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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/08 20060101AFI20241206BHJP
   F23D 14/06 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F24C3/08 Q
F23D14/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021089842
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182333
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光藤 公一
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-196913(JP,A)
【文献】特開2016-038106(JP,A)
【文献】特開2014-145510(JP,A)
【文献】特開2013-200055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0217502(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0011472(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102012206507(DE,A1)
【文献】特開2017-020706(JP,A)
【文献】実開昭63-167027(JP,U)
【文献】特開昭61-022111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00 - 3/14
F23D 14/00 - 14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを供給するバーナ本体と、
筒部と、前記筒部から張り出すフランジ部とを備え、前記バーナ本体に装着されるバーナキャップと、
を有するガスコンロであって、
前記バーナ本体は、前記フランジ部と対向する環状の対向面を有する上面部と、前記上面部に対して窪んだ構成をなす窪み部と、を備え、
前記バーナキャップは、前記フランジ部の下面部に設けられる複数の炎孔溝と、前記下面部に設けられるとともに前記窪み部に入り込む突出部と、を備え、
前記複数の炎孔溝は、前記対向面とともに主炎孔を構成する複数の主炎孔溝と、前記対向面とともに火移り炎孔を構成する複数の火移り炎孔溝と、を含み、
前記複数の火移り炎孔溝のうちの一部には、前記フランジ部の周方向において前記突出部の一方側に配置される第1壁と、前記周方向において前記突出部の他方側に配置される第2壁と、前記周方向において前記第1壁と前記第2壁との間に配置される複数の区画壁と、が設けられ、
前記複数の火移り炎孔溝のうち第1火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁のうちの一の区画壁と前記第1壁とを備え、
前記複数の火移り炎孔溝のうち第2火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁のうちの他の区画壁と前記第2壁とを備え、
前記複数の火移り炎孔溝のうち内側火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁を備え、
前記第1壁における前記突出部側の第1内壁を含む第1ガス流路が、前記第1火移り炎孔溝及び前記内側火移り炎孔溝に通じるガスの流路であり、
前記第2壁における前記突出部側の第2内壁を含む第2ガス流路が、前記第2火移り炎孔溝及び前記内側火移り炎孔溝に通じるガスの流路であり、
前記フランジ部の外周部には、前記第1火移り炎孔溝、前記第2火移り炎孔溝、及び前記内側火移り炎孔溝の出口が設けられ、
前記第1内壁は前記外周部に近づくつれて前記第2壁に近づくように傾斜し、
前記第2内壁は前記外周部に近づくつれて前記第1壁に近づくように傾斜している
ガスコンロ。
【請求項2】
前記第1壁において前記第1火移り炎孔溝を構成する第3内壁は、前記第1内壁よりも前記外周部側に設けられ且つ前記外周部に近づくにつれて前記第2壁から遠ざかるように傾斜し、
前記第2壁において前記第2火移り炎孔溝を構成する第4内壁は、前記第2内壁よりも前記外周部側に設けられ且つ前記外周部に近づくにつれて前記第1壁から遠ざかるように傾斜している
請求項1に記載のガスコンロ。
【請求項3】
前記突出部と複数の前記区画壁との間には、段差部が設けられ、
前記段差部と複数の前記区画壁とによって、前記第1ガス流路及び前記第2ガス流路を流れるガスを前記内側火移り炎孔溝に導く第3ガス流路が構成される
請求項1又は請求項2に記載のガスコンロ。
【請求項4】
前記段差部は、前記窪み部の内壁部と前記突出部との間に構成される空間を上方側から覆う
請求項3に記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるガスバーナは、6つの火移り部71~76が、筒状壁15の中心部を基準として周方向に60°ピッチ毎に夫々設けられている。火移り部71~76は、ガスバーナ1がコンロに設置されたときの五徳に設けられた6本の五徳爪に夫々対応する所定部位とされている。更に、特許文献1のガスバーナは、火移り部74において位置決め用の突起16が垂直に設けられている。突起16は、バーナ本体2の座面2Aに設けられた位置決め用の穴(図示略)に上方から嵌合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-20706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のガスバーナでは、位置決め用の突起16が設けられる火移り部74付近では、突起16によって燃料ガスの流れが阻害されやすいという問題がある。突起16によって燃料ガスの流れが阻害されてしまうと、突起16の径方向外側に設けられる炎孔において着火しにくくなる。
【0005】
本開示は、バーナキャップの突出部をバーナ本体の窪み部に入り込ませて位置決めを行うガスコンロにおいて突出部の径方向外側の炎光溝付近の着火性を高めることを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つであるガスコンロは、
ガスを供給するバーナ本体と、
筒部と、前記筒部から張り出すフランジ部とを備え、前記バーナ本体に装着されるバーナキャップと、
を有するガスコンロであって、
前記バーナ本体は、前記フランジ部と対向する環状の対向面を有する上面部と、前記上面部に対して窪んだ構成をなす窪み部と、を備え、
前記バーナキャップは、前記フランジ部の下面部に設けられる複数の炎孔溝と、前記下面部に設けられるとともに前記窪み部に入り込む突出部と、を備え、
前記複数の炎孔溝は、前記対向面とともに主炎孔を構成する複数の主炎孔溝と、前記対向面とともに火移り炎孔を構成する複数の火移り炎孔溝と、を含み、
前記複数の火移り炎孔溝のうちの一部には、前記フランジ部の周方向において前記突出部の一方側に配置される第1壁と、前記周方向において前記突出部の他方側に配置される第2壁と、前記周方向において前記第1壁と前記第2壁との間に配置される複数の区画壁と、が設けられ、
前記複数の火移り炎孔溝のうち第1火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁のうちの一の区画壁と前記第1壁とを備え、
前記複数の火移り炎孔溝のうち第2火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁のうちの他の区画壁と前記第2壁とを備え、
前記複数の火移り炎孔溝のうち内側火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁を備え、
前記第1壁における前記突出部側の第1内壁を含む第1ガス流路が、前記第1火移り炎孔溝及び前記内側火移り炎孔溝に通じるガスの流路であり、
前記第2壁における前記突出部側の第2内壁を含む第2ガス流路が、前記第2火移り炎孔溝及び前記内側火移り炎孔溝に通じるガスの流路であり、
前記フランジ部の外周部には、前記第1火移り炎孔溝、前記第2火移り炎孔溝、及び前記内側火移り炎孔溝の出口が設けられ、
前記第1内壁は前記外周部に近づくつれて前記第2壁に近づくように傾斜し、
前記第2内壁は前記外周部に近づくつれて前記第1壁に近づくように傾斜している。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術によれば、バーナキャップの突出部をバーナ本体の窪み部に入り込ませて位置決めを行うガスコンロにおいて突出部の径方向外側の炎光溝付近の着火性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のガスコンロを概略的に例示する斜視図である。
図2図2は、第1実施形態のガスコンロに用いられるガスバーナを例示する斜視図である。
図3図3は、図2のガスバーナについて主炎孔の位置を通り中心軸線を通る位置で切断した切断面を概略的に例示する断面図である。
図4図4は、図2のガスバーナにおいてカバー体を省略した構成について、保炎孔の位置を通り中心軸線を通る位置(図7のB-B位置)で切断した切断面を概略的に例示する断面図である。
図5図5は、図2のガスバーナの一部を分解して示す分解斜視図である。
図6図6は、図2のガスバーナのバーナキャップ本体を下方側から見た斜視図である。
図7図7は、図6のバーナキャップ本体の底面図である。
図8図8は、図2のガスバーナにおいてカバー体を省略した構成について、突出部及び内側火移り炎孔溝の位置を通り中心軸線を通る位置(図7のC-C位置)で切断した切断面を概略的に例示する断面図である。
図9図9は、図8の一部を拡大して示す拡大図である。
図10図10は、図6の斜視図における突出部付近を拡大して示す拡大図である。
図11図11は、図7の底面図における突出部付近を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔4〕の特徴は、矛盾しない組み合わせでどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕 ガスを供給するバーナ本体と、
筒部と、前記筒部から張り出すフランジ部とを備え、前記バーナ本体に装着されるバーナキャップと、
を有するガスコンロであって、
前記バーナ本体は、前記フランジ部と対向する環状の対向面を有する上面部と、前記上面部に対して窪んだ構成をなす窪み部と、を備え、
前記バーナキャップは、前記フランジ部の下面部に設けられる複数の炎孔溝と、前記下面部に設けられるとともに前記窪み部に入り込む突出部と、を備え、
前記複数の炎孔溝は、前記対向面とともに主炎孔を構成する複数の主炎孔溝と、前記対向面とともに火移り炎孔を構成する複数の火移り炎孔溝と、を含み、
前記複数の火移り炎孔溝のうちの一部には、前記フランジ部の周方向において前記突出部の一方側に配置される第1壁と、前記周方向において前記突出部の他方側に配置される第2壁と、前記周方向において前記第1壁と前記第2壁との間に配置される複数の区画壁と、が設けられ、
前記複数の火移り炎孔溝のうち第1火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁のうちの一の区画壁と前記第1壁とを備え、
前記複数の火移り炎孔溝のうち第2火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁のうちの他の区画壁と前記第2壁とを備え、
前記複数の火移り炎孔溝のうち内側火移り炎孔溝は、前記複数の区画壁を備え、
前記第1壁における前記突出部側の第1内壁を含む第1ガス流路が、前記第1火移り炎孔溝及び前記内側火移り炎孔溝に通じるガスの流路であり、
前記第2壁における前記突出部側の第2内壁を含む第2ガス流路が、前記第2火移り炎孔溝及び前記内側火移り炎孔溝に通じるガスの流路であり、
前記フランジ部の外周部には、前記第1火移り炎孔溝、前記第2火移り炎孔溝、及び前記内側火移り炎孔溝の出口が設けられ、
前記第1内壁は前記外周部に近づくつれて前記第2壁に近づくように傾斜し、
前記第2内壁は前記外周部に近づくつれて前記第1壁に近づくように傾斜している
ガスコンロ。
【0011】
〔1〕に記載のガスコンロは、第1壁における突出部側の第1内壁を含む第1ガス流路が、第1火移り炎孔溝及び内側火移り炎孔溝に通じるガスの流路とされており、第2壁における突出部側の第2内壁を含む第2ガス流路が、第2火移り炎孔溝及び内側火移り炎孔溝に通じるガスの流路とされている。そして、第1内壁はフランジ部の外周部に近づくつれて第2壁に近づくように傾斜し、第2内壁はフランジ部の外周部に近づくつれて第1壁に近づくように傾斜している。このような構成であるため、突出部の付近において、第1内壁側から流れ込むガスをできるだけ第2壁側に寄せて突出部の径方向外側に導くことができ、第2内壁側から流れ込むガスをできるだけ第1壁側に寄せて突出部の径方向外側に導くことができる。よって、バーナキャップの突出部をバーナ本体の窪み部に入り込ませて位置決めを行うガスコンロにおいて、突出部の裏側(径方向外側)にガスを回り込ませやすくなり、突出部の径方向外側の炎光溝付近の着火性を高めることができる。
【0012】
〔2〕 前記第1壁において前記第1火移り炎孔溝を構成する第3内壁は、前記第1内壁よりも前記外周部側に設けられ且つ前記外周部に近づくにつれて前記第2壁から遠ざかるように傾斜し、
前記第2壁において前記第2火移り炎孔溝を構成する第4内壁は、前記第2内壁よりも前記外周部側に設けられ且つ前記外周部に近づくにつれて前記第1壁から遠ざかるように傾斜している
〔1〕に記載のガスコンロ。
【0013】
〔2〕に記載のガスコンロは、突出部の付近において第1内壁側から流れ込むガスを第1内壁によって突出部の径方向外側に導き、第1内壁を通過した後には、ガスの流れを第2壁から遠ざかる側にも広げることができる。同様に、突出部の付近において第2内壁側から流れ込むガスを第2内壁によって突出部の径方向外側に導き、第2内壁を通過した後には、ガスの流れを第1壁から遠ざかる側にも広げることができる。よって、第1内壁付近及び第2内壁付近を通るガスを突出部の径方向外側のみに集中させるのではなく、ある程度の広がりをもって流すことができるため、より広い範囲にわたってより均一的に着火性を高めることができる。
【0014】
〔3〕 前記突出部と複数の前記区画壁との間には、段差部が設けられ、
前記段差部と複数の前記区画壁とによって、前記第1ガス流路及び前記第2ガス流路を流れるガスを前記内側火移り炎孔溝に導く第3ガス流路が構成される
〔1〕又は〔2〕に記載のガスコンロ。
【0015】
〔3〕に記載のガスコンロは、第1ガス流路及び第2ガス流路を流れるガスが第3ガス流路によって内側火移り炎孔溝に導かれやすいため、内側火移り炎孔溝付近の着火性をより高めることができる。
【0016】
〔4〕 前記段差部は、前記窪み部の内壁部と前記突出部との間に構成される空間を上方側から覆う
〔3〕に記載のガスコンロ。
【0017】
〔4〕に記載のガスコンロは、突出部付近を流れるガスが窪み部付近に流れ込むことを抑えることができ、窪み部付近を通って内側火移り炎孔溝付近に過度にガスが流れることを抑制しやすい。
【0018】
<第1実施形態>
以下では、第1実施形態のガスコンロ用のガスバーナ4、5、6を備えたガスコンロ1等が説明される。
【0019】
1.ガスコンロの概要
図1で示されるガスコンロ1は、例えば、キャビネット(図1では図示省略)に組み込まれるビルトインコンロである。ガスコンロ1は、ガスバーナ(コンロバーナ)4,5,6、筐体2、天板3、グリル部8、などを備える。
【0020】
以下の説明では、図1で示されるガスコンロ1において、板状に構成された天板3の板面方向のうち第1方向が前後方向である。上記板面方向は、天板3の上面をなす所定の平坦面と平行な平面方向である。以下で説明される代表例(図1等)では、天板3を平面視したときの短手方向が第1方向であり前後方向である。上記代表例(図1等)では、天板3の上記板面方向のうち、上記第1方向と直交する第2方向が左右方向である。上記代表例(図1等)では、天板3を平面視したときの長手方向が第2方向であり左右方向である。上記前後方向と直交する方向且つ上記左右方向と直交する方向が上下方向となっている。上記代表例(図1等)では、天板3の板厚方向が第3方向であり上下方向となっている。
【0021】
図1に示される筐体2は、例えば公知の金属材料を主体として構成される。筐体2は、ガスコンロ1の外郭部を構成する。筐体2は、ガスバーナ4,5,6やその他の部品の一部又は全部を収容する。筐体2は、左右方向両側に一対の側壁部を備え、これら一対の側壁部の後端部に連結される形で後壁部(図1では図示省略)が設けられる。筐体2の前面部(図1では図示省略)は、フレーム状又は壁状に構成されており、例えば、上述の一対の側壁部に架け渡される形で配置されるフレーム部などを有する。さらに、これら前面部、一対の側壁部、後壁部の下部には底壁部(図1では図示省略)が連結されている。筐体2は、これら前面部、一対の側壁部、後壁部、底壁部によって自身の内部空間が囲まれる構成をなし、上端部が開口した箱状形態をなしている。
【0022】
図1に示される天板3は、筐体2の上端部に固定される。天板3は、筐体2の上端部の開口を部分的又は全体的に閉塞する構成で筐体2上に配置される。天板3は、平面視矩形状の板状形態をなしている。天板3には、ガスバーナ4,5,6を露出させるための複数個の開口部(貫通孔)3A,3B,3Cが設けられている。
【0023】
図1に示されるガスバーナ4,5,6は、天板3に形成された各開口部3A,3B,3Cにそれぞれ対応するように設けられている。天板3における右端寄りかつ前端寄りの位置に設けられた開口部3Aに挿入される形態でガスバーナ4が配置されている。天板3における左端寄りかつ前端寄りの位置に設けられた開口部3Bに挿入される形態でガスバーナ5が配置されている。天板3における左右方向中央部且つ後端寄りの位置に設けられた開口部3Cに挿入される形態でガスバーナ6が配置されている。筐体2の左右方向中央部付近には、グリル部8が設けられている。グリル部8は、箱状に構成されたグリル庫(図1では、詳細な図示は省略)、グリル庫を開閉するグリル扉8A、ガスバーナとして構成されるとともにグリル庫内に配置されるグリルバーナ(図1では、詳細な図示は省略)、などを備える。
【0024】
図1のように、ガスコンロ1の前面部においてガスコンロ1の右端寄りの位置には、2つの点火ボタン11,14が設けられている。ガスコンロ1の前面部においてガスコンロ1の左端寄りの位置には、2つの点火ボタン12,13が設けられている。点火ボタン11は、ガスバーナ4の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。点火ボタン12は、ガスバーナ5の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。点火ボタン13は、ガスバーナ6の点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。点火ボタン14は、グリル部8のガスバーナの点火操作及び消火操作を行うための操作ボタンである。各点火ボタン11,12,13,14は、前方側から視認可能な構成かつ前方側からの操作が可能な構成で配置されている。各点火ボタン11,12,13,14のいずれも、前方側に突出した突出位置と突出位置よりも後方側に退避した後退位置とに変位可能に構成されている。各点火ボタン11,12,13,14のいずれも、回転可能に構成され、各点火ボタン11,12,13,14の回転位置によって各々のボタンに対応するガスバーナの火力が調整される。
【0025】
天板3に設けられた複数の開口部3A,3B,3Cは貫通孔である。開口部3A内には、ガスバーナ4の頭部を構成するバーナキャップ21が配置される。開口部3B内には、ガスバーナ5の頭部を構成するバーナキャップ22が配置される。開口部3C内には、ガスバーナ6の頭部を構成するバーナキャップ20が配置される。2つのバーナキャップ21,22は互いに同一の構成をなす。バーナキャップ21,22とバーナキャップ20は、サイズが異なる点以外は同様の構成をなす。天板3上には、各バーナキャップ20,21,22をそれぞれ囲むように金属製の五徳7がそれぞれ設けられている。
【0026】
2.ガスバーナの概要
以下では、主に、ガスバーナ6の構成及び動作について詳述される。
図2図5のように、ガスバーナ6は、バーナ本体6Aと、バーナ本体6Aに装着されるバーナキャップ20と、を備える。図1のように、ガスバーナ6は、筐体2内で支持されつつ、筐体2に対して直接的に又は他部材を介して間接的に固定される。ガスバーナ6は、開口部3Cを介して天板3の上側及び下側に跨っている。
【0027】
図2図5に示されるバーナ本体6Aは、燃焼ガスを供給するための部品であり、バーナキャップ20を下方側から支持しつつバーナキャップ20を保持する部品でもある。バーナ本体6Aは、自身の外部に設けられた燃焼ガスの流路からバーナキャップ20に向けて燃焼ガスを供給する経路(流路)を構成する部品でもある。図3のように、バーナ本体6Aは、主に、円筒状の下方配置部6Bと、下方配置部6Bに連結されるスロート部6Cとを備える。下方配置部6Bは、バーナキャップ20に対して下方側から対向する部分である。下方配置部6Bは、自身の内部に混合気室6Zを形成する部分であり、混合気室6Z内の空間の外側を囲む構成をなす。下方配置部6Bは、例えば、バーナキャップ本体30のフランジ部32を受けて支持する。スロート部6Cは、下方配置部6Bから延びる筒状の部分であり、気体を流動させる管路を構成する部分である。スロート部6Cは、燃料ガスと燃焼用空気とを混合させる混合管として機能する。図3に示される混合気室6Zは、スロート部6C(図2)の内部と連通する。混合気室6Zは、スロート部6Cを介して供給される燃料ガスと燃焼用空気とを混合する空間を構成する。混合気室6Z内の燃焼ガスは、バーナキャップ20の径方向外側に広がり、各炎孔70を通ってフランジ部32の外周部から放出される。炎孔70は、具体的には、主炎孔71、火移り炎孔72、保炎孔73のいずれかである。
【0028】
図2図5に示されるバーナキャップ20は、バーナヘッドとして機能する。図3のように、バーナキャップ20は、バーナ本体6Aに装着される部品であり、下方配置部6Bの上方に配置される部品である。バーナキャップ20は、全体として環状に構成されている。バーナキャップ20は、環状のバーナキャップ本体30と、バーナキャップ本体30に固定されるカバー体40と、を備える。バーナキャップ20は、バーナキャップ本体30とカバー体40とが互いに組み付けられる。バーナキャップ本体30は、自身の外周部に炎孔溝110が形成された部品である。カバー体40は、バーナキャップ本体30を覆う部品である。図1に示されるように、いずれかの炎孔溝110の近傍には、点火用の電極10と火炎検出用の熱電対(図示略)と、が設けられている。図2図5等では、一部の炎孔溝110の符号のみが図示されているが、炎孔溝110は、バーナキャップ本体30の周方向全体にわたって多数形成されている。
【0029】
図2図4のように、下方配置部6B及びバーナキャップ20の中央を貫通するように温度センサ9が配置されている。温度センサ9は、五徳7上に載置される調理器具(調理鍋等)の底に接触してこの調理器具底部の温度を検知するように機能する。図3図4では、温度センサ9以外の部品が断面で示されており、温度センサ9は、側面視した構成が概略的に示される。
【0030】
図1に示されるガスコンロ1では、例えば、点火ボタン13に対して点火操作(押圧操作)がなされると、図2図4に示されるバーナ本体6Aに対し、一次空気と共に燃料ガスが供給され、混合気となってバーナ本体6Aに装着されたバーナキャップ20の多数の炎孔溝110から流出する。点火ボタン13に対して点火操作(押圧操作)がなされると、ガスコンロ1の内部に設けられた図示しないコントローラが、図2図4に示されるバーナキャップ20に近接する電極10をスパークさせて混合気に点火し、このバーナキャップ20の周囲に火炎を生じさせる。これにより、バーナキャップ20の周囲の五徳7上に載置される調理器具の底部を加熱することができ、加熱調理が可能となる。
【0031】
3.バーナ本体の詳細
図2図5のように、バーナ本体6Aは、下方配置部6Bとスロート部6Cとが一体的に連結された構成をなす。下方配置部6Bは、円筒状の台であり、バーナキャップ20が装着される台である。下方配置部6Bは、円筒状部60と下方連結部74とを備える。
【0032】
図5のように、円筒状部60は、円筒状とされており、バーナ本体6Aの上端部側を構成する。円筒状部60は、混合気室6Zの外側の内壁部を構成する部分である。円筒状部60は、内周壁部62と、外周壁部64と、上面部66とを備える。内周壁部62は、円筒状に構成され、混合気室6Zの外側の内壁部を構成する。内周壁部62の内周面は、図3に示される所定の中心軸線Gを中心とする円筒面である。外周壁部64は、内周壁部62を囲む構成で円筒状に構成されている。上面部66は、内周壁部62の上端部と外周壁部64の上端部とを連結する。上面部66は、バーナ本体6Aの上端部を構成する。上面部66は、円環状に配置されている。上面部66には、対向面66Aが設けられている。上面部66は、各炎孔70の一部を構成する部分である。対向面66Aは、バーナキャップ20のフランジ部32(環状部)と対向する環状の面である。対向面66Aは、フランジ部32の下面部35と向かい合って配置される面であり、より具体的には、少なくとも溝構成部35Bと向かい合って配置される面である。そして、対向面66Aは、各炎孔溝110に対向して配置される。対向面66Aは、各炎孔70(主炎孔71、火移り炎孔72、保炎孔73)の内面の一部を構成する。対向面66Aは、中心軸線Gを中心とする円環状に配置されている。対向面66Aは、内側(内周壁部62側)となるにつれて下位置となるような傾斜面であり、全体としてすり鉢状に構成されている。対向面66Aは、下位置となるほど中心軸線Gを中心とする径(直径)が小さい。対向面66Aは、バーナキャップ本体30のフランジ部32を下方側から支持する支持面として機能することが望ましい。
【0033】
円筒状部60の下方には、円筒状部60に連結される下方連結部74が設けられている。下方連結部74は、内周壁部62に連結される環状の外側壁部75と、外側壁部75の下端部に連結される底壁部78と、底壁部78から上方に立ち上がる円筒状の支持筒76とを備える。外側壁部75の上端部は、内周壁部62の下端部に連結され、外側壁部75と内周壁部62とによって混合気室6Zの外側の内壁部(環状壁部)が構成される。底壁部78は、混合気室6Zの底壁として機能する。支持筒76は、上下方向において内周壁部62の内側の領域と外側壁部75の内側の領域とに跨って配置されている。支持筒76は、中心軸線Gを中心とする円筒状をなし、上端部が開口した形態をなす。支持筒76に対し、バーナキャップ本体30の筒部31が上方側から挿入された構成をなす。筒部31と支持筒76とによって混合気室6Zの内側の内壁部(環状壁部)が構成される。外側壁部75は、スロート部6Cと一体的に構成されている。外側壁部75の内部空間(混合気室6Z内の空間)は、スロート部6Cの内部空間から気体が流入可能とされている。
【0034】
4.バーナキャップの詳細
次の説明は、バーナキャップ20の詳細構成に関する。
図2図5のように、バーナキャップ本体30は、バーナ本体6Aに対して上方側から装着される。バーナキャップ本体30は、バーナ本体6Aに装着される。カバー体40は、バーナキャップ本体30を覆うようにバーナキャップ本体30の上方に配置され、バーナキャップ本体30に固定される。バーナキャップ本体30は、筒状をなす。バーナキャップ本体30は、例えばアルミダイカスト等の金属材料によって構成されている。バーナキャップ本体30は、円筒状に構成された筒部31と、筒部31の上端側の部位から張り出すフランジ部32と、を備える。
【0035】
図3のように、筒部31は、所定の中心軸線Gを円筒の中心とするように円筒状に構成され、中心軸線Gに沿うように中心軸線Gの方向に延びている。中心軸線Gの方向は、例えば上下方向である。図3の例では、筒部31が延びる方向が上下方向となっている。筒部31の内周面は、中心軸線Gを中心とする円筒面又は中心軸線Gを中心とする円筒面に沿った環状の面として構成されている。筒部31の外周面も、中心軸線Gを中心とする円筒面又は中心軸線Gを中心とする円筒面に沿った環状の面として構成されている。筒部31の上端部は、バーナキャップ20の上端部の開口部を構成する。筒部31の下端部は、バーナキャップ20の下端部の開口部を構成する。バーナキャップ本体30の中央部には、上下に延びる貫通孔36が形成されている。貫通孔36内は、上下方向に気体を通過させ得る構成をなす。筒部31の内周部は、貫通孔36を構成し、バーナキャップ20の上端部から下端部に続く孔部として機能する。
【0036】
図3のように、フランジ部32は、筒部31における上端寄りの部分から中心軸線Gを中心とする半径方向外側に張り出す鍔状の部分(張出部)として構成されている。中心軸線Gを中心とする半径方向は、中心軸線Gを通り且つ中心軸線Gと直交する各方向である。本明細書では、中心軸線Gを中心とする半径方向を、単に径方向とも称する。フランジ部32は、環状部の一例に相当する。フランジ部32は、筒部31の上端側の部分に連結され、当該上端側の部分から中心軸線Gを中心とする半径方向外側に張り出す部分として構成されている。フランジ部32と筒部31は、例えば同一の金属材料によって一体的に構成されている。フランジ部32には上面部34が設けられている。上面部34は、フランジ部32における上側の板面を構成する部分である。上面部34には、カバー体40の第2突出部43が接触する。上面部34の表面(上面)は、中心軸線Gと直交する平面に沿った環状の面である。フランジ部32の下面部35には、複数の炎孔溝110が設けられている。図3のようにバーナキャップ20がバーナ本体6Aに装着された状態では、フランジ部32の下面部35は、バーナ本体6Aの対向面66Aと対向して配置される。図3の装着状態では、フランジ部32の下面部35が対向面66Aと接触するように載置されていることが望ましい。
【0037】
図3図5のように、カバー体40は、円形の環状板として構成される。カバー体40は、金属製(例えばステンレス製)である。図2図3図5のように、カバー体40は、本体部41と、第1突出部42と、第2突出部43と、を有する。カバー体40は、本体部41と第1突出部42と第2突出部43とが同一材料によって一体的に形成されている。
【0038】
図3図5のように、本体部41は、バーナキャップ本体30のフランジ部32を上方から覆う円形の環状板として構成されている。図3のように、第1突出部42は、例えば、金属加工(折り曲げ加工等)によって本体部41から折り曲げられた構成をなす。第2突出部43は、例えば、金属加工(折り曲げ加工等)によって本体部41から折り曲げられた構成をなす。カバー体40は、表面処理(例えば、バレル研磨など)が施され、滑らか且つ光沢のある構成となっている。カバー体40の中心部には、バーナキャップ本体30の貫通孔36とほぼ同程度の径の貫通孔44が、本体部41の厚さ方向に貫通する構成で設けられている。貫通孔44は、上述の貫通孔36の内部空間の上方に続くように、貫通孔36と連通して配置される。
【0039】
図3図5のように、第1突出部42は、本体部41における円形状の内縁部から下方に突出している。第1突出部42の突出長さは、第2突出部43の突出長さより大きい。第1突出部42は、円筒状である。第1突出部42は、筒部31内に挿入されている。第1突出部42は、筒部31の内周部39に接触しつつ筒部31に固定される。具体的には、筒部31の内周部39に凹部50が設けられており、第1突出部42の一部をなす引っ掛かり部47が凹部50内に入り込みつつ凹部50に引っ掛かる構成で、第1突出部42が筒部31から抜けないようになっている。このような構成で、カバー体40がバーナキャップ本体30に固定さる。
【0040】
5.突出部付近の構成
図5のように、バーナ本体6Aは、フランジ部32と対向する環状の対向面66Aを有する上面部66と、上面部66に対して窪んだ構成をなす窪み部66Zと、を備える。対向面66Aは、フランジ部32が載置される載置面である。対向面66Aには、フランジ部32の下面部35が接触する。下面部35は、フランジ部32の下面を構成する部分である。対向面66Aは、すり鉢状のテーパ面であり、上位置になるにつれて径(中心軸線Gを中心とする直径)が大きくなる上広がりの形状をなす。
【0041】
窪み部66Zは、上面部66に形成されるとともに内周壁部62に形成される。窪み部66Zは、上面部66において下側に凹んだ凹部として構成され、内周壁部62において上下方向に延びる溝部として構成される。窪み部66Zは、突出部160が嵌り込む凹部であって溝部であり、突出部160が嵌り込んだときに突出部160が中心軸線Gを中心とする周方向に回転することを規制する。突出部160が窪み部66Zに嵌り込んだ装着状態(バーナキャップ20がバーナ本体6Aに装着された状態)では、突出部160は、上下方向に沿った姿勢を保ちながら上方側に移動することが許容され、上記周方向に回転することや下方に移動することは規制(禁止)される。従って、窪み部66Zは、バーナキャップ20がバーナ本体6Aに装着された状態で、バーナキャップ20が中心軸線Gを中心として回転することを規制する。窪み部66Zの凹みは、上面部66と内周壁部62とに跨る。窪み部66Zは、対向面66Aから下方に窪んだ形態をなし、内周壁部62において、径方向外側に向かって窪んだ形態をなす。
【0042】
図6図7に示されるように、バーナキャップ20は、複数の炎孔溝110と、突出部160と、を備える。複数の炎孔溝110は、フランジ部32の下面側において内側(筒部31側)から外側(外周部33側)へとガスを流す溝として構成されている。複数の炎孔溝110は、フランジ部32の下面部35に設けられ、中心軸線Gを中心とする径方向に延びる溝又は径方向に対して若干傾斜した方向に延びる溝として構成される。各炎孔溝110は、中心軸線G側から外周部33側へガスを流し得る溝であり、周方向に対向する2つの壁部と、上側の壁部とを有し、下方側が開放した溝である。各炎孔溝110は、環状部35Aの下側の空間と外周部33の外側の空間とを連通させ、これらの空間の間で気体を流す。各炎孔溝110は、各炎孔70の一部を構成する。各炎孔溝110の下方を塞ぐように下面部35が配置されることで、各炎孔70が構成される。各炎孔70は、中心軸線G側から外周部33側へガスを流す流路である。各炎孔70は、環状部35Aの下側の空間と外周部33の外側の空間とを連通させ、これらの空間の間で気体を流す流路である。環状部35Aの下側の空間(混合気室6Z内の空間)に存在する気体は、各炎孔70を通って外周部33から放出されるようになっている。
【0043】
図6図7に示されるように、フランジ部32の下面部35は、筒部31の周りにおい筒部31に連結されつつ筒部31から張り出す環状部35Aと、環状部35Aの周りにおいて環状に設けられる溝構成部35Bとを有する。環状部35Aは、環状に構成され、炎孔溝110が形成されていない非形成領域とされている。溝構成部35Bは、下面部35において環状部35Aと外周部33との間に設けられ、下方側に突出する多数の凸部を備えた構成をなす。複数の炎孔溝110は、筒部31から離れた領域において周方向に多数並んでいる。各々の炎孔溝110は、下側が開放しており、下側の開放が対向面66Aによって塞がれる構成をなす。図6図7図10に示されるように、複数の炎孔溝110は、対向面66Aとともに主炎孔71を構成する複数の主炎孔溝120と、対向面66Aとともに火移り炎孔72を構成する複数の火移り炎孔溝130と、対向面66Aとともに保炎孔73を構成する複数の保炎孔溝128を含む(図2図5図8等も参照)。
【0044】
炎孔溝110のうち、主炎孔溝120は、バーナ本体6Aから供給されるガスをフランジ部32の中心側から外側に向かって誘導する経路をなす溝である。図2図3のように、主炎孔溝120は、バーナ本体6Aの対向面66Aとの間で主炎孔71を構成する。具体的には、各主炎孔溝120と上面部66とによって各主炎孔71が構成される。各主炎孔溝120の内壁面と対向面66Aとによって各主炎孔71の内壁面が構成される。
【0045】
炎孔溝110のうち、保炎孔溝128は、バーナ本体6Aから供給されるガスをフランジ部32の中心側から外側に向かって誘導する経路をなす溝である。保炎孔溝128の上下の大きさ(深さ)は、主炎孔溝120の上下の大きさ(深さ)よりも小さい。図2図4のように、保炎孔溝128は、バーナ本体6Aの対向面66Aとの間で保炎孔73を構成する。具体的には、各保炎孔溝128と上面部66とによって各保炎孔73が構成される。各保炎孔溝128の内壁面と対向面66Aとによって各保炎孔73の内壁面が構成される。
【0046】
炎孔溝110のうち、火移り炎孔溝130は、2つの主炎孔溝120の間に設けられ、対向面66Aとの間で火移り炎孔72を構成する溝である。具体的には、各火移り炎孔溝130と上面部66とによって各火移り炎孔72が構成される。各火移り炎孔溝130の内壁面と対向面66Aとによって各火移り炎孔72の内壁面が構成される。火移り炎孔72は、自身の両側(周方向両側)に配置される2つの主炎孔71の間において一方の主炎孔71付近で生じた炎を他方の主炎孔71側に移す炎が生じるようにガスを放出する炎孔である。火移り炎孔溝130の上下の溝の大きさ(溝の深さ)は、主炎孔溝120の上下の溝の大きさ(溝の深さ)よりも小さい。具体的には、いずれの火移り炎孔溝130に着目した場合でも、火移り炎孔溝130の溝の最大の深さは、自身の周方向一方側において自身に最も近い主炎孔溝120の溝の最大深さよりも小さく、自身の周方向他方側において自身に最も近い主炎孔溝120の溝の最大深さよりも小さい。
【0047】
図6図8図9のように、突出部160は、下面部35において下方側に突出するように設けられた突起である。突出部160の下方側への突出の大きさは、複数の炎孔溝110を構成する各壁部の下側への突出の大きさよりも大きい。突出部160の下端位置は、複数の炎孔溝110の最下端の位置よりも下方位置である。突出部160は、バーナキャップ20がバーナ本体6Aに取り付けられた状態において窪み部66Zに入り込んで配置される。バーナキャップ20がバーナ本体6Aに取り付けられた状態では、支持筒76内に筒部31が挿入されるため、筒部31が径方向(中心軸線Gを中心とする半径方向)に移動することが規制される。つまり、バーナキャップ20がバーナ本体6Aに取り付けられた状態では、バーナキャップ20が水平方向(中心軸線Gと直交する平面方向)に移動しない移動規制状態となる。更に、突出部160が窪み部66Zに嵌り込むため、支持筒76内で筒部31が中心軸線Gの周りで回転することが規制され、バーナキャップ20が中心軸線Gの周りで回転しないように位置決めされる。
【0048】
図10図11の例では、第1火移り炎孔溝131、第2火移り炎孔溝132、内側火移り炎孔溝133が、複数の火移り炎孔溝130のうちの一部である。第1火移り炎孔溝131、第2火移り炎孔溝132、内側火移り炎孔溝133は、突出部160の径方向外側の火移り炎孔溝群を構成し、これら火移り炎孔溝群は、フランジ部32の周方向において突出部160の一方側に配置される第1壁141と、上記周方向において突出部160の他方側に配置される第2壁142と、上記周方向において第1壁141と第2壁142との間に配置される複数の区画壁144と、を備える。第1火移り炎孔溝131、第2火移り炎孔溝132、内側火移り炎孔溝133は、フランジ部32の周方向において、第1の主炎孔溝120Xと第2の主炎孔溝120Yの間に設けられ、これらのうちの一方で生じた炎を他方に移す炎が生じるようにガスを放出する炎孔である。フランジ部32の周方向とは、フランジ部32における外周部33の面(外周面)に沿った方向である。例えば、フランジ部32において複数存在する主炎孔溝120の上端位置(複数存在する主炎孔溝120の最も上位置)を通り且つ中心軸線Gと直交する仮想平面を定めた場合において、当該仮想平面において中心軸線Gを中心とし且つ外周部33の面(外周面)の位置を通る仮想円(複数の仮想円が設定できる場合には最も大きい仮想円)を規定した場合、この仮想円の方向(円周方向)をフランジ部32の周方向としてもよい。
【0049】
図10図11のように、複数の区画壁144は、一の区画壁144Aと他の区画壁144Bとを備える。一の区画壁144Aと第1壁141とを構成要素として第1火移り炎孔溝131が構成される。第1火移り炎孔溝131は、一の区画壁144Aと第1壁141とが互いに離間して配置され且つ一の区画壁144Aと第1壁141との間を連結する上壁部(溝内の上壁)を有する溝であり、一の区画壁144Aと第1壁141との間で、出口131Aに向かってガスが流れる流路として構成される。出口131Aは、第1壁141における径方向外側の端部と、一の区画壁144Aにおける径方向外側の端部とを含んで構成される排出口である。他の区画壁144Bと第2壁142とを構成要素として第2火移り炎孔溝132が構成される。第2火移り炎孔溝132は、他の区画壁144Bと第2壁142とが互いに離間して配置され且つ他の区画壁144Bと第2壁142との間を連結する上壁部(溝内の上壁)を有する溝であり、他の区画壁144Bと第2壁142との間で、出口132Aに向かってガスが流れる流路として構成される。出口132Aは、第2壁142における径方向外側の端部と、他の区画壁144Bにおける径方向外側の端部とを含んで構成される排出口である。一の区画壁144Aと他の区画壁144Bとを構成要素として内側火移り炎孔溝133が構成される。内側火移り炎孔溝133は、一の区画壁144Aと他の区画壁144Bとが互いに離間して配置され且つ一の区画壁144Aと他の区画壁144Bとの間を連結する上壁部(溝内の上壁)を有する溝であり、出口133Aに向かってガスが流れる流路として構成される。出口133Aは、一の区画壁144Aにおける径方向外側の端部と、他の区画壁144Bにおける径方向外側の端部とを含んで構成される排出口である。
【0050】
図10図11のように、第1火移り炎孔溝131の一部を構成する第1壁141は、突出部160側の内壁である第1内壁141Aと第1内壁141Aよりも外周部33側に設けられる第3内壁141Cとを備える。第1内壁141Aの端部が第3内壁141Cの端部を構成するように第1内壁141Aと第3内壁141Cとが続いて構成されている。第1内壁141A及び第3内壁141Cは、主炎孔溝120Xの溝内の片側の内壁の裏側(周方向において反対側)に配置され、第1壁141と主炎孔溝120Xの溝内の片側の内壁とが共通の突起(下方側に突出する突起)に設けられている。この共通の突起は、第1火移り炎孔溝131の溝内の上壁及び主炎孔溝120Xの溝内の上壁に対して下方側に突出した構成をなす。第1内壁141Aは、少なくとも一部が突出部160の基端部と周方向に向かい合う。第1ガス流路151は、第1内壁141Aと、突出部160の基端部(具体的には、基端部における第1内壁141A側の部分)と、当該基端部と第1内壁141Aとの間に配置される上壁部(溝内の内壁上部)と、を備えて構成され、第1内壁141Aと突出部160の基端部との間でガスを径方向外側に流す流路である。第1ガス流路151の一部を構成する「突出部160の基端部」は、突出部160の根元の部分であり、第1内壁141Aから離れて設けられるとともに第1内壁141Aと向かい合って配置される部分であり、第1内壁141Aとの間でガスを流す溝の内壁である。第1ガス流路151は、第1火移り炎孔溝131及び内側火移り炎孔溝133に通じるガスの流路である。つまり、第1ガス流路151を流れたガスは、第1火移り炎孔溝131及び内側火移り炎孔溝133に分岐して流れる。そして、第1内壁141Aは外周部33に近づくつれて第2壁142に近づくように傾斜している。図11の例では、第1内壁141Aの向きは、径方向外側になるにつれて仮想平面Lに近づく向きである。仮想平面Lは、中心軸線Gを通り且つ突出部160の中心を通る平面である。第1ガス流路151は、一の区画壁144A側に向かって流れる向きである。第3内壁141Cは、外周部33に近づくにつれて第2壁142から遠ざかるように傾斜している。第1火移り炎孔溝131において第3内壁141Cと一の区画壁144Aとが周方向に向かい合う領域は、外周部33に近づくにつれて幅(周方向の溝幅)が大きくなっている。
【0051】
第2火移り炎孔溝132の一部を構成する第2壁142は、突出部160側の内壁である第2内壁142Bと第2内壁142Bよりも外周部33側に設けられる第4内壁142Dとを備える。第2内壁142Bの端部が第4内壁142Dの端部を構成するように第2内壁142Bと第4内壁142Dとが続いて構成されている。第2内壁142B及び第4内壁142Dは、主炎孔溝120Yの溝内の片側の内壁の裏側(周方向において反対側)に配置され、第2壁142と主炎孔溝120Yの溝内の片側の内壁とが共通の突起(下方側に突出する突起)に設けられている。この共通の突起は、第2火移り炎孔溝132の溝内の上壁及び主炎孔溝120Yの溝内の上壁に対して下方側に突出した構成をなす。第2内壁142Bは、少なくとも一部が突出部160の基端部と周方向に向かい合う。第2ガス流路152は、第2内壁142Bと、突出部160の基端部(具体的には、基端部における第2内壁142B側の部分)と、当該基端部と第2内壁142Bとの間に配置される上壁部(溝内の内壁上部)と、を備えて構成され、第2内壁142Bと突出部160の基端部との間でガスを径方向外側に流す流路である。第2ガス流路152の一部を構成する「突出部160の基端部」は、突出部160の根元の部分であり、第2内壁142Bから離れて設けられるとともに第2内壁142Bと向かい合って配置される部分であり、第2内壁142Bとの間でガスを流す溝の内壁である。第2ガス流路152は、第2火移り炎孔溝132及び内側火移り炎孔溝133に通じるガスの流路である。つまり、第2ガス流路152を流れたガスは、第2火移り炎孔溝132及び内側火移り炎孔溝133に分岐して流れる。そして、第2内壁142Bは外周部33に近づくつれて第1壁141に近づくように傾斜している。図11の例では、第2内壁142Bの向きは、径方向外側になるにつれて仮想平面Lに近づく向きである。第2ガス流路152は、他の区画壁144B側に向かって流れる向きである。第4内壁142Dは、外周部33に近づくにつれて第1壁141から遠ざかるように傾斜している。第2火移り炎孔溝132において第4内壁142Dと他の区画壁144Bとが周方向に向かい合う領域は、外周部33に近づくにつれて幅(周方向の溝幅)が大きくなっている。
【0052】
第1内壁141Aと第2内壁142Bの間隔(仮想平面Lと直交する方向の距離)は、外周部33に近づくにつれて狭くなっている。第3内壁141Cと第4内壁142Dの間隔(仮想平面Lと直交する方向の距離)は、外周部33に近づくにつれて広くなっている。
【0053】
フランジ部32の外周部33には、第1火移り炎孔溝131、第2火移り炎孔溝132、及び内側火移り炎孔溝133の各出口131A,132A,133Aが設けられる。
【0054】
図9図11のように、突出部160と複数の区画壁144との間には、段差部170が設けられる。図10図11のように、段差部170と複数の区画壁144とによって、第1ガス流路151及び第2ガス流路152を流れるガスを内側火移り炎孔溝133に導く第3ガス流路153が構成される。段差部170は、窪み部66Zの内壁部と突出部160との間に構成される空間を上方側から覆う。
【0055】
6.効果の例
ガスコンロ1は、第1壁141における突出部160側の第1内壁141Aを含む第1ガス流路151が、第1火移り炎孔溝131及び内側火移り炎孔溝133に通じるガスの流路とされており、第2壁142における突出部160側の第2内壁142Bを含む第2ガス流路152が、第2火移り炎孔溝132及び内側火移り炎孔溝133に通じるガスの流路とされている。そして、第1内壁141Aはフランジ部32の外周部33に近づくつれて第2壁142に近づくように傾斜し、第2内壁142Bはフランジ部32の外周部33に近づくつれて第1壁141に近づくように傾斜している。このような構成であるため、突出部160の付近において、第1内壁141A側から流れ込むガスをできるだけ第2壁142に寄せるように突出部160の径方向外側に導くことができ、第2内壁142B側から流れ込むガスをできるだけ第1壁141に寄せるように突出部160の径方向外側に導くことができる。よって、バーナキャップ20の突出部160をバーナ本体6Aの窪み部66Zに入り込ませて位置決めを行うガスコンロ1において、突出部160の裏側(中心軸線とは反対側の径方向外側)にガスを回り込ませやすく、突出部160の径方向外側の炎光溝付近の着火性を高めることができる。
【0056】
ガスコンロ1は、突出部160の付近において第1内壁141A側から流れ込むガスを第1内壁141Aによって突出部160の径方向外側に導き、第1内壁141Aを通過した後には、ガスの流れを第2壁142から遠ざかる側にも広げることができる。同様に、突出部160の付近において第2内壁142B側から流れ込むガスを第2内壁142Bによって突出部160の径方向外側に導き、第2内壁142Bを通過した後には、ガスの流れを第1壁141から遠ざかる側にも広げることができる。よって、第1内壁141A付近及び第2内壁142B付近を通るガスを突出部160の裏側(径方向外側)のみに集中させるのではなく、ある程度の広がりをもって流すことができるため、より広い範囲にわたってより均一的に着火性を高めることができる。133Aだけでなく、両わきの火移り炎孔に流すことができる。
【0057】
ガスコンロ1は、第1ガス流路151及び第2ガス流路152を流れるガスが第3ガス流路153によって内側火移り炎孔溝133に導かれやすいため、内側火移り炎孔溝133付近の着火性をより高めることができる。
【0058】
ガスコンロ1は、突出部160付近を流れるガスが窪み部66Z付近に流れ込むことを、段差部170の存在によって抑えることができ、窪み部66Z付近を通って内側火移り炎孔溝133付近に過度にガスが流れることを抑制しやすい。
【0059】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0060】
上述の実施形態の説明では、コンロの一例としてビルトインコンロとして構成されるガスコンロ1が例示されたが、コンロは、テーブルコンロなどの他種のコンロであってもよい。
【0061】
上述の実施形態では、複数の区画壁144が一の区画壁144Aと他の区画壁144Bとによって構成されていたが、3以上の区画壁が周方向において離間して設けられていてもよい。この場合、内側火移り炎孔溝は、3以上の区画壁において隣り合う区隔壁同士によってそれぞれ構成される形態で、2以上設けられていてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、第1内壁141Aは外周部33に近づくつれて第2壁142に近づくように直線状に傾斜した内壁面を有するが、外周部33に近づくつれて第2壁142に近づくように湾曲して傾斜した内壁面を有していてもよい。同様に、上述の実施形態では、第2内壁142Bは外周部33に近づくつれて第1壁141に近づくように直線状に傾斜した内壁面を有するが、外周部33に近づくつれて第1壁141に近づくように湾曲して傾斜した内壁面を有していてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、第3内壁141Cは、外周部33に近づくにつれて第2壁142から遠ざかるように傾斜した内壁面を有するが、外周部33に近づくつれて第2壁142から遠ざかるように湾曲して傾斜した内壁面を有していてもよい。同様に、第4内壁142Dは、外周部33に近づくにつれて第1壁141から遠ざかるように傾斜した内壁面を有するが、外周部33に近づくつれて第1壁141から遠ざかるように湾曲して傾斜した内壁面を有していてもよい。
【0064】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 :ガスコンロ
4 :ガスバーナ
5 :ガスバーナ
6 :ガスバーナ
6A :バーナ本体
20 :バーナキャップ
21 :バーナキャップ
22 :バーナキャップ
31 :筒部
32 :フランジ部
33 :外周部
35 :下面部
66 :上面部
66A :対向面
66Z :窪み部
70 炎孔
71 主炎孔
72 火移り炎孔
110 炎孔溝
120 主炎孔溝
130 火移り炎孔溝
131 第1火移り炎孔溝
131A 出口
132 第2火移り炎孔溝
132A 出口
133 内側火移り炎孔溝
133A 出口
141 第1壁
141A 第1内壁
141C 第3内壁
142 第2壁
142B 第2内壁
142D 第4内壁
144 区画壁
144A 一の区画壁
144B 他の区画壁
151 第1ガス流路
152 第2ガス流路
153 第3ガス流路
160 突出部
170 段差部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11