電性を有する非金属で形成されている。
【0122】
この構成によれば、可動電極(27b)と接触子(30a~30d)との溶着を防止できる。これにより、可動電極(27b)と接触子(30a~30d)との接点にグリスを塗布することを不要にできる。
【0123】
第6の態様の入力装置(2)は、第1~第5の態様の何れか1つにおいて、前記少なくとも2つの固定電極はそれぞれ、異なる前記所定の固定電極に重なる。
【0124】
この構成によれば、少なくとも2つの固定電極がそれぞれ異なる所定の固定電極に重なる場合に適用することができる。
【0125】
第7の態様の入力装置(2)は、第1~第6の態様の何れか1つにおいて、前記少なくとも2つの固定電極は、前記操作部に動きに応じてオンとオフに切り替わるプッシュスイッチと接続された固定電極を含む。
【0126】
この構成によれば、少なくとも2つの固定電極が操作部に動きに応じてオンとオフに切り替わるプッシュスイッチと接続された固定電極を含む場合に適用することができる。
【0127】
第8の態様の入力システムは、第1~第7の態様の何れか1つに記載の入力装置(2)と、複数の配線電極(Y1)と、信号処理部(315)と、を備える。信号処理部(315)は、複数の配線電極(Y1)の出力信号に対して信号処理を行う。
【0128】
この構成によれば、上述の入力装置(2)を備えた入力システムを提供できる。
【0129】
第9の態様の入力システムでは、第8の態様において、信号処理部(315)は、複数の配線電極(Y1)のうち、所定の配線電極(Y1)以外の配線電極(Y1)の出力信号に対して補正(例えばキャリブレーション)を行い、所定の配線電極(Y1)の出力信号に対しては、補正(例えばキャリブレーション)を行わない。
【0130】
この構成によれば、配線電極(Y1)の出力信号に対する補正によって、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の相対関係が変化することを防止できる。
【0131】
第10の態様の入力システムでは、第8の態様において、信号処理部(315)は、複数の配線電極(Y1)のうち、上記の所定の配線電極(Y1)の出力信号と、上記の所定の配線電極(Y1)以外の配線電極(Y1)の出力信号とで、異なる補正を行う。
【0132】
この構成によれば、複数の配線電極(Y1)のうち、上記の所定の配線電極(Y1)の出力信号と、上記の所定の配線電極(Y1)以外の配線電極(Y1)の出力信号とで、それぞれ最適な補正を行うことができる。
【0133】
第11の態様の入力システムでは、第10の態様において、信号処理部(315)は、上記の所定の配線電極(Y1)の出力信号に対して補正を行う。補正の前後で、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の相対関係は維持される。
【0134】
この構成によれば、所定の配線電極(Y1)の出力信号に対して補正が行われても、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の相対関係を維持できる。
【0135】
第12の態様の入力システムでは、第8~第11の態様の何れか1つにおいて、信号処理部(315)は、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の相対関係(例えば大小関係)に基づいて、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の初期状態を決定し、初期状態に基づいて操作部(20)の位置を検出する。
【0136】
この構成によれば、所定の配線電極(Y1)の出力信号からは、少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の相対関係しか分からなくても、操作部(20)の位置を検出できる。
【0137】
第13の態様の入力システムでは、第12の態様において、相対関係が少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)が同じという相対関係である場合は、信号処理部(315)は、上記の相対関係の状態から操作部(20)が動いたときの少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化に基づいて、初期状態を決定する。
【0138】
この構成によれば、相対関係が少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)が同じという相対関係である場合は、その相対関係の状態から操作部(20)が動いたときの少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)の変化に基づくことで、操作部(20)の位置を検出できる。
【0139】
第14の態様の入力システムでは、第12の態様において、相対関係が少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)が異なるという相対関係である場合は、信号処理部(315)は、上記の相対関係に基づいて、初期状態を決定する。
【0140】
この構成によれば、相対関係が少なくとも2つの固定電極(29a,29b)の電気的状態(Q1,Q2)が異なるという相対関係である場合は、その相対関係に基づいて、初期状態を決定できる。
【符号の説明】
【0141】
1 入力システム
2 入力装置
20 操作部
27b 可動電極
29a,29b 固定電極
30a~30d 接触子
315 検出回路(信号処理部)
C1~C4 クリック点
Y1 第2配線電極(配線電極)
Q1,Q2 電気的状態