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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/32 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
A42B3/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024001295
(22)【出願日】2024-01-09
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】崔 成根
(72)【発明者】
【氏名】青柳 千尋
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 雄介
【審査官】岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-140215(JP,U)
【文献】特表2012-518097(JP,A)
【文献】特表2013-539826(JP,A)
【文献】特開2017-089021(JP,A)
【文献】国際公開第2023/067559(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3845085(EP,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2458517(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の収納状態とドーム状の使用状態に変形可能なヘルメットであって、
縦横に配置された複数のセルと、伸縮性を有し前記セル同士を連結するリンクとを備え、
複数の前記セル及び前記リンクの全部が、金型により同一材料を用いて1枚のフラットな前記平板状の収納状態となるように一体成形されており、前記リンクが収縮することで前記ドーム状の使用形態に変形可能に構成されることを特徴とするヘルメット。
【請求項2】
請求項1記載のヘルメットにおいて、
前記セルは多角形により構成されると共に、前記リンクは、断面視波形の波板により形成され、隣接する前記セルの辺同士を幅方向において所定幅で連結することを特徴とするヘルメット。
【請求項3】
請求項2記載のヘルメットにおいて、
前記平板状の収納状態で、前記リンクは、ヘルメット外面側に谷状部が配置されると共に、ヘルメット内面側が広がる波板状に形成されていることを特徴とするヘルメット。
【請求項4】
請求項2記載のヘルメットにおいて、
隣接する前記セル同士の頂点部分の間は、前記リンクのない貫通部分となっていることを特徴とするヘルメット。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項記載のヘルメットにおいて、
前記ヘルメットが使用状態に変形したときに、頭頂部に位置する前記セルに交差した状態で支持されると共に、ヘルメット内面に沿ってアーチ状をなす一対の顎紐連結紐と、これらの一対の顎紐連結紐に連結されて支持される顎紐とを備えることを特徴とするヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の収納状態とドーム状の使用状態に変形可能なヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヘルメットとしては、略半球殻状の帽体を、頭頂部中心を通る中心線に沿って右半帽体と左半帽体に分割したものが知られている。二つの半帽体は対称形で、例えば、左半帽体には下端開口縁から上方の一定範囲を占める左中央殻と、これに隣接する左上周辺殻、左前周辺殻、左後周辺殻に区画する。中央殻と周辺殻は回動可能なヒンジ構造である薄肉部で連続させ、周辺殻と周辺殻は分離させる。外周に位置する二つの半帽体の対応する周辺殻と周辺殻は回動可能なヒンジ構造の連結部で連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-170324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる従来のヘルメットでは、二分割の折り畳み構造であっても、組み立ての際には、ヒンジ構造を介してヘルメットの形を形成すると共に、連結部を連結させる必要があり煩雑である。
【0005】
一方で、簡易な組み立て構造とした場合には、確実な連結など実現できず、ヘルメットとして求められる安全性などを担保できない虞がある。
【0006】
以上の事情に鑑みて、本発明は、折り畳み構造において簡易な組み立てと高い安全を担保することができるヘルメット構造を実現することができるヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のヘルメットは、平板状の収納状態とドーム状の使用状態に変形可能なヘルメットであって、縦横に配置された複数のセルと、伸縮性を有し前記セル同士を連結するリンクとを備え、複数の前記セル及び前記リンクの全部が、金型により同一材料を用いて1枚のフラットな前記平板状の収納状態となるように一体成形されており、前記リンクが収縮することで前記ドーム状の使用形態に変形可能に構成されることを特徴とする。
【0008】
第1発明のヘルメットによれば、伸縮性を有するリンクを伸長させて、複数のセルの配置を適宜変化させることで、ヘルメットをフラットな平板状に変形させて、薄くコンパクトな収納形状とすることができると共に、リンクを収縮させて、複数のセルの配置を適宜変化させることで、ヘルメットをドーム状に変形させて、ヘルメットを使用状態に簡易に組み立てることができる。
【0009】
また、ヘルメット構成する複数のセル及びリンクの全部が、金型による同一材料を用いて一体成形されているので、それらの強度や剛性を高めることができる。
【0010】
したがって、コンパクトでバッグ等に収納しやすくすることができると共に、組み立てが簡易で高い安全性を担保することができる、ヘルメットを提供することができる。
【0011】
第2発明のヘルメットは、第1発明において、前記セルは多角形により構成されると共に、前記リンクは、断面視波形の波板により形成され、隣接する前記セルの辺同士を幅方向において所定幅で連結することを特徴とする。
【0012】
第2発明のヘルメットによれば、セルが多角形であり、隣接するセルの辺同士がリンクで連結されているので、例えば、セルが円形等である場合に比べて、隣接するセル同士の隙間を小さくしやすくい。その結果、複数のセルを密に配置しやすくなるので、ヘルメットを頭部の外周形状に沿ったドーム形状に変形させやすくなる。
【0013】
また、リンクは、断面視波形の波板により形成され、隣接するセルの辺同士を幅方向において所定幅で連結する構成となっているので、リンクの伸長量を大きく確保して、ヘルメットを平板状の収納状態からドーム状の使用状態に変形しやすくして、ヘルメットの使用状態への組み立て作業性を向上させることができると共に、隣接するセル同士の連結強度を向上させることができる。
【0014】
第3発明のヘルメットは、第2発明において、前記平板状の収納状態で、前記リンクは、ヘルメット外面側に谷状部が配置されると共に、ヘルメット内面側が広がる波板状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
第3発明のヘルメットによれば、リンクが上記構造となっているので、ヘルメットがドーム状の使用状態に変形した際に、ヘルメットを頭部の外周形状に沿わせやすくなると共に、上記形状をなしたリンク自体を、ヘルメット外部からの衝撃緩和の一助として機能させることができる。
【0016】
第4発明のヘルメットは、第2発明において、隣接する前記セル同士の頂点部分の間は、前記リンクのない貫通部分となっていることを特徴とする。
【0017】
第4発明のヘルメットによれば、隣接するセル同士の頂点部分の間は、リンクのない貫通部分となっているので、平板状の収納状態からドーム状の使用状態或いはドーム状の使用状態から平板状の収納状態に変形させるべく、リンクを介して複数のセルを近接させたり離間させたりするときに、隣接するセルの頂点部分同士を干渉させにくくすることができるため、上記の変形作業をスムーズに行うことができ、組み立て作業性を向上させる。
【0018】
第5発明のヘルメットは、第1~第4発明のいずれかにおいて、前記ヘルメットが使用状態に変形したときに、頭頂部に位置する前記セルに交差した状態で支持されると共に、ヘルメット内面に沿ってアーチ状をなす一対の顎紐連結紐と、これらの一対の顎紐連結紐に連結されて支持される顎紐とを備えることを特徴とする。
【0019】
第5発明のヘルメットによれば、一対の顎紐連結部が、ヘルメットが使用状態に変形したときに、頭頂部に位置するセルに交差した状態で支持されているので、ヘルメットを平板状やドーム状に変形させる際に、一対の顎紐連結紐を頭頂部に対して位置ずれさせにくくすることができ、顎紐連結紐や顎紐を絡みにくくすることが可能となり、ヘルメットを平板状の収納状態やドーム状の使用状態に移行させやすくなる。そのため、一対の顎紐連結紐と顎紐とを備える本格的なヘルメットを提供することができる。
【0020】
実施例のヘルメットは、平板状の収納状態とドーム状の使用状態に変形可能なヘルメットであって、縦横に配置された複数のセルと、伸縮性を有し前記セル同士を連結するリンクとを備え、前記ドーム状に成形されると共に、前記リンクが伸長することにより前記平板状に変形することを特徴とする。
【0021】
上記ヘルメットによれば、複数のセルとセル同士を繋ぐリンクとによりドーム型にヘルメットを形成する。これにより、ヘルメットの使用時のドーム型の形状を実現することができる。
【0022】
一方で、リンクに伸縮性を持たせることで、不使用時にはリンクを伸長させることで、平板状に変形することができる。さらに、リンクが伸長することで、平板には、平面状の1枚の平板のほか、さらにその1枚を折り畳んだ2枚が重ねの平板、さらには、その2枚重ねの平板を折り畳んだ4枚重ねの平板のように、複数回折り畳んだ平板とすることができる。
【0023】
そして、平板状に変形された状態から押えを解くことで、リンクの伸縮でドーム型の形状に容易に変形して戻すことができる。
【0024】
ここで、ヘルメット全体が、セルとリンクで繋がれていることから、全体として強度を持たせることができ、連結部などを接合や連結させる必要もない。
【0025】
このように、上記ヘルメットによれば、折り畳み構造において簡易な組み立てと高い安全を担保することができるヘルメット構造を実現することができる。
【0026】
更に、実施例のヘルメットは、前記リンクは、前記セル同士間断面視波形の波板により形成されることを特徴とする。
【0027】
上記ヘルメットによれば、リンクを波板(波形の弾性体)により構成することで、セル同士を繋ぐ伸縮性のリンクを具体的に実現することができる。
【0028】
このように、上記ヘルメットによれば、折り畳み構造において簡易な組み立てと高い安全を担保することができるヘルメット構造を具体的に実現することができる。
【0029】
また、実施例のヘルメットは、前記セルは、内面側と外面側とのいずれか一方または両方に衝撃吸収部を有することを特徴とする。
【0030】
上記ヘルメットによれば、セルの内面側または外面側(両側を含む)に衝撃吸収
部を設けることで、セルおよびリンクによりヘルメット全体による衝撃吸収に加えて、衝撃吸収性能をさらに向上させることができる。
【0031】
このように、上記ヘルメットによれば、折り畳み構造において簡易な組み立てとより高い安全を担保することができるヘルメット構造を実現することができる。
【0032】
実施例のヘルメットは、前記セルと前記リンクとが一体成形されることを特徴とする。
【0033】
上記ヘルメットによれば、当該ヘルメットは、複数のセルとリンクが連結されて
一体を成すため、これらを、例えば、金型により一体に形成する一体成形とすることで、簡易に当該ヘルメットを構成することができる。
【0034】
このように、上記ヘルメットによれば、折り畳み構造において簡易な組み立てと高い安全を担保することができるヘルメット構造を簡易に実現することができる。
【0035】
実施例のヘルメットは、外面側と内面側とのいずれか一方または両方において前記複数のセル全体を覆う可撓性の面材を備えることを特徴とする。
【0036】
上記ヘルメットによれば、当該ヘルメットの外面側または内面側(両側を含む)に、複数のセル全体、すなわち、当該ヘルメット全体またはヘルメット全体の一部を覆う可撓性の面材を備えることで、硬質の帽体に相当する機能を全体的にまたは部分的に持たせることができ、よりヘルメット全体の強度を高めることができる。
【0037】
このように、上記ヘルメットによれば、折り畳み構造において簡易な組み立てとより高い安全を担保することができるヘルメット構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態としてのヘルメットを示す斜視図。
図2A】本発明の他の実施形態のヘルメットの内面側を示す斜視図。
図2B図2Aのヘルメットを折り畳んだ状態を示す斜視図。
図3】本発明に係るヘルメットの他の実施形態を示しており、平板状に展開した収納状態の斜視図。
図4】同ヘルメットをドーム状の使用状態とした場合の斜視図。
図5】同ヘルメットの頭頂部近傍を示す拡大斜視図。
図6】同ヘルメットをドーム状の使用状態とした場合の側面図。
図7】同ヘルメットをバッグ等に収納する際に、当該ヘルメットをロール状の収納状態とする場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(ヘルメットの一実施形態)
本発明の実施形態として挙げるヘルメットは、図1に示すように、複数のセル10と、隣接するセル同士を連結するリンク20とを備える。
【0040】
セル10は、図1に示すように、六角形のほか、図2に示すように四角形であってもよい。また、多角形のほか円盤状の形状であってもよい。
【0041】
セル10は、面全体を覆うように縦横(メッシュ状であるが等間隔ではない)に配置されるが、端部に配置されるセルは、ドーム状の外形の端縁を形成するように、端部セル11(図1参照)として示すように適宜切断した形状となっている。
【0042】
リンク20は、セル10同士を伸縮性を持って接続する。図1および図2に示すように、リンク20は、例えば、セル同士間を断面視波形(側方から見て波形とも言える)の波板(波形の弾性部材)により形成されるが、伸縮性を有すれば、波板に限定されず、各種バネのほか、材料自体が伸縮性を有するゴムや樹脂などにより構成されてもよい。
【0043】
また、この実施形態においては、図2に示すように、複数のセル10,10´及びリンクの全部が、金型により同一材料を用いて1枚のフラットな平板状の収納状態となるように一体成形されている。
【0044】
以上のように構成された本実施形態のヘルメットは、図1に示すように、通常(力を加えない状態では)、ドーム状の形状が維持される。
【0045】
より具体的には、セル10とリンク20との間が端縁では張力が掛かった状態で連結されることにより、周縁に周方向内方への力が働き中心部分がドーム状に盛り上がった形状となる。
【0046】
一方で、盛り上がったドームを押し下げると、端縁に掛かる張力に逆らって端縁のリンク20が拡幅されると共に、端縁以外のリンク20も(端縁のリンク20ほどの拡幅ではないものの)拡幅されることにより、ヘルメット全体が図2Aに示すように1枚の平板状となる。
【0047】
さらに、図2に示すように、セル10´を四角形(正方形)にした場合には、図2Bに示すように、さらに、平面状の1枚をさらに折り畳んだ2枚が重ねの平板にすることも可能となる。
【0048】
なお、図2に示す、ヘルメットでは、セル10の形状が正方セル10´になっているほか、顎紐30も特定のセル間(リンク間)を跨ぐように設けられている。
【0049】
以上詳しく説明してきたように、本実施形態のヘルメットによれば、複数のセル10(10´)とセル10(10´)同士を繋ぐリンク20とによりドーム型にヘルメットを形成する。これにより、ヘルメットの使用時のドーム型の形状を実現することができる。
【0050】
一方で、リンク20に伸縮性を持たせることで、不使用時にはリンクを伸長させることで、平板状に変形するこができる。さらに、リンク20が伸長することで、平板には、平面状の1枚の平板のほか、さらにその1枚を折り畳んだ2枚重ねの平板、さらには、その2枚重ねの平板を折り畳んだ4枚重ねの平板(図示省略)のように、複数回折り畳んだ平板とすることができる。
【0051】
そして、平板状に変形された状態から押えを解くことで、リンクの伸縮でドーム型の形状に容易に変形して戻すことができる。
【0052】
ここで、ヘルメット全体が、セル10(10´)とリンク20で繋がれていることから、全体として強度を持たせることができ、連結部などを接合や連結させる必要もない。
【0053】
このように、本実施形態のヘルメットによれば、折り畳み構造において簡易な組み立てと高い安全を担保することができるヘルメット構造を実現することができる。
【0054】
ここで、本実施形態のヘルメットは、使用時に衝撃に対して、ヘルメット全体に存在する複数のセル10(10´)および複数のリンク20による衝撃吸収と、複数のリンク20が伸縮することによる衝撃吸収とにより、ヘルメット全体で衝撃を吸収することができる。
【0055】
さらに、衝撃吸収性能を向上させるためには、図2Aに示すように、セル10(10´)の内面側に衝撃吸収部材12(本発明の衝撃吸収部)を設けることが望ましい。
【0056】
衝撃吸収部材としては、エラストマーのほか、発泡スチロール製の衝撃吸収ライナーなどが採用される。
【0057】
なお、本実施形態では、セル10(10´)の内面側に衝撃吸収部材12を設けているが、これに限定されるものではなく、内面側と外面側とのいずれか一方または両方に設けてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、セル10(10´)とリンク20とが金型による樹脂成型で一体に形成される一体成形としているが、これに限定されるものではない。例えば、各々成型したセル10(10´)とリンク20とを軸着させたり、熱溶着させたりすることにより接合させてもよい。
【0059】
加えて、セル10(10´)とリンク20とを金型により同一材料を用いて一体成形する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、一体成形であれば、いわゆる二色成形などにより部分的に材質を変えて射出成形してもよい。
【0060】
例えば、二色成形により、人頭に接する部分であるセル10(10´)の内面側や衝撃吸収部材12を設ける場合の衝撃吸収部材12を、リンク20などより、より柔らく弾力性のある材質とすることが好ましい。
【0061】
さらに、本実施形態のヘルメットの外面側と内面側とのいずれか一方または両方に、当該ヘルメット全体または一部分を覆う可撓性の面材をもうけてもよい。これにより、複数のセル10(10´)全体(当該ヘルメットの全体または一部分)を覆う可撓性の面材を備えることで、硬質の帽体に相当する機能を全体的にまたは部分的に持たせることができ、よりヘルメット全体の強度を高めることができる。
【0062】
(ヘルメットの他の実施形態)
図4~7には、本発明に係るヘルメットの、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0063】
この実施形態に係るヘルメット50は、前記実施形態のヘルメット1と同様に、多角形状をなした複数のセル60,61,62,63と、隣接するセル同士を連結する複数のリンク80,81と備えている。
【0064】
また、このヘルメット50は、複数のセル60~63及びリンク80,81の全部が、金型により同一材料を用いて一体成形されており、リンク80,81が収縮することで、ドーム状の使用形態に変形可能に構成されている。
【0065】
すなわち、このヘルメット50は、図3に示す平板状の収納状態から、図4,6に示すドーム状の使用状態に変形させることが可能であると共に、ドーム状の使用状態から平板状の収納状態に変形させることも可能となっている。更に、このヘルメット50は、ドーム状の使用状態や平板状の収納状態から、図7の右側の図に示すような、バック等に収納するのに適した状態、すなわち、細長いロール状に丸められた状態に変形させることも可能となっている。
【0066】
より具体的に本実施形態のヘルメット50は、4~6個の辺64と、頂点部分65(隣接する辺64,64同士の間の角部)とを有する略正六角形状や、正六角形ではないが六角形状をなす略五異形六角形状、正五角形ではないが五角形状をなす略異形五角形状、正方形ではないが略四角形状をなす、複数種類のセル60,61,62,63から構成されている。
【0067】
また、このヘルメット50は、主として頭頂部51(図6参照)やその近傍部分を形成する中央部Aと、この中央部Aを中心として前後左右に延出して延びて、主としてヘルメット50の前後部分や左右部分を構成する4個の延出部B,Cとから構成されており、展開状態において全体として略十字形状となっている。
【0068】
すなわち、このヘルメット50は、中央部Aと、中央部Aの外周に対向して配置される一対の延出部B,Bと、中央部Aの外周であって、前記一対の延出部B,Bに対して直交するように対向して配置される一対の延出部C,Cとからなる。
【0069】
なお、ヘルメット50を構成する中央部A及び4個の延出部B,Cは、図3に示す状態、すなわち、ヘルメット50の周方向に隣接する延出部B,Cの、延出方向に沿った側部どうしが互いに離間した状態で、各部A,B,Cを構成する複数のセル60~63及び複数のリンク80,81の全部が金型により同一材料を用いて一体成形されている。
【0070】
また、中央部Aや延出部B,Cにおいて、隣接配置されるセルの近接する辺64,64同士は、リンク80によって連結されている。
【0071】
このリンク80は、図3に示すように、ヘルメット50が平板状の収納状態(展開状態とも言える)となっているときに、ヘルメット外面側に谷状部が配置されると共に、ヘルメット内面側が広がる波板状に形成されている。
【0072】
より具体的には、この実施形態のリンク80は、図3に示す平板状の収納状態で、ヘルメット外面側に配置される谷状部(底部とも言える)と、該谷状部からヘルメット内面側に向けて次第に拡開するように延びる一対の側辺部とを有しており、側方から見て略V字形状(断面視において略V字形状)をなした波板状となっている。なお、リンクとしては、例えば、ヘルメット外面側に曲面状の谷状部を配置した略U字状等であってもよく、縦横に隣接配置されたセルどうしを一体的に連結可能であればよい。
【0073】
また、図3に示すように、各延出部B,Cの延出方向の先端部には、複数の端部セル62,63が配置されている。延出部B,Cにおける端部セルは、周方向両端部に配置される略四角形状をなした一対の端部セル62,62と、一対の端部セル62,62の間に配置される1個(延出部Cの場合)又は複数(延出部Bの場合3個)の略異形五角形状をなした端部セル63とからなる。
【0074】
更に、各端部セル62,63の下方に位置する辺64は、その高さがほぼ揃った位置となっている。また、延出部Bの所定の端部セル62と、それに隣接する延出部Cの、対応する端部セル62(ドーム状の使用状態で対向配置される端部セル62)とは、外側に位置する辺64,64どうしを突き合せて配置したときに、幅広の台形状をなすものとなっている。
【0075】
また、延出部Cにおける端部セル62の外側の辺64には、係合突部66が突設されている。一方、延出部Bにおける端部セル62の外側の辺64には、係合突部66が係合する被係合部67が形成されている。そして、ヘルメット50を使用状態とすべくドーム状に変形させたときに、延出部Cの係合突部66が対応する延出部Bの被係合部67に係合して、隣接する端部セル62,62同士が連結されるようになっている。
【0076】
更に、各延出部Cの、周方向両端部であって延出方向に沿った両側部に位置するセル60の、所定の辺64からは、波形状をなしたリンク81が延設されている。一方、延出部Bの、周方向両端部であって延出方向に沿った両側部に位置するセル60,61には、被連結部68が形成されている。そして、ヘルメット50を使用状態とすべくドーム状に変形させたときに、延出部Cのリンク81が対応する延出部Bの被連結部68に係合して、隣接するセル同士が連結されるようになっている。
【0077】
上記のリンク80,81は、各セルの辺64の幅よりは小さいものの、当該辺64の長手方向両端を除く程度には幅広とされた、所定幅の幅広板状となっており(図3参照)、隣接配置されるセルの近接する辺64,64同士を、その幅方向において所定幅で連結する構成となっている。
【0078】
また、上記のリンク80,81は、ヘルメット50の縦方向(ヘルメット下方から頭頂部に向く方向)及び横方向(縦方向に直交し頭部外周を囲む方向)においても、隣接配置されたセルの辺64,64同士を連続的に連結するようになっている。
【0079】
更に、複数のセルを連結するリンクは、ヘルメット50がドーム状の使用状態のときに、ヘルメット50の周縁端部53に位置するリンクのみが、他のリンクよりも高い収縮性を有するように構成されることが好ましい。この実施形態の場合、ヘルメット50の周縁端部53において、頭部外周を囲むように配置される端部セル62,63の辺64,64同士を連結するV字形の波板状のリンク80が、他のリンク80,81よりも高い収縮性を有する構成とすることが好ましい。
【0080】
また、各部A,B,Cにおいて、隣接配置されるセル60,60同士の頂点部分65,65(多角形状のセルの角部分)の間は、リンク80が存在しない貫通部分69となっている。
【0081】
更に、各部A,B,Cを構成する各セル60,61,62の、ヘルメット内面側(頭部に向く側)には、円形凹状をなした凹部70がそれぞれ形成されている。
【0082】
また、中央部Aの、ヘルメット50の頭頂部51に位置するセル60には、一対の顎紐連結紐90,90が交差した状態で挿通されて支持される、複数の紐挿通孔71が形成されている(図5参照)。更に、一対の顎紐連結紐90,90には、顎紐91が連結されて支持されるようになっている。
【0083】
また、延出部Cの端部セル62,63のうち、周方向両端部に位置する端部セル62,62の内側に位置する、一対の端部セル63,63にも、顎紐連結紐90が挿通される一対の紐挿通孔71,71が形成されている。
【0084】
更に、延出部Bの端部セル62,63のうち、周方向一端部に位置する端部セル62には、顎紐91及びヘッドバンド92を挿通させる、紐挿通孔73が形成されている。
【0085】
なお、本発明において「金型により同一材料を用いて一体成形されてなる」とは、所定の内面形状を有する金型のキャビティ内に溶融した合成樹脂材料等を充填した後、抜型することで、ヘルメットを構成する複数のセル及び複数のリンクの全部が一体的に成形されることを意味する。
【0086】
更に、この実施形態においては、ヘルメット50は、リンク80,81が伸長することにより1枚のフラットな平板状に変形すると共に、図4に示すように、ドーム状の使用状態のときに、ヘルメット50の周縁端部53における複数のセル及びリンクが鉢巻状に連なって配置される構成となっている。
【0087】
すなわち、ヘルメット50は、図3に示すように、1枚のフラットな平板状の収納状態から、延出部Cの係合突部66を、延出部Bの対応する被係合部67に係合させて、延出部B,Cの隣接する端部セル62,62同士を連結させると共に、延出部Bのリンク81を、延出部Cの対応する被連結部68に連結させることで、図4に示すように、ヘルメット50がドーム状の使用状態に保持される。
【0088】
それによって、ヘルメット50の周縁端部53における複数の端部セル62,63及びリンク80が、頭部の外周を鉢巻のように囲みつつ、頭部の外周に沿って連続して配置されるようになっている。
【0089】
また、この実施形態では、図4~6に示すように、ヘルメット50がドーム状の使用状態に変形したときに、ヘルメット50の頭頂部51に位置するセル60に交差した状態で支持されると共に、ヘルメット内面に沿ってアーチ状をなす一対の顎紐連結紐90と、これらの一対の顎紐連結紐90,90に連結されて支持される顎紐91と、頭部外周に配置されて後頭部に引っ掛かるヘッドバンド92とを備えている。
【0090】
(ヘルメットの他の実施形態の作用効果)
そして、この実施形態においては、伸縮性を有するリンク80,81を伸長させて、複数のセル60~63の配置を適宜変化させることで、図3に示すように、ヘルメット50をフラットな平板状に変形させて、薄くコンパクトな収納形状とすることができると共に、リンク80,81を収縮させて、複数のセル60~63の配置を適宜変化させることで、ヘルメット50をドーム状に変形させて、ヘルメット50を使用状態に簡易に組み立てることができる。
【0091】
また、図7には、バッグ等の収納袋100にヘルメット50を収納する際の状態が示されている。すなわち、図7の左側の図に示すドーム状の使用状態から、例えば、ヘルメット50の前後部分を中心として(軸として)、ヘルメット50の左右部分を丸めるように畳むことで、図7中の中央の図に示すように、ヘルメット50を細長いロール状に変形させて、コンパクトで嵩張らない形態とすることができる。そのため、図7の右側の図に示すように、収納スペースに余裕の少ない収納袋100であっても、ヘルメット50を余裕をもって確実に収納することができる。
【0092】
更に、ヘルメット50全体、すなわち、ヘルメット50を構成する複数のセル60~63及びリンク80,81の全部が、金型により同一材料を用いて一体成形されているので、それらの強度や剛性を高めることができる。
【0093】
したがって、コンパクトでバッグ等に収納しやすくすることができると共に、組み立てが簡易で高い安全性を担保することができる、ヘルメット50を提供することができる。
【0094】
また、この実施形態においては、セル60~63が多角形であり、隣接するセルの辺64,64同士がリンク80,81で連結されている。そのため、例えば、セルが円形等である場合に比べて、隣接するセル同士の隙間を小さくしやすくい。その結果、複数のセル60~63を密に配置しやすくなるので、ヘルメット50を頭部の外周形状に沿ったドーム形状に変形させやすくなる。
【0095】
更に、リンク80,81は、断面視波形の波板により形成され、隣接するセルの辺64,64同士を幅方向において所定幅で連結する構成となっているので、リンク80,81の伸長量を大きく確保して、ヘルメット50を平板状の収納状態からドーム状の使用状態に変形しやすくして、ヘルメット50の使用状態への組み立て作業性を向上させることができると共に、隣接するセル同士の連結強度を向上させることができる。
【0096】
また、この実施形態においては、隣接するセル同士を連結するリンク80は、ヘルメット50が平板状の収納状態となっているときに、ヘルメット外面側に谷状部が配置されると共に、ヘルメット内面側が広がる波板状に形成されている。
【0097】
上記態様によれば、リンク80が上記構造となっているので、図4図6に示すように、ヘルメット50がドーム状の使用状態に変形した際に、ヘルメット50を頭部の外周形状に沿わせやすくなると共に、上記形状をなしたリンク80自体を、ヘルメット外部からの衝撃緩和の一助として機能させることができる。
【0098】
更に、この実施形態においては、隣接するセル同士の頂点部分65,65の間は、リンク80,81のない貫通部分69となっているので、平板状の収納状態からドーム状の使用状態或いはドーム状の使用状態から平板状の収納状態に変形させるべく、リンク80,81を介して複数のセルを近接させたり離間させたりするときに、隣接するセルの頂点部分65,65同士を干渉させにくくすることができる(頂点部分65,65同士が接触したり引っ掛かったりしにくい)。そのため、上記の変形作業をスムーズに行うことができ、ヘルメット50の組み立て作業性を向上させる。
【0099】
また、ヘルメット50がドーム状の使用状態となった場合も、隣接するセル同士の頂点部分65,65の間の間隙が、貫通部分69によって維持されることになるので、ヘルメットの50通気性を確保することができる。
【0100】
ところで、折り畳み変形可能なヘルメットにおいて、通常のヘルメットのような顎紐等を備える構成とすると、変形時に顎紐等が位置ずれして互いに絡み合うことが多く、収納状態や使用状態に移行させにくいことがあった。そのため、折り畳み変形可能なヘルメットでは、通常のヘルメットのように本格的な顎紐構造を備えることが難しい。
【0101】
これに対して、本実施形態においては、一対の顎紐連結紐90,90が、ヘルメット50が使用状態に変形したときに、頭頂部51に位置するセル60に交差した状態で支持されているので(図5参照)、ヘルメット50を平板状やドーム状に変形させる際に、一対の顎紐連結紐90,90を頭頂部51に対して位置ずれさせにくくすることができる。その結果、一対の顎紐連結紐90,90や顎紐91を絡みにくくすることができ、ヘルメット50を平板状の収納状態やドーム状の使用状態に移行させやすくなる。
【0102】
したがって、一対の顎紐連結紐90,90と顎紐91とを備える本格的なヘルメット50を提供することができる。
【0103】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
10(10´)・・・セル、12・・・衝撃吸収部材(衝撃吸収部)、20・・・リンク、30・・・顎紐、50・・・ヘルメット、60,61,62,63・・・セル、64・・・辺、65・・・頂点部分、69・・・貫通部分、80,81・・・リンク、90・・・顎紐連結紐、91・・・顎紐
【要約】
【課題】折り畳み構造において簡易な組み立てと高い安全を担保することができるヘルメット構造を実現することができるヘルメットを提供する。
【解決手段】このヘルメット50は、平板状の収納状態とドーム状の使用状態に変形可能とされており、縦横に配置された複数のセル60,61,62,63と、伸縮性を有しセル同士を連結するリンク80,81とを備え、複数のセル60,61,62,63及びリンク80,81の全部が、金型により同一材料を用いて一体成形されており、リンク80,81が収縮することでドーム状の使用形態に変形可能に構成されている。
【選択図】図3
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7