(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】浮体式桟橋及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
E01D 15/20 20060101AFI20241206BHJP
B63B 35/36 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
E01D15/20
B63B35/36
(21)【出願番号】P 2020201527
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2019224316
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106955
【氏名又は名称】シバタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【氏名又は名称】野口 晴加
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(72)【発明者】
【氏名】西山 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】西本 安志
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024502(JP,A)
【文献】国際公開第2010/122311(WO,A1)
【文献】実開昭60-018116(JP,U)
【文献】実開昭59-043508(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107841937(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 15/20
B63B 35/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に対して伸縮自在で、運搬可能な浮体式桟橋であって、
可撓性材料よりなり、内部に流体を充填可能で、流体を充填した加圧状態と流体を排出した減圧状態とを切替自在な袋状体と、
同一大きさで同一形状の平板形状を有する複数の板材をその接続部分で回動可能となるように所定方向に接続してなる板状体と
、
前記板状体に取り付けられる輪形状の支持部材とを備え、
前記袋状体は、
前記支持部材を介して前記板状体に取り付けられ、前記加圧状態では、前記板状体に所定荷重を加えた状態で、前記袋状体の上部及び前記板状体の上面の少なくとも一方を水上に浮上させる浮力を有し、前記減圧状態では、前記板状体の動きに応じて変形可能であ
り、
前記袋状体の前記減圧状態において、前記板状体は、前記複数の板材の上面が全て外方に露出した展開状態と、前記複数の板材の上面の一部が外方から遮蔽された収納状態とを切替自在で、
前記板状体と前記袋状体とは、前記収納状態において周方向に巻き取られた円筒形状となる、浮体式桟橋。
【請求項2】
前記板状体は、その長さ方向の一方端部に
位置する板材であり、前記板状体が前記展開状態から前記収納状態へ回転しながら移行する際に回転の中心となる第1の回転中心と、前記板状体の長さ方向の他方端部に
位置する板材であり、前記板状体が前記収納状態から前記展開状態へ回転しながら移行する際の回転の中心となる第2の回転中心とを更に備えた、請求項
1記載の浮体式桟橋。
【請求項3】
前記板状体は
、前記板状体及び前記袋状体の前記収納状態への移行を補助する
ための、前記板状体の下面に取り付けられるベルトからなる収納補助手段を更に備えた
、請求項
1又は請求項
2記載の浮体式桟橋。
【請求項4】
前記板状体は、その一部に対象物への固定を可能とする固定手段を更に備えた、請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の浮体式桟橋。
【請求項5】
前記板状体は、その一部に船舶による曳航を可能とする被曳航手段を更に備えた、請求項
1から請求項
4のいずれかに記載の浮体式桟橋。
【請求項6】
前記板状体は、その一部に他の浮体式桟橋との連結を可能とする連結手段を更に備えた、請求項
1から請求項
5のいずれかに記載の浮体式桟橋。
【請求項7】
請求項
1から請求項
6のいずれかに記載の浮体式桟橋の使用方法であって、
前記板状体は、長さ方向の一方端部に、流体を内部に充填できる補助袋状体を更に備え、
前記板状体の長さ方向の他方端部側を船舶に固定する工程と、
前記板状体を変形させて水中に浮かぶ浮遊物の下方に潜行させる工程と、
前記補助袋状体に流体を充填して前記浮遊物を前記板状体の前記一方端部と前記他方端部との間に納める工程と、
前記袋状体に流体を充填して前記板状体を水面へ浮上させ前記浮遊物を水面へ持ち上げる工程と、
前記持ち上げた浮遊物を回収する工程とを備えた、浮体式桟橋の使用方法。
【請求項8】
請求項
1から請求項
6のいずれかに記載の浮体式桟橋の使用方法であって、
前記展開状態とした板状体を、その長さ方向の一方側から収納し、前記収納状態とする収納工程と、
前記収納状態とした板状体を、その長さ方向の一方側と長さ方向の他方側との向きを入れ替える方向転換工程とを備えた、浮体式桟橋の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は浮体式桟橋及びその使用方法に関し、特に水上に設置して岸壁等から船舶等へ人が移動する際の連絡橋として用いられ、必要に応じて水難事故の救助活動等の目的にも使用可能な浮体式桟橋及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水上に展開して歩行者等の往来が可能な状態と、折り畳む等して収納及び回収を行うことが可能な状態とを切替自在な浮体式桟橋に関する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、耐水木材又は合成樹脂板等からなる長方形状の枠体と板材とを貼り合わせて作った2つの舗板を蝶番で開閉自在に取付けたものの裏面に、空気によって膨縮可能な浮袋を取付けて形成したものを、取付け金物とピンによって複数連続して接続した折たたみ格納式浮歩道が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実願昭47-105298号(実開昭49-062630号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1のような従来の折たたみ格納式浮歩道は、必要に応じて拡開して海上に浮かせ、波浪の大きい日などは折りたたんで陸上に上げることが可能になっている。しかしながら、その設置又は引き上げの際には、各舗板の接続部分の取付け金物の脱着が必要であると共に、舗板を1つ1つ設置又は回収せねばならず手間が掛かるものであった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、設置、収納及び運搬が容易且つ幅広い利用が可能な浮体式桟橋及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、長さ方向に対して伸縮自在で、運搬可能な浮体式桟橋であって、可撓性材料よりなり、内部に流体を充填可能で、流体を充填した加圧状態と流体を排出した減圧状態とを切替自在な袋状体と、同一大きさで同一形状の平板形状を有する複数の板材をその接続部分で回動可能となるように所定方向に接続してなる板状体と、板状体に取り付けられる輪形状の支持部材とを備え、袋状体は、支持部材を介して板状体に取り付けられ、加圧状態では、板状体に所定荷重を加えた状態で、袋状体の上部及び前記板状体の上面の少なくとも一方を水上に浮上させる浮力を有し、減圧状態では、板状体の動きに応じて変形可能であり、袋状体の減圧状態において、板状体は、複数の板材の上面が全て外方に露出した展開状態と、複数の板材の上面の一部が外方から遮蔽された収納状態とを切替自在で、板状体と袋状体とは、収納状態において周方向に巻き取られた円筒形状となるものである。
【0010】
このように構成すると、浮体式桟橋の全体の形状を板状体が可動する範囲で変形させることが可能となる。又、使用状況又は運搬状況に応じて、浮体式桟橋の展開状態と収納状態とを切り替えることが可能となる。更に、浮体式桟橋を、回転運動を利用しながら展開又は収納することができる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、板状体は、その長さ方向の一方端部に位置する板材であり、板状体が展開状態から収納状態へ回転しながら移行する際に回転の中心となる第1の回転中心と、板状体の長さ方向の他方端部に位置する板材であり、板状体が収納状態から展開状態へ回転しながら移行する際の回転の中心となる第2の回転中心とを更に備えたものである。
【0016】
このように構成すると、板状体の長さ方向の一方端部側と他方端部側のいずれからも浮体式桟橋を展開状態及び収納状態とすることができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、板状体は、板状体及び袋状体の収納状態への移行を補助するための、板状体の下面に取り付けられるベルトからなる収納補助手段を更に備えたものである。
【0018】
このように構成すると、浮体式桟橋の収納状態への移行が容易となる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、板状体は、その一部に対象物への固定を可能とする固定手段を更に備えたものである。
【0020】
このように構成すると、岸壁、岸辺又は船舶といった対象物へ浮体式桟橋を固定することができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、板状体は、その一部に船舶による曳航を可能とする被曳航手段を更に備えたものである。
【0022】
このように構成すると、浮体式桟橋を展開した状態のままで水上を移動させることができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、板状体は、その一部に他の浮体式桟橋との連結を可能とする連結手段を更に備えたものである。
【0024】
このように構成すると、浮体式桟橋同士の連結が容易となる。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の浮体式桟橋の使用方法であって、板状体は、長さ方向の一方端部に、流体を内部に充填できる補助袋状体を更に備え、板状体の長さ方向の他方端部側を船舶に固定する工程と、板状体を変形させて水中に浮かぶ浮遊物の下方に潜行させる工程と、補助袋状体に流体を充填して浮遊物を板状体の一方端部と他方端部との間に納める工程と、袋状体に流体を充填して板状体を水面へ浮上させ浮遊物を水面へ持ち上げる工程と、持ち上げた浮遊物を回収する工程とを備えたものである。
【0026】
このように構成すると、水分を含んだ大型の浮遊物の回収が、人力で行う場合と比べて容易となる。
【0027】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の浮体式桟橋の使用方法であって、展開状態とした板状体を、その長さ方向の一方側から収納し、収納状態とする収納工程と、収納状態とした板状体を、その長さ方向の一方側と長さ方向の他方側との向きを入れ替える方向転換工程とを備えたものである。
【0028】
このように構成すると、浮体式桟橋の同一側で板状体の長さ方向の一方側への再展開に備えることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、浮体式桟橋の全体の形状を板状体が可動する範囲で変形させることが可能となるため、浮体式桟橋の設置、収納及び運搬が容易となる。又、使用状況又は運搬状況に応じて、浮体式桟橋の展開状態と収納状態とを切り替えることが可能となるため、浮体式桟橋の設置、収納及び運搬が容易となる。更に浮体式桟橋を、回転運動を利用しながら展開又は収納することができるため、浮体式桟橋の設置及び収納が容易となる。
【0033】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、板状体の長さ方向の一方端部側と他方端部側のいずれからも浮体式桟橋を展開状態及び収納状態とすることができるため、使い勝手のよい浮体式桟橋となる。
【0034】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、浮体式桟橋の収納状態への移行が容易となるため、使い勝手が向上する。
【0035】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、岸壁、岸辺又は船舶といった対象物へ浮体式桟橋を固定することができるため、浮体式桟橋の安定した使用が可能となる。
【0036】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、浮体式桟橋を展開した状態のままで水上を移動させることができるため、浮体式桟橋の設置場所を変更する際の運搬が容易となる。
【0037】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、浮体式桟橋同士の連結が容易となるため、浮体式桟橋の利用面積を容易に広げることが可能となる。
【0038】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、水分を含んだ大型の浮遊物の回収が、人力で行う場合と比べて容易となるため、浮遊物の回収における安全性が向上する。
【0039】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、浮体式桟橋の同一側で板状体の長さ方向の一方側への再展開に備えることができるため、浮体式桟橋の収納及び展開に関する作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の展開状態を示す概略斜視図であって、袋状体を加圧状態としたものを示す図である。
【
図2】
図1で示した浮体式桟橋の袋状体を減圧状態としたものを示す図である。
【
図3】
図2で示した浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行の途中状態を示す概略斜視図である。
【
図4】
図2で示した浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行を完了した状態を示す概略斜視図である。
【
図5】この発明の第2の実施の形態による浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行の途中状態を示す概略斜視図であって、
図3に対応する図である。
【
図6】
図5で示した浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行を完了した状態を示す概略斜視図であって、
図4に対応する図である。
【
図7】この発明の第3の実施の形態による浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行の途中状態を示す概略斜視図であって、
図3に対応する図である。
【
図8】
図7で示した浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行を完了した状態を示す概略斜視図であって、
図4に対応する図である。
【
図9】この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第1の使用方法を模式的に示す斜視図であって、(1)は浮体式桟橋の展開状態を示す図であり、(2)は浮体式桟橋の収納状態を示す図である。
【
図10】この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第2の使用方法を示す概略斜視図である。
【
図11】この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第3の使用方法を示す概略斜視図である。
【
図12】この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第4の使用方法を示す概略斜視図である。
【
図13】この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第5の使用方法を模式的に示す図であって、(1)は水中に浮かぶ被災者の下方に浮体式桟橋を差し込んだ状態を示す図であり、(2)は浮体式桟橋の補助袋状体に気体を充填した状態を示す図であって、(3)は浮体式桟橋を用いて水中に浮かぶ被災者を水上に持ち上げた状態を示す図である。
【
図14】この発明の第4の実施の形態による浮体式桟橋を模式的に示す図である。
【
図15】この発明の第5の実施の形態による浮体式桟橋を模式的に示す図である。
【
図16】この発明の第6の実施の形態による浮体式桟橋の展開工程を模式的に示す図である。
【
図17】この発明の第6の実施の形態による浮体式桟橋の収納工程を模式的に示す図である。
【
図18】この発明の第6の実施の形態による浮体式桟橋の方向転換工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の展開状態を示す概略斜視図であって、袋状体を加圧状態としたものを示す図であり、
図2は、
図1で示した浮体式桟橋の袋状体を減圧状態としたものを示す図である。
【0042】
これらの図を参照して、浮体式桟橋1は、ゴム等の可撓性材料によって形成された密閉性を有する一対の長尺の袋状体3a、3bと、耐水性を有する木材よりなる矩形平板形状の複数の板材4a~4pを袋状体3a、3bの長さ方向と同一方向に連続して並べて配置した板状体5とからなるものである。板状体5の板材4a~4pの各々の下面には、袋状体3a、3bの各々が板状体5の幅方向に対して間隔を空けて接着剤で取り付けられている。これにより、板状体5の板材4a~4pの各々は袋状体3a、3bを介して接続された状態となるため、各々の接続部分で回動可能となっている。
【0043】
又、袋状体3a、3bの長手方向の一方端部(板状体5の板材4a側に位置する端部)には、注入バルブ6a、6bが設けられている。そして、エアコンプレッサー等の図示しない流体給排出手段により、注入バルブ6a、6bを介して、袋状体3a、3bの内部に流体である気体8a、8bを充填又は排出することが可能となっている。
【0044】
更に、板状体5の板材4aの下面15aにおいては、袋状体3a、3bに挟まれるような位置に収納補助手段であるベルト7が取り付けられている。ベルト7は、板状体5の下面全体を通るように板材4a側から板材4p側に向かって延びている。このように構成した効果については後述する。
【0045】
図1で示す浮体式桟橋1の袋状体3a、3bは、その内部に気体8a、8bを充填して加圧状態としたものであり、略円筒形状となっている。この状態で浮体式桟橋1を水上に浮かべた場合、図示しないが、袋状体3a、3bは板状体5に人荷等による荷重を加えた状態で、板状体5の板材4a~4pの上面14a~14pを水上に浮上させる浮力を有している。
【0046】
一方、
図2で示す浮体式桟橋1の袋状体3a、3bは、その内部から気体を排出して減圧状態としたものであり、扁平形状となっている。この状態で板状体5は、
図2で示すような板材4a~4pの上面14a~14bが全て外方に露出した展開状態と、後述する板状体5の板材4a~4pの内少なくとも一部が外方から遮蔽された収納状態とが切替自在となっている。又、袋状体3a、3bは、板状体5の板材4a~4pが各々の接続部分で動くのに応じて変形可能となっている。
【0047】
次に、浮体式桟橋1の展開状態と収納状態との切り替えについて説明する。
【0048】
図3は、
図2で示した浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行の途中状態を示す概略斜視図である。
【0049】
同図を参照して、浮体式桟橋1の板状体5を板材4p側から板材4a側に向かって周方向(矢印A1方向)に回転させながら巻き取っていく。この際には、板状体5の板材4p側に伸ばしていたベルト7を矢印A2方向に引っ張ることで、板状体5の巻き取りを補助することができる。又、袋状体3a、3bは板状体5の動きに応じて変形し、板状体5と一緒に巻き取られる。
【0050】
図4は、
図2で示した浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行を完了した状態を示す概略斜視図である。
【0051】
同図を参照して、上述した巻き取りを最後まで進めると、板状体5と袋状体3a、3bとは、周方向に巻き取られた形状となり、浮体式桟橋1の収納状態への移行が完了する。この収納状態では、板状体5の板材4aを除く板材の上面が外方から遮蔽された状態となる。
【0052】
尚、再度浮体式桟橋1を
図2に示す展開状態とする場合には、巻き取った方向とは逆方向へ浮体式桟橋1を回転させればよい。又、この展開状態への移行においては、展開補助手段として袋状体3a、3bを利用してもよい。具体的には、まず図示しない流体供給手段によって袋状体3a、3bに気体を注入する。すると、図示しないが、袋状体3a、3bが注入バルブ6a、6b側の端部から徐々に膨らみ始める。そのまま気体の注入を続けると、袋状体3a、3bの各々の内圧によって袋状体3a、3bと板状体5とは
図3の矢印A3方向とは逆方向に回転していき、
図1に示す加圧状態の展開状態となり、収納状態から展開状態への移行及び袋状体3a、3bへの気体8a、8bの注入が一度に完了する。
【0053】
こうすることで、浮体式桟橋1の全体の形状を板状体5が可動する範囲で変形させることが可能となると共に、使用状況又は運搬状況に応じて、浮体式桟橋1の展開状態と収納状態とを切り替えることが可能となるため、浮体式桟橋1の設置、収納及び運搬が容易となる。又、浮体式桟橋1を、回転運動を利用しながら展開又は収納することができるため、浮体式桟橋1の設置及び収納が更に容易となる。更に、収納補助手段であるベルト7によって浮体式桟橋1の収納状態への移行が容易となり、使い勝手が向上する。
【0054】
図5は、この発明の第2の実施の形態による浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行の途中状態を示す概略斜視図であって、
図3に対応する図であり、
図6は、
図5で示した浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行を完了した状態を示す概略斜視図であって、
図4に対応する図である。
【0055】
尚、この実施の形態による浮体式桟橋21の構成は、基本的には第1の実施の形態と同様であるため、ここでの説明は繰り返さず、その相違点を中心に説明する。
【0056】
図5及び
図6を参照して、この実施の形態における浮体式桟橋21は、第1の実施の形態のベルトに替えて、収納補助手段として一対のワイヤー27a、27bが、板状体25に取り付けられている。
【0057】
このワイヤー27a、27bの取り付け状態について、ワイヤー27b側について具体的に説明すると、板材24a~24pの幅方向一方端部側(袋状体23bが取り付けられている側)において、まず、板材24aの板材24bと隣接していない側の角部29aに図示しない貫通孔が設けられている。次に、板材24bと板材24cとが隣接する側の各々の角部29b、29cにも図示しない貫通孔が設けられている。そして、板材24dと板材24eとが隣接する側の各々角部29d、29eにも図示しない貫通孔が設けられている。そして、板材24f~24pについても、各板材同士の隣接部分を1つずつ空けるようにして、各板材に図示しない貫通孔が設けられている。この図示しない貫通孔を介してワイヤー27bは取り付けられている。
【0058】
尚、ワイヤー27aについては、板材24a~24pの幅方向の他方端部側(袋状体23aが取り付けられている側)において、ワイヤー27bと同様の構成であるため説明を省略する。
【0059】
このように形成した浮体式桟橋21を収納状態へと移行する際には、板状体25を袋状体23a、23bの減圧状態において、板材同士の隣接する部分の内、ワイヤー27a、27bが通らない部分が山折りとなるように長さ方向に対して蛇腹状に折り曲げる。すると、袋状体23a、23bも板材の動きに応じて、蛇腹状に変形する。そして板材24a側を固定してワイヤー27a、27bを水平方向(矢印A3方向)に引っ張ることで、板状体25の板材24a~24pの各々はそのまま水平方向に更に折り畳まれ、袋状体23a、23bも板材の動きに応じて折り畳まれる。そして、ワイヤー27a、27bを更に引っ張り浮体式桟橋21は、
図6に示すように、その全体形状が略直方体形状となり、収納状態への移行が完了する。この状態では、板状体25の板材24a及び24pを除く板材の上面が外方から遮蔽された状態となる。
【0060】
こうすることで、浮体式桟橋21を複数積み重ねしやすい形状の収納状態となる。
【0061】
尚、再度浮体式桟橋21を展開状態とする場合には、折り畳んだ方向とは逆方向へ浮体式桟橋21の板状体25を広げればよい。又、この展開状態への移行においては、第1の実施の形態と同様に展開補助手段として袋状体23a、23bを利用してもよい。
【0062】
図7は、この発明の第3の実施の形態による浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行の途中状態を示す概略斜視図であって、
図3に対応する図であり、
図8は、
図7で示した浮体式桟橋の展開状態から収納状態への移行を完了した状態を示す概略斜視図であって、
図4に対応する図である。
【0063】
尚、この実施の形態による浮体式桟橋31の構成は、基本的には第1及び第2の実施の形態と同様であるため、ここでの説明は繰り返さず、その相違点を中心に説明する。
【0064】
図7及び
図8を参照して、この実施の形態における浮体式桟橋31は、第1の実施の形態のベルトと同等のベルト37が板材34aの下面38aではなく板材34pの下面38pに設けられている。
【0065】
このように構成した浮体式桟橋31を収納状態へと移行する際にはベルト37を手前斜め上方(矢印A4方向)に引っ張り、板材34pを持ち上げながら板状体35を長さ方向に対する長さが縮小するように折り畳んでいく。その際、袋状体33a、33bは板状体35の動きに応じて変形し、折り畳まれていく。そして、浮体式桟橋31は、
図8に示すように、板状体34a及び34pの上面が重なり合い、板状体35と袋状体33a、33bの長さ方向に対する長さが約半分になるように折り畳まれたものとなり、収納状態への移行が完了する。この状態では、板状体35の板材34a及び34pを含む全ての板材の上面が外方から遮蔽された状態となる。
【0066】
こうすることで、浮体式桟橋31の嵩が低くなるため、収納場所の高さに制限がある場合でも対応できるものとなる。
【0067】
尚、再度浮体式桟橋31を展開状態とする場合には、折り畳んだ方向とは逆方向へ浮体式桟橋31の板状体35を広げればよい。又、この展開状態への移行においては、第1の実施の形態と同様に展開補助手段として袋状体33a、33bを利用してもよい。
【0068】
次にこのような浮体式桟橋の使用方法について説明する。
【0069】
図9は、この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第1の使用方法を模式的に示す斜視図であって、(1)は浮体式桟橋の展開状態を示す図であり、(2)は浮体式桟橋の収納状態を示す図である。
【0070】
同図の(1)を参照して、この使用方法における浮体式桟橋1は水上47に展開され、板状体5の板材4aの上面14aには、岸壁48との固定手段として桟橋側金具41a、41b及びチェーン42a、42bが設けられている。このチェーン42a、42bの長さは水位の上下に伴う浮体式桟橋1の昇降距離に対応できる長さに設定しておくのが望ましい。
【0071】
チェーン42a、42bは一方が桟橋側金具41a、41bに取り付けられており、他方を岸壁側金具43a、43bによって岸壁48にあらかじめ打ち込まれた岸壁側金具43a、43bに取り付けられるようになっている。
【0072】
こうすることで、浮体式桟橋1が岸壁48に固定されるので、浮体式桟橋1の安定した使用が可能となり、例えば、浮体式桟橋1を図の(1)で示すように、釣り桟橋として利用した場合でも安全性を保ちやすい。
【0073】
又、図の(2)を参照して、荒天時には、岸壁48に固定したまま浮体式桟橋1を収納状態とし、岸壁48上に引き上げておくことができる。こうすることで、浮体式桟橋1の流失や浮遊物による破損の虞が低減する。
【0074】
図10はこの発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第2の使用方法を示す概略斜視図である。
【0075】
同図を参照して、この使用方法における浮体式桟橋1は、板状体5と袋状体3a、3bの一部を岸辺49上に、その他の部分を水上47に展開したものである。板状体5の岸辺49に配置された部分の上面には、岸辺49との固定手段であるリング状の部材を有するボルト51a~51dと、ボルト51a~51dのリング状の部分に接続されたワイヤーロープ52a~52dとが取り付けられている。ワイヤーロープ52a~52dの他方端部は、杭53a~53dによって岸辺49上に打ち込まれて固定されている。水上47に展開された部分が簡易の桟橋として機能し、レジャーボート等の小型ボート58a~58cの接舷が可能となる。
【0076】
こうすることで、浮体式桟橋1の一部が岸辺49に固定されるので、小型ボート58a~58cへの乗り降りを行う桟橋として利用した場合でも、浮体式桟橋1の安定した使用が可能となる。
【0077】
更に、板状体5を長さ方向に延長し、その下面に袋状体を取り付けずにタラップ部55を設けることで、図示しない人の行き来が更に容易となる。
【0078】
更に、図示しないが、荒天時には収納状態として岸辺49に引き上げておくことで、浮体式桟橋の流失や破損の虞を低減できる。
【0079】
さて、近年地震による津波、大型の台風等による洪水被害や市街地の浸水被害といった水害が増加している。このような救助活動に応用した浮体式桟橋の使用方法を次に説明する。
【0080】
図11は、この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第3の使用方法を示す概略斜視図である。
【0081】
同図を参照して、この使用方法における浮体式桟橋1は、板状体5の長さ方向の一方端部に小型ボート68から延びるワイヤーロープ62を係止可能な被曳航手段であるリング状の受け金具61を更に備えたものである。これにより、必要に応じてワイヤーロープ62を介して小型ボート68等によって浮体式桟橋1の曳航が可能となる。
【0082】
こうすることで、浮体式桟橋1を展開した状態のままで水上47を移動させることができるため、浮体式桟橋1の設置場所を変更する際の運搬が容易となる。
【0083】
又、図のように、救助した被災者を一時的に回収することも可能である。救助した被災者63a~63eを浮体式桟橋1に乗せたまま、曳航可能なところまで運搬することができるため、より早く救護施設まで被災者を搬送し得るものとなり、救助活動の効率が向上する。
【0084】
図12は、この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第4の使用方法を示す概略斜視図である。
【0085】
同図を参照して、この使用方法における浮体式桟橋1は、長さ方向の一方端部側(板材4p側)において、板状体5の上面に他の浮体式桟橋との連結を可能とする連結手段であるコの字形状の連結ピン71及びピン受け穴72を更に備えたものである。ピン受け穴72は浮体式桟橋1の板状体に直接形成されている。このような浮体式桟橋1を、同様のピン受け穴73を有する他の浮体式桟橋74eと共に収納状態のまま複数設置場所である水上47に移送して展開状態にする。その後、互いに長さ方向で接続するように連結ピン71を浮体式桟橋1のピン受け穴72及び浮体式桟橋74eのピン受け穴73に差し込んで連結する。
【0086】
こうすることで、浮体式桟橋同士の連結が容易となるため、浮体式桟橋1の利用面積を容易に広げることが可能となる。
【0087】
又、同図で示すように、浮体式桟橋1及び浮体式桟橋74eに加えて、更に他の浮体式桟橋74b~74dを互いに連結した大規模な浮体足場75を水上47に容易に設置することができ、救助ボート78等で救助した被災者79を一時的に浮体足場75上に避難させることができる。又、市街地等で大規模な洪水が起きる等した際に小型の救助用台船が侵入できない場合において、浮体足場75を簡易の救命活動場として使用することも可能となるものである。
【0088】
又、
図11で示した受け金具61のような被曳航手段を更に設けて、浮遊足場75ごと曳航しても良い。そうすると、曳航可能なところまで浮遊足場75を移動することができるため、より早く救護施設まで被災者を搬送し得るものとなり、救助活動の効率が向上する。
【0089】
さて、洪水や津波等によって水中に投げ出された被災者を救助する場合は、救助ボートを被災者に横付けし、基本的に人力で救助ボート内に引き上げることが一般的である。しかしながら、水中に投げ出された被災者は着衣が水分を含むことで通常の状態に比べて重量が増しており、引き上げには大きな力を要するものである。又、救助者が救助ボートの端によって引き上げを行うこともあり、救助ボートがバランスを崩して、転覆するといった問題も起きていた。
【0090】
図13は、この発明の第1の実施の形態による浮体式桟橋の第5の使用方法を模式的に示す図であって、(1)は水中に浮かぶ被災者の下方に浮体式桟橋を差し込んだ状態を示す図であり、(2)は浮体式桟橋の補助袋状体に気体を充填した状態を示す図であって、(3)は浮体式桟橋を用いて水中に浮かぶ被災者を水上に持ち上げた状態を示す図である。
【0091】
図の(1)を参照して、この使用方法における浮体式桟橋1は、板状体5がその長さ方向の一方端部に、板状体の幅方向に延びる補助袋状体81を更に備えたものである。補助袋状体81は、袋状体3a、3bと同様に可撓性材料からなり、図示していないが、流体給排出手段により、注入バルブを介して、補助袋状体81の内部に流体である気体や液体を充填又は排出することが可能となっている。
【0092】
このような浮体式桟橋1は、まず、板状体5の補助袋状体81が設けられていない側の端部を救助ボート88に固定する。次に、袋状体3a、3bには気体を充填しないままで、板状体5全体を適宜曲げる等して変形させながら、浮体式桟橋1を水中に浮かぶ被災者83の下方に潜行させる。更に、図の(2)を参照して、補助袋状体81に気体を充填して水面に浮かせることで、板状体5の一方端部と他方端部との間に被災者83が納まるようにする。更に、図の(3)を参照して、袋状体3a、3bに気体を充填して板状体5の上面を水面89へ浮上させる。すると、それに伴って被災者83も水面89より上方に持ち上げられる。その後、救助者84が被災者83を矢印方向に移動させ救助ボート88内へ引き込む。
【0093】
こうすることで、水分を含んで重くなった被災者83の救助が人力のみで水中から引き上げる場合と比べて容易となるため、被災者の救助における安全性が向上する。
【0094】
又、人以外に水分を含んだ大型の浮遊物を回収する際にも同様のことが言える。
【0095】
図14は、この発明の第4の実施の形態による浮体式桟橋を模式的に示す図である。
【0096】
この実施の形態による浮体式桟橋91の構成は、基本的には第1の実施の形態と同様であるため、ここでの説明は繰り返さず、その相違点を中心に説明する。
【0097】
図14を参照して、この実施の形態における浮体式桟橋91では、第1の実施の形態と同様に形成された袋状体93a、93bが、板状体95の下面ではなく上面94に接着剤で取り付けられている。この状態で浮体式桟橋91を水上に浮かべた場合、同図で示すように、袋状体93a、93bは板状体95に人荷等による荷重を加えた状態で、袋状体93a、93bの上部98a、98bを水上(水面99より上)に浮上させる浮力を有している。一方、板状体95は水中に沈む。こうすることで、板状体95が水上に浮上している場合に比べて浮体式桟橋91の重心位置が下がり、浮体式桟橋91の安定性が向上する。
【0098】
図15は、この発明の第5の実施の形態による浮体式桟橋を模式的に示す図である。
【0099】
この実施の形態による浮体式桟橋101の構成は、基本的には第1の実施の形態と同様であるため、ここでの説明は繰り返さず、その相違点を中心に説明する。
【0100】
図15を参照して、この実施の形態における浮体式桟橋101は、第1の実施の形態と同様に形成された袋状体103a、103bが、板状体105の下面ではなく幅方向側面106a、106bに、ゴム等の可撓性材料からなり、板状体を挟み込むようにして取り付けられた輪形状部を有する支持部材107a、107bを介して取り付けられている。この状態で浮体式桟橋101を水上に浮かべた場合、同図で示すように、袋状体103a、103bは板状体105に人荷等による荷重を加えた状態で、袋状体103a、103bの上部108a、108b及び板状体105の上面104を水上(水面109より上)に浮上させる浮力を有している。このような浮体式桟橋101に小型ボート等を接舷する際には、袋状体103a、103bが緩衝材のような役割を果たし、浮体式桟橋101との接触による小型ボート等の損傷を低減することができる。
【0101】
図16は、この発明の第6の実施の形態による浮体式桟橋の展開工程を模式的に示す図であって、(1)は設置ボートに浮体式桟橋を取り付けた状態を示す図であり、(2)は浮体式桟橋を展開して使用可能な状態としたものを示す図である。
【0102】
尚、この実施の形態による浮体式桟橋111の構成は、基本的には第1の実施の形態と同様であるため、ここでの説明は繰り返さず、その相違点を中心に説明する。
【0103】
図16の(1)を参照して、浮体式桟橋111は、板状体115の長さ方向の一方端部116の側面に一対の半環状の金具123a、123bが設けられている。又、板状体115の長さ方向の他方端部117の側面には一対の半環状の金具124a、124bが設けられている。更に、具体的な効果については後述するが、板状体115の長さ方向の一方端部116に位置する板材は、板状体115が展開状態から収納状態へ回転しながら移行する際に回転の中心となる第1の回転中心118となる。又、板状体115の長さ方向の他方端部117に位置する板材は、板状体115が収納状態から展開状態へ回転しながら移行する際に回転の中心となる第2の回転中心119となる。
【0104】
このような浮体式桟橋111を、板状体115及び袋状体113a、113bが周方向に巻き取られた収納状態で設置ボート121に取り付ける。この際に、浮体式桟橋111の展開方向が、板状体115の巻き終わりである板状体115の長さ方向の一方端部116を含む長さ方向の一方側128から、巻き始めである板状体115の長さ方向の他方端部117を含む長さ方向の他方側129へ展開できるような向きに取り付ける。浮体式桟橋111を設置ボート121へ取り付ける手段は特に限定しないが、例えば設置ボート121に設けた棒状の突起部122a、122bに板状体115の半環状の金具123a、123bを引っかけるような構成にしてもよい。
【0105】
次に、浮体式桟橋111を使用するために、一端を固定した状態で、収納状態の浮体式桟橋111の板状体115及び袋状体113a、113bの巻き取り部分を、回転方向B1に回転させる。この際に、板状体115の第2の回転中心119が回転の中心となる。板状体115及び袋状体113a、113bの巻き取り部分を最後まで回転させて展開状態とした後に、袋状体113a、113bに気体を充填すると
図16の(2)で示すような浮体式桟橋111を使用できる状態となる。
【0106】
尚、板状体115及び袋状体113a、113bの収納状態から展開状態への移行にあたっては、第1の実施の形態で述べたように、図示しない流体供給手段によって収納状態の袋状体113a、113bに気体を徐々に注入し、袋状体113a、113bの各々の内圧によって板状体115及び袋状体113a、113bを回転方向B1に回転させて展開するものとしてもよい。このようにすることで、板状体115及び袋状体113a、113bの展開が容易となる。又、展開状態とした板状体115の長さ方向の他方側129については、浮体式桟橋111の使用状況に応じて板状体115の半環状の金具124a、124bを利用して岸壁や水没した住宅の屋根等の対象物に取り付けるようにしてもよいし、水面に浮かべたままとしてもよい。
【0107】
次に、使用した浮体式桟橋111を再度収納する工程について説明する。
【0108】
図17は、この発明の第6の実施の形態による浮体式桟橋の収納工程を模式的に示す図であって、(1)は巻き取り装置に浮体式桟橋を取り付けた状態を示す図であり、(2)は浮体式桟橋の巻き取り装置による巻き取りの途中状態を示す図である。
【0109】
図17の(1)を参照して、使用した浮体式桟橋111の袋状体113a、113bの内部の気体を抜いて再度減圧状態とし、板状体115の長さ方向の一方端部116を巻き取りボート125上に設置された巻き取り装置126に取り付ける。
【0110】
図17の(2)を併せて参照して、巻き取り装置126によって浮体式桟橋111の板状体115及び袋状体113a、113bを、板状体115の長さ方向の一方側128から矢印B2方向に回転させて巻き取っていく。この際に、板状体115の第1の回転中心118が回転の中心となる。又、板状体115の長さ方向の一方端部116が巻き始めとなり、板状体115の長さ方向の他方端部117が巻き終わりとなる。そのため、浮体式桟橋111の板状体115と袋状体113a、113bとは、
図16の(1)で示した浮体式桟橋111のものとは180°向きが回転した状態で収納されることになる。
【0111】
このような状態の浮体式桟橋111は、次に使用する際にそのままでは
図16の(2)で示した展開状態と同一方向に展開することが難しくなる。そのため、次のような対応を行う。
【0112】
図18は、この発明の第6の実施の形態による浮体式桟橋の方向転換工程を模式的に示す図であって、(1)は浮体式桟橋の向きを入れ替える途中状態を示す図であり、(2)は浮体式桟橋の向きを入れ替えた後の状態を示す図である。
【0113】
図18の(1)を参照して、再度収納状態とした浮体式桟橋111を、ワイヤー127等を介して図示しないクレーンで上方向(矢印C1方向)に引き上げて、巻き取り装置126から外す。そして、浮体式桟橋111を空中で矢印C2方向に180°回転させる。すると、
図18の(2)で示すように、板状体115の長さ方向の一方端部116と長さ方向の他方端部117との向きが
図16の(1)で示したものとは相互に入れ替わった状態となる。その状態で浮体式桟橋111を
図16の(1)で示すような設置ボート121に再度取り付けると、板状体115及び袋状体113a、113bの巻き取り部分を回転方向B1に回転させて、
図16の(2)で示した展開状態に再度展開できる状態に戻すことができる。
【0114】
このようにすることで、浮体式桟橋111の同一側で板状体115の長さ方向の一方側128への再展開に備えることができるため、浮体式桟橋111の収納及び展開に関する作業効率が向上する。
【0115】
又、板状体115の長さ方向の一方端部116側と他方端部117側のいずれからも浮体式桟橋111を展開状態及び収納状態とすることができるため、使い勝手のよい浮体式桟橋111となる。
【0116】
尚、この浮体式桟橋の第1の使用方法から第5の使用方法の各々については、第1の実施の形態による浮体式桟橋を使用することを前提に説明したが、これに限らず、第2の実施の形態から第6の実施の形態によるものを使用してもよい。
【0117】
又、上記では説明しなかったが、上記の各実施の形態の浮体式桟橋は袋状体と板状体とからなるものであったが、これに限らない。長さ方向に伸縮自在であれば、次に述べるようなものから構成されるものであってもよい。例えば、上記の各実施の形態の袋状体に対応するものであって、長さ方向に延び伸縮可能な基材と、上記の各実施の形態の板状体に対応するものであって、基材が伸縮するのに応じて長さ方向に変形自在であって、基材に取り付けられる足場材とを備えるものであってもよい。基材と足場材の取り付け位置は、第1から第3の実施の形態のように、基材が足場材の下面に取り付けられるものであってもよいし、第4の実施の形態のように基材が足場材の上面に取り付けられるものや、第5の実施の形態のように基材と足場材とが幅方向に取り付けられるものであってもよい。その際、基材の浮力及び足場材の浮力は、足場材に所定荷重を加えた状態で、基材の上部及び足場材の上部の少なくとも一方を水上に浮上させることができるように設定されるものである。換言すると、基材と足場材の浮力の総和によって、基材の上部及び足場材の上部の少なくとも一方を水上に浮上させることができればよく、基材と足場材の各々は浮力を有するものであってもそうでないものであってもよい。例えば、基材と足場材との双方とを可撓性材料による気密性を有する袋状のもので形成して、基材と足場材の各々が浮力を有するようにしてもよい。又、網(基材)と複数の板状の発泡スチロール(足場材)とを採用して、基材ではなく足場材が浮力を有するようにしてもよい。
【0118】
このようにすることで、浮体式桟橋の全体の形状を基材が伸縮する範囲で変形させることが可能となるため、浮体式桟橋の設置、収納及び運搬が容易となる。
【0119】
尚、上記の各実施の形態では、袋状体は、ゴムからなるものであったが、これに限らない。可撓性を有するものであれば他の素材であってもよい。
【0120】
又、上記の各実施の形態では、袋状体は、長尺でその内部に気体を充填した加圧状態では円筒形状になる一対のものであったが、これに限らない。例えば、第1から第5の実施の形態では、小さなボール状のものを複数取り付けたものであってもよい。又、袋状体は、その内部に気体等の流体を充填した加圧状態で浮体式桟橋を水面に浮かべて板状体に所定荷重を加えた時に、袋状体の上部及び板状体の上面の少なくとも一方が水上に浮上する程度の浮力を有していれば、板状体の長さ方向に所定間隔空けて取り付けられるものであってもよい。更に、第1から第3の実施の形態では、板状体の下面全体を覆う1つの大きな袋状のものであってもよい。
【0121】
更に、上記の各実施の形態では、袋状体は、その内部に気体を充填又は排出するものであったが、これに限らず流体であればよい。例えば、水等の液体を充填又は排出するものであってもよい。
【0122】
更に、上記の第1から第4及び第6の実施の形態では、袋状体は、板状体の下面又は上面に直接接着剤で取り付けられるものであったが、これに限らない。板状体の板材の各々の下面又は上面にゴムや不織布等の可撓性材料、紐又はワイヤー等からなる輪形状の支持部材を輪の断面が板状体の長さ方向に向くように取り付け、その中に袋状体を通すようにして取り付けるものであってもよい。
【0123】
更に、上記の第5の実施の形態では、袋状体は、板状体の幅方向側面に支持部材を介して取り付けられるものであったが、これに限らない。支持部材は紐やワイヤーで構成されていてもよい。又、板状体の幅方向側面に直接接着剤で取り付けるものであってもよい。
【0124】
更に、上記の各実施の形態では、板材は矩形の平板形状であったが、これに限らない。浮体式桟橋として利用可能であれば、台形や三角形円形、多角形のものを連ねるようにしてもよい。又、厚みのある箱状のものであってもよい。
【0125】
更に、上記の各実施の形態では、板材は、耐水性を有する木材からなるものであったが、これに限らない。繊維強化プラスチック等の他の素材からなるものであってもよい。
【0126】
更に、上記の各実施の形態では、板状体は、板材が袋状体を介して連結するものであったが、これに限らない。板状体の板材同士が回動自在であれば、板状体同士の連結をヒンジ等の他の手段で実現してもよい。
【0127】
更に、上記の各実施の形態では、板材は所定方向である長さ方向に連続して並べたものであったが、幅方向に連続して並べるものであってもよい。
【0128】
更に、上記の各実施の形態で示した板状体の板材の数は一例であり、これに限らない。少なくとも2枚以上であれば、枚数は使用状況に応じて適宜設定すればよい。
【0129】
更に、上記の各実施の形態では、展開状態は板状体の板材の上面が全て同一面に並ぶようなものであったが、これに限らない。板状体を長さ方向の一部で折り曲げて階段状のように設置してもよい。その際は、そのような利用ができるように袋状体の形状を適宜変更すればよい。
【0130】
更に、上記の各実施の形態では、収納状態は長さ方向に対する巻き取り、蛇腹折り、2つ折りというものであったがこれに限らない、板材の上面の一部が外方から遮蔽されるものであれば、長さ方向への3つ折りや他の収納状態であってもよい。
【0131】
更に、上記の各実施の形態では、収納補助手段は板状体の特定箇所に取り付けられるものであったが、これに限らず、収納状態にできるものであれば、板状体の他の位置に取り付けられるものであってもよい。
【0132】
更に、上記の第2の実施の形態では、収納補助手段であるワイヤーは、貫通孔を介して取り付けられるものであったが、これに限らない。例えば、板状体にリング状のガイドやワイヤー支持金具等を取り付けて、これにワイヤーを通すようなものであってもよい。
【0133】
更に、上記の各実施の形態では、収納補助手段はベルトやワイヤーであったが、これに限らない。例えば、紐やチェーンであってもよい。又、板状体の幅方向に延びる軸に一対の車輪を連結した巻き取り装置のようなものでもよい。
【0134】
更に、上記の各実施の形態では、固定手段は、桟橋側金具、岸壁側金具及びチェーンやボルト、ワイヤーロープ及びチェーンといった組み合わせで岸壁や岸辺に固定されるものであったが、これに限らない。対象物に固定できれば他の手段であってもよい。
【0135】
更に、上記の各実施の形態では、固定手段は浮体式桟橋を岸壁や岸辺に固定するものであったが、これに限らない。船舶、水底、車輛等の他の対象物に固定するものであってもよい。
【0136】
例えば、上記の各実施の形態及び使用方法では説明しなかったが、浮体式桟橋を収納状態で救助ボートの外側(両側面等)に取り付けることも可能であり、取り付けた状態で所望の位置まで救助ボートで移動した後に、気体を注入して展開することも可能である。そうすれば、浮体式桟橋を浸水した家屋等の建物の屋上に避難している被災者が救助ボート内に避難するためのタラップとしての使用が可能となる。加えて、使用後は浮体式桟橋を再度収納状態にして、別の被災者のところへと移動することができるので、救助活動の効率が向上する。
【0137】
又、小型の救助用台船に救助用ボートと同様に浮体式桟橋を収納状態で固定しておき、必要に応じて展開することで、被災者が小型の救助用船台に避難するためのタラップとして使用してもよい。このようにすると、より多くの被災者を一度に救出することができる。この場合、救助用台船の大きさを活かして、浮体式桟橋の大きさを担架や車椅子といったものも通過できるように設定すると、負傷した者等の救出もより容易となる。
【0138】
更に、浮体式桟橋を救助用台船の両側面に固定した場合は、一方を被災者が避難した建物側へ展開し、他方を陸地側へと展開することで、台船を中継地点として被災者の救助が可能となる。より多くの被災者を直接陸地へ避難させることができるので、救助活動の効率が向上する。
【0139】
更に、救援物資等の貨物を積んだ輸送船のハッチに浮体式桟橋を取り付けておき、ハッチを開けたときに展開することで、貨物の運搬経路としてすることも可能である。その際は、必要に応じて連結手段によって陸地まで届くように浮体式桟橋の長さを延長するとよい。そうすることで、通常であれば小型ボートや水陸両用車に積み替えが必要な場合でも、浮体式桟橋を介して貨物を運搬することができるため、輸送効率が向上する。
【0140】
更に、トラックの荷台に浮体式桟橋を収納状態で取り付けておき、必要に応じて袋状体に気体を注入してトラックの荷台の外に滑り台(シューター)のように展開するといった使い方も可能である。板状体の上面にレールやコロといった動作補助手段を設けておくことで、救助ボートや荷物等を板状体の上面を滑らせながら移動することも可能となる。レールについては、各板材の長さ方向の長さに合わせたものを複数準備し、互いに接続せずに板材上に設置することで、浮体式桟橋の収納状態への切り替えを妨げないものとなる。又、必要に応じて連結手段によって浮体式桟橋の長さを延長することで、所望の位置まで救助ボートや荷物を運搬することが容易になる。
【0141】
更に、上記の各実施の形態における板状体の側面や下面に碇を取り付けるようにしてもよい。使用の際に水底に固定することができるので、浮体式桟橋の設置状態がより安定する。
【0142】
更に、上記の各実施の形態では、被曳航手段は、受け金具とワイヤーロープとからなるものであったが、これに限らない。他の手段によるものであってもよく、例えば、板状体に直接取付け孔を穿孔してその孔にロープを結びつけるようなものであってもよい。
【0143】
更に、上記の各実施の形態では、連結手段は、ピンとピン受け穴によるものであったが、これに限らない。他の手段によるものであってもよく、例えば、チェーン、紐又はワイヤー等とそれらを固定する金具とで連結してもよい。
【0144】
更に、上記の各実施の形態では、連結手段は、板状体の長さ方向に設けられるものであったが、これに限らない。幅方向に設けてもよいし、長さ方向と幅方向の双方に設けてもよい。又、1つずつではなく複数設けてもよい。
【0145】
更に、上記の浮体式桟橋の第5の使用方法では、水中に浮かぶ被災者を例にして説明したが、人以外の動物や家財といった浮遊物にも適用できる。
【0146】
更に、上記の浮体式桟橋の第5の使用方法では、浮体式桟橋の板状体は補助袋状体を備えるものであったが、補助袋状体はなくてもよい。浮体式桟橋の一方端部を水中に潜行させたままの状態で、袋状体に気体を注入した場合でも、被災者や浮遊物を水面へ持ち上げることは可能である。
【0147】
更に、上記の浮体式桟橋の第6の実施の形態では、板状体の長さ方向の一方端部及び他方端部の各々に位置する板材を第1の回転中心及び第2の回転中心の各々とするものであったが、これに限らず、筒状の芯等、軸となるものを別途設ける構成としてもよい。
【0148】
更に、上記の浮体式桟橋の第6の実施の形態では、設置時には設置ボートを使用し、収納時には巻き取りボートを使用するものであったが、これに限らない。設置ボートと巻き取りボートとを兼用してもよい。又、岸壁等他の場所において設置及び収納するものであってもよい。
【0149】
更に、上記の浮体式桟橋の第6の実施の形態では、板状体に半環状の金具が設けられていたが、この金具は他の素材や形状からなるものであってもよいし、金具自体なくてもよい。
【0150】
更に、上記の浮体式桟橋の第6の実施の形態では、収納状態とする際は板状体及び袋状体を特定方向(袋状体113b側の側面から見て時計回り)に回転させて巻き取るものであったが、これに限らず、板状体と袋状体との位置関係に合わせて、逆方向に回転させるものであってもよい。その場合、状態によっては方向転換しなくても浮体式桟橋を再度展開できる場合がある。
【0151】
更に、上記の浮体式桟橋の第6の実施の形態では、収納状態は板状体及び袋状体が周方向に巻き取られたものであったが、これに限らない。第2実施の形態や第3の実施の形態で示すような他の収納状態となるものに適用してもよい。
【0152】
更に、上記の浮体式桟橋の第6の実施の形態では、展開状態及び収納状態に移行する際には浮体式桟橋の同一側から作業する構成であったが、これに限らない。一方側から展開して他方側から収納するものとしてもよい。
【0153】
更に、上記の浮体式桟橋の第6の実施の形態では、収納した浮体式桟橋の向きを入れ替えるのにワイヤーとクレーンとを用いるものであったが、これに限らない。小型の旋回可能なボートを用いてボートごと向きを入れ替える等他の手段によるものであってもよい。
【0154】
更に、上記の浮体式桟橋の第6の実施の形態では、浮体式桟橋の方向転換工程において、特定の方向と角度に向きを変えるものであったがこれに限らず、反対方向に回転させて向きを変えてもよい。又、次の展開先に応じて、必要な角度だけ回転させてもよい。
【符号の説明】
【0155】
1、21、31、91、101、111…浮体式桟橋
3a、3b、23a、23b、33a、33b、93a、93b、103a、103b、113a、113b…袋状体
4a~4p、24a~24p、34a、34p…板材
5、25、35、95、105、115…板状体
7、37…ベルト
8a、8b…気体
27a、27b…ワイヤー
41a、41b…桟橋側金具
42a、42b…チェーン
51a~51d…ボルト
52a~52d…ワイヤーロープ
61…受け金具
62…ワイヤーロープ
71…連結ピン
72…ピン受け穴
81…補助袋状体
116…板状体の長さ方向の一方端部
117…板状態の長さ方向の他方端部
118…第1の回転中心
119…第2の回転中心
128…板状体の長さ方向の一方側
129…板状態の長さ方向の他方側
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。