(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G16B 25/00 20190101AFI20241206BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20241206BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
G16B25/00
C12Q1/6886 Z
C40B40/08
(21)【出願番号】P 2023527761
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 KR2021016455
(87)【国際公開番号】W WO2022103175
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0149990
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514260642
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジョン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ジュ ナ
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/195357(WO,A1)
【文献】特表2019-517577(JP,A)
【文献】特表2018-527008(JP,A)
【文献】特表2019-530456(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0143043(KR,A)
【文献】国際公開第2020/185010(WO,A1)
【文献】J. K. Leeほか,"Systemic surfaceome profiling indentifies target antigens for immune-based therapy in subtypes of advanced prostate cancer",Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America [online],2018年04月23日,第115巻, 第19号,P. E4473-E4482
【文献】T. L. Camposほか,"An evaluation fo machine learning approaches for the prediction of essential genes in eularyotes using protein sequence-dericed features",Computional and Structural Biotechnology Journal [online],2019年06月08日,第17巻,P.785-796
【文献】R. C. Abbottほか,"Finding the keys to the CAR: identifying novel target antigens for T cell redirection immunotherapies",International Journal of Molecular Sciences [online],2020年01月14日,第21巻,thesis no. 515 (P.1-15)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16B 5/00-99/00
C12Q 1/6886
C40B 40/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置が単一細胞単位で腫瘍細胞の遺伝子の発現情報を獲得する段階;
前記分析装置が前記遺伝子のうち臨界値以上の発現量を有する候補抗原の遺伝子を抽出する段階;
前記分析装置が前記候補抗原の遺伝子が構成可能な遺伝子組み合わせを決定する段階;
前記分析装置が前記遺伝子組み合わせのうち組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が発現するターゲット遺伝子組み合わせを決定する段階;及び
前記分析装置が前記ターゲット遺伝子組み合わせのうち少なくとも一つの組み合わせをターゲット抗原に対する遺伝子組み合わせに決定する段階を含むが、
前記少なくとも一つの遺伝子は、キメラ抗原受容体が認識する前記腫瘍細胞の抗原に対する遺伝子であり、
前記ターゲット遺伝子組み合わせは、前記腫瘍細胞のうち前記少なくとも一つの遺伝子が発現する細胞の割合が基準値以上である遺伝子組み合わせであることを特徴とする、キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項2】
前記分析装置が前記腫瘍細胞の遺伝子のうち前記腫瘍細胞で発現する細胞の割合が基準値以上である遺伝子を前記候補抗原の遺伝子として抽出することを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項3】
前記分析装置が前記腫瘍細胞の遺伝子のうち正常細胞と前記腫瘍細胞での発現量差が基準値以上である遺伝子を前記候補抗原の遺伝子として抽出することを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項4】
前記分析装置が前記遺伝子組み合わせのうち組み合わせに含まれた複数の遺伝子が発現する前記ターゲット遺伝子組み合わせを決定するが、
前記ターゲット遺伝子組み合わせは、前記腫瘍細胞のうち前記複数の遺伝子が同時に発現する細胞の割合が基準値以上である遺伝子組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載のキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項5】
前記複数の遺伝子は、それぞれ互いに異なる抗原発現に関与することを特徴とする、請求項4に記載のキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項6】
分析装置が単一細胞単位で腫瘍細胞の遺伝子の発現情報を獲得する段階;
前記分析装置が前記遺伝子のうち臨界値以上の発現量を有する候補抗原の遺伝子を抽出する段階;
前記分析装置が前記候補抗原の遺伝子のうち前記腫瘍細胞で発現する細胞の割合又は前記腫瘍細胞で発現する細胞の個数を基準として陽性候補遺伝子を決定する段階;
前記分析装置が前記候補抗原の遺伝子のうち前記陽性候補遺伝子と発現様相が逆関係を有する陰性候補遺伝子を決定する段階;
前記分析装置が前記陽性候補遺伝子及び前記陰性候補遺伝子が構成可能な遺伝子組み合わせを決定する段階;
前記分析装置が前記腫瘍細胞のうち前記遺伝子組み合わせのうち組み合わせに含まれた少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する細胞の割合及び正常細胞のうち前記少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現して生成される抗原に対するキメラ抗原受容体細胞の免疫反応を阻害する前記陰性候補遺伝子のうち少なくとも一つの陰性候補遺伝子が発現する細胞の割合を基準として前記遺伝子組み合わせのうちキメラ抗原受容体が認識する抗原に対するターゲット遺伝子組み合わせを決定する段階;及び
前記分析装置が前記ターゲット遺伝子組み合わせのうち少なくとも一つの組み合わせをターゲット抗原に対する遺伝子組み合わせに決定する段階を含むことを特徴とする、キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項7】
前記分析装置が前記腫瘍細胞の遺伝子のうち前記腫瘍細胞で発現する細胞の割合が基準値以上である遺伝子を前記候補抗原の遺伝子として抽出することを特徴とする、請求項6に記載のキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項8】
前記分析装置が前記腫瘍細胞の遺伝子のうち正常細胞と前記腫瘍細胞での発現量差が基準値以上である遺伝子を前記候補抗原の遺伝子として抽出することを特徴とする、請求項6に記載のキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項9】
前記分析装置が前記腫瘍細胞のうち特定組み合わせに含まれた前記陽性候補遺伝子のうち少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する腫瘍細胞の割合が基準値以上であり、
前記少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する正常細胞のうち前記陽性候補遺伝子による抗原とキメラ抗原受容体の免疫反応を阻害する阻害遺伝子が発現する正常細胞の割合が基準値以上である前記特定組み合わせを前記ターゲット遺伝子組み合わせに決定することを特徴とする、請求項6に記載のキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項10】
前記陽性候補遺伝子は、それぞれ互いに異なる抗原発現に関与することを特徴とする、請求項6に記載のキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法。
【請求項11】
単一細胞単位でサンプルの腫瘍細胞の遺伝子の発現データの入力を受ける入力装置;
腫瘍細胞の遺伝子の発現情報を利用してキメラ抗原受容体が認識する抗原を決定するプログラムを保存する保存装置;及び
前記遺伝子の発現データで決定される候補抗原の遺伝子のうち複数の遺伝子が構成可能な遺伝子組み合わせでキメラ抗原受容体が認識する前記サンプルの腫瘍細胞のターゲット抗原に対するターゲット遺伝子組み合わせ乃至ターゲット遺伝子を決定する演算装置を含むが、
前記ターゲット遺伝子組み合わせは、前記腫瘍細胞のうち前記ターゲット遺伝子組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が発現する細胞の割合が基準値以上であることを特徴とする、キメラ抗原受容体の設計のための分析装置。
【請求項12】
前記候補抗原の遺伝子は、前記腫瘍細胞の遺伝子のうち前記腫瘍細胞で発現する細胞の割合が第1基準値以上である遺伝子であることを特徴とする、請求項11に記載のキメラ抗原受容体の設計のための分析装置。
【請求項13】
前記候補抗原の遺伝子は、前記腫瘍細胞の遺伝子のうち正常細胞と前記腫瘍細胞での発現量差が基準値以上である遺伝子であることを特徴とする、請求項11に記載のキメラ抗原受容体の設計のための分析装置。
【請求項14】
前記複数の遺伝子は、前記候補抗原の遺伝子のうち前記腫瘍細胞で発現する細胞の割合が第2基準値以上であり、前記第2基準値は、前記第1基準値より高い値であることを特徴とする、請求項12に記載のキメラ抗原受容体の設計のための分析装置。
【請求項15】
前記ターゲット遺伝子組み合わせは、前記腫瘍細胞のうち前記ターゲット遺伝子組み合わせに含まれた少なくとも複数の遺伝子が発現する細胞の割合が基準値以上であることを特徴とする、請求項11に記載のキメラ抗原受容体の設計のための分析装置。
【請求項16】
前記入力装置は、前記サンプルの正常細胞の遺伝子の発現データの入力をさらに受け、
前記演算装置は、
前記候補抗原の遺伝子のうち前記腫瘍細胞で発現する細胞の割合又は前記腫瘍細胞で発現する細胞の個数を基準として陽性候補遺伝子及び前記陽性候補遺伝子と発現様相が逆関係を有する陰性候補遺伝子を決定し、
前記陽性候補遺伝子及び前記陰性候補遺伝子が構成可能な全ての遺伝子組み合わせを前記
ターゲット遺伝子組み合わせに決定することを特徴とする、請求項11に記載のキメラ抗原受容体の設計のための分析装置。
【請求項17】
前記演算装置は、
前記腫瘍細胞のうち特定組み合わせに含まれた前記陽性候補遺伝子のうち少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する細胞の割合が基準値以上であり、
前記少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する正常細胞のうち前記陽性候補遺伝子が関与する抗原とキメラ抗原受容体の認識又は結合を阻害する阻害遺伝子が発現する正常細胞の割合が基準値以上である、
前記特定組み合わせを前記ターゲット遺伝子組み合わせに決定することを特徴とする、請求項16に記載のキメラ抗原受容体の設計のための分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下、説明する技術は、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)に対する抗原を発掘する技法に関する。
【背景技術】
【0002】
坑癌免疫細胞の治療は、体外で培養されたT細胞を利用して腫瘍細胞を除去する治療技法である。キメラ抗原受容体は、抗原を認識する結合部位を設計してT細胞の細胞内の活性ドメインに結合させたものである。CAR-Tは、キメラ抗原受容体をT細胞に適用したT細胞治療剤である。一方、CAR-NKは、キメラ抗原受容体をNK(Natural Killer)細胞に適用した細胞治療剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CAR-T及びCAR-NKは、効果的なターゲット抗原の発掘が非常に重要である。ターゲット抗原の発掘において多数の腫瘍細胞に作用するかに対する作用範囲(coverage)及び正常細胞に加えられる細胞毒性を最小化して腫瘍細胞にのみ作用するかに対する特異性(specificity)が重要指標となる。
【0004】
以下、説明する技術は、特定腫瘍を治療するためにキメラ抗原受容体が結合するターゲット抗原の発掘技法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法は、分析装置が単一細胞単位で腫瘍細胞の遺伝子の発現情報を獲得する段階、前記分析装置が前記遺伝子のうち臨界値以上の発現量を有する候補抗原の遺伝子を抽出する段階、前記分析装置が前記候補抗原の遺伝子が構成可能な遺伝子組み合わせを決定する段階、前記分析装置が前記遺伝子組み合わせのうち組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が発現するターゲット遺伝子組み合わせを決定する段階及び前記分析装置が前記ターゲット遺伝子組み合わせのうち少なくとも一つの組み合わせをターゲット抗原に対する遺伝子組み合わせに決定する段階を含む。
【0006】
キメラ抗原受容体の設計のための分析装置は、単一細胞単位でサンプルの腫瘍細胞の遺伝子の発現データの入力を受ける入力装置、腫瘍細胞の遺伝子の発現情報を利用してキメラ抗原受容体が認識する抗原を決定するプログラムを保存する保存装置及び前記遺伝子の発現データで決定される候補抗原の遺伝子のうち複数の遺伝子が構成可能な遺伝子組み合わせでキメラ抗原受容体が認識する前記サンプルの腫瘍細胞のターゲット抗原に対するターゲット遺伝子組み合わせ乃至ターゲット遺伝子を決定する演算装置を含む。
【発明の効果】
【0007】
以下、説明する技術は、キメラ抗原受容体の設計において作用範囲が広く特異性が高い抗原を発掘する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】単一細胞と細胞集団での抗原発現様態に対する例である。
【0009】
【
図2】キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原発掘システムに対する例である。
【0010】
【
図3】キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原発掘過程に対するフローチャートの例である。
【0011】
【
図4】キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘過程に対するフローチャートの他の例である。
【0012】
【
図5】キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘過程に対するフローチャートのまた他の例である。
【0013】
【
図6】分析装置がターゲット抗原を発掘する過程に対する例である。
【0014】
【
図7】大腸癌サンプルと肺癌サンプルに対して腫瘍細胞と正常細胞の遺伝子発現様態を示す実験結果である。
【0015】
【
図8】肺癌サンプルで遺伝子が1個以上発現する遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
【0016】
【
図9】大腸癌サンプルで遺伝子が1個以上発現する遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
【0017】
【
図10】肺癌サンプルで遺伝子が2個以上同時発現する遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
【0018】
【
図11】大腸癌サンプルで遺伝子が2個以上同時発現する遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
【0019】
【
図12】肺癌サンプルで腫瘍細胞特異的な遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
【0020】
【
図13】大腸癌サンプルで腫瘍細胞特異的な遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
【0021】
【
図14】キメラ抗原受容体に対する抗原を発掘する分析装置に対する例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、説明する技術は、多様な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示して詳細に説明する。しかし、これは以下説明する技術を特定の実施形態に対して限定するものではなく、以下説明する技術の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解しなければならない。
【0023】
第1、第2、A、Bなどの用語は、多様な構成要素を説明するために用いられるが、該当構成要素は、前記用語によって限定されず、ただし、一つの構成要素を他の構成要素と区別する目的にのみで用いられる。例えば、以下説明する技術の権利範囲を脱しなくても第1構成要素は第2構成要素と命名され得、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名され得る。「及び/又は」という用語は、複数の関連された記載項目の組み合わせ又は複数の関連された記載項目のうちいずれかの項目を含む。
【0024】
本明細書で用いられる用語で、単数の表現は、文脈上明白に異に解釈されない限り、複数の表現を含むものと理解する必要があり、「含む」などの用語は、説明された特徴、個数、段階、動作、構成要素、部分品又はこれら組み合わせの存在を意味するものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴や個数、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらの組み合わせのなどの存在又は付加可能性を排除するものではないと理解しなければならない。
【0025】
図面に対する詳細な説明をする前に、本明細書での構成部に対する区分は、各構成部が担当する主機能別に区分したものに過ぎないことを明確にする。すなわち、以下で説明する2個以上の構成部が一つの構成部として組み合わされるか又は一つの構成部がより細分化された機能別に2個以上に分化して具備され得る。そして、以下で説明する構成部それぞれは、各自が担当する主機能以外にも他の構成部が担当する機能のうち一部又は全部の機能を追加的に行ってもよく、構成部それぞれが担当する主機能のうち一部機能が他の構成部により専担されて行われてもよいことは勿論である。
【0026】
また、方法又は動作方法を行うにおいて、前記方法を成す各過程は、文脈上明白に特定手順を記載しない限り、明記された手順と異に行われ得る。すなわち、各過程は、明記された手順と同一に行われもよく、実質的に同時に行われてもよく、反対の順に行われてもよい。
【0027】
以下、説明で用いられる用語に対して説明する。
【0028】
抗原は、免疫反応を誘導する物質である。
【0029】
以下、抗原は、キメラ抗原受容体が腫瘍細胞で認識する部位である。抗原は、正常細胞では発現されず腫瘍細胞でのみ発現される腫瘍特異抗原(tumor-specific antigens:TSAs)又は正常細胞でも発現されるが細胞の癌化過程で抗原変化を起こして癌細胞で特に高い頻度で発現される腫瘍関連抗原(tumor-associated antigens:TAAs)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
キメラ抗原受容体は、主に単鎖可変領域フラグメント(single-chainvariable fragment、scFv)を利用する。したがって、抗原は、腫瘍細胞の表面に発現するタンパク質、糖鎖、糖脂質などを含むことができる。
【0031】
以下、ターゲット抗原は、腫瘍細胞の死滅のためにキメラ抗原受容体が認識するターゲットと定義する。以下説明する技術は、ターゲット抗原を発掘するためのものである。
【0032】
サンプル(sample)は、分析の対象となる個体から採取した単一細胞又は多重細胞、細胞断片、体液などを意味する。
【0033】
遺伝子データ乃至遺伝子情報は、サンプルを分析して算出される遺伝情報を意味する。例えば、遺伝子データは、細胞、組織などからデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)又はタンパク質(Protein)などから得られた塩基配列、遺伝子発現データ、標準遺伝子データとの遺伝変異、DNAメチル化(methylation)などを含むことができる。以下説明で細胞の遺伝子データは、主に細胞表面に発現する抗原と関連された情報を意味する。したがって、遺伝子データは、遺伝体(genome)、転写体(Transcriptome)、タンパク質体(proteome)などのような情報を含むことができる。すなわち、遺伝子データは、種類に関係なく特定遺伝子の発現(特に、細胞表面の抗原発現)程度を確認し得るデータを意味する。遺伝子データは、コンピュータ装置が処理可能なデジタルデータであると前提する。
【0034】
図1は、単一細胞と細胞集団での抗原発現様態に対する例である。
【0035】
図1の(A)及び
図1の(B)は、腫瘍細胞で単一抗原が発現する状態を例示する。
図1の(A)及び
図1の(B)で、単一抗原は、抗原1である。
図1の(A)は、単一細胞レベルでの発現を観測した例であり、
図1の(B)は、細胞集団での発現を観測した例である。
図1の(A)を参照すると、抗原1は、単一細胞に対して100%の作用範囲(coverage)を有する。
図1の(B)を参照すると、抗原1は、細胞集団に対して4/7の作用範囲を有する。したがって、
図1の(B)の結果を基準として発現することが確認された抗原1を認識するキメラ抗原受容体でCAR-Tを設計すれば、当該CAR-Tは、腫瘍細胞で特定クローン(clone)のみを攻撃し、当該抗原が発現しない他のクローンは除去できなくなる。もちろん、CART-NKも同様である。
【0036】
図1の(C)及び
図1の(D)は、腫瘍細胞で複数の抗原が発現する状態を例示する。
図1の(A)及び
図1の(B)で複数の抗原は、抗原1及び抗原2である。
図1の(C)は、単一細胞レベルでの発現を観測した例であり、
図1の(D)は、細胞集団での発現を観測した例である。
図1の(C)を参照すると、抗原1及び抗原2は、単一細胞に対して100%の作用範囲(coverage)を有する。
図1の(D)を参照すると、抗原1及び抗原2は、細胞集団に対して4/7の作用範囲を有する。したがって、
図1の(D)の結果を基準として発現することが確認された抗原1や抗原2を認識するキメラ抗原受容体でCAR-Tを設計すれば、当該キメラ抗原受容体細胞は、腫瘍細胞で特定クローン(clone)のみを攻撃し、当該抗原が発現しない他のクローンは除去できなくなる。もちろん、CART-NKも同様である。
【0037】
結局、このように単一細胞を基準として抗原の発現有無を検証せず通常の方法どおりに集団レベルでの発現有無を判断すれば、作用範囲が高いキメラ抗原受容体を設計しにくい。作用範囲が広く且つ特異性が高いキメラ抗原受容体を設計するために有効なターゲット抗原の発掘が重要である。以下、ターゲット抗原の発掘に対する新しい方法論を説明する。
【0038】
図2は、キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘システム100に対する例である。分析装置130、140がキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原を発掘する装置である。
図1で、分析装置は、サーバー130及びコンピュータ端末140の形態で示した。サーバー130は、ネットワーク上でターゲット抗原を発掘するサービスを提供し得る。コンピュータ端末140は、ネットワークに連結されて又は個別装置でターゲット抗原を発掘し得る。一方、分析装置130、140は、多様な形態で具現され得る。
【0039】
遺伝子分析装置110は、サンプルを分析してサンプルの遺伝子データを生成する。遺伝子データDB120が生成した遺伝子データを保存して管理し得る。遺伝子データは、サンプルの遺伝子配列、遺伝子の発現情報などを含むことができる。遺伝子データは、腫瘍細胞の表面の抗原遺伝子の発現情報を含む。遺伝子データは、抗原遺伝子の発現量に対する情報を含む。一方、複数の遺伝子それぞれは一つの抗原に対応する。
【0040】
遺伝子データDB120は、多数の研究者が実験した結果を保有する公開DBであってもよい。一方、遺伝子データDB120は、特定患者のサンプルに対する遺伝子データを保有することもできる。この場合、分析装置130、140は、患者オーダーメード型抗原を発掘することもできる。
【0041】
分析装置130、140は、遺伝子データを分析してキメラ抗原受容体に対するターゲット抗原を発掘する。分析装置130、140がターゲット抗原を発掘する過程に対しては後述する。
【0042】
ユーザー10、20は、特定腫瘍又は特定患者に対するターゲット抗原の発掘結果を確認することができる。ユーザー10は、ユーザー端末(PC、スマートフォンなど)を通じてサーバー130に接続し、サーバー130が行った分析結果を確認することができる。ユーザー20は、自身が用いるコンピュータ端末140を通じてターゲット抗原の発掘結果を確認することができる。
【0043】
図3は、キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘過程200に対するフローチャートの例である。
【0044】
分析装置は、サンプル腫瘍細胞の遺伝子発現情報を獲得する(S210)。ここで、サンプルは、特定腫瘍(例えば、肺癌)に対して多数人から収集したサンプルであってもよい。又は、サンプルは、特定患者から採取した細胞であってもよい。また、分析装置は、サンプルの正常細胞の遺伝子発現情報を獲得することができる(S210)。正常細胞に対する情報は、特異性の評価に用いられ得る。ここで、腫瘍細胞及び正常細胞は、単一クローンではなく多様な細胞集団から獲得した細胞であってもよい。
【0045】
分析装置が収集した腫瘍細胞及び/又は正常細胞の遺伝子データをソースデータと名付ける。ソースデータは、単一細胞の分析を通じた個別細胞単位の遺伝子発現情報を含む。ソースデータに含まれた腫瘍細胞を腫瘍細胞グループと名付けることもできる。また、ソースデータに含まれた正常細胞を正常細胞グループと名付けることもできる。
【0046】
分析装置は、ソースデータから有効なデータをフィルタリングすることができる(S220)。分析装置は、ソースデータから候補抗原の遺伝子を選別することができる(S220)。候補抗原は、ターゲット抗原を発掘するための母集団である抗原に該当する。候補抗原の遺伝子は、当該抗原発現に直接又は間接的に関与する遺伝子を意味する。候補抗原の発現に関与する遺伝子を候補遺伝子と名付けることができる。また、候補抗原それぞれの発現に関与する遺伝子の集合を候補遺伝子グループと名付けることができる。
【0047】
候補遺伝子の選別には、多様な基準が用いられ得る。(i)分析装置は、腫瘍細胞グループを基準として腫瘍細胞グループに含まれた細胞のうち一定割合以上発現する遺伝子を候補遺伝子として選別することができる。例えば、分析装置は、腫瘍細胞グループで1%以上発現する抗原に対する遺伝子を候補遺伝子として選別することができる。(ii)分析装置は、腫瘍細胞と正常細胞において発現様相に一定の差がある遺伝子を候補遺伝子として選別することもできる。例えば、分析装置は、発現変動遺伝子(Differential expression gene、DEG)を分析して正常細胞と比較して腫瘍細胞で差次的に発現する遺伝子を候補遺伝子として選別してもよい。分析装置は、腫瘍細胞の発現量が正常細胞の発現量より基準値以上大きい遺伝子を候補遺伝子として選別することができる。(iii)さらに、分析装置は、前記(i)基準と前記(ii)基準を組み合わせて候補遺伝子を選別してもよい。例えば、分析装置は、腫瘍細胞グループで1%以上発現する抗原に対する遺伝子のうち腫瘍細胞で一定基準差次的に多く発現する遺伝子を候補遺伝子として選別することができる。
【0048】
分析装置は、フィルタリングされた候補抗原の遺伝子(候補遺伝子)を基準として候補遺伝子が構成可能な全ての組み合わせを決定する(S230)。分析装置は、数学的に場合の数に応じて可能な全ての組み合わせを決定することができる。又は、分析装置は、遺伝子の発現関係を考慮して実際に同時に発現する遺伝子を対象として可能な遺伝子組み合わせを決定することもできる。
【0049】
分析装置は、遺伝子組み合わせそれぞれに対して当該組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が腫瘍細胞で基準割合以上発現するか否かを確認する。分析装置は、組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が発現する細胞が全体腫瘍細胞で占める割合(作用範囲)を基準としてターゲット遺伝子組み合わせを決定する(S240)。例えば、分析装置は、組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が発現する腫瘍細胞が全体腫瘍細胞のうち60%以上であれば、当該組み合わせをターゲット遺伝子組み合わせに決定することができる。ターゲット遺伝子組み合わせは、キメラ抗原受容体が認識するターゲット抗原発現に関与する遺伝子を含む。遺伝子組み合わせに含まれる少なくとも一つの遺伝子は、一つのターゲット抗原発現に関与する。
【0050】
分析装置は、ターゲット遺伝子組み合わせで最終的にターゲット抗原に対する遺伝子組み合わせを決定する(S250)。(i)分析装置は、作用範囲を基準としてターゲット遺伝子組み合わせのうち上位にある少なくとも一つの遺伝子組み合わせを最終遺伝子組み合わせに決定することができる。(ii)分析装置は、作用範囲を基準としてターゲット遺伝子組み合わせのうち上位にある複数の遺伝子組み合わせのうち正常細胞での作用範囲が基準値以下である少なくとも一つの遺伝子組み合わせを最終遺伝子組み合わせに決定することができる。
【0051】
図3で、分析装置は、腫瘍細胞から発現する少なくとも一つの抗原を基準としてターゲット抗原を発掘する。すなわち、分析装置は、遺伝子組み合わせで一つの遺伝子でも腫瘍細胞に基準値以上の作用範囲を有する場合、当該遺伝子が有効な候補抗原に関与すると判断し得る。言い換えれば、分析装置は、腫瘍細胞で一定割合以上で一つの抗原でも発現されると、当該抗原をターゲット抗原に決定する。
【0052】
図4は、キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘過程300に対するフローチャートの他の例である。
【0053】
分析装置は、サンプル腫瘍細胞の遺伝子発現情報を獲得する(S310)。ここで、サンプルは、特定腫瘍(例えば、肺癌)に対して多数人から収集したサンプルであってもよい。又は、サンプルは、特定患者から採取した細胞であってもよい。また、分析装置は、サンプルの正常細胞の遺伝子発現情報を獲得することができる(S310)。正常細胞に対する情報は、特異性の評価に用いられ得る。ここで、腫瘍細胞及び正常細胞は、単一クローンではなく多様な細胞集団から獲得した細胞であってもよい。
【0054】
分析装置は、ソースデータで有効なデータをフィルタリングすることができる(S320)。分析装置は、ソースデータから候補抗原の遺伝子(候補遺伝子)を選別することができる(S320)。
【0055】
候補遺伝子の選別は、多様な基準が用いられ得る。(i)分析装置は、腫瘍細胞グループを基準として腫瘍細胞グループに含まれた細胞のうち一定割合以上発現する遺伝子を候補遺伝子に選別することができる。例えば、分析装置は、腫瘍細胞グループで1%以上発現する抗原に対する遺伝子を候補遺伝子に選別することができる。(ii)分析装置は、腫瘍細胞と正常細胞において発現様相に一定の差がある遺伝子を候補遺伝子に選別することもできる。例えば、分析装置は、DEG分析して正常細胞と比較して腫瘍細胞で差次的に発現する遺伝子を候補遺伝子に選別することもできる。分析装置は、腫瘍細胞の発現量が正常細胞の発現量より基準値以上大きい遺伝子を候補遺伝子に選別することができる。(iii)さらに、分析装置は、前記(i)基準と前記(ii)基準を組み合わせて候補遺伝子を選別することもできる。例えば、分析装置は、腫瘍細胞グループで1%以上発現する抗原に対する遺伝子のうち腫瘍細胞で一定基準差次的に多く発現する遺伝子を候補遺伝子に選別することができる。
【0056】
分析装置は、フィルタリングされた候補抗原の遺伝子(候補遺伝子)を基準として候補遺伝子が構成可能な全ての組み合わせを決定する(S330)。分析装置は、数学的に場合の数に応じて可能な全ての組み合わせを決定することができる。又は、分析装置は、遺伝子の発現関係を考慮して実際に同時に発現する遺伝子を対象として可能な遺伝子組み合わせを決定することもできる。
【0057】
分析装置は、遺伝子組み合わせそれぞれに対して当該組み合わせに含まれた複数の遺伝子が腫瘍細胞で基準割合以上発現するか否かを確認する。分析装置は、組み合わせに含まれた複数の遺伝子が発現する細胞が全体腫瘍細胞で占める割合(作用範囲)を基準としてターゲット遺伝子組み合わせを決定する(S340)。例えば、分析装置は、組み合わせに含まれた複数の遺伝子が発現する腫瘍細胞が全体腫瘍細胞のうち60%以上であれば、当該組み合わせをターゲット遺伝子組み合わせに決定することができる。ターゲット遺伝子組み合わせは、キメラ抗原受容体が認識するターゲット抗原発現に関与する遺伝子を含む。遺伝子組み合わせに含まれる複数の遺伝子は、一つのターゲット抗原発現に関与する。複数の遺伝子は、一つの抗原発現に関与することもできる。ただし、ここで、複数の遺伝子は、それぞれ互いに異なる抗原を発現すると前提する。
【0058】
分析装置は、ターゲット遺伝子組み合わせで最終的にターゲット抗原に対する遺伝子組み合わせを決定する(S350)。(i)分析装置は、作用範囲を基準としてターゲット遺伝子組み合わせのうち上位にある少なくとも一つの遺伝子組み合わせを最終遺伝子組み合わせに決定することができる。(ii)分析装置は、作用範囲を基準としてターゲット遺伝子組み合わせのうち上位にある複数の遺伝子組合のうち正常細胞での作用範囲が基準値以下である少なくとも一つの遺伝子組み合わせを最終遺伝子組合に決定することができる。
【0059】
図4で、分析装置は、腫瘍細胞で発現する複数の抗原を基準としてターゲット抗原を発掘する。すなわち、分析装置は、遺伝子組み合わせで複数の遺伝子が腫瘍細胞に基準値以上の作用範囲を有する場合、当該複数の遺伝子が互いに異なる候補抗原に関与すると判断することができる。
【0060】
図5は、キメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘過程400に対するフローチャートのまた他の例である。
【0061】
分析装置は、サンプル腫瘍細胞の遺伝子発現情報を獲得する(S410)。ここで、サンプルは、特定腫瘍(例えば、肺癌)に対して多数人から収集したサンプルであってもよい。又は、サンプルは、特定患者から採取した細胞であってもよい。また、分析装置は、サンプルの正常細胞の遺伝子発現情報を獲得することができる(S410)。正常細胞に対する情報は、特異性の評価に用いられ得る。ここで、腫瘍細胞及び正常細胞は、単一クローンではなく多様な細胞集団から獲得した細胞であってもよい。
【0062】
分析装置は、ソースデータから有効なデータをフィルタリングすることができる(S420)。分析装置は、ソースデータで候補抗原の遺伝子を選別することができる(S420)。
【0063】
候補遺伝子の選別は、多様な基準が用いられ得る。(i)分析装置は、腫瘍細胞グループを基準として腫瘍細胞グループに含まれた細胞のうち一定割合以上発現する遺伝子を候補遺伝子に選別することができる。例えば、分析装置は、腫瘍細胞グループで1%以上発現する抗原に対する遺伝子を候補遺伝子に選別することができる。(ii)分析装置は、腫瘍細胞と正常細胞において発現様相に一定の差がある遺伝子を候補遺伝子に選別することもできる。例えば、分析装置は、DEG分析して正常細胞と比較して腫瘍細胞で差次的に発現する遺伝子を候補遺伝子に選別することもできる。分析装置は、腫瘍細胞の発現量が正常細胞の発現量より基準値以上大きい遺伝子を候補遺伝子に選別することができる。(iii)さらに、分析装置は、前記(i)基準と前記(ii)基準を組み合わせて候補遺伝子を選別することもできる。例えば、分析装置は、腫瘍細胞グループで1%以上発現する抗原に対する遺伝子のうち腫瘍細胞で一定基準差次的に多く発現する遺伝子を候補遺伝子に選別することができる。
【0064】
分析装置は、候補抗原の遺伝子から陽性候補遺伝子と陰性候補遺伝子を決定する(S430)。陽性候補遺伝子は、腫瘍細胞特異的に又は腫瘍細胞で多く発現する抗原に関する遺伝子を意味する。(i)分析装置は、候補抗原の遺伝子のうち腫瘍細胞での作用範囲が基準値以上である遺伝子を陽性候補遺伝子に選別することができる。(ii)又は、分析装置は、サンプル腫瘍細胞のうち発現する腫瘍細胞の個数が基準値以上である遺伝子を陽性候補遺伝子に選別することもできる。
【0065】
分析装置は、陽性候補遺伝子を決定すると、当該陽性候補遺伝子に対する少なくとも一つの陰性候補遺伝子を決定する。そのために、分析装置は、遺伝子の間の発現相関関係(correlation)に対する情報を保有しなければならない。すなわち、遺伝子の相関関係情報は、特定遺伝子の発現が他の少なくとも一つの遺伝子の発現を促進するか又は阻害するかに対する情報を意味する。分析装置は、転写体情報を利用して遺伝子の間の相関関係情報を把握することができる。陰性候補遺伝子は、陽性候補遺伝子と発現様相がネガティブ(negative)の関係を有する遺伝子である。すなわち、陰性候補遺伝子は、陽性候補遺伝子が多く発現すれば発現量が減る遺伝子である。分析装置は、決定された陽性候補遺伝子の発現様相がネガティブの関係である陰性候補遺伝子を決定することができる。分析装置は、一つの陽性候補遺伝子に対して複数の陰性候補遺伝子を決定することもできる。
【0066】
分析装置は、陽性候補遺伝子と陰性候補遺伝子で構成可能な全ての遺伝子組み合わせを決定する(S440)。分析装置は、数学的に場合の数に応じて可能な全ての組み合わせを決定することができる。又は、分析装置は、遺伝子の発現関係を考慮して実際に同時に発現する遺伝子を対象として可能な遺伝子組み合わせを決定することもできる。
【0067】
分析装置は、遺伝子組み合わせそれぞれに対して当該組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が腫瘍細胞で基準割合以上発現するか否かを確認する。分析装置は、組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が発現する細胞が全体腫瘍細胞で占める割合(作用範囲)を基準としてターゲット遺伝子組み合わせを決定することができる(S450)。さらに、分析装置は、正常細胞でキメラ抗原受容体を阻害する遺伝子の発現割合を基準としてターゲット遺伝子組み合わせを決定することができる(S450)。
【0068】
分析装置がターゲット遺伝子組み合わせを決定するいくつかの例を説明する。(i)分析装置は、組み合わせに含まれた少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する腫瘍細胞が全体腫瘍細胞のうち60%(基準値の例示に過ぎない)以上であれば、当該組み合わせをターゲット遺伝子組み合わせに決定することができる。(ii)分析装置は、組み合わせに含まれた少なくとも一つの陰性候補遺伝子が発現する腫瘍細胞が全体腫瘍細胞のうち10%未満であれば、当該組み合わせをターゲット遺伝子組み合わせに決定することができる。(iii)分析装置は、組み合わせに含まれた少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する正常細胞のうち陰性遺伝子が発現する正常細胞の割合が60%以上であれば、当該組み合わせをターゲット遺伝子組み合わせに決定することもできる。このとき、CAR-TあるいはCAR-NK細胞の製作時に陰性遺伝子の抗原にキメラ抗原受容体が結合する場合、免疫反応を阻害するように考案しなければならないので、このような陰性遺伝子は、免疫阻害遺伝子であると称することができ、これは正常細胞の損傷を最小化する役目をすることができる。(iv)分析装置は、組み合わせに含まれた少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する腫瘍細胞が全体腫瘍細胞のうち60%以上であれば、当該組み合わせを1次ターゲット遺伝子組み合わせに決定する。その後、分析装置は、1次ターゲット遺伝子組み合わせを母集団として再び最終ターゲット遺伝子組み合わせを決定することができる。例えば、分析装置は、1次ターゲット遺伝子組み合わせそれぞれに対して各組み合わせに含まれた少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する正常細胞のうち免疫阻害遺伝子が発現する正常細胞が60%以上である組み合わせを2次ターゲット遺伝子組み合わせにすることができる。2次ターゲット遺伝子組み合わせが最終的なターゲット遺伝子組み合わせであってもよい。
【0069】
分析装置は、ターゲット遺伝子組み合わせで最終的にターゲット抗原に対する遺伝子組み合わせを決定する(S46)。(i)分析装置は、作用範囲を基準としてターゲット遺伝子組み合わせのうち上位にある少なくとも一つの遺伝子組み合わせを最終遺伝子組み合わせに決定することができる。(ii)分析装置は、作用範囲を基準としてターゲット遺伝子組み合わせでのうち上位にある複数の遺伝子組み合わせでのうち正常細胞での作用範囲が基準値以下である少なくとも一つの遺伝子組み合わせを最終遺伝子組み合わせに決定することができる。
【0070】
図6は、分析装置がターゲット抗原を発掘する過程500に対する例である。遺伝子データDBは、腫瘍細胞の遺伝子発現情報を保存する。遺伝子データDBは、正常細胞の遺伝子発現情報を保存し得る。また、遺伝子データDBは、遺伝子の間の発現相関関係に対する情報を保存し得る。
【0071】
分析装置は、分析を所望する腫瘍情報の入力を受けることができる(S510)。腫瘍情報は、腫瘍の種類、臨床情報、患者情報などを含むことができる。(i)腫瘍情報は、特定臨床条件の特定腫瘍を定義することができる。臨床情報は、サンプルの人種、サンプルの性別、サンプルの年齢、腫瘍経過状態(初期、中期、末期など)、サンプルを抽出した解剖学的部位などを含むことができる。この場合、腫瘍情報は、特定臨床条件を有する特定腫瘍を定義することになる。(ii)また、腫瘍情報は、特定患者に対する特定腫瘍を定義することもできる。
【0072】
分析装置は、遺伝子データDBから入力を受けた腫瘍情報に対応するソースデータを入力又は受信することができる(S520)。
【0073】
分析装置は、ソースデータから抗原候補の遺伝子を選別することができる(S530)。抗原候補の遺伝子フィルタリングは、上述した通りである。一方、候補遺伝子の選別過程は省略することもできる。
【0074】
分析装置は、選別した遺伝子を対象として又は遺伝子データDBから伝達を受けた遺伝子を対象として可能な遺伝子組み合わせを構成する。その後、分析装置は、可能な遺伝子組み合わせそれぞれに対して当該組み合わせに含まれた遺伝子の作用範囲を基準としてターゲット遺伝子組み合わせを選別することができる(S540)。又は、分析装置は、可能な遺伝子組み合わせそれぞれに対して当該組み合わせに含まれた遺伝子の特異性を基準としてターゲット遺伝子組み合わせを選別することができる(S540)。ターゲット遺伝子組み合わせを決定する過程は、
図3~
図5に示した通りである。分析装置は、ターゲット遺伝子組み合わせ自体を又はターゲット遺伝子組み合わせのうちより効果的な特定遺伝子組み合わせを最終的なターゲット抗原の遺伝子組み合わせ乃至遺伝子に選別することができる(S540)。
【0075】
その後、分析装置は、キメラ抗原受容体のための最終ターゲット抗原情報を他の客体に伝達することができる。又は、分析装置は、最終ターゲット抗原を認識するキメラ抗原受容体に対する認識部位を設計することもできる(S550)。
【0076】
以下、実際の遺伝子データを基準としてターゲット抗原を発掘する過程に対するin silico実験過程及び結果を説明する。
【0077】
ソースデータは、次のようなデータを収集して準備した。研究者は、実験過程で41個の細胞タイプに対する質量分析(mass spectrometry)をしたタンパク体の分析データ、610個の腫瘍細胞株の転写体データ、マシンラーニングを通じて構築されたhuman surfaceomeリソース(Bausch-Fluck et al.PNAS、2018)から抽出した2,769個の腫瘍細胞膜タンパク質遺伝子、375個の腫瘍細胞株に対するタンパク体データ及び転写体データ(Nusinow et al.Cell、2020)、及びGene Ontologyデータベースから抽出した1,421個の細胞膜タンパク質遺伝子を用いた。ソースデータは、重複されない3687個の遺伝子及び当該遺伝子の発現情報を含む。
【0078】
研究者は、分析対象を肺癌と大腸癌に設定した。研究者は、肺癌LUAD及びLUSCを基準として腫瘍細胞と正常細胞に存在する遺伝子のうち腫瘍細胞で差次発現する遺伝子498個を選別した。また、研究者は、大腸癌COAD及びREADを基準として腫瘍細胞と正常細胞に存在する遺伝子のうち腫瘍細胞で差次発現する遺伝子315個を選別した。
【0079】
肺癌の単一細胞転写体データは、44人の患者から取得した58個のサンプルであった。大腸癌の転写体データは、23人の患者から取得した33個のサンプルであった。単一細胞転写体の分析技術を通じて腫瘍上皮(tumor epithelial)細胞を分離し、残りの免疫細胞は正常細胞と見做した。肺癌細胞は、腫瘍細胞165,511個及び正常細胞42,995個で構成され、大腸癌細胞は、腫瘍細胞47,285個及び正常細胞16,404個で構成された。
【0080】
以下「研究者」が行うと表現する過程は、全て研究者がコンピュータ装置である「分析装置」を利用して行う過程を意味する。
【0081】
研究者は、ソースデータから候補抗原の遺伝子を1次フィルタリングした。研究者は、単一細胞分析を通じて腫瘍細胞で最小1%以上の遺伝子発現(cell coverage)を示す遺伝子を選別した。また、研究者は、正常細胞と腫瘍細胞の間のDEG分析を通じて発現値自体において基準値以上の差を示す遺伝子を選別した。最終的に研究者は、肺癌では163個、大腸癌では110個の遺伝子を導出した。
図7は、大腸癌サンプルと肺癌サンプルに対して腫瘍細胞と正常細胞の遺伝子発現様態を示した実験結果である。
図7は、t-SNE(Stochastic Neighbor Embedding)結果であって、遺伝子発現形態を次元を縮小して表現したものである。
図7の(A)は、163個の肺癌遺伝子の発現様態である。
図7の(A)の左側は、全体遺伝子を基準として腫瘍細胞と正常細胞の発現差を示し、右側は、特定遺伝子を基準として発現差を示す。
図7の(B)は、110個の遺伝子の発現様態である。
図7の(B)の左側は、全体遺伝子を基準として腫瘍細胞と正常細胞の発現差を示し、右側は、特定遺伝子を基準として発現差を示す。
【0082】
研究者は、肺癌の遺伝子163個のうち腫瘍細胞作用範囲(coverage)が90%以上である「CLDN4(93.5%)」遺伝子を除き、作用範囲が10%以上である遺伝子70個を選別した。研究者は、70個の遺伝子を利用して2,415個の遺伝子組み合わせを決定した。研究者は、遺伝子組み合わせそれぞれに対して組み合わせに含まれた遺伝子のうち最小1個が発現する単一細胞単位の遺伝子発現有無を二進情報に変換した。研究者は、腫瘍細胞の作用範囲が60%以上である組み合わせ253個を選別した。
図8は、肺癌サンプルで遺伝子を1個以上発現する遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
図8の(A)は、腫瘍細胞及び正常細胞で253個の遺伝子組み合わせの発現の割合を示す。
図8の(B)は、腫瘍細胞に対する作用範囲が相対的に高い遺伝子組み合わせを示し、80%以上の上位組み合わせを点線ボックスで表示した。この場合、分析装置は、上位組み合わせのうち腫瘍細胞での作用範囲が最も高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することができる。また、分析装置は、腫瘍細胞の作用範囲が高い遺伝子組み合わせのうち正常細胞での作用範囲が低い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することもできる。まとめると、分析装置は、腫瘍細胞での作用範囲及び正常細胞での作用範囲のうち少なくとも一つを基準として最終抗原候補を選別することができる。
【0083】
研究者は、大腸癌の遺伝子110個のうち腫瘍細胞作用範囲(coverage)が10%以上である遺伝子を選別した。研究者は、選別した遺伝子を利用して2,278個の遺伝子組み合わせを決定した。研究者は、遺伝子組み合わせそれぞれに対して組み合わせに含まれた遺伝子のうち最小1個が発現する単一細胞単位の遺伝子発現有無を二進情報に変換した。研究者は、腫瘍細胞の作用範囲が60%以上である組み合わせ248個を選別した。
図9は、大腸癌サンプルで遺伝子が1個以上発現する遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
図9の(A)は、腫瘍細胞及び正常細胞で248個の遺伝子組み合わせの発現の割合を示す。
図9の(B)は、腫瘍細胞に対する作用範囲が相対的に高い遺伝子組み合わせを示し、80%以上の上位組み合わせを点線ボックスで表示した。この場合、分析装置は、上位組み合わせのうち腫瘍細胞での作用範囲が最も高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することができる。また、分析装置は、腫瘍細胞の作用範囲が高い遺伝子組み合わせのうち正常細胞での作用範囲が低い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別してもよい。まとめると、分析装置は腫瘍細胞での作用範囲及び正常細胞での作用範囲のうち少なくとも一つを基準として最終抗原候補を選別することができる。
【0084】
研究者は、肺癌の遺伝子163個のうち腫瘍細胞作用範囲(coverage)が10%以上である遺伝子を選別した。研究者は、選別した遺伝子を利用して2,415個の遺伝子組み合わせを決定した。研究者は、遺伝子組み合わせそれぞれに対して組み合わせに含まれた遺伝子2個以上が同時発現する単一細胞単位の遺伝子発現有無を二進情報に変換した。研究者は、腫瘍細胞の作用範囲が10%以上である組み合わせ589個を選別した。
図10は、肺癌サンプルで遺伝子2個以上が同時発現する遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
図10の(A)は、腫瘍細胞及び正常細胞で589個の遺伝子組み合わせの発現の割合を示す。
図10の(B)は、腫瘍細胞に対する作用範囲が相対的に高い遺伝子組み合わせを示し、50%以上の上位組み合わせを点線ボックスで表示した。この場合、分析装置は、上位組み合わせのうち腫瘍細胞での作用範囲が最も高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することができる。また、分析装置は、腫瘍細胞の作用範囲が高い遺伝子組み合わせのうち正常細胞での作用範囲が低い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することもできる。また、分析装置は、同時発現した2個以上の遺伝子の間の発現関係(correlation)が高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別してもよい。まとめると、分析装置は、腫瘍細胞での作用範囲、正常細胞での作用範囲及び遺伝子の間の発現関係のうち少なくとも一つを基準として最終抗原候補を選別することができる。
【0085】
研究者は、大腸癌の遺伝子110個のうち腫瘍細胞作用範囲(coverage)が10%以上である遺伝子を選別した。研究者は、選別した遺伝子を利用して2,278個の遺伝子組み合わせを決定した。研究者は、遺伝子組み合わせそれぞれに対して組み合わせに含まれた遺伝子2個以上が同時発現する単一細胞単位の遺伝子発現有無を二進情報に変換した。研究者は、腫瘍細胞の作用範囲が10%以上である組み合わせ537個を選別した。
図11は、大腸癌サンプルで遺伝子が2個以上同時発現する遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
図11の(A)は、腫瘍細胞及び正常細胞で537個の遺伝子組み合わせの発現の割合を示す。
図11の(B)は、腫瘍細胞に対する作用範囲が相対的に高い遺伝子組み合わせを示し、50%以上の上位組み合わせを点線ボックスで表示した。この場合、分析装置は、上位組み合わせのうち腫瘍細胞での作用範囲が最も高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することができる。また、分析装置は、腫瘍細胞の作用範囲が高い遺伝子組み合わせのうち正常細胞での作用範囲が低い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別してもよい。また、分析装置は、同時発現した2個以上の遺伝子の間の発現関係(correlation)が高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別してもよい。まとめると、分析装置は、腫瘍細胞での作用範囲、正常細胞での作用範囲及び遺伝子の間の発現関係のうち少なくとも一つを基準として最終抗原候補を選別することができる。
【0086】
研究者は、TCGA DBから得た10,459人の転写体配列データを利用して腫瘍での遺伝子組み合わせの間の相互発現(co-expression)指数を全て演算した。研究者は、肺癌及び大腸癌それぞれから選別された主要6個候補遺伝子(陽性候補遺伝子)とネガティブの相関関係を有する遺伝子(陰性候補遺伝子)を対象として可能性のある組み合わせを導出した。研究者は、キメラ抗原受容体の特異性を評価するために阻害率(protection rate)を用いた。阻害率は、腫瘍細胞特異的遺伝子(陽性遺伝子)を発現する正常細胞のうちキメラ抗原受容体に対する阻害作用をする免疫阻害遺伝子(陰性遺伝子)も一緒に発現する割合を意味する。このとき、CAR-TあるいはCAR-NK細胞製作時の阻害遺伝子の抗原にキメラ抗原受容体が結合する場合、免疫反応を阻害するように考案しなければならず、これは正常細胞の損傷を最小化する役目をすることができる。阻害遺伝子は、研究者自身による実験結果又はキメラ抗原受容体の特性によって既に研究された結果を利用してもよい。
【0087】
研究者は、肺癌の遺伝子の主要陽性候補遺伝子を選別した。主要陽性候補遺伝子は、腫瘍細胞での作用範囲を基準として作用範囲が広い6個の遺伝子で選別した。また、研究者は、陽性候補遺伝子それぞれに対して発現様相がネガティブの関係にある陰性候補遺伝子を選別した。陰性候補遺伝子は、一つの陽性候補遺伝子に対して1個以上を選別することができる。研究者は、選別した陽性候補遺伝子と陰性候補遺伝子が構成し得る全ての遺伝子組み合わせに対して腫瘍細胞の作用範囲が60%以上である組み合わせ462個を選別した。
【0088】
図12は、肺癌サンプルで腫瘍細胞特異的な遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
図12の(A)は、腫瘍細胞及び正常細胞で462個の遺伝子組み合わせの発現の割合を示す。
図12の(B)は、腫瘍細胞に対する作用範囲が相対的に広い遺伝子組み合わせを表示する。
図12の(B)は、腫瘍細胞での作用範囲(tumor coverage)、正常細胞での作用範囲(normal coverage)、阻害率(protection rate)及び遺伝子組み合わせに属した遺伝子の発現関係(TCGA correlation)項目に対する値を示す。この場合、分析装置は、腫瘍細胞での作用範囲が一定値より高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することができる。また、分析装置は、腫瘍細胞の作用範囲が高い遺伝子組み合わせのうち正常細胞での作用範囲が一定値より低い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別してもよい。また、分析装置は、腫瘍細胞の作用範囲が高い遺伝子組み合わせのうち阻害率が一定値より高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別してもよい。また、分析装置は、陽性候補遺伝子と陰性候補遺伝子の発現関係(correlation)が高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別してもよい。まとめると、分析装置は、腫瘍細胞での作用範囲、正常細胞での作用範囲、阻害率及び遺伝子の間の発現関係を総合的に考慮して最終抗原候補を選別することができる。
【0089】
研究者は、大腸癌の遺伝子の主要陽性候補遺伝子を選別した。主要陽性候補遺伝子は、腫瘍細胞での作用範囲を基準として作用範囲が高い6個の遺伝子で選別した。また、研究者は、陽性候補遺伝子それぞれに対して発現様相がネガティブの関係にある陰性候補遺伝子を選別した。陰性候補遺伝子は、一つの陽性候補遺伝子に対して1個以上を選別することができる。研究者は、選別した陽性候補遺伝子と陰性候補遺伝子が構成し得る全ての遺伝子組み合わせに対して腫瘍細胞の作用範囲が40%以上である組み合わせ449個を選別した。
【0090】
図13は、大腸癌サンプルで腫瘍細胞特異的な遺伝子組み合わせに対する実験結果である。
図13の(A)は、腫瘍細胞及び正常細胞で462個の遺伝子組み合わせの発現の割合を示す。
図13の(B)は、腫瘍細胞に対する作用範囲が相対的に広い遺伝子組み合わせを表示する。
図13の(B)は、腫瘍細胞での作用範囲(tumor coverage)、正常細胞での作用範囲(normal coverage)、阻害率(protection rate)及び遺伝子組み合わせに属した遺伝子の発現関係(TCGA correlation)項目に対する値を示す。この場合、分析装置は、腫瘍細胞での作用範囲が一定値より高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することができる。また、分析装置は、腫瘍細胞の作用範囲が高い遺伝子組み合わせのうち正常細胞での作用範囲が一定値より低い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することもできる。また、分析装置は、腫瘍細胞の作用範囲が高い遺伝子組み合わせのうち阻害率が一定値より高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別してもよい。また、分析装置は、陽性候補遺伝子と陰性候補遺伝子の発現関係(correlation)が高い遺伝子組み合わせを最終抗原候補に選別することもできる。まとめると、分析装置は、腫瘍細胞での作用範囲、正常細胞での作用範囲、阻害率及び遺伝子の間の発現関係を総合的に考慮して最終抗原候補を選別することができる。
【0091】
図14は、キメラ抗原受容体に対する抗原を発掘する分析装置600に対する例である。
【0092】
分析装置600は、
図1の分析装置(130又は140)に該当する装置である。分析装置600は、キメラ抗原受容体が認識するターゲット抗原を発掘する。
【0093】
分析装置600は、物理的に多様な形態で具現され得る。例えば、分析装置600は、PCのようなコンピュータ装置、ネットワークのサーバー、データ処理専用チップセットなどの形態を有することができる。コンピュータ装置は、スマート器機などのようなモバイル器機を含むことができる。
【0094】
分析装置600は、保存装置610、メモリー620、演算装置630、インターフェース装置640、通信装置650及び出力装置660を含むことができる。
【0095】
保存装置610は、腫瘍細胞の遺伝子の発現情報を利用してキメラ抗原受容体が認識する抗原を決定するプログラムを保存する。当該プログラムは、腫瘍細胞だけではなく正常細胞の遺伝子の発現情報をさらに利用してキメラ抗原受容体が認識する抗原を決定することができる。また、保存装置610は、データ処理に必要なプログラム乃至ソースコードなどを保存することができる。保存装置610は、入力される遺伝子データ及び/又は分析に必要な腫瘍情報を保存することもできる。
【0096】
メモリー620は、分析装置600が遺伝子データを分析する過程で生成されるデータ及び情報などを保存することができる。
【0097】
インターフェース装置640は、外部から一定の命令及びデータの入力を受ける装置である。インターフェース装置640は、物理的に連結された入力装置又は外部保存装置から遺伝子データの入力を受けることができる。インターフェース装置640は、単一細胞単位でサンプルの腫瘍細胞及び正常細胞の遺伝子の発現データの入力を受けることができる。インターフェース装置640は、分析のための基準、腫瘍情報などの入力を受けることもできる。
【0098】
通信装置650は、有線又は無線ネットワークを通じて一定情報を受信して伝送する構成を意味する。通信装置650は、外部客体から遺伝子データを受信することができる。通信装置650は、単一細胞単位でサンプルの腫瘍細胞及び正常細胞の遺伝子の発現データを受信することができる。通信装置650は、分析結果であるターゲット抗原関連情報を外部客体に送信することができる。
【0099】
通信装置650乃至インターフェース装置640は、外部から一定データ乃至命令の伝達を受ける装置である。通信装置650乃至インターフェース装置640を入力装置と名付けることができる。
【0100】
出力装置660は、一定情報を出力する装置である。出力装置660は、データ処理過程に必要なインターフェース、分析結果などを出力することができる。
【0101】
演算装置630は、保存装置610に保存されたプログラムを利用して遺伝子データを分析してターゲット抗原を発掘することができる。
【0102】
演算装置630は、ソースデータから候補抗原の遺伝子(候補遺伝子)を選別することができる。候補遺伝子の選別基準や過程は上述した通りである。
【0103】
演算装置630は、候補抗原の遺伝子のうち複数の遺伝子が構成可能な全ての初期遺伝子組み合わせを決定することができる。演算装置630は、初期遺伝子組み合わせからターゲット抗原に連関したターゲット遺伝子組み合わせを決定することができる。また、演算装置630は、ターゲット遺伝子組み合わせに複数の遺伝子組み合わせがある場合、最適の最終遺伝子組み合わせや遺伝子を選別することもできる。
【0104】
演算装置630は、腫瘍細胞のうち初期遺伝子組み合わせに含まれた少なくとも一つの遺伝子が発現する細胞の割合(作用範囲)が基準値以上である組み合わせをターゲット遺伝子組み合わせに選択することができる。
【0105】
演算装置630は、腫瘍細胞のうち初期遺伝子組み合わせに含まれた複数の遺伝子が発現する細胞の割合(作用範囲)が基準値以上である組み合わせをターゲット遺伝子組合に選択することができる。
【0106】
演算装置630は、候補抗原の遺伝子のうち腫瘍細胞で発現する細胞の割合又は腫瘍細胞で発現する細胞の個数を基準として陽性候補遺伝子を決定することができる。演算装置630は、陽性候補遺伝子と発現様相が逆関係を有する陰性候補遺伝子を決定することができる。
【0107】
演算装置630は、陽性候補遺伝子及び陰性候補遺伝子が構成可能な全ての遺伝子組み合わせを初期遺伝子組み合わせに決定することができる。
【0108】
演算装置630は、腫瘍細胞のうち特定組み合わせに含まれた陽性候補遺伝子のうち少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する細胞の割合が基準値以上であり、
【0109】
少なくとも一つの陽性候補遺伝子が発現する正常細胞のうち陽性候補遺伝子が関与する抗原とキメラ抗原受容体の認識又は結合を阻害する阻害遺伝子が発現する正常細胞の割合が基準値以上である組み合わせをターゲット遺伝子組み合わせに決定することができる。
【0110】
演算装置630は、データを処理して一定な演算を処理するプロセッサ、AP、プログラムがインベディットされたチップのような装置であってもよい。
【0111】
また、上述したようなキメラ抗原受容体のためのターゲット抗原の発掘方法は、コンピュータで実行され得る実行可能なアルゴリズムを含むプログラム(又はアプリケーション)で具現され得る。前記プログラムは、一時的又は非一時的判読可能媒体(non-transitory computer readable medium)に保存されて提供され得る。
【0112】
「非一時的判読可能な媒体」とは、レジスタ、キャッシュ、メモリーなどのように短い瞬間の間データを保存する媒体ではなく半永久的にデータを保存し、器機により判読(reading)が可能な媒体を意味する。具体的には、上述した多様なアプリケーション又はプログラムは、CD、DVD、ハードディスク、ブルーレイディスク、USB、メモリーカード、ROM(read-only memory)、PROM(programmable read only memory)、EPROM(Erasable PROM、EPROM)又はEEPROM(Electrically EPROM)又はフラッシュメモリーなどのような非一時的判読可能媒体に保存されて提供され得る。
【0113】
一時的判読可能媒体は、スタティックラム(Static RAM、SRAM)、ダイナミックラム(Dynamic RAM、DRAM)、シンクロナスディーラム(Synchronous DRAM、SDRAM)2倍速SDRAM(Double Data Rate SDRAM、DDR SDRAM)、増強型SDRAM(Enhanced SDRAM、ESDRAM)、同期化DRAM(Synclink DRAM、SLDRAM)及びダイレクトラムバスラム(Direct Rambus RAM、DRRAM)のような多様なRAMを意味する。
【0114】
本実施例及び本明細書に添付した図面は、上述した技術に含まれる技術的思想の一部を明確に示しているものに過ぎず、上述した技術の明細書及び図面に含まれた技術的思想の範囲内で当業者が容易に類推し得る変形例と具体的な実施例は、全て上述した技術の権利範囲に含まれるのが自明である。