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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】工業所有権流通システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20241206BHJP
   G06Q 20/06 20120101ALI20241206BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
G06Q20/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023043672
(22)【出願日】2023-03-19
(65)【公開番号】P2024133434
(43)【公開日】2024-10-02
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】524050774
【氏名又は名称】株式会社IPStart
(74)【代理人】
【識別番号】100190414
【弁理士】
【氏名又は名称】芹澤 友之
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 友之
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0334773(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0340685(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0005595(US,A1)
【文献】国際公開第2021/186814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークと、
前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続され、工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利を売却する第一ユーザに関連付けられた第一端末と、
前記ブロックチェーンネットワーク及び前記第一端末に通信可能に接続され、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の取引を仲介する仲介者に関連付けられた仲介サーバと、
前記ブロックチェーンネットワーク及び前記仲介サーバに通信可能に接続され、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利を購入する第二ユーザに関連付けられた第二端末と、
を備えた工業所有権流通システムであって、
前記工業所有権流通システムは、
前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための第二発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記第二発行要求に応じて、前記スマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を前記第二端末上に表示し、
前記第二端末に対する前記第二ユーザの入力操作に応じて、前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記送金要求に応じて前記スマートコントラクトを呼び出すことで、前記非代替性トークンの所有者が前記第二ユーザに変更されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録すると共に、前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記第一ユーザに送金されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の権利者となる権利を示すものである、
工業所有権流通システム。
【請求項2】
各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークと、
前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続され、工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利を売却する第一ユーザに関連付けられた第一端末と、
前記ブロックチェーンネットワーク及び前記第一端末に通信可能に接続され、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の取引を仲介する仲介者に関連付けられた仲介サーバと、
前記ブロックチェーンネットワーク及び前記仲介サーバに通信可能に接続され、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利を購入する第二ユーザに関連付けられた第二端末と、
を備えた工業所有権流通システムであって、
a)前記仲介サーバは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
b)前記各ノードは、前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に記録し、
c)前記仲介サーバは、前記非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための第二発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
d)前記各ノードは、前記第二発行要求に応じて、前記スマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に記録し、
e)前記第二端末は、前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を表示し、
f)前記第二端末は、前記第二端末に対する前記第二ユーザの入力操作に応じて、前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
g)前記各ノードは、前記送金要求に応じて前記スマートコントラクトを呼び出すことで、前記非代替性トークンの所有者が前記第二ユーザに変更されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録すると共に、前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記第一ユーザに送金されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の権利者となる権利を示すものである、
工業所有権流通システム。
【請求項3】
各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークを用いて工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の取引を実行するための工業所有権流通システムであって、
前記工業所有権流通システムは、
前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を表示し、
前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記発行要求に応じて、前記スマートコントラクトが前記ブロックチェーン上に記録され、
前記送金要求に応じた前記スマートコントラクトの呼び出しにより、前記非代替性トークンの所有者が前記暗号通貨を送金したユーザに変更されたことを示す情報および前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記非代替性トークンを所有していたユーザに送金されたことを示す情報が前記ブロックチェーン上に記録され、
前記非代替性トークンは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の権利者となる権利を示すものである、
工業所有権流通システム。
【請求項4】
前記工業所有権流通システムは、
前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークにさらに配信し、
前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンが前記ブロックチェーン上に記録される、
請求項3に記載の工業所有権流通システム。
【請求項5】
前記工業所有権は、特許権であり、
前記工業所有権から生じる権利は、前記特許権の通常実施権若しくは専用実施権である、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の工業所有権流通システム。
【請求項6】
各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークと、
前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続され、特許権を売却する第一ユーザに関連付けられた第一端末と、
前記ブロックチェーンネットワーク及び前記第一端末に通信可能に接続され、前記特許権の取引を仲介する仲介者に関連付けられた仲介サーバと、
前記ブロックチェーンネットワーク及び前記仲介サーバに通信可能に接続され、前記特許権を購入する第二ユーザに関連付けられた第二端末と、
を備えた特許権流通システムであって、
前記特許権流通システムは、
前記特許権に関連付けられた非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための第二発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記第二発行要求に応じて、前記スマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を前記第二端末上に表示し、
前記第二端末に対する前記第二ユーザの入力操作に応じて、前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記送金要求に応じて前記スマートコントラクトを呼び出すことで、前記非代替性トークンの所有者が前記第二ユーザに変更されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録すると共に、前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記第一ユーザに送金されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンは、前記特許権の権利者となる権利を示すものである、
特許権流通システム。
【請求項7】
前記非代替性トークンは、前記特許権の属性情報および前記特許権の有効性に関する情報に関連付けられている、
請求項6に記載の特許権流通システム。
【請求項8】
前記特許権を前記第一ユーザから前記仲介者に移転登録するための特許庁手続きが完了した後に、前記仲介サーバは、前記第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信する、
請求項6又は7に記載の特許権流通システム。
【請求項9】
前記仲介サーバは、前記非代替性トークンを所有する前記第二ユーザの要求に応じて、前記特許権を前記仲介者から前記第二ユーザに移転登録するために必要な必要書類を前記第二ユーザに送信する、
請求項6又は7に記載の特許権流通システム。
【請求項10】
各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークと、
前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続され、特許権の取引を仲介する仲介者に関連付けられた仲介サーバと、
前記ブロックチェーンネットワーク及び前記仲介サーバに通信可能に接続され、前記特許権を購入するユーザに関連付けられた端末と、
を備えた特許権流通システムであって、
前記特許権流通システムは、
前記特許権に関連付けられた非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための第二発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記第二発行要求に応じて、前記スマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に記録し、
前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、
前記送金要求に応じて前記スマートコントラクトを呼び出すことで、前記非代替性トークンの所有者が前記ユーザに変更されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録すると共に、前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記特許権を売却する他のユーザに送金されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録し、
前記非代替性トークンは、前記特許権の権利者となる権利を示すものである、
特許権流通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工業所有権流通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、知的財産権の流通を支援するシステムが開示されている。特許文献1に開示されたシステムでは、知的財産権を拠出する拠出者の端末と、投資家の端末と、利用者の端末とがネットワークを介して管理サーバに接続されている。管理サーバに接続された管理用データベースでは、拠出者により拠出された知的財産権に関連する一連の情報が記憶されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-141307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許権等の工業所有権の流通に関連する一連の情報が管理サーバの管理データベース上において中央集権的に管理されている状況は好ましいとは言い難い。例えば、第三者からのサイバー攻撃等によって管理データベース上の工業所有権に係る情報が改竄されるリスクも想定される。さらに、工業所有権を購入する事業会社や投資家は、工業所有権の流通を管理するプラットフォーマの信用リスクを考慮した上で、工業所有権の取引を行う必要がある。このため、中央集権的な管理データベースのみを用いて工業所有権の流通管理が行われる状況では、管理データベースを管理するプラットフォーマの信用リスクが足枷となり、工業所有権の取引量や流動性は増加し難い。また、特許権等の工業所有権の取引は本来であればインターネットを通じてグローバル規模(換言すれば、ボーダレス)に行われるべきであって、国内外の投資家や事業会社にとって高い利便性及び信頼性を備えた工業所有権の流通プラットフォームの構築が望まれている。
【0005】
上記観点を鑑みて、本開示は、工業所有権若しくは当該工業所有権から生じる権利の円滑且つ安全な取引を実現することが可能な工業所有権流通システムを提供することを目的とする。特に、本開示は、特許権の円滑且つ安全な取引を実現することが可能な特許権流通システムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る工業所有権流通システムは、各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークと、前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続され、工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利を売却する第一ユーザに関連付けられた第一端末と、前記ブロックチェーンネットワーク及び前記第一端末に通信可能に接続され、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の取引を仲介する仲介者に関連付けられた仲介サーバと、前記ブロックチェーンネットワーク及び前記仲介サーバに通信可能に接続され、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利を購入する第二ユーザに関連付けられた第二端末と、を備える。前記工業所有権流通システムは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に記録し、前記非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための第二発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記第二発行要求に応じて、前記スマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に記録し、前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を前記第二端末上に表示し、前記第二端末に対する前記第二ユーザの入力操作に応じて、前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記送金要求に応じて前記スマートコントラクトを呼び出すことで、前記非代替性トークンの所有者が前記第二ユーザに変更されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録すると共に、前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記第一ユーザに送金されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録する。前記非代替性トークンは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の権利者となる権利を示すものである。
【0007】
上記構成によれば、スマートコントラクトを介した工業所有権若しくは当該工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンの売買を通じて、工業所有権若しくは工業所有権から生じる権利の円滑且つ安全な取引を実現することができる。
【0008】
本開示の一態様に係る工業所有権流通システムは、各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークと、前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続され、工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利を売却する第一ユーザに関連付けられた第一端末と、前記ブロックチェーンネットワーク及び前記第一端末に通信可能に接続され、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の取引を仲介する仲介者に関連付けられた仲介サーバと、前記ブロックチェーンネットワーク及び前記仲介サーバに通信可能に接続され、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利を購入する第二ユーザに関連付けられた第二端末と、を備える。a)前記仲介サーバは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信する。b)前記各ノードは、前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に記録する。c)前記仲介サーバは、前記非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための第二発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信する。d)前記各ノードは、前記第二発行要求に応じて、前記スマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に記録する。e)前記第二端末は、前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を表示する。f)前記第二端末は、前記第二端末に対する前記第二ユーザの入力操作に応じて、前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信する。g)前記各ノードは、前記送金要求に応じて前記スマートコントラクトを呼び出すことで、前記非代替性トークンの所有者が前記第二ユーザに変更されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録すると共に、前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記第一ユーザに送金されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録する。前記非代替性トークンは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の権利者となる権利を示すものである。
【0009】
上記構成によれば、スマートコントラクトを介した工業所有権若しくは工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンの売買を通じて、工業所有権若しくは工業所有権から生じる権利の円滑且つ安全な取引を実現することができる。
【0010】
本開示の一態様に係る前記工業所有権流通システムは、各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークを用いて工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の取引を実行する。前記工業所有権流通システムは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を表示し、前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信する。前記発行要求に応じて、前記スマートコントラクトが前記ブロックチェーン上に記録される。前記送金要求に応じた前記スマートコントラクトの呼び出しにより、前記非代替性トークンの所有者が前記暗号通貨を送金したユーザに変更されたことを示す情報および前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記非代替性トークンを所有していたユーザに送金されたことを示す情報が前記ブロックチェーン上に記録される。前記非代替性トークンは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の権利者となる権利を示すものである。
【0011】
上記構成によれば、スマートコントラクトを介した工業所有権若しくは工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンの売買を通じて、工業所有権若しくは工業所有権から生じる権利の円滑且つ安全な取引を実現することができる。
【0012】
また、前記工業所有権流通システムは、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークにさらに配信し、前記第一発行要求に応じて前記非代替性トークンが前記ブロックチェーン上に記録されてもよい。
【0013】
また、前記工業所有権は、特許権であってもよい。前記工業所有権から生じる権利は、前記特許権の通常実施権若しくは専用実施権であってもよい。
【0014】
上記構成によれば、スマートコントラクトを介した特許権又は特許権の通常実施権若しくは専用実施権に関連付けられた非代替性トークンの売買を通じて、特許権又は特許権の通常実施権若しくは専用実施権の円滑且つ安全な取引を実現することができる。
【0015】
本開示の一態様に係る特許権流通システムは、各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークと、前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続され、特許権を売却する第一ユーザに関連付けられた第一端末と、前記ブロックチェーンネットワーク及び前記第一端末に通信可能に接続され、前記特許権の取引を仲介する仲介者に関連付けられた仲介サーバと、前記ブロックチェーンネットワーク及び前記仲介サーバに通信可能に接続され、前記特許権を購入する第二ユーザに関連付けられた第二端末と、を備える。前記特許権流通システムは、前記特許権に関連付けられた非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に記録し、前記非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための第二発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記第二発行要求に応じて、前記スマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に記録し、前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を前記第二端末上に表示し、前記第二端末に対する前記第二ユーザの入力操作に応じて、前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記送金要求に応じて前記スマートコントラクトを呼び出すことで、前記非代替性トークンの所有者が前記第二ユーザに変更されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録すると共に、前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記第一ユーザに送金されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録する。前記非代替性トークンは、前記特許権の権利者となる権利を示すものである。
【0016】
上記構成によれば、スマートコントラクトを介した特許権に関連付けられた非代替性トークンの売買を通じて、特許権の円滑且つ安全な取引を実現することができる。
【0017】
また、前記非代替性トークンは、前記特許権の属性情報および前記特許権の有効性に関する情報に関連付けられていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、特許権の購入予定者は、非代替性トークンに関連付けられた特許権の属性情報及び有効性に関する情報を確認することで安心して特許権を購入することができる。このように、特許権の取引の透明性を高めることが可能となる。
【0019】
また、前記特許権を前記第一ユーザから前記仲介者に移転登録するための特許庁手続きが完了した後に、前記仲介サーバは、前記第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信してもよい。
【0020】
上記構成によれば、非代替性トークンを発行した仲介者が当該非代替性トークンに紐づく特許権を有しているため、特許権の購入予定者は、非代替性トークンを通じて特許権を安心して購入することができる。
【0021】
前記仲介サーバは、前記非代替性トークンを所有する前記第二ユーザの要求に応じて、前記特許権を前記仲介者から前記第二ユーザに移転登録するための特許庁手続きに係る電子書類を前記第二ユーザに送信してもよい。
【0022】
上記構成によれば、特許権を移転登録するための特許庁手続きに係る電子書類が非代替性トークンを所有する第二ユーザに送信されるため、スマートコントラクトを介した非代替性トークンの売買を通じて特許権の円滑且つ安全な取引を実現することができる。
【0023】
本開示の一態様に係る特許権流通システムは、各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークと、前記ブロックチェーンネットワークに通信可能に接続され、特許権の取引を仲介する仲介者に関連付けられた仲介サーバと、前記ブロックチェーンネットワーク及び前記仲介サーバに通信可能に接続され、前記特許権を購入するユーザに関連付けられた端末と、を備える。前記特許権流通システムは、前記特許権に関連付けられた非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に発行するための第一発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記第一発行要求に応じて、前記非代替性トークンを前記ブロックチェーン上に記録し、前記非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための第二発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記第二発行要求に応じて、前記スマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に記録し、前記所定の販売価格に相当する金額の暗号通貨を前記スマートコントラクトに送金するための送金要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信し、前記送金要求に応じて前記スマートコントラクトを呼び出すことで、前記非代替性トークンの所有者が前記ユーザに変更されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録すると共に、前記所定の販売価格に相当する金額に所定の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨若しくは前記所定の販売価格に相当する金額に所定の金額を控除することで得られる金額の暗号通貨が前記特許権を売却する他のユーザに送金されたことを示す情報を前記ブロックチェーン上に記録する。前記非代替性トークンは、前記特許権の権利者となる権利を示すものである。
【0024】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、各々がブロックチェーンを有する複数のノードによって構成されたブロックチェーンネットワークを用いて工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の取引を実行するための方法であって、コンピュータにより実行される。前記情報処理方法は、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利に関連付けられた非代替性トークンを所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクトを前記ブロックチェーン上に発行するための発行要求を前記ブロックチェーンネットワークに配信するステップと、前記非代替性トークンが前記所定の販売価格で販売されていることを示す情報を出力するステップとを含む。前記非代替性トークンは、前記工業所有権若しくは前記工業所有権から生じる権利の権利者となる権利を示すものである。
【0025】
前記情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供されてもよい。また、前記プログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体が提供されてもよい。
【0026】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、少なくとも一つのプロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備える。前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記情報処理装置は、前記情報処理方法を実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、工業所有権若しくは工業所有権から生じる権利の円滑且つ安全な取引を実現することが可能な工業所有権流通システムを提供することができる。また、特許権の円滑且つ安全な取引を実現することが可能な特許権流通システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示の実施形態(以下、本実施形態)に係る特許権流通システムの構成の一例を示す図である。
図2】仲介サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】ユーザ端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】非代替性トークン(NFT)を用いた特許権の流通の仕組みを説明するためのフローチャートである。
図5】NFT取引スマートコントラクトを用いた特許権に紐づくNFTの一次流通を説明するための図である。
図6】特許権流通プラットフォーム上のNFT販売情報の一例を示す図である。
図7】NFT取引スマートコントラクトを用いた特許権に紐づくNFTの二次流通を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本実施形態に係る特許権流通システム1(工業所有権流通システムの一例)について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る特許権流通システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、特許権流通システム1は、仲介サーバ4と、ユーザ端末2a,2bと、ブロックチェーンネットワーク10と、IPFS(InterPlanetary File System)13とを備える。特許権流通システム1を構成するこれらの構成要素は、通信ネットワーク12を介して互いに通信可能に接続されている。特に、仲介サーバ4及びユーザ端末2a,2bは、通信ネットワーク12を介して互いに通信可能に接続されている。さらに、仲介サーバ4及びユーザ端末2a,2bは、ブロックチェーンネットワーク10に通信可能に接続されている。
【0030】
通信ネットワーク12は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、無線コアネットワークのうちの少なくとも一つによって構成されている。
【0031】
本実施形態では、仲介サーバ4は、特許権17の取引を仲介する仲介者5に関連付けられている。即ち、仲介サーバ4は、仲介者5によって管理・操作されるサーバである。仲介サーバ4は、複数のサーバによって構成されてもよい。特に、仲介サーバ4は、ウェブサイトを管理するウェブサーバ及びデータベースを管理するデータベースサーバとしても機能してもよい。仲介サーバ4は、ブロックチェーンネットワーク10を介して特許権17に関連付けられたNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)を発行するものとする。ここで、NFTとは、ブロックチェーン8上に記録される一意で代替不可能なトークン(非代替性トークン)を意味する。
【0032】
また、本実施形態では、特許権17に関連付けられたNFT6は、特許権17の権利者(特許権者)となる権利を示すものである。即ち、NFT6の所有者は、特許権17の特許権者となる権利を有するため、特許庁16に対する特許権17の移転登録申請を通じて特許権17の特許権者となることが可能となる。この点において、日本国の特許法第98条第1号の規定では、特許権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)は、登録しなければ、その効力を生じない旨が規定されている。即ち、特許権の移転の効力発生には、特許権の譲渡証書の提出を通じた特許庁16に対する移転登録申請が必須となる。このため、NFT6の所有者は、NFT6に紐づく特許権17の移転登録申請を仲介者5に依頼することで、特許権17の権利者となることが可能となる。また、NFT6の所有者は、NFT6(即ち、特許権17の特許権者となる権利)を他者に転売することでキャピタルゲインを得ることも可能となる。即ち、NFT6を投資対象若しくは投機対象として売買することも可能となる。本説明の詳細については後述する。
【0033】
ユーザ端末2a(第一端末の一例)は、ユーザ3a(第一ユーザの一例)によって操作される端末である。即ち、ユーザ端末2aは、ユーザ3aに関連付けられている。同様に、ユーザ端末2b(第二端末の一例)は、ユーザ3b(第二ユーザの一例)によって操作される端末である。即ち、ユーザ端末2bは、ユーザ3bに関連付けられている。本例では、ユーザ3aは、特許権17の権利者(特許権者)である。ユーザ3bは、仲介者5によって構築された特許権流通プラットフォームを介して、特許権17(若しくはこれに紐づくNFT)を購入する購入者である。ユーザ3bは、特許権17の購入のためにNFT6を購入してもよいし、投資目的ためにNFT6を購入する。尚、以降の説明では、ユーザ端末2a,2bを単にユーザ端末2と総称する場合がある。ユーザ3a,3bも同様に単にユーザ3と総称する場合がある。
【0034】
また、本実施形態では、工業所有権の一例として特許権が挙げられているが、特許権以外の工業所有権である実用新案権、意匠権、商標権が流通システム1を通じて取引されてもよい。即ち、実用新案権、意匠権、商標権に紐づくNFT6の取引を通じて実用新案権、意匠権、商標権が取引されてもよい。さらに、本実施形態に係る流通システム1では、特許権から生じる権利である通常実施権、専用実施権が流通システム1を通じて取引されてもよい。この場合、特許権の通常実施権、専用実施権に紐づくNFT6の取引を通じて当該通常実施権、専用実施権が取引されてもよい。この点において、通常実施権は、不作為債権であって、特許庁16への登録が効力発生要件とはならないことから、通常実施権に紐づくNFT6の所有者は、通常実施権を有する者となる。また、ユーザ3a(特許権者)は、自身が保有する特許権17から生じる複数の通常実施権を販売する場合には、ブロックチェーンネットワーク10を介して複数の通常実施権に紐づく複数のNFT6を発行してもよい。
【0035】
一方で、専用実施権は特許権と同様に物権的権利であることから、特許庁16への設定登録又は移転登録が効力発生要件となる。このため、専用実施権に紐づくNFT6の所有者は、専用実施権となる権利を有するため、特許庁16に対する専用実施権の移転登録申請若しくは設定登録申請を仲介者5に依頼することで、専用実施権者となることが可能となる。
【0036】
同様に、実用新案権及び意匠権から生じる通常実施権及び専用実施権が流通システム1を通じて取引されてもよい。また、商標権から生じる専用使用権及び通常使用権が流通システム1を通じて取引されてもよい。
【0037】
このように、本実施形態に係るNFTは、工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)若しくは当該工業所有権から生じる通常実施権(通常使用権)及び専用実施権(専用使用権)の権利者となる権利を示すものである。NFTによって生じる当該権利は、特許流通プラットフォームの利用規約として明記されてもよい。さらに、当該NFTの権利の透明性を高めるために、当該NFTの権利を明記した特許流通プラットフォームの利用規約がブロックチェーン8上に記録されてもよいし、当該NFTのメタデータとしてIPFS13上に保存されてもよい。
【0038】
さらに、本実施形態で説明される工業所有権は、日本国の工業所有権に限定されるものではない。この点において、本実施形態で説明されるWEB3技術に基づく流通システム1は、WEB3の中核的思想であるボーダレスな価値の取引(本実施形態でボーダレスな工業所有権の取引)を前提としているため、米国、欧州、中国等の工業所有権の流通プラットフォームとしても利用可能となる。さらに、ユーザ3は日本人に限定されるものではなく、グローバルな企業(事業会社やコンサル会社を含む。)や投資家(個人投資家や機関投資家を含む。)であってもよい。
【0039】
次に、図2を参照して、仲介サーバ4のハードウェア構成について以下に説明する。図2に示すように、仲介サーバ4は、制御部40と、記憶装置41と、入出力インターフェース42と、通信部43と、入力操作部44と、表示部45とを備える。仲介サーバ4を構成するこれらの要素は通信バス46に接続されている。
【0040】
制御部40は、メモリとプロセッサを備えている。メモリは、コンピュータ可読命令(プログラム)を記憶するように構成されている。例えば、メモリは、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。各種プログラムには、本実施形態に係る一連の情報処理方法を実行する情報処理プログラムが含まれていてもよい。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)のうちの少なくとも一つにより構成される。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。プロセッサは、記憶装置31又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。特に、プロセッサは、記憶装置41又はROMに組み込まれた情報処理プログラムをRAM上に展開することで、後述する一連の情報処理を実行してもよい。
【0041】
記憶装置41は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置(ストレージ)であって、プログラムや各種データを格納するように構成されている。入出力インターフェース42は、外部装置と仲介サーバ4との間の接続を可能とするインターフェースであって、USB規格やHDMI(登録商標)規格等の所定の通信規格に応じたインターフェースを含む。通信部43は、例えば、通信ネットワーク12に接続された外部装置と通信するための有線通信モジュール及び/又は無線通信モジュールを備えている。入力操作部44は、例えば、タッチパネル、マウス、及び/又はキーボード等である。仲介サーバ4を操作する操作者の入力操作を受け付けると共に、当該入力操作に応じた操作信号を生成するように構成されている。表示部45は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の映像表示ディスプレイと、当該映像表示ディスプレイを駆動制御する映像表示回路とによって構成される。
【0042】
次に、図3を参照して、ユーザ端末2のハードウェア構成について以下に説明する。図3に示すように、ユーザ端末2は、制御部20と、記憶装置21と、撮像部22と、通信部23と、入力操作部24と、表示部25とを備える。ユーザ端末2を構成するこれらの要素は通信バス26に接続されている。本実施形態では、ユーザ端末2は、携帯型端末として説明されているが、ユーザ端末2の種類は特に限定されるものではない。例えば、ユーザ端末2は、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット又はウェアラブルデバイス等であってもよい。
【0043】
制御部20は、メモリとプロセッサを備えている。メモリは、各種プログラム等が格納されたROMやプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納されるRAM等から構成される。各種プログラムには、本実施形態に係る一連の情報処理方法を実行する情報処理プログラムが含まれていてもよい。プロセッサは、例えば、CPU、MPU及びGPUのうちの少なくとも一つにより構成される。プロセッサは、記憶装置21又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。特に、プロセッサは、記憶装置21又はROMに組み込まれた情報処理プログラムをRAM上に展開することで、後述する一連の情報処理を実行してもよい。
【0044】
記憶装置21は、例えば、NAND型フラッシュメモリ、HDD又はSSDである。撮像部22は、ユーザ端末2の周辺環境を示す画像又は映像を撮像するように構成されている。特に、撮像部22は、ユーザ端末2の周辺環境を示す画像データ若しくは映像データを生成するように構成されており、イメージセンサ(例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等)と、イメージセンサ駆動処理回路とを備える。通信部23は、通信ネットワーク12に接続された外部装置と通信するための無線通信モジュールを備えている。入力操作部24は、例えば、表示部25の映像表示ディスプレイに重ねて配置されたタッチパネルであって、ユーザ3の入力操作を受け付けると共に、ユーザ3の入力操作に応じた操作信号を生成するように構成されている。表示部25は、例えば、映像表示ディスプレイと、当該映像表示ディスプレイを駆動制御する映像表示回路とによって構成される。
【0045】
図1に戻ると、ブロックチェーンネットワーク10は、複数のノード7によって構成されたP2P(Peer to Peer)型ネットワーク(換言すれば、分散型ネットワーク)である。各ノード7は、ブロックチェーン8を保存している。各ノード7は、他のノード7に直接的又は間接的に接続されている。ブロックチェーン8は、分散型台帳技術(DLT)の一種であって、各ノード7に保存されたブロックチェーン8は、同一の台帳情報を保持している。
【0046】
ブロックチェーン8は、分散性、改ざん困難性、永続性、透明性、スマートコントラクトの観点においてサーバに構築された中央集権的なデータベースとは異なる。ブロックチェーン8は、複数のブロックにより構成されている。各ブロックは、時間的に前後に生成されたブロックにより連結されている。各ブロックは、複数のトランザクション情報と、ブロックヘッダ情報とを有する。ブロックヘッダ情報は、タイムスタンプと、時間的に直前に生成された直前ブロックのブロックヘッダのハッシュ値と、複数トランザクションのハッシュ値とを含む。ブロックヘッダ情報は、ブロックヘッダのハッシュ値の先頭のN桁(N>1の整数)を0に設定するためのナンス値をさらに含んでもよい。
【0047】
具体的には、各ブロックは、時間的に直前に生成されたブロックと、時間的に直後に生成されたブロックにブロックヘッダのハッシュ値を介して関連付けられている。このため、ブロックチェーン8では、一部のトランザクションが改竄された場合には、ブロックヘッダのハッシュ値が変更されると共に、各ブロックが前後ブロックのブロックヘッダのハッシュ値によって連鎖的に関連付けられているため、各ブロック(特に、各ブロック内のトランザクション情報)のデータ改竄が極めて困難となっている。
【0048】
本実施形態では、ブロックチェーンネットワーク10は、管理者不在のパブリック型のブロックチェーンネットワークであってもよいし、管理者が存在するプライベート型のブロックチェーンネットワークであってもよい。また、ブロックチェーンネットワーク10のコンセンサスアルゴリズムは、PoS(Proof of Stake)型であってもよいし、PoW(Proof of Work)型であってもよい。
【0049】
本実施形態のブロックチェーン8は、スマートコントラクトが実装されたブロックチェーンである。スマートコントラクトは、ブロックチェーン8上に記録された自動契約や自動取引を実行するためのプログラムコードである。各ノード7は、ブロックチェーン8上に記録(デプロイ)されたスマートコントラクトを実行すると共に、スマートコントラクトの実行結果を検証する。このように、スマートコントラクトは、仲介者を介さずにブロックチェーン8上に記録された取引・契約内容を自動的に実行することができる。本実施形態では、ブロックチェーン8上にNFT6が発行される場合では、NFT発行に関連付けられたスマートコントラクト(以下、NFT発行スマートコントラクト)がブロックチェーン8に記録される。また、NFT6を所定の販売価格で売却することを規定したスマートコントラクト(以下、NFT取引スマートコントラクト11)がブロックチェーン8上に記録される。
【0050】
ブロックチェーンネットワーク10としては、イーサリアム(Ethereum)が採用されてもよいし、イーサリアム以外のスマートコントラクト実装型のブロックチェーンネットワーク(例えば、AlgorandやSolana等のL1プロジェクトやPolygon等のL2プロジェクト)が採用されてもよい。さらに、ビットコインネットワーク上に構築されたスマートコントラクト実装型のL2プロジェクト(例えば、Stacks等)が採用されてもよい。ブロックチェーンネットワーク10がイーサリアムである場合、各ノード7のEVM(Ethereum Virtual Machine)が、ブロックチェーン8上にデプロイされたスマートコントラクト(本例では、NFT発行スマートコントラク及びNFT取引スマートコントラクト)を実行すると共に、当該スマートコントラクトの実行結果を検証する。
【0051】
IPFS13は、P2Pネットワーク上で動作する分散型のストレージサービスである。本実施形態では、後述するよう、NFT6に関連する情報は、メタデータとしてIPFS13上に保存されてもよい。尚、NFT6に関連する情報は、IPFS13ではなく、通信ネットワーク12に接続されたデータサーバ上に保存されてもよいし、オンチェーン情報としてブロックチェーン8上に記録されてもよい。
【0052】
次に、図1図4及び図5を参照して、非代替性トークン(NFT)を用いた特許権の流通の仕組みについて以下に説明する。図4は、NFT6を用いた特許権の流通の仕組みを説明するためのフローチャートである。図5は、NFT取引スマートコントラクト11を用いた特許権17に紐づくNFT6の一次流通を説明するための図である。図4に示すように、ステップS1において、仲介者5は、仲介サーバ4により提供される特許権流通プラットフォーム(WEB3アプリケーション)を利用する利用者の利用者情報の入力を要求する。特に、仲介者5は、利用者の利用者情報としてユーザ名、所属組織名、Eメールアドレス、ウォレットアドレスの入力を要求してもよい。例えば、仲介サーバ4は、特許権者であるユーザ3aからのアクセス要求に応じて、特許権流通プラットフォーム(WEB3アプリケーション)を構成するWEBページをユーザ端末2aに送信する。ユーザ端末2aに送信されたWEBページには、利用者情報を入力可能な入力領域が設けられてもよい。仲介サーバ4は、ユーザ端末2aからユーザ3aの利用者情報を受信したときに、当該受信したユーザ3aの利用者情報に基づいて、仲介サーバ4のデータベース内に構築された利用者情報管理テーブルを更新してもよい。当該利用者情報管理テーブルでは、ユーザ毎の利用者情報(例えば、ユーザ名、所属組織名、Eメールアドレス、ウォレットアドレス、売却対象の特許権の情報)が記憶されている。
【0053】
ユーザ3aは、特許権の売却(収益化)を希望するユーザであるため、利用者情報として、ユーザ名、メールアドレス、特許番号、ウォレットアドレスの入力が要求されてもよい。また、ユーザ端末2aは、ユーザ端末2aのブラウザウォレット(例えば、MetaMask(登録商標))で使用されるウォレットアドレスの認証を通じて、仲介サーバ4によって提供されるWEB3アプリケーション(DAppsともいう。)にログインしてもよい。この場合、ブラウザウォレット中のウォレットアドレスは、ユーザの属性情報(例えば、ユーザ名やメールアドレス等の連絡先)に関連付けられてもよい。
【0054】
ステップS2において、仲介者5は、ユーザ3aが保有する特許権17に関連付けられたNFTが存在しないかどうかの調査を行う。例えば、仲介者5は、複数の特許権(特許番号)と複数のNFT(コントラクトアドレス等)とが互いに関連付けられたテーブルデータを参照することで、特許権17に相当するNFTが存在しないかどうかの調査を行う。特許権17に相当するNFTが存在しない場合又は当該NFTが既に焼却(バーン)されている場合には、ステップS3に進む。
【0055】
次に、ステップS3において、仲介者5は、ユーザ3aの特許権17をユーザ3aから仲介者5に移転するために必要な必要書類15をユーザ3aに送付する。必要書類15は、特許権17をユーザ3aから仲介者5に移転するために必要な譲渡証やユーザ3aの委任状(ユーザ3aの代理権を証明する書類)等を含んでもよい。必要書類15は、電子メール又はメッセージアプリによりユーザ3aに送付されてもよい。その後、ユーザ3aは、必要書類15に必要情報を記載した上で必要書類15に捺印若しくは署名をした後に、必要書類15を仲介者5に返送する。仲介者5は、弁理士等の代理人を通じて必要書類15を特許庁16に提出する。このように、図5の工程(1)に示すように、ユーザ3aの特許権17が一時的にユーザ3aから仲介者5に移転される(ステップS4)。この場合、ユーザ3aから仲介者5への特許権17の移転は、ユーザ3a(委託者)と仲介者5(受託者)との間の信託契約に基づく移転であってもよい。
【0056】
ステップS5において、仲介者5は、特許権17に関連付けられたNFT6を発行する。具体的には、仲介サーバ4は、仲介者5の入力操作に従って、特許権17に関連付けられたNFT6をブロックチェーン8上に発行するための発行要求トランザクション(第一発行要求の一例)をブロックチェーンネットワーク10に配信する。この場合、仲介サーバ4は、特許権17に関する一連の情報をメタデータとしてIPFS13に配信する。特許権17に関する一連の情報は、特許権17の特許番号、出願番号、権利者(受託者)、委託者、特許満了日、年金支払い状況、実施権者情報/質権者情報、特許有効性情報、訴訟/審判情報、特許公報/出願経過等へのアクセス情報(URL)等を含んでいてもよい。
【0057】
また、ブロックチェーンネットワーク10としてイーサリアムが採用される場合、NFT6はERC721規格に対応したトークンであってもよい。ブロックチェーンネットワーク10は、仲介サーバ4からNFT6の発行要求トランザクションを受信した上で、当該発行要求トランザクションに応じてNFT6をブロックチェーン8上に記録する。具体的には、ブロックチェーンネットワーク10を構成する各ノード7は、NFT6の発行要求トランザクションに応じて、NFT6に関連付けられたNFT発行スマートコントラクトをブロックチェーン8上に記録する。NFT発行スマートコントラクトに含まれるオンチェーン情報は、コントラクトアドレスと、トークンIDと、保有者のウォレットアドレスと、NFT生成者のウォレットアドレスと、メタデータアドレス(URI)とを含んでもよい。本例では、NFT6の保有者アドレス及びNFT生成者のウォレットアドレスは、仲介者5のウォレットアドレスとなる。メタデータアドレスは、IPFS13上に保存されたメタデータを指定するためのアドレスである。ユーザ端末2は、オンチェーン情報に含まれるメタデータアドレスに基づいて、IPFS13からNFT6に紐づく特許権17の一連の情報を取得することが可能となる。
【0058】
本実施形態では、仲介者5が発行する各NFTは、所定のコントラクトアドレスに紐づけられてもよい。即ち、NFT6のコントラクトアドレスは、仲介者5に紐づく独自のコントラクトアドレスであってもよい。この場合、第三者は、NFT6のコントラクトアドレスを確認することで、NFT6が仲介者5によって発行されたものであることを明確に認識することができる。また、仲介者5が自身に紐づく独自のコントラクトアドレスを用いて新たなNFTを発行する場合に、新たなNFTのトークンIDが変更される。その一方で、特許権に紐づくNFTが新規に発行される度に、新たなNFTのコントラクトアドレスが生成されてもよい。
【0059】
ブロックチェーンネットワーク10としてイーサリアムが採用される場合では、NFT6に関するトランザクションにより発生する取引手数料(ガス代)を節約する観点より、NFT6はオフチェーンNFTであることが好ましい。つまり、NFT6のメタデータは、ブロックチェーン8上に記録されずにブロックチェーン8の外部(本例では、IPFS13)に記録される。その一方で、NFT6は、オフチェーンNFTに限定されるものではなく、オンチェーンNFTであってもよい。即ち、NFT6に紐づく特許権17に関する一連の情報はブロックチェーン8上にオンチェーン情報として記録されてもよい。
【0060】
ステップS6において、仲介者5は、NFT取引スマートコントラクト11を生成する。具体的には、仲介サーバ4は、仲介者5の入力操作に従って、NFT6を100ETH(所定の販売価格の一例)で売却することを規定したNFT取引スマートコントラクト11(以下、単に「コントラクト11」という。)をブロックチェーン8上に発行するための発行要求トランザクション(第二発行要求の一例)をブロックチェーンネットワーク10に配信する。ブロックチェーンネットワーク10は、仲介サーバ4から当該発行要求トランザクションを受信した上で、当該発行要求トランザクションに応じてコントラクト11をブロックチェーン8上に記録する。より具体的には、ブロックチェーンネットワーク10を構成する各ノード7は、当該発行要求トランザクションに応じて、コントラクト11をブロックチェーン8上に記録する。
【0061】
ステップS7において、仲介者5は、NFT6をコントラクト11に移転する(図5の工程(2)参照)。具体的には、仲介サーバ4は、NFT6の所有者を仲介者5(仲介者5のウォレットアドレス)からコントラクト11(コントラクト11のコントラクトアドレス)に変更するための変更要求トランザクションをブロックチェーンネットワーク10に配信する。ブロックチェーンネットワーク10は、仲介サーバ4から当該発行要求トランザクションを受信した上で、当該発行要求トランザクションに応じてNFT6の所有者が仲介者5からコントラクト11に変更されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。尚、本実施形態の説明では、NFT6の所有者が仲介者5からコントラクト11に変更されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、NFT6の所有者が仲介者5に維持された状態で、コントラクト11の実行時においてNFT6が仲介者5からNFT購入者に自動的に移転されてもよい。この点において、仲介者5は、コントラクト11の実行時においてNFT6がNFT購入者に自動的に移転されることを規定したコントラクトを事前に承認(Approve)してもよい。
【0062】
ステップS8において、仲介サーバ4は、特許権17に紐づくNFT6の販売情報を示すNFT販売情報100を特許権流通プラットフォーム(WEB3アプリケーション)上にアップロードする(図6参照)。具体的には、仲介サーバ4は、NFT販売情報100が示されたWEBページをユーザ端末2bに送信する。ユーザ端末2bは、受信したWEBページに応じて、自身のブラウザ上にNFT販売情報100を表示する。図6の一例では、NFT販売情報100は、NFT6が100ETH(200,000USドル)で販売されていることを示す。また、NFT販売情報100は、特許権17に関連する一連の情報及びNFT6に関する情報(コントラクトアドレスやトークンID)を含んでもよい。
【0063】
ステップS9において、購入者であるユーザ3bは、特許権17に紐づくNFT6を購入するために、コントラクト11に販売価格100ETHに相当する暗号通貨を送金する。具体的には、ユーザ端末2bは、ユーザ端末2bに対するユーザ3bの入力操作を最初に受け付ける。例えば、ユーザ端末2bは、ユーザ3bの購入ボタン120に対する入力操作に伴い、図示しないウェブウォレット(例えば、MetaMask等)を起動する。その後、ユーザ端末2bは、ウェブウォレットに対するユーザ3bの送金操作に従って、100ETHの暗号通貨をコントラクト11に送金するための送金要求トランザクション(送金要求の一例)をブロックチェーンネットワーク10に配信する(図5の工程(3)参照)。尚、ステップS9の処理の前において、ユーザ端末2bは、ユーザ3bの利用者情報を仲介サーバ4に送信していると共に、ブラウザウォレットのウォレットアドレスの認証を通じて、仲介サーバ4が提供するWEB3アプリケーションにログインしているものとする。
【0064】
ステップS10において、コントラクト11は、NFT6を購入者であるユーザ3bに移転する(図5の工程(4)参照)。次に、ステップS11において、コントラクト11は、NFT6の販売価格100ETHに相当する95%の金額の暗号通貨95ETHを特許権者であるユーザ3aに送金すると共に(図5の工程(5)参照)、残りの5%の金額の暗号通貨5ETHを仲介手数料として仲介者5に送金する(図5の工程(6)参照)。より具体的には、ブロックチェーンネットワーク10は、ユーザ端末2bから配信された送金要求に応じてコントラクト11を呼び出すことで、NFT6の所有者がユーザ3bに変更されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。また、ブロックチェーンネットワーク10は、販売価格100ETHに95%の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨95ETHがユーザ3aに送金されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。さらに、ブロックチェーンネットワーク10は、販売価格100ETHに5%の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨5ETHが仲介者5に送金されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。尚、本例では、仲介手数料としてNFT6の販売価格の5%の金額が仲介者5に送金されているが、仲介手数料のパーセンテージは5%に限定されるものではない。仲介手数料のパーセンテージは、NFT6(特許権)の販売価格に応じて変動してもよい。例えば、販売価格の増加に応じて仲介手数料のパーセンテージは段階的に減少してもよい。
【0065】
また、販売価格100ETHに相当する金額に5ETH(所定の金額の一例)を控除することで得られる金額の暗号通貨95ETHがユーザ3aに送金されると共に、5ETHが仲介者5に送金されてもよい。この場合、NFT6の販売価格に依らずに定額の仲介手数料(本例では5ETH)が仲介者5に送金される。
【0066】
さらに、状況に応じて仲介手数料は無料であってもよい。この点において、流通プラットフォームの利用料としてサブスクリプション方式が採用される場合では、NFT売買時に発生する仲介手数料のパーセンテージは0%であってもよい。このように、仲介手数料が無料である場合、ユーザ3aに販売価格100ETHに相当する金額が送金されてもよい。また、ユーザ3bは、NFT6の販売価格に相当する100ETHに加えて、一連のトランザクションに要するガス代も負担するものとする。本例では、暗号通貨としてETHが使用されているが、ERC-20規格に基づく他のトークン(例えば、USDT,USDC,JPYC等)が決済通貨として使用されてもよい。
【0067】
ステップS12において、仲介者5は、NFT6を購入者であるユーザ3bから受け取った上で(図5の工程(7)参照)、ユーザ3bから受け取ったNFT6を焼却(バーン)する(図5の工程(8)参照)。具体的には、最初に、ユーザ端末2bは、ユーザ端末2bに対するユーザ3bの入力操作に応じて、NFT6の所有者をユーザ3bから仲介者5に変更するための変更要求トランザクションをブロックチェーンネットワーク10に配信する。次に、ブロックチェーンネットワーク10は、ユーザ端末2bから当該変更要求トランザクションを受信した上で、当該変更要求トランザクションに応じてNFT6の所有者がユーザ3bから仲介者5に変更されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。その後、仲介者5は、NFT6を焼却するために、NFT6を制御不能となるウォレットアドレス宛に送付する。制御不能となるウォレットアドレスにNFT6が送付される場合では、当該ウォレットアドレスに紐づく秘密鍵が誰にもわからないため、NFT6を他のウォレットアドレスに送付することがもはや不可能となる。
【0068】
その後、仲介者5は、仲介者5からユーザ3bへの特許権17の移転登録に必要な必要書類15aを電子メール等を介してユーザ3bに送信する(図5の工程(9)参照)。必要書類15aは、特許権17を仲介者5からユーザ3bに移転するために必要な譲渡証やユーザ3bの委任状(ユーザ3bの代理権を証明する書類)等を含んでもよい。ステップS13において、ユーザ3bは、必要書類15aに必要情報を記載すると共に、必要書類15aに捺印若しくは署名をした上で、必要書類15aを仲介者5に返送する。ステップS14において、仲介者5は、弁理士等の代理人を通じて必要書類15aを特許庁16に提出する(図5の工程(10)参照)。
【0069】
このように、本実施形態によれば、コントラクト11を介した特許権17に関連付けられたNFT6の売買を通じて、特許権17の円滑且つ安全な取引を実現することが可能となる。
【0070】
また、NFT6が特許権17の属性情報等に関連付けられているため、特許権17の購入予定者であるユーザ3bは、NFT6のメタデータに記載されている特許権17の属性情報等を確認することで、安心して特許権17に紐づくNFT6を購入することができる。さらに、NFT6の生成者である仲介者5がNFT6に紐づく特許権17を実際に所有しているため、購入予定者であるユーザ3bは、NFT6を通じて特許権17を安心して購入することができる。
【0071】
次に、図1及び図7を参照することで、特許権流通プラットフォーム上においてNFT6を購入したユーザ3bがNFT6をユーザ3cに転売する場合について以下に説明する。図7は、NFT取引スマートコントラクト11a(以下、単に「コントラクト11a」という。)を用いた特許権17に紐づくNFT6の二次流通を説明するための図である。本特許権流通プラットフォーム(WEB3アプリケーション)では、NFT6を介して特許権17を取引することができると共に、コントラクト11aを介してNFT6を自由に投資家間で取引することが可能となる。このように、本プラットフォームでは、コントラクト11aを通じてボーダレス且つ仲介者5の存在なしにNFT6に紐づく特許権17を自由に取引できる点で大きなメリットが存在する。その一方で、最終的にNFT6を特許権17に変換する場合では、NFT6を仲介者5に送付する必要があると共に、仲介者5による特許権の移転登録手続きが必要となる。
【0072】
図7に示すように、ユーザ3bは、NFT取引スマートコントラクト11aを生成する。具体的には、ユーザ端末2bは、ユーザ3bの入力操作に従って、NFT6を120ETH(所定の販売価格の一例)で売却することを規定したコントラクト11aをブロックチェーン8上に発行するための発行要求トランザクションをブロックチェーンネットワーク10に配信する。ブロックチェーンネットワーク10は、ユーザ端末2bから当該発行要求トランザクションを受信した上で、当該発行要求トランザクションに応じてコントラクト11aをブロックチェーン8上に記録する。より具体的には、ブロックチェーンネットワーク10を構成する各ノード7は、当該発行要求トランザクションに応じて、コントラクト11aをブロックチェーン8上に記録する。
【0073】
次に、図7の工程(1)において、ユーザ3bは、NFT6をコントラクト11aに移転する。具体的には、ユーザ3bは、NFT6の所有者をユーザ3bからコントラクト11aに変更するための変更要求トランザクションをブロックチェーンネットワーク10に配信する。ブロックチェーンネットワーク10は、ユーザ端末2bから当該変更要求トランザクションを受信した上で、当該変更要求トランザクションに応じてNFT6の所有者がユーザ3bからコントラクト11aに変更されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。尚、本実施形態の説明では、NFT6の所有者がユーザ3bからコントラクト11aに変更されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、NFT6の所有者がユーザ3bに維持された状態で、コントラクト11aの実行時においてNFT6がユーザ3bからNFT購入者に自動的に移転されてもよい。この点において、ユーザ3bは、コントラクト11aの実行時においてNFT6がユーザ3bからNFT購入者に自動的に移転されることを規定したコントラクトを事前に承認(Approve)してもよい。
【0074】
次に、仲介サーバ4は、特許権17に紐づくNFT6の販売情報を示すNFT販売情報を特許権流通プラットフォーム(WEB3アプリケーション)上にアップロードする。具体的には、仲介サーバ4は、NFT販売情報が示されたWEBページをユーザ3cのユーザ端末(図示せず)に送信する。ユーザ3cのユーザ端末(以下、「ユーザ端末2c」という。)は、受信したWEBページに応じて、ブラウザ上にNFT販売情報を表示する。ユーザ端末2cは、図2に示すユーザ端末2と同一のハードウェア構成を有するものとする。
【0075】
図7の工程(2)において、購入者であるユーザ3cは、特許権17に紐づくNFT6を購入するために、販売価格120ETHに相当する暗号通貨をコントラクト11aに送金する。具体的には、ユーザ端末2cは、ユーザ端末2cに対するユーザ3cの入力操作を最初に受け付ける。例えば、ユーザ端末2cは、ユーザ3cの購入ボタンに対する入力操作に伴い、図示しないウェブウォレット(例えば、MetaMask等)を起動する。その後、ユーザ端末2cは、ウェブウォレットに対するユーザ3cの送金操作に従って、120ETHの暗号通貨をコントラクト11aに送金するための送金要求トランザクションをブロックチェーンネットワーク10に配信する。
【0076】
図7の工程(3)において、コントラクト11aは、NFT6を購入者であるユーザ3cに移転する。次に、図7の工程(4)において、コントラクト11aは、NFT6の販売価格120ETHに相当する95%の金額の暗号通貨114ETHをNFT6の所有者であるユーザ3bに送金すると共に、残りの5%の金額の暗号通貨6ETHを仲介手数料として仲介者5に送金する(図5の工程(5)参照)。より具体的には、ブロックチェーンネットワーク10は、ユーザ端末2cから配信された送金要求に応じてコントラクト11aを呼び出すことで、NFT6の所有者がユーザ3cに変更されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。また、ブロックチェーンネットワーク10は、販売価格120ETHに95%の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨114ETHがユーザ3bに送金されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。さらに、ブロックチェーンネットワーク10は、販売価格120ETHに5%の割合を乗じることで得られる金額の暗号通貨6ETHが仲介者5に送金されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。
【0077】
また、販売価格120ETHに相当する金額に5ETH(所定の金額の一例)を控除することで得られる金額の暗号通貨115ETHがユーザ3bに送金されると共に、5ETHが仲介者5に送金されてもよい。この場合、NFT6の販売価格に依らずに定額の仲介手数料(本例では5ETH)が仲介者5に送金される。さらに、状況に応じて仲介手数料は無料であってもよい。この点において、流通プラットフォームの利用料としてサブスクリプション方式が採用される場合では、NFT売買時に発生する仲介手数料のパーセンテージは0%であってもよい。このように、仲介手数料が無料である場合、ユーザ3bに販売価格120ETHに相当する金額が送金されてもよい。また、ユーザ3cは、NFT6の販売価格に相当する120ETHに加えて、一連のトランザクションに要するガス代も負担するものとする。本例では、暗号通貨としてETHが使用されているが、ERC-20規格に基づく他のトークン(例えば、USDT,USDC,JPYC等)が決済通貨として使用されてもよい。
【0078】
図7の工程(6)において、仲介者5は、NFT6を購入者であるユーザ3cから受け取った上で、ユーザ3cから受け取ったNFT6を焼却する(図7の工程(7)参照)。具体的には、最初に、ユーザ端末2cは、ユーザ端末2cに対するユーザ3cの入力操作に応じて、NFT6の所有者をユーザ3cから仲介者5に変更するための変更要求トランザクションをブロックチェーンネットワーク10に配信する。次に、ブロックチェーンネットワーク10は、ユーザ端末2cから当該変更要求トランザクションを受信した上で、当該変更要求トランザクションに応じてNFT6の所有者がユーザ3cから仲介者5に変更されたことを示す情報をブロックチェーン8上に記録する。その後、仲介者5は、NFT6を焼却するために、NFT6を制御不能となるウォレットアドレス(秘密鍵の存在が誰にも知られていないウォレットアドレス)宛に送付する。
【0079】
その後、仲介者5は、仲介者5からユーザ3cへの特許権17の移転登録に必要な必要書類15bを電子メール等を介してユーザ3cに送信する(図7の工程(8)参照)。必要書類15bは、仲介者5からユーザ3cに特許権17を移転するために必要な譲渡証やユーザ3cの委任状(ユーザ3cの代理権を証明する書類)等を含んでもよい。ユーザ3cは、必要書類15bに必要情報を記載すると共に、必要書類15bに捺印若しくは署名をした上で、必要書類15bを仲介者5に返送する。その後、仲介者5は、弁理士等の代理人を通じて必要書類15aを特許庁16に提出する。この結果、特許権17が仲介者5からユーザ3cに移転される(図7の工程(9)参照)。
【0080】
このように、本実施形態によれば、コントラクト11aを介した特許権17に関連付けられたNFT6の売買を通じて、特許権17の円滑且つ安全な取引を実現することが可能となる。さらに、コントラクト11aを通じてボーダレス且つ仲介者5の存在なしにNFT6に紐づく特許権17を自由且つ安全に取引することが可能となる。特に、投資目的若しくは投機目的で特許権17の売買を行うグローバルな投資家にとって魅力的な特許権流通プラットフォームを提供することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0082】
1:特許権流通システム(流通システム)、2,2a,2b,2c:ユーザ端末、3,3a,3b,3c:ユーザ、4;仲介サーバ、5:仲介者、6:NFT、7:ノード、8:ブロックチェーン、10:ブロックチェーンネットワーク、11,11a:NFT取引スマートコントラクト、12:通信ネットワーク、13:IPFS、15,15a,15b:必要書類、16:特許庁、17:特許権、20:制御部、21:記憶装置、22:撮像部、23:通信部、24:入力操作部、25:表示部、31:記憶装置、40:制御部、41:記憶装置、42:入出力インターフェース、43:通信部、44:入力操作部、45:表示部、100:販売情報、120:購入ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7