(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】走行装置
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20241206BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B05C1/02
(21)【出願番号】P 2021107941
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100193390
【氏名又は名称】藤田 祐作
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(73)【特許権者】
【識別番号】515082759
【氏名又は名称】株式会社KMユナイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 克己
(72)【発明者】
【氏名】竹延 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】バンタ ジョン ノエル
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-075215(JP,U)
【文献】特開昭63-069559(JP,A)
【文献】実開昭52-027828(JP,U)
【文献】特開平08-105300(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02265142(DE,A1)
【文献】特開昭63-268009(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0318865(US,A1)
【文献】特開2019-118875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B05C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側の対象面に沿って車輪により走行する走行装置であって、
前記走行装置から外側に突出して突端が前記対象面に接触する、前記走行装置に対し内外に進退可能な突出材と、
前記突出材を外側に付勢する付勢機構と、
前記突出材の基端側と連結され、前記突出材の進退に応じて前記車輪の向きを変えるためのリンク機構と、
を有し、
前記走行装置は、塗装装置を載置する載置台を有し、
前記突出材、前記リンク機構、および前記付勢機構は、前記載置台の下面に設けられ、
前記突出材の前記走行装置からの突出長が所定長のとき、前記車輪の向きが前記走行装置を直進させる向きとなり、
前記突出長が前記所定長から前記所定長未満となったとき、前記車輪の向きが前記走行装置を前記直進時と比較して前記対象面から遠ざける向きとなり、
前記突出長が前記所定長から前記所定長を超えたとき、前記車輪の向きが前記走行装置を前記直進時と比較して前記対象面に近付ける向きとなることを特徴とする走行装置。
【請求項2】
前記付勢機構は、弾性体によるものであることを特徴とする請求項1記載の走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装等に用いる走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
壁面の塗装を行う際、壁面に沿って走行する塗装装置を施工に用いることがある(例えば、特許文献1参照)。ただしこの場合、塗装装置と壁面の間の距離を一定に保てなければ所定の塗装品質を確保することができない。例えば距離が近すぎると塗料の垂れが生じ、距離が遠すぎると膜厚不足・ムラ・ザラツキが生じてしまう。
【0003】
特許文献1では、壁面から一定の距離を保って塗装装置を走行させるため、塗装装置の走行台車から外側の壁面に向かって突出する所定長のガイドを設け、そのガイドが常に壁面に触れるように走行台車を走行させることで、壁面から一定の距離を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の走行台車は、壁面からの距離を自律的(自動的)に一定に保って走行するものでなく、前記のガイドを設けたとしても、作業者は壁面からの距離を気にしながら作業を行う必要がある。そのため作業者に集中力が必要となり、他への注意が散漫になることで塗装品質や安全確保において懸念が生じる。
【0006】
走行台車の走行時に壁面からの距離を一定に保つ方法としては、例えば壁面に沿ったレールや溝の上で走行台車を走行させたり、センサ等で壁面からの距離を測定しながら走行台車の制御を行ったりすることも考えられる。しかしながら、前者はレールや溝を設けるのに手間やコストがかかり、また後者はセンサ等の搭載により装置が高額となるため現実的ではない。そのため、壁面からの距離を一定に保ちつつ走行するような、簡易且つ安価な機構が求められていた。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、壁面等からの距離を一定に保ちつつ走行する、簡易且つ安価な走行装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための本発明は、外側の対象面に沿って車輪により走行する走行装置であって、前記走行装置から外側に突出して突端が前記対象面に接触する、前記走行装置に対し内外に進退可能な突出材と、前記突出材を外側に付勢する付勢機構と、前記突出材の基端側と連結され、前記突出材の進退に応じて前記車輪の向きを変えるためのリンク機構と、を有し、前記走行装置は、塗装装置を載置する載置台を有し、前記突出材、前記リンク機構、および前記付勢機構は、前記載置台の下面に設けられ、前記突出材の前記走行装置からの突出長が所定長のとき、前記車輪の向きが前記走行装置を直進させる向きとなり、前記突出長が前記所定長から前記所定長未満となったとき、前記車輪の向きが前記走行装置を前記直進時と比較して前記対象面から遠ざける向きとなり、前記突出長が前記所定長から前記所定長を超えたとき、前記車輪の向きが前記走行装置を前記直進時と比較して前記対象面に近付ける向きとなることを特徴とする走行装置である。
【0009】
本発明では、上記の突出材、付勢機構、リンク機構等からなる離隔維持機構により、対象面からの距離を自律的に一定に保ちつつ、走行装置を対象面に沿って走行させることができ、走行装置と対象面の離隔を気にする必要が無い。また走行装置と対象面の離隔を保つために前記のレールや溝、センサ類が不要であり、簡易且つ安価な構成となる。
【0010】
前記付勢機構は、例えば、弾性体によるものである。
付勢機構として弾性体を用いることで、走行装置が簡易なものとなり、製作が容易になる。
【0011】
本発明の走行装置は、載置台の上に塗装装置を載置し、塗装作業を行うために好適に用いることができる。この時、突出材等を載置台の下面に設け、載置台上の塗装装置から離すことで、塗装作業を円滑に行える。例えば載置台上の高い位置に突出材等を設けると、塗装装置のガン(塗料吹付部)よりも進行方向前に突出材がある分には問題ないが、逆に進む場合、ガンよりも後に突出材が来るので塗装面に触れてしまう。よって本発明では突出材等を載置台の下面に設けることで、突出材を塗り残し高さ等に収め、塗装面に触れるのを防止できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、壁面等からの距離を一定に保ちつつ走行する、簡易且つ安価な走行装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】突出材12、付勢機構13、リンク機構14を示す図。
【
図3】走行装置1と壁面Wの間の離隔維持機能について説明する図。
【
図5】重力を利用した付勢機構13a~13cの例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る走行装置1を示す図である。走行装置1は、壁面Wの塗装時に用いるものであり、その載置台10の上に塗装装置2が載置される。塗装装置2の構成は特に限定されず、既知の装置を用いることができる。壁面Wは、鉛直方向に立設される塗装の対象面であり、その材質や形状、また壁面Wが何処に設けられたものであるか等は特に問わない。
【0016】
走行装置1は、載置台10の下面に設けた車輪11により、壁面Wに沿って矢印Aに示す方向に走行する。走行装置1は手押し式のものであり、載置台10の上に門型の持ち手101が設けられる。
【0017】
本実施形態の走行装置1は、壁面Wからの距離を自律的(自動的)に一定に保ちつつ、壁面Wに沿って走行するための離隔維持機構として、
図2(a)に示すように、載置台10の下面に、突出材12、付勢機構13、リンク機構14等が設けられる。本実施形態では、これらの離隔維持機構により、走行装置1の走行時の車輪11の向きを自律的に調整する。
【0018】
車輪11は、載置台10の前輪側と後輪側のそれぞれにおいて、走行装置1の幅方向の両端部に設けられる。走行装置1の幅方向は、前記の走行方向Aと平面において直交し、以下、装置幅方向という。各車輪11は載置台10に軸支された回転軸111を中心として水平面内で回転可能であり、これにより各車輪11の向きを変えることができる。
【0019】
突出材12は、走行装置1の載置台10から外側に突出する棒材121と、当該棒材121の突端に設けられ、壁面Wに接触しつつ水平面内で回転するローラー122を有する。なお「外側」とは壁面W側を指し、その反対側は「内側」という。
【0020】
棒材121は、載置台10の下面に固定した挿通部15に通して外側の壁面Wに向かって延びるように配置され、走行装置1の載置台10に対し内外に進退可能である。
【0021】
棒材121の挿通部15よりも内側の部分には、棒材121から両側に突出する取付部123が設けられる。取付部123は付勢機構13の取り付けに用いるものである。
【0022】
付勢機構13は、突出材12を外側の壁面Wに向けて付勢するものである。本実施形態では付勢機構13として弾性体であるコイルばねが用いられ、棒材121の両側において、コイルばねの両端が取付部123と挿通部15にそれぞれ取り付けられる。
【0023】
リンク機構14は、突出材12の進退に応じて車輪11の向きを変えるためのものであり、複数のリンク材141、142、143を有する。
【0024】
リンク材141は、走行装置1の走行方向Aに延びる板状部材であり、一方の端部が、前記した棒材121の内側の端部に水平面内で回転可能に連結される。リンク材141は、当該端部から走行装置1の前輪側と後輪側のそれぞれに延びるように一対設けられ、各リンク材141の他方の端部が、リンク材142に連結される。リンク材141は、載置台10に軸支された回転軸1412を中心として水平面内で回転可能である。
【0025】
リンク材142は、装置幅方向に延びる板状部材であり、載置台10の前輪側の車輪11の後方近傍、後輪側の車輪11の前方近傍にそれぞれ配置される。前記したリンク材141の他方の端部は、リンク材142の装置幅方向の中間部に連結される。
【0026】
図2(b)は、この連結部について、リンク材141の長手方向の断面を示したものである。
図2(b)に示すように、前記したリンク材141の他方の端部には、リンク材141の部材軸方向の長孔1411が設けられる。またリンク材142の装置幅方向の中間部には、下方に突出する頭付きのピン1421が設けられる。当該ピン1421の軸部が長孔1411に通され、ピン1421の頭部により長孔1411からの抜け出しが防止されることで、リンク材141の他方の端部がリンク材142と水平面内で回転可能に連結され、且つこの回転に応じてピン1421が長孔1411内をスライド可能となっている。なお、前記したリンク材141と棒材121との連結部についても、棒材121に設けた頭付きのピンとリンク材141に設けた長孔による上記と同様の構成が採用されている。
【0027】
載置台10の前輪側と後輪側の各リンク材142の両端部は、装置幅方向の両端部の車輪11に設けられた板状のリンク材143と水平面内で回転可能に連結される。各リンク材143は各車輪11の回転軸111に取り付けられており、リンク材143の回転により車輪11が回転し、その向きを変えることができる。
【0028】
図3は、突出材12、付勢機構13、リンク機構14による走行装置1と壁面Wの間の離隔維持機能について説明する図である。
【0029】
ここで、前記の
図2(a)は走行装置1と壁面Wとの間に適切な間隔が保たれている状態であり、
図3(a)は、
図2(a)に比べて走行装置1と壁面Wの間隔が狭くなった状態、
図3(b)は
図2(a)に比べて走行装置1と壁面Wの間隔が広くなった状態を示している。
【0030】
本実施形態では、
図2(a)に示すように、走行装置1と壁面Wとの間に適切な間隔が保たれている理想的な状態の場合、すなわち突出材12の走行装置1からの突出長が所定長のとき、全ての車輪11の向きが壁面Wと平行となり、壁面Wに沿って走行装置1を直進させることができる。突出材12の棒材121を伸縮可能とするなどして、
図2(a)の状態における突出材12の突出長、すなわち上記の所定長を事前に調節できるようにすることも可能である。
【0031】
一方、
図3(a)に示すように、走行装置1と壁面Wとの間が狭くなった場合、すなわち突出材12が走行装置1に対して後退し、突出材12の走行装置1からの突出長が上記所定長から所定長未満となったときは、リンク機構14のリンク材141、142、143が
図3(a)に示すように回転又は移動することにより、車輪11の向きが、走行装置1を前記直進時と比較して壁面Wから遠ざける向きとなる。
【0032】
すなわち、一対のリンク材141の突出材12側の端部が突出材12とともに後退し、これに伴いリンク材141が回転軸1412を中心として回転することで、リンク材142側の端部が壁面Wに向かって前進する。これによりリンク材142が壁面Wに向かって前進し、この前進に伴ってリンク材143が回転することで、前輪側では、車輪11の向きが走行装置1を壁面Wから遠ざける向きとなり、後輪側では、車輪11の向きが走行装置1を壁面Wに近付ける向きとなる。結果、走行装置1は、矢印Bに示すように円弧状の軌道を描きながら、壁面Wから離れるように走行する。
【0033】
また、
図3(b)に示すように、走行装置1と壁面Wとの間が広くなった場合、すなわち突出材12が付勢機構13の復元力(収縮力)により走行装置1に対して前進し、突出材12の走行装置1からの突出長が前記の所定長から所定長を超えたときは、リンク機構14のリンク材141、142、143が
図3(b)に示すように回転又は移動することにより、車輪11の向きが、走行装置1を前記直進時と比較して壁面Wに近付ける向きとなる。
【0034】
すなわち、この場合は、一対のリンク材141の突出材12側の端部が突出材12とともに前進し、これに伴いリンク材141が回転軸1412を中心として回転することで、リンク材142側の端部が壁面Wから後退する。これによりリンク材142が壁面Wから後退し、この後退に伴ってリンク材143が回転することで、前輪側では、車輪11の向きが走行装置1を壁面Wに近付ける向きとなり、後輪側では、車輪11の向きが走行装置1を壁面Wから遠ざける向きとなる。結果、走行装置1は、矢印Cに示すように円弧状の軌道を描きながら、壁面Wに近付くように走行する。
【0035】
実際の作業時には、スタート位置において、走行装置1を
図2(a)に示す状態でセットし、その後、持ち手101を持って走行装置1を押し、壁面Wに沿って一定速度で走行させながら塗装装置2による壁面Wの塗装作業を行えばよい。前記したように、走行装置1では壁面Wからの距離が自律的に一定に保たれるので、作業者は一定速度で走行装置1を押すことだけに注意を向ければよく、高い塗装品質を確保できる。なお、実際の作業時には、前記の
図3(a)、(b)のような軌道修正が行われた結果、走行装置1の直進時(突出材12の突出長が所定長の時)にその走行方向が
図2(a)のように壁面Wと完全に平行となっていないこともある。ただしこの場合も、突出材12の突出長が上記所定長から所定長未満となったときには、車輪11の向きが走行装置1を上記直進時と比較して壁面Wから遠ざける向きとなり、突出長が上記所定長から所定長を超えたときには、車輪11の向きが走行装置1を上記直進時と比較して壁面Wに近付ける向きとなることに変わりは無く、その結果、走行装置1の壁面Wからの距離は自律的に一定に保たれる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、突出材12、付勢機構13、リンク機構14等からなる離隔維持機構により、壁面Wからの距離を自律的に一定に保ちつつ、走行装置1を壁面Wに沿って走行させることができ、作業者は走行装置1と壁面Wの離隔を気にせずに作業ができる。また走行装置1と壁面Wの離隔を保つために前記のレールや溝、センサ類が不要であり、簡易且つ安価な構成となる。
【0037】
また本実施形態では、付勢機構13として弾性体を用いることで、走行装置1が簡易なものとなり、製作が容易になる。
【0038】
また本実施形態の走行装置1は、載置台10の上に塗装装置2を載置し、塗装作業を行うために好適に用いることができる。この時、突出材12等を載置台10の下面に設け、載置台10上の塗装装置2から離すことで、塗装作業を円滑に行える。例えば載置台10上の高い位置に突出材12等を設けると、塗装装置のガン(塗料吹付部)よりも進行方向前に突出材12がある分には問題ないが、逆に進む場合、ガンよりも後に突出材12が来るので塗装面に触れてしまう。よって本実施形態では突出材12等を載置台10の下面に設けることで、突出材12を塗り残し高さ等に収め、塗装面に触れるのを防止できるようになる。
【0039】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば本実施形態では走行装置1を手押し式のものとしているが、モーター等の駆動装置により自走するものとしてもよい。ただし、手押し式の走行装置1を用いて塗装作業を行う場合、走行装置1を一定速度で走行させながら、壁面Wからの離隔まで併せて注意することは非常に困難であり、本実施形態の走行装置1を適用する効果が非常に大きい。
【0040】
また本実施形態では、突出材12の付勢機構13として、突出材12の両側で取付部123と挿通部15の間に一対のコイルばねを設けており、これにより突出材12をバランス良く付勢できるが、コイルばねの本数、設置位置等は特に限定されず、突出材12を外側に付勢できる必要十分な力が得られればよい。
【0041】
例えば、コイルばねの一方の端部を、突出材12の取付部123(
図2(a)参照)の代わりにリンク材141に取り付けることも可能である。また
図4に示すように、コイルばねを、突出材12の壁面Wと反対側に設けてもよく、この場合もコイルばねの復元力(伸長力)により突出材12を外側に付勢することができる。
図4の例ではコイルばねの一方の端部を突出材12の取付部123に取り付け、他方の端部を載置台10の下面に固定した固定部16に取り付けているが、コイルばねの一方の端部をリンク材141に取り付けることも可能である。
【0042】
また付勢機構13としては、コイルばね以外の既知の弾性体を用いることも可能である。さらに、付勢機構13が弾性体に限定されることもなく、例えば重力を利用することも可能である。
図5(a)はその例であり、棒材121とリンク材141の連結部について、棒材121の部材軸方向に沿った面を見たものである。
【0043】
この例では、滑車132に引掛けたワイヤー131の一方の端部をリンク材141に取り付け、他方の端部を錘133に取り付けることで、錘133の重力により突出材12を外側に付勢する付勢機構13aを構成する。ワイヤー131の一方の端部は、リンク材141でなく突出材12の棒材121に取り付けても良い。このように、重力を利用した付勢機構13aとすることで、突出材12の変位によらず一定の力で作用するという利点がある。
【0044】
同様に、重力を利用した付勢機構としては、
図5(b)の付勢機構13bに示すように、斜面134に沿って転がる(または滑る)錘135を設け、錘135により突出材12を付勢するもの、
図5(c)の付勢機構13cに示すように、屈曲部を中心軸138として回転するくの字状の回転部材136の一方の端部に錘137を設け、錘137の重力を利用して回転部材136の他方の端部で突出材12を付勢するものなども考えられ、これらの場合も前記と同様の効果が得られる。
【0045】
また本実施形態では、
図2(a)に示すように、リンク材141が一直線に配置されるときに走行装置1が壁面Wに沿って走行するが、リンク機構14がどのような状態にあるときに走行装置1が壁面Wに沿って走行するかは適宜定めることができる。また走行装置1が壁面Wに沿って走行する際に、前輪側と後輪側の一対の車輪11の向きが、走行方向Aに対して若干傾いており、平面視でハの字状となっていてもよい。またこれらの車輪11を走行方向Aから見たときに、ハの字に傾斜した状態とすることもでき、これにより走行が安定する場合もある。
【0046】
またリンク機構14の形状、構成等も特に限定されず、突出材12の進退に応じて車輪11の向きを適切な向きに変化させるものであればよい。例えば
図6(a)に示すように、前記のリンク材141、142、143からなるリンク機構14aを前輪側にのみ設けることも可能である。これによっても、壁面Wからの距離を自律的に一定に保ちつつ、走行装置1を壁面Wに沿って走行させることができる。また機構が簡単で軽量且つ安価となり、突出材12に加わる軸力も小さくなるので壊れにくい。
【0047】
また
図6(b)に示すように、突出材12、付勢機構13、リンク機構14a等からなる離隔維持機構を前輪側と後輪側でそれぞれ独立して設けることも可能であり、この場合も壁面Wからの距離を自律的に一定に保ちつつ、走行装置1を壁面Wに沿って走行させることができ、前後輪の調整ができるので走行も安定する。また走行装置1を走行方向Aの前後どちらに移動させる場合にも離隔維持機能が機能し、突出材12に加わる軸力も小さく壊れにくい。
【0048】
また
図6(c)に示すように、前輪側の車輪11の前方近傍に突出材12を設け、その棒材121にリンク材143を直接回転可能に取り付けることで、リンク機構14bを、リンク材143からなる更に簡易なものとできる。ただしこの場合、突出材12の設置スペースの分、前輪側の車輪11の位置が後ろに移動し、前輪側と後輪側の車輪11の間隔が狭くなり安定走行の面で懸念がある。載置台10を大きくして車輪11の間隔を維持することも考えられるが、その場合は走行装置1の機動性が損なわれる。
【0049】
また突出材12も前記したものに限らず、走行装置1に対して進退可能であればよい。例えば
図7(a)に示すように、突出材12aを、棒材121の外側の端部に一対の円弧状の板バネ124の一方の端部を取り付けたものとしてもよい。板バネ124の他方の端部は載置台10の下面に設けた固定部17に固定され、弾性体である板バネ124は、その復元力により突出材12aを外側に付勢する付勢機構としても機能する。
【0050】
また
図7(b)に示すように、突出材12bを、一対のリンク材125、126から構成してもよい。各リンク材125の内側の端部は、前後輪のそれぞれについて設けられたリンク機構14a(
図6(b)参照)のリンク材141の一方の端部(リンク材142と反対側の端部)に水平面内で回転可能に連結され、各リンク材125の外側の端部は、各リンク材126の内側の端部に水平面内で回転可能に連結される。各リンク材126の外側の端部は、ローラー122と水平面内で回転可能に連結され、これにより突出材12bが構成される。付勢機構13は各リンク材125の間に設けられ、その復元力(収縮力)によりリンク材126の開き角(符号α参照)を狭め、突出材12bを外側に付勢する。
【0051】
その他、載置台10や持ち手101の構成も特に限定されない。例えば載置台10は、鋼材等を格子状、井桁状、枠状に組んだものでもよいし、持ち手101も門型のものに限らず、スティック状(棒状)のものでもよい。さらに、走行装置1は載置台10の上に塗装装置2を載せて壁面Wの塗装作業に用いるものに限らず、対象面に沿って走行装置1を走行させる必要のある各種のケースに適用可能であり、対象面の高さ等も特に限定されない。
【0052】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
1:走行装置
2:塗装装置
10:載置台
11:車輪
12、12a、12b:突出材
13、13a、13b、13c:付勢機構
14、14a、14b:リンク機構