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  • 特許-樽の仕上げ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】樽の仕上げ装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 19/26 20060101AFI20241206BHJP
   B24B 19/24 20060101ALI20241206BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20241206BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241206BHJP
【FI】
B24B19/26
B24B19/24
B24B23/02
B24B41/06 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023144463
(22)【出願日】2023-09-06
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】500308934
【氏名又は名称】若鶴酒造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523340775
【氏名又は名称】株式会社島田木材
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 優平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 丈寛
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/077181(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0078096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 19/26
B24B 19/24
B24B 23/02
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口した樽の保持装置と、前記保持装置を傾け制御する傾斜装置と、前記樽の内側表面層を削り取るための削り装置とを有し、
記樽の保持装置は前記樽の上部側を保持する上部保持枠と、前記樽の下部側を保持する下部保持枠と、前記傾斜装置にて保持装置を傾けた状態で前記樽を回転させる回転支持部とを有し、
記削り装置は、グラインダーと前記グラインダーを支持する支持アームと、前記支持アームを上下移動する移動装置と前記支持アームの角度を調整する角度調整シャフトとを有し、
前記樽の上部開口部から内側に前記グラインダーを挿入するものであることを特徴とする樽の仕上装置。
【請求項2】
請求項に記載の樽の仕上げ装置を用いた樽の仕上げ方法であって、樽の内側表面を炭化処理した当該樽を保持装置に装着するステップと、傾斜装置にて前記樽を30°~60°傾けるステップと、前記樽を回転させるステップと、前記回転している樽の内側表面層を削り装置で削り取るステップとを有し、前記樽の内側表面を活性化させることを特徴とする樽の仕上げ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製樽の仕上げに関し、特に樽の内側の表面を炭化処理した後に表面層を削り取り活性化させるのに使用する仕上げ装置に係る。
【背景技術】
【0002】
ウイスキー等の洋酒やワイン等の熟成に木製の樽が使用されている。
これらの樽は木材を乾燥させた後に板状に加工し、この板材を鉄の輪にはめて樽形状に組み立てる。
樽の内側表面は、焼入れが行われる。
例えば特許文献1には、樽をローラーの上に水平方向横置きにし、回転させながら内周表面を炭化処理する技術を開示する。
このようにして製作された樽に、ウイスキーやワイン等を入れて熟成させる。
これによりウイスキーやワインに樽の成分がにじみ出て樽の持ち味を生かしたウイスキーやワインとなる。
しかし、この長期間の熟成により木材中の成分が減少し、樽の内側表面層の活性度が低下する。
このような場合に、使用済みの樽の内側表面を焼入れし、炭化処理した後に表面層を削り取ることで含有成分が減少した表面層が除去され、活性化させて再利用することができる。
【0003】
炭化した内側の表面層をグラインダーにて削り取る方法に、これまではローラー上に水平横置きにて回転させながら、グラインダーで削り取る方法が行われていた。
これでは削りカスが前後に舞い作業環境が悪いだけでなく、削り品質の確認が難しく削り残りも発生しやすかった。
また、樽を縦置きにして回転させると、装置の高さ方向の寸法が大きくなり、削り取り状態を目視で確認するのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-12690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
木製の樽の内側表面層を削り取り活性化処理するのに、作業環境が向上し、削り取りの品質確認もしやすい樽の仕上げ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樽の仕上げ装置は、樽の保持装置と、前記保持装置を傾け制御する傾斜装置と、前記樽の内側表面層を削り取るための削り装置とを有することを特徴とする。
【0007】
ここで樽の保持装置は、樽を回転制御するために保持し、傾斜装置にて、この樽を傾けた状態で回転制御できるようにするものである。
本発明は、樽を斜めに傾けた状態で回転させる点に特徴がある。
【0008】
樽は一般に、底部と上部の部分よりも、上下方向中央部が外側に膨らんだ状態になっていて、外周部に鉄の輪がはめられている。
そこで本発明は、前記樽の保持装置は前記樽の上部側を保持する上部保持枠と、前記樽の下部側を保持する下部保持枠と、前記樽を回転させる回転支持部とを有するようにするのが好ましい。
回転支持部の構造は、樽を傾けて保持装置とともに回転できれば構造に制限はない。
これにより、樽を斜めに傾け、回転させる際に仮に鉄の輪が外れても、上下の保持枠で確実に固定保持できる。
【0009】
本発明において、削り取り作業は手作業で行うこともできるが、前記削り装置は、グラインダーと前記グラインダーを支持する支持アームと、前記支持アームを上下移動する移動装置と前記支持アームの角度を調整する角度調整シャフトとを有しているのが好ましい。
【0010】
本発明に係る樽の仕上げ処理方法は、樽の内側表面を炭化処理した当該樽を保持装置に装着するステップと、傾斜装置にて前記樽を30°~60°傾けるステップと、前記樽を回転させるステップと、前記回転している樽の内側表面層を削り装置で削り取るステップとを有し、前記樽の内側表面を活性化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、樽を斜めに傾けた状態で保持及び回転制御したので、削り取ったカスは自重で下降し、樽の上側開口部から削り取り品質の確認がしやすい。
また、仮に削り残しが生じたとしても、手作業で手直しがしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る仕上げ装置の構成例を示す。
図2】(a)は保持装置に樽を投入し、(b)は上部保持枠を下降させて樽を固定した状態を示す。
図3】(a)は保持装置を傾け、樽を斜めにした状態を示し、(b)はグラインダーで内周表面層を削り取っている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る樽の仕上げ装置の構成例を図に基づいて説明するが、本発明は樽を傾けて保持し、回転制御できればよく、本実施例に限定されない。
【0014】
図1に仕上げ装置の斜視図を示す。
樽1を装着保持する樽の保持装置10を有し、この保持装置10は樽を保持した状態で回転制御できる回転支持部15を有する。
仕上げ装置は、樽1を保持装置に保持した状態で、樽1を傾ける傾斜装置20をさらに有する。
また、樽1の内側(内周面)の表面層を削り取るためのグラインダーを備えた削り装置30を有する。
【0015】
樽の保持装置10は、樽1の下部側の外周部を保持する下部保持枠12と樽1の上部側の外周部を保持するための上部保持枠11とを有している。
上下の保持枠11,12は、ドーナッツ状のプレート板にした例になっているが、樽を固定保持できれば、これに限定されない。
下部保持枠12に対して上部保持枠11は複数の支持柱13a,13b,13c,・・・と上下動可能な支持シャフト14a,14b,14c,・・・との組み合せによって支持され、図2(a)に示すように保持装置10の内側に樽1を投入し、(b)に示すように上部保持枠11を下降させて樽1を固定する。
樽1は開口部外径よりも下側の中央部の外径の方が徐々に大きくなっているので、上部保持枠11に設けた円形状の開口部内側寸法に合致した状態で締め付けるように固定される。
【0016】
傾斜装置20は、保持装置10を回転支持部15にて回転可能にしつつ、図1では右側方向に傾けることができるように、ベース部21を両側から軸受け部21bとシャフト21aにて回転可能に支持し、傾斜アーム22にて傾斜可能に連結されている。
この傾斜アーム22は、傾斜したベース部を支持するのが目的で、手動でも電動でもよい。
本実施例では、樽1が所定の角度まで傾くと、それ以上傾かないようにベース部21側に連結したストッパーフレーム23が架台側の係止部24に当たるようになっている。
樽1の傾ける角度は30~60°の範囲が好ましく、本実施例は45°に設定した。
【0017】
削り装置30は、先端部に電動式のグラインダー31を取り付けた支持アーム32と、この支持アーム32の後端側を支持ブラケット33に軸着してある。
また、支持アーム32の途中に角度調整シャフト34を連結することで、この角度調整シャフトの長さによりグラインダーの前後方向の位置が制御されている。
また、樽1の内側の削り取る高さ(位置)に合せて支持ブラケット33が上下動する。
本実施例では、フレーム材で架台を製作し、この架台に沿って上下動するようになっている。
架台は左右に設けた2段のサイドフレーム46a,46b,47a,47bの一端を一対の縦フレーム41,42に連結し、縦フレーム41,42の上部を上部横フレーム45で横方向に連結するとともに、傾斜フレーム43,44が約45°になるように連結してある。
本実施例では、サイドフレームの他端側に係止部24を設けるためのコ字形状のフレーム枠48を設け、このフレーム枠48と傾斜フレーム43,44と連結してあるが、サイドフレーム47b,46bと連結してもよい。
この左右の傾斜フレーム43,44の一方に駆動モーター35を取り付け軸部36aの回転により、支持ブラケット33を固定した上下動横フレーム37が上下動する。
本実施例では、一方の傾斜フレーム43にのみに駆動モーター35を取り付け、他方の傾斜フレーム44に設けた軸部36bと左右のプーリー38a,38b及びその間に張設したベルト38cにて連結した例になっている。
これらの制御は、制御盤50にて操作される。
【0018】
次に樽1の仕上げの流れについて説明する。
図2(a),(b)に示すように樽1を保持装置10に装着し、図3(a)に示すように樽1を傾斜装置20の作動によりθの方向に約45°傾ける。
この傾ける操作は、電動でも手動でもよい。
次に図3(b)に示すように樽1をWの方向に回転させながら、グラインダー31をSの方向に下降又は上昇させながら内側の表面層を削り取る。
このように樽1を傾けたので、削り取られたカスは自重で下降し、内部が目視しやすくなる。
また、樽1が傾いているので上部の開口部から削り取り状態の確認もしやすい。
したがって、必要に応じて削り残りを手直しすることもできる。
削りカスは必要に応じて、吸引除去もできる。
これにより、使用済みの古い樽を再生しながら、繰り返し使用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 樽
10 保持装置
11 上部保持枠
12 下部保持部
15 回転支持部
20 傾斜装置
21 ベース部
22 傾斜アーム
30 削り装置
31 グラインダー
32 支持アーム
33 支持ブラケット
34 角度調整シャット
【要約】
【課題】木製の樽の内側表面層を削り取り活性化処理するのに、作業環境が向上し、削り取りの品質確認もしやすい樽の仕上げ装置の提供を目的とする。
【解決手段】樽の保持装置と、前記保持装置を傾け制御する傾斜装置と、前記樽の内側表面層を削り取るための削り装置とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3