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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】イオン性固体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20241206BHJP
   C07C 323/58 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 1/12 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 3/06 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 1/08 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 15/06 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 15/04 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 13/00 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 9/50 20060101ALI20241206BHJP
   C07F 1/00 20060101ALI20241206BHJP
   C01G 39/02 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B01J20/22 A
C07C323/58
C07F1/12
C07F3/06
C07F1/08 Z
C07F19/00
C07F15/06
C07F15/04
C07F13/00 A
C07F9/50
C07F1/00 E
C01G39/02
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021516272
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017733
(87)【国際公開番号】W WO2020218527
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019083954
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 巧
(72)【発明者】
【氏名】桑村 直人
(72)【発明者】
【氏名】小島 達弘
(72)【発明者】
【氏名】吉成 信人
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056237(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079831(WO,A1)
【文献】SURINWONG, Sireenart et al.,A drastic change in the superhydrophilic crystal porosities of metallosupramolecular structures via a slight change in pH,Chemical Communications,2016年,52,12893-12896
【文献】SURINWONG, Sireenart et al.,An Extremely Porous Hydrogen-Bonded Framework Composed of d-Penicillaminato Co-III-2 Au-I-3 Complex Anions and Aqua Cobalt(II) Cations: Formation and Stepwise Structural Transformation,Chemistry - An Asian Journal,2016年,11,486-490
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00-20/34
C07F1/00-19/00
C07C1/00-409/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を取り込むための空隙を有するイオン性固体であって、
空隙が、金属錯体の結晶格子により形成され、
空隙にポリ酸、無機塩、金属イオン、オキソアニオン及び分子量が60以上である親水性物質から選択される1種又は2種以上を包接してなる、
イオン性固体。
【請求項2】
親水性物質が、分子量が60以上である多価アルコール、分子量が60以上である環状オリゴ糖、分子量が60以上である糖類、及び分子量が60以上である糖アルコール、及び分子量が60以上であるアミノ酸から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1記載のイオン性固体。
【請求項3】
空隙が、結晶格子中に40%以上を占める、請求項1又は2記載のイオン性固体。
【請求項4】
空隙の開口径が、0.5~5nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項5】
電気化学的デバイス材料、反応場提供材料、気体吸着材料、溶媒蒸気吸着材料、分子認識材料、金属イオン交換体、又は陰イオン交換体である、請求項1~4のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のイオン性固体を用いた、カラム充填剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のイオン性固体を用いた、触媒担体。
【請求項8】
金属錯体は、(A)アニオン性金属錯体と(B)カチオン種とが配位結合又はイオン結合で配列したものである、請求項1~5のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項9】
(A)アニオン性金属錯体が、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい2個の金属M1と、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい3個の金属M2とが1種の配位子を介して結合したM12五核錯体アニオンである、請求項8記載のイオン性固体。
【請求項10】
配位子が、チオール基を有するアミノ酸である、請求項9記載のイオン性固体。
【請求項11】
(A)アニオン性金属錯体が、下記一般式(1)で表される金属錯体である、請求項8~10のいずれか1項に記載のイオン性固体。
[(M1)d(M2)e(X1)f]k- (1)
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
1は、チオール基を有するアミノ酸を示し、
dは、0~4の数を示し、
eは、0~4の数を示し、
fは、1~8の数を示し、
kは、1~4の数を示す。
但し、dとeは、同時に0となることはない。)
【請求項12】
(B)カチオン種が、下記一般式(2)で表される金属錯体である、請求項8~11のいずれか1項に記載のイオン性固体。
a[(M3)l(X2)m]j (2)
(式中、
Aは、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン、亜硝酸イオン又はカルボキシラトから選ばれる1種以上を示し、
aは、0~10の数を示し、
lは、0~1の数を示し、
mは、1~6の数を示し、
jは、1~3の数を示す。
但し、aとlは、同時に0となることはない。)
【請求項13】
(B)カチオン種が、カチオン性金属錯体を含む、請求項8~12のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項14】
カチオン性金属錯体が、下記の化合物群αより選ばれる1種又は2種以上である、請求項13記載のイオン性固体。
<化合物群α>
[Co(NH3)6]3+、[Co(H2O)(NH3)5]3+、[Co(NO2)(NH3)5]2+
[Co(H2O)6]2+、[Ni(H2O)6]2+、[Mn(H2O)6]2+、[Co(H2O)4]2+
[Ni(H2O)4]2+、[Mn(H2O)4]2+、{Li[Zn(OAc)2]}+
{Na[Zn(OAc)2]}+、{K[Zn(OAc)2]}+、{Cs[Zn(OAc)2]}+
{Na2Cs7[Zn(OAc)2]}9+、{Na9[Zn(OAc)2]}9+
[Co(en)3]3+、[Co(tn)3]3+
(但し、OAcは酢酸イオン、enはエチレンジアミン、tnは1,3-ジアミノプロパンを表す。)
【請求項15】
結晶格子が、下記一般式(3)で表される金属錯体を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のイオン性固体。
[(M1)3(M2)2(X1)6]2[(M3)(X2)m1]3・nH2O (3)
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン又はカルボキシラトから選ばれる1種以上を示し、
m1は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。)
【請求項16】
結晶格子が、下記一般式(4)で表される金属錯体を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のイオン性固体。
(A)a[(M1)3(M2)2(X1)6]b[(M3)l(X2)m2]c・nH2O (4)
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン、亜硝酸イオン又はカルボキシラトをから選ばれる1種以上を示し、
Aは、相互に独立に、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
aは、0~10の数を示し、
bは、1~3の数を示し、
cは、1~3の数を示し、
lは、0~1の数を示し、
m2は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。
【請求項17】
結晶格子が、下記一般式(5)で表される金属錯体を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のイオン性固体。
(A)9[(M1)3(M2)2(X1)6]3[(M3)(X2)m3]2・nH2O (5)
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン又はカルボキシラトをから選ばれる1種以上を示し、
Aは、相互に独立に、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
m3は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。)
【請求項18】
バルクイオン伝導性を示すものである、請求項1~17のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項19】
物質を取り込むための空隙を有するイオン性固体であって、
空隙が、金属錯体の結晶格子により形成され、
金属錯体は、金属イオンと、金属元素と、配位子とからなる多核金属錯体が集積したカチオン性多核金属錯体である、イオン性固体。
【請求項20】
カチオン性多核金属錯体が、9核から200核のカチオン性金属錯体である、請求項19記載のイオン性固体。
【請求項21】
カチオン性多核金属錯体は、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンと、該金属A以外の1種又は2種以上の遷移金属Bと、三脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸から選ばれる1種又は2種以上の配位子とからなる多核金属錯体が1以上集積したものである、請求項19又は20記載のイオン性固体。
【請求項22】
カチオン性多核金属錯体が、下記式(11)で表される多核金属錯体を含む、請求項19~21のいずれか1項に記載のイオン性固体。
[M11 612 h(X11)ma(X12)3ma]na (11)
(式中、
11は、相互に独立に、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンを示し、
12は、相互に独立に、金属A以外の遷移金属Bを示し、
11は、相互に独立に、三脚型ホスフィンを示し
12は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
hは、3又は6を示し
maは、1又は2を示し、
naは、1~12の整数を示す。)
【請求項23】
結晶格子が、下記式(12)で表されるもので形成されてなる、請求項19~22のいずれか1項に記載のイオン性固体。
[{M11 612 h(X11)ma(X12)3mana(M12 p13 q)](E)r (12)
(式中、
11は、相互に独立に、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンを示し、
12は、相互に独立に、金属A以外の遷移金属Bを示し、
13は、相互に独立に、金属A以外の金属を示し、
11は、相互に独立に、三脚型ホスフィンを示し
12は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
hは、3又は6を示し
maは、1又は2を示し、
naは、1~18の整数を示し、
Eは、アニオン又は無機酸を示し、
p、q、rは、相互に独立に、0又は1以上の整数を示す。但し、p、q及びrは、同時に0となることはない。)
【請求項24】
遷移金属Bが、Au、Pd、Ni、Zn、Pt、Cd、Cu及びMnから選ばれる1種又は2種以上である、請求項21~23のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項25】
配位子として三脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸を含み、三脚型ホスフィンとチオール基を有するアミノ酸との比(三脚型ホスフィン/チオール基を有するアミノ酸)が1/3~1/2である、請求項19~24のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項26】
三脚型ホスフィンが1、1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンであり、チオール基を有するアミノ酸がペニシラミンである、請求項19~25のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項27】
空隙を反応場として用いる、請求項19~26のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項28】
空隙を縮合反応の反応場として用いる、請求項19~27のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項29】
空隙をオキソアニオンの縮合反応の反応場として用いる、請求項19~28のいずれか1項に記載のイオン性固体。
【請求項30】
請求項19~29のいずれか1項に記載のイオン性固体の空隙を酸化反応の反応場として用いる、酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性固体に関する。
【0002】
自然界に存在するイオン性固体として、例えば、塩化ナトリウムが知られているが、このイオン性固体は、プラスイオンとマイナスイオンとがクーロン力(静電気力)によって引きつけ合い、交互に配列して密に結合した構造を有している。本発明者らは、超分子化学の立場からイオン性多核金属錯体の塩の構造について研究しており、自然界に存在するイオン性固体とは相違し、非クーロン相互作用が空間配列を支配する、新しいタイプのイオン性固体について報告している。
非特許文献1,2には、ペニシラミンを配位子にもつ多核金属錯体[Co2Au3(D-pen-N,S)6 3-の塩の結晶を製造するに際して、製造する際のpHがわずかに違うと多孔性の指標である空隙率が著しく変わること、そしてその多孔である空隙には、水蒸気や二酸化炭素などが吸着されることが記載されている。
また、本発明者らは、非クーロン力支配型イオン性固体について特許出願を行った(特許文献1、2)。
特許文献1には、カチオン性の多核金属錯体の塩の単結晶がカチオンクラスターを形成し、当該カチオンクラスターが最密充填構造に配列することにより形成された空孔に、対アニオンのクラスターが集積していることを特徴とする電荷分離型イオン性固体が記載されている。このイオン性固体は、自然界に存在するイオン性固体とは相違し、イオンが対になっているのではなく、イオン性クラスターが非クーロン力によって電荷が分離された結晶構造を取っている。このような特異な構造によって、誘電特性を示し負の電歪効果を示す。
特許文献2には、アニオン性多核金属錯体の塩の単結晶が集積して結晶格子を形成し、その結晶格子の隙間にカチオン種が存在するイオン性固体が記載されている。このイオン性固体においては、金属カチオンがイオン性固体内部を高い流動性を持つこと、外部の金属カチオンと入れ替わるイオン交換体としての機能を持つとされ、カチオン性イオンの流動性はペレットを形成したとしても低下しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/56237号
【文献】国際公開第2018/79831号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Chem. Asian J. 2016, 11, 486-490
【文献】Chem. Commun., 2016, 52, 12893-12896
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、更に新たな機能を有するイオン性固体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記非特許文献2に記載のイオン性固体に新たな機能を付与すべく種々検討したところ、前記非特許文献2に記載のイオン性固体の結晶格子の空隙に、特定の物質を取り込んだ新規なイオン性固体の開発に成功した。そして、本発明者らは、かかるイオン性固体が、電気化学的デバイス材料、反応場提供材料、気体吸着材料、溶媒蒸気吸着材料、分子認識材料、金属イオン交換体、又は陰イオン交換体等として有用であることを見出した。
【0007】
本発明は、以下の〔1〕~〔32〕を提供するものである。
〔1〕 物質を取り込むための空隙を有する、イオン性固体。
〔2〕 空隙が、金属錯体の結晶格子により形成されてなる、前記〔1〕記載のイオン性固体。
〔3〕 空隙に水、ポリ酸、無機塩、金属イオン、オキソアニオン及び分子量が60以上である親水性物質から選択される1種又は2種以上を包接してなる、前記〔1〕又は〔2〕記載のイオン性固体。
〔4〕 親水性物質が、分子量が60以上である多価アルコール、分子量が60以上である環状オリゴ糖、分子量が60以上である糖類、及び分子量が60以上である糖アルコール、及び分子量が60以上であるアミノ酸から選ばれる1種又は2種以上である、前記〔3〕記載のイオン性固体。
〔5〕 空隙が、結晶格子中に40%以上を占める、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
〔6〕 空隙の開口径が、0.5~5nmである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
〔7〕 電気化学的デバイス材料、反応場提供材料、気体吸着材料、溶媒蒸気吸着材料、分子認識材料、金属イオン交換体、又は陰イオン交換体である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
〔8〕 前記〔1〕~〔7〕のいずれか一に記載のイオン性固体を用いたカラム充填剤。
〔9〕 前記〔1〕~〔7〕のいずれか一に記載のイオン性固体を用いた触媒担体。
【0008】
〔10〕 金属錯体は、(A)アニオン性金属錯体と(B)カチオン種とが配位結合又はイオン結合で配列したものである、前記〔2〕~〔9〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0009】
〔11〕 (A)アニオン性金属錯体が、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい2個の金属M1と、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい3個の金属M2とが1種の配位子を介して結合したM12五核錯体アニオンである、前記〔10〕記載のイオン性固体。
〔12〕 配位子が、チオール基を有するアミノ酸である、前記〔11〕記載のイオン性固体。
〔13〕 (A)アニオン性金属錯体が、下記一般式(1)で表される金属錯体である、前記〔10〕~〔12〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0010】
[(M1)d(M2)e(X1)f]k- (1)
【0011】
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
1は、チオール基を有するアミノ酸を示し、
dは、0~4の数を示し、
eは、0~4の数を示し、
fは、1~8の数を示し、
kは、1~4の数を示す。
但し、dとeは、同時に0となることはない。)
【0012】
〔14〕 (B)カチオン種が、下記一般式(2)で表される金属錯体である、前記〔10〕~〔13〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0013】
a[(M3)l(X2)m]j (2)
【0014】
(式中、
Aは、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン、亜硝酸イオン又はカルボキシラトから選ばれる1種以上を示し、
aは、0~10の数を示し、
lは、0~1の数を示し、
mは、1~6の数を示し、
jは、1~3の数を示す。
但し、aとlは、同時に0となることはない。)
【0015】
〔15〕 (B)カチオン種が、カチオン性金属錯体を含む、前記〔10〕~〔14〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
〔16〕 カチオン性金属錯体が、下記の化合物群αより選ばれる1種又は2種以上である、前記〔15〕記載のイオン性固体。
【0016】
<化合物群α>
[Co(NH3)6]3+、[Co(H2O)(NH3)5]3+、[Co(NO2)(NH3)5]2+、[Co(H2O)6]2+、[Ni(H2O)6]2+、[Mn(H2O)6]2+、[Co(H2O)4]2+、[Ni(H2O)4]2+、[Mn(H2O)4]2+、{Li[Zn(OAc)2]}+、{Na[Zn(OAc)2]}+、{K[Zn(OAc)2]}+、{Cs[Zn(OAc)2]}+、{Na2Cs7[Zn(OAc)2]}9+、{Na9[Zn(OAc)2]}9+、[Co(en)3]3+、[Co(tn)3]3+
(但し、OAcは酢酸イオン、enはエチレンジアミン、tnは1,3-ジアミノプロパンを表す。)
【0017】
〔17〕 結晶格子が、下記一般式(3)で表される金属錯体を含む、前記〔2〕~〔16〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0018】
[(M1)3(M2)2(X1)6]2[(M3)(X2)m1]3・nH2O (3)
【0019】
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン又はカルボキシラトから選ばれる1種以上を示し、
m1は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。)
【0020】
〔18〕 結晶格子が、下記一般式(4)で表される金属錯体を含む、前記〔2〕~〔16〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0021】
(A)a[(M1)3(M2)2(X1)6]b[(M3)l(X2)m2]c・nH2O (4)
【0022】
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン、亜硝酸イオン又はカルボキシラトをから選ばれる1種以上を示し、
Aは、相互に独立に、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
aは、0~10の数を示し、
bは、1~3の数を示し、
cは、1~3の数を示し、
lは、0~1の数を示し、
m2は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。
但し、aとlは、同時に0となることはない。)
【0023】
〔19〕 結晶格子が、下記一般式(5)で表される金属錯体を含む、前記〔2〕~〔16〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0024】
(A)9[(M1)3(M2)2(X1)6]3[(M3)(X2)m3]2・nH2O (5)
【0025】
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン又はカルボキシラトから選ばれる1種以上を示し、
Aは、相互に独立に、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
m3は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。)
【0026】
〔20〕 バルクイオン伝導性を示すものである、前記〔2〕~〔19〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0027】
〔21〕 金属錯体は、金属イオンと、金属元素と、配位子とからなる多核金属錯体が集積したカチオン性多核金属錯体である、前記〔2〕~〔9〕いずれか一に記載のイオン性固体。
〔22〕 カチオン性多核金属錯体が、9核から200核のカチオン性金属錯体である、前記〔21〕記載のイオン性固体。
〔23〕 カチオン性多核金属錯体は、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンと、該金属A以外の1種又は2種以上の遷移金属Bと、3脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸から選ばれる1種又は2種以上の配位子とからなる多核金属錯体が1以上集積したものである、前記〔21〕又は〔22〕記載のイオン性固体。
〔24〕 カチオン性多核金属錯体が、下記式(11)で表される多核金属錯体を含む、前記〔21〕~〔23〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0028】
[M11 612 h(X11)ma(X12)3ma]na (11)
【0029】
(式中、
11は、相互に独立に、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンを示し、
12は、相互に独立に、金属A以外の遷移金属Bを示し、
11は、相互に独立に、三脚型ホスフィンを示し、
12は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
hは、3又は6を示し、
maは、1又は2を示し、
naは、1~18の整数を示す。)
【0030】
〔25〕 結晶格子が、下記式(12)で表されるもので形成されてなる、前記〔21〕~〔24〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0031】
[{M11 612 h(X11)ma(X12)3mana(M12 p13 q)](E)r (12)
【0032】
(式中、
11は、相互に独立に、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンを示し、
12は、相互に独立に、金属A以外の遷移金属Bを示し、
13は、相互に独立に、金属A以外の金属を示し、
11は、相互に独立に、三脚型ホスフィンを示し、
12は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
hは、3又は6を示し、
maは、1又は2を示し、
naは、1~18の整数を示し、
Eは、アニオン又は無機酸を示し、
p、q、rは、相互に独立に、0又は1以上の整数を示す。但し、p、q及びrは、同時に0となることはない。)
【0033】
〔26〕 遷移金属Bが、Pd、Ni、Zn、Pt、Cd、Cu及びMnから選ばれる1種又は2種以上である、前記〔21〕~〔25〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
〔27〕 配位子として三脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸を含み、3脚型ホスフィンとチオール基を有するアミノ酸との比(三脚型ホスフィン/チオール基を有するアミノ酸)が1/3~1/2である、前記〔21〕~〔26〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
〔28〕 三脚型ホスフィンが1、1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンであり、チオール基を有するアミノ酸がペニシラミンである、前記〔21〕~〔27〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
〔29〕 空隙を反応場として用いる、前記〔21〕~〔28〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
〔30〕 空隙を縮合反応の反応場として用いる、前記〔21〕~〔29〕のいずれか1項に記載のイオン性固体。
〔31〕 空隙をオキソアニオンの縮合反応の反応場として用いる、前記〔21〕~〔30〕のいずれか一に記載のイオン性固体。
【0034】
〔32〕 前記〔21〕~〔31〕のいずれか一に記載のイオン性固体の空隙を酸化反応の反応場として用いる、酸化物の製造方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、新規なイオン性固体を提供することができる。本発明のイオン性固体は、空隙に物質を取り込むことで種々の特性が発現されるため、例えば、電気化学的デバイス材料、反応場提供材料、気体吸着材料、溶媒蒸気吸着材料、分子認識材料、金属イオン交換体、陰イオン交換体等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】合成例2、3で得られたイオン性固体の合成スキームを示す図である。
図2】合成例2で得られたイオン性固体の結晶構造を示す図である。
図3】合成例3で得られたイオン性固体の結晶構造を示す図である。
図4】合成例2、3、及び実施例16、19、20で得られたイオン性固体のラマンスペクトルを示す図である。
図5】実施例10、16、19、20で得られたイオン性固体の1H-NMRスペクトルを示す図である。
図6】実施例24で得られたイオン性固体の結晶構造を示す図である。
図7】実施例26で得られたイオン性固体の結晶構造を示す図である。
図8】実施例10、合成例2で得られたイオン性固体の気体吸着材料としての性能を示す図である。
図9】実施例25で得られたイオン性固体の溶媒蒸気吸着材料としての性能を示す図である。
図10】実施例31~33で得られたイオン性固体のIRスペクトルを示す図である。
図11】実施例34で得られたイオン性固体のESI-massスペクトルを示す図である。
図12】実施例34で得られたイオン性固体のIRスペクトルを示す図である。
図13】実施例35で得られたイオン性固体の反応場提供材料としての性能を示す図である。
図14】実施例35で得られたイオン性固体の反応場提供材料としての性能を示す図である。
図15】実施例35で得られたイオン性固体の反応場提供材料としての性能を示す図である。
図16】実施例35で得られたイオン性固体の反応場提供材料としての性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明にかかる「イオン性固体」は、物質を取り込むための空隙を有するイオン性固体であれば特に限定されないが、好適な態様としては、例えば、空隙を形成する結晶格子が、カチオン種とアニオン種から形成されている場合、及びイオン性の結晶により形成されている場合がある。
【0038】
〔第1実施形態〕
本実施形態に係るイオン性固体は、物質を取り込むための空隙を有することを特徴とするものである。ここで、本明細書において「イオン性固体」とは、カチオンとアニオンが密に配列しているクーロンカ支配型イオン性固体ではなく、カチオンとアニオンが疎に配列している非クーロンカ支配型イオン性固体をいい、イオン性固体全体として中性が保たれている。
【0039】
イオン性固体は、カチオン分子又はアニオン分子が連なった三次元骨組構造によって結晶格子が形成されており、その結晶格子には空隙(空間)がある。
結晶格子の空隙率は、結晶格子中に通常40%以上であり、好ましくは60%以上である。ここで、本明細書において「空隙率」は、J. Appl. Cryst., 41, 466-470, 2008に記載の方法により求めた値である。すなわち、結晶構造表示ソフト(Mercury; J. Appl. Cryst.(2008). 41,466-470)のVOID機能により算出したSolvent Accessible Void(単位格子内の空隙体積)をもとに「単結晶の体積×単位胞における空隙率」を用いて計算することができる。
また、空隙の開口径は、通常0.5nm以上であり、好ましくは0.5~5nm、より好ましくは0.8~5nm、更に好ましくは1.5~4nmである。ここで、本明細書において「開口径」は、X線回折により測定することができる。
【0040】
結晶格子は、カチオン分子又はアニオン分子が連なって三次元骨組構造を形成していれば特に限定されないが、金属錯体により形成されていることが好ましく、(A)アニオン性金属錯体と(B)カチオン種とが配位結合又はイオン結合で配列したものであるか、あるいは金属イオンと、金属元素と、配位子とからなるカチオン性多核金属錯体を含む金属錯体が集積したイオン性固体であることが好ましい。
【0041】
イオン性固体の空隙は、1種又は2種以上の物質を取り込むことができる。物質の取り込みは、例えば、イオン性固体を、物質を含む溶液に浸漬し、イオン性固体の開口を通じて空隙に物質を取り込ませればよい。ここで、本明細書において「物質を取り込む」とは、イオン性固体の空隙に物質を内包することをいい、担持、包接、吸着を包含する概念である。
【0042】
内包物質としては特に限定されないが、例えば、気体、液体、固体を挙げることができる。中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、液体、固体が好ましく、水、無機塩、金属イオン、オキソアニオン及び分子量が60以上である親水性物質から選択される1種又は2種以上が更に好ましい。空隙が水で満たされていると、水の大きな誘電率によってクーロン引力を低減させることができる。なお、結晶格子の空隙が水で満たされているか否かは、X線構造解析(酸素原子の存在)、CHN元素分析(水の存在)、IRスペクトル(水由来のOH伸縮の存在)、TG-DTA分析(100℃以下での重量減少)を総合して判断することができる。また、空隙に、無機塩、金属イオン又は親水性物質が内包されていると、優れたイオン伝導性を示すことができる。更に、空隙を化学反応の反応場とすることができる。これらの機能については、後述する。
【0043】
金属イオンとしては、1価又は2価の金属カチオンが好ましく、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、銅イオン、カドミウムイオンを挙げることができる。
無機塩としては水及び非プロトン性極性溶媒に溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、硝酸カドミウム、硝酸銅等の硝酸塩を挙げることができる。
【0044】
分子量が60以上である親水性物質としては、例えば、分子量が60以上であり、かつ水酸基、スルファニル基、アミノ基、カルボキシル基又はアミド基を有する有機化合物を挙げることができる。具体的には、例えば、分子量が60以上である多価アルコール、分子量が60以上である環状オリゴ糖、分子量が60以上である糖類、及び分子量が60以上である糖アルコール、及び分子量が60以上であるアミノ酸又はその誘導体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0045】
分子量が60以上である多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
分子量が60以上である環状オリゴ糖としては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等が挙げられる。
分子量が60以上である糖類としては、例えば、グルコース等の単糖、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース等の二糖を挙げることができる。
分子量が60以上である糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、アドニトール、ガラクチトール、エリトリトール等を挙げられる。
分子量が60以上であるアミノ酸又はその誘導体としては、例えば、ペニシラミン、アスパラギン酸等を挙げることができる。
【0046】
本実施形態に係るイオン性固体は、その空隙に物質を内包することで、例えば、イオン二次電池、エレクトロクロミック素子、熱電素子等の電気化学的デバイス材料、酸化反応等の反応場提供材料の他、気体吸着材料、溶媒蒸気吸着材料、分子認識材料、金属イオン交換体、陰イオン交換体等と使用することができる。これら用途については、後述する。
【0047】
〔第2実施形態〕
本実施形態に係るイオン性固体は、物質を取り込むための空隙を有するイオン性固体であって、その空隙が金属錯体の結晶格子により形成されており、金属錯体が(A)アニオン性金属錯体と(B)カチオン種とが配位結合又はイオン結合で配列して形成されたものであることを特徴とする。本実施形態に係るイオン性固体は、(A)アニオン性金属錯体と(B)カチオン種とを有するが、形式的には(A)アニオン性金属錯体と(B)カチオン種は塩として会合することによりイオン性固体全体として中性を保ち、結晶として単離することができる。また、(A)アニオン性金属錯体と(B)カチオン種が配列して形成された結晶格子の空隙は水で満たされていてもよい。
ここで、本明細書において「アニオン性金属錯体」とは、水やアルコール等の極性溶媒に溶かしたときに、対カチオンと電離して陰イオンとして振る舞う金属錯体をいう。また、「カチオン種」とは主として金属のアクア陽イオンなどに代表される無機イオンのことをいう。なお、本実施形態に係るイオン性固体の空隙率及び開口径は、上記において説明したとおりである。
【0048】
(A)アニオン性金属錯体は、金属元素と配位子からなる金属錯体アニオンであるが、空隙率、イオン伝導性の観点から、2種の金属元素と1種の配位子からなる金属錯体アニオンが好ましく、周期表第6族、第9族及び第13族から選ばれる金属元素と、周期表第10族及び第11族から選ばれる金属元素とが1種の配位子を介して結合した多核錯体アニオンがより好ましい。多核金属アニオンとしては、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい2個の金属元素(M1)と、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい3個の金属元素(M2)とが1種の配位子を介して結合したM125核錯体アニオンが更に好ましい。
【0049】
周期表第6族、第9族及び第13族の金属元素としては、例えば、Co、Rh、Ir、Cr、Mo、W、B、Al、Ga、In、Tlが挙げられる。中でも、空隙率、イオン伝導性の観点から、周期表第9族の金属元素が好ましく、Co、Rhがより好ましく、Coが更に好ましい。
周期表第10族及び第11族の金属元素としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Niが挙げられる。中でも、空隙率、イオン伝導性の観点から、周期表第11族の金属元素が好ましく、Au、Agがより好ましく、Auが更に好ましい。
【0050】
配位子としては公知の配位子を用いることができるが、金属イオンへの配位座を複数持つ多座配位子は金属イオンと安定なキレート構造にて配位結合を形成し得るため好ましい。特に、水中で安定に金属配位子結合を形成できるチオール基を有することが好ましく、チオール基を有するアミノ酸がより好ましい。アミノ基とカルボキシル基の相対位置については特に限定はなく、α-アミノ酸に限らず、いわゆるω位にカルボキシル基があってもよい。また、アミノ基とチオール基は、金属に対してキレート構造を取る配置であることが好ましく、カルボキシル基のβ位又はγ位の配置であることがより好ましい。このような化合物としては、例えば、システイン、ペニシラミン(D-pen)、N-メチルシステイン、N-メチルペニシラミン、N,N’-エチレンビスシステイン、N,N’-エチレンビスペニシラミン(D-epen)等を挙げることができる。なお、配位子は、1種又は2種以上有することができる。
【0051】
本実施形態のイオン性固体に用いられる好適な(A)アニオン性金属錯体としては、下記一般式(1)で表されるものを挙げることができる。
【0052】
[(M1)d(M2)e(X1)f]k- (1)
【0053】
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
1は、チオール基を有するアミノ酸を示し、
dは、0~4の数を示し、
eは、0~4の数を示し、
fは、1~8の数を示し、
kは、1~4の数を示す。
但し、dとeは、同時に0となることはない。)
【0054】
なお、M1、M2に係る金属元素、X1に係るチオール基を有するアミノ酸は、上記において説明したとおりである。また、M1が複数存在する場合には、同一でも異なっていてもよく、M2及びX1においても同様である。
【0055】
(B)カチオン種としては、空隙率、イオン伝導性の観点から、カチオン性金属錯体を含むことが好ましい。カチオン性金属錯体は、金属元素と配位子からなるものであるが、空隙率、イオン伝導性の観点から、1種の金属元素を中心として、これに配位子が結合したカチオン性金属錯体が好ましく、周期表第7族、第9族、第10族及び第12族から選ばれる金属元素を中心とし、これに配位子が結合したカチオン性金属錯体がより好ましく、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を中心とし、これに1種の配位子が結合したカチオン性金属錯体が更に好ましい。
【0056】
周期表第7族、第9族、第10族及び第12族の金属元素としては、例えば、Mn、Tc、W、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Znが挙げられる。中でも、空隙率、イオン伝導性の観点から、周期表第9族、第12族の金属元素が好ましく、Co又はZnが更に好ましい。
【0057】
配位子としては金属元素に配位して安定なカチオン性金属錯体を形成できれば特に限定されず、公知の配位子を用いることが可能であり、1種又は2種以上有することができる。例えば、水、アンミン、ジアミン、無機酸イオン、カルボキシラト、ジカルボキシラト等を挙げることができる。ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン等を挙げられ、また無機イオンとしては、例えば、ハロゲン化物イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、リン酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、ケイ酸イオン等が挙げられる。カルボキシラトとしては、例えば、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン等が挙げられ、またジカルボキシラトとしては、例えば、フマレートイオン、ベンゼンジカルボキシレートイオン等が挙げられる。中でも、空隙率、イオン伝導性の観点から、水、アンミン、ジアミン、無機イオン、カルボキシラトが好ましく、水、アンミン、酢酸イオン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパンが更に好ましい。
【0058】
本実施形態のイオン性固体に用いられる(B)カチオン種は、カチオン性金属錯体を含んでいれば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンを含有していてもよく、例えば、下記一般式(2)で表される金属錯体を挙げることができる。
【0059】
a[(M3)l(X2)m]j (2)
【0060】
(式中、
Aは、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン、亜硝酸イオン又はカルボキシラトから選ばれる1種以上を示し、
aは、0~10の数を示し、
lは、0~1の数を示し、
mは、1~6の数を示し、
jは、1~3の数を示す。
但し、aとlは、同時に0となることはない。)
【0061】
アルカリ金属イオンとしては、例えば、Li+、Na+、K+、Cs+、Rb+等が挙げられ、アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+等を挙げることができる。
なお、M3に係る周期表第9族及び第12族の金属元素の具体例は、上記において説明したとおりである。また、M3が複数存在する場合には、同一でも異なっていてもよく、X2においても同様である。
【0062】
好適なカチオン性金属錯体の具体例としては、例えば、下記の化合物群αに示すものが挙られ、1種又は2種以上有することができる。
【0063】
<化合物群α>
[Co(NH3)6]3+、[Co(H2O)(NH3)5]3+、[Co(NO2)(NH3)5]2+、[Co(H2O)6]2+、[Ni(H2O)6]2+、[Mn(H2O)6]2+、[Co(H2O)4]2+、[Ni(H2O)4]2+、[Mn(H2O)4]2+、{Li[Zn(OAc)2]}+、{Na[Zn(OAc)2]}+、{K[Zn(OAc)2]}+、{Cs[Zn(OAc)2]}+、{Na2Cs7[Zn(OAc)2]}9+、{Na9[Zn(OAc)2]}9+、[Co(en)3]3+、[Co(tn)3]3+(但し、OAcは酢酸イオン、enはエチレンジアミン、tnは1,3-ジアミノプロパンを表す。)
【0064】
また、本実施形態のイオン性固体の結晶格子は、下記式(3)、(4)又は(5)で表される金属錯体を含むものが好ましい。なお、かかる金属錯体は、1種又は2種以上含有することができる。
【0065】
[(M1)3(M2)2(X1)6]2[(M3)(X2)m1]3・nH2O (3)
【0066】
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン又はカルボキシラトから選ばれる1種以上を示し、
m1は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。)
【0067】
(A)a[(M1)3(M2)2(X1)6]b[(M3)l(X2)m2]c・nH2O (4)
【0068】
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン、亜硝酸イオン又はカルボキシラトをから選ばれる1種以上を示し、
Aは、相互に独立に、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
aは、0~10の数を示し、
bは、1~3の数を示し、
cは、1~3の数を示し、
lは、0~1の数を示し
m2は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。
但し、aとlは、同時に0となることはない。)
【0069】
(A)9[(M1)3(M2)2(X1)6]3[(M3)(X2)m3]2・nH2O (5)
【0070】
(式中、
1は、相互に独立に、周期表第9族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
2は、相互に独立に、周期表第11族元素から選ばれる同一又は異なってもよい金属元素を示し、
3は、周期表第9族及び第12族から選ばれる金属元素を示し、
1は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
2は、相互に独立に、水、アンミン、ジアミン、亜硝酸イオン又はカルボキシラトから選ばれる1種以上を示し、
Aは、相互に独立に、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを示し、
m3は、1~6の数を示し、
nは、1~100の数を示す。)
【0071】
上記式(3)~(5)において、m1、m2及びm3は2~6の数が好ましく、nは2~50の数が好ましい。なお、M1、M2、M3に係る金属元素、X1に係るチオール基を有するアミノ酸、Aに係るアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンは、上記において説明したとおりである。また、M1が複数存在する場合には、同一でも異なっていてもよく、M2、M3、X1、Aにおいても同様である。
【0072】
上記一般式(4)又は(5)で表される金属錯体を含む結晶格子に形成されたイオン性固体の一例を図2図3に示す。図2及び図3に示すように、結晶格子の空隙の開口径は0.5nm以上であり、結晶格子の空隙率は40%以上である。
【0073】
また、(A)アニオン性金属錯体と(B)カチオン種が配列して形成された結晶格子の空隙には、水等の種々の物質を取り込ませることができる。中でも、親水性物質については、分子量の小さなものを包接できないが、意外にも、分子量が60以上のものを特異的に包接できることを見出した。更に詳細に検討をすすめたところ、このような親水性物質を包接したイオン性固体は優れたイオン伝導性を示すことを見出した。
親水性物質の分子量は、空隙との関係から、70以上が好ましく、80以上が更に好ましい。なお、親水性物質の分子量の上限値は、包接の容易さから、1600が好ましく、1500がより好ましい。
【0074】
分子量が60以上である親水性物質としては、分子量が60以上であり、かつ水酸基、スルファニル基、アミノ基、カルボキシル基又はアミド基を有する有機化合物が挙げられ、具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。中でも、イオン伝導性の観点から、分子量が60以上である多価アルコール、分子量が60以上である環状オリゴ糖、分子量が60以上である糖類、及び分子量が60以上である糖アルコール、分子量が60以上であるアミノ酸が好ましい。なお、親水性物質は、1種又は2種以上使用することができる。
【0075】
親水性物質の取り込みは、例えば、イオン性固体を、親水性物質、親水性物質を含有する水、又は親水性物質を含有する有機溶媒水溶液に浸漬し、イオン性固体の開口を通じて空隙に親水性物質を取り込ませればよい。有機溶媒としては、水溶性であれば特に限定されず、例えば、エタノール等のアルコールを使用することができる。
また、親水性物質を取り込んだイオン性固体に、親水性物質とは異種の化合物を結晶格子の空隙及び/又は親水性物質に包接させてもよい。
【0076】
本実施形態に係るイオン性固体は適宜の方法により製造することが可能であるが、例えば、アニオン性金属錯体の塩と、カチオン性金属錯体とを反応させることで製造することができる。なお、アニオン性金属錯体の塩及びカチオン性金属錯体は、公知の方法により製造すればよい。金属錯体同士の反応は、例えば、水や酢酸/酢酸カリウム緩衝液等の溶媒中で、アニオン性金属錯体の塩と、カチオン性金属錯体とを撹拌すればよい。単離操作は、例えば、エタノール等のアルコールで洗浄した後、ろ過等で分取すればよい。
【0077】
本実施形態に係るイオン性固体は、その空隙に種々の物質を取り込ませることで、第1実施形態において説明した様々な用途に適用することができるが、例えば、結晶格子の空隙に親水性物質を包接することで、イオン伝導性が高くバルクイオン伝導性を示すことができる。また、キシリトール、アラビトール及びアドニトールは、同一分子量の糖類であるところ、後記の実施例にて示されるように、キシリトールがアラビトールやアドニトールよりも包接されやすいことから、分子認識材料としても利用することが可能である。更に、上記式(2)で表されるイオン性固体は、結晶格子の空隙に金属イオンを含有することで、金属イオンがイオン性固体の中を移動できるため、イオン伝導性をより一層増強することが可能であり、イオン二次電池、エレクトロクロミック素子、熱電素子等の電気化学的デバイス材料として有用である。
【0078】
〔第3実施形態〕
本実施形態に係るイオン性固体は、物質を取り込むための空隙を有するイオン性固体であって、その空隙がカチオン性多核金属錯体、すなわち金属錯体の結晶格子により形成されており、カチオン性多核金属錯体の結晶格子が、金属イオンと、金属元素と、配位子とからなる多核金属錯体が1以上集積したものであることを特徴とする。そして、本実施形態に係るイオン性固体は、カチオン性多核金属錯体とアニオンとがイオン結合し、イオン性固体全体として中性を保っている。ここで、本明細書において「カチオン性金属錯体」とは、水やアルコール等の極性溶媒に溶かしたときに、対アニオンと電離して陽イオンとして振る舞う金属錯体をいう。なお、本実施形態に係るイオン性固体の空隙率及び開口径は、上記において説明したとおりである。
【0079】
カチオン性多核金属錯体は、多核金属錯体が集積したものであるが、9~200核が好ましく、13~160核が更に好ましい。
【0080】
カチオン性多核金属錯体を構成する金属イオンとしては、例えば、周期表第9族から選ばれる金属のイオン、周期表第11族から選ばれる金属のイオン、及び周期表第12族から選ばれる金属のイオンが挙げられ、中でも、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンが好ましく、Cu、Ag及びAuから選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0081】
カチオン性多核金属錯体を構成する金属元素としては、金属A以外の1種又は2種以上の遷移金属Bであれば特に限定されず、遷移金属Bは該多核金属錯体を構成する金属Aと重複しなければ、周期表第11族から選ばれる金属であっても構わない。遷移金属Bとしては、Pd、Ni、Zn、Pt、Cd、Cu及びMnから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0082】
カチオン性多核金属錯体を構成する配位子としては、金属原子と配位結合し、金属錯体を形成できれば特に限定されないが、例えば、三脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、三脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸の組み合わせが好ましい。
【0083】
配位子として三脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸を含む場合、三脚型ホスフィンとチオール基を有するアミノ酸との比(三脚型ホスフィン/チオール基を有するアミノ酸)は、1/3~1/2であることが好ましい。
【0084】
三脚型ホスフィンとしては、例えば、トリス(ジフェニルホスフィノアルキル)アルカンを挙げることができる。トリス(ジフェニルホスフィノアルキル)アルカンとしては、例えば、1、1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンが挙げられる。
チオール基を有するアミノ酸としては、前述と同様のものが挙げられ、中でも、ペニシラミンが好ましい。
三脚型ホスフィンとチオール基を有するアミノ酸の組み合わせとしては、1、1,1-トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンとペニシラミンとの組み合わせが好ましい。
【0085】
カチオン性多核金属錯体としては、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンと、該金属A以外の1種又は2種以上の遷移金属Bと、三脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸から選ばれる1種又は2種以上の配位子とからなる多核金属錯体が1以上集積したものが好ましく、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンと、該金属A以外の1種又は2種以上の遷移金属Bと、三脚型ホスフィン及びチオール基を有するアミノ酸を含む配位子とからなる多核金属錯体が1以上集積したものが更に好ましい。このような多核金属錯体は、例えば、チオール基を有するアミノ酸の硫黄原子が金属A(例えば、Au)に連結し、その金属Aが更に三脚型ホスフィンに架橋して3核金属錯体を形成し、その3核金属錯体2個が更にチオール基を有するアミノ酸を用いて3つの遷移金属Bイオン(例えば、Cuイオン)に架橋し、9核金属錯体を形成する。そして、その9核金属錯体を1単位とし、例えば、9核金属錯体12個が8個の金属Bイオン(例えば、Cu)によって連結することで、カチオン性116核金属錯体を形成する。このカチオン性116核金属錯体は、9核金属錯体の遷移金属Bイオン(例えば、Cuイオン)8個が単純立方格子の頂点に配置された構造を有し、それを1単位として集積した構造を有する。
また、前記カチオン性116核金属錯体形成と同時に前記3核金属錯体が、チオール基を有するアミノ酸を用いて3つの遷移金属Bイオン(例えば、Cuイオン)に架橋し、その架橋サイトに更に3つの遷移金属Bイオン(例えば、Cuイオン)が配位することで12核金属錯体を形成し、その12核金属錯体を1単位とし、例えば、12核金属錯体12個が8個の金属Bイオン(例えば、Cu)によって連結することで、カチオン性152核金属錯体を形成して、前記カチオン性116核金属錯体と混合した状態をとることもできる。
【0086】
このような構造を与えるカチオン性多核金属錯体は、下記式(11)で表される多核金属錯体を含み、下記式(12)で表されるイオン性固体を形成することができる。
【0087】
[M11 612 h(X11)ma(X12)3ma]na (11)
【0088】
(式中、
11は、相互に独立に、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンを示し、
12は、相互に独立に、金属A以外の遷移金属Bを示し、
11は、相互に独立に、三脚型ホスフィンを示し、
12は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
hは、3又は6を示し、
maは、1又は2を示し、
naは、1~12の整数を示す。)
【0089】
[{M11 612 h(X11)ma(X12)3mana(M12 p13 q)](E)r (12)
【0090】
(式中、
11は、相互に独立に、周期表第11族から選ばれる金属Aのイオンを示し、
12は、相互に独立に、金属A以外の遷移金属Bを示し、
13は、相互に独立に、金属A以外の金属を示し、
11は、相互に独立に、三脚型ホスフィンを示し、
12は、相互に独立に、チオール基を有するアミノ酸を示し、
hは、3又は6を示し、
maは、1又は2を示し、
naは、1~18の整数を示し、
Eは、アニオン又は無機酸を示し、
p、q、rは、相互に独立に、0又は1以上の整数を示す。但し、p、q及びrは、同時に0となることはない。)
【0091】
11に係る周期表第11族から選ばれる金属Aのイオン、M12に係る金属A以外の遷移金属B、X11に係る三脚型ホスフィン、X12に係るチオール基を有するアミノ酸の具体例としては、前述と同様のものを挙げられ、複数存在する場合には、同一でも異なっていてもよい。
13に係る金属A以外の金属としては、例えば、Na、Cd等が挙げられ、複数存在する場合には、同一でも異なっていてもよい。
maは、1又は2であり、適宜選択することができる。
naは、1~18の整数であるが、1~15が好ましく、1~12が更に好ましい。
Eに係るアニオンは特に限定されないが、例えば、Cl-、Br-、F-、O2-、S2-、Te2-、N3 -、NO3 -、ClO4 -、BF4 -、SiF6 2-、SO4 2-、PF4 -等を挙げることができる。また、無機酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、塩素酸、リン酸等を挙げることができる。
p、q、rは、相互に独立に、0又は1以上の整数を示すが、pは1~30が好ましく、1~20が更に好ましく、またqは1~30が好ましく、1~20が更に好ましく、更にrは1~30が好ましく、1~20が更に好ましい。但し、p、q及びrは、同時に0となることはない。
【0092】
本実施形態に係るイオン性固体は適宜の方法により製造することが可能であるが、例えば、配位子と金属Aの塩とを溶媒中で反応させて多核金属錯体を得、次いで多核金属錯体と遷移金属Bの塩とを溶媒中で反応させてカチオン性多核金属錯体を結晶格子とするイオン性固体を得、そしてこの多核金属錯体を集積することで、カチオン性多核金属錯体が集積したイオン性固体を製造することができる。有機溶媒としては、水溶性であれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール等のアルコールを使用することができる。
また、得られたイオン性固体を、金属A以外の他の金属の塩の水溶液に浸漬することで、金属Aイオンが他の金属イオンに交換された新たなイオン性固体を製造することができる。
【0093】
本実施形態に係るイオン性固体は、その空隙に種々の物質を取り込ませることで、第1実施形態において説明した様々な用途に適用することが可能であるが、中でも反応場提供材料として使用することが好ましい。ここで、本明細書において「反応場」とは、ナノ空間である空隙内で化学反応が実行されるところをいう。イオン性固体の空隙内で実行される反応は、特に限定されるものでなく、取込ませた物質、あるいは空隙内での化学反応により製造された物質により適宜選択することができるが、例えは、縮合、重合反応、加水分解反応、酸化反応、還元反応、脱離反応、転位反応等が挙げられる。より具体的には、例えば、オキソアニオンであるモリブデン酸イオンを含む溶液にイオン性固体を浸漬させてイオン性固体中の空隙内にモリブデン酸イオンを取り込ませ、その空隙を縮合反応の反応場とし、モリブデン酸イオンを縮合させることで、ポリ酸を包接したイオン性固体を製造することができる。ここで用いるオキソアニオンは、金属オキソアニオンであれば特に限定されないが,例えば,タングステン酸、モリブデン酸、バナジン酸、マンガン酸、過レニウム酸、クロム酸等が挙げられる。また、ポリ酸は、1種の金属オキソアニオン、あるいは、複数種の金属オキソアニオンから製造することができる。
更に、該ポリ酸包接イオン性固体は酸化反応に利用することもできる。すなわち、被酸化物質を含む溶液に該ポリ酸包接イオン性固体及び酸化剤を作用させることで、空隙内の酸化剤がポリ酸を触媒として被酸化物質を酸化し、被酸化物質の酸化物を製造することができる。このように、本実施形態に係るイオン性固体の空隙を酸化反応の反応場として用いることで、酸化物を製造することができる。なお、酸化反応は、常温(20±15℃)、常圧(大気圧)でよく、加熱又は冷却、加圧又は減圧することを要しないため、省エネルギーで効率よく行うことができる。また、酸化剤及び被酸化物質の種類は特に限定されず、適宜選択することが可能であり、酸化剤及び被酸化物質の種類に応じて使用量を適宜設定すればよい。
このようにイオン性固体の空隙内で化学反応により製造された物質は、空隙に取り込まれた物質による反応場としての効果だけでなく、上記した用途にも利用できる。
【実施例
【0094】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0095】
(1)X線構造解析
・装置 :Mercury 2(リガク社製)
・X線源 :放射光(SPring-8)0.7000Å
・測定範囲:2θ=1~59°
・測定間隔:1°
・走査速度:20°/min
・光量 :1010 photons/sec
【0096】
(2)核磁気共鳴
1H NMRは、日本電子(株)製ECS500(500MHz)を用いて室温にて測定した。
【0097】
(3)ラマン分光分析
ラマン分光分析は、日本分光(株)製NR-1800(励起光523nm半導体レーザー)を用いて室温にて測定した。ヨウ素の存在は、100~300cm-1のピークの有無、及び極大波長をもって確認した。
【0098】
(合成例1)
Na3[Co2Au3(D-pen)6]2・13H2Oの合成
2.5gのD-pen(D-ペニシラミン)を40mlのメタノールに懸濁させ、これに四塩化金(III)酸水溶液3.4gと2,2´-チオジエタノール2mLを加えて攪拌し、さらに28%アンモニア水3.8mLを加え一晩室温で静置した後、ろ過して結晶を得た。この結晶1gを含む水溶液100mLに1Mの酢酸ナトリウム水溶液6mL、トリカルボナトコバルト(III)酸ナトリウム430mgを加えて室温下1時間攪拌した後の紫色溶液に、メタノール30mL加えて一晩静置し、ろ過、乾燥してNa3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2Oの結晶を得た。単離収量は、788mg(71%)であった。
【0099】
(合成例2)
[Co(H2O)6]3[Co2Au3(D-pen)6]2・nH2O(以下、「Co3D」とも称する)の合成
2O(3mL)中にNa3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(100mg、0.0602mmol)を含む紫色溶液に、1MのNH4Cl水溶液(400μL)を加えた。その溶液を室温で10分間撹拌した後、水(1.6mL)中にCo(OAc)2・4H2O(26mg、0.10mmol)を含むピンク色の溶液を加えた。室温で数分間撹拌した後、混合物を室温で12時間放置した。得られた紫色板状結晶を濾過により集めた。X線分析により得られた結晶が上記化学式で表されるイオン性固体であることを確認した。Co3Dの合成スキームを図1に示し、イオン性固体の結晶構造を図2に示す。単離収量は、48mg(39%)であった。Co3Dの空隙の開口径は3.5nmであり、空隙率は80%であった。
【0100】
(合成例3)
Na9[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・nH2O(以下、「Zn1D」とも称する)の合成
合成例1のNa3[Co2Au3(D-pen)6)・13H2O(50mg、0.030mmol)を酢酸ナトリウム緩衝液(2.5mL、pH5.5、[OAc-]=0.9M)中に溶解させて紫色の溶液とし、Zn(OAc)2・2H2O(10mg,0.045mmol)のNaOAc緩衝水溶液(2.5mL、pH5.5、[OAc-]=0.9M)の無色の溶液を加えた。混合物を室温で5分間撹拌し、暗紫色の溶液を得た。反応液を室温で2週間放置した後、紫色の六角柱型結晶を濾取した。合成例1と同様にX線分析により得られた結晶が上記化学式で表されるイオン性固体であることを確認した。Zn1Dの合成スキームを図1に示し、イオン性固体の結晶構造を図3に示す。単離収量は、14mg(23%)であった。Zn1Dの空隙の開口径は2nmであり、空隙率は60%であった。
【0101】
(合成例4)
[Co(en)3][Co2Au3(D-pen)6]・nH2Oの合成
Na3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(30mg、0.018mmol)をH2O(10mL)に溶解させた紫色溶液に、rac-[Co(en)3](NO33(7.1mg、0.017mmol)を水(10mL)に溶解させた黄色の溶液を加えた。その溶液を室温で10分間撹拌した後、混合物を室温で2か月放置した。得られた紫色六角柱状結晶を濾過により集めた。X線分析により得られた結晶が上記化学式で表されるイオン性固体であることを確認した。単離収量は、16mg(43%)であった。イオン性固体の空隙の開口径は2nmであり、空隙率は60%であった。
【0102】
(合成例5)
[Co(tn)3][Co2Au3(D-pen)6]・nH2Oの合成
Na3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(100mg、0.0602mmol)をH2O(10mL)中に溶解させた紫色溶液に、rac-[Co(tn)3]Cl3(25mg、0.064mmol)を水(10mL)に溶解させた黄色の溶液を加えた。その溶液を室温で5分間撹拌した後、混合物を室温で10日間放置した。得られた紫色六角柱状結晶を濾過により集めた。X線分析により得られた結晶が上記化学式で表されるイオン性固体であることを確認した。単離収量は、25mg(22%)であった。イオン性固体の空隙の開口径は2nmであり、空隙率は60%であった。
【0103】
(合成例6)
[Na10(OAc)(H2O)30][Co2Au3(D-pen)6]3・nH2Oの合成
Na3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(100mg、0.0602mmol)に酢酸ナトリウム緩衝液(0.5M、 pH6.0)を加えた紫色溶液を撹拌した後、混合物を室温で12時間放置し、得られた結晶を濾過により集めた。単離収量は、40mgであった。イオン性固体の空隙の開口径は2.7nmであり、空隙率は79%であった。
【0104】
親水性物質包接Co3Dの合成
(実施例1)
合成例2で得られたCo3Dの結晶10mgを、親水性物質(ゲスト化合物)として0.15molのエチレングリコールに浸漬して室温で2日間放置した。その後、多量のエタノールで洗浄して紫色の結晶としてゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。得られたイオン性固体について、1H NMR(D2O)により表1に示す親水性物質(ゲスト化合物)の包接量を定量分析した。なお、定量分析は、1H NMRチャート中のペニシラミンのメチル基プロトンの積分値と、親水性物質(ゲスト化合物)のプロトンの積分値との比較により、ペニシラミン錯体当たりの親水性物質(ゲスト化合物)の個数を決定し、下記式(i)から親水性物質(ゲスト化合物)の包接量(質量%)に換算した。その結果を表1に併せて示す。
【0105】
包接量(質量%)=100×P×Q/1842.5+(P×Q) (i)
【0106】
〔式(i)中、Pは親水性物質(ゲスト化合物)の分子量を示し、Qは親水性物質(ゲスト化合物)の個数を示す。〕
【0107】
(実施例2)
実施例1において、エチレングリコールの代わりに、0.9Mのスクロースを溶解した水を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0108】
(実施例3)
実施例2において、0.9Mのスクロースの代わりに0.3Mのマンニトールを用いた以外は、実施例2と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例4)
実施例1において、エチレングリコールの代わりに、1Mのアラビトールを溶解した水-エタノール溶液(水/エタノール=1/4)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た、そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0110】
(実施例5)
実施例4において、アラビトールの代わりにキシリトールを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0111】
(実施例6)
実施例4において、アラビトールの代わりにアドニトールを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0112】
(実施例7)
実施例1において、エチレングリコールの代わりに、0.1MのD-ペニシラミンを溶解した水-エタノール溶液(水/エタノール=1/3)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例8)
実施例7において、D-ペニシラミンの代わりにL-ペニシラミンを用いた以外は、実施例7と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例9)
実施例1において、エチレングリコールの代わりに、0.05MのD-アスパラギン酸を溶解した水-エタノール溶液(水/エタノール=1/1)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例10)
実施例9において、0.05MのD-アスパラギン酸の代わりに0.15Mのα-シクロデキストリンを用いた以外は、実施例9と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。なお、シクロデキストリンの包接量(%)は、1H NMRチャート中の、ペニシラミンのメチル基の積分値と、シクロデキストリンのメチン基の積分値とを比較し、シクロデキストリンの包接量をペニシラミン錯体当たりの量に換算した。
【0116】
(実施例11)
実施例10において、α-シクロデキストリンの代わりにβ-シクロデキストリンを用いた以外は、実施例10と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
【0117】
(実施例12)
実施例10において、α-シクロデキストリンの代わりにγ-シクロデキストリンを用いた以外は、実施例10と同様の操作を行いゲスト化合物を包接したイオン性固体を得、そして包接量を求めた。結果を表1に示す。
なお、実施例12においてCo3Dの替りに合成例6に示すイオン性固体を用いたところ2分子のγ-シクロデキストリンが包接されていることを確認した。
【0118】
(参考例1)
実施例1において、エチレングリコールの代わりに、10Mのホルムアルデヒドを溶解した水を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。しかし、2日間放置後、1H NMRにおいてもゲスト化合物のシグナルが確認されなかったため、ゲスト化合物は包接されていないと判断した。結果を表1に示す。
【0119】
(参考例2)
参考例1において、ホルムアルデヒドの代わりに、14Mのエタノールを溶解した水-エタノール溶液(水/エタノール=1/4)を用いた以外は、参考例1と同様の操作を行った。しかし、2日間放置後、1H NMRにおいてもゲスト化合物のシグナルが確認されなかったため、ゲスト化合物は包接されていないと判断した。結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
親水性物質包接Zn1Dの合成
(実施例13)
実施例1において、ホスト化合物として合成例1のCo3Dの代わりに合成例3で得られたZn1Dの結晶10mgを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作によりゲスト化合物を包接したイオン性固体を紫色固体として得た。得られたイオン性固体について、1H NMR(D2O)により表2に示す親水性物質(ゲスト化合物)の包接量を定量分析した。なお、定量分析は、1H NMRチャートからペニシラミン錯体当たりの親水性物質(ゲスト分子)の個数を決定し、下記式(ii)から親水性物質(ゲスト化合物)の包接量(質量%)に換算した。その結果を表2に示す。
【0122】
包接量(質量%)=100×P×Q/1721.5+(P×Q) (ii)
【0123】
〔式(ii)中、Pは親水性物質(ゲスト化合物)の分子量を示し、Qは親水性物質(ゲスト化合物)の個数を示す〕
【0124】
(実施例14)
実施例13において、エチレングリコールの代わりに、1Mのキシリトールを溶解した水-エタノール溶液(水/エタノール=1/4)を用いた以外は、実施例13と同様の操作を行い、ゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表2に示す。
【0125】
(実施例15)
実施例14において、キシリトールの代わりにアドニトールを用いた以外は、実施例14と同様の操作を行い、ゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表2に示す。
【0126】
(実施例16)
実施例13において、エチレングリコールの代わりに、0.15Mのα-シクロデキストリンを溶解した水-エタノール溶液(水/エタノール=1/1)を用いた以外は、実施例13と同様の操作を行い、ゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表2に示す。なお、シクロデキストリンの包接量(%)は、1H NMRチャート中の、ペニシラミンのメチル基の積分値と、シクロデキストリンのメチン基の積分値とを比較し、シクロデキストリンの包接量をペニシラミン錯体当たりの量に換算した。
【0127】
(実施例17)
実施例16において、α-シクロデキストリンの代わりにβ-シクロデキストリンを用いた以外は、実施例16と同様の操作を行い、ゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表2に示す。
【0128】
(実施例18)
実施例16において、α-シクロデキストリンの代わりにγ-シクロデキストリンを用いた以外は、実施例16と同様の操作を行い、ゲスト化合物を包接したイオン性固体を得た。そして包接量を求めた。結果を表2に示す。
【0129】
(参考例3)
実施例13において、エチレングリコールの代わりに、10Mのホルムアルデヒドを溶解した水-エタノール溶液(水/エタノール=1/4)を用いた以外は、実施例13と同様の操作を行った。しかし、2日間放置後、1H NMRにおいてもゲスト化合物のシグナルが確認されなかったため、ゲスト化合物は包接されていないと判断した。結果を表2に示す。
【0130】
(参考例4)
参考例3において、ホルムアルデヒドの代わりに、14Mのエタノールを溶解した水-エタノール溶液(水/エタノール=1/4)を用いた以外は、比較例3と同様の操作を行った。しかし、2日間放置後、1H NMRにおいてもゲスト化合物のシグナルが確認されなかったため、ゲスト化合物は包接されていないと判断した。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
(実施例19)
更にヨウ素を包接した、α-シクロデキストリン包接Co3D(CoD+α-CD+I2)の合成
合成例1で得られたCo3Dの結晶50mgをα-シクロデキストリン0.15molを溶解したエチレングリコール液0.5mL、及びヨウ素0.1molを含むエチレングリコール液に浸漬して、室温で1日間放置した。その後、メタノール水溶液で洗浄して褐色のかかった紫色のイオン性固体を得た。得られたイオン性固体のヨウ素取込みをラマン分光分析、及び1H NMR(D2O)により分析した。なお、ラマン分光分析は、日本分光(株)製NR-1800を用いて行った。その結果を図4及び図5に示す。これらの分析により、α-シクロデキストリン包接Co3Dにヨウ素が包接されていることを確認した。次に、蛍光X線分析法を用いてヨウ素の包接量を調べた。蛍光X線分析には、蛍光X線分析装置としてエネルギー分散型蛍光X線分析装置EDX-720(SHIMADZU社製)を用いた。蛍光X線分析により、[Co2Au3]:I2=1:0.35であった。ヨウ素の包接量は、ヨウ素の固有X線蛍光を観測し、その強度をコバルトの蛍光X線強度と比較して求めた。
【0133】
(実施例20)
更にヨウ素を包接した、α-シクロデキストリン包接Zn1D(Zn1D+α-CD+I2)の合成
合成例2で得られたZn1Dの結晶50mgを用いたこと以外は、実施例19と同様の操作によりイオン性固体を得た。得られたイオン性固体のヨウ素取込みを実施例19と同様にラマン分光分析、及び1H NMR(D2O)により分析した。その結果を図4及び図5に示す。これらの分析により、α-シクロデキストリン包接Zn1Dにヨウ素が包接されていることを確認した。次に、蛍光X線分析法を用いて実施例19と同様にヨウ素の包接量を調べ、 [Co2Au3]:I2=1:0.8であった。
【0134】
(実施例21)
Na9[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・1EG・13H2Oの合成
合成例2にて得られたNa9[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・nH2Oの結晶20mgをエチレングリコール(99.5%)0.5mLに浸漬して、室温下で3日間放置し、紫色の固体をメタノールで洗浄して、数時間乾燥し、Na9[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・1EG・13H2Oを得た。
エチレングリコールの包接量については、1H NMRにおけるエチレングリコールのメチレン水素のシグナル(3.65ppm、4H)の積分強度と、錯体アニオンのメチル基水素のシグナル(1.5ppm、18H及び1.6ppm18H)の積分強度とを比較することにより算出した。
また、Na+イオンの量は、23Na NMRの共鳴強度を標準試料(0.1mM、1mM、10mM、100mMのNaCl/D2O溶液)により検量線を作成し定量した。
【0135】
(実施例22)
Na9[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・4EG・13H2Oの合成
エチレングリコール(99.5%)0.5mLを用い、室温下で5日間放置したこと以外は、実施例21と同様の操作によりNa9[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・4EG・13H2Oを得た。エチレングリコールの包接量については、実施例21と同様にして決定した。
【0136】
(実施例23)
Na2Cs7[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・4EG・10H2Oの合成
Na3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(100mg)を酢酸/酢酸セシウム緩衝水溶液(5mL、pH6、[OAc-]=0.5M)中に溶解させ、これにZn(OAc)2・2H2O(4.4mg)を酢酸/酢酸セシウム緩衝水溶液(5mL、pH6、[OAc-]=0.5M)に溶解させた溶液を加えて室温で5分間撹拌し、暗紫色の溶液を得た。この溶液を室温で3週間放置した後、紫色の六角柱型結晶を濾取し、Na2Cs7[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・0EGを得た。単離収量は、21mg(20%)であった。
得られた結晶20mgをエチレングリコール(99.5%)0.5mLに浸漬して室温下で3日間放置し、紫色の固体をメタノールで洗浄して、数時間乾燥し、Na2Cs7[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・1EG・10H2Oを得た。
エチレングリコールの包接量、Na+イオンの量については、実施例21と同様にして決定した。
【0137】
(イオン伝導度の測定)
実施例21~23で得られたイオン性固体について、以下の方法によりイオン伝導度を測定した。なお、実施例21、22のイオン性固体については、エチレングリコールを包接していないNa9[{Zn(OAc)2}Co2Au3(D-pen)6]・13H2Oを参考例5として比較実験を行い、実施例23のイオン性固体については、エチレングリコールを包接していないNa2Cs7[{Zn(OAc)2}{Co2Au3(D-pen)63]・10H2Oを参考例6として比較実験を行った。
【0138】
(1)ペレットの作製
10~20mg程度の粉末状ないし結晶状の検体を3mmφの円筒形セルに詰め、5GPaの圧力で20分以上保持し、ペレットを作製した。
【0139】
(2)イオン伝導性の測定
得られたペレットを東陽テクニカ製SH-Zセルホルダーに圧着した。ケーブルを接続したセルホルダー全体を湿度と温度を調整した恒温槽内部に静置した。この状態で、Wayne Kerr 6430B Component Analyzerを用いて、500kHzから20Hzの周波数範囲で擬似4端子法を用いた交流インピーダンス測定を実施した。得られた交流インピーダンスについて、実部(Z’)を横軸、虚部(Z”)を縦軸としたNyquistプロットを作成したところ、バルクイオン伝導に由来する半円状の形状が観察された。この直径をイオン伝導に由来するバルク抵抗(R)とみなし、検体全体の抵抗率を算出した。各サンプルの25℃、RH69%の条件下でのイオン伝導率(σ/Scm-1)の測定結果を表3に示す。
【0140】
【表3】
【0141】
(実施例24)
[Ni(H2O)6]3[Co2Au3(D-pen)6]2・nH2O(以下、「Ni3D」とも称する)の合成
2O(4mL)中にNa3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(100mg、0.0602mmol)を含む紫色溶液に、水(1mL)中にNi(OAc)2・4H2O(26mg、0.09mmol)を含む緑色の溶液を加えた。室温で数分間撹拌した後、混合物を室温で1日放置した。得られた紫色板状結晶を濾過により集めた。X線分析により得られた結晶が上記化学式で表されるイオン性固体であることを確認した。イオン性固体の結晶構造を図6に示す。単離収量は、21mg(20%)であった。Ni3Dの空隙の開口径は3.5nmであり、空隙率は80%であった。
【0142】
(実施例25)
[Mn(H2O)6]3[Co2Au3(D-pen)6]2・nH2O(以下、「Mn3D」とも称する)の合成
2O(1mL)中にNa3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(100mg、0.0602mmol)を含む紫色溶液に、水(1mL)中にMn(OAc)2・4H2O(22mg、0.09mmol)を含む薄桃色の溶液を加えた。室温で数分間撹拌した後、混合物を室温で3日放置した。得られた紫色板状結晶を濾過により集めた。X線分析により得られた結晶が上記化学式で表されるイオン性固体であることを確認した。単離収量は、15mg(15%)であった。Mn3Dの空隙の開口径は3.5nmであり、空隙率は80%であった。
【0143】
(実施例26)
[Ni(H2O)6]2[Ni(H2O)4] [Co2Au3(D-pen)6]2・nH2O(以下、「Ni1D」とも称する)の合成
2O(2.5mL)中にNa3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(50mg、0.0301mmol)を含む紫色溶液に、水(2.5mL)中にNi(OAc)2・4H2O(11mg、0.045mmol)を含む緑色の溶液を加えた。室温で数分間撹拌した後、混合物を室温で3日放置した。得られた紫色六角柱状結晶を濾過により集めた。X線分析により得られた結晶が上記化学式で表されるイオン性固体であることを確認した。イオン性固体の結晶構造を図7に示す。単離収量は、21mg(35%)であった。Ni1Dの空隙の開口径は2nmであり、空隙率は60%であった。
【0144】
(実施例27)
[Mn(H2O)6]2[Mn(H2O)4] [Co2Au3(D-pen)6]2・nH2O(以下、「Mn1D」とも称する)の合成
2O(2.5mL)中にNa3[Co2Au3(D-pen)6]・13H2O(50mg、0.0301mmol)を含む紫色溶液に、水(2.5mL)中にMn(OAc)2・4H2O(11mg、0.045mmol)を含む薄桃色の溶液を加えた。室温で数分間撹拌した後、混合物を室温で3日放置した。得られた紫色六角柱状結晶を濾過により集めた。X線分析により得られた結晶が上記化学式で表されるイオン性固体であることを確認した。単離収量は、23mg(39%)であった。Mn1Dの空隙の開口径は2nmであり、空隙率は60%であった。
【0145】
気体吸着材料としての検討
(実施例28)
実施例10で得たα-シクロデキストリン包接Co3D(CoD+α-CD)と、合成例2で得たCo3Dを試料にして、窒素及び二酸化炭素の吸着量を測定した。なお、測定は、試料10mgを秤取し、温度120℃、圧力0.1Paの条件下で2時間保持した後、マイクロトラックベル社製BELSORP-maxを用いて、窒素吸着は77K、二酸化炭素吸着は200Kで行った。その結果を、常圧に対す測定時の圧力P/P0における[Co2Au3]当たりの吸着量として図8に示す。図8から、Co3Dにα-シクロデキストリンを包接させることで、窒素及び二酸化炭素の吸着能が向上することがわかる。
【0146】
溶媒蒸気吸着材料としての検討
(実施例29)
実施例25で得たMn3Dを試料にして、エタノール蒸気及び水蒸気の吸着量を測定した。なお、測定は、試料10mgを秤取し、常温、圧力0.1Paの条件下で2時間保持した後、マイクロトラックベル社製BELSORP-maxを用いて、エタノール蒸気及び水蒸気の吸着は298Kで行った。その結果を、常圧に対す測定時の圧力P/P0における[Co2Au3]当たりの吸着量として図9に示す。なお、図9中、黒丸が水蒸気の吸着を、白丸が水蒸気の脱着を、黒四角がエタノール蒸気の吸着を、白抜き四角がエタノール蒸気の脱着を、それぞれ示す。図9から、エタノール蒸気はほとんど吸着されず、水蒸気を選択的に吸着でき、また脱着も容易であることがわかる。
【0147】
(実施例30)
(1)[[Au6Cu3(tdme)2(D-pen)6)]12Cu)8](NO3)16・25Cu(NO3)2・324H2Oの合成
【0148】
2.5gの四塩化金(III)酸を50mLの水/メタノール混合溶媒(2:3)に溶解し、この溶液に2,2′-チオジエタノール2.3mLをメタノール2.5mLに溶解した溶液を加え、無色の溶液を調製した。調製した無色溶液にtdme(1,1,1-tris(diphenylphosphinomethyl)ethane)) 1.3gを25mLのクロロホルム/メタノール混合溶媒(4:1)に溶解した溶液を加えると即座に白色固体が析出した。6時間遮光して室温で攪拌後、100mLの冷やしたメタノールを加え、一日遮光して静置した後にろ過をして、250mLで洗浄して減圧乾燥することで、白色固体の[Au3(tdme)Cl3]2.6gを得た。単離収率は96%であった。
【0149】
次いで、2.00gの[Au3(tdme)Cl3]を100mLのエタノールに懸濁させ、これに0.68gのD-ペニシラミン(D-pen)を加え、1時間室温で攪拌した。僅かに解け残った未反応の[Au3(tdme)Cl3]を濾別し、得られた無色溶液に0.10Mの水酸化ナトリウム水溶液45mLを加えた。この溶液を乾固するまで濃縮し、得られた白色粉末を水40mLで3回洗浄して、減圧乾燥して2.37gの生成物[Au3(tdme)(D-pen)3]5H2Oを得た。単離収率は90%であった。得られた生成物[Au3(tdme)(D-pen)3]5H2Oの構造は、1H-NMR、31P-NMR、IR及び元素分析にて確認した。
【0150】
1H-NMR spectrum (ppm from TMS, methanol-d4): δ 0.99 (s, 3H), 1.33 (s, 9H), 1.67 (s, 9H), 3.47 (s, 3H), 7.53-7.54 (m, 18H), 7.65-7.70 (m, 6H), 7.76-7.80 (m, 6H)
31P-NMR spectrum (ppm from H3PO4, methanol-d4): δ 22.1 (s)
・IR spectrum (cm-1, KBr disk): 1627 (COO-)
・Anal. Calcd for [Au3(tdme)(D-Hpen)3]・5H2O = C56H79N3O11P3S3Au3: C, 38.43; H, 4.55; N, 2.40%. Found: C, 38.34; H, 4.49; N, 2.38%
【0151】
更に、1.00gの[Au3(tdme)(D-pen)3]を100mLのエタノールに懸濁させ、これに0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を17.2mLと0.1M硝酸カドミウム水溶液を17.2mLを加え、6時間室温で撹拌すると、無色溶液が得られた。この溶液を全量が50mLになるまで濃縮し、室温で数日自然濃縮することにより、無色結晶として[[Au6Cd3(tdme)2(D-pen)6]12Cd4Na)4](NO3)12・4Cd(NO3)2・432H2Oを0.83g得た。単離収率は64%であった。
【0152】
次に、上記で得られた無色結晶を1M硝酸銅水溶液に5日間ほど浸漬したところ、緑色の結晶[[Au6Cu3(tdme)2(D-pen)6]12Cu)8](NO3)16・25Cu(NO3)2・324H2O(以下、「116核錯体」という)で示されるイオン性固体を得た。イオン性固体の空隙の開口径は0.8nmであり、空隙率は40%であった。
また、上記の1M硝酸銅水溶液に替え1M硝酸コバルトを用いたところ [[Au6Co3(tdme)2(D-pen)6]12Co8](NO3)16・25Co(NO3)2・324H2Oで示されるイオン性固体を得た。このイオン性固体の空隙の開口径は0.9nmであり、空隙率は41.9%であった。
【0153】
(2)結晶構造解析
(1)の良質単結晶に対して、単結晶X線回折を実施した。結晶中、D-pen配位子の硫黄原子が金イオンに連結した[Au(D-pen)]-ユニット3つが三脚型トリホスフィン配位子tdmeに架橋された構造をもつ金三核錯体ユニット([Au3(tdme)(D-pen)3]3-)が形成されており、さらにこの金三核錯体ユニット2つが、D-pen部位を用いて3つの銅(II)イオンに架橋し、Au6Cu39核錯体([Au6Cu3(tdme)2(D-pen)6])を形成していた。銅イオン周囲の配位環境はN2S2型平面4配位構造とNOS2型平面4配位構造の二種類に1:1の比でディスオーダーしている。上記のAu6Cu39核錯体のD-penの2個のカルボキシル基が銅イオンに配位しており、銅イオンが3個のAu6Cu39核錯体を連結していた。そして、計12個のAu6Cu39核錯体を8個の銅イオンが連結することによって球状のAu72Cu44116核錯体を形成していた。対アニオンとして硝酸アニオンが錯体外表面のフェニル基に囲まれた隙間に存在していた。このAu72Cu44116核錯体は単純立方格子型に配列しており、球体の隙間に大きな空隙が存在し、空隙は水和銅や水分子で満たされていた。
【0154】
反応場提供材料としての検討
(1)116核錯体の金属オキソ酸イオンの取込み
(実施例31)
実施例30で得られた116核錯体を0.4Mモリブデン酸ナトリウム水溶液に一晩浸漬し、ろ過をして結晶を集めた。得られた結晶のIRスペクトルから、浸漬前のスペクトルと比較して硝酸アニオンに由来するピーク強度が弱くなり、一方でモリブデン酸イオンに由来するピークが強く検出されたことからアニオン交換が起こっていることが示唆された。更にCHN元素分析からも硝酸アニオンの数の減少が確認された。図10にIRスペクトルを示す。
【0155】
(実施例32)
実施例31において、モリブデン酸ナトリウム水の代わりにタングステン酸ナトリウムを用いた以外は同様な操作を行い結晶を集めた。実施例31と同様にIRスペクトルの測定し、結果を図10に示す。
【0156】
(実施例33)
実施例31において、モリブデン酸ナトリウム水の代わりにバナジウム酸ナトリウムを用いた以外は同様な操作を行い結晶を集めた。実施例31と同様にIRスペクトルの測定し、結果を図10に示す。
【0157】
(2)116核錯体空隙内での縮合反応
(実施例34)
実施例30で得られた116核錯体を0.4Mモリブデン酸ナトリウム水溶液に一晩浸漬し、浸漬後の反応溶液に1M硝酸を加えて一晩静置した。蛍光X線から金、銅、モリブデンが検出された。IRスペクトルから反応前は単核モリブデン酸に由来していたピークが消失し、新たMo619 2-に一致するピークが検出された。結晶をアセトニトリルに溶解してESI-massスペクトル測定を行ったところ、Mo619 2-及びHMo619 -に一致するシグナルが観測された。その結果を図11に示す。
また、上記と同様に浸漬後の反応溶液に1M硝酸を加えて一晩静置(pH5~7)したところMo724 6-が、更に1M硝酸を加えて一晩静置(pH1~2)したところβ-Mo826 4-が、夫々生成していたことが図12に示すIR分析から確認できた。
【0158】
(3)ポリ酸包接116核錯体を用いた酸化反応
(実施例35)
縮合モリブデン酸包接116核錯体(Mo619 2-@116核錯体)0.5mg及び重アセトニトリル溶媒500μLに、基質となるDMSOを5μLと酸化剤となる過酸化水素水20μL(2.5当量)を加えた溶液をNMRチューブ内に入れた。反応溶液を室温で保存し、一定時間ごとに1H-NMRを測定した(JEOL RESONANCE社製ECA500)。DMSO及びDMSO2のメチル基のピークの積分強度比から反応変換率を算出した。また、表4に示すようにモリブデン酸包接イオン性固体(MoO4 2-@116核錯体)他についても同様の操作を行い、触媒活性点当りに対する変換量の時間経過の変化をプロットした。その結果を図13に示す。
なお、上記において116核錯体は、[[Au6Cu3(tdme)2(D-pen)6]12Cu)8](NO3)16を意味する。
また、上記と同様に表5に示す基質について夫々測定した。結果を図14~16に示す。
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16