(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】コンベヤ装置
(51)【国際特許分類】
B65G 39/00 20060101AFI20241206BHJP
B65G 13/075 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B65G39/00 A
B65G13/075
(21)【出願番号】P 2020189600
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一夫
(72)【発明者】
【氏名】橘 俊之
(72)【発明者】
【氏名】榎 利公
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-029625(JP,A)
【文献】特開2015-063194(JP,A)
【文献】特開2019-140350(JP,A)
【文献】特開平10-157595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 39/00 - 39/20
B65G 13/00 - 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力部から供給される動力によって駆動するコンベヤ装置であって、
前記動力部は、モータと、ブレーキ部を有し、
前記ブレーキ部は、当該ブレーキ部に通電することによってブレーキ負荷が解除され、通電を停止することによってブレーキ負荷が掛かる常時係合ブレーキであり、
前記コンベヤ装置を起動する際に前記ブレーキ部に所定の電圧を印加してブレーキ負荷を解除状態とし、
その後に前記ブレーキ部に印加する電圧を低下させてブレーキ負荷が解除された状態を維持するものであり、
前記コンベヤ装置の駆動中、所定の間隔で、一時的に前記ブレーキ部に印加する電圧を上昇させる動作を実行
し、且つ、前記ブレーキ部に印加する電圧が変動したことを条件として、前記ブレーキ部に印加する電圧がブレーキ負荷を解除状態とすることが可能な電圧である目標電圧となるように、前記ブレーキ部に印加する電圧を上昇させる動作を実行する、ことを特徴とするコンベヤ装置。
【請求項2】
前記ブレーキ部は、押圧部材と、前記モータの出力軸の回転と共に回転する被押圧部材と、引寄部材と、前記押圧部材を前記被押圧部材側に常時付勢する付勢部材を備え、
前記押圧部材が前記付勢部材によって前記被押圧部材に押し当てられることで、ブレーキ負荷が掛かるものであり、
前記引寄部材は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記押圧部材を前記被押圧部材から離間する方向に移動させるものであり、印加する電圧の上昇に応じて、前記押圧部材に前記付勢力に抗する力をより強く加えることを特徴とする請求項
1に記載のコンベヤ装置。
【請求項3】
前記ブレーキ部は、当接部材を有し、
前記押圧部材が前記被押圧部材に押し当てられることで、前記被押圧部材が前記押圧部材と前記当接部材に挟持され、前記被押圧部材の回転が停止されることを特徴とする請求項
2に記載のコンベヤ装置。
【請求項4】
前記被押圧部材は、樹脂を主たる原料とする部材であることを特徴とする請求項
2又は3に記載のコンベヤ装置。
【請求項5】
前記動力部は、モータ内蔵ローラであり、
前記モータ内蔵ローラは、ローラ本体に前記モータと前記ブレーキ部が内蔵され、前記モータの回転力が前記ローラ本体に伝動されて前記ローラ本体を回転させるものであることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載のコンベヤ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベヤやローラコンベヤ等のコンベヤ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の組み立てラインや、宅配便の集荷場では、搬送物の搬送にコンベヤ装置が使用されている。このようなコンベヤ装置として、ベルトコンベヤやローラコンベヤがある。
一方、コンベヤ装置の動力源として、円筒状のローラ本体内にモータと減速機とを内蔵したモータ内蔵ローラが知られている。
例えば、特許文献1には、このようなモータ内蔵ローラと、モータ内蔵ローラを用いて形成されたローラコンベヤ(搬送装置)が開示されている。
【0003】
また、このようなコンベヤ装置では、意図しない搬送物の移動や加速を防ぐため、ブレーキ機構が設けられることがある。このような機構には、例えば、ローラ本体の表面にブレーキ部材を機械的に押圧し、摩擦力を発生させることで制動力を得るブレーキローラがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、コンベヤ装置の動力源となるモータに対し、電圧を印加することでブレーキ負荷を解除する常時係合ブレーキを設けることを考えた。すなわち、起動時にブレーキ負荷を解除状態とし、その後にブレーキ負荷が解除された状態を維持させ、コンベヤ装置で搬送物を搬送することを考えた。そして、コンベヤ装置でブレーキが必要となったとき、電圧の印加を停止し、ブレーキ負荷をかけることを考えた。
【0006】
さらに、ブレーキ負荷を解除状態とする際に比べ、解除状態を維持させる際の電圧を低くすることで、コンベヤ装置の運用に必要な電力を押さえ、コンベヤ装置の運用を低コスト化することを考えた。
【0007】
ところが、このようなコンベヤ装置を実際に試作してみると、本来ブレーキが必要のない状況でブレーキが掛かってしまうことがあった。このことにつき、本発明者らが詳細に検討した結果、印加する電圧の意図しない乱れ(意図しない瞬時電圧低下)により、このような状況が発生することが判明した。
【0008】
すなわち、意図しない瞬次電圧低下が発生し、ブレーキが掛かってしまうと、その後に元の電圧に戻った際にブレーキ負荷を解除状態とすることができず、ブレーキが掛かり続けてしまう。すなわち、元の電圧に戻り、解除状態を維持させる際の電圧が印加されても、ブレーキ負荷が解除状態とならず、ブレーキが掛かり続けてしまう。
【0009】
そこで本発明は、意図しない継続的なブレーキ負荷の発生を阻止することが可能なコンベヤ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、動力部から供給される動力によって駆動するコンベヤ装置であって、前記動力部は、モータと、ブレーキ部を有し、前記ブレーキ部は、当該ブレーキ部に通電することによってブレーキ負荷が解除され、通電を停止することによってブレーキ負荷が掛かる常時係合ブレーキであり、前記コンベヤ装置を起動する際に前記ブレーキ部に所定の電圧を印加してブレーキ負荷を解除状態とし、その後に前記ブレーキ部に印加する電圧を低下させてブレーキ負荷が解除された状態を維持するものであり、前記コンベヤ装置の駆動中、所定の間隔で、一時的に前記ブレーキ部に印加する電圧を上昇させる動作を実行し、且つ、前記ブレーキ部に印加する電圧が変動したことを条件として、前記ブレーキ部に印加する電圧がブレーキ負荷を解除状態とすることが可能な電圧である目標電圧となるように、前記ブレーキ部に印加する電圧を上昇させる動作を実行する、ことを特徴とするコンベヤ装置である。
【0011】
本様相のコンベヤ装置によると、意図しない瞬次電圧低下が発生し、ブレーキが掛かったとしても、ブレーキ部に印加する電圧が上昇された際にブレーキ負荷が解除され、その後に解除状態が維持される。つまり、意図しないブレーキ負荷が発生してもいち早く回復することができる。また、所定の間隔で電圧が上昇するため、高い電圧をかけ続けるような構成に比べ、運用コストの低コスト化を図ることができる。
【0012】
上記した様相は、前記コンベヤ装置の駆動中、前記ブレーキ部に印加する電圧が変動したことを条件として、前記ブレーキ部に印加する電圧を上昇させる動作を実行する。
【0013】
この好ましい様相によると、意図しないブレーキ負荷が発生した際に、より早く回復することが可能となる。
【0014】
上記した様相は、前記ブレーキ部は、押圧部材と、前記モータの出力軸の回転と共に回転する被押圧部材と、引寄部材と、前記押圧部材を前記被押圧部材側に常時付勢する付勢部材を備え、前記押圧部材が前記付勢部材によって前記被押圧部材に押し当てられることで、ブレーキ負荷が掛かるものであり、前記引寄部材は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記押圧部材を前記被押圧部材から離間する方向に移動させるものであり、印加する電圧の上昇に応じて、前記押圧部材に前記付勢力に抗する力をより強く加えることが好ましい。
【0015】
この好ましい様相によると、構造の簡素が可能であり、安価な構成でブレーキ負荷の制御が可能となる。
【0016】
上記した好ましい様相は、前記ブレーキ部は、当接部材を有し、前記押圧部材が前記被押圧部材に押し当てられることで、前記被押圧部材が前記押圧部材と前記当接部材に挟持され、前記被押圧部材の回転が停止されることがより好ましい。
【0017】
このより好ましい様相によると、被押圧部材の意図しない位置ずれ等を防止可能であり、ブレーキを掛ける際に高い制動力を発揮できる。
【0018】
上記した好ましい様相は、前記被押圧部材は、樹脂を主たる原料とする部材であることがより好ましい。
【0019】
上記した様相は、モータの駆動中に意図しないブレーキが掛かり続けることがないため、樹脂を主たる原料とする被押圧部材を採用しても、被押圧部材の必要以上の摩耗を抑制できる。
【0020】
上記した様相は、前記動力部は、モータ内蔵ローラであり、前記モータ内蔵ローラは、ローラ本体に前記モータと前記ブレーキ部が内蔵され、前記モータの回転力が前記ローラ本体に伝動されて前記ローラ本体を回転させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、意図しない継続的なブレーキ負荷の発生を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンベヤ装置を示す平面図である。
【
図2】
図1のモータ内蔵ローラを模式的に示す機構図であり、ブレーキ負荷が発生していない状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係るコンベヤ装置1について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0024】
コンベヤ装置1は、
図1で示されるように、図示しない制御装置と、コンベヤ2を有する。制御装置は、コンベヤ2が実行する各種動作を制御するものである。コンベヤ2は、搬送部を構成する搬送装置である。
本実施形態のコンベヤ2は、間隔を空けて並列配置された複数の搬送ローラ10を有するローラコンベヤとなっている。搬送ローラ10のうちの一つは、モータ内蔵ローラ15(動力部)であり、他の搬送ローラ10は、自由に回転する従動ローラ16である。コンベヤ2では、隣接する搬送ローラ10同士が伝動ベルトで巻回されている。このため、モータ内蔵ローラ15が回転することで、回転駆動力が従動ローラ16に伝達され、コンベヤ2に属する全ての搬送ローラ10が回転する。
【0025】
モータ内蔵ローラ15は、
図2で示されるように、ローラ本体20の内部に、モータ21と、減速機22と、ブレーキ機構部23(ブレーキ部)と、図示しない回路基板等が内蔵されたものである。具体的には、モータ21、減速機22、ブレーキ機構部23は、ローラ本体20内に配された内筒部材24の内部に配されている。
【0026】
ローラ本体20は、両端が開口した金属製の筒体である。両端は、閉塞部材30,31によって閉塞されている。また、ローラ本体20の両端からは、固定軸32,33が軸方向に突出している。固定軸32,33は、それぞれ閉塞部材30,31に軸受け(ベアリング)を介して回転可能に取り付けられており、閉塞部材30,31に対して相対回転可能となっている。
【0027】
モータ21は、固定子であるコイル等によって構成されるモータ本体部35と、回転子と一体化された回転軸部36(出力軸)を有する。回転軸部36は、モータ本体部35の対となる両端部の片側から突出する部分(以下、第一軸部36aとも称する)と、他方側から突出する部分(以下、第二軸部36bとも称する)を有する。すなわち、第一軸部36a、第二軸部36bは、いずれも回転子と共に回転し、一方が回転すると他方も同速で回転し、一方が回転停止すると他方も回転停止する。
【0028】
減速機22は、公知のそれと同様に、モータ21の回転力を減速するものであり、内部に遊星歯車列を有するものであって、歯車、軸、及び軸受け等のそれぞれの部材が接触して相対的運動をする構造を備えている。
この減速機22は、モータ軸取付部22aと、出力軸部22bを有しており、モータ軸取付部22aにモータ21の第一軸部36aが連結されている。つまり、モータ21が駆動することで第一軸部36a(回転軸部36)が回転し、回転軸部36の回転速度が減速機22によって減速されて出力軸部22bに伝達される。
【0029】
ここで、モータ内蔵ローラ15は、ローラ本体20に固定された連結部材40を有しており、減速機22の出力軸部22bの回転を連結部材40で受ける構造となっている。つまり、出力軸部22bの回転は、連結部材40を経由してローラ本体20に伝わる。
以上のことから、モータ内蔵ローラ15は、2つの固定軸32,33をコンベヤフレーム等に固定した状態でモータ21が駆動すると、ローラ本体20が自転する構造となっている。
【0030】
ブレーキ機構部23は、第一ディスク部材45(被押圧部材)と、コイル部材46(引寄部材)と、押圧板部47(押圧部材)と、コイルスプリング48(付勢部材)と、第二ディスク部材49(当接部材)を有する。
【0031】
第一ディスク部材45は、樹脂を主たる原料とする円環板状の部材であり、本実施形態では合成樹脂(PPS樹脂)を主たる原料としている。この第一ディスク部材45は、取付用部材(図示しない)を介して第二軸部36bに取り付けられている。具体的には、第一ディスク部材45は、厚さ方向が第二軸部36bの長手方向(軸方向)と同方向となる状態で、第二軸部36bの一部を周方向に取り巻くように取り付けられている。つまり、第一ディスク部材45は、第二軸部36bに対してフランジ状となるように取り付けられている。
また、この第一ディスク部材45は、非磁性体となっている。
なお、ここでいう「非磁性体」とは、磁石につかない物質のこととする。
【0032】
コイル部材46は、導線を筒状に巻回して形成される巻回部を有しており、導線に電流を流すことで電磁石として機能する部材である。
【0033】
押圧板部47は、金属製の薄い円板状の部材である。本実施形態では、押圧板部47は、電気亜鉛メッキした鋼板を原料とする強磁性体となっている。
なお、ここでいう「強磁性体」とは、磁石につく物質のこととする。
【0034】
コイルスプリング48は、所謂つるまきバネであり、長手方向の一端側が押圧板部47と接触するように配されている。このコイルスプリング48は、押圧板部47をコイル部材46から離れる方向(モータ本体部35に近づく方向)に常時付勢する。
【0035】
第二ディスク部材49は、金属製の薄い円環板状の部材であり、取付用部材を介して内筒部材24に固定されている。この第二ディスク部材49は、第二軸部36bの回転に伴って回転しないように取り付けられている。
また、本実施形態の第二ディスク部材49は、ステンレス鋼を主たる原料とした非磁性体となっている。
なお、ここでいう「非磁性体」とは、磁石につかない物質のこととする。
【0036】
第一ディスク部材45、押圧板部47、第二ディスク部材49は、いずれも厚さ方向が同じ方向となるように配されている。また、第一ディスク部材45は、押圧板部47、第二ディスク部材49のどちらよりも厚く形成された部材である。第一ディスク部材45を挟んだ両側に押圧板部47、第二ディスク部材49が位置しており、押圧板部47は、第一ディスク部材45よりもコイル部材46に近い位置に配されている。
【0037】
ブレーキ機構部23は、電圧が印加され、コイル部材46の導線に電流が流れることでブレーキ負荷が解除される常時係合ブレーキを形成している。
すなわち、電圧が印加されない状態では、押圧板部47がコイルスプリング48によって押圧され、押圧板部47が第一ディスク部材45の片側主面に押し付けられる。この結果、第一ディスク部材45が押圧板部47と第二ディスク部材49によって強く挟持され、ブレーキ負荷が掛かる。
対して、電圧が印加されることで、コイル部材46の磁力により、押圧板部47がコイル部材46に引き寄せられる。この結果、押圧板部47が第一ディスク部材45から離間し、ブレーキ負荷が解除される。
【0038】
本実施形態のコンベヤ装置1は、ブレーキ負荷が掛かる状態からブレーキ負荷が掛からない状態(ブレーキ負荷の解除状態)とする負荷解除動作と、ブレーキ負荷が掛からない状態を維持する解除維持動作からなる2つの動作が可能である。
【0039】
本実施形態のコンベヤ装置1は、起動する際に負荷解除動作を実行して押圧板部47と第一ディスク部材45を離間させた状態とする。そして、その後、ブレーキ負荷を発生させる動作を実行するまでの間、又は、コンベヤ装置1の稼働を停止するまでの間、解除維持動作を実行する。
【0040】
ここで、負荷解除動作は、所定の電圧(本実施形態では24Vの電圧)を印加し、コイル部材46の磁力によって押圧板部47を第一ディスク部材45から離間させる動作である。
【0041】
これに対し、解除維持動作では、所定の間隔で印加する電圧を高くする(コイル部材46に流れる電流を強くする)動作を実行する。
すなわち、解除維持動作では、比較的低い電圧(本実施形態では12Vの電圧)が印加される状態である第一の状態と、第一の状態よりも高い電圧が印加される状態である第二の状態が切り替わる。なお、本実施形態では、第二の状態で印加する電圧と、負荷解除動作を実行する際に印加する電圧とを同じ電圧値(24Vの電圧)としている。言い換えると、第一の状態で印加される電圧は、負荷解除動作を実行する際に印加する電圧よりも低い電圧となっている。
【0042】
このことから、解除維持動作の実行時に意図しない瞬時電圧低下が発生し、一時的に意図しないブレーキ負荷が発生してしまっても、その後、電圧低下が回復したとき、第一の状態から第二の状態となることで、ブレーキ負荷が掛からない状態に移行する。このことにより、意図しないブレーキ負荷が発生し続けることが無く、このことに起因する問題、例えば、第一ディスク部材45が必要以上に摩耗するといった問題の発生を抑制できる。
【0043】
解除維持動作で印加する電圧を高くする動作を実行する際の間隔は、一定であってもよく、不定であってもよい。すなわち、解除維持動作の実行が開始されてから一度目の電圧を高くする動作を実行するまでの間隔と、一度目の電圧を高くする動作を実行してから二度目の電圧を高くする動作を実行までの間隔は、同じであってもよく、異なっていてもよい。三度目以降も同様である。
例えば、コンマ数秒毎、数秒毎、数分毎等の間隔で電圧を高くしてもよく、0.5秒毎に電圧を高くする動作を実行してもよい。対して、解除維持動作の実行開始から一度目の電圧を高くする動作を実行するまでの間隔を1秒とし、一度目の電圧を高くする動作を実行してから二度目の電圧を高くする動作を実行までの間隔を2秒としてもよい。
【0044】
ここで、本実施形態では、一定の間隔で印加する電圧を高くする動作を実行している。
また、本実施形態では、コイル部材46に印加する電源電圧を24Vとし、電圧のデューティ比を可変させる(デューティ比を50パーセントとする)制御を行うことで、コイル部材46に印加する電圧(平均電圧)を12Vとする制御を行っている。
すなわち、負荷解除動作から解除維持動作への切り替えや、解除維持動作において第一の状態と第二の状態を切り替える際に、デューティ比を可変させる制御を行っている。
【0045】
つまり、モータ21を駆動させると、ブレーキ機構部23(コイル部材46)に対して24V通電がなされ、ブレーキ負荷が解除される(負荷解除動作が実行される)。そして、所定時間後に電圧を下げ、電圧を下げてから一定の間隔でブレーキ機構部23に24V通電を行う(解除維持動作が実行される)。この一定の間隔でブレーキ機構部23に24V通電を行う動作は、モータ21の停止信号が入力されるまで実行される。
【0046】
ここで、上記した解除維持動作では、一定の間隔でブレーキ機構部23に印加する電圧を上昇させる動作(以下、第一の動作とも称す)を実行している。加えて、本実施形態の解除維持動作では、上記した第一の動作に加え、以下の第二の動作を並行して実行する。
第二の動作は、コイル部材46に印加する電圧を検知する検知装置を設け、印加する電圧が変動したことを条件として、コイル部材46に印加する電圧を上昇させる動作である。
【0047】
詳細に説明すると、コイル部材46に印加する電源電圧(デューティ比が100パーセント時の電圧)を検知するセンサ部材を設け、解除維持動作が実行されている間、電源電圧を取得する動作を実行する。そして、電源電圧が変動したことが検知されると、コイル部材46に印加する電圧を上昇させる動作を実行する。
この電圧を上昇させる動作は、コイル部材46に印加する電圧が所定の目標電圧(本実施形態では24V)となるように、コイル部材46に印加する電圧のデューティ比を可変させる動作である。
なお、この目標電圧は、ブレーキ負荷が掛かる状態からブレーキ負荷が掛からない状態に移行させることが可能な電圧値であればよく、必ずしも電源電圧と電圧値が同じ電圧(デューティ比が100パーセントとなる電圧)でなくてもよい。
つまり、第二の動作は、電源電圧を常時取得する動作を実行し、電源電圧が変動したことを条件として、24V通電を行う動作である。
【0048】
この第二の動作を並行して実行すると、例えば、上記した第一の状態であるときに意図しない瞬時電圧低下が発生しても、上記した第二の状態への切り替えがなされる前に、いち早くブレーキ負荷を解除された状態に移行させることが可能となる。
【0049】
上記した実施形態では、コンベヤ2をローラコンベヤとしたが、本発明はこれに限るものではなく、ベルトコンベヤ等の他の種類のコンベヤであってもよい。また、コンベヤは、搬送面が水平面と平行となるように設置するものの他、搬送面が傾斜する姿勢で設置するものでもよい。例えば、搬送方向で下流側に向かうにつれ、搬送面が下り勾配となるように設置するものでもよく、搬送方向で下流側に向かうにつれ、搬送面が上り勾配となるものでもよい。
【0050】
また、上記した実施形態では、コンベヤ2の動力部(動力源)をモータ内蔵ローラとしたが、本発明はこれに限るものではない。コンベヤ2の動力部は、モータ内蔵ローラに内蔵されるものに限定されず、上記したブレーキ機構部23を備えたモータ装置であればよい。例えば、従動ローラ16を並べて構成されるローラコンベヤにおいて、ローラコンベヤの外部に配されるモータ装置の出力軸と、一つの従動ローラ16をベルトで連動させ、モータの回転駆動力を従動ローラ16に伝達する構成としてもよい。
【0051】
なお、上記したコンベヤ装置1は、電源が入れられて稼働を開始してから、電源が切られて稼働を終了するまでの間、電気ブレーキで搬送速度を調整するものであってもよい。すなわち、稼働開始時にブレーキ機構部23によるブレーキ負荷が解除されると、稼働している間は、ブレーキ機構部23によるブレーキ負荷が掛からない状態が維持される。そして、稼働が終了し、モータ21とブレーキ機構部23に電圧が印加されない状態となったことを条件として、ブレーキ負荷を発生させるものであってもよい。
つまり、ブレーキ機構部23は、モータの速度調整に使用する電気ブレーキとは別に設けられたものでもよく、搬送速度を調整するブレーキとして使用せず、コンベヤ装置1の非稼働時にモータ21にブレーキ負荷を掛けるものでもよい。
また、上記した電気ブレーキは、回生制動等による電気ブレーキ(回生ブレーキ)や、回転子の永久磁石と固定子を吸着させる方向に界磁電流を流す電気ブレーキ(直流ブレーキ)であってもよい。この他、出力時の回転子の回転方向とは逆方向に回転するように界磁電流を流す電気ブレーキであってもよい。また、サーボモータによるブレーキ動作(サーボロック)であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 コンベヤ装置
15 モータ内蔵ローラ(動力部)
21 モータ
23 ブレーキ機構部(ブレーキ部)
36 回転軸部(出力軸)
45 第一ディスク部材(被押圧部材)
46 コイル部材(引寄部材)
47 押圧板部(押圧部材)
48 コイルスプリング(付勢部材)
49 第二ディスク部材(当接部材)