(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】順送プレス加工方法及びその加工システム
(51)【国際特許分類】
B21D 37/00 20060101AFI20241206BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20241206BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20241206BHJP
B30B 13/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B21D37/00 B
B30B15/00 B
B21D22/20 B
B30B13/00 Z
(21)【出願番号】P 2024026802
(22)【出願日】2024-02-26
【審査請求日】2024-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502043396
【氏名又は名称】株式会社JKB
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】平井 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】平井 和夫
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160215(JP,A)
【文献】特開平04-141353(JP,A)
【文献】特開2020-157420(JP,A)
【文献】特開平03-124417(JP,A)
【文献】国際公開第2020/246101(WO,A1)
【文献】特開2002-292709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/00
B30B 15/00
B21D 22/20
B30B 13/00
B23Q 41/08
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材料の送出ラインに沿って複数の加工ステージをそれぞれ順に等間隔で設けられた順送プレス金型のメンテナンス工程を含むプレス加工装置による順送プレス加工方法であって、
前記メンテナンス工程を行うべきことを作業者に報知する管理装置は、加工を開始後、前記加工ステージのそれぞれについてのショット回数をカウントする計数部と、前記加工ステージのそれぞれに対して規定ショット回数及びメンテナンス内容の組からなるメンテナンス情報を記録されている記憶部と、を含み、
前記メンテナンス情報は、同一の前記加工ステージについて、異なる規定ショット回数及び異なるメンテナンス内容の組を含んでおり、
前記管理装置は、
前記メンテナンス情報のうちのいずれかの前記組の前記規定ショット回数に到達したときに、前記メンテナンス工程を行うべきことを、前記組に対応する前記加工ステージと、前記メンテナンス内容と、ともに作業者に報知し、前記計数部の対応する前記ショット回数をリセット
する機能と、且つ
前記プレス加工装置で製造された加工品に不良品を発見したときに前記プレス加工装置を停止させる停止装置の動作を受けて、前記不良品の不良箇所を生じさせた前記加工ステージと不良箇所に対応するメンテナンス内容との外部入力を受け付け、その後、このメンテナンス内容を実施した旨の入力を更に受けると、前記外部入力による前記加工ステージと前記メンテナンス内容とを一致させる前記組が前記記憶部に存在する場合には前記計数部の対応する前記ショット回数をリセットし、存在しない場合には前記外部入力に基づいて更にショット回数の入力を受け付けて前記組を新設し前記記憶部に登録する機能と、を有することを特徴とする順送プレス加工方法。
【請求項2】
被加工材料の送出ラインに沿って複数の加工ステージをそれぞれ順に等間隔で設けられた順送プレス金型のメンテナンス工程を含むプレス加工装置による順送プレス加工システムであって、
前記メンテナンス工程を行うべきことを作業者に報知する管理装置は、加工を開始後、前記加工ステージのそれぞれについてのショット回数をカウントする計数部と、前記加工ステージのそれぞれに対して規定ショット回数及びメンテナンス内容の組からなるメンテナンス情報を記録されている記憶部と、を含み、
前記メンテナンス情報は、同一の前記加工ステージについて、異なる規定ショット回数及び異なるメンテナンス内容の組を含んでおり、
前記管理装置は、
前記メンテナンス情報のうちのいずれかの前記組の前記規定ショット回数に到達したときに、前記メンテナンス工程を行うべきことを、前記組に対応する前記加工ステージと、前記メンテナンス内容と、ともに作業者に報知し、前記計数部の対応する前記ショット回数をリセット
する機能と、且つ
前記プレス加工装置で製造された加工品に不良品を発見したときに前記プレス加工装置を停止させる停止装置の動作を受けて、前記不良品の不良箇所を生じさせた前記加工ステージと不良箇所に対応するメンテナンス内容との外部入力を受け付け、その後、このメンテナンス内容を実施した旨の入力を更に受けると、前記外部入力による前記加工ステージと前記メンテナンス内容とを一致させる前記組が前記記憶部に存在する場合には前記計数部の対応する前記ショット回数をリセットし、存在しない場合には前記外部入力に基づいて更にショット回数の入力を受け付けて前記組を新設し前記記憶部に登録する機能と、を有することを特徴とする順送プレス加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工装置による順送プレス加工方法及びその加工システムに関し、特に、順送プレス金型のメンテナンス工程を含む順送プレス加工方法及びその加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの金型内に2つ以上のプレス加工工程を行う箇所を設けておき、金型内の次の工程箇所へと帯状の被加工材料を自動で送出させながらプレス加工して行くプレス加工装置による順送プレス加工方法が知られている。かかる加工方法は、被加工材料を各工程の間で人手に頼って金型から出し入れする時間が省略できるなど、他のプレス加工方法と比較して加工処理速度が非常に速く、生産性に優れるといった特徴を有している。
【0003】
ところで、プレス加工における不良発生を防止するには、不良発生内容、例えば、バリ、ソリ、傷、寸法や角度公差外れなどに対して、最適なプレス装置の加工条件を見いだし、不良発生の原因となるプレス機の加工条件を最適化して加工を行っていた。つまり、油量や生産速度などの加工条件を予めデータベース化して管理し、品質向上を図るものであった。
【0004】
一方、金型の摩耗などについても不良発生の大きな原因となるため、金型毎にメンテナンスの目安となるプレス回数を設定し、設定されたプレス回数に達したときに、メンテナンス予定数に達した旨のメッセージを作業者に報知して金型研磨などのメンテナンスを促すプレス加工方法も提案されている。作業者は所定のメンテナンス作業を実施した後、プレス回数の設定をゼロクリアして加工を再開するのである。
【0005】
例えば、特許文献1では、タレットパンチプレスやサーボプレス等のプレス機器に使用する金型の管理方法を開示している。ここでは、1モーション中で使用される回数が異なる複数の構成部品からなる金型の該構成部品ごとの保守カウントデータとして、構成部品の使用実績数データ、使用予定数データ、1モーション当たりの使用回数に対応した倍率、を保持しておき、構成部品の使用実績数データはモーション毎に倍率を加算され、使用予定数データに達した場合には、その旨を作業者に報知し金型研磨を促すとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、順送プレス加工では、各ステージで異なる加工を行うため、プレス回数で金型を管理したときに、もっとも加工条件のシビアと予測されるステージに合わせて上限のプレス回数を規定してメンテナンスを行うことが考慮できる。しかしながら、不良発生内容も多岐に亘ることもあって、かかる予測自体が困難であった。
【0008】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、順送プレス金型のメンテナンス工程を含む順送プレス加工方法及びその加工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、順送プレス加工の各ステージにおける金型の劣化の挙動をプレス装置の動作と合わせて、多数、詳細に観察した。その結果、各ステージの金型の劣化が互いに連関し合った結果として特定の不良発生につながること、すなわち、単独のステージのみの金型の劣化が特定の不良発生を導くのではないことに想到し、本願発明に至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明による方法は、被加工材料の送出ラインに沿って複数の加工ステージをそれぞれ順に等間隔で設けられた順送プレス金型のメンテナンス工程を含むプレス加工装置による順送プレス加工方法であって、前記メンテナンス工程を行うべきことを作業者に報知する前記管理装置は、加工を開始後、前記加工ステージのそれぞれについてのショット回数をカウントする計数部と、前記加工ステージのそれぞれに対して規定ショット回数及びメンテナンス内容の組からなるメンテナンス情報を記録されている記憶部と、を含み、前記管理装置は、前記メンテナンス情報のうちのいずれかの前記組の前記規定ショット回数に到達したときに、前記メンテナンス工程を行うべきことを、前記組に対応する前記加工ステージと、前記メンテナンス内容と、ともに作業者に報知し、前記計数部の対応する前記ショット回数をリセットすることを特徴とする。
【0011】
かかる特徴によれば、1のステージに対応する金型の部位が他のステージに対応する金型の部位の劣化に大きな影響を与える前に当該1のステージのメンテナンスを行うようにすることで、製品の不良を防止し、高い生産性を与えるのである。
【0012】
上記した発明において、前記メンテナンス情報は、同一の前記加工ステージについて、異なる規定ショット回数及び異なるメンテナンス内容の組を含んでいることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ステージ間の金型の劣化の影響をより抑制し、製品の不良を防止し、高い生産性を与えるのである。
【0013】
上記した発明において、前記管理装置は、前記プレス加工装置で製造された加工品に不良品を発見したときに前記プレス加工装置を停止させる停止装置の動作を受けて、前記不良品の不良箇所を生じさせた前記加工ステージと不良箇所に対応するメンテナンス内容との外部入力を受け付け、その後、このメンテナンス内容を実施した旨の入力を更に受けると、前記外部入力による前記加工ステージと前記メンテナンス内容とを一致させる前記組が前記記憶部に存在する場合には前記計数部の対応する前記ショット回数をリセットし、存在しない場合には前記外部入力に基づいて更にショット回数の入力を受け付けて前記組を新設し前記記憶部に登録することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ステージ間の金型の劣化の影響をより抑制し、製品の不良を防止し、高い生産性を与えるのである。
【0014】
更に、本発明によるシステムは、被加工材料の送出ラインに沿って複数の加工ステージをそれぞれ順に等間隔で設けられた順送プレス金型のメンテナンス工程を含むプレス加工装置による順送プレス加工システムであって、前記メンテナンス工程を行うべきことを作業者に報知する管理装置は、加工を開始後、前記加工ステージのそれぞれについてのショット回数をカウントする計数部と、前記加工ステージのそれぞれに対して規定ショット回数及びメンテナンス内容の組からなるメンテナンス情報を記録されている記憶部と、を含み、前記管理装置は、前記メンテナンス情報のうちのいずれかの前記組の前記ショット回数に到達したときに、前記メンテナンス工程を行うべきことを、前記組に対応する前記加工ステージと、前記メンテナンス内容と、ともに作業者に報知し、前記計数部の対応する前記ショット回数をリセットすることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ステージ間の金型の劣化の影響をより抑制し、製品の不良を防止し、高い生産性を与えるのである。
【0015】
かかる特徴によれば、1のステージに対応する金型の部位が他のステージに対応する金型の部位の劣化に大きな影響を与える前に当該1のステージの金型のメンテナンスを行うようにすることで、製品の不良を防止し、高い生産性を与えるのである。
【0016】
上記した発明において、前記メンテナンス情報は、同一の前記加工ステージについて、異なる規定ショット回数及び異なるメンテナンス内容の組を含んでいることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ステージ間の金型の劣化の影響をより抑制し、製品の不良を防止し、高い生産性を与えるのである。
【0017】
上記した発明において、前記管理装置は、前記プレス加工装置で製造された加工品に不良品を発見したときに前記プレス加工装置を停止させる停止装置の動作を受けて、前記不良品の不良箇所を生じさせた前記加工ステージと不良箇所に対応するメンテナンス内容との外部入力を受け付け、その後、このメンテナンス内容を実施した旨の入力を更に受けると、前記外部入力による前記加工ステージと前記メンテナンス内容とを一致させる前記組が前記記憶部に存在する場合には前記計数部の対応する前記ショット回数をリセットし、存在しない場合には前記外部入力に基づいて更にショット回数の入力を受け付けて前記組を新設し前記記憶部に登録することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、ステージ間の金型の劣化の影響をより抑制し、製品の不良を防止し、高い生産性を与えるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】順送プレス加工によるレイアウトを例示する図である。
【
図2】順送プレス加工における加工ステージ毎の加工速度と品質維持可能なショット回数の関係を示すグラフである。
【
図3】本発明による1実施例の順送プレス加工システムとこれに接続されたプレス加工装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明に至った経緯について説明する。
【0020】
図1には、順送プレス加工によって被加工材料Mを所定の部品に加工する手順となるレイアウトを示す。このレイアウトに示されるように、順送プレス加工では、帯状の金属板からなる被加工材料Mをその帯状長手を送出ラインに沿って送り、かかる送出ラインに沿って複数の加工ステージをそれぞれ順に等間隔で設けられた順送プレス金型で加工を行う。同図に示すように、金型内の加工ステージによって、例えば、穴抜き、曲げ、切り離しなどの異なる加工内容となる。そのため、各加工ステージによって、また、1つの加工ステージ内であっても加工部位によって、対応する金型(金型部品)の部位の劣化の挙動が異なり、加工ステージ又は加工部位によってメンテナンスを要する頻度が異なる。
【0021】
一般的には、被加工材料Mから得られる製品の検査によって不良を発見した場合に、その原因となる加工ステージに対応する金型の部位のメンテナンスを行うことで対処する方法が考えられる。しかし、大量生産品である場合、不良を発見してから加工を止めても、大量の不良品を生じてしまう場合がある。また、大量生産品で全数検査のできない場合、検査のために抽出したサンプルに不良を生じていなくてもその前後で不良を生じている場合もあり、高い生産性を得ることが難しい。よって、不良の発生する前に予防的にメンテナンスを行うことが考慮されるが、そのためには金型の劣化の挙動を調査したい。
【0022】
そこで、
図2に示すように、本願発明者らは、所定の品質基準を維持することの可能なショット回数の限界値を調査することで、順送プレス加工の各加工ステージにおける金型の劣化の挙動を観察した。なお、ここでは、4つの加工ステージを有する順送プレス加工について調査した。詳細には、製品A及び製品Bのそれぞれについて、加工速度(毎分のショット数)をSPM100、200、300と変えて、加工ステージ毎にショット回数の限界値を調査した。ショット回数の限界値は、品質基準を高レベルとするものと中レベルとするもののそれぞれを表示した。つまり、品質基準を高レベルとするものの方がショット回数の限界値は小さくなる。その結果、全体として加工速度を上げるとショット回数の限界値は低下する傾向にあるが、その低下割合はまちまちであることが判った。例えば、製品Aの加工ステージ(金型ステージ)No.2とNo.3に着目すると、SPM100からSPM200にした場合に加工ステージNo.2でのショット回数の限界値が急激に低下するものの加工ステージNo.3での低下割合は小さく、SPM200からSPM300にした場合に、加工ステージNo.2での低下割合は小さいものの加工ステージNo.3での低下割合が大きい。このように、1つの金型であっても加工ステージによって傾向が異なり、金型のメンテナンスの管理を加工ステージ単位で行う必要のあることが判った。
【0023】
他方、加工ステージNo.1に着目すると、加工速度によるショット回数の限界値にほとんど変化がない。製品BのSPM300の品質基準を中レベルとするものにおいて若干の低下が認められるのみである。これは、加工ステージNo.1では、前工程のないブランク材への加工であって、常に一定の品質の材料に加工することができるためであると考えられる。換言すれば、ある加工ステージに対応する金型の部位の劣化が他の部位の劣化に影響を与えるように加工ステージ間での金型の劣化に連関を生じてしまっていると考えられる。
【0024】
よって、仮に、製品が所定の品質基準を逸脱するような不良の発生する直前に金型の対応する部位のメンテナンスを行ったとしても、同部位に連関して他の部位において既に何らかの影響を受けて劣化を進行させていると考えられる。この場合、かかる他の部位における不良の発生を予見することも難しく、すぐに品質基準を逸脱するような不良を発生し、さらにメンテナンスを要することになる場合もある。つまり、製品の品質基準を逸脱しない範囲においても金型の劣化が他の部位に影響して劣化を早めるような連関を生じてしまう。そこで、本願発明者らは、金型において互いの部位の劣化の影響が連関を生じてしまう前にメンテナンスを行うことを考えたのである。
【0025】
次に、本発明による1実施例である順送プレス金型のメンテナンス工程を含む順送プレス加工方法及び順送プレス加工システムについて
図3を用いて説明する。
【0026】
図3に示すように、順送プレス加工システム2は、順送プレス金型12によるプレス加工装置1に接続されるコンピュータによって構成することができる。プレス加工装置1は、順送プレス金型12によってプレス加工を行う加工部11と、加工部11の動作を制御する制御装置14と、外部からの信号に基づいて加工部11の動作を停止させる停止装置15とを含む。順送プレス金型12は、被加工材料の送出ラインに沿って複数(ここではNo.1~No.4)の加工ステージ13をそれぞれ順に等間隔で設けられたものである。
【0027】
一方、順送プレス加工システム2は、順送プレス金型12のメンテナンス工程を行うべきであることを作業者に報知する管理装置20と、入力装置29とを備える。
【0028】
管理装置20は、プレス加工装置1の制御装置14及び停止装置15にそれぞれ接続されるとともに、計数部21と記憶部22と表示部23とをその内部に備える。計数部21は、加工ステージ13のそれぞれに対応して個別に設けられ、加工ステージ13のショット回数を個別にカウントする。ショット回数は、順送プレス金型12の1回の押下によって1ずつ加算される数値である。例えば、プレス加工装置1の順送プレス金型を押下させるクランクシャフトの動作を検出するセンサに基づき制御装置14から1ショットにつき1つの信号を送出する。管理装置20では、かかる信号を受けて計数部21の全てのショット回数に1を加算する。順送プレス金型であるため、各加工ステージ13の累計のショット回数は同一となるが、後述するように、メンテナンス工程を行う度にメンテナンス工程を行った加工ステージ13に対応するショット回数のカウンタをリセットして、加工ステージ13のそれぞれについてメンテナンス工程後のショット回数をカウントする。つまり、メンテナンス工程を複数の加工ステージ13について個別に行い、計数部21は、その後のショット回数を各加工ステージ13において個別にカウントする。
【0029】
記憶部22は、加工ステージ13の各々に対応するメンテナンス情報を記憶する。メンテナンス情報は、規定ショット回数及びメンテナンス内容の組を含む。つまり、対応する加工ステージ13において、カウントされたショット回数が規定ショット回数に到達したときに行うべきメンテナンス内容を記録しておくのである。なお、メンテナンス情報には、対応する部位で行う加工に関する情報である加工内容をさらに含んでいることも好ましい。
【0030】
表示部23は、作業者に向けて報知すべきものを表示する。例えば、メンテナンス情報の規定ショット回数と現在のショット回数を対比させるように表示してもよい。また、ショット回数が規定ショット回数に到達したときに、順送プレス金型12のメンテナンス工程を行うべきことを報知するよう、対応する加工ステージ13のNo.とメンテナンス内容を表示する。
【0031】
入力装置29は、作業者によって操作されることで外部入力を管理装置20で受け付けられるよう管理装置20に接続される。入力装置29からの外部入力に基づいて、管理装置20は必要な動作を行う。なお、入力装置29は、表示部23と一体として設けられていてもよい。
【0032】
管理装置20は、さらにプレス加工装置1の停止装置15に接続される。停止装置15は、プレス加工装置1で製造された加工品に不良品を発見したときにプレス加工装置1を停止させる。この停止動作は、作業者により不良を発見した場合であれば、入力装置29による外部入力に基づいて行ってもよいし、機械的に不良箇所を発見するセンサ等によるものであれば、かかるセンサによる信号に基づいて行ってもよい。
【0033】
次に、順送プレス加工システム2の動作について説明する。
【0034】
まず、管理装置20の記憶部22には、加工ステージ13のNo.1~No.4のそれぞれに対応する規定ショット回数とメンテナンス内容の組をメンテナンス情報として記憶している。上記したように、メンテナンス情報には、さらに加工内容を含んでいてもよい。ここで、規定ショット回数は対応する加工ステージ13のメンテナンスを実施せずに連続で順送プレス加工を行ってよいショット回数である。規定ショット回数は、予め定められた数値を例えば外部から作業者によって入力されて記憶される。メンテナンス情報は、過去の実績に基づいて定められたものとし得るが、特に規定ショット回数については後述するように製品の製造を繰り返す上で更新してもよい。また、メンテナンス内容は、例えば、クリアランス調整、曲げ角度調整、ダイ刃先研磨、パンチ刃先研磨などである。また、加工内容としては、例えば、細穴抜き、絞り、切り曲げ、などである。
【0035】
その上で、プレス加工装置1によって順送プレス加工を行う。すると、管理装置20は、計数部21にショット回数をカウントさせる。詳細には、計数部21は、プレス加工装置1の制御装置14から1ショット毎の信号を受けて、加工ステージ13のNo.1~No.4のそれぞれに対応するショット回数のカウンタの全てに1を加算する。
【0036】
一方、管理装置20は、計数部21によるショット回数のカウンタを監視し、記憶部22に格納された対応するメンテナンス情報の規定ショット回数と比較する。管理装置20は、加工ステージ13のNo.1~No.4のうちのいずれかに対応するショット回数が規定ショット回数に到達したときに、メンテナンス工程を行うべきことを表示部23に表示して作業者に報知する。このとき、表示部23には、到達した規定ショット回数を含むメンテナンス情報と、かかるメンテナンス情報に対応する加工ステージ13のNo.とを表示させるようにする。このとき、例えば、管理装置20から停止装置15に信号を送出して、プレス加工装置1の順送プレス加工を停止させるようにすることもできる。
【0037】
一方、作業者は、管理装置20によって表示部23から報知された内容に沿って、順送プレス金型12のメンテナンス工程を行い、メンテナンスを完了した旨を入力装置29から入力する。この入力を受けて、管理装置20は、計数部21において規定ショット回数に到達してメンテナンスを完了した加工ステージに対応するショット回数のカウンタをリセットしてゼロにする。
【0038】
管理装置20は、メンテナンス完了の旨の入力を受けて、プレス加工装置1の加工部11の動作を許容する。そして、プレス加工装置1の順送プレス加工の再開とともに、再び加工ステージ個別にショット回数のカウントを開始する。このとき、リセットしたカウンタはゼロから、他のカウンタはメンテナンスの前の数値から引き続きカウントされる。
【0039】
このような製造方法により、金型の劣化に対して予防的にメンテナンスを行うことができる。すなわち、1の加工ステージに対応する金型の部位が他の加工ステージに対応する金型の部位の劣化に大きな影響を与える前に当該1の加工ステージに対応する金型の部位のメンテナンスを行うようにでき、これによって、製品の不良を防止し、高い生産性を与えることができる。つまり、製品の不良や金型の劣化の発生を検知するのではなく、これらを生じる前、さらには他の加工ステージに劣化の連関による悪影響を生じる前と予測される規定ショット回数でメンテナンスを実施する時期や頻度を管理するのである。
【0040】
また、メンテナンス情報は、製造を続ける上で、より適正なものに調整されることが好ましい。例えば、メンテナンスを行ったショット回数や不良を生じたショット回数を生産履歴として蓄積して、これに基づき規定ショット回数を更新するのである。具体的には、メンテナンスを実施したときに、管理装置20は外部入力を受け付けるとともに、そのときのショット回数を記憶部22に記憶させる。このようにして記憶したショット回数の最大値、最小値又は平均値と規定ショット回数とを比較する。そして、不良の発生をさらに減じたい場合には、ショット回数の平均値等を参考にした上で規定ショット回数を減少させる。逆に、メンテナンスの頻度を少なくしたい場合には、規定ショット回数を増加させるのである。このように、蓄積した生産履歴を利用することで、規定ショット回数を更新してメンテナンス情報を調整し、さらなる生産性の向上を得ることも可能である。
【0041】
なお、1つの加工ステージの中においても、例えばスリット穴抜きと丸穴抜きなどの複数の加工が行われる。そのため、1つの加工ステージの中でも複数の加工部位で対応する金型の部位の劣化は互いに連関しつつも、劣化の挙動や進行度合いが異なることがある。つまり、メンテナンスを要する頻度が加工部位によっても異なることになる。よって、加工ステージ内の複数の加工部位についても、それぞれに対応するメンテナンス情報を記憶部22に記憶させ、それぞれ個別にショット回数をカウントすることも好ましい。つまり、メンテナンス情報は、同一の加工ステージについて、異なる規定ショット回数及び異なるメンテナンス内容さらには異なる加工内容の組を含んでいる。これによって、メンテナンスの管理を加工ステージ単位だけでなく、加工部位単位でも行うことができる。
【0042】
また、メンテナンス情報の調整として、製造を続けながらメンテナンス情報の数を増加させるようにしてもよい。例えば、不良品(不良箇所)を発見したときに、停止装置15によってプレス加工装置1を停止させる。そして、管理装置20は、停止装置15の動作を受けて、不良箇所を生じさせた加工ステージ又は加工部位と、これに対応するメンテナンス内容との外部入力を受け付ける。つまり、作業者は、発見された製品の不良箇所に対応する金型の部位のメンテナンスを行い、実施したメンテナンスに従って入力装置29から加工ステージ又は加工部位とメンテナンス内容を入力し、このメンテナンス内容に対応するメンテナンスを実施した旨を入力する。なお、このように不良品の発見に伴ってメンテンナンス情報を外部入力する場合など不良品の記録を蓄積することも可能なように、メンテナンス内容としてさらにメンテナンス理由を含むことも好ましい。メンテナンス理由としては、例えば、バリ発生、曲げ角度不良、曲げ寸法不良、ダコン発生などの発生した不良の内容とし得る。
【0043】
管理装置20はこの外部入力を受けて、加工ステージ又は加工部位とメンテナンス内容とを一致させる規定ショット回数を含むメンテナンス情報の組が記憶部22に存在するかを確認する。このようなメンテナンス情報の組が存在する場合(既にメンテナンスの管理を行っている場合)は、計数部21の対応するショット回数をリセットしゼロに戻す。他方、このようなメンテナンス情報の組が存在しない場合(これまでメンテナンスの管理を行っていなかった場合)は、この外部入力に基づいて、更にショット回数の入力を受け付けて、新たなメンテナンス情報の組を設けて記憶部22に登録し、計数部21においてもさらに対応するカウンタを新設して0からカウントを開始する。
【0044】
このようにすることで、加工ステージ間又は加工部位間の金型の劣化の影響をより抑制することができて、製品の不良の発生を防止することで高い生産性を与えることができる。
【0045】
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0046】
1 プレス加工装置
2 順送プレス加工システム
12 順送プレス金型
13 加工ステージ
15 停止装置
20 管理装置
21 計数部
22 記憶部
【要約】 (修正有)
【課題】順送プレス金型のメンテナンス工程を含む順送プレス加工方法及びその加工システムの提供。
【解決手段】順送プレス金型のメンテナンス工程を含むプレス加工装置による順送プレス加工方法である。メンテナンス工程を行うべきことを作業者に報知する管理装置は、加工を開始後、加工ステージのそれぞれについてのショット回数をカウントする計数部と、加工ステージのそれぞれに対して規定ショット回数及びメンテナンス内容の組からなるメンテナンス情報を記録されている記憶部と、を含み、管理装置は、メンテナンス情報のうちのいずれかの組の規定ショット回数に到達したときに、メンテナンス工程を行うべきことを、組に対応する加工ステージと、メンテナンス内容と、ともに作業者に報知し、計数部の対応するショット回数をリセットする。
【選択図】
図3