(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】固定部材、構造体への支持部材の固定構造
(51)【国際特許分類】
F16B 2/12 20060101AFI20241206BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20241206BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F16B2/12 B
F16B7/04 301N
E04B1/58 509N
(21)【出願番号】P 2021121317
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501249870
【氏名又は名称】日工開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀宣
(72)【発明者】
【氏名】松澤 庄次
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-093602(JP,U)
【文献】特開2010-138962(JP,A)
【文献】実開昭51-061799(JP,U)
【文献】特開2013-133906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0205024(US,A1)
【文献】特開2002-262944(JP,A)
【文献】登録実用新案第3003681(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/12
F16B 7/04
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を挟み込んで固定することが可能な固定部材であって、
板状部材が折り曲げられて形成された本体部と、
前記本体部に取り付けられる雌ねじ部材と、
前記雌ねじ部材に螺合する雄ねじ部材と、
を具備し、
前記本体部は、一方の側に折り曲げ部を有し、
前記折り曲げ部には、対象物と接触する固定部が形成される第1切り欠き部と、前記第1切り欠き部の上方に設けられ、前記第1切り欠き部よりも小さな第2切り欠き部とが形成され、
前記雌ねじ部材は、前記折り曲げ部の外方から前記第2切り欠き部へ挿入され、
前記雄ねじ部材は、前記折り曲げ部の上方から前記折り曲げ部の内部に挿入されて、前記雌ねじ部材と螺合し、
前記雄ねじ部材の端部が前記第1切り欠き部に露出して、前記固定部と対向配置されることを特徴とする固定部材。
【請求項2】
前記第2切り欠き部の上縁部にはリブが形成され、前記リブと前記雌ねじ部材とが面接触することを特徴とする請求項1記載の固定部材。
【請求項3】
前記本体部の、前記折り曲げ部とは逆側の開口部側には、開口部が閉じる方向に前記本体部を変形させて保持することが可能な変形保持部材が配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定部材。
【請求項4】
前記雄ねじ部材を抜き取ることで、前記雌ねじ部材を前記本体部から取り外すことが可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の固定部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の固定部材を用いた構造体への支持部材の固定構造であって、
構造体に対して支持部材が配置され、前記固定部と前記雄ねじ部材の端部とで、前記構造体と、前記支持部材とが一括して挟み込まれて、前記支持部材が前記構造体へ固定されることを特徴とする構造体への支持部材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体等へ対象物を挟み込んで固定することが可能な固定部材、及びこれを用いた構造体への支持部材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄骨造りにおいて、梁や柱に、天井や壁の下地材を取り付ける際には、固定金具が用いられる。このような固定金具としては、例えば、鋼板を折り曲げてコの字状に形成し、上部枠部に雌ねじを形成し、雌ねじに螺合させたボルトと下部枠部の支持片とでH型鋼とコの字枠部とを挟み込んで固定する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の固定金具では、ボルトをねじ込むために、上部枠部に雌ねじ加工を施す必要がある。このため、固定金具を構成する板部材としては、少なくともねじ山を形成することが可能な厚みが必要である。特に、十分なボルトによる締め込み力を確保するためには、ボルトと雌ねじとは、ねじピッチの2倍超の螺合代が必要である。このため、固定金具を構成する板部材としては、ねじピッチの2倍超の厚みが必要である。
【0005】
しかし、前述したように、固定金具をねじピッチの2倍超の厚みの板状部材で形成すると、固定金具自体の重量増の問題がある。特に、梁や柱に、天井や壁の下地材を取り付ける際には、数多くの固定金具が必要であるため、現場での運搬や施工の効率が悪くなる。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、軽量であり、取り扱い性に優れる固定部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、対象物を挟み込んで固定することが可能な固定部材であって、板状部材が折り曲げられて形成された本体部と、前記本体部に取り付けられる雌ねじ部材と、前記雌ねじ部材に螺合する雄ねじ部材と、を具備し、前記本体部は、一方の側に折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部には、対象物と接触する固定部が形成される第1切り欠き部と、前記第1切り欠き部の上方に設けられ、前記第1切り欠き部よりも小さな第2切り欠き部とが形成され、前記雌ねじ部材は、前記折り曲げ部の外方から前記第2切り欠き部へ挿入され、前記雄ねじ部材は、前記折り曲げ部の上方から前記折り曲げ部の内部に挿入されて、前記雌ねじ部材と螺合し、前記雄ねじ部材の端部が前記第1切り欠き部に露出して、前記固定部と対向配置されることを特徴とする固定部材である。
【0008】
前記第2切り欠き部の上縁部にはリブが形成され、前記リブと前記雌ねじ部材とが面接触することが望ましい。
【0009】
前記本体部の、前記折り曲げ部とは逆側の開口部側には、開口部が閉じる方向に前記本体部を変形させて保持することが可能な変形保持部材が配置されてもよい。
【0010】
前記雄ねじ部材を抜き取ることで、前記雌ねじ部材を前記本体部から取り外すことが可能であってもよい。
【0011】
第1の発明によれば、板状部材を折り曲げて形成した本体部に、第2切り欠き部を形成し、第2切り欠き部に雌ねじ部材を挿入して取り付けるため、板状部材に雌ねじ加工を施す必要がない。このため、板状部材を薄肉化することができる。
【0012】
また、第2切り欠き部の上縁部にリブを形成することで、雌ねじ部材とリブとを面接触させることができる。このため、雄ねじ部材を締めこんだ際に、雌ねじ部材の姿勢を安定させることができる。
【0013】
また、折り曲げ部とは逆側の開口部側に、開口部を閉じる方向に本体部を変形させることが可能な変形保持部材を配置することで、折り曲げ部に配置される雄ねじ部材を本体部の両側面で挟み込んで固定することができる。このため、雄ねじ部材を雌ねじ部材に締め込んだ後に、変形保持部材によって本体部を変形させることで、雄ねじ部材の緩み止めとして機能させることができる。
【0014】
また、雌ねじ部材は、本体部に対しては接合されていないため、雄ねじ部材を抜き取ることで、雌ねじ部材を本体部から取り外すことが可能である。このため、雌ねじ部材と雄ねじ部材を交換して、例えば、用途に応じて雌ねじ部材と雄ねじ部材のサイズを変更することも可能である。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に係る固定部材を用いた構造体への支持部材の固定構造であって、構造体に対して支持部材が配置され、前記固定部と前記雄ねじ部材の端部とで、前記構造体と、前記支持部材とが一括して挟み込まれて、前記支持部材が前記構造体へ固定されることを特徴とする構造体への支持部材の固定構造である。
【0016】
第2の発明によれば、固定部材が軽量であり取り扱い性が良好であるため、容易に構造体に対して支持部材を固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軽量であり、取り扱い性に優れる固定部材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】(a)は、固定構造30の正面図、(b)は、(a)のH部拡大図。
【
図6】(a)は、固定部23近傍の正面図、(b)は、(a)のJ-J線断面図。
【
図7】(a)は、固定部23にリブ25を設けた固定構造の正面図、(b)は、(a)のK-K線断面図。
【
図8】(a)、(b)は、ボルト15を用いて雄ねじ部材7を固定する工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態にかかる固定部材について説明する。
図1は、固定部材1を示す分解斜視図であり、
図2は固定部材1を示す組立斜視図である。また、
図3は、
図2のG-G線断面図である。固定部材1は、主に本体部3、雌ねじ部材5、雄ねじ部材7、ボルト15等から構成される。固定部材1は、対象物を挟み込むことで、例えば、柱や梁などの構造体へ、天井や壁の支持部材等を固定するための部材である。
【0020】
本体部3は、板状部材を折り曲げることで形成される。より詳細には、本体部3は、一方の側に折り曲げ部9を有し、他方の側が開口する。すなわち、平面視において、本体部3は、略コの字状である。なお、本体部3を構成する板状部材の厚みは、後述する雄ねじ部材7のねじピッチの2倍以下であることが望ましく、さらに望ましくは1.2倍以下である。このようにすることで、軽量化の効果が大きい。
【0021】
折り曲げ部9には、第1切り欠き部11と、第1切り欠き部11の上方に設けられ、第1切り欠き部11よりも小さな第2切り欠き部13とが形成される。第1切り欠き部11の下方には、固定対象物と接触する固定部23が形成される。固定部23は、第1切り欠き部11の下方において、折り曲げ部9側の一部が上方に向けて突出して形成される。
【0022】
ここで、本実施形態においては、図中右手前側(図中C方向)であって折り曲げ部9側を固定部材1の前方とし、図中左手奥側(図中D方向)であって開口部19側を固定部材1の後方とする。すなわち、開口部19側は、折り曲げ部9とは逆側であり、第1切り欠き部11と第2切り欠き部13は、本体部3の前方(折り曲げ部9側)から後方に向けて所定の深さに形成される。
【0023】
また、図中上側(図中A方向)を固定部材1の上方とし、図中下側(図中B方向)を固定部材1の下方とする。すなわち、図中上下方向(図中AB方向)を固定部材1の高さ方向とする。また、これらと直交する方向(図中EF方向)を、固定部材1の幅方向とする。
【0024】
なお、本体部3の所定の縁部には、幅方向の外方に向けて板状部材を屈曲させて形成した補強リブが設けられる。また、本体部3の側面の所定位置(第1切り欠き部11と第2切り欠き部13以外の部位)には、プレス等によって凹凸を形成することで補強リブを形成してもよい。図示した例では、本体部3の上縁部、開口部19の側縁部、下縁部、及び第1切り欠き部11、第2切り欠き部13の一部に板状部材が略垂直に外方に折り曲げられたリブが形成される。また、第1切り欠き部11の開口部19側に、略L字状の凸部による補強リブが形成される。なお、リブの配置や形態は図示した例には限られない。
【0025】
第2切り欠き部13には、雌ねじ部材5が、折り曲げ部9側から(折り曲げ部9の前方から)挿入される。雌ねじ部材5は、市販のナットであってもよく、他の厚肉の板材に雌ねじ加工を施したものであってもよい。但し、雌ねじ部材5の外形の少なくとも一部に、回り止めとして平坦部や突起などを有することが望ましい。すなわち、雌ねじ部材5は、完全な円形以外の外形である。
【0026】
なお、第2切り欠き部13の高さは、雌ねじ部材5の高さよりもわずかに高い。また、第2切り欠き部13の幅(又は折り曲げ部9の内幅)は、雌ねじ部材5の幅よりも狭い。このため、雌ねじ部材5を第2切り欠き部13へ挿入すると、雌ねじ部材5は、第2切り欠き部13の後端(最深部)において本体部3と接触し、それ以上本体部3の内部には挿入されない。また、第2切り欠き部13の前後方向の深さは、雌ねじ部材5を第2切り欠き部13に完全に挿入し、第2切り欠き部13の後端(最深部)と接触させた状態において、雌ねじ部材5のねじ孔の全体が折り曲げ部9の内側に露出可能な程度とする。
【0027】
図3に示すように、第2切り欠き部13へ雌ねじ部材5を挿入した状態で、本体部3(折り曲げ部9)の上方から、本体部3(折り曲げ部9)の内部に、雄ねじ部材7が挿入されて、第2切り欠き部13において、雌ねじ部材5と螺合する。雄ねじ部材7は例えばボルトである。また、側面視において、雄ねじ部材7の先端は、第1切り欠き部11に露出する。すなわち、第1切り欠き部11において、固定部23と雄ねじ部材7の端部とが対向するように配置される。雄ねじ部材7を締めこむことで、雄ねじ部材7と固定部23との間隔が狭くなるため、固定部23と雄ねじ部材7によって、固定対象物が挟み込まれる。なお、固定対象物の固定構造については後述する。
【0028】
ここで、前述した第2切り欠き部13の前後方向の深さが深すぎると、雌ねじ部材5が、第2切り欠き部13の後端に接触せずに、雄ねじ部材7の回転時に、雌ねじ部材も回転してしまう恐れがある。このため、第2切り欠き部13の前後方向の深さは、雄ねじ部材7を回転させた際に、雌ねじ部材5の一部(外周の平坦部や突出部等)が第2切り欠き部13の後端に接触して、回転が規制される程度である必要がある。例えば、第2切り欠き部13の前後方向の深さは、雌ねじ部材5のサイズ以下であることが望ましい。このようにすることで、第2切り欠き部13の後端部が雌ねじ部材5の回り止めとして機能する。
【0029】
雌ねじ部材5と雄ねじ部材7とを螺合させると、雌ねじ部材5及び雄ねじ部材7は、本体部3に装着された状態となり、本体部3から脱落することがない。例えば、雌ねじ部材5は、第2切り欠き部13の上下と後方(
図2のA、B、D方向)が本体部3で囲まれているため、これらの方向への移動が規制され、本体部3からは前方(
図2のC方向)及び両側方(
図2のE、F方向)にしか移動ができない。
【0030】
一方、雄ねじ部材7は、本体部3に対して、両側方(
図2のE、F方向)と前方(
図2のC方向)が本体部3によって囲まれているため、これらの方向への移動が規制され、本体部3からは上方(
図2のA方向)及び後方(
図2のD方向)にしか移動ができない。
【0031】
したがって、雄ねじ部材7と雌ねじ部材5とを螺合させることで、
図2のA、B、D方向へは、雌ねじ部材5と本体部3によって移動が規制され、
図2のC、E、F方向へは、雄ねじ部材7と本体部3によって移動が規制される。このため、雌ねじ部材5と雄ねじ部材7が本体部3から脱落することがない。すなわち、雄ねじ部材7によって、雌ねじ部材5が本体部3に取り付けられる。
【0032】
このように、雌ねじ部材5は本体部3から脱落することがないため、雌ねじ部材5を本体部3へ溶接等によって接合する必要がない。このため、雄ねじ部材7を取り外すことで、雌ねじ部材5を交換することもできる。
【0033】
例えば、雌ねじ部材5は、第2切り欠き部13へ挿入することができるサイズであれば、複数のサイズが適用可能である。同様に、雄ねじ部材7は、本体部3に挿入可能であれば、複数のサイズが適用可能である。このため、用途に応じて、例えば固定するのに要する保持力が小さくてもよい部には、小径の雌ねじ部材5及び雄ねじ部材7を選択し、より大きな保持力が必要な場合には、大径の雌ねじ部材5及び雄ねじ部材7を選択することができる。
【0034】
本体部3の後方(折り曲げ部9とは逆側の開口部19側)には、一方の面には孔17(
図1、
図2参照)が設けられ、これと対向する他方の面には、雌ねじ21(
図3参照)が形成される。孔17には、本体部3の外方からボルト15が挿通されて、他方の雌ねじ21と螺合する。このため、ボルト15を締めこむことで、開口部19を閉じる方向に締めこむことが可能である。ボルト15の効果については後述する。
【0035】
次に、固定部材1を用いた構造体への支持部材の固定構造について説明する。
図4は、固定構造30を示す概略図である。固定構造30は、構造体31に対して、支持部材33が固定部材1によって固定されたものである。なお、図示した例では、構造体31は、例えばH型鋼であるが、断面形状は特に限定されず、例えばC字型、T字形、L字形など特に限定されない。また、図示した例では、支持部材33がC字型の断面形状であるが、断面形状はいずれの形状であってもよい。
【0036】
構造体31は、例えば建築物の柱や梁などである。また、支持部材33は、例えば天井材や壁材などを取り付けるための部材である。支持部材33は、構造体31に対して所定の方向で配置される。例えば、図示したように、互いに直交する方向に配置されて、両者の交差部近傍において固定部材1によって固定されてもよく、又は、構造体31と支持部材33とは、互いに平行に配置されて、所定の間隔で固定部材1によって固定されてもよい。
【0037】
まず、構造体31の一部と支持部材33の一部が重なり合う部位を、固定部材1の第1切り欠き部11に挿入する。この状態で雄ねじ部材7を締めこむことで、雄ねじ部材7の端部と固定部23とで、固定対象である構造体31と支持部材33とを一括して挟み込むことができる。このようにして、固定部材1によって支持部材33が構造体31へ固定される。
【0038】
図5(a)は、構造体31と支持部材33とを固定した状態における固定部材1の正面図であり、
図5(b)は
図5(a)のH部拡大図である。雄ねじ部材7を締めこむと、雌ねじ部材5は、第2切り欠き部13の上方に押し付けられた状態となる。この際、第2切り欠き部13の上縁部に、幅方向の外方に屈曲させたリブ24を形成することで、リブ24と雌ねじ部材5とを面接触させることができる。このため、雌ねじ部材5の姿勢が安定し、雌ねじ部材5及び雄ねじ部材7のぐらつき等による保持力の緩み等を抑制することができる。
【0039】
図6(a)は、
図5(a)のI部拡大図であり、
図6(b)は
図6(a)のJ-J線断面図である。前述したように、構造体31と支持部材33とを重ね合わせ、構造体31と支持部材33とが一括して雄ねじ部材7と本体部3の固定部23とで挟み込まれる。なお、構造体31と支持部材33の重ね合わせ順は逆であってもよい。
【0040】
ここで、固定部23は、折り曲げ部9によって略断面コの字状に形成される。前述したように、本体部3を構成する板状部材の厚みは、雌ねじ加工の必要がないことから薄くてもよい。このため、固定部23と固定対象(図では支持部材33)との接触面積が小さい。この結果、雄ねじ部材7を締めこむことで、固定部23の先端を支持部材33にわずかに食い込ませることができるため、より高い保持力を得ることができる。
【0041】
図7(a)は、
図6(a)に対して、他の実施形態を示す図であり、
図7(b)は、
図7(a)のK-K線断面図である。前述した例においては、固定部23は、板状部材の板厚の端面がコの字状に露出したが、本実施形態では、固定部23の両側において、幅方向の外方に屈曲させたリブ25が形成される。このため、固定対象である支持部材33との接触面積が大きくなる。このようにすることで、前述したような固定部23の固定対象への食い込みは期待できなくなるものの、より広い面積で受けることができるため、安定して固定対象を挟み込むことができる。
【0042】
図8(a)は、ボルト15の位置における幅方向の断面図である。前述したように、本体部3の開口部19側には、ボルト15が配置される。なお、ボルト15には大きな軸力等は不要であるため、ねじ山ピッチの小さい小型のボルトでよい。このため、本体部3の板厚が薄くても、雌ねじ21を加工することができる。
【0043】
雄ねじ部材7の外径は、折り曲げ部9の内幅以下である。このため、ボルト15を緩めて状態では、雄ねじ部材7と本体部3との間にはわずかに隙間が形成される(又は接触しても、雄ねじ部材7は本体部からほとんど力を受けない)。このため、雄ねじ部材7を締めこむ際に、本体部3によって雄ねじ部材7の回転が妨げられることがない。
【0044】
図8(b)は、ボルト15を締め込んだ状態を示す図である。前述したように、雄ねじ部材7を締めこみ、固定対象を一括して挟み込んで両者を固定した後、ボルト15を締めこむと(図中L)、開口部19が閉じるように本体部3が変形し、その状態を保持することができる。例えば、開口部19側の開口幅(対向する本体部3の側面同士の間隔)を、折り曲げ部9の幅よりも狭い状態とすることができる。
【0045】
このように、ボルト15は、開口部19が閉じる方向に本体部3を変形させて保持することが可能な変形保持部材として機能する。なお、このように、開口部19が閉じるように本体部3を変形させて、その状態を保持することが可能であれば、変形保持部材としては、ボルト15以外の形態(例えばクリップ等)であってもよく、その形態は特に限定されない。
【0046】
このように、ボルト15を締めこむことで、本体部3の対向面が近づく方向に本体部3が変形する。このため、雄ねじ部材7の部位においても、本体部3の間隔が狭くなり、雄ねじ部材7が本体部3と接触して、両側から挟み込まれる。このように、雄ねじ部材7が本体部3によって挟み込まれることで、摩擦によって雄ねじ部材7の回転の抵抗となる。このため、雄ねじ部材7の緩み止めの効果を得ることができる。
【0047】
以上、本実施の形態によれば、板状部材を折り曲げて形成した本体部3に対して雌ねじ部材5を装着することで、雄ねじ部材7と螺合するための雌ねじを、本体部3に対して直接加工する必要がない。このため、本体部3の板厚を薄くすることができ、本体部3を軽量化することができる。例えば、本体部3に直接雌ねじ加工を行う場合、雄ねじ部材7の締めこみ力を確保するためには、ねじ山の2ピッチ超の板厚が必要であるが、本実施形態では、雄ねじ部材7のねじ山の2ピッチ以下の板厚も適用可能であるため、固定部材1を軽量化することができる。
【0048】
また、雌ねじ部材5が本体部3と接合されていないため、雄ねじ部材7を抜き取ることで、雌ねじ部材5とを本体部3から取り外すことが可能である。このため、必要に応じて雌ねじ部材5及び雄ねじ部材7を交換することができる。例えば、用途に応じて雌ねじ部材5及び雄ねじ部材7のサイズを変更することで、本体部3を複数の用途に流用することができる。
【0049】
また、第2切り欠き部13の上方であって、雌ねじ部材5との接触部にリブ24を設けることで、雄ねじ部材7を締めこんだ際に、雌ねじ部材5を本体部3と面接触させることができる。このため、雌ねじ部材5の姿勢が安定し、雌ねじ部材5のがたつきや、これに伴う雄ねじ部材7の緩み等を抑制することができる。
【0050】
また、開口部19が閉じる方向に本体部3を変形させて保持させることが可能なボルト15を設けることで、雄ねじ部材7を締め込んだ後に、雄ねじ部材7の緩み止めとして機能させることができる。
【0051】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
1………固定部材
3………本体部
5………雌ねじ部材
7………雄ねじ部材
9………折り曲げ部
11………第1切り欠き部
13………第2切り欠き部
15………ボルト
17………孔
19………開口部
21………雌ねじ
23………固定部
24、25………リブ
30………固定構造
31………構造体
33………支持部材